ディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置およびディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法
【課題】ディーゼルエンジンの排気ガス中のSO2対して耐久性のある選択的接触低減型
触媒であるAg触媒5は、窒素酸化物(NOx)を炭化水素化合物(HC)の存在下、選
択還元する。しかし、反応中間体が残存し、その残存する反応中間体が、酸化触媒7の作
用で再酸化されるため、Ag触媒ではディーゼルエンジンから排出されるNOxを低減す
ることができなかった。
【解決手段】排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2内のAg触媒5と酸化触媒7の中間
に、Cu、VおよびFeから選択される1種以上の金属を担持する反応中間体浄化触媒6
を配置した。この反応中間体浄化触媒6の作用により、反応中間体を分解して、N2等を
生成させる。この反応中間体浄化触媒6の作用により、残存する反応中間体を最小限にし
、ディーゼルエンジンから排出されるNOxを低減することができる。
触媒であるAg触媒5は、窒素酸化物(NOx)を炭化水素化合物(HC)の存在下、選
択還元する。しかし、反応中間体が残存し、その残存する反応中間体が、酸化触媒7の作
用で再酸化されるため、Ag触媒ではディーゼルエンジンから排出されるNOxを低減す
ることができなかった。
【解決手段】排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2内のAg触媒5と酸化触媒7の中間
に、Cu、VおよびFeから選択される1種以上の金属を担持する反応中間体浄化触媒6
を配置した。この反応中間体浄化触媒6の作用により、反応中間体を分解して、N2等を
生成させる。この反応中間体浄化触媒6の作用により、残存する反応中間体を最小限にし
、ディーゼルエンジンから排出されるNOxを低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる有害な窒素酸化物を効果的に還元して窒素ガスとして排出するようにした排気ガス浄化装置および排気ガスの浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、温室化ガスである二酸化炭素の排出量が比較的少ない。そのため、ディーゼルエンジンを搭載した車両の利用は、地球温暖化を緩和するのに有効である。しかし、ディーゼルエンジンは、酸性雨や光化学スモッグの原因となり、また人体にも有害なNOやNO2等の窒素酸化物(以下「NOx」という)の排出が比較的多い。そこで、ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOxを還元除去するため、選択的接触低減(Selective Catalytic Reduction、以下「SCR」という)による触媒システムが開発されている。
【0003】
前記したNOxを還元除去するためのSCR触媒システムでは、還元剤を用いて排気ガスに含まれるNOxを還元する。このようなSCR触媒システムの一つは、触媒の作用により尿素をアンモニアに転化させ、このアンモニアによってNOxを還元除去するSCR触媒システムである。もう一つのNOxを還元除去するためのSCR触媒システムは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の未燃焼の炭化水素(以下「HC」という)、または、排気ガス中に添加された軽油中のHCにより、NOxを選択還元触媒の作用で、還元除去するSCR触媒システムである。
【特許文献1】特開平09−57063号公報
【特許文献2】特開平09−57064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した尿素を利用してNOxを還元除去するSCR触媒システムを実施するためには、車両に尿素を貯蔵するタンクを新たに設けなければならないし、また尿素の補給を可能にするための供給インフラストラクチャが必要となるので、この方法を実現するのは困難である。
【0005】
一方、前記したHCによりNOxを還元除去するSCR触媒システムには次のような問題がある。HCによりNOxを還元除去するSCR触媒システムで、HCの存在下、NOxを還元する反応を促進するSCR触媒は、水分存在下において高い活性を示すIn(インジウム)、Sn(錫)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)等の酸化物を化学式Al2O3で表される酸化アルミニウム(以下「アルミナ」という)に担持したSCR触媒である。このようなSCR触媒の中で、軽油に含まれる硫黄分から生成され、排気ガス中に含まれるSO2に対する耐久性があるSCR触媒は、Agを酸化アルミニウム(以下「に担持したSCR触媒(以下「Ag触媒」という)である。そのため、耐久性の点からすればAg触媒が、HCによりNOxを還元除去するSCR触媒システムに好ましい。
【0006】
しかし、Ag触媒は、NOxを選択還元する効率が比較的低いという問題がある。この問題につき、図11および図12を参照して説明する。図11は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOxが、Ag触媒の作用により選択還元除去される反応過程を説明する図である。図12は、Ag触媒のAgメタル上で起きるHC酸化反応を説明する図である。HCの存在下Ag触媒の作用により、NOxは2段階の反応を経て窒素ガス(以下「N2」という)に還元されると考えられる。まず、NOxは反応中間体であるR−NCOやR−NH2(Rは炭化水素基)等に還元される(反応中間体生成反応)。この反応中間体生成反応は、Ag触媒中のアルミナの酸点(O−)上に存在するAg上でおきる。ただし、Ag触媒中のAgが、Agを担持するアルミナの酸点(O−)上以外にAgメタルとして存在する場合、このAgメタル上では図12に示すようにHC酸化反応が促進されるため、前記した反応中間体生成反応は進行しにくい。
前記した反応中間体生成反応により生成したR−NCOやR−NH2等の反応中間体は、図11に示すようにNO2からAg触媒中のアルミナの酸点(O−)上に存在するAgイオン上で生成されたNO3−(硝酸イオン)と反応して、酸化され分解されるとともに、NO3−は還元されて、N2、H2O、CO2等が生成される(反応中間体分解反応)。
【0007】
ところが、Ag触媒を用いる場合、反応中間体生成反応は迅速に進行するが、その後の反応中間体分解反応の進行が遅い。そのため、Ag触媒を通過した排気ガス中には前記した反応中間体が残存する。一方、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置においては、未燃焼のHCや一酸化炭素(CO)等を除去するため、排気ガス流路でSCR触媒の下流に酸化触媒が設けられる。したがって、残存した反応中間体を含む、Ag触媒を通過した排気ガスは、さらに酸化触媒を通過する。その際、N2は安定なので酸化触媒を通過しても酸化されることはないが、残存した反応中間体は再酸化されて、NOxに戻ってしまう。反応中間体は安定ではないからである。したがって、Ag触媒を用いたSCR触媒システムでは、従来、NOxの浄化率を十分に高めることができなかった。
そこで本発明は、SCR触媒としてAg触媒を用いたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、反応中間体が残存することを低減し、NOxの浄化効率を高めたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、排気ガスの排出流路にAg触媒が配置され、かつ、前記排気ガスの排出流路において前記Ag触媒の下流側に酸化触媒が配置されるディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記Ag触媒を構成するウォッシュコート層(以下「WC層」という)が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体であること、前記Ag触媒と前記酸化触媒の中間に、反応中間体浄化触媒が配置されていること、前記反応中間体浄化触媒を構成するWC層が、銅(以下「Cu」という)、バナジウム(以下「V」という)および鉄(以下「Fe」という)から選択される少なくとも1種類以上の元素を、重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持するアルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体によって構成されることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、Ag触媒通過後の排気ガス中に残存する反応中間体を、Cu、VまたはFeの触媒作用によって、分解することができるようになる。前記したWC層中に担持されるCuは、その価数が+1と+2の間で変動し、排気ガス中のNOxを酸化する。その結果、NO3−がWC層のCu表面上に生成される。このNO3−と、R−NCOやR−NH2等の反応中間体(以下「反応中間体」という)が反応することによって、反応中間体は酸化され分解されるとともに、NO3−が還元されて、N2等が生成する。前記したWC層中に担持されるVおよびFeは、ともにその価数が+2と+3の間で変動するため、同様にその表面上でNO3−が生成される。そのため、Cuの場合と同様に反応中間体が酸化され分解する。
【0009】
前記課題を解決するために請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された排気ガス浄化装置において、前記Agを担持する多孔質構造体が、化学式Al2O3で表される酸化アルミニウム(以下「アルミナ」という)からなることを特徴とする。本発明の場合、前記多孔質構造体が、特に立方晶系スピネルの結晶構造を有するγ―Al2O3よりなることが好ましい。
請求項2に記載の発明によれば、Ag触媒を担持する多孔質構造体が高温で安定であり、また表面積が大きいアルミナで構成される。そのため、アルミナ多孔質構造体中に分散して担持され、触媒として実際に機能するAgの比率が比較的高い。したがって、Ag触媒の触媒機能が高められる。
【0010】
前記課題を解決するために請求項3に記載の発明は、請求項2に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記Agを担持する多孔質構造体が、主として化学式AlOOH・H2Oで表されるベーマイト(以下「ベーマイト」という)から製造されたγ―Al2O3であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、通常のアルミナよりもAgとの相互作用強くなる。その結果、Ag触媒の触媒機能がより高くなる。
【0011】
前記課題を解決するために請求項4に記載の発明は、前記γ−Al2O3がAgを担持したベーマイトを焼成して製造したものであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、Ag触媒中のAgのうちAgイオンクラスタ状態として存在するものの比率が高くなるため、少量のHCでも効率よくNOxを選択還元して浄化することができる。
【0012】
前記課題を解決するために請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記反応中間体浄化触媒を構成するWC層が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCuを担持するゼオライトからなることを特徴とする。ここでゼオライトとは、四面体構造を有する(SiO4)4−および(AlO4)5−の基本単位が連結して構成されるケイ酸塩であり、これら基本単位同士が四面体構造の頂点に位置する酸素原子を共有した構造である。
請求項5に記載の発明によれば、ゼオライトに担持されたCuの作用により、効率よく反応中間体とNO3−とを反応させて、NOxの浄化をすることができる。
【0013】
前記課題を解決するために請求項6に記載の発明は、請求項5に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記Cuを担持するゼオライトが、MFI型であることを特徴とする。ここでMFI型のゼオライトとは、前記したゼオライトの基本単位が環構造を形成し、この環構造中に含まれる酸素原子の数が10個であるものである。
請求項6に記載の発明によれば、MFI型ゼオライトの細孔の効果により、反応中間体とNO3−とを反応させてNOxの浄化をするCu触媒の作用を高めることができる。
【0014】
前記課題を解決するために請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記反応中間体浄化触媒を構成するWC層が、Cu、VおよびFeから選択される少なくとも1種類以上の元素を重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持する、ベーマイトから製造されたγ−Al2O3からなる多孔質構造体から構成されることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、ベーマイトから製造されたγ−Al2O3に担持されたCu、FeまたはVの作用により、効率よく反応中間体とNO3−とを反応させて、NOxの浄化をすることができる。
【0015】
前記課題を解決するために請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記反応中間体浄化触媒の前記Ag触媒に対する容量比率が、20%以上かつ100%以下であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、未反応の反応中間体を分解するのに十分な容量の反応中間体浄化触媒が確保される。また、反応中間体浄化触媒が作用するのは、主として未反応の反応中間体なので、反応中間体浄化触媒の容量を必要以上に大きくする必要はない。
【0016】
前記課題を解決するために請求項9に記載の発明は、ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法であって、前記排気ガスを、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体からなるWC層により構成されるAg触媒により浄化し、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCu、V、Feから選択される少なくとも1種類以上の元素を担持する、アルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体からなるWC層により構成される反応中間体浄化触媒により浄化した後、酸化触媒により浄化することを特徴する。
請求項9に記載の発明によれば、Ag触媒および反応中間体浄化触媒の作用により、排気ガス中のNOxを効率的にN2に還元するとともに、酸化触媒の作用により、未燃焼のHCを酸化除去できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置(以下「排気ガス浄化装置」という)およびディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法(以下「排気ガス浄化方法」という)によれば、従来ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる、NOxを効率的にN2に還元することができる。そのため、酸化触媒の作用により再酸化される不安定な反応中間体が残存することを、低減できる。その結果、従来よりも、ディーゼルエンジンから排出されるNOx量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について、図1乃至図2を適宜参照して説明する。図1は、実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化層の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。図2は、本実施形態の排気ガス浄化装置に用いられるプラズマ発生ユニットの構造を示す図である。
【0019】
まず、図1(a)に示す実施形態の排気ガス浄化装置1の構成について説明する。排気ガス浄化装置1は、排気管4、プラズマ発生ユニット3、および触媒コンバータ2より構成される。プラズマ発生ユニット3は、主としてディーゼルエンジンから排出される排気ガス中に含まれる粒子状物質(Particle Matter、以下「PM」という)をプラズマの作用により、酸化して浄化するためのものである。触媒コンバータ2は、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中に含まれるNOxや未燃焼のHC等を浄化するものである。排気管4は、図示しないエキゾーストマニホールドに継合されている。排気管4には、エキゾーストマニホールドを経由して、ディーゼルエンジンの各気筒から排出される排気ガスが流入する。
【0020】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガスは、まずプラズマ発生ユニット3を通り、PMが浄化された後、触媒コンバータ2に送られる。プラズマ発生ユニット3は、図2に示すように、誘電体31aで片面が覆われた金属電極31bよりなる電極30が、所定の間隔を空けて配置されている。電極30間の空隙部分は、プラズマ発生部33となる。電極30間に、高電圧電源32により交流の高電圧が印加されることによって、各電極30間の空隙部分であるプラズマ発生部33にプラズマが発生する。このプラズマにより生じるプラズマ励起種によって、PMが酸化され浄化される。同時に、排気ガス中に含まれるNOxは、このプラズマ励起種によりNO2に酸化される。
【0021】
本実施形態では、PMを浄化するのにプラズマ発生ユニット3を用いているが、本発明の実施形態は、これに限られるものではない。たとえば、プラズマ発生ユニット3の代わりにディーゼル微粒子フィルタ(Diesel Particulate Filter、以下「DPF」という)を、排気ガス流路で触媒コンバータ2の下流に設けてもよい。DPFは、セラミック製の多孔質フィルタからなり、通過する排気ガスからPMを分離、捕集するものである。
【0022】
プラズマ発生ユニット3で、排気ガス中のPMが浄化された排気ガスは、触媒コンバータ2に送られる。触媒コンバータ2内には、Ag触媒5、反応中間体浄化触媒6および酸化触媒7が、排気ガス流路である排気管4の上流側から、この順番にしたがって配置されている(図1(a)参照)。Ag触媒5、反応中間体浄化触媒6および酸化触媒7の各触媒は、いわゆるハニカム構造のものであり、ハニカム24で仕切られたセル25が多数形成されている。ハニカム24上には、対応するWC層20が形成されている(図1(b)参照)。排気ガスは、セル25を通過する。その際、触媒作用を有するWC層20により、排気ガス浄化のための、還元反応あるいは酸化反応が促進される。
【0023】
触媒コンバータ2には、必要に応じてHC、すなわち軽油が添加される。すなわち、触媒コンバータ2のHC濃度は、図示しないセンサによってモニタされ、排気ガス中に未燃焼のHCが十分に含まれている場合は、HCの添加はされない。しかし、触媒コンバータ2のHC濃度が低い場合、HCが添加される。本発明においては、HCの存在下NOxを還元するので、触媒コンバータ2のHC濃度は常に所定値以上必要である。
【0024】
本実施形態の排気ガス浄化装置1において、Ag触媒5は、主として、未燃焼のHCがNOxを還元して、反応中間体が生成する反応を促進する(図11参照)。Ag触媒5のWC層20に含まれるAgが前記触媒作用を有するものである。Ag触媒5のWC層20は、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体からなるものである。ここで、この多孔質構造体を構成する材料は限定されるものではないが、アルミナから構成されるものが望ましい。特に、立方晶系スピネル構造のγ−Al2O3から構成されるものが望ましい。アルミナは高温で安定であり、比表面積が大きいので、Agがアルミナ多孔質構造体に担持されると、表面に露出し触媒として機能するAgの割合が比較的高くなる点で望ましい。特にベーマイトを出発原料として形成されたγ−Al2O3は、Agとの相互作用が強いため、Ag触媒5中のAgのうち触媒として機能するAgの割合が高い。その結果、NOxの還元反応が促進される。
【0025】
ここで、ベーマイトを出発原料として製造する、Ag触媒5を構成するWC層20は、その調製法によりAg触媒としてのNOx浄化効果が相違する。ベーマイトを出発原料として製造する、Ag触媒5を構成するWC層20には、次の2種類の調製法がある。その一つの調製法は、Agを担持したベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造するものである。もう一つの調製方法は、ベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造するものである。本発明においては、前者の調製法が望ましい。その理由は、この調製法で製造された、Ag触媒5を構成するWC層20の場合、WC層20に含まれるAgのうち、Agイオンが集合してクラスタ状態になったAgイオンクラスタ(Agδ+)として存在するものの比率が比較的高いからである。
【0026】
図11に示すようにNOxは、Ag元素上で、排気ガス中に含まれるHCにより反応中間体に変化して浄化される。この反応中間体生成反応は、Ag触媒5中のアルミナに担持されているAg元素が、アルミナの酸点上にあるAgのとき、比較的効率よく進行する。Ag触媒中のアルミナに担持されるAgのうち、Agイオンとして存在するものはすべてアルミナの酸点上にあるものである。したがって、前記したWC層20のAgイオンクラスタ(Agδ+)上では、反応中間体生成反応の進行が促進される。
一方、図12に示すようにAg触媒5中のアルミナに担持されているAg元素がアルミナの酸点上にないメタル状態の場合、このAgメタル上ではHCの燃焼による酸化反応が促進されるため、HCが有効に反応中間体生成反応に使用されない。その結果、図11に示す反応中間体生成反応およびそれに続く反応中間体分解反応によるNOxの浄化が進みにくい。ベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造したAg触媒5の場合、WC層20中のアルミナに担持されるAgのうち、Agメタルの比率が比較的高い。そのため、WC層20のアルミナの酸点上にないAgメタルの比率も、Agを担持したベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造したAg触媒5に比べて高い。したがって、Agを担持したベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造したAg触媒5の場合、ベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造したAg触媒5に比べて、より少ないHC量により、反応中間体生成反応を進行させることができる。
【0027】
本発明の実施形態の排気ガス浄化装置1では、Ag触媒5に担持されるAg量は、前記したようにWC層20の重量に対して、0.01%以上かつ20%以下の量である。この範囲の量のAgが、たとえば、アルミナに担持されている場合、アルミナ表面に担持されているAgの中で、触媒効果の高いAgイオンクラスタ(Agδ+)状態のものが比較的多く、Ag触媒5全体として触媒効果が高い。Ag量がWC層20の重量に対して0.01%未満の場合、Agの量が少なすぎて、Ag触媒5は触媒としての機能を十分に発揮しない。また、Ag量がWC層20の重量に対して20%を超える場合、Agの凝集がおきてWC層20の表面に存在するAgの中で、触媒効果を発揮するAgイオンクラスタ(Agδ+)状態のものが少なくなり金属状態のものが多くなるため、Ag触媒5は触媒作用を十分に発揮できない。
【0028】
本実施形態の排気ガス浄化装置1において、反応中間体浄化触媒6は、Ag触媒5の作用により、生成されるが残存する反応中間体を分解する反応を促進する。反応中間体浄化触媒6に担持された金属上でNOxより生成されるNO3−が、反応中間体と反応して、N2等が生成する反応が促進される。反応中間体浄化触媒6を構成するWC層20は、Cu、VおよびFeから選択される1種類以上の元素を、重量で0.01%以上かつ20%以下の量含む、アルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体によって構成されるものである。これらの元素の重量比率が制限されるのは、前記したAg触媒5と同様な理由に基づく。ここで、元素Cu、VおよびFeが、前記した反応中間体分解反応を促進する触媒作用を有する。
【0029】
ここで、反応中間体浄化触媒6がCuのみの元素を担持する場合、WC層20を構成するCuを担持する多孔質構造体は、ゼオライトまたはアルミナより構成される。ゼオライトの場合、特にMFI型のゼオライトであることが望ましい。ゼオライト層やMFI型のゼオライト層の、表面の微細な孔の効果により、前記した反応中間体分解反応がより促進されるからである。また、反応中間体浄化触媒6が、FeまたはVのみの元素を担持する場合、WC層20を構成するFeまたはVのみの元素を担持する多孔質構造体は、アルミナより構成されることが望ましい。前記した反応中間体分解反応が、より促進されるからである。また、反応中間体浄化触媒6の多孔質構造体が、前記したアルミナで構成される場合、特にベーマイトを出発原料として、形成されたγ−Al2O3のアルミナ多孔質構造体から構成されるものが望ましい。前記したAg触媒5のWC層20と同様な調製法により製造すれば、WC層20上に担持されるCu、VまたはFeが高い触媒効果を発揮する状態になる。その結果、反応中間体分解反応が促進される。
【0030】
酸化触媒7は、未反応のHCやCO等を酸化する反応を促進するためのものである。酸化触媒7のWC層20は、Pt等の貴金属を担持するアルミナ等から構成される多孔質構造体よりなるものである。
【0031】
本実施形態の排気ガス浄化装置1の作用は次のとおりである。ディーゼルエンジンの各気筒から排出される排気ガスは、排気管4を通ってプラズマ発生ユニット3に送られる。プラズマ発生ユニット3を通過し、排気ガスに含まれるPMはプラズマ発生ユニット3によって浄化されるとともに、排気ガスに含まれるNOxは、NO2に酸化される。プラズマ発生ユニット3を通過した排気ガスは、触媒コンバータ2に送られる。触媒コンバータ2では、排気ガス中のNO2はAg触媒5の触媒作用により、排気ガスに含まれる未燃焼のHCあるいは添加された軽油に含まれるHCと反応し還元されて、反応中間体に変化する。生成した反応中間体の一部は、Ag触媒5の触媒作用によって、Ag触媒5のWC層20中のAg表面でNO2から生成されるNO3−と反応して酸化されて分解する。その結果N2等が生成される。残存した反応中間体は、反応中間体浄化触媒6のWC層20中のCu、VまたはFe表面でNO2から生成されるNO3−と反応する。その結果N2等が生成される。反応中間体浄化触媒6の作用により、残存する反応中間体の量は、0%あるいは抑制される。そのため、残存する反応中間体が酸化触媒7の触媒作用により、再酸化されてNOxに戻ることが抑制されている。したがって、本実施形態の排気ガス浄化装置1を備えるディーゼルエンジンの場合、NOxの排出が従来よりも少なくなる。
【0032】
<本発明の他の実施形態>
本発明の実施形態は、図1に示す実施形態に限定されるものではなく、その主旨に反しない限り、構成要素は変更可能である。図3は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置の概略図、(b)は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置に用いられている複合化された触媒の断面拡大図である。
図3(a)に示す本発明の他の実施形態である排気ガス浄化装置1aの触媒コンバータ2aでは、図1に示す排気ガス浄化装置1のAg触媒5と反応中間体浄化触媒6が複合化され、一つの複合触媒8aになっている。図3(b)に示すように、複合触媒8aのセル25を形成するハニカム24上には、反応中間体浄化触媒WC層22およびAg触媒WC層21がAg触媒WC層21を上層として積層された複合WC層20aが、形成されている。この場合、セル25を通過する排気ガスはまず上層であるAg触媒WC層21の触媒作用を受け、排気ガスに含まれるNOxが未燃焼のHCにより前記した反応中間体を経てN2に還元される。その後、Ag触媒WC層21上で残った反応中間体は下層の反応中間体浄化触媒WC層22の触媒作用を受け、NO3−と反応して、N2等が生成する。排気ガス浄化装置1aでは、図1に示す排気ガス浄化装置1と同様に、排気ガスが触媒作用を受ける順序からすれば、反応中間体浄化触媒WC層22は、Ag触媒WC層21と酸化触媒7の中間に位置している。したがって、排気ガス浄化装置1aは、図1に示す排気ガス浄化装置1と同様な作用・効果を有する。
【0033】
また、図4および図5に示す排気ガス浄化装置1b、1cも本発明の実施形態に含まれるものである。図4および図5は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、それぞれの図において(a)は本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置の概略図、および、(b)は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置に用いられている複合化された触媒の断面拡大図である。
【0034】
図4(a)および(b)に示す本発明の実施形態の排気ガス浄化装置1bの触媒コンバータ2bの場合、図1に示す排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6と酸化触媒7が複合化されて、複合触媒8bになっている(図4(a)参照)。複合触媒8bのセル25を形成するハニカム24上には、酸化触媒WC層23および反応中間体浄化触媒WC層22が反応中間体浄化触媒WC層22を上層として積層された複合WC層20bが、形成されている(図4(b)参照)。
また、図5(a)および(b)に示す本発明の実施形態の排気ガス浄化装置1cの触媒コンバータ2cの場合、図1に示す排気ガス浄化装置1のAg触媒5、反応中間体浄化触媒6と酸化触媒7が複合されて、複合触媒8cになっている(図5(a)参照)。複合触媒8cのセル25を形成するハニカム24上には、酸化触媒WC層23、反応中間体浄化触媒WC層22およびAg触媒WC層21がハニカム24上からこの順に積層された複合WC層20cが、形成されている(図5(b)参照)。
【0035】
図4および図5に示す本発明の実施形態の場合、まず排気ガス中に含まれるNOxは、Ag触媒5またはAg触媒WC層21の触媒作用を受けた後、反応中間体浄化触媒WC層22の触媒作用を受ける。その後、酸化触媒7または酸化触媒WC層23の触媒作用を受ける。したがって、これらの実施形態の排気ガス浄化装置1b、1cは、図3に示す排気ガス浄化装置1a同様、図1に示す実施形態の排気ガス浄化装置1と同様な作用・効果を有する。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施形態である排気ガス浄化装置1の効果を、実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置による排気ガス浄化試験および比較試験用Ag触媒試験の結果に基づいて説明する。まず、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置等の構成および製造方法について説明する。なお、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置の基本的な構成は、特に注釈のない限り、図1に示す排気ガス浄化装置1と同一である。すなわち、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置は、図1に示す排気ガス浄化装置1と同様、プラズマ発生ユニット3および触媒コンバータ2より構成され、触媒コンバータ2は、Ag触媒5、反応中間体浄化触媒6および酸化触媒7を保持している。
【0037】
また、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置に用いられたプラズマ発生ユニット3は共通であり、次の仕様のものである。
図2のプラズマ発生ユニット3において、電極30のサイズは、20mm×50mmであり、電極30を構成する金属電極31bは1.0mm厚さのSUS316製の板である。誘電体31aとしては、0.5mm厚さのアルミナ板を用いた。0.5mmの厚さのプラズマ発生部33が、5層できるように電極30を配置した。実施した排気ガス浄化試験では、この構成のプラズマ発生ユニット3において、高電圧電源32により、電極30間に上下ピーク間の電位差が7.6kVp−pで、周波数が200Hzの正弦波を印加し、プラズマを発生させた。最大電界強度は、7.6kV/mmである。出力電力は、3.1Wであり、電力密度は、1.2W/cm3であった。
以下、各実施例および比較例の排気ガス浄化装置の構成および製造方法について説明する。
【0038】
<実施例1の排気ガス浄化装置1の構成>
触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5は、ハニカム構造でサイズがφ25.4mm×L60mm(体積は約30mL)である。セル密度は、62セル/cm2である。Ag触媒5のWC層20は、厚さが50〜400μmで、重量が300g/Lである。このWC層20は、12g/LのAgが担持された、ベーマイトを出発原料として製造されたアルミナからなる多孔質構造体により構成されるものである。
触媒コンバータ2に保持される反応中間体浄化触媒6は、ハニカム構造でサイズがφ25.4mm×L30mm(体積は約15mL)である。セル密度は、62セル/cm2である。反応中間体浄化触媒6のWC層20は、厚さが25〜300μmで、重量が150g/Lである。このWC層20は、7.5g/LのCuでイオン交換されたMFI型ゼオライトからなる多孔質構造体により構成されるものである。
触媒コンバータ2に保持される酸化触媒7は、ハニカム構造でサイズがφ25.4mm×L30mm(体積は約15mL)である。セル密度は、62セル/cm2である。酸化触媒7のWC層20は、厚さが30〜200μmで、重量が150g/Lである。このWC層20は、4.5g/LのPtを担持したγ―Al2O3からなる多孔質構造体により構成されるものである。
【0039】
<実施例1の排気ガス浄化装置1のAg触媒5の製造方法>
ベーマイト(PURAL SB、SASOL社製)125.3gおよび硝酸銀(試薬特級、小島化学薬品株式会社製)6.3gをフラスコに入れて、イオン交換水1000mLを加え、フラスコ内の薬品をよく攪拌・混合した後、ロータリーエバポレータにより、余分な水分を除去した後、200℃で2時間乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成して、Agがγ−Al2O3に担持されたAg触媒粉末を得る。このAg触媒粉末を45g、アルミナバインダ(Al2O3濃度:20%、日産化学工業株式会社製)25gおよびイオン交換水150mLを、ポリエチレン容器に入れ、アルミナボールにより14時間湿式粉砕して、Ag触媒スラリを作製した。このAg触媒スラリに、ハニカム24の厚さが0.09mmのコージェライト製ハニカムを浸漬し、引き上げ、過剰分を高圧空気噴射により除去し、200℃で2時間加熱した。このAg触媒スラリへの浸漬以降の操作を繰り返し、所定のWC量になるようにした。所定のAg担持量が得られた後、コージェライト製ハニカムを500℃で2時間焼成して、Agを担持するγ−Al2O3がハニカム24に担持されたAg触媒5が製造された。
【0040】
<Ag触媒5の調製法の違いを調べるための比較試験用Ag触媒の製造方法>
実施例1のAg触媒5を構成するWC層20は、前記したとおりAgを担持したベーマイトを焼成したγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造したものである。Ag触媒5の調製法の違いを調べるため、構成するWC層20が、ベーマイトをまず焼成して製造したγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造されたものであるAg触媒5を製造した。
このWC層20は、次の工程により製造されるAg触媒粉末から製造するものである。このAg触媒粉末は、ベーマイト(PURAL SB、SASOL社製)125.3gを600℃で2時間焼成して製造されたγ−Al2O3と硝酸銀(試薬特級、小島化学薬品株式会社製)6.3gをフラスコに入れて、イオン交換水1000mLを加え、フラスコ内の薬品をよく攪拌・混合した後、ロータリーエバポレータにより、余分な水分を除去した後、200℃で2時間乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成して製造される。このAg触媒粉末45gから、前記した実施例1のAg触媒5と同様な工程を経て、比較試験用Ag触媒を製造した。
【0041】
<実施例1の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6の製造方法>
ビーカにNa−ZSM−5型ゼオライト(Si/Al=28)420gに純水4000mLを入れ、120℃で2時間攪拌した後、0.1mol/Lの銅アンミン錯体水溶液をゆっくり滴下した。その後、90℃で12時間加熱攪拌して、Na−ZSM−5型ゼオライト中のNaイオンをCuイオンに交換するイオン交換を行った。このイオン交換されたゼオライトを濾過し、多量のイオン交換水で洗浄を繰り返した。洗浄後のゼオライトを120℃で24時間乾燥して、Cuでイオン交換されたMFI型ゼオライトからなるCu触媒粉末を得た。このCu触媒粉末を45g、アルミナバインダ(Al2O3濃度:20%)25gおよびイオン交換水150gを、ポリエチレン容器に入れ、アルミナボールにより14時間湿式粉砕して、Cu触媒スラリを作製した。このCu触媒スラリから、前記したAg触媒5の製造方法と同一の工程により、Cuでイオン交換されたMFI型ゼオライトをハニカム24に担持した反応中間体浄化触媒6が製造された。
【0042】
<実施例1の排気ガス浄化装置1の酸化触媒7の製造方法>
γ―Al2O3(AF115、住友化学工業株式会社製)97g、ジニトロジアミン白金(小島化学薬品株式会社製)4.94gをフラスコに入れ、イオン交換水1000mLを加える。フラスコ内の薬品をよく攪拌・混合した後、ロータリーエバポレータにより、余分な水分を除去した後、200℃で2時間乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成して、Ptがγ―Al2O3に担持されたPt触媒粉末を得た。
このPt触媒粉末を45g、シリカバインダ(SiO2濃度:20%、触媒化成工業株式会社製)25gおよびイオン交換水150mLを、ポリエチレン容器に入れ、アルミナボールにより14時間湿式粉砕して、Pt触媒スラリを作製した。
このPt触媒スラリから、前記したAg触媒5の製造方法と同一の工程により、Ptを担持するγ―Al2O3がハニカム24に担持された酸化触媒7が製造された。
【0043】
<実施例2の排気ガス浄化装置1の構成>
実施例2の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5および酸化触媒7は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。また、実施例2の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6は、ハニカム構造でサイズおよびセル密度は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。反応中間体浄化触媒6のWC層20は、厚さが25〜300μmで、重量が150g/Lである。このWC層20は、3g/LのFeを担持するアルミナからなる多孔質構造体により構成されるものである。この反応中間体浄化触媒6のWC層20の多孔質構造体を構成するアルミナは、ベーマイトから製造されるγ―Al2O3であり、前記した実施例1のAg触媒5と同様な方法により製造された。
【0044】
<実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の構成>
実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5および酸化触媒7は、実施例1および2の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。また、実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6は、ハニカム構造でサイズおよびセル密度は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。 実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6のWC層20の厚さおよび重量は、実施例2の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6と同一である。
実施例3の反応中間体浄化触媒6のWC層20は、3g/LのVを担持するγ―Al2O3により構成されている。実施例4の反応中間体浄化触媒6のWC層20では、3g/LのCuがアルミナに担持されている。実施例5の反応中間体浄化触媒6のWC層20は、7.5g/LのCuを担持するγ―Al2O3により構成されている。これらの反応中間体浄化触媒6は、いずれも実施例1のAg触媒5と同様な方法により製造される。
【0045】
<比較例1の排気ガス浄化装置の構成>
比較例1の排気ガス浄化装置の触媒コンバータに保持されるAg触媒5および酸化触媒7は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。比較例1の排気ガス浄化装置には、反応中間体浄化触媒6は保持されていない。その代わりに実施例1の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5が重複して保持されている。
【0046】
<比較例2の排気ガス浄化装置の構成>
比較例2の排気ガス浄化装置の触媒コンバータに保持される反応中間体浄化触媒6は、実施例2の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持される反応中間体浄化触媒6において、Feの担持量を増やしたもので、37.5g/LのFeが担持されている。他の構成は、実施例2の排気ガス浄化装置1と同一である。
【0047】
<比較例3の排気ガス浄化装置の構成>
比較例3の排気ガス浄化装置の触媒コンバータに保持される反応中間体浄化触媒6は、実施例4の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持される反応中間体浄化触媒6において、Cuの担持量を増やしたもので、45g/LのCuが担持されている。他の構成は、実施例4の排気ガス浄化装置1と同一である。
【0048】
以上説明した、実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置の触媒の構成
をまとめると表1のようになる。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置に表2に示す組成のモデル排気ガスを25L/minの流量で流し、各排気ガス浄化装置の触媒前後のNOx濃度を測定し、NOx浄化率を算出した。ここでNOx浄化率は、次の式(1)を用いて算出した。
【0051】
【数1】
【0052】
【表2】
【0053】
各排気ガス浄化装置で、Ag触媒5前後および酸化触媒7後のそれぞれのガスについてNOx濃度を測定しNOx浄化率を求めた。また、各排気ガス浄化装置について、Ag触媒5後の排気ガスと酸化触媒7後の排気ガスのNOx浄化率の差を求め、反応中間体残存率とした。Ag触媒5前後の排気ガスと酸化触媒7後排気ガスのそれぞれのNOx濃度を測定し、NOx浄化量を算出しNOx浄化量の差から反応中間体残存率とした。反応中間体残存率は次の式(2)により求めた。
【0054】
【数2】
【0055】
Ag触媒5のモデル排気ガスに残存する反応中間体がN2に分解されずに残存して酸化触媒7に送られる場合、この反応中間体は酸化触媒7上で酸化されてNOxに戻る。
【0056】
以下、実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置のNOx浄化率の測定結果を説明する。
図6は、実施例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ2の温度を50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。図7は、比較例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ2の温度を50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。ここで、実機においては、Ag触媒5の温度は通常200℃以上、反応中間体浄化触媒6は通常150℃以上、酸化触媒7は通常50℃以上になる。
【0057】
図6からわかるように、実施例1の排気ガス浄化装置1の場合、触媒コンバータ2の温度が330℃から450℃の温度範囲では、Ag触媒5後のNOx浄化率が酸化触媒7後のNOx浄化率よりも高く、400℃でその差である反応中間体残存率は最大になり、約20%である。したがって、触媒コンバータ2の温度が330℃から450℃の温度範囲では、反応中間体残存率は0%より大きく、Ag触媒5後に残存する反応中間体の一部はNO3−と反応することなく、そのまま酸化触媒7に送られる。
一方、触媒コンバータ2の温度が50℃から約330℃および450℃以上の温度範囲では、酸化触媒7後のNOx浄化率の方が、Ag触媒5後のNOx浄化率よりも高い。したがって、50℃から約330℃までは、反応中間体残存率は0%であり、Ag触媒5後に残存する反応中間体は、すべてNO3−と反応して分解され、反応中間体のまま酸化触媒7に送られることはない。また、この温度範囲では、Ag触媒5の作用で還元されなかったNOxの一部が、反応中間体浄化触媒6の作用により還元されている。
【0058】
図7からわかるように、比較例1の排気ガス浄化装置の場合、触媒コンバータ温度が280℃を超える高温では、Ag触媒5後のNOx浄化率が酸化触媒7後のNOx浄化率よりも高く、380℃ではその差である反応中間体残存率は最大になり、約70%である。したがって、触媒コンバータ温度が280℃を超える高温では、反応中間体残存率は0%より大きく、Ag触媒5後に残存する反応中間体の一部はNO3−と反応せず、分解されることなくそのまま酸化触媒7に送られる。一方、触媒コンバータ温度が50℃から約280℃までは、酸化触媒7後のNOx浄化率の方が、Ag触媒5後のNOx浄化率よりも高い。したがって、50℃から280℃までは、反応中間体残存率は0%であり、Ag触媒5後に残存する反応中間体は、すべてNO3−と反応して分解され、反応中間体のまま酸化触媒7に送られることはない。
【0059】
表1からわかるように、実施例1の排気ガス浄化装置1と比較例1の排気ガス浄化装置の違いは、反応中間体浄化触媒6の有無である。したがって、実施例1の排気ガス浄化装置1で、比較例1の排気ガス浄化装置に比べて、反応中間体残存率が0%より大きくなる臨界温度が280℃から330℃まで上昇しているのは、反応中間体浄化触媒6の作用によるものである(図6および図7参照)。ここで、図6および図7に示す結果からわかるように、300℃前後では、Ag触媒5後のNOx浄化率が急上昇しており、この反応中間体浄化触媒6が臨界温度を上昇させる作用は、300℃前後での実施例1の排気ガス浄化装置1のNOx浄化率を上げるのに大きな効果をもたらしている。
【0060】
また、反応中間体浄化触媒6の作用により、実施例1の排気ガス浄化装置1では、臨界温度330℃以上での反応中間体残存率が、比較例1の排気ガス浄化装置に比べて低く抑えられている。そのため、330℃以上の高温域において、実施例1の排気ガス浄化装置1のNOx浄化率は、比較例1の排気ガス浄化装置に比べて高くなっている。実施例1の排気ガス浄化装置1の最大の反応中間体残存率は、380℃で約20%であるが、同じ温度での比較例1の排気ガス浄化装置の反応中間体残存率は、約70%である(図6および図7参照)。
【0061】
図8は、実施例1乃至5および比較例1乃至3の各排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が300℃のときの反応中間体残存率測定結果を比較したグラフ図である。図8からわかるように、Cuを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する実施例1、4および5の排気ガス浄化装置1では、反応中間体残存率が極めて低く、0%に近い。また、VまたはFeを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する実施例2および3の場合、反応中間体残存率は15%以下である。一方、反応中間体浄化触媒6を有さない比較例1や25wt%のFeを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する比較例2や30wt%のCuを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する比較例3の排気ガス浄化装置の反応中間体残存率は22%以上である。
【0062】
以上から、本実施形態の排気ガス浄化装置1を用いれば、Ag触媒5を通過した排気ガス中に残存する反応中間体を効率よく分解することができ、NOx浄化率を高めることができることがわかる。
【0063】
<Ag触媒の調製法による違い(比較試験用Ag触媒試験)>
Ag触媒5の調製法による、NOx浄化効果の違いを調べた。実施例1の排気ガス浄化装置においてAg触媒5を、前記した比較試験用のAg触媒5に置換した排気ガス浄化装置について、表2に示す組成のモデル排気ガスを25L/minの流量で流し、Ag触媒5直後のNOxおよびHCの浄化率を測定した。実施例1のAg触媒5は、Agを担持したベーマイトを焼成して製造したγ−Al2O3からなるAg触媒粉末から製造したAg触媒5(以下、「実施例1用Ag触媒」という)である。比較試験用のAg触媒5は、ベーマイトを焼成して製造したγ−Al2O3にAgを担持したAg触媒粉末から製造したAg触媒5(以下、「比較試験用Ag触媒」という)である。本試験において、実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒はともに300℃に保持された状態で測定を行った。
【0064】
図9は、本発明の排気ガス浄化装置のAg触媒後のNOxおよびHCの浄化率を実施例1用Ag触媒と比較試験用Ag触媒について比較した図である。
図9からわかるように、実施例1用Ag触媒では比較試験用Ag触媒に比べて、NOxの浄化率が高く、HCの浄化率が低い。実施例1用Ag触媒でNOxの浄化率が高いということは、このAg触媒上でNOxがHCと反応して効率よく反応中間体(図11参照)に変化していることを示している。
【0065】
一方、実施例1用Ag触媒ではNOxの浄化率が高いにもかかわらず、比較試験用Ag触媒に比べて、HCの浄化率が低い。NOxの浄化率のHCの浄化率に対する比率は、実施例1用Ag触媒が約3.4なのに対し、比較試験用Ag触媒では約1.9であり2倍近い差になっている。NOxは、HCにより選択還元されて反応中間体(図11参照)に変化して浄化される。比較試験用Ag触媒上でNOxの浄化率が低くHCの浄化率が高いのは、比較試験用Ag触媒上では、HCが燃焼する酸化反応が実施例1用Ag触媒上よりも多く起こったからである。以上の結果から、実施例1用Ag触媒を用いることにより、効率よくHCによりNOxを選択還元することができる。また、実施例1用Ag触媒を用いることにより、比較試験用Ag触媒に比べて、少ないHC添加量でNOx浄化をすることができることがわかる。
【0066】
実施例1用Ag触媒を用いることにより比較試験用Ag触媒に比べて、効率よくHCによりNOxを選択還元できるのは、Ag触媒中のAgの状態に差があるためである。
図10は実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒について、紫外光及び可視光の吸収スペクトルを分光光度計により測定した結果を示す図であり、拡散反射型紫外・可視分光光度計装置(日本分光製のJASCO/V−570)を用いて行った。光源は、190〜350nmの波長範囲の連続光源として重水素放電管を使用し、330〜2500nmの波長範囲の連続光源としてタングステン沃素ランプを使用した。吸収スペクトルは、ベースラインを硫酸バリウムで測定して補正した。有機化合物の被測定物への付着を除去するため、実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒をともに予め大気中で500℃、2時間の加熱処理をした。加熱処理を行った実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒のそれぞれを石英ガラス製のセルにセットし、前記した分光光度計装置により測定した。吸収スペクトルの測定は、200〜600nmの波長範囲を走査速度100nm/minで走査して行なった。
Al2O3に担持されたAgにおいて250nmの波長の吸収ピークは、高い触媒効果を有するAgイオンクラスタに対応する吸収ピークである(参考文献:”Rh-post-doped Ag/Al2O3 as a highly active catalyst for the selective reduction of NO with decane”, Kazuhito Sato et al., Catalysis Communications 4 (2003)315-319)。また、400〜600nmの波長の吸収は、Agメタルに対応するものである(参考文献:”Effect of hydrogen addition on SO2 tolerance of silver-alumina for SCR of NO with propane”, Ken-ichi Shimizu et al., Journal of Catalysis 239(2006)117-124)。
【0067】
図10からわかるように、実施例1用Ag触媒の吸収スペクトルの場合、波長250nmのピークが比較的高く、400〜600nmの波長の吸収は低い。一方、比較試験用Ag触媒の吸収スペクトルの場合、波長250nmのピークが比較的低く、400〜600nmの波長の吸収は比較的高い。このことから、実施例1用Ag触媒は、比較試験用Ag触媒に比べて、触媒中に含まれるAgのうちAgイオンクラスタとして存在するものの比率が高いことがわかる。実施例1用Ag触媒の場合、活性種であるAgイオンクラスタが比較的多く、そのAgイオンクラスタ上でHCによりNOxを選択還元して反応中間体を生成させる反応が促進される。比較試験用Ag触媒の場合、Agメタルが比較的多いが、このAgメタル上では、HCが燃焼し酸化される反応が促進されるため、HCによりNOxを選択還元して反応中間体を生成させる反応が効率よく進行しない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化層の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図2】実施形態の排気ガス浄化装置に用いられるプラズマ発生ユニットの構造を示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化装置の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化装置の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化装置の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図6】実施例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。
【図7】比較例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。
【図8】実施例1乃至5および比較例1乃至3の各排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が300℃のときの反応中間体残存率測定結果を比較したグラフ図である。
【図9】本発明の排気ガス浄化装置のAg触媒後のNOxおよびHCの浄化率を実施例1用Ag触媒と比較試験用Ag触媒について比較した図である。
【図10】実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒について、紫外光及び可視光の吸収スペクトルを分光光度計により測定した結果を示す図である。
【図11】ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOxが、Ag触媒の作用により選択還元除去される反応過程を説明する図である。
【図12】Ag触媒のAgメタル上で起きるHC酸化反応を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1a,1b,1c 排気ガス浄化装置
2,2a,2b,2c 触媒コンバータ
3 プラズマ発生ユニット
4 排気管
5 Ag触媒
6 反応中間体浄化触媒
7 酸化触媒
8a,8b,8c 複合触媒
20 WC層
21 Ag触媒WC層
22 反応中間体浄化触媒WC層
23 酸化触媒WC層
24 ハニカム
25 セル
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる有害な窒素酸化物を効果的に還元して窒素ガスとして排出するようにした排気ガス浄化装置および排気ガスの浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、温室化ガスである二酸化炭素の排出量が比較的少ない。そのため、ディーゼルエンジンを搭載した車両の利用は、地球温暖化を緩和するのに有効である。しかし、ディーゼルエンジンは、酸性雨や光化学スモッグの原因となり、また人体にも有害なNOやNO2等の窒素酸化物(以下「NOx」という)の排出が比較的多い。そこで、ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOxを還元除去するため、選択的接触低減(Selective Catalytic Reduction、以下「SCR」という)による触媒システムが開発されている。
【0003】
前記したNOxを還元除去するためのSCR触媒システムでは、還元剤を用いて排気ガスに含まれるNOxを還元する。このようなSCR触媒システムの一つは、触媒の作用により尿素をアンモニアに転化させ、このアンモニアによってNOxを還元除去するSCR触媒システムである。もう一つのNOxを還元除去するためのSCR触媒システムは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の未燃焼の炭化水素(以下「HC」という)、または、排気ガス中に添加された軽油中のHCにより、NOxを選択還元触媒の作用で、還元除去するSCR触媒システムである。
【特許文献1】特開平09−57063号公報
【特許文献2】特開平09−57064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した尿素を利用してNOxを還元除去するSCR触媒システムを実施するためには、車両に尿素を貯蔵するタンクを新たに設けなければならないし、また尿素の補給を可能にするための供給インフラストラクチャが必要となるので、この方法を実現するのは困難である。
【0005】
一方、前記したHCによりNOxを還元除去するSCR触媒システムには次のような問題がある。HCによりNOxを還元除去するSCR触媒システムで、HCの存在下、NOxを還元する反応を促進するSCR触媒は、水分存在下において高い活性を示すIn(インジウム)、Sn(錫)、Ag(銀)、Zn(亜鉛)等の酸化物を化学式Al2O3で表される酸化アルミニウム(以下「アルミナ」という)に担持したSCR触媒である。このようなSCR触媒の中で、軽油に含まれる硫黄分から生成され、排気ガス中に含まれるSO2に対する耐久性があるSCR触媒は、Agを酸化アルミニウム(以下「に担持したSCR触媒(以下「Ag触媒」という)である。そのため、耐久性の点からすればAg触媒が、HCによりNOxを還元除去するSCR触媒システムに好ましい。
【0006】
しかし、Ag触媒は、NOxを選択還元する効率が比較的低いという問題がある。この問題につき、図11および図12を参照して説明する。図11は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOxが、Ag触媒の作用により選択還元除去される反応過程を説明する図である。図12は、Ag触媒のAgメタル上で起きるHC酸化反応を説明する図である。HCの存在下Ag触媒の作用により、NOxは2段階の反応を経て窒素ガス(以下「N2」という)に還元されると考えられる。まず、NOxは反応中間体であるR−NCOやR−NH2(Rは炭化水素基)等に還元される(反応中間体生成反応)。この反応中間体生成反応は、Ag触媒中のアルミナの酸点(O−)上に存在するAg上でおきる。ただし、Ag触媒中のAgが、Agを担持するアルミナの酸点(O−)上以外にAgメタルとして存在する場合、このAgメタル上では図12に示すようにHC酸化反応が促進されるため、前記した反応中間体生成反応は進行しにくい。
前記した反応中間体生成反応により生成したR−NCOやR−NH2等の反応中間体は、図11に示すようにNO2からAg触媒中のアルミナの酸点(O−)上に存在するAgイオン上で生成されたNO3−(硝酸イオン)と反応して、酸化され分解されるとともに、NO3−は還元されて、N2、H2O、CO2等が生成される(反応中間体分解反応)。
【0007】
ところが、Ag触媒を用いる場合、反応中間体生成反応は迅速に進行するが、その後の反応中間体分解反応の進行が遅い。そのため、Ag触媒を通過した排気ガス中には前記した反応中間体が残存する。一方、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置においては、未燃焼のHCや一酸化炭素(CO)等を除去するため、排気ガス流路でSCR触媒の下流に酸化触媒が設けられる。したがって、残存した反応中間体を含む、Ag触媒を通過した排気ガスは、さらに酸化触媒を通過する。その際、N2は安定なので酸化触媒を通過しても酸化されることはないが、残存した反応中間体は再酸化されて、NOxに戻ってしまう。反応中間体は安定ではないからである。したがって、Ag触媒を用いたSCR触媒システムでは、従来、NOxの浄化率を十分に高めることができなかった。
そこで本発明は、SCR触媒としてAg触媒を用いたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、反応中間体が残存することを低減し、NOxの浄化効率を高めたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、排気ガスの排出流路にAg触媒が配置され、かつ、前記排気ガスの排出流路において前記Ag触媒の下流側に酸化触媒が配置されるディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記Ag触媒を構成するウォッシュコート層(以下「WC層」という)が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体であること、前記Ag触媒と前記酸化触媒の中間に、反応中間体浄化触媒が配置されていること、前記反応中間体浄化触媒を構成するWC層が、銅(以下「Cu」という)、バナジウム(以下「V」という)および鉄(以下「Fe」という)から選択される少なくとも1種類以上の元素を、重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持するアルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体によって構成されることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、Ag触媒通過後の排気ガス中に残存する反応中間体を、Cu、VまたはFeの触媒作用によって、分解することができるようになる。前記したWC層中に担持されるCuは、その価数が+1と+2の間で変動し、排気ガス中のNOxを酸化する。その結果、NO3−がWC層のCu表面上に生成される。このNO3−と、R−NCOやR−NH2等の反応中間体(以下「反応中間体」という)が反応することによって、反応中間体は酸化され分解されるとともに、NO3−が還元されて、N2等が生成する。前記したWC層中に担持されるVおよびFeは、ともにその価数が+2と+3の間で変動するため、同様にその表面上でNO3−が生成される。そのため、Cuの場合と同様に反応中間体が酸化され分解する。
【0009】
前記課題を解決するために請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された排気ガス浄化装置において、前記Agを担持する多孔質構造体が、化学式Al2O3で表される酸化アルミニウム(以下「アルミナ」という)からなることを特徴とする。本発明の場合、前記多孔質構造体が、特に立方晶系スピネルの結晶構造を有するγ―Al2O3よりなることが好ましい。
請求項2に記載の発明によれば、Ag触媒を担持する多孔質構造体が高温で安定であり、また表面積が大きいアルミナで構成される。そのため、アルミナ多孔質構造体中に分散して担持され、触媒として実際に機能するAgの比率が比較的高い。したがって、Ag触媒の触媒機能が高められる。
【0010】
前記課題を解決するために請求項3に記載の発明は、請求項2に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記Agを担持する多孔質構造体が、主として化学式AlOOH・H2Oで表されるベーマイト(以下「ベーマイト」という)から製造されたγ―Al2O3であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、通常のアルミナよりもAgとの相互作用強くなる。その結果、Ag触媒の触媒機能がより高くなる。
【0011】
前記課題を解決するために請求項4に記載の発明は、前記γ−Al2O3がAgを担持したベーマイトを焼成して製造したものであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、Ag触媒中のAgのうちAgイオンクラスタ状態として存在するものの比率が高くなるため、少量のHCでも効率よくNOxを選択還元して浄化することができる。
【0012】
前記課題を解決するために請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記反応中間体浄化触媒を構成するWC層が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCuを担持するゼオライトからなることを特徴とする。ここでゼオライトとは、四面体構造を有する(SiO4)4−および(AlO4)5−の基本単位が連結して構成されるケイ酸塩であり、これら基本単位同士が四面体構造の頂点に位置する酸素原子を共有した構造である。
請求項5に記載の発明によれば、ゼオライトに担持されたCuの作用により、効率よく反応中間体とNO3−とを反応させて、NOxの浄化をすることができる。
【0013】
前記課題を解決するために請求項6に記載の発明は、請求項5に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記Cuを担持するゼオライトが、MFI型であることを特徴とする。ここでMFI型のゼオライトとは、前記したゼオライトの基本単位が環構造を形成し、この環構造中に含まれる酸素原子の数が10個であるものである。
請求項6に記載の発明によれば、MFI型ゼオライトの細孔の効果により、反応中間体とNO3−とを反応させてNOxの浄化をするCu触媒の作用を高めることができる。
【0014】
前記課題を解決するために請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記反応中間体浄化触媒を構成するWC層が、Cu、VおよびFeから選択される少なくとも1種類以上の元素を重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持する、ベーマイトから製造されたγ−Al2O3からなる多孔質構造体から構成されることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、ベーマイトから製造されたγ−Al2O3に担持されたCu、FeまたはVの作用により、効率よく反応中間体とNO3−とを反応させて、NOxの浄化をすることができる。
【0015】
前記課題を解決するために請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、前記反応中間体浄化触媒の前記Ag触媒に対する容量比率が、20%以上かつ100%以下であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、未反応の反応中間体を分解するのに十分な容量の反応中間体浄化触媒が確保される。また、反応中間体浄化触媒が作用するのは、主として未反応の反応中間体なので、反応中間体浄化触媒の容量を必要以上に大きくする必要はない。
【0016】
前記課題を解決するために請求項9に記載の発明は、ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法であって、前記排気ガスを、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体からなるWC層により構成されるAg触媒により浄化し、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCu、V、Feから選択される少なくとも1種類以上の元素を担持する、アルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体からなるWC層により構成される反応中間体浄化触媒により浄化した後、酸化触媒により浄化することを特徴する。
請求項9に記載の発明によれば、Ag触媒および反応中間体浄化触媒の作用により、排気ガス中のNOxを効率的にN2に還元するとともに、酸化触媒の作用により、未燃焼のHCを酸化除去できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置(以下「排気ガス浄化装置」という)およびディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法(以下「排気ガス浄化方法」という)によれば、従来ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる、NOxを効率的にN2に還元することができる。そのため、酸化触媒の作用により再酸化される不安定な反応中間体が残存することを、低減できる。その結果、従来よりも、ディーゼルエンジンから排出されるNOx量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について、図1乃至図2を適宜参照して説明する。図1は、実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化層の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。図2は、本実施形態の排気ガス浄化装置に用いられるプラズマ発生ユニットの構造を示す図である。
【0019】
まず、図1(a)に示す実施形態の排気ガス浄化装置1の構成について説明する。排気ガス浄化装置1は、排気管4、プラズマ発生ユニット3、および触媒コンバータ2より構成される。プラズマ発生ユニット3は、主としてディーゼルエンジンから排出される排気ガス中に含まれる粒子状物質(Particle Matter、以下「PM」という)をプラズマの作用により、酸化して浄化するためのものである。触媒コンバータ2は、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中に含まれるNOxや未燃焼のHC等を浄化するものである。排気管4は、図示しないエキゾーストマニホールドに継合されている。排気管4には、エキゾーストマニホールドを経由して、ディーゼルエンジンの各気筒から排出される排気ガスが流入する。
【0020】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガスは、まずプラズマ発生ユニット3を通り、PMが浄化された後、触媒コンバータ2に送られる。プラズマ発生ユニット3は、図2に示すように、誘電体31aで片面が覆われた金属電極31bよりなる電極30が、所定の間隔を空けて配置されている。電極30間の空隙部分は、プラズマ発生部33となる。電極30間に、高電圧電源32により交流の高電圧が印加されることによって、各電極30間の空隙部分であるプラズマ発生部33にプラズマが発生する。このプラズマにより生じるプラズマ励起種によって、PMが酸化され浄化される。同時に、排気ガス中に含まれるNOxは、このプラズマ励起種によりNO2に酸化される。
【0021】
本実施形態では、PMを浄化するのにプラズマ発生ユニット3を用いているが、本発明の実施形態は、これに限られるものではない。たとえば、プラズマ発生ユニット3の代わりにディーゼル微粒子フィルタ(Diesel Particulate Filter、以下「DPF」という)を、排気ガス流路で触媒コンバータ2の下流に設けてもよい。DPFは、セラミック製の多孔質フィルタからなり、通過する排気ガスからPMを分離、捕集するものである。
【0022】
プラズマ発生ユニット3で、排気ガス中のPMが浄化された排気ガスは、触媒コンバータ2に送られる。触媒コンバータ2内には、Ag触媒5、反応中間体浄化触媒6および酸化触媒7が、排気ガス流路である排気管4の上流側から、この順番にしたがって配置されている(図1(a)参照)。Ag触媒5、反応中間体浄化触媒6および酸化触媒7の各触媒は、いわゆるハニカム構造のものであり、ハニカム24で仕切られたセル25が多数形成されている。ハニカム24上には、対応するWC層20が形成されている(図1(b)参照)。排気ガスは、セル25を通過する。その際、触媒作用を有するWC層20により、排気ガス浄化のための、還元反応あるいは酸化反応が促進される。
【0023】
触媒コンバータ2には、必要に応じてHC、すなわち軽油が添加される。すなわち、触媒コンバータ2のHC濃度は、図示しないセンサによってモニタされ、排気ガス中に未燃焼のHCが十分に含まれている場合は、HCの添加はされない。しかし、触媒コンバータ2のHC濃度が低い場合、HCが添加される。本発明においては、HCの存在下NOxを還元するので、触媒コンバータ2のHC濃度は常に所定値以上必要である。
【0024】
本実施形態の排気ガス浄化装置1において、Ag触媒5は、主として、未燃焼のHCがNOxを還元して、反応中間体が生成する反応を促進する(図11参照)。Ag触媒5のWC層20に含まれるAgが前記触媒作用を有するものである。Ag触媒5のWC層20は、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体からなるものである。ここで、この多孔質構造体を構成する材料は限定されるものではないが、アルミナから構成されるものが望ましい。特に、立方晶系スピネル構造のγ−Al2O3から構成されるものが望ましい。アルミナは高温で安定であり、比表面積が大きいので、Agがアルミナ多孔質構造体に担持されると、表面に露出し触媒として機能するAgの割合が比較的高くなる点で望ましい。特にベーマイトを出発原料として形成されたγ−Al2O3は、Agとの相互作用が強いため、Ag触媒5中のAgのうち触媒として機能するAgの割合が高い。その結果、NOxの還元反応が促進される。
【0025】
ここで、ベーマイトを出発原料として製造する、Ag触媒5を構成するWC層20は、その調製法によりAg触媒としてのNOx浄化効果が相違する。ベーマイトを出発原料として製造する、Ag触媒5を構成するWC層20には、次の2種類の調製法がある。その一つの調製法は、Agを担持したベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造するものである。もう一つの調製方法は、ベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造するものである。本発明においては、前者の調製法が望ましい。その理由は、この調製法で製造された、Ag触媒5を構成するWC層20の場合、WC層20に含まれるAgのうち、Agイオンが集合してクラスタ状態になったAgイオンクラスタ(Agδ+)として存在するものの比率が比較的高いからである。
【0026】
図11に示すようにNOxは、Ag元素上で、排気ガス中に含まれるHCにより反応中間体に変化して浄化される。この反応中間体生成反応は、Ag触媒5中のアルミナに担持されているAg元素が、アルミナの酸点上にあるAgのとき、比較的効率よく進行する。Ag触媒中のアルミナに担持されるAgのうち、Agイオンとして存在するものはすべてアルミナの酸点上にあるものである。したがって、前記したWC層20のAgイオンクラスタ(Agδ+)上では、反応中間体生成反応の進行が促進される。
一方、図12に示すようにAg触媒5中のアルミナに担持されているAg元素がアルミナの酸点上にないメタル状態の場合、このAgメタル上ではHCの燃焼による酸化反応が促進されるため、HCが有効に反応中間体生成反応に使用されない。その結果、図11に示す反応中間体生成反応およびそれに続く反応中間体分解反応によるNOxの浄化が進みにくい。ベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造したAg触媒5の場合、WC層20中のアルミナに担持されるAgのうち、Agメタルの比率が比較的高い。そのため、WC層20のアルミナの酸点上にないAgメタルの比率も、Agを担持したベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造したAg触媒5に比べて高い。したがって、Agを担持したベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造したAg触媒5の場合、ベーマイトを焼成して製造するγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造したAg触媒5に比べて、より少ないHC量により、反応中間体生成反応を進行させることができる。
【0027】
本発明の実施形態の排気ガス浄化装置1では、Ag触媒5に担持されるAg量は、前記したようにWC層20の重量に対して、0.01%以上かつ20%以下の量である。この範囲の量のAgが、たとえば、アルミナに担持されている場合、アルミナ表面に担持されているAgの中で、触媒効果の高いAgイオンクラスタ(Agδ+)状態のものが比較的多く、Ag触媒5全体として触媒効果が高い。Ag量がWC層20の重量に対して0.01%未満の場合、Agの量が少なすぎて、Ag触媒5は触媒としての機能を十分に発揮しない。また、Ag量がWC層20の重量に対して20%を超える場合、Agの凝集がおきてWC層20の表面に存在するAgの中で、触媒効果を発揮するAgイオンクラスタ(Agδ+)状態のものが少なくなり金属状態のものが多くなるため、Ag触媒5は触媒作用を十分に発揮できない。
【0028】
本実施形態の排気ガス浄化装置1において、反応中間体浄化触媒6は、Ag触媒5の作用により、生成されるが残存する反応中間体を分解する反応を促進する。反応中間体浄化触媒6に担持された金属上でNOxより生成されるNO3−が、反応中間体と反応して、N2等が生成する反応が促進される。反応中間体浄化触媒6を構成するWC層20は、Cu、VおよびFeから選択される1種類以上の元素を、重量で0.01%以上かつ20%以下の量含む、アルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体によって構成されるものである。これらの元素の重量比率が制限されるのは、前記したAg触媒5と同様な理由に基づく。ここで、元素Cu、VおよびFeが、前記した反応中間体分解反応を促進する触媒作用を有する。
【0029】
ここで、反応中間体浄化触媒6がCuのみの元素を担持する場合、WC層20を構成するCuを担持する多孔質構造体は、ゼオライトまたはアルミナより構成される。ゼオライトの場合、特にMFI型のゼオライトであることが望ましい。ゼオライト層やMFI型のゼオライト層の、表面の微細な孔の効果により、前記した反応中間体分解反応がより促進されるからである。また、反応中間体浄化触媒6が、FeまたはVのみの元素を担持する場合、WC層20を構成するFeまたはVのみの元素を担持する多孔質構造体は、アルミナより構成されることが望ましい。前記した反応中間体分解反応が、より促進されるからである。また、反応中間体浄化触媒6の多孔質構造体が、前記したアルミナで構成される場合、特にベーマイトを出発原料として、形成されたγ−Al2O3のアルミナ多孔質構造体から構成されるものが望ましい。前記したAg触媒5のWC層20と同様な調製法により製造すれば、WC層20上に担持されるCu、VまたはFeが高い触媒効果を発揮する状態になる。その結果、反応中間体分解反応が促進される。
【0030】
酸化触媒7は、未反応のHCやCO等を酸化する反応を促進するためのものである。酸化触媒7のWC層20は、Pt等の貴金属を担持するアルミナ等から構成される多孔質構造体よりなるものである。
【0031】
本実施形態の排気ガス浄化装置1の作用は次のとおりである。ディーゼルエンジンの各気筒から排出される排気ガスは、排気管4を通ってプラズマ発生ユニット3に送られる。プラズマ発生ユニット3を通過し、排気ガスに含まれるPMはプラズマ発生ユニット3によって浄化されるとともに、排気ガスに含まれるNOxは、NO2に酸化される。プラズマ発生ユニット3を通過した排気ガスは、触媒コンバータ2に送られる。触媒コンバータ2では、排気ガス中のNO2はAg触媒5の触媒作用により、排気ガスに含まれる未燃焼のHCあるいは添加された軽油に含まれるHCと反応し還元されて、反応中間体に変化する。生成した反応中間体の一部は、Ag触媒5の触媒作用によって、Ag触媒5のWC層20中のAg表面でNO2から生成されるNO3−と反応して酸化されて分解する。その結果N2等が生成される。残存した反応中間体は、反応中間体浄化触媒6のWC層20中のCu、VまたはFe表面でNO2から生成されるNO3−と反応する。その結果N2等が生成される。反応中間体浄化触媒6の作用により、残存する反応中間体の量は、0%あるいは抑制される。そのため、残存する反応中間体が酸化触媒7の触媒作用により、再酸化されてNOxに戻ることが抑制されている。したがって、本実施形態の排気ガス浄化装置1を備えるディーゼルエンジンの場合、NOxの排出が従来よりも少なくなる。
【0032】
<本発明の他の実施形態>
本発明の実施形態は、図1に示す実施形態に限定されるものではなく、その主旨に反しない限り、構成要素は変更可能である。図3は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置の概略図、(b)は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置に用いられている複合化された触媒の断面拡大図である。
図3(a)に示す本発明の他の実施形態である排気ガス浄化装置1aの触媒コンバータ2aでは、図1に示す排気ガス浄化装置1のAg触媒5と反応中間体浄化触媒6が複合化され、一つの複合触媒8aになっている。図3(b)に示すように、複合触媒8aのセル25を形成するハニカム24上には、反応中間体浄化触媒WC層22およびAg触媒WC層21がAg触媒WC層21を上層として積層された複合WC層20aが、形成されている。この場合、セル25を通過する排気ガスはまず上層であるAg触媒WC層21の触媒作用を受け、排気ガスに含まれるNOxが未燃焼のHCにより前記した反応中間体を経てN2に還元される。その後、Ag触媒WC層21上で残った反応中間体は下層の反応中間体浄化触媒WC層22の触媒作用を受け、NO3−と反応して、N2等が生成する。排気ガス浄化装置1aでは、図1に示す排気ガス浄化装置1と同様に、排気ガスが触媒作用を受ける順序からすれば、反応中間体浄化触媒WC層22は、Ag触媒WC層21と酸化触媒7の中間に位置している。したがって、排気ガス浄化装置1aは、図1に示す排気ガス浄化装置1と同様な作用・効果を有する。
【0033】
また、図4および図5に示す排気ガス浄化装置1b、1cも本発明の実施形態に含まれるものである。図4および図5は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、それぞれの図において(a)は本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置の概略図、および、(b)は、本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置に用いられている複合化された触媒の断面拡大図である。
【0034】
図4(a)および(b)に示す本発明の実施形態の排気ガス浄化装置1bの触媒コンバータ2bの場合、図1に示す排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6と酸化触媒7が複合化されて、複合触媒8bになっている(図4(a)参照)。複合触媒8bのセル25を形成するハニカム24上には、酸化触媒WC層23および反応中間体浄化触媒WC層22が反応中間体浄化触媒WC層22を上層として積層された複合WC層20bが、形成されている(図4(b)参照)。
また、図5(a)および(b)に示す本発明の実施形態の排気ガス浄化装置1cの触媒コンバータ2cの場合、図1に示す排気ガス浄化装置1のAg触媒5、反応中間体浄化触媒6と酸化触媒7が複合されて、複合触媒8cになっている(図5(a)参照)。複合触媒8cのセル25を形成するハニカム24上には、酸化触媒WC層23、反応中間体浄化触媒WC層22およびAg触媒WC層21がハニカム24上からこの順に積層された複合WC層20cが、形成されている(図5(b)参照)。
【0035】
図4および図5に示す本発明の実施形態の場合、まず排気ガス中に含まれるNOxは、Ag触媒5またはAg触媒WC層21の触媒作用を受けた後、反応中間体浄化触媒WC層22の触媒作用を受ける。その後、酸化触媒7または酸化触媒WC層23の触媒作用を受ける。したがって、これらの実施形態の排気ガス浄化装置1b、1cは、図3に示す排気ガス浄化装置1a同様、図1に示す実施形態の排気ガス浄化装置1と同様な作用・効果を有する。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施形態である排気ガス浄化装置1の効果を、実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置による排気ガス浄化試験および比較試験用Ag触媒試験の結果に基づいて説明する。まず、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置等の構成および製造方法について説明する。なお、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置の基本的な構成は、特に注釈のない限り、図1に示す排気ガス浄化装置1と同一である。すなわち、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置は、図1に示す排気ガス浄化装置1と同様、プラズマ発生ユニット3および触媒コンバータ2より構成され、触媒コンバータ2は、Ag触媒5、反応中間体浄化触媒6および酸化触媒7を保持している。
【0037】
また、各実施例および各比較例の排気ガス浄化装置に用いられたプラズマ発生ユニット3は共通であり、次の仕様のものである。
図2のプラズマ発生ユニット3において、電極30のサイズは、20mm×50mmであり、電極30を構成する金属電極31bは1.0mm厚さのSUS316製の板である。誘電体31aとしては、0.5mm厚さのアルミナ板を用いた。0.5mmの厚さのプラズマ発生部33が、5層できるように電極30を配置した。実施した排気ガス浄化試験では、この構成のプラズマ発生ユニット3において、高電圧電源32により、電極30間に上下ピーク間の電位差が7.6kVp−pで、周波数が200Hzの正弦波を印加し、プラズマを発生させた。最大電界強度は、7.6kV/mmである。出力電力は、3.1Wであり、電力密度は、1.2W/cm3であった。
以下、各実施例および比較例の排気ガス浄化装置の構成および製造方法について説明する。
【0038】
<実施例1の排気ガス浄化装置1の構成>
触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5は、ハニカム構造でサイズがφ25.4mm×L60mm(体積は約30mL)である。セル密度は、62セル/cm2である。Ag触媒5のWC層20は、厚さが50〜400μmで、重量が300g/Lである。このWC層20は、12g/LのAgが担持された、ベーマイトを出発原料として製造されたアルミナからなる多孔質構造体により構成されるものである。
触媒コンバータ2に保持される反応中間体浄化触媒6は、ハニカム構造でサイズがφ25.4mm×L30mm(体積は約15mL)である。セル密度は、62セル/cm2である。反応中間体浄化触媒6のWC層20は、厚さが25〜300μmで、重量が150g/Lである。このWC層20は、7.5g/LのCuでイオン交換されたMFI型ゼオライトからなる多孔質構造体により構成されるものである。
触媒コンバータ2に保持される酸化触媒7は、ハニカム構造でサイズがφ25.4mm×L30mm(体積は約15mL)である。セル密度は、62セル/cm2である。酸化触媒7のWC層20は、厚さが30〜200μmで、重量が150g/Lである。このWC層20は、4.5g/LのPtを担持したγ―Al2O3からなる多孔質構造体により構成されるものである。
【0039】
<実施例1の排気ガス浄化装置1のAg触媒5の製造方法>
ベーマイト(PURAL SB、SASOL社製)125.3gおよび硝酸銀(試薬特級、小島化学薬品株式会社製)6.3gをフラスコに入れて、イオン交換水1000mLを加え、フラスコ内の薬品をよく攪拌・混合した後、ロータリーエバポレータにより、余分な水分を除去した後、200℃で2時間乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成して、Agがγ−Al2O3に担持されたAg触媒粉末を得る。このAg触媒粉末を45g、アルミナバインダ(Al2O3濃度:20%、日産化学工業株式会社製)25gおよびイオン交換水150mLを、ポリエチレン容器に入れ、アルミナボールにより14時間湿式粉砕して、Ag触媒スラリを作製した。このAg触媒スラリに、ハニカム24の厚さが0.09mmのコージェライト製ハニカムを浸漬し、引き上げ、過剰分を高圧空気噴射により除去し、200℃で2時間加熱した。このAg触媒スラリへの浸漬以降の操作を繰り返し、所定のWC量になるようにした。所定のAg担持量が得られた後、コージェライト製ハニカムを500℃で2時間焼成して、Agを担持するγ−Al2O3がハニカム24に担持されたAg触媒5が製造された。
【0040】
<Ag触媒5の調製法の違いを調べるための比較試験用Ag触媒の製造方法>
実施例1のAg触媒5を構成するWC層20は、前記したとおりAgを担持したベーマイトを焼成したγ−Al2O3よりなるAg触媒粉末から製造したものである。Ag触媒5の調製法の違いを調べるため、構成するWC層20が、ベーマイトをまず焼成して製造したγ−Al2O3にAgを担持させたAg触媒粉末から製造されたものであるAg触媒5を製造した。
このWC層20は、次の工程により製造されるAg触媒粉末から製造するものである。このAg触媒粉末は、ベーマイト(PURAL SB、SASOL社製)125.3gを600℃で2時間焼成して製造されたγ−Al2O3と硝酸銀(試薬特級、小島化学薬品株式会社製)6.3gをフラスコに入れて、イオン交換水1000mLを加え、フラスコ内の薬品をよく攪拌・混合した後、ロータリーエバポレータにより、余分な水分を除去した後、200℃で2時間乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成して製造される。このAg触媒粉末45gから、前記した実施例1のAg触媒5と同様な工程を経て、比較試験用Ag触媒を製造した。
【0041】
<実施例1の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6の製造方法>
ビーカにNa−ZSM−5型ゼオライト(Si/Al=28)420gに純水4000mLを入れ、120℃で2時間攪拌した後、0.1mol/Lの銅アンミン錯体水溶液をゆっくり滴下した。その後、90℃で12時間加熱攪拌して、Na−ZSM−5型ゼオライト中のNaイオンをCuイオンに交換するイオン交換を行った。このイオン交換されたゼオライトを濾過し、多量のイオン交換水で洗浄を繰り返した。洗浄後のゼオライトを120℃で24時間乾燥して、Cuでイオン交換されたMFI型ゼオライトからなるCu触媒粉末を得た。このCu触媒粉末を45g、アルミナバインダ(Al2O3濃度:20%)25gおよびイオン交換水150gを、ポリエチレン容器に入れ、アルミナボールにより14時間湿式粉砕して、Cu触媒スラリを作製した。このCu触媒スラリから、前記したAg触媒5の製造方法と同一の工程により、Cuでイオン交換されたMFI型ゼオライトをハニカム24に担持した反応中間体浄化触媒6が製造された。
【0042】
<実施例1の排気ガス浄化装置1の酸化触媒7の製造方法>
γ―Al2O3(AF115、住友化学工業株式会社製)97g、ジニトロジアミン白金(小島化学薬品株式会社製)4.94gをフラスコに入れ、イオン交換水1000mLを加える。フラスコ内の薬品をよく攪拌・混合した後、ロータリーエバポレータにより、余分な水分を除去した後、200℃で2時間乾燥させ、さらに600℃で2時間焼成して、Ptがγ―Al2O3に担持されたPt触媒粉末を得た。
このPt触媒粉末を45g、シリカバインダ(SiO2濃度:20%、触媒化成工業株式会社製)25gおよびイオン交換水150mLを、ポリエチレン容器に入れ、アルミナボールにより14時間湿式粉砕して、Pt触媒スラリを作製した。
このPt触媒スラリから、前記したAg触媒5の製造方法と同一の工程により、Ptを担持するγ―Al2O3がハニカム24に担持された酸化触媒7が製造された。
【0043】
<実施例2の排気ガス浄化装置1の構成>
実施例2の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5および酸化触媒7は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。また、実施例2の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6は、ハニカム構造でサイズおよびセル密度は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。反応中間体浄化触媒6のWC層20は、厚さが25〜300μmで、重量が150g/Lである。このWC層20は、3g/LのFeを担持するアルミナからなる多孔質構造体により構成されるものである。この反応中間体浄化触媒6のWC層20の多孔質構造体を構成するアルミナは、ベーマイトから製造されるγ―Al2O3であり、前記した実施例1のAg触媒5と同様な方法により製造された。
【0044】
<実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の構成>
実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5および酸化触媒7は、実施例1および2の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。また、実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6は、ハニカム構造でサイズおよびセル密度は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。 実施例3乃至5の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6のWC層20の厚さおよび重量は、実施例2の排気ガス浄化装置1の反応中間体浄化触媒6と同一である。
実施例3の反応中間体浄化触媒6のWC層20は、3g/LのVを担持するγ―Al2O3により構成されている。実施例4の反応中間体浄化触媒6のWC層20では、3g/LのCuがアルミナに担持されている。実施例5の反応中間体浄化触媒6のWC層20は、7.5g/LのCuを担持するγ―Al2O3により構成されている。これらの反応中間体浄化触媒6は、いずれも実施例1のAg触媒5と同様な方法により製造される。
【0045】
<比較例1の排気ガス浄化装置の構成>
比較例1の排気ガス浄化装置の触媒コンバータに保持されるAg触媒5および酸化触媒7は、実施例1の排気ガス浄化装置1の対応する触媒と同一である。比較例1の排気ガス浄化装置には、反応中間体浄化触媒6は保持されていない。その代わりに実施例1の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持されるAg触媒5が重複して保持されている。
【0046】
<比較例2の排気ガス浄化装置の構成>
比較例2の排気ガス浄化装置の触媒コンバータに保持される反応中間体浄化触媒6は、実施例2の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持される反応中間体浄化触媒6において、Feの担持量を増やしたもので、37.5g/LのFeが担持されている。他の構成は、実施例2の排気ガス浄化装置1と同一である。
【0047】
<比較例3の排気ガス浄化装置の構成>
比較例3の排気ガス浄化装置の触媒コンバータに保持される反応中間体浄化触媒6は、実施例4の排気ガス浄化装置1の触媒コンバータ2に保持される反応中間体浄化触媒6において、Cuの担持量を増やしたもので、45g/LのCuが担持されている。他の構成は、実施例4の排気ガス浄化装置1と同一である。
【0048】
以上説明した、実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置の触媒の構成
をまとめると表1のようになる。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置に表2に示す組成のモデル排気ガスを25L/minの流量で流し、各排気ガス浄化装置の触媒前後のNOx濃度を測定し、NOx浄化率を算出した。ここでNOx浄化率は、次の式(1)を用いて算出した。
【0051】
【数1】
【0052】
【表2】
【0053】
各排気ガス浄化装置で、Ag触媒5前後および酸化触媒7後のそれぞれのガスについてNOx濃度を測定しNOx浄化率を求めた。また、各排気ガス浄化装置について、Ag触媒5後の排気ガスと酸化触媒7後の排気ガスのNOx浄化率の差を求め、反応中間体残存率とした。Ag触媒5前後の排気ガスと酸化触媒7後排気ガスのそれぞれのNOx濃度を測定し、NOx浄化量を算出しNOx浄化量の差から反応中間体残存率とした。反応中間体残存率は次の式(2)により求めた。
【0054】
【数2】
【0055】
Ag触媒5のモデル排気ガスに残存する反応中間体がN2に分解されずに残存して酸化触媒7に送られる場合、この反応中間体は酸化触媒7上で酸化されてNOxに戻る。
【0056】
以下、実施例1乃至5および比較例1乃至3の排気ガス浄化装置のNOx浄化率の測定結果を説明する。
図6は、実施例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ2の温度を50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。図7は、比較例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ2の温度を50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。ここで、実機においては、Ag触媒5の温度は通常200℃以上、反応中間体浄化触媒6は通常150℃以上、酸化触媒7は通常50℃以上になる。
【0057】
図6からわかるように、実施例1の排気ガス浄化装置1の場合、触媒コンバータ2の温度が330℃から450℃の温度範囲では、Ag触媒5後のNOx浄化率が酸化触媒7後のNOx浄化率よりも高く、400℃でその差である反応中間体残存率は最大になり、約20%である。したがって、触媒コンバータ2の温度が330℃から450℃の温度範囲では、反応中間体残存率は0%より大きく、Ag触媒5後に残存する反応中間体の一部はNO3−と反応することなく、そのまま酸化触媒7に送られる。
一方、触媒コンバータ2の温度が50℃から約330℃および450℃以上の温度範囲では、酸化触媒7後のNOx浄化率の方が、Ag触媒5後のNOx浄化率よりも高い。したがって、50℃から約330℃までは、反応中間体残存率は0%であり、Ag触媒5後に残存する反応中間体は、すべてNO3−と反応して分解され、反応中間体のまま酸化触媒7に送られることはない。また、この温度範囲では、Ag触媒5の作用で還元されなかったNOxの一部が、反応中間体浄化触媒6の作用により還元されている。
【0058】
図7からわかるように、比較例1の排気ガス浄化装置の場合、触媒コンバータ温度が280℃を超える高温では、Ag触媒5後のNOx浄化率が酸化触媒7後のNOx浄化率よりも高く、380℃ではその差である反応中間体残存率は最大になり、約70%である。したがって、触媒コンバータ温度が280℃を超える高温では、反応中間体残存率は0%より大きく、Ag触媒5後に残存する反応中間体の一部はNO3−と反応せず、分解されることなくそのまま酸化触媒7に送られる。一方、触媒コンバータ温度が50℃から約280℃までは、酸化触媒7後のNOx浄化率の方が、Ag触媒5後のNOx浄化率よりも高い。したがって、50℃から280℃までは、反応中間体残存率は0%であり、Ag触媒5後に残存する反応中間体は、すべてNO3−と反応して分解され、反応中間体のまま酸化触媒7に送られることはない。
【0059】
表1からわかるように、実施例1の排気ガス浄化装置1と比較例1の排気ガス浄化装置の違いは、反応中間体浄化触媒6の有無である。したがって、実施例1の排気ガス浄化装置1で、比較例1の排気ガス浄化装置に比べて、反応中間体残存率が0%より大きくなる臨界温度が280℃から330℃まで上昇しているのは、反応中間体浄化触媒6の作用によるものである(図6および図7参照)。ここで、図6および図7に示す結果からわかるように、300℃前後では、Ag触媒5後のNOx浄化率が急上昇しており、この反応中間体浄化触媒6が臨界温度を上昇させる作用は、300℃前後での実施例1の排気ガス浄化装置1のNOx浄化率を上げるのに大きな効果をもたらしている。
【0060】
また、反応中間体浄化触媒6の作用により、実施例1の排気ガス浄化装置1では、臨界温度330℃以上での反応中間体残存率が、比較例1の排気ガス浄化装置に比べて低く抑えられている。そのため、330℃以上の高温域において、実施例1の排気ガス浄化装置1のNOx浄化率は、比較例1の排気ガス浄化装置に比べて高くなっている。実施例1の排気ガス浄化装置1の最大の反応中間体残存率は、380℃で約20%であるが、同じ温度での比較例1の排気ガス浄化装置の反応中間体残存率は、約70%である(図6および図7参照)。
【0061】
図8は、実施例1乃至5および比較例1乃至3の各排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が300℃のときの反応中間体残存率測定結果を比較したグラフ図である。図8からわかるように、Cuを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する実施例1、4および5の排気ガス浄化装置1では、反応中間体残存率が極めて低く、0%に近い。また、VまたはFeを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する実施例2および3の場合、反応中間体残存率は15%以下である。一方、反応中間体浄化触媒6を有さない比較例1や25wt%のFeを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する比較例2や30wt%のCuを反応中間体浄化触媒6のWC層20に有する比較例3の排気ガス浄化装置の反応中間体残存率は22%以上である。
【0062】
以上から、本実施形態の排気ガス浄化装置1を用いれば、Ag触媒5を通過した排気ガス中に残存する反応中間体を効率よく分解することができ、NOx浄化率を高めることができることがわかる。
【0063】
<Ag触媒の調製法による違い(比較試験用Ag触媒試験)>
Ag触媒5の調製法による、NOx浄化効果の違いを調べた。実施例1の排気ガス浄化装置においてAg触媒5を、前記した比較試験用のAg触媒5に置換した排気ガス浄化装置について、表2に示す組成のモデル排気ガスを25L/minの流量で流し、Ag触媒5直後のNOxおよびHCの浄化率を測定した。実施例1のAg触媒5は、Agを担持したベーマイトを焼成して製造したγ−Al2O3からなるAg触媒粉末から製造したAg触媒5(以下、「実施例1用Ag触媒」という)である。比較試験用のAg触媒5は、ベーマイトを焼成して製造したγ−Al2O3にAgを担持したAg触媒粉末から製造したAg触媒5(以下、「比較試験用Ag触媒」という)である。本試験において、実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒はともに300℃に保持された状態で測定を行った。
【0064】
図9は、本発明の排気ガス浄化装置のAg触媒後のNOxおよびHCの浄化率を実施例1用Ag触媒と比較試験用Ag触媒について比較した図である。
図9からわかるように、実施例1用Ag触媒では比較試験用Ag触媒に比べて、NOxの浄化率が高く、HCの浄化率が低い。実施例1用Ag触媒でNOxの浄化率が高いということは、このAg触媒上でNOxがHCと反応して効率よく反応中間体(図11参照)に変化していることを示している。
【0065】
一方、実施例1用Ag触媒ではNOxの浄化率が高いにもかかわらず、比較試験用Ag触媒に比べて、HCの浄化率が低い。NOxの浄化率のHCの浄化率に対する比率は、実施例1用Ag触媒が約3.4なのに対し、比較試験用Ag触媒では約1.9であり2倍近い差になっている。NOxは、HCにより選択還元されて反応中間体(図11参照)に変化して浄化される。比較試験用Ag触媒上でNOxの浄化率が低くHCの浄化率が高いのは、比較試験用Ag触媒上では、HCが燃焼する酸化反応が実施例1用Ag触媒上よりも多く起こったからである。以上の結果から、実施例1用Ag触媒を用いることにより、効率よくHCによりNOxを選択還元することができる。また、実施例1用Ag触媒を用いることにより、比較試験用Ag触媒に比べて、少ないHC添加量でNOx浄化をすることができることがわかる。
【0066】
実施例1用Ag触媒を用いることにより比較試験用Ag触媒に比べて、効率よくHCによりNOxを選択還元できるのは、Ag触媒中のAgの状態に差があるためである。
図10は実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒について、紫外光及び可視光の吸収スペクトルを分光光度計により測定した結果を示す図であり、拡散反射型紫外・可視分光光度計装置(日本分光製のJASCO/V−570)を用いて行った。光源は、190〜350nmの波長範囲の連続光源として重水素放電管を使用し、330〜2500nmの波長範囲の連続光源としてタングステン沃素ランプを使用した。吸収スペクトルは、ベースラインを硫酸バリウムで測定して補正した。有機化合物の被測定物への付着を除去するため、実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒をともに予め大気中で500℃、2時間の加熱処理をした。加熱処理を行った実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒のそれぞれを石英ガラス製のセルにセットし、前記した分光光度計装置により測定した。吸収スペクトルの測定は、200〜600nmの波長範囲を走査速度100nm/minで走査して行なった。
Al2O3に担持されたAgにおいて250nmの波長の吸収ピークは、高い触媒効果を有するAgイオンクラスタに対応する吸収ピークである(参考文献:”Rh-post-doped Ag/Al2O3 as a highly active catalyst for the selective reduction of NO with decane”, Kazuhito Sato et al., Catalysis Communications 4 (2003)315-319)。また、400〜600nmの波長の吸収は、Agメタルに対応するものである(参考文献:”Effect of hydrogen addition on SO2 tolerance of silver-alumina for SCR of NO with propane”, Ken-ichi Shimizu et al., Journal of Catalysis 239(2006)117-124)。
【0067】
図10からわかるように、実施例1用Ag触媒の吸収スペクトルの場合、波長250nmのピークが比較的高く、400〜600nmの波長の吸収は低い。一方、比較試験用Ag触媒の吸収スペクトルの場合、波長250nmのピークが比較的低く、400〜600nmの波長の吸収は比較的高い。このことから、実施例1用Ag触媒は、比較試験用Ag触媒に比べて、触媒中に含まれるAgのうちAgイオンクラスタとして存在するものの比率が高いことがわかる。実施例1用Ag触媒の場合、活性種であるAgイオンクラスタが比較的多く、そのAgイオンクラスタ上でHCによりNOxを選択還元して反応中間体を生成させる反応が促進される。比較試験用Ag触媒の場合、Agメタルが比較的多いが、このAgメタル上では、HCが燃焼し酸化される反応が促進されるため、HCによりNOxを選択還元して反応中間体を生成させる反応が効率よく進行しない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化層の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図2】実施形態の排気ガス浄化装置に用いられるプラズマ発生ユニットの構造を示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化装置の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化装置の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態の排気ガス浄化装置を表す図であり、(a)は排気ガス浄化装置の概略図、(b)は排気ガス浄化装置を構成する触媒コンバータに保持される触媒の拡大断面図である。
【図6】実施例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。
【図7】比較例1の排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が50℃から500℃に変化させたときのNOx浄化率測定結果を示したグラフ図である。
【図8】実施例1乃至5および比較例1乃至3の各排気ガス浄化装置において、触媒コンバータ温度が300℃のときの反応中間体残存率測定結果を比較したグラフ図である。
【図9】本発明の排気ガス浄化装置のAg触媒後のNOxおよびHCの浄化率を実施例1用Ag触媒と比較試験用Ag触媒について比較した図である。
【図10】実施例1用Ag触媒および比較試験用Ag触媒について、紫外光及び可視光の吸収スペクトルを分光光度計により測定した結果を示す図である。
【図11】ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOxが、Ag触媒の作用により選択還元除去される反応過程を説明する図である。
【図12】Ag触媒のAgメタル上で起きるHC酸化反応を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1a,1b,1c 排気ガス浄化装置
2,2a,2b,2c 触媒コンバータ
3 プラズマ発生ユニット
4 排気管
5 Ag触媒
6 反応中間体浄化触媒
7 酸化触媒
8a,8b,8c 複合触媒
20 WC層
21 Ag触媒WC層
22 反応中間体浄化触媒WC層
23 酸化触媒WC層
24 ハニカム
25 セル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの排出流路にAg触媒が配置され、かつ、前記排気ガスの排出流路において前記Ag触媒の下流側に酸化触媒が配置されるディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Ag触媒を構成するウォッシュコート層が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体よりなり、
前記Ag触媒と前記酸化触媒の中間に、反応中間体浄化触媒が配置され、
前記反応中間体浄化触媒を構成するウォッシュコート層が、Cu、VおよびFeから選択される少なくとも1種類以上の元素を重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持するアルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体によって構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Ag触媒を構成するウォッシュコート層が、Agを担持するアルミナからなる多孔質構造体から構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Agを担持するアルミナが、ベーマイトから製造されたγ−Al2O3であること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記γ−Al2O3がAgを担持したベーマイトを焼成して製造したものであること
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記反応中間体浄化触媒を構成するウォッシュコート層が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCuを担持するゼオライトからなる多孔質構造体から構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Cuを担持するゼオライトが、MFI型であること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記反応中間体浄化触媒を構成するウォッシュコート層が、Cu、VおよびFeから選択される少なくとも1種類以上の元素を重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持するベーマイトから製造されたγ−Al2O3からなる多孔質構造体から構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記反応中間体浄化触媒の前記Ag触媒に対する容量比率が、20%以上かつ100%以下であること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項9】
ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法であって、
前記排気ガスを、
重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体からなるウォッシュコート層により構成されるAg触媒により浄化し、
重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCu、V、Feから選択される少なくとも1種類以上の元素を担持する、アルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体からなるウォッシュコート層により構成される反応中間体浄化触媒により浄化した後、
酸化触媒により浄化すること、
を特徴するディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法。
【請求項1】
排気ガスの排出流路にAg触媒が配置され、かつ、前記排気ガスの排出流路において前記Ag触媒の下流側に酸化触媒が配置されるディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Ag触媒を構成するウォッシュコート層が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体よりなり、
前記Ag触媒と前記酸化触媒の中間に、反応中間体浄化触媒が配置され、
前記反応中間体浄化触媒を構成するウォッシュコート層が、Cu、VおよびFeから選択される少なくとも1種類以上の元素を重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持するアルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体によって構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Ag触媒を構成するウォッシュコート層が、Agを担持するアルミナからなる多孔質構造体から構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Agを担持するアルミナが、ベーマイトから製造されたγ−Al2O3であること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記γ−Al2O3がAgを担持したベーマイトを焼成して製造したものであること
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記反応中間体浄化触媒を構成するウォッシュコート層が、重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCuを担持するゼオライトからなる多孔質構造体から構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記Cuを担持するゼオライトが、MFI型であること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記反応中間体浄化触媒を構成するウォッシュコート層が、Cu、VおよびFeから選択される少なくとも1種類以上の元素を重量で0.01%以上かつ20%以下の量、担持するベーマイトから製造されたγ−Al2O3からなる多孔質構造体から構成されること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかの請求項に記載されたディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置において、
前記反応中間体浄化触媒の前記Ag触媒に対する容量比率が、20%以上かつ100%以下であること、
を特徴とするディーゼルエンジン用排気ガス浄化装置。
【請求項9】
ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法であって、
前記排気ガスを、
重量で0.01%以上かつ20%以下の量のAgを担持する多孔質構造体からなるウォッシュコート層により構成されるAg触媒により浄化し、
重量で0.01%以上かつ20%以下の量のCu、V、Feから選択される少なくとも1種類以上の元素を担持する、アルミナまたはゼオライトからなる多孔質構造体からなるウォッシュコート層により構成される反応中間体浄化触媒により浄化した後、
酸化触媒により浄化すること、
を特徴するディーゼルエンジンの排気ガスの浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−2451(P2008−2451A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228479(P2006−228479)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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