説明

ディスプレイ用ガラス基板

【課題】本発明の目的は、製造時における薬品処理や熱処理の際にAlまたはAl合金からなる配線が腐食したり断線したりしにくいディスプレイ用ガラス基板、ディスプレイの製造方法およびディスプレイを提供することである。
【解決手段】本発明のディスプレイ用ガラス基板は、質量%表示で、SiO2 50〜70%、Al23 5〜20%、B23 5〜20%、アルカリ土類金属酸化物 4〜30%の成分を含有するディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とし、また、表面にAlまたはAl合金からなる配線が形成されるディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル、電界放射型ディスプレイパネルなどに使用されるディスプレイ用ガラス基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)は、軽量、薄型、高精細、低消費電力などの優れた特長から、ノートパソコン、モニター、テレビ、カーナビなど様々な用途に液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、電界放射型ディスプレイ(FED)などが用いられている。これらのディスプレイは、主にガラス基板を用いてディスプレイパネルが形成され、1枚のパネル内に数万〜数千万の画素を有する。
【0003】
LCDやOELDは、各画素の配線電極や駆動素子がONまたはOFFに制御されることによって画像が表示される。代表的な駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)のようなアクティブマトリックスタイプの素子があり、TFTには非晶質シリコン(a−Si)タイプと多結晶シリコン(p−Si)タイプの2種類ある(例えば、特許文献1参照。)。アクティブマトリックスタイプの素子を有するFPDは、今後さらなる高性能化とともに市場も急速に拡大するものと予測されている。
【0004】
また、FEDは、各画素部の蛍光体に電子線が照射されて画像が表示されるものであり、高画質で動画表示や視野角特性に優れていることから、特にテレビ用途で注目されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−158066号公報
【特許文献2】特開平11−120945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクティブマトリックス駆動タイプのLCD、あるいはOELDなどに用いられるガラス基板には多くの要求特性がある。
【0006】
例えば、TFTタイプのアクティブマトリックス液晶ディスプレイでは、ガラス基板上にCrからなる配線膜(Cr配線膜)や絶縁膜、透明導電膜(例えばITO膜)が成膜され、つづいて、アモルファスシリコンや多結晶シリコンからなるTFTがフォトリソグラフィ−エッチング工程を経てガラス基板上に形成される。この間にガラス基板はCr配線膜、絶縁膜、透明導電膜等を形成する際の薬品処理やTFTを形成する際に熱処理を受ける。耐薬品性、耐熱性、生産コスト等を考慮して、従来からディスプレイ用ガラス基板にはアルミノホウケイ酸系のガラスが使用されている。
【0007】
なお、Crは成膜しやすく、パターニングが容易でしかもガラス基板との接着強度が高いため、通常の配線膜に使用されている。しかし、Crは、環境に負荷を与える材料であるとともに、電気抵抗が大きく配線を細くしにくいという問題も有する。
【0008】
最近のフラットパネルディスプレイでは、ガラス基板に直接駆動回路を形成するいわゆるシステムオングラスが用いられるようになってきた。システムオングラスとは、ガラス基板上にシステムを駆動するためのLSIを直接形成するものであり、部品点数を少なくできることなどから、本体を小型化できるという利点がある。このようなディスプレイでは、ディスプレイを駆動するための半導体の非常に微細な配線が直接ガラス基板上に形成される。配線材料には、CrやITOよりも低抵抗で細線化した場合にも高速で信号を受送信することが可能なAlまたはAl合金が使用されるようになってきている。なお、Al合金とは、Alが主成分(60mol%以上)であって、AlとCu、Nd、Ta、Si、Ti等の元素との合金を指す。
【0009】
また、システムオングラス以外のTFT−LCDやTFT−OELDにおいても、これまでCr配線であったゲート線やドレイン線など素子を駆動するための配線もAlまたはAl合金によって形成されることが主流になりつつあり、しかもその線幅は近年の高精細化の要求から細くなる傾向にある。
【0010】
ところで、ガラス基板に形成される金属配線は、配線のパターニングの際に使用する薬品処理や、TFTを形成する際の熱処理等の外的刺激を受ける。しかし、Alはイオン化傾向が大きいため、酸やアルカリ等に侵食されやすいという問題がある。特に、システムオングラスの場合、配線が細く(数μm以下)なることが想定されるため、配線の腐食を抑制し、断線を防止する必要がある。
【0011】
本発明の目的は、製造時における薬品処理や熱処理の際にAlまたはAl合金からなる配線が腐食したり断線したりしにくいディスプレイ用ガラス基板、ディスプレイの製造方法およびディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、表面にAlまたはAl合金からなる配線(以下、Al配線と称す)が形成されたディスプレイ用ガラス基板について種々の検討を行なった。その結果、ガラスの清澄剤として添加されるほかに、ガラス原料の不純物として混入するハロゲン元素が、Al配線や絶縁膜等を形成する際に使用する薬品によって溶出したり、またはTFTを形成する際の熱処理によってガラス基板表面に移動したり、ガラス表面より一度揮発したりする。このことが、Al配線の腐食の原因であり、ガラス基板に含まれるハロゲン元素、特にフッ素と塩素の量を少なくすることによってAl配線の腐食や断線を防止できることを見いだし、本発明として提案するものである。
【0013】
すなわち、本発明のディスプレイ用ガラス基板は、質量%表示で、SiO2 50〜70%、Al23 5〜20%、B23 5〜20%、アルカリ土類金属酸化物 4〜30%の成分を含有するディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のディスプレイ用ガラス基板は、表面にAlまたはAl合金からなる配線が形成されるディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のディスプレイの製造方法は、AlまたはAl合金からなる配線がガラス基板上に形成されたディスプレイを製造するにあたり、質量%表示で、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であるディスプレイ用ガラス基板を用いることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明のディスプレイは、質量%表示で、SiO2 50〜70%、Al23 5〜20%、B23 5〜20%、アルカリ土類金属酸化物 4〜30%の成分を含有するディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であるディスプレイ用ガラス基板上にAlまたはAl合金からなる配線が形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のディスプレイ用ガラス基板は、ハロゲン元素の含有量が質量%換算で0.1%以下であるため、ハロゲン元素の溶出量も少なく、Al配線であっても製造時における薬品処理や熱処理の際に腐食や切断することなしに、TFT素子を含む配線構造やFED用途などに用いられる配線構造を製造することができる。なお、ハロゲン元素とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ガラス基板のハロゲン元素の含有量が質量%換算で0.1%よりも多いと、ガラス基板から溶出、もしくは拡散するハロゲン元素によって金属配線が腐食されやすい。ハロゲン元素の含有量は0.08%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。さらに、0.03%以下であることが好ましい。特に、フッ素や塩素はAl配線を腐食しやすいため、これらの成分の合量が0.05%以下であることが好ましい。
【0019】
ハロゲンの含有量を抑制するためには、ハロゲン元素の不純物が少ない原料を用いることおよびハロゲン元素を清澄剤または溶融促進剤などの添加剤として使用しないことが好ましい。ただし、ハロゲン元素の含有量を0%にしようとすると、製造コストが大きくなるため0.0001%以上含有させることが好ましい。
【0020】
また、本発明のディスプレイ用ガラス基板は、JIS R 3502に準拠する方法で測定したハロゲン溶出量が0.01mg/L以下であると、薬品処理の際にハロゲン元素が溶出しにくいため、配線を腐食しにくい傾向がある。好ましくは0.007mg/L以下であり、より好ましくは0.005mg/L以下である。
【0021】
本発明のディスプレイ用ガラス基板の組成は、以下に示す理由により限定した。
【0022】
本発明のガラスは、組成が質量%表示で、SiO2 50〜70%、Al23 5〜20%、B23 3〜20%、アルカリ土類金属酸化物 4〜30%を含有する。なお、アルカリ土類金属酸化物とはMgO、CaO、SrOおよびBaOを指す。
【0023】
SiO2は、ガラスを構成する骨格となる主成分であり、50%よりも少ないと充分な耐薬品性、および耐熱性が得られない傾向があり、70%より多くなると、ガラスの高温粘度が高くなり、溶解性が悪化する傾向があるとともに液相温度が高くなりガラスが失透しやすくなる。SiO2は、53〜67%であることが好ましく、55〜65%であることがより好ましい。
【0024】
Al23は、5%よりも少ないとガラスの歪点が低くなるため、耐熱性が得られない。20%よりも多いとガラスの液相温度が上昇して、液相粘度が低下し、耐失透性が悪化すると共に耐薬品性、特にフッ酸系の薬液に対する耐久性が悪化する傾向がある。Al23は、7〜19%であることが好ましく、10〜18%であることがより好ましい。
【0025】
23は、3%よりも少ないとガラスの粘性を充分に下げることが出来ず溶融性を高めることができない傾向があり、20%よりも多いとガラスの耐薬品性、特に耐酸性が低下するとともにガラスの歪点が低下し、十分な耐熱性が得られない。B23は、5〜17%であることが好ましく、6〜15%であることがより好ましい。
【0026】
アルカリ土類金属酸化物は、4%よりも少ないとガラスの粘性を充分に下げることが出来ず溶融性を高めることができない上、ガラスの液相温度が上昇し、液相粘度が低下するため板ガラスの成形がしにくくなる。一方、30%よりも多いと、ガラス中のSiO2の含有量が少なくなるため耐薬品性が悪化するとともに、ガラスの密度が増加する。主として薄型のディスプレイに使用される本発明のガラス基板においては軽量であることが求められるため、アルカリ土類金属酸化物が多すぎるとガラス基板重量の点から好ましくない。アルカリ土類金属酸化物は、5〜25%であることが好ましく、6〜20%であるとさらに好ましく、6〜15%であると最も好ましい。
【0027】
アルカリ土類金属酸化物の原料には、不純物としてハロゲン化物が含まれやすいためアルカリ土類金属酸化物の含有量が少ない方が好ましい。
【0028】
アルカリ土類金属酸化物のうち特に、CaOは、ガラスの溶融性を著しく高めることのできる成分であり、1〜15%であることが好ましい。1%よりも少ないと溶融性を高めにくく、15%よりも多いと失透が発生しやすい。また多く添加しすぎると耐薬品性、特にフッ酸系の薬液に対する耐久性が損なわれる傾向がある。CaOは、2〜12%であることが好ましく、3〜10%であることがより好ましい。
【0029】
MgOは、0〜5%であることが好ましい。5%よりも多いとガラスに失透が発生しやすくなるとともに耐薬品性、特にフッ酸系の薬液に対する耐久性が低下し、ガラス表面が白濁しやすくなる。MgOは、0〜4%であることが好ましく、0〜3%であることがより好ましい。
【0030】
また、SrOやBaOは、耐失透性を改善し、アルカリ土類金属酸化物の中では耐薬品性を悪化させない成分であるため0.1%以上含有させることが好ましい。しかし、多く含有させると著しく密度が増加するため、その含有量は合量で25%以下に抑えることが望ましい。また1〜20%の範囲内で含有させるとさらに好ましい。各々の好ましい含有量はBaO 0〜20%、SrO 0〜20%である。
【0031】
本発明のディスプレイ用ガラス基板においてはアクティブマトリックス素子などの駆動素子の劣化を抑制するため、また、薬品処理の際にガラスから溶出して、ガラスが白化し透明性が損なわれたり、耐候性を低下したりすることを抑制するため、アルカリ金属酸化物含有量が0.05質量%以下であると好ましい。好ましくは0.03%以下、望ましくは0.02%以下、より好ましくは0.01%以下である。なお、アルカリ金属酸化物は、Li2O、Na2OおよびK2Oを指す。
【0032】
本発明のディスプレイ用ガラス基板は、アルカリ溶出量が1.0mg以下であると、液晶材料等がアルカリによって劣化しにくい。好ましくは0.1mg以下、より好ましくは0.01mg以下である。なお、アルカリ溶出量は、JIS R 3502に基づく試験方法を適用することによって測定するものとする。
【0033】
その他の成分として、ガラスの特性に影響を与えない範囲で、ZnO、P25、Y23、Nb23、La23、TiO2等を5%まで含有させることができる。
【0034】
またZrO2はガラスの化学的耐久性を高める成分であり含有させることが可能であるが、多く含有すると液相温度が著しく悪化するためその含有量は5%以下、望ましくは3%以下、さらに望ましくは1%以下に抑えることが望ましい。
【0035】
また、清澄剤としてSb23、Sb25、As23、C、SO3、SnO2、Al、Si等を単独もしくは組み合わせて使用しても良い。ただしAs23は、毒性が非常に強い環境負荷化学物質であるため使用しないことが好ましい。
【0036】
このようなガラスは、ガラス原料を溶融炉で溶融し、オーバーフローダウンドロー法、スリットダウンドロー法、フロート法等の成形方法を用いてガラス基板を作製することができる。
【0037】
本発明において、Al配線をガラス基板上に形成する場合、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であるディスプレイ用ガラス基板を用いると、薬品処理や熱処理によって金属配線が腐食しにくい。
【0038】
以下にガラス基板上にAl配線を形成する方法の1つを例示する。
【0039】
まず、ガラス基板上にAl薄膜を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成する。
【0040】
次に、フォトレジスト膜にフォトマスクを介して紫外線または電子線を照射してパターニングを形成する。
【0041】
続いて、パターニングされなかったフォトレジスト膜を薬品処理により除去し、その後、エッチング液を用いて、フォトレジスト膜が除去された部分の金属薄膜をエッチングして、金属配線を形成する。
【0042】
最後に、金属配線の上に形成されているフォトレジスト膜を薬品処理により除去して金属配線されたガラス基板を作製する。
【0043】
なお、金属薄膜の形成にはスパッタ法、CVD法、PVD法等が使用可能である。
【0044】
このようにして作製された金属配線されたガラス基板は、配線が腐食されにくく、細線化が可能なため、LCD、OELD、FED、表面電解ディスプレイ(SED)等に用いることが可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
【0046】
表1は、本発明の実施例を示し、表2〜4は、腐食性の評価結果を示すものである。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
表1〜4に記載の試料は以下のようにして作製した。
【0052】
まず、表中の組成となるようにそれぞれ調製したガラス原料を白金ロジウム坩堝に投入し、攪拌機能を有する電気溶融炉内で、1600℃、20時間の条件でガラス原料を溶融した。
【0053】
次に、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出した後、徐冷して各試料を作製した。
【0054】
得られた試料について以下の方法で特性を評価した。
【0055】
ハロゲン含有量は、イオンクロマトグラフィーにより、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の含有量をF-、Cl-、Br-、I-として測定した。この分析法は、希薄な溶離液を移動層に使用し、粒子径が微細で、かつ交換容量の低いイオン交換体を固定相として、クロマト管内でイオン種成分などを展開遊離させ目的成分(イオン種)を電気伝導度検出器で検出する分析法である。イオンクロマトグラフィーの測定器は、DIONEX社(U.S.A)のものを使用した。
【0056】
密度は、JIS Z 8807に基づくアルキメデス法を用いて測定した。
【0057】
ヤング率は、JIS R 1602に基づく共振法によって測定した。
【0058】
比ヤング率は、測定したヤング率の値を密度測定値で除して算出した。
【0059】
ビッカース硬度は、JIS Z 2244−1992に基づいて測定した。
【0060】
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数として測定した。
【0061】
液相温度は、粒径300〜500μmに破砕した各ガラス試料を白金ボートに充填し、温度勾配炉内に24時間保持し、顕微鏡を用いて内部に結晶が析出した最も高い温度を測定値とした。
【0062】
歪点および徐冷点は、ASTM C 336−71に記載の方法に準じて測定した。
【0063】
軟化点は、ASTM C 338−93に記載の方法に準じて測定した。
【0064】
また、白金球引き上げ法を用いて粘度が104dPa・s、103dPa・sおよび102.5dPa・sとなる温度を測定した。102.5dPa・sとなる温度が低いほど溶融性に優れていることを示す。
【0065】
液相粘度は、各ガラス試料においてファルチャーの式に基づいた温度と粘度の対応曲線を作成し、各ガラス試料における液相温度に対応する粘度を指す。なお、液相粘度が大きいほど失透が起こりにくいので、所望の形状に成形しやすいことを意味する。
【0066】
Al膜の腐食は、以下のようにして評価した。
【0067】
まず、各ガラス試料から150φ×0.2mmのウエハー状の基板を加工して作製し、表面を光学研磨した。
【0068】
次に、スパッタ法により前記基板上に3000Åの膜厚でAl膜を形成した後、更にその上に100Åの膜厚でSiO2膜を形成した。
【0069】
つづいて、前記基板をオートクレーブ装置に入れ、130℃、100%、8時間の条件で保持し、その後基板中央部の膜の変化を目視で観察した。
【0070】
その結果、Al膜に明らかな凹凸や変形、変色が観察されたものを「×」、わずかに凹凸や変色が観察されたものを「△」、Al膜に変化が見られなかったものを「○」とした。
【0071】
表2〜4から明らかなように、試料9〜11、15〜17はAl膜に明らかな変形や変色が観察されたが、試料7、12、13、18、20〜23はAl膜に変化が見られず、試料8、14、および19はわずかに変色が観察されたが使用に耐えうるものであった。このことから、Al膜の腐食にはハロゲン元素が関与していることがわかる。
【0072】
よって、表1に記載の試料1〜6は、ハロゲン元素の含有量が0.005%未満であるため、Al膜を形成しても腐食されにくいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のディスプレイ用ガラス基板は、LCDやOELD、特にTFTを用いて駆動するディスプレイのように、AlまたはAl合金の配線を表面に形成するガラス基板として好適である。また、FEDやSED用のガラス基板としても好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%表示で、SiO2 50〜70%、Al23 5〜20%、B23 5〜20%、アルカリ土類金属酸化物 4〜30%の成分を含有するディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とするディスプレイ用ガラス基板。
【請求項2】
表面にAlまたはAl合金からなる配線が形成されるディスプレイ用ガラス基板であって、ハロゲン元素の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とするディスプレイ用ガラス基板。
【請求項3】
質量%表示で、SiO2 50〜70%、Al23 5〜20%、B23 5〜20%、アルカリ土類金属酸化物 4〜30%の成分を含有することを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ用ガラス基板。
【請求項4】
アルカリ金属酸化物の含有量が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス基板。
【請求項5】
ハロゲン元素の含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス基板。
【請求項6】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイまたは電解放射型ディスプレイに用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス基板。
【請求項7】
液晶ディスプレイパネルが薄膜トランジスタを用いて駆動されることを特徴とする請求項6に記載のディスプレイ用ガラス基板。
【請求項8】
AlまたはAl合金からなる配線がガラス基板上に形成されたディスプレイを製造するにあたり、請求項1〜6のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス基板を用いることを特徴とするディスプレイの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス基板上にAlまたはAl合金からなる配線が形成されてなることを特徴とするディスプレイ。

【公開番号】特開2007−39316(P2007−39316A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175508(P2006−175508)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】