説明

ディスクブレーキおよびディスクブレーキ用アクチュエータ

【課題】構造を簡素化できるディスクブレーキおよびディスクブレーキ用アクチュエータの提供。
【解決手段】ボールランプ機構62の固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間に、ボールランプ機構62の移動ランプ部材67の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキおよびディスクブレーキ用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制動用に用いられるディスクブレーキには、パーキングブレーキ兼用型のディスクブレーキがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表平3−503202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したディスクブレーキ、特にアクチュエータは、構造が複雑であった。
【0004】
したがって、本発明は、構造を簡素化できるディスクブレーキおよびディスクブレーキ用アクチュエータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のディスクブレーキは、固定ランプ部材とプッシュロッドとの間に、移動ランプ部材の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつプッシュロッドの直線運動を許容する回止機構が設けられている。
【0006】
また、本発明のディスクブレーキは、プッシュロッドが外径方向に突出する突起を有し、ボールランプ機構の固定ランプ部材が、前記プッシュロッドの突起と移動ランプ部材の回転方向で当接して前記プッシュロッドとの相対回転を規制しつつ、該プッシュロッドを直線運動で移動できるように案内する軸方向穴を有する。
【0007】
また、本発明のディスクブレーキ用アクチュエータは、前記固定ランプ部材と前記プッシュロッドとの間には、前記移動ランプ部材の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつ前記プッシュロッドの直線運動を許容する回止機構が設けられ、前記固定ランプ部材は、前記カバー部材の係止部が挿入・係止可能になっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0010】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態のディスクブレーキを示す側断面図である。図2は、第1実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。図3は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータを示すもので、(a)は側面図、(b)は側断面図である。図4は、第1実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB1矢視図、(c)は(a)のC1矢視図である。図5は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するプッシュロッドを示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)のB2矢視図である。図6は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB3矢視図、(c)は(a)のC3矢視図である。図7は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータの組立手順の前半を(a)〜(c)の順に示す側断面図である。図8は、第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータの組立手順の後半を(a)〜(c)の順に示す側断面図である。図9は、第1実施形態のディスクブレーキへのディスクブレーキ用アクチュエータの組付状況を(a),(b)の順に示す要部拡大側断面図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態のディスクブレーキ10は、車両の非回転部に固定される図示略のキャリアにディスク12を介して両側に配設された状態で摺動可能に支持される一対のパッド13と、キャリアにディスク12の軸線方向に沿って摺動自在となるよう支持されて一対のパッド13を両側から挟持するキャリパ14とで主に構成されている。
【0013】
キャリパ14は、シリンダ筒部15とシリンダ筒部15の一端を閉塞するシリンダ底部(底部)16とを有し一方のパッド13のディスク12に対し反対側にシリンダ開口部17を対向させる有底筒状のシリンダ18と、このシリンダ18の半径方向における一側からディスク12の外周部を跨いで延出するディスクパス部19と、このディスクパス部19のシリンダ18に対し反対側から他方のパッド13のディスク12に対し反対側に対向するように延出する爪部20とを有するキャリパ部材21を有している。シリンダ筒部15の内周面をボア22と呼ぶ。
【0014】
キャリパ部材21のシリンダ底部16には、ボア22の中央位置にボア22の軸線方向に沿って貫通する中央貫通穴26が形成されており、ボア22の半径方向におけるこの中央貫通穴26よりも外側位置にボア22側から所定深さ位置までピン穴27が形成されている。このピン穴27には、円柱状の回止ピン28が嵌合されている。また、中央貫通穴26は、主穴部29と、主穴部29のボア22側の端部に形成された大径穴部30とからなる段差状をなしている。シリンダ底部16の外側には、中央貫通穴26と同軸をなす円筒状部31と、円筒状部31から半径方向外方に延出する複数のリブ32とが形成されている。
【0015】
また、キャリパ部材21のシリンダ筒部15のボア22には、最もシリンダ底部16側に一定径の嵌合穴35が形成され、この嵌合穴35のシリンダ開口部17側の端部近傍には、嵌合穴35よりも大径の円環状のリング溝36が同軸状に形成されている。また、シリンダ筒部15のボア22には、リング溝36よりもシリンダ開口部17側に、嵌合穴35およびリング溝36よりも大径の中間穴37が同軸状に形成されており、この中間穴37よりもシリンダ開口部17側に、中間穴37よりも小径で嵌合穴35およびリング溝36よりも大径の摺動穴38が形成されている。さらに、シリンダ筒部15のボア22には、この摺動穴38のシリンダ開口部17側の端部近傍に、嵌合穴35よりも大径の円環状のシール溝39が同軸状に形成されており、このシール溝39よりもシリンダ開口部17側に、嵌合穴35よりも大径の円環状のブーツ溝40が同軸状に形成されている。シリンダ開口部17の位置には、テーパ状の面取り部41が形成されている
【0016】
また、キャリパ14は、筒部45と蓋部46とを有する有蓋筒状に形成されて蓋部46側をパッド13側に向けてキャリパ部材21のシリンダ18の摺動穴38に摺動可能に嵌合されるピストン47と、シリンダ18の上記したシール溝39に保持されて、ピストン47とシリンダ18のボア22との隙間をシールする円環状のピストンシール48と、一端がシリンダ18の上記したブーツ溝40に嵌合され、他端がピストン47の蓋部46側の外周部のブーツ溝49に嵌合された伸縮可能なブーツ50とを有している。ピストン47の蓋部46側には内外を貫通する抜穴51がブーツ溝49内に開口するように形成されており、この抜穴51を閉塞するようにブーツ50が取り付けられている。
【0017】
キャリパ14は、シリンダ18とピストン47との間に導入されるブレーキ液圧によって、ピストン47をシリンダ18の摺動穴38内で摺動させてシリンダ18からパッド13の方向に突出させることによって、このピストン47と爪部20とで一対のパッド13を両側から把持することにより円板状のディスク12にこれらパッド13を押圧するものである。
【0018】
一対のパッド13は、図示略のキャリアに保持されるとともにピストン47または爪部20で押圧される裏板55と、裏板55に接合されてディスク12に接触する摩擦材56とからなっている。そして、一対のパッド13は、裏板55にこれを覆うようにシム57が取り付けられており、シム57を介してピストン47または爪部20に当接する。
【0019】
上記のように、ピストン47は、ブレーキペダルへの踏み込み操作による通常制動時には、図示せぬマスタシリンダからシリンダ18内に導入されるブレーキ液圧でシリンダ18から爪部20の方向に突出させられることにより一対のパッド13をディスク12に押圧させて制動力を発生させるものであるが、シリンダ18内には、ピストン47をこのようなブレーキ液圧ではなく機械的に突出させることにより一対のパッド13をディスク12に押圧させて制動力を発生させるパーキングブレーキ機構61が設けられている。
【0020】
パーキングブレーキ機構61は、図2に示すように、シリンダ底部16の中央貫通穴26から一部を外側に突出させてキャリパ部材21のシリンダ18内に配置されるボールランプ機構62を有している。
【0021】
ボールランプ機構62は、シリンダ18内に配置されてシリンダ底部16に当接する固定ランプ部材65と、固定ランプ部材65のシリンダ底部16とは反対側に設けられたボール66と、ボール66を固定ランプ部材65との間に介装するように設けられた移動ランプ部材67とを有している。
【0022】
固定ランプ部材65は、鍛造で成形されるもので、シリンダ底部16に当接する円板状の底部71と、この底部71の外周縁部から軸線方向一側に全体として円筒状をなして一定高さ立ち上がる側壁部72とを有するカップ状に形成されている。図3および図4にも示すように、底部71には、その中央に軸線方向に貫通する貫通穴73が形成されており、また、貫通穴73と側壁部72との間位置にも軸線方向に貫通する回止穴(規制部,固定部)74が形成されている。さらに、底部71の底面には、図4(a)に示すように、貫通穴73および回止穴74とは異なる位置に、円周方向に深さが変わるランプ溝75が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)同心状に形成されている。
【0023】
ここで、回止穴74は、図2に示すように、シリンダ底部16のピン穴27に嵌合された回止ピン28を挿通させることになり、これにより、固定ランプ部材65は、シリンダ18に対して回り止めがなされる。つまり、固定ランプ部材65は、回止ピン28によってシリンダ底部16に回転不能に設けられ、言い換えれば、その回止穴74によってシリンダ18に対して回転方向の規制がなされ回転不能とされる。また、図4(a)に示すランプ溝75は、円周方向の中央部が最も深くボール66を保持可能な凹部75aとなっており、凹部75aの両側に円周方向に離れるほど深さが浅くなる傾斜部75bが形成されている。
【0024】
固定ランプ部材65は、側壁部72に、図4(b)に示すように、円周方向に一定幅で軸方向に延在し底部71とは反対側に抜ける形状の軸方向穴78が、図4(a)に示すように、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。また、円周方向に隣り合う軸方向穴78のすべての間位置には、図4(c)に示すように、鉤状穴(係止穴)79が形成されている。つまり鉤状穴79も軸方向穴78と同数の複数(具体的には三カ所)形成されている。
【0025】
鉤状穴79は、側壁部72の底部71とは反対側から軸方向に底部71の手前まで形成された軸方向穴(第1の穴)81と、この軸方向穴81に連続的に円周方向に隣接して側壁部72の軸方向の中間部に径方向に貫通形成された径方向穴(第2の穴)82とからなっている。言い換えれば、軸方向穴81は側壁部72の軸方向にて底部71とは反対側に抜ける形状をなし、径方向穴82は側壁部72の軸方向にて底部71とは反対側に抜けない形状をなしている。図4(a)に示すように、軸方向穴81それぞれが、ランプ溝75と対応して形成され、ランプ溝75に円周方向の位置を合わせて形成されている。
【0026】
図4(c)に示すように、上記した軸方向穴81および径方向穴82によって、鉤状穴79は、底部71とは反対側が円周方向に幅の狭い一定幅の幅狭部85とされ、底部71側がこの幅狭部85よりも円周方向に幅の広い一定幅の幅広部86とされており、また、幅広部86と幅狭部85とは側壁部75の円周方向における一側の位置を合わせており、逆側が段差状をなしている。これにより、側壁部75は、幅狭部85および幅広部86の連続する側と、軸方向穴78との間にあって固定ランプ部材65の軸線方向に立設された円周方向に一定幅の立壁部88と、幅広部86および幅狭部85の段差状をなす側における幅広部86と軸方向穴78との間にあって固定ランプ部材65の軸線方向に立設された円周方向に一定幅の立壁部89と、この立壁部89の底部71とは反対側の端部から幅広部86を一部覆うように円周方向に延出して幅狭部85を形成する係止延出壁部90とを有している。係止延出壁部90の立壁部89とは反対側の端部には、底部71の方向に突出する係止突出部91が形成されている。幅広部86の底面および係止延出壁部90の下面は、底部71の底面と平行をなしている。
【0027】
ここで、固定ランプ部材65において、鉤状穴79の底部71側の端部である幅広部86の底面の位置は、軸方向穴78の底部71の側の端部である底面の位置よりも底部71側になっている。また、固定ランプ部材65において、一定幅の立壁部88よりも、係止延出壁部90が上部に形成された立壁部89の方が底部71からの高さが高くなっており、係止延出壁部90の底部71側の端部である下面と、一定幅の立壁部88の底部71とは反対側の端部である上面との固定ランプ部材65の軸線方向における位置が一致している。さらに、鉤状穴79は、軸方向に穴形成した軸方向穴81がボール66の直径よりも大きくされており、ボール66は、側壁部72側からこの軸方向穴81を介して固定ランプ部材65内に挿入可能となっており、ボール66を、このように挿入することで、軸方向に穴形成した軸方向穴81に円周方向の位置を合わせて底部71に形成されたランプ溝75に短距離の移動で配置可能となっている。
【0028】
移動ランプ部材67は、図2および図3に示すように、軸部95と、軸部95の一端から軸部95と同軸をなして径方向に広がる円板部96とを有しており、円板部96の軸部95側の面には、ボール保持凹部97が形成されている。また、円板部96の軸部95とは反対側には、外径側に面取り部98が、中央に逃げ凹部99が形成されている。移動ランプ部材67の軸部95は、円板部96側が一定径の挿通部101とされ、挿通部101の円板部96とは反対側に円環状の嵌合溝102が形成され、この嵌合溝102よりも先端側に全周にわたってセレーション103が形成され、セレーション103よりもさらに先端側の端部にオネジ104が形成されている。
【0029】
この移動ランプ部材67は、図2に示すように、固定ランプ部材65のランプ溝75にボール66を配置した状態でボール66をボール保持凹部97に収容しつつ軸部95を固定ランプ部材65の貫通穴73に挿通させることになり、軸部95をさらにシリンダ底部16の中央貫通穴26に挿通させて、シリンダ底部16よりも外側に突出させる。ここで、シリンダ底部16の中央貫通穴26には、主穴部29および大径穴部30の主穴部29側に、一端にフランジ部107が形成されたカラー108がフランジ部107を大径穴部30の主穴部29側に当接させて嵌合されており、大径穴部30のフランジ部107よりボア22側にOリング109が嵌合されている。移動ランプ部材67は、軸部95の挿通部101においてこれらOリング109およびカラー108の内側に挿通されることになり、Oリング109が移動ランプ部材67とシリンダ18との隙間をシールする。
【0030】
移動ランプ部材67の軸部95の係合溝102、セレーションおよびオネジ104は、シリンダ18から外側に突出することになる。シリンダ18の円筒状部31の内側には軸カバー111が配置され、さらに、移動ランプ部材67の軸部95のセレーション103を嵌合させるように、板状のオペレーティング部材112が軸直交方向に取り付けられ、軸部95のオネジ104にナット113が螺合されている。オペレーティング部材112は、セレーション103によって移動ランプ部材67の軸部95に対して回転不可に嵌合することになり、ナット113が軸部95に締結されると、移動ランプ部材67に一体に固定される。ここで、軸カバー111は、シリンダ18の円筒状部31に嵌合される円筒状の基部115と、基部115の軸方向一端の内周側から先窄み形状で延出して軸部95の嵌合溝102に嵌合する内側カバー部116と、基部115の前記一端の外周側から先開き形状で延出してオペレーティング部材112のシリンダ18側の面に当接する外側カバー部117とからなっている。
【0031】
上記のようにして、オペレーティング部材112がシリンダ18の外側で移動ランプ部材67に一体に結合されることになり、運転室内に設けられたパーキングブレーキレバーまたはパーキングブレーキペダルからなる操作部材が操作され、オペレーティング部材112が回転入力を受けると、ボールランプ機構62は、このオペレーティング部材112に結合された移動ランプ部材67がオペレーティング部材112の回転に応じて回転することになる。そして、この移動ランプ部材67の回転に応じて、そのボール保持凹部97に保持されたボール66が固定ランプ部材65のランプ溝75を凹部75aから傾斜部75bに移動して移動ランプ部材67を軸線方向に直動作動させることになる。つまり、ボールランプ機構62は、オペレーティング部材112の回転運動を移動ランプ部材67の直動運動に変換する。なお、固定ランプ部材65の軸方向穴78は、固定ランプ部材65の開口側から、最もシリンダ底部16側に位置する移動ランプ部材67の円板部96と固定ランプ部材65の底部71との隙間の近傍まで延びて形成されている。より具体的に、固定ランプ部材65の軸方向穴78は、固定ランプ部材65の開口側から、最もシリンダ底部16側に位置する移動ランプ部材67の円板部96のシリンダ底部16側の面の位置まで延びている。
【0032】
パーキングブレーキ機構61は、シリンダ18内において、ボールランプ機構62の移動ランプ部材67の円板部96の軸部95とは反対側に配置される滑動円板121と、この滑動円板121を円板部96とで挟持するように、滑動円板121を介して円板部96に当接し、移動ランプ部材67の直動押圧力を受承してシリンダ18の軸線方向に移動するプッシュロッド122とを有している。つまり、プッシュロッド122は、シリンダ18内に配置されて、ボールランプ機構62の直線運動で同方向に移動する。なお、滑動円板121には中央に貫通穴120が形成されている。
【0033】
プッシュロッド122は、移動ランプ部材67の円板部96の軸部95とは反対の端面と略同径をなし、移動ランプ部材67の直動押圧力を滑動円板121を介して受承する円板状のフランジ部123と、フランジ部123の中央から移動ランプ部材67とは反対側に軸状に突出するネジ軸部(ネジ部)124とを有している。フランジ部123には、図5に示すように、その外周部から径方向外方(つまり外径方向)に突出する円周方向に一定幅の突起125が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。突起125は、図2に示すように、移動ランプ部材67の円板部96の面取り部98に沿うように、径方向外側ほどネジ軸部124とは反対側に位置するように傾斜する傾斜部126と、傾斜部126の先端から径方向に沿って外方に突出するスライド部127とを有している。また、プッシュロッド122には、フランジ部123の中央に、ネジ軸部124とは反対に突出する位置決め凸部128が形成されている。この位置決め凸部128は、移動ランプ部材67との間に滑動円盤121を挟持する際に、滑動円盤121の貫通穴120に嵌合されて移動ランプ部材67の逃げ凹部99に入り込み、滑動円盤121を中央に位置決めして保持する。なお、プッシュロッド122は、複数の突起125の傾斜部126が、移動ランプ部材67の面取り部98に沿っていることで、そのフランジ部123側がこの移動ランプ部材67と同軸を維持可能となっている。
【0034】
プッシュロッド122は、移動ランプ部材67の直動押圧力を受承することから、そのネジ軸部124が、移動ランプ部材67の直動押圧力を伝達して直動出力することになる。なお、このプッシュロッド122は、複数の突起125が、先端のスライド部127において固定ランプ部材65の複数の軸方向穴78に一対一で摺動可能に嵌合することになる。その結果、プッシュロッド122は、固定ランプ部材65に対して軸回りの回転が規制された状態となり、また、軸方向穴78をスライド部127が摺動することで軸方向に移動可能(つまり離間および近接可能)となっている。ここで、プッシュロッド122の複数の突起125と固定ランプ部材65の複数の軸方向穴78とが、固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間に設けられて、移動ランプ部材67の回転方向において互いに当接して固定ランプ部材65とプッシュロッド122との相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130を構成している。言い換えれば、固定ランプ部材65の複数の軸方向穴78は、プッシュロッド122の相対回転を規制しつつプッシュロッド122を直線運動できるように案内する。
【0035】
パーキングブレーキ機構61は、シリンダ18内に配置されてプッシュロッド122のネジ軸部124に、内径側に形成されたメネジ131で螺合される略円筒状のクラッチ部材132を有している。
【0036】
ここで、ピストン47の内径側は、蓋部46側が小径の小径内径部135とされるとともに、小径内径部135よりも開口側がこれより大径の中間内径部136とされており、さらに中間内径部136よりも開口側がこれより大径の大径内径部137とされている。小径内径部135および中間内径部136の間には、小径内径部135側から順に、小径内径部135と連続して中間内径部136側が大径となるように傾斜するテーパ面部139と、テーパ面部139の大径側より大径で円環段差状をなす段差部140と、段差部140と連続して中間内径部136側が大径となるように傾斜し中間内径部136に連続するテーパ面部141とが、小径内径部135および中間内径部136と同軸状に形成されている。
【0037】
また、ピストン47の内径側には、大径内径部137と段差部140とを繋ぐように、中間内径部136およびテーパ面部141を貫通する連通溝142が軸線方向に沿って形成されている。中間内径部136には、円環状の係止溝143が形成されており、小径内径部135の蓋部46側に上記した抜穴51が形成されている。
【0038】
クラッチ部材132は、先端側がピストン47の小径内径部135に嵌合する嵌合部147とされており、この嵌合部147と隣り合って径方向に延出するフランジ部148が形成されている。フランジ部148の嵌合部147側には、ピストン47のテーパ面部141に当接するテーパ部149が同軸状に形成されている。また、クラッチ部材132の嵌合部147には円環状のシール溝150が形成されている。このシール溝150には、リング状のクラッチ部材シール151が保持されている。このクラッチ部材シール151は、クラッチ部材132の嵌合部147とピストン47の小径内径部135との間の隙間をシールする。クラッチ部材132は、メネジ131が形成された内周部の嵌合部147側の端部が蓋体152で閉塞されている。
【0039】
ここで、ボールランプ機構62の移動ランプ部材67を回転運動させることにより、移動ランプ部材67をプッシュロッド122側に直動移動させると、移動ランプ部材67で押圧されてプッシュロッド122が軸線方向に直動移動し、このプッシュロッド122で押圧されてクラッチ部材132が軸線方向に直動移動して、クラッチ部材132がテーパ部149においてピストン47のテーパ面部141に当接してこのピストン47をシリンダ18に対しパッド13側に強制的に摺動させる。つまり、クラッチ部材132は、移動ランプ部材67の直動押圧力をピストン47に伝達する。
【0040】
なお、プッシュロッド122のネジ軸部124とクラッチ部材132のメネジ131とは、プッシュロッド122とクラッチ部材132との間に互いに回転せずに所定量軸方向に移動可能なクリアランスを有している。
【0041】
また、ピストン47の蓋部46側の上記した抜穴51は、ピストン47とクラッチ部材132との隙間を大気開放させるためのものである。
【0042】
パーキングブレーキ機構61は、シリンダ18内においてクラッチ部材132とプッシュロッド122との位置調整を行うアジャスト部155を有している。このアジャスト部155は、ピストン47の中間内径部136に形成された係止溝143に係止される止め輪156によってピストン47とクラッチ部材132のフランジ部148との間に支持されるもので、ピストン47がシリンダ18内に導入されたブレーキ液圧によって軸方向に移動する際には、実質的には停止状態にあるプッシュロッド122に対し、クラッチ部材132を回転させながらピストン47に追従させて軸方向に移動させる。また、アジャスト部155は、プッシュロッド122が軸線方向に直動する際には、クラッチ部材132をプッシュロッド122に対し回転させることがなく、その結果、ネジ軸部124とメネジ131とによってクラッチ部材132をプッシュロッド122と一体に直動させる。
【0043】
パーキングブレーキ機構61は、プッシュロッド122の一部を覆うように設けられたカバー部材160と、プッシュロッド122のフランジ部123とカバー部材160のピストン47側との間に介装されてプッシュロッド122をボールランプ機構62の方向に向けて付勢するプッシュロッド付勢スプリング(プッシュロッド付勢部材)161と、シリンダ18のリング溝36に嵌合されてカバー部材160をシリンダ18に係止してシリンダ開口部17の方向に移動規制する止め輪162とを有している。これらカバー部材160、プッシュロッド付勢スプリング161および止め輪162もシリンダ18内に配置されている。言い換えれば、カバー部材160は、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持する。
【0044】
カバー部材160は、内側にクラッチ部材132を挿入させるリング状底部165と、図6に示すように、このリング状底部165の外周端縁から軸線方向一側に延出する側壁部166とを有するカップ状をなしている。側壁部166は、リング状底部165に繋がる部分が軸方向に一定長さの円筒状をなす円筒基部170とされている。また、側壁部166には、この円筒基部170から円周方向に狭い一定幅でリング状底部165とは反対側に軸方向に沿って長く延出する長延出部171が、円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されており、長延出部171よりも短くかつ円周方向に広い一定幅で軸方向に沿ってリング状底部165とは反対側に延出する短延出部172が円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。
【0045】
ここで、カバー部材160には、円周方向に隣り合う長延出部171の一方に寄って短延出部172が形成されており、その結果、短延出部172の円周方向両側には、図6(b)に示すように、一方に、円周方向に狭い一定幅で軸線方向に沿って円筒基部170とは反対に抜ける形状の幅狭抜溝173が、他方に、幅狭抜溝173よりも円周方向に広い一定幅で軸線方向に沿って円筒基部170とは反対に抜ける形状の幅広抜溝174が形成されている。幅狭抜溝173も円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されており、幅広抜溝174も円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)形成されている。
【0046】
長延出部171のリング状底部165とは反対側の端部が径方向外側に折り曲げられて長位置係止部(第1の係止部)175となっており、短延出部172のリング状底部165とは反対側の端部も径方向外側に折り曲げられて短位置係止部(第2の係止部)176となっている。互いに周方向にずれて形成されている長位置係止部175および短位置係止部176は、いずれもリング状底部165と平行をなしている。なお、上記したように、長延出部171の延出長さは短延出部172の延出長さよりも長いことから、長延出部171の長位置係止部175のリング状底部165からの距離が短延出部172の短位置係止部176のリング状底部165からの距離よりも長くなっている。言い換えれば、長位置係止部175よりもカバー部材160のリング状底部165側に短位置係止部176が形成されている。さらに言い換えれば、カバー部材160においてリング状底部165とは反対側の開口側外周に長延出部171の長位置係止部175および短延出部172の短位置係止部176が、それぞれ円周方向に間隔をあけて複数カ所ずつ交互に形成されている。
【0047】
カバー部材160は、図2に示すように、短位置係止部176において、シリンダ筒部15のリング溝36に保持された止め輪162のシリンダ底部16側に係止されており、その結果、シリンダ開口部17方向への移動が規制されている。また、カバー部材160は、長延出部171の長位置係止部175が、固定ランプ部材65の鉤状穴79に挿入・係止可能となっている。具体的に、図4(c)に示すように、長延出部171の長位置係止部175は、固定ランプ部材65の鉤状穴79の径方向穴82内に配置されて、側壁部72の係止突出部91と立壁部89との間の係止延出壁部90に係止されるようになっている。鉤状穴79は、幅広部86の高さがカバー部材160の長位置係止部175の厚さよりも大きく、その結果、カバー部材160の長位置係止部175の係止状態から、長位置係止部175が固定ランプ部材65の底部71の方向に移動可能に形成されている。
【0048】
図2に示す、ボールランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160は、予め組み立てられてカートリッジ化された状態で、キャリパ部材21に組み込まれることになる。
【0049】
つまり、まず、図7(a)に示すように、固定ランプ部材65を底部71を下側にして配置し、図7(b)に示すように、固定ランプ部材65の底部71のランプ溝75にボール66を配置する。このとき、ボール66を、側方から、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴79の軸方向穴81を介して、軸方向穴81と円周方向に位置が合うランプ溝75に投入することになり、投入時のランプ溝75との高さの差を短くして跳ね上がり等を抑制する。ランプ溝75に投入されたボール66は自重で図4(a)に示す凹部75aに位置して停止する。
【0050】
次に、図7(c)に示すように上側から、移動ランプ部材67をその軸部95を下側にして固定ランプ部材65の側壁部72の内側に挿入し、軸部95を固定ランプ部材65の貫通穴73に挿通させ、ボール66上に円板部96を搭載する。そして、適宜移動ランプ部材67を回転させることで、ボール66をボール保持凹部97に嵌合させる。
【0051】
次に、図8(a)に示すように、滑動円板121を移動ランプ部材67の円板部96上に、逃げ凹部99に貫通穴120の位置を合わせて敷設した後、プッシュロッド122をフランジ部123側を下側にして、突起125のスライド部127を固定ランプ部材65の軸方向穴78に挿入し、また位置決め凸部128を貫通穴120および逃げ凹部99に挿入しながら、滑動円板121の上に搭載する。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、プッシュロッド122のネジ軸部124を内側に挿入させるようにしてプッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122のフランジ部123上に搭載する。
【0053】
次に、図8(c)に示すように、カバー部材160を、長位置係止部175および短位置係止部176を下側にして、側壁部166の内側にプッシュロッド122のネジ軸部124およびプッシュロッド付勢スプリング161を挿入し、プッシュロッド122のネジ軸部124をリング状底部165の内側に挿入するようにして被せる。
【0054】
以上のようにして、固定ランプ部材65に、ボール66、移動ランプ部材67、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、この順番で組み付け、図6に示す長延出部171の位相を、図4(c)に示す固定ランプ部材65の鉤状穴79の幅狭部85に合わせて、カバー部材160を固定ランプ部材65側に押圧し、図8(c)に示すプッシュロッド付勢スプリング161を縮長させながら、図6に示す長延出部171の長位置係止部175を、図4(c)に示す幅狭部85に挿入し、長位置係止部175が、係止突出部91よりも下側に位置したところで、カバー部材160を固定ランプ部材65に対して相対回転させて、長位置係止部175を幅広部86内で係止延出壁部90の鉛直下側に位置させて、押圧を解除する。
【0055】
すると、カバー部材160は、図4(c)および図8(c)に示すように、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力で長位置係止部175を係止延出壁部90に当接させる。これにより、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力でカバー部材160の長延出部171の長位置係止部175が、固定ランプ部材65の係止延出壁部90に当接した状態を維持することになり、固定ランプ部材65の鉤状穴79に係止されることになる。しかも、長位置係止部175は、図4(c)に示すように、固定ランプ部材65の係止突出部91および立壁部89で回転が規制されることになって、カバー部材160が固定ランプ部材65に取り付けられる。そして、この状態で、短延出部172の短位置係止部176の位相が、固定ランプ部材65の幅狭部85に合い、短延出部172の短位置係止部176が幅狭部85内に挿入可能となる。なお、上記の取り付けが可能となるように、長延出部171の長位置係止部175の位相を幅狭部85に合わせた状態で、短延出部172の短位置係止部176の位相は、高さの低い立壁部88に合うことになり、この立壁部88の高さは、長延出部171の長位置係止部175を幅狭部85に挿入して係止突出部91よりも下側に位置させてから短延出部172の短位置係止部176を当接させる高さとなっている。
【0056】
以上のアクチュエータ組立工程によって、ボールランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160が、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴79にカバー部材160の長位置係止部175を挿入・係止することで予め組み立てられてカートリッジ化される。このようにして、ボールランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160からなる、図8(c)および図3に示すアクチュエータアッシー(ディスクブレーキ用アクチュエータ)180が組み立てられる。
【0057】
次に、上記のアクチュエータ組立工程で組立体とされたアクチュエータアッシー180をキャリパ部材21のシリンダ18内に挿入する挿入工程を行う。この挿入工程では、図2に示すキャリパ部材21をシリンダ底部16を下側にして配置し、回止ピン28をピン穴27に嵌合し、カラー108およびOリング109を中央貫通穴26に配置する。そして、このキャリパ部材21のシリンダ18内に、シリンダ開口部17から、上記のアクチュエータアッシー180を、移動ランプ部材67の軸部95側を先頭にして挿入する。このとき、移動ランプ部材67の軸部95を中央貫通穴26のOリング109およびカラー108の内側に挿入し、固定ランプ部材65の回止穴74に回止ピン28を挿入することになり、その結果、固定ランプ部材65がシリンダ底部16に当接することになる。これにより、アクチュエータアッシー180がシリンダ18内に配置されることになる。このとき、図9(a)に示すように、アクチュエータアッシー180のカバー部材160の短位置係止部176がシリンダ筒部15のリング溝36と略同位置に位置することになる。
【0058】
次に、シリンダ18に止め輪162を装着する係止工程を行う。つまり、図2にしめすシリンダ開口部17から、止め輪162を挿入し、図9(b)に示すように、止め輪162でカバー部材160の短位置係止部176を押圧して、プッシュロッド付勢スプリング161を縮長させながらカバー部材160をシリンダ底部16側に若干押し込むと、止め輪162が、リング溝36に嵌合してシリンダ18に装着されるとともに、カバー部材160の短位置係止部176を係止することになる。このとき、短位置係止部176は、図4(c)に示すように、固定ランプ部材65の幅狭部85に位相が合っているため、この幅狭部85に入り込むことになって、固定ランプ部材65との干渉を回避して、カバー部材160の上記押し込みを許容することになる。このようにして、アクチュエータアッシー180が止め輪162によりシリンダから抜け止めされた状態となる。
【0059】
なお、図9(b)に示すように、カバー部材160は、上記した止め輪162のシリンダ12への係止工程によって、短位置係止部176が止め輪162に係止されることになり、この状態で、長位置係止部175を固定ランプ部材65の係止延出壁部90から止め輪162とは反対方向(固定ランプ部材65の底部71の方向)に移動させて離間させることになる。つまり、上記した係止工程は、固定ランプ部材65の鉤状穴79とカバー部材160の長位置係止部175との係止状態から、カバー部材160の長位置係止部175を固定ランプ部材62から浮かせ、長位置係止部175と鉤状穴79との係止状態を解除して、カバー部材160を、止め輪162を介してキャリパ部材21に係止する工程となる。図2に示すように、このようにカバー部材160が止め輪162でキャリパ部材21に係止された状態で、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力で、カバー部材160が止め輪162に押し付けられるとともに、プッシュロッド122が滑動円板121を介してボールランプ機構62の移動ランプ部材67に押し付けられ、移動ランプ部材67がボール66に、ボール66が固定ランプ部材65に、固定ランプ部材65がシリンダ底部16にそれぞれ押し付けられることになる。
【0060】
一方で、クラッチ部材シール151が装着されたクラッチ部材132をピストン47に嵌合させるとともに、アジャスト部155を止め輪156でピストン47に係止させることで、ピストン47、クラッチ部材132およびアジャスト部155を別のピストン組立体181としておく。
【0061】
そして、キャリパ部材21において、シリンダ開口部17から挿入したピストンシール48をシリンダ筒部15のシール溝39に嵌合させるとともに、ブーツ50の一側をシリンダ18のブーツ溝40に嵌合させてから、上記のピストン組立体181を、ピストン47の開口側を先頭にしてシリンダ筒部15の摺動穴38内に嵌合させ、そのクラッチ部材132のメネジ131にアクチュエータアッシー180のプッシュロッド122のネジ軸部124を螺合させる。これにより、ピストン組立体181がシリンダ18内に配置される。そして、ブーツ50の他側をピストン47のブーツ溝49に嵌合させる。
【0062】
また、これと前後して、シリンダ底部16の円筒状部31の内側に、軸カバー111を嵌合させてその内側カバー部116の先端をシリンダ底部16から突出する移動ランプ部材67の嵌合溝102に嵌合させる。そして、移動ランプ部材67のセレーション103にオペレーティング部材112を嵌合させた後にナット113をオネジ104に螺合させる。
【0063】
以上のようにして、キャリパ14が組み上がる。
【0064】
このような構成のディスクブレーキ10では、図示せぬパーキングブレーキレバーあるいはパーキングブレーキペダルが操作されることによりオペレーティング部材112が回転しボールランプ機構62の移動ランプ部材67が回転すると、移動ランプ部材67がボール66を固定ランプ部材65のランプ溝75内で移動させることになり、ボール66で押されて直動移動する。すると、移動ランプ部材67は、プッシュロッド122をその突起125のスライド部127を、シリンダ18に固定された固定ランプ部材65の軸方向穴78で移動させながら、シリンダ18に対し非回転でディスク12の方向に移動させる。すると、このプッシュロッド122と一体にクラッチ部材132が移動して、ピストン47をディスク12の方向に移動させて、機械的に一対のパッド13をディスク12に押し付ける。
【0065】
他方、通常のブレーキペダルによるブレーキ操作でブレーキ液圧がシリンダ18とピストン47との間に導入されると、ピストン47にはピストンシール48による受圧面積に対し液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生することになるが、クラッチ部材132にもクラッチ部材シール151による受圧面積に対し液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生し、初期においてはメネジ131およびプッシュロッド122のネジ軸部124における螺合のクリアランス分回転せずに軸線方向に移動してピストン47を押すことになる。
【0066】
そして、さらにブレーキ液圧がシリンダ18内に導入されて、所定液圧以上になると、クラッチ部材132へ作用する液圧でクラッチ部材132がピストン47に押し付けられることになり、ピストン47に液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生することになり、クラッチ部材132にも液圧が作用してディスク12の方向への推進力が発生することになる。
【0067】
ここで、ピストン47を押圧するための回転可能なクラッチ部材132を進退させるため、クラッチ部材132のメネジ131に対して螺合されるネジ軸部124を有するプッシュロッド122は、回転を規制した状態でキャリパ部材21に設ける必要がある。そして、上記した特許文献1においては、プッシュロッドの回転を、プッシュロッド付勢スプリングを覆うスプリングカバーで回り止めし、このスプリングカバーを固定ランプ部材に固定して回り止めし、さらに固定ランプ部材をキャリパ部材に対して回り止めすることで、プッシュロッドをキャリパ部材に対して回り止めしており、合計3カ所の回り止めが必要になって、構造が複雑になってしまっている。また、プッシュロッドの回り止めを板材からなるスプリングカバーで受けているため、回り止めとしての耐久性に懸念がある。また、スプリングカバーにプッシュロッド付勢スプリングの受けと、プッシュロッドの回止機構とを設けたため、ブレーキ液充填時にエアが抜け難くなっている。
【0068】
これに対して、第1実施形態によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間に、移動ランプ部材67の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられているため、プッシュロッド122をこの回止機構130で回り止めし、固定ランプ部材65(またはプッシュロッド122)をキャリパ部材21に回り止めすれば、合計2カ所の回り止めでプッシュロッド122および固定ランプ部材65をキャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0069】
また、ボールランプ機構62の厚肉の硬質部材からなる固定ランプ部材65に直接、相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられているため、スプリングカバーにプッシュロッドの回止機構を設けた場合と比べて、回り止めとしての耐久性を向上することができる。
【0070】
また、第1実施形態によれば、ボールランプ機構62、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴79にカバー部材160の長位置係止部175を挿入・係止することで組み立ててアクチュエータアッシー180とする工程と、このアクチュエータアッシー180をキャリパ14のシリンダ18内に挿入する工程と、シリンダ18に止め輪162を装着する工程と、カバー部材160の長位置係止部175と鉤状穴79との係止状態を解除して、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ14に係止する工程とを有するため、構造を簡素化できる上、組立作業も容易化することができる。
【0071】
また、第1実施形態によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78に、プッシュロッド122のフランジ部123の突起125が移動ランプ部材67の回転方向で当接して回り止めされることになり、カバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴79に、開口側外周に周方向に間隔をおいて配設された複数の長位置係止部175を挿入・係止することで、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持することになる。そして、このようにして、プッシュロッド122を回り止めした固定ランプ部材65(またはプッシュロッド122)をキャリパ部材21に回り止めすれば、合計2カ所の回り止めでプッシュロッド122および固定ランプ部材65をキャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0072】
また、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴79に、開口側外周に周方向に間隔をおいて配設された複数の長位置係止部175を挿入・係止することで、カバー部材160がプッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持することになるため、カバー部材160を固定ランプ部材65に加締めで取り付け必要がなくなり、取付品質が安定するとともに、製造コストを低減することができる。
【0073】
また、固定ランプ部材65に形成された軸方向穴78によって、プッシュロッド122の突起125が移動ランプ部材67の回転方向に回り止めされることになり、カバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、この固定ランプ部材65に形成された鉤状穴79に長位置係止部175を挿入・係止することで、カバー部材160がプッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持するため、カバー部材160はプッシュロッド付勢スプリング161を受けるのみとなり、カバー部材でプッシュロッド付勢スプリングを受けるとともにカバー部材にプッシュロッドの回止機構を設ける場合と比べて、ブレーキ液充填時にエアが抜け易くなる。
【0074】
以上、第1実施形態の詳細について説明したが、第1実施形態の作用効果を以下に示す。
【0075】
第1実施形態によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間には、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78と、プッシュロッド122のフランジ部123に形成されて軸方向穴78に入り込む突起125とを有し、移動ランプ部材67の回転方向においてこれらを互いに当接させることで相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられているため、プッシュロッド122を固定ランプ部材65に対して、この回止機構130で回り止めし、固定ランプ部材65をキャリパ部材21に回り止めすれば、合計2カ所の回り止めでプッシュロッド122をキャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0076】
また、ボールランプ機構62の厚肉の硬質部材からなる固定ランプ部材65の軸方向穴78で、突起125を入り込ませることにより相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130を直接構成するため、スプリングカバーにプッシュロッドの回止機構を設けた場合と比べて、回り止めとしての耐久性を向上することができる。しかも、カバー部材160はプッシュロッド付勢スプリング161を受けるのみとなり、カバー部材でプッシュロッド付勢スプリングを受けるとともにカバー部材にプッシュロッドの回止機構を設ける場合と比べて、ブレーキ液充填時にエアが抜け易くなる。
【0077】
また、回止機構130が、プッシュロッド122の移動ランプ部材67の押圧力を受承するフランジ部123から外径方向に突出する突起125と、固定ランプ部材65の側壁部72に形成されて、フランジ部123の突起125が挿入される軸方向穴78とからなるため、さらに簡素な構造で、プッシュロッド122の固定ランプ部材65に対する回り止めを行うことができる。
【0078】
また、軸方向穴78が、固定ランプ部材65の開口側から固定ランプ部材65の底部71と移動ランプ部材67との隙間の近傍まで延びて形成されているため、プッシュロッド122の軸方向移動を確実に案内することができる。
【0079】
また、カップ状に形成されたカバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、開口側外周に間隔をおいて設けられた複数の長位置係止部175において、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴79に挿入・係止されるため、カバー部材160を固定ランプ部材65に簡素な構造で係止することができ、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をカバー部材160とボールランプ機構62との間に簡素な構造で保持することになる。しかも、カバー部材160を固定ランプ部材65に加締めで取り付け必要がなくなり、取付品質が安定するとともに、製造コストを低減することができる。
【0080】
また、固定ランプ部材65の側壁部72に軸方向に穴形成した後に径方向に穴形成した鉤状穴79に、カバー部材160の長位置係止部175を係止するため、カバー部材160と固定ランプ部材65との相対回転を利用して簡単にカバー部材160を固定ランプ部材65に係止することができる。
【0081】
また、鉤状穴79は、カバー部材160の長位置係止部175の係止状態から長位置係止部175が固定ランプ部材65の底部71の方向に移動可能に形成されているため、カバー部材160を固定ランプ部材65の底部71の方向に移動させることで、カバー部材160の固定ランプ部材65への係止状態を解除することができる。
【0082】
また、第1実施形態によれば、オペレーティング部材112の回転運動を直線運動に変換するボールランプ機構62を構成し、シリンダ底部16に回転不能に設けられる固定ランプ部材65に軸方向穴78を設け、ピストン47に当接するクラッチ部材132を螺合させるプッシュロッド122のフランジ部123に外径方向に突出する突起125を設けており、軸方向穴78が、プッシュロッド122のフランジ部123の突起125と移動ランプ部材67の回転方向で当接して固定ランプ部材65とプッシュロッド122との相対回転を規制しつつ、プッシュロッド122を直線運動で移動できるように案内するため、プッシュロッド122を、固定ランプ部材65に対する突起125および軸方向穴78による回り止めと、固定ランプ部材65のキャリパ部材21への回り止めとの合計2カ所の回り止めで、キャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0083】
また、固定ランプ部材65が、ランプ溝75が形成される底部71と、軸方向穴78が形成される側壁部72と、シリンダ底部16の回止ピン28を嵌合させることでシリンダ18に対して回転不能に固定される回止穴74とを有するため、固定ランプ部材65を厚肉で硬質の形状に形成することができる。
【0084】
また、鉤状穴79の軸方向穴81は、ボール66よりも大きく形成されるとともに、ランプ溝75と対応して配置されているため、ボール66を、側方から、軸方向穴81を介して円周方向に位置が合うランプ溝75に投入することができ、投入時のランプ溝75との高さの差を短くして跳ね上がり等を抑制することができる。
【0085】
鉤状穴79の径方向穴82に配置されて固定ランプ部材65の側壁部72に係止可能な長位置係止部175と、長位置係止部175から周方向にずれて長位置係止部175よりもカバー部材160のリング状底部165側に形成される短位置係止部176とを有するため、止め輪162で短位置係止部176をシリンダ18に係止することにより、固定ランプ部材65に係止されていた長位置係止部175の係止を解除することができる。
【0086】
また、第1実施形態によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65、ボール66および移動ランプ部材67と、滑動円板121と、プッシュロッド122と、プッシュロッド付勢スプリング161と、カバー部材160とを、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴79にカバー部材160の長位置係止部175を挿入・係止することで組み立ててアクチュエータアッシー180とする工程と、このアクチュエータアッシー180をキャリパ14のシリンダ18内に挿入する工程と、シリンダ18に止め輪162を装着する工程と、カバー部材160の長位置係止部175と鉤状穴79との係止状態を解除して、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ14に係止する工程とを有するため、構造を簡素化できる上、組立作業も容易化することができる。
【0087】
また、鉤状穴79とカバー部材160の長位置係止部175との係止状態から長位置係止部175を固定ランプ部材65の底部71の方向に移動させて係止状態を解除するため、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ14に係止する工程によって、鉤状穴79と長位置係止部175との係止状態を解除することができる。
【0088】
また、アクチュエータアッシー180は、固定ランプ部材65に、ボール66、移動ランプ部材67、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、この順番で組み付け、固定ランプ部材65とカバー部材162とを相対回転させて、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴79にカバー部材160の長位置係止部175を係止するため、アクチュエータアッシー180を、さらに容易に組み立てることができる。
【0089】
また、固定ランプ部材65の側壁部72に軸方向穴79および鉤状穴79を設けることで、側壁部72の開口面積を広くできるため、ブレーキ液充填時のエア抜き性を向上することができる。
【0090】
また、カバー部材160の側壁部166に、幅狭抜溝173および幅広抜溝174を設けているため、これらを利用することで、カバー部材160を組み付け用の治具に容易に係止することができる。しかも、これらで側壁部166の開口面積を広くできるため、ブレーキ液充填時のエア抜き性を向上することができる。
【0091】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図10〜図13に基づいて説明する。
図10は、第2実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。図11は、第2実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB4矢視図、(c)は(a)のC4矢視図である。図12は、第2実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側断面図である。図13は、第2実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材および固定ランプ部材を示す断面図で、(a)はカバー部材を固定ランプ部材に係止した状態を示すもの、(b)はカバー部材の固定ランプ部材への係止を解除した状態を示すものである。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0092】
図10に示す第2実施形態においても、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間には、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78とプッシュロッド122のフランジ部123に形成されて軸方向穴78に入り込む突起125とを有し、移動ランプ部材67の回転方向においてこれらを互いに当接させることで相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられている。
【0093】
そして、第2実施形態においては、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65の一部と、カバー部材160の一部とが第1実施形態に対して相違している。
【0094】
第2実施形態の固定ランプ部材65も、鍛造で成形されるもので、図11に示すように、第1実施形態と同様の貫通穴73、回止穴74およびランプ溝75が形成された底部71と、この底部71の外周縁部から軸線方向一側に全体として円筒状をなして一定高さ立ち上がる、第1実施形態とは若干異なる側壁部72とを有するカップ状に形成されている。
【0095】
側壁部72には、第1実施形態と同様に、円周方向に一定幅で軸方向に延在し底部71とは反対側に抜ける形状の軸方向穴78が形成されている。また、側壁部72の円周方向に隣り合うすべての軸方向穴78間位置には、第1実施形態とは異なる形状の鉤状穴(係止穴)200が形成されている。この鉤状穴200も軸方向穴78と同数の複数(具体的には三カ所)形成されている。
【0096】
鉤状穴200は、軸方向に穴形成した後に径方向に穴形成した形状をなしている。つまり、側壁部72の底部71とは反対側から軸方向に底部71の手前まで形成された軸方向穴(穴)201と、この軸方向穴201に円周方向に隣接して側壁部72の軸方向の中間部に径方向に貫通形成された径方向穴(穴)202とからなっている。言い換えれば、軸方向穴201は側壁部72の軸方向にて底部71とは反対側に抜ける形状をなし、径方向穴202は側壁部72の軸方向にて底部71とは反対側に抜けない形状をなしている。軸方向穴201は、側壁部72の底部71とは反対側の端部から径方向穴202における底部71側の端部の位置までが円周方向に幅が広い一定幅の幅広部204とされており、幅広部204よりも底部71側が円周方向に幅が狭い一定幅の幅狭部205とされている。
【0097】
上記軸方向穴201,202によって、側壁部75には、軸方向穴201の径方向穴202とは反対側と軸方向穴78との間に立壁部206が形成されることになり、軸方向穴201の径方向穴202側と軸方向穴78との間に立壁部207が形成されることになる。
【0098】
立壁部206は、底部71側に形成された、円周方向に広い一定幅の幅広壁部208と、幅広壁部208の底部71とは反対側に形成された円周方向に狭い一定幅の幅狭壁部209とを有しており、これら幅広壁部208と幅狭壁部209とが軸方向穴78側の位置を一致させ、軸方向穴201側の位置を段差状に異ならせている。
【0099】
立壁部207は、底部71側に形成された、円周方向に広い一定幅の幅広壁部210と、幅広壁部210の底部71とは反対側に形成された円周方向に狭い一定幅の幅狭壁部211と、幅狭壁部211の底部71とは反対側に形成された円周方向に広い一定幅の係止延出壁部212とを有しており、これら幅広壁部210と幅狭壁部211と係止延出壁部212とが軸方向穴78側の位置を一致させ、軸方向穴201,202側の位置を段差状に異ならせている。
【0100】
軸方向穴201の底面、幅広壁部208,210の上面および係止延出壁部212の下面は、底部71の底面と平行をなしている。
【0101】
ここで、固定ランプ部材65において、鉤状穴200の底部71側の端部である幅狭部205の底面の位置は、軸方向穴78の底部71の側の端部である底面の位置よりも底部71側となっている。また、固定ランプ部材65において、立壁部206と立壁部207との底部71からの高さは同じとなっている。
【0102】
カバー部材160は、図12に示すように、第1実施形態と同様のリング状底部165と、このリング状底部165の外周端縁から軸線方向一側に延出する、第1実施形態とは若干異なる側壁部166とを有するカップ状をなしている。側壁部166は、リング状底部165に繋がって軸方向に一定長さの円筒状をなす円筒基部230を主体として構成されており、この円筒基部230から円周方向に一定幅でリング状底部165とは反対側から径方向外側に折り曲げられた係止部231を円周方向の均等位置に複数(具体的には三カ所)有している。つまり、これら係止部231は、カバー部材160の開口側外周に間隔をおいて配設されており、リング状底部165と平行をなしている。係止部231の幅は、図11に示す固定ランプ部材65の鉤状穴200の幅広部204の幅よりも若干狭く、幅狭部205の幅よりも広くされている。
【0103】
図10に示すように、カバー部材160は、係止部231において、シリンダ筒部15のリング溝36に保持された止め輪162のシリンダ底部16側に係止されており、その結果、シリンダ開口部17方向への移動が規制されている。また、カバー部材160は、係止部231が、固定ランプ部材65の鉤状穴200に挿入・係止可能となっている。具体的に、係止部231は、固定ランプ部材65の鉤状穴200の径方向穴202を形成する係止延出壁部212に係止されるようになっている。
【0104】
第2実施形態においても、ボールランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160は、予め組み立てられてカートリッジ化された状態で、キャリパ部材21に組み込まれることになる。
【0105】
つまり、まず、第1実施形態と同様に、固定ランプ部材65を底部71を下側にして配置し、底部71のランプ溝75にボール66を配置して、移動ランプ部材67をその軸部95を固定ランプ部材65の貫通穴73に挿通させながら、ボール66上に円板部96を搭載する。
【0106】
次に、滑動円板121を移動ランプ部材67の円板部96上に敷設した後、プッシュロッド122をフランジ部123側を下側にして突起125のスライド部127を固定ランプ部材65の軸方向穴78に挿入し、また位置決め凸部128を貫通穴120および逃げ凹部99に挿入しながら、滑動円板121の上に搭載し、さらに、プッシュロッド122のネジ軸部124を内側に挿入させるようにしてプッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122のフランジ部123上に搭載する。
【0107】
次に、カバー部材160を、係止部231を下側にして、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161に被せる。
【0108】
そして、図12に示す係止部231の位相を、図11に示す固定ランプ部材65の鉤状穴200の幅広部204に合わせて、カバー部材160を固定ランプ部材65側に押圧し、プッシュロッド付勢スプリング161を縮長させながら、係止部231を幅広部204に挿入して、係止部231が幅広部204の底面に当接して停止したところで、カバー部材160を回転させて、図13(a)に示すように、係止部231を径方向穴202に挿入して、押圧を解除する。
【0109】
すると、図11(b)に示すように、係止部231が係止延出壁部212と幅広壁部210との間、つまり係止延出壁部212の鉛直下側に位置し、図10に示すプッシュロッド付勢スプリング161の付勢力で係止部231を係止延出壁部212に当接させる。これにより、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力でカバー部材160の係止部231が、固定ランプ部材65の係止延出壁部212に当接した状態を維持することになって、カバー部材160が固定ランプ部材65に取り付けられる。
【0110】
以上のアクチュエータ組立工程によって、ボールランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160が、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴200にカバー部材160の係止部231を挿入・係止することで予め組み立てられてカートリッジ化される。このようにして、ボールランプ機構62、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160からなるアクチュエータアッシー180が組み立てられる。
【0111】
次に、上記のアクチュエータ組立工程で組立体とされたアクチュエータアッシー180をキャリパ部材21のシリンダ18内に挿入する挿入工程を行う。この挿入工程では、第1実施形態と同様に、シリンダ底部16を下側にして配置されたキャリパ部材21に回止ピン28、カラー108およびOリング109を配置する。そして、このキャリパ部材21のシリンダ18内に、上記のアクチュエータアッシー180を挿入する。このときも、移動ランプ部材67の軸部95を中央貫通穴26のOリング109およびカラー108の内側に挿入し、固定ランプ部材65の回止穴74に回止ピン28を挿入することになり、その結果、固定ランプ部材65がシリンダ底部16に当接することになる。この時点では、アクチュエータアッシー180のカバー部材160の係止部231が、シリンダ筒部15のリング溝36のシリンダ底部16側の端部よりもシリンダ底部16側に位置することになる。
【0112】
次に、シリンダ18に止め輪162を装着する止め輪係止工程を行う。つまり、止め輪162をシリンダ開口部17からシリンダ18内に挿入してリング溝36に嵌合させる。このとき、上記位置関係から、止め輪162とアクチュエータアッシー180のカバー部材160とは離間している。
【0113】
次に、カバー部材160の係止部231と固定ランプ部材65の鉤状穴200との係止状態を解除して、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ部材21に係止するカバー部材係止工程を行う。つまり、アクチュエータアッシー180のカバー部材160をシリンダ底部16側に若干押圧しつつ回転させて、係止部231を、図13(b)に示すように、固定ランプ部材65の径方向穴202から軸方向穴201の幅広部204側に移動させることで、係止延出壁部212つまり鉤状穴200から離脱させて係止状態を解除することになり、係止部231が立壁部206の幅狭壁部209に当接した時点で押圧を解除する。すると、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力でカバー部材160が、その係止部231を固定ランプ部材65の幅広部204内で移動させながら、シリンダ底部16とは反対側に移動して、図10に示すように係止部231を止め輪162に当接させることで停止する。その結果、リング溝36に嵌合する止め輪162が、カバー部材160の係止部231を係止することになる。これにより、カバー部材160の係止部231が固定ランプ部材62から抜けてカバー部材160が固定ランプ部材62から離脱した状態となり、しかも、アクチュエータアッシー180が止め輪162によりシリンダから抜け止めされた状態となる。
【0114】
この状態で、プッシュロッド付勢スプリング161の付勢力で、カバー部材160が止め輪162に押し付けられるとともに、プッシュロッド122が滑動円板121を介してボールランプ機構62の移動ランプ部材67に押し付けられ、移動ランプ部材67がボール66に、ボール66が固定ランプ部材65に、固定ランプ部材65がシリンダ底部16にそれぞれ押し付けられることになる。
【0115】
その後、第1実施形態と同様に、ピストンシール48をシリンダ筒部15のシール溝39に嵌合させるとともに、ブーツ50の一側をシリンダ18のブーツ溝40に嵌合させてから、ピストン組立体181をシリンダ筒部15内に嵌合させ、そのクラッチ部材132のメネジ131にアクチュエータアッシー180のプッシュロッド122のネジ軸部124を螺合させる。そして、ブーツ50の他側をピストンのブーツ溝49に嵌合させる。
【0116】
また、これと前後して、シリンダ底部16の円筒状部31の内側に、軸カバー111を嵌合させてその内側カバー部116の先端をシリンダ底部16から突出する移動ランプ部材67の嵌合溝102に嵌合させる。そして、移動ランプ部材67のセレーション103にオペレーティング部材112を嵌合させた後にナット113をオネジ104に螺合させる。
【0117】
第2実施形態のディスクブレーキ10によれば、第1実施形態と同様、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間には、移動ランプ部材67の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられているため、プッシュロッド122を固定ランプ部材65に対して、この回止機構130で回り止めし、固定ランプ部材65をキャリパ部材21に回り止めすれば、合計2カ所の回り止めでプッシュロッド122をキャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0118】
また、第2実施形態のディスクブレーキ10の製造方法によれば、ボールランプ機構62、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴200にカバー部材160の係止部231を挿入・係止することで組み立ててアクチュエータアッシー180とする工程と、このアクチュエータアッシー180をキャリパ14のシリンダ18内に挿入する工程と、シリンダ18に止め輪162を装着する工程と、カバー部材160の係止部231と鉤状穴200との係止状態を解除して、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ14に係止する工程とを有するため、構造を簡素化できる上、組立作業も容易化することができる。
【0119】
また、第2実施形態のアクチュエータアッシー180によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78に、プッシュロッド122のフランジ部123の突起125が移動ランプ部材67の回転方向で当接して回り止めされることになり、カバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、この固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴200に、開口側外周に周方向に間隔をおいて配設された複数の係止部231を挿入・係止することで、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持することになる。そして、このようにして、プッシュロッド122を回り止めした固定ランプ部材65をキャリパ部材21に回り止めすれば、合計2カ所の回り止めでプッシュロッド122をキャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0120】
以上に述べた第2実施形態によれば、ボールランプ機構62、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴200にカバー部材160の係止部231を挿入・係止することで組み立ててアクチュエータアッシー180とする工程と、このアクチュエータアッシー180をキャリパ14のシリンダ18内に挿入する工程と、シリンダ18に止め輪162を装着する工程と、カバー部材160の係止部231と鉤状穴200との係止状態を解除して、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ14に係止する工程とを有するため、構造を簡素化できる上、組立作業も容易化することができる。
【0121】
また、第2実施形態によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78に、プッシュロッド122のフランジ部123の突起125が移動ランプ部材67の回転方向で当接して回り止めされることになり、カバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴200に、開口側外周に周方向に間隔をおいて配設された複数の係止部231を挿入・係止することで、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持することになる。そして、このようにして、プッシュロッド122を回り止めした固定ランプ部材65をキャリパ部材21に回り止めすれば、合計2カ所の回り止めでプッシュロッド122をキャリパ部材21に対して回り止めすることができ、構造を簡素化できる。
【0122】
また、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴200に、開口側外周に周方向に間隔をおいて配設された複数の係止部231を挿入・係止することで、カバー部材160がプッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持することになるため、カバー部材160を固定ランプ部材65に加締めで取り付け必要がなくなり、取付品質が安定するとともに、製造コストを低減することができる。
【0123】
また、固定ランプ部材65に形成された軸方向穴78によって、プッシュロッド122の突起125が移動ランプ部材67の回転方向に回り止めされることになり、カバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、この固定ランプ部材65に形成された鉤状穴200に係止部231を挿入・係止することで、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をボールランプ機構62との間に保持するため、カバー部材160はプッシュロッド付勢スプリング161を受けるのみとなり、カバー部材でプッシュロッド付勢スプリングを受けるとともにカバー部材にプッシュロッドの回止機構を設ける場合と比べて、ブレーキ液充填時にエアが抜け易くなる。
【0124】
以上、第2実施形態の詳細について説明したが、第2実施形態の作用効果を以下に示す。
【0125】
第2実施形態によれば、カップ状に形成されたカバー部材160が、プッシュロッド付勢スプリング161をプッシュロッド122との間で保持しつつ、開口側外周に間隔をおいて設けられた複数の係止部231において、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された鉤状穴200に挿入・係止されるため、カバー部材160を固定ランプ部材65に簡素な構造で係止することができ、プッシュロッド122およびプッシュロッド付勢スプリング161をカバー部材160とボールランプ機構62との間に簡素な構造で保持することになる。しかも、カバー部材160を固定ランプ部材65に加締めで取り付け必要がなくなり、取付品質が安定するとともに、製造コストを低減することができる。
【0126】
また、固定ランプ部材65の側壁部72に軸方向に穴形成した後に径方向に穴形成した鉤状穴200に、カバー部材160の係止部231を係止するため、カバー部材160と固定ランプ部材65との相対回転を利用して簡単にカバー部材160を固定ランプ部材65に係止することができる。
【0127】
また、第2実施形態によれば、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65、ボール66および移動ランプ部材67と、滑動円板121と、プッシュロッド122と、プッシュロッド付勢スプリング161と、カバー部材160とを、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴200にカバー部材160の係止部231を挿入・係止することで組み立ててアクチュエータアッシー180とする工程と、このアクチュエータアッシー180をキャリパ14のシリンダ18内に挿入する工程と、シリンダ18に止め輪162を装着する工程と、カバー部材160の係止部231と鉤状穴200との係止状態を解除して、止め輪162を介してカバー部材160をキャリパ14に係止する工程とを有するため、構造を簡素化できる上、組立作業も容易化することができる。
【0128】
また、アクチュエータアッシー180のカバー部材160を回動させて、係止部231を固定ランプ部材65の鉤状穴200の径方向穴202から離脱させて係止状態を解除することになるため、係止部231の鉤状穴200からの離脱前に止め輪162をシリンダ18のリング溝36に装着でき、この装着作業を容易化することができる。
【0129】
また、アクチュエータアッシー180は、固定ランプ部材65に、ボール66、移動ランプ部材67、滑動円板121、プッシュロッド122、プッシュロッド付勢スプリング161およびカバー部材160を、この順番で組み付け、固定ランプ部材65とカバー部材162とを相対回転させて、固定ランプ部材65の側壁部72の鉤状穴200にカバー部材160の係止部231を係止するため、アクチュエータアッシー180を、さらに容易に組み立てることができる。
【0130】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図14〜図15に基づいて説明する。
図14は、第3実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。図15は、第3実施形態のディスクブレーキを構成するキャリパ部材を示す図14のX−X断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0131】
図14に示す第3実施形態においても、ボールランプ機構62の固定ランプ部材65とプッシュロッド122との間には、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78とプッシュロッド122のフランジ部123に形成されて軸方向穴78に入り込む突起125とを有し、移動ランプ部材67の回転方向においてこれらを互いに当接させることで相対回転を規制しつつプッシュロッド122の直線運動を許容する回止機構130が設けられている。
【0132】
そして、第3実施形態においては、第1実施形態に対して、固定ランプ部材65をキャリパ部材21に対して回り止めする構造が異なっている。つまり、第1実施形態において、固定ランプ部材65をキャリパ部材21に対して回り止めするために設けられていた、シリンダ底部16のピン穴27、回止ピン28および固定ランプ部材65の回止穴74は第3実施形態では設けられていない。そのかわりに、シリンダ筒部15の嵌合穴35の内周部に、半径方向外方に凹み、軸線方向に延在して中間穴37側に抜ける回止溝240が図15に示すように円周方向に等間隔で複数(具体的には三カ所)形成され、図14に示すプッシュロッド122の回止機構130を構成する突起125のスライド部127が、固定ランプ部材65の軸方向穴78に摺動自在に嵌合するとともに、固定ランプ部材65よりも半径方向外方まで突出する回止凸部241においてキャリパ部材21の回止溝240にも摺動自在に嵌合している。
【0133】
つまり、プッシュロッド122のフランジ部123から外径方向に突出する突起125が、そのスライド部127において固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78に入り込む。その結果、突起部125のスライド部127がこの軸方向穴78に移動ランプ部材67の回転方向において当接して軸方向穴78との相対回転を規制しつつ軸方向穴78に沿って移動することになる。これにより、プッシュロッド122は、固定ランプ部材65に対する相対回転が規制された状態で軸方向の直線運動が許容される。これと同時に、突起部125の回止凸部241が、シリンダ筒部15に形成された回止溝240にも入り込むことになり、回止凸部241は、この回止溝240に移動ランプ部材67の回転方向において当接して回止溝240との相対回転を規制しつつ回止溝240に沿って移動することになる。これにより、プッシュロッド122は、シリンダ18に対する相対回転が規制された状態で軸方向の直線運動が許容される。つまり、プッシュロッド122の移動ランプ部材67の押圧力を受承するフランジ部123から外径方向に突出する突起125、固定ランプ部材65の軸方向穴78およびシリンダ18の回止溝240は、プッシュロッド122の軸方向移動を許容しつつ、プッシュロッド122のシリンダ18に対する回転方向の規制を行なうとともに、固定ランプ部材65のシリンダ18に対する回転方向の規制をも行なうことになる。
【0134】
第3実施形態では、第1実施形態と同様のアクチュエータ組立工程で組立体とされたアクチュエータアッシー180をキャリパ部材21のシリンダ18に挿入して組み付ける組付工程において、キャリパ部材21をシリンダ底部16を下側にして配置し、カラー108およびOリング109を中央貫通穴26に配置する。そして、このキャリパ部材21のシリンダ18内に、シリンダ開口部17から、上記のアクチュエータアッシー180を、移動ランプ部材67の軸部95側を先頭にして挿入する。このとき、移動ランプ部材67の軸部95を中央貫通穴26のOリング109およびカラー108の内側に挿入し、プッシュロッド122の固定ランプ部材65よりも径方向に突出するスライド部127の回止凸部241をシリンダ18の回止溝240に挿入して、固定ランプ部材65をシリンダ底部16に当接させることになる。以降は、第1実施形態と同様である。
【0135】
このような構成の第3実施形態のディスクブレーキ10では、図示せぬパーキングブレーキレバーあるいはパーキングブレーキペダルが操作されることによりオペレーティング部材112が回転しボールランプ機構62の移動ランプ部材67が回転すると、ボールランプ機構62の移動ランプ部材67がボール66を固定ランプ部材65のランプ溝75内で移動させることになり、ボール66で押されて直動移動する。すると、移動ランプ部材67は、プッシュロッド122をその突起125のスライド部127を固定ランプ部材65の軸方向穴78で、突起125の回止凸部241をシリンダ18の回止溝240で、それぞれ移動させながら、シリンダ18に対して非回転でディスク12の方向に移動させる。すると、このプッシュロッド122と一体にクラッチ部材132が移動して、ピストン47をディスク12の方向に移動させて、機械的に一対のパッド13をディスク12に押し付ける。
【0136】
以上、第3実施形態の詳細について説明したが、第3実施形態の作用効果を以下に示す。
【0137】
プッシュロッド122のフランジ部123から外径方向に突出する突起125が、固定ランプ部材65の側壁部72に形成された軸方向穴78に挿入されて固定ランプ部材65に対するプッシュロッド122の回り止めを行う回止機構130を構成するとともに、シリンダ18に対しても回転方向の規制を行なうことになる。したがって、回止ピンの分、部品点数を減らすことができ、また、シリンダ底部16へのピン穴の加工、ピン穴へ回止ピンの嵌合、および固定ランプ部材65への回止穴の加工が不要になるため、製造コストも低減することができる。また、シリンダ底部16の回止ピンに固定ランプ部材65の回止穴を嵌合させる場合と比べて、目視での位置決めが比較的容易で、組付作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを示す側断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータを示すもので、(a)は側面図、(b)は側断面図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB1矢視図、(c)は(a)のC1矢視図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを構成するプッシュロッドを示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)のB2矢視図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB3矢視図、(c)は(a)のC3矢視図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータの組立手順の前半を(a)〜(c)の順に示す側断面図である。
【図8】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキを構成するディスクブレーキ用アクチュエータの組立手順の後半を(a)〜(c)の順に示す側断面図である。
【図9】本発明に係る第1実施形態のディスクブレーキへのディスクブレーキ用アクチュエータの組付状況を(a),(b)の順に示す要部拡大側断面図である。
【図10】本発明に係る第2実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。
【図11】本発明に係る第2実施形態のディスクブレーキを構成する固定ランプ部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB4矢視図、(c)は(a)のC4矢視図である。
【図12】本発明に係る第2実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図13】本発明に係る第2実施形態のディスクブレーキを構成するカバー部材および固定ランプ部材を示す断面図で、(a)はカバー部材を固定ランプ部材に係止した状態を示すもの、(b)はカバー部材の固定ランプ部材への係止を解除した状態を示すものある。
【図14】本発明に係る第3実施形態のディスクブレーキの要部を示す部分拡大側断面図である。
【図15】本発明に係る第3実施形態のディスクブレーキを構成するキャリパ部材を示す図14のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0139】
10 ディスクブレーキ
12 ディスク
13 パッド
14 キャリパ
16 シリンダ底部(底部)
18 シリンダ
21 キャリパ部材
47 ピストン
62 ボールランプ機構
65 固定ランプ部材
66 ボール
67 移動ランプ部材
71 底部
72 側壁部
74 回止穴(規制部,固定部)
75 ランプ溝
78 軸方向穴(軸方向穴)
79,200 鉤状穴(係止穴)
81 軸方向穴(第1の穴)
82 径方向穴(第2の穴)
112 オペレーティング部材
122 プッシュロッド
123 フランジ部
124 ネジ軸部(ネジ部)
125 突起
130 回止機構
132 クラッチ部材
161 プッシュロッド付勢スプリング(プッシュロッド付勢部材)
162 止め輪
160 カバー部材
175 長位置係止部(係止部,第1の係止部)
176 短位置係止部(係止部,第2の係止部)
180 アクチュエータアッシー(ディスクブレーキ用アクチュエータ)
201 軸方向穴(穴)
202 径方向穴(穴)
231 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを有底筒状のシリンダに摺動可能に嵌合させるとともに前記ピストンの摺動によって一対のパッドをディスクに押圧するキャリパと、
前記シリンダの底部に回転不能に設けられる固定ランプ部材と、回転入力を受けるオペレーティング部材に結合されて該オペレーティング部材の回転に応じて回転しつつ直動作動する移動ランプ部材と、これら固定ランプ部材と移動ランプ部材との間に設けられるボールとを有するボールランプ機構と、
前記移動ランプ部材の直動押圧力を受承し、該移動ランプ部材の直動押圧力を前記ピストンに伝達するクラッチ部材が螺合されるネジ部を有するプッシュロッドと、
該プッシュロッドを前記ボールランプ機構に向けて付勢するプッシュロッド付勢部材と、
該プッシュロッド付勢部材を前記プッシュロッドとの間で保持するためのカバー部材と、を備え、
前記固定ランプ部材と前記プッシュロッドとの間には、前記移動ランプ部材の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつ前記プッシュロッドの直線運動を許容する回止機構が設けられていることを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記プッシュロッドは、前記移動ランプ部材の直動押圧力を受承するフランジ部と、該フランジ部から外径方向に突出する突起とを有し、
前記固定ランプ部材は、ランプ溝が形成される底部と、前記フランジ部の突起が挿入される軸方向穴が形成される側壁部と、前記シリンダに対して回転方向の規制を行なう規制部とを有し、
前記回止機構は、前記突起と前記軸方向穴とからなることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記軸方向穴は、前記固定ランプ部材の開口側から該固定ランプ部材の底部と前記移動ランプ部材との隙間の近傍まで延びて形成されていることを特徴とする請求項2に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記カバー部材は、カップ状に形成されて開口側外周に間隔をおいて複数の係止部が設けられ、
前記固定ランプ部材の側壁部には、前記係止部を係止可能な係止穴が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記係止穴は、軸方向に形成した第1の穴と該第1の穴に連続して径方向に形成した第2の穴とを有する鉤状穴となっていることを特徴とする請求項4に記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記鉤状穴は、前記カバー部材の係止部を、係止状態から前記固定ランプ部材の底部方向に移動可能となるように収容していることを特徴とする請求項5に記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記プッシュロッドは、前記移動ランプ部材の直動押圧力を受承するフランジ部と、該フランジ部から外径方向に突出して前記シリンダに形成された軸方向に延在する回止溝に嵌合し軸方向の直線運動が可能で回転方向の規制を行なう突起とを有し、
前記固定ランプ部材は、ランプ溝が形成される底部と、前記フランジ部の突起が挿入される軸方向穴が形成される側壁部とを有し、
前記回止機構は、前記突起と前記軸方向穴とからなることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
ピストンを有底筒状のシリンダに摺動可能に嵌合させるとともに前記ピストンの摺動によって一対のパッドをディスクに押圧するキャリパと、
前記シリンダ内に配置されるとともに、オペレーティング部材の回転運動を直線運動に変換するボールランプ機構と、
前記シリンダ内に配置され、前記ボールランプ機構の直線運動で該ボールランプ機構と同方向に移動するプッシュロッドと、
前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッドに螺合されるとともに前記ピストンに当接し、前記プッシュロッドで押圧されて前記ピストンを前記シリンダに対し強制的に摺動させるクラッチ部材と、
前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッドを前記ボールランプ機構の方向に付勢するプッシュロッド付勢部材と、
前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッド付勢部材を前記プッシュロッドとの間で保持するカバー部材と、
を備えたディスクブレーキにおいて、
前記ボールランプ機構は、前記シリンダの底部に回転不能に設けられる固定ランプ部材と、前記オペレーティング部材に結合されて該オペレーティング部材の回転に応じて回転しつつ直動作動する移動ランプ部材と、これら移動ランプ部材と固定ランプ部材との間に設けられるボールとを有し、
前記プッシュロッドは、前記移動ランプ部材の押圧力を受承するフランジ部と、該フランジ部から外径方向に突出する突起と、前記クラッチ部材が螺合されるネジ部とを有し、
前記ボールランプ機構の固定ランプ部材は、前記プッシュロッドのフランジ部の突起と前記移動ランプ部材の回転方向で当接して前記プッシュロッドの相対回転を規制しつつ、該プッシュロッドを直線運動で移動できるように案内する軸方向穴を有することを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項9】
前記固定ランプ部材は、ランプ溝が形成される底部と、前記軸方向穴が形成される側壁部と、前記シリンダに対して回転不能に固定される固定部とを有することを特徴とする請求項8に記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記カバー部材は、カップ状に形成されて開口側外周に間隔をおいて複数の係止部が設けられ、
前記固定ランプ部材の側壁部には、軸方向に形成した第1の穴と該第1の穴に連続して径方向に形成され前記係止部を係止可能な第2の穴とを有する鉤状穴が形成されていることを特徴とする請求項9に記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
前記鉤状穴は、前記ボールよりも大きく形成されるとともに、前記ランプ溝と対応して配置されていることを特徴とする請求項10に記載のディスクブレーキ。
【請求項12】
前記鉤状穴は、前記カバー部材の係止部を係止状態から前記固定ランプ部材の底部方向に移動可能となるように収容していることを特徴とする請求項10または11に記載のディスクブレーキ。
【請求項13】
前記複数の係止部は、前記鉤状穴の第2の穴に配置されて前記固定ランプ部材の側壁部に係止可能な第1の係止部と、該第1の係止部から周方向にずれて該第1の係止部よりも前記カバー部材の底部側に形成される第2の係止部とを有することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載のディスクブレーキ。
【請求項14】
回転入力を受けるオペレーティング部材に結合されて該オペレーティング部材の回転に応じて回転しつつ直動作動する移動ランプ部材と、ランプ溝が形成される底部と側壁部とを有するカップ状の固定ランプ部材と、これら移動ランプ部材と固定ランプ部材との間に設けられるボールとを有するボールランプ機構と、
前記移動ランプ部材の直動押圧力を受承して直動出力するプッシュロッドと、
該プッシュロッドを前記ボールランプ機構の方向に付勢するプッシュロッド付勢部材と、
カップ状に形成されて開口側外周に周方向に間隔をおいて複数の係止部が設けられ、前記プッシュロッド付勢部材を前記プッシュロッドとの間で保持するためのカバー部材と、を備え、
前記固定ランプ部材と前記プッシュロッドとの間には、前記移動ランプ部材の回転方向において互いに当接して相対回転を規制しつつ前記プッシュロッドの直線運動を許容する回止機構が設けられ、
前記固定ランプ部材は、前記カバー部材の係止部が挿入・係止可能になっていることを特徴とするディスクブレーキ用アクチュエータ。
【請求項15】
前記プッシュロッドは、前記移動ランプ部材の直動押圧力を受承するフランジ部と、該フランジ部から外径方向に突出する突起とを有し、
前記固定ランプ部材は、ランプ溝が形成された底部と、前記フランジ部の突起が挿入される軸方向穴が形成される側壁部と、前記シリンダに対して回転方向の規制を行なう規制部とを有し、
前記回り止め機構は、前記突起と前記軸方向穴とからなることを特徴とする請求項14に記載のディスクブレーキ用アクチュエータ。
【請求項16】
前記軸方向穴は、前記固定ランプ部材の開口側から該固定ランプ部材の底部と前記移動ランプ部材との隙間の近傍まで延びて形成されていることを特徴とする請求項15に記載のディスクブレーキ用アクチュエータ。
【請求項17】
前記固定ランプ部材には、前記カバー部材の係止部が挿入・係止可能な鉤状穴が形成されている請求項15または16に記載のディスクブレーキ用アクチュエータ。
【請求項18】
前記鉤状穴は、前記カバー部材の係止部を、係止状態から前記固定ランプ部材の底部方向に移動可能となるように収容していることを特徴とする請求項17に記載のディスクブレーキ用アクチュエータ。
【請求項19】
前記固定ランプ部材と前記カバー部材とを相対回転させて、前記固定ランプ部材の側壁部の鉤状穴に前記カバー部材の係止部を係止することを特徴とする請求項17または18に記載のディスクブレーキ用アクチュエータ。
【請求項20】
前記カバー部材は、カップ状に形成されて開口側外周に間隔をおいて配設された複数の係止部が設けられ、
前記鉤状穴は、軸方向に形成された第1の穴と該第1の穴に連続して径方向に形成された第2の穴とを有することを特徴とする請求項17乃至19のいずれか一項に記載のディスクブレーキ用アクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−54038(P2010−54038A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222838(P2008−222838)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】