説明

デジタルデータ記録波面補正方法および装置

【課題】デジタルデータをホログラム記録媒体に記録する際に、光学素子の歪や空気の擾乱等により生じた光波面の歪を補正して、高精度かつ高密度のデジタル記録を可能とする。
【解決手段】反射型液晶素子9からの物体光(縦)と補正用反射型液晶素子11からの補正用プローブ光(横)は、同一光路を進み、ホログラム記録媒体6上に照射される。記録媒体6上において、参照光(縦)と物体光(縦)により記録用干渉縞が形成される。2次元光センサ14上には、補正用参照光(横)と補正用プローブ光(横)により補正用干渉縞が形成される。この干渉縞情報はFFT演算部20でフーリエ変換が施され、干渉縞の位相変動が計算され、その結果に基づき、ミラー駆動部21がピエゾミラー4を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルデータ記録波面補正方法およびその装置に関し、特に、離散的なデジタルデータ(例えば大容量の保存用アーカイブデータ)をホログラフィックメモリに記録する際に、記録光の干渉波面の歪を総合的に補正するデジタルデータ記録波面補正方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムでは、一般に、画像情報を有する物体光を参照光とともに光記録媒体に同時に照射し、光記録媒体中に形成される該2つの光による干渉縞を光記録媒体に書き込むことによって、該画像情報を記録する。一方、このようにして画像情報が記録された光記録媒体に参照光を照射すると、光記録媒体中の干渉縞情報によって、光の回折が生じて、上記物体光が担持していた画像情報を再生することができる。
【0003】
ところで、デジタルホログラムでは、2次元データを液晶等の空間光変調素子で駆動して変調データとし、この変調データによってレーザ光を変調して物体光を生成する。次に、この物体光を参照光と干渉せしめて干渉光を生成し、集光レンズで集光することによりフーリエ変換を施してホログラム記録媒体上にデジタルデータ情報を担持した干渉縞を記録する。再生時には再生用参照光を、該干渉縞が記録されているホログラム記録媒体上に照射し、干渉縞からの回折光をレンズで平行光に戻し、2次元受光素子(CCDやCMOSセンサ)で受光して、該デジタルデータ情報を読み取ることとなる。
【0004】
ここで、現在用いられているホログラム記録用の光学装置について説明する。
すなわち、図5に示すように、レーザ光源101から出力され、シャッタ102を通過したレーザ光(ここでは縦偏光)は、ハーフミラー103によって2系に分割され、一方は参照光とされ、ミラー104および集光レンズ105を介してホログラム記録媒体106上に照射される。他方、ハーフミラー103によって2系に分割されたうちの他方のレーザ光は、1/2波長板107によって横偏光に変換され物体光とされて、PBS(偏光ビームスプリッタ)108を透過し、反射型液晶素子109上に照射される。物体光は、反射型液晶素子109の素子面に映出された白と黒のビットパターンによる2次元画像のデジタルデータ情報を担持され、その反射光は縦偏光に変換されたものとされ(実際には、白表示とされた素子からの光が縦偏光に変換されたものとされる)、PBS108に戻る。このPBS108においては、横偏光を透過し縦偏光を反射するように構成されているので、反射型液晶素子109から戻った物体光は、このPBS108により反射され、集光レンズ110を介してホログラム記録媒体106上に照射される。このようにしてホログラム記録媒体106上に照射された参照光と物体光はいずれも縦偏光とされているので、このホログラム記録媒体106上で干渉し、デジタルデータ情報を担持した干渉縞が記録されることになる。
【0005】
しかし、デジタルデータ情報を記録する際において、光源からの光波面は、光学系を構成する各光学素子の歪によって乱れた状態となっている。また、光路中には、上述した反射型液晶素子109や各種の光学素子を挿入配置する必要上、特に物体光においては比較的長い光路長を有するものとなり、使用光の可干渉距離(コヒーレンス長)は、この物体光と参照光の光路長差よりもさらに大きくする必要があるため、干渉情報には、ノイズ光に伴う干渉ノイズも多く含まれることになる。さらに、特に物体光においては、このように比較的長い光路長を有するものとされているため、空気の擾乱の影響を受ける虞はより強いものとなっている。
【0006】
すなわち、ホログラム記録媒体上に照射される記録光を構成する干渉光波面が乱れた状態となっているため、高精度の信号情報記録を行うことが難しいという問題があった。
【0007】
従来、上述したようなホログラムの記録光学装置において、その光学系の収差により発生する光干渉波面の乱れを補正する手法として、補償光学という技術を用いた下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特開平5−173468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された手法は、記録データが連続とされている場合に限って用いることができるものであり、さらにその補正操作はホログラムの像再生段階において行われるものである。
【0009】
したがって、データの記録段階においてデータが離散値(デジタルデータ)となっている場合には光波面の歪を測定することが困難であり、そのため光波面の歪を補正することができない。
【0010】
本発明は、デジタル記録データをホログラム記録媒体に記録する段階において、光学素子の歪や空気の擾乱等により生じた光波面の歪を補正して、高精度のデジタル記録を行うことを可能とし、記録信号のSN比の向上、ひいては高密度記録を可能とし得るデータ記録波面補正方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上に説明したように、本発明のデジタルデータ記録波面補正方法および装置は、物体光から分離、生成された補正用プローブ光が、該物体光と合成され、同一光路を進行した後、参照光から分離された補正用参照光と干渉して生成された干渉縞を測定し、該測定の結果に基づき、光路中に配設した光位相可変素子を駆動して、該干渉光の波面に生じた歪により発生した位相変動を補正するように構成されている。
【0012】
すなわち、本発明のデジタルデータ記録波面補正方法は、
デジタルデータ情報を担持した物体光と、参照光とを干渉させてホログラム記録媒体に干渉光による干渉縞をホログラフィック記録する際に、該干渉光の波面に生じた歪を補正するデジタルデータ記録波面補正方法であって、
前記物体光から分離され、生成された補正用プローブ光が、該物体光と合成され、同一光路を進行した後、前記参照光から分離された補正用参照光と干渉して生成された干渉縞を測定し、該測定の結果に基づき、前記物体光または前記参照光の光路中に配設した、光位相可変素子を駆動して、該干渉光の波面に生じた歪により発生した位相変動を補正することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のデジタルデータ記録波面補正装置は、
デジタルデータ情報を担持した物体光と、参照光とを干渉させてホログラム記録媒体に干渉光による干渉縞をホログラフィック記録する際に、該干渉光の波面に生じた歪を補正するデジタルデータ記録波面補正装置であって、
前記物体光から分離され、生成された補正用プローブ光が、該物体光と合成され、同一光路を進行した後、前記参照光から分離された補正用参照光と干渉して生成された干渉縞を測定する補正用光検出手段と、
該補正用光検出手段により得られた測定値に基づき、該干渉光の波面に生じた歪により発生した位相変動を演算する演算手段と、
該演算手段による演算結果に基づき、該物体光または該参照光の光路長を変化させて前記位相変動を抑制するように駆動される、該物体光または該参照光の光路内に配された光位相可変素子と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
このデジタルデータ記録波面補正装置において、
前記デジタルデータ情報を担持した物体光と前記補正用プローブ光の両者を、振動面の方向が互いに90度回転した直線偏光の状態において合成する偏光ビームスプリッタを備えていることが好ましい。
【0015】
また、前記補正用光検出手段は、前記補正用プローブ光と前記補正用参照光とが、振動面の方向が互いに一致した状態において合波される位置に配設され、前記補正用プローブ光と前記補正用参照光との干渉により形成された干渉縞を撮像することが好ましい。
【0016】
さらに、前記物体光に前記デジタルデータ情報を担持せしめる空間光変調素子として液晶表示素子が用いられるとともに、前記光位相可変素子としてピエゾ素子が用いられることが好ましい。
【0017】
なお、上述した「参照光から分離された補正用参照光」には、参照光をそのまま補正用参照光として用いるものを含むものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のデジタルデータ記録波面補正方法および装置によれば、デジタルデータ情報を担持した物体光と、補正用プローブ光とが同一光路を進行するように構成して、補正用プローブ光にも物体光と略一致した波面歪が生じるようにしておき、この補正用プローブ光を、参照光に基づく補正用参照光と干渉させて、波面の歪情報を得ているので、光学素子の歪や空気の擾乱等により、実際に物体光に生じている光波面の歪を良好に測定することができ、この測定結果を用いることによって高精度な位相変動補正を行うことができる。
【0019】
これにより、波面の歪が抑制された干渉光によりホログラム記録媒体にデジタルデータ記録を行うことが可能となるので、データ記録の多重度を上げることができるとともにSN比を向上させることができ、高密度記録を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るデジタルデータ記録波面補正装置を示す概略図である。
【0021】
この記録波面補正装置は、記録時においてリアルタイムでデジタルデータの記録波面を補正するものであり、物体光から分離され、生成された補正用プローブ光が、該物体光と合成され、同一光路を進行した後、参照光に基づく補正用参照光と干渉して生成された干渉縞を、データ読取用測定部とは異なる補正用光検出手段により測定し、その測定結果に基づき、該干渉光の波面に生じた歪により発生した位相変動を補正するように構成されたものである。
【0022】
すなわち、図1に示すように、レーザ光源1から出力され、シャッタ2を通過したレーザ光(ここでは縦偏光:該縦偏光と後述する横偏光は、振動面の方向が互いに90度回転した2つの偏光を指称する際に用いられるものであり、一般には、P偏光とS偏光の用語が用いられる)は、ハーフミラー3によって2系に分割され、一方は参照光とされ、ピエゾミラー4および集光レンズ5を介してホログラム記録媒体6上に照射される。
【0023】
他方、ハーフミラー3によって2系に分割されたうちの他方のレーザ光は、1/2波長板7によって斜め45度偏光に変換され物体光とされて、PBS(偏光ビームスプリッタ)8に照射される。PBS8に照射された斜め45度偏光のうち、横偏光成分はPBS8を透過し、反射型液晶素子9上に照射される。この物体光は、反射型液晶素子9の素子面に映出された白と黒のビットパターンによる2次元画像のデジタルデータ情報を担持されるとともに、素子内における振動面の回転により、その反射光は縦偏光に変換され(実際には、白表示とされた素子からの光が縦偏光に変換されたものとされる)、PBS8に戻り、このPBS8により図中左方に反射される(白表示とされた素子からの光のみが反射されるが、それ以外の部分は黒として補間されるので、最終的には白と黒のビットパターン情報とされる)。上記PBS8に照射された斜め45度偏光のうち、縦偏光成分はPBS8により反射されて補正用プローブ光とされ、補正用反射型液晶素子11上に照射される。補正用反射型液晶素子11から反射された補正用プローブ光は素子内における振動面の回転により横偏光に変換されて(白表示とされた補正用反射型液晶素子11から反射された光は横偏光に変換される)PBS8に戻り、このPBS8を透過する。
【0024】
PBS8により反射された反射型液晶素子9からの物体光(縦偏光)と、PBS8を透過した補正用反射型液晶素子11からの補正用プローブ光(横偏光)は、同一光路を進み、集光レンズ10を介してホログラム記録媒体6上に照射されることになる。
【0025】
この結果、ホログラム記録媒体6上において、参照光(縦偏光)と物体光(縦偏光)とは、互いに同一方向の振動面を有する直線偏光とされているので、互いに干渉を生じ、このホログラム記録媒体6上に、反射型液晶素子9上に表示されたデジタルデータ情報に基づく干渉縞が形成される。すなわち、デジタルデータは、干渉縞の形態でホログラム記録媒体6に保存されることになる。
【0026】
その一方で、物体光(縦偏光)と同一の光路を進行してホログラム記録媒体6上に照射された補正用プローブ光は横偏光とされているので、上記参照光とは干渉を生ぜず、このホログラム記録媒体6上には、補正用反射型液晶素子11に表示されたデジタルデータ(全画面白)情報に基づく干渉縞は形成されない。
【0027】
また、ホログラム記録媒体6は、レーザ光源1からのレーザ光を透過し得る材料で構成されているので、上記参照光、上記物体光および上記補正用プローブ光の各一部は、ホログラム記録媒体6を透過する。ホログラム記録媒体6を透過した上記参照光(補正用参照光)は、集光レンズ12および1/2波長板13(縦偏光を横偏光に変換する)を介してCCD等の2次元光センサ14上に照射される。一方、ホログラム記録媒体6を透過した上記物体光および上記補正用プローブ光は、集光レンズ15、ミラー16を介して偏光板17に到達する。この偏光板17は、横偏光を透過させ、縦偏光を遮断する検光子として機能するものであるから、この偏光板17に到達したレーザ光のうち、横偏光である上記補正用プローブ光は透過するが、縦偏光である上記物体光は透過することができずにターミネートされることになる。この偏光板17を透過した上記補正用プローブ光は、この後、上記2次元光センサ14上に照射される。
【0028】
この2次元光センサ14上に照射された、補正用参照光(1/2波長板13により横偏光に変換されている)と補正用プローブ光(横偏光)とは、互いに同一方向の振動面を有する直線偏光とされているので、互いに干渉して干渉縞が形成される。2次元光センサ14は、形成された干渉縞を撮像し、その画像情報を光電変換し、変換された電気信号をFFT演算部20に送出する。
【0029】
FFT演算部20は、通常、コンピュータ内にソフトウェアをもって構築されており、入力された干渉縞情報についてのFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)演算処理を行い、該干渉縞の位相変動を計算する。この計算結果に基づき、ピエゾミラー駆動部21は、その位相変動が抑制されるように、参照光の光路中に挿入されたピエゾミラー4を駆動する。
【0030】
すなわち、上記補正用プローブ光は、上記物体光と略同様の光路を進むため、その波面には、物体光の波面に加わった乱れと同様の乱れが付与されているものと考えてよい。したがって補正用プローブ光の波面を検証すれば、上記物体光の波面も調べることができることになり、さらに、この補正用プローブ光は全画面が白のレベルとされているので、データの変化に伴うレベルの変動がなく、純粋な波面の乱れのみを検証することができる。
【0031】
なお、補正用反射型液晶素子11に替えて、反射ミラーと1/2波長板(往復通過により1/2波長の位相ずれを生じる)とを組合せたものを用いることも可能であるが、本実施形態のように、物体光にデジタルデータ情報を付与する反射型液晶素子9と同種の光学素子(補正用反射型液晶素子11)を用いることにより、補正用プローブ光を用いた制御をより高精度なものとすることができる。
【0032】
次に、本発明に係るデジタルデータ記録波面補正方法について説明する。
一般に、ホログラム記録においては、ホログラム記録媒体6上に照射される記録光の干渉光波面が乱れた状態となっているため、高精度の信号情報記録を行うことが難しい。物体光と参照光を検査用撮像素子上で干渉させ、得られた干渉縞の位相に基づき、例えば参照光の光路長を調整するように制御する手法が考え得るが、物体光はデータ情報を担持しているので、干渉光波面の乱れによる位相変動をデータ記録時にリアルタイムで検出することは難しい。
【0033】
図2は、物体光を全て白レベルのデジタルデータとした場合の干渉縞を2次元撮像素子で撮像し、そのうちの1ライン(すなわち、1次元データ)を対象として測定した場合における、測定された位相の時間変化を示すものであり、ホログラム記録時における干渉光の波面の揺らぎを示すものである。ここで、横軸は位相測定の経過時間((回数)単位:秒)であり、縦軸は測定した位相値(単位:πラジアン)である。なお、図2に示す各曲線は、5回行った各測定毎の結果を表したものである。図2から、空気の擾乱を始めとする種々の要因により干渉縞の位相が大きく変動していることが理解できる。
【0034】
そこで、本実施形態のデジタルデータ記録波面補正方法においては、データ重畳させる前の物体光を分離して補正用プローブ光を生成し、この補正用プローブ光には通常のデジタル情報は重畳させず、再び物体光と合成してホログラム記録媒体6付近まで進行させる。この後この補正用プローブ光と上記補正用参照光を補正用撮像素子である2次元センサ14上で干渉させ、得られた干渉縞の位相に基づき参照光の光路長を調整するように制御することで、干渉光波面の乱れによる位相変動をデータ記録時にリアルタイムで調整可能となるようにしている。
【0035】
図3は、上記参照光の光路長を調整するように制御する際のフローチャートを示すものである。
【0036】
すなわち、上記補正用プローブ光と上記補正用参照光とを2次元センサ14上で干渉させ、補正用干渉縞を撮像する(S1)。次に、FFT演算部20において、補正用干渉縞のグレイスケールについてFFT演算を施す(S2)。なお、このFFT演算処理については、従来より周知の手法を用いる。続いて、得られた演算値から位相成分φを抽出し、位相変動を算出する(S3)。この位相成分φの抽出処理についても、従来より周知の手法を用いることができる。次に、算出された位相変動が抑制されるように、ピエゾミラー駆動部21に指示信号を送出する(S4)。ピエゾミラー駆動部21は入力された指示信号に応じてピエゾミラー4を動作させる。これにより、上記参照光の光路長が調整されて、上記位相変動が抑制される(S5)。
【0037】
なお、本発明のデータ記録波面補正方法およびその装置としては、上述した実施形態のものに限られるものではなく、種々の態様の変更が可能である。
【0038】
例えば、図1に示す装置に替えて、図4に示すようなデータ記録波面補正装置を用いることができる。
【0039】
ここで図4に示す装置について説明する。なお、図1において説明した各要素と同様の機能を有する要素については、図1において各要素に付した符号と同一符号を付すこととし、その説明は省略する。
【0040】
図4に示す装置は基本的には図1に示す装置と同様の構成とされているが、図1に示す装置においては、補正用撮像素子として用いる2次元光センサ14がホログラム記録媒体6の後段に配されているのに対し、図4に示す装置では、この2次元光センサ14がホログラム記録媒体6の前段に配されている点で相違している。
【0041】
すなわち、ホログラム記録媒体6は、記録材料として、例えば、フォトポリマやリチウムナイオベイト(LiNbO3)等の強誘電体単結晶を使用するが、このような記録材料は、記録に不要な光(例えば上記補正用プローブ光)を記録媒体に照射することを回避することが望ましい。そこで、図4に示す装置では、上記補正用プローブ光をホログラム記録媒体6に照射される前に物体光の光路から分離し、ホログラム記録媒体6の前段に配置した2次元光センサ14上で、補正用参照光と干渉させるようにしている。
【0042】
ここで、物体光の光路上におけるホログラム記録媒体6の位置の直前にはPBS19Aが配設されており、縦偏光の物体光は透過させる一方、横偏光の補正用プローブ光は反射させて2次元光センサ14上に照射させるようにしている。他方、参照光の光路上におけるホログラム記録媒体6の位置の直前にはPBS19Bが配設されている。参照光はピエゾミラー4の直前に配置された1/2波長板18により斜め45度偏光に変換されており、PBS19Bにより、縦偏光の参照光は透過させる一方、横偏光の参照光は反射して、補正用参照光とし2次元光センサ14上に照射させるようにしている。
【0043】
ここで、図4に示す装置では、PBS19A、Bによる反射光は、便宜上同一平面内で反射されように表されているが、実際には同一平面内ではなく、上方や下方に反射するように設置することが望ましい。これにより、PBS19Aを、物体光(縦)は透過し補正用プローブ光(横)は反射するように、また、PBS19Bを、参照光(縦)は透過し補正用参照光(横)は反射するように、容易に構成することができる。
【0044】
また、本発明に係るデータ記録波面補正方法およびその装置における他の変更態様としては、前述した装置において説明した偏光について、全て縦偏光を横偏光とするとともに、全ての横偏光を縦偏光とすることが可能である。
【0045】
さらに、上述した実施形態で説明したピエゾミラー4はセクタライズされたものを使用することを前提としているが、部分的に位相を変化させることが可能な、デフォーマブルミラーや液晶素子を使用することも勿論可能である。
【0046】
また、反射型の液晶素子9、11に替えて、透過型の液晶素子等の他のSLM(空間変調素子)を用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るデータ記録波面補正装置を示す光学配置図
【図2】ホログラム記録時における波面の揺らぎの測定結果を示すグラフ
【図3】本発明の実施形態に係るデータ記録波面補正方法の一部を示すフローチャート
【図4】図1に示すデータ記録波面補正装置とは異なる態様のデータ記録波面補正装置を示す光学配置図
【図5】従来の通常のデータ記録波面補正装置を示す光学配置図
【符号の説明】
【0048】
1、101 レーザ光源
2、102 シャッタ
3、103 ハーフミラー
4 ピエゾミラー
5、10、12、15、105、110 集光レンズ
6、106 ホログラム記録媒体
7、13、18、107 1/2波長板
8、19A、19B、108 PBS
9、109 反射型液晶素子
11 補正用反射型液晶素子
14 2次元光センサ
16、104 ミラー
17 偏光板
20 FFT演算部
21 ピエゾミラー駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータ情報を担持した物体光と、参照光とを干渉させてホログラム記録媒体に干渉光による干渉縞をホログラフィック記録する際に、該干渉光の波面に生じた歪を補正するデジタルデータ記録波面補正方法であって、
前記物体光から分離され、生成された補正用プローブ光が、該物体光と合成され、同一光路を進行した後、前記参照光から分離された補正用参照光と干渉して生成された干渉縞を測定し、該測定の結果に基づき、前記物体光または前記参照光の光路中に配設した、光位相可変素子を駆動して、該干渉光の波面に生じた歪により発生した位相変動を補正することを特徴とするデジタルデータ記録波面補正方法。
【請求項2】
デジタルデータ情報を担持した物体光と、参照光とを干渉させてホログラム記録媒体に干渉光による干渉縞をホログラフィック記録する際に、該干渉光の波面に生じた歪を補正するデジタルデータ記録波面補正装置であって、
前記物体光から分離され、生成された補正用プローブ光が、該物体光と合成され、同一光路を進行した後、前記参照光から分離された補正用参照光と干渉して生成された干渉縞を測定する補正用光検出手段と、
該補正用光検出手段により得られた測定値に基づき、該干渉光の波面に生じた歪により発生した位相変動を演算する演算手段と、
該演算手段による演算結果に基づき、該物体光または該参照光の光路長を変化させて前記位相変動を抑制するように駆動される、該物体光または該参照光の光路内に配された光位相可変素子と、
を備えたことを特徴とするデジタルデータ記録波面補正装置。
【請求項3】
前記デジタルデータ情報を担持した物体光と前記補正用プローブ光の両者を、振動面の方向が互いに90度回転した直線偏光の状態において合成する偏光ビームスプリッタを備えていることを特徴とする請求項2記載のデジタルデータ記録波面補正装置。
【請求項4】
前記補正用光検出手段は、前記補正用プローブ光と前記補正用参照光とが、振動面の方向が互いに一致した状態において合波される位置に配設され、前記補正用プローブ光と前記補正用参照光との干渉により形成された干渉縞を撮像することを特徴とする請求項2または3記載のデジタルデータ記録波面補正装置。
【請求項5】
前記物体光に前記デジタルデータ情報を担持せしめる空間光変調素子として液晶表示素子が用いられるとともに、前記光位相可変素子としてピエゾ素子が用いられることを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか1項記載のデジタルデータ記録波面補正装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−141295(P2007−141295A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330988(P2005−330988)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】