説明

データ処理装置、関心のある対象の検査のための断層撮影装置、関心のある対象の検査方法、コンピュータ可読媒体およびプログラム要素

データ処理装置であって、可動データ収集装置上に配置され、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる電磁放射を放出するよう適応された複数の放出器アンテナ(140)と、前記複数の放出器アンテナ(140)のそれぞれによって放出された電磁放射を受信するようそれぞれ適応された複数の受信器アンテナ(150)と、前記複数の受信器アンテナ(150)に結合され、前記複数の受信器アンテナ(150)によって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出するよう適応されたデータ処理ユニット(118)とを有する、データ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ伝送の分野に関する。具体的には、本発明はデータ処理装置、関心のある対象の検査のための断層撮影装置、関心のある対象の検査方法、コンピュータ可読媒体およびプログラム要素に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、X線荷物検査は、オペレーターによる作用に完全に依存していた単純なX線撮像システムから、ある種の物質を自動的に認識し、危険物の存在でアラームを発することのできるより洗練された自動システムへと進化した。検査システムは、X線を放出するX線放射源を用いてきた。そのX線が、検査される荷物を透過するか該荷物により散乱されて検出器に達する。X線放射源および検出器は、回転ガントリー上にマウントされてもよく、調査対象の荷物のまわりをたとえばヘリカル式に回転してもよい。その際、回転する検出器からのデータが、該データを評価して荷物の3D構造を再構成するための静的なデータ処理装置に転送される必要がある。
【0003】
このように、計算機断層撮影(CT)は、デジタル処理を使って、単一の回転軸のまわりで撮られた一連の二次元X線画像から対象の内部の三次元画像を生成するプロセスである。CT画像の再構成は、適切なアルゴリズムを適用することによってできる。
【0004】
計算機断層撮影スキャナによって収集されるデータは、大量のリアルタイムデータを発生することがあり、そのデータは回転する検出器からガントリーの静止部に転送される必要がある。計算機断層撮影スキャナの帯域幅要求は、たとえば数ギガビット毎秒と、ますます大きくなる。
【0005】
従来式の解決策では、機械的または光学的なスリップリング・システムが実装されることがある。そこでは、データはガントリーの回転部分からガントリーの静的部分に、機械的なスリップリングまたは光学的なスリップリングによって転送される。そのようなシステムは、摩耗および汚染を通じた性能劣化を受けやすいことがある。
【0006】
他方、無線システムはそれらの問題を被らない。しかしながら、従来式の無線システムを使うと、伝搬環境が主要な役割を演じるようになる。回転ガントリーに見出される伝搬環境は静的でなく、強マルチパスであるので、従来式のアンテナ・ベースのシステムは要求される帯域幅を提供できそうもないのである。
【0007】
同じ出願人フィリップスのWO03/053246A1は、計算機断層撮影スキャナのためのデータ収集システムを開示している。そこでは、検出器によって生成された信号がローター上にマウントされたデータ収集システムに転送され、該データ収集システムが前記信号を処理してそこからデジタルデータを生成する。データ収集システムは、適切なルーティング・アルゴリズムに応じて、生成するデジタルデータの諸部分を、少なくとも一つの送信器のうちのそれぞれにルーティングする。前記少なくとも一つの送信器のうちのそれぞれは、受信したデータを、データ信号として少なくとも一つの受信器に送信する。このように、帯域幅を改善するために複数の並列送信チャネルが使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現代の計算機断層撮影スキャナの増え続ける帯域幅要求では、この無線データ送信でさえ、十分でないことがありうる。
【0009】
十分な帯域幅を提供するデータ処理システムが必要とされているのかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、独立請求項に基づく特徴を有するデータ処理装置によって、関心のある対象の検査のための断層撮影装置によって、関心のある対象を検査する方法によって、コンピュータ可読媒体によって、およびプログラム要素によって達成されうる。
【0011】
本発明のある例示的な実施形態によれば、データ処理装置であって、可動データ収集装置上に配置され、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる(あるいはエンコードしている)電磁放射を放出するよう適応された複数の放出器アンテナと、前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信するようそれぞれ適応された複数の受信器アンテナと、前記複数の受信器アンテナに結合され、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出するよう適応されたデータ処理ユニットとを有するデータ処理装置が提供される。
【0012】
本発明のもう一つの例示的な実施形態によれば、関心のある対象の検査のための断層撮影装置であって、関心のある対象にビームを放出するよう適応された電磁放射源と、関心のある対象を透過したあとのビームを検出するよう適応された少なくとも一つの検出装置と、上記の特徴を有するデータ処理装置であって、該データ処理装置の前記複数の放出器アンテナに結合された前記少なくとも一つの検出装置から受信された検出信号の解析に基づいて関心のある対象に関する構造情報を決定するよう適応されたデータ処理装置とを有する断層撮影装置が提供される。
【0013】
本発明のさらにもう一つの例示的な実施形態によれば、データ処理方法であって、可動データ収集装置上に配置された複数の放出器アンテナによって、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる電磁放射を放出し、複数の受信器アンテナによって、前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信し、前記複数の受信器アンテナに結合されたデータ処理ユニットによって、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出することを含む方法が提供される。
【0014】
本発明のさらにもう一つの例示的な実施形態によれば、プロセッサによって実行されると上記の方法を制御または実行するよう適応されている、データを処理するコンピュータ・プログラムが記憶されているコンピュータ可読媒体が提供される。
【0015】
本発明のさらにもう一つの例示的な実施形態によれば、プロセッサによって実行されると上記の方法を制御または実行するよう適応されている、データを処理するコンピュータ・プログラムが記憶されているコンピュータ可読媒体が提供される。
【0016】
本発明のさらにもう一つの例示的な実施形態によれば、データ処理装置であって、データがエンコードされる電磁放射を放出するよう適応された複数の放出器アンテナと、前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信するようそれぞれ適応された、可動装置上に配置された複数の受信器アンテナと、前記複数の受信器アンテナに結合され、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記データを抽出するよう適応されたデータ処理ユニットとを有するデータ処理装置が提供される。
【0017】
本発明の諸実施形態は、一つまたは複数の特別な電子的な最適化回路を使って、すなわちハードウェアで、あるいはハイブリッド形態で、すなわちソフトウェア構成要素とハードウェア構成要素によって、実現できる。コンピュータ可読媒体およびプログラム要素は、データ処理システムを制御するための制御システム中に実装されてもよい。
【0018】
本発明のある例示的な実施形態によれば、複数放出器アンテナが取り付けられた可動データ収集装置および複数の受信器アンテナ(これは必ずしも前記可動データ収集装置上に設けられなくてもよい)のシステムであって、放出器アンテナのそれぞれがデータ信号を放出し、前記放出器アンテナのうちの特定の一つによって放出された全信号が前記受信器アンテナのうちの全部または複数によって受信される、システムが提供される。こうして、前記放出器アンテナのそれぞれによって放出された信号が複数の受信器アンテナによって受信される。すると、これらの(たとえば少なくとも部分的に冗長な)データ断片がデータ処理ユニットに供給され、該データ処理ユニットが効率的な仕方で個々のデータ断片を合成して元のデータセットを再構成し、データの高い帯域幅が得られうる。
【0019】
N個の放出器アンテナ(送信者アンテナまたは送信器アンテナとも表現されうる)を有し、M個の受信器アンテナ(検出器アンテナとも表現されうる)を有するそのようなシステムは、たとえば、N×M個の信号断片までを評価しうる。そのようなデータ伝送システムとともに導入されるデータ通信方式は、データ処理ユニットがすべての要求されるデータを効率的な仕方で取得することを可能にしうる。
【0020】
そのようなシステムは、MIMOシステム(「Multiple-Input Multiple-Output〔複数入力複数出力〕」)として設計されうる。これ自身は当業者にはよく知られており、データ処理装置の回転部分における検出器からの/への無線データ転送のために実装されうる。該データ処理装置はたとえば、医療用断層撮影/スキャン・システムの一部であってもよい。アンテナは、当該装備の回転部分および/または静的部分に位置されうる。ある例示的な実施形態によれば、MIMOベースのスリップリング通信システムがこうして提供されうる。
【0021】
MIMOは「Multiple-Input Multiple-Output」の略であり、これは複数のデータ断片からのデータ回復のための抽象的な数学モデルに関係する。無線通信では特に、複数アンテナが用いられる場合、MIMOは、スループットを上げるため、および/またはビット誤り率を下げるためにマルチパス伝搬のような現象を利用する。MIMOシステムについてのチャネル容量(スループットの理論的な指標)は、アンテナ数の増加とともに上げることができ、送信および受信アンテナの数の最小に比例する。
【0022】
MIMOは、無線帯域幅および/またはレンジ増すために多重化から裨益しうる。MIMOアルゴリズムによれば、二つ以上のアンテナを通じて情報が送出され、該情報はやはり複数アンテナを介して受信される。MIMOはより多くの情報を送信するために追加的な経路を使用してもよく、その後、受信端上で信号を再合成してもよい。こうして、MIMOシステムは、従来式の単一アンテナシステムに対して著しい容量利得を、より信頼できる通信とともに提供しうる。
【0023】
そのようなMIMOシステムは複数アンテナを有してもよく、送信された信号がいくつかの異なる経路を通じて受信器に到着するマルチパス効果を利用してもよい。それぞれの経路は異なる時間遅延を有することができ、その結果は、単一の送信されたシンボルの複数インスタンスが受信器のところに異なる時刻に到着するということである。
【0024】
従来では、マルチパスは干渉源であるが、例示的な実施形態に基づくMIMOシステムは、データが異なる経路を通じて受信器のところに異なる時刻に到着するという事実を、データ・リンクの品質を改善するために使用しうる。たとえば、メッセージ全体を受信するために単一のアンテナ経路に頼るのではなく、メッセージは、さまざまなアンテナによって受信された断片に基づいてはぎあわされることができる。これは、所与のレンジにおけるデータレートを上げる、および/または所与のデータレートについてシステム・レンジを増す作用をもちうる。
【0025】
本発明のある実施形態に基づくシステムにおいて実装されうるMIMOアルゴリズムについてのさらなる説明および個別的な例は、たとえば、Ernst Bonek,“MIMO and its Radio Channel Modeling”, CCCD Lund, September 27, 2004で与えられており、http://www.nt.tuwien.ac.at/mobile/research/mimo/mimo.pdfを介して入手可能である。この文書に記載されているさまざまなMIMOアルゴリズムは、本願の開示に明示的に含められる。本発明の例示的な実施形態に基づくシステムは、それらのアルゴリズムの一つを使って動作させることができる。
【0026】
MIMOシステムは、送信器および受信器の両方においていくつかのアンテナ要素に加えて適応的な信号処理を有しており、両者の組み合わせが伝送チャネルの空間次元を活用しうるものとして定義されうる。MIMOによって、送信信号のいくつかの複製が使用でき、帯域幅全体が改善されうる。ある例示的な実施形態によれば、複数入力複数出力(MIMO)通信システムが、高い帯域幅の、無線式データ転送およびスリップリングに基づくシステムを達成するために提供される。該システムとはたとえば、計算機断層撮影(CT)、陽電子放出断層撮影(PET)または単一光子放出計算機断層撮影(SPECT)のシステムである。MIMOシステムはN×Mアンテナを有していてもよく、閉鎖型(closed)ガントリーに見出されるマルチパス伝搬環境を利用でき、可能性としては、周囲の実験室環境において、周波数再利用を通じて高い通信帯域幅を提供しうる。MIMOシステムはすでにWLAN(「Wireless Local Area Network〔無線構内ネットワーク〕」)市場にはいりはじめているので、十分な通信帯域幅をもつ安価な統合された解決策が可能にされる。
【0027】
ある例示的な実施形態によれば、複数入力複数出力(MIMO)無線通信システムが、回転ガントリー中の検出器からの/へのデータ転送のために使用される。N×MアンテナをもつMIMOシステムは、非定常マルチパス環境における周波数の再利用を通じて、全通信帯域幅を増加させることができる。MIMOシステムが無線LAN通信のために実装されるとき、通信サブシステムは、データ転送タスクにコスト効率のよい解決策を提供するために、安価なチップセットを利用することができる。
【0028】
MIMOシステム(本発明のある実施形態によれば、動いているシステムと静止システムとの間のデータ伝送のために使われる)によってもたらされるスペクトル効率の向上は、送信器および受信器の両方における空間的(またはアンテナ)ダイバーシチの利用に基づいている。MIMOシステムでは、データ・ストリームはnT個の別個のサブストリームに多重解除されうる。数nTは、送信アンテナの数に等しくてもよい。各サブストリームは次いで、チャネル・シンボルにエンコードされうる。同じデータレートをすべての送信器に課すことも可能だが、サブストリームのそれぞれに適応的な変調レートを利用することもできる。信号はnR個の受信アンテナによって受信される。この伝送方式では、スペクトル効率の著しい向上がありうる。MIMOシステムによって達成される高いスペクトル効率は、散乱に富む環境では、個々の送信器それぞれからの信号は受信器それぞれのところに高度に無相関な状態で現れるという事実によって可能にされる。送信器と受信器との間で無相関なチャネルを通じて信号が伝達されるとき、個々の送信アンテナのそれぞれに対応する信号は、異なる空間的シグネチャを獲得している。無視できる誤り確率で出力におけるすべての入力シーケンスを再構成することが可能である。無視できる誤り確率でどのくらいの情報が送受信できるかの指標は、チャネル容量を表現されうる。
【0029】
MIMOシステムでは、送信媒体の推定が実装されてもよい。信号は、そこにエンコードされているデータを取得するために処理されうる。信号のゆがみは、個々に受信された信号断片を数学的に評価することによって除去されうる。MIMO通信システムのコンテキストでは、データは諸放出器から送信され、諸受信器によって受信されうる。次いで、受信器は放出器にフィードバック信号を送り返しうる。そのフィードバック信号を放出器が受信し、評価しうる。通信経路は伝搬環境によって定義されうる。(受信器によって提供される)推定された伝搬環境は、送信されるデータの事前強調を行うために送信器が使用することができる。データ・ストリーム中の冗長データの量を現在の伝搬環境に適応させるために使用することもできる。
【0030】
そのようなMIMOシステムでは、双方向的に結合された放出器アンテナと受信器アンテナとの間で、データの送信の属性が選択的に調整されうる。たとえば、(空間的な)放出特性が、高品質の送信を得るよう調整されうる。数学的には、伝送マトリクスが調整されうる。該伝送マトリクスは、放出器アンテナと受信器アンテナとの間の伝送属性を記述しうる。放出器アンテナの一つが信号を放出するとき、すべての受信器アンテナがこの信号に同時に「耳をすませて」いてもよい。
【0031】
通信チャネルを推定するために、放出器が、受信器に既知のトレーニング信号を送ることが可能である。すると受信器は、あらかじめ知られている情報と受信された情報の比較に基づいて通信経路についての情報を導出しうる。
【0032】
MIMOシステムのすべての放出器が同じ(搬送波)周波数で送信してもよいし、あるいはMIMOシステムの諸放出器は異なる(搬送波)周波数で送信してもよい。
【0033】
放出器によって放出され、受信器によって受信されるデータ信号によって伝送されるデータは、高いビットレートまたはサービス品質が望まれるときには(部分的に)冗長であってもよいし、あるいは高い帯域幅が望まれるときは全く冗長性がなくてもよい。
【0034】
ある例示的な実施形態によれば、マルチチャネル法に基づく高帯域幅伝送のための無線システムが、特にMIMOシステムに基づいて提供されうる。
【0035】
例示的な適用分野は、動いているデータ源と静止データ処理ハードウェアとの間の、あるいは逆に動いているデータ処理ハードウェアと静止データ源との間の高帯域幅データ・リンクを要求する任意のシステムである。本発明のある実施形態に基づくシステムは、CTスキャナにおいて適用されることができるが、対象空間の一様なサンプリングを達成するために回転またはウォブリング(wobbling)を使うSPCETスキャナおよびPETスキャナにおいても適用されることができる。さらに、本解決策は、スキャナとデータ処理ホストとの間に標準化された安価なデータ通信インターフェースを提供する。
【0036】
本発明のある例示的な実施形態によれば、MIMO技法が、回転ガントリーと静止ワークステーションとの間のデータ伝送に適用される。
【0037】
そのような配位または構成では、周期的に反復される伝送チャネルが帰結しうる。これを使って、MIMOシステムの必要なチャネル推定のオーバーヘッドを著しく減らすことができる。
【0038】
本発明のある例示的な実施形態によれば、記載される方法は、医療用途のための技術的方法として実装されうる。
【0039】
本発明の諸実施形態は、従来式の無線解決策に比較して、適応的な調整機能が、X線、高電圧などに由来しうるゆがみの存在においてシステムの品質を改善しうるという利点を有しうる。チャネル属性への適応的な調整は、CDMA(「Code Division Multiple Access〔符号分割多重アクセス〕」)またはFEC(「Forward Error Correction〔前方誤り訂正〕」)による適応的なパフォーマンスとともに、システムの信頼性をさらに改善しうる。
【0040】
これを超えて、PET/CTのような複合モダリティを用いて、同じベース・ステーションが両方の装置について使用されてもよい(逐次に、あるいは十分な帯域幅が利用できるときは同時でも)。この方策を採ることは、コストをさらに軽減しうる。
【0041】
次に、本発明の例示的な実施形態について述べる。
【0042】
以下では、データ処理装置の例示的な実施形態について述べるが、これらの実施形態は断層撮影装置にも、データ処理方法にも、コンピュータ可読媒体にも、プログラム要素にも適用されうる。
【0043】
可動データ収集装置は、回転可能なデータ収集装置でありうる。たとえば、可動データ収集装置は、断層撮影装置のコンテキストにおいて使用されうるガントリーの回転部分であってもよい。そのようなガントリーは、放射源および放射検出器がマウントされており、調査対象、たとえば検査されるべき荷物または調査対象の患者のまわりを回転する。本発明のある実施形態のデータ処理装置によれば、放出器アンテナも回転ガントリー上に回転可能式に配置されてもよい。一方、受信器アンテナおよび/またはデータ処理ユニットは、必ずしも回転可能ガントリー上にマウントされなくてもよい。
【0044】
放出器アンテナの数は、受信器アンテナの数よりも多いこともあれば、等しいこともあれば、少ないこともありえ、たとえば、2、3、4、5、6またはそれ以上でもよい。放出器アンテナが受信器アンテナの数に等しい必要はない。
【0045】
前記複数の放出器アンテナ、前記複数の受信器アンテナおよび前記データ処理ユニットは、複数入力複数出力(MIMO)通信システムとして適応されうる。この方策を採ることにより、放出器アンテナから受信器アンテナへの、あるいは受信器アンテナから放出器アンテナへのデータ転送の帯域幅を増すことができる。受信器アンテナによって受信されたデータ項目が一緒に処理されてもよく、元のデータセットを再構成されるために使われてもよいからである。好適なMIMOアルゴリズムを使うことにより、システムの帯域幅を著しく高めることができる。
【0046】
放出器アンテナから受信器アンテナに伝送されるべきデータは、搬送波上に信号をエンコードするデータ変調によって伝送されうる。前記複数の受信器アンテナは、前記複数の放出器アンテナとの無線通信のために適用されうる。そのような無線通信は、たとえば電波周波数領域における、マイクロ波領域における、光学領域における、赤外領域における、あるいは紫外領域における電磁放射の交換によって実現されうる。
【0047】
光学領域における通信は、光学受信器は非常に小さいべきであり、信号の位相を同時に検出することが適切かもしれないので非常に困難でありうる。他方、光学リンクは、マルチパス構成要素なしで見通し内通信を使ってMIMOよりさらに高い帯域幅を提供しうる。
【0048】
前記複数の受信器アンテナの少なくとも一部は、空間的に固定して、可動データ収集装置から離れて配置されてもよい。この方策を採ることにより、回転または可動システムから空間的に固定したシステムにデータを転送することが可能である。固定したシステムとはたとえば人間のユーザーとの対話のためにグラフィカルユーザーインターフェースに結合されていてもよい評価コンピュータである。
【0049】
前記複数の受信器アンテナの少なくとも一部は、可動データ収集装置上に配置されてもよい。そのようなシナリオでは、データ処理装置は、前記複数の受信器アンテナに、有線通信チャネルによって結合されうる。そのような有線通信チャネルは、電気信号、たとえば電流または電圧による、あるいは光学的接続、たとえば高速に複数のデータを転送するためのガラスファイバーの使用による、データの伝送を含みうる。
【0050】
さらに、データ処理ユニットは、空間的に固定され、可動データ収集装置から離れて配置されてもよい。こうして、データ処理(およびさらに下流に位置する画像再構成)は、画像データ収集からは空間的に分離されうる。回転システムから、空間的に固定したまたは静的なシステムへのデータ転送は、よって、機械的なスリップリングなしで実現されうる。これはデータ転送を単純化および加速することができ、無線通信は摩耗を通じたパフォーマンス劣化をより受けにくいので、そのようなシステムの寿命を延ばしうる。
【0051】
データ処理装置は、可動データ収集装置を、データ処理ユニットおよび/または環境に対して(電磁的に)遮蔽するための遮蔽要素を有していてもよい。データ収集システム、たとえばCTシステムのコンテキストでは、有害な電磁放射、たとえばX線領域の電磁放射が生じうる。よって、そのような有害な放射を環境に対して遮蔽するために、遮蔽要素が提供されうる。追加的または代替的に、MIMOシステムの周囲の医療機器への電磁干渉(EMI)を減らすために遮蔽が実装されてもよい。EMIに関心があるとき、MIMOはガントリー近くに組み込まれてもよく、構成全体が外部に対して遮蔽されることもできる。X線窓が必要とされるかもしれない。これは典型的には金属でできている。そのような遮蔽要素は、その遮蔽要素によって、電磁放射の漏れが減るのを避けるような仕方で配置されうる。
【0052】
前記複数の受信器アンテナは、前記複数の受信器アンテナと前記複数の放出器アンテナとの間の通信に関するフィードバック情報を含む電磁放射を放出するよう適応されてもよい。ここで、前記複数の放出器アンテナは、前記複数の受信器アンテナによって放出される電磁放射を受信するよう適応されうる。
【0053】
可動装置(たとえばスキャナ)からワークステーションに伝送されるべきデータのための伝送経路は、「下りリンク」方向と表現されうる。用語「上りリンク」は反対の、すなわちワークステーションから可動装置への伝送方向について使用されうる。
【0054】
また、例示的な実施形態に基づくデータ通信が非対称(上りは低ビットレート、下りは高ビットレート)でもよいことも触れておく。
【0055】
こうして、属性「放出器」アンテナはデータ信号の放出を指し、同様に、属性「受信器」アンテナはデータ信号の受信を指す。しかしながら、送出器アンテナと受信器アンテナとの間のデータ・メッセージの交換とは別に、受信器アンテナは放出器アンテナにフィードバック信号をも送ってもよい。そのようなフィードバックは、放出器アンテナと受信器アンテナとの間で通信属性が制御され、所望なら調整されることを許容しうるので、有利でありうる。この目的のため、フィードバック・データを処理することが必要でありうる。そのような双方向的な通信は、MIMO通信システムのコンテキストにおいては、信号推定またはチャネル・マトリクス推定のコンテキストにおいて実行されてもよい。
【0056】
こうして、前記複数の受信器アンテナと前記複数の放出器アンテナとの間の通信が双方向でありうる。換言すれば、放出器アンテナが受信器アンテナの役をすることもでき、受信器アンテナが放出器アンテナの役をすることもできる。
【0057】
前記複数の受信器アンテナと前記複数の放出器アンテナとの間の通信は、データ転送通信のために使用される伝送媒体の属性を推定することを含みうる。MIMOシステムのコンテキストでは、適切な通信経路が確立されるときに高帯域幅機能が得られることがありうる。伝送媒体の属性の推定は、伝送されるデータ量を大きくできるよう通信経路を調整するはたらきをしうる。
【0058】
前記複数の受信器アンテナと前記複数の放出器アンテナとの間の通信は、チャネル・マトリクスの推定、チャネルゆがみの推定およびチャネル等化の推定からなる群のうちの少なくとも一つを含みうる。この実施形態は、前記複数の受信器アンテナと前記複数の放出器アンテナがMIMOシステムの一部を形成するシナリオにおいて実装されうる。この場合、放出器アンテナと受信器アンテナとの間の通信属性を記述するチャネル・マトリクスの適応または最適化は、十分高い帯域幅を得るために好適でありうる。
【0059】
データ処理装置は、荷物検査装置、医療用途装置、材料試験装置および材料科学解析装置からなる群のうちの一つとして構成されうる。また、材料試験装置が提供されてもよい。しかしながら、データ処理装置は、記載される用途に制約されず、他のいかなる応用が使用されてもよい。
【0060】
次に、断層撮影装置の例示的な実施形態について述べるが、これらの実施形態はデータ処理装置についても、データ処理方法についても、コンピュータ可読媒体についても、プログラム要素についてもあてはまる。
【0061】
断層撮影装置は、計算機断層撮影装置(CT)、陽電子放出断層撮影装置(PET)および単一光子放出計算機断層撮影装置(SPECT)からなる群のうちの一つとして適応されうる。
【0062】
計算機断層撮影(CT)は、断層撮影術を用いた医療撮像方法であり、デジタル処理を使って、単一の回転軸のまわりで撮影された多数の一連の二次元X線画像から対象内部の三次元画像が生成される。CTは健康管理において使われるばかりでなく、他の分野、たとえば非破壊材料試験または荷物検査でも使われる。他の例示的な使用分野は、頭蓋CT、胸部CT、心臓CTならびに腹部および骨盤CTである。
【0063】
陽電子放出断層撮影(PET)は、核医学の医療撮像技法であり、体内の機能プロセスの三次元画像またはマップを生成する。PET検査のコンテキストでは、陽電子を放出して崩壊する短寿命の放射性トレーサー同位体を、代謝活性のある分子と化学結合させたものが、被験体内に(たとえば血流中に)注入される。次いで、被験体が撮像スキャナ内に置かれる。短寿命の同位体は陽電子を放出して崩壊する。高々数mm移動したのち、陽電子は電子と対消滅し、反対方向に移動するガンマ線光子の対を生成し、それが、スキャン装置内のシンチレーター物質に到達したときに検出される。生成される光のバーストが光電子増倍管によって検出されうるのである。そのような放射を測定することによって、体内のトレーサー同位体の位置がプロットでき、体のある部分の化学的摂取(chemical uptake)または空洞(cavity)の決定が許容される。
【0064】
単一光子放出計算機断層撮影装置(SPECT)は、ガンマ線を使う核医学の断層撮影撮像技法である。本技法は、放射性医薬品の分布を示す、患者への画像スライスの組を与える。まず、対象がガンマ線を放出する放射性医薬品を注入される。次いで、一連の投影画像がガンマ・カメラを使って収集される。収集は、患者のまわりを回転するガンマ・カメラがさまざまな位置で画像を収集することに関わる。画像の数およびカバーされる回転角は、要求される調査の型に依存して変わる。投影画像はデジタル式に保存され、洗練されたコンピュータ・プログラムを使ってそれを処理し、スライスを生成しうる。このプロセスが再構成と呼ばれる。
【0065】
断層撮影装置の可動データ収集装置は回転可能なガントリーを有していてもよく、該回転可能なガントリーには、電磁放射源(X線管)、前記少なくとも一つの検出装置(単一スライス検出器またはマルチスライス検出器)および前記複数の放出器アンテナがマウントされうる。この幾何学的配位により、洗練された画質をもつ高帯域幅の断層撮影装置が得られる。
【0066】
本発明の上に定義された諸側面およびさらなる諸側面は、以下に述べる実施形態の諸例から明らかであり、これらの実施形態の諸例を参照しつつ説明される。
【0067】
本発明について、以下では、実施形態の諸例を参照しつつより詳細に述べるが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0068】
図面における図は概略図である。異なる図面において、同様または同一の要素は同じ参照符号を与えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
図1は、本発明に基づく計算機断層撮影スキャナ・システムのある例示的な実施形態を示している。
【0070】
この例示的な実施形態を参照して、本発明について、荷物中の爆発物のような危険物質を検出するための荷物検査における応用について述べるが、本発明はこの応用に限定されるものではなく、医療撮像(特に医療CT)または材料試験のような他の産業上の応用分野にも適用されうる。
【0071】
図1に描かれている計算機断層撮影装置100は、円錐ビームCTスキャナである。しかしながら、本発明は、扇形ビーム幾何でも実行されうる。図1に描かれるCTスキャナはガントリー101を有している。ガントリー101は回転軸102のまわりに回転可能である。ガントリー101は、モーター103によって駆動される。参照符号104は、X線源のような放射源を示し、これは本発明のある実施形態によれば、多色または単色の放射を放出する。
【0072】
参照符号105は、放射源から放出された放射ビームを円錐形の放射ビーム106に成形する開口システムを示す。円錐ビーム106は、ガントリー101の中央に、すなわちCTスキャナの検査領域に配置された関心のある対象107を貫き、検出器108に当たるよう指向される。図1から見てとれるように、検出器108は、ガントリー101上で放射源104の反対側に配置され、検出器108の表面が円錐ビーム106によってカバーされるようにされる。図1に描かれている検出器108は、複数の検出器要素123を有する。各検出器要素は、エネルギーを解像する仕方またはエネルギーを解像しない仕方で、関心のある対象107によって散乱されたX線を検出できる。
【0073】
関心のある対象107のスキャンの間、放射源104、開口システム105および検出器108はガントリー101に沿って、矢印116によって示される方向に回転される。放射源104、開口システム105および検出器108をもつガントリー101の回転のため、モーター103はモーター制御ユニット117に接続され、該モーター制御ユニット117はデータ処理または決定ユニット118に接続される。
【0074】
図1では、関心のある対象107はコンベヤー・ベルト119上に配された荷物である。関心のある対象107のスキャンの際、ガントリー101が荷物107のまわりを回る間、コンベヤー・ベルト119は関心のある対象107を、ガントリー101の回転軸102に平行な方向に沿って変位させてもさせなくてもよい。これにより、関心のある対象107は円形のスキャン経路に沿ってスキャンされる(コンベヤー・ベルト119が関心のある対象107を変位させないとき)か、ヘリカル(螺旋状)スキャン経路に沿ってスキャンされる(コンベヤー・ベルト119が関心のある対象107を変位させるとき)。コンベヤー・ベルト119は、静止でもよいし、動いていてもよく、スキャンの間に止められ、それにより信号スライスを測定してもよい。コンベヤー・ベルト119を設ける代わりに、たとえば関心のある対象107が患者である医療用途では、可動テーブルが使われる。しかしながら、記載される場合のすべてにおいて、回転軸102に平行な方向に変位があり、さらに回転軸102のまわりのガントリー101の回転があるヘリカル・スキャンを実行することも可能である。あるいはまた、記載される場合のすべてにおいて、回転軸102に平行な方向に変位がなく、さらに回転軸102のまわりのガントリー101の回転だけがある円形スキャンを実行することも可能である。
【0075】
さらに、図1に示した円錐ビーム配位の代替として、本発明は、扇形ビーム配位によっても実現できることを述べておく。一次扇形ビームを生成するためには、開口システム105はスリット・コリメータとして構成されうる。
【0076】
検出器108は、のちにさらに詳細に述べる仕方で決定ユニット118に結合されている。決定ユニット118は検出結果、すなわち検出器108の検出器要素123からの読み出しを受領し、これらの読み出しに基づいてスキャン結果を決定する。さらに、決定ユニット118は、モーター103および120を用いてガントリー101の動きをコンベヤー・ベルト119と協調させるために、モーター制御ユニット117と通信する。
【0077】
決定ユニット118は、検出器108の読み出しから画像を再構成するよう適応される。計算ユニット118によって生成された再構成された画像は、インターフェース122を介してディスプレイ(図1には示さず)に出力されてもよい。
【0078】
決定ユニット118は、検出器108の検出器要素123からの読み出しを処理するために、データ・プロセッサによって実現されてもよい。
【0079】
さらに、図1から見て取れるように、決定ユニット118はスピーカー121に接続されていてもよい。たとえば、荷物107の中に疑わしい物質が検出された場合にアラームを自動出力するためである。
【0080】
関心のある対象107の検査のための計算機断層撮影装置100は、マトリクス式に配置された複数の検出要素123を有する検出器108を含む。各検出要素は、関心のある要素107を通過するX線を検出するよう適応される。さらに、計算機断層撮影装置100は、検出要素123から受領される検出信号の解析に基づいて関心のある対象107に関する構造情報を決定するよう適応された決定ユニット118を有する。
【0081】
計算機断層撮影装置100は、関心のある対象107にX線を放出するよう適応されたX線源104を有する。電磁放射源104と検出要素123との間に設けられたコリメーター105は、電磁放射源104から放出された電磁放射ビームをコリメートして、円錐ビームを形成するよう適応されている。あるいはまた、図1には示されないが、扇形ビームを生成するために、コリメーター105の代わりにスリット・コリメータを使うこともできる。検出要素123はマルチスライス検出器アレイ108を形成する。計算機断層撮影装置100は、荷物検査装置として構成されている。
【0082】
以下では、計算機断層撮影装置100のデータ処理装置について詳細に述べる。
【0083】
このデータ処理装置は、検出器108上に配置され、検出器108によって収集されたデータをエンコードした電波周波の放射を放出するよう適応された複数の放出器アンテナ140を有する。たとえば、前記データは、搬送波信号上で変調されてもよい。送信器アンテナ140は無線式に、複数の受信器アンテナ150と通信する。受信器アンテナは、放出器アンテナ140によって放出された電波を受信する。特に、受信器アンテナ150のそれぞれは、放出器アンテナ140のそれぞれによって放出された放射を受信する。
【0084】
決定ユニット118は、受信器アンテナ150に結合され、MIMO原理に従って、受信器アンテナ150によって受信された電磁放射から、検出器108によって収集されたデータを抽出するよう適応されている。
【0085】
図1に示されるように、放出器アンテナ140の数は受信器アンテナ140の数に等しく、4である。しかしながら、放出器アンテナ140の数は、受信器アンテナ150の数より多かったり少なかったりすることもできる。放出器アンテナ140および受信器アンテナ150は複数入力複数出力(MIMO)通信システムを形成する。
【0086】
受信器アンテナ150は決定ユニット118上に空間的に固定されており、回転するガントリー101からは離れて位置されている。図1によれば、可動データ収集システムは回転可能なガントリー101を有し、該ガントリー101の上に電磁放射源104、検出器108および放出器アンテナ140がマウントされ、ガントリー101と一緒に回転するようになっている。
【0087】
図1の無線MIMO通信システムによって、回転システムから空間的に固定されたシステムへの、あるいは空間的に固定されたシステムから回転システムへのデータ伝送のための非接触データ伝送システムとともに高帯域幅が可能にされる。
【0088】
受信器アンテナ150が放出器アンテナ140にフィードバック信号を送り返すことも可能である。そうしたフィードバック信号に基づいて、受信器アンテナ150および放出器アンテナ140を調整または最適化することも可能である。この目的のために、放出器アンテナ140に結合された計算資源が設けられ、放出器アンテナ140の放出特性が必要なら調整されうるようにされてもよい。
【0089】
以下では、図2を参照して、本発明の例示的な実施形態に基づく計算機断層撮影装置200について述べる。
【0090】
計算機断層撮影装置200は、送信器アンテナ140と受信器アンテナ150との間での無線通信201のために適応されている。
【0091】
図2を参照すると、計算機断層撮影装置200上に実装された十分な帯域幅をもつ市販のMIMOシステムが特に、検出器108上および再構成ワークステーション118においてインストールされる。
【0092】
ガントリー101は、外側の自由伝搬を許容するよう、金属カバーが部分的になくなっている。よって、放出器アンテナ140と受信器アンテナ150との間に伝搬経路があるが、MIMOはハウジング上の反射に対処できる。
【0093】
以下では、図3を参照して、本発明の例示的な実施形態に基づく計算機断層撮影装置300について述べる。
【0094】
図3のシナリオでは、ガントリーは回転部分101および静的部分301を有する。受信器アンテナ150はガントリーの静的部分301に設けられる。放出器アンテナ140はガントリーの回転部分101に設けられる。無線通信201が放出器アンテナ140と受信器アンテナ150との間で可能にされている。受信器アンテナ150は、有線通信チャネル302を介して、ワークステーション118と通信する。こうして、図3は、遮蔽されたMIMO通信システムを示す。
【0095】
図3の場合、リンクされるデータを遮蔽されたガントリー101、301に制約する実装が示されている。この実装は、スキャナ・ガントリーの外部での電磁干渉(EMI)を抑制しうる。ガントリー101、301内で通信するためには、短いレンジのため、低い送信パワーが必要とされる。また、好適な周波数帯域(たとえば酸素の共鳴が高い減衰につながる60GHz)の使用は、電磁干渉を低く保つ助けとなることがありうる。受信器アンテナ150はガントリー101、301の内部に、特にガントリー301の静的部分に結合されて置かれる。そして、信号を外部のワークステーション118に結合するために、高帯域幅接続302(たとえば、ケーブル、光通信経路など)が使用されてもよい。
【0096】
以下では、図4を参照して、本発明の例示的な実施形態に基づく計算機断層撮影システム400について述べる。
【0097】
図4に示されるように、この実装は、波の伝搬を遮蔽導波管401に制限する。閉じた導波管401は、スキャナ・ガントリー101、301内の一切の可能なEMI問題を回避しうるからである。図4の実施形態は、MIMOシステムの最大効率のために最適化されうる導波管401の設計を示す。導波管は、アンテナ対の間に見通し接続がない場合に通信が生起するために必要とされるマルチパス環境を提供する。
【0098】
図5は、本発明に基づく方法の例示的な実施形態を実行するための、本発明に基づくデータ処理装置500の例示的な実施形態を描いている。
【0099】
図5に描かれたデータ処理装置500は、患者のような関心のある対象を描く画像を保存するメモリ502に接続された中央処理装置(CPU)または画像プロセッサ501を有する。データ・プロセッサ501は、複数の入出力ネットワークまたはMR装置またはCT装置のような診断装置に接続されていてもよい。データ・プロセッサ501はさらに、たとえばコンピュータ・モニタのような、データ・プロセッサ501において計算または適応された情報または画像を表示するための表示装置503に接続されていてもよい。オペレーターまたはユーザーが、キーボード504および/または図5には描かれていないその他の出力装置を介してデータ・プロセッサ501と対話しうる。さらに、バス・システム505を介して、画像処理および制御プロセッサ501をたとえば動きモニタに接続することも可能である。動きモニタは、関心のある対象の動きをモニタリングする。たとえば患者の肺が撮像される場合、動きセンサーは呼気センサーでありうる。心臓が撮像される場合、動きセンサーは心電図(ECG)であってもよい。
【0100】
以下では、図6を参照して、本発明の例示的な実施形態に基づく計算機断層撮影システム600について述べる。
【0101】
図6の実施形態では、三つの放出器アンテナ140と二つの受信器アンテナ150が設けられている。放出器アンテナ140のそれぞれは電磁放射を放出し、それが検出器108によって検出されたデータをエンコードする。
【0102】
図6から見て取れるように、受信器アンテナ150の一つ一つが、すべての放出器アンテナ140からくるすべての信号を検出する。MIMOシステムによれば、データは再構成ユニット601によって評価され、検出器108の完全なデータセットが高帯域幅で提供される。該データセットは次いで、調査対象107の三次元画像を再構成するために画像再構成ユニット602に提供されうる。
【0103】
本発明が有利に適用されうる例示的な技術分野は、荷物検査、医療用途、材料試験および材料科学を含む。低努力と組み合わさった改良された画質およびより少ないアーチファクトが達成されうる。また、本発明は、心臓病を検出するための心臓スキャンの分野においても適用できる。
【0104】
「有する」の語は他の要素またはステップを排除しないこと、単数形の表現が複数を排除しないことを注意しておくべきである。また、異なる実施形態との関連で記述された諸要素が組み合わされてもよい。
【0105】
請求項に参照符号があったとしても、請求項の範囲を限定するものと解釈してはならないことも注意しておくべきである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づく計算機断層撮影装置を示す図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に基づく計算機断層撮影装置を示す図である。
【図3】本発明の第三の実施形態に基づく計算機断層撮影装置を示す図である。
【図4】本発明の第四の実施形態に基づく計算機断層撮影装置を示す図である。
【図5】計算機断層撮影装置において実装されるべきデータ・プロセッサのある例示的な実施形態を示す図である。
【図6】本発明の第五の実施形態に基づく計算機断層撮影装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置であって、
可動データ収集装置上に配置され、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる電磁放射を放出するよう適応された複数の放出器アンテナと、
前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信するようそれぞれ適応された複数の受信器アンテナと、
前記複数の受信器アンテナに結合され、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出するよう適応されたデータ処理ユニットとを有する、
データ処理装置。
【請求項2】
前記可動データ収集装置が回転可能なデータ収集装置である、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
放出器アンテナの数が、受信器アンテナの数よりも多い、等しいか、少ない、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記複数の放出器アンテナ、前記複数の受信器アンテナおよび前記データ処理装置が、複数入力複数出力通信システムとして設計されている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記複数の受信器アンテナが、前記複数の送信器アンテナとの無線通信のために適応されている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記複数の受信器アンテナの少なくとも一部が、空間的に固定して、前記可動データ収集装置からは別個に配置されている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記複数の受信器アンテナの少なくとも一部が、前記可動データ収集装置上に可動的に配置されている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記データ処理ユニットが、有線通信チャネルによって前記複数の受信器アンテナに結合されている、
請求項7記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記データ処理ユニットが、空間的に固定して、前記可動データ収集装置からは別個に配置されている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記可動データ収集装置を、前記データ処理ユニットおよび/または環境に対して遮蔽する遮蔽要素を有する、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記複数の受信器アンテナは、前記複数の受信器アンテナと前記複数の放出器アンテナとの間の通信に関するフィードバック情報を含む電磁放射を放出するよう適応されており、前記複数の放出器アンテナは、前記複数の受信器アンテナによって放出される前記電磁放射を受信するよう適応されている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記複数の受信器アンテナと前記複数の送信器アンテナとの間の通信が双方向的である、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項13】
前記複数の受信器アンテナと前記複数の送信器アンテナとの間の通信が、伝送媒体の属性を推定することを含む、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項14】
前記複数の受信器アンテナと前記複数の送信器アンテナとの間の通信が周期的チャネルに基づいている、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項15】
前記複数の受信器アンテナと前記複数の送信器アンテナとの間の通信が、チャネル・マトリクスの推定、チャネルゆがみの推定およびチャネル等化の推定からなる群のうちの少なくとも一つを含む、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項16】
荷物検査装置、医療用途装置、材料試験装置および材料科学解析装置からなる群のうちの一つとして構成される、
請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項17】
関心のある対象の検査のための断層撮影装置であって、
関心のある対象にビームを放出するよう適応された電磁放射源と、
関心のある対象を透過したビームを検出するよう適応された検出装置と、
請求項1記載のデータ処理装置であって、該データ処理装置の前記複数の放出器アンテナに結合された前記少なくとも一つの検出装置から受信された検出信号の解析に基づいて関心のある対象に関する構造情報を決定するよう適応されたデータ処理装置とを有する、
断層撮影装置。
【請求項18】
計算機断層撮影装置、陽電子放出断層撮影装置および単一光子放出計算機断層撮影装置からなる群のうちの一つとして適応されている、
請求項17記載の断層撮影装置。
【請求項19】
前記可動データ収集装置が回転可能なガントリーを含んでおり、該ガントリーに前記電磁放射源、前記検出装置および前記複数の放出器アンテナがマウントされている、
請求項17記載の断層撮影装置。
【請求項20】
データ処理方法であって、
可動データ収集装置上に配置された複数の放出器アンテナによって、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる電磁放射を放出し、
複数の受信器アンテナによって、前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信し、
前記複数の受信器アンテナに結合されたデータ処理ユニットによって、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出することを含む、
方法。
【請求項21】
データを処理するコンピュータ・プログラムが記憶されているコンピュータ可読媒体であって、該コンピュータ・プログラムは、プロセッサによって実行されると、
可動データ収集装置上に配置された複数の放出器アンテナによって、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる電磁放射を放出し、
複数の受信器アンテナによって、前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信し、
前記複数の受信器アンテナに結合されたデータ処理ユニットによって、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出することを、
制御するか実行するよう適応されている、コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
データを処理するコンピュータ・プログラムであって、プロセッサによって実行されると、
可動データ収集装置上に配置された複数の放出器アンテナによって、該可動データ収集装置によって収集されたデータを含んでいる電磁放射を放出し、
複数の受信器アンテナによって、前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信し、
前記複数の受信器アンテナに結合されたデータ処理ユニットによって、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記可動データ収集装置によって収集されたデータを抽出することを、
制御するか実行するよう適応されている、コンピュータ・プログラム。
【請求項23】
データ処理装置であって、
データがエンコードされている電磁放射を放出するよう適応された複数の放出器アンテナと、
前記複数の放出器アンテナのそれぞれによって放出された電磁放射を受信するようそれぞれ適応された、可動装置上に配置された複数の受信器アンテナと、
前記複数の受信器アンテナに結合され、前記複数の受信器アンテナによって受信された電磁放射から前記データを抽出するよう適応されたデータ処理ユニットとを有する、
データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−510557(P2009−510557A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531826(P2008−531826)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053225
【国際公開番号】WO2007/034357
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】