説明

データ処理装置、研磨装置、研磨レートの推定方法およびプログラム

【課題】 研磨レートの推定精度を高める。
【解決手段】 研磨中における研磨部分の温度を検出すると共に、温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量を検出する(ステップS1)。そして、その検出した温度の時間的な変化傾向に基づき研磨期間中における少なくとも2つの異なる時間範囲を設定する(ステップS2)。それら各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する(ステップS3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、研磨装置、研磨レートの推定方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
研磨装置の研磨レートを推定する手法は様々に提案されている。例えば、特許文献1には次のような研磨レート推定手法が示されている。つまり、特許文献1では、研磨対象物を研磨する研磨部材を回転させるためのモーターの通電電流や、研磨開始から研磨終了までに検出された研磨期間全体の研磨部分の温度の平均値というような複数の要素を利用して、研磨レートを推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−342841号公報
【特許文献2】特開2004−106123号公報
【特許文献3】特開平8−227867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、研磨中における研磨部分の温度変化を調べてみたところ、図5のグラフに示されるような結果を得た。この実験では、3種のサンプルA,B,Cのそれぞれについて、それらサンプルA,B,Cを同様な条件の下で研磨しているときの研磨部分の温度を測定した。図5中の実線AはサンプルAのものであり、点線BはサンプルBのものであり、鎖線CはサンプルCのものである。
【0005】
それらサンプルA,B,Cについて、研磨開始から研磨終了までの温度測定値の平均値(研磨期間全体の温度平均値)を算出したところ、サンプルA,B,Cの研磨期間全体の温度平均値はほぼ等しかった。これに対して、各サンプルA,B,Cについて、研磨により除去された厚みの実測値を研磨時間で割って研磨レートを算出したところ、研磨レートに関しては、サンプルC>サンプルA>サンプルBの結果を得た。
【0006】
すなわち、サンプルA,B,Cにおける研磨期間全体の温度平均値はほぼ等しいのに対して、サンプルA,B,Cの研磨レートは互いに異なっているという実験結果を得た。
【0007】
特許文献1では、前記の如く、研磨部分の温度だけでなく、モーターの通電電流というような温度以外の要素をも考慮して研磨レートを推定している。しかし、研磨部分の温度と研磨レートとの関連性が温度以外の要素と研磨レートとの関連性よりも強い場合には、研磨部分の温度が、温度以外の要素よりも、研磨レートの推定に大きく影響する。このような場合に、特許文献1の如く研磨期間全体の温度平均値を利用して研磨レートを推定すると、研磨レートの推定精度が落ちる虞がある。つまり、特許文献1における研磨レート推定手法では、例えば、サンプルA,B,Cの研磨レートが異なっているのにも拘わらず、研磨期間全体の温度平均値が等しいために、サンプルA,B,Cの研磨レートは同様という推定結果になってしまう虞がある。このようなことから、特許文献1に示されている研磨レート推定手法による研磨レートの推定精度は満足できるものではなかった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものである。すなわち、本発明の目的は、研磨レートの推定精度を高めることができるデータ処理装置、研磨装置、研磨レートの推定方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデータ処理装置は、
研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する研磨レート推定部が設けられている。
【0010】
本発明の研磨装置は、上記本発明のデータ処理装置を備えている。
【0011】
本発明の研磨レートの推定方法は、
研磨中における研磨部分の温度を検出すると共に、温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量を検出し、
前記検出した温度の時間的な変化傾向に基づき研磨期間中における少なくとも2つの異なる時間範囲を設定し、
前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する。
【0012】
本発明のプログラムは、
データ処理装置に、
研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する機能
を持たせる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨レートの推定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態を説明するための図である。
【図2】第2実施形態を説明するための図である。
【図3】第2実施形態における研磨部分の温度の時間的な変化とその変化傾向(微分値)の一例を表したグラフである。
【図4】その他の実施形態を説明するためのモデル図である。
【図5】複数種のサンプルのそれぞれにおける研磨部分の温度の時間的な変化例を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1(a)に示されるように、第1実施形態のデータ処理装置100は、研磨レート推定部101を備えている。この研磨レート推定部101は、研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する。このようなデータ処理装置100の機能は、図1(d)に示されるようなプログラム105によって実現される。
【0017】
この第1実施形態では、研磨レートと関係がある研磨部分温度の情報と、温度以外の所定の物理量の情報との複数の情報を利用して研磨レートを推定するので、一つの情報だけで研磨レートを推定する場合に比べて、研磨レートの推定精度を向上できる。その上、この第1実施形態では、研磨レートを推定する際に利用する研磨部分温度情報は、研磨開始から研磨終了までの研磨期間全体の温度の平均値ではなく、研磨期間中の異なる少なくとも2つの各時間範囲毎のものである。これにより、研磨レートの推定精度をより高めることができる。特に、研磨レートと研磨部分の温度との関連性が、前記温度以外の物理量と研磨レートとの関連性よりも強い場合には、研磨レートの推定に対する研磨部分温度の関与の度合いが大きくなることから、研磨レートの推定精度をより一層向上できる。すなわち、研磨レートと研磨部分の温度との関係(換言すれば、研磨レートと研磨部分の温度との関連性の度合い)は、研磨の全期間に亘って一定ではなく、研磨期間中に変化することがある。例えば、研磨対象部分が複数の層構造となっており、第1層目の研磨中と、その後の第2層目の研磨中とでは、層の構成材料の差異等により、研磨レートと研磨部分の温度との関係が変化する。このような研磨レートと研磨部分の温度との関係が変化する時点は、研磨部分の温度の時間的な変化傾向を利用することで検知できる。このことから、研磨レートと研磨部分の温度との関係が異なる時間範囲を設定することができる。この第1実施形態では、そのように設定された研磨中の各時間範囲毎の研磨部分温度情報を利用し、かつ、各時間範囲毎における研磨レートと研磨部分の温度との関係を考慮して、研磨レートを推定できることから、上記の如く研磨レートの推定精度を高めることができる。
【0018】
この第1実施形態のデータ処理装置100は、図1(b)に示されるように、研磨装置103に組み込まれ当該研磨装置103を構成することができる。この第1実施形態の研磨装置103は、次のように研磨レートを推定する。例えば、研磨装置103は、研磨中に、研磨部分の温度を検出すると共に、温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量を検出する(図1(c)のステップS1参照)。そして、その検出した温度の時間的な変化傾向に基づき研磨期間中における少なくとも2つの異なる時間範囲を設定する(ステップS2)。その後、それら各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する(ステップS3)。
【0019】
この第1実施形態の研磨装置103は、データ処理装置100を備えることによって、また、上記のような研磨レートの推定動作を行うことによって、前記同様に研磨レートの推定精度を高めることができるというものである。
【0020】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態を説明する。
【0021】
この第2実施形態では、研磨装置は、CMP(Chemical-Mechanical-Polishing)装置(化学機械的研磨装置)である。図2(a)に示されるように、当該研磨装置1は、研磨機構部Sと、当該研磨機構部Sの動作を制御する制御装置Mとを備えている。その研磨機構部Sは、研磨テーブル2と、テーブルモータ3と、ウェハホルダー4と、ホルダーモータ5と、ドレッサーヘッド6と、ドレッサーモータ7と、研磨液供給ノズル8と、温度検出手段9とを備えている。
【0022】
研磨テーブル2の上面には、研磨対象物である半導体ウェハWを研磨する研磨部材である研磨パッド10が設けられている。テーブルモータ3はその研磨パッド10が配設されているテーブル面(研磨パッド形成面)に垂直な研磨テーブル中心軸を中心にして研磨テーブル2を回転させるものである。ウェハホルダー4は、研磨テーブル2の上方側に配置されている。当該ウェハホルダー4は、研磨テーブル2の研磨パッド形成面に対向するウェハ搭載面4aを有している。そのウェハ搭載面4aには、例えば、静電チャック手法等の保持手法により半導体ウェハWが保持される。ホルダーモータ5は、そのウェハ搭載面4aに垂直なウェハホルダー中心軸を中心にしてウェハホルダー4を回転させるものである。この研磨装置1には、ウェハホルダー4を研磨テーブル2に対して進退方向に移動させるウェハホルダー移動手段(図示せず)が設けられている。
【0023】
ドレッサーヘッド6は、ウェハホルダー4の横側に当該ウェハホルダー4と共に研磨テーブル2の上方側に配置されている。当該ドレッサーヘッド6は、研磨テーブル2の研磨パッド10に向き合う部分を有し、当該部分には、研磨パッド10をドレッシングする部材が設けられている。ドレッサーモータ7はドレッサーヘッド6を回転させるものである。この研磨装置1には、ドレッサーヘッド6を研磨テーブル2の研磨パッド形成面に対して進退方向に移動させるドレッサー用移動手段(図示せず)が設けられている。
【0024】
研磨液供給ノズル8は、研磨液であるスラリーを研磨テーブル2の研磨パッド10に供給するノズルである。温度検出手段9は、研磨テーブル2の上部の温度を検出するものであり、例えば、赤外線温度センサ等により構成される。
【0025】
このような研磨機構部Sでの研磨は次のように行われる。すなわち、研磨中には、研磨液供給ノズル8から研磨パッド10に研磨液(スラリー)が供給される。また、テーブルモータ3によって研磨テーブル2が回転している。さらに、研磨対象物である半導体ウェハWは、ウェハホルダー4のウェハ搭載面4aに保持されている。そのウェハホルダー4は、ホルダーモータ5によって回転し、かつ、ウェハホルダー移動手段によって研磨テーブル2に所定の押圧力で押し付けられている。つまり、半導体ウェハWは、研磨液が供給され、かつ、回転している研磨パッド10に押し付けられることにより、研磨パッド10による機械的な研磨と、研磨液(スラリー)による化学的な研磨とによって、研磨される。
【0026】
また、研磨の後には(例えば1枚の半導体ウェハWの研磨が終了する度に)、研磨パッド10のドレッシングが行われる。つまり、ドレッサー用移動手段によってドレッサーヘッド6を研磨パッド10に押し付ける。そして、ドレッサーモータ7により回転しているドレッサーヘッド6によって、研磨パッド10上の研磨くず等のゴミが除去される。このとき、研磨テーブル2はテーブルモータ3によって回転している。
【0027】
制御装置Mは、データ処理装置としての機能を有し、図2(b)に示すように、測定レート検出部15と、記憶部16と、データ取得部17と、時計機構18と、研磨制御部19と、ドレッシング制御部20と、研磨レート推定部21とを備えている。
【0028】
研磨制御部19は、予め定められた研磨動作用の制御手順を実行させるために記憶部16に格納されたプログラムに従って、研磨機構部Sの研磨動作を制御する。つまり、研磨制御部19は、上記プログラムに従って、モータ3,5やウェハホルダー移動手段等を制御して、研磨機構部Sに半導体ウェハWを研磨させる機能を備えている。研磨動作用の制御手順には様々な手順があり、ここでは、その何れの手順でもって研磨動作が行われてもよく、その説明は省略する。なお、この第2実施形態では、研磨制御部19は、研磨中には、テーブルモータ3およびホルダーモータ5が予め定められた一定の回転数でもって回転駆動するようにモータ3,5の回転を制御する。
【0029】
ドレッシング制御部20は、予め定められたドレッシング動作用の制御手順を実行させるために記憶部16に格納されたプログラムに従って、ドレッサーヘッド6により研磨パッド10のドレッシングを行わせる機能を備えている。ドレッシング動作用の制御手順には様々な手順があり、ここでは、その何れの手順でもってドレッシング動作が行われてもよく、その説明は省略する。なお、この第2実施形態では、ドレッシング制御部20は、ドレッシング中に、モータ3,7が予め定められた一定の回転数でもって回転駆動するようにモータ3,7の回転を制御する。
【0030】
データ取得部17は、記憶部16に格納されているプログラムに従って、次のように動作する。例えば、データ取得部17は、研磨制御部19の制御動作情報等に基づいて研磨が開始されたことを検知したときに、温度検出手段9により検出される温度の取り込みを開始する。そして、データ取得部17は、研磨中において、例えば時計機構18を利用して予め定められた時間間隔毎に(所定のサンプリング周期で)温度検出手段9の検出温度を研磨部分温度として取り込む。また、データ取得部17は、そのように温度を検出する度に、当該温度が取り込まれたときの時間情報(例えば研磨開始時からの経過時間情報)を時計機構18を利用して検出する。さらに、データ取得部17は、検出した研磨部分温度と、当該温度が取り込まれたときの時間情報とを対応させる。さらに、データ取得部17は、その温度−時間の対応情報を、研磨中の半導体ウェハWに対して付与されている識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0031】
また、データ取得部17は、テーブルモータ3とホルダーモータ5とドレッサーモータ7のそれぞれの回転トルクデータを取り込む機能を有する。研磨装置1には、それらモータ3,5,7のそれぞれの回転トルクデータを取り込むために、トルク検出器や、モータ3,5,7の通電電流を回転トルクデータとして取り込むための電流計等のトルク検出手段(図示せず)が設けられている。データ取得部17は、例えば研磨制御部19の制御動作情報等に基づいて研磨が開始されることを検知したときに、テーブルモータ3およびホルダーモータ5が回転駆動する前に、前記トルク検出手段からの出力値を取り込む。また、データ取得部17は、研磨開始以降に、前記研磨部分温度の取り込みと同様に、例えば時計機構18を利用して予め定められた時間間隔毎に、前記トルク検出手段の検出値を回転トルクデータとして取り込む。そして、データ取得部17は、取り込んだ回転トルクデータを、当該データが取り込まれたときの時間情報(例えば研磨開始時からの経過時間情報)に対応させる。さらに、データ取得部17は、それらモータ3,5のそれぞれの回転トルクデータ−時間の対応情報を、それぞれ、その研磨中の半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。なお、この第2実施形態では、テーブルモータ3およびホルダーモータ5は、前述したように、研磨中には、予め定められた一定の回転数でもって回転駆動するように研磨制御部19により回転が制御される。このため、研磨開始以降の研磨パッド10と半導体ウェハWとの摩擦係数の変化に応じてテーブルモータ3およびホルダーモータ5のそれぞれの回転トルク(通電電流)は変化する。換言すれば、テーブルモータ3およびホルダーモータ5のそれぞれの回転トルクは、研磨中の半導体ウェハWの研磨面の表面粗さと関係して変化する。その研磨中の半導体ウェハWの研磨面の表面粗さは研磨レートに関係している。すなわち、モータ3,5の回転トルクデータは、研磨レートと関係のある物理量である。
【0032】
さらに、データ取得部17は、例えば研磨制御部19の制御動作情報に基づいて研磨終了を検知したときには、時計機構18からの時間情報に基づいて、研磨に要した時間(研磨時間)を検出する。そして、データ取得部17は、その検出した研磨時間の情報を、研磨が終了した半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0033】
さらに、データ取得部17は、例えばドレッシング制御部20の制御動作情報に基づいてドレッシング動作が開始されることを検知したときに、ドレッサーモータ7が回転駆動する前の前記トルク検出手段の検出値を取り込む。また、データ取得部17は、引き続き、ドレッシング開始以降のドレッサーモータ7の回転トルクデータを前記トルク検出手段を利用して取り込む。データ取得部17は、その回転トルクデータの取り込みに関しても、前記モータ3,5の回転トルクデータの取り込みと同様に、例えば時計機構18を利用して予め定められた時間間隔毎に取り込む。そして、データ取得部17は、取り込んだ回転トルクデータを、当該データが取り込まれたときの時間情報(例えばドレッシング開始時からの経過時間情報)に対応させる。さらに、データ取得部17は、その回転トルクデータ−時間の対応情報を、そのドレッシング工程の直前に研磨されていた半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0034】
なお、研磨パッド10の表面状態は研磨を行うに従って変化する。また、研磨パッド10の表面状態によって、当該研磨パッド10と研磨対象物(半導体ウェハW)との研磨状態が変化する。つまり、研磨パッド10の表面状態は半導体ウェハWの研磨レートに関係している。さらに、ドレッサーモータ7は、所定の一定の回転数でもって回転駆動するようにドレッシング制御部20によって制御される。このため、ドレッサーモータ7の回転トルクデータ(通電電流量)は、その研磨パッド10の表面状態の変化に応じて変化する。上記のようなことから、ドレッサーモータ7の回転トルクデータは、研磨レートと関係のある物理量である。
【0035】
測定レート検出部15は、記憶部16に予め格納されたプログラムに従って次のように動作する。例えば、測定レート検出部15は、次のような研磨量測定値に基づいて研磨レートの測定値(実測の研磨レート)を算出し、当該算出した実測の研磨レートの情報を記憶部16に書き込む。すなわち、予め研磨レートを実測すると定められた半導体ウェハWは、研磨前と研磨後のそれぞれの厚みが例えばレーザー三角測量方式の厚み測定装置により測定される。その測定された研磨前後の厚み差分が研磨量測定値として検出される。当該研磨量測定値は、研磨装置1とは別の装置で算出されて研磨装置1の制御装置Mに入力されてもよいし、研磨前後のそれぞれの厚みの測定値を制御装置Mに入力して当該制御装置Mで算出させてもよい。このような研磨量測定値は、当該測定値に対応する半導体ウェハWの識別情報と共に測定レート検出部15に加えられる。
【0036】
測定レート検出部15は、上記研磨量測定値と半導体ウェハWの識別情報を受け取ると、その半導体ウェハWの識別情報に対応している前記研磨時間の情報を記憶部16から読み出す。そして、測定レート検出部15は、受け取った研磨量測定値を、記憶部16から読み出した研磨時間で割って、研磨レートを算出する。さらに、測定レート検出部15は、その算出した研磨レートを実測研磨レート情報として、前記半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0037】
研磨レート推定部21は、図2(b)に示すように、区分位置検出部23と、モデル式作成部24と、温度情報検出部25と、モータ回転情報検出部26と、研磨レート算出部27とを備えている。それら各構成部23〜27は、それぞれ、記憶部16に予め格納されているプログラムに従って次のように動作する。
【0038】
区分位置検出部23は、研磨開始から研磨終了までの研磨期間を、例えば図3に示されるA区間とB区間のように複数に区分する区分位置Pを検出する。その区分位置Pは、研磨期間中に、研磨レートと研磨部分温度の関係が大きく変化すると想定される時点である。例えば、研磨対象物(半導体ウェハW)の表面に複数の層が積層形成されており、その最上層が金属層であり、その金属層の下側には絶縁層が形成されている場合がある。そのような半導体ウェハWの研磨工程において、半導体ウェハWの最上層の金属層を除去し、引き続き、その下の絶縁層の一部を研磨により除去する場合がある。このような場合には、最上層の金属層の研磨中と、その下側の絶縁層の研磨中とでは、研磨対象の材料等の差異により、研磨レートと研磨部分温度の関係が異なる。この第2実施形態では、上記のように研磨の進行による研磨対象材料等の変化に起因して研磨レートと研磨部分温度の関係が変化する時点を区分位置Pとする。
【0039】
この第2実施形態では、区分位置検出部23は、区分位置Pを、研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づいて決定する。すなわち、前述したように、この第2実施形態の研磨装置はCMP装置であり、研磨パッド10による機械的な研磨と、研磨液による化学的な研磨とによって、研磨を行うものである。機械的な研磨の状態の変化は、例えば、前記したように研磨レートと関係のあるモータ3,5,7の通電量等の変化に表れる。また、科学的な研磨の状態の変化は、例えば、研磨部分の温度の変化に表れる。ここでは、化学的な研磨が、機械的な研磨よりも研磨対象物(半導体ウェハW)の研磨に大きく寄与している場合を想定している。この場合には、研磨対象の材料が変化すると(例えば図3の時点P)、化学反応による発熱状態が大きく変化することから、図3に示されるように、研磨部分の温度変化傾向(微分値)が大きく変化する。このことから、この第2実施形態では、区分位置検出部23は、研磨部分の温度の時間的な変化傾向が大きく変化した時点を区分位置Pとして検出する。より具体的には、例えば、区分位置検出部23は、半導体ウェハW単位で前記温度−時間の対応情報を記憶部16から読み出し、当該読み出した情報に基づいて研磨部分温度の時間的な変化傾向を算出する。その研磨部分温度の時間的な変化傾向は、例えば、研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化を表す関数の時間微分値である。そして、区分位置検出部23は、その算出した研磨部分温度の時間的な変化傾向が、実験(シミュレーションを含む)の結果等に基づいて予め定められたしきい値以上に大きくなった時点を区分位置Pと決定(検出)する。さらに、区分位置検出部23は、その決定した区分位置Pの情報を、前記半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0040】
温度情報検出部25は、次のようにして、研磨部分温度情報を検出する。例えば、温度情報検出部25は、半導体ウェハWの識別情報に基づいて、半導体ウェハW毎の温度−時間の対応情報を記憶部16から読み出す。そして、温度情報検出部25は、その読み出した情報に基づいて、区分位置Pにより設定される2つの時間範囲(つまり、図3のA区間とB区間)のそれぞれにおける温度の統計的な代表値を研磨部分温度情報として半導体ウェハW毎に算出する。なお、統計的な代表値には、平均値や、中央値や、最頻値を始め複数種あり、何れを採用してもよいが、例えば、ここでは、平均値を統計的な代表値として算出する。
【0041】
温度情報検出部25は、A区間とB区間のそれぞれの温度の代表値(研磨部分温度情報)を算出した後には、その算出した各研磨部分温度情報をそれぞれ、前記半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0042】
モータ回転情報検出部26は、次のようにして、温度以外の、研磨レートと関係ある所定の物理量であるモータ回転情報を検出する。例えば、モータ回転情報検出部26は、半導体ウェハW毎に、各半導体ウェハWの識別情報に基づいて、研磨開始から研磨終了までに検出されたテーブルモータ3とホルダーモータ5のそれぞれの回転トルクデータを記憶部16から読み出す。そして、モータ回転情報検出部26は、読み出した各回転トルクデータから、それぞれ、研磨を開始する前に検出した停止中の各モータ3,5における前記トルク検出手段の出力値を差し引いた値を算出する。つまり、ゼロ点補正を行う。さらに、モータ回転情報検出部26は、ゼロ点補正後の回転トルクデータに基づいて、各半導体ウェハW毎に、研磨中のテーブルモータ3とホルダーモータ5のそれぞれの回転トルクデータの統計的な代表値を検出する。統計的な代表値には、前記の如く、平均値や、中央値や、最頻値を始め複数種あり、何れを採用してもよいが、例えば、ここでは、平均値を統計的な代表値として検出する。
【0043】
モータ回転情報検出部26は、その検出した値を、それぞれ、前記半導体ウェハWの識別情報に対応させモータ回転情報として記憶部16に格納する。
【0044】
また、モータ回転情報検出部26は、半導体ウェハWの識別情報に基づいてドレッサーモータ7の回転トルクデータを各半導体ウェハW毎に記憶部16から読み出す。そして、モータ回転情報検出部26は、読み出した回転トルクデータから、ドレッシングを開始する前に検出された停止中のドレッサーモータ7の前記トルク検出手段の出力値を差し引いた値を算出する。つまり、ゼロ点補正を行う。さらに、モータ回転情報検出部26は、そのゼロ点補正後の回転トルクデータに基づいてドレッシング中におけるドレッサーモータ7の回転トルクデータの統計的な代表値(例えば平均値)を検出する。モータ回転情報検出部26は、その検出した値をモータ回転情報として、前記半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0045】
モデル式作成部24は、予め記憶部16に格納されているプログラムに従って、次のように、回帰分析のモデル式を作成して記憶部16に格納する。例えば、モデル式作成部24は、測定レート検出部15によって記憶部16に格納された実測研磨レート情報を読み出す。また、モデル式作成部24は、その実測研磨レート情報と共通の半導体ウェハWの識別情報に対応している前記研磨中のA区間とB区間の各研磨部分温度情報を記憶部16から読み出す。同様に、モデル式作成部24は、半導体ウェハWの識別情報に基づいて、各モータ3,5,7のモータ回転情報を記憶部16から読み出す。換言すれば、モデル式作成部24は、半導体ウェハW毎に、実測研磨レート情報と、研磨中のA区間とB区間の各研磨部分温度情報と、各モータ3,5,7のモータ回転情報とを、それぞれ、記憶部16から読み出す。
【0046】
モデル式作成部24は、上記のように記憶部16から読み出した情報に基づいて、研磨レートを目的変数(Y)とし、次に示すような変数を説明変数(X1,...X5)とした回帰分析の下記のようなモデル式(1)を作成する。ここでの説明変数は、研磨中のA区間における研磨部分温度情報(A区間の温度の代表値(平均値))X1と、研磨中のB区間における研磨部分温度情報(B区間の温度の代表値(平均値))X2である。さらに、この第2実施形態では、説明変数として、テーブルモータ3のモータ回転情報X3と、ホルダーモータ5のモータ回転情報X4と、ドレッサーモータ7のモータ回転情報X5とをも用いられる。
【0047】
モデル式:Y=a・X1+b・X2+c・X3+d・X4+e・X5+f・・・(1)
【0048】
つまり、モデル式作成部24は、前記のように記憶部16から読み出した情報に基づいて、回帰分析のモデル式(1)における係数a〜fを例えば最小二乗法により求めて、研磨レートを推定するためのモデル式を作成する。モデル式作成部24は、その作成したモデル式を記憶部16に格納する。
【0049】
研磨レート算出部27は、予め記憶部16に格納されているプログラムに従って、次のように研磨レートを算出する。例えば、研磨レート算出部27は、半導体ウェハWの識別情報を利用して、研磨レート推定対象の研磨期間におけるA区間とB区間の各研磨部分温度情報を記憶部16から読み出す。また、研磨レート算出部27は、半導体ウェハWの識別情報を利用して、研磨レート推定対象の研磨期間における各モータ3,5のモータ回転情報を記憶部16から読み出す。さらに、研磨レート算出部27は、研磨レート推定対象の研磨が行われた後のドレッシング中におけるドレッサーモータ7のモータ回転情報を記憶部16から読み出す。
【0050】
さらにまた、研磨レート算出部27は、記憶部16から前記回帰分析のモデル式を読み出す。そして、研磨レート算出部27は、上記のように読み出した研磨部分温度情報とモータ回転情報の数値を、それぞれ、前記モデル式の該当する変数に代入する。これにより、研磨レート算出部27は、モデル式に基づいて研磨レートを算出する。
【0051】
この第2実施形態では、上記のように、研磨レートを推定する際に利用する研磨部分の温度情報として、研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づいて設定された複数の時間範囲毎に、別個の研磨部分温度情報を検出した。そして、それら各時間範囲毎の研磨部分温度情報を利用して重回帰分析により研磨レートを推定している。つまり、この第2実施形態では、前述したように、研磨進行時間によって研磨部分温度と研磨レートの関係が異なることから、この関係の違いを考慮して研磨レートを推定している。このために、この第2実施形態では、研磨期間全体の研磨部分の温度の平均値を利用して研磨レートを推定する場合に比べて、研磨レートの推定精度を高めることができるというものである。
【0052】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態を説明する。なお、この第3実施形態の説明において、第2実施形態と同様な構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0053】
この第3実施形態では、例えば、研磨期間中に、研磨レートと研磨部分の温度との関係が複数回変化する場合を想定している。この場合には、研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づいて研磨期間を3区間以上に区分できる。ここでは、それら全区間、あるいは、全区間の中から選択された少なくとも2つの区間における各区間(研磨部分温度情報検出対象区間)毎の研磨部分温度情報を検出して研磨レートを推定する。
【0054】
すなわち、この第3実施形態では、区分位置検出部23は、第2実施形態と同様な手法によって、研磨期間を所定の3つ以上に区分するための複数の区分位置を検出する機能を備えている。
【0055】
温度情報検出部25は、その検出された区分位置に基づいて設定される各研磨部分温度情報検出対象区間毎の研磨部分温度情報を前記同様に検出する。そして、温度情報検出部25は、そのように検出した研磨部分温度情報を各半導体ウェハWの識別情報に対応させて記憶部16に格納する。
【0056】
モデル式作成部24は、上記のような各研磨部分温度情報検出対象区間毎の研磨部分温度情報と、第2実施形態同様のモータ回転情報とを利用したモデル式を作成する機能を備えている。また、研磨レート算出部27は、そのように作成されたモデル式と、各研磨部分温度情報検出対象区間毎の研磨部分温度情報と、モータ回転情報とを利用して、研磨レートを推定する機能を備えている。
【0057】
この第3実施形態の上記以外の構成は、第2実施形態と同様である。
【0058】
この第3実施形態は、研磨レートと研磨部分の温度との関係の変化によって研磨期間を3区間以上に区分できる場合に有効であり、そのような場合に、研磨レートの推定精度を格段に向上させることが可能となる。
【0059】
なお、研磨期間を3区間以上に区分し、それら全区間の中から少なくとも2つ研磨部分温度情報検出対象区間を選択する場合には、研磨レートと、研磨部分の温度との関連性の度合いを主に考えて選択する。しかし、その関連性の度合いは研磨対象の材料や研磨液等によって異なる。このため、研磨レートの推定精度を向上させるために利用する研磨部分温度情報検出対象区間の選択手法は一概には言えず、研磨対象物に応じた適宜な区間が選択される。
【0060】
なお、この発明は第1〜第3の各実施形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得るものである。例えば、第2実施形態や第3実施形態では、モータ回転情報は、研磨期間全体の代表値であった。これに代えて、モータ回転情報に関しても、研磨部分温度情報と同様に、研磨期間における少なくとも2つの各区間毎にモータ回転情報を求めて研磨レートの推定に利用してもよい。つまり、モータ回転情報検出部26は、研磨中における少なくとも2つの異なる所定の時間範囲毎に回転トルクデータの代表値をモータ回転情報として求める機能を有する。さらに、モデル式作成部24は、第2実施形態や第3実施形態と同様に設定された所定の時間範囲毎の研磨部分温度情報とモータ回転情報を説明変数としたモデル式を作成する機能を備える。そして、研磨レート算出部27は、その作成されたモデル式と、所定の時間範囲毎の研磨部分温度情報およびモータ回転情報とを利用して、研磨レートを推定する。
【0061】
また、第2実施形態や第3実施形態では、研磨期間中の複数の区間毎の研磨部分温度情報を研磨レートの推定に利用していた。これに対して、前記区間毎の研磨部分温度情報に加えて、研磨期間全体の研磨部分の温度の代表値をも研磨部分温度情報として研磨レートの推定に利用してもよい。なお、その研磨期間全体の研磨部分温度情報と、各区間毎の研磨部分温度情報との相関関係が高いと、重回帰分析の計算が発散してしまう。このために、研磨期間全体の研磨部分温度情報をも利用して研磨レートを重回帰分析により推定する場合には、研磨期間全体の研磨部分温度情報と、各区間毎の研磨部分温度情報との相関が高くないという条件を満たす必要がある。
【0062】
さらに、研磨レートの推定には、例えば、研磨期間を複数に区分した全区間のうちの1つの区間の研磨部分温度情報と、研磨期間全体の研磨部分温度情報との2つの時間範囲の研磨部分温度情報を利用してもよい。この場合にも、上記同様の理由により、その区間の研磨部分温度情報と、研磨期間全体の研磨部分温度情報との相関が高くないという条件を満たす必要がある。
【0063】
さらに、温度以外の所定の物理量の情報(モータ回転情報)に関しても上記同様に、研磨期間を複数に区分けした少なくとも1つの区間の情報と、研磨期間全体の情報というような、少なくとも2つの時間範囲の情報を利用してもよい。
【0064】
さらに、この発明は、図2(a)に示すような研磨装置だけでなく、それ以外の研磨装置にも適用することができる。例えば、本発明は、図4に示すような構成の研磨装置30にも適用することができる。図4に示す研磨装置30は、研磨対象物31を搭載する回転テーブル32と、当該回転テーブル32の研磨対象物搭載面32aに垂直な中心軸を中心にして回転テーブル32を回転させるモータ33とを備えている。さらに、研磨装置30は、回転テーブル32の上方側に配置される研磨ヘッド34と、当該研磨ヘッド34における回転テーブル32に向き合っている部分に設けられる研磨部材35とを備えている。さらに、研磨装置30は、回転テーブル32に研磨液を供給する研磨液供給ノズル36を備えている。さらに、研磨装置30は、研磨ヘッド34の移動機構(図示せず)を備えている。当該移動機構は、研磨ヘッド34を回転テーブル32に対して進退方向に移動させる機能と研磨ヘッド34を回転テーブル32の研磨対象物搭載面32aに沿わせて移動させる機能とを備えている。さらに、研磨装置30は、当該装置の動作を制御する制御装置37を備えている。このような研磨装置30にも本発明を適用することができる。このような研磨装置30においても、本発明を適用することによって、研磨レートの推定精度を高めることができる。
【0065】
さらに、第2実施形態や第3実施形態では、モータ3,5,7の全ての回転トルクデータを所定の物理量の情報として研磨レートの推定に利用していた。これに対して、モータ3,5,7のうちの予め選択された1つあるいは2つのモータの回転トルクデータを研磨レートの推定に利用してもよい。
【0066】
さらに、第2実施形態や第3実施形態では、研磨装置1の制御装置Mがデータ処理装置と成している例を示した。これに対して、本発明に係るデータ処理装置の別の実施形態として、データ処理装置は、制御装置Mとは別体の、少なくとも上記のような研磨レート推定部21を備えた装置であってもよい。また、その制御装置Mとは別体のデータ処置装置は、研磨レートの推定に関わる制御構成部分、例えば、前述したような、測定レート検出部15と、記憶部16と、データ取得部17と、時計機構18と、研磨レート推定部21とを備えていてもよい。
【0067】
(付記1) 研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する研磨レート推定部が設けられているデータ処理装置。
【0068】
(付記2) 前記研磨部分温度情報は、前記各時間範囲内でそれぞれ検出された前記研磨部分の温度の統計的な代表値である付記1に記載のデータ処理装置。
【0069】
(付記3) 前記研磨レート推定部は、前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の所定の物理量の情報とをそれぞれ説明変数とし、当該説明変数を検出した研磨時における実測の研磨レートの情報を目的変数として回帰分析により作成されたモデル式と、研磨レート推定対象の研磨中における前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の所定の物理量の情報とに基づいて、研磨レートを推定する付記1又は付記2に記載のデータ処理装置。
【0070】
(付記4) 前記所定の物理量の情報は、研磨を行う機構部に設けられている少なくとも1つのモータの回転トルクに関する情報を含む付記1又は付記2又は付記3に記載のデータ処理装置。
【0071】
(付記5) 前記時間範囲の始点と終点の一方又は両方は、研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化を表す関数の時間微分値が所定のしきい値以上となった時点である付記1乃至付記4の何れか一つに記載のデータ処理装置。
【0072】
(付記6) 付記1乃至付記5の何れか一つに記載されているデータ処理装置を備えている研磨装置。
【0073】
(付記7) 研磨中における研磨部分の温度を検出すると共に、温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量を検出し、
前記検出した温度の時間的な変化傾向に基づき研磨期間中における少なくとも2つの異なる時間範囲を設定し、
前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する研磨レートの推定方法。
【0074】
(付記8) 前記研磨部分温度情報は、前記各時間範囲毎の検出温度の統計的な代表値である付記7に記載の研磨レートの推定方法。
【0075】
(付記9) 研磨レートを推定するときには、前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の所定の物理量の情報とをそれぞれ説明変数とし、当該説明変数を検出した研磨時における実測の研磨レートの情報を目的変数として回帰分析により作成されたモデル式を利用する付記7又は付記8に記載の研磨レートの推定方法。
【0076】
(付記10) 前記所定の物理量の情報は、研磨を行う機構部に設けられている少なくとも1つのモータの回転トルクに関する情報を含む付記7又は付記8又は付記9に記載の研磨レートの推定方法。
【0077】
(付記11) 前記時間範囲の始点と終点の一方又は両方は、研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化を表す関数の時間微分値が所定のしきい値以上となった時点とする付記7乃至付記10の何れか一つに記載の研磨レートの推定方法。
【0078】
(付記12) データ処理装置に、
研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する機能
を持たせるためのプログラム。
【符号の説明】
【0079】
1,30,103 研磨装置
3 テーブルモータ
5 ホルダーモータ
7 ドレッサーモータ
10 研磨パッド
21,101 研磨レート推定部
W 半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する研磨レート推定部が設けられているデータ処理装置。
【請求項2】
前記研磨部分温度情報は、前記各時間範囲内でそれぞれ検出された前記研磨部分の温度の統計的な代表値である請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記研磨レート推定部は、前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の所定の物理量の情報とをそれぞれ説明変数とし、当該説明変数を検出した研磨時における実測の研磨レートの情報を目的変数として回帰分析により作成されたモデル式と、研磨レート推定対象の研磨中における前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の所定の物理量の情報とに基づいて、研磨レートを推定する請求項1又は請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記所定の物理量の情報は、研磨を行う機構部に設けられている少なくとも1つのモータの回転トルクに関する情報を含む請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記時間範囲の始点と終点の一方又は両方は、研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化を表す関数の時間微分値が所定のしきい値以上となった時点である請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載のデータ処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載されているデータ処理装置を備えている研磨装置。
【請求項7】
研磨中における研磨部分の温度を検出すると共に、温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量を検出し、
前記検出した温度の時間的な変化傾向に基づき研磨期間中における少なくとも2つの異なる時間範囲を設定し、
前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する研磨レートの推定方法。
【請求項8】
研磨レートを推定するときには、前記各時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の所定の物理量の情報とをそれぞれ説明変数とし、当該説明変数を検出した研磨時における実測の研磨レートの情報を目的変数として回帰分析により作成されたモデル式を利用する請求項7に記載の研磨レートの推定方法。
【請求項9】
前記所定の物理量の情報は、研磨を行う機構部に設けられている少なくとも1つのモータの回転トルクに関する情報を含む請求項7又は請求項8に記載の研磨レートの推定方法。
【請求項10】
データ処理装置に、
研磨中における研磨部分の温度の時間的な変化傾向に基づき設定された少なくとも2つの異なる時間範囲毎の研磨部分温度情報と、前記温度以外の、研磨レートと関係のある所定の物理量の情報とを利用して、研磨レートを推定する機能
を持たせるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148036(P2011−148036A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11066(P2010−11066)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】