説明

データ記録再生装置、カメラ装置、および、データ記録再生方法

【課題】データ記録中の衝撃印加による、発光素子の寿命低下を有効に防止する。
【解決手段】発光素子(光ピックアップ4中のLD)と、発光制御部(LD駆動回路13等)と、光減衰駆動部(NDフィルタ駆動回路14等)と、衝撃検出部(衝撃センサ7および比較器12等)とを有する。発光制御部はLDの出射光量をフィードバック制御する。光減衰駆動部は、光減衰部(光ピックアップ4内のNDフィルタ)を備え、これをデータ再生時はLDの出射経路に挿入し、データ記録時は退避させる。衝撃検出部はNDフィルタが切り替わるような大きさの衝撃を検出する。そして、発光制御部はデータ記録中に衝撃が検出されると、LD出射光量の制御目標値を衝撃検出時の値から下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子からの光を出射経路途中で減衰させるか否かを、データの再生時と記録時で、あるいは、光ディスクの種類に応じて切り替えるデータ記録再生装置と、その方法、および、カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光によりデータが記録または再生される光記録媒体としては、例えば、円盤状の光ディスクが広く知られている。
光ディスクのデータ記録再生装置は、光ディスクを高速回転させた状態で、光ピックアップ内の発光素子によって光を発生し、この光を光ピックアップから光ビームとして光ディスクに照射し、データの記録再生動作を実行する。その際、光ピックアップに対して正確にフォーカス制御及びトラッキング制御を行うことにより、当該光ピックアップからの光ビームを光ディスクの信号記録面におけるトラックに対して正確に照射する。
【0003】
発光素子からの光を、データの再生時に光ピックアップ内の経路で光減衰手段により減衰させ、データの記録時には光減衰手段を上記経路から退避させるようにした光記録再生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1によれば、光減衰手段としてND(neutral density)フィルタが好適に用いられる。そして、NDフィルタを駆動する手段としては、上記光の経路に対してNDフィルタを出し入れするNDフィルタ駆動部が開示されている。
【0004】
特許文献1でNDフィルタを再生時に上記光の経路に挿入するのは、一言でいうと、再生ノイズを低減するためである。
より詳細には、光記録再生装置においては、記録時の記録面における光パワー密度を再生時より高くする必要があり、一般に、発光素子として高出力のレーザダイオード(LD)が用いられる。高出力LDは、再生時にレーザ出射パワーを低くすると光量が安定しないため、そのことが再生時のC/N(Carrier to Noise ratio)を低下させやすい。したがって、再生時に、レーザ出射パワーをある程度大きくし、かつ、記録面で光パワー密度を所定の一定値まで小さくする必要がある。
再生時にNDフィルタを挿入することにより、この矛盾した2つの要求を同時に満足することができる。
【特許文献1】特開平6−131683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LDは、出力パワーを高いレベルで長時間維持しつづけると素子内部や発光端面の劣化が激しくなり、寿命が急激に低下する。したがって、LDは、寿命が急激に低下するレーザ出力パワーの臨界レベルを有し、当該臨界レベルから、ある程度余裕をもった低いレベルに、データ書き込み時のレーザ出力が設定され、使用される。
また、設定されたレーザ出力レベルが得られるようにLD駆動が行われる。より詳しく言うと、特許文献1にも記載されているように、LDの出射光の一部を光電変換して、得られた電圧から、自動パワー制御(APC)回路が、上記出射光を一定の制御目標値に保つようにレーザを駆動するフィードバック制御が行われる。
【0006】
このフィードバック制御が行われているデータ記録の最中に、外部からの衝撃によって上記NDフィルタ等の光減衰手段が、LDの光出射経路に誤って挿入されることがある。
すると、上記APC回路はLDの出射光量が急激に下がったと判断して、出射光量を急いで上げるように制御する。このため、NDフィルタ等の光減衰手段がもつ減衰量が大きいほど、より大きなドライブ量でLDが駆動され、場合によっては、前記臨界レベルを超えて寿命が急激に低下する領域にLDの出力パワーが制御される。
その結果、データの書き込み時においては、LDの寿命が急に低下するダメージが生じることがある。
【0007】
同様な不都合は、光ディスクの記録層が1層の1層ディスクと、当該記録層が2層以上の多層ディスクとでも起こりうる。
【0008】
例えば2層ディスクは、1層ディスクに比べてデータの記録または再生時に大きなLD出射パワーを必要とする。このため、例えば、2層ディスクへのデータの記録および再生時はNDフィルタ等の光減衰手段を退避状態とし、1層ディスクへのデータの記録および再生時には光減衰手段を挿入状態とする制御を行う場合がある。
この場合、1層ディスク、2層ディスクでそれぞれデータを記録する時と再生する時でLDの出力パワーに差を設ける関係上、とくに2層ディスクへデータ記録時には前記臨界レベルに近いレベルでLDが駆動され、1層ディスクのデータ再生時にはLDノイズが問題となる領域に近いレベルでLDが駆動される。
【0009】
このため、例えば、NDフィルタがLDの光出射経路から退避された状態で、2層ディスクに対しデータの記録または再生を行っている最中に、衝撃によりNDフィルタが誤って挿入された場合、上記APC回路は、LDの出射光量が急激に下がったと判断して、出射光量を上げるように制御する。このため、前記臨界レベルを超えて寿命が急激に低下する領域にLDの出力パワーが制御される可能性がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、データの記録(および再生)中の衝撃印加による、発光素子の寿命低下を有効に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態に関わるデータ記録再生装置は、発光素子と、発光制御部と、光減衰駆動部と、衝撃検出部と、を有する。
前記発光素子は、光を発生し、当該光を光記録媒体に向けて出射する。
前記発光制御部は、前記発光素子の出射光量をフィードバック制御する。
前記光減衰駆動部は、光減衰部を備え、前記光記録媒体のデータを再生するときは前記光の出射経路に前記光減衰部を挿入し、前記光記録媒体へデータを記録するときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させる。
前記衝撃検出部は、前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出する。
そして、前記発光制御部は、前記データの記録中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出すると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出時の値から下げる。
本発明では好適に、前記光記録媒体が、記録層が2層以上の光ディスクである。
【0012】
本発明では好適に、前記データの記録と再生を制御する記録再生制御部を有し、前記記録再生制御部は、前記データの記録中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出したときは、前記データの記録を中断するとともに、前記発光制御部に対し、前記記録時の前記制御目標値を再生時の前記制御目標値にまで下げるように指示する。
さらに好適に、前記記録再生制御部は、前記光減衰駆動部に対し前記光減衰部を前記退避の状態に駆動するよう指示した後、前記データの記録を再開する。
さらに好適に、前記記録再生制御部は、前記衝撃の検出から前記再開までの間に、前記衝撃検出部が前記衝撃を再度検出したことを知ると、前記光減衰駆動部に対し、前記光減衰部を前記退避の状態に再度駆動するよう指示する。
【0013】
本発明の他の形態に関わるデータ記録再生装置は、光を発生し、当該光を光ディスクに向けて出射する発光素子と、前記光ディスクが1層の記録層を有する1層ディスクか、2層以上の記録層を有する多層ディスクかを検出するディスク検出部と、前記発光素子の出射光量をフィードバック制御する発光制御部と、光減衰部を備え、前記光ディスクが前記1層ディスクのときは前記光の出射経路に前記光減衰部を挿入し、前記光ディスクが前記多層ディスクのときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させる光減衰駆動部と、前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出する衝撃検出部と、を有し、前記発光制御部は、前記データの記録または再生中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出すると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出時の値から下げる。
【0014】
本発明の一形態に関わるカメラ装置は、撮影部と、前記撮影部からの信号から得られたデータを光ディスクに記録する際に、当該光ディスクに回転駆動力を付与する回転駆動部とを有する。
本カメラ装置は、前述したと同様な各構成、すなわち、発光素子と、発光制御部と、光減衰駆動部と、衝撃検出部と、を有する。
そして、前記発光制御部は、前記データの記録中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出すると、前記制御目標値を衝撃検出前の値から下げる。
【0015】
本発明の一形態に関わるデータ記録再生方法は、光を発生し、当該光を光記録媒体に向けて出射し、出射光量をフィードバック制御するステップと、前記光記録媒体のデータを再生するときは前記光の出射経路に光減衰部を挿入し、前記光記録媒体へデータを記録するときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させるステップと、前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出するステップと、前記データの記録中に前記衝撃が検出されると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出前の値から下げるステップと、を含む。
【0016】
本発明の他の形態に関わるデータ記録再生方法は、光を発生し、当該光を光ディスクに向けて出射し、出射光量をフィードバック制御するステップと、前記光ディスクが1層の記録層を有する1層ディスクか、2層以上の記録層を有する多層ディスクかを検出するステップと、前記光ディスクが前記1層ディスクのときは前記光の出射経路に光減衰部を挿入し、前記光ディスクが前記多層ディスクのときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させるステップと、前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出するステップと、前記データの記録または再生中に前記衝撃が検出されると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出前の値から下げるステップと、を含む。
【0017】
以上の構成によれば、データの光記録媒体への記録時、当該光記録媒体のデータの再生時に、発光素子が光を発生し光記録媒体へ出射する。
この発光素子の出射光量がフィードバック制御されているが、その出射光量は、光減衰駆動部によって再生時(または、1層ディスクの記録・再生時)に減衰され、記録時(または、多層ディスクの記録・再生時)には減衰されない。
【0018】
一方、当該データ記録再生装置には、光減衰部が出射光量を減衰させるか、させないかを決める動作、即ち、光の出射経路に対する光減衰部の挿入と退避が切り替わる程度に大きな衝撃が、衝撃検出部によって常時、検出される。
データの記録時に(または、記録時と再生時の両方で)上記衝撃が検出されると、発光制御部が、発光素子の出射光量の制御目標値を衝撃検出時の値から下げるように発光素子を制御する。
また、衝撃によって光減衰部が退避位置から挿入位置に実際に移動した場合、発光制御部が、出射光量の低下を検出して発光素子の出力パワーを上げようとフィードバック制御を行う。
【0019】
しかしながら、衝撃を受けて光減衰部が移動するのに時間がかかり、また、フィードバック制御が開始されてから発光素子の出力パワーが決められるまでにはある程度の時間がかかる。この間、時間にして僅かではあるが、通常、この時間よりも、衝撃検出から制御目標制御までの時間が短い。このため、発光素子は、その寿命を急激に増大させる領域に動作点が入ることなく、出力パワーが下げられて安全が確保される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、データ書き込み最中(または、データの記録あるいは再生の最中)の衝撃印加による、発光素子寿命の急激な低下を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は光により光記録媒体にデータを記録し再生するデータ記録再生装置に適用されるが、光記録媒体としては、円盤状の光ディスクが例示できる。
また、据え置き型のデータ記録再生装置等にも本発明が適用可能であるが、撮影(または再生)中に衝撃が加わる可能性が高い携帯型の装置、例えば光ディスクへのデータ記録再生駆動装置を内蔵するビデオカメラ装置等に好適に本発明を実施できる。
以下、本発明の実施形態を、光ディスクにデータを記録し再生するカメラ装置を例として、図面を参照して説明する。
【0022】
<全体構成>
図1に、本実施形態に関わるビデオカメラ装置の概略的な構成をブロック図により示す。図2に、光ピックアップの概略構成を示す。
図1に図解したビデオカメラ装置1は、光記録媒体として、光ディスク2を着脱可能に収容する。光ディスク2は、例えば、DVD−R/RW、または、Blu−ray Disc(登録商標)等の、直径が12[cm]ほどの円盤状外形を有する。光ディスク2の少なくとも一方面に記録層が保護層を介して設けられた記録面2Aを有する。
【0023】
ビデオカメラ装置1内の光ディスク2周囲に、光ディスク2を回転駆動するスピンドルモータ(SP.M.)3、光ビーム(LB)を光ディスク2の記録面2Aに照射制御する光ピックアップ(OP)4、および、当該光ピックアップ4を光ディスク2の半径方向で移動させる移動機構や駆動源を含むドライブベースユニット(BU)5が配置されている。ドライブベースユニット5内に、光ピックアップ4を光ディスク2の半径方向に移動させるスレッドモータ(SL.M.)5Aが設置されている。
【0024】
スピンドルモータ3のモータ軸(不図示)に、テーパーコーン6Aと称される回転支持部材が取り付けられている。光ディスク2は、中央の軸穴周辺部の一方面側を、スピンドルモータ3に連結して自転するテーパーコーン6Aで支持した状態で、スピンドルモータ3からの駆動力により高速回転(自転)する。このとき、光ディスク2の軸穴周辺部の反対側面が、マグネット部材(チャッキングプレート6B)で適度に押し当てられる。
テーパーコーン6A、チャッキングプレート6Bおよびスピンドルモータ3は、「回転駆動部」の一例に該当する。
【0025】
光ピックアップ4は、対物レンズ41を光ディスク2の半径方向(トラック方向)と法線方向(フォーカス方向)に移動可能で、かつ、ラジアルスキュー(あるいはタンジェンシャルスキュー)を補正する方向にチルト可能な3軸アクチュエータ42を備える。
【0026】
光ピックアップ4内に、図2に示すように、対物レンズ41の他に、レーザダイオード(LD)44、コリメータレンズ45、「光減衰部」としてのNDフィルタ46A、偏光ビームスプリッタ47、偏光板48、集光レンズ49,50、光検出器51,52、アンプ53、APC(Automatic Power Control)回路54が設けられている。
【0027】
図2に示す各種光学部品等の光路に対する配置は、以下のようになっている。
LD44からのレーザ光がコリメータレンズ45、NDフィルタ46Aを通って偏光ビームスプリッタ47に入射可能となっている。
偏光ビームスプリッタ47に入射したLD光は、そのほとんどが偏光ビームスプリッタ47内を直進して、偏光板48を通り、対物レンズ41に入射可能となっている。
【0028】
偏光板48は入射光を、例えば直線偏光から円偏光等に変換する光学部品である。偏光板48で変換後のLD光が、対物レンズ41で集光され、さらに光パワー密度が高い光ビーム(LB)となって光ディスクの記録面2Aに焦点が絞られた状態で照射されるようになっている。
なお、図2においては、ブルーレイディスク(BD)等の光ディスク2に形成され、記録層が2層の記録面2Aを例示している。図2では、記録面2Aの深層側の記録層RL1に光ビーム(LB)の焦点があっている状態を示す。表層側の記録層RL2に焦点を合わせる場合、図1の3軸アクチュエータ42が、対物レンズ41を法線方向(図2の上下方向)に動かすことによって、フォーカス制御(フォーカシングサーボ)を行う。フォーカシングサーボについては後述する。
【0029】
一方、偏光ビームスプリッタ47に入射されたLD光の一部、例えば1[%]程度が内部で反射されて直角に向きを変え、偏光ビームスプリッタ47から出て行く。このLD光の一部(以下、出射モニタ光という)が偏光ビームスプリッタ47から出て行く先に、集光レンズ49と、例えばフォトダイオードからなる光検出器51が配置されている。集光レンズ49は、光検出器51の受光面で出射モニタ光の焦点を合わせるように配置されている。したがって、出射モニタ光は光検出器51で有効に光電変換され、モニタ電圧Vmが光検出器51から出力される。
【0030】
光検出器51とLD44の間に、光検出器51のモニタ電圧Vmを入力し、LD44の駆動電流Idvを制御するAPC回路54が接続されている。APC回路54に、制御目標値(電圧;CTV)が外部から与えられている。APC回路54は当該制御目標値(CTV)に応じて所定の出力パワーがLD44で得られるように、入力したモニタ電圧Vmを増幅し駆動電流Idvに変換する回路である。
偏光ビームスプリッタ47、集光レンズ49、光検出器51、APC回路54によりLD駆動のフィードバック制御が行われ、これによりLD44の出力パワーが、記録面2Aで所望の光パワー密度が安定して得られるように制御される。なお、データの記録時と再生時でLD44の出力パワーを変えることは、後述するように、制御目標値(CTV)の値に応じて制御される。
【0031】
記録面2Aからの反射光が、対物レンズ41、偏光板48を通って、偏光ビームスプリッタ47に入射されるようになっている。反射光は、LD出射光と偏光面が直交するため互いに干渉することなく、その殆どが偏光ビームスプリッタ47内部でLDの出射モニタ光と反対の向きに曲げられ、偏光ビームスプリッタ47から出て行く。この反射光が偏光ビームスプリッタ47から出て行く先に、集光レンズ50と、例えばフォトダイオードからなる光検出器52が配置されている。集光レンズ50は、光検出器52の受光面で反射光の焦点を合わせるように配置されている。したがって、反射光は光検出器52で有効に光電変換され、光検出電圧Vdtが光検出器51から出力される。
光検出電圧Vdtは、データ記録時にはフォーカシングサーボやトラッキングサーボの制御に用いられ、データ再生時は、データ検出にも用いられる。このため光検出器52は、フォーカスずれやトラッキングずれが検出可能になっている。
【0032】
本実施形態の光ピックアップ4内には、前述したように、LD44と偏光ビームスプリッタ47間のLD光の出射経路途中に、NDフィルタ46Aが設けられる。NDフィルタ46Aは、NDフィルタ46Aを有しない光全透過部46Bとともに、例えばガラス等により一体形成されている。以下、このNDフィルタ46Aと光全透過部46Bを備える部材を、NDフィルタ板46という。
NDフィルタ板46の両端には、例えばマグネット55が貼られている。NDフィルタ板46はフィルタ枠体56内に収容され、LD光の出射経路に対し直交する方向で往復運動可能に保持されている。一方、フィルタ枠体56の、上記2つのマグネット55が臨む側に、それぞれ電磁コイル57が設けられている。2つの電磁コイル57は、一方がマグネット55の片方を引き寄せる動作をするときは、他方がマグネット55の他方を押し戻すように、外部から電流駆動される。
このため、NDフィルタ板46は、上記駆動電流の向き等に応じて、NDフィルタ46AがLD光の出射経路に挿入された「挿入状態」と、NDフィルタ46Aが当該出射経路から退避し、代わりに光全透過部46Bが挿入された「退避状態」とで切り替わる動作が可能となっている。
【0033】
図1の説明に戻ると、光記録媒体(光ディスク2)に加わる外力による衝撃を検出する「衝撃検出部」の一構成として、衝撃センサ(SHOCK)7が設けられている。
衝撃センサ7は、図2のNDフィルタ板46が「挿入状態」と「退避状態」で切り替わる、または、切り替わる可能性が高い大きさの外力を検出できるものであれば、その構成は任意である。
【0034】
ビデオカメラ装置1は、被写体を撮影し、撮影像に対応する撮影信号を処理して出力する撮影部8を有する。
撮影部8は、光学レンズやフィルタなどの光学部品、シャッタ等の機械部品などを含む。
【0035】
ビデオカメラ装置1は、ビデオカメラ制御部(VC.−CONT.)9と、光ディスクドライブ装置1Aとを有する。ビデオカメラ制御部9に、外部端子(不図示)からの信号(映像信号)を入力し、または、信号を外部端子に出力可能なインターフェース(I/F)10と、操作部16が接続されている。
光ディスクドライブ装置1Aは、サーボ制御部(SERVO−CONT.)11、ドライブシステム制御部(DS.−CONT.)15、および、ドライブ信号処理部(DS.−PRO.)17を有する。前述したスピンドルモータ3を含む「回転駆動部」、および、光ピックアップ4を含むドライブベースユニット5は、ディスクドライブ装置1A内に設けられている。詳細は後述するが、ビデオカメラ制御部9からの命令をドライブシステム制御部15が受けて、ドライブシステム制御部15の制御により記録動作や再生動作を行う。
【0036】
サーボ制御部11は、ドライブ信号処理部17からの誤差信号(ERR)が入力可能となっている。サーボ制御部11は、入力された誤差信号(ERR)に基づいて、上記の各種制御を行う。このときサーボ制御部11はフォーカシングサーボ信号(FS)やトラッキングサーボ信号(TS)を3軸アクチュエータ42に出力する。また、サーボ制御部11で発生したスピンドルモータサーボ信号(SPMS)がスピンドルモータ3に出力され、サーボ制御部11で発生したスレッドモータサーボ信号(SLMS)がスレッドモータ5Aに出力される。
この構成により、サーボ制御部11は、光ピックアップ4に対しフォーカシングサーボ、トラッキングサーボを行い、スピンドルモータ3に対し回転数制御を行うことが可能である。
【0037】
ビデオカメラ装置1は、本発明の特徴に関わる構成として、衝撃センサ7から出力される検出信号(DET)を所定の閾値と比較する比較器(COMP.)12と、LD駆動回路(LDD)13と、NDフィルタ駆動回路(NDF−DRV.)14とを有する。
比較器12、LD駆動回路13、NDフィルタ駆動回路14は、ドライブシステム制御部15により制御される。このため、ドライブシステム制御部15は、比較器12、LD駆動回路13、NDフィルタ駆動回路14に接続され、さらに、ビデオカメラ制御部9、インターフェース10、サーボ制御部11にも接続されている。
【0038】
比較器12は、プログラムに従って制御されるドライブシステム制御部15の一機能として、ソフトウエアにより実現することもできる。ただし、ここではドライブシステム制御部15とは別にハードウエア(回路)により、比較器12が形成されている。
比較器12は、図2のNDフィルタ板46が「挿入状態」と「退避状態」で切り替わる最低の衝撃の大きさを示す上記閾値を内部に保持する。そして、衝撃センサ7からの検出信号(DET)を閾値と比較し、検出信号(DET)が閾値以上のときに、衝撃検出信号(S−DET)をドライブシステム制御部15に出力する。なお、閾値はドライブシステム制御部15から変更可能に比較器12に与えてもよい。また、閾値は、NDフィルタの保持力に安全率を考えて決定されたものでもよい。この場合、比較器12で実際に用いられる閾値は、NDフィルタ板46が切り替わる最低の衝撃の大きさに対応する閾値に、1未満の安全率を掛けたものである。
衝撃センサ7および比較器12は、「衝撃検出部」の一例に該当する。
【0039】
LD駆動回路13が、ドライブシステム制御部15と光ピックアップ4との間に接続されている。また、同様に、ドライブシステム制御部15と光ピックアップ4の間に、NDフィルタ駆動回路14が接続されている。
LD駆動回路13は、ドライブシステム制御部15からの指令に応じて、データの記録時と再生時で、図2のAPC回路54に与える制御目標値(CTV)の値を切り替える制御を行う。
また、ドライブシステム制御部15は、比較器12から衝撃検出信号(S−DET)を入力したことに応答して、LD駆動回路13に対し制御目標値(CTV)を下げる指示を行うとともに、NDフィルタ駆動回路14に対しNDフィルタ板46の駆動を指示する。この衝撃検出に応答して行う制御の詳細は後述する。
【0040】
LD駆動回路13、ドライブシステム制御部15、および、図2のフィードバック制御のための構成、即ち、偏光ビームスプリッタ47、集光レンズ49、光検出器51、APC回路54が、「発光制御部」の一例である。「ディスク検出部」としてのドライブシステム制御部15は、光ディスク2が1層ディスクか多層ディスクかを検出する機能を有する。このディスクの種類の検出は、光学的に検出してもよいし、機械的に検出してもよい。ドライブシステム制御部15は、「記録再生制御部」としても機能する。
また、「発光制御部」は、LD44の出射光量を所定の目標値にフィードバックする機能を有する。
また、NDフィルタ駆動回路14、および、図2のNDフィルタ板46、マグネット55、フィルタ枠体56、電磁コイル57等が、「光減衰駆動部」の一例である。
【0041】
<記録再生動作>
つぎに、以上の構成を前提として、ビデオカメラ装置1の概略的な動作を説明する。
操作部16内の撮影開始ボタンが押されると、ビデオカメラ制御部9により記録が開始され、映像信号は記録信号に変換される。記録信号はドライブシステム制御部15を介してディスクに記録される。
より詳細には、撮影開始ボタンが押されると、撮影部8から出力される撮影信号がビデオカメラ制御部9に入力され、ビデオカメラ制御部9で記録信号に変換される。記録信号は、ビデオカメラ制御部9からドライブシステム制御部15を介して光ピックアップ4に送られ、光ピックアップ4によって光ディスク2に書き込まれる。
この記録時のLD発光では、予め、撮影開始の指示に応答して、ドライブシステム制御部15の制御を受けたLD駆動回路13からAPC回路54に対し、記録時の制御目標値(CTV)への切り替え指示が出されている。
したがって、LD44がデータ記録に必要な出力パワーで発光し、その出射光(LD光)が、光ディスク2の記録面2Aに入射された光ビーム(LB)として、記録層R1またはR2に照射される。これにより光ディスク2において、データに応じた長さの物性変化領域(マーク)が、記録層R1またはR2に断続的に形成される。
【0042】
このとき、光ディスク2の回転とともに、例えば、その内周側から外周に移動するトラック位置に連続的にマーク形成が行われ、これによりデータ記録が実行される。
データ記録の最中に、光ピックアップ4内の光検出器52で反射光が受光され、光検出器52から光検出電圧Vdtがドライブ信号処理部17に常時、入力されている。ドライブ信号処理部17は、ドライブシステム制御部15の制御を受けて、光ビーム(LB)の合焦位置と光ディスク2の記録面2Aとのずれ量を表すフォーカスエラー信号を発生し、また、光ビーム(LB)の照射位置と所望トラックとのずれ量を表すトラッキングエラー信号を発生する。これらの信号は、誤差信号(ERR)としてサーボ制御部11に送られる。
【0043】
サーボ制御部11は、入力した誤差信号(ERR)に基づいて3軸アクチュエータ42を制御し、対物レンズ41を、X軸(ラジアル方向の軸)、Z軸(法線方向の軸)に沿って2軸移動させる。
より詳細には、フォーカスエラー信号を減少させるよう対物レンズ41を光ディスク2に近接又は離隔させる方向(Z軸方向)に移動させることにより、光ビーム(LB)を光ディスク2の記録面2Aに合焦させるフィードバック制御、すなわちフォーカス制御が行われる。
これと並行して、トラッキングエラー信号を減少させるよう、対物レンズ41を光ディスク2の外周側又は内周側(X方向)へ移動させることにより、光ビーム(LB)の焦点を所望トラックに追従させるフィードバック制御、すなわちトラッキング制御が行われる。
なお、制御の初期段階などにおけるトラッキング制御時に、光ビーム(LB)の焦点がトラック上で合っていないとトラッキング制御が困難である。よって、そのような場合、サーボ制御部11は、スレッドモータ5Aにより光ピックアップ4をX方向に大まかに移動させた上で、3軸アクチュエータ42により細かいトラッキング制御を行わせる。以後、フォーカス制御とトラッキング制御が並行して行われるため、光ビーム(LB)の焦点を所望トラックに追従させることができる。
【0044】
データ再生においては、操作部16の操作に基づいてビデオカメラ制御部9を介して、ドライブシステム制御部15に再生指示が出される。すると、サーボ制御部11を介してスピンドルモータ3が起動され、同時に、サーボ制御部11の制御により、ドライブベースユニット5内のスレッドモータ5Aによって、光ピックアップ4が光ディスク2の、再生すべきデータ記録箇所のトラック位置にシークされ、再生が開始される。
【0045】
データ再生時に、光ピックアップ4からの連続的な光ビーム(LB)が光ディスク2の記録面2Aに照射されると、記録層RL1またはRL2のマーク箇所と非マーク箇所の反射率の違いから、反射光が記録信号に応じて変調されたものとなる。反射光は光検出器52に入射され、光電変換される。光電変換により得られた再生信号が光検出器52から出力され、再生信号がアンプ53で増幅された後、ドライブ信号処理部17に入力される。
再生信号は、ドライブ信号処理部17で所定の処理がされた後、不図示の表示部やスピーカ等から映像または音声として出力される。または、処理後の再生信号を、インターフェース10と外部端子(不図示)を介して、外部に出力することもできる。
【0046】
上述した記録時または再生時において、光ビーム(LB)の出射光量が、LD光量モニタ用の光検出器51と、それにつながるAPC回路54によりモニタされている。
つまり、記録時または再生時のLD出射光の一部(1〜数[%]程度)が、光検出器51に入力され、そのモニタ光量に応じてLD44の駆動電流Idvが、設定された制御目標値(CTV)が得られるようにフィードバック制御される。これにより、LD光量に経時変化や外乱があっても、記録時または再生時の光ビーム(LB)の平均的な光量が、それぞれ所望の一定値となる。
図2のAPC回路54は、図1のLD駆動回路13内に設けてもよいが、図2のように光ピックアップ4内に設けると、素早いレスポンスが得られるため望ましい。
【0047】
<複数の記録層を持つ光ディスク>
本発明は、単層の記録層を持つ光ディスクのデータ記録再生に好適であるが、以下の理由により、ブルーレイディスク(BD)等の記録層が2層以上の光ディスクのデータ記録再生に、さらに好適である。
光ディスクの記録層2Aが、例えば図2に示すように2層形成されている場合、表層側の記録層RL2に光ビームのスポット焦点を合わせて記録を行うときに、他の深層側の記録層RL1は、表層側の記録層RL2ほどではないが、かなり高い光パワー密度となる。逆に、深層側の記録層RL1に光ビームのスポット焦点を合わせて記録を行うとき、他の表層側の記録層RL2は、深層側の記録層RL1ほどではないが、かなり高い光パワー密度となる。
【0048】
このように一方の記録層に光記録を行う際に、他の記録層が、光パワー密度が高いビーム光に曝される。このため、複数の記録層を有する光ディスク2の記録層感度(光の照射により、読み取り可能な反射率変化(物性変化)が生じる感度)は、1層の光ディスクの記録層感度より低く設定される。
【0049】
図3に、レーザダイオード(LD44)の駆動電流Idv(横軸)と出力パワーP(縦軸)との関係(発光特性)を模式的なグラフにより示す。このグラフの縦軸の出力パワーPは、同じ径のLD光では明るさに相当する。
駆動電流Idvを上げていくと、電圧Vfから出力パワーPが立ち上がる特性となる。このLDの発光特性において、出力パワーPが小さい領域RL付近では出力の安定度が低く、このことがノイズを増大させる。一方、出力パワーPが非常に高い臨界レベルLth以上の領域RHではレーザ寿命が急激に低下するため、LD44は、領域RLと領域RHとの間において、各領域から十分なマージンMLとMHをとった領域RM内で使用される。
また、データの記録時と再生時では、記録時に光ディスク2の記録面を、ある一定温度以上に加熱しなければならない一方で、再生時に誤って記録データを消さないように、再生時の出力パワーレベルLpは、記録時の出力パワーレベルLr(Lr1,Lr2)より十分低い設定にする。
【0050】
ここで注意を要するのは、図3はあくまで理想的な場合を示すものであり、実際は、再生ノイズを低減するために再生時の出力パワーレベルLpを低くできないことから、再生時の出力パワーレベルLpと記録時の出力パワーレベルLrとの差(動作マージン)が十分でないことがある。つまり、再生ノイズの低減と記録再生の動作マージン設定について、トレードオフが存在する。
図2に示し、前述したように再生時と記録時でNDフィルタ板46を切り替えるのは、このトレードオフを解決すべく、再生時のLD出力を大きくしてもディスクの記録面では光パワー密度を低く抑えるために、再生時のみLD出力を経路途中で減衰させるためである。
NDフィルタ板46は、図1のLD駆動回路13から図2のAPC回路54に与えられる制御目標値(CTV)が、再生制御目標値(CTVp)と記録制御目標値(CTVr)とで切り替わることにより制御される。
【0051】
前述したように、ブルーレイディスク(BD)のように複数の記録層を有する光ディスク2では記録層感度が、記録層が1層の場合より低い。
このため、図3に示すように、1層ディスクの記録時の出力パワーレベルLr1がマージンMHから十分低い位置に設定されている場合でも、2層ディスクの記録時の出力パワーレベルLr2は、相対的に記録層感度が低い分、LD44の出力パワーを上げてマージンMHぎりぎりで使用される。
データ記録時に衝撃によって、NDフィルタ板46が、NDフィルタ46Aの「退避状態」から「挿入状態」に切り替わると、偏光ビームスプリッタ47に入射される光量が急激に低下する。このときAPC回路54は、与えられている高い記録制御目標値(CTVr)を実現すべく、駆動電流Idvを大きく増加させるようにLD44を駆動する。
その結果、マージンMHぎりぎりに存在する記録時の出力パワーレベルLr2が簡単に領域RHに入り、LD44の寿命が、正常使用時の速度を大幅に上回る速度で低下する。
【0052】
<データ記録中の衝撃検出時の処理>
図4に、衝撃検出時の処理フローを示す。
図4に示す衝撃検出時の処理は、ビデオカメラ装置1の電源がオンされ、ドライブシステム制御部15が起動すると、開始される。
電源オン後に、撮影が行われ、不図示の種々のステップを経てデータ記録が開始される。この種々のステップには、NDフィルタが記録用の位置にない、即ち、NDフィルタ46AがLD光の出射経路に挿入されている場合は、これを出射経路から退避させるNDフィルタ駆動を含む。なお、最初からNDフィルタ46Aが記録用の位置(挿入状態)の場合でも、念のため「挿入状態」へのNDフィルタ駆動を行う。
【0053】
図1のドライブシステム制御部15と比較器12に電源が供給された後は、衝撃センサ7からの検出信号(DET)を閾値と比較器12で比較し、その結果により、ステップST1の「記録中のショック検出」が可能となる。
比較器12とドライブシステム制御部15を用いて「記録中のショック検出」がされた、即ちステップST1が「YES」の場合、処理フローが次のステップST2に進むが、未検出(「NO」)の場合、検出されるまでステップST1が繰り返される。
なお、ここで言う「ショック検出」は、NDフィルタ板46が「挿入状態」と「退避状態」間で切り替わる最低の衝撃の大きさ、または、それに安全率をかけた、上記最低の衝撃より若干小さい衝撃の大きさの検出である。
【0054】
ステップST2では、ショックが大きくNDフィルタ板46が記録中の「退避状態」から「挿入状態」に切り替わった場合でも、フィードバック制御によってLD44の出力パワーが上げられる前に記録を中断し、続いて、記録制御目標値(CTVr)が強制的に、より低い値、例えば再生制御目標値(CTVp)にまで下げられる。なお、前記安全率をかけている場合、実際にはNDフィルタの切り替えが発生しなくても、発生する可能性が高いほど強いショックが検出された時点で、記録制御目標値(CTVr)を下げる制御が実行される。
【0055】
つぎのステップST3では、前回のNDフィルタ駆動から「十分な放熱時間が経過したか」の確認が、ドライブシステム制御部15によって行われる。
この待機時間の確認は、図2に示す、いわゆるプランジャ式(1軸移動式)のNDフィルタ駆動で電磁コイル57の電磁力を動力とする場合、かなり大きな電流が電磁コイル57に流れるため、駆動を短い間隔で繰り返すと、発熱による駆動力の低下が懸念されることから、設けている。よって、そのような懸念がない場合や、その他のNDフィルタ駆動方式では、このステップST3と次の待機処理(ステップST4)を省略可能である。
【0056】
ステップST3で十分な放熱時間が経過したと判断されると(「YES」)、ステップST5でNDフィルタの再駆動が行われる。
一方、ステップST3の判断が「NO」の場合、ステップST4で放熱時間の経過を待って、次のステップST5でNDフィルタの再駆動が行われる。
NDフィルタの再駆動は、例えば、ドライブシステム制御部15が内蔵のタイマを参照して、前回のフィルタ駆動から所定の時間が経過したタイミングで、NDフィルタ駆動回路14に駆動開始の指示を出し、この指示に応答して、NDフィルタ駆動回路14が図2のNDフィルタ板46を記録用の位置に戻すことで達成される。
【0057】
その後のステップST7において、ステップST2で下げた制御目標値(CTV)を、記録制御目標値(CTVr)に戻す処理が行われるが、ステップST1からステップST7の間に、ステップST1とは別にショックが検出されたかを、ドライブシステム制御部15が確認するステップST6を設けている。
ステップST6を設けたのは、NDフィルタの位置を正しい位置に確定するためである。
【0058】
より詳細には、ステップST1で1回のショックが検出されただけなら、ステップST5の駆動で正しい記録用の位置にNDフィルタが移動されたと判断できる。しかしながら、もう1回ショックが検出されるならば、合計2度のショックでNDフィルタは正しい記録用の位置に戻されているかもしれない。
そこで、ステップST6を設け、ステップST1の検出を含めて2度のショックが検出された(「YES」の)場合は、念のため、NDフィルタの再駆動を再度行うべく、処理フローをステップST3の前に戻すようにする。なお、この場合、十分な放熱時間が経過していると考えられるので、破線のように処理フローをステップST5の前に戻し、NDフィルタ駆動の再履行だけでも構わない。
ステップST7で、下げられている制御目標値(CTV)が記録制御目標値(CTVr)に戻された後、ドライブシステム制御部15によって記録再開が行われ、ステップST1の処理に戻る。
【0059】
なお、ステップST5におけるNDフィルタ駆動が、現在のNDフィルタ位置を反対側に移動させるというだけでなく、「記録用位置に移動させる」、「再生用位置に移動させる」ことが確実な駆動手法をとる場合、ステップST6の処理は不要である。ステップST6がなくても、次のステップST7で記録が再開された後の直後にステップST1でショック検出が行われことから、上記2度目のショックがここで検出されるため、直ぐに制御目標値(CTV)が下げられ実害がないからである。
以上の処理中に、ステップST8の電源オフ等の終了検出がなされると、当該処理フローが終了する。
【0060】
<データ再生中の衝撃検出時の処理>
ここで、データ再生中の処理についても、簡単に述べる。
データの再生中に、外部からの衝撃によってNDフィルタ46A等の光減衰部が、LD44の光出射経路から誤って退避すると、光ディスク面における光パワー密度が急激に上昇する。このとき同時に、APC回路54が、相対的に低い再生制御目標値(CTVp)に合わせてLD44の出力パワーを下げるため、上記光ディスク面での光パワー密度の上昇は一時的で、直ぐに所定レベルに戻る。
しかしながら、このような光ディスク面での光パワー密度の過渡的な変動は、再生信号のノイズとなって再生品質を低下させる。
【0061】
再生品質の低下を防止するには、ビデオカメラ装置1は以下の処理を実行することが望ましい。
ビデオカメラ装置1は、通常、再生時にECC(エラーコレクションコード)のデコードが行われ、そのデコードの結果により、記録したデータが正しく復元(再生)できているかを判断する。そして、もし正しく復元できていない場合に、同じデータを再度読み出す動作(リードリトライ動作)が発生する。
よって、上記光パワー密度の過渡的な変動があっても、正しいデータ復元がされていると判断されれば、再生品質に低下は生じない。一方、正しいデータ復元がされていないと判断された場合でも、上記リードリトライ動作が発生するため、再生品質が低下することはない。
【0062】
<変形例>
以上は、データの記録時にNDフィルタ46Aを「退避状態」、データの再生時にNDフィルタ46Aを「挿入状態」とする場合について説明した。
本実施形態では、光ディスク2の記録面2Aが1層の1層ディスクの場合におけるデータの記録と再生の両方でNDフィルタ46Aを「挿入状態」とし、記録面2Aが多層の多層ディスクの場合におけるデータの記録と再生の両方でNDフィルタ46Aを「退避状態」としてもよい。
【0063】
1層ディスクの場合、LDの記録時の出力パワーは、寿命が急激に短くなる領域から十分なマージンをとって設定されるが、再生時の出力パワーは、ノイズが増大する領域から十分なマージンがとられていない場合もある。このため、衝撃によりNDフィルタが「挿入状態」から「退避状態」に切り替わり、これに応答してLDの出力パワーが下げられると、特にデータの再生時に、過渡応答に起因した再生データの質低下が生じることがある。
しかし、この不都合は、前述したECCのデコード結果に応じたリードリトライ動作によって回避可能である。
【0064】
これに対し、1層ディスクの場合、多層(例えば、2層)ディスクより記録時のLD出力パワーが低いため、データの記録時に衝撃によりNDフィルタが「挿入状態」から「退避状態」に切り替わり、これに応答してLDの出力パワーが下げられると、過渡応答により一時的にデータ記録が正しく行えない発光となってしまい、記録品質が低下する。
【0065】
一方、多層ディスクの場合、データの記録および再生時に、衝撃が加わっても、これによりNDフィルタが「退避状態」から「挿入状態」に切り替わり、これに応答してLDの出力パワーが上げられる。よって、データの再生時にLD出力パワーが、ノイズが増大する領域に入ることはない。
これに対し、多層ディスクの記録層の感度が1層ディスクの記録層の感度より低く設定されているため、NDフィルタを「退避状態」用いることから、LDの記録時の出力パワーは、LDの寿命が急激に増大する臨界レベルとのマージンが小さい。
従って、データの記録時に衝撃によりNDフィルタが「退避状態」から「挿入状態」に切り替わり、これに応答してLDの出力パワーが上げられると、LDの記録時の出力パワーが臨界レベルを超えて、LDの寿命が急激に低下することがある。また、データ記録時の過渡応答により一時的にデータの記録品質が低下するという不都合が生じる。
【0066】
本変形例では、NDフィルタが切り替わるような衝撃を検出すると、LDのフィードバック制御における制御目標値を下げるため、特に2層ディスクのデータ書き込み時におけるLD寿命の急激な増大、および、過渡応答によるデータの記録品質の低下を有効に防止できる。
【0067】
なお、1層ディスクのデータ記録時における過渡応答によるデータの記録品質の低下については、この場合、すなわち「1層ディスクであること」と「データの記録時」である場合に限り、LDのフィードバック制御の制御目標値を上げるようにしてもよい。
また、過渡応答によるデータの記録品質の低下は、NDフィルタをデータの記録時に「退避状態」、再生時に「挿入状態」とする制御においても生じることがある。
【0068】
次に、その他の変形例を説明する。
以上の説明では、光ディスク2の回転制御について詳細に述べていないが、その制御方式は、CLV(Constant Linear Velocity)方式により線速度を一定に保つよう光ディスク2の回転速度を変化させる制御と、CAV(Constant Angular Velocity)方式により光ディスク2の回転速度を一定に保つ制御のいずれでもよい。
また光ディスク2は、ブルーレイディスク(BD)に限らず、例えばDVD(Digital Versatile Disc)やCD(Compact Disc)等の種々の光ディスクであってもよい。さらに光ディスク2の直径は、120[mm]に限らず80[mm]等であってもよい。
【0069】
以上の本実施形態によれば、以下の利益を受けられる。
データ記録時に衝撃を検出すると、データの記録時に、発光素子(LD44)を、より低い出射パワーに強制的に駆動するため、衝撃による意図しないNDフィルタ切り替えによって発光素子の寿命が急に低下するという事態を回避できる。
また、特に、1層、多層に限らずデータ記録時にNDフィルタを「退避状態」とする前述した制御、または、多層ディスクの記録再生でNDフィルタを常時「退避状態」としておく変形例の制御の何れにおいても、過渡応答によってデータの記録品質が低下するという事態も回避できる。
さらに、衝撃を検出してNDフィルタの再駆動を行なうことで、NDフィルタを適切な設定に確実に戻した上で、記録動作を再開することができる。
なお、データ再生時に、衝撃による再生品質の低下が発生する場合は、例えば、ECCのデコード結果に応じてリードリトライ動作が行われるため、品質が実用上十分な再生データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に関わるビデオカメラ装置の概略的な構成をブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に関わる光ピックアップの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の説明に用いた、LDの駆動電流と出力パワーとの関係を模式的に示すグラフである。
【図4】本発明のデータ記録再生方法の一実施形態に関わる衝撃検出時の処理フロー図である。
【符号の説明】
【0071】
1…ビデオカメラ装置、2…光ディスク、2A…記録面、4…光ピックアップ、5…ドライブベースユニット、7…衝撃センサ、11…サーボ制御部、12…比較器、13…LD駆動回路、14…NDフィルタ駆動回路、15…ドライブシステム制御部、41…対物レンズ、42…3軸アクチュエータ、44…LD、46…NDフィルタ板、46A…NDフィルタ、46B…光全透過部、47…偏光ビームスプリッタ、51,52…光検出器、54…APC回路、55…マグネット、56…フィルタ枠体、57…電磁コイル、(DET)…検出信号、(S−DET)…衝撃検出信号、(LB)…光ビーム、Lp…再生時の出力パワーレベル、Lr1,Lr2…記録時の出力パワーレベル、(CTV)…制御目標値、(CTVp)…再生制御目標値、(CTVr)…記録制御目標値、Idv…駆動電流、P…出力パワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発生し、当該光を光記録媒体に向けて出射する発光素子と、
前記発光素子の出射光量をフィードバック制御する発光制御部と、
光減衰部を備え、前記光記録媒体のデータを再生するときは前記光の出射経路に前記光減衰部を挿入し、前記光記録媒体へデータを記録するときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させる光減衰駆動部と、
前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出する衝撃検出部と、
を有し、
前記発光制御部は、前記データの記録中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出すると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出時の値から下げる
データ記録再生装置。
【請求項2】
前記データの記録と再生を制御する記録再生制御部を有し、
前記記録再生制御部は、前記データの記録中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出したときは、前記データの記録を中断するとともに、前記発光制御部に対し、前記記録時の前記制御目標値を再生時の前記制御目標値にまで下げるように指示する
請求項1に記載のデータ記録再生装置。
【請求項3】
前記記録再生制御部は、前記光減衰駆動部に対し前記光減衰部を前記退避の状態に駆動するよう指示した後、前記データの記録を再開する
請求項2に記載のデータ記録再生装置。
【請求項4】
前記記録再生制御部は、前記衝撃の検出から前記再開までの間に、前記衝撃検出部が前記衝撃を再度検出したことを知ると、前記光減衰駆動部に対し、前記光減衰部を前記退避の状態に再度駆動するよう指示する
請求項3に記載のデータ記録再生装置。
【請求項5】
前記光記録媒体が、記録層が2層以上の光ディスクである
請求項1に記載のデータ記録再生装置。
【請求項6】
光を発生し、当該光を光ディスクに向けて出射する発光素子と、
前記光ディスクが1層の記録層を有する1層ディスクか、2層以上の記録層を有する多層ディスクかを検出するディスク検出部と、
前記発光素子の出射光量をフィードバック制御する発光制御部と、
光減衰部を備え、前記光ディスクが前記1層ディスクのときは前記光の出射経路に前記光減衰部を挿入し、前記光ディスクが前記多層ディスクのときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させる光減衰駆動部と、
前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出する衝撃検出部と、
を有し、
前記発光制御部は、前記データの記録または再生中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出すると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出時の値から下げる
データ記録再生装置。
【請求項7】
撮影部と、
前記撮影部からの信号から得られたデータを光ディスクに記録する際に、当該光ディスクに回転駆動力を付与する回転駆動部と、
光を発生し前記光ディスクに向けて出射する発光素子と、
前記発光素子の出射光量を、記録時の所定の制御目標値にフィードバック制御する発光制御部と、
光減衰部を備え、前記光ディスクのデータを再生するときは前記発光素子からの前記光の出射経路に前記光減衰部を挿入し、前記光ディスクへデータを記録するときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させる光減衰駆動部と、
前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出する衝撃検出部と、
を有し、
前記発光制御部は、前記データの記録中に前記衝撃検出部が前記衝撃を検出すると、前記制御目標値を衝撃検出前の値から下げる
カメラ装置。
【請求項8】
光を発生し、当該光を光記録媒体に向けて出射し、出射光量をフィードバック制御するステップと、
前記光記録媒体のデータを再生するときは前記光の出射経路に光減衰部を挿入し、前記光記録媒体へデータを記録するときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させるステップと、
前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出するステップと、
前記データの記録中に前記衝撃が検出されると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出前の値から下げるステップと、
を含むデータ記録再生方法。
【請求項9】
光を発生し、当該光を光ディスクに向けて出射し、出射光量をフィードバック制御するステップと、
前記光ディスクが1層の記録層を有する1層ディスクか、2層以上の記録層を有する多層ディスクかを検出するステップと、
前記光ディスクが前記1層ディスクのときは前記光の出射経路に光減衰部を挿入し、前記光ディスクが前記多層ディスクのときは前記光減衰部を前記出射経路から退避させるステップと、
前記光減衰駆動部が前記挿入と前記退避で切り替わるような大きさの衝撃を検出するステップと、
前記データの記録または再生中に前記衝撃が検出されると、前記出射光量の制御目標値を衝撃検出前の値から下げるステップと、
を含むデータ記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−93715(P2009−93715A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261258(P2007−261258)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】