説明

デジタル画像上での測定の実施法

【課題】デジタル画像上で測定を実施する。
【解決手段】 共通座標系内の第一の画像内の対応する構造上に第二の画像の構造を写像するために、第二画像に幾何学的変換を用いることにより、第一及び第二の画像を共通座標系内で表示する。初期値から出発して、費用関数の評価結果を考慮して幾何学的変換のパラメーターを更新する。測定は共通座標系内で行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル放射線撮影画像上で測定を実施するためのコンピューターに支援された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線学的手法で繰返される問題は、画像を比較するため、又は、マーク(mark)した領域の画像の差を測定し、計算し、視覚化するために2枚の画像を調節することである。典型的な放射線学的検査は放射線画像上での背骨の椎骨の画像又は胃及び血管の画像である。患者の姿勢、屈曲及び伸長のような生体力学的動き、又は、露出の視点により導入された差は2枚の画像の単純な重ね合わせを直接的に行なえなくしている。
以前のフィルムベース(film based)の方式では、2枚のフィルム画像の重ね合わせを、1枚のフィルムを他に重ね合わせ、同時に第二のフィルムを第一のフィルムに対して滑らせて、一連の平行移動をし、対応する解剖学的構造の対象がお互いに幾何学的に合致しているかどうかによって行なわれる。典型的に、この操作は両方の重ね合わせる画像がライトボックス(lightbox)上に表示されているとき、又は、代わりに、ライトインテンシブランプ(light intensive lamp)の前に配置して行なわれる。放射線技師が検査して得られた画像は、両方のフィルムが重なった領域で両方のフィルムに記録された濃度の組合わせであり、1枚だけのシート(sheet)が存在する他の全ての領域での最初のフィルム濃度と等しい。
【0003】
従来のフィルムベースの手法の欠点は、以下のようにまとめられる:
視覚検査によって、相互に対応する構造を正しく合わせることは困難である。
画像を合わせなければならないとき、又は、対象となる一連の構造を合わせるべきときに、そのつど画像の重ね合わせを繰返さなければならない。それゆえ、手操作の手順は疲れやすく、かつ間違いを生じやすい。
重ね合わせたフィルムの組合わせに幾何学的測定(距離、角度)のような追加の操作を効果的に行なうことは困難である。
フィルムベースの重ね合わせは以後の参照を行なうための保存ができない。
1枚のフィルムに記録された種々の構造を互いに見当合わせできない。
【0004】
従来技術の欠点を克服するデジタル画像での測定実施法を提供することが本発明の一側面である。
【0005】
本発明の他の側面は以下の説明で明らかになる。
【0006】
従来、以下の文献が知られている。
【特許文献1】米国特許第5 384 862 A号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第1 349 098 A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第EP 527 525号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第EP 04/076454号明細書
【特許文献5】欧州特許第EP 610 605号明細書
【特許文献6】欧州特許第EP 887 769号明細書
【非特許文献1】BENAMEUR S.,MIGNOTTE M.,PARENT S.,LABELE H. ,SKALLI W.,DE GUISE J.:“3D/2D registration and segmentation of scoliotic vertebrae using statistical models”COMPUTERIZED MEDICAL IMAGING AND GRAPHICS,vol.27,no.5,September 2003(2003−09),−October 2003(2003−10)pages 321−337,XP002322203
【非特許文献2】PENNING L;IRWAN R;OUDKERK M:“Measurement of angular and linear segmental lumbar spine flexion−extension motion by means of image registration”EUROPEAN SPINE JOURNAL, vol.14,no.2,4 November 2004(2004−11−04),pages 163−770,XP002322204
【非特許文献3】BROWN L G: “A SURVEY OF IMAGE REGISTRATION TECHNIQUES”ACM COMPUTING SURVEYS,NEW YORK,NY,US,vol.24,no.4,1 December 1992(1992−12−01),pages325−376,XP000561460 ISSN:0360−0300
【非特許文献4】MAINTZ J B A ET AL:“A SURVEY OF MEDICAL IMAGE REGISTRATION”MEDICAL IMAaE ANALYSIS,OXFORD UNIVERSITY PRESS , OXFORD, GB, vol.2,no.1,1998,pages 1−37,XP001032679 ISSN:1361−8423
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の側面は添付請求項に示された測定を行なう方法により実現される。
【0008】
本発明の方法は以下のステップから成っている。
(1)画像Aのデジタル信号表示を取得すること、
(2)基準画像Bのデジタル信号表示を取得すること、
(3)少なくとも前記デジタル信号表示の画像Aをコンピューターに接続したディスプレー(display)装置に入力し、画像Aを表示すること、
(4)画像Bの幾何学的構造を共通座標系内で画像Aの対応する幾何学的構造の上で写像(mapping)するために、画像Bの形状変換を行なうこと。
(5)変換された画像Bを表示すること、
(6)前記共通座標系内で、画像A及び変換された画像Bを用いて測定を行なうこと。
【0009】
一実施例では、(i)前記幾何学的変換の初期パラメーター(parameter)がセット(set)される。次ぎに(ii)画像Aと共通の座標系内に画像Bを変換するために、セットしたパラメーターを用いた幾何学的変換を画像Bに適用する。次ぎに、(iii)費用関数を評価して、変換した画像Bと画像Aの一致度を示す費用価値を発生する。(iv)幾何学的変換のパラメーターを前記費用価値を考慮して更新する。発生した費用価値が最適となるときとなる前記幾何学的変換の最終パラメーターを得るために、ステ
ップ(ii)から(iv)を繰返す。これらの最終パラメーターを用いた変換を画像Bに適用する。
【0010】
考えられている画像は、例えば、異なる時点でとった同一患者の画像でも、又、異なる姿勢でとった同一患者の画像でも良い。代わりに、その画像は、患者の画像と基準画像であっても良い。種々のタイプの画像を想定しうる。
【0011】
本発明に基づく特定の実施例では、画像は追加的に混合(blended)(「融合(fused)」ともいう)される。請求項1に示した画像の重ね合わせに関連したステップに加えて、混合された画像を発生し、それにより、混合された画像のピクセル(pixel)値は、第一の画像の対応するピクセル値と請求項1に示した変換を適用して得られた変換された画像の対応するピクセル値の組合わせである。
【0012】
本発明の他の側面は、範囲を決定する方法に関していて、それにより、第二の画像の構造の位置が、添付請求項に示された第一の画像の位置と関連して回転される。
【0013】
本発明のさらに別の側面はCobbの角度とFergusonの角度を計算する方法に関する。
【0014】
さらに別の側面は、背骨の画像内で椎骨を特定する方法に関する。
【0015】
本発明の方法の実施例は一般的にコンピューターで実行したとき本発明の方法の各ステップを実行するのに適したコンピューター用プログラム製品の形で実行される。コンピューター用プログラム製品は通常CD−ROMのようなコンピューターが読み込める記憶媒体に記憶される。
代わりに、コンピューター用プログラム製品は電気信号の形をとり、電子通信を通じてユーザー(user)に通信できる。
【0016】
本発明は特に整形外科及び外傷学の分野に適していて、そこでは、頸椎の安定性を医学的画像と幾何学的測定により分析する。脊椎損傷でチェックされるレントゲン撮影の特徴は棘突起間の距離、環椎−軸の関係、後方軸線、前後方向の移動及び角度の移動である。これらの測定は典型的に、背骨の種々の状態(中立、屈曲及び伸長、積極的屈曲及び積極的伸長、過度の屈曲及び過度の伸長)での頸椎の横からの放射線撮影で調査される。
例えば、角度の移動は、過度の屈曲状態での写真上に過度の伸長状態での横からの写真を重ねることにより、両方のX線フィルムで椎体を合わせることにより、各椎骨の高さで測定する。以前のフィルムベースの技術では、過度の屈曲状態のX線フィルムの上に、過度の伸長状態のX線フィルムの端部に平行して線を引く。この技術を各上部椎骨について繰返す。そこで、一連の線の間の角度を測定する。それらは頸椎の角度の移動を示し、予想される脊椎損傷を推定するのに使用される。
【0017】
本発明は特許文献2に開示されている方法にも適当である。特許文献2は、外部図形モデル(model)と内部情報モデルを双方向的に結合したものから成るコンピューター化した測定体系に測定する物体及び項目をグループ(group)化することにより、デジタル的に取得した医学的画像内で測定を行なう方法を開示している。
【0018】
特許文献2に基づく測定活動で、測定体系をコンピューターから検索し、有効にする。その後、有効になった測定体系の案内に基づいて表示された画像上で測定を行なう。
【0019】
このコンピューター化された方法で、多数の幾何学的物体を、他の測定物体及び最終的に(距離及び角度のような)測定項目が根拠とするデジタル画像内に位置決めする。基礎
的幾何学的物体は典型的に、幾何学的測定の根拠となる他の幾何学的物体を定義するキー・ユーザー・ポイント(key user points)である。例えば、2ペア(pair)のキー・ポイントがそれぞれ直線及び解剖学的構造の間の角度を示していて、得られた直線のペア間の角度を計算する。
【0020】
本発明の特定の及び好ましい実施例は以下の図面を参照して以下に説明している。
【実施例1】
【0021】
2枚の画像の画像重ね合わせ(superimposition)(見当合わせ(registration)又は位置合わせ(alignment)ともいう)には、(1)重ね合わせをする画像のデジタル表示を入手する、(2)画像のひとつに幾何学的変換を行なう、(3)相似度を計算する、(4)相似度を最適にするためにサーチ(search)戦略に基づいて、幾何学的変換のパラメーターを調節し、ステップ2から繰返す。これらの見当合わせの主要な4項目のそれぞれを2枚の放射線写真の重ね合わせ(位置合わせ)に関する本発明の手順の中で論じている。このステップは画像の混合(融合ともいう)のステップより先行して行なわれる。
【0022】
(画像情報のタイプ(type)の選択)
後編の中で示す見当合わせの方法は見当合わせに用いられる画像情報のタイプに基づいて主要な2分類に分割できる:強度ベースの方法と特徴ベースの方法である。見当合わせの結果は対象となる全ての位置で、画像がお互いに類似して見えることである。
【0023】
強度ベース法は合わせるプロセス(process)の中でピクセルのグレーバリュー(grey value)を用いる。見当合わせをすべき画像のひとつのピクセルのグレーバリューが他の画像の強度統計値と類似するように修正する。典型的な修正はバイアス(bias)とゲイン(gain)の修正である。そのバイアスは両方の画像の間の全体的な強度又はレベル(level)の差に相当する。ゲインは倍率を適用することにより、強度の数値が異なっている範囲又はウインドウ(window)を修正する。倍率は非線形の関数で、特許文献3に開示されている画像の種々のレベルでの多倍率分解を適用しうる。強度の修正は一般に一覧表の形で行なわれる。
【0024】
強度ベース法の分類に依然として属しているものには、グレーバリュー関数の微分からスタートしている方法がある。放射線写真による骨の構造は高い階調度を特徴としていて、2枚の放射線写真の位置合わせは基本的に骨の構造を見当合わせすることにより達成される。元のピクセルの強度に微分を行なえそうである。即ち、以下の偏微分
【0025】
【数1】

【0026】
及び以下の階調度の大きさのようにそれらを組合わせ、
【0027】
【数2】

【0028】
軟組織のように滑らかに変化する(低周波数の)構造による階調度は階調度の大きさが
小さくなり、合わせ用手段としては役に立たなくなる。
【0029】
特徴ベース法は、特徴検出部と分割手順を適用することにより得られる画像内の目立った目印的特徴を用いる。典型的な特徴には、第一の微分による極大点の選択及び第二の微分によるゼロ交差により得られたエッジ(edge)が含まれる。見当合わせの方法により処理すべきデータ量は、その見当合わせの方法が分割プロセス(process)内の誤差を受けにくくすることを犠牲にすれば、基本的に少なくなる。
【0030】
以後で、本発明の手順で用いられる強度の相似度を詳細に示す。画像B(浮動画像)は画像A(基準画像)に空間的に写像されると想定している。そして、その相似度はオーバーラップ (overlap)領域R内で計算する。一般に、画像Bは抽出した対象領域に限定されるとき、画像Aへのその空間的写像は画像A内に完全に入る。そのオーバーラップ領域の面積は一定で、対象領域(ROI:region of interest)の面積に等しい。ROIは例えばこの例では画像Bと呼んでいる背骨の放射線写真内の特定椎骨になり、基準画像Aの対応する椎骨に見当合わせする必要がある。
【0031】
(対応する構造の選択)
幾何学的変換のパラメーターを初期化するために、対応する解剖学的構造を選択しなければならない。
【0032】
例えば、屈曲状態と伸長状態の画像の2個の対応する椎骨を見当合わせするために、適当な対応する目印的ポイントを、最初の空間的変換を得るために選択しなければならない。両方の椎骨に完全に位置合わせされている正確な空間的平行移動がサーチ戦略により、容認できる幾何学的変換パラメーターの領域内で求められるので、その対応は正確である必要が無い。それゆえ、両方の画像上の対応する目印の付近内で、例えば、椎体内のポイントのペアで、いくつかのペアとなるマウス・クリックにより、対応する構造の選択を有効にしうる。全ての詳細が放射線写真上で等しく見えるようにはなっていないので、ユーザーは最もコントラスト(contrast)が強い特徴例えば椎骨の骨質表面をポイントとして選ぶ。示されている例では、合わせるべき全ての椎骨について選択プロセスを繰返す。
【0033】
一実施例では、目印を選択した後で、対象領域(ROI)を画像のひとつで抽出する。この画像は、基準画像に写像するために幾何学的変換が適用されるので、浮動画像と呼ばれる。ROIは当初幾何学的変換の最初のパラメーターに基づいて基準画像の上に配置されて、対応するROIを決定する。その後、オーバーラップしているROI内の強度が配置の相似度に用いられる。
【0034】
ROIの形状は、合わせるべき診断に用いる構造に輪郭を設ける必要が必ずしも無い。輪郭を設けるには明確な分割を必要とする。正確な見当合わせを可能にするために、構造を十分に囲む長方形又は円形としうる。見当合わせを加速するために、さらにROIの領域から少ないサンプル(sample)抽出を行なえる。
【0035】
選択の手順は手作業の処理としうるが、代わりに自動化処理も可能である。
【0036】
例えば、最初のパラメーターは、対応する目印をお互いの上に位置決めする平行移動及びゼロ回転を形成するパラメーターとしうる。
【0037】
(幾何学的変換)
2画像を位置合わせすることは、基準画像Aの上に浮動画像Bを重ねる前に、その浮動画像Bを幾何学的に変換し及びサンプル再抽出をすることが必要になる。
【0038】
特許文献4に示しているように、適用可能な幾何学的変換のタイプは多様である。
【0039】
非常に適した変換の例は、平行移動と平面内回転から成るユークリッド(Euclidean)相似変換である。この変換は角度と長さを保持した一致関係を維持している。
【0040】
平面投影の放射線写真の画像処理プロセス(process)はX線源から平面検出部への中央(斜視)の投影(central (perspective) projection)としてモデル化しうる。フィルム・ベースの技術で、視点又は患者の姿勢を変えるため、画像は斜視法の投影を受けることができないが、幾何学的変換プロセスは剛体的な身体の動きになるように限定される。
【0041】
しかしながら、本発明に基づく画像の重ね合わせ方法には、斜視法の画像処理モデルの全パラメーターを含んで良く、(ホモグラフィー(homography)と呼ばれる)ホモジニアス(homogeneous)座標でのリニア(linear)3x3変換により制御される。それゆえ、追加的に、画像処理用幾何学の以下の要素を考慮しうる。
【0042】
−ひとつの画像の他に対する倍率、放射線写真が同じ患者であるが異なる時点で取得した投影画像であるとき、その画像は、放射線源−検出部の方向(投影面に垂直)内の患者の動きにより僅かに倍率の差を生じることがある。この第四のパラメーターがユークリッド相似変換で自由度を1だけ追加する。
【0043】
−視点の差による斜視法のひずみ:三次元の患者の姿勢に対するX線ビームの入射の立体角も患者の動きにより変化することがある。8個のパラメーターがこの画像処理モデルの幾何学を説明しているプロジェクティブ(projective)変換を決定する。即ち、2個のパラメーターは平行移動のため、1個は回転のため、1個は全体的倍率パラメーターのためで、2個のパラメーターは剪断作用(ゆがみ)に対応し、2個のパラメーターが斜視法のひずみに対応している。X線源−検出部の距離が大きな場合、斜視法の画像処理モデルを正投影(orthographic)モデルにより近似しうる。このモデルはアフィン(affine)変換のひずみのパラメーターを含むが、全面的プロジェクティブ変換の斜視法のパラメーターを含まない。平面投影の放射線写真の画像処理プロセスに物理的基盤を置いているけれども、フィルムベースの重ね合わせを用いて、そのように全体的線形変換を画像のひとつに適用して、他と位置合わせをするのが不可能なことは明らかである。
【0044】
−両方の画像間の非剛体的変形も、軟組織内に目印が埋め込まれ、、その位置が幾何学的に非線形に変化したときの幾何学的差を説明するために、又は、多数の局部的変形の合成から全体的画像変形を示すためにモデル化できる。
【0045】
ポイントの対応から線形(ユークリッド、アフィン、プロジェクティブ)及び(非剛体的な身体の変換を示す)非線形の位置決め計算することは、前記特許文献4に示されている。これらの変換に関連する内容は参考用として本出願に組込まれている。
【0046】
幾何学的変換の最初のパラメーターの選択から生じる変動性を低減するために、以下に説明するように、多解像度のサーチ戦略を用いて、サーチ領域の局部的な極値を処理できる。
【0047】
(内挿及びサンプル再抽出)
幾何学的変換を適用することは、既存のサンプル・ポイント間の内挿を必要とする。なぜなら、幾何学的変換の多くのパラメーター集合についてサーチ戦略の間に相似度を評価
しなければならないからである。バイリニア(bilinear)内挿のような高速で妥当な精度のアルゴリズムが用いられる。幾何学的変換の最適パラメーター集合が得られた時点で、シンク(sinc)近似に基づくより正確な内挿に切換えて、最終的画像品質を最高に維持する。
【0048】
(幾何学的変換の最初のパラメーターの計算)
最初の幾何学的変換の計算は同様の解剖学的対象を代表する物体間の対応を用いて効果的に行なう。これらの物体は典型的に位置決めが容易で、個数が少ないものである。
【0049】
容易に位置決めできる構造はコーナー(corner)、領域の中点、骨の端部にある接続位置のような解剖学的にポイントとなる目印である。ひとつの解剖学的目印が一致すれば、剛体的な身体の変換について最初の平行移動成分を計算できる。その場合、回転成分は決定されないで、典型的には、画像A及びBの位置合わせをした座標軸に関連した角度としてセットされる。
【0050】
ユーザーは独自の目印となるポイントを正確には示せないので、これらのポイントは最初の変換を行なうための手段としてのみ役立つ。自動的位置合わせの間に、これらのポイントは一般的にお互いから僅かに異なっていて、位置合わせされた画像内で正確に一致しない。
【0051】
(強度ベースの相似度測定)
浮動画像B内で、ROIが、ユーザーが定義した解剖学的目印の周囲で選ばれる。このROIは長方形又は円形としうる。円形の場合、ユーザーが定義したポイントから一定距離内で全てのポイントを選択しうるという利点がある。このROIは幾何学的変換の最初のパラメーターを用いて基準画像A内に写像される。そして、画像Aのピクセルとのピクセルとしての類似度が後で示す類似度測定に基づいて計算される。サーチ戦略に基づいて、幾何学的パラメーターを更新する。そして、それに基づいて変換された画像BのROIが再び画像Aと、最良の合致が発見されるまで比較される。後で、2画像の測光的内容を比較するのに適用できる種々の相似度測定を示し、かつ、バイアス及びゲインのような空間的誤配置に帰因しない画像間の差異を扱える能力について順序を付けている。
【0052】
(平均自乗偏差)
相似度の概念を反映する基本的見当合わせの公式はオーバーラップ領域 (x,y)∈R 内の画像Aと画像Bの間の差の平方の和である。その測定値を最小にしなければならない。
【0053】
【数3】

【0054】
差の平方の和は絶対差の和により置換えても良い。即ち、
【0055】
【数4】

【0056】
Nはオーバーラップ領域のピクセルの数である。一般にその量は位置合わせ手順の間に
変化する。
【0057】
画像Bが幾何学的に変換され、全ての場所で画像Aと位置合わせされたとき、対応する強度の間の差が最小になる。そしてその最小自乗法の値Dがゼロになる傾向がある。Aの全ての値が最大になり、Bの全ての対応値が最小値になる(一般化の損失が無ければ、0であると想定される)とき、差が最大になる。それゆえ、測定値Dは以下のように正規化しうる。
【0058】
【数5】

【0059】
画像Bが画像Aの範囲よりもずっと小さい寸法の対象領域(ROI)であり、画像Aの空間的領域内に全ての場所が含まれるとき、そのエネルギー、
【0060】
【数6】

【0061】
が、さらに一定であると見なせる。それゆえ、画像Aの局部的エネルギーにより除したときに、その測定値Dが正規化できて、値0<D<1の値になる。
【0062】
【数7】

【0063】
しかしながら、以前に述べたように、全体的な強度の移動に対応するため、(等しいレベルとウインドウに対応した)等しいオフセット(offset)とゲインを有するように、好ましくは、画像を放射線測定的に修正すべきである。特に、最小自乗計算は画像間のバイアスと倍率を扱わない。加算及び乗算のための定数を得るための種々の方法を以後に示す。ひとつの方法は、見当合わせ前に画像のウインドウ及びレベルを修正することである。2点修正法を画像のヒストグラム(histogram)に基づいて使用できる。一方をゼロ・ポイントに固定し(オフセット)、かつ、(ゲインを計算するために)他方を一般に飽和値の50%に固定する。他の方法は最適化戦略を考慮してオフセットと倍率のパラメーターを明示的に用いることである。倍率を乗じた最小自乗法の値は以下のようになる。
【0064】
【数8】

【0065】
最後になるが、相似度の測定値を用いて加算及び乗算のための定数を直接得られる。これらの測定は後で示されている。
【0066】
(正規化した相互相関)
測定値D、D’、D”をその二次項に拡張できる。(一定のROIに対応した)浮動画像のエネルギーが一定である。変化するオーバーラップ領域内の基準画像のエネルギーがほぼ一定と見なされる。そこで、画像A及び画像Bに対応した二次項は、測定値D又はD’の最小化に影響しないので、相似度の測定値が得られ、それは、画像A及びBの積又は相互相関による。その測定値を最大にしなければならない。
【0067】
【数9】

【0068】
画像が同じであれば、正規化した相互相関は1に等しくなる。差の平方の和の測定値について、この測定値は画像強度の差を明確に補償していない。そして、可変倍率のパラメーターをモデル内に公式的に含めない場合、全体的倍率を除いて同一の画像は費用関数で最適にはならない可能性がある。さらに、基準画像と関連して変化するオーバーラップ領域と関連した画像のエネルギーが位置により変化する場合、相互相関に基づく位置合わせができないことがある。例えば、画像内の特徴と正確に位置合わせしている領域の間の相関係数はその特徴と明るい点の間の相関係数より低くなるだろう。
【0069】
相関係数の測定値Cの計算は画像のフーリエ(Fourier)変換の使用により有意に加速しうる。2画像の正規化しない相関係数のフーリエ変換は、一方の画像のフーリエ変換と他方のフーリエ変換の複素共役の積である。フィルムベースの重ね合わせに関連した剛体的な身体の移動はフーリエ領域内にも同等のものがある。平行移動はフーリエ成分内の位相のシフト(shift)を生じるが、振幅を変化させない。回転はフーリエ平面を同じ量だけ回転する。そしてオフセットのシフトは直流成分にのみ影響する。さらに、小さく、ゆっくりと変化する倍率の変化に適応して、低い空間周波数に集中したノイズ(noise)を導入する。平行移動の特性を、位相相関と言われる方法の中で用いて、お互いに対してシフトするだけの画像の位置合わせをする。そのような画像はフーリエの振幅が類似しているが、移動量(dx, dy)に関連した位相差を示す。周波数領域(u
,v)内の相関係数を計算する前に、変換係数を正規化して一致させる。これは以下の表示で与えられる。
【0070】
【数10】

【0071】
この表示の逆フーリエ変換は、cross−power spectrum phaseとも呼ばれ、求められた移動でのピーク(peak)を示す。各成分が単位の振幅を有していて、それゆえ、各周波数成分の位相差が等しく寄与していて、狭い周波数区間に限定されたノイズがある場合、ピークの位置は実質的に変化しない。そこで、このフーリエ法は相関計算によるノイズ、又、周波数依存のノイズに対して優れた堅牢性を達成している。白色雑音が存在し、それが全ての周波数で害になり、ピークを歪ませ、空間的相関係数の測定値Cを最大にすることが最適になる。誤配置が回転成分も含んでいるとき、回転角(rotation angle)は角度(angle)として計算しうる。それがcross−power spectrum phaseの逆フーリエ変換を衝撃(impulse)に近いものにする。そして、平行移動はその後にその衝撃の空間的移動として扱われる。
【0072】
(正規化した共分散)
相互相関に関連していて、オフセット差(画像間バイアス)に対応し、−1・・・1の絶対目盛の範囲で相関係数を求めている測定値は正規化した共分散の測定値である。
【0073】
【数11】

【0074】
グレーバリューのペアに観察された共分散が予想共分散と同じ高さであるとき、その共分散の値は1であり、2変数(グレーバリュー)が完全に合致した状態を示している。−1の値は完全に負の共変動であり、1変数の最高の正の値が他方の最高の負の値とペアになっている。それゆえ、正規化した共分散の測定値が画像Aと画像Bのオーバーラップ領域内のグレーバリュー間の一次従属の対称的測定値である。即ち、画像Aのグレーバリューiと画像Bのグレーバリューjを組合わせた同時発生マトリックス(matrix)内の入力が直線上にある。
【0075】
なまの強度のピクセル値の相互相関を計算する代わりに、強度A’及びB’の階調度に適用してよい。骨構造のエッジは高階調度と豊富な空間的位置情報を特徴としている。それゆえ、それらは、両方の画像を位置合わせしたとき、相関性の相似度に有意に寄与する。軟組織は画像撮影を2回行なう間に画像の様相が変化しうるが、その軟組織により生じた低空間周波数を階調度計算によりフィルター除去する。それにより、相関係数の測定値に寄与しないようにする。
【0076】
(比率画像の均一性)
相互相関に関連し、倍率の差に相当している測定値を比率均一性の測定値により計算する。それは、画像A及びBの対応するピクセル値による区分の画像に基づいている。画像A及びBが完全な位置合わせされているとき、得られた比率画像は一定画像になる。各グレーレベルを他の画像内の同じグレーレベルに正確に写像することを意味する。そこで、比率相似度が比率画像の標準偏差の尺度になる。そして、それを平均比率で除して、乗算のための定数を得る。
【0077】
【数12】

【0078】
(区分された強度の均一性)
その測定値は比率画像の均一性と関連していて、以下の根拠に基づいている。ノイズ及び軟組織構造により、画像A内で一定の強度iを有する全てのピクセルが見当合わせされた画像B内の1セットのクラスター(cluster)にまとめた強度に写像されている。A及びBの強度の間に関数依存性があるとき、画像Aの等値セットiごとに1クラスターあるだけである。明らかに、画像が完全に位置合わせされているとき、各クラスターの分散又は標準偏差が最小になる。乗算のための定数はクラスターの平均により和の中の各項を除することにより得られる。この測定値は相互相関よりも一般的である。なぜなら、強度の依存性はある種の関数により表示できるという仮定をしているだけなのである。ROIの画像Bをいくつかの強度の等値セット即ち類似する強度の領域に区分することにより測定値内の空間的整合性が保持される。これらの領域の境界が画像Aの上に置かれる。そして、画像A内の各領域の差異及び平均を計算する。この最小にしなければならない相似度の表示は以下のようである。
【0079】
【数13】

【0080】
Nはオーバーラップ領域R内のピクセル数であり、Niは等強度セットi内のピクセル数、σ及びmは画像A(ROIの画像Bの位置の調査対象となる画像)の対応する集合内の強度の標準偏差及び平均である。相対面積N/Nがこの測定値の中の重み係数になっている。
【0081】
画像Bについて計算したとき、測定値Wは一般に異なる結果を生じる。なぜなら、Bが第二の画像内のROIであり、画像Bのピクセル全体が通常完全に画像Aに重なっていて、その上を継続的に移動し、画像Bの統計値は変化しないからである。それゆえ、浮動画像BがROIのみを含んでいるとき、その測定値は基準画像A内で変化するオーバーラップ領域に基づいて計算しなければならない。
【0082】
デジタル放射線写真は典型的に12ビット・レンジ(bit range)に量子化しているので、等強度セットでは信頼できる統計値を計算するのに個数が少なすぎるかも知
れない。より粗の量子化の枠内に強度をまとめることはこの影響を軽減する。
【0083】
(相関係数の比)
測定値Wに関連する相関係数の比の測定値はオーバーラップ領域の全体的差異を正規化することにより得られる。この全体的正規化が空間的変換に対してその測定値の安定性を高める。それで、相関係数の比が滑らかになり、最適化が容易にある。又、部分サンプルはさらに滑らかにできる。この最小化すべき相似度の表示は
【0084】
【数14】

【0085】
である。以下の式のみを最小化することでは十分ではない。
【0086】
【数15】

【0087】
この項は以下の2理由により低くなる可能性があるからである。第一に基準画像Aが空間的に変換された画像Bにより十分に説明されている。即ち、等強度セットiに対応するクラスターの分散σが低い。又は、画像Aはオーバーラップ領域内に僅かしか情報を含まない。即ち、オーバーラップ領域内の画像Aの分散σは小さい。それゆえ、以下の式を最小にするだけでは、両画像の関係を絶つ傾向がある。
【0088】
【数16】

【0089】
即ち、画像A内のオーバーラップ領域の分散が、空間的に変換した画像Bにより決定されるが、考慮されていない。それゆえ、ROIの画像Bが画像A内の平坦な領域と重なるとき、A内のオーバーラップ領域の分散が小さいので、画像Aの相似度は相関係数の比によりペナルティ(penalty)を課される。
【0090】
比率均一性の測定値と同様に、写像の方向は重要である。即ち、画像A又は画像Bの分散最小化を選ぶことが、異なる結果を生じることがある。事実、ひとつの画像が他と比較して有意に多くの領域を区切ることがある。それで、全ての等強度セットがゼロの関連分散を有する他の画像内の唯一の強度の値に写像される。放射線写真を位置合わせする作業にとって、両方の画像は通常高いダイナミック・レンジ(dynamic range)(典型的に12ビット)を持つ同じモーダリティ(modality)から得られるので、これは通常一般的でない。
【0091】
(共通情報)
相似度基準は、比率基準と比較して依然として一般的である。なぜなら、画像の強度間の関数依存性が共通情報基準により実施されないと仮定している。共通情報はオフセットとゲインとは無関係で、写像のための移動は画像A及び画像Bのグレー・レベル(の集合)の間に設定される。それゆえ、2画像のピクセル強度値の間で直線関係を想定している相関性とは対照的に、共通情報はそうしないで、両画像間の強度値の最も可能性がある同
時発生をサーチする。この測定では、画像の強度間に存在する関係の性質について仮定を行なわない。即ち、直線的又は関数的の相関も仮定せず、予測可能な又は統計的な関係のみを仮定している。それで、例えば最終の見当合わせでは、高い値の強度と低い値の強度が組み合わされる。画像が投影により形成されるので、この機能はX線マッチング(matching)に有用である。それにより、検出部へのX線源の観測方向又は患者の姿勢が画像Aと画像Bの撮影の間に違ったとき、両画像の幾何学的に同等の位置で非線形強度の関係を生じる。再投影は、同じ画像状態及び画像A及びBの間の線形関係を復旧するためには実施できないので、共通情報が投影によるアーチファクト(artifact)を扱うのに適当な相似性モデルである。
【0092】
最大にすべき共通情報または相対エントロピー(entropy)は以下のように定義される。
【0093】
【数17】

【0094】
ここで、p(i)及びp(j)は個々の画像A及びB内の限界確率分布であり、オーバーラップ領域内の強度ヒストグラムから計算される。そして、p(A, B)は連結確率分布で、画像A及びBのそれぞれのオーバーラップ領域内で空間的に対応するグレーバリューi及びjの間の同時発生マトリックスから計算される。限界確率分布はA及びB内の強度に対応する軸に投影された連結確率分布である。幾何学的変換パラメーターが変化すると共にオーバーラップ領域が連続的に変化するので、連結及び限界の分布が見当合わせの間に変化する。エントロピーH(A)及びH(B)が以下のように定義される。
【0095】
【数18】

【0096】
各画像のオーバーラップ領域内に含まれ、かつ、それが寄与している情報を考える。共通情報の測定値の第三項が連結エントロピーH(A,B)である。
【0097】
【数19】

【0098】
この測定値は最小にしなければならないが、画像のエントロピー項無しに用いる場合、信頼できない測定値になる。なぜなら、それには、その画像が見当合わせの位置に近づくと共に、2画像内の大きな領域がその重なりが高まるはずだという暗黙の仮定が含まれる。直接露光及び平行領域のような一定強度の大きな領域が放射線写真内で容易に生じる。そして、連結ヒストグラムの連結エントロピーを低減するために、そのような一定強度の領域の重なりを最大にするように連結エントロピーが求めるだろう。例えば、特許文献5及び特許文献6に開示されているように、分割アルゴリズム(algorithm)を用いて、連結ヒストグラムから直接露光及び平行領域を除くことを用いてそれらの影響を低減する。
【0099】
連結エントロピーよりは良いけれども、共通情報により、この大きな領域への過度の依存性を低減する。しかし、完全には外せない。オーバーラップからの独立性が高い正規化は以下の式になる。
【0100】
【数20】

【0101】
比率の測定値を用いることと共に、信頼できる連結統計値とするために、連結ヒストグラム(同時発生マトリックス)の計算は、段階を少なくして最初の強度を分類し直すことが必要になる。それゆえ、変数i及びjは元の画像強度を示すか、又は、再度量子化した強度の分類を示している。
【0102】
(サーチ戦略)
対応の問題は、相似性の費用関数を最大にするための(又は測定値によっては最小にするための)幾何学的変換(回転、平行移動及び空間的倍率)、強度変換(アルファ、ベータ)のパラメーターpの集合を発見することだと言える。
【0103】
【数21】

【0104】
あるサーチ戦略は容認された変換のクラス(class)から次に行なう幾何学的変換を選択する。そして、画像Bは幾何学的変換をされて、内挿によりサンプルの再抽出が行なわれ、変換された画像B’が得られる。最後に、画像Aと画像B’の間の新しい相似度が計算され、サーチ空間の方向が最適なパラメーターの集合に効果的に向いている場合は改善される。以下の項目の発生のような、本発明の手順で最適化するのに固有の問題に特別な注意を払っている。
【0105】
(サーチ空間の好ましくない局部的極小値)
局部的極小値(又は相似度の意味によっては極大値)に落ち込むことを避けるために特別な手順が用いられる。階調度の低下又はPowellの方向セット法のような標準の計算による最適化では局部的極小値に当たることがある。全体的極小値は、幾何学的変換の最初のパラメーターに基づいて写像されたROIの周囲に依然としてとどまっている写像されたROIに通常は対応している。この最初の写像は基準画像A内の移動ROIの対応点に中心を置いている。それゆえ、幾何学的パラメーターに予想される全ての組合わせを試みる徹底したサーチが行なわれる。そして、全体的最小値と関連する組合わせが回答を決定する。さらに、ずっと少ない計算費用で全体的最小値を発見する代替策はアニーリング(annealing)の模擬である。
【0106】
(サーチ空間内の好ましくない漸近的挙動)
幾何学的変換のパラメーターが対象とするサーチ空間は費用関数の好ましくない漸近的
挙動を防ぐために制限しうる。例えば、大きな平行移動を用いるとき、画像間のオーバーラップが非常に小さくなるが、放射線写真A内で放射線写真BのROIを見当合わせする場合、その可能性は少ない。非常に大きな回転角、大きな倍率、又は、大きなゆがみ及び斜視によるひずみ係数の可能性も少ない。これらの場合、これらの状態に大きな費用を結びつけることにより正しい挙動が得られる。
【0107】
(多段階解像度による最適化)
最適化の体系は階層化又は多段階解像度体系により有意に加速できる。画像A及びBのそれぞれについて粗の解像度版の計算が、例えば(特許文献3に示すように)画像をガウスのピラミッド形分解(Gaussian pyramidal decomposition)で計算し、部分サンプルの抽出によりピクセルの数を低減する粗のレベルを選択することにより行なわれる。パラメーターの最初の推定値は両方の画像間の最初の位置的対応を確定することにより、例えば、2個の対応する構造をユーザーに選択させることにより固定される。画像A及び画像B内の少なくとも一対の対応する点をクリックすることで選択を行なえる。
そこで、最初の変換は特許文献4に示されているように計算される。相似度は、粗の解像度版でパラメーターに初めの推定値を用いて、また、空間的又は放射線測定的変換モデルの各パラメーターに1増分を用いて評価する。1増分のパラメーター修正をした全ての組合わせを試みる。最良の組合わせが選択され、そのアルゴリズムがその相似度を改善できるステップを発見できなくなるまで、繰返される。一定の解像度でアルゴリズムが終了するとき、画像ピラミッドの次ぎに高いレベルの解像度を選択する。以前のレベルで計算された変換パラメーターの集合から出発して、そのサーチ・プロセス(search process)を再開する。解像度を高めると共に、ステップのサイズ(size)を小さくして、部分ピクセルの見当合わせに解答を出す。
【0108】
多段階解像度の技術は、全体的最適値の周りに収束するアルゴリズムの盆地に向ってサーチの最初の段階を案内するために、十分に低周波の情報を、その画像が含むことを求めている。この条件は本発明の範囲内で考えられている医学的画像により満たされている。なぜなら、その画像内容は空間的に変化するバックグラウンド(background)信号に診断細部を重ね合わせたことを特徴としているからである。
【0109】
多段階解像度又は階層化の戦略はサーチ領域内に局部的最適値を生じうると予想されるノイズと散乱及び無関係な画像細部を処理するのに有用である。さらに、粗の目盛で階調度を低減した結果は必ずしも最終解答にならない。なぜなら、粗の目盛での1次、2次及び高次の導関数の測定値は特徴的な点の局部性を除くので、粗のレベルでの最適位置を微細目盛のレベルでその最終位置に向って追跡しなければならないことが知られている。
【0110】
強度ベースの見当合わせのアルゴリズムを加速する代替的方法は、両画像間のオーバーラップ領域でピクセルの部分集合に対する費用関数を計算するだけである。
【0111】
(幾何学的変換の回転成分の抽出)
そのサーチ戦略は最適集合が発見されるまで、幾何学的変換のパラメーターを適合させることを目指している。2路線が変換の回転成分θを得るために考えられる:(a)基本的な幾何学的操作のパラメーター、S、θ、Tを個別に適合させる、加えられる回転(及び他のパラメーター)の値を直ちに制御することを必要とする。(b)全体的変換のパラメーター、a・・・fを直接適合する、回転成分(及び他の成分)を抽出するために分解を必要とする、
以後、その分解はユークリッド形事例に基づいている。なぜなら、それは剛体的な身体の変換を物理的に示しているからである。
【0112】
(ユークリッド形事例)
ユークリッド形写像は等方性倍率の場合に自由度4になり、有限の線分を(異なる長さと方向を有する)有限の線分に写像できる。これらの写像は剛体的な身体の変換とも言われる。剛体的な身体の変換は、最初のものを、平行移動(T,T)に続いて、反時計方向でX軸周りに行なった角度θの回転、その後、元の及び座標x及びyに加えられた倍率係数S,S・・・の合成から成っている:
【0113】
【数22】

【0114】
倍率Tは無次元項a33を有するこの写像内の5変数を4に低減できる。係数Sにより等方性倍率を考慮して、結合したユークリッド形写像を以下のように書ける:
【0115】
【数23】

【0116】
三次元で、剛体的な身体の変換は6自由度を特徴としている(反時計方向で画像の各軸の周りで3個の回転の後で3個の平行移動成分):
【0117】
【数24】

【0118】
マトリックスRはz軸の周りを反時計方向に回転することを示していて、RとRはそれぞれy軸とx軸の周りの回転を示している。回転の角度はいわゆるオイラー(Euler)の角度である。マトリックスTは三次元の平行移動を示している。
【0119】
二次元の事例を参照すると、マトリックスTは4個の未知数のみを有し、以下のように書き直せる:
【0120】
【数25】

【0121】
これで、係数は、平行移動、倍率設定及び回転の構成要素を決定するために、連結した基本的な幾何学的操作の見地から書かれた係数Tに等しい。
【0122】
代数学の法則に基づいて、これらの成分は以下のように決定される:
【0123】
【数26】

【0124】
最後の式はサーチすべき回転成分を示している。
【0125】
同様に、三次元で、剛体的な身体の変換は6自由度を有していて、回転成分、θ,θ,θを検索するために分解しうる。
【0126】
平行移動は以下の式として、三次元的に抽出される:
【0127】
【数27】

【0128】
回転マトリックスRを検査して、回転θをθ=arcsin(R1,3)として抽出できる。もしcos(θ)≠0であれば、θはR2,3及びR3,3から得られる。θはR1,1及びR1,2から得られる。もし、cos(θ)=0(角度θ=±(π/2)でy軸の周りに回転することを意味する)であれば、Rは以下のように低減する:
【0129】
【数28】

【0130】
このマトリックスはR2,1及びR2,2から量θ±θを決定する。この物理的平均θはθから区別できない。なぜなら。y軸の周りにθ=±(π/2)回転した後では、x軸がz軸に位置合わせされているからである。この場合、θをゼロにセットできて、θが得られる。
【0131】
(重ね合わせと混合)
最終的な幾何学的変換を決定した時点で、それを浮動画像Bに適用して、画像Aとのオーバーラップ領域R内の新しい位置でサンプルを計算する。その結果は各ピクセル位置で次の2個の強度を入手できると言うことである:(1)基準画像Aの修正しない強度、(2)画像Bの変換後の強度B、である。このデータ表示は画像Aへの画像Bのデジタル重ね合わせと呼ばれる。なぜなら、両方の画像データが共通座標系の中で表示されるからである。オーバーラップ領域Rの外で、画像Aの元の画像サンプルか、又は、画像Bの変換された画像サンプルが入手できる。元の画像A及びBが同じ寸法になったとき、重ね合わせデータの表示には、画像Aの座標系に変換済み画像Bの全記憶量を収容するために大規模な行と列を配置することが通常必要になる。変換後の画像の鮮明度を最高に維持するためにシンク(sinc)内挿法のような高画質の内挿及びサンプル再抽出のアルゴリズムを用いて、Bを計算できる。
【0132】
画像A及びBを混合するために、混合された画像内の各ピクセルで、画像A及びB内の対応するピクセルの適当な組合わせを採用する。好ましくは、各画像の比率は、混合済みピクセル値が最大強度を超えないようにする。示した実施例で、混合済み画像が、以下のようにオーバーラップ領域R内で計算される。
【0133】
Z(x,y)=mA(x,y)+(1−m)B(x,y)
ここで、mは混合比率(0≦m≦1)である。mは混合結果内での各入力画像の影響を制御する。m=1のとき、画像Aのみが表示される。m=0のとき、Bのみが示される。画像A及びBを等しい範囲と高さにするとき、好ましくは、mは0.5前後に選択される。画像の位置合わせに用いられるROIの強度が、画像A及び画像Bが加算(オフセット、レベル)及び乗算(倍率、ウインドウ)の差が無いときに、一般的に等しくなるので、この選択が行なわれる。ウインドウ/レベルに差が存在する、(そして、これらが上記のように見当合わせの手段に影響しない)とき、画像の混合前に各ヒストグラムの範囲(Amin, Amax)及び(Bmin, Bmax)を用いて最小及び最大の強度の間で目盛を付け直す。
【0134】
(ユーザーインターフェース(user interface))
ユーザーインターフェースは上記の見当合わせ手順の対話と表示を行なうように作られる。それには以下の要素が含まれる。
【0135】
(対応する構造を選択する手段)
対応する構造の選択は幾何学的変換パラメーターを初期化するのに役立つ。例えば、対応する構造を選択する手段はマウス及び関連するマウス・カーソルである。その選択は、同一の解剖学的に目立つ目印をマウス・カーソルで指定することにより行なえる。
【0136】
これらの目印は、椎体の中央付近、椎体のコーナー・ポイント(corner points)、柄状部の中央、又は、processi spinosiの目印となる位置のような点から成っている。
【0137】
一点を選択することにより、平行移動のパラメーターを初期化する。多くの点を選択することにより、多くのパラメーターを初期化できる。
【0138】
例えば、対応する2点(例えば、椎骨の両方の柄状部の中心)を選択することで、最初のユークリッド形相似性変換を完全に定義しうる。対応する3点を選択することで、アフィン(affine)変換の初期化を行なう。対応する4点(例えば、椎体のコーナー・ポイント)を選択することで、プロジェクティブ(projective)変換の初期化をしうる。
【0139】
屈曲状態と伸長状態の頸椎検査で、全ての頸椎のような複数の構造を見当合わせしなければならないとき、現在の頸椎の見当合わせの最終的幾何学的変換用パラメーターは、椎骨間の形状(例えば、椎骨間の距離と相対的回転)に対する通常値のモデルに基づいて次の椎骨のペアを見当合わせするための幾何学的変換用パラメーターの最初の推定値を決定するのに役立つだろう。
【0140】
(混合した画像の表示)
(混合用制御スライダー(slider))
画像A及びBの間のオーバーラップ領域に適用される混合度mをスライダーにより制御して、ユーザーが画像A又はBの可視情報量を連続的に調節できる。この機能は、選択的に画像A又はBに完全に焦点を絞るという利点がある。そのような徐々に混合を行なうことは従来のフィルムベースの技術では不可能なことは明らかである。
【0141】
幾何学的変換パラメーターの手動調節のための手段:
見当合わせの結果が診断の要件を完全に満たさない場合に、自動計算の解答から出発して、ユーザーインターフェースにより幾何学的変換の結果をユーザーが手動で調節しうる。
【0142】
X及びY方向の平行移動は、例えば、矢印キーを用いて、又は、マウスカーソルをドラッグすることにより有効としうる。
【0143】
基準画像に対する浮動画像の回転は、第一に回転の中心を選択し、第二に固定したままの基準画像に対して浮動画像を回転するためのハンドルとして用いる浮動画像内の点を選択することにより、回転モード内で行なわれる。回転角はハンドルの位置と回転中心と画像のX軸の間の角度として継続的に計算しうる。ハンドルの位置はカーソルの平面運動と無関係に円の上に置かれるように制限されている。
【0144】
回転中心とハンドルの位置の間に張られた線分の距離は回転角の値に影響しないので、この半径を用いて、拡大縮小の模擬も行なえる。上下方向の矢印キーを用いることで、ハンドル・カーソルの円形通路の半径を増減する。それにより、倍率の微調節を行なえる。
【0145】
非等方性の拡大縮小には、例えば正方形を用いて、かつ、垂直又は水平の境界をドラッグすることによりその縦横比を変えることによっても模擬できる。ゼロ回転の場合、その境界は画像の座標軸と位置合わせを維持する。回転を加えるために、コーナー・ポイント(corner point)のひとつをハンドルとして使用して、長方形を回転でき、浮動画像は比例した量で回転する。
【0146】
X及びY方向に沿ったゆがみ及び斜視によるひずみは、それぞれ、ゆがみモード及び斜視モードでも模擬できる。これらのモードは表示されたモデルの正方形とは逸脱している。モデルの正方形は、十分なパラメーター解像度を得るために、浮動画像の実質的部分を含んでいる。ゆがみモードではモデルの正方形のコーナー・ポイントがx軸又はy軸に平行に移動しうる。x軸に平行な場合、コーナー・ポイントの移動に比例した量でx軸に沿った浮動画像のゆがみを模擬し、y軸に平行な場合、コーナー・ポイントの移動に比例した量でy軸に沿った浮動画像のゆがみを模擬する。右上のポイントを右にドラッグしたと
き、左上のポイントが同量だけ追随する。それで、正方形に加えられたゆがみが正方形を平行四辺形にゆがめる。(並列エッジ(edge)がペアになって平行に動く)
斜視モードでは、それぞれのコーナー・ポイントが座標軸に平行に動くこともできるが、ゆがみモードとは異なり、並列したポイントが追随しない。それで、関連するエッジのペアが非平行になる。この操作は画像の幾何学的変換の斜視成分に非ゼロ項を導入して、正方形を四辺形に変形する。
【0147】
これらの幾何学的変換の各パラメーターは典型的に小さな修正を必要とするので、適当な変換係数を設定して、(平行移動、回転、倍率、ゆがみ又は斜視の修正の)手操作の動きを効果的に適用したパラメーターに簡素化する。
【0148】
(見当合わせの結果の検証)
ユーザーは対応する椎骨の屈曲状態及び伸長状態の画像の見当合わせを、見当合わせした画像を減算して、そして、別の画像に残っている細部をチェック(check)することによりチェックを行なえる。2個の椎骨が正確に合致したとき、そのオーバーラップ領域内のその合致した画像部分が消える。細部が無くなったことは、上記のように測定値Dにより表示された差の平方の和によって認証できる。代わりに、オーバーラップ領域の分散を計算する。良い位置合わせが達成されたとき、これらの測定値の両方が低くなるはずである。
【0149】
(頸椎検査への適用)
放射線撮影の照射により横から見た伸長状態の頸椎の位置を、横から見た屈曲状態の位置と組合わせて、過度の移動又は不安定性について、頸椎の部分的移動を評価する。外傷後の頸部の痛み、関節炎、脊椎固定術を経験している患者について、これらの機能的観測を用いて普通に検査を行なう。
【0150】
(屈曲状態−伸長状態の最大角度)
頸椎の屈曲状態−伸長状態の最大範囲は見当合わせされた椎体C7を用いて合体した画像について決定する。椎体C1・・C3の後縁に接する直線間で角度を測定する。そして、その通常の範囲と比較する。
【0151】
上記の混合比制御スライダーを用いることは、混合した画像についてこの種の測定を効果的に行なうことには特に利点がある。屈曲状態の画像内にある椎骨の後縁に第一の接線を引くために、スライダーを動かして、第一(屈曲状態)の画像のみを表示するような状態にする。この方法で、そうしなければ、直線構造が基盤にしている第一(屈曲状態)の画像の特別な画像としての特徴を曖昧にしてしまう第二(伸長状態)の画像の構造を無くす。ここで第二(伸長状態)の画像のみを表示する状態にスライダーを動かすことにより、伸長状態の画像内にある椎骨の後縁に対する第二の接線を同様に引く。伸長状態と屈曲状態の両方の画像が見当合わせされているので、第一の画像の基準座標系内に第二の直線を実際に直接引ける。それにより、第一と第二の画像間の角度を計算できて、座標系の手操作による位置合わせをする必要が無くなる。この機能は従来技術であるフィルムの重ね合わせでは明らかに不可能である。
【0152】
(移動ダイアグラム(diagram))
頸椎の屈曲状態と伸長状態の範囲は移動ダイアグラム内の角度として決定される。移動ダイアグラムはいくつかの方法で作成される。
【0153】
一実施例では、屈曲状態(浮動)と伸張状態(基準)の図面内にある第一の椎体C7が選択される。そして、上記の手順に基づいて見当合わせをする。伸長状態の図面と見当合わせをするために屈曲状態(浮動)画像に加えられた角度αを記録する。この角度は基
準画像の座標系に浮動画像の基準線(例えばそのx座標軸)を引くことにより同等に記録される。
【0154】
次ぎに、屈曲状態と伸長状態の図面内で椎体C6が選択されて、見当合わせをされる。浮動画像に適用された角度αが記録される。又は、同等にその基準軸を基準画像の座標系内に引く。
【0155】
これらの第一の2直線の間の角度が椎骨C7及びC6の間の動きの範囲を示していて、C6−C7と示す。
【0156】
この角度は、α−αの角度の差として同等に計算できる。そして、求められる角度は、対応する椎骨の見当合わせをした時点で得られる幾何学的変換マトリックスの回転成分を抽出することにより自動的に生じる部分的移動性を示す。この自動的結果は、従来技術であるフィルムの重ね合わせでは実現できない。
【0157】
第三に、その角度は、見当合わせされた椎骨C7を用いて重ね合わせた又混合した屈曲状態と伸長状態の画像内で椎体C6に対応する接線間の角度としても計算しうる。例えば、背面の接線がこの目的に使用される。他の接線は画像内の可視度により用いられる。重ね合わせにより細部が曖昧になることを避けるために、混合用制御スライダーを用いて、直線を引いている間に、屈曲状態の画像又は伸長状態の画像を選択的に表示する。
【0158】
上記のプロセスは、角度C5−C6、C4−C5、C3−C4、C2−C3を生じるために、椎骨C5、C4、C3、C2を引続き見当合わせをすることにより繰返される。連携して、これらの角度は移動ダイアグラムを構成する。そして、描かれたダイアグラムは正常な頚部の移動の場合に典型的形状を示している。その角度はその正常値と比較することにより疾患又は傷害の存在を評価する。
【0159】
一連の椎骨の見当合わせを次々と迅速に表示する動画シーケンス(sequence)により、頚部の動きのダイナミック・ビュー(dynamic view)を得られる。
【0160】
(前から及び横からの背骨全体の検査への適用)
前から及び横からの観測中に背骨全体の放射線撮影の照射が頻繁に行なわれて、脊柱の曲がりが定量化される。
【0161】
前からの背骨全体の検査では、通常、脊柱の投影は直線である。しかしながら、脊柱側弯症の患者では、脊柱は“S”又は“C”の形で横に曲がったものとして投影される。脊柱側弯症は図3に示すように、一般的に曲がりの位置について示している。主要又は構造的曲がりは、補足的又は非構造的曲がりから区別され、片側又は反対側に曲げる又は骨盤を傾けることによっては有意に変化できないものであり、患者を左右に曲げて、又は、骨盤を傾斜させて追加した放射線撮影から評価される。通常、曲がりの角度はCobb又はFergusonの方法により測定される。
【0162】
Fergusonの方法は以下のステップから成っている。曲がった部分の端部にある椎骨を探す、これらの椎骨は、少なくとも回転していて、かつ、2個所の曲がり部分の間にある曲がった部分の端部に位置している。次ぎに、頂上の椎骨の位置決めを行なう。この椎骨は曲がりのピーク(peak)で最も回転した椎骨である。(椎骨の回転は通常中線に対する柄状部の関係に注目することにより評価される)。これらの3個の椎体のそれぞれで、椎体の輪郭の中心にドット(dot)で印を付ける。最後に、頂上からそれぞれの端部にある椎骨まで直線を引く。脊柱側弯症の曲がりのFerguson角はこれら2直線の間の最小角度である。
【0163】
Cobbの方法は脊柱側弯症を定量化するために通常用いられる方法であり、以下のステップから成っている。第一に、曲がった部分の上下で最も傾斜した椎骨を探す。上下の脊椎の端面の表面を測定すべき曲がりの側に傾ける。第二に、上下の脊椎の端面に接する直線を引く。第三に、これらの接線の間の角度が脊柱側弯症のCobbの角度である。ほぼ平行な接線で生じる小さな角度の場合、交点が画像の外になることがある。その場合、垂線を交叉させる。これらの垂線により形成される角度がその曲がりのCobbの角度と同じである。
【0164】
Ferguson及びCobbの角度は脊椎のフィルムに直線を引くことにより放射線技師が伝統的に行なってきた。Fergusonの方法では、配置すべき基準は適当な椎骨の中点である。Cobbの方法では最も傾いた椎骨に接線を引く。この接線を手操作で決定するとき、直線に接する点のペアが用いられる。しかしながら、得られた直線の幾何学的角度は各点の正確な位置に非常に影響を受ける。なぜなら、これらの点の距離は(画像の寸法に対して)通常非常に小さいからである。さらに、画像の外観に影響するいくつかの画像内アーチファクトの存在がこの作業を不明瞭にして、これらの存在があるとき実質的な誤観測の原因になる。第一に、椎骨の画像構造は(椎骨の中点の特定を困難にする)他の解剖学的内容が重なることにより不明瞭になる。第二に、椎骨の端面の面を検出部の面に斜視投影することにより、椎骨の境界があいまいになる。第三に、肩甲帯のような厚くて減衰性の身体部分が浸透不足を生じる。第四に、背骨全体のステッチング・プロセス(stitching process)に使われた金属網の網線が対象とする椎骨を横切ることがある。最後に、整形外科の器具の存在が解剖学的詳細を局部的に曖昧にすることがある。Cobb又はFergusonに基づく脊柱側彎症の角度を定量化するための新しい方法について、これらの問題を扱い、上記の見当合わせの方法を用いて、ここで紹介している。
【0165】
脊柱側彎症の角度を報告するとき、用いられた方法及び測定のために端部の椎骨を選ぶ方法に言及することは重要である。この後者のデータは特に重要である。なぜなら、一旦選ばれると、追跡検査での曲がりの測定にも同じ位置が用いられるはずである。
【0166】
横からの背骨全体の検査で、一定量の頚部(首)前彎症、胸部(背中の上部)後彎症、腰部(背中の下部)前彎症は通常存在する。この正常配置からの逸脱は異常な後彎症又は前彎症又はより一般的に脊柱側彎症を反映している。
【0167】
これらの用途で、いくつかの付随作業を確認できる:(a)曲がった脊椎部分の始まりと終わりに位置する最も傾斜した椎骨の特定、(b)これらの最も傾斜した椎骨及び残りの椎骨の標識付け(患者の記録に挿入するためと将来の追跡測定でさらに参照するための両方で)、(c)(Ferguson法で用いるための)椎骨の中点の選択、又は、(Cobb法で用いるための)椎体の接線を決定するための最も傾斜した椎骨の端面上の点のペアの選択。前述のように、後者の点のペアは一般にお互いが非常に接近している。それらの一方の僅かなずれが接線の角度、それゆえ、Cobbの角度のために得られた値の大きなずれになる。
【0168】
後の説明で明らかになるように、これらの作業は、以下の計算戦略で示すように、画像の重ね合わせ及び見当合わせの方法を用いることにより同時に解決される。原理は、(示された中点と標識を持つ)モデルの椎骨に、位置、向き、倍率が不明の実際の椎骨を見当合わせすることである。モデルの椎骨は、基準画像から、又は、基準データベースから得られる、又は、以前の椎骨に関連した画像領域の場合もある。見当合わせの後で、見当合わせをしたモデルの中点がFerguson法による椎骨の中点を決定する。幾何学的変換の回転成分がCobb法の見当合わせをしたモデルの角度を決定する。基本的見解は、
見当合わせの方法が最適の見当合わせをするために、椎体に関係する画像領域(幾何学的要素)及びその中に含まれるグレーバリューの情報(強度成分)の全てを用いるということである。それゆえ、見当合わせの結果は、孤立した点及び点の特徴にのみ依存する方法よりも、局部的グレーバリューの変化による影響が少なくなる。さらに、それらは画像の対象となる構造の自動的位置付けと自動的名付けの問題を自動化する。
【0169】
その後で、画像Aは背骨全体の画像で、その上でCobb又はFergusonによる側彎症の角度を測定する。画像Bに対する画像情報を、(a)背骨全体の基準画像には、全ての椎骨に標識を付け、かつ、ゼロ度の向きにした側彎症無しの背骨を含み、又は、小寸法の画像の対象領域(ROI)を含み、そのROIのそれぞれが椎骨の周辺を含んでいる、(b)その追跡の際に必要になる同一患者の背骨全体の以前の画像、又は、(c)次の椎骨のためのモデルになっている以前に位置合わせされた椎骨と同じ画像A、となるように選ぶ。どの場合でも、画像Bは、一連の頸椎、胸椎及び腰椎(C1・・C7、T1・・T12、L1・・L5)の集合体を含むための背骨の解剖学的モデルになっている。
【0170】
(計算戦略)
ステップ1:背骨全体の画像の取得、画像Aと呼ぶ、
ステップ2:画像Aの椎骨Vを例えばその中点により、又は、四隅を指定することにより選択、後者の四隅により形成された四辺形が椎骨を近似的に分割する。これらの幾何学的対象は、その後の位置合わせ及び見当合わせで用いる解剖学的存在即ち椎骨周辺の長方形又は円形の対象領域を初期化するのに使用できる。
【0171】
ステップ3:ステップ2の画像Aの椎骨、即ち、頸椎C1・・C7のひとつ、又は、胸椎T1・・T12のひとつ、又は、腰椎L1・・L5のひとつの解剖学的標識を割当、事前定義された椎骨(例えば、腰椎L1、これは肋骨を付けないため容易に位置決めできる)を選択することにより、ステップ2及び3を結合して1ステップとしうる。
【0172】
ステップ4:画像Bと呼ぶ以前に取得した画像内で対応する椎骨V’を選択する。基準画像、又は、基準椎骨のROIのデータベースを用いる場合、この選択ステップを省略できる。この場合、対応する椎骨について、ステップ3から判明する標識を自動的に探すことができる。このステップは幾何学的変換の最初のパラメーターもセットする。
【0173】
ステップ5:前記の方法に基づいて、画像Aの椎骨V’に画像Bの椎骨V’の見当合わせをする。
【0174】
ステップ6:画像Aとの共通座標系内で画像Bの見当合わせされた椎骨V’の中点Mの実際の位置を検索する、椎骨V’の解剖学的標識を椎骨Vに割当てる、椎骨V’と関連する解剖学的ROI(例えば長方形)の見当合わせに最適な最終位置を椎骨Vに割当てる、椎骨Vに関係するデータ記録内にその項目を保存する。
【0175】
ステップ7:2個の椎骨を見当合わせするのに最終的に用いられた幾何学的変換の回転成分αiを抽出して、椎骨Vに関係するデータ記録内にそれを保存する。
【0176】
ステップ8:高位(低位)の椎骨Vi−1(Vi+1)に向かい上方(又は下方)の移動を行なう。そして、全ての椎体を特定し、標識を付け、その中点と向きを記録するまでステップ4から繰返す。上方又は下方の移動に適用される平行移動は椎骨Vの高さhに関連していて、(1+α)hとして表示できる。それにより、係数αがVの標識と回転に依存する(腰椎は胸椎よりも大きな平行移動を必要とする)。反復数は背骨のモデル内の椎骨の数により決定される。典型的に、椎骨C1・・C7、T1・・T12、L1・・L5の部分集合をカバーする。
【0177】
ステップ9a:一連の椎骨の向きの数列内の屈曲点に位置しているVに対する最も傾斜した椎骨Vを決定する。これら上部及び下部の椎骨の向きα対αを示す。
【0178】
ステップ9b:VとVの間の曲がりのピークで、頂上の椎骨Vを決定する。この頂上の椎骨は一連の中点の列に加えられる幾何学的原理を用いて容易に計算しうる。より特定すれば、頂上の椎骨は曲がった部分の屈曲点を接続する直線から最も逸脱している椎骨として計算しうる。
【0179】
ステップ10:V、V及びVの中点を通る直線を用いてFergusonの角度αFergusonを計算する。
【0180】
ステップ11:最も傾いた椎骨の角度を減算することによりCobbの角度αを計算する。前記角度は共通座標系内で表示され、比較される。即ち、αCobb=α−α
【0181】
横からの図の椎骨に標識を付けるために、同様の標識付けの戦略を横から見た脊柱全体の画像に使用する。同様に、正中面内の脊柱屈曲の適当な椎骨高さの間で、胸部の後彎症と腰部の前彎症の角度を決定するために、椎骨の向きは椎体の全体的配置に基づいている。
【0182】
(三次元画像への拡張)
幾何学的変換の回転成分から頸椎の部分的移動を決定すること、又は、2個の椎骨の間の角度の差を測定することの原理は三次元画像に拡張しうる。両方の用途で、対象間の角度の差は3種の回転成分を有する。即ち、それぞれ、x、y、z軸を回るものである。現在、見当合わせの測定はピクセル値の代わりにボクセル(voxel)値で行なわれる。剛体的な身体の動きの幾何学的変換には座標系のx、y、z方向の3種の平行移動成分とx、y、z軸周りの3種の回転成分が含まれる。サーチ戦略は位置合わせパラメーターの少なくとも6次元パラメーター空間内で機能する。X線投影による放射線写真とは対照的に、三次元画像処理のモーダリティ(modalities)は器官と骨の構造を重ね合わせない。それで、見当合わせプロセスはユークリッド相似変換により効果的にモデル化できる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の一側面を示す。
【図2】位置合わせされていて、かつ、画像A(横から見た屈曲状態の頸椎の放射線写真)に重ね合わせた画像B(横から見た伸長状態の頸椎の放射線写真)を示す。
【図3】前から見た背骨全体の放射線写真内での曲がりの位置で脊柱側弯症を示す。
【図4】前から見た背骨全体の放射線写真内で脊柱側弯症の角度を測定するためのFergusonの方法を示す。
【図5】前から見た背骨全体の放射線写真内で脊柱側弯症の角度を測定するためのCobbの方法を示す。
【図6】本発明に基づくCobbの角度計算を示す。水平基準軸に対する各椎骨Viの角度αiが、モデル椎骨の記録について回転成分を計算することにより決定される。(例えば、同名の椎骨のモデル画像マスク(mask)、同じ患者の以前の画像での同名の椎骨、又は、同じ画像の上方又は下方に位置する椎骨から検索)
【図7】本発明の位置合わせ方法に基づく脊柱側弯症の無い被験者の脊柱の椎骨のラベル付けを示す。各椎骨の角度は、個々の椎骨の端面に接線を引く従来方法と対照的に、幾何学的変換の回転成分として計算する。
【図8】本発明に基づくCobbの角度計算を示す。曲がっている部分の最も傾斜した椎骨間のCobbの角度は26.5度である。Fergusonの角度は表示された椎体の中点の位置を用いて計算する。これらの自動配置された中点が最適の重ね合わせでモデル椎骨に加えられた幾何学的変換の位置決め結果として計算される。
【符号の説明】
【0184】
A 基準画像、画像の強度
B 浮動画像、画像の強度
C 相関係数の測定値
D 最小自乗法の測定値
d 移動量
m 平均
N ピクセル数
R オーバーラップ領域
ROI 対象領域
i、j グレーバリュー
u、v 周波数領域
Vi i番の椎骨
α 角度
θ 回転成分
σ 標準偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル画像内で幾何学的測定を行なう方法で、
(1)画像Aのデジタル信号表示を入手すること、
(2)基準画像Bのデジタル信号表示を入手すること、
(3)コンピューターに接続したディスプレー装置に画像Aの少なくとも前記のデジタル信号表示を加え、及び、画像Aを表示すること、
(4)共通座標系内の画像Aの対応する幾何学的構造の上に少なくとも画像Bの幾何学的構造を写像するために画像Bに幾何学的変換を適用すること、
(5)変換された画像Bを表示すること、
(6)画像Aと変換された画像Bを用いて前記共通座標系内で測定を行なうこと、
のステップを特徴とする方法。
【請求項2】
(i)前記幾何学的変換の最初のパラメーターを設定すること、
(ii)画像Aと共通の座標系に画像Bを変換するため、設定したパラメーターを用いた前記幾何学的変換を前記画像Bに加えること、
(iii)費用関数を評価して、画像Aと変換した画像Bの一致度を示す費用価値を発生すること、
(iv)前記幾何学的変換のパラメーターを前記費用価値を考慮して更新すること、
(v)発生した費用価値が最適となるときの前記幾何学的変換の最終パラメーターを得るために、ステップ(ii)から(iv)を繰返すこと、
を特徴とする請求項1に基づく方法。
【請求項3】
混合した画像を発生し、前記混合した画像の各ピクセル値が変換された画像Bの対応するピクセル値と画像Aの対応するピクセル値の組合わせになることを特徴とする請求項1に基づく方法。
【請求項4】
前記画像Aと前記変換された画像Bのピクセル値の前記組合わせへの寄与が可変であることを特徴とする請求項3に基づく方法。
【請求項5】
最終パラメーターを用いた変換が適用されていることを特徴とする前記請求項のいずれかに基づく方法。
【請求項6】
画像Aの構造の位置を、基準画像内の基準位置に対して回転する程度を決定する方法で、
(1)画像Aのデジタル信号表示を入手すること、
(2)デジタル基準画像Bを入手すること、
(3)コンピューターに接続したディスプレー装置に画像Aの前記のデジタル信号表示を加え、及び、画像Aを表示すること、
(4)表示された画像Aの中で前記構造を選択すること、
(5)少なくとも回転成分を含む幾何学的変換のパラメーターを計算すること、前記幾何学的変換が共通座標系内の画像Aの対応する構造の上に前記基準画像Bからの前記構造を写像すること、
(6)計算されたパラメーターを用いた前記幾何学的変換を画像Bに適用することにより前記画像(複数)の位置合わせをすること、それにより、前記変換の回転成分が前記構造の位置を回転する程度を決定すること、
のステップを特徴とする方法。
【請求項7】
(1)前記幾何学的変換の最初のパラメーターを計算すること、
(2)計算されたパラメーターを用いた前記幾何学的変換を前記画像Bに用いることに
より前記画像(複数)の位置合わせをすること、
(3)一致度を示す費用価値を発生するために費用関数を評価すること、
(4)前記費用価値を考慮して、前記幾何学的変換のパラメーターを更新すること、
(5)最終変換の最終パラメーターを得るために最適費用価値を発見するまでステップ(1)から(4)を繰返すこと。
により前記パラメーターを決定することを特徴とする請求項6に基づく方法。
【請求項8】
画像Aが背骨の画像であり、その中で、前記構造が椎骨であることを特徴とする請求項6又は7に基づく方法。
【請求項9】
−前記背骨の画像の曲がった部分で、前記部分内の一連の椎骨の向きの数列内の屈曲する点で最も傾いた椎骨を決定すること、
−前記曲がった部分で、前記最も傾いた椎骨の間の曲がった部分のピークにある頂上の椎骨を決定すること、
−Fergusonの角度が、頂上の椎骨の中心と第一の前記最も傾いた椎骨の中心を通る第一の直線と頂上の椎骨の中心と第二の前記最も傾いた椎骨の中心を通る第二の直線の間の角度として決定され、前記最も傾いた椎骨が前記曲がった部分内の椎骨の回転角を評価することにより決定され、前記回転角が請求項6又は7の方法に基づいて決定されることを特徴とする背骨の画像内でFergusonの角度を計算する方法。
【請求項10】
−前記背骨の画像の曲がった部分で、前記部分内の一連の椎骨の向きの数列内の屈曲する点で最も傾いた椎骨を決定すること、
−Cobbの角度が、前記決定された椎骨の端面に接する第一及び第二の直線の間の角度として決定され、前記最も傾いた椎骨が前記部分内の椎骨の回転角を評価することにより決定され、前記回転角が請求項6又は7の方法に基づいて決定されること、
を特徴とする背骨の画像内でCobbの角度を計算する方法。
【請求項11】
−前記背骨の画像の曲がった部分で、前記部分内の一連の椎骨の向きの数列内の屈曲する点で最も傾いた椎骨を決定すること、
−Cobbの角度が、前記最も傾いた椎骨の回転角を減算することにより得られる角度として決定され、
前記最も傾いた椎骨は、前記背骨の画像で椎骨の回転角を評価することにより決定され、前記回転角は請求項6又は7の方法に基づいて決定されることを特徴とする、
背骨の画像内でCobbの角度を計算する方法。
【請求項12】
(1)背骨の画像Aのデジタル信号表示を入手すること、
(2)基準画像Bのデジタル信号表示を入手すること、
(3)コンピューターに接続したディスプレー装置に画像Aの前記デジタル信号表示を加え、及び、画像Aを表示すること、
(4)表示された画像A内で椎骨を選択すること、
(5)基準画像B内で対応する椎骨を選択すること、
(6)共通座標系内の画像Aの対応する椎骨の上に少なくとも画像Bの前記椎骨を写像するために画像Bに幾何学的変換を適用すること、
(7)画像B内の椎骨を特定する標識を画像A内の対応する椎骨に割当てること、
のステップから成る背骨の画像内の椎骨を特定する方法。
【請求項13】
(1)前記幾何学的変換の最初のパラメーターを計算すること、
(2)画像Aと共通する座標系内に前記第二の画像Bを変換するため、計算されたパラメーターを用いた前記幾何学的変換を前記画像Bに適用すること、
(3)画像Aと変換された画像Bの一致度を示す費用価値を発生するために費用関数を
評価すること、
(4)前記費用価値を考慮して、前記幾何学的変換のパラメーターを更新すること、
(5)発生した費用価値が最適となるときの前記幾何学的変換の最終パラメーターを得るために、ステップ(2)から(4)を繰返すこと、
から成る請求項12に基づく方法。
【請求項14】
コンピューターで実行するときに前記請求項のいずれかのステップを実施するのに適したコンピューター・プログラム製品。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかのステップを実行するのに適していて、コンピューターが実行できるプログラム・コードを含むコンピューターが読み取れる記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−136724(P2006−136724A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325050(P2005−325050)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(593194476)アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (50)
【Fターム(参考)】