ディスペンスポンプ
【課題】 試薬を吸入及び吐出するディスペンスポンプにおいて、構造が簡単でしかもコンパクトな機構により極めて小型、軽量化し、かつ吸入、吐出量の精度を向上することを課題とする。
【解決手段】 駆動モータの駆動軸を中空状にし、ピストンを駆動させる軸をモータ内部に収納させると共に、ピストンとの接合位置をシリンダの中心から偏芯させ回動防止とする手段を用い、装置の構成を簡潔な機構とし、モータを小型にして省エネ化させると共に、スライダの位置精度を向上させ吸入、吐出量の精度を向上出来るようにしたものである。
【解決手段】 駆動モータの駆動軸を中空状にし、ピストンを駆動させる軸をモータ内部に収納させると共に、ピストンとの接合位置をシリンダの中心から偏芯させ回動防止とする手段を用い、装置の構成を簡潔な機構とし、モータを小型にして省エネ化させると共に、スライダの位置精度を向上させ吸入、吐出量の精度を向上出来るようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臨床分析装置や、DNA分析装置に使用される試薬を吸入し吐出する小型のポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手段は、例えば駆動モータの端軸をネジ形状として、回り止めを有したスライダー部を設け、さらにスライダー部とピストンを連動させシリンダ内に容積変化を発生せしめ、試薬を所定の量を吸入し吐き出す機構であった。
【0003】
以下図3により従来のディスペンスポンプ50について説明する。
機枠51の一端に設置された駆動モータ56の駆動軸56aの端部はおねじ部56bを有し、先端部にはめねじ部52b、駆動軸56aの収納穴52cを有したスライダ52が係合されている。スライダ52の外周には周り止め防止のため爪52aが機枠51に設けられた長穴51aに摺動可能に係合されている。また機枠51の他端には中空状でシリンダ室54aを有するシリンダ54の構成となっており、スライダ52の一端はピストン52dの構成をなし、シリンダ室54aの内壁とOリング53を介し摺動可能な状態で係合されている。さらにシリンダ54の一端には継手55を介しピペットチップ57が挿入され、シリンダ室54aの内圧をピペットチップ57へ導く構成となっている。ディスペンスポンプ50の下方には試薬58が充填された容器59が設置されている。
【0004】
次に従来技術の動作について説明する。モータ56がK方向へ回転すると、スライダ52は爪52aが機枠51に設けられた長穴51aにより回転が制約されるため、おねじ部56b,めねじ部52bを介しM方向へ上昇する。その際シリンダ室54a内はピストン52dにもうけられたOリング53により外気と遮断されているため負圧となる。その結果継手55を介しピペットチップ57の内部も負圧となり、ディスペンスポンプ50が下降する(下降手段は省略する)と共に、試薬58を吸入することとなる。またモータ56がL方向へ回転するとスライダ52はN方向へ下降すると共にシリンダ室54a内は加圧され、ピペットチップ57に吸引された試薬58aを吐き出す。以上説明した動作を繰り返すことにより、ディスペンスポンプ50は試薬58を吸入および吐出することが可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、臨床分析装置やDNA分析装置において、自動化が推進され省エネや装置の小型化を目的として、自動ロボットに搭載されるディスペンスポンプの一層の小型、軽量化が望まれると共に、高価な試薬を微量でしかもバラツキが少ない高精度な吸入、吐出の機能が要求されてきた。しかし、従来技術では爪部と長穴部のがたから発生するピストンの位置誤差による吸入量の誤差や、摺動抵抗によるモータトルクの増大化、さらに複雑な機構構成によるディスペンスポンプの大きさや重量の増大化が問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明の手段は、駆動モータに中空状で先端部をめねじ状に加工し、内部を貫通穴状とした駆動軸を設け、おねじ状のねじ軸を該駆動軸の貫通穴即ちモータ内部に収納可能に出し入れする機構構成とすることにより小型化する。
【0007】
請求項2記載の発明の手段は、駆動するねじ軸と円筒状のピストンを接合し、さらに接合位置をシリンダ中心から偏芯させ、シリンダ内でピストンが回転することを制約した機構構成とすることで、従来の回転防止機構部を不要とし、小型、軽量化させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は次のような効果を奏する。請求項1に記載された発明は、モータ内部に収納する状態でねじ軸が移動するため、スペースを効率良く利用出来大幅な小型化が可能となる。
【0009】
請求項2に記載された発明は、ピストンと駆動するねじ軸の結合位置を、シリンダ内径中心から所定の量だけ偏芯させ、シリンダ内でのピストン回転防止機構とすることにより、従来の複雑な構成による周り止め防止機構が不要となり、機構の簡易化や、従来機構の摺動抵抗により発生していたエネルギロスが削減され、モータの小型化、省エネ化が可能となる。さらには従来の回転防止機構でのがたによるピストン位置誤差から発生していた吸入及び吐出量のバラツキが激減され、吸入及び吐出量の高精度化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
【0011】
図1は本発明におけるディスペンスポンプ10の構成を示した断面斜視図であり、図2はピストン部の詳細を示した断面図である。
【0012】
図1は主要なディスペンスポンプ10の構成を示す。(説明の為モータ6の内部を断面で表示してある)機枠1の一端に設けられたモータ6の駆動軸6aは中空穴6bを有し一端はめねじ部6cが設けられており、他端は継手5を有する中空状のシリンダ室4aを有するシリンダ4を構成し、継手5の先端にはピペットチップ7が挿入されている。またシリンダ4の内部にはOリング3を介しピストン2が摺動可能に係合され、ピストン2にはねじ軸8が設けられている。さらにねじ軸8の上端は駆動軸6aのめねじ部6cと係合されている。またディスペンスポンプ10の下方には試薬8が充填された容器9が設置されている。
【0013】
図2はピストン2、Oリング3、シリンダ4、ねじ軸8の位置関係を示す断面図である。ピストン2にはねじ軸8が設けられているが、その位置はシリンダ4の中心位置からEだけ偏芯している。その結果ピストン2はねじ軸8の中心としてF及G方向の回動は制約される。
【0014】
次に動作を図1および図2により説明する。図1で示すモータ6がA方向に回動し駆動軸6aがA方向へ回転すると、ピストン2は図2で示す様にシリンダ4に対し回転が制約されるため、駆動軸6aのめねじ部6c、ネジ軸8を介しC方向へ駆動される。その結果ピストン2、Oリング3、シリンダ4で構成される密閉されたシリンダ室4は負圧となり、さらに継手5を介しピペットチップ7内も負圧となる。よってディスペンスポンプ10を下降させることにより(下降手段は省略する)、ピペットチップ7内に試薬8を吸引することが可能となる。さらにモータ6がB方向へ駆動すると、ピストン2はD方向へ駆動されシリンダ室4a内が加圧され、ピペットチップ7内の試薬は吐き出される。以上の動作を繰り返すことにより、ディスペンスポンプ1は試薬8を吸引及び吐出することが可能となる。
【0015】
本実施の形態に係わるディスペンスポンプによれば、従来技術の様な複雑な回り止め機構が不要で装置が安価となると共に、ねじ軸をモータ内部に収納が可能となり、小型、軽量化となる利点がある。
【0016】
さらにこのようなディスペンスポンプによれば、従来技術の様な複雑な回り止め機構から発生する摩擦抵抗が無く、モータの負荷が軽減されモータの小型、軽量、省エネ化が可能となる。
【0017】
さらにこのようなディスペンスポンプによれば、複雑な回り止め機構が不要になり、がたの発生が無くピストン部の位置精度が向上し、その結果シリンダ内の圧力のバラツキが少なく、試薬の吸入、吐出量が安定し、精度が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明におけるディスペンスポンプ機構構成を示す断面斜視図である。
【図2】 本発明におけるディスペンスポンプ機構構成を示す断面である。
【図3】 従来技術におけるディスペンスポンプ機構構成を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 機枠
2 ピストン
3 Oリング
4 シリンダ
4a シリンダ室
5 継手
6 モータ
6a 駆動軸
6b 穴
6c めねじ部
7 ピペットチップ
8 試薬
9 容器
10 ディスペンスポンプ
50 ディスペンスポンプ
51 機枠
51a 長穴
52 スライダ
52a 爪
52b めねじ部
52c 収納穴
52d ピストン
53 Oリング
54 シリンダ
54a シリンダ室
55 継手
56 モータ
56a 駆動軸
57 ピペットチップ
58 試薬
58a 試薬
59 容器
【技術分野】
【0001】
本発明は臨床分析装置や、DNA分析装置に使用される試薬を吸入し吐出する小型のポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手段は、例えば駆動モータの端軸をネジ形状として、回り止めを有したスライダー部を設け、さらにスライダー部とピストンを連動させシリンダ内に容積変化を発生せしめ、試薬を所定の量を吸入し吐き出す機構であった。
【0003】
以下図3により従来のディスペンスポンプ50について説明する。
機枠51の一端に設置された駆動モータ56の駆動軸56aの端部はおねじ部56bを有し、先端部にはめねじ部52b、駆動軸56aの収納穴52cを有したスライダ52が係合されている。スライダ52の外周には周り止め防止のため爪52aが機枠51に設けられた長穴51aに摺動可能に係合されている。また機枠51の他端には中空状でシリンダ室54aを有するシリンダ54の構成となっており、スライダ52の一端はピストン52dの構成をなし、シリンダ室54aの内壁とOリング53を介し摺動可能な状態で係合されている。さらにシリンダ54の一端には継手55を介しピペットチップ57が挿入され、シリンダ室54aの内圧をピペットチップ57へ導く構成となっている。ディスペンスポンプ50の下方には試薬58が充填された容器59が設置されている。
【0004】
次に従来技術の動作について説明する。モータ56がK方向へ回転すると、スライダ52は爪52aが機枠51に設けられた長穴51aにより回転が制約されるため、おねじ部56b,めねじ部52bを介しM方向へ上昇する。その際シリンダ室54a内はピストン52dにもうけられたOリング53により外気と遮断されているため負圧となる。その結果継手55を介しピペットチップ57の内部も負圧となり、ディスペンスポンプ50が下降する(下降手段は省略する)と共に、試薬58を吸入することとなる。またモータ56がL方向へ回転するとスライダ52はN方向へ下降すると共にシリンダ室54a内は加圧され、ピペットチップ57に吸引された試薬58aを吐き出す。以上説明した動作を繰り返すことにより、ディスペンスポンプ50は試薬58を吸入および吐出することが可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、臨床分析装置やDNA分析装置において、自動化が推進され省エネや装置の小型化を目的として、自動ロボットに搭載されるディスペンスポンプの一層の小型、軽量化が望まれると共に、高価な試薬を微量でしかもバラツキが少ない高精度な吸入、吐出の機能が要求されてきた。しかし、従来技術では爪部と長穴部のがたから発生するピストンの位置誤差による吸入量の誤差や、摺動抵抗によるモータトルクの増大化、さらに複雑な機構構成によるディスペンスポンプの大きさや重量の増大化が問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明の手段は、駆動モータに中空状で先端部をめねじ状に加工し、内部を貫通穴状とした駆動軸を設け、おねじ状のねじ軸を該駆動軸の貫通穴即ちモータ内部に収納可能に出し入れする機構構成とすることにより小型化する。
【0007】
請求項2記載の発明の手段は、駆動するねじ軸と円筒状のピストンを接合し、さらに接合位置をシリンダ中心から偏芯させ、シリンダ内でピストンが回転することを制約した機構構成とすることで、従来の回転防止機構部を不要とし、小型、軽量化させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は次のような効果を奏する。請求項1に記載された発明は、モータ内部に収納する状態でねじ軸が移動するため、スペースを効率良く利用出来大幅な小型化が可能となる。
【0009】
請求項2に記載された発明は、ピストンと駆動するねじ軸の結合位置を、シリンダ内径中心から所定の量だけ偏芯させ、シリンダ内でのピストン回転防止機構とすることにより、従来の複雑な構成による周り止め防止機構が不要となり、機構の簡易化や、従来機構の摺動抵抗により発生していたエネルギロスが削減され、モータの小型化、省エネ化が可能となる。さらには従来の回転防止機構でのがたによるピストン位置誤差から発生していた吸入及び吐出量のバラツキが激減され、吸入及び吐出量の高精度化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
【0011】
図1は本発明におけるディスペンスポンプ10の構成を示した断面斜視図であり、図2はピストン部の詳細を示した断面図である。
【0012】
図1は主要なディスペンスポンプ10の構成を示す。(説明の為モータ6の内部を断面で表示してある)機枠1の一端に設けられたモータ6の駆動軸6aは中空穴6bを有し一端はめねじ部6cが設けられており、他端は継手5を有する中空状のシリンダ室4aを有するシリンダ4を構成し、継手5の先端にはピペットチップ7が挿入されている。またシリンダ4の内部にはOリング3を介しピストン2が摺動可能に係合され、ピストン2にはねじ軸8が設けられている。さらにねじ軸8の上端は駆動軸6aのめねじ部6cと係合されている。またディスペンスポンプ10の下方には試薬8が充填された容器9が設置されている。
【0013】
図2はピストン2、Oリング3、シリンダ4、ねじ軸8の位置関係を示す断面図である。ピストン2にはねじ軸8が設けられているが、その位置はシリンダ4の中心位置からEだけ偏芯している。その結果ピストン2はねじ軸8の中心としてF及G方向の回動は制約される。
【0014】
次に動作を図1および図2により説明する。図1で示すモータ6がA方向に回動し駆動軸6aがA方向へ回転すると、ピストン2は図2で示す様にシリンダ4に対し回転が制約されるため、駆動軸6aのめねじ部6c、ネジ軸8を介しC方向へ駆動される。その結果ピストン2、Oリング3、シリンダ4で構成される密閉されたシリンダ室4は負圧となり、さらに継手5を介しピペットチップ7内も負圧となる。よってディスペンスポンプ10を下降させることにより(下降手段は省略する)、ピペットチップ7内に試薬8を吸引することが可能となる。さらにモータ6がB方向へ駆動すると、ピストン2はD方向へ駆動されシリンダ室4a内が加圧され、ピペットチップ7内の試薬は吐き出される。以上の動作を繰り返すことにより、ディスペンスポンプ1は試薬8を吸引及び吐出することが可能となる。
【0015】
本実施の形態に係わるディスペンスポンプによれば、従来技術の様な複雑な回り止め機構が不要で装置が安価となると共に、ねじ軸をモータ内部に収納が可能となり、小型、軽量化となる利点がある。
【0016】
さらにこのようなディスペンスポンプによれば、従来技術の様な複雑な回り止め機構から発生する摩擦抵抗が無く、モータの負荷が軽減されモータの小型、軽量、省エネ化が可能となる。
【0017】
さらにこのようなディスペンスポンプによれば、複雑な回り止め機構が不要になり、がたの発生が無くピストン部の位置精度が向上し、その結果シリンダ内の圧力のバラツキが少なく、試薬の吸入、吐出量が安定し、精度が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明におけるディスペンスポンプ機構構成を示す断面斜視図である。
【図2】 本発明におけるディスペンスポンプ機構構成を示す断面である。
【図3】 従来技術におけるディスペンスポンプ機構構成を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 機枠
2 ピストン
3 Oリング
4 シリンダ
4a シリンダ室
5 継手
6 モータ
6a 駆動軸
6b 穴
6c めねじ部
7 ピペットチップ
8 試薬
9 容器
10 ディスペンスポンプ
50 ディスペンスポンプ
51 機枠
51a 長穴
52 スライダ
52a 爪
52b めねじ部
52c 収納穴
52d ピストン
53 Oリング
54 シリンダ
54a シリンダ室
55 継手
56 モータ
56a 駆動軸
57 ピペットチップ
58 試薬
58a 試薬
59 容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸入及び吐出する装置において、中空穴を有するモータ軸を設け、吸入及び吐出させるピストン部の駆動軸を、該中空穴に収納可能としたディスペンスポンプ装置。
【請求項2】
液体を吸入及び吐出する装置において、シリンダ内を摺動するピストン部と、該ピストン部を動作させる駆動軸との接合位置を、シリンダ中心位置から偏芯させた位置に設けることにより、シリンダ内部でピストン部が回動することを防止したディスペンスポンプ装置。
【請求項1】
液体を吸入及び吐出する装置において、中空穴を有するモータ軸を設け、吸入及び吐出させるピストン部の駆動軸を、該中空穴に収納可能としたディスペンスポンプ装置。
【請求項2】
液体を吸入及び吐出する装置において、シリンダ内を摺動するピストン部と、該ピストン部を動作させる駆動軸との接合位置を、シリンダ中心位置から偏芯させた位置に設けることにより、シリンダ内部でピストン部が回動することを防止したディスペンスポンプ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−177332(P2006−177332A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382774(P2004−382774)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(505032137)インプロバイズ有限会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(505032137)インプロバイズ有限会社 (2)
【Fターム(参考)】
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