説明

ディップ成形品の製造に好適なポリマーラテックス

【解決手段】本発明は、ラジカル乳化重合によって作られたポリマーラテックスであって、少なくとも1つの共役ジエン成分に由来する構造単位を含有するポリマー粒子を含み、該ポリマー粒子は、最低でも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの硬質相部分、および最高でも10℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの軟質相部分を含み、ポリマー粒子の総重量に対して硬質相部分の総量が2〜40重量%であり、軟質相部分の総量が60〜98重量%であり、Tgは、ASTM D3418-03に従ってDSCで測定し、該ポリマーラテックスは、臨界凝集濃度として測定した電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が30mmol/l CaCl2未満であり、ディップ成型品の製造に特に好適なポリマーラテックスに関する。さらに、本発明は、このようなポリマーラテックスの製造方法、ディップ成型品の製造のための該ポリマーラテックスの使用、ディップ成型品の製造に好適な複合ポリマーラテックス組成物、ディップ成型ラテックス品の製造方法、およびそれによって得られるラテックス品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップ成形品の製造に特に好適なポリマーラテックスに関する。さらに、本発明は、そのようなポリマーラテックスの製造方法、該ポリマーラテックスのディップ成形品の製造のための使用、ディップ成形品の製造に好適な複合ポリマーラテックス組成物、ディップ成形ラテックス品の製造方法、およびそれによって得られたラテックス品に関する。
【背景技術】
【0002】
手袋および他の医療品等の薄肉の伸張性物品は、長い間、天然のラテックスポリマーから作られていた。代表的には、このような物品は、ポリマーの自然発生エマルジョンである天然ゴムラテックスと水に安定剤と加硫薬品を添加して形成される。加えて、所望の機械的特性を達成するため、天然ゴムラテックスから作られる製品は、促進剤も含有する硫黄を基にした加硫システムを用いて加硫される。
【0003】
このような硫黄による硬化(cure)システムは、合成ポリマーラテックスの加硫にも用いられてきたが、これにより、ポリマー組成物を架橋する間に硫黄を基にした結合が導入される。これらの硫黄を基にした硬化システムでは、加硫促進剤に加えて、アミン、チアゾール、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびチウラム等が利用される。
【0004】
欧州特許EP-A-1 063 258号は、ディップ成形用のラテックス組成物に関し、C8-22の脂肪酸またはその塩を消泡剤として組み入れている。このラテックス組成物は、ディップ成形品を製造するため、付加的な硫黄による加硫システムを用いて加硫される。
【0005】
同様に、欧州特許EP-A-559 150号は、ディップ成形に好適なコポリマーラテックスを開示し、ここでラテックスは従来の加硫システムで加硫される。
【0006】
欧州特許EP-A-753 530号は、異なる技術に関する。ここでポリマーラテックスは、ガラス転移温度が異なる部分を有することが記載されている。このポリマーラテックスは、マットレスの製造に使用され、ここでは従来の硫黄を含有する加硫システムが使用される。この適用は、ディップ成形には関係しない。
【0007】
最近、硫黄による硬化システムを用いて天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテックスで作られたラテックス品が、IV型アレルギー反応を引き起こす可能性があることが発見された。
【0008】
天然および合成ゴム物品が適用される1つの重要な分野が、例えば着用者の皮膚に必然的に接触する医療用手袋やコンドームであること、および、現代社会において人々のアレルギー反応への感受性が高まっていることから、機械的強度や弾性のような、これらの製品の所望のかつ必要な特性を妥協することなく、アレルギー反応を誘起せず、または、例えばニトロソアミンのような他の健康リスクを誘起し得る化合物を遊離しない、医療用手袋のようなディップ成形物品に形成できる合成ゴム組成物を提供することは、長い間、産業上必要性が感じられていた。さらに、医療用手袋は、風合い、柔らかさおよび感触に関して適当な審美的特性を有することが特に望まれる。さらに、これらの製品が細菌侵入に対する良好なバリアを提供し、様々な液体および気体に実質的に不浸透性であることが、これらの製品にとって非常に重要である。従って、所望の機械的特性に加えて、最終製品はフィルムの厚さが均一であることも重要である。
【0009】
従来技術において、ゴム製品によるアレルギー反応を回避するため、促進剤を含む硫黄による硬化システムを代用する、いくつかのアプローチが検討された。
【0010】
国際特許WO 00/11980号には、二重結合の加硫以外の方法で架橋された、ガラス転移温度が非常に低い合成ゴムラテックスおよび水性ポリウレタン分散液が記載されている。特に、合成ゴムは、炭素−炭素不飽和を実質的に含むべきではない。故に、ジエン成分は使用されない。しかしながら、得られるゴムを架橋するのに加硫が適用されない限り、ジエンモノマーを使用することができる。この特許に記載されたポリマーは、外部架橋剤を用いて架橋することができる。ポリマーにおける好適な架橋官能基は、ヒドロキシルまたはカルボキシル基である。しかし、ポリマーに結合せず、従って最終製品のポリマー表面に粉がふく可能性がある外部架橋剤が必要であるが、特に引例において開示された架橋剤の選択を考えると、それ自体が健康リスクを引き起こす可能性がある。
【0011】
促進剤も含む硫黄を基にした加硫システムを回避する代替の解決策が、国際特許WO 02/50177号に記載されている。ここでは、合成ポリマーの架橋に金属酸化物の架橋剤が使用されている。好適な例は、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたは酸化カドミウムである。
【0012】
類似の解決策が、国際特許WO 02/38640号に提案されており、多価金属イオンと架橋することができるキレートモノマーを含有するゴム組成物が開示されている。好適なキレートモノマーは、アセトアセトキシ官能基を有するモノマーである。
【0013】
欧州特許EP-A-1 631 247号には、実施例によれば、単一のガラス転移温度を有するカルボキシル化した共役ジエンに基づくゴムラテックスを含む、ディップ成形のためのポリマーラテックス組成物が開示されており、架橋は多価カチオンの存在によって達成される。
【0014】
国際特許WO 03/006513号には、カルボキシレート基、二価または三価金属、アミンまたはアミノ化合物を有する基本ポリマー、および基本ポリマー中のカルボキシレート基の少なくとも一部を中和するのに充分量の中和剤を含む、ラテックス処方が開示されている。
【0015】
国際特許WO 03/062307号には、ポリマーラテックス組成物が開示されている。そのポリマー粒子は、種々のガラス転移温度を有する種々の部分で作ることができる。これらの組成物は、コーティング組成物として、またはディップ成形法用の凝固剤の成分として使用される。しかし、両ケースにおいて、この組成物はコーティングを形成するだけであり、ディップ成形品のバルク材は、慣用の加硫ポリマーラテックスである。国際特許WO 03/062307号に記載された発明には、種々のガラス転移温度の部分を有するポリマーラテックスがポリビニルアルコールを用いて安定化されることが必須である。このようなシステムは電解質に対して非常に安定であり、このことはラテックスが凝固剤と組み合わせて使用される具体例でも見られる。この凝固組成物においても、なおラテックスは安定であり、このことは、安定剤としてのポリビニルアルコールの存在により、ラテックスが凝固に対して非常に高い抵抗性を有することを明確に示している。ディップ成形品のバルク材には、慣用の硫黄で硬化した加硫ポリマーラテックスが使用される。国際特許WO03/062307号に開示されたアプローチによって解決される課題は、手袋の内側および外側の表面粘性を低下させることである。従って、コーティングとして国際特許WO 03/062307号に記載された特別のポリマーラテックスを使用することのみが必要であって、ディップ成形品のバルク材はなおも慣用の加硫ポリマーラテックスである。よって、コーティングに使用されるラテックスは、ディップ成形品の抗張力の必要条件要求を満足する必要はない。
【0016】
医薬品を製造するための、合成または天然のゴムラテックスの架橋用の促進剤を含有する硫黄による加硫システムを避ける他の解決策では、なおもさらなる架橋剤を使用する。このさらなる架橋剤は、ゴム成分中の架橋する官能基との反応に適合した官能基を有する有機分子、または多価金属塩である。従って、ゴム成分は、なおも架橋剤と組み合わせなくてはならず、その結果ラテックス化合物の製造方法が複雑になる。この方法において、相対量は、所望の架橋濃度を達成するために慎重に調整しなければならず、すべての追加の架橋剤が、架橋剤成分が粉をふくのを避けるため、最終の分子中に結合することが可能であるならば、そのこと自体、再度、健康リスクとなり得る。さらに、特に架橋剤として多価金属イオンを使用する場合は、調合工程の間、ラテックスが不安定になり、調合工程が特に難しくなる可能性がある。さらに、架橋剤、特に多価イオンは、ラテックス化合物の安定性を低下させ、従って、医療品の製造のためのディップ成形法への使用に先立ち、予め調合されたラテックス組成物を貯蔵する能力が低下する。さらに、ゴム組成物において、架橋システムとして特に多価金属イオンを導入することにより、環境公害が増加する可能性がある。
【0017】
国際特許WO 02/18490号には、例えば、二重結合を含まないスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン部分を含む、水素化した3ブロックのコポリマーを、環状不飽和ポリオレフィン結晶性ポリマーと混合する、種々のアプローチが開示されている。このポリマー組成物はラテックスではなく、この組成物で製造される物品は押し出し成形しなければならない。さらに、最終製品の所望の機械的特性を得るためには、なおも架橋が必要である。架橋は、放射線のような物理的手段か、または過酸化物や上述した通常の加硫システムのような化学的手段によって達成することができる。
【0018】
国際特許WO 01/30876号では、天然または合成ゴムラテックスの代替が開示され、これは医療品の製造に使用することができる。2つのポリスチレン硬質部分と1つのポリオレフィンゴム部分を含む熱可塑性エラストマーの3ブロックのポリマーは、リビングアニオン重合によって製造される。ブタジエンまたはイソプレンを使用することによって、ポリオレフィンゴム部分中に得られるポリマーは、架橋に使用可能な二重結合をなおも有する。国際特許WO 01/30876号に開示されている代表的な架橋法は、放射線、または、よく知られた硫黄/促進剤システムを用いた化学的加硫法である。
【0019】
結果として、後者の両先行文献の教示に従って、医療品を製造するために使用されるエラストマーポリマーは、なおも架橋が必要であるという不利点を有する。それ自身健康に害がある複雑な放射線硬化を用いなければならないか、または、上述の難点がある従来の加硫システムを適用しなければならない。最終的に、所望の製品を製造するために、これらのポリマー系を用いた慣用的なディップ成形法は適用することができない。
【0020】
米国特許US 5,500,469号には、手袋、コンドームまたは風船等の物品の製造に有用な、加硫剤およびタンパク質を含まない、熱でゲル化可能な(gellable)合成ラテックス組成物が記載されている。合成ラテックスのポリマーは、溶液中のアニオン重合によって製造された、実施された(performed)マルチブロック共重合体である。アニオン重合法のため、ブロック共重合に使用できるモノマー数は非常に限定されている。米国特許5,500,469号には、アルケニル芳香族炭化水素からなるA型ブロックと共役ジエンからなるB型ブロックとの組み合わせからなるマルチブロックのみが記載されている。ブロック共重合体は、固体の総量で有機相の20〜50%まで、非極性炭化水素溶媒に溶解する。界面活性剤としてエトキシ化フェノールのサルフェートと水を添加した後、炭化水素は蒸留によって完全に除去しなければならない。このことは、ポリマー重量に対して、多容量の有機溶媒を扱わなければならないことを意味する。アニオンブロック共重合法に好適なモノマーについて、汎用性が限定されることは、米国特許US 5,500,469号の教示とは別の不利点である。
【0021】
ディップ成形品に関係しない他の技術分野において、種々のガラス転移温度(Tg)の部分を有するポリマーラテックスが知られている。これらのラテックスは、例えば、コーティング材料として使用することができ、これらの適用において、凝固は所望のコーティング特性に不利であるので、あらゆる環境下において凝固を避けるべきである。
【0022】
例えば、米国特許5,872,189号には、種々のガラス転移温度の「コア/シェル」構造を有するポリマーラテックスを基にした、水再分散性(redispersible)粉剤が開示されている。この発明のキーポイントは、水への再分散性が、ラテックスが凝固に対して安定である場合にのみ達成され得ることである。結果として、このようなラテックスはディップ成形には使用することができず、これらの再分散性粉剤は、保護的および装飾的コーティングの製造、および接着性モルタルおよび接着性セメントの製造のための、水硬性鉱物性バインダー用の添加剤として、建設業界において好適に使用することができることが明確に開示されている。その結果、これらのシステムの加硫は全く問題にならない。
【0023】
同様に、日本特許JP-A-2002-226508号は紙のコーティング組成物に関し、他に紙用の安定なコーティング組成物は得ることができないので、ここでも電解質安定際は最も重要である。さらに、米国特許US-A-5,872,189号のようなラテックスの加硫は、紙のコーティング組成物において使用されるラテックスには問題にならない。
【0024】
[発明の要約]
従って、本発明の目的は、長期間の安定性を有し、ラテックス品を製造するための慣用のディップ成形法に使用可能なラテックス組成物中に配合することができるポリマーラテックスであって、配合される組成物において放射線または架橋剤による架橋を要せずに、最終ラテックス製品の所望の機械的特性が達成され、上述の先行技術の不利点を回避する、ポリマーラテックスを提供することである。
【0025】
この目的は、ラジカル(free-radical)乳化重合によって作られたポリマーラテックスであって、少なくとも1つの共役ジエン成分に由来する構造単位を含有するポリマー粒子を含み、該ポリマー粒子は、最低でも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの硬質相部分、および最高でも10℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの軟質相部分を含み、ポリマー粒子の総重量に対して硬質相部分の総量が2〜40重量%であり、軟質相部分の総量が60〜98重量%であり、Tgは、ASTM D3418-03に従ってDSCで測定し、該ポリマーラテックスは、臨界凝集濃度として測定した電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が30mmol/l CaCl2未満である、ポリマーラテックスによって達成された。
【0026】
さらに、本発明は、ポリマーラテックスの製造方法であって、量について、ポリマーの総重量に対して硬質相部分の総量が2〜40重量%であり、軟質相部分の総量が60〜98重量%であるように、遊離基(free-radical)開始剤、安定剤および水の存在下、最低でも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する硬質相部分をもたらす第一のエチレン型不飽和モノマーまたはモノマー混合物を乳化重合法において重合し、その後、最高でも10℃のガラス転移温度(Tg)を有する軟質相部分をもたらす第二のモノマーまたはモノマー混合物を重合すること、またはその逆を含み、Tgは、ASTM D3418-03に従ってDSCで測定するが、但し、少なくとも1つの共役ジエンを重合工程に使用し、安定剤の量を調整して、臨界凝集濃度として測定した電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が30mmol/l CaCl2未満とする、方法に関する。
【0027】
さらに、本発明は、ディップ成形品の製造に好適で、上記で規定した通りのポリマーラテックスを含む、複合ポリマーラテックス組成物に関する。
【0028】
複合ポリマーラテックス組成物は、通常の架橋および加硫システムを含んでもよいが、ポリマーラテックス組成物が硫黄および加硫促進剤を含まない場合が特に好ましい。加えて、ポリマーラテックス組成物が多価カチオンおよび他の化学的架橋剤も実質的に含まない場合は、さらにより好ましい。
【0029】
また、本発明は、ディップ成形ラテックス品の製造方法であって、
(a)最終品の所望の形状を有する型を、金属塩溶液を含む凝固剤浴に浸漬すること;
(b)浴から型を取り出し、任意に型を乾燥すること;
(c)工程(a)および(b)で処理した型を、本発明の複合ラテックス組成物中に浸漬すること;
(d)ラテックス組成物から型を取り出し、任意にラテックスでコーティングした型を水浴に浸漬すること;
(e)任意にラテックスでコーティングした型を乾燥すること;
(f)工程(d)または(e)で得られたラテックスでコーティングした型を、80〜180℃の温度で熱処理すること;および
(g)ラテックス品を型から取り外すこと、
による方法、および、本発明のポリマーラテックスで製造されるラテックス品に関する。
【0030】
ディップ成形用途に加えて、本発明のポリマーラテックスは、あらゆる種類の物質のコーティングおよび含浸にも用いることができる。本発明のポリマーラテックスは、繊維物質の含浸およびコーティングに特に好適である。
【0031】
本発明の驚くべき結果であるが、ラジカル乳化重合によって製造されるポリマーラテックスは、通常の架橋および加硫化合物を実質的に含まない複合ラテックス組成物中に配合することができるが、にもかかわらず、形成および熱処理後、ラテックス品は医療用途に必要な所望の特性をすべて呈する。最終製品は、代表的な架橋または加硫システムを用いて得られる製品と非常に類似した、上述の、抗張力および伸びのような所望の機械的特性および所望の審美的特性を有する。
【0032】
さらに、本発明のポリマーラテックスは、ディップ成形法においてポリマーラテックス組成物の連続フィルムを複合ラテックス組成物中に含浸される型上に溶着することができる、ラテックス製品を製造する通常のディップ成形法において、成功裏に使用することができ、特に医療用途に重要な必要条件でもある、実質的に均一のフィルム厚の最終産物が得られる。
【0033】
本発明による、上記で論じた所望の結果を達成するために重要な特徴は、本発明のポリマーラテックスが、最低でも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの硬質相部分、および最高でも10℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの軟質相部分を含むことである。本発明の文脈において「部分」という用語は、全体のポリマー分子の不可欠な一部分であるポリマーブロックとして理解されよう。その結果、ラテックスのポリマー粒子を形成するポリマー分子は、例えば共有結合によってある程度互いに結合する、硬質部分と軟質部分を有する。従って、本発明のポリマー粒子は、種々のガラス転移温度(Tg)を有するポリマー類の混合物ではなく、本発明の好ましい具体例によれば、例えば、共有結合によって軟質部分が硬質部分に、またはその逆に、グラフトされる。
【0034】
本発明の好ましい具体例によれば、ポリマー粒子の硬質相部分のTgは、最低でも70℃、好ましくは最低でも80℃、最も好ましくは最低でも90℃である。
【0035】
本発明のポリマー粒子の軟質相部分のTgは、最高でも0℃、好ましくは最高でも−10℃、より好ましくは最高でも−20℃、最も好ましくは最高でも−30℃であってもよい。
【0036】
本発明のポリマー粒子の少なくとも2つの異なる部分のTgは、ASTM D3418-03に従って、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて容易に測定することができる。
【0037】
本発明のポリマーラテックスは、ポリマー粒子の総重量に対して硬質相部分の総量2〜40重量%および軟質相部分の総量6〜98重量%を含む。好ましい具体例によれば、硬質相部分の総量は5〜30重量%であり、軟質相部分の総量は70〜95重量%である。最も好ましくは、硬質相部分の総量が10〜25重量%であり、軟質相部分の総量が75〜90重量%であり、重量%はポリマー粒子の総重量に対するものである。
【0038】
本発明によれば、1つの軟質相および/または硬質相部分は、ホモポリマーのブロックで構成されてもよいが、少なくとも軟質相部分はコポリマーブロックで構成されることが好ましく、特に、少なくとも1つの共役ジエンに由来する構造単位に加えて、少なくとも1つの他のエチレン型不飽和コモノマー由来の構造単位を含有する、コポリマーブロックで構成されることが好ましい。特に好ましい具体例において、軟質相および硬質相部分は、コポリマーブロックで構成される。最も好ましくは、コポリマーブロックが、軟質相部分または硬質相部分として存在するか、または、これら両コポリマーブロックがランダムコポリマーブロックである場合である。これらのコポリマーブロックは、非常に多様なラジカル乳化重合によって容易に製造することができる。従って、本発明の特別の利点は、ラテックスポリマーが特別の最終用途の特異的ニーズに容易に合わせられることである。
【0039】
重合方法において所望のTgとなるようなモノマーまたはモノマー混合物を選択することによって、硬質相部分または軟質相部分のTgを調整する方法は、当業者にはよく知られている。例えば、広範なモノマーのホモポリマーのTgが、J.ブランドラップ(Brandrup)、E.H.インマーグート(Immergut)(編者)の、ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)第二版(ウィリー(Wiley)、ニューヨーク、1975年)に開示されている。
【0040】
ランダム共重合体では、Tgは、成分モノマーの重量分率および成分ホモポリマーのTgに依存する。おおよその相関は、Foxの方程式で記載される:
1/Tg = w1/Tg1 + w2/Tg2 + ...
式中、w1、w2、・・・は、成分モノマーの重量分率であり、Tg1、Tg2、・・・は、成分ホモポリマーの華氏(°K)でのTgである。Foxの方程式は、コポリマーのTgの第一の配向性を許容する。得られる真のTgには、使用されるモノマーおよび方法のさらなるパラメータもまた重要な影響を与える。従って、DSC法のようなTg測定のための物理的方法はなおも必要である。
【0041】
以下に論じるように、共重合法において、本発明のために上記で特定した通りの、硬質部分および軟質部分のTgおよび両部分の相対量が範囲内であるポリマー粒子を得るために、適当量の硬質部分または軟質部分を生じる、特定のモノマーまたはモノマー混合物を選択することは、当業者には日常的な作業内のことである。
【0042】
本発明のポリマー粒子は、共役ジエンに由来する構造単位を含有する。
【0043】
特に好ましいジエンは、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンであり、Tgはそれぞれ−83℃、−72℃および−45℃である。他の軟質モノマーの例は、エチレン(Tg −80℃)、アクリル酸オクチル(Tg −65℃)、アクリル酸ブチル(Tg −54℃)、アクリル酸エチル(Tg −24℃)である。
【0044】
硬質モノマーの例は、メタクリル酸イソブチル(Tg +55℃)、アクリロニトリル(Tg +100℃)、スチレン(Tg +100℃)、メタクリル酸メチル(Tg +105℃)である。
【0045】
さらに、軟質部分には、軟質部分全体のTgが所与の範囲内である限り、軟質および硬質モノマーの混合物を用いることができる。同じことが硬質部分にも適用される。
【0046】
上記で例示したモノマーに加えて、α,β−不飽和基を有する、当業者に知られた全ての他のモノマーも、本発明に従って使用することができる。
【0047】
上記に例示した通り、共役ジエンはTgが非常に低いことから、本発明のポリマー粒子の軟質相部分に、共役ジエンが好ましく用いられる。
【0048】
本発明の好ましい具体例によれば、軟質相部分は、互いに独立して、共役ジエン;エチレン型不飽和モノカルボン酸;エチレン型不飽和ジカルボン酸、その無水物、モノエステルおよびモノアミド;(メタ)アクリルニトリル;スチレン;置換スチレン;α−メチルスチレン;(メタ)アクリル酸のC1〜C10のエステル;(メタ)アクリル酸のアミド;N−メチロールアミド基、およびそのエステルおよびエーテル誘導体を含むエチレン型不飽和化合物;およびそれらの混合物よりなる群に由来する構造単位を含有する。
【0049】
同様に、本発明の好ましい具体例によれば、硬質相部分は、互いに独立して、エチレン型不飽和モノカルボン酸;不飽和ジカルボン酸、その無水物、モノエステルおよびモノアミド;(メタ)アクリルニトリル;スチレン;置換スチレン;α−メチルスチレン;(メタ)アクリル酸のC1〜C4のエステル;(メタ)アクリル酸のアミド;およびそれらの混合物よりなる群から選択されるモノマーに由来する構造単位を含有する。
【0050】
本発明の特に好ましい具体例によれば、本発明のラテックスのポリマー粒子はカルボキシル化され、カルボキシル官能基の構造単位は、軟質相部分または硬質相部分のいずれか、または両方に存在してもよい。
【0051】
本発明のポリマー粒子のカルボキシル化の程度を調節することによって、最終製品の抗張力と弾力性との最適なバランスを達成することができる。
【0052】
理論に束縛されることは望まないが、ポリマー粒子中のカルボキシル基は、架橋部位として機能する可能性があると考えられ、従って、ディップモールド(型)を複合ポリマーラテックス組成物中に浸漬する前に浸漬する凝固剤浴中の金属カチオンの量は、最終製品の抗張力を増すための架橋を誘導するに既に充分である。しかしながら、先行技術の教示に反して、上記で論じた通り、複合ポリマーラテックス組成物中にさらなる多価金属カチオンが存在することは必要ではない。最終製品における所望の程度の抗張力は、ポリマー粒子中にカルボキシル基が存在しなくても達成することができる。
【0053】
本発明に従って使用することができる、カルボキシル官能基を有する好適なモノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ソルビン酸のようなモノカルボン酸、または、フマル酸またはマレイン酸のようなエチレン型不飽和ジカルボン酸、または、アクリルアミドおよびメタクリルアミドのようなモノエステル無水物またはそのモノアミドである。
【0054】
本発明の別の具体例によれば、ポリマー粒子は、熱処理に際して自己架橋することができる官能基を含んでもよい。自己架橋することができる基の例は、N−メチロールアミド基、およびそのエステルおよびエーテル誘導体;およびそれらの混合物から選択される。これらの基は、これらの官能基を含有するエチレン型不飽和モノマーを用いることによって、本発明のポリマー粒子中に導入することができる。好ましいモノマーは、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシ−メチル−(メタ)アクリルアミド、N−アセトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシエチル)アクリルアミドである。
【0055】
さらに、スルホン酸またはスルホネート基を有するエチレン型不飽和モノマーを用いることができる。例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−3−スルホプロピルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。これらのスルホン酸の代わりに、それらの水溶性塩もまた用いることができる。好ましいものは、(メタ)アクリル酸−3−スルホプロピルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。
【0056】
本発明のポリマーラテックスの別の重要な特性は、ディップ成形法に好適なポリマーラテックス組成物に配合することができることである。この適用のため、ポリマーラテックスは、臨界凝集濃度として測定される所定の最大電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が30mmol/l CaCl2未満であることが重要である。
【0057】
電解質安定性が高すぎる場合、ディップ成形法においてポリマーラテックスを凝集させることが難しく、その結果、浸漬した型上でポリマーラテックスの連続フィルムが形成されないか、得られる製品の厚さが均一にならない。
【0058】
ポリマーラテックスの電解質安定性を適切に調整することは、当業者の日常的な作業内のことである。電解質安定性は、特定の種々の要因に依存し、例えば、ポリマーラテックスの製造に使用されるモノマー、特に極性官能基を含有するモノマーの、量および選択、および、安定化システム、例えば、ポリマーラテックス製造のための乳化重合法の、選択および量に依存する。安定化システムは、界面活性剤および/または保護コロイドを含有してもよい。
【0059】
当業者は、本発明のポリマーラテックスを製造するために選択されたモノマー類およびそれらの相対量に応じて、本発明による電解質安定性を達成するための安定化システムを調整することができる。
【0060】
電解質安定性に対しては非常に多くの様々な影響があるので、トライアル・アンド・エラーの実験によって調整しなければならない。しかしながら、これは、上記で開示した通りの、電解質安定性の試験法を用いて、あらゆる不適切な努力をすることなく、容易になし得る。
【0061】
さらに、下記の実施例によって、本発明のポリマーラテックスの適切な電解質安定性を調整することができる方法の例が示される。
【0062】
本発明のポリマーラテックスは、種々のTgの部分を得るための、多段階または多連続重合を用いた慣用の乳化重合によって製造することができる。
【0063】
本発明の方法によれば、先ず、硬質相部分または軟質相部分を得るために選択されたモノマーまたはモノマー混合物を、フリーラジカル形成活性剤、乳化剤および水の存在下で重合する。その後、第一の部分が軟質相であった場合は、硬質相となる第二のモノマーまたはモノマー混合物を、またはその逆を、同一の反応混合物中で重合させる。それにより、多段階または多連続共重合が起こる。1つを超える硬質部分および/または1つを超える軟質部分をポリマー粒子中に導入することもまた可能である。従って、硬質および軟質部分を重合する順序は重要ではない。例えば、先ず2以上の軟質または硬質部分を重合し、その後、少なくとも1つのそれぞれ他の部分を重合することも、本発明の範囲内である。勿論、硬質および軟質部分をもう一つの順序で重合することも可能である。
【0064】
本発明について上記で論じた通り、少なくとも1つの硬質部分および少なくとも1つの軟質部分の相対量のみが重要である。
【0065】
1つの好ましい具体例によれば、先ず硬質相部分を重合し、次いで軟質相部分を、その後再度硬質相部分を重合する。
【0066】
本発明の重合方法において、所望の粒子サイズを調整するために、第一の部分の重合に、それが硬質部分または軟質部分であるかにかかわらず、種ラテックスを使用することも可能である。本発明の好適な種は、例えば、本発明によって製造されるラテックスに基づくラテックスよりなる。または、種は、本発明のラテックスの硬質部分または軟質部分のいずれかを構成するモノマーのみを含有するラテックスであってもよい。しかしながら、所望の粒子サイズが得られる限り、本発明のラテックスと全く異なる種ラテックスを使用することもまた可能である。
【0067】
最初に導入される種の粒子サイズは、好ましくは10〜80nmの範囲内であり、より好ましくは20〜50nmの範囲内である。
【0068】
その粒子がその後の重合の種として働くことができる無機顔料もまた、本発明の方法において種として使用することができる。例えば、シリカ単独等の、平均粒子サイズが5〜100nmの顔料が好適である。
【0069】
使用される種の量は、製造されるラテックスのサイズによって決まり、通常は、重合法に用いられるモノマーの総量の0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0070】
本発明の方法に用いてもよいフリーラジカル開始剤は、例えば、過酸化水素、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムペルオキシニ硫酸、ペルオキシ炭酸塩およびペルオキシホウ酸塩等の無機過酸化化合物、アルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルヒドロペルオキシド、アシルヒドロペルオキシドおよびジアシルペルオキシド等の有機過酸化化合物、過ベンゼン酸t−ブチル等のエステル類、および無機および有機開始剤の組み合わせである。開始剤の量は、通常は用いるモノマーの総量の0.01〜5重量%の範囲内であり、好ましくは0.05〜2.0重量%の範囲である。上述の無機および有機ペルオキシ化合物もまた、知られている方法で、1以上の好適な還元剤と組み合わせて使用してもよい。言及し得るこのような還元剤の例は、二酸化硫黄、アルカリ金属ニ亜硫酸塩、アルカリ金属およびアンモニウムの亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩およびホルムアルデヒド・スルホキシル酸塩、および、ヒドロキシルアミン塩酸塩、硫酸ヒドラジン、硫酸鉄(II)、グルコースおよびアスコルビン酸である。還元剤の量は、モノマーの総量の0.01〜1.0重量%である。
【0071】
最も好適な開始剤または開始剤システムは、予備試験によって決定してもよい。適合性は、特に、使用するモノマーおよび重合反応温度によって決まる。
【0072】
付加的に緩衝物質およびキレート剤の存在下で乳化重合を実施することはしばしば妥当である。好適な物質は、例えば、アルカリ金属リン酸塩およびピロリン酸塩(緩衝物質)およびキレート剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のアルカリ金属塩である。緩衝物質およびキレート剤の量は、通常、モノマーの総量の0.01〜1重量%である。
【0073】
さらに、乳化重合において、連鎖移動剤(調整剤)の使用が有利である可能性がある。代表的な薬剤は、例えば、C1-C12アルキルメルカプタン等の有機硫黄化合物であり、n−ドデシルメルカプタンおよびt−ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤が存在する場合、その量は、通常、使用するモノマーの総量の0.05〜3.0重量%であり、好ましくは0.2〜2.0重量%である。
【0074】
本発明の乳化重合において、必要な安定剤および/または乳化剤の添加を制御して、所望の粒子サイズおよび充分な安定化を達成し、重合工程中の凝集を回避し、しかし本発明に要求される通りの電解質安定性も達成することもまた重要である。乳化剤は知られており、乳化重合において普通に用いられる(D.C.ブラックレイ(Blackley)、乳化重合(Emulsion Polymerization)、7節、アプライド・サイエンス・パブリッシャーズ社(Applied Science Publishers Ltd.)、ロンドン、1975年)。
【0075】
本発明で使用してもよい乳化剤は、特に、高級脂肪族アルコール硫酸塩、高級アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アリールスルホネート、それらとホルムアルデヒド、スルホコハク酸エステルの塩および硫酸エチレンオキシド付加物との縮合生成物等の、いわゆるアニオン性乳化剤である。好ましくは、本発明のポリマーラテックスは、フェノールエトキシレートの硫酸塩を含まない。
【0076】
いわゆる非イオン性乳化剤にも言及することが可能であり、例えば、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール等の脂肪族アルコール、ラウリン、ミリスチン、パルミチン、ステアリンおよびオレイン酸等の脂肪酸およびそれらのアミド、およびイソオクチル、イソノニルおよびドデシルフェノール等のアルキルフェノールと、エチレンオキシドとの知られている反応産物が挙げられる。
【0077】
用いられる乳化剤または安定化剤の総量は、凝集は形成されないが、他方で、本発明が要求する通りの最終のポリマーラテックスに要求される電解質安定性が達成されるような方法の重合中に、ラテックスが安定化されるように算出する。
【0078】
本発明のポリマー粒子の種々の部分を重合する際に、重合される第一の部分は、それが軟質相部分であるか硬質相部分であるかにかかわらず、バッチ式または半連続的方式で重合することができる。第二の部分は、半連続的方法を用いて重合してもよい。あるいは、全ての部分をバッチ法または半連続的方法を用いて重合することも可能であり、または、代わりに、個々の部分を所望の順序で重合する、バッチ法または半連続的方法を用いることが可能である。
【0079】
本発明のポリマーラテックスは、ディップ成形法に特に好適である。従って、本発明の一つの様相によれば、ポリマーラテックスは混ぜ合わせて、ディップ・コーティング法に直接使用することができる、ポリマーラテックス組成物を産生する。再現可能で良好な物理的フィルム特性を得るために、複合ポリマーラテックス組成物のpHは、pH調整剤によって、pH7〜11、好ましくは8〜10の範囲に調整しなければならない。複合ポリマーラテックス組成物は、本発明のポリマーラテックス、pH調整剤、好ましくはアンモニアまたはアルカリ水酸化物、および、抗酸化剤、顔料、TiO2、フィラーおよび分散剤から選択される、これらの組成物に使用される通常の添加物を含有する。
【0080】
ディップ成形法に使用される本発明の複合ポリマーラテックス組成物において、硫黄のような慣用の加硫システムを、チウラムおよびカルバメートのような促進剤および酸化亜鉛と組み合わせて使用することが可能である。しかしながら、これらの成分は、本発明によれば、最終製品の所望の機械的および審美的特性を達成するために必要ではないが、アレルギー反応や他の健康被害に関して問題を引き起こす可能性があり、加えて、配合方法がより複雑になることから、本発明の複合ラテックス組成物は好ましくはこれらの成分を含まない。
【0081】
さらには、本発明の複合ポリマーラテックス組成物は、例えば、多価カチオンまたは、化学的架橋を達成するためにラテックス粒子上の官能基と反応するのに好適な、他の多官能性有機化合物のような、架橋成分を必要としない。その結果、本発明のラテックス組成物は、好ましくは、架橋成分、特に多価カチオンを実質的に含まない。「実質的に含まない」という用語は、例えば多価金属カチオンが不純物のレベルで存在してもよいことを意味し、例えば、ラテックスまたはラテックス組成物を製造する、他の成分の可能な不純物が、故意ではなく導入されることによる。例えば、不純物レベルでの多価金属イオンの総計は、1mmol/l未満、好ましくは0.5mmol/l未満、より好ましくは0.3mmol/l未満、最も好ましくは0.2mmol/lの濃度で存在してもよい。
【0082】
本発明のディップ成形ラテックス品の製造方法において、初めに、最終品の所望の形状を有する型を、金属塩溶液を含む凝固剤浴に浸漬する。凝固剤は通常、水、アルコールまたはそれらの混合物中の溶液として用いられる。凝固剤の具体例として、金属塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛および塩化アルミニウムのような金属ハロゲン化物;硝酸カルシウム、硝酸バリウムおよび硝酸亜鉛当の金属硝酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、および硫酸アルミニウムのような金属硫酸塩;および酢酸カルシウム、酢酸バリウムおよび酢酸亜鉛等の酢酸塩であり得る。最も好ましいものは塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムである。凝固剤溶液は、形成物のぬれ挙動を改善するための添加剤を含むかもしれない。
【0083】
その後、型を浴から出し、任意に乾燥させる。このように処理された型は、次に、本発明の複合ラテックス組成物に浸漬する。それにより、ラテックスの薄いフィルムが型の表面上に凝固する。その後、型をラテックス組成物から出し、例えば極性成分を組成物から抽出し、凝固したラテックスフィルムを洗浄するため、任意に水浴に浸漬する。
【0084】
その後、ラテックスでコートされた型を、80℃未満の温度で任意に乾燥する。
【0085】
最後に、ラテックスでコートされた型を、最終的なフィルム製品が所望の機械的特性を得るために、80〜180℃の温度で熱処理する。次に、最終的なラテックスフィルムを型から外す。熱処理の期間は温度によるが、代表的には1〜60分である。温度が高くなるに従って、必要な処理時間は短くなる。
【0086】
最終的な、熱処理されたポリマーラテックスフィルムは、抗張力が最低でも約7MPaで破断点伸びが最低でも約300%であり、好ましくは、抗張力が最低でも約10Mpaで破断点伸びが最低でも約350%、より好ましくは、抗張力が最低でも約15Mpaで破断点伸びが最低でも約400%である。これらの機械的特性は、ISO 37:1994に従って測定した。
【0087】
好ましくは、本発明のポリマーラテックスフィルムは、120℃で30分間熱処理した後の抗張力が、25℃(室温)で保持した同一のポリマーラテックスと比較して、最低でも2Mpa、好ましくは最低でも5Mpa、より好ましくは最低でも5Mpa、最も好ましくは最低でも6Mpa増加する。
【0088】
この方法は、当業界で知られているディップ成形法によって製造することができる、あらゆるラテックス品に使用することができる。
【0089】
本発明は、手術用手袋、実験用手袋、コンドーム、カテーテルのような医療用具、または全ての種類の産業用または家事用手袋から選択される、ディップ成形ラテックス品に特に適用される。
【0090】
本発明の複合ラテックス組成物の特別の利点は、あらゆる種類の架橋剤が不要であり、好ましくは架橋剤が複合ラテックス組成物中に存在しないことである。上記で論じた通り、多価金属カチオンが上述の不純物レベルで存在しないことにより、複合ラテックス組成物の安定性が著しく上がり、ポット寿命(pot life)が延びる。このことから、製造方法は柔軟になるであろう。さらに、本発明のラテックス組成物を構成するためには、ポリマーラテックスに加えて数種類の要素しか必要でないため、この組成物の製造もまた、従来の組成物に比べてはるかに容易であり、特に、架橋剤、促進剤等の量を正確に定量および測定する必要はもはやない。
【実施例】
【0091】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0092】
実施例1:
31%種ラテックス(粒子サイズ36nm)55gを、水750g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、Na4EDTA0.5g、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム0.05g、t−ブチルヒドロペルオキシド0.8gと共に、窒素でパージしたオートクレーブ中で40℃に加熱し、メタクリル酸メチル94.3gおよびメタクリル酸4.0gよりなる硬質相モノマー混合物を加えた。1時間の重合の後、アクリロニトリル270g、メタクリル酸36g、ブタジエン579g、およびt−ドデシルメルカプタン9gよりなる軟質相モノマー/連鎖移動剤の混合物を加えた。7時間にわたり、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム22.5g、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム0.7g、および水300gの乳化剤/共活性剤をフィードした。12時間の総重合時間の後、総固体含量は48.0%であり、転化率は98%であった。重合は、ジエチルヒドロキシルアミンの5%水溶液20gを添加して停止した。pHをアンモニアで調整してpH7.5とし、残存するモノマーは60℃で真空蒸留して除去した。
【0093】
実施例2:
31%種ラテックス(粒子サイズ36nm)55gを、水750g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、Na4EDTA0.5g、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム0.05g、t−ブチルヒドロペルオキシド0.8gと共に、窒素でパージしたオートクレーブ中で40℃に加熱する。硬質相に、スチレン66g、アクリロニトリル28gおよびメタクリル酸4.0gを1時間以内でフィードした。2時間の重合の後、アクリロニトリル270g、メタクリル酸36g、ブタジエン579g、およびt−ドデシルメルカプタン9gよりなる、軟質相モノマー/連鎖移動剤混合物を5時間以内でフィードした。10時間にわたる軟質相モノマーのフィードと平行して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム22.5g、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム0.7g、および水300gの、乳化剤/共活性剤をフィードした。15時間の総重合時間の後、総固体含量は48.2%であり、転化率は98%であった。重合は、ジエチルヒドロキシルアミンの5%水溶液20gを添加して停止した。pHをアンモニアで調整してpH7.5とし、残存するモノマーは60℃で真空蒸留して除去した。
【0094】
実施例3:
硬質相に、メタクリル酸メチル80g、アクリル酸ブチル14gおよびメタクリル酸4.0gを1時間以内でフィードした以外は、実施例2のように重合を実施した。
【0095】
15時間の総重合時間の後、総固体含量は47.6%であり、転化率は97%であった。重合は、ジエチルヒドロキシルアミンの5%水溶液20gを添加して停止した。pHをアンモニアで調整してpH7.5とし、残存するモノマーは60℃で真空蒸留して除去した。
【0096】
実施例4:
窒素でパージした反応器中、カルボキシル化NBRラテックス(ペルブナン(Perbunan)NラテックスVT-LA、45%、ポリマーラテックス由来)1800gに水200gを加えて60℃に加熱し、メタクリル酸メチル190gを加えた。混合物は1時間平衡化し、その後、t−ブチルヒドロペルオキシド0.8gおよびホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム0.8gを水20gに溶解して加えることにより、重合を開始した。5時間後、転化率はほぼ100%であった。pHをアンモニアで調整してpH7.5とし、残存するモノマーは真空除去した。
【0097】
フィルムの製造(浸漬フィルム):pHを9.7に調整し(NH3)、ラテックスをTSCが33%になるように希釈した。型として素焼磁器プレートを用いて浸漬を実施した。凝固剤として、60℃で1.21g/ccmの濃度の硝酸カルシウム溶液を用いた。凝固剤に浸漬(3秒)した後、ラテックスに浸漬し(30秒)、空気乾燥し(1分)、最後に20分洗脱した。洗脱の後、120℃で熱処理した(30分)。
【0098】
フィルムの製造(乾燥フィルム):ラテックスフィルムを室温で乾燥して製造した。その後、40℃で熱処理した。
【0099】
フィルムの試験/結果:浸漬ポリマーフィルムの物理的フィルム特性を、ISO 37:1994に従って試験した。図1は、抗張力に対する特徴的な温度衝撃性(120℃、30分)の例である。抗張力の増加は、図ではΔF maxと規定する。表1は、実施例1〜4のこのΔF max値を要約する。結果を、対照実験の加硫浸漬ラテックスと比較する。本発明のラテックス化合物の特徴的挙動が明確に示される。本発明のラテックス化合物/ラテックスフィルムのみが、顕著な抗張力の増加を示す。
【0100】
図2は、実施例1〜4(熱処理)の物理的特性を、代表的な浸漬ラテックスから製造された加硫ラテックスフィルムと比較したものである。本発明のラテックス組成物/ラテックスフィルムは、従来の加硫物の物理的フィルム性能を実現するが、硬化化学物質がないことが明らかである。
【0101】
TMA/結果:乾燥ラテックスフィルムの測定。ポリマーフィルムを2枚の石英ディスクの間に置き、−50℃〜+150℃の温度範囲にわたって加熱速度5°K/分で、0.5Nの力で、針(直径1mm)で穿通した。穿通は、使用したフィルムの厚さの%で計算した。D 100値は、100℃での針穿通%と定義する。温度が150℃に達した時、温度を150℃で5分間保ち、その後、サンプルを−50℃に冷却し、針をフィルム表面の異なる部分に置き、第二の温度変化を同じ条件で開始した。ΔD 100値は、第一の温度変化のD 100−第二の温度変化のD 100と算出するので、ΔD 100値>0は、熱処理の作用として、フィルムの硬度の増加を表す。表2は、実施例1〜4と1例の対照実験の(D 100の結果を要約する。本発明のラテックス組成物の特徴的挙動が明らかである。本発明のラテックス組成物/ラテックスフィルムのみが、熱処理の作用として特徴的なフィルム硬化を示す。
【0102】

図1:浸漬ポリマーフィルム。熱処理の作用として、抗張力が増加。
ΔF maxの定義(実施例1)
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】

図2:物理的フィルム特性の比較。実施例1〜4のポリマーフィルムを記述に従って、硬化剤を用いずに浸漬した。従来の加硫の硬化ペースト:1 phr ZnO, 1 phr 硫黄, 1 phr LDA, pH: 9.7 (NH3).
【0106】
電解質安定性の影響:本発明のポリマーラテックスの電解質安定性への影響を表3に示す。電解質安定性は、室温およびpH10で、ラテックスの総固体含量が0.1%の場合の臨界凝集温度(ccc)として定量する。これらの条件下で、ラテックスを2.0mol/lの塩化カルシウム溶液(pH10に調節)で滴定し、その後、塩化カルシウム濃度の関数として、ラテックスの濁度をメットラー・フォトトロード(Mettler Phototrode)DP550を用いて光度測定した。cccは、濁度/電解質濃度曲線の変曲点より得る。結果を表3に示す。記載に従って、型として素焼の磁器プレートと、凝固剤として60℃で1.21g/ccmの濃度の硝酸カルシウム水溶液を用いて、フィルムの製造を行った。
【0107】
実施例1〜4および対照例1(cccが低い市販のX-NBR)のみ、記載した凝固方法によって処理して均一のポリマーフィルムを得ることができ、一方、対照例2(cccが高い市販のX-NBR)は不均質で部分的にしか凝固せず、不均一なポリマーフィルムとなる。
【0108】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル乳化重合によって作られたポリマーラテックスであって、少なくとも1つの共役ジエン成分に由来する構造単位を含有するポリマー粒子を含み、該ポリマー粒子は、最低でも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの硬質相部分、および最高でも10℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つの軟質相部分を含み、ポリマー粒子の総重量に対して硬質相部分の総量が2〜40重量%であり、軟質相部分の総量が60〜98重量%であり、Tgは、ASTM D3418-03に従ってDSCで測定し、該ポリマーラテックスは、臨界凝集濃度として測定した電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が30mmol/l CaCl2未満である、ポリマーラテックス。
【請求項2】
請求項1のポリマーラテックスであって、硬質相部分のTgが最低でも70℃、好ましくは最低でも80℃、より好ましくは最低でも90℃である、ポリマーラテックス。
【請求項3】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、軟質相部分のTgが最高でも0℃、好ましくは最高でも−10℃、より好ましくは最高でも−20℃、最も好ましくは最高でも−30℃である、ポリマーラテックス。
【請求項4】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、硬質相部分の総量が5〜30重量%であり、軟質相部分の総量が70〜95重量%であり、好ましくは硬質相部分の総量が10〜25重量%であり、軟質相部分の総量が75〜90重量%であり、重量%はポリマー粒子の総重量に対するものである、ポリマーラテックス。
【請求項5】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、軟質相部分が、共役ジエン;エチレン型不飽和モノカルボン酸;エチレン型不飽和ジカルボン酸、その無水物、モノエステルおよびモノアミド;(メタ)アクリルニトリル;スチレン;置換スチレン;α−メチルスチレン;(メタ)アクリル酸のC1〜C10のエステル;(メタ)アクリル酸のアミド;N−メチロールアミド基、およびそのエステルおよびエーテル誘導体を含むエチレン型不飽和化合物よりなる群から選択されるモノマーに由来する構造単位を、互いに独立して含有する、ポリマーラテックス。
【請求項6】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、硬質相部分が、エチレン型不飽和モノカルボン酸;不飽和ジカルボン酸、その無水物、モノエステルおよびモノアミド;N−メチロールアミド基、およびそのエステルおよびエーテル誘導体を含むエチレン型不飽和化合物;およびそれらの混合物;(メタ)アクリルニトリル;スチレン;置換スチレン;α−メチルスチレン;(メタ)アクリル酸のC1〜C8のエステル;(メタ)アクリル酸のアミド;およびそれらの混合物よりなる群から選択されるモノマーに由来する構造単位を、互いに独立して含有する、ポリマーラテックス。
【請求項7】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、臨界凝集濃度として測定した電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が25mmol/l CaCl2未満、好ましくは20mmol/l CaCl2未満である、ポリマーラテックス。
【請求項8】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、カルボキシル化された、ポリマーラテックス。
【請求項9】
請求項8のポリマーラテックスであって、軟質相部分または硬質相部分またはその両者がカルボキシル化された、ポリマーラテックス。
【請求項10】
前項のいずれかのポリマーラテックスであって、ポリマー粒子が自己架橋可能な基を含む、ポリマーラテックス。
【請求項11】
請求項10のポリマーラテックスであって、自己架橋可能な基が、N−メチロールアミド基およびそれらのエステルおよびエーテル誘導体;およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシ−メチル−(メタ)アクリルアミド、N−アセトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシエチル)アクリルアミドから選択される、ポリマーラテックス。
【請求項12】
ポリマーラテックスの製造方法であって、量について、ポリマーの総重量に対して硬質相部分の総量が2〜40重量%であり、軟質相部分の総量が60〜98重量%であるように、遊離基開始剤、安定剤および水の存在下、最低でも50℃のガラス転移温度(Tg)を有する硬質相部分をもたらす第一のエチレン型不飽和モノマーまたはモノマー混合物を乳化重合法において重合し、その後、最高でも10℃のガラス転移温度(Tg)を有する軟質相部分をもたらす第二のモノマーまたはモノマー混合物を重合すること、またはその逆を含み、Tgは、ASTM D3418-03に従ってDSCで測定するが、但し、少なくとも1つの共役ジエンを重合工程に使用し、安定剤の量を調整して、臨界凝集濃度として測定した電解質安定性(pH10で0.1%のラテックスの総固体含量を測定)が30mmol/l CaCl2未満とする、方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、その後、少なくとも1つのさらなる硬質相および/または軟質相部分を重合する、方法。
【請求項14】
請求項12および13のいずれかの方法であって、粒子サイズを調節するために種ラテックスの存在下で第一の部分を重合する、方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかの方法であって、軟質相部分および硬質相部分のTgおよび量、軟質相および硬質相部分に使用されるモノマー、および電解質安定性が、請求項2〜11のいずれかの通り規定される、方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれかのポリマーラテックスを含む、ディップ成形品の製造に好適な、複合ポリマーラテックス組成物。
【請求項17】
硫黄および加硫促進剤を含まない、前記複合ポリマーラテックス組成物。
【請求項18】
請求項16および17のいずれかの複合ポリマーラテックス組成物であって、多価カチオンおよび架橋剤を実質的に含まない、組成物。
【請求項19】
ディップ成形ラテックスフィルムの製造方法であって、
(a)最終品の所望の形状を有する型を、金属塩溶液を含む凝固剤浴に浸漬すること;
(b)浴から型を取り出し、任意に型を乾燥すること;
(c)工程(a)および(b)で処理した型を、請求項16〜18のいずれかの複合ラテックス組成物中に浸漬すること;
(d)ラテックス組成物から型を取り出し、任意にラテックスでコーティングした型を水浴に浸漬すること;
(e)任意にラテックスでコーティングした型を乾燥すること;
(f)工程(d)または(e)で得られたラテックスでコーティングした型を、80〜180℃の温度で熱処理すること;および
(g)ラテックス品を型から取り外すこと、
による方法。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれかのポリマーラテックスから作られたフィルム。
【請求項21】
請求項20のフィルムであって、120℃30分の熱処理の後、25℃で保持した同一のポリマーラテックスフィルムと比較して、少なくとも2MPa、好ましくは少なくとも4MPa、より好ましくは少なくとも6Mpaの、抗張力の増加を示す、フィルム。
【請求項22】
請求項19の方法で得られ得る熱処理フィルムであって、ISO 37:1994に従って測定される、抗張力が少なくとも約7Mpaであり、かつ破断点伸びが少なくとも約300%であり、好ましくは抗張力が少なくとも約10Mpaであり、破断点伸びが少なくとも約350%であり、より好ましくは抗張力が少なくとも約15Mpaであり、かつ破断点伸びが少なくとも約400%である、フィルム。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれかに記載のラテックスフィルムを含むラテックス品であって、手術用手袋、実験用手袋、コンドーム、カテーテルおよび産業用および家事用手袋から選択される、ラテックス品。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーラテックスの、ディップ成形品の製造のための使用。
【請求項25】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーラテックスの、物質のコーティングおよび含浸のための使用。
【請求項26】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーラテックスでコーティングまたは含浸された物品。
【請求項27】
請求項26の物品であって、コーティングまたは含浸された繊維材料を含む物品。

【公表番号】特表2008−512526(P2008−512526A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530627(P2007−530627)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009446
【国際公開番号】WO2006/027164
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507076193)ポリマーラテックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】