説明

デュアルレート振幅制限増幅回路

【課題】高感度、低消費電力、低コストのデュアルレート振幅制限増幅回路を提供する。
【解決手段】入力バッファ120と10Gbps用のアンプブロック200と1Gbps用のアンプブロック210とを同一のチップ(LAIC)101に搭載する。入力バッファ120は、差動入力端子P1から入力される差動信号の正相を正相信号、差動入力端子P2から入力される差動信号の逆相を逆相信号として出力する。この正相信号および逆相信号をLAIC101上で分岐してともに10Gbps用のアンプブロック200と1Gbps用のアンプブロック210へ与える。10Gbps用のアンプブロック200を直列に接続された複数のアンプ(10Gbps用のアンプ)150で構成し、1Gbps用のアンプブロック210を直列に接続された複数のアンプ(1Gbps用のアンプ)160で構成する。1Gbps用のアンプ160では、10Gbps用のアンプ150に比べ回路電流I0,I1を小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチレートのPON(Passive Optical Network)システムを用いた光通信システムにおいて、主に通信事業者の局舎側に設置されるOLT(Optical Line Terminal)装置の受信機等に用いて好適なデュアルレート振幅制限増幅回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、PON光通信システムのフロントエンド受信回路では、受信した光信号をフォトダイオードで電流信号に変換し、これをトランスインピーダンス増幅回路(Trans-Impedance Amplifier:TIA)により電圧信号に変換した後、振幅制限増幅回路(Limiting Amplifier:LA)によって一定の振幅まで増幅するようにしている。
【0003】
PON光通信システムは、局舎側終端装置(OLT)と複数のユーザのONU(Optical Network Unit)とパッシブな光スプリッタで構成され、一つのOLTと複数のONUを光スプリッタで結んでデータをやりとりする方式である。
【0004】
現在主流になっているGE−PONシステムのデータレートは1.25Gbpsであるが、将来の大容量化を目指して10G−EPONと呼ばれる10.3125Gbpsのデータレートのシステムが開発されている。しかし、10G−EPONが実用化されても、既存の1.25Gbpsを使用している全てのユーザに対して同時に置き換えがなされるわけではなく、1.25Gbps(以降1Gbpsと略する)と10.3125Gbps(以降10Gbpsと略する)のサービスが共存する可能性が大きい。
【0005】
この場合、1本のファイバをデータレートの異なる複数のユーザに分岐することになるから、OLTでは1Gbps(低ビットレート)と10Gbps(高ビットレート)のデータを受けなければならない。
【0006】
このような用途のOLTで用いる受信回路が10Gbpsまで増幅できる広い帯域を持っていると、1Gbpsの信号を受信した場合に受信信号に含まれる高周波雑音や、増幅器自身の熱雑音のうちの高周波成分も増幅し、エラーレートの増加を招いてしまう。
【0007】
このため、例えば非特許文献1では、図6に示すように、各々の帯域に特化された別々の振幅制限増幅回路が搭載されたIC(LAIC)1,2を用意し、TIA(トランスインピーダンス増幅回路)3からの差動信号の一方(正相)を1Gbps用のLAIC1に、もう一方(逆相)を10Gbps用のLAIC2に送るようにしている。1Gbps用のLAIC1は低いビットレートに特化された特性になっているから、1Gbpsおいても感度の低下を抑えられる。
【0008】
なお、図6において、4はフォトダイオード(APD)であり、5はTIA3と1Gbps用のLA IC1との間に接続された結合容量、6はTIA3と10Gbps用のLAIC2との間に接続された結合容量である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「1.25/10.3Gbit/sリセットレス・デュアルレートバーストモード受信器」、電子情報通信学会、2009総合大会 B10-101.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した非特許文献1で述べられている方法は、TIA3の出力の正相を1Gbps用、逆相を10Gbps用に用い、差動信号の正相と逆相をシングルエンド信号扱いで、別々のLAIC1,2に入力しているために、差動信号(正相+逆相)をそのまま伝送するのに比べ感度が半分になるという問題があり、その低下する分を補うためにTIA3の出力を高める必要がある。
【0011】
この感度低下の問題を回避するために、もし、TIA3からの差動信号(正相+逆相)を伝送基板上の配線でそのまま2つに分岐して1Gbps用のLAIC1、10Gbps用のLAIC2に入力すると、TIA3から見て2個のLAIC1,2が並列接続になるので、TIA3とLAIC1との間およびTIA3とLAIC2との間でのインピーダンスに不整合が生じる。インピーダンスの不整合を回避するには、信号を2分岐するための別のバッファICが必要になり、部品点数やコスト、消費電力の増加を招く。また、接続点が増えるために、信号反射等の問題を起こしやすい。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高感度、低消費電力、低コストのデュアルレート振幅制限増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明に係るデュアルレート振幅制限増幅回路は、入力される差動信号の正相および逆相を正相信号および逆相信号として出力する入力バッファと、入力バッファからの正相信号および逆相信号の振幅を所定の振幅まで増幅する高ビットレート用の振幅制限増幅回路と、入力バッファからの正相信号および逆相信号の振幅を所定の振幅まで増幅する低ビットレート用の振幅制限増幅回路とを備え、高ビットレート用の振幅制限増幅回路は、直列に接続された複数の高ビットレート用の増幅器を備え、低ビットレート用の振幅制限増幅回路は、直列に接続された複数の低ビットレート用の増幅器を備え、入力バッファ、高ビットレート用の振幅制限増幅回路および低ビットレート用の振幅制限増幅回路は、同一のチップに搭載されていることを特徴とする。
【0014】
本発明では、入力バッファと、高ビットレート用の振幅制限増幅回路と、低ビットレート用の振幅制限増幅回路とを同一のチップに搭載し、入力バッファからの正相信号および逆相信号をともに高ビットレート用の振幅制限増幅回路と低ビットレート用の振幅制限増幅回路とに与えるようにする。このような構成では、入力バッファからの正相信号および逆相信号が同一チップ上で分岐されてともに高ビットレート用の振幅制限増幅回路と低ビットレート用の振幅制限増幅回路とに与えられ、入力バッファと高ビットレート用の振幅制限増幅回路および低ビットレート用の振幅制限増幅回路との間がミクロンオーダ(例えば、十数〜数10ミクロン)で接続されるようになり、差動信号のまま伝送できて感度の低下が起こらないうえに、基本的に分岐に伴うインピーダンス不整合は問題にならなくなる。また、LAICは1つで済み、追加の分岐ICも不要なので、低コストな上に消費電力の増加も生じないようになる。
【0015】
本発明において、低ビットレート用の振幅制限増幅回路では、例えば、低ビットレート用の増幅器の回路電流を高ビットレート用の増幅器の回路電流よりも小さく設定することで、周波数帯域を絞り、不要な周波数成分が増幅されないようにする。これにより、高ビットレート用の増幅器および低ビットレート用の増幅器を、その特性が同じ同種類のトランジスタを用いて構成することが可能となり、増幅器ごとにトランジスタプロセスを変えることなく、かつ追加素子を最小にとどめながら増幅器の特性を変える構成として、2種類のビットレートに対応するデュアルレート振幅制限増幅回路を低コストで作製することが可能となる。
【0016】
また、本発明において、低ビットレート用の増幅器の少なくとも1つ(入力バッファに近い側の増幅器とすることが望ましい)を、正相信号の伝送ラインと接地ラインとの間および逆相信号の伝送ラインと接地ラインとの間に帯域制限用容量素子を接続する構成としたり、正相信号の伝送ラインと逆相信号の伝送ラインとの間に帯域制限用容量素子を接続する構成とすることで、周波数帯域の制限を行うようにしてもよい。
【0017】
また、本発明において、低ビットレート用の振幅制限増幅回路は、直列に接続された複数の低ビットレート用の増幅器の前段にローパスフィルタを設けた構成とし、このローパスフィルタによって所定周波数以上の高周波成分を減衰させて、不要なノイズを除去するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力バッファと高ビットレート用の振幅制限増幅回路と低ビットレート用の振幅制限増幅回路とを同一のチップに搭載するようにしたので、差動信号を伝送する際の感度の低下を招くことなく、また、インピーダンスマッチングの取れた状態で、少ない部品点数で、低ビットレートの信号と高ビットレートの信号の何れについても一定の振幅まで増幅することが可能となり、高感度、低消費電力、低コストとすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るデュアルレート振幅制限増幅回路の実施の形態1を示すブロックレベルの回路図である。
【図2】この実施の形態1のデュアルレート振幅制限増幅回路をトランジスタレベルで記述した回路図である。
【図3】このデュアルレート振幅制限増幅回路における1Gbps用のアンプの別の構成例(実施の形態2の第1例)を示す図である。
【図4】1Gbps用のアンプのさらに別の構成例(実施の形態2の第2例)を示す図である。
【図5】本発明に係るデュアルレート振幅制限増幅回路の実施の形態3を示す図である。
【図6】従来のデュアルレート受信回路でのTIAと1Gbps用のLAICおよび10Gbps用のLAICとの接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
〔実施の形態1〕
図1は本発明に係るデュアルレート振幅制限増幅回路の実施の形態1を示すブロックレベルの回路図である。
【0022】
このデュアルレート振幅制限増幅回路100は、1対の差動入力端子P1,P2と、差動出力端子P3,P4およびP5,P6とを備え、結合容量241,242と、終端抵抗111,112と、入力バッファ120と、10Gbps用のアンプブロック(高ビットレート用の振幅制限増幅回路)200と、1Gbps用のアンプブロック(低ビットレート用の振幅制限増幅回路)210と、10Gbps用の出力バッファ300と、1Gbps用の出力バッファ310とを有している。
【0023】
このデュアルレート振幅制限増幅回路100において、差動入力端子P1にはTIA3からの差動信号の正相が与えられ、差動入力端子P2にはTIA3からの差動信号の逆相が与えられる。入力バッファ120は、差動入力端子P1からの差動信号の正相を正相信号として出力し、差動入力端子P2からの差動信号の逆相を逆相信号として出力し、この正相信号および逆相信号をともに10Gbps用のアンプブロック200と1Gbps用のアンプブロック210に与える。
【0024】
10Gbps用のアンプブロック200は、直列に接続された複数のアンプ(10Gbps用のアンプ)150より構成され、1Gbps用のアンプブロック210は、直列に接続された複数のアンプ(1Gbps用のアンプ)160より構成されている。また、入力バッファ120と、10Gbps用のアンプブロック200と、1Gbps用のアンプブロック210と、10Gbps用の出力バッファ300と、1Gbps用の出力バッファ310とは、同一のチップ(LAIC)101に搭載されている。
【0025】
図2はさらに具体的に説明するために、図1をトランジスタレベルで記述したものである。入力バッファ120としては、例えば図2に示すようなエミッタフォロワ回路を用い、この入力バッファ(エミッタフォロワ回路)120の正相出力400をチップ101上で分岐して、一方を10Gbps用のアンプブロック200の初段のアンプ150の正相入力用のトランジスタ430のベースへ、もう一方を1Gbps用のアンプブロック210の初段のアンプ160の正相入力用のトランジスタ440のベースへ与えるようにしている。
【0026】
入力バッファ120の逆相出力410も全く同様に分岐して、一方を10Gbpsのアンプブロック200の初段のアンプ150の逆相入力用のトランジスタ435のベースへ、もう一方を1Gbps用のアンプブロック210の初段のアンプ160の逆相入力用のトランジスタ445へ与えるようにしている。
【0027】
このように、本実施の形態では、入力バッファ120からの正相信号および逆相信号の10Gbps用のアンプブロック200と1Gbps用のアンプブロック210とへの分岐は同一のチップ(LAIC)101内で行なわれるので、入力バッファ120と10Gbps用のアンプブロック200および1Gbps用のアンプブロック210との間がミクロンオーダ(例えば、十数〜数10ミクロン)で接続されるようになる。これにより、TIA3と10Gbps用のアンプブロック200および1Gbps用のアンプブロック210との接続を差動信号のまま一対一で行なうことができ、図6で示した、正相、逆相を片方ずつ10Gbps用、1Gbps用に使用する場合のような感度低下のデメリットが無くなる。
【0028】
また、TIA3と10Gbps用のアンプブロック200および1Gbps用のアンプブロック210との間は、他の分岐用ICを介在することなくインピーダンス整合をとって接続できるので、信号波形の劣化や、消費電力の増加も招くこともなく、受信回路全体の簡素化が図れる。ICチップ上での分岐に関しては、ボード上での伝送線路における分岐とは異なり、十数〜数10ミクロンの短い距離で行なわれるから、10Gbpsの信号レートにおいてはインピーダンス整合の問題は生じず、波形劣化の問題はない。
【0029】
10Gbps用のアンプブロック200は、所定のゲインを得るために、複数のアンプ(10Gbps用のアンプ)150が直列に接続されており、各々のアンプ150は図2に示すように、差動回路150Aと次段を駆動するためのエミッタフォロワ150Bで構成されている。1Gbps用のアンプブロック210も、同様に、所定のゲインを得るために、複数のアンプ(1Gbps用のアンプ)160が直列に接続されており、各々のアンプ160は図2に示すように、差動回路160Aと次段を駆動するためのエミッタフォロワ160Bで構成されている。
【0030】
1Gbps用のアンプ160は、10Gbps用のアンプ150に比べ回路電流I0、I1を小さく設定することで、周波数帯域を絞り、不要な周波数成分が増幅されないようにしている。このように、回路電流で周波数帯域を制限することにより、10Gbps用のアンプ150で用いているトランジスタ430,435、431,436と同じトランジスタ440,445,441,446を用いて、すなわちその特性が同じで同種類のトランジスタを用いて、10Gbps用のアンプ150とは違う帯域を持つ1Gbps用のアンプ160を構成することができている。このため、特性の違う2種類のトランジスタ素子を用意する等の必要がなく、プロセスコストを抑えることができる。
【0031】
なお、このデュアルレート振幅制限増幅回路100では、終端抵抗111,112によって、TIA3の出力インピーダンス、伝送線路の特性インピーダンス(一般には50Ω)に合わせ、インピーダンス整合をとる。この例では、終端抵抗111,112を入力ラインL1,L2と電源ラインL0との間に接続するようにしているが、これに限るわけではなく、例えば差動信号間に終端抵抗を接続し、DCバイアスを別抵抗で与える等、入力インピーダンスと系のインピーダンスマッチングが取れればどのような接続でもかまわない。
【0032】
また、このデュアルレート振幅制限増幅回路100では、入力ラインL1,L2に直列に結合容量241,242が入っている。これは、PONシステムではTIA3から信号振幅、直流レベルの異なるバースト状の信号が出力されるため、入力バッファ120の直前で直流レベルを一致させるために直流をカットする、いわゆるAOC(Automatic Offset Compensation)の役割をしているものである。この結合容量241,242は、一般には数百pFが必要なので、チップ(LAIC)101上ではなく、チップ101の外のボード上に実装することになる。
【0033】
また、このデュアルレート振幅制限増幅回路100では、終端抵抗111,112をLAIC101には搭載していないが、終端抵抗111,112をLAIC101に搭載するようにしてもよい。また、少なくとも入力バッファ120と10Gbps用のアンプブロック200と1Gbps用のアンプブロック210とがLAIC101に搭載されていればよく、出力バッファ300や310をLAIC101の外に設けるようにしてもよい。
【0034】
〔実施の形態2〕
図3(a),(b)に1Gbps用のアンプ160の別の構成例を実施の形態2の第1例として示す。
【0035】
図3(a)に示した1Gbps用のアンプ160では、差動回路160Aからの正相信号の伝送ラインSL1と接地ラインとの間に帯域制限用容量素子311を接続し、差動回路160Aからの逆相信号の伝送ラインSL2と接地ラインとの間に帯域制限用容量素子312を接続して、ローパスフィルタ160Cを形成し、周波数帯域の制限を行うようにしている。
【0036】
図3(b)に示した1Gbps用のアンプ160では、エミッタフォロワ160Bからの正相信号の伝送ラインSL1と接地ラインとの間に帯域制限用容量素子311を接続し、エミッタフォロワ160Bからの逆相信号の伝送ラインSL2と接地ラインとの間に帯域制限用容量素子312を接続して、ローパスフィルタ160Cを形成し、周波数帯域の制限を行うようにしている。
【0037】
図4(a),(b)に1Gbps用のアンプ160のさらに別の構成例を実施の形態2の第2例として示す。
【0038】
図4(a)に示した1Gbps用のアンプ160では、差動回路160Aからの正相信号の伝送ラインSL1と逆相信号の伝送ラインSL2との間に帯域制限用容量素子310を接続して、ローパスフィルタ160Cを形成し、周波数帯域の制限を行うようにしている。
【0039】
図4(b)に示した1Gbps用のアンプ160では、エミッタフォロワ160Bからの正相信号の伝送ラインSL1と逆相信号の伝送ラインSL2との間に帯域制限用容量素子310を接続して、ローパスフィルタ160Cを形成し、周波数帯域の制限を行うようにしている。
【0040】
なお、この図3や図4に示したローパスフィルタ160Cを設けたアンプ160は、1Gbps用のアンプブロック210を構成する各アンプの全部に適用してもよいし、一部に適用してもよい。ただし、一部のアンプだけに適用する場合、S/N比を向上させるためには、入力バッファ120に近いアンプ160から適用することが望ましい。
【0041】
また、実施の形態1の回路電流I0、I1による周波数帯域の制限を要素1、実施の形態2のローパスフィルタ160Cによる周波数帯域の制限を要素2とした場合、実施の形態2では、要素1と要素2とを組み合わせて適用するようにしてもよいし、要素2のみの適用としてもよい。要素1と要素2とを組み合わせて適用することにより、周波数帯域の制限がより積極的に行われるものとなる。
【0042】
〔実施の形態3〕
図5は、本発明に係るデュアルレート振幅制限増幅回路の実施の形態3を示す図である。この実施の形態3のデュアルレート振幅制限増幅回路100において、1Gbps用のアンプブロック210は、直列に接続された複数の1Gbps用のアンプ160の前段に、1Gbps以上の高周波成分を減衰させるローパスフィルタ230を備えている。これにより、高周波ノイズの影響を抑えて、1Gbps側の感度向上を図ることができる。
【0043】
なお、この実施の形態3においても、実施の形態1における回路電流I0、I1による周波数帯域の制限を要素1、実施の形態2のローパスフィルタ160Cによる周波数帯域の制限を要素2、実施の形態3のローパスフィルタ230による周波数帯域の制限を要素3とした場合、要素1と要素2と要素3とを組み合わせて適用するようにしてもよいし、要素1と要素3とを組み合わせて適用するようにしてもよい。また、要素2と要素3とを組み合わせて適用するようにしてもよいし、要素3のみの適用としてもよい。例えば、要素1と要素2だけでは周波数帯域が絞りきれないような場合、さらに要素3を適用するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のデュアルレート振幅制限増幅回路は、1つのLAICに高ビットレート用の振幅制限増幅回路と低ビットレート用の振幅制限増幅回路とを備えたデュアルレート振幅制限増幅回路として、通信事業者の局舎側に設置されるOLT装置の受信機等に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
100…デュアルレート振幅制限増幅回路、101…チップ(LAIC)、111,112…終端抵抗、120…入力バッファ、150…10Gbps用のアンプ、160…1Gbps用のアンプ、160A…差動回路、160B…エミッタフォロワ、160C…ローパスフィルタ、200…10Gbps用のアンプブロック、210…1Gbps用のアンプブロック、241,242…結合容量、300…10Gbps用の出力バッファ、310…1Gbps用の出力バッファ、310,311,312…帯域制限用容量素子、430,431,435,436,440,441,445,446,…トランジスタ、P1,P2…差動入力端子、P3,P4…差動出力端子、P5,P6…差動出力端子、L0…電源ライン、L1,L2…入力ライン、SL1,SL2…伝送ライン、3…トランスインピーダンス増幅回路(TIA)、4…フォトダイオード(APD)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される差動信号の正相および逆相を正相信号および逆相信号として出力する入力バッファと、
前記入力バッファからの正相信号および逆相信号の振幅を所定の振幅まで増幅する高ビットレート用の振幅制限増幅回路と、
前記入力バッファからの正相信号および逆相信号の振幅を所定の振幅まで増幅する低ビットレート用の振幅制限増幅回路とを備え、
前記高ビットレート用の振幅制限増幅回路は、直列に接続された複数の高ビットレート用の増幅器を備え、
前記低ビットレート用の振幅制限増幅回路は、直列に接続された複数の低ビットレート用の増幅器を備え、
前記入力バッファ、前記高ビットレート用の振幅制限増幅回路および前記低ビットレート用の振幅制限増幅回路は、同一のチップに搭載されている
ことを特徴とするデュアルレート振幅制限増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載されたデュアルレート振幅制限増幅回路において、
前記低ビットレート用の増幅器の回路電流は、前記高ビットレート用の増幅器の回路電流よりも小さく設定されている
ことを特徴とするデュアルレート振幅制限増幅回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたデュアルレート振幅制限増幅回路において、
前記低ビットレート用の増幅器の少なくとも1つは、
前記正相信号の伝送ラインと接地ラインとの間および前記逆相信号の伝送ラインと接地ラインとの間に帯域制限用容量素子が接続されている
ことを特徴とするデュアルレート振幅制限増幅回路。
【請求項4】
請求項1又は2に記載されたデュアルレート振幅制限増幅回路において、
前記低ビットレート用の増幅器の少なくとも1つは、
前記正相信号の伝送ラインと前記逆相信号の伝送ラインとの間に帯域制限用容量素子が接続されている
ことを特徴とするデュアルレート振幅制限増幅回路。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載されたデュアルレート振幅制限増幅回路において、
前記低ビットレート用の振幅制限増幅回路は、
前記直列に接続された複数の低ビットレート用の増幅器の前段に所定周波数以上の高周波成分を減衰させるローパスフィルタを備えている
ことを特徴とするデュアルレート振幅制限増幅回路。
【請求項6】
請求項2に記載されたデュアルレート振幅制限増幅回路において、
前記高ビットレート用の増幅器および前記低ビットレート用の増幅器は、その特性が同じ同種類のトランジスタを用いて構成されている
ことを特徴とするデュアルレート振幅制限増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160054(P2011−160054A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18059(P2010−18059)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】