説明

データ収集装置、データ収集方法および計測装置

【課題】センサからの計測信号を高速かつ正確にA/D変換を行うことができるデータ収集装置およびデータ収集方法、およびデータ収集装置を組み込んだ計測装置を提供する。
【解決手段】データ収集装置は、計測センサにおいて第1クロック信号に基づいて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する計測信号が連なった一連の計測信号の入力を受け、第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するA/D変換ユニットと、前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まる格納位置に記憶するメモリと、を有する。計測装置は、例えば、計測センサとして用いるレーダと、上記データ収集装置とを含むレーダ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測信号をA/D変換して得られる計測信号を収集するデータ収集装置およびデータ収集方法、およびデータ収集装置を組み込んだ計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダなどのセンサを用いて高度なセンシングを行う場合、センサから出力された計測信号をA/D変換してコンピュータで信号処理を行うことが一般的に行われる。A/D変換回路では、並列型(フラッシュ型)A/D変換回路、サブレンジング型変換回路、逐次比較型(SAR型)変換回路等が知られている。
【0003】
例えば、並列型(フラッシュ型)A/D変換回路は、高速サンプリングが可能である。しかし、A/D変換回路の変換ビット数に応じて、A/D変換回路に用いるコンパレータの数が増え、A/D変換回路に用いる抵抗の精度およびコンパレータの精度によりA/D変換回路の直線性(入力信号に対する出力信号の線形性)の特性が劣る場合がある。このため、並列型A/D変換回路では10ビットのA/D変換が限界である。
【0004】
一方、サブレンジング型変換回路は、高い分解能と高い変換精度を持ってA/D変換を行う他、並列型(フラッシュ型)A/D変換回路のように多くのコンパレータを用いることがなく、入力された信号の処理をすぐ開始することができる。しかし、サブレンジング型変換回路では直列に接続されたブロック毎にクロック信号に従って順次信号の処理が行われるので、入力された信号がA/D変換されデジタル信号として生成されるまでに、複数回のクロック信号に従って処理が行われる。このため、このA/D変換方式ではパイプラインディレイが発生する。また、サブレンジング型変換回路では、上記ブロック間の信号の伝達に、高速で処理を行うための低容量キャパシタを備えるサンプルホールドアンプが用いられるが、上記低容量キャパシタを用いるために、長時間信号をホールドしておくことはできない。このため、サブレンジング型変換回路は、計測信号の入力がないときでも動作を停止しておくことはできない。このように各A/D変換回路は種々の特徴を有する。
【0005】
このようなA/D変換回路は、レーダ装置のみならず、センサとデータ処理装置を用いた計測装置においても用いられる。例えば、高速なグラフ表示を行い操作性の高いデータ蓄積システムが知られている。当該システムは、センサからの電圧値を測定値としてデジタル変換して収集するデジタルデータ収集装置と、前記デジタルデータ収集装置により収集されたデジタルデータを時間情報とともに記録する記憶手段と、前記記憶手段の指定されたデータ数ごとの最大・最小値を算出し、前記記憶手段の異なる記憶領域に間引きデータとして記憶する最大・最小値算出手段と、前記記憶手段に記憶されたデータをグラフ表示する表示装置と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−272421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今日、レーダ装置等の計測センサから出力される計測信号は、A/D変換回路を用いて高速かつ正確にA/D変換され得るが、より高速かつ正確にA/D変換して12ビット以上の信号にするA/D変換回路が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、センサからの計測信号をより高速かつ正確にA/D変換を行うことができるデータ収集装置およびデータ収集方法、およびデータ収集装置を組み込んだ計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、A/D変換して得られる計測信号を収集するデータ収集装置である。当該装置は、
計測センサにおいて第1クロック信号に基づいて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する信号が連なった一連の計測信号の入力を受け、第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するA/D変換ユニットと、
前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まる格納位置に記憶するメモリと、を有する。
【0010】
前記第2クロック信号のクロック周期は、前記計測条件の切り替わる周期に比べて短い、ことが好ましい。
【0011】
さらに、前記メモリの前記格納位置に記憶された計測信号を取り出してデータ処理を行うとき、前記格納位置に基づいて前記計測条件を識別して前記データ処理を行うデータ処理部、を有することが好ましい。
【0012】
前記計測信号は、不定期で間歇的に前記A/D変換ユニットに入力される、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の一形態は、A/D変換して得られる計測信号を収集し、データ処理をする計測装置である。当該計測装置は、
計測信号を出力する計測センサと、
前記計測センサにおいて第1クロック信号に基いて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する計測信号が連なった一連の計測信号の入力を受け、第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するA/D変換ユニットと、
前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まる格納領位置に記憶するメモリと、
前記メモリの前記格納位置に記憶された計測信号を取り出してデータ処理を行うとき、前記格納位置に基づいて前記計測条件を識別して前記データ処理を行うデータ処理装置と、を有する。
【0014】
前記計測センサは、計測対象物に対して相対的に一方向に移動することにより、前記計測対象物の計測位置を走査し、前記A/D変換ユニットは、前記設定された移動距離毎に、前記一連の計測信号の入力を受ける、ことが好ましい。
【0015】
また、前記計測センサは、前記計測条件として変調周波数を変更しながら電波を放射するレーダであり、前記A/D変換ユニットは、前記設定された移動距離毎に発生するパルスをトリガーパルスとして、前記サンプリングパルスが発生し、前記データ処理部は、前記計測条件に基づいて計測対象物の距離情報を求める、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の一形態は、A/D変換して得られる計測信号を収集するデータ収集方法である。当該方法は、
計測センサにおいて第1クロック信号に基づいて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する計測信号が連なった一連の計測信号の入力を受けるステップと、
第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するステップと、
前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まるメモリの格納位置に記憶するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0017】
上述のデータ収集装置、データ収集方法および計測装置によれば、センサからの計測信号をより高速かつ正確にA/D変換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のデータ収集装置を用いた計測装置のブロック構成図である。
【図2】本実施形態のエンコーダパルス、マイクロ波スイッチの切り替え、VCO信号、およびサンプリングパルスの発生のタイミングチャートである。
【図3】本実施形態で用いる計測のフローを示す図である。
【図4】(a),(b)は、本実施形態のVCO周波数の変更のタイミングと、第2クロック信号のタイミングと、サンプリングパルスのタイミングと、メモリへの記憶のタイミング、の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】(a),(b)は、本実施形態のVCO周波数の変更のタイミングと、第2クロック信号のタイミングと、サンプリングパルスのタイミングとメモリへの記憶のタイミング、の他の例を示すタイミングチャートである。
【図6】(a),(b)は、従来のデータ収集装置の構成の一部とメモリへの格納のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0019】
以下、本発明のデータ収集装置、データ収集方法および計測装置について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の計測装置10のブロック構成図である。計測装置10は、計測センサ12と、データ収集装置14と、データ処理装置16と、を有する。
計測装置10は、計測対象物Oに対してマイクロ波あるいはミリ波の電波を送信アンテナから放射し計測対象物Oで反射した電波を受信アンテナで受信して、計測装置10から測定対象物Oまでの距離を計測するレーダ装置である。
【0021】
具体的には、計測センサ12は、計測対象物Oに対して相対的に一方向、例えば図1中の左右方向に相対移動することにより、計測装置10は計測対象物Oの計測位置を走査し、このときの距離をデータ処理装置16において算出する。計測センサ12が、測定対象物Oを走査するとき、設定された移動距離毎に、計測を行い計測信号の入力を得、データ収集装置10に送る。データ収集装置10は、入力された計測信号をA/D変換して後述するメモリに記憶する。データ処理装置16は、メモリに記憶された計測信号を呼び出して計測センサ12から計測対象物Oまでの距離を算出する。
このとき、計測センサ12が計測位置の走査のために計測対象物Oに対して相対移動する速度は一定ではなく変動する。したがって、設定された移動距離毎に計測されて得られた計測信号は、データ収集装置14に不定期かつ間歇的に入力される。データ収集装置14は、後述するように、A/D変換回路のA/D変換の動作とレジスタの動作を、計測センサ12のクロック信号とは異なるクロック信号に基づいて行わせ、レジスタから読み出してメモリに記憶する動作を、計測センサ12で用いられるクロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスに従って行わせる。これにより、データ収集装置14は、不定期かつ間歇的に入力される計測信号を正確かつ高速にA/D変換することができる。
以下、計測装置10について詳細に説明する。
【0022】
(計測センサ)
計測センサ12は、電圧制御発振器(以降、VCO(Voltage Controlled Oscillator)という)18と、パワースプリッタ20と、マイクロ波スイッチ22と、送信用のアレイアンテナ24と、受信用のアレイアンテナ26と、マイクロ波スイッチ28と、ミキサ30と、IF回路32と、コントロール回路34と、ロータリエンコーダ36と、クロック信号発生器38と、を有する。
【0023】
VCO18は、コントロール回路34の指示に応じて設定された周波数の信号を発生する。信号はパワースプリッタ20に送られる。VCO18が生成する信号は、一定時間間隔毎に周波数が変化し、VCO18は、例えば8つの周波数の信号を順次生成する。
パワースプリッタ20は、設定された周波数の信号をマイクロ波スイッチ22およびミキサ30に送る。VCO18で生成された信号は、送信用のアレイアンテナ24においてVCO18で生成された信号の周波数で強度変調するために用いられる。また、VCO18で生成された信号は、ミキサ30において、受信用のアレイアンテナ28で受信した計測信号を検波するための参照信号として用いられる。
【0024】
マイクロ波スイッチ22は、コントロール回路34の指示に従ってアレイアンテナ24の中から選択された1つあるいは複数のアンテナから電波を放射するために、信号の送信先のアンテナを切り替える。アレイアンテナ24は、複数のアンテナ(アンテナT1〜T4)が所定の配置で並んだ送信用アンテナ群であり、選択されたアンテナは、計測対象物OにVCO18で生成された信号にしたがって強度変調された電波を放射する。アレイアンテナ26は、複数のアンテナ(アンテナR1〜R4)が所定の配置で並んだ受信用アンテナ群であり、計測対象物Oで反射した電波を受信する。
マイクロ波スイッチ28は、コントロール回路34の指示に従ってアレイアンテナ26の中から選択された1つあるいは複数のアンテナが受信した電波の計測信号を得るために、計測信号として出力する送信元のアンテナを切り替える。
ミキサ30は、パワースプリッタ20から送られたVCO18が生成した信号を参照信号として用いて、選択されたアンテナから出力される計測信号とミキシングする。ミキシング後の計測信号は、IF回路32に送られる。
【0025】
IF回路32は、図示されないローパスフィルタとアンプを有し、ミキシング後の計測信号をローパスフィルタに通して高周波信号を取り除き、計測センサ12から計測対象物までの距離情報が含まれている低周波の計測信号を取り出す。さらに、図示されないアンプが、ローパスフィルタ通過後の低周波の計測信号を増幅する。増幅された計測信号は、データ収集装置14に送られる。
【0026】
コントロール回路34は、後述するロータリエンコーダ36から送られるエンコーダパルスをトリガーパルスとして、計測センサ12の各回路の動作を開始させ、さらに、計測センサ12の各回路の動作を制御、管理する。例えば、コントロール回路34は、VCO18の生成する信号の周波数を制御する。さらに、コントロール回路34は、マイクロ波スイッチ22,28を制御して、電波を放射するアンテナを定め、受信するアンテナを定める。さらに、コントロール回路34は、ロータリエンコーダ36から送られるエンコーダパルスをトリガーパルスとして所定のパルス数を有するサンプリングパルスを生成して、データ収集装置14に送る。コントロール回路34は、VCO18が生成する信号の周波数を一定時間間隔毎に変化させ、さらに、アレイアンテナ24,26のアンテナの送受信の組を一定時間毎に変えた一連の計測信号が計測センサ14から出力されるようにする。したがって、VCO18が生成する信号の周波数と電波の送受信に用いるアンテナの組とを計測条件として、コントロール回路34は、この計測条件をクロック信号発生器38の第1クロック信号のタイミングで切り替える。例えば、コントロール回路34は、電波の送受信に用いるアンテナの組を定めて固定し、VCO18が生成する信号の周波数を第1クロック信号のタイミングで複数回切り替える。この後、コントロール回路34は、電波の送受信に用いるアンテナの組を第1クロック信号のタイミングで変更して周波数を複数回切り替えることを繰り返し行う。これにより、計測センサ12は、複数の計測条件における一連の計測信号を得る。
【0027】
ロータリエンコーダ36は、計測対象物Oに対して計測センサ12が相対移動するとき、移動距離を計測し、一定の移動距離毎にエンコーダパルスを生成する。生成したエンコーダパルスは、コントロール回路34に送られて、計測センサ12の各回路の動作およびサンプリングパルスの生成のためのトリガーパルスとして用いられる。なお、計測センサ12が計測対象物Oに対して相対移動する速度は一定でないため、コントロール回路34は、ロータリエンコーダ36から送られるエンコーダパルスを不定期かつ間歇的に受信する。したがって、計測センサ12の動作タイミングおよびサンプリングパルスの発生も不定期かつ間歇的である。
このような計測センサ12は、計測対象物Oに対して相対移動するとき、設定された移動距離毎に、計測条件を順次切り替えることで得られる信号が連なった一連の計測信号をデータ収集装置14に送る。
【0028】
(データ収集装置)
データ収集装置14は、A/D変換回路40、レジスタ42、メモリ44、クロック信号発生器46、およびコントローラ48を有する。
A/D変換回路40は、例えば公知の12ビット以上のサブレンジング型変換回路である。A/D変換回路40は、計測センサ12から送られる一連の計測信号を順次A/D変換する。A/D変換された計測信号は、レジスタ42に送られる。
レジスタ42は、A/D変換回路40から送られたA/D変換された計測信号を順次重ね書きして一時記憶する。
【0029】
メモリ44は、第1のクロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、コントローラ48の指示に従ってレジスタ42から読み出された計測信号を記憶する。計測信号のメモリ44における格納位置は、サンプリングパルスのパルスの発生回数に応じて定まる。
クロック信号発生器46は、クロック信号発生器38と独立して駆動し、第2クロック信号を生成する。したがって、第2クロック信号は、第1クロック信号と非同期である。クロック信号発生器46は常に第2クロック信号を生成しているので、A/D変換回路40を常に駆動する。
【0030】
(データ処理装置)
データ処理装置16は、メモリ44に記憶されたA/D変換された計測信号を所定の格納位置から読み出して、計測条件毎にデータ処理を行って計測センサ12から計測対象物Oまでの距離を算出する。計測センサ12は、計測条件を順次切り替えながら計測信号をデータ収集装置14に送るので、計測信号自体からどの計測条件における信号であるかを判断することはできない。このため、メモリ44には、サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定められたメモリ44の格納位置に計測信号が順次記憶される。このため、データ処理装置16は、メモリ44の計測信号の格納位置に応じて、どの計測条件の計測信号かを識別することができる。したがって、メモリ44には、計測条件に対応したサンプリングパルスの発生パルスの回数に応じて計測信号が順番に格納される。
データ収集装置14は、上記構成を用いることにより、メモリ44に、種々の計測条件に対応した計測信号を順番に格納することができる。以下、この点を説明する。
【0031】
図2は、エンコーダパルスの発生のタイミング、マイクロ波スイッチ22,28の切り替えのタイミング、VCO18の発生する信号の周波数の切り替えのタイミング、およびサンプリングパルスの発生のタイミングを含むタイミングチャートである。
ロータリエンコーダ36においてエンコーダパルスが発生し、コントロール回路34がエンコーダパルスを受信すると、コントロール回路34は、マイクロ波スイッチ22,28を切り替え、送信用のアンテナT1と受信用のアンテナR1を組として選択し、VCO18が発生する信号の周波数をF1と定める。それと同時に、メモリ44に計測データを記憶するタイミングを定めるサンプリングパルスを生成する。
図2に示すように、送信用のアンテナT1と受信用のアンテナR1を組として固定し、VCO18が発生する信号の周波数(以降、VCO周波数という)をF1から順にF8まで変化させる。この後、送信用のアンテナT1と受信用のアンテナR1の組を変更して、送信用のアンテナT2と受信用のアンテナR2を新たな組として選択し、VCO周波数をF1から順にF8まで変化させる。このようにして送信用のアンテナT4と受信用のアンテナR4の組が設定されるまで、順次VCO周波数と送受信用のアンテナの組の変更を繰り返して、一連の計測信号を得る。これにより、エンコーダパルスが1つ発生するときの計測が終了する。この後、さらに次のエンコーダパルスが1つ発生するまで計測を待機する。
【0032】
図3は、上記計測のフローを示す図である。図3に示すように、まず、コントロール回路34は、エンコーダパルスの入力の有無を判断し(ステップS10)、エンコーダパルスの入力があるまで待機する。コントロール回路34が、ロータリエンコーダ36が発生するエンコーダパルスの入力を受けると(ステップS10においてYesの場合)、マイクロ波スイッチ22,28の切り替えの指示をマイクロ波スイッチ22,28に出し、マイクロ波スイッチ22,28は切り替えを行う(ステップS20)。これにより、送信用および受信用のアンテナとして、アンテナT1およびアンテナR1が選択される。
【0033】
また、コントロール回路34は、VCO18に指示を出して、VCO周波数を切り替える(ステップS30)。これにより、設定された周波数の信号が生成される。さらに、コントロール回路34は、サンプリングパルスを生成する(ステップS40)。これにより、アンテナT1から放射され、計測対象物Oで反射した電波はアンテナR1で受信される。次に、コントロール回路34は、現在設定されているVCO周波数がF8か否かを判定する(ステップS50)。現在設定しているVCO周波数がF8でない場合(ステップS50においてNoの場合)、ステップS30に戻り、コントロール回路34はVCO周波数を変化させるように指示する。こうして、設定されるVCO周波数がF1からF2,F3等を経てF8になるまで計測信号が得られる。
【0034】
次に、コントロール回路34は、設定されるVCO周波数がF8になったと判定した場合(ステップS50においてYesの場合)、送信用および受信用のアンテナの組がアンテナF4およびアンテナR4に設定されているか否かを判定する(ステップS60)。送信用および受信用のアンテナがアンテナT4およびアンテナR4に設定されていない場合(ステップS60においてNoの場合)、ステップS20に戻り、マイクロ波スイッチ22,28に指示を出して送信用および受信用に用いるアンテナの組を、アンテナT2,R2の組、アンテナT3,R3の組、アンテナT4,R4の組に順次切り替えさせる。これにより、コントロール回路34はステップS20〜S60を繰り返す。
【0035】
コントロール回路34は、ステップS60の判定が肯定である場合、計測対象物Oの計測を終了するか否かを判定する(ステップS70)。計測の終了とは、例えば、エンコーダパルスの発生数が所定数に達したか否かにより判定される。判定の結果、計測が終了していない場合、コントロール回路34は、ステップS10に戻り、エンコーダパルスの入力を待つ。このように計測センサ12では、計測が終了するまでエンコーダパルスの発生毎に計測を行う。計測センサ12では、VCO周波数の変更およびマイクロスイッチ22,28におけるアンテナの切り替えは、第1クロック信号のタイミングで行われる。ここで、「第1クロック信号のタイミング」とは、第1クロック信号のクロックの周期のタイミング、あるいは第1クロック信号のクロックの周期の整数倍の周期のタイミングのことをいう。このとき、データ収集装置14では、計測センサ12において第1クロック信号に基づいて計測条件が順次切り替わることで得られる、計測条件に対応する信号が連なった一連の計測信号の入力を受ける。
【0036】
データ収集装置14において、クロック信号発生器46が発生する第2クロック信号のタイミングでA/D変換回路40はA/D変換を行い順次レジスタ42に重ね書きして一時記憶する。さらにこの後、データ収集装置14は、クロック信号発生器38が発生する第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタ42に一時記憶した計測信号を読み出し、サンプリングパルスのタイミングに応じて定まるメモリ44の格納位置に記憶する。
ここで、「第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミング」とは、第1クロック信号の各クロックパルスのタイミング、あるいは第1クロック信号のクロック周期の整数倍の周期のタイミングであることをいう。
【0037】
図4(a),(b)及び図5(a),(b)は、VCO周波数の変更のタイミングと、第2クロック信号のタイミングと、サンプリングパルスのタイミングとメモリ44への記憶のタイミング等を示すタイミングチャートである。図中では、パイプラインディレイやアナログ時の計測信号の処理遅延時間は省略している。
【0038】
上述したように、エンコーダパルスは不定期かつ間歇的にコントロール回路34に入力され、さらに、エンコーダパルスをトリガーパルスとして動作するVCO周波数の変更およびマイクロ波スイッチ22,28の切り替えのタイミングは、第1クロック信号のタイミングで行われる。このため、VCO周波数の変更およびマイクロ波スイッチ22,28の切り替えのタイミングと、第2クロック信号で動作するレジスタ42の一時記憶のタイミングとの間で位相ずれが種々生じる。図4(a),(b)および図5(a),(b)は、上記位相ずれが0度、90度、180度、および270度のときのそれぞれのタイミングチャートである。なお、これらのタイミングチャートでは、第1クロック信号に基づいて行われるVCO周波数の変更およびマイクロ波スイッチ22,28の切り替えの周期と、第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスの周期を同一にしている。
【0039】
図4(a)に示す例では、VCO周波数がF1に切り替わった瞬間、周期t2の第2クロック信号は立下がる(位相ずれ0度)。このとき、レジスタ42に不定の値xxが記憶されている。IF回路32から計測信号が入力されていない場合であっても、第2クロック信号に従って常時動作するA/D変換回路40でA/D変換された信号、すなわちノイズ成分がレジスタ42に記憶される。このノイズ成分が不定の値xxとなっている。しかし、この時点でサンプリングパルスは立ち上がっていない。この後、再度第2クロック信号が立ち下がるとき、依然としてVCO周波数はF1を維持している。したがって、レジスタ42に一時記憶される計測信号は、周波数F1に対応する信号である。その後、サンプリングパルスが立ち上がり、サンプリングパルスの立ち上がりのタイミング、すなわち、1番目のサンプリングパルスの立ち上がりにしたがってレジスタ42に一時記憶された計測信号が読み出されてメモリ44に格納される。メモリ44に格納される位置は、1回目のサンプリングパルスに応じて定まった位置である。
【0040】
次に、時間ts経過後、VCO周波数がF2に切り替わる。この後、第2クロック信号のパルスが立ち下がるとき、A/D変換されたVCO周波数F2の計測信号がレジスタ42に記憶される。この後、2番目のサンプリングパルスが立ち上がり、レジスタ42に一時記憶されているVCO周波数F2の計測信号が呼び出されて、メモリ44に格納される。メモリ44における計測信号の格納位置は、2回目のサンプリングパルスに応じて定まった位置である。この場合、第2クロック信号の周期がVCO周波数の周期に比べて短い。
このようにして、メモリ44には、VCO周波数F1,F2,F3・・・の順に、VCO周波数F1,F2,F3・・・に対応する計測信号が、サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定められたメモリ44の格納位置に格納される。
なお、メモリ44に記憶するためにレジスタ42から計測信号を呼び出すタイミングは、VCO周波数が切り替わる以前であって、そのVCO周波数における計測信号がレジスタ42に一時記憶されるタイミング以降となるように、伝送時間や処理時間を考慮してサンプリングパルスの生成のタイミングは調整される。
【0041】
図4(b)は、VCO周波数の変更およびマイクロ波スイッチ22,28の切り替えのタイミングと第2クロック信号のタイミングとの間で位相ずれが90度である例を示している。この場合においても、メモリ44には、VCO周波数F1,F2,F3・・・の順に、VCO周波数F1,F2,F3・・・に対応する計測信号が、サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定められたメモリ44の格納位置に格納される。
【0042】
図5(a),(b)は、VCO周波数の変更およびマイクロ波スイッチ22,28の切り替えのタイミングと第2クロック信号のタイミングとの間で位相ずれが180度、270度である例を示している。これらの場合においても、メモリ44には、VCO周波数F1,F2,F3・・・の順に、VCO周波数F1,F2,F3・・・に対応する計測信号が、サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定められたメモリ44の格納位置に格納される。
なお、VCO周波数F1,F2,F3・・・,F8が変更された後、送信用及び受信用のアンテナの組が順次変更される。
データ処理装置16は、メモリ44に所定量の計測信号が格納されると、計測信号を呼び出し、計測条件毎にデータ処理を行って計測センサ12から計測対象物Oまでの距離を算出する。このとき、計測信号の格納位置は、計測条件の変更を行う第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのパルス発生回数よって定まっているので、データ処理装置16は、計測信号がどの計測条件に対応する信号であるかを、メモリ44の格納位置から判断することができる。したがって、データ処理装置16は、計測条件毎に纏められた計測信号を用いて所定の処理を行うことができる。
【0043】
図6(a)は、本実施形態と異なりレジスタ42を用いない例のデータ収集装置の構成を示している。この場合データ収集装置では、図6(b)に示すような信号がメモリ44に記憶される。A/D変換回路40は、本実施形態と同様に上述のサブレンジング型変換回路が用いられる。この場合、A/D変換は、サンプリングパルスに従って動作するので、サンプリングパルスが生成されない状態ではA/D変換は行われない。この場合、上述のサブレンジング型変換回路では、以前にA/D変換した残りの信号が残っているのでこの信号がメモリ44に記憶される。しかし、エンコーダパルスは不定期かつ間歇的に発生するので、エンコーダパルスに従って生成されるサンプリングパルスは一定でない時間間隔をあけて発生する場合が多い。したがって、この時間間隔の間にA/D変換回路40は、信号値を長時間ホールドできず、異なった値に変化する。図6(b)に示す例では、不定の信号XXが2回のサンプリングパルスによってメモリ44に順次格納される。さらに、VCO周波数がF8になったとき、VCO周波数F7,F8に対応した計測信号はメモリ44に格納されない。このように、レジスタ42を用いず、第1クロック信号と非同期の第2クロック信号を用いなければ、計測信号を高速かつ正確にA/D変換することができない。
【0044】
本実施形態のデータ収集装置14は、常時第2のクロック信号に従ってA/D変換およびレジスタ42への書き込みを行い、しかも、メモリ44への記憶は、第1クロック信号に基づいて生成されたサンプリングパルスに応じて行われるので、データ収集装置14は、メモリ44における計測信号の格納位置を、計測条件の順番に順次記憶させることができる。その際、VCO周波数の変更およびマイクロ波スイッチ22,28の切り替えのタイミングと、第2クロック信号の立ち上がりのタイミングとの間で位相ずれがどのように生じても、計測信号は、サンプリングパルスに従って一定のタイミングでメモリ44に格納され得る。したがって、データ収集装置14は、計測信号を高速かつ正確にA/D変換することができる。
【0045】
第2クロック信号で動作するA/D変換回路40におけるA/D変換を10[Msps]とし、したがって、第2クロック信号の周期t2(図4(a)参照)を100[n秒]とし、時間ts(図4(a)参照)を10[n秒]としたとき、サンプリングパルスの周期を9.1[MHz]とすることができる。ここで、時間tsは、第2クロック信号の立下りからレジスタ42への一時記憶までの時間、レジスタ42への一時記憶からサンプリングパルスの立ち上がるまでの時間、サンプリングパルスの立ち上がりからメモリ44への記憶までの時間の合計時間である。したがって、第1クロック信号のパルス周期を予め設定した場合、この設定した周期に応じて、時間tsを考慮して第2クロック信号のクロック周期を定めることができる。
【0046】
以上、本発明のデータ収集装置、データ収集方法、および計測装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
10 計測装置
12 計測センサ
14 データ収集装置
16 データ処理装置
18 電圧制御発振器
20 パワースプリッタ
22,28 マイクロ波スイッチ
24,26 アレイアンテナ
30 ミキサ
32 IF回路
34 コントロール回路
36 ロータリエンコーダ
38,46 クロック信号発生器
40 A/D変換回路
42 レジスタ
44 メモリ
48 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A/D変換して得られる計測信号を収集するデータ収集装置であって、
計測センサにおいて第1クロック信号に基づいて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する信号が連なった一連の計測信号の入力を受け、第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するA/D変換ユニットと、
前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まる格納位置に記憶するメモリと、を有する、ことを特徴とするデータ収集装置。
【請求項2】
前記第2クロック信号のクロック周期は、前記計測条件の切り替わる周期に比べて短い、請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
さらに、前記メモリの前記格納位置に記憶された計測信号を取り出してデータ処理を行うとき、前記格納位置に基づいて前記計測条件を識別して前記データ処理を行うデータ処理部、を有するデータ収集装置。
【請求項4】
前記計測信号は、不定期で間歇的に前記A/D変換ユニットに入力される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
A/D変換して得られる計測信号を収集し、データ処理をする計測装置であって、
計測信号を出力する計測センサと、
前記計測センサにおいて第1クロック信号に基いて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する計測信号が連なった一連の計測信号の入力を受け、第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するA/D変換ユニットと、
前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まる格納領位置に記憶するメモリと、
前記メモリの前記格納位置に記憶された計測信号を取り出してデータ処理を行うとき、前記格納位置に基づいて前記計測条件を識別して前記データ処理を行うデータ処理装置と、を有する、ことを特徴とする計測装置。
【請求項6】
前記計測センサは、計測対象物に対して相対的に一方向に移動することにより、前記計測対象物の計測位置を走査し、
前記A/D変換ユニットは、前記設定された移動距離毎に、前記一連の計測信号の入力を受ける、請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記計測センサは、前記計測条件として変調周波数を変更しながら電波を放射するレーダであり、
前記A/D変換ユニットは、前記設定された移動距離毎に発生するパルスをトリガーパルスとして、前記サンプリングパルスが発生し、
前記データ処理部は、前記計測条件に基づいて計測対象物の距離情報を求める、請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
A/D変換して得られる計測信号を収集するデータ収集方法であって、
計測センサにおいて第1クロック信号に基づいて計測条件が順次周期的に切り替わることで得られる、前記計測条件に対応する計測信号が連なった一連の計測信号の入力を受けるステップと、
第2クロック信号のタイミングでA/D変換を行い順次レジスタに重ね書きして一時記憶するステップと、
前記第1クロック信号に基づいて生成されるサンプリングパルスのタイミングで、レジスタに一時記憶した計測信号を読み出し、前記サンプリングパルスのパルス発生回数に応じて定まるメモリの格納位置に記憶するステップと、を有する、ことを特徴とするデータ収集方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202921(P2012−202921A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69901(P2011−69901)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】