説明

ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法

【課題】表皮材にディンプルが発生することを抑制し、且つ、太陽電池セル等の被固着物の割れを防止し、接着剤の使用量を増やすことなく被固着物の固着強度を向上させる。
【解決手段】ハニカムコア13の表裏両側に接着剤16を介して表皮材14,15を貼着して成るディンプルレスハニカムサンドイッチパネル11の製造方法において、該ハニカムコア13を枠体19内に圧縮状態で装入する工程と、該ハニカムコア13の表裏両側に接着剤16を介して表皮材14,15を積層し、該積層体を加圧・加熱して表皮材14,15をハニカムコア13に貼着する工程と、表皮材14,15の貼着後に枠体19をハニカムコア13から取り外す工程とを備え、該枠体19を取り外す際にハニカムコア13に生ずる形状復元力により表皮材14,15を伸展状態に張設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法に関するものであり、特に、太陽電池セルなどが固着される軽量構造のディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルは、中空状のハニカムコアの表裏両側に一対の表皮材(パネルスキンともいう。)を接着剤で貼着して形成され、主に人工衛星用の太陽電池セルを設置するために多用されている。この場合、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの性能としては、太陽電池セルを安定的に支持できれば、強度や剛性はそれ程要求されず、むしろ、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル自体を軽量に構成することが最も重要となる。そのため、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの表皮材としては可能な限り薄いものが使用される。
【0003】
図5は極薄の表皮材を用いて製造したディンプルレスハニカムサンドイッチパネルを示す。同図に示すように、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル1は、断面正六角形状に形成された中空状のコアセル2,2…を平面状に多数配列して成るハニカムコア3と、該ハニカムコア3を上下両側から挟むよう設けられた上下一対の表皮材4,5と、該表皮材4,5をハニカムコア3に貼着する接着剤6,6とから構成されている。
【0004】
ハニカムコア3は、アルミニウム合金等の金属材から構成されている。又、表皮材4,5は、高強度で熱膨張率がハニカムコア3よりも小さいCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等の繊維強化複合材料から構成されている。
【0005】
特に、軽量化のために表皮材4,5の厚みは可能な限り薄く設定されている。又、表皮材4,5をハニカムコア3に貼着する接着剤6,6としては、一般に熱硬化型エポキシ樹脂系のものが採択されている。
【0006】
上記ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル1を製造する際は、ハニカムコア3の上下両側に接着剤6,6を介して表皮材4,5を積層し、該積層体を所定の加圧下にて加熱処理することにより、表皮材4,5をハニカムコア3に接合している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−128093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル1は、通常のパネルに比べて軽量であるため、宇宙空間にて太陽電池セル(被固着物)7を固着する基盤として最適である。しかし、表皮材4,5の厚みが極薄であるために、図6に示すように、表皮材4,5の表面に略6角形状の窪み、所謂ディンプル8が生じ易い。
【0009】
これは、接着剤6,6を加熱処理してハニカムコア3に表皮材4,5を接合した直後に、接着剤6,6が収縮すること、並びに、ハニカムコア3の熱膨張率が表皮材4,5の熱膨張率よりも大きいことにより、表皮材4,5におけるコアセル2の開口部と対応する部分に圧縮力が作用して、当該表皮材4,5の表面にディンプル8が発生し易くなると考えられる。尚、図6中の符号9は、太陽電池セル7と表皮材4の間に介装した絶縁フィルムである。
【0010】
上記表皮材に例えば、深さ0.078ミリ以上のディンプルが生じた場合は、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの外観を損ねるのみならず、脆性材料から成る太陽電池セルが割れやすくなる。また、表皮材に対する太陽電池セルの固着強度が小さくなる。さらに、太陽電池セルを固着するための接着剤の使用量が多くなり、材料費のコストアップを招く等の問題があった。
【0011】
そこで、表皮材にディンプルが発生することを抑制し、且つ、太陽電池セル等の被固着物の割れを防止するとともに、接着剤の使用量を増やすことなく被固着物の固着強度を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ハニカムコアの表裏両側に接着剤を介して表皮材を貼着して成るディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法において、該ハニカムコアを枠体内に圧縮状態で装入するコア装入工程と、該ハニカムコアの表裏両側に前記接着剤を介して前記表皮材を積層して、該積層体を加圧・加熱して該表皮材をハニカムコアに貼着する表皮材貼着工程と、該表皮材の貼着後に前記枠体を前記ハニカムコアから取り外す枠体脱着工程とを備え、該枠体脱着時に前記ハニカムコアに生ずる形状復元力により、前記表皮材を伸展状態に張設することを特徴とするディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法を提供する。
【0013】
この製造方法によれば、まず、ハニカムコアを枠体内に圧縮状態で装入する。次に、ハニカムコアの表裏両側に接着剤を介して表皮材を配設し、加圧下にて加熱処理して表皮材をハニカムコアに貼着する。この後、ハニカムコアから枠体を取り外すことで、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルが製造される。
【0014】
斯くして、枠体をハニカムコアから取り外した際に、該ハニカムコアは圧縮状態が解放されて元の状態に戻ろうとする形状復元力が、ハニカムコアの内部から外周部に向かう放射方向に作用する。その結果、ハニカムコアの形状復元力により、表皮材も放射方向に引っ張られるため、該表皮材が伸展状態でハニカムコアに貼設される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、表皮材は伸展状態でハニカムコアに貼着することにより、表皮材にディンプルが生じることを抑制できるので、太陽電池セル等の被固着物の割れを防止することができる。
【0016】
また、表皮材の平面精度が向上するので、被固着物の固着強度が増大するとともに、接着剤の使用量が減少して材料費のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示し、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルを説明する斜視図。
【図2】本実施例に係る枠体を示す斜視図。
【図3】図2の枠体内にハニカムコアを装入したときの状態を説明する斜視図。
【図4】本発明に係るディンプルレスハニカムサンドイッチパネルを示す断面図。
【図5】従来例を示し、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの斜視図。
【図6】従来例を示し、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、表皮材にディンプルが発生することを抑制し、且つ、太陽電池セル等の被固着物の割れを防止するとともに、接着剤の使用量を増やすことなく被固着物の固着強度を向上させるという目的を達成するために、ハニカムコアの表裏両側に接着剤を介して表皮材を貼着して成るディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法において、該ハニカムコアを枠体内に圧縮状態で装入するコア装入工程と、該ハニカムコアの表裏両側に前記接着剤を介して前記表皮材を積層して、該積層体を加圧・加熱して該表皮材をハニカムコアに貼着する表皮材貼着工程と、該表皮材の貼着後に前記枠体を前記ハニカムコアから取り外す枠体脱着工程とを備え、該枠体脱着時に前記ハニカムコアに生ずる形状復元力により、前記表皮材を伸展状態に張設することにより実現した。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図4に従って説明する。本実施例は、主として人工衛星用の太陽電池セルを設置する基盤として利用される軽量構造のディンプルレスハニカムサンドイッチパネルに適用したものである。
【0020】
図1は、本実施例に係るディンプルレスハニカムサンドイッチパネルを示す。同図に示すように、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル11は蜂の巣構造のハニカムコア13を具備し、該ハニカムコア13は、中空状の断面正六角形に形成した多数のコアセル12,12…を互いに隣接させて平面状に配列して構成されている。
そして、ハニカムコア13の上下両端側には表皮材14,15がフィルム状の接着剤(以下、「接着剤シート」という。)16,16を介して強固に貼着され、該表皮材14,15はハニカムコア13の開口部全体を閉鎖するように張設されている。依って、ハニカムコア13は表皮材14,15によりサンドイッチ状に挟装された軽量構造を呈している。
【0021】
更に、ハニカムコア13は、熱膨張率が比較的大きい金属材料、例えば、アルミニウム合金から構成されている。又、表皮材14,15は、高強度で熱膨張率の小さいCFRCから構成されている。特に、表皮材14,15の厚みは可能な限り薄く、例えば、0.1mm前後に設定されている。そして、表皮材14,15とハニカムコア13とを接合するシート状接着剤16,16としては、熱硬化型エポキシ樹脂系のものが採択されている。
【0022】
次に、上記ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル11の製造方法(コアプリストレスによる薄板表面材貼着型ディンプルレスハニカムサンドイッチパネルディンプルレス製造方法)について詳述する。まず、図2に示すように、一対の縦部材17,17と横部材18,18とをビス等の止着具(図示せず)にて分離可能に結合して成る枠体19を用意し、そして、図3に示すように、該枠体19内にハニカムコア13を圧縮状態で装入する。この場合、枠体19はハニカムコア13よりもやや小さい形状寸法のものを使用する。そして、枠体19にハニカムコア13を装入する際は、最初に、枠体19内の外周縁部に沿う部分のみにハニカムコア13のコアセル12,12…を装入していく。
【0023】
而して、枠体19内の外周縁部に沿ってコアセル12,12…を装入することで、コアセル12,12…は枠体19全周形状に倣う環状に配列される。このあと、前記環状領域の内側に沿って順次コアセル12,12…を装入して、枠体19内の中心領域のみを未装入部分(空きスペース)として確保しておく。
そして、最後に枠体19内に空けられた中心領域にコアセル12,12…を強制的に装入することで、図3に示すように、枠体19内にコアセル12,12…から成るハニカムコア13全体がほぼ均等な圧縮応力を有して保持される。この場合、ハニカムコア13の圧縮力は、該ハニカムコア13の中心部から外周部に向かう放射方向に作用する。
【0024】
ついで、図1に示すように、ハニカムコア13の上下両端面に熱硬化型エポキシ樹脂系の接着剤シート16,16を配置するとともに、該接着剤シート16,16外面に表皮材14,15を積層する。即ち、上下一対の表皮材14,15とハニカムコア13との間に接着剤シート16,16が挟まれるよう、表皮材14,15、ハニカムコア13及び接着剤シート16,16を積層する。
【0025】
然る後、ハニカムコア13、表皮材14,15及び接着剤シート16,16から成る積層体を所定の加圧(例えば1.75気圧)条件下にて所定温度(例えば、80〜100℃)に加熱処理して所要時間キープし、接着剤シート16,16を熱硬化させる。
【0026】
これによって、接着剤シート16,16が均一な厚さの層に熱硬化して、表皮材14,15とハニカムコア13とは互いに強固に接合される。そして、表皮材14,15の接合後に、前記枠体19をハニカムコア13から取り外して、該ハニカムコア13を圧縮状態から開放させる。以上により、ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル11の製造が完了する。
【0027】
叙上の如く本発明によると、枠体19を取り外した際に、ハニカムコア13の圧縮状態が解放されて、元の形状に戻る復元力がハニカムコア13の内側中心部から外側周縁部に向かう放射方向に作用する。
【0028】
この結果、ハニカムコア13に生じた形状復元力により、表皮材14,15も放射方向に引っ張られるため、図4に示すように、表皮材14,15が伸展状態で張設される。このため、表皮材14,15の平面精度が向上して、表皮材14,15におけるコアセル12,12…に対応した部分にディンプルが生じることが可及的に抑制される。実験によると、表皮材14,15に深さ0.078ミリ以上のディンプルは形成されなかった。
【0029】
斯くして、表皮材14,15として極薄のものを用いた場合でも、ディンプルが殆ど存在しない外観品質に優れたディンプルレスハニカムサンドイッチパネル11を容易に製造できるのみならず、表皮材14,15上に固着される太陽電池セル7の割れや変形を防止することができる。尚、図4中、符号9は絶縁フィルムである。
【0030】
また、表皮材14,15に対する太陽電池セル7の固着強度が増大して製品価値が向上する。さらに、太陽電池セル7を固着する接着剤の使用量が少なくなり、材料コストを節減させることができる。
【0031】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ハニカムコアの表裏両側に表皮材を貼着して成るディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法であれば、太陽電池セル以外の製品を固着するディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法にも全て適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 ディンプルレスハニカムサンドイッチパネル
12 コアセル
13 ハニカムコア
14,15 表皮材(パネルスキン)
16 接着剤
19 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコアの表裏両側に接着剤を介して表皮材を貼着して成るディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法において、
該ハニカムコアを枠体内に圧縮状態で装入するコア装入工程と、該ハニカムコアの表裏両側に前記接着剤を介して前記表皮材を積層して、該積層体を加圧・加熱して該表皮材をハニカムコアに貼着する表皮材貼着工程と、該表皮材の貼着後に前記枠体を前記ハニカムコアから取り外す枠体脱着工程とを備え、
該枠体の脱着時に前記ハニカムコアに生ずる形状復元力により、前記表皮材を伸展状態に張設することを特徴とするディンプルレスハニカムサンドイッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−56719(P2011−56719A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207439(P2009−207439)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000232645)日本飛行機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】