説明

デバイス特性出力装置及びデバイス特性出力プログラムを記憶する記憶媒体

【課題】デバイス特性の変化量に依存することなく、ユーザにとって見やすいシミュレーション結果を出力する。
【解決手段】デバイス特性出力装置10は、デバイス特性の実測データ、デバイス特性のターゲットを示すターゲットデータ、及びデバイス特性のシミュレーション結果を示す第1シミュレーションデータの入力を受け付ける入力部14aと、実測データとターゲットデータとの関係を示すリファレンスデータを生成するリファレンスデータ生成部14bと、リファレンスデータに基づいて、第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換する変換部14cと、第2シミュレーションデータを出力する出力部14eと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス特性出力装置及びデバイス特性出力プログラムを記憶する記憶媒体に関し、より詳しくは、デバイス特性のシミュレーションに使用されるデバイス特性出力装置、及びそのデバイス特性出力装置を実現するデバイス特性出力プログラムを記憶する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、デバイス特性(例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)特性)は、線形スケールやlog(ログ)スケールのグラフを使用して表される。線形スケール及びlogスケールを使用した場合には、デバイス特性の一部の領域において、変化量(すなわち、傾き)が極めて急峻になるので、デバイス特性の領域によって、ユーザが見易いスケールが異なる。例えば、MOSFETの電流電圧特性(以下、「IV特性」という。)は、ゲート・ソース電圧が所定の閾値電圧Vthより小さいときにはlogスケールが好ましく、ゲート・ソース電圧が所定の閾値電圧Vthを超えたときには線形スケールが好ましい。
【0003】
しかしながら、特定用途の場合には、線形スケール及びlogスケールは、ユーザにとって見にくい場合がある。例えば、アナログ用途の場合には、閾値電圧Vthの近傍のデバイス特性が重要な要素となるが、線形スケール及びlogスケールの閾値電圧Vthの近傍のデバイス特性は、ユーザにとって見にくい。
【0004】
特許文献1は、このようなデバイス特性のパラメータ抽出方法の一例を開示する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるパラメータ抽出方法は、実測値と計算値(以下、「シミュレーション結果」という。)の一致の度合いを包括的に且つ定量的に評価することを考慮するものである。従って、シミュレーション結果がどのようなものであっても、シミュレーション結果が線形スケールやlogスケールのグラフを使用して表される場合に、ユーザにとって見やすいものであるとは限らない。
【0006】
すなわち、従来は、シミュレーション結果がユーザにとって見やすいか否かは、デバイス特性の変化量に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−200290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、デバイス特性の変化量に依存することなく、ユーザにとって見やすいシミュレーション結果を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、
デバイス特性の実測データ、前記デバイス特性のターゲットを示すターゲットデータ、及び前記デバイス特性のシミュレーション結果を示す第1シミュレーションデータの入力を受け付ける入力部と、
前記実測データと前記ターゲットデータとの関係を示すリファレンスデータを生成するリファレンスデータ生成部と、
前記リファレンスデータに基づいて、前記第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換する変換部と、
前記第2シミュレーションデータを出力する出力部と、を備えるデバイス特性出力装置が提供される。
【0010】
本発明の第2態様によれば、
デバイス特性の実測データ、前記デバイス特性のターゲットを示すターゲットデータ、及び前記デバイス特性のシミュレーション結果を示す第1シミュレーションデータの入力を受け付ける入力命令と、
前記実測データと前記ターゲットデータとの関係を示すリファレンスデータを生成するリファレンスデータ生成命令と、
前記リファレンスデータに基づいて、前記第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換する変換命令と、
前記第2シミュレーションデータを出力する出力命令と、を備えるデバイス特性出力プログラムを記憶するコンピュータが読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デバイス特性の変化量に依存することなく、ユーザにとって見やすいシミュレーション結果を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のプロセッサ14が実現する機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るデバイス特性出力処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るターゲットデータの概略を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係るリファレンスデータの概略を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第1シミュレーションデータの概略を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係る第2シミュレーションデータの概略を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る補助情報(ターゲットデータに対する第2シミュレーションデータのエラー)の概略を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態の変形例に係るデバイス特性出力処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置10の構成を示すブロック図である。図2は、図1のプロセッサ14が実現する機能構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置10は、ユーザからデータの入力を受け付けるように構成された入力装置12と、デバイス特性(例えば、電流電圧特性)のシミュレーションを実行するように構成されたシミュレータ13と、デバイス特性出力装置10の機能を実現するように構成されたプロセッサ14と、様々なデータ及びプログラムを記憶可能に構成されたハードディスク等の記憶装置16と、様々なデータを出力するように構成された出力装置18と、を備える。
【0016】
図1の入力装置12は、例えば、キーボード、マウス、又はネットワークインタフェースである。なお、入力装置12がネットワークインタフェースである場合には、入力装置12は、デバイス特性出力装置10の外部に設けられた端末(以下、「外部端末」という。)にネットワークを介して接続される。
【0017】
シミュレータ13は、デバイス特性のシミュレーションを実行するように構成される。例えば、シミュレータ13は、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)回路シミュレータである。
【0018】
図1のプロセッサ14は、記憶装置16に記憶されたデバイス特性出力プログラム16a(後述する)を起動して、図2のデバイス特性出力装置10の機能(入力部14a、リファレンスデータ生成部14b、変換部14c、算出部14d、及び出力部14e)を実現する。なお、プロセッサ14は、シミュレータ13がソフトウェアによって実現される場合には、記憶装置16に記憶されたシミュレーションプログラム16b(後述する)を起動して、シミュレータ13の機能を実現する。
【0019】
図2の入力部14aは、入力装置12から、デバイス特性の測定結果(実測値)を示す実測データと、デバイス特性のターゲット(目標値)を示すターゲットデータと、の入力を受け付け、シミュレータ13からデバイス特性のシミュレーション結果を示す第1シミュレーションデータの入力を受け付けるように構成される。また、入力部14aは、実測データと、ターゲットデータと、第1シミュレーションデータと、を記憶装置16に書き込むように構成される。
【0020】
図2のリファレンスデータ生成部14bは、実測データとターゲットデータとの関係を示すリファレンスデータを生成するように構成される。また、リファレンスデータ生成部14bは、実測データ及びターゲットデータを記憶装置16から取得し、リファレンスデータを記憶装置16に書き込むように構成される。
【0021】
図2の変換部14cは、リファレンスデータに基づいて、第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換するように構成される。また、変換部14cは、リファレンスデータ及び第1シミュレーションデータを記憶装置16から取得し、第2シミュレーションデータを記憶装置16に書き込むように構成される。
【0022】
図2の算出部14dは、シミュレーション結果を応用するための補助情報を算出するように構成される。また、算出部14dは、実測データ及び第2シミュレーションデータを記憶装置16から取得し、算出された補助情報を記憶装置16に書き込むように構成される。
【0023】
図2の出力部14eは、第2シミュレーションデータ及び補助情報を記憶装置16から取得して、それらを出力装置18に出力するように構成される。
【0024】
図1の記憶装置16は、デバイス特性出力プログラム16aと、シミュレーションプログラム16bと、デバイス特性出力処理(後述する)において用いられる様々なデータを記憶可能に構成される。図1のデバイス特性出力プログラム16aは、デバイス特性出力装置10の機能を実現するための複数の命令を備えるアプリケーションプログラムである。図1のシミュレーションプログラム16bは、シミュレータ13を実現するためのアプリケーションプログラムである。
【0025】
図1の出力装置18は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、又はネットワークインタフェースである。なお、出力装置18がネットワークインタフェースである場合には、出力装置18は、外部端末にネットワークを介して接続される。この場合には、出力部14eは、ネットワークを介して接続された所定の端末にデータ(例えば、第2シミュレーションデータ及び補助情報)を送信する。
【0026】
すなわち、入力装置12は、デバイス特性出力装置10の入力インタフェースである。プロセッサ14は、デバイス特性出力プログラム16aの命令を実行してデバイス特性出力装置10の機能を実現する。記憶装置16は、デバイス特性出力装置10のデータベースである。出力装置18は、デバイス特性出力装置10の出力インタフェースである。
【0027】
本発明の実施形態に係るデバイス特性出力処理について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るデバイス特性出力処理の手順を示すフローチャートである。図4は、本発明の実施形態に係るターゲットデータの概略を示す概略図である。図5は、本発明の実施形態に係るリファレンスデータの概略を示す概略図である。図6は、本発明の実施形態に係る第1シミュレーションデータの概略を示す概略図である。図7は、本発明の実施形態に係る第2シミュレーションデータの概略を示す概略図である。図8は、本発明の実施形態に係る補助情報(ターゲットデータに対する第2シミュレーションデータのエラー)の概略を示す概略図である。
【0028】
ユーザが、入力装置12を使用してデバイス特性出力処理の開始コマンドを入力すると、プロセッサ14が、デバイス特性出力プログラム16aを起動して、図3のデバイス特性出力処理を開始する。
【0029】
<図3:入力工程(S301)> 図2の入力部14aが、電圧毎の電流の実測値を示す実測データ及び電圧毎の電流の目標値を示すターゲットデータを入力装置12から取得する。それから、入力部14aが、実測データ及びターゲットデータを記憶装置16に書き込む。例えば、図4(A)に示すように、ターゲットデータTは、ゲート・ソース電圧(Vg)毎の変化量(傾き)を示すデータである。図4(A)は、ユーザがターゲットデータを定義する場合の例を示している。図4(A)では、変化量1の領域を標準領域とすると、変化量2の領域は標準領域に対して倍のスケールが設定された領域を意味する。すなわち、ターゲットデータTは、図4(B)のグラフを示すことになる。
【0030】
<図3:リファレンスデータ生成工程(S302)> 図2のリファレンスデータ生成部14bが、記憶装置16から実測データ及びターゲットデータを取得する。それから、リファレンスデータ生成部14bが、実測データ及びターゲットデータに基づいて、リファレンスデータを生成する。それから、リファレンスデータ生成部14bが、生成されたリファレンスデータを記憶装置16に書き込む。例えば、図5に示すように、リファレンスデータは、ゲート・ソース電圧(Vg)と、実測電流(Id)と、ターゲット電流(Id′)との関係を示すデータである。リファレンスデータのうち、ゲート・ソース電圧(Vg)と実測電流(Id)との関係が実測データであり、ゲート・ソース電圧(Vg)とターゲット電流(Id′)との関係がターゲットデータである。すなわち、リファレンスデータ生成部14bは、各ゲート・ソース電圧(Vg1乃至Vg21)毎に、実測電流(Id1乃至Id21)をターゲット電流(Id′1乃至Id′21)に関連付けることによって、リファレンスデータを生成する。リファレンスデータは、非線形関数で表される電圧電流特性を線形関数で表される電圧電流特性に変換するための基準となるデータである。
【0031】
<図3:シミュレーション工程(S303)> 図1のシミュレータ13が、デバイス特性のシミュレーションを実行して、電圧毎の電流のシミュレーション結果(以下、「第1電流」という。)を示す第1シミュレーションデータを生成する。それから、シミュレータ13は、第1シミュレーションデータを図2の入力部14aに与える。それから、入力部14aは、第1シミュレーションデータをシミュレータ13から取得して、記憶装置16に書き込む。例えば、図6(A)及び(B)に示すように、第1シミュレーションデータは、ゲート・ソース電圧(Vg)と第1電流(I)との関係を示すデータである。第1シミュレーションデータは、ユーザにとって、電圧が低いときの第1電流の値を線形スケールで読み取ることが困難なデータである(図6(B)の破線)。
【0032】
<図3:変換工程(S304)> 図2の変換部14cが、記憶装置16から図5のリファレンスデータ及び図6(A)の第1シミュレーションデータを取得する。それから、変換部14cが、リファレンスデータに基づいて、第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換する。それから、変換部14cが、変換された第2シミュレーションデータを記憶装置16に書き込む。例えば、図7(A)及び(B)に示すように、第2シミュレーションデータは、ゲート・ソース電圧(Vg)と第2電流(I′)との関係を示すデータである。第2シミュレーションデータは、ユーザにとって、電圧の大きさにかかわらず第2電流の値を読み取ることが容易なデータである。
【0033】
図3の変換工程(S304)の一例を説明する。図2の変換部14cは、図5のリファレンスデータに基づいて、第1電流(I)を第2電流(I′)に変換する。図5の例では、変換部14cは、第1電流(I1=1.00E−14)を第2電流(I′1=−1.09015)に変換し、第1電流(I2=1.00E−13)を第2電流(I′2=−0.99015)に変換し、・・・、第1電流(I21=1.20E−5)を第2電流(I′21=0.909848)に変換する。その結果、図7(A)及び(B)の電流電圧特性が生成される。すなわち、変換部14cは、リファレンスデータの中から第1電流(In)と同じ値に関連付けられたターゲット電流(Id′m)を第2電流(I′n)とすることによって、第1シミュレーションデータを第2シミュレーションデータに変換する。
【0034】
<図3:算出工程(S305)> 図2の算出部14dが、記憶装置16から実測データ及び第2シミュレーションデータを取得する。それから、算出部14dが、実測データ及び第2シミュレーションデータに基づいて、補助情報を算出する。それから、算出部14dは、算出された補助情報を記憶装置16に書き込む。
【0035】
図3の算出工程(S305)の一例を説明する。算出部14dは、ターゲットデータに対する第2シミュレーションデータのエラー(誤差)を補助情報として算出する(図8)。図8の例では、算出部14dは、ターゲット電流(Id′)と第2電流(I′)との差(ΔI)をゲート・ソース電圧(Vg)毎に計算することによって、ターゲットデータに対する第2シミュレーションデータのエラーを算出する。すなわち、算出部14dは、実測データに対する第1シミュレーションデータのエラーをリファレンスデータに基づいて評価する。
【0036】
<図3:出力工程(S306)> 図2の出力部14eが、記憶装置16から第2シミュレーションデータと、ターゲットデータと、補助情報と、を取得して、それらを出力装置18に出力する。例えば、図8に示すように、出力部14eは、第2シミュレーションデータS′にターゲットデータTを合成して出力装置18に出力する。すなわち、図8のターゲットデータTは、線形関数であり、ゲート・ソース電圧(Vg)に対して電流(Id)が一定の変化量(傾き)となるように実測データを定義するためのデータである。図8の第2シミュレーションデータS′は、ターゲットデータを平行にシフトしたカーブである。これは、第1シミュレーションデータ(図6(B)のS)がターゲットデータTと同じ形状であり、X軸(電圧)方向に一定量だけ閾値電圧Vthがシフトしたデータであることを意味する。
【0037】
図3のデバイス特性出力処理は、出力工程(S306)の後に終了する。
【0038】
本発明の実施形態の変形例について説明する。図9は、本発明の実施形態の変形例に係るデバイス特性出力処理の手順を示すフローチャートである。
【0039】
ユーザが、入力装置12を使用してデバイス特性出力処理の開始コマンドを入力すると、プロセッサ14が、デバイス特性出力プログラム16aを起動して、図9のデバイス特性出力処理を開始する。
【0040】
<図9:入力工程(S901)> 図3の入力工程(S301)と同様である。
【0041】
<図9:リファレンスデータ生成工程(S902)> 図3のリファレンスデータ生成工程(S302)と同様である。
【0042】
<図9:シミュレーション工程(S903)> 図3のシミュレーション工程(S303)と同様である。
【0043】
<図9:変換工程(S904)> 図3の変換工程(S304)と同様である。
【0044】
<図9:算出工程(S905)> 図2の算出部14dが、記憶装置16から実測データ及び第2シミュレーションデータを取得する。それから、算出部14dが、実測データ及び第2シミュレーションデータに基づいて、補助情報を算出する。
【0045】
図9の算出工程(S905)の一例を説明する。算出部14dは、実測データ及び第2シミュレーションデータに基づいて、目的関数を算出する。例えば、算出部14dは、各ゲート・ソース電圧(Vg)毎のエラーを算出し、そのエラーの二乗和などを用いて目的関数を補助情報として算出する。
【0046】
<S906> 目的関数が所定の基準を満たす場合には(S906−YES)、出力工程(S907)に進み、目的関数が所定の基準を満たさない場合には(S906−NO)、パラメータ更新工程(S911)に進む。
【0047】
<図9:出力工程(S907)> 図3の出力工程(S306)と同様である。
【0048】
<図9:パラメータ更新工程(S911)> 算出部14dが、所定の最適化手法(例えば、ニュートン法)に基づいてパラメータ(例えば、SPICEパラメータ)の更新量を算出し、その更新量に基づいて新しいパラメータセットを作成し、その新しいパラメータセットをシミュレータ13に与える。パラメータ更新工程(S911)の後には、シミュレーション工程(S903)に戻る。
【0049】
図9のデバイス特性出力処理は、出力工程(S907)の後に終了する。
【0050】
なお、本発明の実施形態では、図2の算出部14d及び図3の算出工程(S305)は省略されても良い。その場合には、出力工程(S306)において、出力部14eは、補助情報以外のデータを出力装置18に出力する。
【0051】
また、本発明の実施形態では、図3のリファレンスデータ生成工程(S302)又は図9のリファレンスデータ生成工程(S902)において、図2のリファレンスデータ生成部14bが、実測データが所定の条件を具備する場合に、実測データを補正して、リファレンスデータを生成しても良い。
【0052】
例えば、図2のリファレンスデータ生成部14bは、実測データが離散値を含む場合に、実測データに含まれないデバイス特性(すなわち、2つの離散値の間のデバイス特性)を示す推定値を生成しても良い。具体的には、リファレンスデータ生成部14bは、2点間の実測データを線形関数と仮定し、又は、3点間の実測データを2次関数と仮定し、それらの欠落部分の値を内挿して求める。
【0053】
例えば、図2のリファレンスデータ生成部14bは、実測データが所定の閾値を超える値(以下、「はずれ値」という。)を含む場合に、はずれ値を除去しても良い。具体的には、リファレンスデータ生成部14bは、実測データの実測電流の変化が所定の手続き(例えば、近傍の複数点の変化量の平均値を10倍すること)によって算出した閾値を超える場合には、その実測電流をはずれ値として除去する。すなわち、実測データは、変化量が所定の閾値の範囲内に含まれる実測電流の集合となる。
【0054】
また、本発明の実施形態では、図3の変換工程(S304)又は図9の変換工程(S904)において、図2の変換部14cが、実測データが所定の条件を具備する場合に、リファレンスデータの実測データを補正して、第1電流(I)を第2電流(I′)に変換しても良い。
【0055】
例えば、図2の変換部14cは、実測データが離散値を含む場合に、実測データに含まれないデバイス特性(すなわち、2つの離散値の間のデバイス特性)を示す推定値を生成しても良い。具体的には、変換部14cは、2点間の実測データを線形関数と仮定し、又は、3点の実測データを2次関数と仮定し、それらの欠落部分の値を内挿して求める。すなわち、変換部14cは、第1シミュレーションデータの値に合わせて補正値を求める。
【0056】
本発明の実施形態によれば、変換部14cが、リファレンスデータに基づいて第1シミュレーションデータを第2シミュレーションデータに変換する。その結果、デバイス特性の変化量に依存することなく、ユーザにとって見やすいシミュレーション結果が出力される。具体的には、図6(B)及び図8に示すように、非線形関数で表される電流電圧特性(第1シミュレーションデータS)が、ターゲットデータTに基づいて、線形関数で表される電流電圧特性(第2シミュレーションデータS′)に変換される。その結果、ユーザは、電圧の大きさ(デバイス特性)に依存することなく、電流電圧特性を容易に読み取ることができる。
【0057】
また、本発明の実施形態によれば、実測データが離散値又ははずれ値を含む場合であっても、リファレンスデータ生成部14bが、実測データを補正して、リファレンスデータを生成する。その結果、実測データに依存することなく、第1シミュレーションデータが第2シミュレーションデータに適切に変換される。
【0058】
また、本発明の実施形態によれば、実測データが離散値を含む場合であっても、変換部14cが、リファレンスデータの実測データを補正して、第1電流(I)を第2電流(I′)に変換する。その結果、実測データに依存することなく、第1シミュレーションデータが第2シミュレーションデータに適切に変換される。
【0059】
また、本発明の実施形態によれば、出力部14eが、外部端末にネットワークを介して接続された出力装置18に、第2シミュレーションデータと、ターゲットデータと、補助情報と、を出力する。その結果、ユーザは、本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置10の外部に設けられた外部端末を使用して、第2シミュレーションデータを確認することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態によれば、算出部14dが、補助情報を算出する。その結果、ユーザは、第2シミュレーションデータを容易に応用することができる。特に、本発明の実施形態の変形例によれば、算出部14dによって算出された目的関数が基準を満たさない場合に、基準を満たすまでSPCIEパラメータが更新されるので、ユーザは、最適化したSPICEパラメータに対応する領域(ユーザがスケールを拡大したいと考える領域)と全領域のシミュレーション結果とを一度に容易に確認することができる。
【0061】
また、本発明の実施形態によれば、ユーザは、入力装置12を使用して任意のリファレンスデータを作成することができる。すなわち、ユーザは、所望のスケールで表されたシミュレーション結果を確認することができる。例えば、ユーザは、デバイス特性の変化量が部分的に大きくなるようなリファレンスデータを作成することによって、シミュレーション結果にウェイトを付加することができる。その結果、ユーザにとって、シミュレーション結果の重要な領域が見やすくなる。
【0062】
本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置10の少なくとも一部は、ハードウェアで構成しても良いし、ソフトウェアで構成しても良い。ソフトウェアで構成する場合には、デバイス特性出力装置10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させても良い。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でも良い。
【0063】
また、本発明の実施形態に係るデバイス特性出力装置10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布しても良い。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布しても良い。
【0064】
上述した実施形態は、いずれも一例であって限定的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
10 デバイス特性出力装置
12 入力装置
13 シミュレータ
14 プロセッサ
14a 入力部
14b リファレンスデータ生成部
14c 変換部
14d 算出部
14e 出力部
16 記憶装置
16a デバイス特性出力プログラム
16b シミュレーションプログラム
18 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス特性の実測データ、前記デバイス特性のターゲットを示すターゲットデータ、及び前記デバイス特性のシミュレーション結果を示す第1シミュレーションデータの入力を受け付ける入力部と、
前記実測データと前記ターゲットデータとの関係を示すリファレンスデータを生成するリファレンスデータ生成部と、
前記リファレンスデータに基づいて、前記第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換する変換部と、
前記第2シミュレーションデータを出力する出力部と、を備えるデバイス特性出力装置。
【請求項2】
前記リファレンスデータ生成部は、前記実測データが所定の条件を具備する場合に、前記実測データを補正して、前記リファレンスデータを生成する請求項1に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項3】
前記リファレンスデータ生成部は、前記実測データが離散値を含む場合に、前記実測データに含まれないデバイス特性を示す推定値を生成する請求項2に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項4】
前記リファレンスデータ生成部は、前記実測データが所定の閾値を超えるはずれ値を含む場合に、前記はずれ値を除去する請求項2又は3に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項5】
前記変換部は、前記実測データが所定の条件を具備する場合に、前記リファレンスデータの実測データを補正して、前記第1シミュレーションデータを前記第2シミュレーションデータに変換する請求項1に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項6】
前記変換部は、前記実測データが離散値を含む場合に、前記リファレンスデータの実測データに含まれないデバイス特性を示す推定値を生成する請求項5に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項7】
前記出力部は、ネットワークを介して接続された所定の端末に前記第2シミュレーションデータを送信する請求項1乃至6の何れか1項に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項8】
前記ターゲットデータに対する前記第2シミュレーションデータのエラーを算出する算出部をさらに備える請求項1乃至7の何れか1項に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項9】
前記実測データ及び前記第2シミュレーションデータに基づいて、目的関数を算出する算出部をさらに備える請求項1乃至8の何れか1項に記載のデバイス特性出力装置。
【請求項10】
デバイス特性の実測データ、前記デバイス特性のターゲットを示すターゲットデータ、及び前記デバイス特性のシミュレーション結果を示す第1シミュレーションデータの入力を受け付ける入力命令と、
前記実測データと前記ターゲットデータとの関係を示すリファレンスデータを生成するリファレンスデータ生成命令と、
前記リファレンスデータに基づいて、前記第1シミュレーションデータを異なるスケールで表される第2シミュレーションデータに変換する変換命令と、
前記第2シミュレーションデータを出力する出力命令と、を備えるデバイス特性出力プログラムを記憶するコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−8345(P2011−8345A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148905(P2009−148905)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】