説明

ディーゼルエンジンの自動停止制御方法及び自動停止装置

【課題】ディーゼルエンジンを自動停止させる際、車載発電機を駆動してエンジンに負荷を与え吸入空気による燃焼室の温度低下を抑制し、更に、車載バッテリの充電量が略最大の場合に、車載バッテリの電力を消費してグロープラグを駆動することで、車載バッテリへの過充電を防止しつつ、燃焼室を加熱してディーゼルエンジンの再始動性を高めること、等である。
【解決手段】自動停止条件の成立後、バッテリ充電工程において、車載バッテリに充電可能な車載発電機をディーゼルエンジンの駆動力で駆動させるように制御し、その後、燃焼室加熱工程において、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合に車載バッテリの電力でディーゼルエンジンの燃焼室を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の自動停止条件が成立した場合にディーゼルエンジンを自動停止させるディーゼルエンジンの自動停止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンを搭載した自動車等の車両において、燃費の向上、排気ガスの低減等を目的に、所定の自動停止条件が成立した(例えば、車速が略0のときにブレーキペダルが一定時間以上継続して踏まれた)場合に、ディーゼルエンジンを自動停止させる技術が普及しつつあるが、ディーゼルエンジンを自動停止させた後に再始動させる場合に、その再始動を確実に且つ速やかに行うこと、つまり、ディーゼルエンジンの再始動性を高めることが要求される。
【0003】
そのために、ディーゼルエンジンには、その燃焼室にグロープラグが臨むように配設され、必要時に、このグロープラグが車載バッテリの電力で駆動され、燃焼室を加熱して吸入空気を暖めて燃料着火性を高めることができる(例えば、特許文献1参照)。尚、特許文献1には、エンジンの複数の気筒に対応する複数のグロープラグを全て同様に駆動するのではなく、各気筒において、ピストン停止位置を検出し、そのピストン停止位置に応じた電力でグロープラグを駆動する技術が開示されている。
【0004】
一方、車両のディーゼルエンジンには、車載発電機(オルタネータ)が付設され、車載バッテリの充電量が略最大になるように、この車載発電機がディーゼルエンジンの駆動力で駆動され発電して車載バッテリに充電している。また、車載発電機は、発電量(発電能力)を自在に調整可能に構成され、車載バッテリの充電量が略最大の場合には、発電量を0にして車載バッテリへの過充電を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−176569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディーゼルエンジンを自動停止させる場合、先ず燃焼室への燃料カットを行うが、この燃料カット後からディーゼルエンジンが完全に停止する迄のエンジン停止過程において、燃焼室の温度が燃焼に供しない吸入空気によって低下する。このエンジンの停止過程における空転量が大きくなると、それに伴って増大する吸入空気による燃焼室の温度低下も大きくなるため、ディーゼルエンジンの再始動性を高めるために、ディーゼルエンジンの自動停止後再始動前に、グロープラグを駆動する必要性が高まり、故に、車載バッテリの充電量が低下し、グロープラグ以外の電気負荷への供給電力が低下する虞がある。
【0007】
一方、エンジン停止過程において、ディーゼルエンジンの駆動力で車載発電機を駆動させることで、ディーゼルエンジンに負荷を与え、エンジンの停止過程における空転量を小さくできるので、吸入空気による燃焼室の温度低下を抑制できるが、車載バッテリの充電量が略最大の場合、車載バッテリへの過充電を行うことになるため車載バッテリの劣化の原因になる。一般に、ディーゼルエンジンがある程度長く作動している状態では、車載バッテリの充電量は略最大になるため、上記課題は顕著になる。
【0008】
本発明の目的は、ディーゼルエンジンを自動停止させる際、車載発電機を駆動することで、ディーゼルエンジンに負荷を与え、エンジンの停止過程における空転量を小さくして吸入空気による燃焼室の温度低下を抑制し、更に、車載バッテリの充電量に関連する値を監視し、車載バッテリの充電量が略最大の場合に、車載バッテリの電力を消費して加熱手段(グロープラグ)を駆動することで、車載バッテリへの過充電を防止しつつ、燃焼室の温度をできるだけ低下させないようにして、ディーゼルエンジンの再始動性を高めることができる、ディーゼルエンジンの自動停止技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明「ディーゼルエンジンの自動停止制御方法」は、所定の自動停止条件が成立した場合にディーゼルエンジンを自動停止させるディーゼルエンジンの自動停止制御方法において、前記自動停止条件の成立後、車載バッテリに充電可能な車載発電機をディーゼルエンジンの駆動力で駆動させるように制御するバッテリ充電工程と、前記車載発電機の駆動後、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合に車載バッテリの電力でディーゼルエンジンの燃焼室を加熱する加熱手段を駆動させるように制御する燃焼室加熱工程とを備えたものである。
【0010】
ここで、請求項1の発明においては、前記バッテリ充電工程において、車載発電機をその発電量が最大となるように駆動制御する構成(請求項2の発明)としてもよい。また、請求項1又は2の発明においては、前記燃焼室加熱工程において、ディーゼルエンジンの温度に関連する値が所定値以上か否か判定し、否定判定した場合に前記加熱手段を駆動制御する構成(請求項3の発明)、或いは、前記自動停止条件の成立後、先ずディーゼルエンジンの温度に関連する値が所定値以上か否か判定し、否定判定した場合に前記バッテリ充電工程を実行する構成(請求項4の発明)としてもよい。更に、請求項1〜4の何れかの発明においては、前記燃焼室加熱工程において、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上の場合、更に、車載バッテリの電力消費量が所定値以上か否か判定し、否定判断した場合にのみ前記加熱手段を駆動制御する構成(請求項5の発明)としてもよい。
【0011】
請求項6の発明「ディーゼルエンジンの自動停止装置」は、所定の自動停止条件が成立した場合にディーゼルエンジンを自動停止させるディーゼルエンジンの自動停止装置において、前記ディーゼルエンジンの駆動力で駆動され車載バッテリに充電可能な車載発電機と、前記ディーゼルエンジンの燃焼室に臨むように配設され車載発電機の電力で駆動され前記燃焼室を加熱可能なグロープラグと、前記自動停止条件の成立後、車載発電機を駆動制御するとともに、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合にグロープラグを駆動制御する自動停止制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のディーゼルエンジンの自動停止制御方法によれば、ディーゼルエンジンを自動停止させる際、自動停止条件の成立後、バッテリ充電工程において、車載バッテリに充電可能な車載発電機をディーゼルエンジンの駆動力で駆動させるように制御するので、ディーゼルエンジンに負荷を与え、エンジンの停止過程における空転量を小さくして吸入空気による燃焼室の温度低下を抑制し、更に、車載発電機の駆動後、バッテリ充電工程において、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合に車載バッテリの電力でディーゼルエンジンの燃焼室を加熱する加熱手段を駆動させるように制御するので、車載バッテリの充電量を監視し、車載バッテリの充電量が略最大の場合には、車載バッテリの電力を消費して加熱手段を駆動することで、車載バッテリへの過充電を防止しつつ、燃焼室の温度をできるだけ低下させないようにして、ディーゼルエンジンの再始動性を高めることができる。車載バッテリの充電量に関連する値が所定値未満の場合には、加熱手段を駆動制御しないようにして、車載バッテリの電力消費量を抑制することができる。
【0013】
請求項2のディーゼルエンジンの自動停止制御方法によれば、バッテリ充電工程において、車載発電機をその発電量が最大となるように駆動制御するので、車載発電機によるディーゼルエンジンの負荷を最大にして、エンジンの停止過程における空転量を極力小さくできるので、吸入空気による燃焼室の温度低下を確実に抑制することができる。
【0014】
請求項3のディーゼルエンジンの自動停止制御方法によれば、燃焼室加熱工程において、ディーゼルエンジンの温度に関連する値が所定値以上か否か判定し、否定判定した場合に加熱手段を駆動制御するので、ディーゼルエンジンの温度を監視し、その温度がディーゼルエンジンの再始動性を高め得る適正な温度未満になるような場合、加熱手段を駆動して燃焼室を加熱することができる。
【0015】
請求項4のディーゼルエンジンの自動停止制御方法によれば、自動停止条件の成立後、先ずディーゼルエンジンの温度に関連する値が所定値以上か否か判定し、否定判定した場合にバッテリ充電工程を実行するので、先ずディーゼルエンジンの温度を監視し、その温度がディーゼルエンジンの再始動性を高め得る適正な温度以上になるような場合に、バッテリ充電工程及び燃焼室加熱工程を実行しないようにして、加熱手段を不要に駆動しないようにして加熱手段の劣化を抑え、その温度が前記適正な温度未満になるような場合には、バッテリ充電工程を実行して、エンジンの停止過程における空転量を小さくして吸入空気による燃焼室の温度低下を抑制し、更にここで、車載バッテリの充電量が略最大の場合には加熱手段を駆動し、車載バッテリへの過充電を防止して燃焼室を加熱することができる。
【0016】
請求項5のディーゼルエンジンの自動停止制御方法によれば、燃焼室加熱工程において、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上の場合に、更に、車載バッテリの電力消費量が所定値以上か否か判定し、否定判断した場合にのみ加熱手段を駆動制御するので、車載バッテリの電力消費量を監視し、その電力消費量が大きくて加熱手段を駆動しない方が良い場合には、加熱手段を駆動しないようにして、加熱手段の劣化を抑えるとともに、車載バッテリの電力消費量を抑制することができる。
【0017】
請求項6のディーゼルエンジンの自動停止装置によれば、ディーゼルエンジンの駆動力で駆動され車載バッテリに充電可能な車載発電機、ディーゼルエンジンの燃焼室に臨むように配設され車載発電機の電力で駆動され燃焼室を加熱可能なグロープラグ、自動停止制御手段を備え、特に、自動停止制御手段により、自動停止条件の成立後、車載発電機を駆動制御するとともに、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合にグロープラグを駆動制御するので、請求項1と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のディーゼルエンジンの自動停止技術は、所定の自動停止条件が成立した場合にディーゼルエンジンを自動停止させるものであり、自動停止条件の成立後、車載バッテリに充電可能な車載発電機(オルタネータ)をディーゼルエンジンの駆動力で駆動させるように制御し、車載発電機の駆動後、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合に車載バッテリの電力でディーゼルエンジンの燃焼室を加熱する加熱手段(グロープラグ)を駆動させるように制御する。
【実施例1】
【0019】
図1は、車両(自動車)に搭載されたディーゼルエンジン1(以下、エンジン1という)と、エンジン1とその自動停止装置2に関連する機器の概略構成を示している。エンジン1は、例えば4気筒の4サイクルディーゼルエンジン1である。
【0020】
図1に示すように、エンジン1は、シリンダヘッド3とシリンダブロック4を有し、このシリンダヘッド3とシリンダブロック4により4つの気筒5が直列配置で形成されている。各気筒5の内部にコネクティングロッド(図示略)によりクランクシャフト6に連結されたピストン7が嵌挿され、各気筒5においてピストン7の上側に燃焼室8が形成されている。複数の気筒5のピストン7は所定の位相差でクランクシャフト6の回転を伴って上下運動を行い、各気筒5において吸気、圧縮、膨張、排気の各工程が順次行われる。
【0021】
シリンダヘッド3には、気筒5毎に、燃焼室8に臨む吸気ポート10及び排気ポート11と、吸気ポート10及び排気ポート11を夫々開閉する吸気弁12及び排気弁13と、燃焼室8にピストン7の上端部に形成されたキャビティ7aに向けて燃料を直接噴射するインジェクタ14が設けられている。吸気ポート10と排気ポート11には吸気流量調節制御弁15を備えた吸気通路16と排気通路17が夫々接続され、この吸気通路16と排気通路17は、排気通路17から排気ガスの一部を吸気通路16に還流させるために開閉制御弁18を備えた還流通路19で接続されている。
【0022】
吸気弁12及び排気弁13を開閉駆動する機構については、図示省略するが、クランクシャフト6に連動連結されたカム機構を介して駆動するもの、或いは、クランクシャフト6には連係をとらずに、吸気弁12及び排気弁13を電磁式アクチュエータで独自に駆動するものが採用されている。インジェクタ14には、燃料ポンプ20に接続されたコモンレール21から高圧の燃料が供給され、インジェクタ14において、燃料噴射通路が開けられると、高圧の燃料が真弁を開けて噴孔から燃焼室8に噴射される。
【0023】
また、シリンダヘッド3には、気筒5毎に、プラグ先端が燃焼室8に臨んで車載バッテリ25の電力で駆動され燃焼室8を加熱可能なグロープラグ26(加熱手段26)が配設されている。エンジン1には、タイミングベルト等で連結されエンジン1の駆動力で駆動され車載バッテリ25に充電可能なオルタネータ27(車載発電機27)が付設されている。オルタネータ27はレギュレータ回路27aを備え、このレギュレータ回路27aによりフィールドコイル(図示略)に流す電流を調節することで、発電量(発電能力)を調節することができる。
【0024】
尚、エンジン1には、エンジン1を始動させる為のスタータ30が設けられている。このスタータ30は、モータ30aとモータ30aで回転駆動されるピニオン30bを有し、このピニオン30bがフライホイール(図示略)に固定されたリングギヤ31に噛合している。32はブレーキペダル、33はアクセルペダルである。
【0025】
さて、エンジン1の自動停止装置2は、所定の自動停止条件が成立した(例えば、車速が略0のときにブレーキペダル32が一定時間以上継続して踏まれた)場合にエンジン1を自動停止させるものであり、エンジン1の自動停止後、所定の再始動条件が成立した(例えば、アクセルペダル33が踏まれた)場合にはエンジン1が再始動する。
【0026】
このエンジン1の自動停止装置2は、インジェクタ14、グロープラグ26、オルタネータ27、ブレーキペダル32等を備えるとともに、スイッチ・センサ類40〜44と、ECU50(エンジン制御ユニット50)を備え、このECU50が、スイッチ・センサ類40〜44からの信号を受けて、自動停止条件を満たした場合に、インジェクタ14、グロープラグ26、オルタネータ27(レギュレータ回路27a)等を制御して、エンジン1を自動停止させる。
【0027】
前記スイッチ・センサ類において、40は車速センサ、41はブレーキペダル32が操作されたことを検出するブレーキペダルスイッチ、42は車載バッテリ25への充電電流を検出する電流センサ、43は車載バッテリ25からの放電電流を検出する電流センサ、44はエンジン1の冷却水の温度を検出する温度センサである。尚、エンジン1には、その制御に必要な他の種々のスイッチ・センサ類が付設されているが省略する。
【0028】
ECU50は、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータで構成され、車載バッテリ25の充電量に関連する値として車載バッテリ25の充電率Crを算出する充電率算出部51、車載バッテリ25の電力消費量Pcを算出する電力消費量算出部52、自動停止条件の成立後、オルタネータ27を駆動制御するとともに、車載バッテリ25の充電率Crが所定値(例えば、98%)以上か否か判定し、肯定判定した場合にグロープラグ26を駆動制御する自動停止制御部53(自動停止制御手段53)を備えている。
【0029】
次に、ECU50が実行するエンジン1の自動停止制御(自動停止制御方法)について詳しく説明する。尚、この自動停止制御を実行する為のプログラムは、ECU50コンピュータROM等に格納されている。
【0030】
図2に示すように、この自動停止制御は、イグニションスイッチ(図示略)がオンされ、エンジン1が作動しているときに実行され、先ず、エンジン1の自動停止条件が成立したか否か、例えば、車速センサ40、ブレーキペダルスイッチ41からの信号に基づいて、車速が略0のときにブレーキペダル32が一定時間以上継続して踏まれたか否か判定される(S1)。S1;Noの場合、リターンする。
【0031】
S1;Yes の場合、インジェクタ14が燃焼室8に燃料を噴射しないように制御されて、燃焼室8への燃料カット(S2)が行われ、続いて、オルタネータ27のレギュレータ回路27aによりフィールドコイルに電流を流すことで、オルタネータ27がエンジン1の駆動力で駆動され発電するように制御される(S3)。S3がバッテリ充電工程に相当し、このS3において、レギュレータ回路27aによりフィールドコイルに流す電流値を最大にすることで、オルタネータ27がその発電量が最大となるように駆動制御される。
【0032】
S3の後、車載バッテリ25の充電量に関連する値として車載バッテリ25の充電率Crが算出される(S4)。ここで、この車載バッテリ25の充電率Crは、電流センサ42,43からの信号に基づいて、車載バッテリ25への充電電流の積算値と車載バッテリ25からの放電電流の積算値から、車載バッテリ25の充電容量に対する充電量を計算することで行われる。
【0033】
但し、車載バッテリ25の充電容量は初期容量から徐々に低下するため、最終的には車載バッテリ25の交換が必要になるが、充電率Crの算出に用いる車載バッテリ25の充電容量については、例えば、車載バッテリ25の新品交換時からの時間を累積的に演算し記憶し、その時間と予め設定記憶された図3に示すような充電容量決定テーブルに基づいて決定するようにしてもよい。
【0034】
また、電流センサ42,43の検出値は、電流センサ42,43の温度変化やヒステリシス等によって変動し易い誤差を含んでいるため、車載バッテリ25の充電容量を精度良く算出するために、例えば、既存の構成にて、電流センサ42,43の検出値に含まれる誤差を検出し補正することができる、本出願人が出願した特開2005−37286号公報に記載の技術を採用してもよい。
【0035】
図2に示すように、S4の車載バッテリ25の充電率Crの算出後、その充電率Crが所定値(例えば、98%)以上か否か判定され(S5)、S5;Noの場合、S7へ移行し、S5;Yes の場合、車載バッテリ25の電力でグロープラグ26が駆動されるように制御され(S6)、S7へ移行する。ここで、S5とS6が燃焼室加熱工程に相当する。
【0036】
S7では、エンジン1が完全に停止したか否か判定され、S7;Noの場合には、S7;Yes になるまで待機し、S7;Yes になると、グロープラグ26及びオルタネータ27が出力停止するように制御され(S8)、終了する。
【0037】
このエンジン1の自動停止制御方法及び自動停止装置2によれば次の効果を奏する。
エンジン1を自動停止させる際、自動停止条件の成立後、バッテリ充電工程において、車載バッテリ25に充電可能なオルタネータ27をエンジン1の駆動力で駆動させるように制御するので、エンジン1に負荷を与え、エンジン1の停止過程における空転量を小さくして吸入空気による燃焼室8の温度低下を抑制することができる。
【0038】
更に、オルタネータ27の駆動後、バッテリ充電工程において、車載バッテリ25の充電量に関連する値として充電率Crが所定値(98%)以上か否か判定し、肯定判定した場合に車載バッテリ25の電力でエンジン1の燃焼室8を加熱するグロープラグ26を駆動させるように制御するので、車載バッテリ25の充電量を監視し、車載バッテリ25の充電量が略最大の場合には、車載バッテリ25の電力を消費してグロープラグ26を駆動することで、車載バッテリ25への過充電を防止しつつ、燃焼室8の温度をできるだけ低下させないようにして、エンジン1の再始動性を高めることができる。車載バッテリ25の充電率Crが所定値(98%)未満の場合には、グロープラグ26を駆動制御しないようにして、車載バッテリ25の電力消費量を抑制することができる。
【0039】
しかも、バッテリ充電工程において、オルタネータ27をその発電量が最大となるように駆動制御するので、オルタネータ27によるエンジン1の負荷を最大にして、エンジン1の停止過程における空転量を極力小さくできるので、吸入空気による燃焼室8の温度低下を確実に抑制することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、実施例1のエンジン1の自動停止制御(自動停止制御方法)を変更したものである。図4に示すように、実施例2のECU50が実行する自動停止制御では、エンジン1の自動停止条件が成立したか否か判定され(S10)、S10;Noの場合、リターンし、S10;Yes の場合、燃料カット(S11)が行われ、続いて、オルタネータ27が駆動制御される(S12)。S12がバッテリ充電工程に相当し、このS12では、実施例1と同様、オルタネータ27がその発電量が最大となるように駆動制御される。
【0041】
S12の後、エンジン1の温度に関連する値としての冷却水の温度Tが所定値T1(例えば、100℃〜200℃の所定温度)以上か否か判定され(S13)、S13;Noの場合、グロープラグ26が駆動制御され(S14)、S18へ移行する。一方、S13;Yes の場合、車載バッテリ25の充電率Crが算出され(S15)、その充電率Crが所定値(例えば、98%)以上か否か判定され(S16)、S16;Noの場合、S18へ移行し、S16;Yes の場合、グロープラグ26が駆動制御され(S17)、S18へ移行する。ここで、S13とS14、S16とS17が燃焼室加熱工程に相当する。
【0042】
S18では、エンジン1が完全に停止したか否か判定され、S18;Noの場合には、S18;Yes になるまで待機し、S18;Yes になると、グロープラグ26及びオルタネータ27が出力停止するように制御され(S19)、終了する。
【0043】
実施例2のエンジン1の自動停止制御方法及び自動停止装置2によれば、燃焼室加熱工程において、エンジン1の温度に関連する値として冷却水の温度Tが所定値T1以上か否か判定し、否定判定した場合にグロープラグ26を駆動制御するので、エンジン1の温度を監視し、その温度がエンジン1の再始動性を高め得る適正温度未満になるような場合、グロープラグ26を駆動して燃焼室8を加熱することができる。その他は実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0044】
実施例3は、実施例1のエンジン1の自動停止制御(自動停止制御方法)を変更したものである。図5に示すように、実施例3のECU50が実行する自動停止制御では、エンジン1の自動停止条件が成立したか否か判定され(S20)、S20;Noの場合、リターンし、S20;Yes の場合、燃料カット(S21)が行われ、続いて、エンジン1の温度に関連する値としての冷却水の温度Tが所定値T1(例えば、100℃〜200℃の所定温度)以上か否か判定される(S22)。
【0045】
そして、S22;Yes の場合には、終了し、S22;Noの場合には、オルタネータ27が駆動制御される(S23)。S23がバッテリ充電工程に相当し、このS23では、実施例1と同様、オルタネータ27がその発電量が最大となるように駆動制御される。その後、車載バッテリ25の充電率Crが算出され(S24)、その充電率Crが所定値(例えば、98%)以上か否か判定され(S25)、S25;Noの場合、S27へ移行し、S25;Yes の場合、グロープラグ26が駆動制御され(S26)、S27へ移行する。ここで、S25とS26が燃焼室加熱工程に相当する。
【0046】
S27では、エンジン1が完全に停止したか否か判定され、S27;Noの場合には、S27;Yes になるまで待機し、S27;Yes になると、グロープラグ26及びオルタネータ27が出力停止するように制御され(S28)、終了する。
【0047】
実施例3のエンジン1の自動停止制御方法及び自動停止装置2によれば、自動停止条件の成立後、先ずエンジン1の温度に関連する値として冷却水の温度Tが所定値T1以上か否か判定し、否定判定した場合にバッテリ充電工程を実行するので、先ずエンジン1の温度を監視し、その温度がエンジン1の再始動性を高め得る適正温度以上になるような場合には、バッテリ充電工程及び燃焼室加熱工程を実行しないようにして、グロープラグ26を不要に駆動しないようにしてグロープラグ26の劣化を抑え、その温度が前記適正温度未満になるような場合に、バッテリ充電工程を実行して、エンジン1の停止過程における空転量を小さくして吸入空気による燃焼室8の温度低下を抑制し、更にここで、車載バッテリ25の充電量が略最大の場合にはグロープラグ26を駆動し、車載バッテリ25への過充電を防止して燃焼室8を加熱できる。その他は実施例1と同様の効果を奏する。
【実施例4】
【0048】
実施例4は、実施例1のエンジン1の自動停止制御(自動停止制御方法)を部分的に変更し、具体的には、図2のフローチャートのS5とS6の間にステップを追加したものである。図6に示すように、実施例4のECU50が実行する自動停止制御では、S5;Yes の場合、車載バッテリ25の電力消費量Pcが算出される(S30)。ここで、車載バッテリ25の電力消費量Pcは、電流センサ43からの信号に基づいて、車載バッテリ25の現在の放電電流値から算出される。
【0049】
そして、S30の後、車載バッテリ25の電力消費量Pcが所定値(例えば、車載バッテリ25の充電量の低下率が大きくなり過ぎる電力消費量)以上か否か判定され(S31)、S31;Yes の場合には、S7へ移行し、S31;Noの場合には、グロープラグ26が駆動制御され(S6)、S7へ移行する。ここで、S5とS31とS6が燃焼室加熱工程に相当する。その他の制御は実施例1と同様である。
【0050】
このように、燃焼室加熱工程において、車載バッテリ25の充電量に関連する値として充電率Crが所定値(98%)以上の場合、更に、車載バッテリ25の電力消費量Pcが所定値以上か否か判定し、否定判断した場合にのみグロープラグ26を駆動制御するので、車載バッテリ25の電力消費量Pcを監視し、その電力消費量Pcが大きくてグロープラグ26を駆動しない方が良い場合には、グロープラグ26を駆動しないようにして、グロープラグ26の劣化を抑えるとともに、車載バッテリ25の電力消費量を抑制できる。
【0051】
その他、実施例1〜4について次のように変更してもよい。
1]実施例1〜4のバッテリ充電工程では、オルタネータ27をその発電量が最大となるように駆動制御する必要はない。この場合、車載バッテリ25の電力消費量Pcに応じて、オルタネータ27の発電量を設定してもよい。
【0052】
2]実施例2,3において、エンジン1の自動停止制御(自動停止制御方法)を部分的に、実施例4のように変更してもよい。例えば、実施例2の場合には、図4のS16とS17の間に、図6のS30,31を追加し、S31;Yes の場合にはS18へ移行し、S31;Noの場合にS17へ移行し、また、実施例3の場合には、図5のS25とS26の間に、図6のS30,31を追加し、S31;Yes の場合にはS27へ移行し、S31;Noの場合にS26へ移行するようにしてもよい。
【0053】
3]実施例2において、図4のS13をS12の後ではなくてS16;Noの後に実行し、S14を省略する。つまり、S12の後にS15が実行され、次に、S16;Noの場合に、エンジン1の冷却水の温度Tが所定値T1以上か否か判定され、肯定判定した場合にS18へ移行し、否定判定した場合にS17へ移行するようにする。
4]実施例1〜3で用いる車載バッテリ25の充電量に関連する値を車載バッテリ25の充電量又は電圧としてもよい。
5]実施例2,3で用いるエンジン1の温度に関連する値を外気温としてもよい。
【0054】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲において、前記開示以外に種々の変更を付加して実施可能であり、また、本発明については、種々の自動車や自動車以外の種々の車両に搭載されるディーゼルエンジンを自動停止させる技術に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ディーゼルエンジンとその自動停止装置に関連する機器の概略構成図である。
【図2】実施例1のエンジンの自動停止制御のフローチャートである。
【図3】車載バッテリの充電容量決定用のマップを示す図である。
【図4】実施例2のエンジンの自動停止制御のフローチャートである。
【図5】実施例3のエンジンの自動停止制御のフローチャートである。
【図6】実施例4のエンジンの自動停止制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 ディーゼルエンジン
2 自動停止装置
8 燃焼室
25 車載バッテリ
26 グロープラグ(加熱手段)
27 オルタネータ(車載発電機)
50 ECU(エンジン制御ユニット)
53 自動停止制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立した場合にディーゼルエンジンを自動停止させるディーゼルエンジンの自動停止制御方法において、
前記自動停止条件の成立後、車載バッテリに充電可能な車載発電機をディーゼルエンジンの駆動力で駆動させるように制御するバッテリ充電工程と、
前記車載発電機の駆動後、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合に車載バッテリの電力でディーゼルエンジンの燃焼室を加熱する加熱手段を駆動させるように制御する燃焼室加熱工程と、
を備えたことを特徴とするディーゼルエンジンの自動停止制御方法。
【請求項2】
前記バッテリ充電工程において、車載発電機をその発電量が最大となるように駆動制御することを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの自動停止制御方法。
【請求項3】
前記燃焼室加熱工程において、ディーゼルエンジンの温度に関連する値が所定値以上か否か判定し、否定判定した場合に前記加熱手段を駆動制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のディーゼルエンジンの自動停止制御方法。
【請求項4】
前記自動停止条件の成立後、先ずディーゼルエンジンの温度に関連する値が所定値以上か否か判定し、否定判定した場合に前記バッテリ充電工程を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のディーゼルエンジンの自動停止制御方法。
【請求項5】
前記燃焼室加熱工程において、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上の場合、更に、車載バッテリの電力消費量が所定値以上か否か判定し、否定判断した場合にのみ前記加熱手段を駆動制御することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のディーゼルエンジンの自動停止制御方法。
【請求項6】
所定の自動停止条件が成立した場合にディーゼルエンジンを自動停止させるディーゼルエンジンの自動停止装置において、
前記ディーゼルエンジンの駆動力で駆動され車載バッテリに充電可能な車載発電機と、
前記ディーゼルエンジンの燃焼室に臨むように配設され車載バッテリの電力で駆動され前記燃焼室を加熱可能なグロープラグと、
前記自動停止条件の成立後、車載発電機を駆動制御するとともに、車載バッテリの充電量に関連する値が所定値以上か否か判定し、肯定判定した場合にグロープラグを駆動制御する自動停止制御手段と、
を備えたことを特徴とするディーゼルエンジンの自動停止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−25040(P2010−25040A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189334(P2008−189334)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】