説明

トナー担持体、並びに、該トナー担持体を備える現像装置、及び画像形成装置

【課題】低消費電力であり、長期間安定してトナーのクラウドを安定的に形成し、感光体表面の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を顕像化可能とするトナー担持体、並びに、該トナー担持体を搭載する現像装置、及び、該現像装置を搭載する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】導電性又は絶縁性支持体91と、該支持体91上に形成された絶縁層95と、該絶縁層95上に一定の間隔で並べられた複数の電極91B、該複数の電極91Bを覆う表面層98と、を備え、前記絶縁層95は、非環式オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、または、1種類以上のノルボルネン樹脂により構成されてなり、当該トナー担持体に担持されたトナーを、前記複数の電極91Bが形成する電界によってホッピングさせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー担持体、該トナー担持体を備えた現像装置、及び該現像装置を備えた画像形成装置に関する。また、本発明は詳しくは、トナー担持体の表面上でホッピングさせたトナーを潜像担持体(感光体)の静電潜像に付着させて現像を行なう現像装置、該現像装置に搭載されるトナー担持体、該現像装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置においては、電子写真プロセスによる現像装置が用いられている。このような現像装置のうち、静電潜像の形成された感光体に対して、現像剤(トナー)を搬送するトナー担持体を接触させずに現像を行う非接触現像方式の現像装置が注目されている。非接触現像方式の例としては、パウダーラウンド法・ジャンピング法、電界カーテンを利用した方法等が知られている。
【0003】
前記ジャンピング現像方式は、感光体とトナー担持体とを接触させないで、トナーを該トナー担持体に供給して該感光体とトナー担持体との間で予め帯電させたトナー粒子をジャンピングさせ、このトナー粒子で該感光体上の静電潜像を現像するものである。このジャンピング現像方式は、トナー粒子とトナー担持体との付着力以上の印加電圧が必要となる。
また、前記電界カーテン現像方式は、内部に一定の間隔で並べられた複数の電極を有するトナー担持体の前記電極に交番電界を印加して、該トナー担持体表面に生じる交番不平等電界によって形成される電界カーテンにより、予め帯電させたトナー粒子をホッピングさせ、感光体上の静電潜像にトナー粒子を供給し現像するものである。この電界カーテン現像方式は、トナー担持体表面でトナー粒子がホッピングするため、トナー粒子とトナー担持体表面との付着力が略零になり、現像のためにトナー粒子をトナー担持体表面から剥離する力が不要であるため、低電圧で十分にトナーを感光体側に搬送することが可能なものである。
【0004】
こうした現象を配慮して、特許文献1に開示される前記電界カーテン方式の現像装置は、複数の電極の上に絶縁性材料などからなる表面保護層が被覆された現像剤担持搬送体を用いているので、トナーの電荷が電極にリークせず、トナーの電荷が失われてホッピング不良を引き起こすことがない。
特許文献2に開示される現像装置は、トナー粒子を、予め摩擦帯電させずに、トナー担持体の表面上に供給し、トナー粒子を交番電界によりホッピングさせてトナー粒子を帯電させるために、該トナー担持体の表面(保護層)をトナーの正規帯電極性側への摩擦帯電を促す材料で形成することが開示されている。
しかし、これらの現像装置は、絶縁層上に電位の異なる2種類の電極が設けられるため電極間の間隙が狭い場所が生じると電極間でリークが生じやすい。電極間にリークが生じると2種類の電極間の電位を保てないためトナーをホッピングさせる電界は失われる。
【0005】
これら電極間リークへの耐性を向上させるため、一方の電極を導電性支持体に担わせ、その導電性支持体上に絶縁層を形成することで、絶縁層上の電極と絶縁層膜厚の距離だけ隔離する形態をとることができる。
この形態の場合、トナーホッピングを引き起こす電界を形成するため交番電界もしくは矩形波を電極へ印加したとき、導電性支持体および絶縁層上電極の電荷の間に静電気力が働き電極に多くの電荷を溜め込む。そのため、この形態の場合は電力が多く消費されることから、より消費電力を小さくすることが強く求められていた。
【0006】
また本発明者らは、先に、特定のトナーを用い、かつ電極を被覆する表面層を特定の構造単位を含む重合化合物で形成したトナー担持体を用いる現像装置を提案した(特許文献3、4)。この現像装置によれば、長期間、トナーのクラウドを安定的に形成し、静電潜像を現像化可能である。ただし、このトナー担持体及び現像装置では、低消費電力での運転までは検討されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は低消費電力であり、長期間安定してトナーのクラウドを安定的に形成し、感光体表面の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を顕像化可能とするトナー担持体、該トナー担持体を搭載する現像装置、該現像装置を搭載する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、導電性又は絶縁性支持体と、該支持体上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、該複数の電極を覆う表面層と、を備え、前記絶縁層は、非環式オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、または、1種類以上のノルボルネン樹脂により構成されてなり、当該トナー担持体に担持されたトナーを、前記複数の電極が形成する電界によってホッピングさせることにより、少ない消費電力で現像が行え、加えて、電極間のリーク、トナー担持体上のトナー飛翔、及び異常画像の発生のいずれも抑えられることを見出した。本発明はこうした知見に基づいてなされたものである。
【0009】
しかして、本発明にかかるトナー担持体は、導電性又は絶縁性支持体と、該支持体上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、該複数の電極を覆う表面層と、を備え、前記絶縁層は、非環式オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、または、1種類以上のノルボルネン樹脂により構成されてなり、当該トナー担持体に担持されたトナーを、前記複数の電極が形成する電界によってホッピングさせることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる現像装置は、トナー担持体に担持されたトナーを、当該トナー担持体が有する複数の電極が形成する電界によってホッピングさせるホッピング現像装置において、前記トナー担持体は、上記トナー担持体であることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明にかかる画像形成装置は、感光体と、該感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナー担持体に担持されたトナーを、当該トナー担持体が有する複数の電極が形成する電界によってホッピングさせて前記静電潜像を現像するホッピング現像手段と、を備える画像形成装置であって、前記トナー担持体と前記感光体とは、空間を有して対面する非接触状態に配置されてなり、前記ホッピング現像手段は、上記現像装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トナーホッピングを引き起こす電界を形成するため交番電界もしくは矩形波を電極へ印加したとき、少ない消費電力でトナーホッピングを引き起こすことができる。これにより低消費電力で感光体表面の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を顕像化可能であるトナー担持体、該トナー担持体を搭載する現像装置、及び、該現像装置を搭載する画像形成装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明における二成分現像の現像装置の実施形態を示す図である。
【図3】図1で示す現像装置におけるトナーのクラウド状態を説明する模式図である。
【図4】本発明における上下電極方式トナー担持体例の電界変化の状態と電極の形状の説明図である。
【図5】本発明における櫛歯電極方式トナー担持体例の電界変化の状態と電極の形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るトナー担持体は、導電性又は絶縁性支持体と、該支持体上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、該複数の電極を覆う表面層と、を備え、前記絶縁層は、非環式オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、または、1種類以上のノルボルネン樹脂により構成されてなり、当該トナー担持体に担持されたトナーを、前記複数の電極が形成する電界によってホッピングさせることを特徴とする。
次に、本発明に係るトナー担持体、並びに、該トナー担持体を備えた現像装置、及び、画像形成装置についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の現像装置(及びこれを用いた画像形成装置)の概略構成を示す図である。
図1において、(1)は矢印(A)方向に回転するドラム状の感光体、(2)は感光体(1)の表面を一様に帯電する帯電ローラ、(3)は画像情報に対応するレーザー光等を感光体(1)の表面に照射する露光装置、(4)は感光体(1)の表面に形成された静電潜像にトナーを供給する現像装置である。(5)は感光体(1)の表面に現像装置(3)で形成されたトナー像を転写用紙等の転写材(P)上に転写する転写ローラ、(6)は転写材(P)にトナー像を転写した後に感光体(1)の表面に残存するトナーを感光体(1)の表面から除去するクリーニング装置である。(7)は、転写材(P)上に転写された未定着トナー像を加熱、加圧して転写材(P)上に定着させる定着装置である。
【0016】
この画像形成装置によって転写材(P)上にトナー画像を形成する方法について説明する。
矢印(A)方向に回転する感光体(1)の表面を、帯電ローラ(2)によって所定の電圧を印加して一様に帯電させる。このように一様に帯電された感光体(1)の表面に所望の画像情報に対応するレーザー光を露光装置(3)から照射して感光体(1)の表面に静電潜像を形成する。続いて、このようにして形成された静電潜像に対して、現像装置(4)からトナーを供給して静電的に付着させて静電潜像をトナー像化(顕像化)させる。このようにして形成されたトナー像は、転写ローラ(5)によって感光体(1)の表面と転写材(P)を圧接させて矢印(B)方向に転写材(P)を搬送させながらバイアス電圧を印加して感光体(1)の表面から転写材(P)の表面に転写される。その後、転写材(P)上に転写されたトナー像は、定着装置(7)の加熱ローラ(7a)及び加圧ローラ(7b)によって加熱加圧されて転写材(P)上に定着される。このようにして転写材P上にトナー像を転写した感光体(1)は、感光体(1)の表面に残存するトナーをクリーニング装置(6)で除去して感光体(1)の表面をクリーニングし、再び、帯電ローラ(2)によって一様に帯電される。以後、前述のように、露光装置(3)によって静電潜像が形成され、現像装置(4)で静電潜像がトナー像化され、転写ローラ(5)で転写材(P)上にトナー像が転写され、クリーニング装置(6)で感光体(1)の表面がクリーニングされる動作が繰り返される。
【0017】
前記のように、本発明においては、感光体(1)の表面に形成された静電潜像をトナーでトナー像化する現像装置(4)に特徴を有する。
ここで、一成分現像剤及び二成分現像剤を用いる場合の帯電手段について述べればつぎのとおりである。
【0018】
一成分現像剤を用いる場合においては、図1に示すように、本発明の一実施形態である現像装置(4)は、トナー(T)を収納する容器(8)内に、トナーを感光体(1)に容器(8)の開口部(8a)から供給するトナー担持体である現像ローラ(9)が現像ローラ回転軸(9d)を中心に回転可能に取り付けられ、図示しない駆動手段によって矢印(C)方向に回転されるようになっている。そして、循環パドル(10)によってトナー(T)を攪拌しながら循環させてトナー(T)を帯電させると共にトナー(T)を現像ローラ(9)の表面に供給する。なお、図1の符号(12)は、補給トナーを供給するトナー供給口である。
【0019】
このようにしてトナー(T)が供給されたトナー担持体(9)は、その表面にトナー(T)を静電力によって保持しながら汲み上げ、トナー担持体(9)と所定間隔を有して容器(8)に取り付けられたブレード状のトナー規制部材(11)によって汲み上げるトナー量が規制されている。トナー担持体(9)は、後述するように、開口部(8a)で交番電界が印加されてトナー(T)のクラウドが形成される。その結果、このクラウドからトナー(T)が静電気的に感光体(1)の表面の静電潜像に供給されてトナー像が形成されるようになっている。
【0020】
二成分現像剤を用いる場合においては、図2に示すように、本発明の別の実施形態である二成分現像器(56)により二成分現像剤の穂がトナー担持体である現像ローラ(9)に当接されている。具体的には、例えば粒径50[μm]の磁性キャリア粉と粒径約6[μm]のトナーを重量比で7〜8[wt%]混合させた二成分現像剤を、二成分現像器(56)の永久磁石を内包するマグネットスリーブ(57)によって現像ローラ(9)まで搬送し、そこでトナーの一部をマグネットスリーブ(57)と現像ローラ(9)との間に印加される直流バイアス電位によって現像ローラ(9)の表面に供給する。なお、図2の符号(61)及び(62)は現像剤撹拌装置であり、容器(60)内の現像剤(63)を撹拌し、磁性キャリアとトナーとを摩擦させて帯電させるものである。また、現像ローラ(9)には交番電圧(59)が印加されている。
【0021】
トナー担持体(9)について説明する。
トナー担持体(9)の電極の構成は、支持体が導電性支持体であるときは上下電極印加方式が採用されるものであり、支持体が絶縁性支持体であるときは櫛歯電極印加方式が採用されるものである。
【0022】
〔上下電極印加方式〕
図4に示すように、トナー担持体(9)は、下層から導電性支持体(91A)、絶縁層(95)、電極(91Bb)を有する電極パターン、表面層(98)の順に積層構造となっている。
より詳しくは、トナー担持体(9)は、図4(a)、(b)(なお、図4(a)は図4(b)の上面図におけるA−A’における断面図である。)に示すように、第1の電極と第2の電極とを有し、一方の電極(例えば「第1の電極」)の機能を導電性支持体(91A)に担わせ、導電性支持体(91A)をA相、絶縁層(95)上に形成された複数の線状の電極(例えば「第2の電極」:91Bb)を有する電極パターン(91B)をB相とし、導電性支持体(91A)と電極(91Bb)との間の電位差によりトナー粒子をホッピングさせトナークラウドを形成するものである。この例では、導電性支持体(91A)は接地されている。
【0023】
なお、電極パターン(91B)の形成は、絶縁層(95)が形成され円筒状に成形された絶縁層形成済みの支持体(91A)の周面に蒸着での銅薄膜が形成されたものから、フォトレジスト法によって所望の形状に加工することにより可能である。形成方法について特に限定はなく、フォトレジスト法を用いたパターニング以外に、例えばインクジェット装置等を用いた描画により形成しても構わない。
導電性支持体(91A)の大きさについて特に限定はなく、発明の実施者が適宜選択したものを用いればよい。また、電極(91Bb)の幅(d)、及び電極(91Bb)間の間隔(D)についても特に限定はなく、発明の実施者が適宜定めればよいが、後述する櫛歯電極に比し間隔(D)を広くすることができるため、短絡することを防止でき好ましい。
【0024】
もっとも、トナークラウドの形成は、電極パターン(91Bb)の幅(d)、間隔(D)、及び交番電圧等によって影響される。このため、良好なクラウドを形成するには、電極パターン(91Bb)の電極の幅(d)、間隔(D)をそれぞれ40μm〜250μmの幅、85μm〜500μmの間隔とすれば良い。電極パターン(91Bb)の電極の厚みは0.1μm〜20μmくらいが適当である。また、交番電圧としては、周波数100Hz〜5KHz、100V〜3KVが好適である。
電極(91Bb)を構成する材料は、高い導電性を有する材料(例えば銀粒子、導電性カーボンが分散されたペースト)であれば使用することができるが、ペースト状であると電極パターンを描画することによりこれを達成でき好ましい。
【0025】
なお、本実施形態におけるトナー担持体(9)においては、交番電圧電源として単相の交番電圧を使用するようにしているが、周期の異なる複数相の交番電圧電源も使用することが可能である。図3及び図4に示すように、トナー担持体に設けられた2つの電極(導電性支持体(91A)、複数の線状の電極(91Bb))に周期的に正負の方向が入れ替わるように電圧を印加することにより、トナー担持体表面の電界が周期的に逆方向へと入れ替わる、時間的に変化する電界により、トナー粒子が、感光体(1)の表面とトナー担持体(9)の表面層(98)との間でホッピングしてトナーのクラウドを形成し、このクラウドのトナー(T)が感光体(1)の表面に形成された静電潜像に向かって静電気的に吸引、付着してトナー像を形成できる。
【0026】
(導電性支持体)
導電性支持体(91A)としては、例えばAl、Ni、Fe、Cu、Auなどの金属、もしくはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn、SnO等の導電材料の薄膜を形成したもの、樹脂中にカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム,銅,ニッケル等の金属粉、導電性ガラス粉などを均一に分散させ、樹脂に導電性を付与した樹脂基体、導電処理をした紙等から形成された円筒状の支持体が使用できる。
【0027】
(絶縁層)
導電性支持体(91A)と絶縁層上の電極(91Bb)に挟まれる絶縁層(95)について記述する。
導電性支持体(91A)と電極(91Bb)の間に交番電圧を印加するとその消費電力は絶縁層(95)の誘電率に比例する。そのため絶縁層(95)の誘電率は小さいことが好ましい。また、絶縁層(95)には電極(91Bb)へ印加した交番電圧が導電性支持体(91A)へリークしない絶縁性、および絶縁層(95)上に電極(91Bb)、表面層(98)を形成できることが求められる。そして、絶縁層(95)上に電極(91Bb)、表面層(98)を形成するためには、電極(91Bb)及び表面層(98)の形成時に用いる有機溶剤等により絶縁層(95)が侵され破壊されないような有機溶剤への耐性が求められる。
【0028】
本発明者らは鋭意検討の末、絶縁層(95)が少なくとも1種類以上のノルボルネン樹脂、または、非環式オレフィンと環状オレフィンの共重合体により構成される少なくとも1種類以上の樹脂により構成されればこれらの必要機能を満たしつつ低消費電力であるトナー担持体を提供可能なことを見出した。
一般的にポリエチレン、ポリプロピレンは誘電率が低いプラスティックとして知られるが、これらは有機溶剤に対して不溶もしくは難溶であるため基材表面にミクロンレベルの一様で平滑な薄膜を形成するのはいちじるしく困難である。ゆえにミクロンレベルの一様で平滑な薄膜を形成できるウェット薄膜形成プロセスが望まれるが、有機溶剤可溶である材料は一般的に有機溶剤可溶となる官能基等の構造を備えるためその構造が起因で誘電率が高くなってしまう。
このように絶縁層(95)に用いる樹脂は相反する機能が求められるが、本発明者らは鋭意努力の結果、絶縁層(95)を前記ノルボルネン樹脂、または、非環式オレフィンと環状オレフィンの共重合体により構成される少なくとも1種類以上の樹脂により構成すれば、少数の有機溶剤に可溶であるため導電性支持体(91A)上へ慣用される塗工法によってミクロンレベルの一様で平滑な薄膜を形成可能である。また、ノルボルネン樹脂、または、非環式オレフィンと環状オレフィンの共重合体はポリエチレンと同様にその構造が電荷極性の偏りが少ないため、誘電率が小さい絶縁層(95)を形成可能となり、かつ、こうした現象・効果により消費電力を小さくできることを見出した。
【0029】
ノルボルネン樹脂としては日本ゼオン(株)からシクロオレフィンポリマーが上市されており、容易に入手できる。具体的には、日本ゼオン(株)製のZEONEX480、ZEONEX480R、ZEONEX48R、ZEONEX330R、ZEONE XRS420、ZEONE F52R、ZEONOR1020R、ZEONOR1060Rなどの1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる非環式オレフィンと環状オレフィンの共重合体としては、非環式オレフィンが炭素数2〜12、好ましくは2〜6の低級アルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等の非環式オレフィンであることが好ましく、環状オレフィンがノルボルネン、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキセン等の少なくとも1つの二重結合を有する炭素数3〜17、好ましくは5〜12の環状もしくは多環式オレフィンであることが好ましい。環状オレフィンはノルボルネンであることが特に好ましい。
【0031】
非環式オレフィンと環状オレフィンの共重合体としては、Topas Advanced Polymers GmbH社製で日本国内ではポリプラスティック(株)から上市されている環状オレフィンコポリマー(COC)であるTOPAS 5013LS−01、TOPAS 5013L−10、TOPAS6013S−04、TOPAS6015S−04、TOPAS 9506F−04、TOPAS 8007F−04、TOPAS 8007F−400、TOPAS 6013F−04などをこれらの1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
絶縁層(95)の形成には、適当な溶媒を用いて慣用される塗工法によって形成することができる。溶媒としては、シクロヘキサン、シクロペンタン、テトラリン、リモネン(光学異性体含む)、テトラヒドロフランなどを用いることができる。とくに、溶媒に少なくともリモネンを用いると、金属支持体に対する接着性が確保しやすいので好ましい。そのほか人体への有害性、環境負荷から好ましくないが、トルエン等の芳香族有機溶剤、四塩化炭素等の塩素系有機溶剤も用いることができる。塗工法としては浸漬塗工法、スプレー塗工法等の慣用される塗工法を用いることができる。
【0033】
絶縁層(95)の膜厚は材料にもよるが、1μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましい。1μm未満では導電性支持体(91A)とトナー(T)間に電荷リークが生じないよう絶縁するのが困難であるため1μm以上とするのが好ましい。100μmより厚くては内部電極からの電界が弱くなり、トナー(T)が表面層(98)から遊離してホッピング可能である静電気力を生じることが困難である。
【0034】
(表面層)
表面層(98)は電極(91Bb)を被覆し、トナー等へのリーク防止、およびトナーとの摩擦帯電によりトナーを適度に帯電させる機能が求められることから、その膜厚は、3μm以上20μm以下であることが好ましい。表面層(9c)をこのような膜厚とすることでホッピング電界強度の低下によるトナークラウドの不安定化も生じにくくなる。
表面層(98)を構成する材料としては、前記の求められる機能が満たせるならばかまわないが、とくにビスフェノール系のポリカーボネートが摩擦帯電能とトナーホッピングとを両立させ、長期間トナーのクラウドを安定的に形成可能であり、耐摩耗性をも向上させることができる。
【0035】
分子量は30000〜60000であることが溶媒への溶解時の扱いやすさ等の点から好ましい。分子量が小さ過ぎると、塗工液を調製する際には作業し易いけれども、作製済みの感光体の塗工膜中でポリカーボネートの速やかな結晶化や分子鎖再配位による体積の著しい減少を来たし、所望の耐久強度が得難くなることがある。
【0036】
表面層(98)にはポリカーボネート樹脂に添加剤としてレベリング剤が含有されていても良い。レベリング剤が含有される場合、その含有量は表面層(98)の0.001〜1重量%が適当である。
レベリング剤としては、公知の材料を用いることができるが、微量で高い平滑性を付与することができるシリコーンオイル系のレベリング剤がとくに好ましい。シリコーンオイルの例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル等が挙げられる。
表面層(98)にはそのほか、可塑剤、酸化防止剤、などの添加剤を適量添加することもできる。
【0037】
表面層(98)の形成には、テトラヒドロフラン等のポリカーボネート樹脂を可溶な1種類以上の溶媒を用いて、浸漬塗工法、スプレー塗工法等の慣用される塗工法によって形成することができる。
表面層(98)の膜厚はトナー担持体の表面にトナーの電界カーテンを形成でき、また、電極電極(91Bb)のトナー担持体表面への露出を防ぐことができればいずれでもかまわないが、0.5μm以上、50μm以下であることが好ましい。0.5μmより薄いと電極(91Bb)とトナー間に電荷リークが生じないよう絶縁するのが困難である。一方、50μmより厚いと内部電極からの電界が弱くなる為、トナーが表面層(98)から遊離してホッピング可能である静電気力を生じることが困難である。さらに、表面層(98)の膜厚が5〜50μmであると、トナーホッピングはより安定的に行われるようになる。
【0038】
以上のように本発明は、上記のように、図4に示す上下電極印加方式のトナー担持体に適用すると大きな効果を得るものであるが、図5に示す櫛歯電極印加方式のトナー担持体に適用することも効果は小さいが可能である。
【0039】
〔櫛歯電極印加方式〕
トナー担持体である現像ローラ(9)は、図5(a)、(b)(なお、図5(a)は図5(b)の上面図におけるA−A’における断面図である。)に示すように、線状の複数の電極(90Aa)を有する第1の電極パターン(90A)と線状の複数電極(90Bb)を有する第2の電極パターン(90B)とが、電極(90Aa)と電極(90Bb)とが交互に現像ローラの軸方向に平行に形成されている。
本実施形態における現像ローラ(9)においては、交番電圧電源として単相の交番電圧を使用するようにしているが、周期の異なる複数相の交番電圧電源も使用することが可能である。この場合、電極パターン(90)として前記周期に対応させて端部の長さが異なる複数の電極(90)を隣接して形成し、同一長さの端部同士で接続する複数の端子を取り付け、各端子から周期の異なる相の交番電圧を印加するようにしても良い。このような周期の異なる複数相の交番電圧電源を使用する場合には、進行波状のクラウドを形成することが可能となる。
【0040】
電極パターン(90A)、(90B)の形成は、回転軸を有する円筒状に成形された絶縁性支持体(93)の周面に蒸着での銅薄膜が形成されたものからフォトレジスト法によって所望の形状に加工することにより可能である。フォトレジスト法を用いたパターニング以外に、例えばインクジェット装置等を用いた描画により形成しても構わない。また、絶縁性支持体(93)の大きさについて特に限定はなく、発明の実施者が適宜選択したものを用いればよい。また、電極(90Aa)と電極(90Ba)と電極(90Bb)各々の幅(d)、及び電極(90Aa)と電極(90Bb)との間の間隔(D)についても特に限定はなく、発明の実施者が適宜定めればよい。
【0041】
ただし、この櫛歯電極印加方式のトナー担持体においても、トナークラウドの形成は、前記幅(d)、前記間隔(D)、及び交番電圧等によって影響されるため、良好なクラウドを形成するには、電極パターン(91Bb)の電極の幅(d)、間隔(D)をそれぞれ40μm〜250μmの幅、85μm〜500μmの間隔とするのが好ましい。電極パターン(91Bb)の電極の厚みは0.1μm〜20μmくらいが適当である。また、交番電圧としては、周波数100Hz〜5KHz、100V〜3KVが好適である。
電極(90Aa)及び電極(90Bb)を構成する材料は、上下電極印加方式のトナー担持体の説明でしたのと同じである。
【0042】
(絶縁性支持体)
絶縁性支持体(93)としては、ポリイミド、ポリカーボネート、ナイロン、フッ素系樹脂、ポリアセタール、フェノール、ポリスチレン等の合成樹脂から形成された円筒状の絶縁性支持体、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタン、ステンレスなどを切削、研摩などの金属加工をした円筒状の金属の導電性支持体(9a)に前記合成樹脂を被覆したものを使用することができる。
【0043】
(絶縁層、表面層)
絶縁性支持体(93)には、絶縁層(95)、電極(90Aa)及び電極(90Bb)、表面層(98)が順次積層されているが、絶縁層(95)及び表面層(98)については上下電極印加方式のトナー担持体の説明でしたのと同じである。
【0044】
本発明にて用いられるトナーとしては、粉砕法、もしくは重合法にて形成された既知のトナーを用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。
【0046】
〔実施例1〕
(絶縁層用塗工液の調製)
シクロヘキサン160重量部、d−リモネン40重量部の混合液に、シクロオレフィンポリマー(ZEONEX−480R、日本ゼオン社製)10重量部を溶解して、絶縁層用塗工液を調製した。
(表面層用塗工液の調製)
テトラヒドロフラン70重量部、シクロヘキサノン30重量部の混合液に、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(構造単位M−15からなる分子量50000の重合化合物:パンライト TS−2050、帝人化成社製)3重量部、シリコーンオイル(KF−50、信越化学工業社製)0.002重量部を溶解して、表面層用塗工液を調製した。
【0047】
(トナー担持体の作製)
直径16mm、長さ230mmの円柱状のAl製導電性支持体上に、前記の絶縁層用塗工液にてスプレー塗工を行い膜厚20μmの絶縁層を形成した。これを絶縁層形成済みの支持体(91A)とする。絶縁層形成済みの支持体(91A)上にそれぞれ蒸着によって導電性金属箔膜である0.8μm厚みの銅箔膜を形成した。さらに、これらの銅箔膜上に5μm厚みのレジスト膜を塗布した。銅膜及びレジスト膜に覆われた絶縁層形成済みの支持体(91A)に幅d=100μm、長さL=200mm、間隔D=200μmで離間させた格子状のパターンをレーザー描画機で露光して、NaCO水溶液中で現像した後、FeCl水溶液に浸漬させてエッチングを行い、前記電極パターンと同一形状の電極パターン(91B)を有する電極(91Bb)を形成した。
次に、このようにして所定の電極パターン(91B)を有する電極を形成した絶縁層形成済みの支持体(91A)の電極パターン(91B)の片側端部をマスキングし、電極を覆う最大膜厚10μmの表面層(98)を前記の表面層形成塗工液にてスプレー塗工を行うことにより形成した。表面層(98)は絶縁層形成済みの支持体(91A)の端部で電極が露出した状態で塗布した。
このようにして作製した図4に示すトナー担持体(9)を現像装置(4)に組み込んだ。
【0048】
〔実施例2〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロペンタン160重量部、d−リモネン40重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1060R、日本ゼオン社製)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0049】
〔実施例3〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロペンタン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1060R、日本ゼオン社製)30重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、及び、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工法に代えて浸漬塗工法を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0050】
〔実施例4〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロヘキサン160重量部、d−リモネン40重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1060R、日本ゼオン社製)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0051】
〔実施例5〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、テトラヒドロフラン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONEX−330R、日本ゼオン社製)30重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、及び、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工に代えて浸漬塗工を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0052】
〔実施例11〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロヘキサン160重量部、d−リモネン40重量部にCOC樹脂(TOPAS 6013S−04)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0053】
〔実施例12〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロペンタン160重量部、d−リモネン40重量部にCOC樹脂(TOPAS 6015S−04)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0054】
〔実施例13〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロペンタン160重量部、d−リモネン40重量部にCOC樹脂(TOPAS 5013L−10)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0055】
〔実施例14〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロヘキサン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(TOPAS 6013S−04)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工法に代えて、浸漬塗工法を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0056】
〔実施例15〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロヘキサン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(TOPAS 6015S−04)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工法に代えて、浸漬塗工法を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0057】
〔実施例16〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、シクロヘキサン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(TOPAS 5013L−10)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工法に代えて、浸漬塗工法を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0058】
〔比較例1〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50、大日本インキ化学工業社製)110重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)60重量部をメチルエチルケトン110重量部に溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、及び、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工に代えて浸漬塗工を用いた他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0059】
〔比較例2〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて実施例1の表面層用塗工液を用い、実施例1の表面層形成方法と同様の形成方法にて絶縁層を形成した他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0060】
〔比較例3〕
実施例1の絶縁層用塗工液に代えて、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックスB BX−1、積水化学工業社製)30重量部をメチルエチルケトン70重量部に溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いる他は、実施例1と同様にして図4に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0061】
〔評価〕
(電極への電圧印加条件)
現像装置(4)の開口部に取り付けた端子と導電性支持体に−400Vと0Vのそれぞれをピークに持つ各瞬間における平均電位が−200Vの交流バイアスを5KHzの周波数で交流電源から印加した。
トナーとしてリコー社製の画像形成装置(imagio Neo C320)に搭載されるBK色トナー(ワックス非含有粉砕トナー)を現像装置(4)に供給して使用した。
これらの現像装置およびトナーをimagio Neo C320の黒ステーションに組み込んで画像出力を行い、現像装置の消費電力、導電性支持体と電極間のリークの有無、トナー担持体上のトナー飛翔の状態、異常画像の発生の有無、を比較した。
【0062】
実施例1〜5及び実施例11〜16、並びに比較例1〜3の測定結果及び観察結果を表1に示す。表1にみられるように、実施例1〜5及び実施例11〜16は比較例1に比較して消費電力が少ないことが分かる。比較例2、3については、電極への電圧印加において導電性支持体と電極の間がリークして導通する現象が見られた。導電性支持体と電極の間に電位差が生じないため電界は発生せず、トナー担持体表面でトナーのホッピングは生じなかった。画像出力も行えなかった。
【0063】
【表1】

【0064】
〔実施例6〕
(絶縁性支持体用塗工液の調製)
2−ブタノン60重量部に、アルキッド樹脂30重量部及びメラミン樹脂20重量部を溶解して、絶縁性支持体用塗工液を調製した。
【0065】
(トナー担持体の作製)
直径16mm、長さ230mmの円柱状のアルミニウム管を上記絶縁性支持体形成用塗布液に浸漬させて20μm厚の絶縁膜で被覆することにより絶縁性支持体(9a)を作製した。この絶縁性支持体(9a)上に実施例1の絶縁層用塗工液をスプレー塗工して膜厚20μmの絶縁層(95)を形成した。次いで、絶縁層(95)上に蒸着によって導電性金属箔膜である0.8μm厚みの銅箔膜を形成した。さらに、銅箔膜上に5μm厚みのレジスト膜を塗布した。銅箔膜及びレジスト膜に覆われた絶縁性支持体(9a)に幅(d)=100μm、長さ(L)=200mmの線状の複数の電極(90A)及び(90B)を間隔(D)=200μmで離間させた電極パターン(90)をレーザー描画機で露光して、NaCO水溶液中で現像した後、FeCl水溶液に浸漬させてエッチングを行い、電極パターン(90)を有する電極(90A)及び(90B)を形成した。
【0066】
次に、このようにして所定の電極パターン90を有する電極を形成した絶縁性支持体(9a)上に設けられた電極(90A)、(90B)上に、実施例1の表面層形成用塗工液を絶縁性支持体(9a)の両端で電極軸及びが露出するようにして塗布し、これらの電極(90A)、(90B)を覆う表面層(98)を10μm厚で形成した。このようにして作製した図5に示す現像ローラ(9)を現像装置(4)に組み込んだ。
【0067】
〔実施例7〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて、シクロペンタン160重量部、d−リモネン40重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1060R、日本ゼオン社製)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0068】
〔実施例8〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて、シクロペンタン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1060R、日本ゼオン社製)30重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、及び、実施例6の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工法に代えて浸漬塗工法を用いた他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0069】
〔実施例9〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて、シクロヘキサン160重量部、d−リモネン40重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONOR−1060R、日本ゼオン社製)10重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いた他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0070】
〔実施例10〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて、テトラヒドロフラン190重量部、d−リモネン10重量部にシクロオレフィンポリマー(ZEONEX−330R、日本ゼオン社製)30重量部を溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、及び、実施例6の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工に代えて浸漬塗工を用いた他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0071】
〔比較例4〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて、アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50、大日本インキ化学工業社製)110重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)60重量部をメチルエチルケトン110重量部に溶解して調製した絶縁層用塗工液を用い、及び、実施例1の絶縁層塗工液塗工法のスプレー塗工に代えて浸漬塗工を用いた他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0072】
〔比較例5〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて実施例1の表面層用塗工液を用い、実施例1の表面層形成方法と同様の形成方法にて絶縁層を形成した他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0073】
〔比較例6〕
実施例6の絶縁層用塗工液に代えて、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックスB BX−1、積水化学工業社製)30重量部をメチルエチルケトン70重量部に溶解して調製した絶縁層用塗工液を用いる他は、実施例6と同様にして図5に示すトナー担持体(9)を作製し、これを現像装置(4)に組み込んだ。
【0074】
〔評価〕
現像装置(4)の開口部(8a)に取り付けた2つの端子の一方に−400V、他方に0Vのそれぞれをピークに持つことによって常時平均電位が−200Vとなる交流バイアスを5KHzの周波数で交流電源から印加した。この場合、奇数番目電極群(90A)と偶数番目電極群(90B)の交流バイアスは逆位相である。
トナー及び現像装置は実施例1と同じにして画像出力を行い、現像装置の消費電力、導電性支持体と電極間のリークの有無、トナー担持体上のトナー飛翔の状態、異常画像の発生の有無、を比較した。
【0075】
実施例6〜10及び比較例4〜6の測定結果及び観察結果を表2に示す。表2にみられるように、実施例6〜10は比較例4に比較して消費電力が少ないことが分かる。比較例5.6については、電極への電圧印加において導電性支持体と電極の間がリークして導通する現象が見られた。導電性支持体と電極の間に電位差が生じないため電界は発生せず、トナー担持体表面でトナーのホッピングは生じなかった。画像出力も行えなかった。
【0076】
【表2】

【符号の説明】
【0077】
1 感光体
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
7 定着装置
7a 加熱ローラ
7b 加圧ローラ
8 容器
8a 開口部
9 トナー担持体(現像ローラ)
10 循環パドル
11 トナー規制部材
14 交番電流
A 回転方向
B 搬送方向
C 回転方向
D 間隔
T トナー
d 幅
56 二成分現像器
57 マグネットスリーブ
59 交番電圧
60 容器
61 現像剤攪拌装置
62 現像剤攪拌装置
63 現像剤
90A 電極パターン
90Aa 電極
90B 電極パターン
90Bb 電極
91A 導電性支持体
91B 電極
91Bb 電極
93 支持体
95 絶縁層
98 表面層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開平3−21967号公報
【特許文献2】特開2007−133388号公報
【特許文献3】特開2010−217608号公報
【特許文献4】特開2010−065363号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性又は絶縁性支持体と、該支持体上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に一定の間隔で並べられた複数の電極と、該複数の電極を覆う表面層と、を備え、
前記絶縁層は、非環式オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、または、1種類以上のノルボルネン樹脂により構成されてなり、
当該トナー担持体に担持されたトナーを、前記複数の電極が形成する電界によってホッピングさせることを特徴とするトナー担持体。
【請求項2】
前記支持体は、導電性支持体であり、
該導電性支持体が一方の電極を構成し、前記複数の電極が他方の電極を構成し、当該一方の電極と他方の電極との間に電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載のトナー担持体。
【請求項3】
前記支持体は、絶縁性支持体であり、
前記複数の電極は、第1の電極パターンの電極と、第2の電極パターンの電極と、が交互かつ平行に形成されてなり、当該第1の電極パターンの電極と第2の電極パターンの電極との間に電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載のトナー担持体。
【請求項4】
前記第1の電極パターンの電極と前記第2の電極パターンの電極とは、櫛歯状に配置されたことを特徴とする請求項3に記載のトナー担持体。
【請求項5】
前記複数の電極は、トナーの搬送方向に配列され、電界を発生させるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー担持体。
【請求項6】
前記ノルボルネン樹脂は、シクロオレフィンポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナー担持体。
【請求項7】
前記表面層は、ポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトナー担持体。
【請求項8】
前記絶縁層は、溶媒としてリモネンを含む絶縁層形成用塗工液により形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトナー担持体。
【請求項9】
トナー担持体に担持されたトナーを、当該トナー担持体が有する複数の電極が形成する電界によってホッピングさせるホッピング現像装置において、
前記トナー担持体は、請求項1〜8のいずれかに記載のトナー担持体であり、
前記トナー担持体は、感光体表面の静電潜像を前記トナーにより現像し、
前記トナー担持体と前記感光体とは、空間を有して対面する非接触状態に配置されることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
感光体と、
該感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナー担持体に担持されたトナーを、当該トナー担持体が有する複数の電極が形成する電界によってホッピングさせて前記静電潜像を現像するホッピング現像手段と、を備える画像形成装置であって、
前記トナー担持体と前記感光体とは、空間を有して対面する非接触状態に配置されてなり、
前記ホッピング現像手段は、請求項9に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145907(P2012−145907A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141760(P2011−141760)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】