説明

デジタル放送受信システム

【課題】従来のデジタル放送受信機では、スクランブル解除の際、各デコーダ装置内のデスクランブラ部でCASカードとの鍵交換のため、デコーダ装置毎にCASカードが必要であった。
【解決手段】デスクランブラ部をデコーダ装置2、3側からチューナ装置1側に移動すると共に、デスクランブラ機能付ストリーム再多重部17、18において、TS分離部41、44で必要な番組を抜き出し、デスクランブル部42、45でそれらの番組に対してスクランブル解除し、TS多重部43、46でスクランブル解除後の番組を多重化することで、番組単位で実施するデスクランブル処理の最適化を図っている。また、2つのデスクランブラ部17、18でスクランブル解除する際に、CAS制御部21を介して1枚のCASカード22を共有することで、1枚のCASカード22で複数のデコーダ装置2、3に対応できる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数チャンネルの放送を同時に受信し、複数番組を同時にデコード処理し、かつ、ネットワークで拡張が可能なデジタル放送受信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送受信システムは、特定の視聴者だけが視聴可能となるように、暗号化(スクランブル)された番組を受信するシステムである。同システムにおいては、配信される番組は番組の情報と視聴可否についての情報が付加されている。この番組についての情報と受信機の制御に関する情報とを合わせて共通情報(以後、ECM)と云う。また受信機内のCASカードに与えられている加入者ごとに固有の番号をベースとした個人契約情報およびECMの暗号を解くための情報とを合わせて個別情報(以後、EMM)と云う。ユーザはECMおよびEMMを用いて、スクランブルされた番組を受信機側でCASカードを用いてスクランブルを解除し、放送を視聴できる。
【0003】
以下、複数チャンネルの放送を同時に受信し、複数番組を同時にデコード処理し、かつ、ネットワークで拡張が可能な従来のデジタル受信システムに関して、図3を用いて説明する。
【0004】
図3は従来のデジタル放送受信システムの構成を示す図である。図3の例は、n=3、m=2のデジタル放送受信システムを示す。ここでnはチューナの数を示す2以上の整数、mはデコーダ装置の数を示す1以上の整数である。具体的にはデジタル放送受信システムは、3つのチューナを内蔵したチューナ装置4と2つのデコーダ装置5、6とから構成されている。
【0005】
図3においてチューナ装置4は、3つのチューナ部11、12、13、3つのデジタル復調部14、15、16、2つのストリーム再多重部23、24、およびストリーム送信部19から構成されている。また、デコーダ装置5は、ストリーム受信部27、デスクランブラ部28、蓄積制御付きストリーム処理部29、AVデコーダ部30および蓄積部31から構成されている。また、デコーダ装置6は、ストリーム受信部32、デスクランブラ部33、ストリーム処理部34およびAVデコーダ部35から構成されている。
【0006】
以上のように構成されたデジタル放送受信システムについて、以下、その動作を説明する。
【0007】
まずチューナ装置4について説明する。チューナ部11、12、13のチャネル選択やストリーム再多重部23、24の複数番組を選択して再多重する制御は、ストリーム送信部19を介して入力した2つの外部のデコーダ装置5、6の要求に従って行われる。チューナ部11、12、13は各々の放送波の帯域に合致したチャンネルを選択する。デジタル復調部14、15、16は各々の放送波に合致した方式でデジタル復調および誤り訂正処理をし、各々の放送波から1本のトランスポートストリームを出力する。
【0008】
ストリーム再多重部23はデコーダ装置5の要求に従って、またストリーム再多重部24はデコーダ装置6の要求に従って、デジタル復調部14、15、16から出力された3本のトランスポートストリームのうち、各デコーダ装置5、6に必要な2つの番組を各々選択して再多重し、再多重した各々のトランスポートストリームをストリーム送信部19に出力する。
【0009】
ストリーム送信部19は、再多重した2本のトランスポートストリームをパケット化し、IEEE1394の有線やIEEE802.11aの無線等の通信方式に従って各々1本のトランスポートストリームを各デコーダ装置5、6に送信する。
【0010】
次にデコーダ装置5について説明する。ストリーム受信部27は受信したトランスポートストリームのパケット化を解いて1本のトランスポートストリームをデスクランブラ部28に出力する。デスクランブラ部28は、トランスポートストリームをスクランブル解除し、蓄積制御付ストリーム処理部29に出力する。蓄積制御付ストリーム処理部29は、スクランブル解除されたトランスポートストリームから必要な2つの番組を圧縮された映像・音声データとして抜き出す。蓄積制御付ストリーム処理部29は、抜き出した1つの番組を蓄積部31に格納しながら、タイムシフトして再度読み出し、AVデコーダ部30に供給する。AVデコーダ部30は映像・音声を複合して外部のテレビ等に出力する。なお、抜き出したもう1つの番組は蓄積部31に格納され、裏録画される。
【0011】
最後にデコーダ装置6について説明する。ストリーム受信部32はパケット化を解いて1本のトランスポートストリームをデスクランブラ部33に出力する。デスクランブラ部33はトランスポートストリームをスクランブル解除し、ストリーム処理部34に出力する。ストリーム処理部34はスクランブル解除されたトランスポートストリームから必要な2つの番組を圧縮された映像・音声データとして抜き出す。AVデコーダ部30は抜き出された2つの番組の映像・音声を複合して、分割2画面、又は、ピクチャインピクチャ画面で外部のテレビに出力する。
【0012】
なお、図3には明記していないが、デコーダ装置5、6のデスクランブル部28、33におけるスクランブル解除は、デスクランブラ部28、33と各々ペアに存在するCAS制御部とCASカードを用いて行われる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−163852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来のデジタル放送受信機では、スクランブル解除するために、デコーダ装置内のCASカードインタフェースに接続されるCASカードと鍵の交換をしなければならない。そのため、1台目のデコーダ装置だけでなく、2台目以降のデコーダ装置であってもCASカードインタフェースやCASカードが必要であり、デコーダ装置の小型化が困難であった。更に、ユーザが1台目で追加契約したCASカードを持っている場合、追加契約した番組を2台目で受信する際に、1台目の追加契約カードを2台目に挿入し直す必要があり、使い勝手も悪いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題を解決するために本発明は、チューナ装置側のストリーム再多重部内にデスクランブラ機能を内蔵し、かつ、複数のストリーム再多重部で1つのCAS制御部と1つのCASカードを共有化する手段を設け、デコーダ装置側のCASカードインタフェースやCASカードが不要にできるように構成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデジタル放送受信システムでは、デコーダ装置側はCASカードレスとなるため、CASカードスロットが不要となり、小型化が可能となる。また、チューナ装置側の1つのCASカードを共有するため、CASカードの抜き差しが不要となり、使い勝手が良くなるという顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の請求項1に記載のデジタル放送受信システムは、
n(nは2以上の整数)個のチューナを内蔵し、異なった帯域の信号を受信、復調し、後述するデコーダ装置により要求された番組のみを生成したn本のストリームから選択して再多重したm(mは1以上の整数)本のストリームに再構成して、前記m本のストリームを送信するチューナ装置と、
前記チューナ装置に対して選択すべき複数の番組を要求し、前記チューナ装置から送信されたm本のストリームのうち、各々1本のストリームを受信し、ストリーム内の複数の番組を同時に映像・音声にデコード処理、又は、蓄積部にレコード処理をするデコーダ装置をm個備えたものであり、n個のチューナを内蔵する1つのチューナ装置からm個のデコーダ装置に対して、各々複数番組を有する1本のストリームを送信し、各々のデコーダ装置にて複数番組を同時処理できるという作用を有する。
【0018】
本発明の請求項2に記載のチューナ装置は、
前記デコーダ装置からの要求に応じて異なった帯域の信号を選択して受信するn個のチューナ部と、
前記n個のチューナ部の出力を信号の変調方式に対応してデジタル復調し、n本のトランスポートストリームとして出力するn個のデジタル復調部と、
前記m個のデコーダ装置毎に1対1で存在し、前記m個のデコーダ装置により要求された番組を前記n個のデジタル復調部から出力されたn本のトランスポートストリーム内から選択し、選択した複数番組をスクランブル解除して各々1本のトランスポートストリームに再多重するm個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部と、
前記m個の前記デスクランブラ機能付ストリーム再多重部でスクランブル解除する際に、スクランブル解除の際に用いる契約情報の鍵データを格納している1個の共通のCASカードにアクセスしてスクランブル解除の制御を行う1個の共通のCAS制御部と、
前記m個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部に1対1で存在する前記m個のデコーダ装置に対して前記m個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部から出力されたm本のトランスポートストリームを送信するストリーム送信部とから構成されるものであり、n個のデジタル復調部で処理したn本のストリームに対し、m個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部にて外部の各々のデコーダ装置からの要求に応じて必要な複数番組を選択後、デスクランブルして再多重し、再多重した各々1本のストリームをストリーム送信部から外部の各デコーダ装置(又は機能)に送信するという作用を有する。
【0019】
本発明の請求項3に記載のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部は、
前記n本のトランスポートストリームを入力し、当該n本のトランスポートストリームから選択されたトランスポートストリームを分離して、ECM/EMMのスクランブル情報を含む要求された複数の番組情報を分離出力するTS分離部と、
前記TS分離部からのECM/EMMのスクランブル情報を含む複数の番組情報を入力し、前記共通のCASカードに格納されている鍵データに基づいて複数の番組をスクランブル解除して出力するデスクランブラ部と、
前記デスクランブラ部から複数のスクランブル解除済の番組情報を入手し、1本のトランスポートストリームに多重して出力するTS多重部とから構成されるものであり、n本のトランスポートストリーム内から選択した複数番組をスクランブル解除して、各々1本のトランスポートストリームに再多重するという作用を有する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態によるデジタル放送受信システムの構成を示している。デジタル放送受信システムは、図3に示す従来のデジタル放送受信システムと同様に、n=3、m=2として構成されている。具体的には、デジタル放送受信システムは3つのチューナを内蔵したチューナ装置1と2つのデコーダ装置2、3とから構成されている。
【0022】
図1においてチューナ装置1は、3つのチューナ部11、12、13、3つのデジタル復調部14、15、16、2つのデスクランブラ機能付ストリーム再多重部17、18、ストリーム送信部19、およびCASカード22と接続されたCAS制御部21から構成されている。これら構成要素のうち、チューナ部11、12、13、デジタル復調部14、15、16、およびストリーム送信部19は従来技術を示す図3と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
また、デコーダ装置2は、ストリーム受信部27、蓄積制御付きストリーム処理部29、AVデコーダ部30および蓄積部31から構成され、デコーダ装置3は、ストリーム受信部32、ストリーム処理部34およびAVデコーダ部35から構成されている。これらデコーダ装置2、3内の構成要素はすべて従来技術を示す図3と同じ構成である。
【0024】
図2は、図1のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部17、18の構成を示している。デスクランブラ機能付ストリーム再多重部17、18は各々、TS分離部41、44、デスクランブラ部42、45、TS多重部43、46から構成されている。なお2つのデスクランブラ部42、45は1つのCAS制御部21と1つのCASカード22を共有する。
【0025】
以上のように構成されたデジタル放送受信システムについて、以下、従来技術と相違するチューナ装置内のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部17、18を中心にその動作を説明する。
【0026】
デスクランブラ機能付ストリーム再多重部17においては、上述したようにn本のトランスポートストリームがデジタル復調部14、15、16から入力される。TS分離部41は入力したn本のトランスポートストリームから、ECM/EMMのスクランブル情報を含む要求された複数の番組情報を分離出力する。デスクランブラ部42は共通のCAS制御部21の制御の下、CASカード22内から抜き出したマスター鍵を用いてスクランブル解除を行う。TS多重部43はデスクランブラ部42から出力されたスクランブル解除済の複数の番組情報を多重化して1本のトランスポートストリームを生成して出力する。
【0027】
デスクランブラ機能付ストリーム再多重部18でも、同様にTS分離部44、デスクランブラ部45、およびTS再多重部46を用い、スクランブル解除済の複数の番組情報が多重化された1本のトランスポートストリームを生成する。デスクランブラ部45で処理する際には、デスクランブラ機能付ストリーム再多重部17と共通のCAS制御部21およびCASカード22を用いてスクランブル解除を実施する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のデジタル放送受信システムは、デコーダ装置側にはCASカードが不要となるため、小型化が可能となる。またチューナ装置側のCASカードを共有するため、使い勝手も良くなるという効果を有し、デジタル放送受信システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態によるデジタル放送受信システムのシステムの構成を示すブロック図
【図2】図1に示したデスクランブラ機能付ストリーム再多重部の構成を示すブロック図
【図3】従来のデジタル放送受信システムの構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0030】
1 チューナ装置
2、3 デコーダ装置
11、12、13 チューナ部
14、15、16 デジタル復調部
17、18 デスクランブラ機能付ストリーム再多重部
19 ストリーム送信部
21 CAS制御部
22 CASカード
27、32 ストリーム受信部
29 蓄積制御付ストリーム処理部
30、35 AVデコーダ部
31 蓄積部
34 ストリーム処理
41、44 TS分離部
42、45 デスクランブル部
43、46 TS多重部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは2以上の整数)個のチューナを内蔵し、異なった帯域の信号を受信、復調し、後述するデコーダ装置により要求された番組のみを生成したn本のストリームから選択して再多重したm(mは1以上の整数)本のストリームに再構成して、前記m本のストリームを送信するチューナ装置と、
前記チューナ装置に対して選択すべき複数の番組を要求し、前記チューナ装置から送信されたm本のストリームのうち、各々1本のストリームを受信し、ストリーム内の複数の番組を同時に映像・音声にデコード処理、又は、蓄積部にレコード処理をするデコーダ装置をm個備えたことを特徴とするデジタル放送受信システム。
【請求項2】
前記チューナ装置は、
前記デコーダ装置からの要求に応じて異なった帯域の信号を選択して受信するn個のチューナ部と、
前記n個のチューナ部の出力を信号の変調方式に対応してデジタル復調し、n本のトランスポートストリームとして出力するn個のデジタル復調部と、
前記m個のデコーダ装置毎に1対1で存在し、前記m個のデコーダ装置により要求された番組を前記n個のデジタル復調部から出力されたn本のトランスポートストリーム内から選択し、選択した複数番組をスクランブル解除して各々1本のトランスポートストリームに再多重するm個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部と、
前記m個の前記デスクランブラ機能付ストリーム再多重部でスクランブル解除する際に、スクランブル解除の際に用いる契約情報の鍵データを格納している1個の共通のCASカードにアクセスしてスクランブル解除の制御を行う1個の共通のCAS制御部と、
前記m個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部に1対1で存在する前記m個のデコーダ装置に対して前記m個のデスクランブラ機能付ストリーム再多重部から出力されたm本のトランスポートストリームを送信するストリーム送信部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信システム。
【請求項3】
前記デスクランブラ機能付ストリーム再多重部は、
前記n本のトランスポートストリームを入力し、当該n本のトランスポートストリームから選択されたトランスポートストリームを分離して、ECM/EMMのスクランブル情報を含む要求された複数の番組情報を分離出力するTS分離部と、
前記TS分離部からのECM/EMMのスクランブル情報を含む複数の番組情報を入力し、前記共通のCASカードに格納されている鍵データに基づいて複数の番組をスクランブル解除して出力するデスクランブラ部と、
前記デスクランブラ部から複数のスクランブル解除済の番組情報を入手し、1本のトランスポートストリームに多重して出力するTS多重部と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のデジタル放送受信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−98970(P2008−98970A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278367(P2006−278367)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】