説明

ディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム、それを具備するディスプレイ装置用フィルター及びその製造方法

【課題】ディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム、及びそれを具備したディスプレイ装置用フィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】透明樹脂材質の第1基材、該第1基材の少なくとも一面に形成された陰刻のメッシュパターン及び該陰刻のメッシュパターン内部に充填された導電性物質を含む電磁波遮蔽パターンを具備したディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムを提供する。また、透明基板の一面に第1硬化性樹脂を塗布するコーティング工程、前記第1硬化性樹脂上にメッシュ形態に陽刻されたパターンロ−ルを使用して前記第1硬化性樹脂の一面に陰刻パターンを形成しながら硬化させるパターン形成工程、前記陰刻パターンの内部に導電性物質を含む第2硬化性樹脂を充填する充填工程及び前記第2硬化性樹脂を硬化させる硬化工程を含むディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム、それを具備するディスプレイ装置用フィルター及びその製造方法に関するもので、より詳細には、製造工程が簡単で、電磁波遮蔽能を向上させることができるディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム、それを具備するディスプレイ装置用フィルター及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、テレビ、PC(ノートブックコンピュータ)のモニター、ポータブル表示装置などを総称した言葉であり、画面が大面積化及び薄型化される傾向にある。
【0003】
表示装置を代表していた陰極線管(Cathode Ray Tube:CRT)装置が、次第に液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)装置、電界放出表示装置(Field Emission Display:FED)及び有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display:OLED)などの平板表示装置(Flat Panel Display:FPD)に置き換わってきている。
【0004】
以下では、前記表示装置の中で説明の便宜上、PDPフィルター及びPDP装置を例にあげて説明するが、本発明はこれに限定されず、本発明のディスプレイ装置用フィルターが適用されるディスプレイ装置は、PDP装置、OLED装置、LCD装置または、FED装置などの大型ディスプレイ装置と、PDA(Personal Digital Assistants)、小型ゲーム機の表示窓、携帯電話の表示窓などの小型モバイルディスプレイ装置と、フレキシブルディスプレイ装置などに多様に適用され得る。
【0005】
PDP装置は、輝度、コントラスト、残像、視野角などの表示能力に優れていて脚光を浴びている。
【0006】
PDP装置は、電極に印加される直流または交流電圧によって電極間のガスで放電が発生して、それに伴う紫外線の放射によって蛍光体を励起させて発光することによって画像を表示する。
【0007】
しかし、前記PDP装置は、特性上、電磁波及び近赤外線の放出量が多いという問題点を有している。電磁波及び近赤外線は、人体に有害な影響を及ぼし、無線電話機やリモートコントローラーなどの精密器機の誤動作を誘発し得る。また、蛍光体の表面反射が大きくて、ヘリウム(He)またはキセノン(Xe)ガスから出るオレンジ色の光によってCRT装置に比べて色純度が良くないという問題点がある。
【0008】
したがって、PDP装置は、電磁波及び近赤外線を抑制して、反射を減少させて色純度を高めるためにPDPフィルターを採用している。PDPフィルターは、ディスプレイパネルの前方に設置される。PDPフィルターは、一般的に粘着剤または接着剤を使用して、電磁波遮蔽層、近赤外線遮蔽層、ネオンピーク吸収層(neon peak absorbing layer)のような複数の機能性層を粘着または接着することによって製造される。
【0009】
既存に商業化されている電磁波遮蔽層は、金属メッシュ(mesh)を使用する方法と透明な電気伝導性薄膜をコーティングする方法が使用されている。この中で金属メッシュを使用する方法には、大きく分けて、銅フィルム、すなわち、銅箔をポリエチレンテレフタレート(PET)などのフィルムに接合して、必要とする部分のみを残して残り部分をすべて露光と、エッチング工程を通じて除去してメッシュフィルムを得るエッチング方法と、印刷法によってメッキに必要な基底層を印刷してメッキ工程を通じて所望する厚さのメッシュフィルムを作る複合方法とがある。また最近では、ガラス上に直接導電性物質を印刷して電磁波遮蔽層を製造する直接印刷方法に関する研究も進行されている。
【0010】
前記エッチング方法によって製造されたメッシュの最大の問題点は、エッチング工程と露光工程の費用が高いという点、及び銅の90%以上をエッチングで除去しなければならないので材料費が高いという問題点がある。このような問題点のため印刷方式とメッキ工程を混合した方式である前記複合方法が開発されたが、エッチング方法に比べて精密な線を印刷することが難しいため、線幅が太くて視認性が悪く、不良率が高いので、エッチング方法に比べて制限的にのみ使用されているのが実情である。
【0011】
そして、直接印刷方法による電磁波遮蔽フィルムは、露光工程及びエッチング工程がないので費用的には安いが、均一な線幅を得ることが難しくて線幅は、10ないし20μmと細く、かつ印刷された線の厚さは3ないし10μmと厚い印刷物を得ることがとても難しいため、まだ製品として発売開始活用されていない。
【0012】
また、透明な電気伝導性薄膜をコーティングして電磁波遮蔽層を形成する方法は、金属メッシュを使用する方法に比べて現在のところ電磁波遮蔽量が落ちるという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記のような問題点を勘案したもので、線幅は細くて厚さが厚い線幅対比厚の大きいメッシュパターンを有する電磁波遮蔽フィルムを具備したディスプレイ装置用フィルターを提供することを目的とする。
【0014】
また本発明は、製造費用が安く製造工程が効率的で不良率を低めることができる、ディスプレイ装置用フィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
本発明が成そうとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及しなかったまた他の技術的課題は、下記の記述から当業者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、透明樹脂材質の第1基材、該第1基材の一面に形成された陰刻のメッシュパターン及び該メッシュパターン内部に充填された導電性物質を含む電磁波遮蔽パターンを含む電磁波遮蔽フィルムを具備する。
【0017】
本発明の他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記陰刻パターンの深さが3ないし30μm、幅は5ないし30μmで前記幅に対する前記深さの割合が0.3ないし3であることを特徴とする。
【0018】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記導電性物質が、i)コバルト、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、白金、金、パラジウム、チタン、鉄、スズ、インジウム、ニッケル、モリブデン、タングステン、銀及び銅からなる群から選択された少なくとも一つの金属を含む金属ペーストまたは、ii)酸化銅、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛及び酸化インジウム亜鉛からなる群から選択された少なくとも一つの金属酸化物粉末または、iii)ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリ3−アルキルチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレン)及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つの導電性高分子物質であることを特徴とする。また、前記導電性物質として、カーボンブラックなどを混合して黒化処理された金属ペーストを使用することができる。
【0019】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記電磁波遮蔽フィルム上に配置されて、透明樹脂材質の第2基材及び該第2基材の一面に形成された複数の楔型ホームにそれぞれ光吸収物質を充填して形成された外光遮蔽パターンからなる外光遮蔽層をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記外光遮蔽層の複数の楔型ホームに光吸収物質及び導電性物質が充填されたことを特徴とする。前記の導電性物質は、上述した本発明の電磁波遮蔽フィルム内に含まれた導電性物質と同種または異種であり得る。
【0021】
本発明のまた他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターは、前記第1基材の枠領域中の少なくとも一領域に導電性ペーストを印刷して形成された接地電極をさらに含むことを特徴とする。前記導電性ペーストには、シルバー(Ag)ペーストを使用することができる。
【0022】
本発明の一特徴によるディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムの製造方法は、透明基板の一面に第1硬化性樹脂を塗布するコーティング工程、該第1硬化性樹脂上にメッシュ形態に陽刻されたパターンロ−ルを使用して、前記第1硬化性樹脂の一面に陰刻パターンを形成しながら硬化させるパターン形成工程、前記陰刻パターンの内部に導電性物質を含む第2硬化性樹脂を充填する充填工程及び前記第2硬化性樹脂を硬化させる硬化工程とを含む。
【0023】
本発明の他の一特徴によるディスプレイ装置用フィルターの製造方法は、前記第1硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂で、前記第2硬化性樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるディスプレイ装置用フィルターは線幅対比厚が大きいメッシュパターンを有する電磁波遮蔽フィルムを具備することで、優れた電磁波遮蔽効能を発揮することができる。
【0025】
また本発明によるディスプレイ装置用フィルターは電磁波遮蔽フィルムのメッシュパターンの線幅が細くて均一で、ディスプレイの視認性を低下させる心配がない。
【0026】
また、本発明によるディスプレイ装置用フィルターの製造方法は、製造費用が安くて製造工程が効率的で不良率を低めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0028】
図示しなかったが、本発明の一実施例によるPDP装置は、ケース、ケースの上部を覆うカバー、ケース内に収容される駆動回路基板、ガス放電現象が起きる発光セルと蛍光体層を含むパネルアセンブリー及びPDPフィルターで構成される。発光セルには、放電ガスが封入されている。放電ガスとしては、例えば、Ne−Xe系ガス、He−Xe系ガスなどを使用することができる。パネルアセンブリーは、基本的に蛍光灯のような発光原理を有し、発光セルの内部での放電によって放電ガスから放出された紫外線がパネルアセンブリー内の蛍光体層を励起発光させて可視光に変換される。
【0029】
PDPフィルターは、パネルアセンブリーの前面基板前方に配置される。PDPフィルターは、パネルアセンブリーの前面基板と離隔して配置することもでき、接触して配置することもできる。また、パネルアセンブリーとPDPフィルターの間に異物が流入するなどの副作用を防止したり、PDPフィルター自体の強度を補強するために前面基板と接着剤または粘着剤で結合することができる。
【0030】
PDPフィルターは、透明基板上に導電性に優れた材料で形成された電磁波遮蔽層を具備し、この電磁波遮蔽層は、カバーを通じてケースに接地される。すなわち、パネルアセンブリーから発生した電磁波が視聴者に到逹する前に、PDPフィルターの電磁波遮蔽層を通じてカバーとケースに接地させるのである。
【0031】
図1は、本発明の一実施例によるPDPフィルターの断面図である。
【0032】
図1を参照すると、PDPフィルター100は、透明基板110及び多様な遮蔽機能を有する機能性層を含み、前記機能性層として、電磁波遮蔽フィルム120、粘着層、外光遮蔽層140、色補正層150及び反射防止層160を含む。本発明は、これに限定されず、前記機能性層は一つの層で複合的な機能を遂行することもでき、前記機能性層以外に保護フィルムや他の機能性層を含むこともできる。
【0033】
図1では、前記透明基板110を基準にする時、パネルアセンブリーに向いた方向、すなわちパネル入射光180が入ってくる方向に電磁波遮蔽フィルム120、粘着層、外光遮蔽層140及び色補正層150が配置されていて、前記基板110の他面、すなわち外部環境光190が入射する方向に反射防止層160が配置されている。しかし、これら積層順序は、多様に変えることができる。
【0034】
前記透明基板110の材料としては、ガラス、石英などの無機化合物成形物と透明な有機高分子成形物を挙げることができる。有機高分子成形物からなる透明基板110には、アクリルやポリカーボネートが一般的に使用されるが、本発明はこのような実施例に限定されるものではない。透明基板110は、高透明性と耐熱性を有することが好ましく、高分子成形物及び高分子成形物の積層体を透明基板110として使用することができる。透明基板110の透明性については、可視光線透過率が80%以上であることが有利であり、耐熱性については、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましい。高分子成形物は、可視光線波長領域において透明ならば良く、価格、耐熱性、透明性の面でポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましいが、これに限定されるものではない。または、前記透明基板110に半強化ガラスを使用することができる。また、場合によってこのような透明基板110は、フィルターの構成から除外することもできる。
【0035】
外光遮蔽層140は、外光を吸収してパネルアセンブリーに外光190が流入することを防止することが好ましく、パネルアセンブリーから放出されるパネル入射光180を視聴者の方に全反射する役割をする。したがって、可視光線に対する高い透過率と高い明暗対比比(コントラスト比)を得ることができる。
【0036】
外光遮蔽層140は、透明基材142及び前記基材142の一面に形成されて複数の楔型ホームに光吸収物質を充填して形成された外光遮蔽パターン144を含む。場合によって、外光遮蔽層は、さらに基板を含むことができる。
【0037】
前記外光遮蔽パターン144は、楔型ストライプ、すなわち複数個の陰刻ホームに充填された3次元形状の三角柱構造物からなっているが、本発明はこれに限定されない。
【0038】
前記外光遮蔽層140は、透明基板110を基準に前記反射防止層160の反対面に配置されている。しかし、本発明はこれに限定されず、外部環境光190の吸収とパネル入射光180の透過がよくなされるように前記外光遮蔽層140が配置される限り、光学部材間の積層順序及び積層方向は、多様に変形することができる。
【0039】
本実施例で前記外光遮蔽パターン144は、基材の一面に形成された複数の楔型底面がパネルアセンブリーの方に向いているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、基材142の一面と平行な外光遮蔽パターン144において楔型底面が視聴者の方を向くこともでき、前記外光遮蔽パターンを基材の両面に形成することもできる。
【0040】
前記基材142は、可視光を透過させる透明材質からなる板状の支持体で、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ウレタンアクリレート、ポリエステル、エポキシアクリレート、臭素化アクリレート(Brominate Acrylate)、ポリ塩化ビニール(PVC)などからなることができる。
【0041】
前記外光遮蔽層140は、外光を吸収してパネルアセンブリーに外部環境光190が流入することを防ぎ、パネルアセンブリーから放出されるパネル入射光180を視聴者の方に全反射する役割をする。したがって、可視光線に対する高い透過率と高い明暗対比比(contrast ratio)を得ることができる。そればかりでなく、本発明による外光遮蔽層140は、外光遮蔽パターンに光吸収物質だけではなく導電性物質も充填することによって、電磁波遮蔽機能を補助することもできる。
【0042】
電磁波遮蔽フィルム120は、透明基板110の一面、すなわちパネルアセンブリーの方の面に形成したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。
【0043】
前記電磁波遮蔽フィルム120は、透明樹脂材質の基材122及び導電性物質を含んでいるメッシュ形態の電磁波遮蔽パターン124からなる。前記電磁波遮蔽パターン124は、基材122に形成された陰刻パターンに導電性物質を充填して形成される。従来の電磁波遮蔽フィルムは、基材上に金属メッシュを接着剤で接着した陽刻のメッシュ形態が一般的だったが、本発明では、陰刻のメッシュパターンに導電性物質を充填して金属メッシュを形成する。
【0044】
以下では、図2を図1と共に参照して、本発明の電磁波遮蔽フィルムについてさらに詳しく説明する。
【0045】
電磁波遮蔽フィルム200は、透明樹脂材質の基材222、陰刻パターン、及び電磁波遮蔽パターン224を具備する。電磁波遮蔽パターンは、基板210をさらに具備することができる。
【0046】
前記基材は、基板上に形成される。前記基材222の少なくとも一面に陰刻のメッシュパターンを形成して、前記陰刻のメッシュパターン内に導電性物質を充填して電磁波遮蔽パターン224が形成される。
【0047】
前記基板210には、PETフィルムを使用することができる。前記導電性物質には、金属ペースト、金属酸化物粉末、導電性高分子物質、またはそれらを混合して使用することができる。また、前記メッシュパターン224内にカーボンブラックのような黒色物質を導電性物質とともに充填して光吸収機能を補助することもできる。
【0048】
パネルアセンブリーからの入射光(図1の180)を外部に放出する時、ディスプレイの鮮明な画質のためには、開口率を向上させてモアレ現象を抑制しなければならない。そのために前記メッシュの幅(図2のW)を制限する必要がある。幅(W)が、あまり大きくなると開口率が小くなってパネル入射光180が画面に放出される量が小くなるので、透視性が落ちるようになる。ゆえに、前記電磁波遮蔽フィルム200のメッシュパターン224の幅(W)は、5ないし30μm、好ましくはおおよそ15μmである。
【0049】
また、メッシュパターン224の深さ(D)は、大きいほど電磁波遮蔽能に優れている。電磁波遮蔽フィルム120、200の前記メッシュパターン124、224の深さ(D)は、3ないし30μm、好ましくはおおよそ10μmである。一方、外光遮蔽パターン144の深さ(E)は、光吸収効率を高めるためにおおよそ100μmである。
【0050】
前記電磁波遮蔽フィルム200において、メッシュパターン224の幅(W)に対する深さ(D)の割合は、0.3ないし3、好ましくは0.7程度である。外光遮蔽パターン124の場合、幅に対する深さの割合が一般的に5より大きい値を有するようになる。既存の直接印刷方式で製造された電磁波遮蔽フィルムの場合、メッシュパターンが陽刻で形成されるので、前記陽刻パターンの幅に対する深さの割合が0.1程度に小さく示れて、パターンの形状も均一に製造することが難しかった。これに反して、本発明の電磁波遮蔽フィルム200は、陰刻パターンの内部に導電性物質を充填して形成することで、前記陰刻パターンの幅及び深さを任意に自由に調節することが可能で、メッシュパターン224の幅(W)に対する深さ(D)の割合を最適化することができる。
【0051】
また、メッシュパターンの間隔(図2のP)は、150ないし500μmで、外光遮蔽パターン144間の間隔の半分程度の大きさであるが、本発明がこれに限定されるのではない。
【0052】
図示しなかったが、前記電磁波遮蔽フィルム120及び外光遮蔽層140は、粘着層を介して粘着することができる。前記粘着層は、フィルターの機能性層またはフィルムを装着する時に使用することができ、粘着層に含まれる具体的な材料として、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PMB)、エチレン酢酸ビニル系接着剤(EVA)、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0053】
前記粘着層は、フィルター内の他の機能性部材またはフィルム間に適切に配置することができ、場合によって含まないこともある。また、前記粘着層には、導電性物質をさらに含むことで、電磁波遮蔽フィルムの効率をさらに高めることができる。前記導電性物質は、電磁波遮蔽フィルム120のメッシュパターン124内に充填した物質と同種または異種であり得る。
【0054】
以下では、再び図1を参照して色補正層及び反射防止層について説明する。
【0055】
本実施例でPDPフィルター100は、特定波長帯の光を選択的に吸収する色補正層150を含む。前記色補正層150は、赤色(R)、緑(G)、青色(B)の量を減少させたり調節して色の均衡を変化させたり校正してディスプレイの色再現範囲を増加させて鮮明度を向上させる。
【0056】
色補正層150は、多様な色素を含み、そのような色素としては、染料あるいは顔料を使用することができる。色素の種類は、アントラキノン系、シアニン系、アゾ系、ストリル系、フタロシアニン系、メチン系などのネオンライト遮蔽機能を有する有機色素が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。色素の種類と濃度は、色素の吸収波長、吸収係数、ディスプレイに求められる透過特性によって決定されるものなので、特定数値に限定使用されない。
【0057】
図示しなかったが、前記PDPフィルター100は、近赤外線遮蔽層を含むことができる。近赤外線遮蔽層は、パネルアセンブリーで発生して無線電話機やリモートコントローラーなどの電子機器の誤動作を起こす強力な近赤外線を遮蔽する役割をする。近赤外線を遮蔽するために、近赤外線領域の波長を吸収する近赤外線吸収色素を含んだ高分子樹脂を使用することができる。例えば、近赤外線吸収色素として、シアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、ニケルジチオール系など多様な成分の有機染料を使用することができる。
【0058】
反射防止層160は、視聴者方向から入射する外光が再び外部に反射することを防止してディスプレイの明暗対比比を向上させる。本実施例で前記反射防止層160は、透明基板110の他面に形成するが、本発明はこのような積層手順に限定されるものではない。しかし、好ましくは図1に図示したように、反射防止層160は、PDPフィルター100がPDP装置に装着された時に視聴者の方になる面、すなわちパネルアセンブリーの方とは反対側面に形成することが効率的である。
【0059】
反射防止層160として具体的には、可視領域において屈折率が1.5以下、好ましくは1.4以下と低いフッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜などを例えば、1/4波長の光学膜厚さによって単一層に形成されたものを使用することができる。そして、反射防止層160として屈折率が異なる金属酸化物、フッ化物、珪化物、硼化物、炭化物、チッ化物、硫化物などの無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂などの有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものを使用することができる。
【0060】
以下では、本発明の電磁波遮蔽フィルムの製造方法について、図3を参照して、さらに詳しく説明する。
【0061】
図3を参照すると、本発明の電磁波遮蔽フィルムの製造方法は、コーティング工程(S11)、パターン形成工程(S12)、充填工程(S13)及び硬化工程(S14)を含む。
【0062】
コーティング工程(S11)は、透明基板310の一面に第1硬化性樹脂320を塗布する工程で、前記透明基板310には、PETフィルムを、前記第1硬化性樹脂320には、紫外線硬化性樹脂を使用することができる。硬化する前の紫外線硬化性樹脂を透明基板310上に塗布してブレード321を使用して一定厚さを有するようにする。
【0063】
次にパターン形成工程(S12)では、陽刻のメッシュパターンが形成されたシリンダー形態のパターンロ−ル330を使用して、前記紫外線硬化性樹脂に陰刻のメッシュパターンを形成して、紫外線ランプ335で紫外線を照射して前記紫外線硬化性樹脂を硬化させることで陰刻パターンが形成された基材340を準備する。前記透明基板310の張力と第1硬化性樹脂320の粘度などを適切に調節して、コーティング工程(S11)を略してすぐパターン形成工程(S12)に進むこともできる。
【0064】
パターンロ−ル330の陽刻パターンの形状によって、電磁波遮蔽パターンの形状が変化するようになる。前記パターンロ−ル330は、エッチング工程や機械加工などでいくらでも幅が狭くて、幅に対する厚さの割合が大きい形状の陽刻パターンを製作することが可能なので、これを使用して最適の電磁波遮蔽パターンを陰刻で形成することができる。
【0065】
前記第1硬化性樹脂として、紫外線硬化性樹脂以外に熱硬化性樹脂も使用することができる。
【0066】
次に、充填工程(S13)では、導電性物質を含む第2硬化性樹脂350を塗布してブレード322を使用して、ワイピング(wiping)法で陰刻パターンの内部に充填させる。前記導電性物質としては、シルバーペーストを使用することができる。前記シルバーペーストには、紫外線硬化タイプと熱硬化タイプのペーストを使用することが可能である。またさらに反射率を減らすために、カーボンブラックなどの黒化物質を追加で前記第2硬化性樹脂350内に混合して使用することができる。前記第2硬化性樹脂350に熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化工程(S14)は、赤外線ヒーター375を使用して行なうことができる。硬化工程(S14)が終わると、導電性物質が陰刻パターンの内部に充填された電磁波遮蔽フィルム360が形成される。
【0067】
前記のような過程を経てメッシュパターンの幅、深さ及び間隔(ピッチ)にしたがって、3種類の電磁波遮蔽フィルムを準備し、下記の表1でそれぞれ実施例1ないし実施例3に区分した。比較例1は、既存エッチング方法によるメッシュフィルムをLG Micronから購入して測定した結果である。
【0068】
【表1】

【0069】
表1の結果から、本発明による電磁波遮蔽フィルムである実施例1ないし実施例3の場合、面抵抗が十分な電磁波遮蔽性能を示すことができる程度に低い値を有し、また透過率も高くてディスプレイ装置用フィルターとして使用するのに不足はない。このように、本発明の電磁波遮蔽フィルムは、既存のエッチング方式による電磁波遮蔽フィルムと同等ないし類似の性能を示し、製造工程はより効率的で製造費用も節減することができるため、これからの活用が期待される。
【0070】
以上のように本発明は、限定された実施例と図面によって説明されたとしても、本発明は前記の実施例に限定されるものではなくて、本発明が属する分野で通常の知識を有する者なら、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。ゆえに、本発明の範囲は、説明された実施例に限定して決定されてはならず、特許請求の範囲だけではなくこの特許請求範囲と均等なものによって決定されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施例によるPDPフィルターの断面図である。
【図2】本発明の一実施例による電磁波遮蔽フィルムの斜視図である。
【図3】本発明の一実施例によるディスプレイ装置用フィルターの製造方法を概念的に示した流れ図である。
【符号の説明】
【0072】
100:PDPフィルター
110:透明基板
120:電磁波遮蔽フィルム
122:基材
124:メッシュパターン
140:外光遮蔽層
142:基材
144:外光遮蔽パターン
150:色補正層
160:反射防止層
180:パネル入射光
190:外部環境光
200:電磁波遮蔽フィルム
222:基材
224:メッシュパターン
310:透明基板
320:第1硬化性樹脂
321、322:ブレード
330:パターンロ−ル
335:紫外線ランプ
340:陰刻パターンが形成された基材
350:第2硬化性樹脂
360:電磁波遮蔽フィルム
375:赤外線ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂材質の第1基材と、該第1基材の少なくとも一面に形成された陰刻パターン、及び該陰刻パターンの内部に充填された導電性物質を含む電磁波遮蔽パターンとを具備したディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記陰刻パターンが、メッシュパターンであることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム。
【請求項3】
前記陰刻パターンの深さは、3ないし30μm、幅は5ないし30μmで前記幅に対する前記深さの割合が0.3ないし3であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記導電性物質が、i)コバルト、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、白金、金、パラジウム、チタン、鉄、スズ、インジウム、ニッケル、モリブデン、タングステン、銀及び銅からなる群から選択された少なくとも一つの金属を含む金属ペーストまたは、ii)酸化銅、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛及び酸化インジウム亜鉛からなる群から選択された少なくとも一つの金属酸化物粉末または、iii)ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリ3−アルキルチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレン)及びこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つの導電性高分子物質であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム。
【請求項5】
前記ディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムは、基板を含み、前記第1基材は基板上に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルム。
【請求項6】
電磁波遮蔽フィルムを具備し、該電磁波遮蔽フィルムは、透明樹脂材質の第1基材、該第1基材の少なくとも一面に形成された陰刻パターン、及び前記陰刻パターンの内部に充填された導電性物質を含む電磁波遮蔽パターンとを具備したディスプレイ装置用フィルター。
【請求項7】
複数の楔型ホームを具備した透明樹脂材質の第2基材及び該第2基材に形成された複数の楔型ホームにそれぞれ光吸収物質を充填して形成された外光遮蔽パターンからなる外光遮蔽層を含むことを特徴とする、請求項6に記載のディスプレイ装置用フィルター。
【請求項8】
透明基板の一面に第1硬化性樹脂を塗布するコーティング工程と、
前記第1硬化性樹脂の上にパターンロ−ルを使用して前記第1硬化性樹脂の一面に陰刻パターンを形成しながら硬化させるパターン形成工程と、
前記陰刻パターンの内部に導電性物質を含む第2硬化性樹脂を充填する充填工程、及び前記第2硬化性樹脂を硬化させる硬化工程とを含むディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記陰刻パターンは、メッシュパターンであることを特徴とする、請求項8に記載のディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第1硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂で前記第2硬化性樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項8に記載のディスプレイ装置用電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記充填工程では、ワイピング法を使用して前記陰刻パターンの内部に導電性物質を含む第2硬化性樹脂を充填することを特徴とする、請求項8に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−130365(P2009−130365A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296568(P2008−296568)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密ガラス株式会社 (80)
【Fターム(参考)】