説明

ディジタルPLL、光ディスク再生装置、光ディスク再生装置の再生処理方法、及び半導体集積回路装置

【課題】 通常のディスクについては良好なエラーレートで再生でき、また振幅が急激に変化するような信号が記録されたディスクの再生でディジタルPLLでのロック外れを起こすような場合であっても、それに対応して正しい情報・データを再生可能にする。
【解決手段】 通常のディスク1を再生する場合、CPU8の制御に基づき、カットオフ切替手段7を介して、オフセット補正手段6のカットオフ周波数を、信号再生におけるエラーレートが良好となるように選んで、ディスク1における読み出し位置からの情報の読み出しを行う。例えば出力における誤り訂正処理で誤り訂正不能状態となった場合に、オフセット補正手段6のカットオフ周波数を上げて、光ピックアップ2を再度元の読み出し位置に移動させて目的の情報の再読み出しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている情報・データの信号を再生する機能を持つ光ディスク再生装置に関し、特に、ディジタルPLL(Digital Phase-Locked Loop)等の位相同期ループを用いて同期クロック信号と多値化された信号を抽出して、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号方式を用いて信号を再生することが可能な光ディスク再生装置、光ディスク再生方法、及び半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ディスク再生装置では、光ディスクに記録された情報・データの再生信号(RF信号)を、自動調整されたスライスレベルで2値化し、次段のディジタル処理回路に2値化信号を渡していた。例えば、信号スライスレベルよりもRF信号の値が大きいときは「1」、小さいときは「0」と判定する2値化方式が提案されている。
【0003】
これに対して、前記RF信号を、多ビットのディジタル信号に標本化し、パーシャルレスポンス方式と、最尤復号方式の一つであるビタビ復号器とを組み合わせたPRML信号方式が提案されている。このPRML信号方式は、線記録方向の記録密度の増加に伴い、意図的に波形干渉を付加することによって、高域成分を必要としない再生系を実現し、波形干渉を考慮した確率計算により、再生データの品質を向上させる方式である。PRML信号方式については、特許文献1記載の技術がある。
【特許文献1】特開2003−36612号公報(第3頁、第14図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に示されるような従来の装置では、ハイパスフィルタあるいは波形等化手段を介してADC(アナログ−ディジタルコンバータ)のチャネルビットレートで信号をサンプリングし、オフセット補正手段を用いてDC(直流)成分をキャンセルし、位相比較を行い、ループフィルタを介してDAC(ディジタル−アナログコンバータ)でDA変換し、電圧制御発振器(VCO)を駆動して前記ADCのサンプリングを制御するように、ディジタルPLLを構成している。しかし、このようなディジタルPLLでは、入力信号の振幅が急激に変化すると、位相誤差が急激に大きくなり、ロック外れを起こすという問題があった。
【0005】
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、通常のディスクについて良好なエラーレートで再生でき、また前記振幅が急激に変化するような信号が記録されたディスクについてもその再生で前記ディジタルPLLでのロック外れを起こすような問題にも対応して正しい情報・データを再生可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。前記目的を達成するために、本発明の光ディスク再生装置は、光ディスク(記録媒体)に記録されている情報・データの信号再生を制御する手段を備え、光ディスクからの信号の再生において、ディジタルPLL等の位相同期ループを用いて同期クロック信号と多値化された信号を抽出し、PRML信号方式などを用いて信号再生を制御する機能を備えた装置であって、以下に示す技術的手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の光ディスク再生装置は、レーザ駆動制御に応じて前記光ディスクからの信号を検出する光ピックアップと、前記検出された再生信号(RF信号)をもとに、前記光ディスクに記録されている情報を再生して出力する回路と、ディジタルPLLとを有する。前記ディジタルPLLは、前記RF信号をもとに、同期クロック信号と多値化された信号を抽出する。前記出力する回路は、前記抽出された同期クロック信号と多値化された信号を用いて、目的の情報を再生して出力する。
【0008】
例えば、前記出力する回路は、PRML信号方式を用いたPRML回路や復調回路や誤り訂正回路(ECC:Error-Correcting Circuit)などを含む構成である。そして前記出力する回路は、前記PRML回路、復調回路を経由させて信号を復調して、誤り訂正回路により誤り訂正処理して正しい情報を再生情報として出力する。
【0009】
前記ディジタルPLLは、前記RF信号をサンプリングするADCと、前記サンプリングされた出力を位相比較する位相比較器と、前記位相比較された出力を帯域制限するローパスフィルタと、前記帯域制限された出力をDA変換するDACと、前記DACの出力により発振が制御されその発振出力によって前記ADCのサンプリングを制御するVCOとを有して構成される。そして、本光ディスク再生装置は、前記ADCの出力をカットオフ周波数の設定値に応じてオフセット補正するオフセット補正手段と、前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を切り替えるカットオフ切替手段とを有する。そして、本光ディスク再生装置は、光ディスクからの信号再生を制御する際に、前記光ピックアップを光ディスクに対する目的情報の読み出し開始位置に移動して、前記カットオフ切替手段を通じて前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を切り替えて、前記情報の再生をリトライする手段を有する。
【0010】
本光ディスク再生装置は、光ディスクからの信号再生を制御する際に、前記リトライする手段を用いて、所望信号の再生のためのリトライを行うことができる。例えば、通常の光ディスクを再生する場合には、DC成分を安定に除去するために、前記オフセット補正手段のカットオフ周波数を低く設定して、あるいは低い初期設定値において、再生処理を行う。また、前記ディジタルPLLの入力信号の振幅が急激に変化するような特性などの光ディスクを再生する場合においては、最初の読み出し時は通常の低いカットオフ周波数の設定値で再生をトライし、前記振幅の変化によって前記ディジタルPLLにおけるロック外れが発生したような場合でも、前記カットオフ周波数の設定を前記最初のトライ時よりも高く設定すなわち再設定して、再度光ピックアップを同じ読み出し位置に移動して、同じ情報について異なるカットオフ周波数で再読み出しするように、再生のリトライを行う。この結果として前記ディジタルPLLでのロック外れの発生無しでの正しい再生信号を得る。
【0011】
例えば、本装置で、前記誤り訂正回路での誤り訂正処理で訂正不能となったことを契機として、前記リトライを行うように制御する。また、本装置で、前記誤り訂正回路でのエラーレートが良好(低い)となるように前記カットオフ周波数を設定するようにする。
【0012】
本発明の半導体集積回路装置は、上記光ディスク再生装置の回路に用いられる。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明によれば、通常のディスクについては安定して再生でき、かつ振幅が急激に変化するような特性のディスクに対しても、再生のリトライを用いて、ゼロクロス点前後のADCサンプル値の差分が急激に変化することが無くなり、結果としてディジタルPLLのロック外れが発生せずに正しく情報・データを再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク再生装置100の構成を示すブロック図である。本装置100は、光ディスク媒体(以下、単にディスクとも称する)1の記録情報を再生する制御を行う手段及び再生の制御において目的の情報の再生をリトライする手段を備える。本手段は、各回路及びCPU8の処理により実現される。ディジタルPLLを含む回路が、半導体集積回路装置として構成される。
【0016】
本装置100は、光ピックアップ2、プリアンプ3、ハイパスフィルタ(HPF)4、ADC5、オフセット補正手段6、カットオフ切替手段7、システムコントローラ(CPU)8、位相比較器25、ローパスフィルタ(LPF)9、DAC10、VCO11を有する。また本装置100は、その他図示しない、光ディスクの信号再生のために従来備える部品などを備えた構成である。
【0017】
CPU8は、前記記録情報を再生する制御を含む装置全体の制御を行う。オフセット補正手段6は、オフセット補正回路として構成されている。カットオフ切替手段7は、オフセット補正手段6におけるカットオフ周波数を切り替えるもので、カットオフ周波数の値の設定が行われその設定値を保持する回路部分として構成されている。
【0018】
本装置100は、ディスク1から信号を再生する時、CPU8の制御に従って、ディスク1に対し、光ピックアップ2を目的の情報の読み出し位置に移動させ、公知のレーザ駆動制御などを通じてディスク1から信号を検出し、検出した信号を電気信号に変換する。電気信号に変えられた入力信号は、プリアンプ3で波形等価が行われる。プリアンプ3の出力すなわちRF信号は、HPF4に入力され、HPF4でプリアンプ3とADC5のDCずれ分がキャンセルされる。HPF4の出力がADC5などに入力される。
【0019】
ADC5は、VCO11からの制御に基づき、再生されたチャネルクロックで入力信号についてサンプリングすなわちAD変換を行う。ディスク1の記録信号は、DSV(ディジタル・サム・ヴァリュー)が0になることを目標として変調がかけられているため、DSVが0となることを目標として、オフセット補正手段6でDCオフセットのキャンセルを行う。
【0020】
オフセット補正手段6のカットオフ周波数は、カットオフ切替手段7を介してCPU8によって制御される。前記オフセット補正手段6でDCオフセットがキャンセルされた信号は、位相比較器25に入力される。位相比較器25では、入力信号について、ゼロクロス点の前後のADC5でのサンプル値の誤差によって位相比較を行う。ローパスフィルタ9は、位相比較器25の出力を平滑して、DAC10に入力する。DAC10でDA変換が行われ、アナログ化された信号がVCO11に入力される。DAC10からの出力によってVCO11の発振周波数を制御する。VCO11の出力によってADC5のサンプリングが制御される。このようにして、ADC5、位相比較器25、LPF9、DAC10、及びVCO11を中心として、ディジタルPLLの回路が構成されている。ディジタルPLLを用いて、ディスク1からの入力信号について、同期クロック信号と多値化された信号が抽出され、再生処理で利用される。すなわち図示していない出力回路の部分において、ディスク1からのRF信号について、ディジタルPLLで抽出された同期クロック信号と多値化された信号を用いて、PRML回路や復調回路などを通じて目的の信号が再生され出力される。
【0021】
本装置100では、ディスク1として、通常の良好な特性のディスクを再生する場合、CPU8からカットオフ切替手段7を制御することで、オフセット補正手段6のカットオフ周波数の設定が、信号再生におけるエラーレートが良好となるように調整される。例えば図示していないが出力回路の部分として誤り訂正手段を有する構成の場合に、誤り訂正手段で求まるエラーレートに応じて調整される。
【0022】
一方、ディスク1として、振幅が急激に変化する信号が記録されている特性のディスクを再生する場合、位相比較器25の入力が急激に変化してディジタルPLLでのロック外れを引き起こし得る。ディジタルPLLでのロック外れの発生により、前記誤り訂正手段における誤り訂正処理結果で誤り訂正不能状態となってしまう。この場合、本実施の形態のような信号再生をリトライする手段を備えていない従来の装置では、ディスクの該当読み出し位置から正しい情報が再生できない結果となる。
【0023】
それに対して、本装置100では、信号再生をリトライする手段により、前記誤り訂正不能状態となったこと等を契機として、ディスク1の記録情報の再生についてのリトライを実行可能となっている。すなわち、本装置100は、リトライ時にCPU8でカットオフ切替手段7を介してオフセット補正手段6のカットオフ周波数を上げるように制御し、光ピックアップ2を再度元の読み出し位置に戻して、ディスク1の記録情報の再読み出しを行う。オフセット補正手段6のカットオフ周波数の設定を初期値から上げると、これに対応した再読み出しにおいて位相比較器25に入力される信号の振幅の差の変化が緩やかになるため、ディジタルPLLでのロック外れが起き難くなる。その結果として目的の信号の再生において前記誤り訂正不能状態とならずに正しく情報の再生が行われることとなる。
【0024】
以上、本装置100によれば、リトライ時にオフセット補正手段6のカットオフ周波数を上げることで、振幅が急激に変化するような信号が記録された特性のディスク1でも再生が可能となる。
【0025】
次に、図2は、実施の形態1の光ディスク再生装置100におけるオフセット補正手段6についてのより詳しい構成を示す回路ブロック図である。図2では、前記図1に示すオフセット補正手段6の回路内に、カットオフ切替手段7の回路部分を設けた回路構成例を示している。
【0026】
図2で、オフセット補正手段6であるオフセット補正回路は、簡単なIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを中心として構成される。オフセット補正手段6は、遅延回路(FF)14と加算器13とを含む構成のIIRフィルタと、IIRフィルタの係数が設定されるカットオフ切替手段7である回路部分と、リミッタ12と、加算器15とを有する構成である。カットオフ切替手段7は、前記IIRフィルタの係数を保持するレジスタなどとして構成される。
【0027】
加算器15は、ADC5の出力を正入力し、IIRフィルタの出力を負入力して、これらを加算してオフセット補正手段6の出力として、位相比較器25へと出力する。加算器15の出力は、リミッタ12へ入力されて制限され、リミッタ12の出力がカットオフ切替手段7に入力される。カットオフ切替手段7でのカットオフ周波数の設定値は、CPU8から必要に応じて読み書き制御され、上下される。カットオフ切替手段7の出力と遅延回路14の出力が加算器13に入力されて加算される。加算器13の出力が遅延回路14に入力され遅延される。遅延回路14の出力が加算器15に入力される。
【0028】
オフセット補正手段6の出力信号が遅延回路14で1クロック遅延され、ADC5からの入力信号と加算されることによって、前記オフセット補正が処理される。入力信号にオフセットが無い場合は、IIRフィルタの出力は「0」となる。IIRフィルタの入力が「+」(正)であり続ければ、時間の経過と共に出力は増加し、入力が「−」(負)であり続ければ、出力は減少する。IIRフィルタでの積分の速度は、カットオフ切替手段7で設定される係数によって決まる。
【0029】
(実施の形態2)
次に、図3は、本発明の実施の形態2における光ディスク再生装置100の構成を示すブロック図である。本装置100は、実施の形態1の構成に、出力回路の部分として、PRML信号方式によってディスク1からの信号の再生処理を行うPRML回路、復調処理を行う復調回路、誤り訂正処理を行うECC(誤り訂正回路)35等の部分などを加えた構成である。実施の形態2では、ECC35で求まるエラーレートに応じてCPU8からカットオフ周波数の設定を制御する。また、CPU8から、ECC35等における誤り訂正処理結果で誤り訂正不能状態となったことを契機として、信号再生のリトライを制御する。
【0030】
実施の形態2の装置は、前記光ピックアップ2、プリアンプ3、HPF4、ADC5、オフセット補正手段6、カットオフ切替手段7、CPU8、位相比較器25、LPF9、DAC10、VCO11に加え、PR回路31、ビタビ回路32、復調回路33、バッファRAM34、ECC35、出力IF(インタフェース)36を有する。
【0031】
プリアンプ3及びHPF4の出力(RF信号)がPR回路31に入力される。PR回路31は、パーシャルレスポンス方式の処理を行う。PR回路31の出力がビタビ回路32に入力され、最尤復号処理が行われる。ビタビ回路32の出力が復調回路33に入力され、復調処理が行われる。復調回路33の出力がバッファRAM34に入力され、バッファリングされる。バッファRAM34とECC35が接続された構成において、バッファRAM34とECC35との間で情報がやり取りされ、ECC35で誤り訂正処理される。誤り訂正処理において、誤り訂正可能な誤りは訂正され、正しい情報が得られる。バッファRAM34から、ECC35での誤り訂正処理後の情報が、出力IF36に入力され、出力IF36から出力情報(再生情報)として出力される。ECC35では、ディスク1の記録情報に付与されている誤り訂正符号を用いて誤り訂正処理が行われる。ECC35では誤り訂正処理におけるエラーレートが求まる。CPU8は、ECC35での誤り訂正処理結果やエラーレートを認識して、信号再生の制御に反映する。CPU8は、ECC35で求まるエラーレートを、カットオフ周波数の設定値の調整に利用する。なお、前記ECC35で求まるエラーレートと、誤り訂正処理結果の誤り訂正不能状態とは、異なることに注意しておく。
【0032】
このような実施の形態2の装置100において、CPU8は、ディスク1からの目的の情報の読み出しにおいてECC35での誤り訂正処理結果で誤り訂正不能状態となったこと等を契機として、当該情報の読み出しのリトライを行う。リトライ時にオフセット補正手段6のカットオフ周波数を初期値から上げて再度読み出しを行う。この結果として、振幅が急激に変化するような信号が記録された特性のディスク1の再生でも、実施の形態1と同様の仕組みを通じて、誤り訂正処理を施した正しい情報が再生できる。
【0033】
次に、図4は、実施の形態1や実施の形態2の光ディスク再生装置100における信号再生の処理及び制御方法を示すフロー図である。処理及び制御全体の概略は実施の形態1と実施の形態2で同様である。実施の形態1では、前記図1で図示していない誤り訂正手段を用いて誤り訂正処理が行われる。実施の形態2では、前記図3で示すECC35及びバッファRAM34等を用いて誤り訂正処理が行われる。
【0034】
ディスク1を対象とした再生処理が開始されると、まず、CPU8の制御に従って、オフセット補正手段6のカットオフ周波数の初期値がカットオフ切替手段7を介して設定される(ステップS1)。ある情報の再生における最初のトライ時には、このカットオフ周波数の初期値が用いられる。また、このカットオフ周波数の初期値は、CPU8などにより、誤り訂正処理でのエラーレートが少なくなるような値に設定される。
【0035】
次に、本装置100は、光ピックアップ2を、ディスク1に対して、読み出したい情報に対応した読み出し位置に移動し(S2)、レーザ駆動制御を通じて、ディスク1から信号を再生(検出)する(S3)。この際、プリアンプ3を経由して再生されたRF信号に対して、ディジタルPLLで入力信号がロックされる。そして、RF信号に対して、出力回路の部分において、PRML信号方式の処理、復調処理、誤り訂正処理などが行われる(S4)。
【0036】
誤り訂正処理(S4)において、その結果が誤り訂正不能状態でない場合(S5−No)、すなわち誤り訂正可能な誤りなら誤り訂正することで正しい情報を得た場合は、再生を目的とする最終データに至るまで、信号再生(S3)から誤り訂正(S4)の処理を繰り返す(S6−No)。なお本例では、ディスク1から目的の情報を所定の単位、例えばデータブロック単位で、何回かに分けて読み出す場合の再生処理について示しており、所望情報単位の読み出しに応じて光ピックアップ2を移動する制御が行われることとなる。
【0037】
誤り訂正処理(S4)において、その結果が誤り訂正不能状態となった場合(S5−Yes)、CPU8からの再生のリトライの制御に従って、カットオフ切替手段7を介してオフセット補正手段6のカットオフ周波数の設定値を、初期値よりもアップさせ(S7)、光ピックアップ1を再度前記最初のトライ時と同じ読み出し位置に移動させて(S2)、目的の信号再生のリトライを行う。例えば、1回以上のリトライによって正しい再生情報が得られるまで(S6−No)、信号再生(S3)から誤り訂正(S4)の処理を繰り返す。目的の正しい情報が最終データまで得られたら(S6−Yes)、終了する。
【0038】
以上、本光ディスク再生装置100での信号再生処理及び制御によれば、通常の特性のディスク1を再生する場合には、オフセット補正手段6のカットオフ周波数の設定を、誤り訂正処理でのエラーレートが良好となるように選ぶことができる。また、ディジタルPLLにおける位相比較器25で入力信号の振幅が急峻に変化するような信号が記録された特性のディスク1を再生する場合であっても、最初のトライで再生エラーを起こすならカットオフ周波数を再設定したリトライによって位相比較器25の入力が急激に変化することなくディジタルPLLでロック外れとならない正しい再生が可能となる。従って、本装置100では、ディスク1からの信号再生の品質を向上できる。
【0039】
また、他の処理及び制御例として、位相比較器25では、位相誤差の平均値などを算出/認識可能であるので、前記ECC35で求まるエラーレートではなく、位相比較器25での位相誤差の平均値などの処理結果を利用して、前記カットオフ周波数の設定値の調整を行う形態とすること等も可能である。
【0040】
また、上述したディスク1に対する信号の再生の機能に加えて記録の機能を備えた光ディスク装置を構成することも勿論可能である。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、光ディスク媒体に記録されている情報・データの再生や記録を行う回路や装置、及び半導体集積回路装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1における光ディスク再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1の光ディスク再生装置における、オフセット補正手段のより詳しい構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2における光ディスク再生装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1及び実施の形態2における光ディスク再生装置での信号再生処理及び制御方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0044】
1…光ディスク媒体、2…光ピックアップ、3…プリアンプ、4…ハイパスフィルタ、5…ADC、6…オフセット補正手段、7…カットオフ切替手段、8…システムコントローラ(CPU)、9…ローパスフィルタ、10…DAC、11…VCO、12…リミッタ、13,15…加算器、14…遅延回路、25…位相比較器、31…PR回路、32…ビタビ回路、33…復調回路、34…バッファRAM、35…ECC(誤り訂正回路)、36…出力インタフェース、100…光ディスク再生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される信号をサンプリングするアナログ−ディジタルコンバータと、
前記サンプリングされた出力を位相比較する位相比較器と、
前記位相比較された出力を帯域制限するローパスフィルタと、
前記帯域制限された出力をDA変換するディジタル−アナログコンバータと、
前記DA変換された出力により発振が制御されその発振出力によって前記アナログ−ディジタルコンバータのサンプリングを制御する電圧制御発振器と、
前記アナログ−ディジタルコンバータの出力を、カットオフ周波数に応じてオフセット補正するオフセット補正手段と、
前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を切り替えるカットオフ切替手段とを有することを特徴とするディジタルPLL。
【請求項2】
光ディスクからの信号を検出する光ピックアップと、
前記検出された信号を入力する、請求項1記載のディジタルPLLと、
前記検出された信号及び前記ディジタルPLLでの処理をもとに、情報を再生して出力する回路とを有する光ディスク再生装置であって、
前記光ディスクに記録されている情報の再生を制御する際に、前記カットオフ切替手段を通じて前記カットオフ周波数を切り替えて、前記光ピックアップを前記光ディスクに対する読み出し位置に移動して、前記情報の再生をリトライする手段を有することを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項3】
請求項2記載の光ディスク再生装置において、
前記情報の再生を制御する際に、
前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数の初期値を設定するステップと、
前記光ピックアップを前記読み出し位置に移動するステップと、
前記リトライの契機で前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を前記初期値よりも上げるステップと、
前記光ピックアップを再度前記読み出し位置に移動するステップとを有する再生処理を行うことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項4】
光ディスクからの信号を検出する光ピックアップと、
前記検出された信号を入力する、請求項1記載のディジタルPLLと、
前記検出された信号及び前記ディジタルPLLでの処理をもとに、PRML信号方式の回路及び復調回路を通じて信号を復調して、誤り訂正回路を用いて誤り訂正処理することで、情報を再生して出力する回路とを有する光ディスク再生装置であって、
前記情報の再生を制御する際に、前記カットオフ切替手段を通じて前記カットオフ周波数を切り替えて、前記光ピックアップを前記光ディスクにおける読み出し位置に移動して、前記情報の再生をリトライする手段を有することを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項5】
請求項4記載の光ディスク再生装置における再生処理方法であって、
前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数の初期値を設定するステップと、
前記光ピックアップを前記光ディスクにおける読み出し位置に移動するステップと、
前記リトライの契機で前記カットオフ切替手段を通じて前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を前記初期値よりも上げるステップと、
前記光ピックアップを再度前記読み出し位置に移動するステップとを有する再生処理を行うことを特徴とする光ディスク再生装置の再生処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の光ディスク再生装置の再生処理方法において、
前記光ピックアップを前記読み出し位置に移動して、読み出した信号を復調して、誤り訂正回路で誤り訂正処理することで、前記情報の再生をトライするステップと、
前記誤り訂正処理で誤り訂正不能状態となったことを前記リトライの契機として、前記カットオフ切替手段を通じて前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を前記初期値よりも上げて、前記光ピックアップを再度前記読み出し位置に移動して、前記読み出した信号を復調して誤り訂正処理することで、前記情報の再生をリトライするステップとを有する再生処理を行うことを特徴とする光ディスク再生装置の再生処理方法。
【請求項7】
請求項4記載の光ディスク再生装置において、
前記誤り訂正回路で求まるエラーレートが低くなるように前記オフセット補正手段におけるカットオフ周波数を設定する手段を有することを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項8】
請求項2,3,4または7のいずれか一項に記載の光ディスク再生装置に用いられる半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−221734(P2006−221734A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34088(P2005−34088)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】