説明

デプシペプチドおよびその治療的使用

構造(IX)もしくは(X)の化合物またはその医薬的に許容される塩であって、式中、Xは−C(=O)N(R10)−または−CH(OPr)−であり;R、RおよびR10は同一であるかまたは異なっており、水素または天然もしくは非天然アミノ酸由来のアミノ酸側鎖部分を表し;PrおよびPrは同一であるかまたは異なっており、水素またはチオール保護基を表し;Prは水素またはアルコール保護基であり;R、R、RおよびRは同一であるかまたは異なっており、水素、または天然もしくは非天然アミノ酸のいずれかに由来するアミノ酸側鎖部分を表し、あるいはRおよびRならびに/またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環部分を形成し、ただし:RおよびRはそれぞれ水素ではないか、またはRおよびRはそれぞれ水素ではない。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年5月22日に出願されたGB0809324.7「デプシペプチドおよびその治療的使用」および2008年5月22日に出願されたGB0809328.8「デプシペプチドおよびその治療的使用」の英国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0002】
技術分野
本発明はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤として作用し、故に治療的有用性を示すデプシペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
HDACはアセチル化されたリジン残基の加水分解を触媒する亜鉛金属酵素である。これは、ヒストンにおいてリジンをプロトン化状態に戻す、真核生物の転写制御において広範に見られるメカニズムであり、それによりDNAがヌクレオソーム内に密にパッケージングされる。さらに、可逆的リジンアセチル化は非ヒストンタンパク質にとって重要な調節過程である。従って、HDACを改変し得る化合物は治療において重要な可能性を有する。
【0004】
天然物であるFK228(構造I)およびスピルコスタチンA(構造II)はHDAC阻害剤としての可能性を有することが報告されているデプシペプチドである。デプシペプチドという語は、エステルおよびペプチド結合の両者を鎖上に有するオリゴペプチドまたはポリペプチドのクラスを表す。
【0005】
FK228は4つのモノマー単位を環をまたぐ架橋とともに含んだ環状デプシペプチドである。この化合物は、Romidepsin(登録商標)の商品名のもとで臨床実験において治療薬として試験され、多くの疾患に対して有用な効果をもたらすことが示されている。
【0006】
スピルコスタチンAはFK228と構造的に関連のある環状デプシペプチドである:これは、トリペプチドと、スタチン単位と、環をまたぐ架橋とを含む環状デプシペプチドである。
【化1】

【0007】
しかし、FK228およびスピルコスタチンAはともに天然物であるため、治療薬としての使用への最適化を行いにくい。
【0008】
スピルコスタチンAの類似体が、PCT/GB2007/050709に開示されている。これらは、スピルコスタチンAもしくはFK228に対して改善されたHDAC阻害特性、またはそれらを医薬としてより有用にする他の薬物様特性を有しうる。これらの化合物は構造IIIおよびIVで表される一般構造を有し、式中、R、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素または天然もしくは非天然アミノ酸由来のアミノ酸側鎖部分を表し;RおよびRは水素であり;R10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素または炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルもしくは炭素数2〜6のアルキニルを表し;PrおよびPrは同一であっても異なっていてもよく、水素またはチオール保護基を表し;Prは水素またはアルコール保護基である。
【化2】

【0009】
FK228の類似体が国際公開第2006/129105号において開示されている。これらはFK228に対して改善されたHDAC阻害特性、またはそれらを医薬としてより有用にする他の薬物様特性を有しうる。これらの化合物は、構造VおよびVIに示す一般構造を有し、式中、R、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素または天然もしくは非天然アミノ酸由来のアミノ酸側鎖部分を表し;RおよびRは水素であり;R10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素または炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニルもしくは炭素数2〜6のアルキニルを表し;PrおよびPrは同一であっても異なっていてもよく、水素またはチオール保護基を表す。
【化3】

【0010】
FK228およびスピルコスタチンAの類似体においてジスルフィド含有架橋に修飾を有するものが国際公開第2008/062201号に開示されている。
【0011】
理論に拘束されるものではないが、構造VIIおよびVIIIが、それぞれ細胞内で構造IおよびIIからジスルフィド結合の還元により形成され、こうして形成された4−チオ−ブチル−1−エンは該化合物の作用機序における重要な部分であって、HDACの活性部位内に亜鉛を結合しうる金属親和性(metallophile)を形成するものと考えられる。
【化4】

【0012】
この概念は、全く異なる環状構造を有する環状デプシペプチドHDAC阻害剤であるFR−901375が、FK228およびスピルコスタチンAに見られるものと同一の、環を横切るジスルフィド含有架橋を有するという観察によって支持される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、構造IIIおよびIVであって、ここでRおよびRの両者ならびに/またはRおよびRの両者は水素ではない構造を提供する。これらの化合物においては、デプシペプチド大員環上の6位(IUPAC命名法)および/または12位(IUPAC命名法)は、ビス置換され、2個のアミノ酸側鎖部分(どちらも水素ではない)または1個のスピロ環部分を有する。
【0014】
本発明はまた、構造VおよびVIであって、ここでRもRも水素ではなく、および/またはRもRも水素ではない構造を提供する。これらの化合物においては、デプシペプチド大員環上の6位(IUPAC命名法)および/または12位(IUPAC命名法)は、ビス置換され、2個のアミノ酸側鎖部分(どちらも水素ではない)または1個のスピロ環部分を有する。
【0015】
驚くべきことに、これらの化合物はHDAC酵素の効果的な阻害剤であることが見出され、ヒトの疾患の治療法としてより大きな可能性を有し得ることを示す特性を有する。これらの化合物は以下、ビス置換デプシペプチド(BSD)と称する化合物のクラスのメンバーとして表す。
【0016】
本発明の化合物は、構造IXおよびX:
【化5】


[式中:
Xは−C(=O)N(R10)−または−CH(OPr)−であり;
、RおよびR10は同一であっても異なっていてもよく、水素、または天然もしくは非天然アミノ酸のいずれかに由来のアミノ酸側鎖部分を表し;
PrおよびPrは同一であっても異なっていてもよく、水素またはチオール保護基を表し;
Prは水素またはアルコール保護基であり;
、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素、または天然もしくは非天然アミノ酸のいずれかに由来のアミノ酸側鎖部分であり、あるいはRおよびRならびに/またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環部分を形成し、
ただし:
およびRはそれぞれ水素ではないか、または
およびRはそれぞれ水素ではない]、
またはその医薬的に許容される塩、により定義される。
【0017】
本発明はさらに、上記で定義される構造IXおよびXの化合物またはその医薬的に許容される塩の、HDACの阻害剤として使用するための薬剤の製造における使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
構造IXおよびXの化合物の合成は、典型的には、−(CO)−CR’R’’−NH−が大員環の部分を形成し、R’およびR’’が側鎖部分であるアミノ酸を用いて行われる。R、R、RおよびRはこのように導入してよい。RおよびRはアミノ酸側鎖部分であってもよいが、このようにアミノ酸から直接または間接に由来したものでなくともよい。
【0019】
構造IXまたはXは、ビス置換炭素をデプシペプチド大員環上の6位(IUPAC命名法)または12位(IUPAC命名法)のいずれかに有している必要がある。このようなビス置換化合物においては、RおよびRは両者とも水素ではないか、またはRおよびRは両者とも水素ではない。好ましくは、RおよびRならびに/またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環分子を形成する。好ましくは、該スピロ環分子は3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。あるいは、RおよびRならびに/またはRおよびRは両者とも炭素数1〜6のアルキルであってよい。本明細書中、「アミノ酸側鎖部分」という語は、天然および非天然のアミノ酸中に存在しうる任意の側鎖のことを指し、従って基Rの性質を限定するものではない。非天然アミノ酸に由来するアミノ酸側鎖部分の例としては、括弧内にそれが由来するアミノ酸を記載しながら挙げると、−(CH−C(O)−O−C(CH(グルタミン酸 t−ブチルエステル)、−(CH−NH−C(O)−O−C(CH (Nε−(tert−ブトキシカルボニル)−リジン)、−(CH−NH−C(O)NH(シトルリン)、−CH−CHOH(ホモセリン)および−(CHNH(オルニチン)が挙げられる。例としてはまた、炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数2〜6のアルキニル、アリール、ならびに飽和および不飽和複素環(官能化および非官能化)も挙げられる。
【0020】
炭素数1〜6のアルキル基または部分は直鎖または分岐鎖であってよい。典型的には、これは炭素数1〜4のアルキル基または部分、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルである。好ましい例としてメチル、i−プロピルおよびt−ブチルが挙げられる。
【0021】
炭素数2〜6のアルケニル基または部分は直鎖または分岐鎖であってよい。典型的には、これは炭素数2〜4のアルケニル基または部分である。該アルケニル基は一または二不飽和が好ましく、より好ましくは一不飽和である。例としてビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルおよび3−ブテニルが挙げられる。
【0022】
炭素数2〜6のアルキニル基または部分は直鎖または分岐鎖であってよい。典型的には、これは炭素数2〜4のアルキニル基または部分である。
【0023】
好ましくは、前記アミノ酸側鎖部分は天然のアミノ酸に由来するものである。天然のアミノ酸に由来するアミノ酸側鎖部分の例としては、括弧内にそれが由来するアミノ酸を記載しながら挙げると、−H(グリシン)、−CH(アラニン)、−CH(CH(バリン)、−CHCH(CH(ロイシン)、−CH(CH)CHCH(イソロイシン)、−(CHNH(リジン)、−(CHNHC(=NH)NH(アルギニン)、−CH−(5−1H−イミダゾリル)(ヒスチジン)、−CHCONH(アスパラギン)、−CHCHCONH(グルタミン)、−CHCOOH(アスパラギン酸)、−CHCHCOOH(グルタミン酸)、−CH−フェニル(フェニルアラニン)、−CH−(4−OH−フェニル)(チロシン)、−CH−(3−1H−インドリル)(トリプトファン)、−CHSH(システイン)、−CHCHSCH(メチオニン)、−CHOH(セリン)、および−CH(OH)CH(スレオニン)が挙げられる。
【0024】
好ましくは、各アミノ酸側鎖は、天然のアミノ酸中に存在するアミノ酸側鎖部分であるか、または、−(CH−C(O)−O−C(CH(グルタミン酸 t−ブチルエステル)、−(CH−NH−C(O)−O−C(CH (Nε−(tert−ブトキシカルボニル)−リジン)、−(CH−NH−C(O)NH(シトルリン)、−CH−CHOH(ホモセリン)もしくは−(CH−CHNH(オルニチン)である。
【0025】
好ましくは、各アミノ酸側鎖は、天然のアミノ酸中に存在するアミノ酸側鎖部分であるか、または、−(CR1111−NR11C(O)NR1111、−(CR1111−NR11C(O)NR1113、−(CR1111−NR11C(O)OR14、−(CR1111−NR11C(O)R14、−(CR1111−NR11C(O)R13、−(CR1111−NR11SONR1111、−(CR1111−NR11SONR1113、−(CR1111−NR11SONR14、−(CR1111−NR11SONR14、−(CR1111−NR11SONR13、−(CR1111−C(O)NR1111、−(CR1111−C(O)NR1113、−(CR1111−CO11、−(CR1111−C(O)R13、−(CR1111−SONR1111、−(CR1111−SONR1113、−(CR1111−SO13もしくは−(CR1111−Arである。ここで、xは1〜10の間の整数であり;R11は水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜7のシクロアルキル、アリール、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数2〜6のアルキニル、またはヘテロアリールであり;R13はNR11−C(O)R14またはNR11−SO14であり;R14は炭素数1〜6のアルキル、アリール、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数2〜6のアルキニル、またはヘテロアリールであり;Arはアリール、またはヘテロアリール環であって、チアゾール、テトラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チオフェン、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジンおよび官能化された誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
好ましくは、側鎖部分の一方または双方のペア(ここで、RおよびRが一方のペアを形成し、RおよびRが他方のペアを形成する)は、それらが結合するデプシペプチド大員環の炭素原子と一緒になってスピロ環部分を形成し、その際、該デプシペプチド大員環の一部である該炭素は外部環状部分の一部でもあり、該外部環状部分はシクロアルキル、または他の環状基であって、好ましくは3〜8原子を有し、例としてシクロプロピルが挙げられる。
【0027】
本明細書において用いられる「アリール」という語は、単環式、二環式または三環式の1価芳香族基を意味し、例としてフェニル、ビフェニル、ナフチルおよびアントラセニルが挙げられ、これらは、所望により、炭素数1〜6のアルキル、ヒドロキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、炭素数1〜3のアルコキシ、炭素数1〜3のハロアルコキシ、アミノ、炭素数1〜3のモノアルキルアミノ、炭素数1〜3のビスアルキルアミノ、炭素数1〜3のアシルアミノ、炭素数1〜3のアミノアルキル、モノ(炭素数1〜3のアルキル)アミノ 炭素数1〜3のアルキル、ビス(炭素数1〜3のアルキル)アミノ 炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のアシルアミノ、炭素数1〜3のアルキルスルホニルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル、アミノカルボニル、モノ 炭素数1〜3のアルキルアミノカルボニル、ビス 炭素数1〜3のアルキルアミノカルボニル、−SOH、炭素数1〜3のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、モノ 炭素数1〜3のアルキルアミノスルホニル、およびビス 炭素数1〜3のアルキルアミノスルホニルの群より独立に選択される5つまでの置換基で置換されていてもよい。
【0028】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」という語は、酸素、窒素および硫黄から選択される4つまでのヘテロ原子を有する、単環式、二環式または三環式の1価芳香族基を意味し、例としてチアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チエニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、インドリル、キノリル、イソキノリルが挙げられ、ここで前記基は、所望により、炭素数1〜6のアルキル、ヒドロキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、炭素数1〜3のアルコキシ、炭素数1〜3のハロアルコキシ、アミノ、炭素数1〜3のモノアルキルアミノ、炭素数1〜3のビスアルキルアミノ、炭素数1〜3のアシルアミノ、炭素数1〜3のアミノアルキル、モノ(炭素数1〜3のアルキル)アミノ 炭素数1〜3のアルキル、ビス(炭素数1〜3のアルキル)アミノ 炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のアシルアミノ、炭素数1〜3のアルキルスルホニルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル、アミノカルボニル、モノ 炭素数1〜3のアルキルアミノカルボニル、ビス 炭素数1〜3のアルキルアミノカルボニル、−SOH、炭素数1〜3のアルキルスルホニル、アミノスルホニル、モノ 炭素数1〜3のアルキルアミノスルホニル、およびビス 炭素数1〜3のアルキルアミノスルホニルの群より独立に選択される3つまでの置換基で置換されていてもよい。
【0029】
基PrおよびPrは水素またはチオール保護基を表す。該チオール保護基は典型的には:
(a)チオール基を保護するチオエーテルを形成する保護基であって、例えば炭素数1〜6のアルコキシ(メトキシ等)、炭素数1〜6のアシルオキシ(アセトキシ等)、ヒドロキシおよびニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、炭素数1〜6のアシルオキシメチル(ピバロイルオキシメチル、第3級ブトキシカルボニルオキシメチル等)によって任意に置換されたベンジル基;
(b)チオール基を保護するモノチオ、ジチオまたはアミノチオアセタールを形成する保護基であって、例えば炭素数1〜6のアルコキシメチル(メトキシメチル、イソブトキシメチル等)、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル;
(c)チオール基を保護するチオエステルを形成する保護基であって、例えば第3級ブトキシカルボニル(BOC)、アセチルおよびその誘導体、ベンゾイルおよびその誘導体;または
(d)チオール基を保護するカルバミン酸チオエステルを形成する保護基であって、例えばカルバモイル、フェニルカルバモイル、炭素数1〜6のアルキルカルバモイル(メチルカルバモイルおよびエチルカルバモイル等);
である。
【0030】
典型的には、PrおよびPrは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素;またはチオール基を保護するための、チオエーテル、モノチオ、ジチオもしくはアミノチオアセタール、チオエステル、またはカルバミン酸チオエステルを形成する保護基;を表す。好ましくは、PrおよびPrは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素;あるいは炭素数1〜6のアルコキシ(メトキシ等)、炭素数1〜6のアシルオキシ(アセトキシ等)、ヒドロキシおよびニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、炭素数1〜6のアシルオキシメチル(ピバロイルオキシメチル、第3級ブトキシカルボニルオキシメチル等)、炭素数1〜6のアルコキシメチル(メトキシメチル、イソブトキシメチル等)、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル、第3級ブチルオキシカルボニル(BOC)、アセチルおよびその誘導体、ベンゾイルおよびその誘導体、カルバモイル、フェニルカルバモイル、ならびに炭素数1〜6のアルキルカルバモイル(メチルカルバモイルおよびエチルカルバモイル等)によって所望により置換されていてもよいベンジル基から選択される保護基;を表す。最も好ましくは、PrおよびPrは水素である。
【0031】
基Prは水素、あるいはヒドロキシル基を保護するための、エーテル、アセタールもしくはアミノアセタール、エステルまたはカルバミン酸エステルを表す。好ましくは、Prは水素;あるいは炭素数1〜6のアルコキシ(メトキシ等)、炭素数1〜6のアシルオキシ(アセトキシ等)、ヒドロキシおよびニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、炭素数1〜6のアシルオキシメチル(ピバロイルオキシメチル、第3級ブトキシカルボニルオキシメチル等)、炭素数1〜6のアルコキシメチル(メトキシメチル、イソブトキシメチル等)、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル、第3級ブチルオキシカルボニル(BOC)、アセチルおよびその誘導体、ベンゾイルおよびその誘導体、カルバモイル、フェニルカルバモイル、ならびに炭素数1〜6のアルキルカルバモイル(メチルカルバモイルおよびエチルカルバモイル等)によって所望により置換されていてもよいベンジル基から選択される保護基;を表す。最も好ましくは、Prは水素である。
【0032】
好ましくは、Xは−CH(OPr)であり、本発明の化合物は構造IXaおよびXaのうち一方を有する。
【化6】




【0033】
好ましい実施形態の例として、化合物(Compound)XI〜XIIIが挙げられる。
【化7】



【0034】
好ましくは、Xは−C(=O)N(R10)−であり、本発明の化合物は構造IXbまたはXbのうちいずれかを有する。
【化8】

【0035】
好ましい実施形態の例として、化合物(Compound)XIV〜XXXIVが挙げられる。
【化9】



【化10】



【化11】


【化12】



【化13】



【0036】
本発明はまた、式IXまたはXの化合物、そのアイソスター、またはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体または希釈剤も提供する。前記医薬組成物は、典型的には、85重量%までの本発明の化合物を含む。より典型的には、50重量%までの本発明の化合物を含む。好ましい医薬組成物は無菌であり、かつ発熱物質を含まない。さらに、本発明により提供される医薬組成物は、典型的には、実質的に純粋な光学異性体である本発明の化合物を含む。好ましくは、該医薬組成物は構造IXもしくはXの化合物またはそのアイソスターの、医薬的に許容される塩を含む。
【0037】
本明細書に用いられる医薬的に許容される塩とは、医薬的に許容される酸または塩基との塩である。医薬的に許容される酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸等の無機酸;およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸等の有機酸;の両者が挙げられる。医薬的に許容される塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)の水酸化物、ならびにアルキルアミン類、アラルキルアミン類または複素環式アミン類等の有機塩基が挙げられる。
【0038】
本明細書に用いられる「アイソスター」の語は、ある原子または原子団が、他の概して類似した原子または原子団と交換されることによって生じた化合物を表す。構造IXまたはXの化合物においてアイソステリックな基を有する部分は、好ましくは−NR10−CHR−CO−、−NR10−CHR−CO−O−、および−NR10−CO−CHR−NR10−CO−CHR−である。このようなアイソスターの例としては、構造IXまたはXの化合物であって、−NH−部分が−CH−、−O−または−S−に置換され、−CO−部分が−CS−または−C(=NH)−に置換され、および−O−部分が−S−、CH−または−NH−によって置換されたものが挙げられる。
【0039】
誤解を避けるために述べると、本発明は、in vivoで反応して本発明の化合物またはそのアイソスターもしくはその医薬的に許容される塩を生ずるプロドラッグをも包含する。
【0040】
Xが−CH(OPr)−である構造IXaおよびXaの本発明の化合物は、従来の経路により、例えば次のスキーム(Scheme)1を用いて調製することができ、ここで官能基は上記で定義された通りであり、PGは窒素保護基を表す。
【化14】

【0041】
スキーム1の工程(a)において、側鎖RおよびRを有するN−保護アミノ酸が側鎖Rを有するエステルエノラートと縮合し、生成した中間体である1,3−ジケト−エステルが次いで還元され、スタチン単位を生成する。ここで、PrはH、または除去可能なアルコール保護基である。工程(b)において、N−保護基が除去され、前記スタチンが、保護されたシステイン誘導体と結合してペプチドアイソスターを生成する。工程(c)において、N−保護基が除去され、該ペプチドアイソスターが、側鎖RおよびRを有するN−保護アミノ酸と結合する。工程(d)において、N−保護基が除去され、生成した中間体が、官能化された−ヒドロキシ酸誘導体と結合する。ここでR15は一時的保護基であって、その除去によってR15がHである化合物を産生することができ、XはYurek−George, A.; Habens, F.; Brimmell, M.; Packham, G.; Ganesan, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030−1031で報告されているキラル補助基(chiral auxiliary)である。工程(e)において前記エステルが加水分解され、工程(f)において環化が促されて、Xが−CH(OPr)−である構造Xaの本発明の化合物が提供される。工程(g)でジスルフィド結合の形成が起こり、Xが−CH(OPr)−である構造IXaの本発明の化合物が提供される。
【0042】
Xが−C(=O)N(R10)−である構造IXbおよびXbの本発明の化合物は、従来の経路により、例えば次のスキーム(Scheme)2を用いて調製することができ、ここで官能基は上記で定義された通りである。
【化15】



【0043】
スキーム2の工程(a)において、側鎖Rを有するアミノ酸エステルが、他の、側鎖RおよびRを有するN−保護アミノ酸に結合し(ここでPGは従来の保護基を表す)、N−保護ジペプチドエステルを生成する。工程(b)において、N−保護基が除去され、生成したジペプチドエステルが保護されたシステインに結合する。工程(c)において、N−保護基が除去され、生成したトリペプチドが側鎖RおよびRを有するアミノ酸と結合し、N−保護テトラペプチドエステルを遊離させる。工程(d)において、N−保護基が除去され、生成したテトラペプチドエステルが官能化されたベータ−ヒドロキシ酸誘導体と結合する。ここでR15は一時的保護基であって、その除去によりR15がHである化合物を産生することができ、XはYurek−George, A.; Habens, F.; Brimmell, M.; Packham, G.; Ganesan, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030−1031で報告されているキラル補助基である。工程(e)において前記エステルが加水分解され、工程(f)において環化が促されて、Xが−C(=O)N(R10)−である構造Xbの化合物が提供される。工程(g)でジスルフィド結合の形成が起こり、Xが−C(=O)N(R10)−である構造IXbの本発明の化合物が提供される。
【0044】
本発明の構造IXおよびXの化合物であってR10が水素以外のものは、R10が水素である本発明の対応する化合物または中間体をアルキル化することにより、または適切に置換された出発物質を使用することにより、得ることができる。
【0045】
構造Xの化合物は、上記スキーム1および2の工程(g)の産物、すなわち構造IXの化合物、の反応により、ジスルフィド結合を切断して得ることができる。このスルフィド結合の切断は、典型的には、ジスルフィド結合を有するタンパク質の還元処理に一般的に用いられるチオール化合物、例えばメルカプトエタノール、チオグリコール酸、2−メルカプトエチルアミン、ベンゼンチオール、パラチオクレゾールおよびジチオスレイトールを用いて達成される。好ましくは、メルカプトエタノールおよびジチオスレイトールが使用される。過剰なチオール化合物は、例えば透析またはゲル濾過により除去することができる。あるいは、電気分解、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムまたは亜硫酸塩等を使用して前記ジスルフィド結合を切断してもよい。
【0046】
構造Xの化合物であってPrおよび/またはPrが水素以外のものは、Prおよび/またはPrが水素である対応する化合物にチオール保護基を導入することにより調製してよい。この態様において、この反応に使用するチオール保護基を導入するための適した物質(agent)は、導入する保護基により適切に決定される。例として、対応する保護基の塩化物(例えば、ベンジルクロライド、メトキシベンジルクロライド、アセトキシベンジルクロライド、ニトロベンジルクロライド、ピコリルクロライド、ピコリルクロライド−N−オキシド、アントリルメチルクロライド、イソブトキシメチルクロライド、フェニルチオメチルクロライド);対応する保護基のアルコール類(例えば、ジフェニルメチルアルコール、アダマンチルアルコール、アセトアミドメチルアルコール、ベンズアミドメチルアルコール);ジニトロフェニル;イソブチレン;ジメトキシメタン;ジヒドロピラン;およびt−ブチルクロロホルメート;が挙げられる。
【0047】
当業者が理解するであろう通り、R、R、R、R、R10のうち1つが−OH、−SH、−NHまたは−COOH等の官能基を有する場合、その基は導入後の1または複数の反応工程において保護されることが好ましい場合がある。この場合、問題の基はその導入後に別の工程において保護されてもよく、またはその導入時には既に保護されていてもよい。その際に用いることが出来る適した保護基は当業者の理解するところであろう。
【0048】
このようにして得られた本発明の化合物を適切な酸または塩基を用いた処理により塩化してよい。上記のいずれかの方法により得られたラセミ混合物は、標準的な手法、例えばキラルクロマトグラフィーカラム上での溶出により分離することができる。
【0049】
各種アッセイがHDAC阻害の試験に適しており、スキーム1から得られた化合物の活性を測定して公知のHDAC阻害物SAHAのものと比較することに使用できることは、当業者の理解するところであろう。従って、HDACに対する被験化合物のIC50を、例えばin vitroアッセイにおいて測定し、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50と比較することができる。被験化合物がSAHA以下のIC50値を有する場合、それはSAHAが示す活性と少なくとも同等のHDAC阻害活性を有すると理解されるべきである。
【0050】
好ましい一実施形態において、本発明はSAHAが示す活性と少なくとも同等なHDAC阻害活性を有する上記定義の化合物を選択するための方法を提供し、この方法においてはスキーム1の完了後、in vitro HDACアッセイが次の工程となる。典型的には、前記アッセイは、被験化合物およびSAHAを、各種濃度で、希釈したHeLa核抽出物と接触させ、HeLa核抽出物に対する該被験化合物のIC50とSAHAのそれとを測定することを含む。Hela核抽出物に対して測定されたIC50値が、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50以下である被験化合物は、SAHAが示すものと少なくとも同等な阻害活性を有すると理解されるべきである。典型的には、前記アッセイはHDAC蛍光活性アッセイキット(Biomol,UK)を用いて行われ、被験化合物は分析前に還元される。
【0051】
他の一実施形態において、本発明はSAHAが示すものと少なくとも同等のヒト癌細胞増殖阻害活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、該方法は、構造IXまたはXの化合物を上記で定義したスキーム1により調製し、その後、このようにして得られた化合物をスクリーニングして、そのヒト癌細胞増殖阻害剤としての活性を測定することを含む。
【0052】
各種のアッセイがヒト癌細胞増殖阻害の試験に適しており、スキーム1で得られた化合物の活性を測定してSAHAのものと比較することに使用できることは、当業者の理解するところであろう。従って、ヒト癌細胞増殖に対する被験化合物のIC50を、例えばin vitroアッセイにおいて測定し、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50と比較することができる。被験化合物がSAHA以下のIC50値を有する場合、それはSAHAが示すものと少なくとも同等の阻害活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この実施形態において、この工程は、被験化合物およびSAHAを、各種濃度で、MCF7乳癌、HUT78 T細胞白血病、A2780卵巣癌、PC3またはLNCAP前立腺癌細胞株と接触させ、該細胞株に対する被験化合物のIC50とSAHAのそれとを測定することを含んだin vitroアッセイを含む。これら細胞株のいずれかに対して測定されたIC50値が、同一のアッセイ条件下におけるSAHAのIC50以下である被験化合物は、SAHAと少なくとも同等な阻害活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この実施形態において、前記アッセイはCyQuant(登録商標)アッセイシステム(Molecular Probes, Inc. USA)を用いて行われる。
【0053】
他の好ましい一実施形態において、本発明はSAHAが示すものと少なくとも同等の抗炎症活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、該方法は、構造IXまたはXの化合物を上記で定義したスキーム1により調製し、その後このようにして得られた化合物をスクリーニングして、その抗炎症活性を測定することを含む。
【0054】
各種のアッセイが化合物の抗炎症活性の評価に適していることは、当業者の理解するところであろう。SAHAと比較した被験化合物の抗炎症活性は、例えば、化合物が末梢血単核球(PBMC)からのTNFαの産生を阻害する活性を、SAHAとの比較において測定することで決定してよい。従って、被験化合物がPBMCからのTNFαの産生を阻害する能力を、例えばアッセイにおいて測定し、同一アッセイ条件下でのSAHAの活性と比較することが出来る。被験化合物が同一アッセイ条件下でSAHA以上のTNFα産生に対するin vitro阻害活性を有する場合、それはSAHAが示す活性と少なくとも同等の抗炎症活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この工程はQuantikine(登録商標)ヒト−αアッセイキット(R&D systems、Abingdon UK)を用いて行われる。
【0055】
この実施形態の他の態様において、SAHAと比較した被験化合物の抗炎症活性は、化合物がBalb/cマウスの炎症を抑制する活性を、SAHAとの比較において測定することで決定してよい。被験化合物が同一アッセイ条件下でSAHA以上のin vivo抑制活性を有する場合、それはSAHAが示す活性と少なくとも同等な抗炎症活性を有すると理解されるべきである。典型的には、この実施形態において、本工程は、被験化合物およびSAHAが、化学物質負荷により誘導されたBalb/cマウスの炎症を抑制するin vivoでの活性を評価することにより行われる。典型的には、前記化学物質負荷はマウスへのオキサラゾン(oxalazone)またはアセトンの局所投与を伴う。この実施形態において、調査対象の化合物は化学物質負荷の前または後に用いてよい。
【0056】
他の好ましい一実施形態において、本発明は、SAHAが示すものと少なくとも同等の、MCF7細胞における優勢なG2/M期停止または細胞死を誘導する活性を有する化合物を選択するための方法を提供し、該方法は、構造IまたはXの化合物を上記定義のスキーム1により調製し、その後、このようにして得られた化合物をスクリーニングして、MCF7細胞において優勢なG2/M期停止または細胞死を誘導する活性をSAHAとの比較において測定することを含む。
【0057】
本発明の化合物はHDACの阻害剤であると認められる。本発明の化合物は従って治療的に有用である。
【0058】
本発明の化合物およびそれらを含む組成物は、各種の剤形で投与してよい。一実施形態において、本発明の化合物を含む医薬組成物は、経口、経腸、非経口、鼻腔内、もしくは経皮投与、または吸入もしくは坐剤による投与に適した形式に製剤してよい。投与の典型的な経路は、非経口、鼻腔内もしくは経皮投与、または吸入による投与である。
【0059】
本発明の化合物は経口的に、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、分散可能な(dispersible)粉末剤または顆粒剤として、投与することが出来る。本発明の好ましい医薬組成物は経口投与に適した組成物、例えば錠剤およびカプセル剤である。
【0060】
本発明の化合物は非経口的に投与してもよく、それは皮下でも、静脈内でも、筋肉内でも、胸骨内でも、経皮的でもよく、または注入(infusion)によっても投与してよい。該化合物は坐剤として投与してもよい。
【0061】
本発明の化合物は吸入により投与してもよい。吸入薬物の利点は、経口経路で摂取される多くの薬物と比べ、血液供給に富む領域に直接送達されることである。従って、肺胞が莫大な表面積と豊富な血液供給とを有するために吸収が非常に速く、かつ初回通過代謝が回避される。さらなる利点は肺系統の疾患の治療であり、吸入によって薬物が治療を要する細胞近傍まで送達される。
【0062】
本発明はこのような医薬組成物を含む吸入装置も提供する。典型的には該装置は、薬物を吸入器から押し出すための、医薬的に許容される化学的噴射剤(chemical propellant)を有する定量吸入器(MDI)である。
【0063】
本発明の化合物は鼻腔内投与により投与してもよい。鼻腔の高度に透過性の組織は薬物に対して非常に受容性があり、錠剤型の薬物と比べ、薬物を速やかにかつ効率的に吸収する。経鼻的なドラッグデリバリーは注射よりも苦痛が少なく、侵襲的でもないため、患者の不安が少ない。この方法によれば吸収が非常に速く、通常は初回通過代謝が回避され、そのため患者間でのばらつきが減少する。さらに、本発明はこのような医薬組成物を含む鼻腔内投与装置(intranasal device)も提供する。
【0064】
本発明の化合物は経皮投与により投与してもよい。本発明は従って本発明の化合物、またはその医薬的に許容される塩を含む経皮パッチも提供する。
【0065】
本発明の化合物は舌下投与により投与してもよい。本発明は従って本発明の化合物、またはその医薬的に許容される塩を含む舌下錠も提供する。
【0066】
本発明の化合物は、典型的には、医薬的に許容される担体または希釈剤とともに投与するために製剤される。
【0067】
本発明の化合物は、抗菌剤;あるいは、患者内に、または患者上もしくは患者内に生息する共生もしくは寄生生物内に、存在する可能性があって該化合物を分解し得るプロテアーゼ酵素の阻害剤;等の、患者の正常な代謝以外の過程によって前記物質が分解されるのを減ずる薬剤とともに製剤されてもよい。
【0068】
経口投与のための分散液(liquid dispersion)はシロップ剤、乳剤および懸濁剤であってよい。懸濁剤および乳剤は担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含んでいてもよい。筋肉内注入用の懸濁剤または溶液は、前記活性化合物とともに医薬的に許容される担体、例えば滅菌水;オリーブ油;オレイン酸エチル;プロピレングリコール等のグリコール類;および所望により、適した量の塩酸リドカイン;を含んでいてよい。
【0069】
注射または吸入のための溶液は、担体として、例えば滅菌水を含んでいてよく、または好ましくは該溶液は無菌、水性、等張食塩液の形態であってよい。
【0070】
本発明の化合物はHDACに媒介される疾患の治療または予防において治療上、有用である。従って、本発明は、HDACの活性に大きく影響される疾患の治療または予防における使用のための薬物の製造における、構造IXもしくはXの化合物またはその医薬的に許容される塩の使用を提供する。さらに、HDACに媒介される疾患に罹った、または罹りやすい患者を治療する方法も提供され、該方法は前記患者に有効量の構造IXもしくはXの化合物、そのアイソスター、またはその医薬的に許容される塩を投与することを含む。
【0071】
一実施形態において、本発明の化合物は、HDACの他の公知の阻害剤、例えばSAHAと組み合わせて用いてよい。この実施形態において、この組み合わせ製品は、該薬物のそれぞれを同時に、別々に、または順次用いるためにそれらを含むように製剤されてよい。
【0072】
本発明は従って、HDACの他の公知の阻害剤、例えばSAHAとの共投与に使用するための薬物の製造における、構造IXもしくはXの化合物、またはそのアイソスターもしくは医薬的に許容される塩の使用を提供する。
【0073】
本発明の化合物は癌の治療および予防の両者において用いることが出来、また単独療法において、または併用療法において用いることが出来る。併用療法において用いられる場合、本発明の化合物は典型的には白金錯体等の小化合物、代謝拮抗剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、放射線、抗体を用いた療法(例えば、ハーセプチンおよびリツキシマブ)、抗癌ワクチン注射、遺伝子治療、細胞治療、ホルモン治療、またはサイトカイン療法とともに用いられる。
【0074】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、癌の治療において他の化学療法薬または抗腫瘍薬と組み合わせて用いられる。このような他の化学療法薬または抗腫瘍薬の例としては、ミトキサントロン;ビンクリスチンおよびビンブラスチン等のビンカ・アルカロイド;ダウノルビシンおよびドキソルビシン等のアントラサイクリン系抗生物質;クロラムブシルおよびメルファラン等のアルキル化剤;パクリタキセル等のタキサン類;メトトレキサートおよびトムデックス等の抗葉酸剤;エトポシド等のエピポドフィロトキシン類;イリノテカンおよびその活性代謝物SN38等のカンプトテシン類;ならびに国際公開第02/085400号に開示されているDNAメチル化阻害剤等のDNAメチル化阻害剤;が挙げられる。
【0075】
本発明によると、従って、本発明の化合物と他の化学療法薬または抗腫瘍薬とを含む製品が、癌の緩和において同時に、別々にまたは順次用いるための組み合わせ製剤として提供される。さらに本発明によって提供されるのは、他の化学療法薬または抗腫瘍薬との共投与による癌の緩和において用いるための薬物の製造における、上記定義の構造IXもしくはXの化合物、またはそのアイソスターもしくはその医薬的に許容される塩の使用である。
【0076】
本発明の化合物と前記の他の薬剤はどのような順序で投与されてもよい。これら両者の場合において、本発明の化合物と前記の他の薬剤とは一緒に、または、別々の場合には医師が決定したどのような順序においても、投与してよい。
【0077】
HDACはいくつかの異なる疾患の病理および/または症候に寄与しているとされており、HDACの阻害による患者内のHDAC活性減少を、これらの病状に治療的に対処するために用いることが出来る。本発明のHDAC阻害剤を用いて治療することが出来る各種疾患の例が本明細書に記載されており、構造IXまたはXにより表された本発明の化合物の使用が本明細書に含まれる。なお、HDACが各種経路において果たす生物学的役割がより完全に理解されるようになるとともに、本明細書に開示されたもの以外のさらなる疾患も、本発明の化合物の用途として将来同定されることがあり得る、ということが注記される。
【0078】
本発明のHDAC阻害剤を治療に用いることが出来る適応症の一群として、望ましくない、または制御されない細胞増殖を伴うものが挙げられる。このような適応症の例としては、良性腫瘍;原発腫瘍および腫瘍転移等の各種癌;再狭窄(冠動脈、頸動脈および脳の病変等);内皮細胞の異常刺激(アテローム性動脈硬化症);手術による生体組織に対する傷害;異常な創傷治癒;異常血管形成;組織の線維化を引き起こす疾患;反復動作疾患(repetitive motion disorder);高度には血管新生していない組織の疾患;ならびに臓器移植と関連した増殖反応が挙げられる。HDAC阻害剤のより具体的な適応症の例としては、前立腺癌、肺癌、急性白血病、多発性骨髄腫、膀胱癌、腎癌、乳癌、大腸癌、神経芽細胞腫および黒色腫が挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
一実施形態において、望ましくない制御されない細胞増殖と関連した疾患を治療するための方法が提供される。該方法は制御されない細胞増殖に罹患している患者に治療的有効量の本発明のHDAC阻害剤を投与し、この制御されない細胞増殖を減少させることを含む。用いるべき阻害剤の具体的投与量は、病状の重篤度、投与経路、および主治医により決定されうる関連要因に依存するであろう。一般に、許容される有効な1日量は、制御されない細胞増殖を有効に減速させるか、または無くすのに十分な量である。
【0080】
本発明のHDAC阻害剤は、他の薬剤と併せて用いて、望ましくない制御されない細胞増殖を阻害してもよい。本発明のHDAC阻害剤と合わせて用いてよい他の抗細胞増殖剤の例としては、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、アンギオスタチン(登録商標)タンパク質、エンドスタチン(登録商標)タンパク質、スラミン、スクアラミン、メタロプロテイナーゼ−1組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ−2組織阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニ殻から調製)、硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、マトリックス代謝のモジュレーター、例えばプロリン類似体((1−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,l−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン)、β−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン;メトトレキサート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン−血清、chimp−3、キモスタチン、β−シクロデキストリンテトラデカサルフェート、エポネマイシン;フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、β−1−抗コラゲナーゼ−血清、α2−抗プラスミン、ビサントレン、ロベンザリット2ナトリウム、n−(2−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸2ナトリウム、すなわち「CCA」、サリドマイド;アンゴスタチックステロイド(angostatic steroid)、カルボキシアミノイミダゾール;BB94等のメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられるがこれらに限定されない。用いてもよい他の抗血管新生剤の他の例としては、抗体、好ましくは以下の血管新生促進因子(βFGF、αFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SFおよびAng−1/Ang−2)に対するモノクローナル抗体が挙げられる。Ferrara N. and Alitalo, K. ”Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors” (1999) Nature Medicine 5:1359−1364。
【0081】
一般に、良性腫瘍の細胞は分化した5つの特徴を保持しており、完全に制御されない様式では分裂しない。良性腫瘍は通常局所的であり、かつ非転移性である。本発明のHDAC阻害剤を用いて治療出来る良性腫瘍の具体的な種類の例としては、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経繊維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫(bile duct cystanoma)、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマおよび化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0082】
悪性腫瘍の場合においては、細胞は未分化となり、生体の成長抑制シグナルに対して反応せず、制御されない様式で増殖する。悪性腫瘍は浸潤性であり、離れた部位に広がり得る(転移)。悪性腫瘍は一般に2つのカテゴリーに分かれる:原発性および二次性である。原発性腫瘍はそれが見出される組織から直接生ずる。二次性腫瘍、すなわち転移腫瘍は、生体の他の場所で発生し、今や離れた器官へと広がった腫瘍である。転移の一般的な経路は隣接する組織への直接的な増殖、脈管系またはリンパ系を介した拡散、および組織表面や体内の空間(腹水、脳脊髄液等)に沿った拡散である。
【0083】
原発性・二次性を問わず、本発明のHDAC阻害剤を用いて治療し得る癌または悪性腫瘍の具体的な種類としては、白血病;乳癌;皮膚癌;骨癌;前立腺癌;肝癌;肺癌;脳腫瘍;喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、大腸、胃、気管支、腎臓の癌;基底細胞癌;潰瘍性および乳頭状の両者の扁平上皮癌;転移性皮膚癌;骨肉腫;ユーイング肉腫、細網肉種;骨髄腫;巨細胞腫;小細胞肺癌;胆石;島細胞腫;原発性脳腫瘍;急性および慢性リンパ細胞腫および顆粒細胞腫;毛様細胞腫(hairy−cell tumor);腺腫;過形成;髄様癌;褐色細胞腫;粘膜神経腫;腸神経節細胞腫;過形成角膜神経腫瘍;マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor);ウィルムス腫;セミノーマ;卵巣腫瘍;平滑筋腫(leiomyomater tumor);子宮頸部形成異常および非浸潤性癌(in situ carcinoma);神経芽腫;網膜芽細胞腫;軟部肉腫;悪性カルチノイド;局所性皮膚病変;菌状息肉腫;横紋筋肉腫;カポジ肉腫;骨原性肉腫および他の肉腫;悪性高カルシウム血症;腎細胞腫瘍;真性赤血球増加症;腺癌;多形性膠芽腫;白血病;リンパ腫;悪性黒色腫;類表皮癌;ならびに他の癌および肉腫;が挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
本発明のHDAC阻害剤は手術中の生体組織の損傷による異常な細胞増殖を治療するのに用いてもよい。この損傷は関節手術、腸手術およびケロイド瘢痕化等、各種の外科的処置の結果生じ得る。線維性組織を生成する疾患の例としては気腫が挙げられる。本発明を用いて治療し得る反復動作疾患の例としては手根管症候群が挙げられる。本発明を用いて治療し得る細胞増殖性疾患の例としては骨腫瘍が挙げられる。
【0085】
本発明のHDAC阻害剤を用いて治療し得る、臓器移植に付随した増殖反応の例としては、潜在的な臓器拒絶反応または関連する合併症の原因となる増殖反応が挙げられる。具体的には、これらの増殖反応は心臓、肺、肝臓、腎臓および他の生体器官または器官系の移植の際に起こりうる。
【0086】
本発明を用いて治療し得る異常血管形成の例としては、関節リウマチ;虚血再灌流と関連した脳浮腫および損傷;皮質虚血;卵巣過形成および血管過多(多嚢胞性卵巣症候群);子宮内膜症;乾癬;糖尿病性網膜症、ならびに未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)等の他の眼の脈管形成疾患;黄斑変性;角膜移植拒絶;血管新生緑内障(neuroscular glaucoma)およびOster−Webber症候群に付随するものが挙げられる。
【0087】
本発明により治療され得る、制御されない血管新生に付随した疾患の例としては、網膜/脈絡膜血管新生および角膜血管新生が挙げられるが、これらに限定されない。網膜/脈絡膜血管新生の例としては、ベスト病、近視、視神経乳頭小窩、シュタルガルト病(Stargart disease)、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮黄色腫(pseudoxanthoma elasticum)頚動脈閉塞性疾患(carotid apo structive disease)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎(vitritis)、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎(chroiditis)を引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後合併症(trauma and post−laser complication)、ルベシス(rubesis)に関連する疾患(隅角の血管新生)、ならびに線維血管組織または線維組織の異常増殖によって生ずる、すべての形態の増殖性硝子体網膜症を含む疾患が挙げられるが、これらに限定されない。角膜血管新生の例としては、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過度の使用(overwear)、アトピー性角膜炎、上輪部角膜炎、翼状片乾燥角膜炎(pterygium keratitis sicca)、シェーグレン、酒さ性ざ瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁性表皮剥離(marginal keratolysis)、多発性動脈炎、Wegenerサルコイドーシス、強膜炎、ペリフィゴイド(periphigoid)放射状角膜切開、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染ならびにカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
制御されない血管新生と関連した慢性炎症性疾患も本発明のHDAC阻害剤を用いて治療され得る。慢性炎症は、炎症細胞の流入を維持するために毛細血管の芽(sprout)が連続的に形成されることに依存している。炎症細胞の流入および存在により肉芽腫が産生され、そのため慢性炎症状態が維持される。HDAC阻害剤を単独で、または他の抗炎症剤と併せて用い、血管新生を阻害することで、肉芽腫の形成を防止し、従って疾患を軽減することが出来る。慢性炎症性疾患の例としては、クローン病および潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患、乾癬、サルコイドーシス、ならびに関節リウマチが挙げられるがこれらに限定されない。
【0089】
クローン病および潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患は、消化管の各種部位における慢性炎症および血管新生を特徴とする。例えば、クローン病は最も一般的には回腸末端部および大腸を冒す慢性貫壁性(transmural)炎症性疾患として発生するが、口から肛門までの消化管のいずれの部位および肛門周囲領域においても発生し得る。クローン病患者は一般に、腹痛を伴う慢性下痢、発熱、食欲不振、体重減少および腹部膨満を有する。潰瘍性大腸炎も慢性、非特異的、炎症性の、結腸粘膜で生ずる潰瘍性疾患であり、血性下痢の存在を特徴とする。これらの炎症性腸疾患は一般に、炎症細胞の筒に囲まれた新たな毛細血管の芽を伴う、消化管全体にわたる慢性肉芽腫性炎により引き起こされる。これら阻害剤による血管新生の阻害により、この芽の形成が阻害され、肉芽腫の形成が防止される。炎症性腸疾患は皮膚病変等の腸管外症状も示す。このような病変は炎症および血管新生を特徴とし、消化管以外の多くの部位で生じ得る。本発明のHDAC阻害剤による血管新生の阻害によって炎症細胞の流入を減少させ、病変の形成を防止することが出来る。
【0090】
他の慢性炎症性疾患であるサルコイドーシスは、多臓器肉芽腫性疾患として特徴付けられる。この疾患の肉芽腫は生体内のいずれの部位にも形成され得る。従って、症状は該肉芽腫の部位、および該疾患が活動性であるかによって異なる。該肉芽腫は、炎症細胞の恒常的な供給を提供する新生毛細血管芽(angiogenic capillary sprout)により生成される。本発明によるHDAC阻害剤を用いて血管新生を阻害することにより、このような肉芽腫形成を阻害することが出来る。同じく慢性で再発性の炎症性疾患である乾癬は、各種サイズの丘疹および斑により特徴付けられる。これらの阻害剤を単独で、または他の抗炎症剤と併せて用いる治療により、特徴的病変を維持するのに必要な新生血管の形成を防止し、患者に症状の緩和を提供する。
【0091】
関節リウマチ(RA)も慢性炎症性疾患であり、末梢関節の非特異的炎症によって特徴付けられる。関節の滑膜表層の血管に血管新生が起こるとされている。新生血管網が形成されることに加え、内皮細胞がパンヌス増殖および軟骨破壊をもたらす因子および活性酸素種を放出する。血管新生に関与する因子は関節リウマチの慢性的炎症状態に活発に寄与し、その維持を補助する場合がある。本発明によるHDAC阻害剤を単独で、または他の抗RA剤と併せて用いる治療により、慢性炎症を維持するのに必要な新生血管網の形成が防止され得る。
【0092】
本発明の化合物はさらに、肥大、高血圧、心筋梗塞、再灌流障害、虚血性心疾患、狭心症、不整脈、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症および脳卒中等の心臓/脈管系疾患の治療において用いることが出来る。前記化合物はさらに、脳卒中、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病を含む急性および慢性神経系疾患等の神経変性疾患/CNS疾患の治療に用いることが出来る。
【0093】
本発明の化合物は抗微生物剤、例えば抗菌剤としても用いることが出来る。本発明は従って細菌感染の治療における使用のための化合物も提供する。本発明の化合物はウイルス、細菌、真菌および寄生虫感染に対する抗感染症化合物として用いることが出来る。感染の例としては原生動物寄生感染(マラリア原虫、クリプトスポリジウムパルバム、トキソプラズマ原虫、サルコシスティス・ニューロナおよびアイメリア属sp.等)が挙げられる。
【0094】
本発明の化合物は特に望ましくないまたは制御されない細胞増殖の治療に、好ましくは良性腫瘍/過形成および悪性腫瘍の治療に、より好ましくは悪性腫瘍の治療に、最も好ましくはCCL,乳癌およびT細胞リンパ腫の治療に適している。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、癌、心臓肥大、慢性心不全、炎症状態、循環器疾患、異常血色素症、サラセミア、鎌状赤血球病、CNS障害、自己免疫疾患、糖尿病、骨粗しょう症、MDS、良性前立腺肥大、口腔白板症、遺伝に関連した代謝障害、感染、Rubens−Taybi、脆弱X症候群、もしくはα−1アンチトリプシン欠乏症を緩和するために、または創傷治癒を促進するために、または毛包を保護するために、または免疫抑制剤として、用いられる。
【0096】
典型的には、前記炎症状態は皮膚炎症状態(乾癬、座瘡、湿疹等)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病または大腸炎である。
【0097】
典型的には、前記癌は慢性リンパ球性白血病、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、中皮腫、またはT細胞リンパ腫である。
【0098】
典型的には、前記循環器疾患は高血圧、心筋梗塞(MI)、虚血性心疾患(IHD)(再灌流)、狭心症、不整脈、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、心筋炎、うっ血性心不全、原発性および続発性、すなわち拡張型(うっ血性)心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、末梢血管疾患、頻脈、高血圧または血栓症である。
【0099】
典型的には、前記の遺伝に関連した代謝障害は嚢胞性線維症(CF)、ペルオキシソーム欠損症または副腎白質ジストロフィである。
【0100】
典型的には、本発明の化合物は臓器移植後の免疫抑制剤として用いられる。
【0101】
典型的には、前記感染はウイルス、細菌、真菌または寄生虫感染、特にS.aureus、P.acne、CandidaまたはAspergillusによる感染である。
【0102】
典型的には、前記CNS障害はハンチントン病、アルツハイマー病、多発性硬化症または筋萎縮性側索硬化症である。
【0103】
本実施形態において、本発明の化合物は癌、心肥大、慢性心不全、炎症状態、循環器疾患、異常血色素症、サラセミア、鎌状赤血球病、CNS障害、自己免疫疾患、糖尿病または骨粗しょう症を緩和するために用いてよく、または免疫抑制剤として用いられる。
【0104】
本発明の化合物は慢性リンパ球性白血病、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、中皮腫、T細胞リンパ腫、心肥大、慢性心不全または皮膚炎症状態、特に乾癬、座瘡または湿疹を緩和するために用いてもよい。
【0105】
本発明の化合物は動物の治療に、好ましくは哺乳動物の治療に、より好ましくはヒトの治療に用いることが出来る。
【0106】
本発明の化合物は、適宜、このような症状の発生を減少させるために予防的に用いてよい。
【0107】
治療的有効量の本発明の化合物が患者に投与される。典型的な投与量は体重1kgあたり約0.001〜50mgであり、具体的な化合物の活性;治療を受ける患者の年齢、体重および状態;疾患の種類および程度;ならびに投与の頻度および経路による。
【実施例】
【0108】
化合物XIaおよびXIb:3−((E)−1S,9S,20R)−5−ヒドロキシ−6,6−シクロプロピル−3,8,18,21−テトラオキソ−2−オキサ−11,12−ジチア−7,19,22−トリアザ−ビシクロ[7.7.6]ドコサ−15−エン−20−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステルのジアステレオマー
【化16】



【0109】
(2):3−(1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−シクロプロピル)−3−オキソ−プロピオン酸メチルエステル
CHCl(44mL)中の1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−シクロプロパンカルボン酸1(2.077g、10.3mmol)に、DMAP(258mg、2.11mmol)、ペンタフルオロフェノール(2.100g、11.4mmol)およびEDAC(2.369g、12.3mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間50分間攪拌した。1M HCl水溶液(40mL)を加え、層を分離し、飽和NaHCO水溶液(40mL)、次いで飽和食塩水(40mL)で洗浄した後、有機層を乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮し、高真空下に置いた。−78℃のTHF(12.5mL)に、LDA(2.0M、17mL、34mmol)、次いで酢酸メチル(2.6mL、32.7mmol)を滴下した。反応液を30分間攪拌し、1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−シクロプロパンカルボン酸の中間体エステルをTHF(35mL)中に加え、生じた混合物を3時間20分間攪拌した。該混合物を1M HCl水溶液(50mL)でクエンチし、層を分離し、飽和NaHCO水溶液(50mL)および食塩水(50mL)で洗浄した。EtOAcによる抽出の後、有機層を合わせて乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 3:7−4:6−1:1 EtOAc/ヘキサン)、2(1.0526g、4.09mmol、40%)を黄色油として生成した。
【表1】

【0110】
(3):3−(1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−シクロプロピル)−3−ヒドロキシ−プロピオン酸メチルエステル
−78℃のHPLC MeOH(20mL)中の2(1.053g、4.09mmol)に、KBH(764.3mg、14.2mmol)を少量ずつ加え、生じた反応混合物を45分間撹拌し、−20℃に昇温させ、その温度でさらに30分間攪拌した。該混合物を0℃に昇温させ、さらに2時間攪拌し、その後、該混合物をAcOHを用いてpHが7未満になるまでクエンチした。次いで、該混合物を真空下で濃縮し、EtOAc(70mL)と、次いで水(40mL)を添加した。層を分離し、水相をEtOAc(60mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、飽和食塩水(60mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)して、真空下で濃縮した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 3:7−4:6−1:1 EtOAc/ヘキサン)、3(436mg、1.68mmol、41%)を白色固体として生成した(ジアステレオマー比1:1)。
【表2】

【0111】
(4):3−{1−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−シクロプロピル}−3−ヒドロキシ−プロピオン酸メチルエステル
0℃、アルゴン雰囲気下の3(431.3mg、1.66mmol)のCHCl溶液(20mL)に、TFA(4mL、20% v/v)を滴下し、該反応混合物を2時間35分間攪拌した。溶媒を真空下、30℃未満で除去した後、高真空下に2時間置いた。0℃のPyBOP(734mg、1.41mmol)およびFmoc−D−Cys(STrt)−OH(825mg、1.41mmol)のCHCl溶液(15mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(1.2mL、6.89mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、該混合物を2分間攪拌した。次に、3の粗アミンのMeCN溶液(15mL)を加え、反応液を0℃で1時間、次いで室温で2時間攪拌し、その後、溶媒を真空下で除去した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 4:6−4.5:5.5−5.5:4.5 EtOAc/ヘキサン)、4(924mg、1.27mmol、90%)を、白色固体として、そして、H NMRによって分離されないジアステレオマーの混合物として、生成した。
【表3】

【0112】
(5):(R)−4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(1−ヒドロキシ−2−メトキシカルボニル−エチル)−シクロプロピルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
MeCN(10mL)中の4(908mg、1.28mmol)にジエチルアミン(1mL、10% v/v)を加え、該反応混合物を2時間攪拌した。該混合物を真空下で濃縮し、MeCN(3x20mL)を添加し、その後真空下で除去し、粗アミンを高真空下で2時間置いた。次に、0℃のPyBOP(705mg、1.35mmol)およびFmoc−D−Glu(OBu)−OH(577.8mg、1.36mmol)のCHCl溶液(15mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.70mL、4.02mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、該混合物を2分間攪拌した。4の粗アミン誘導体のMeCN溶液(15mL)を添加し、該混合物を室温で16時間攪拌し、次いで溶媒を真空下で除去した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 4:6−6:4 EtOAc/ヘキサン)、5(1.099g、1.20mmol、94%)を、白色固体として:R 0.54 EtOAc/ヘキサン(6:4)、そして、H NMRによって分離されないジアステレオマーの混合物として、生成した。
【表4】

【0113】
(7):(R)−4−{(S)−1−[1−(1−ヒドロキシ−2−メトキシカルボニル−エチル)−シクロプロピルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−4−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−酪酸 tert−ブチルエステル
MeCN/CHCl(20mL)中の5(1.088g、1.19mmol)にジエチルアミン(1.5mL、7.5% v/v)を加え、生成した混合物を1.5時間攪拌した。該混合物を真空下で濃縮し、MeCN(4x20mL)を添加し、その後真空下で除去し、粗アミンを高真空下で2時間置いた。次に、PyBOP(650mg、1.25mmol)およびカルボン酸6(506.5mg、1.21mmol(Yurek−George, A. et al., J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030に概説されている手順に従い調製))のCHCl溶液(15mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.65mL、3.73mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、該混合物を3分間攪拌した。その結果生じた5の脱保護アミンのMeCN溶液(15mL)を添加し、該混合物を室温で16時間攪拌し、次いで溶媒を真空下で除去した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 4:6−1:1−6:4−7:3−8:2 EtOAc/ヘキサン)、7(940mg、0.862mmol、72%)を、白色固体として、そして、H NMRによって分離されないジアステレオマーの混合物として、生成した。
【表5】

【0114】
(8):(R)−4−{(S)−1−[1−(2−カルボキシ−1−ヒドロキシ−エチル)−シクロプロピルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−4−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−酪酸 tert−ブチルエステル
0℃のTHF(12mL)中の7(927.1mg、0.850mmol)に、LiOH(30.6mg、1.28mmol)水溶液(3mL)を加え、該反応混合物を3.25時間攪拌した。次に、該混合物を1M HCl水溶液(20mL)でクエンチし、水(20mL)で希釈し、EtOAc(60mL)で処理した。層を分離し、産物をEtOAc(3x60mL)で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮して産物8(789.1mg、86%)を白色固体として生成した(ジアステレオマー比1:1)。化合物8は次の工程のさらなる精製に使用した[MS(ES)1097.4(100%、[M+Na])]。
【0115】
(9):3−[(6S,9R,13S)−17−ヒドロキシ−5,8,11,15−テトラオキソ−13−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−6−トリチルスルファニルメチル−14−オキサ−4,7,10−トリアザ−スピロ[2.14]ヘプタデカ−9−イル]プロピオン酸 tert−ブチルエステル
MNBA(303.7mg、0.882mmol)およびDMAP(215.6mg、1.76mmol)のCHCl溶液(135mL)に、前記酸8(787mg、0.731mmol)のCHCl溶液(550mL)を3時間かけて滴下し、該混合物を16時間攪拌した。次いで該混合物を真空下で濃縮し、褐色固体を生成した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 0:1−1:99−2:98−3:97 MeOH/CHCl)、9(430.2mg、0.407mmol、56%)を白色固体として生成した。ジアステレオマーはフラッシュカラムクロマトグラフィーにより分離可能であったが、混合物として次の反応に使用した。
【表6】

【0116】
化合物XIaおよびXIb:3−((E)−(1S,9S,20R)−5−ヒドロキシ−6,6−シクロプロピル−3,8,18,21−テトラオキソ−2−オキサ−11,12−ジチア−7,19,22−トリアザ−ビシクロ[7.7.6]ドコサ−15−エン−20−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
ヨウ素(1.045g、4.12mmol)のCHCl/MeOH(9:1)溶液(0.84L)に、9(430.2mg、0.410mmol)のCHCl/MeOH(9:1)溶液(0.22L)を4時間40分間かけて滴下した。次いで、該反応混合物をさらに30分間攪拌し、その後チオ硫酸ナトリウム(300mL、100当量)を加えた。生成した層をその後分離し、産物をEtOAc(3x250ml)で抽出した。次に有機層を分離して合わせ、乾燥(MgSO)し、溶媒を真空下で除去した。その後の精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 1:99−2:98−3:97 MeOH/CHCl)、異性体1である化合物XIa(73.8mg、0.129mmol、32%)を白色固体として、そして、異性体2である化合物XIa(60.27mg、0.105mmol、26%)を白色固体として、生成した。
異性体1(化合物XIa):
【表7】


異性体2(化合物XIb):
【表8】

【0117】
化合物XII:3−((E)−(1S,9S,20R)−5−ヒドロキシ−6,6−シクロプロピル−3,8,18,21−テトラオキソ−2−オキサ−11,12−ジチア−7,19,22−トリアザ−ビシクロ[7.7.6]ドコサ−15−エン−20−イル)−プロピオン酸
【化17】



化合物XIa(35.94mg、0.0629mmol)にTFA(2mL)およびトリエチルシラン(100μL、0.626mmol)を室温で加え、該反応混合物を1時間40分間攪拌した。該混合物をその後真空下で濃縮し、精製をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 1:99−2:98−3:97−4:96 MeOH/CHCl)、化合物XII(14.1mg、0.0343mmol、44%)を白色固体として生成した。
【表9】

【0118】
化合物XIII:3−((E)−(1S,9S,20R)−5−ヒドロキシ−6,6−シクロプロピル−3,8,18,21−テトラオキソ−2−オキサ−11,12−ジチア−7,19,22−トリアザ−ビシクロ[7.7.6]ドコサ−15−エン−20−イル)−N−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)−プロピオンアミド
【化18】



化合物XII(14.1mg、0.0273mmol)、EDC(21.23mg、0.111mmol)およびHOBt(4.40mg、0.0326mmol)に、THF(0.32mL)を、次いでCHCl(1.3mL)を加え、該反応混合物を2分間攪拌した。2,2,2−トリフルオロエチルアミン(25μL、0.314mmol)を加え、該混合物を18時間攪拌した。該混合物をその後真空下で濃縮し、CHCl、次いで1M HCl水溶液を加え層を分離し、粗生成物をEtOAcで抽出した。有機層(organics)を合わせて乾燥(MgSO)し、精製をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 1:99−2:98−3:97−4:96 MeOH/CHCl)、XIII(9.49mg、0.0159mmol、58%)を白色固体として生成した。
【表10】

【0119】
化合物XIV 3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−ジメチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
および
化合物XV:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−ジメチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸
【化19】



【0120】
(3):[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−2−メチル−プロピオニルアミノ]−酢酸メチルエステル
市販の2(1.29g、3.96mmol、1.1当量)およびPyBOP(2.06g、3.96mmol、1.1当量)のMeCN溶液(60mL)に、0℃でジイソプロピルエチルアミン(1.88mL、10.8mmol、3.0当量)を滴下した。5分後、H−Gly−(OMe).HCl、1(452mg、3.6mmol、1当量)のCHCl溶液(60mL)を該反応混合物に滴下した。次いで該溶液を室温まで一晩昇温させ、その後溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、1:3を使用)、3(1.42g、3.59mmol、99%)を白色固体として生成した。
【表11】

【0121】
(4):{2−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−2−メチル−プロピオニルアミノ}−酢酸メチルエステル
3(1.60g、4.04mmol、1当量)のMeCN溶液(80mL)に、室温でジエチルアミン(8mL、10% v/v)を滴下した。1時間後、該溶液を真空下で濃縮し、MeCN(2x20mL)とともに、次いでCHCl/ヘキサン(10mL)とともに共留去した。その後、生成した油を高真空下で3時間乾燥した。Fmoc−D−Cys−(Trt)−OH(2.60g、4.44mmol、1.1当量)およびPyBOP(2.31g、4.44mmol、1.1当量)のMeCN溶液(60mL)に、0℃にてジイソプロピルエチルアミン(1.76mL、10.1mmol、2.5当量)を滴下した。5分後、粗アミンのCHCl溶液(60mL)を該反応混合物に滴下した。その後、該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、1:1)、4(2.79g、3.76mmol、93%)を白色固体として生成した。
【表12】

【0122】
(5):(R)−4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−1−メチル−エチルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
4(1.29g、1.74mmol、1当量)のMeCN溶液(35mL)に、室温でジエチルアミン(3.5mL、10% v/v)を滴下した。1時間後、該溶液を真空下で濃縮し、MeCN(2x10mL)とともに、次いでCHCl/ヘキサン(5mL)とともに共留去した。その後、生成した油を高真空下で3時間乾燥した。Fmoc−D−Glu−(OtBu)−OH(814mg、1.91mmol、1.1当量)およびPyBOP(996mg、1.91mmol、1.1当量)のMeCN溶液(25mL)に、0℃にてジイソプロピルエチルアミン(0.76mL、4.4mmol、2.5当量)を滴下した。5分後、粗アミンのCHCl溶液(25mL)を該反応混合物に滴下した。その後、該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、2:3)、5(1.60g、1.73mmol、95%)を白色固体として生成した。
【表13】

【0123】
(6):(R)−4−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−1−メチル−エチルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
5(1.60g、1.73mmol、1当量)のMeCN溶液(35mL)に、室温にてジエチルアミン(3.5mL、10% v/v)を滴下した。1時間後、該溶液を真空下で濃縮し、MeCN(2x10mL)とともに、次いでCHCl/ヘキサン(5mL)とともに共留去した。その後、生成した油を高真空下で3時間乾燥した。(E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エン酸(758mg、1.81mmol、1.05当量)およびPyBOP(988mg、1.90mmol、1.1当量)のMeCN(25mL)溶液に、0℃にてジイソプロピルエチルアミン(0.75mL、4.3mmol、2.5当量)を滴下した。5分後、粗アミンのCHCl溶液(25mL)を該反応混合物に滴下した。その後、該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、1:4で溶出)、6(1.61g、1.46mmol、85%)を白色固体として生成した。
【表14】

【0124】
(7)3−[(9S,12R,16S)−6,6−ジメチル−2,5,8,11,14−ペンタオキソ−16−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−9−トリチルスルファニルメチル−1−オキサ−4,7,10,13−テトラアザ−シクロヘキサデカ−12−イル]プロピオン酸 tert−ブチルエステル
0℃の6(1.61g、1.46mmol、1当量)のTHF溶液(49mL)に、LiOH(52.4mg、2.19mmol、1.5当量)の水溶液(9mL)を滴下した。該混合物を1.5時間攪拌し、1N HCl(12mL)および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにEtOAc(2x15mL)およびCHCl(15mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。次に、生じたカルボン酸を高真空下で2時間乾燥した。MNBA(603mg、1.75mmol、1.2当量)およびDMAP(428mg、3.5mmol、2.4当量)のCHCl溶液(1.3L)に、粗カルボン酸のCHCl溶液(220mL)およびTHF(30mL)を3時間かけて滴下した。その後、反応混合物を一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、1:4で溶出)、7(982mg、0.92mmol、63%)を淡黄色固体として生成した。
【表15】

【0125】
化合物XIV:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−ジメチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
反応は2つの同等のバッチで始めた。
(1.16g、4.55mmol、10当量)のCHCl/MeOH(1.30L、9:1)溶液に、7(490mg、0.45mmol、1当量)の溶液を2時間にわたり室温で滴下した。該混合物をNa(0.1M、250mL)の溶液および食塩水(50mL)でクエンチした。両方の水層を合わせ、CHCl(2x100mL)およびEtOAc(100mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(CHCl/MeOH、49:1)、化合物XIV(433mg、0.74mmol、81%)を白色固体として生成した。
【表16】

【0126】
化合物XV:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−ジメチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸
化合物XIV(387.4mg、0.66mmol、1当量)のCHCl溶液(5mL)に、0℃でTFA(11mL、96mmol、150当量)を、次いでトリエチルシラン(0.51mL、3.17mmol、4.8当量)を加えた。該反応混合物を2時間攪拌し、次いで室温まで昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(CH2CL2/MeOH、19:1−>12:1)/AcOH:0.1%、化合物XV(290mg、0.55mmol、83%)を白色固体として生成した。
【表17】

【0127】
化合物XVI:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
および
化合物XVII:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸
【化20】



【0128】
(3):{[1−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−シクロプロパンカルボニル]−アミノ}−酢酸メチルエステル
市販のFmoc−1−アミノシクロプロパンカルボン酸2(850mg、2.63mmol、1.1当量)およびPyBOP(1.37g、2.63mmol、1.1当量)のMeCN溶液(40mL)に、0℃でジイソプロピルエチルアミン(1.25mL、7.17mmol、3.0当量)を滴下した。5分後、H−Gly−(OMe).HCl、1(300mg、2.39mmol、1当量)のCHCl溶液(40mL)を該反応混合物に滴下した。次いで該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、2:3で溶出)、3(940mg、2.38mmol、99%)を白色固体として生成した。
【表18】

【0129】
(4):({1−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−酢酸メチルエステル
3(0.94g、2.38mmol、1当量)のMeCN溶液(50mL)に、室温でジエチルアミン(5mL、10% v/v)を滴下した。1時間後、該溶液を真空下で濃縮し、MeCN(2x20mL)とともに、次いでCHCl/ヘキサン(10mL)とともに共留去した。その後、生成した油を高真空下で3時間乾燥した。Fmoc−D−Cys−(Trt)−OH(1.60g、2.70mmol、1.1当量)およびPyBOP(1.35g、2.70mmol、1.1当量)のMeCN溶液(45mL)に、0℃にてジイソプロピルエチルアミン(1.03mL、6.2mmol、2.5当量)を滴下した。5分後、粗アミンのCHCl溶液(25mL)を該反応混合物に滴下した。その後、該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、2:3で溶出)、4(2.79g、3.76mmol、93%)を白色固体として生成した。
【表19】

【0130】
(5):(R)−4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−シクロプロピルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
4(0.83g、1.12mmol、1当量)のMeCN溶液(22mL)に、室温でジエチルアミン(2.0mL、10% v/v)を滴下した。1時間後、該溶液を真空下で濃縮し、MeCN(2x10mL)とともに、次いでCHCl/ヘキサン(5mL)とともに共留去した。その後、生成した油を高真空下で3時間乾燥した。Fmoc−D−Glu−(OtBu)−OH(522mg、1.23mmol、1.1当量)およびPyBOP(638mg、1.23mmol、1.1当量)のMeCN溶液(20mL)に、0℃にてジイソプロピルエチルアミン(0.49mL、2.8mmol、2.5当量)を滴下した。5分後、粗アミンのCHCl溶液(20mL)を該反応混合物に滴下した。その後、該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、2:3)、5(0.97g、1.05mmol、94%)を白色固体として生成した。
【表20】

【0131】
(6):(R)−4−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−シクロプロピルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
5(0.97g、1.05mmol、1当量)のMeCN溶液(21mL)に、室温にてジエチルアミン(2.1mL、10% v/v)を滴下した。1時間後、溶液を真空下で濃縮し、MeCN(2x5mL)とともに、次いでCHCl/ヘキサン(5mL)とともに共留去した。その後、生成した油を高真空下で3時間乾燥した。
(E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エン酸(461mg、1.10mmol、1.05当量)およびPyBOP(601mg、1.16mmol、1.1当量)のMeCN(20mL)溶液に、0℃にてジイソプロピルエチルアミン(0.46mL、2.6mmol、2.5当量)を滴下した。5分後、粗アミンのCHCl溶液(20mL)を該反応混合物に滴下した。その後、該溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(ヘキサン/EtOAc、1:4で溶出)、6(1.06g、0.96mmol、91%)を白色固体として生成した。
【表21】

【0132】
(7):3−[(6S,9R,13S)−5,8,11,15,18−ペンタオキソ−13−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−6−トリチルスルファニルメチル−14−オキサ−4,7,10,17−テトラアザ−スピロ[2.15]オクタデカ−9−イル]−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
0℃の6(1.06g、0.96mmol、1当量)のTHF溶液(32mL)に、LiOH(34.5mg、1.44mmol、1.5当量)の水溶液(6mL)を滴下した。該混合物を1.5時間攪拌し、1N HCl(6mL)および食塩水(5mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにEtOAc(2x10mL)およびCHCl(10mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。次に、生じたカルボン酸を高真空下で2時間乾燥した。MNBA(397mg、1.13mmol、1.2当量)およびDMAP(281mg、2.3mmol、2.4当量)のCHCl溶液(0.80L)に、粗カルボン酸のCHCl溶液(320mL)およびTHF(15mL)を3時間かけて滴下した。その後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(CHCl/MeOH、32:1−>19:1)、7(300mg、0.28mmol、29%)を淡黄色固体として生成した。
【表22】

【0133】
化合物XVI:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
(0.71g、2.80mmol、10当量)のCHCl/MeOH(700mL、9:1)溶液に、7(300mg、0.28mmol、1当量)の溶液を2時間にわたり室温で滴下した。該混合物をNa(0.1M、250mL)の溶液および食塩水(50mL)でクエンチした。両方の水層を合わせ、CHCl(2x100mL)およびEtOAc(100mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(CHCl/MeOH、32:1−>19:1)、化合物XVI(107mg、0.18mmol、65%)を白色固体として生成した。
【表23】

【0134】
化合物XVII:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸
化合物XVI(105mg、0.18mmol、1当量)のTFA溶液(1.35mL、18mmol、100当量)に、0℃でトリエチルシラン(86μL、0.54mmol、3.0当量)を加えた。該反応混合物を3時間攪拌し、次いで室温まで昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(CHCl/MeOH、13:1−>9:1で溶出)/AcOH:0.1%、化合物XVII(90.3mg、0.17mmol、95%)を白色固体として生成した。
【表24】

【0135】
化合物XVIII:(E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−21−(3−モルホリン−4−イル−3−オキソ−プロピル)−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化21】



化合物XVII(20.4mg、0.039mmol、1当量)のMeCN溶液(700μL)に、PyBOP(22.0mg、0.042mmol、1.1当量)およびジイソプロピルエチルアミン(18μL、0.096mmol、2.5当量)を0℃にてアルゴン雰囲気下で加えた。該反応混合物を5分間攪拌し、モルホリン(3.7μL、0.042mmol、1.05当量)のCHCl溶液(700μL)を該混合物に滴下した。この溶液を室温まで一晩昇温させた。溶媒を真空下で除去した。精製はカラムクロマトグラフィー(CHCl/MeOH、1:0−>32:1)およびその後のSCX3カートリッジ(CHCl/MeOH、1:0−>99:1を使用)の使用によって行い、化合物XVIII(6.1mg、27%)を白色固体として生成した。
【表25】

【0136】
化合物XIX:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−N−(2−メトキシ−エチル)−プロピオンアミド
【化22】



0℃の化合物XVII(26mg、0.05mmol、1当量)のMeCN溶液(1mL)に、PyBOP(28.0mg、0.05mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(22μL、0.12mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。その後、CHCl(1mL)に溶解したメトキシエチルアミン(4.7μL、0.05mmol、1.1当量)の溶液を、該混合物に滴下した。該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。その後、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(1:0−>19:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、次いでCHCl/MeOH(1:0−>32:1)を用いたSCX−3カートリッジにより、精製して、化合物XIXを白色固体として生成した(13.5mg、47%)。
【表26】

【0137】
化合物XX:N−(2−シアノ−エチル)−3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオンアミド
【化23】



0℃の化合物XVII(25mg、0.05mmol、1当量)のMeCN溶液(1mL)に、PyBOP(27mg、0.05mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(21μL、0.12mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。その後、CHCl(1mL)に溶解した3−アミノプロパンニトリル(3.6μL、0.05mmol、1.1当量)の溶液を、該混合物に滴下した。該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。その後、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(19:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、次いでCHCl/MeOH(1:0−>9:1)を用いたSCX−3カートリッジにより、精製して、化合物XXを白色固体として生成した(8.0mg、29%)。
【表27】

【0138】
化合物XXI:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−ジメチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−N−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)−プロピオンアミド
【化24】



0℃の化合物XVII(26.7mg、0.05mmol、1当量)のMeCN溶液(1mL)に、PyBOP(29mg、0.05mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(22μL、0.12mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。その後、CHCl(1mL)に溶解した3,3,3−トリフルオロプロパンアミン(4.8μL、0.05mmol、1.1当量)の溶液を、該混合物に滴下した。該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。その後、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(19:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、次いでCHCl/MeOH(1:0−>19:1)を用いたSCX−3カートリッジにより、精製して、化合物XXIを白色固体として生成した(6.6mg、22%)。
【表28】

【0139】
化合物XXII:3−((E)−(1S,10S,21R)−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−N,N−ジエチル−プロピオンアミド
【化25】



0℃の化合物XVII(25.8mg、0.05mmol、1当量)のMeCN溶液(1mL)に、PyBOP(28mg、0.05mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(21μL、0.12mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。その後、CHCl(1mL)に溶解したジエチルアミン(5.3μL、0.05mmol、1.1当量)の溶液を、該混合物に滴下した。該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。その後、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(49:1−>24:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物XXIIを白色固体として生成した(13.1mg、46%)。
【表29】

【0140】
化合物XXIII:3−((E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−プロピオンアミド
【化26】



0℃の化合物XVII(20.7mg、0.04mmol、1当量)のMeCN溶液(1mL)に、PyBOP(22mg、0.04mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(17μL、0.10mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。その後、CHCl(1mL)に溶解した2−モルホリノエタンアミン(5.7μL、0.04mmol、1.1当量)の溶液を、該混合物に滴下した。該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。その後、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(12:1−>9:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、次いでCHCl/MeOH(1:0−>9:1)を用いたSCX−3カートリッジにより、精製して、化合物XXIIIを白色固体として生成した(8.5mg、34%)。
【表30】

【0141】
化合物XXIV:(E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−21−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−3−オキソ−プロピル]−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化27】



0℃の化合物XVII(27.6mg、0.05mmol、1当量)のMeCN溶液(1mL)に、PyBOP(30mg、0.05mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(23μL、0.13mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。その後、CHCl(1mL)に溶解したN−メチルピペラジン(6.0μL、0.05mmol、1.1当量)の溶液を、該混合物に滴下した。該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。その後、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(19:1−>9:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、次いでCHCl/MeOH(1:0−>0:1)およびMeOH/HO/NH(9:1:0.1)を用いたSCX−3カートリッジにより、精製して、化合物XXIVを白色固体として生成した(15.0mg、47%)。
【表31】

【0142】
化合物XXV:tert−ブチル 3−((1S,10S,21R,E)−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザスピロ[ビシクロ[8.7.6]トリコス[16]エン−7,1’−シクロブタン]−21−イル)プロパノエート
【化28】



(3):{[1−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−シクロブタンカルボニル]−アミノ}酢酸メチルエステル
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.60mL、14.82mmol)を、CHCl(150mL)中の1−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−シクロブタンカルボン酸、1(2.0g、5.93mmol)およびPyBOP(3.393g、6.52mmol)に、室温でアルゴン雰囲気下にて加えた。10分後、MeCN(150mL)およびHCl.GlyOMe、2(819mg、6.52mmol)を加えた。16時間後、該反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘキサン/EtOAc(2:1から1:3)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、3を白色固体(2.373g、98%)として生成した。
【表32】

【0143】
(4):({1−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−シクロブタンカルボニル}−アミノ)−酢酸メチルエステル
EtNH(2mL)をMeCN(18mL)中の3(2.202g、5.39mmol)に室温にてアルゴン雰囲気下で加えた。1時間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解・留去した。粗生成物を高真空下で3時間乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.35mL、13.47mmol)を、CHCl(150mL)中のFmoc−D−Cys(Trt)OH(3.473g、5.93mmol)およびPyBOP(3.086g、5.93mmol)に−10℃でアルゴン雰囲気下において加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、−10℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(150mL)中に可溶化した粗アミンに移した。次いで、該反応混合物を室温まで昇温させた。16時間後、該反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘキサン/EtOAc(80:20、ついで40:60)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、4を白色固体(1.467g、36%)として生成した。
【表33】

【0144】
(5):(R)−4−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−シクロブチルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
EtNH(2mL)を、MeCN(28mL)中の4(1.467g、1.95mmol)に、室温にてアルゴン雰囲気下で加えた。1時間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解・留去した。粗生成物は次の工程に用いる少なくとも3時間前に高真空下で乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.85mL、4.87mmol)を、CHCl(100mL)中のFmoc−D−Glu(tBu)OH(910mg、2.14mmol)およびPyBOP(1.114g、2.14mmol)に0℃でアルゴン雰囲気下において加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、0℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(100mL)中に可溶化された、4の脱保護の結果生じた粗アミンに移した。次いで、反応液を室温まで昇温させた。16時間後、該反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘキサン/EtOAc(70:30から35:65)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、5を白色固体(1.485g、81%)として生成した。
【表34】

【0145】
(6):(E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エン酸
0℃において、(S,E)−3−ヒドロキシ−1−((R)−4−イソプロピル−2−チオキソチアゾリジン−3−イル)−7−(トリチルチオ)ヘプト−4−エン−1−オン(934mg、1.66mmol、Yurek−George, A. et al.,J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030の手順に従って調製)のTHF溶液(30mL)に、LiOH(196.1mg、8.19mmol)の水溶液(10mL)を加えた。該反応混合物を1時間かけて室温まで昇温させ、その後pHが2に達するまで1M HClを加えた。次にEtOAc(30mL)を加え、層を分離した。水層をEtOAc(20mL)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 3:7−1:1−1:0 EtOAc/ヘキサン)によって精製し、6(600mg、1.43mmol、86%)を白色固体として生成した。
【表35】

【0146】
(7) (R)−4−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−4−{(S)−1−[1−(メトキシカルボニルメチル−カルバモイル)−シクロブチルカルバモイル]−2−トリチルスルファニル−エチルカルバモイル}−酪酸 tert−ブチルエステル
EtNH(3mL)をMeCN(27mL)中の5(1.480g、1.57mmol)に室温にてアルゴン雰囲気下で加えた。1時間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解及び留去した。粗生成物は次の工程に用いる少なくとも3時間前に高真空下で乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.685mL、3.92mmol)を、CHCl(100mL)中の6(724mg、1.73mmol)およびPyBOP(899mg、1.73mmol)に0℃でアルゴン雰囲気下において加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、0℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(100mL)中に可溶化された、5の脱保護の結果生じた粗アミンに移し、該反応混合物を室温まで昇温させた。18.5時間後、反応を完了させ、該混合物を減圧下で濃縮した。生じた残渣を、ヘキサン/EtOAc(80:20から20:80)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、7を白色固体(1.322g、75%)として生成した。
【表36】

【0147】
(8) 3−[(7R,10R,14R)−6,9,12,16,19−ペンタオキソ−14−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−7−トリチルスルファニルメチル−15−オキサ−5,8,11,18−テトラアザ−スピロ[3.15]ノナデカ−10−イル]−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
LiOH(42mg、1.77mmol)水溶液(4mL)をTHF(16mL)中の7(1.322g、1.18mmol)に0℃で加えた。0℃における1.5時間の攪拌の後、反応混合物を0.5M HCl水溶液で中和し、食塩水(50mL)およびEtOAc(50mL)を加えた。相を分離し、水層をEtOAc(4x25mL)で抽出した。有機相を合わせてMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物は高真空下で乾燥した後で次の工程に用いた。CHCl/THF(740mL、12:1 v/v)中の粗カルボン酸を、3時間かけて、CHCl(300mL)中の2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(487mg、1.42mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(346mg、2.83mmol)に、室温でアルゴン雰囲気下において滴下した。16時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をCHCl/イソプロパノール(100:4の後、100:8)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、8を白色固体(648mg、51%)として生成した。
【表37】

【0148】
化合物XXV:3−((E)−(1S,10S,21R)−7−シクロブチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸 tert−ブチルエステル
CHCl/CHOH(472mL、9:1、v/v)中の化合物8(648mg、0.60mmol)を、30分間かけて、CHCl/CHOH(828mL、9:1、v/v)中のI(1.515mg、6.0mmol)に、室温にてアルゴン雰囲気下で滴下した。2時間の攪拌後、0.1M Na水溶液(500mL)および食塩水(150mL)を加えた。相を分離し、水相をCHCl(200mL)およびEtOAc(2x100mL)で抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。残渣を、CHCl/CHOH(100:3)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物XXVを白色固体として生成した(335mg、93%)。
【表38】

【0149】
化合物XXVI:3−((E)−(1S,10S,21R)−7−シクロブチル−3,6,9,19,22−ペンタオキソ−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−21−イル)−プロピオン酸
【化29】



化合物XXV(273mg、0.416mmol)に、EtSiH(0.37mL、2.3mmol)を、次いでトリフルオロ酢酸(1mL)を加えた。該反応混合物を室温で1時間15分間攪拌し、その後減圧下で濃縮した。残ったトリフルオロ酢酸を、粗生成物をトルエン(4x5mL)と減圧下において共留去することにより除去した。次に、残渣を、CHCl/CHOH(100:5)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物XXVIを白色固体として生成した(191mg、76%)。
【表39】

【0150】
化合物XXVII:(E)−(1S,7R,10S)−7−イソプロピル−21,21−ジメチル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化30】



【0151】
(2) ((R)−2−{(S)−2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−2−メチル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−3−メチル−ブチリルアミノ)−酢酸メチルエステル
EtNH(3mL)を、MeCN(27mL)中の{(R)−2−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−3−メチル−ブチリルアミノ}−酢酸メチルエステル1(500mg、0.66mmol、国際公開第2006/129105号に従って調製)に、室温でアルゴン雰囲気下において加えた。1時間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、その後、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解及び留去した。粗生成物は次の工程に用いる少なくとも3時間前に高真空下で乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.29mL、1.65mmol)を、CHCl(30mL)中のFmoc−Me−Ala−OH(237mg、0.73mmol)およびPyBOP(378mg、0.73mmol)に0℃でアルゴン雰囲気下において加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、0℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(30mL)中に可溶化された、{(R)−2−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−3−メチル−ブチリルアミノ}−酢酸メチルエステル1の脱保護の結果生じた粗アミンに移した。その後、反応物を室温まで昇温させた。16時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘキサン/EtOAc(50:50、その後20:80)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、2を白色固体として生成した(410mg、74%)。
【表40】

【0152】
(3):(E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エン酸
0℃において、(S,E)−3−ヒドロキシ−1−((R)−4−イソプロピル−2−チオキソチアゾリジン−3−イル)−7−(トリチルチオ)ヘプト−4−エン−1−オン(934mg、1.66mmol、Yurek−George, A. et al.,J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1030の手順に従って調製)のTHF溶液(30mL)に、LiOH(196.1mg、8.19mmol)の水溶液(10mL)を加えた。該反応混合物を1時間かけて室温まで昇温させ、その後pHが2に達するまで1M HClを加えた。次にEtOAc(30mL)を加え、層を分離した。水層をEtOAc(20mL)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液 3:7−1:1−1:0 EtOAc/ヘキサン)によって精製し、3(600mg、1.43mmol、86%)を白色固体として生成した。
【表41】

【0153】
(4):((R)−2−{(S)−2−[2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−2−メチル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−3−メチル−ブチリルアミノ)−酢酸メチルエステル
EtNH(4mL)を、MeCN(36mL)中の2(410mg、0.49mmol)に室温でアルゴン雰囲気下において加えた。1時間15分間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、その後、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解・留去した。粗生成物は次の工程に用いる少なくとも3時間前に高真空下で乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.214mL、1.22mmol)を、3(226mg、0.54mmol)およびPyBOP(279mg、0.54mmol)のCHCl溶液(40mL)に0℃でアルゴン雰囲気下において加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、0℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(40mL)中に溶解した、2の脱保護の結果生じた粗アミンに移し、その後、反応物を室温まで昇温させた。2.5時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAcによる溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、4を白色固体として生成した(257mg、51%)。
【表42】

【0154】
(5):(6R,9S,16R)−6−イソプロピル−12,12−ジメチル−16−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−9−トリチルスルファニルメチル−1−オキサ−4,7,10,13−テトラアザ−シクロヘキサデカン−2,5,8,11,14−ペンタオン
LiOH(9mg、0.37mmol)水溶液(2mL)をTHF(8mL)中の4(255mg、0.25mmol)に0℃で加えた。0℃における45分間の攪拌後、該反応混合物を0.5M HCl水溶液で中和し、食塩水(40mL)およびEtOAc(40mL)を加えた。相を分離し、水層をEtOAc(20mL)で抽出した。有機相を合わせてMgSOで乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮した。粗生成物は高真空下で乾燥した後で次の工程に用いた。CHCl/THF(200mL、12:1 v/v)中の粗カルボン酸を、3時間かけて、CHCl(50mL)中の2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(103mg、0.30mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(73mg、0.60mmol)に、室温でアルゴン雰囲気下において滴下した。15時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をCHCl/イソプロパノール(100:2.5の後、100:5)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、5を白色固体(117mg、47%)として生成した。
【表43】

【0155】
化合物XXVII:(E)−(1S,7R,10S)−7−イソプロピル−21,21−ジメチル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
CHCl/CHOH(80mL、9:1、v/v)中の化合物5(115mg、0.117mmol)を、30分間かけて、CHCl/CHOH(170mL、9:1、v/v)中のI(295mg、1.16mmol)に、室温にてアルゴン雰囲気下で滴下した。2時間の攪拌後、0.1M Na水溶液(500mL)および食塩水(150mL)を加えた。相を分離し、水相をCHCl(2x40mL)およびEtOAc(2x40mL)で抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。残渣を、CHCl/CHOH(100:1から100:5)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物XXVIIを白色固体として生成した(41mg、70%)。
【表44】

【0156】
化合物XXIX:(E)−(1S,10S)−7−イソプロピル−21,21−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化31】



【0157】
(2):[2−((S)−2−{[1−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−シクロプロパンカルボニル]−アミノ}−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ)−3−メチル−ブチリルアミノ]酢酸メチルエステル
1(300mg、0.40mmol、1当量)のMeCN溶液(8mL)に、0.8mLのEtNH(10% v/v)を室温でアルゴン雰囲気下、滴下した。該溶液を室温で2時間攪拌し、その後溶媒を真空下で除去した。過剰なアミンを、MeCN(3x5mL)と、その後CHCl/ヘキサンの1:5混合物(10mL)と、共留去した。白色固体が得られ、フラスコを高真空下で2時間乾燥した。0℃のFmoc−シクロプロピルアミノ酸(141mg、0.44mmol、1.1当量)のMeCN溶液(6mL)に、アルゴン雰囲気下でPyBOP(227mg、0.44mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(173μL、0.99mmol、2.5当量)を加えた。粗アミンのCHCl溶液(6mL)を該混合物に滴下した。その後、該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。次に、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらにヘキサン/EtOAc(1:3−>0:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、2を白色固体として生成した(344mg、98%)。
【表45】

【0158】
(4):[2−((S)−2−{[1−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−シクロプロパンカルボニル]−アミノ}−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ)−3−メチル−ブチリルアミノ]酢酸メチルエステル
2(344mg、0.41mmol、1当量)のMeCN溶液(9mL)に、EtNH(0.9mL、10% v/v)を室温でアルゴン雰囲気下にて滴下した。該溶液を室温で2時間攪拌し、次いで溶媒を真空下で除去した。過剰なアミンを、MeCN(3x5mL)と、その後CHCl/ヘキサンの1:5混合物(10mL)と、共留去した。白色固体が得られ、フラスコを高真空ポンプで2時間乾燥した。0℃の●−ヒドロキシ酸3(189mg、0.45mmol、1.1当量)のMeCN溶液(8mL)に、PyBOP(235mg、0.45mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(179μL、1.02mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下で加えた。粗アミンのCHCl溶液(8mL)を該混合物に滴下した。その後、該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。次に、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらにヘキサン/EtOAc(1:4)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、4を白色固体として生成した(171mg、41%)。
【表46】

【0159】
(5):(7S,16S)−13−イソプロピル−7−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−16−トリチルスルファニルメチル−8−オキサ−4,11,14,17−テトラアザ−スピロ[2.15]オクタデカン−5,9,12,15,18−ペンタオン
0℃の4(171mg、0.17mmol、1当量)のTHF溶液(6mL)に、LiOH(6.0mg、0.25mmol、1.5当量)の水溶液(2mL)を滴下した。該混合物を2時間攪拌し、1N HCl(2mL)および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにEtOAc(2x15mL)およびCHCl(15mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。次に、生じたカルボン酸を高真空下で2時間乾燥した。MNBA(69mg、0.21mmol、1.2当量)およびDMAP(49.3mg、0.40mmol、2.4当量)のCHCl溶液(150mL)に、粗カルボン酸のCHCl溶液(60mL)およびTHF(10mL)を3時間かけて滴下した。その後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を、ヘキサン/EtOAc(2:3)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、5を白色固体として生成した(83mg、50%)。
【表47】

【0160】
化合物XXIX:(E)−(1S,10S)−7−イソプロピル−21,21−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
(216mg、0.85mmol、10当量)のCHCl/MeOH(200mL、9:1)溶液に、5(84mg、0.085mmol、1当量)の溶液を2時間かけて室温で滴下した。該混合物をNa(0.1M、200mL)の溶液および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにCHCl(2x50mL)およびEtOAc(50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。精製はCHCl/MeOH(19:1−>9:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって行い、化合物XXIX(34.0mg、0.07mmol、76%)を白色固体として生成した。
【表48】

【0161】
化合物XXX:(E)−(1S,10S)−7,7−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化32】



【0162】
(2):{[1−((S)−2−ホルミルアミノ−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ)−シクロプロパンカルボニル]−アミノ}−酢酸メチルエステル;エチルカルバミン酸 9H−フルオレン−9−イルメチルエステルとの化合物
アルゴン雰囲気下の1(310.5mg、0.420mmol)のMeCN/CHCl溶液(10mL/19mL)にジエチルアミン(2.9mL、10% v/v)を加え、該反応混合物を室温で1時間50分間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、粗混合物をMeCN(3x20mL)で処理し、溶媒を減圧下で除去した。次に、粗アミンを高真空下で1時間乾燥した。その後、PyBOP(234.9mg、0.451mmol)およびFmocGly−OH(133.86mg、0.450mmol)のCHCl溶液(20mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.25mL、1.44mmol)をアルゴン雰囲気下で3分間攪拌しつつ加えた。得られた1の脱保護アミンのMeCN溶液(20mL)を加え、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。次に、溶媒を真空下で除去した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 1:99−3:97−5:95 MeOH/CHCl)、白色固体を生成した。材料を1M HCl水溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮して2(228.6mg、0.289mmol、68%)を白色固体として生成した。
【表49】

【0163】
(4):[(1−{(S)−2−[2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−アセチルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
アルゴン雰囲気下の2(228.6mg、0.287mmol)のMeCN溶液(20mL)にジエチルアミン(2.0mL、10% v/v)を加え、該反応混合物を室温で2時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、粗混合物をMeCN(3x20mL)で処理し、溶媒を減圧下で除去した。次に、粗アミンを高真空下で乾燥した。その後、PyBOP(150.37mg、0.289mmol)およびキラル酸3(121.49mg、0.290mmol)のCHCl溶液(15mL)にジイソプロピルエチルアミン(0.18mL、1.03mmol)をアルゴン雰囲気下で加えた。得られた2の脱保護アミンのMeCN(15mL)溶液を加え、反応液を室温で16時間攪拌した。次に、溶媒を真空下で除去し、生じた固体をフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で精製し(溶離液 1:99−3:97−5:95 MeOH/CHCl)、4(157.3mg、0.161mmol、56%)を白色固体を生成した。
【表50】

【0164】
(5):[1−{(S)−2−[2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−アセチルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸
0℃のTHF(2.45mL)中の4(157.3mg、0.154mmol)に、LiOH(9.19mg、0.384mmol)水溶液(0.65mL)を滴下し、反応液を55分間攪拌した。次に、該反応混合物を1M HCl水溶液(10mL)でクエンチし、水(10mL)で希釈した。EtOAc(30mL)を加え、層を分離し、水層をEtOAc(3x30mL)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄し、分離し、乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮して、5(153mg、0.154mmol、100%)を白色固体として生成した。これをさらなる精製なしに使用した[MS(ES)959.2(100%,[M−H]]。
【0165】
(6):(6S,13S)−13−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−6−トリチルスルファニルメチル−14−オキサ−4,7,10,17−テトラアザ−スピロ[2.15]オクタデカン−5,8,11,15,18−ペンタオン
MNBA(65.48mg、0.190mmol)およびDMAP(46.24mg、0.378mmol)のCHCl溶液(38mL)に、酸5(153mg、0.159mmol)のCHCl溶液(148mL)を3時間55分間かけて滴下し、生じた混合物を室温で一晩攪拌した。次いで該反応混合物を真空下で濃縮し、橙色/黄色固体を生成した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 1:99−2:98 MeOH/CHCl)、6(68.2mg、0.0723mmol、45%)を橙色/黄色固体として生成した。
【表51】

【0166】
化合物XXX:(E)−(1S,10S)−7,7−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
ヨウ素(188.95mg、0.744mmol)のCHCl/MeOH(9:1)溶液(248mL)に、6(68.2mg、0.0723mmol)のCHCl/MeOH(9:1)溶液(122.5mL)を30分間かけて滴下した。該反応混合物をさらに30分間攪拌し、その後、飽和チオ硫酸ナトリウム(10mL)を、次いで水(30mL)を加えた。層を分離し、産物をEtOAc(3x100ml)で、次いでCHCl(100mL)で抽出し、乾燥(MgSO)した。その後、溶媒を真空下で除去した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 5:95−7:93 MeOH/CHCl)、化合物XXX(17.6mg、0.0386mmol、53%)を白色固体として生成した:R 0.48 CHCl/MeOH(9:1);H NMR(400MHz,CDCl+10%MeOD)δ:8.45(br s,1H),7.60(br s,1H),7.32(d,J=7.65Hz,1H),6.93(br s,1H),5.97(m,1H),5.80−5.68(m,2H),4.72(m,1H),4.19(m,1H),4.11−3.94(m,2H),3.65(m,1H),3.36(m,1H),3.05−2.92(m,2H),2.90−2.74(m,2H),2.66(br s,2H),1.70(m,1H),1.29−1.16(m,2H),1.09−0.96(m,2H),MS(ES)479.8(100%,[M+Na]).
【0167】
化合物XXXI:(E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−21−ピリジン−3−イルメチル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化33】



【0168】
(2):(2−{(S)−2−[(R)−2−(9Hーフルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−ピリジン−3−イル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−2−メチル−プロピオニルアミノ)−酢酸メチルエステル
1(300mg、0.40mmol、1当量)のMeCN(8mL)溶液に、EtNH(0.8mL、10% v/v)を、室温、アルゴン雰囲気下で滴下した。該溶液を室温で2時間攪拌し、溶媒を真空下で除去した。過剰なアミンを、MeCN(3x5mL)と、その後CHCl/ヘキサンの1:5混合物(10mL)と、共留去した。白色固体が得られ、フラスコを高真空下で2時間乾燥した。0℃のFmoc−D−3−ピリジンアラニン(173mg、0.45mmol、1.1当量)のMeCN溶液(7mL)に、アルゴン雰囲気下でPyBOP(232mg、0.45mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(176μL、1.01mmol、2.5当量)を加えた。粗アミンのCHCl溶液(6mL)を該混合物に滴下した。その後、該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。次に、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらにEtOAc/MeOH(1:0−>19:1)を溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、2を黄色油として生成した(316mg、88%)。
【表52】

【0169】
(4):(2−{(S)−2−[(R)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−3−ピリジン−3−イル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−2−メチル−プロピオニルアミノ)−酢酸メチルエステル
2(316mg、0.36mmol、1当量)のMeCN溶液(8mL)に、EtNH(10% v/v)を、室温、アルゴン雰囲気下で滴下した。該溶液を室温で2時間攪拌し、溶媒を真空下で除去した。過剰なアミンを、MeCN(3x5mL)と、その後CHCl/ヘキサンの1:5混合物(5mL)と、共留去した。白色固体が得られ、フラスコを高真空下で2時間乾燥した。0℃のβ−ヒドロキシ酸3(157mg、0.37mmol、1.1当量)のMeCN溶液(6mL)に、アルゴン雰囲気下でPyBOP(204mg、0.37mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(155μL、0.89mmol、2.5当量)を加えた。粗アミンのCHCl溶液(6mL)を該混合物に滴下した。その後、該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。次に、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらにCHCl/MeOH(49:0−>13:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、4を白色固体として生成した(375mg、95%)。
【表53】

【0170】
(5):(9S,12R,16S)−6,6−シクロプロピル−12−ピリジン−3−イルメチル−16−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−9−トリチルスルファニルメチル−1−オキサ−4,7,10,13−テトラアザ−シクロヘキサデカン−2,5,8,11,14−ペンタオン
0℃の4(375mg、0.35mmol、1当量)のTHF溶液(15mL)に、LiOH(12.3mg、0.51mmol、1.5当量)の水溶液(3mL)を加えた。該混合物を2時間攪拌し、1N HCl(4mL)および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにEtOAc(2x15mL)およびCHCl(15mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。次に、生じたカルボン酸を高真空下で2時間乾燥した。MNBA(141mg、0.41mmol、1.2当量)およびDMAP(100.2mg、0.82mmol、2.4当量)のCHCl溶液(350mL)に、粗カルボン酸のCHCl溶液(150mL)およびTHF(20mL)を3時間かけて滴下した。その後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣をさらに、CHCl/MeOH(24:1)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、5を白色固体として生成した(357mg、96%)。
【表54】

【0171】
化合物XXXI:(E)−(1S,10S,21R)−7,7−シクロプロピル−21−ピリジン−3−イルメチル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
ヨウ素(877mg、3.46mmol、10当量)のCH2CL2/MeOH(1.0L、9:1)溶液に、5(357mg、0.35mmol、1当量)の溶液を2時間かけて室温で滴下した。該混合物をNa(0.1M、300mL)の溶液および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、得られた水層をさらにCHCl(2x50mL)およびEtOAc(50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。CHCl/MeOH(16:1−>12:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により、化合物XXXI(45.0mg、24%)を白色固体として生成した。
【表55】

【0172】
化合物XXXII:(E)−(1S,10S,21R)−21−(3−クロロ−ベンジル)−7,7−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化34】



【0173】
(2) [(1−{(S)−2−[(R)−3−(3−クロロ−フェニル)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
アルゴン雰囲気下の1(299.75mg、0.405mmol)のMeCN/CHCl(10mL/20mL)溶液にジエチルアミン(2.5mL、8.3% v/v)を加え、該反応混合物を室温で2時間20分間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、MeCN(3x25mL)で処理し、その後溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗アミンを高真空下で2時間乾燥した。次に、PyBOP(222.4mg、0.427mmol)およびFmoc−D 3−クロロPhe−OH(179.94mg、0.425mmol)のCHCl溶液(15mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.22mL、1.26mmol)を、アルゴン雰囲気下で2分間攪拌しつつ、0℃で加えた。生成した1の脱保護アミンのMeCN溶液(15mL)を加え、反応混合物を室温で16時間攪拌した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いてシリカ上で行い(溶離液 4:6−6:4−7:3 EtOAc/ヘキサン)、2(201.6mg、0.219mmol、54%)を白色固体として生成した。
【表56】

【0174】
(4):[(1−{(S)−2−[(R)−3−(3−クロロ−フェニル)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
アルゴン雰囲気下の2(200mg、0.217mmol)のMeCN/CHCl(10mL/5mL)溶液に、ジエチルアミン(1.0mL、7% v/v)を加え、該反応混合物を室温で1時間30分間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、MeCN(4x20mL)で処理し、その後溶媒を減圧下で除去した。粗アミンを高真空下で2時間乾燥した。次に、PyBOP(121.7mg、0.234mmol)およびキラル酸3(105.4mg、0.252mmol)のCHCl溶液(15mL)に、ジイソプロピルエチルアミン(0.13mL、0.746mmol)を、アルゴン雰囲気下で加えた。生成した脱保護アミンのMeCN溶液(15mL)を加え、反応液を室温で16時間攪拌した。その後溶媒を真空下で除去し、粗生成物の精製をフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いてシリカ上で行い(溶離液 1:1−7:3 EtOAc/ヘキサン)、4(190mg、0.173mmol、80%)を白色固体として生成した。
【表57】

【0175】
(5):[(1−{(S)−2−[(R)−3−(3−クロロ−フェニル)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸
0℃のTHF(2.9mL)中の4(188.5mg、0.172mmol)に、LiOH(8.5mg、0.355mmol)の水溶液(0.70mL)を加え、反応物を1時間30分間攪拌した。その後、該混合物を1M HCl水溶液(10mL)でクエンチし、水(10mL)で希釈し、EtOAc(30mL)を加えた。層を分離し、産物をEtOAC(3x25mL)で抽出し;有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、真空下で濃縮して産物5(182mg、98%)を白色固体として生成した。産物はさらなる精製なしに用いた[MS(ES)1083.6(100%、[M−H])]。
【0176】
(6):(6S,9R,13S)−9−(3−クロロ−ベンジル)−13−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−6−トリチルスルファニルメチル−14−オキサ−4,7,10,17−テトラアザ−スピロ[2.15]オクタデカン−5,8,11,15,18−ペンタオン
MNBA(69.29mg、0.201mmol)およびDMAP(48.76mg、0.40mmol)のCHCl溶液(31mL)に、前記酸5(180mg、0.166mmol)のCHCl溶液(125mL)を3時間かけて滴下し;その後、該反応混合物を一晩室温で攪拌し、次いで真空下で濃縮して、褐色固体を生成した。精製はカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 0:1−0.5:99.5−1:99−1.5:98.5−2:98−3;97 MeOH/CHCl)、6(70.0mg、0.0656mmol、40%)を白色固体として生成した。
【表58】

【0177】
化合物XXXII:(E)−(1S,10S,21R)−21−(3−クロロ−ベンジル)−7,7−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
ヨウ素(171.3mg、0.155mmol)のCHCl/MeOH(9:1)溶液(113.5mL)に、6(70.0mg、0.0656mmol)のCHCl/MeOH(9:1)溶液(228.9mL)を40分間かけて滴下した。該反応混合物をさらに50分間攪拌し、その後、チオ硫酸ナトリウム(100mL、0.05M)を加えた。層を分離し、産物をEtOAc(3x65ml)で抽出して分離し、有機層を合わせて乾燥(MgSO)し、溶媒を真空下で除去した。精製はフラッシュカラムクロマトグラフィーによってシリカ上で行い(溶離液 1:99−2:98−3:97−4:96−5:95 MeOH/CHCl)、化合物XXXII(17.6mg、0.0343mmol、32%)を白色固体として生成した。
【表59】

【0178】
化合物XXXIII:(E)−(1S,10S,21R)−21−ベンジル−7,7−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化35】



【0179】
(2):[(1−{(S)−2−[(R)−2−(9Hーフルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−フェニル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
1(300mg、0.40mmol、1当量)のMeCN溶液(8mL)に、EtNH(0.8mL、10% v/v)を、室温でアルゴン雰囲気下において滴下した。該溶液を室温で2時間攪拌し、溶媒を真空下で除去した。過剰のアミンをMeCN(3x5mL)と、次いでCHCl/ヘキサンの1:5混合物(10mL)と、共留去した。白色固体が得られ、フラスコを高真空下で2時間乾燥した。0℃のFmoc−D−フェニルアラニン(173mg、0.45mmol、1.1当量)のMeCN溶液(7mL)に、アルゴン雰囲気下でPyBOP(233mg、0.45mmol、1.1当量)および176μLのN−エチルジイソプロピルアミン(1.01mmol、2.5当量)を加えた。粗アミンのCHCl溶液(6mL)を該混合物に滴下した。その後、該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。次に、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらにヘキサン/EtOAc(1:2−>0:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、2を白色固体として生成した(294mg、82%)。
【表60】

【0180】
(4):[(1−{(S)−2−[(R)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−3−フェニル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
2(294mg、0.33mmol、1当量)のMeCN溶液(7mL)に、EtNH(0.7mL、10% v/v)を、室温でアルゴン雰囲気下において滴下した。該溶液を室温で2時間攪拌し、溶媒を真空下で除去した。過剰のアミンをMeCN(3x5mL)と、次いでCHCl/ヘキサンの1:5混合物(5mL)と、共留去した。白色固体が得られ、フラスコを高真空下で2時間乾燥した。0℃のβ−ヒドロキシ酸3(145mg、0.35mmol、1.1当量)のMeCN溶液(5mL)に、アルゴン雰囲気下でPyBOP(189mg、0.36mmol、1.1当量)およびN−エチルジイソプロピルアミン(143μL、0.83mmol、2.5当量)を加えた。粗アミンのCHCl溶液(5mL)を該混合物に滴下した。その後、該反応混合物を室温まで一晩昇温させた。次に、該混合物を真空下で濃縮し、残渣をさらにヘキサン/EtOAc(2:3−>0:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、4を白色固体として生成した(305mg、87%)。
【表61】

【0181】
(5):(6S,9R,13S)−9−ベンジル−13−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−6−トリチルスルファニルメチル−14−オキサ−4,7,10,17−テトラアザ−スピロ[2.15]オクタデカン−5,8,11,15,18−ペンタオン
0℃の4(305mg、0.29mmol、1当量)のTHF溶液(10mL)に、LiOH(10.3mg、0.43mmol、1.5当量)水溶液(2mL)を滴下した。該混合物を2時間攪拌し、その後1N HCl(3mL)および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにEtOAc(2x15mL)および(15mL)で抽出した。有機相を合わせてMgSOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。次に、生じたカルボン酸を高真空ポンプで2時間乾燥した。MNBA(118mg、0.34mmol、1.2当量)およびDMAP(84mg、0.69mmol、2.4当量)のCH2Cl2溶液(200mL)に、粗カルボン酸のCHCl溶液(130mL)およびTHF(20mL)を3時間かけて滴下した。その後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を、ヘキサン/EtOAc(1:9−>0:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、5を白色固体として生成した(171mg、58%)。
【表62】

【0182】
化合物XXXIII:(E)−(1S,10S,21R)−21−ベンジル−7,7−シクロプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
ヨウ素(420mg、1.65mmol、10当量)のCHCl/MeOH(400mL、9:1)溶液に、5(171mg、0.17mmol、1当量)の溶液を室温で2時間かけて滴下した。該混合物をNa(0.1M、200mL)の溶液および食塩水(10mL)でクエンチした。有機層を分離し、生じた水層をさらにCHCl(2x50mL)およびEtOAc(50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせたものをMgSOで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。精製はCHCl/MeOH(32:1−>12:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって行い、化合物XXXIII(73.0mg、81%)を白色固体として生成した。
【表63】

【0183】
化合物XXXIV:(E)−(1S,10S,21R)−7−シクロプロピル−21−ピリジン−4−イルメチル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
【化36】



【0184】
(2):[(1−{(S)−2−[(R)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−ピリジン−4−イル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
EtNH(2mL)をMeCN(18mL)中の({1−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−酢酸メチルエステル1(548mg、0.72mmol)に、室温にてアルゴン雰囲気下で加えた。3時間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解・留去した。粗生成物を、次の工程に使用する少なくとも3時間前に高真空下で乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.26mL、1.50mmol)を、CHCl(20mL)中の(R)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−ピリジン−4−イル−プロピオン酸(254mg、0.65mmol)およびPyBOP(338mg、0.65mmol)に0℃、アルゴン雰囲気下で加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、0℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(20mL)中に可溶化された、({1−[(S)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ]−シクロプロパンカルボニル}−アミノ)−酢酸メチルエステル1の脱保護の結果生じた粗アミンに移した。次いで、該反応混合物を室温まで昇温させた。17時間後、該反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、EtOAc/CHOH(100:0、その後100:0.5から100:4)を溶出に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、2を白色固体として生成した(522mg、99%)。
【表64】

【0185】
(4):[(1−{(S)−2−[(R)−2−((E)−(S)−3−ヒドロキシ−7−トリチルスルファニル−ヘプト−4−エノイルアミノ)−3−ピリジン−4−イル−プロピオニルアミノ]−3−トリチルスルファニル−プロピオニルアミノ}−シクロプロパンカルボニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
EtNH(2mL)をMeCN(18mL)中の2(523mg、0.59mmol)に、室温にてアルゴン雰囲気下で加えた。4時間の攪拌後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をMeCN(4x20mL)およびヘキサン(2x20mL)で再溶解及び留去した。粗生成物を、次の工程に使用する少なくとも3時間前に高真空下で乾燥した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.247mL、1.47mmol)を、3(272mg、0.65mmol)およびPyBOP(338mg、0.65mmol)のCHCl溶液(20mL)に0℃、アルゴン雰囲気下で加えた。10分間の攪拌後、該混合物を、0℃でアルゴン雰囲気下において、MeCN(10mL)中に溶解した、2の脱保護の結果生じた粗アミンに移し、次いで反応混合物を室温まで昇温させた。16時間半後、該反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、CHCl/CHOH(100:1から100:4)を溶出に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、4を白色固体として生成した(384mg、61%)。
【表65】

【0186】
(5):(6S,9R,13R)−9−ピリジン−4−イルメチル−13−((E)−4−トリチルスルファニル−ブト−1−エニル)−6−トリチルスルファニルメチル−14−オキサ−4,7,10,17−テトラアザ−スピロ[2.15]オクタデカン−5,8,11,15,18−ペンタオン
LiOH水溶液(13mg、0.54mmol)(2mL)をTHF(8mL)中の4(384mg、0.36mmol)に0℃で加えた。0℃における1.5時間の攪拌後、反応混合物を0.5M HCl水溶液で中和し、次いで食塩水(50mL)およびEtOAc(50mL)を加えた。相を分離し、水層をEtOAc(3x10mL)で抽出した。有機相を合わせてMgSOで乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮した。粗生成物は高真空下で乾燥した後で次の工程に用いた。CHCl/THF(250mL,12:1 v/v)中の粗カルボン酸を、CHCl(120mL)中の2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(149mg、0.43mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(105mg、0.86mmol)に、室温でアルゴン雰囲気下において、3時間かけて滴下した。19時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、CHCl/CHOH(100:2、その後100:10)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、5を白色固体(203mg、54%)として生成した。
【表66】

【0187】
化合物XXXIV:(E)−(1S,10S,21R)−7−シクロプロピル−21−ピリジン−4−イルメチル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザ−ビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタオン
CHCl/CHOH(143mL、9:1 v/v)中の化合物5(201mg、0.19mmol)を、CHCl/CHOH(297mL、9:1 v/v)中のヨウ素(502mg、1.94mmol)に、30分間かけて室温でアルゴン雰囲気下において滴下した。3時間の攪拌後、0.5M Na水溶液(500mL)および食塩水(150mL)を加えた。相を分離し、水相をCHCl(2x50mL)およびEtOAc(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。残渣を、CHCl/CHOH(100:3)による溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物XXXIVを白色固体として生成した(2mg、2%)。
【表67】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造IXまたはXの化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【化1】


[式中:
Xは−C(=O)N(R10)−または−CH(OPr)−であり;
、RおよびR10は同一であっても異なっていてもよく、水素、または天然もしくは非天然アミノ酸由来のアミノ酸側鎖部分を表し;
PrおよびPrは同一であっても異なっていてもよく、水素またはチオール保護基を表し;
Prは水素またはアルコール保護基であり;
、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、水素、または天然もしくは非天然アミノ酸由来のアミノ酸側鎖部分であり、あるいはRおよびRならびに/またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環部分を形成し、
ただし:
およびRはそれぞれ水素ではないか、または
およびRはそれぞれ水素ではない。]
【請求項2】
およびRならびに/またはRおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって3〜8個の炭素原子を有したシクロアルキル基を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記の天然または非天然アミノ酸側鎖部分が、−CH(アラニン)、−CH(CH(バリン)、−CHCH(CH(ロイシン)、−CH(CH)CHCH(イソロイシン)、−(CHNH(リジン)、−(CHNHC(=NH)NH(アルギニン)、−CH−(5−1H−イミダゾリル)(ヒスチジン)、−CHCONH(アスパラギン)、−CHCHCONH(グルタミン)、−CHCOOH(アスパラギン酸)、−CHCHCOOH(グルタミン酸)、−CH−フェニル(フェニルアラニン)、−CH−(4−OH−フェニル)(チロシン)、−CH−(3−1H−インドリル)(トリプトファン)、−CHSH(システイン)、−CHCHSCH(メチオニン)、−CHOH(セリン)、および−CH(OH)CH(スレオニン)、−(CH−C(O)−O−C(CH(グルタミン酸 t−ブチルエステル)、−(CH−NH−C(O)−O−C(CH (Nε−(tert−ブトキシカルボニル)−リジン)、−(CH−NH−C(O)NH(シトルリン)、−CH−CHOH(ホモセリン)および−(CHNH(オルニチン)、−H(グリシン)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数2〜6のアルキニル、アリール、または飽和もしくは不飽和複素環であって、それが官能化され、または官能化されていなくともよい、上記請求項のうちいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
前記の天然または非天然アミノ酸側鎖部分が、−H(グリシン)、−CH(アラニン)、−CH(CH(バリン)、−CHCH(CH(ロイシン)、−CH(CH)CHCH(イソロイシン)、−(CHNH(リジン)、−(CHNHC(=NH)NH(アルギニン)、−CH−(5−1H−イミダゾリル)(ヒスチジン)、−CHCONH(アスパラギン)、−CHCHCONH(グルタミン)、−CHCOOH(アスパラギン酸)、−CHCHCOOH(グルタミン酸)、−CH−フェニル(フェニルアラニン)、−CH−(4−OH−フェニル)(チロシン)、−CH−(3−1H−インドリル)(トリプトファン)、−CHSH(システイン)、−CHCHSCH(メチオニン)、−CHOH(セリン)、または−CH(OH)CH(スレオニン)である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xが−CH(=O)N(R10)−である、上記請求項のうちいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
以下に示す構造:
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】



【化6】



のうち1つを有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Xが−CH(OPr)−である、請求項1〜4のうちいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
以下に示す構造:
【化7】


のうち1つを有する、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
治療において使用されるための、上記請求項のうちいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に媒介される状態の治療または予防において使用されるための、上記請求項のうちいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
前記状態が、癌、心肥大、慢性心不全、炎症状態、循環器疾患、異常血色素症、サラセミア、鎌状赤血球病、CNS障害、自己免疫疾患、糖尿病、骨粗しょう症、MDS、前立腺肥大、子宮内膜症、口腔白板症、遺伝的に関連のある代謝障害、感染、Rubens−Taybi、脆弱X症候群、またはα−1アンチトリプシン欠乏症である、請求項10記載の化合物類似体。
【請求項12】
前記状態が、慢性リンパ球性白血病、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、中皮腫、T細胞リンパ腫、心肥大、慢性心不全、または皮膚炎症状態、特に、乾癬、ざ瘡または湿疹である、請求項10または請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
創傷治癒を促進するために、毛包を保護するために、または免疫抑制剤として使用するための、請求項1〜8のうちいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜8のうちいずれかに記載の化合物と、医薬的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
経口、経腸、非経口、鼻腔内もしくは経皮投与、または吸入もしくは坐剤による投与に適した形態である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
顆粒剤または錠剤、例えば舌下錠、カプセル剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、または分散可能な粉末剤の形態である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
(a)請求項1〜8のいずれかに記載の化合物と;(b)HDACの他の阻害剤と;を含む、治療における、同時の、別々のまたは順次の使用のための、製品。
【請求項18】
前記治療がHDACに媒介される状態に対するものである、請求項17記載の製品。
【請求項19】
(a)請求項1〜8のいずれかに記載の化合物と;(b)化学療法薬または抗腫瘍薬と;を含む、治療における、同時の、別々のまたは順次の使用のための、製品。
【請求項20】
前記治療が癌に対するものである、請求項19記載の製品。

【公表番号】特表2011−529023(P2011−529023A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510053(P2011−510053)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050554
【国際公開番号】WO2009/141658
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(509143893)カルス セラピューティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】