デジタル受信機及びそれを用いた光通信システム
【課題】受信信号の品質に応じて、AD変換器の識別レベルを適切に調整することにより、その実効的な分解能を向上させ、もって、高分解能と高速化の要求に応え得るデジタル受信機を提供する。
【解決手段】デジタル受信機は、識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器102と、設定値に基づき識別レベル制御信号を生成し、AD変換器へ出力する識別レベル調整回路104と、設定値に基づきAD変換器の伝達関数に関する情報である伝達関数補正制御信号を生成する信号品質モニタ部108と、伝達関数補正制御信号に基づいて、AD変換器の伝達関数と初期伝達関数とのずれを相殺するようにデジタル信号を信号処理する伝達関数補正回路106とを備える。
【解決手段】デジタル受信機は、識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器102と、設定値に基づき識別レベル制御信号を生成し、AD変換器へ出力する識別レベル調整回路104と、設定値に基づきAD変換器の伝達関数に関する情報である伝達関数補正制御信号を生成する信号品質モニタ部108と、伝達関数補正制御信号に基づいて、AD変換器の伝達関数と初期伝達関数とのずれを相殺するようにデジタル信号を信号処理する伝達関数補正回路106とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル受信機及びそれを用いた光通信システムに関し、特に、デジタルコヒーレント受信方式を採用するデジタル受信機及びそれを用いた光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークの高速化および大容量化への要求が高まるにつれて、デジタルコヒーレント光通信技術の重要性が増している。イントラダイン受信方式とも呼ばれるこの通信方式は、従来の大容量光通信システムにおいて一般的に広く応用されているOOK(on-off keying)やDPSK(differential quadrature phase shift keying)などの変調方式に比べ、3〜6dB以上の受信感度向上を実現できる。また、この方式は、偏波多重方式やQAM(quadrature amplitude modulation)などの多値変調方式と親和性が良いなどの利点もある。
【0003】
図17は関連するデジタルコヒーレント受信装置の一例を示すブロック図である(例えば特許文献1又は非特許文献1参照)。入力光信号には、偏波多重(DP:Dual-polarization)−QPSK(quadrature phase shift keying)信号を用いた4チャンネル(Ix、Qx、Iy、Qy)の多重信号が用いられている。各チャネルの入力光信号は、それぞれ光電(OE)変換器でアナログ電気信号に変換されたのち、基準サンプリングクロック(CLK)に同期したタイミングでサンプルを行うAD(analog to digital)変換器(ADC)によりデジタル信号に変換される。
【0004】
従来の(デジタルではない)コヒーレント受信方式では、局発(LO:local oscillator)光の周波数/位相オフセットや偏波揺らぎにより、安定な受信を行うことができなかった。しかし、最近の電子デバイス開発の発展により、高速なAD変換器を用いることできるようになり、デジタル信号に変換された信号にDSP(digital signal processing)を施すことで、従来のコヒーレント受信方式で問題となっていた周波数/位相オフセットを補償し、また、偏波揺らぎを補償できるようになってきた。その結果、安定で精度のよいコヒーレント受信を行うことが可能となってきている。また、デジタルコヒーレント受信方式では、前述した周波数/位相オフセット補償や偏波揺らぎ補償の他に、波長分散補償や、より高度な波形等化技術を施すことも可能である。
【0005】
関連するデジタルコヒーレント受信装置で用いられるAD変換器(例えば非特許文献2参照)は、キャリブレーションなどにより各ビットの識別間隔が極力等間隔となるように配置される。これにより、AD変換器は、図18に示すような線形の伝達特性を持ち、高分解能(higher ENOB(effective number of bit))かつ低歪なAD変換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−205654号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Seb J. Savory,“Digital filters for coherent optical receivers”,Opt. Express,Vol. 16,No. 2,804−817,2008
【非特許文献2】Peter Schvan,“A 24GS/s 6b ADC in 90nm CMOS”, ISSCC Dig. Tech. Papers,pp.544−634,Feb. 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、サンプリングレートが数十GSpsを超えるような超高速AD変換器では、AD変換器を構成する素子の特性のばらつきの影響が大きくなる。そのため、関連するAD変換器では、回路速度と消費電力の制限もあって、識別レベル間隔を高精度に等間隔に制御することが困難で、高分解能と高速性を両立することが困難となっている。それにもかかわらず、100Gbpsを超えるような次世代の光通信システムでは、多値変調方式やOFDM(Orthogonal frequency-division multiplexing)変調方式の採用が想定されており、AD変換器の更なる高分解能と高速化が求められている。
【0009】
AD変換器の分解能の不足は、特に、低光SNR(signal-to-noise ratio)時、高分散付加時、多値変調時などにおいて、DSPによる波形歪補償を十分に行うことができず、システム性能を劣化させてしまう。
【0010】
本発明は、受信信号の品質に応じて、AD変換器の識別レベルを適切に調整することにより、その実効的な分解能を向上させ、もって、高分解能と高速化の要求に応え得るデジタル受信機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態に係るデジタル受信機は、識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された前記識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段と、設定値に基づき前記識別レベル制御信号を生成し、前記アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段と、前記設定値に基づき前記識別レベルに依存する前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段と、前記伝達関数に関する情報に基づいて、前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するように前記デジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、アナログ−デジタル変換に用いられる識別レベルを制御するとともに、識別レベルに依存するアナログ−デジタル変換器の伝達関数と初期伝達関数とのずれを相殺するようにしたことにより、アナログ−デジタル変換器の実効的な分解能を向上させることができ、アナログーデジタル変換器の物理的な分解能不足によるデジタル受信機の受信精度の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のデジタル受信機に含まれるAD変換器に設定される識別レベル間隔について説明するための図であって、(a)はSNRが比較的高い信号のアイパターン、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラム、(c)は関連するデジタル受信機において理想とされる線形の伝達特性を実現する場合のAD変換器の識別レベル間隔を示す図、及び(d)は入力信号のSNRが比較的高いときに図1のデジタル受信機のAD変換器に設定される識別レベル間隔を示す図である。
【図3】図1のデジタル受信機に含まれるAD変換器に設定される識別レベル間隔について説明するための図であって、(a)はSNRが比較的低い信号のアイパターン、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラム、(c)は関連するデジタル受信機において理想とされる線形の伝達特性を実現する場合のAD変換器の識別レベル間隔を示す図、及び(d)は入力信号のSNRが比較的低いときに図1のデジタル受信機のAD変換器に設定される識別レベル間隔を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4のデジタル受信機に含まれるAD変換器に設定される識別レベル間隔について説明するための図であって、(a)は伝送路において波長分散の影響を受けた受信光信号の波形図、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラム、(c)は図4のデジタル受信機のAD変換器に設定される識別レベル間隔を示す図である。
【図6A】図4のデジタル受信機において局部発振光源の位相トラッキングを行わなかった場合に観測される信号コンスタレーションを示す図である。
【図6B】位相トラッキングを行った場合に観測される信号コンスタレーションを示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第1の変形例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機への入力信号の例を説明するための図であって、(a)は、波形図、(b)はその波形の振幅分布のヒストグラムである。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機のAD変換器の識別レベルマッピングの例を示す図である。
【図12】デジタルコヒーレント受信機に用いられるAD変換器に求められる理想的な伝達特性を実現する場合の識別レベルマッピング例を示す図である。
【図13A】図12の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の特性を示すグラフである。
【図13B】図11の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の特性を示すグラフである。
【図14A】図12の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の時間変化を示すグラフである。
【図14B】図11の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の時間変化を示すグラフである。
【図14C】図14Aの場合と図14Bの場合の量子化誤差の平均パワーの違いを示すグラフである。
【図15】伝達特性補正回路の逆特性変換マッピングの原理を説明する説明図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第2の変形例を示すブロック図である。
【図17】受信光信号の例を説明するための図であって、(a)はCS−RZ変調信号が伝送路において波長分散の影響を受けた場合の受信光信号の波形図、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラムである。
【図18】関連するデジタルコヒーレント受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図19】図18のデジタルコヒーレント受信機に用いられるAD変換器に求められる理想的な伝達特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に、本発明の第1の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示す。図示のデジタル受信機100は、光電(OE)変換器101、アナログ−デジタル(AD)変換器(ADC)102、デジタル信号処理部103、識別レベル調整回路104、及びAD変換器識別クロック105を有している。
【0016】
光電変換器101は、光入力信号をアナログ電気信号に変換する。
【0017】
AD変換器102は、アナログ電気信号(入力アナログ信号)をデジタル信号に変換する。また、AD変換器102は、AD変換の際に判定基準として用いられる複数段階の識別レベルを、識別レベル調整回路104からの識別レベル制御信号に応じて設定する。このように、AD変換器102は、識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段として機能する。
【0018】
デジタル信号処理部103は、伝達関数補正回路106、波形歪補償回路107及び信号品質モニタ部108を有している。
【0019】
伝達関数補正回路106は、AD変換器102の伝達特性を補正するようにデジタル信号の信号処理を行う。具体的には、AD変換器102の伝達関数の初期伝達関数からのずれを相殺するようにデジタル信号の信号処理を行う。AD変換器102の伝達関数は、設定される識別レベルに依存する。そこで、この信号処理は、信号品質モニタ部108からの伝達関数補正制御信号に基づいて行われる。つまり、伝達関数補正回路106は、伝達関数補正制御信号に応じて、アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するようにデジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段として機能する。
【0020】
波形歪補償回路107は、光入力信号が伝送路上で受けた歪を除去(補償)するようにデジタル信号を信号処理する。
【0021】
信号品質モニタ部108は、デジタル信号の品質をモニタする。図1では、伝達関数補正回路106及び波形歪補償回路107の双方の出力が信号品質モニタ部108に入力されている。しかしながら、信号品質モニタ部108は、伝達関数補正回路106及び波形歪補償回路107のいずれか一方の出力を受けて信号品質をモニタするように構成されてもよい。信号品質モニタ部108は、モニタ結果を識別レベル調整回路104へ出力するとともに、モニタ結果に基づいて伝達関数補正制御信号を生成し、伝達関数補正回路106へ出力する。このように、信号品質モニタ部108は、デジタル信号の品質をモニタしてモニタ結果を出力するとともに、モニタ結果に基づいて伝達関数補正制御信号を生成する信号品質モニタ手段として機能する。
【0022】
なお、デジタル信号の品質は、AD変換器102の伝達関数の影響を受けている。このため、モニタ結果には、AD変換器102の伝達関数に関する情報が含まれる。信号品質モニタ部108は、AD変換器102の伝達関数に関する情報として、伝達関数補正制御信号を生成し、伝達関数補正回路106へ出力する。このように、信号品質モニタ部108は、AD変換器102の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段としても機能する。
【0023】
伝達関数補正回路106、波形歪補償回路107及び信号品質モニタ部108を備えるデジタル信号処理部103は、デジタル信号の信号処理を行うとともに、デジタル信号の品質をモニタしてモニタ結果を出力するデジタル信号処理手段として機能する。
【0024】
識別レベル調整回路104は、信号品質モニタ部108からのモニタ情報(モニタ結果)に基づいて、AD変換器102の識別レベルを制御する識別レベル制御信号を生成する。つまり、識別レベル調整回路104は、モニタ結果に基づいて識別レベル制御信号を生成し、アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段として機能する。AD変換器102は、識別レベル調整回路104からの識別レベル制御信号に応じて、識別レベルを設定(変更)する。AD変換器102の識別レベルは、初期状態において例えば等間隔に設定されており、識別レベル制御信号に応じて変更されて不等間隔になる。
【0025】
次に、図1のデジタル受信器100の動作について説明する。
【0026】
光送信器(図示せず)から送信された光信号は、伝送路(図示せず)を介して、デジタル受信器100に入力される。光電変換器101は、入力された光信号をアナログ電気信号に変換する。AD変換器102は、AD変換器識別クロック105からのクロック信号に同期したタイミングで、アナログ電気信号をサンプリングし、デジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された信号は、デジタル信号処理部103に実装された伝達関数補正回路106及び波形歪補償回路107による伝達特性の補正及び波形等化などのデジタル信号処理を施された後、出力信号として出力される。
【0027】
さて、関連するデジタル受信器のAD変換器は、図19を参照して説明したように、等間隔識別レベルを用いて識別を行い、アナログ信号をデジタル信号に変換する。一方、本実施の形態に係るAD変換器102は、識別レベル調整回路104からの識別レベル制御信号に応じて識別レベルを調整(変更設定)して識別を行う。その結果、AD変換器102の伝達特性は、関連するAD変換器において理想的とされる線形の伝達特性からずれてしまう。伝達特性補償回路106は、このずれを無くすように信号処理を行う。AD変換器102の識別レベルは、信号品質モニタ部108からのモニタ結果に基づくものである。そこで、同じモニタ結果に基づく伝達関数補正制御信号により、AD変換器102に生じた伝達特性のずれを相殺するように、伝達関数補正回路106を制御する。つまり、伝達関数補正回路106に、そのずれに対して逆特性を持つ伝達特性を与える。その結果、AD変換器102と伝達関数補正回路106との組み合わせにより、線形な伝達特性を実現することができる。
【0028】
次に、AD変換器102及び識別レベル調整回路104の動作について詳細に説明する。
【0029】
AD変換器102は、信号密度が稠密な領域あるいは信号変化が急峻な領域を高分解能に、反対に信号密度が希薄な領域あるいは信号変化が緩慢な領域では低分解能に、それぞれ識別間隔を不等間隔に配置することで、実効的な分解能を向上させる。識別レベル調整回路104は、信号品質モニタ部108からのモニタ情報に基づいて、AD変換器102の識別レベルが最適となるように調整する識別レベル制御信号を生成する。
【0030】
図2及び図3は、信号品質の良悪に応じて決定されるAD変換器102の識別レベルを説明するための図である。ここでは、信号品質としてSNR(signal to noise ratio)を採用している。SNRの良悪に応じて、図2(a)及び(b)及び図3(a)及び(b)に示すように、アイ開口あるいは信号レベルのヒストグラムは変化する。信号品質モニタ部108は、アイ開口あるいは信号レベルのヒストグラムなどをモニタし、レベル分布の粗密情報や勾配情報を求め、AD変換器102の識別レベルを決定する。
【0031】
図2は、(a)SNRが比較的高い場合のアイパターン、(b)その信号レベルのヒストグラム、(c)伝達特性が線形となるように決定された関連するAD変換器の識別レベル、及び(d)(a)のアイパターン又は(b)のヒストグラムをモニタした結果に基づいて決定されたAD変換器102の識別レベル、を示している。
【0032】
一方、図3は、(a)SNRが比較的低い場合のアイパターン、(b)その信号レベルのヒストグラム、(c)伝達特性が線形となるように決定された関連するAD変換器の識別レベル、及び(d)(a)のアイパターン又は(b)のヒストグラムをモニタした結果に基づいて決定されたAD変換器102の識別レベル、を示している。
【0033】
図2(b),(d)図3(b)及び(d)から理解されるように、信号レベル分布の粗密に応じてAD変換器102の識別レベルの間隔も不等間隔になる。図2(d)又は図3(d)に示すように決定された識別レベルは、識別レベル制御信号によりAD変換器102に伝えられる。また、伝達関数補正制御信号に反映される。
【0034】
このように本実施の形態に係るデジタル受信機100では、受信状態に応じてAD変換器102の識別レベルが最適となるように調整することにより、その実効的な分解能を向上させることができる。その結果、低光SNR時、高分散付加時、多値変調時などにおいて、波形歪補償回路107での波形歪補償に必要なAD変換器102の物理的な分解能が不足しても、デジタル受信器100の受信精度の劣化を防ぐことができる。
【0035】
信号品質モニタ部108による信号品質のモニタを、常時あるいは周期的に行うことにより、伝送路の伝送品質の変動に対応して、AD変換器102の識別レベルをアダプティブに調整することができ、常に好適な受信状態になるようフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0036】
なお、本実施の形態に係るデジタル受信器100では、信号品質モニタ部108によるモニタポイントを波形歪補償回路107の前後としたが、モニタポイントは必ずしも波形歪補償回路107の前後である必要はなく、信号の種類、フィードフォーワード、フィードバックの制御方法の種類に応じて、任意の場所とすることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るデジタル受信機について説明する。
【0038】
図4は、本実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。ここで、図1のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
図4のデジタル受信機300は、DP(Dual-polarization、偏波多重)−QPSK信号を入力信号とするものである。入力信号は、分散媒質である光伝送路301を介して、デジタル受信機300に与えられる。
【0040】
図示のように、デジタル受信機300は、局部発振光源302、一対の偏波ビームスプリッタ(PBS:polarization beam splitter)303−1及び303−2、一対の90°ハイブリッド304−1及び304−2、局発光位相モニタ305、及び局発光位相調整部306を有している。
【0041】
また、デジタル受信機300は、4つの信号チャネルに対応する4つの光電変換器101−1〜101−4と、4つのアナログ−デジタル変換器102−1〜102−4と、4つの伝達関数補正回路106−1〜106−4を有している。
【0042】
更に、デジタル受信機300の信号品質モニタ部108は、レベル分布/勾配推定部307と波形モニタ部308を有している。
【0043】
次に、本実施の形態に係るデジタル受信器300の動作について説明する。
【0044】
図示しない光送信機から送信されたDP−QPSK光信号は、光伝送路301を介してデジタル受信機300に入力される。光伝送路301は、例えば、光ファイバであって、光信号に波長分散を生じさせる。つまり、デジタル受信機300に入力されるDP−QPSK光信号は、光伝送路301における波長分散により波形歪が生じている。
【0045】
デジタル受信機300に入力されたDP−QPSK光信号は、PBS303−1により2つの偏光成分に分岐され、90°ハイブリッド304−1及び304−2に供給される。
【0046】
また、局部発振光源302からの局発光は、PBS303−2により2分岐され、90°ハイブリッド304−1及び304−2に供給される。
【0047】
90°ハイブリッド304−1及び304−2は、PBS303−1及び303−2からの信号をそれぞれ分岐・合成し、各々2つのチャネル、合計4つのチャネルに対応する光信号Ix,Qx,Iy,Qyを復調する。復調された4つの光信号Ix,Qx,Iy,Qyは、光電変換器101−1〜101―4にそれぞれ入力される。
【0048】
光電変換器101−1〜101―4は、入力された光信号Ix,Qx,Iy,Qyをそれぞれアナログ電気信号に変換し、変換したアナログ電気信号をAD変換器102−1〜102−4へ出力する。
【0049】
AD変換器102−1〜102−4は、それぞれ入力されたアナログ電気信号を、デジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を伝達関数補正回路106−1〜106−4へ出力する。
【0050】
伝達関数補正回路106−1〜106−4は、第1の実施の形態と同様に、AD変換器102−1〜102−4の伝達特性を補正するように、入力されたデジタル信号を信号処理する。
【0051】
その後、各チャネルのデジタル信号は、波形歪補償回路107に入力される。波形歪補償回路107は、クロック抽出、リタイミング、波長分散補償、偏波トラッキング、及び局発光位相推定などのデジタル信号処理を施して処理された信号を外部へ出力する。なお、波形歪補償回路107におけるデジタル信号処理は、例えば、非特許文献1に詳しく記載されている。
【0052】
波形歪補償回路107にて行われた局発光位相推定の結果は、局発光位相モニタ305によりモニタされ、モニタ結果が局発光位相調整部306に与えられる。局発光位相調整部306は、局発光位相モニタ305からのモニタ結果に基づいて、局発光の位相(発振周波数)を適切に保つように、局部発振光源302を制御する。局発光位相調整部306は、局部発振光源302に用いられる半導体レーザ(LD)の駆動電流や温度制御を行うことにより、局発光の位相を制御する。
【0053】
本実施の形態に係るデジタル受信器300は、信号品質モニタ部108に波形モニタ部308を有している。波形モニタ部308は、例えば排他的論理和(XOR)を用いた波形モニタ回路と、レベル別カウンタ(積算器)を用いたヒストグラムモニタ回路により実現できる。
【0054】
図5(a)は、光伝送路301(波長分散10000psec/nm)を通り、デジタル受信機300に入力される光入力信号の波形の一例を示す図である。波形モニタ部308は、このような信号波形をモニタ(観測)し、モニタ結果を出力する。
【0055】
レベル分布/勾配推定部307は、波形モニタ部308からのモニタ結果に基づいて、図5(b)に示すような受信レベルのヒストグラム分布f(x)を求める。あるいは、f(x)の勾配の絶対値g(x)=|df(x)/dx|を求める。ヒストグラム分布f(x)又はその勾配の絶対値g(x)は、各チャンネル毎に求められる。
【0056】
レベル分布/勾配推定部307は、求めたf(x)又はg(x)を識別レベル調整回路104へ供給する。識別レベル調整回路104は、図5(c)に示すように、識別レベル間隔がf(x)又はg(x)に反比例するよう、AD変換器102−1〜102−4の識別レベルを調整する識別レベル制御信号をチャネル毎に生成する。
【0057】
レベル分布/勾配推定部307は、更に、求めたf(x)又はg(x)に基づいて伝達関数補正制御信号を生成し、伝達関数補正回路106−1〜106―4へ出力する。伝達関数補正回路106−1〜106―4は、AD変換器102−1〜102―4で生じた理想的な線形の伝達特性からのずれに対して逆特性を持つ伝達特性を実現する。即ち、AD変換器102−1〜102−4と伝達関数補正回路106−1〜106―4との組み合わせにより、線形な伝達特性が得られる。
【0058】
なお、f(x)あるいはg(x)のどちらを識別レベル調整に用いるかは、入力信号の特性などに基づいて任意に選択することができる。また、f(x)とg(x)を組み合わせてもよい。この場合、重み付け加算又は乗算などの組み合わせ方法を採用することができる。いずれにしても、入力信号の状態に合わせた最適な方式を選ぶことが可能である。
【0059】
ところで、局部発振光源302と送信機側の光源との間に光周波数の(比較的大きな)ずれがあると、デジタル受信機で受信された受信信号(入力信号)のコンステレーションは、例えば、図6Aに示すように時間とともに回転する。このとき、入力信号のレベル分布は、図5(b)に示したような正規分布状の分布とはならずに、信号レベルが濃淡なく各レベルに一様に分布する可能性がある。その結果、デジタル受信機300は、正常に受信信号を処理することができなくなる。
【0060】
本実施の形態では、局発光位相モニタ305により局発光の位相をモニタし、局発光位相調整部306により局部発振光源302の位相(周波数)をトラッキングし安定させる。これにより、受信信号のコンステレーションは、図6Bに示すように回転しなくなる。その結果、入力信号のレベル分布にも濃淡が表れ、デジタル受信機300は、正常に受信信号を処理することができる。
【0061】
また、光入力信号の偏波ゆらぎなどによっても、信号レベル分布に上述した様な一様分布が生じる可能性がある。しかしながら、この場合も偏波モニタを設け、偏波トラッキングなどを行うなどして、本来の濃淡のある信号レベル分布を作り出すようにすればよい。
【0062】
なお、本実施の形態では、デジタル信号処理部103に、レベル分布/勾配推定部307と波形モニタ部308を実装する例について説明したが、その回路構成は任意に設計、変更可能である。例えば、デジタル信号処理部103において実現したい機能を、機能毎に、FPGA(field programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)などを用いて個別に回路実装し実現してもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、波形モニタ部308として、排他的論理和(XOR)を用いた波形モニタ回路と、レベル別カウンタ(積算器)を用いたヒストグラムモニタ回路を用いる例を示したが、波形モニタ部308としてオシロスコープを用いることもできる。この場合、レベル分布/勾配推定部307としてPC(パーソナルコンピュータ)等を用いることができる。
【0064】
更に、本実施の形態では、光入力信号が伝送路の波長分散による波形歪を有する場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、偏波分散、マルチモード分散などに起因する波形歪に対しても適用することが可能である。
【0065】
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るデジタル受信機について説明する。図7において、図4と同一のものには同一符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
図7に示すデジタル受信機600の信号品質モニタ部108は、レベル分布/勾配推定部601、波形等化誤差モニタ602、BER(Bit Error Rate)モニタ603を有している。
【0067】
レベル分布/勾配推定部601は、図4の波形モニタ部308とレベル分布/勾配推定部307とを兼ねる。
【0068】
波形等化誤差モニタ602は波形歪補償回路107から出力される出力信号の波形と理想波形との誤差、即ち波形等化誤差をモニタする。また、BERモニタ603は、出力信号のビット誤り率をモニタする。これら波形等化誤差モニタ602及びBERモニタ603は、ともに信号品質モニタとして動作する。
【0069】
レベル分布/勾配推定部601は、第2の実施の形態と同様に、ヒストグラム分布f(x)、あるいは、f(x)の勾配の絶対値g(x)を求める。そして、求めた、f(x)又はg(x)を、波形等化誤差モニタ602及びBERモニタ603のモニタ結果に基づいて補正し、補正したf(x)又はg(x)を識別レベル調整回路104へ出力する。また、レベル分布/勾配推定部601は、補正したf(x)又はg(x)に基づき、伝達関数補正制御信号を生成して伝達関数補正回路106−1〜106−4へ出力する。
【0070】
本実施の形態では、波形モニタの結果のみならず、波形等化誤差及びビット誤り率のモニタ結果に基づいて、AD変換器102−1〜102−4の識別レベルを制御するようにしたことで、より適切な制御を行うことできる。
【0071】
なお、本実施の形態では、波形等化誤差及びビット誤り率をモニタしているので、伝達関数補正回路106−1〜106−4の制御は、線形の伝達特性が実現されるようにではなく、波形等化誤差あるいはビット誤り率が減少するように行うことできる。これにより、高い精度で復号を行えるデジタル受信機を構成することができる。
【0072】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機について説明する。
【0073】
図8は、本実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。ここで、図1のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
図8のデジタル受信機700は、図1のデジタル受信機で用いられている信号品質モニタ部108が取り除かれ、伝達関数補正制御信号を生成する伝達関数補正制御信号生成回路701を備えている。この伝達関数補正制御信号生成回路701が、伝達関数情報生成手段として機能する。
【0075】
以上のように構成された本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機では、あらかじめ設定された設定値に基づき、識別レベル調整回路104は、AD変換器102の識別レベルが最適となるように調整する識別レベル制御信号を生成する。また、伝達関数補正制御信号生成回路701は、同設定値と連動して伝達関数補正制御信号を生成する。制御識別レベルを決定する設定値に基づいて伝達関数補正制御信号を生成するようにしたため、信号品質モニタなどの複雑な手段を用いなくても、より簡便に好適なデジタル受信機を構成することが可能である。
【0076】
ここで、識別レベル調整回路104が生成する識別レベル制御信号は、AD変換器102の識別レベル調整端子に接続されている。AD変換器102としてはフラッシュ型やSAR(逐次比較レジスタ)型など一般的な方式のAD変換器を用いることが可能である。例えばフラッシュ型のAD変換器の場合は、AD変換を行うコンパレータの比較電圧を設定する抵抗値の切り替えを、識別レベル制御信号により制御することが可能である。また、パイプライン型やSAR型のAD変換器の場合であれば、入力信号と振幅比較を行うDAC(デジタル−アナログ変換)値のオフセットを識別レベル制御信号により調整し、識別レベルを制御することが可能である。
【0077】
図9は、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第1の変形例を示す図面である。ここで図8のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
図9のデジタル受信機800は、識別レベル調整回路104として識別レベルマッピング回路801、および、伝達関数補正制御信号生成回路701として逆特性変換マッピング回路802を備えている。識別レベルマッピング回路801は、図19で示したような等間隔な識別レベルが配置される線形な識別レベルマッピングとは異なり、不等間隔な識別レベルマッピングを設定することが可能になっている。
【0079】
例えば、図9のデジタル受信機800の入力に、図10(a)に示したような受信波形が入力される場合について、識別レベルマッピング回路801の動作の説明を行う。
【0080】
図10(a)は100GbpsのDP−QPSK光信号に10000ps/nmの波長分散を付加した際の波形を表している。また、図10(b)は図10(a)の波形の振幅分布について、ヒストグラムをグラフにしたものである。図10(b)のヒストグラム(振幅頻度分布)形状は概ねガウス分布をしており、ガウス分布の広がりを示す分散σをパラメータとして分布形状を特徴付けることが可能である。
【0081】
図11は上述したような入力波形のヒストグラムがガウス分布であるとき、AD変換器102の識別レベルを設定する識別レベルマッピングの例を表している。
【0082】
図11において横軸はアナログ入力振幅ain、縦軸はデジタル出力振幅boutであり、AD変換器102の分解能が4bit(図中のn=4)である場合の例を示している。図11ではアナログ入力振幅ainが、ak≦ain<ak+1のとき、デジタル出力boutがbk(図11の例では4bitの2進数でデジタル値を表現している)にマッピングされる例を示している。
【0083】
また、曲線(i)はガウス分布形状をf(x)(x:入力振幅値ain)とするとき、下記の式1で表される値に比例する曲線、直線(ii)は従来の線形な識別レベルマッピングに関わる直線をそれぞれ表している。
【0084】
更に、図12には比較のため直線(ii)による従来の線形な識別レベルマッピングの例を示している。
【0085】
また、図11、図12の図中には、それぞれ入出力波形の例として、アナログ波形(1)とデジタル波形(2)が示されている。換言すると、これらの図は、正弦波であるアナログ波形(1)が当該識別レベルマッピングに基づいてデジタル波形(2)に変換される様子を示している。
【0086】
【数1】
【0087】
上記式1においてσはガウス分布(正規分布)の分散、FS(full-scale)はAD変換器102の最大入力振幅に係わる値をそれぞれ表している。
【0088】
ここで、akの値はakにおける曲線(i)の値f(ak)が、bk−1とbkの間の任意の値になるように値を定めることが可能であるし、デジタル受信機800の出力波形のアイ開口やビット誤り率が最も好適になるようにキャリブレーション、トレーニング、フィードバック制御などすることにより値を定めることも可能である。
【0089】
図13A,13Bはakの値の定め方の例として、bk−1とbkのちょうど中間の値に定めた場合の量子化誤差を表す図である。図13Aは図12の従来の線形な識別レベルマッピングを用いた際の量子化誤差を、図13Bは図11の本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機による識別レベルマッピングを用いた際の量子化誤差を、それぞれ示している。
【0090】
図13Aの量子化誤差は、入力振幅に依らず±1/2LSB(least significant bit=1/2n)の一様な量子化誤差が発生することが分かる。一方、図13Bの量子化誤差は、入力レベルが中央付近(AC結合時には小振幅入力に相当)で量子化誤差が小さく、両端付近(AC結合時には大振幅入力に相当)で量子化誤差が大きくなるよう設定されていることが分かる。
【0091】
したがって、図11の識別レベルマッピングが施されたデジタル受信機に、図10のような振幅頻度分布が概ねガウス分布形状をした入力波形を入力した場合には、最も振幅頻度分布の高い中央付近の入力波形に対して量子化誤差の小さいAD変換が施され、頻度分布の低い両端付近の入力波形に対して量子化誤差の大きいAD変換が施される。その結果、図11の識別レベルマッピングが施されたデジタル受信機では、図12の従来のデジタル受信機による識別レベルマッピングによるAD変換を行った場合よりも、実質的な量子化雑音が小さくなる。
【0092】
図14A、B及びCは、本実施の形態に係るデジタル受信機により量子化雑音が小さくなる様子をより具体的に説明するための図である。図14A及び図14Bは、振幅頻度分布の中央付近が高く、両端付近が低い入力波形を入力したときに、図13A及び図13Bに示す量子化誤差を生じるような識別レベルマッピングによるAD変換を施した際の量子化誤差発生のイメージを説明する図である。
【0093】
図14Aは図12の従来の識別レベルマッピングによりAD変換された際のイメージ図であり、±1/2LSBの間で一様な量子化雑音が発生している様子を示している。一方、図14Bは図11の本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機による識別レベルマッピングによりAD変換を施した際のイメージ図である。図14Bを図14Aと比較すると、図14Bの方が、入力の振幅頻度分布に応じた結果となっている。即ち、図14Bでは、±1/2LSBよりも絶対値の小さい量子化誤差の発生頻度が高く、±1/2LSBより絶対値の大きい量子化誤差が発生する確率が低い。図14Cに、図14Aの量子化雑音(ア)の二乗和と図14Bの量子化雑音(イ)の二乗和の関係を示す。これらのことから、本実施の形態によるデジタル受信機では、量子化誤差の平均パワー(例えば、二乗和平均の平方根)が改善されることが分かる。
【0094】
識別レベルマッピング回路801は、上述した識別レベルマッピングを実現するため、複数の分散σの値にそれぞれ対応させた複数のマッピングテーブルを予め記憶している。そして、識別レベルマッピング回路801は、入力される分散σの値に基づいて最も適切なマッピングテーブルを選択し、選択したマッピングテーブルに関する情報を識別レベル制御信号としてAD変換器102へ供給する。なお、式1に用いられるf(x)は、第2あるいは第3の実施の形態において用いられるレベル分布/勾配推定部307,601を用い、信号レベル分布・勾配推定を行うことにより求めるようにしてもよい。
【0095】
一方、逆変換マッピング回路802は、入力される分散σの値に基づいて、AD変換器102の伝達関数の初期伝達関数からのずれを相殺する伝達特性をもつように、伝達特性補正回路106を制御する。具体的には、図15に示すように、AD変換器102からのデジタル出力信号boutを、式1の逆関数を用いてデジタル信号coutに逆変換マッピングする。この逆変換マッピングにおいては、デジタル信号による離散的なマッピングになるため、最も式1の逆関数値に近いcoutのデジタル値をマッピングすれば良い。すなわち、coutのビット幅mは、boutのビット幅nと必ずしも一致させる必要はなく(一般的には計算精度を落とさないようにするためm≧n)、計算のビット精度と回路規模・消費電力のトレードオフとして決定することが可能である。図15の図中には、伝達特性補正回路106の入出力波形の例としてデジタル波形(2)及び(3)が示されている。デジタル波形(2)は、正弦波をAD変換して得られたものである。逆変換マッピング回路802の制御の下、伝達特性補正回路106は、伝達特性を補正するように、デジタル波形(2)を信号処理し、デジタル波形(3)として出力する。
【0096】
逆変換マッピング回路802は、上述した逆変換マッピングを実現するため、複数の分散σの値にそれぞれ対応させた複数のマッピングテーブルを予め記憶している。これらのマッピングテーブルは、識別レベルマッピング回路801が保持するマッピングテーブルと一対一に対応する。逆特性変換マッピング回路802は、入力される分散σの値に基づいて最も適切なマッピングテーブルを選択し、選択したマッピングテーブルに関する情報を伝達関数補正制御信号として伝達関数補正回路106へ供給する。
【0097】
図16は、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第2の変形例を示す図面である。ここで図8のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
図16のデジタル受信機1500は、伝達特性調整回路1501、線形AD変換器1502、識別レベル調整回路1503を備えている。伝達特性調整回路1501と線形AD変換器1502は、AD変換回路102を構成する。線形AD変換器1502は、従来のデジタル受信機で用いられる線形AD変換器である。伝達特性調整回路1501としては、例えばリミッティングアンプを用いることができる。伝達特性調整回路1501は、識別レベル調整回路1503で生成される識別レベル調整信号に基づき、入力信号を増幅する際のリミッティングレベル・利得を調整することが可能にする。したがって、伝達特性調整回路1501と線形AD変換器1502の組合せは、前述した図11の曲線(i)に相当する非線形な伝達特性を等価的に生成することが可能である。即ち、伝達特性調整回路1501の後段に配置された線形AD変換器1502で従来の線形なAD変換を行うことで、図11のデジタル出力振幅boutを持つ信号がAD変換器102から出力される。デジタル出力振幅boutを持つ信号は伝達特性補正回路106により伝達特性調整回路1501による非線形特性を打ち消すように信号処理され出力される。その後のデジタル信号処理については、本発明のその他のデジタル受信機と同様であるため説明を省略する。
【0099】
伝達特性調整回路1501としてはリミッティングアンプの他にも対数アンプ等、等価的に識別レベルを調整する種々の回路を用いることが可能である。
【0100】
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機では、AD変換器102に物理的な分解能よりも、実質的な分解能(ENOB:effective number of bit)を向上させることが可能であり、受信精度が向上する。
【0101】
なお、上述した説明ではAD変換器102が、理想的なAD変換器動作をする場合(熱雑音の影響やキャリブレーション誤差なく、量子化雑音のみ存在)について記述しているが、量子化雑音以外の雑音が存在する場合にも同様な効果が得られることはその動作原理から明らかである。
【0102】
また、図10(a),(b)のDP−QPSK光信号の例に限らず、一般的に、差動受信を行うようなデジタル受信機では、波長分散や光雑音の影響により、振幅分布のヒストグラムは図10(b)のようなガウス分布形状をしており、ガウス分布の広がりを示す分散σをパラメータとして分布形状を特徴付けることが可能である。したがって、あらかじめ測定あるいは推定した波長分散補償値やOSNR(optical signal-to-noise ratio)に応じてσを選択設定することで、マッピングテーブルの切り替えを行うことが可能である。また、アイ開口やビット誤り率などのシステム性能品質が好適になるようσを設定することも可能である。
【0103】
また、OOK(on-off keying)変調信号や、差動受信を行わないデジタル受信機では、入力信号の振幅頻度分布をガウス分布で特徴付けることはできない。例えば、CS−RZ(carrier-suppressed return-to-zero)波形に40000ps/nmの波長分散を付加した波形は、図17(a)のような波形図となり、振幅頻度分布は、図17(b)に示すようになる。しかしながら、このような場合にも、ガウス分布の代わりに図17(b)の頻度分布形状をf(x)として式1を用いて識別レベルマッピングを行うことが可能である。すなわち、一般的には信号振幅に頻度分布差が生じるような振幅頻度分布形状を持つ入力波形であれば、その頻度分布形状をf(x)として、式1を用いて識別レベルマッピングと、逆特性変換マッピングを行うことが可能であり、図14の例と同様にAD変換器102の実質的な分解能を向上させることが可能である。
【0104】
更に、OFDM(orthogonal frequency-division multiplexing)などのPAPR(peak-to-average power ratio)が高い変調方式や、大きな振幅ダイナミックレンジが必要とされる信号に対しては、式1のf(x)として対数(log)関数を用いることで有効な入力振幅範囲を拡大し、受信性能を好適にすることも可能である。
【0105】
また更に、式1による識別レベルマッピングを必ずしも行う必要はなく、システム性能が好適になるような識別レベルマッピング回路801および逆変換マッピング回路802を設定することも可能である。例えば、前述した図2(d)あるいは図3(d)では、上述した式1と等価な識別レベル設定(識別レベル間隔がレベル頻度分布の逆数に比例した識別レベルマッピング)について示しているが、反対に、0/1判定を行う識別レベル付近をより細かくデジタル信号処理する目的のためには、振幅の中央付近(レベル頻度分布が小さい領域)をより密に識別する識別レベルマッピングとすることも可能であるし、あるいは、急峻な信号変化をデジタル信号処理する目的のためには、f(x)勾配がもっとも急峻な領域をより密に識別レベルマッピングすることも可能である。すなわち、識別レベルマッピング回路801および逆変換マッピング回路802は後段のデジタル信号処理方法に応じて常に好適な設定を選択するよう構成することが可能である。
【0106】
以上、本発明についていくつかの実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、入力信号が光信号である場合について説明したが、本発明は、例えば無線信号のように、伝送路における種々の分散(フェージング)などにより波形歪を有する信号を受信する種々の受信機に適用することができる。
【0107】
また、上記実施の形態では、入力信号としてDP−QPSK信号を例示したが、本発明は、ASK(amplitude shift keying)、BPSK(binary PSK)、SP(single polarization)−QPSK、OFDM(Orthogonal Fourier division multiplexing)信号など、種々の変調方式の信号に適用することが可能である。
【0108】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0109】
[付記]
(付記1)
識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された前記識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段と、前記識別レベル制御信号を生成し、前記アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段と、前記識別レベルに依存する前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段と、前記伝達関数に関する情報に基づいて、前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するように前記デジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段と、を備えることを特徴とするデジタル受信機。
【0110】
(付記2)
前記伝達関数情報生成手段は、前記伝達関数補正手段により信号処理されたデジタル信号の品質をモニタしてモニタ結果を生成するとともに、該モニタ結果に基づいて前記伝達関数に関する情報として伝達関数補正制御信号を生成する信号品質モニタ手段であり、前記識別レベル調整手段は、前記モニタ結果に基づいて前記識別レベル制御信号を生成する、ことを特徴とする付記1のデジタル受信機。
【0111】
(付記3)
前記識別レベルを不等間隔に設定することを特徴とする付記1又は2のデジタル受信機。
【0112】
(付記4)
前記アナログ−デジタル変換手段は、信号チャネルに対応する複数のアナログ−デジタル変換器を含み、これら複数のアナログ−デジタル変換器について個別に前記識別レベルの設定を行うことを特徴とする付記1,2又は3のデジタル受信機。
【0113】
(付記5)
前記信号品質モニタ手段は、波形モニタ手段と、信号レベル分布・勾配推定手段とを含むことを特徴とする付記2のデジタル受信器。
【0114】
(付記6)
前記信号品質モニタ手段は、波形等化誤差モニタ手段を含むことを特徴とする付記2のデジタル受信器。
【0115】
(付記7)
前記信号品質モニタ手段は、ビットエラーレートモニタ手段を含むことを特徴とする付記2のデジタル受信器。
【0116】
(付記8)
前記入力アナログ信号は、光入力信号を光電変換したアナログ電気信号であることを特徴とする付記1乃至7のいずれかのデジタル受信器。
【0117】
(付記9)
前記光入力信号は、位相シフトキーイング変調方式により変調されていることを特徴とする付記8のデジタル受信器。
【0118】
(付記10)
前記識別レベル調整手段は、設定値に基づき前記識別レベル制御信号を生成し、 前記伝達関数情報生成手段は、前記設定値に基づき前記伝達関数情報を生成する、ことを特徴とする付記1のデジタル受信機。
【0119】
(付記11)
前記識別レベル制御信号および前記伝達関数情報は、それぞれあらかじめ用意された前記設定値との関係を示すマッピングテーブルに基づき生成されることを特徴とする付記10のデジタル受信機。
【0120】
(付記12)
前記マッピングテーブルは前記入力アナログ信号の振幅レベルの頻度分布に基づいて算出されることを特徴とする付記10又は11のデジタル受信機。
【0121】
(付記13)
前記識別レベル調整手段は、概ねガウス分布に従う信号レベル分布・勾配推定に基づいて入出力レベルがマッピングされることを特徴とする付記10乃至12のいずれかのデジタル受信機。
【0122】
(付記14)
伝達関数補正手段により信号処理されたデジタル信号の波形歪を補償する波形歪補償手段を更に備えることを特徴とする付記1乃至13のいずれかのデジタル受信機。
【0123】
(付記15)
付記1乃至14のいずれかのデジタル受信機を含むことを特徴とする光通信システム。
【0124】
この出願は、2010年3月16日に出願された日本出願特願2010−058686号及び2010年10月15日に出願された日本出願特願2010−225668号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0125】
100 デジタル受信機
101,101−1〜101−4 光電(OE)変換器
102,102−1〜102−4 アナログ−デジタル(AD)変換器(ADC)
103 デジタル信号処理部
104 識別レベル調整回路
105 AD変換器識別クロック
106,106−1〜106−4 伝達関数補正回路
107 波形歪補償回路
108 信号品質モニタ部
300 デジタル受信機
301 光伝送路
302 局部発振光源
303−1,303−2 偏波ビームスプリッタ(PBS)
304−1,304−2 90°ハイブリッド
305 局発光位相モニタ
306 局発光位相調整部
307 レベル分布/勾配推定部
308 波形モニタ部
600 デジタル受信機
601 レベル分布/勾配推定部
602 波形等化誤差モニタ
603 BER(Bit Error Rate)モニタ
700 デジタル受信機
701 伝達関数補正制御信号生成回路
800 デジタル受信機
801 識別レベルマッピング回路
802 逆特性変換マッピング回路
1500 デジタル受信機1500
1501 伝達特性調整回路
1502 線形AD変換器
1503 識別レベル調整回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル受信機及びそれを用いた光通信システムに関し、特に、デジタルコヒーレント受信方式を採用するデジタル受信機及びそれを用いた光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークの高速化および大容量化への要求が高まるにつれて、デジタルコヒーレント光通信技術の重要性が増している。イントラダイン受信方式とも呼ばれるこの通信方式は、従来の大容量光通信システムにおいて一般的に広く応用されているOOK(on-off keying)やDPSK(differential quadrature phase shift keying)などの変調方式に比べ、3〜6dB以上の受信感度向上を実現できる。また、この方式は、偏波多重方式やQAM(quadrature amplitude modulation)などの多値変調方式と親和性が良いなどの利点もある。
【0003】
図17は関連するデジタルコヒーレント受信装置の一例を示すブロック図である(例えば特許文献1又は非特許文献1参照)。入力光信号には、偏波多重(DP:Dual-polarization)−QPSK(quadrature phase shift keying)信号を用いた4チャンネル(Ix、Qx、Iy、Qy)の多重信号が用いられている。各チャネルの入力光信号は、それぞれ光電(OE)変換器でアナログ電気信号に変換されたのち、基準サンプリングクロック(CLK)に同期したタイミングでサンプルを行うAD(analog to digital)変換器(ADC)によりデジタル信号に変換される。
【0004】
従来の(デジタルではない)コヒーレント受信方式では、局発(LO:local oscillator)光の周波数/位相オフセットや偏波揺らぎにより、安定な受信を行うことができなかった。しかし、最近の電子デバイス開発の発展により、高速なAD変換器を用いることできるようになり、デジタル信号に変換された信号にDSP(digital signal processing)を施すことで、従来のコヒーレント受信方式で問題となっていた周波数/位相オフセットを補償し、また、偏波揺らぎを補償できるようになってきた。その結果、安定で精度のよいコヒーレント受信を行うことが可能となってきている。また、デジタルコヒーレント受信方式では、前述した周波数/位相オフセット補償や偏波揺らぎ補償の他に、波長分散補償や、より高度な波形等化技術を施すことも可能である。
【0005】
関連するデジタルコヒーレント受信装置で用いられるAD変換器(例えば非特許文献2参照)は、キャリブレーションなどにより各ビットの識別間隔が極力等間隔となるように配置される。これにより、AD変換器は、図18に示すような線形の伝達特性を持ち、高分解能(higher ENOB(effective number of bit))かつ低歪なAD変換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−205654号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Seb J. Savory,“Digital filters for coherent optical receivers”,Opt. Express,Vol. 16,No. 2,804−817,2008
【非特許文献2】Peter Schvan,“A 24GS/s 6b ADC in 90nm CMOS”, ISSCC Dig. Tech. Papers,pp.544−634,Feb. 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、サンプリングレートが数十GSpsを超えるような超高速AD変換器では、AD変換器を構成する素子の特性のばらつきの影響が大きくなる。そのため、関連するAD変換器では、回路速度と消費電力の制限もあって、識別レベル間隔を高精度に等間隔に制御することが困難で、高分解能と高速性を両立することが困難となっている。それにもかかわらず、100Gbpsを超えるような次世代の光通信システムでは、多値変調方式やOFDM(Orthogonal frequency-division multiplexing)変調方式の採用が想定されており、AD変換器の更なる高分解能と高速化が求められている。
【0009】
AD変換器の分解能の不足は、特に、低光SNR(signal-to-noise ratio)時、高分散付加時、多値変調時などにおいて、DSPによる波形歪補償を十分に行うことができず、システム性能を劣化させてしまう。
【0010】
本発明は、受信信号の品質に応じて、AD変換器の識別レベルを適切に調整することにより、その実効的な分解能を向上させ、もって、高分解能と高速化の要求に応え得るデジタル受信機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態に係るデジタル受信機は、識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された前記識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段と、設定値に基づき前記識別レベル制御信号を生成し、前記アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段と、前記設定値に基づき前記識別レベルに依存する前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段と、前記伝達関数に関する情報に基づいて、前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するように前記デジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、アナログ−デジタル変換に用いられる識別レベルを制御するとともに、識別レベルに依存するアナログ−デジタル変換器の伝達関数と初期伝達関数とのずれを相殺するようにしたことにより、アナログ−デジタル変換器の実効的な分解能を向上させることができ、アナログーデジタル変換器の物理的な分解能不足によるデジタル受信機の受信精度の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のデジタル受信機に含まれるAD変換器に設定される識別レベル間隔について説明するための図であって、(a)はSNRが比較的高い信号のアイパターン、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラム、(c)は関連するデジタル受信機において理想とされる線形の伝達特性を実現する場合のAD変換器の識別レベル間隔を示す図、及び(d)は入力信号のSNRが比較的高いときに図1のデジタル受信機のAD変換器に設定される識別レベル間隔を示す図である。
【図3】図1のデジタル受信機に含まれるAD変換器に設定される識別レベル間隔について説明するための図であって、(a)はSNRが比較的低い信号のアイパターン、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラム、(c)は関連するデジタル受信機において理想とされる線形の伝達特性を実現する場合のAD変換器の識別レベル間隔を示す図、及び(d)は入力信号のSNRが比較的低いときに図1のデジタル受信機のAD変換器に設定される識別レベル間隔を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4のデジタル受信機に含まれるAD変換器に設定される識別レベル間隔について説明するための図であって、(a)は伝送路において波長分散の影響を受けた受信光信号の波形図、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラム、(c)は図4のデジタル受信機のAD変換器に設定される識別レベル間隔を示す図である。
【図6A】図4のデジタル受信機において局部発振光源の位相トラッキングを行わなかった場合に観測される信号コンスタレーションを示す図である。
【図6B】位相トラッキングを行った場合に観測される信号コンスタレーションを示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第1の変形例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機への入力信号の例を説明するための図であって、(a)は、波形図、(b)はその波形の振幅分布のヒストグラムである。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機のAD変換器の識別レベルマッピングの例を示す図である。
【図12】デジタルコヒーレント受信機に用いられるAD変換器に求められる理想的な伝達特性を実現する場合の識別レベルマッピング例を示す図である。
【図13A】図12の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の特性を示すグラフである。
【図13B】図11の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の特性を示すグラフである。
【図14A】図12の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の時間変化を示すグラフである。
【図14B】図11の識別レベルマッピングが施されたAD変換器の量子化誤差の時間変化を示すグラフである。
【図14C】図14Aの場合と図14Bの場合の量子化誤差の平均パワーの違いを示すグラフである。
【図15】伝達特性補正回路の逆特性変換マッピングの原理を説明する説明図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第2の変形例を示すブロック図である。
【図17】受信光信号の例を説明するための図であって、(a)はCS−RZ変調信号が伝送路において波長分散の影響を受けた場合の受信光信号の波形図、(b)はその信号レベルの分布を表すヒストグラムである。
【図18】関連するデジタルコヒーレント受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図19】図18のデジタルコヒーレント受信機に用いられるAD変換器に求められる理想的な伝達特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に、本発明の第1の実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示す。図示のデジタル受信機100は、光電(OE)変換器101、アナログ−デジタル(AD)変換器(ADC)102、デジタル信号処理部103、識別レベル調整回路104、及びAD変換器識別クロック105を有している。
【0016】
光電変換器101は、光入力信号をアナログ電気信号に変換する。
【0017】
AD変換器102は、アナログ電気信号(入力アナログ信号)をデジタル信号に変換する。また、AD変換器102は、AD変換の際に判定基準として用いられる複数段階の識別レベルを、識別レベル調整回路104からの識別レベル制御信号に応じて設定する。このように、AD変換器102は、識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段として機能する。
【0018】
デジタル信号処理部103は、伝達関数補正回路106、波形歪補償回路107及び信号品質モニタ部108を有している。
【0019】
伝達関数補正回路106は、AD変換器102の伝達特性を補正するようにデジタル信号の信号処理を行う。具体的には、AD変換器102の伝達関数の初期伝達関数からのずれを相殺するようにデジタル信号の信号処理を行う。AD変換器102の伝達関数は、設定される識別レベルに依存する。そこで、この信号処理は、信号品質モニタ部108からの伝達関数補正制御信号に基づいて行われる。つまり、伝達関数補正回路106は、伝達関数補正制御信号に応じて、アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するようにデジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段として機能する。
【0020】
波形歪補償回路107は、光入力信号が伝送路上で受けた歪を除去(補償)するようにデジタル信号を信号処理する。
【0021】
信号品質モニタ部108は、デジタル信号の品質をモニタする。図1では、伝達関数補正回路106及び波形歪補償回路107の双方の出力が信号品質モニタ部108に入力されている。しかしながら、信号品質モニタ部108は、伝達関数補正回路106及び波形歪補償回路107のいずれか一方の出力を受けて信号品質をモニタするように構成されてもよい。信号品質モニタ部108は、モニタ結果を識別レベル調整回路104へ出力するとともに、モニタ結果に基づいて伝達関数補正制御信号を生成し、伝達関数補正回路106へ出力する。このように、信号品質モニタ部108は、デジタル信号の品質をモニタしてモニタ結果を出力するとともに、モニタ結果に基づいて伝達関数補正制御信号を生成する信号品質モニタ手段として機能する。
【0022】
なお、デジタル信号の品質は、AD変換器102の伝達関数の影響を受けている。このため、モニタ結果には、AD変換器102の伝達関数に関する情報が含まれる。信号品質モニタ部108は、AD変換器102の伝達関数に関する情報として、伝達関数補正制御信号を生成し、伝達関数補正回路106へ出力する。このように、信号品質モニタ部108は、AD変換器102の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段としても機能する。
【0023】
伝達関数補正回路106、波形歪補償回路107及び信号品質モニタ部108を備えるデジタル信号処理部103は、デジタル信号の信号処理を行うとともに、デジタル信号の品質をモニタしてモニタ結果を出力するデジタル信号処理手段として機能する。
【0024】
識別レベル調整回路104は、信号品質モニタ部108からのモニタ情報(モニタ結果)に基づいて、AD変換器102の識別レベルを制御する識別レベル制御信号を生成する。つまり、識別レベル調整回路104は、モニタ結果に基づいて識別レベル制御信号を生成し、アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段として機能する。AD変換器102は、識別レベル調整回路104からの識別レベル制御信号に応じて、識別レベルを設定(変更)する。AD変換器102の識別レベルは、初期状態において例えば等間隔に設定されており、識別レベル制御信号に応じて変更されて不等間隔になる。
【0025】
次に、図1のデジタル受信器100の動作について説明する。
【0026】
光送信器(図示せず)から送信された光信号は、伝送路(図示せず)を介して、デジタル受信器100に入力される。光電変換器101は、入力された光信号をアナログ電気信号に変換する。AD変換器102は、AD変換器識別クロック105からのクロック信号に同期したタイミングで、アナログ電気信号をサンプリングし、デジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された信号は、デジタル信号処理部103に実装された伝達関数補正回路106及び波形歪補償回路107による伝達特性の補正及び波形等化などのデジタル信号処理を施された後、出力信号として出力される。
【0027】
さて、関連するデジタル受信器のAD変換器は、図19を参照して説明したように、等間隔識別レベルを用いて識別を行い、アナログ信号をデジタル信号に変換する。一方、本実施の形態に係るAD変換器102は、識別レベル調整回路104からの識別レベル制御信号に応じて識別レベルを調整(変更設定)して識別を行う。その結果、AD変換器102の伝達特性は、関連するAD変換器において理想的とされる線形の伝達特性からずれてしまう。伝達特性補償回路106は、このずれを無くすように信号処理を行う。AD変換器102の識別レベルは、信号品質モニタ部108からのモニタ結果に基づくものである。そこで、同じモニタ結果に基づく伝達関数補正制御信号により、AD変換器102に生じた伝達特性のずれを相殺するように、伝達関数補正回路106を制御する。つまり、伝達関数補正回路106に、そのずれに対して逆特性を持つ伝達特性を与える。その結果、AD変換器102と伝達関数補正回路106との組み合わせにより、線形な伝達特性を実現することができる。
【0028】
次に、AD変換器102及び識別レベル調整回路104の動作について詳細に説明する。
【0029】
AD変換器102は、信号密度が稠密な領域あるいは信号変化が急峻な領域を高分解能に、反対に信号密度が希薄な領域あるいは信号変化が緩慢な領域では低分解能に、それぞれ識別間隔を不等間隔に配置することで、実効的な分解能を向上させる。識別レベル調整回路104は、信号品質モニタ部108からのモニタ情報に基づいて、AD変換器102の識別レベルが最適となるように調整する識別レベル制御信号を生成する。
【0030】
図2及び図3は、信号品質の良悪に応じて決定されるAD変換器102の識別レベルを説明するための図である。ここでは、信号品質としてSNR(signal to noise ratio)を採用している。SNRの良悪に応じて、図2(a)及び(b)及び図3(a)及び(b)に示すように、アイ開口あるいは信号レベルのヒストグラムは変化する。信号品質モニタ部108は、アイ開口あるいは信号レベルのヒストグラムなどをモニタし、レベル分布の粗密情報や勾配情報を求め、AD変換器102の識別レベルを決定する。
【0031】
図2は、(a)SNRが比較的高い場合のアイパターン、(b)その信号レベルのヒストグラム、(c)伝達特性が線形となるように決定された関連するAD変換器の識別レベル、及び(d)(a)のアイパターン又は(b)のヒストグラムをモニタした結果に基づいて決定されたAD変換器102の識別レベル、を示している。
【0032】
一方、図3は、(a)SNRが比較的低い場合のアイパターン、(b)その信号レベルのヒストグラム、(c)伝達特性が線形となるように決定された関連するAD変換器の識別レベル、及び(d)(a)のアイパターン又は(b)のヒストグラムをモニタした結果に基づいて決定されたAD変換器102の識別レベル、を示している。
【0033】
図2(b),(d)図3(b)及び(d)から理解されるように、信号レベル分布の粗密に応じてAD変換器102の識別レベルの間隔も不等間隔になる。図2(d)又は図3(d)に示すように決定された識別レベルは、識別レベル制御信号によりAD変換器102に伝えられる。また、伝達関数補正制御信号に反映される。
【0034】
このように本実施の形態に係るデジタル受信機100では、受信状態に応じてAD変換器102の識別レベルが最適となるように調整することにより、その実効的な分解能を向上させることができる。その結果、低光SNR時、高分散付加時、多値変調時などにおいて、波形歪補償回路107での波形歪補償に必要なAD変換器102の物理的な分解能が不足しても、デジタル受信器100の受信精度の劣化を防ぐことができる。
【0035】
信号品質モニタ部108による信号品質のモニタを、常時あるいは周期的に行うことにより、伝送路の伝送品質の変動に対応して、AD変換器102の識別レベルをアダプティブに調整することができ、常に好適な受信状態になるようフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0036】
なお、本実施の形態に係るデジタル受信器100では、信号品質モニタ部108によるモニタポイントを波形歪補償回路107の前後としたが、モニタポイントは必ずしも波形歪補償回路107の前後である必要はなく、信号の種類、フィードフォーワード、フィードバックの制御方法の種類に応じて、任意の場所とすることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るデジタル受信機について説明する。
【0038】
図4は、本実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。ここで、図1のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
図4のデジタル受信機300は、DP(Dual-polarization、偏波多重)−QPSK信号を入力信号とするものである。入力信号は、分散媒質である光伝送路301を介して、デジタル受信機300に与えられる。
【0040】
図示のように、デジタル受信機300は、局部発振光源302、一対の偏波ビームスプリッタ(PBS:polarization beam splitter)303−1及び303−2、一対の90°ハイブリッド304−1及び304−2、局発光位相モニタ305、及び局発光位相調整部306を有している。
【0041】
また、デジタル受信機300は、4つの信号チャネルに対応する4つの光電変換器101−1〜101−4と、4つのアナログ−デジタル変換器102−1〜102−4と、4つの伝達関数補正回路106−1〜106−4を有している。
【0042】
更に、デジタル受信機300の信号品質モニタ部108は、レベル分布/勾配推定部307と波形モニタ部308を有している。
【0043】
次に、本実施の形態に係るデジタル受信器300の動作について説明する。
【0044】
図示しない光送信機から送信されたDP−QPSK光信号は、光伝送路301を介してデジタル受信機300に入力される。光伝送路301は、例えば、光ファイバであって、光信号に波長分散を生じさせる。つまり、デジタル受信機300に入力されるDP−QPSK光信号は、光伝送路301における波長分散により波形歪が生じている。
【0045】
デジタル受信機300に入力されたDP−QPSK光信号は、PBS303−1により2つの偏光成分に分岐され、90°ハイブリッド304−1及び304−2に供給される。
【0046】
また、局部発振光源302からの局発光は、PBS303−2により2分岐され、90°ハイブリッド304−1及び304−2に供給される。
【0047】
90°ハイブリッド304−1及び304−2は、PBS303−1及び303−2からの信号をそれぞれ分岐・合成し、各々2つのチャネル、合計4つのチャネルに対応する光信号Ix,Qx,Iy,Qyを復調する。復調された4つの光信号Ix,Qx,Iy,Qyは、光電変換器101−1〜101―4にそれぞれ入力される。
【0048】
光電変換器101−1〜101―4は、入力された光信号Ix,Qx,Iy,Qyをそれぞれアナログ電気信号に変換し、変換したアナログ電気信号をAD変換器102−1〜102−4へ出力する。
【0049】
AD変換器102−1〜102−4は、それぞれ入力されたアナログ電気信号を、デジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を伝達関数補正回路106−1〜106−4へ出力する。
【0050】
伝達関数補正回路106−1〜106−4は、第1の実施の形態と同様に、AD変換器102−1〜102−4の伝達特性を補正するように、入力されたデジタル信号を信号処理する。
【0051】
その後、各チャネルのデジタル信号は、波形歪補償回路107に入力される。波形歪補償回路107は、クロック抽出、リタイミング、波長分散補償、偏波トラッキング、及び局発光位相推定などのデジタル信号処理を施して処理された信号を外部へ出力する。なお、波形歪補償回路107におけるデジタル信号処理は、例えば、非特許文献1に詳しく記載されている。
【0052】
波形歪補償回路107にて行われた局発光位相推定の結果は、局発光位相モニタ305によりモニタされ、モニタ結果が局発光位相調整部306に与えられる。局発光位相調整部306は、局発光位相モニタ305からのモニタ結果に基づいて、局発光の位相(発振周波数)を適切に保つように、局部発振光源302を制御する。局発光位相調整部306は、局部発振光源302に用いられる半導体レーザ(LD)の駆動電流や温度制御を行うことにより、局発光の位相を制御する。
【0053】
本実施の形態に係るデジタル受信器300は、信号品質モニタ部108に波形モニタ部308を有している。波形モニタ部308は、例えば排他的論理和(XOR)を用いた波形モニタ回路と、レベル別カウンタ(積算器)を用いたヒストグラムモニタ回路により実現できる。
【0054】
図5(a)は、光伝送路301(波長分散10000psec/nm)を通り、デジタル受信機300に入力される光入力信号の波形の一例を示す図である。波形モニタ部308は、このような信号波形をモニタ(観測)し、モニタ結果を出力する。
【0055】
レベル分布/勾配推定部307は、波形モニタ部308からのモニタ結果に基づいて、図5(b)に示すような受信レベルのヒストグラム分布f(x)を求める。あるいは、f(x)の勾配の絶対値g(x)=|df(x)/dx|を求める。ヒストグラム分布f(x)又はその勾配の絶対値g(x)は、各チャンネル毎に求められる。
【0056】
レベル分布/勾配推定部307は、求めたf(x)又はg(x)を識別レベル調整回路104へ供給する。識別レベル調整回路104は、図5(c)に示すように、識別レベル間隔がf(x)又はg(x)に反比例するよう、AD変換器102−1〜102−4の識別レベルを調整する識別レベル制御信号をチャネル毎に生成する。
【0057】
レベル分布/勾配推定部307は、更に、求めたf(x)又はg(x)に基づいて伝達関数補正制御信号を生成し、伝達関数補正回路106−1〜106―4へ出力する。伝達関数補正回路106−1〜106―4は、AD変換器102−1〜102―4で生じた理想的な線形の伝達特性からのずれに対して逆特性を持つ伝達特性を実現する。即ち、AD変換器102−1〜102−4と伝達関数補正回路106−1〜106―4との組み合わせにより、線形な伝達特性が得られる。
【0058】
なお、f(x)あるいはg(x)のどちらを識別レベル調整に用いるかは、入力信号の特性などに基づいて任意に選択することができる。また、f(x)とg(x)を組み合わせてもよい。この場合、重み付け加算又は乗算などの組み合わせ方法を採用することができる。いずれにしても、入力信号の状態に合わせた最適な方式を選ぶことが可能である。
【0059】
ところで、局部発振光源302と送信機側の光源との間に光周波数の(比較的大きな)ずれがあると、デジタル受信機で受信された受信信号(入力信号)のコンステレーションは、例えば、図6Aに示すように時間とともに回転する。このとき、入力信号のレベル分布は、図5(b)に示したような正規分布状の分布とはならずに、信号レベルが濃淡なく各レベルに一様に分布する可能性がある。その結果、デジタル受信機300は、正常に受信信号を処理することができなくなる。
【0060】
本実施の形態では、局発光位相モニタ305により局発光の位相をモニタし、局発光位相調整部306により局部発振光源302の位相(周波数)をトラッキングし安定させる。これにより、受信信号のコンステレーションは、図6Bに示すように回転しなくなる。その結果、入力信号のレベル分布にも濃淡が表れ、デジタル受信機300は、正常に受信信号を処理することができる。
【0061】
また、光入力信号の偏波ゆらぎなどによっても、信号レベル分布に上述した様な一様分布が生じる可能性がある。しかしながら、この場合も偏波モニタを設け、偏波トラッキングなどを行うなどして、本来の濃淡のある信号レベル分布を作り出すようにすればよい。
【0062】
なお、本実施の形態では、デジタル信号処理部103に、レベル分布/勾配推定部307と波形モニタ部308を実装する例について説明したが、その回路構成は任意に設計、変更可能である。例えば、デジタル信号処理部103において実現したい機能を、機能毎に、FPGA(field programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)などを用いて個別に回路実装し実現してもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、波形モニタ部308として、排他的論理和(XOR)を用いた波形モニタ回路と、レベル別カウンタ(積算器)を用いたヒストグラムモニタ回路を用いる例を示したが、波形モニタ部308としてオシロスコープを用いることもできる。この場合、レベル分布/勾配推定部307としてPC(パーソナルコンピュータ)等を用いることができる。
【0064】
更に、本実施の形態では、光入力信号が伝送路の波長分散による波形歪を有する場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、偏波分散、マルチモード分散などに起因する波形歪に対しても適用することが可能である。
【0065】
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るデジタル受信機について説明する。図7において、図4と同一のものには同一符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
図7に示すデジタル受信機600の信号品質モニタ部108は、レベル分布/勾配推定部601、波形等化誤差モニタ602、BER(Bit Error Rate)モニタ603を有している。
【0067】
レベル分布/勾配推定部601は、図4の波形モニタ部308とレベル分布/勾配推定部307とを兼ねる。
【0068】
波形等化誤差モニタ602は波形歪補償回路107から出力される出力信号の波形と理想波形との誤差、即ち波形等化誤差をモニタする。また、BERモニタ603は、出力信号のビット誤り率をモニタする。これら波形等化誤差モニタ602及びBERモニタ603は、ともに信号品質モニタとして動作する。
【0069】
レベル分布/勾配推定部601は、第2の実施の形態と同様に、ヒストグラム分布f(x)、あるいは、f(x)の勾配の絶対値g(x)を求める。そして、求めた、f(x)又はg(x)を、波形等化誤差モニタ602及びBERモニタ603のモニタ結果に基づいて補正し、補正したf(x)又はg(x)を識別レベル調整回路104へ出力する。また、レベル分布/勾配推定部601は、補正したf(x)又はg(x)に基づき、伝達関数補正制御信号を生成して伝達関数補正回路106−1〜106−4へ出力する。
【0070】
本実施の形態では、波形モニタの結果のみならず、波形等化誤差及びビット誤り率のモニタ結果に基づいて、AD変換器102−1〜102−4の識別レベルを制御するようにしたことで、より適切な制御を行うことできる。
【0071】
なお、本実施の形態では、波形等化誤差及びビット誤り率をモニタしているので、伝達関数補正回路106−1〜106−4の制御は、線形の伝達特性が実現されるようにではなく、波形等化誤差あるいはビット誤り率が減少するように行うことできる。これにより、高い精度で復号を行えるデジタル受信機を構成することができる。
【0072】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機について説明する。
【0073】
図8は、本実施の形態に係るデジタル受信機の概略構成を示すブロック図である。ここで、図1のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
図8のデジタル受信機700は、図1のデジタル受信機で用いられている信号品質モニタ部108が取り除かれ、伝達関数補正制御信号を生成する伝達関数補正制御信号生成回路701を備えている。この伝達関数補正制御信号生成回路701が、伝達関数情報生成手段として機能する。
【0075】
以上のように構成された本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機では、あらかじめ設定された設定値に基づき、識別レベル調整回路104は、AD変換器102の識別レベルが最適となるように調整する識別レベル制御信号を生成する。また、伝達関数補正制御信号生成回路701は、同設定値と連動して伝達関数補正制御信号を生成する。制御識別レベルを決定する設定値に基づいて伝達関数補正制御信号を生成するようにしたため、信号品質モニタなどの複雑な手段を用いなくても、より簡便に好適なデジタル受信機を構成することが可能である。
【0076】
ここで、識別レベル調整回路104が生成する識別レベル制御信号は、AD変換器102の識別レベル調整端子に接続されている。AD変換器102としてはフラッシュ型やSAR(逐次比較レジスタ)型など一般的な方式のAD変換器を用いることが可能である。例えばフラッシュ型のAD変換器の場合は、AD変換を行うコンパレータの比較電圧を設定する抵抗値の切り替えを、識別レベル制御信号により制御することが可能である。また、パイプライン型やSAR型のAD変換器の場合であれば、入力信号と振幅比較を行うDAC(デジタル−アナログ変換)値のオフセットを識別レベル制御信号により調整し、識別レベルを制御することが可能である。
【0077】
図9は、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第1の変形例を示す図面である。ここで図8のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
図9のデジタル受信機800は、識別レベル調整回路104として識別レベルマッピング回路801、および、伝達関数補正制御信号生成回路701として逆特性変換マッピング回路802を備えている。識別レベルマッピング回路801は、図19で示したような等間隔な識別レベルが配置される線形な識別レベルマッピングとは異なり、不等間隔な識別レベルマッピングを設定することが可能になっている。
【0079】
例えば、図9のデジタル受信機800の入力に、図10(a)に示したような受信波形が入力される場合について、識別レベルマッピング回路801の動作の説明を行う。
【0080】
図10(a)は100GbpsのDP−QPSK光信号に10000ps/nmの波長分散を付加した際の波形を表している。また、図10(b)は図10(a)の波形の振幅分布について、ヒストグラムをグラフにしたものである。図10(b)のヒストグラム(振幅頻度分布)形状は概ねガウス分布をしており、ガウス分布の広がりを示す分散σをパラメータとして分布形状を特徴付けることが可能である。
【0081】
図11は上述したような入力波形のヒストグラムがガウス分布であるとき、AD変換器102の識別レベルを設定する識別レベルマッピングの例を表している。
【0082】
図11において横軸はアナログ入力振幅ain、縦軸はデジタル出力振幅boutであり、AD変換器102の分解能が4bit(図中のn=4)である場合の例を示している。図11ではアナログ入力振幅ainが、ak≦ain<ak+1のとき、デジタル出力boutがbk(図11の例では4bitの2進数でデジタル値を表現している)にマッピングされる例を示している。
【0083】
また、曲線(i)はガウス分布形状をf(x)(x:入力振幅値ain)とするとき、下記の式1で表される値に比例する曲線、直線(ii)は従来の線形な識別レベルマッピングに関わる直線をそれぞれ表している。
【0084】
更に、図12には比較のため直線(ii)による従来の線形な識別レベルマッピングの例を示している。
【0085】
また、図11、図12の図中には、それぞれ入出力波形の例として、アナログ波形(1)とデジタル波形(2)が示されている。換言すると、これらの図は、正弦波であるアナログ波形(1)が当該識別レベルマッピングに基づいてデジタル波形(2)に変換される様子を示している。
【0086】
【数1】
【0087】
上記式1においてσはガウス分布(正規分布)の分散、FS(full-scale)はAD変換器102の最大入力振幅に係わる値をそれぞれ表している。
【0088】
ここで、akの値はakにおける曲線(i)の値f(ak)が、bk−1とbkの間の任意の値になるように値を定めることが可能であるし、デジタル受信機800の出力波形のアイ開口やビット誤り率が最も好適になるようにキャリブレーション、トレーニング、フィードバック制御などすることにより値を定めることも可能である。
【0089】
図13A,13Bはakの値の定め方の例として、bk−1とbkのちょうど中間の値に定めた場合の量子化誤差を表す図である。図13Aは図12の従来の線形な識別レベルマッピングを用いた際の量子化誤差を、図13Bは図11の本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機による識別レベルマッピングを用いた際の量子化誤差を、それぞれ示している。
【0090】
図13Aの量子化誤差は、入力振幅に依らず±1/2LSB(least significant bit=1/2n)の一様な量子化誤差が発生することが分かる。一方、図13Bの量子化誤差は、入力レベルが中央付近(AC結合時には小振幅入力に相当)で量子化誤差が小さく、両端付近(AC結合時には大振幅入力に相当)で量子化誤差が大きくなるよう設定されていることが分かる。
【0091】
したがって、図11の識別レベルマッピングが施されたデジタル受信機に、図10のような振幅頻度分布が概ねガウス分布形状をした入力波形を入力した場合には、最も振幅頻度分布の高い中央付近の入力波形に対して量子化誤差の小さいAD変換が施され、頻度分布の低い両端付近の入力波形に対して量子化誤差の大きいAD変換が施される。その結果、図11の識別レベルマッピングが施されたデジタル受信機では、図12の従来のデジタル受信機による識別レベルマッピングによるAD変換を行った場合よりも、実質的な量子化雑音が小さくなる。
【0092】
図14A、B及びCは、本実施の形態に係るデジタル受信機により量子化雑音が小さくなる様子をより具体的に説明するための図である。図14A及び図14Bは、振幅頻度分布の中央付近が高く、両端付近が低い入力波形を入力したときに、図13A及び図13Bに示す量子化誤差を生じるような識別レベルマッピングによるAD変換を施した際の量子化誤差発生のイメージを説明する図である。
【0093】
図14Aは図12の従来の識別レベルマッピングによりAD変換された際のイメージ図であり、±1/2LSBの間で一様な量子化雑音が発生している様子を示している。一方、図14Bは図11の本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機による識別レベルマッピングによりAD変換を施した際のイメージ図である。図14Bを図14Aと比較すると、図14Bの方が、入力の振幅頻度分布に応じた結果となっている。即ち、図14Bでは、±1/2LSBよりも絶対値の小さい量子化誤差の発生頻度が高く、±1/2LSBより絶対値の大きい量子化誤差が発生する確率が低い。図14Cに、図14Aの量子化雑音(ア)の二乗和と図14Bの量子化雑音(イ)の二乗和の関係を示す。これらのことから、本実施の形態によるデジタル受信機では、量子化誤差の平均パワー(例えば、二乗和平均の平方根)が改善されることが分かる。
【0094】
識別レベルマッピング回路801は、上述した識別レベルマッピングを実現するため、複数の分散σの値にそれぞれ対応させた複数のマッピングテーブルを予め記憶している。そして、識別レベルマッピング回路801は、入力される分散σの値に基づいて最も適切なマッピングテーブルを選択し、選択したマッピングテーブルに関する情報を識別レベル制御信号としてAD変換器102へ供給する。なお、式1に用いられるf(x)は、第2あるいは第3の実施の形態において用いられるレベル分布/勾配推定部307,601を用い、信号レベル分布・勾配推定を行うことにより求めるようにしてもよい。
【0095】
一方、逆変換マッピング回路802は、入力される分散σの値に基づいて、AD変換器102の伝達関数の初期伝達関数からのずれを相殺する伝達特性をもつように、伝達特性補正回路106を制御する。具体的には、図15に示すように、AD変換器102からのデジタル出力信号boutを、式1の逆関数を用いてデジタル信号coutに逆変換マッピングする。この逆変換マッピングにおいては、デジタル信号による離散的なマッピングになるため、最も式1の逆関数値に近いcoutのデジタル値をマッピングすれば良い。すなわち、coutのビット幅mは、boutのビット幅nと必ずしも一致させる必要はなく(一般的には計算精度を落とさないようにするためm≧n)、計算のビット精度と回路規模・消費電力のトレードオフとして決定することが可能である。図15の図中には、伝達特性補正回路106の入出力波形の例としてデジタル波形(2)及び(3)が示されている。デジタル波形(2)は、正弦波をAD変換して得られたものである。逆変換マッピング回路802の制御の下、伝達特性補正回路106は、伝達特性を補正するように、デジタル波形(2)を信号処理し、デジタル波形(3)として出力する。
【0096】
逆変換マッピング回路802は、上述した逆変換マッピングを実現するため、複数の分散σの値にそれぞれ対応させた複数のマッピングテーブルを予め記憶している。これらのマッピングテーブルは、識別レベルマッピング回路801が保持するマッピングテーブルと一対一に対応する。逆特性変換マッピング回路802は、入力される分散σの値に基づいて最も適切なマッピングテーブルを選択し、選択したマッピングテーブルに関する情報を伝達関数補正制御信号として伝達関数補正回路106へ供給する。
【0097】
図16は、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機の第2の変形例を示す図面である。ここで図8のデジタル受信機と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
図16のデジタル受信機1500は、伝達特性調整回路1501、線形AD変換器1502、識別レベル調整回路1503を備えている。伝達特性調整回路1501と線形AD変換器1502は、AD変換回路102を構成する。線形AD変換器1502は、従来のデジタル受信機で用いられる線形AD変換器である。伝達特性調整回路1501としては、例えばリミッティングアンプを用いることができる。伝達特性調整回路1501は、識別レベル調整回路1503で生成される識別レベル調整信号に基づき、入力信号を増幅する際のリミッティングレベル・利得を調整することが可能にする。したがって、伝達特性調整回路1501と線形AD変換器1502の組合せは、前述した図11の曲線(i)に相当する非線形な伝達特性を等価的に生成することが可能である。即ち、伝達特性調整回路1501の後段に配置された線形AD変換器1502で従来の線形なAD変換を行うことで、図11のデジタル出力振幅boutを持つ信号がAD変換器102から出力される。デジタル出力振幅boutを持つ信号は伝達特性補正回路106により伝達特性調整回路1501による非線形特性を打ち消すように信号処理され出力される。その後のデジタル信号処理については、本発明のその他のデジタル受信機と同様であるため説明を省略する。
【0099】
伝達特性調整回路1501としてはリミッティングアンプの他にも対数アンプ等、等価的に識別レベルを調整する種々の回路を用いることが可能である。
【0100】
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態に係るデジタル受信機では、AD変換器102に物理的な分解能よりも、実質的な分解能(ENOB:effective number of bit)を向上させることが可能であり、受信精度が向上する。
【0101】
なお、上述した説明ではAD変換器102が、理想的なAD変換器動作をする場合(熱雑音の影響やキャリブレーション誤差なく、量子化雑音のみ存在)について記述しているが、量子化雑音以外の雑音が存在する場合にも同様な効果が得られることはその動作原理から明らかである。
【0102】
また、図10(a),(b)のDP−QPSK光信号の例に限らず、一般的に、差動受信を行うようなデジタル受信機では、波長分散や光雑音の影響により、振幅分布のヒストグラムは図10(b)のようなガウス分布形状をしており、ガウス分布の広がりを示す分散σをパラメータとして分布形状を特徴付けることが可能である。したがって、あらかじめ測定あるいは推定した波長分散補償値やOSNR(optical signal-to-noise ratio)に応じてσを選択設定することで、マッピングテーブルの切り替えを行うことが可能である。また、アイ開口やビット誤り率などのシステム性能品質が好適になるようσを設定することも可能である。
【0103】
また、OOK(on-off keying)変調信号や、差動受信を行わないデジタル受信機では、入力信号の振幅頻度分布をガウス分布で特徴付けることはできない。例えば、CS−RZ(carrier-suppressed return-to-zero)波形に40000ps/nmの波長分散を付加した波形は、図17(a)のような波形図となり、振幅頻度分布は、図17(b)に示すようになる。しかしながら、このような場合にも、ガウス分布の代わりに図17(b)の頻度分布形状をf(x)として式1を用いて識別レベルマッピングを行うことが可能である。すなわち、一般的には信号振幅に頻度分布差が生じるような振幅頻度分布形状を持つ入力波形であれば、その頻度分布形状をf(x)として、式1を用いて識別レベルマッピングと、逆特性変換マッピングを行うことが可能であり、図14の例と同様にAD変換器102の実質的な分解能を向上させることが可能である。
【0104】
更に、OFDM(orthogonal frequency-division multiplexing)などのPAPR(peak-to-average power ratio)が高い変調方式や、大きな振幅ダイナミックレンジが必要とされる信号に対しては、式1のf(x)として対数(log)関数を用いることで有効な入力振幅範囲を拡大し、受信性能を好適にすることも可能である。
【0105】
また更に、式1による識別レベルマッピングを必ずしも行う必要はなく、システム性能が好適になるような識別レベルマッピング回路801および逆変換マッピング回路802を設定することも可能である。例えば、前述した図2(d)あるいは図3(d)では、上述した式1と等価な識別レベル設定(識別レベル間隔がレベル頻度分布の逆数に比例した識別レベルマッピング)について示しているが、反対に、0/1判定を行う識別レベル付近をより細かくデジタル信号処理する目的のためには、振幅の中央付近(レベル頻度分布が小さい領域)をより密に識別する識別レベルマッピングとすることも可能であるし、あるいは、急峻な信号変化をデジタル信号処理する目的のためには、f(x)勾配がもっとも急峻な領域をより密に識別レベルマッピングすることも可能である。すなわち、識別レベルマッピング回路801および逆変換マッピング回路802は後段のデジタル信号処理方法に応じて常に好適な設定を選択するよう構成することが可能である。
【0106】
以上、本発明についていくつかの実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、入力信号が光信号である場合について説明したが、本発明は、例えば無線信号のように、伝送路における種々の分散(フェージング)などにより波形歪を有する信号を受信する種々の受信機に適用することができる。
【0107】
また、上記実施の形態では、入力信号としてDP−QPSK信号を例示したが、本発明は、ASK(amplitude shift keying)、BPSK(binary PSK)、SP(single polarization)−QPSK、OFDM(Orthogonal Fourier division multiplexing)信号など、種々の変調方式の信号に適用することが可能である。
【0108】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0109】
[付記]
(付記1)
識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された前記識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段と、前記識別レベル制御信号を生成し、前記アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段と、前記識別レベルに依存する前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段と、前記伝達関数に関する情報に基づいて、前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するように前記デジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段と、を備えることを特徴とするデジタル受信機。
【0110】
(付記2)
前記伝達関数情報生成手段は、前記伝達関数補正手段により信号処理されたデジタル信号の品質をモニタしてモニタ結果を生成するとともに、該モニタ結果に基づいて前記伝達関数に関する情報として伝達関数補正制御信号を生成する信号品質モニタ手段であり、前記識別レベル調整手段は、前記モニタ結果に基づいて前記識別レベル制御信号を生成する、ことを特徴とする付記1のデジタル受信機。
【0111】
(付記3)
前記識別レベルを不等間隔に設定することを特徴とする付記1又は2のデジタル受信機。
【0112】
(付記4)
前記アナログ−デジタル変換手段は、信号チャネルに対応する複数のアナログ−デジタル変換器を含み、これら複数のアナログ−デジタル変換器について個別に前記識別レベルの設定を行うことを特徴とする付記1,2又は3のデジタル受信機。
【0113】
(付記5)
前記信号品質モニタ手段は、波形モニタ手段と、信号レベル分布・勾配推定手段とを含むことを特徴とする付記2のデジタル受信器。
【0114】
(付記6)
前記信号品質モニタ手段は、波形等化誤差モニタ手段を含むことを特徴とする付記2のデジタル受信器。
【0115】
(付記7)
前記信号品質モニタ手段は、ビットエラーレートモニタ手段を含むことを特徴とする付記2のデジタル受信器。
【0116】
(付記8)
前記入力アナログ信号は、光入力信号を光電変換したアナログ電気信号であることを特徴とする付記1乃至7のいずれかのデジタル受信器。
【0117】
(付記9)
前記光入力信号は、位相シフトキーイング変調方式により変調されていることを特徴とする付記8のデジタル受信器。
【0118】
(付記10)
前記識別レベル調整手段は、設定値に基づき前記識別レベル制御信号を生成し、 前記伝達関数情報生成手段は、前記設定値に基づき前記伝達関数情報を生成する、ことを特徴とする付記1のデジタル受信機。
【0119】
(付記11)
前記識別レベル制御信号および前記伝達関数情報は、それぞれあらかじめ用意された前記設定値との関係を示すマッピングテーブルに基づき生成されることを特徴とする付記10のデジタル受信機。
【0120】
(付記12)
前記マッピングテーブルは前記入力アナログ信号の振幅レベルの頻度分布に基づいて算出されることを特徴とする付記10又は11のデジタル受信機。
【0121】
(付記13)
前記識別レベル調整手段は、概ねガウス分布に従う信号レベル分布・勾配推定に基づいて入出力レベルがマッピングされることを特徴とする付記10乃至12のいずれかのデジタル受信機。
【0122】
(付記14)
伝達関数補正手段により信号処理されたデジタル信号の波形歪を補償する波形歪補償手段を更に備えることを特徴とする付記1乃至13のいずれかのデジタル受信機。
【0123】
(付記15)
付記1乃至14のいずれかのデジタル受信機を含むことを特徴とする光通信システム。
【0124】
この出願は、2010年3月16日に出願された日本出願特願2010−058686号及び2010年10月15日に出願された日本出願特願2010−225668号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0125】
100 デジタル受信機
101,101−1〜101−4 光電(OE)変換器
102,102−1〜102−4 アナログ−デジタル(AD)変換器(ADC)
103 デジタル信号処理部
104 識別レベル調整回路
105 AD変換器識別クロック
106,106−1〜106−4 伝達関数補正回路
107 波形歪補償回路
108 信号品質モニタ部
300 デジタル受信機
301 光伝送路
302 局部発振光源
303−1,303−2 偏波ビームスプリッタ(PBS)
304−1,304−2 90°ハイブリッド
305 局発光位相モニタ
306 局発光位相調整部
307 レベル分布/勾配推定部
308 波形モニタ部
600 デジタル受信機
601 レベル分布/勾配推定部
602 波形等化誤差モニタ
603 BER(Bit Error Rate)モニタ
700 デジタル受信機
701 伝達関数補正制御信号生成回路
800 デジタル受信機
801 識別レベルマッピング回路
802 逆特性変換マッピング回路
1500 デジタル受信機1500
1501 伝達特性調整回路
1502 線形AD変換器
1503 識別レベル調整回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された前記識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段と、
設定値に基づき前記識別レベル制御信号を生成し、前記アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段と、
前記設定値に基づき前記識別レベルに依存する前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段と、
前記伝達関数に関する情報に基づいて、前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するように前記デジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段と、
を備えることを特徴とするデジタル受信機。
【請求項2】
前記識別レベル制御信号および前記伝達関数情報は、それぞれあらかじめ用意された前記設定値との関係を示すマッピングテーブルに基づき生成されることを特徴とする請求項1に記載のデジタル受信機。
【請求項3】
前記マッピングテーブルは前記入力アナログ信号の振幅レベルの頻度分布に基づいて算出されることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタル受信機。
【請求項4】
前記識別レベル調整手段は、概ねガウス分布に従う信号レベル分布・勾配推定に基づいて入出力レベルがマッピングされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のデジタル受信機。
【請求項5】
伝達関数補正手段により信号処理されたデジタル信号の波形歪を補償する波形歪補償手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のデジタル受信機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載のデジタル受信機を含むことを特徴とする光通信システム。
【請求項1】
識別レベル制御信号に応じて識別レベルを設定し、設定された前記識別レベルに基づいて入力アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換手段と、
設定値に基づき前記識別レベル制御信号を生成し、前記アナログ−デジタル変換手段へ出力する識別レベル調整手段と、
前記設定値に基づき前記識別レベルに依存する前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数に関する情報を生成する伝達関数情報生成手段と、
前記伝達関数に関する情報に基づいて、前記アナログ−デジタル変換手段の伝達関数と予め設定された初期伝達関数とのずれを相殺するように前記デジタル信号を信号処理する伝達関数補正手段と、
を備えることを特徴とするデジタル受信機。
【請求項2】
前記識別レベル制御信号および前記伝達関数情報は、それぞれあらかじめ用意された前記設定値との関係を示すマッピングテーブルに基づき生成されることを特徴とする請求項1に記載のデジタル受信機。
【請求項3】
前記マッピングテーブルは前記入力アナログ信号の振幅レベルの頻度分布に基づいて算出されることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタル受信機。
【請求項4】
前記識別レベル調整手段は、概ねガウス分布に従う信号レベル分布・勾配推定に基づいて入出力レベルがマッピングされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のデジタル受信機。
【請求項5】
伝達関数補正手段により信号処理されたデジタル信号の波形歪を補償する波形歪補償手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のデジタル受信機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載のデジタル受信機を含むことを特徴とする光通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−81227(P2013−81227A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−268370(P2012−268370)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2012−505602(P2012−505602)の分割
【原出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2012−505602(P2012−505602)の分割
【原出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]