説明

ディーゼル酸化触媒と合わせてエタノール/ディーゼル燃料を使用する、ディーゼルエンジン排気からの粒子状物質の排出を減少させる方法

近年、ディーゼルエンジンからの有毒排気排出の減少において相当の進歩があった。ディーゼル酸化触媒は、例えば、このような排出物中の一酸化炭素、炭化水素、および粒子状物質の可溶性有機物フラクションの減少おいてますます増える使用を見出している。添加物を安定化させる界面活性剤における最近の革新は、現在、エタノールを透明で安定な溶液中でディーゼル燃料と混合することを可能にする。燃焼の際に、エタノール/ディーゼル燃料は、ベースのディーゼル燃料よりもより少ない有毒排気を発生するが、意外にも、ディーゼル酸化触媒と合わせて使用すると、特に粒子状物質が劇的に減少する。ディーゼルエンジン廃棄物に取り付けられるディーゼル酸化触媒の有効性は、予想外にも、ディーゼル燃料中のエタノールの存在によって増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、汚染の軽減プロセスに関し、より具体的には、ディーゼルエンジンの排気からの汚染物質のレベルを減少させるためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】

(発明の背景)
ディーゼル排気は、多くの異なる有毒化学物質の混合物からなる。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンの場合のような電気的スパークよりも、点火のために、圧縮サイクルの間に発生した熱に依存する。この必要とされる圧縮が理由で、ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりも重くかつ大きい。ディーゼルエンジンは、それほど高度に精製されてない燃料で作動し、そして時間あたり、1馬力につき、より少量の燃料を消費する。ディーゼル排気において最も関心する有毒化学物質は、窒素酸化物(NO、例えば、一酸化窒素、二酸化窒素)、一酸化炭素、二酸化硫黄、アルデヒド(主にホルモアルデヒド)、アセトアルデヒドおよびアクロレイン、および種々の炭化水素粒子、ならびに未燃焼炭化水素である。
【0003】
このことに関して、ディーゼルエンジン排気は、周囲温度にて蒸気または気体である炭化水素、およびこのような温度にて低い蒸気圧を有する炭化水素の両方を含有する。そして結果として、燃焼プロセスにおいて生成された炭素質の粒子の上に液化する(いわゆる「可溶性有機物フラクション」または「SOF」)。ディーゼル排気はまた、二酸化硫黄(SO)の形態で硫黄を高いレベルで含有する。SOが酸化すると、SOに変換され、次いでこれは、この排気中に存在する水と容易に結合して硫酸を形成する。いずれの硫酸による縮合は、排気ガスの測定される粒子状物質のロードを増加し、そしてこのような縮合は、炭化水素(特に粒子)がこの排気ガス中に存在する場合に、より容易に起こる。
【0004】
現在のところ実施された異なるいくつかの、ディーゼル排気を減少させるための方法が存在する。この方法は、エンジン設計および操作パラメーターの修正;「よりクリーンな」燃焼燃料の設計;一酸化炭素、炭化水素、NO、および粒子状物質の減少のための、触媒式コンバータおよびディーゼル酸化触媒(DOC)の使用;排気ガスリサイクリング(EGR)の使用;選択的接触還元(SCR)の使用;および粒子フィルタの使用を包含する。
【0005】
それにもかかわらず、ディーゼル排気排出を減少する試みにおいて、粒子とNO排出を同時に減少することを試みる際にジレンマが存在する。なぜなら、一方のNOの形成と他方の残存汚染物質の形成との間に相関関係が存在するからである。例えば、内部対策(例えば、EGR)によって、NO排出を減少することが可能であるが、それは、今度は、エンジンのシリンダー内の温度を低下させる。しかしながら、より低い作動温度は、粒子、未燃焼炭化水素および一酸化炭素の排出の増加を結果としてもたらす。加えて、ディーゼルエンジンの効率および有効性が損なわれ、そしてそれ故に、燃料消費および二酸化炭素排出が増加する。しかしながら、エンジン内の燃焼が効率および性能に関して最適化される場合、そのときは粒子状物質およびNOの形成が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

このように、ディーゼルエンジンの排気ガスからの有毒排出物を減少しかつ除去するための改善された方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
近年、ディーゼルエンジンからの有毒排気排出物の減少において相当の進歩があった。ディーゼル酸化触媒は、例えば、このような排出物中の一酸化炭素、炭化水素、および粒子状物質の可溶性有機物フラクションの減少おいてますます増える使用を見出している。添加物を安定化させる界面活性剤における最近の革新は、現在、エタノールを透明で安定な溶液中でディーゼル燃料と混合することを可能にする。燃焼中に、エタノール/ディーゼル燃料は、ベースのディーゼル燃料よりもより少ない有毒排気を発生するが、意外にも、ディーゼル酸化触媒と合わせて使用すると、特に粒子状物質が劇的に減少する。ディーゼルエンジン廃棄物に取り付けられるディーゼル酸化触媒の有効性は、予想外にも、ディーゼル燃料中のエタノールの存在によって増強される。
【0008】
このように、本発明の一局面において、ディーゼルエンジン排気の粒状物質含有量を減少する方法が提供される。一般に、本発明の方法は、燃料としてエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを利用してディーゼルエンジンを作動する工程;および、ディーゼル燃料のみを燃焼した結果得られるディーゼルエンジン排気の粒子状物質含有量と比べて、少なくとも25%、少なくとも30%、およびより好ましくは少なくとも40%だけ粒子状物質含有量を減少させるのに十分な時間、このエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを燃焼した結果得られる排気とディーゼル酸化触媒(DOC)とを接触させる工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(詳細な説明)
短鎖ガソリンの燃焼を改善するためのオキシジェネートとしてエタノールを加えることは、メチル第3ブチルエーテル(MTBE)が環境的配慮のために段階的に廃止されるにつれて、勢いを集めているが、ごく最近になってやっと、エタノールとディーゼル燃料とをブレンドすることが可能になった。エタノールは、極性であり、長鎖炭化水素燃料(例えば、ディーゼル)中で溶解しにくい。しかしながら、以下の更なる詳細で記載されるように、エタノールとディーゼルの透明なブレンドは、界面活性剤を用いて分子レベルにてこの2つを安定化することによって、現在、利用可能になっている。この界面活性剤は、例えば、アルコキシル化脂肪酸および/またはアルカノールアミドを含む非イオン性種のブレンドであり、これらは、国際公開第98/17745号パンフレットおよび国際公開第02/088280号パンフレットに記載され、これら両方は、その全体が本明細書中に参考として援用される。このような燃料ブレンドは、煙、粒子状物質の煤煙含有量、およびディーゼル燃焼からの他の有毒排出物(例えば、窒素酸化物および一酸化炭素)の減少におけるエタノールの貢献からの利益を享受する。
【0010】
しかしながら、燃焼産物の粒子状物質含有量へのエタノール含有ディーゼルとDOCとを合わせた効果、または、粒子状物質(PM)を減少させるDOCの能力を増強することへのエタノールの影響(すなわち、2つの別個の「初期試験状況」(a)エタノール+DOCの合わせた効果(排気管にて)および(b)DOCの性能を改善することへのエタノールの影響(エンジン排気口と比較して排気管にて)は、今までに報告されていない。
【0011】
(発明の方法)
本発明の方法に従って、ディーゼル酸化触媒(DOC)と合わせてのエタノール/ディーゼル燃料ブレンドの使用がディーゼルエンジン排気の中の粒子状物質(PM)を相乗的に減少することが、予想外に発見された。より具体的には、粒子状物質を減少させることにおけるディーゼル酸化触媒(DOC)の有効性がエタノールの存在下で予想外に増強されたことが、予想外に発見された。好ましい実施形態において、本発明の方法は、粒子状物質を減少させ、その上さらにNO排出も減少させる。
【0012】
このように、本発明の一局面において、ディーゼルエンジン排気の粒子物質含有量を減少させる方法が提供される。一般に、本発明の方法は、燃料としてエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを利用してディーゼルエンジンを作動する工程;および、ディーゼル燃料のみを燃焼した結果得られるディーゼルエンジン排気の粒子状物質含有量と比べて、少なくとも25%、少なくとも30%、およびより好ましくは少なくとも40%だけ粒子状物質含有量を減少させるのに十分な時間、このエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを燃焼した結果得られる排気とディーゼル酸化触媒(DOC)とを接触させる工程を包含する。
【0013】
より具体的には、ベースのディーゼル燃料を使用する場合、代表的なDOCは、ディーゼルエンジン排気の中のPMを25%未満だけ減少する。しかしながら、ディーゼル燃料中に7容量%のエタノールが存在する下で、DOCが、DOCのみの使用および酸素含有燃料組成物のみの使用を基に予測された程度よりもより大きな程度までPMを減少させる。このことに関して、作用の相乗効果は、DOCがエタノール/燃料ブレンドと合わせて使用される場合、PMの減少において予想外に見られ得る。その上、NOの総含有量、同様に他の汚染物質の総含有量もまたさらに減少する。
【0014】
他のオキシジェネートの評価は、本発明の方法においてエタノールを用いて観察された効果と比べてそれほどの効果でないことを示している。エタノールは、従来技術において証明されたものよりも大きな、DOC性能への影響を見かけ上は有する(SAE 1999−01−3595、Potentiality of Oxygenated Synthetic Fuel and Reformulated Fuel on Emisions from a Modern DI Diesel Engine)。参考として、燃料オキシジェネートに関するこれまでの研究、例えば、ディーゼルとダイグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル−C6H14O3)との10%ブレンドに関する研究は、ベースのディーゼルと比較して11%の煤の減少を達成した(SAE 1999−01−1137、Effects of DGM and Oxidation Catalyst on Diesel Exhaust Emissions)。ダイグライムは、エタノールの酸素含有量(34.8%)よりもわずかに高い酸素含有量(35.8%)を有する。本明細書中で使用されるように「煤」は、粒子状物質(PM)の乾燥部分をいい、そして煤レベルにおける変化は、PMにおける変化と相関する。
【0015】
(エタノール/燃料混合物)
ディーゼルとブレンドされた燃料グレードのエタノールの使用は、燃料ブレンド全体に対して望ましい燃焼特性(例えば、改善された燃料安定性、少量の煙および少量の粒子状物質、少量のCO排出物およびNO排出物、改善されたアンチノック特性、ならびに/または改善された凍結防止特性)を与える。しかし、ディーゼル燃料と合わせたエタノールの使用は、前に提示した問題を有する。ここでエタノール/ディーゼル燃料混合物は、特に水が存在する場合は、2つの別個の層に分かれる傾向があり、これは、結果として生じる混合物を燃焼性燃料としての使用に不適切なものにする。しかし、改善された燃料添加物の最近の開発は、エタノール(含水エタノールを含む)を、2層を形成することなく従来のディーゼル燃料と申し分なく混合されることを可能にした。
【0016】
従って、本発明の一局面において、ディーゼル燃料、エタノール酸素供給剤、および燃料添加物を含有する燃料ブレンドが提供される。この燃料ブレンドは、必要に応じて他の化学添加物(例えば、セタン価向上剤、有機溶媒、凍結防止剤など)を含み得る。さらに、上記燃料ブレンドは、水を含んでもまたは含まなくてもよい。好ましい燃料ブレンドは、国際公開第98/17745号パンフレットおよび国際公開第02/088280号パンフレットに記載されるものを含み、これら両方は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0017】
燃料添加物の存在は、燃料ブレンドが一貫して安定で均質な組成物を形成し、そして同時に単層を生成することを確実にする。この結果は、より良好でより完全な燃焼をもたらし、これは汚染を減少させ、ガロン当たりのマイル数を増加させる。理論によって制限されることなく、エタノール/ディーゼル燃料ブレンドは、冷却投入量(cooler charge)をより正確に燃焼することが可能であり、それにより、通常、エンジンの劣化に起因するアルデヒドと過酸および過酸化物との反応により生じるギ酸鉄を減少する。
【0018】
本発明の燃料ブレンドは、水の存在下であっても、安定、透明、そして均質な組成物を形成する。それ故、本発明のさらなる特徴に従って、必要に応じて一定量の水を含む、エタノール/ディーゼル燃料ブレンドが提供される。ここでこの燃料ブレンドは、実質的に安定であり実質的に透明でありかつ実質的に均質な組成物である。
【0019】
燃料ブレンドが、実施的に安定であり実質的に透明でありかつ実質的に均質であるかどうかを決定することは、同業者のレベル内にある。しかし、燃料ブレンドが、実質的に安定であり実質的に透明でありかつ実質的に均質である場合における測定には、燃料ブレンドが、その曇り点にあるかまたはその近くにあるかどうかの決定が関与する。このことに関して、燃料ブレンドの伝導率は、曇り点の指標として役立ち得る。例えば、水は、100mS cm−1の伝導率を有し、そしてアルコール(例えば、エタノール)は、20〜30mS cm−1の伝導率を有する。燃料(例えば、ガソリンまたはディーゼル)は、非極性であり、実質的に0の伝導率を有する。対照的に、不均質な燃料混合物(必要に応じてアルコール(例えば、エタノール)を含む燃料(例えば、ガソリンまたはディーゼルの混合物))は、比較的高い伝導率の読み(測定値)を有する。そして均一性に近づくにつれて、伝導率は、減少し、そして組成物が透明で均質な溶液である場合に、最小値に達する。
【0020】
伝導率は、種々の温度で測定され得るが、実質的に、周囲温度が好ましく、特に25.1℃が好ましい。本明細書中下記に提示される伝導率の値は、一般的に、25.1℃にて測定された場合の伝導率の値に関連する。さらに、温度とともに伝導率が変動し得ることが公知であるので、異なる温度にて測定された任意の伝導率の値は、25.1℃にて測定されたように校正されるべきである。
(1.ディーゼル燃料)
本発明のエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを形成するためにブレンドされるディーゼル燃料の量は、燃料消費量の合計に基づき、約60%v/v〜約95%v/vであり得る。本発明のエタノール/ディーゼル燃料ブレンドに有用なディーゼルは、99:1〜1:99v/vのいずれの比において、石油ディーゼル、バイオディーゼル、中間留分燃料、または任意のそれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
本発明の燃料ブレンドの石油ディーゼル燃料は、一般に、石油の蒸留により得られ得る。そしてその効率は、セタン価によって測定され得る。本発明に従う使用に適切なディーゼル燃料は、一般に、35〜60のセタン価、好ましくは40〜50のセタン価を有する。
【0022】
ディーゼル燃料は、好ましくは、約295℃〜約390℃の範囲内、および一実施形態においては約330℃〜約350℃の範囲内で、90%地点での蒸留温度を有する。これらの燃料の粘性は、代表的には、40℃にて約1センチストークスから約24センチストークスまで及ぶ。ディーゼル燃料は、ASTM D975(または、同等のカナダもしくはヨーロッパの標準;例えば、EN590−1999)において指定されるような、グレード番号1−D、2−Dまたは4−Dのうちのいずれかとして分類され得る。一実施形態において、ディーゼル燃料は、最大値50ppmの硫黄、および約345℃未満の95%蒸留温度を有する、超低硫黄ディーゼル燃料(ULSD)である。別の実施形態において、ASTM D2622−87(または、同等のカナダもしくはヨーロッパの標準;例えば、EN590−1999)において指定された試験方法によって決定された場合、ディーゼル燃料は、約0.05重量%までの硫黄含有量を有する。なお別の実施形態において、ディーゼル燃料は、わずか約10ppm以下の塩素含有量によって特徴付けられた、塩素を含まないディーゼル燃料かまたは塩素が少ないディーゼル燃料である。
【0023】
好ましくは、本発明の燃料が、バイオディーゼルと石油ディーゼルのブレンドである場合、それは、50%v/vまでのバイオディーゼル(例えば、1〜50%v/v、好ましくは、5〜30%v/v、より好ましくは、10〜20%v/vのバイオディーゼル)を含み得る。
(2.エタノール)
エタノール酸素供給剤(oxygenator)の量は、特に、燃料に性質に依存して変動し得るが、約1〜約25%v/v、好ましくは、約1〜約10%v/v、そしてより好ましくは、約7%v/vの量であり得る。
【0024】
エタノールは、化石燃料原料油から生成され得るか、または穀類もしくは他のバイオマス材料由来の糖の発酵によって生成され得る。従って、本発明の燃料ブレンドに従う使用に適切なエタノールは、デンプンベースの糖の酵母発酵または細菌発酵から得られた燃料グレードのエタノールであり得る。このようなデンプンベースの糖は、トウモロコシ、サトウキビ、タピオカ、または砂糖大根から抽出され得る。
【0025】
あるいは、燃料グレードのエタノールは、公知の希釈および/または濃縮された酸、および/または特定のバイオマス材料(例えば、都市ゴミ、紙屑、紙スラッジ、おがくずを含む、産業廃棄物供給源からの材料)の酵素加水分解を経て生成され得る。バイオマスはまた、農業的残留物(例えば、もみ殻および製紙スラッジを含む)から収集され得る。
【0026】
本発明に従う使用に適切な燃料グレードのエタノールは、水を含まないかまたは混入物レベルの水を含み得る。あるいは、本発明に従う使用に適切な燃料グレードのエタノールは、(例えば、約5%w/wまでの)大量の水を含み得る(含水エタノール)。
(3.燃料添加物)
燃料組成物における添加物の濃度は、特に燃料の性質に依存して変動し得るが、しかし、この濃度は、非常に低く(代表的には、0.5:1000〜50:1000v/v、好ましくは、1:1000〜50:1000v/v、好ましくは、1:100〜5:100v/vのオーダー)あり得る。
【0027】
本発明の燃料添加物は、実質的に安定であり実質的に透明でありかつ実質的に均質な、エタノール/ディーゼル燃料ブレンドを結果としてもたらす、任意の燃料添加物であり得る。本発明の好ましい燃料添加物は、非イオン性界面活性剤であり、そして好ましくは界面活性剤のブレンドである。界面活性剤がそれらの性質および使用時に添加物が(任意の水または存在する他の非燃料液体も同様)燃料内に可溶化される濃度によって選択されることが、本発明の好ましい特徴である。この目的のために、界面活性剤の親水性−親油性平衡(HLB)を考慮することは、好都合である。この値は、以下の式に基づいて算出される。
【0028】
【数1】

この値は、親水性鎖の長さ(代表的には、エトキレート鎖)に依存する。鎖の長さは、可溶化するより大きな能力のおかげで可溶化の程度を増加する。本発明は、任意の液体燃料のHLB必要条件を統一する能力を有する。これは次には、C5以上の炭素鎖からのいずれかの燃料において使用される1用量を許容する。
【0029】
従って、本発明の好ましい局面に従って、オレイン酸アルカノールアミドおよびアルコキシル化オレイン酸を含有する燃料添加物が、提供される。オレイン酸アルコキシレート対オレイン酸アルカノールアミドの比は、変動し得るが、好ましくは、約99:1〜約1:99v/v、より好ましくは、約3:1〜約1:1v/v、そしてなおより好ましくは、約1:1v/vであり得る。
【0030】
燃料添加物のオレイン酸アルカノールアミドは、好ましくは、エタノールアミド、およびより好ましくは、ジエタノールアミドであり得る。特に好ましいのは、ジエタノールアミドであり、そして特に超ジエタノールアミドである。
【0031】
オレイン酸エトキシレートは、種々の原料油から生じ得、世界的に容易に利用可能である。しかし、本発明の好ましい実施形態において、オレイン酸エトキシレートは、動物脂肪(例えば、牛脂)または植物油(例えば、大豆)から誘導される酸のエトキシル化またはエステル化によって生成され得る。従って、オレイン酸前駆体は、主として(例えば、約65〜75%v/v)オレイン酸であり得るが、例えば、約10〜12%v/vのリノール酸も含み得、そして、少量のステアリン酸、パルミチン酸、および/またはミリスチン酸もまた含み得る。
【0032】
燃料添加物のアルコキシレートは、好ましくは、エトキシレート、プロピルオキシレート、またはそれらの混合物であり得る。エトキシル化の程度は、オレイン酸ジエタノールアミドとのブレンドにおける性能を最適化するように選択される。そして、この程度は、約0.5〜20、より好ましくは、約0.5〜約10、そしてなおより好ましくは、約1〜約3であり得る。この範囲内の適切な生成物は、例えば、1分子のオレイン酸に対して1分子のエチレンオキシドを加えることにより生じさせる。
【0033】
特定の好ましい実施形態において、本発明の燃料添加物は、アルコール(および特にエトキシル化アルコール)が実質的に燃料添加物に含まれないという点で、特徴付けられる。
【0034】
別の実施形態において、本発明の燃料添加物は、必要に応じて、窒素化合物を含み得る。この窒素化合物は、好ましくは、アンモニア、ヒドラジン、アルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、尿素、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、およびジアルキルエタノールアミンからなる群より選択され得る。ここでアルキルは、メチル、エチル、n−プロピルまたイソプロピルから独立に選択される。尿素は、特に好ましい。窒素化合物は、無水化合物または含水化合物(例えば、水溶液)であり得、そして約5%w/wまでの水溶液であり得る。
【0035】
(4.任意の燃料ブレンド成分)
一実施形態において、燃料ブレンドは、微量の水の混入を除いて、実質的に無水な化合物として調製され得る。微量の水の混入という用語によって、本発明者らは、燃料ブレンド量の全容量に基づいて、一般に0.1%w/w以下の水を意味する。しかし、本発明の燃料ブレンドは、必要に応じて、燃料ブレンド量の全容量に基づいて、約5%v/vまでの水を含み得る。
【0036】
本発明の燃料ブレンドはまた、必要に応じて、約0.1%v/v〜約10%v/vの量のセタンブースターを含み得る。セタンブースターが本発明の燃料ブレンド中に含まれる場合、それは、本発明の燃料添加物の一部分として加えられ得るか、または別個に加えられ得る。
【0037】
適切なセタンブースターは、硝酸2−エチルヘキシル、第3ブチルペルオキシド、ジエチレングリコールメチルエーテル、シクロヘキサノール、およびそれらの混合物から選択され得る。混合物中に存在するセタンブースターの量は、一般に、特定のディーゼル燃料のセタン価、および特定の燃料ブレンド中に存在するエタノール量の関数であり得る。一般に、ディーゼル燃料のセタン価が低いほど、セタンブースターの量が多い。エタノールが代表的にはセタン抑制剤として作用するので、溶液中のエタノールの濃度が高いほど、より多くのセタンブースターがブレンド中で必要であり得る。
【0038】
さらに、本発明の燃料添加物または燃料組成物はまた、必要に応じて、約5%v/vより少ない量の乳化破壊剤、そしてより好ましくは、約1%v/vより少ない量の乳化破壊剤を含み得る。
【0039】
(ディーゼル酸化触媒)
本発明の方法において有用なディーゼル酸化触媒(DOC)は、当該分野において公知の任意のDOCであり得る。一般に、DOCは、対火金属酸化物上に分散した、白金族の金属を含む。一例として、本発明のDOCは、セラミックまたは金属の通気路を有し、追加の触媒活性成分の担体としての微粒子金属酸化物(例えば、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、シリコン酸化物、ゼオライトまたはそれらの混合物)の活性を促進する撒布コーティングで、コーディングされたモノリシックな触媒エレメントを備え得る。触媒活性成分は、バナジウムがドープされたかまたは酸化バナジウム化合物と接触させた、白金、パラジウム、ロジウム、および/またはイリジウムの形態で存在し得る。
【0040】
あるいは、DOCは、高表面積のセリア、ゼオライト、および必要に応じて、高表面積のアルミナの混合物を備える、触媒材料を備え得る。触媒材料は、必要に応じて、少量だけその上に撒布され装填された白金触媒金属か、少量だけその上に撒布され装填されたパラジウム触媒金属を保有する。あるいは、または加えて、ゼオライトは、触媒性部分がドープされ得、例えば、イオンまたは以下の1つ以上からなる群より選択される中性金属含有(化学)種とイオン交換されるか、またはそれらで含浸され得る:水素、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、銅、鉄、ニッケル、クロムおよびバナジウム。好ましくは、白金および鉄の片方または両方である。
【0041】
本発明のDOCにおける使用に好ましいゼオライト材料としては、例えば、βゼオライト、または以下(Yゼオライト、ペンタシル(例えば、ZSM−5)、モルデン沸石、およびそれらの混合物)から選択されるゼオライトが挙げられる。
(ディーゼルエンジン)
本発明に従って作動され得るディーゼルエンジンとしては、車(船舶を含む)および定置動力装置の両方ための全ての圧縮点火エンジンが挙げられる。これらとしては、2サイクル型ディーゼルエンジン、および4サイクル型のディーゼルエンジンが挙げられる。ディーゼルエンジンは、高馬力ディーゼルエンジンを含む。含まれるエンジンは、オンハイウェイエンジンおよびオフハイウェイエンジン(on and off−highway engine)(新規エンジンおよび現在使用中のエンジンを含む)である。使用され得るディーゼルエンジンは、自動車、トラック、バス、機関車などにおいて使用されるディーゼルエンジンを含む。これらとしては、市内バスおよびすべてのクラスのトラックが挙げられる。
【実施例】
【0042】
本発明はこれから、付随する実施例を参照して説明されるが、決して限定はされない。
(実施例1:エタノール/ディーゼルブレンドの調製)
本発明の例示のエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを、燃料添加物とエタノール/ディーゼル混合物とを混合することによって作製する。より具体的には、燃料添加物の組成物は、構成物(1:1の比のオレイン酸のジエタノールアミドとエトキシル化オレイン酸)をブレンドすることによって調合される。次いで、この燃料添加物の、1%の組成物を、7.7%エタノール/92.3%ディーゼルブレンドに加え(これは、例えば、認可ディーゼル、米国基準1(US No.1)のディーゼル、0.1%のセタン価向上剤を含有する10%の芳香族ディーゼルを含む)、安定で光学的に透明かつ安定なマイクロエマルジョン燃料ブレンドを結果として生じる。
【0043】
(実施例2:DOCとエタノール/ディーゼル燃料ブレンドとの組合せ)
本発明の方法に従ってディーゼル排気からのPMの減少における予想外の改善が、以下に示される。米国連邦規則法典(CFR)Title 40 part 86,Appendix Iに記載される、高馬力ディーゼルエンジンについての米国EPAエンジン動力計スケジュール(The US EPA Engine Dynamometer Schedule for Heavy−Duty Diesel Engines)は、基本試験規格として使用され得る。制御された排出物は、4つの高温スタート過渡試験サイクル後の冷却サイクルにわたって決定され、各サイクルは、必須の20分間の浸漬期間によって分けられる。試験における3つの高温スタート段階の間、13様式の試験からの排出物特性測定値が得られる。
【0044】
例示のエタノール/ディーゼル燃料ブレンドは、カナダ基準1(canadian No.1)および同基準2のディーゼルベースの燃料、およびそれぞれ7.0%エタノールと1%安定化添加物のブレンドから構成される。ディーゼル酸化触媒は、AZ29モデルの触媒から構成され、そして米国環境保護庁自発的ディーゼル改良プログラム(US EPA Voluntary Diesel Retrofit program)の下で検証される。この触媒は、薄め塗膜を備えるモレキュラーシーブに装填された白金金属を有する。
【0045】
排出物収集装置は、定容量サンプリングシステムを利用する。これは、作動中にエンジンからのガス状排出物および粒子状物質排出物の正確な質量を測定することを可能にする。CO、CO、NO、およびTHCに対するこのサンプリングおよび分析システムの設計は、連邦規制基準第40題第86部1310−90のプロトコルに従う。連続的なサンプリングおよび分析システムは、米国連邦規則法典(CFR)Title 40 Part 86 1310−90、および同part 86 1339−90(3)の規格に一致する。
粒状物質排出速度は、連邦記載基準第40題第86部1390−90に記載される方法を使用して得られる。
エンジンは、2000年モデルのNivistarDT466S/Nであり得る。以下に詳細を示す。
【0046】
【表1】

以下の表に見られ得るように、ベースのディーゼル#1および#2を使用する場合、DOCは、PMをそれぞれ8.5%および24.3%だけ減少させる。しかし、2つのディーゼルにおいて7容量%のエタノールが存在する場合、DOCは、PMをそれぞれ39.4%および46.0%まで減少させる。このことに関して、相乗作用が、PMの減少において見られ得る。例えば、標準的なディーゼル#1とDOCとの使用から結果として生じるPMにおける減少は、約0.006g/hp−hrであり、そしてDOCを使用しないエタノール/ディーゼル#1の使用から結果として乗じるPMにおける現用は、約0.002g/hp−hrである。このような結果を基づき、さらに付加的に考慮すると、約0.008g/hp−hrのPMにおける全体の減少、すなわちPMにおける11.27%の減少が、予測される。しかし、DOCとエタノール/ディーゼル#1混合物とを合わせた使用により、約0.028g/hp−hrだけPMを相乗的に減少させ、すなわちPMにおける39.43%の減少が見られる。さらに、NOの総含有量および他の汚染物質の総含有量も、さらに減少される。
【0047】
【表2】

本明細書中で引用された全ての標準、刊行物、および特許出願は、個々の基準、刊行物、または特許文献のそれぞれが、具体的にかつ単独で参考として援用されるために示されたものと同じ程度まで、参考として援用される。
【0048】
特定の実施形態が、上で詳細に記載されてきたが、当業者は、多くの改変が、それらの教示から逸脱することなく、実施形態において可能であることを明確に理解する。このような全ての改変は、本発明の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン排気の粒子状物質含有量を減少させる方法であって、該方法は:
燃料としてエタノール/ディーゼル燃料ブレンドを利用してディーゼルエンジンを作動する工程;および
ディーゼル燃料のみを燃焼した結果得られるディーゼルエンジン排気の粒子状物質含有量と比べて少なくとも25%だけ該粒子状物質含有量を減少させるのに十分な時間、該エタノール/ディーゼル燃料ブレンドを燃焼した結果得られる排気とディーゼル酸化触媒(DOC)とを接触させる工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記エタノール/ディーゼル燃料ブレンドのベースのディーゼル燃料が、燃料添加物、エタノール、およびディーゼル燃料を含有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記燃料添加物が、オレイン酸アルカノールアミドおよびアルコキシル化オレイン酸を含有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記エタノール/ディーゼル燃料ブレンドのベースのディーゼル燃料が、約80容量%と約98容量%との間の濃度で存在する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記エタノール/ディーゼル燃料ブレンドのエタノールが、約2容量%と約20容量%との間の濃度で存在する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記エタノール/ディーゼル燃料ブレンドのエタノールが、必要に応じて、石油化学的供給源または農業的供給源に由来する燃料グレードのエタノールである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記エタノール/ディーゼル燃料ブレンドが、透明で均質的な溶液またはマイクロエマルジョンであり、非イオン界面活性剤ブレンドによって安定化されている、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記界面活性剤安定剤が、前記燃料ブレンドの約0.1容量%〜約3%容量%の濃度で該燃料ブレンド中に存在する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記DOCが、モレキュラーシーブに装填された白金金属を含有する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記排気が、ディーゼル燃料のみを燃焼した結果得られるディーゼルエンジン排気の粒子状物質含有量と比べて少なくとも40%だけ該粒子状物質含有量を減少させるのに十分な時間、前記ディーゼル酸化触媒(DOC)と接触させられる、方法。


【公表番号】特表2007−526363(P2007−526363A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552288(P2006−552288)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/003665
【国際公開番号】WO2005/077495
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506266012)オー2ディーゼル コーポレーション (1)
【出願人】(506266034)
【出願人】(506266160)
【Fターム(参考)】