トラクタの作業機ローリング制御装置
【課題】 トラクタでプラウ作業を行う際、局所的に軟弱な個所があると、負荷が変化し、同作業機の傾きが頻繁に変更されて、作業機の左右傾きを再設定する必要が生じる。また前記軟弱な場所を通過した後には、元の傾き値に再設定する必要が生じ、操作が煩わしいものであった。
【解決手段】トラクタには、作業機の左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、作業機の昇降位置を検出するリフトアーム角センサを設ける。対本機ローリング制御を実行中、手動設定器S8,S9によって作業機が作業位置で左右傾きが変更された場合は、この変更後の左右ローリング位置を新たな保持位置として前記対本機ローリング制御モードを作動する。その後、同作業機が非作業位置へ上昇した後には、前記変更前の記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を作動させる。
【解決手段】トラクタには、作業機の左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、作業機の昇降位置を検出するリフトアーム角センサを設ける。対本機ローリング制御を実行中、手動設定器S8,S9によって作業機が作業位置で左右傾きが変更された場合は、この変更後の左右ローリング位置を新たな保持位置として前記対本機ローリング制御モードを作動する。その後、同作業機が非作業位置へ上昇した後には、前記変更前の記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を作動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタの作業機ローリング制御装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用トラクタには、作業機を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサの値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータの長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するものが知られている。
【特許文献1】特開平08-056409号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のように、トラクタの車体に対して作業機の左右傾きを一定角度に保つ対本機ローリング制御は、例えばトラクタの左右片輪を圃場の溝に落とした状態で走行するプラウ作業等に用いられる。
【0004】
しかしながら、前記対本機ローリング制御装置を作動させてプラウ作業を行う際、局所的に硬度が異なる個所、特に軟弱な個所があると、前記作業機に係る負荷が変化し、プラウ作業機の傾きが頻繁に変更されて、オペレータは作業機に安定した負荷がかかる様、この左右傾きを再設定する必要が生じる。また前記局所的に硬度が異なる個所を通過した後には、更に元の傾き値に再設定する必要が生じ、操作が煩わしいもので有った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を鑑みて、請求項1ではトラクタの作業機ローリング制御装置を以下のように構成した。
【0006】
即ち、作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、同作業機(P)が非作業位置へ上昇される迄、前記作業機ローリング用アクチュエータ(18)の駆動を中断する制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置とした。
(請求項1の作用)
以上のように構成した請求項1の発明では、手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)の左右ローリング姿勢が作業位置と想定される位置で変更された場合は、作業機(P)は変更操作に応じた左右傾き角に変更されて、このローリング制御モードは中断される。そして同作業機(P)を非作業位置へ上昇させ、再度作業位置へ下降させたときには、前記作業機(P)の姿勢は記憶装置に記憶されていた変更前の左右傾き角に保持される。
【0007】
また請求項2の発明では、作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、この変更後の左右ローリング位置を保持位置として前記対本機ローリング制御モードを作動し、同作業機(P)が非作業位置へ上昇した後には、前記変更前の記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を復帰させる制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置とした。
(請求項2の作用)
以上のように構成した請求項2の発明では、手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)の左右ローリング姿勢が作業位置と想定される位置で変更された場合は、この変更後の左右傾き角が非作業位置へ上昇されるまで保持される。そして、同作業機(P)が非作業位置へ上昇された後、再度作業位置へ下降させたときには、記憶装置に記憶されていた変更前の左右傾き角に保持される。
【発明の効果】
【0008】
これにより、請求項1の発明では、圃場で局所的に硬度が異なる個所が有り、一時的に作業機(P)の左右傾き角を変更する場合があっても、作業機(P)を上昇させるまでは、ローリング用アクチュエータ(18)の駆動が中断され、その場を通過し旋回後に再度作業機(P)を着地させた時には前記変更前の左右傾き角が保持されるので、前記のように、オペレータの再設定操作が不要となり、煩わしさを解消することができる。
【0009】
また請求項2の発明では、作業機(P)の左右傾き角を変更した後も、この変更後の姿勢が保持されるので、前記請求項1の効果に加え、作業機(P)を上昇する前も作業深さが大きく変わること無く、均一な作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明を作業車両となる農業用トラクタ(以下、トラクタT)に搭載した場合について説明する。
【0011】
最初にトラクタTの構成について説明する。
【0012】
トラクタTは、図1に示すように、ボンネット11内部にディーゼルエンジンEを備え、このエンジンEの回転動力をクラッチハウジング12及びミッションケース13内の各種伝動装置を介して走行輪となる左右後輪14R,14R、若しくは前後輪14F,14Rへ伝達して走行する構成となっている。
【0013】
またトラクタTの車体後部には、作業機昇降用油圧シリンダ15を備え、同シリンダ15のピストン伸縮操作によりリフトアーム16を上下駆動し、三点リンク機構17を介して作業機Pを昇降する構成となっている。尚、図1例ではプラウ作業機を連結した構成となっている。
【0014】
また前記三点リンク機構17の左右一側のロアリンク17bとリフトアーム16は、作業機ローリング用油圧シリンダ(作業機ローリング用アクチュエータ)18にて接続され、同シリンダ18のピストンを伸縮操作により、作業機Pの左右一側を上げ下げして作業機Pの左右ローリング姿勢を調整する構成となっている(図2参照)。また前記作業機ローリング用油圧シリンダ18の長さは、ワイヤーを介してミッションケース13上部のストロークセンサ18sにて検出する構成となっている。
【0015】
またトラクタTの操縦席25の下方には、同トラクタTの制御手段10となる各種コントローラ10c,10dやトラクタTの左右傾斜角を検出する傾斜センサ26を備える構成となっている。
【0016】
またトラクタTの操縦席25の前方には、前記前輪14Fを左右操舵するステアリングハンドル27を設け、この下方に車両の前後進を切り替える前後進切替レバー28、及びエンジンEの回転数を調節するアクセルレバー2、更には車体後部の作業機Pをワンタッチ操作で非作業位置へ上昇、若しくは作業位置へ一気に昇降するワンタッチ式作業機昇降レバー29を設けている。また前記アクセルレバー2の回動基部には、摩擦材を有するレバー保持機構を設けると共に、ワイヤーを介して前記エンジン側部のガバナ機構(燃料噴射量調整機構)Gに接続する構成となっている。これにより、エンジンEのスロットル位置を同レバー2の操作位置を変更し任意の位置で保持することができる。
【0017】
また、前記ステアリングハンドル27下方には、クラッチペダル5や左右ブレーキペダル30,30、そしてアクセルペダル3を設け、前記アクセルペダル3の回動基部には、エンジン回転数を減速側へ戻すよう付勢したスプリングを設けると共に、この踏込操作を検出するアクセルペダル位置センサ3sを設ける構成となっている。また前記アクセルペダル3の回動基部は、前記アクセルレバー2と同様に、ワイヤーを介して前記エンジンEのガバナ機構Gへ接続する構成となっている。
【0018】
これにより、前記アクセルレバー2により保持されたスロットル設定位置を下限として、アクセルペダル3の踏み込み時にだけエンジン回転数を上昇させ、踏み込み解除時には、前記アクセルレバー2で設定された元の位置に復帰する構成となっている。
【0019】
尚、前記トラクタTのような作業車両では、一般的に作業時には変速位置を低車速側に設定すると共に、アクセルレバー2をエンジン高回転位置(フルスロットル位置)に設定して一定速で走行し、一方、路上走行や圃場内移動時では、変速位置を高車速側に設定すると共に、アクセルレバー2を低回転位置(アイドリング位置近傍)に設定し、アクセルペダル3を踏み込んでエンジン回転数、即ち車速を調節する。
【0020】
また前記ステアリングハンドル27の前方には、図3に示すように、液晶モニタMを有するメータパネル31を設け、この裏面にメータパネル用コントローラ10aを備え、同コントローラ10aに入力された情報を、パネル表面の各種パイロットランプや液晶モニタMへ表示する構成となっている。またメータパネル31の左右一側(図3中左側)には、前後のワイパーの駆動を入切するワイパー入切スイッチ32f、32rを設け、左右他側には、前後のワークランプを点灯消灯するライト入切スイッチ33f、33rを設ける構成となっている。
【0021】
また、トラクタTの操縦席25一側方には、逆「L」字型に操作する変速レバー(副変速操作具)7を設け、同レバー7の基部と、副変速装置4bの変速シフタとをロッド部材など機械的連動機構にて連結し、前後回動操作で副変速装置4bをH速/L速の二段階(作業用操作位置P1)に切り替え自在に構成すると共に、前記H速位置では車体外側に向ってレバーを移動することで路上速に適した路上用H速(路上用操作位置P2)に切り替えて、詳しくは図10に示すように、後述する主変速位置4aの切替位置を高速側の4段に限定して変速を切替える構成となっている。
【0022】
また前記変速レバー7の基部には、図4に示すように、同レバー7の支持ブラケット35に備えられ且つレバー7の前後方向の位置を検出するポテンショメータ式の第一副変速位置センサ7aと、ミッションケース13の突設部から内部の副変速シフター36に向けて備えられ且つ同レバー7の左右方向の位置を検出するリミットスイッチ式の第二副変速位置センサ7bとを備える構成となっている。これにより、前記変速レバー7の前後左右の操作位置を検出することができる。
【0023】
また前記変速レバー7のグリップ内側面には、主変速操作具となる変速スイッチ6(増速スイッチ6a、減速スイッチ6b)を設け、オペレータのスイッチ操作によりコントローラ10の通電指令を介し主変速装置4aの変速位置を1段ずつ増減切り替える構成となっている。またグリップ部背面には、レバー操作に応じて主変速位置を自動的に切り替える変速制御を入切する自動変速制御入切スイッチ38を備える構成となっている。
【0024】
また前記操縦席25の他側方には、ロータリ作業機Rの高さを変更するポジションレバー40を設け、このポジションレバー40基部にも操作位置を検出するポテンショメータ40sを備え、コントローラ10では同レバー40のセンサ40sの検出角とリフトアーム16基部に備えたリフトアーム角センサ16sの検出角が一致する様、作業機Pの高さを変更する構成となっている。
【0025】
また更に前記ポジションレバー40のレバーガイド後方には、図5に示すように、樹脂製の操作パネル41を備え、この上面に操縦席25に向かって作業機Pの昇降及びローリング制御に係る複数の制御スイッチを備える構成となっている。
【0026】
前記操作パネル41について説明すると、同パネル41の中央部には2つのダイヤル、詳しくは前記作業機Pの上げ位置を設定する上げ位置設定ダイヤルD1と、作業機Pの左右傾きを調整する傾き調整ダイヤルD2を併設し、両ダイヤルD1,D2間で且つ上げ位置調整ダイヤルD1側にデセラ制御入切スイッチS4を配置する構成となっている。
【0027】
尚、前記デセラ制御とは、前記作業機Pの下降時にこの下降速度を一定高さから減速する制御である。
【0028】
また前記上げ位置設定ダイヤルD1の左側方には、作業機Pの昇降に係る3つのラバータクト式の制御スイッチ(バックアップ制御入切スイッチS1、オート切換スイッチS2、オート感度設定スイッチS3)を操縦席25に向って遠近方向に配する構成となっている。
【0029】
尚、前記バックアップ制御入切スイッチS1で作動させるバックアップ制御とは、前記前後進切替レバー28が後進位置に操作されたことを検知して、即ちトラクタTの後進操作に連動して作業機Pを前記上げ位置調整ダイヤルD1で指定された上昇位置まで上昇させる制御である。また。オート切換スイッチS2は、ロータリ耕耘時に耕深制御を作動させる「ロータリ」モードと、ドラフト作業時に負荷制御を作動させる「ドラフト」モードと、ローダ作業機等、別途作業機を連結した時に、前記作業機Pの昇降用油圧回路及び制御弁を利用して当該作業機へ油圧を送る「油圧取出」モードとを選択するスイッチである。
【0030】
また前記傾き調整ダイヤルD2の右側方には、作業機Pの左右ローリング姿勢制御に係る3つのラバータクト式の制御スイッチ(3P切換スイッチS5、水平切換スイッチS6、水平感度切換スイッチS7)を操縦席25に向って遠近方向に配する構成となっている。
【0031】
尚、前記3P切換スイッチS5とは、前記左右ロアリンク17b,17bに対し、取付幅の異なる作業機を1(狭),2(中),3(広)の三段階で指定するスイッチを示し、これにより各ローリング制御時の制御係数が変更されて、作業機Pの左右傾きが適切に変更されるものである。また、水平切換スイッチS7とは、「自動水平」モードと、「傾斜」モードと、「平行」モードの内、1つの制御を選択するスイッチである。詳しくは、前記「自動水平」モードとは、三点リンク機構17に接続した作業機Pのローリング姿勢を前記傾斜センサ26の検出値により水平状態に保持するローリング制御モードであり、「平行」モードとは、地表の傾きを前記傾斜センサ26の移動平均値にて求め、前記手動スイッチS8,S9にて設定された傾斜状態を保持するローリング制御モードであり、「平行」モードとは、前記ローリング用油圧シリンダの長さを前記手動スイッチS8,S9にて調整された長さに保持して、車体に対する傾き状態を保持するローリング制御モード(対本機ローリング制御)を示す。
【0032】
またこれら3つの制御スイッチS5〜S7の更に左側方には、前記ローリング制御が「平行」モードに設定されたときに、この左右傾きを調整するタバータクト式の上下一対の手動スイッチ(右上げスイッチS8、右下げスイッチS9)を配する構成となっている。
【0033】
また前記各ラバータクト式スイッチS1〜S2,S5〜S7には、各設定状態を表示するLEDランプを備える構成となっている。
【0034】
以上のように構成した操作パネル41では、同パネル41の中央部から左右一側に作業機昇降に関する設定器類を配し、他側に作業機の左右ローリング制御に関する設定器類を配する構成としたので、作業に不慣れなオペレータに対しても設定操作がわかり易い。
【0035】
次に、図6と図7に基づいてトラクタTの動力伝達経路について説明する。
【0036】
前記エンジンEの回転動力は、図6に示すように、クラッチハウジング12内の主クラッチ43にて断続操作され、動力上手側から順にミッションケース13内の前後進切替装置44、主変速装置4a(第一主変速装置4a1,第二主変速装置4a2)、副変速装置4bと順に伝達する構成となっている。そして、前記副変速装置4bにて出力した回転を、後輪デフ機構46を介して左右後輪14R,14Rへ伝達し、前輪駆動軸47及び前輪デフ機構48を介して左右前輪14F,14Fへ伝達する構成となっている。
【0037】
また前記エンジンEには、前記ガバナ機構Gにアクセル位置センサ49を設け、出力軸にエンジン回転センサ1を設け、両センサ49,1により車両のエンジン負荷状態を検出する構成となっている。
【0038】
また前記前後進切替装置44は、2つのクラッチ(前進用クラッチCf,後進用クラッチCr)を有する油圧クラッチ式切替装置であり、前記前後進切替レバー28の操作位置に応じてどちらか一方のクラッチを圧着し、回転動力を第一主変速装置4a1へ正転、若しくは逆回転で伝達する構成となっている。
【0039】
また、前記第一主変速装置4a1は、「3速」と「4速」の切替えを行う第一変速用油圧シリンダ8Aと、「1速」と「2速」の切替えを行う第二変速用油圧シリンダ8Bを備えたシンクロメッシュギア式の変速装置であり、前記両油圧シリンダ8A,8Bの内、一つのシリンダ8A(8B)のピストンを伸長若しくは短縮し先端部に係合されたシフタを前後に移動することで1速から4速の変速ギヤ組の内の1つのギヤ組を通じて、詳しくは前記第一変速用油圧シリンダ8Aのピストンが図7中左側に伸長することで「4速」となり、同ピストンが図7中右側に短縮することで「3速」となり、前記第二変速用油圧シリンダ8Bのピストンが図7中左側に伸長することで「2速」となり、同ピストンが図7中右側に短縮することで「1速」となる構成となって、回転動力を第二主変速装置4a2へ伝達する構成となっている。
【0040】
また第二主変速装置4a2は、高低二段のクラッチ(HiクラッチCh,LoクラッチCl)を有する油圧クラッチ式変速装置であり、クラッチ内部のピストンにて高低どちらか一方のクラッチ板を圧着することで回転動力を高低二段に切り替え、その回転動力を副変速装置4bへ伝達する構成となっている。
【0041】
また副変速装置4bは、前記変速レバー7の手動操作によりロッド部材等、機械式連動機構を介して切り替えるスライディングメッシュギヤ式の変速装置であり、前記第二主変速装置4a2から伝達された回転動力を「H速」と「L速」の何れか一方のギヤ組の1つを介して伝達し、出力軸45より出力する構成となっている。
【0042】
これにより、前記トラクタTでは、図9に示すように、第一主変速装置4a1と第二主変速装置4a2の変速位置を組み合わせることにより、主変速装置4aは、4×2=全8速の変速位置を有する構成となっており、2段の副変速装置4bの組み合わせで全16段の変速位置を取ることができる構成となっている。
【0043】
そして、前記主変速装置4aを変速する場合は、図10に示すように、変速レバー7の増速スイッチ6aと減速スイッチ6bを押し込み操作することで、同変速装置4aの変速位置を1速ずつ順に増速若しくは減速させるか、或いは後述するように変速レバー7を路上用操作位置P2に設定し、アクセルペダル1の踏込操作と踏込解除操作で、一部の主変速位置内で増速或いは減速する構成となっている。
【0044】
また前記エンジンEの回転動力は、前記前後進切替装置44の入力部にて分岐され、PTO入切クラッチ52、逆転機構を有するPTO変速装置53を介してPTO軸54を駆動する構成となっている。
【0045】
尚、図6中の符号55は、旋回内側の後輪にブレーキをかけるブレーキ装置を示し、前記左右ブレーキペダル30,30の踏込み操作、または前記ステアリングハンドル基部に備えたハンドル切角センサ27sによりトラクタTの旋回操作を検出して作動する構成となっている。また符合56は、前記ブレーキ装置と同じくトラクタTの旋回操作に連動させて、前輪14Fの周速を後輪14Rの周速よりも増速する前輪増速装置を示す。
【0046】
また前記前輪増速装置56の下手側の前輪駆動軸47には、電磁ピックアップ式回転センサ(車速センサ9)を設け、同軸47の回転を検出することでトラクタTの車速を検出する構成となっている。
【0047】
次に図8に基づいてトラクタTの油圧回路構成について説明する。
【0048】
前記トラクタTは、ミッションケース13内の油を作動油として、二連の油圧ポンプP1,P2にて吸い上げ、一方の油圧ポンプP1をパワーステアリング用油圧回路56を介して前輪操舵用油圧シリンダ57へ圧油を連通する一方、他方の油圧ポンプP2を作業機系油路L1と走行系油路L2へ圧油を分岐して送る構成となっている。
【0049】
前記作業機系油路L1は、分流弁57にて圧油を分岐し、分岐後の一方の回路を回路上手側から順に、前記作業機ローリング用油圧シリンダ18へ圧油を給排するローリング用油圧回路、及び作業機昇降用油圧シリンダ15へ圧油を給排する昇降用油圧回路と直列に接続する一方、他方の回路をトラクタTに別途装着する外部作業機駆動用の回路を接続する構成となっている。
【0050】
また前記作業機ローリング用油圧シリンダ18は、コントローラ10の通電指令により切替制御弁91内の油路を切り替えて駆動する構成となっている。
【0051】
また前記作業機昇降用油圧シリンダ15も同様に、コントローラ10の通電指令により作業機上昇用及び下降用の各制御弁90内の油路を開通して駆動する構成となっている。
【0052】
また走行系油路L2は、回路上手側に減圧弁58を備え、回路上手から順に前記前輪増速装置のクラッチを圧着させる前輪駆動回路60、PTOクラッチ昇圧回路61、前記第一及び第二変速用油圧シリンダ8A,8Bを駆動する第一主変速装置駆動回路62、前記HiクラッチCh,LoクラッチClを圧着操作する第二主変速装置駆動回路63、前後進切替装置44の前進用クラッチCf,後進用クラッチCrを圧着操作する前後進切替駆動用回路64、左右後輪14R,14Rのブレーキ装置55,55を作動させるブレーキ駆動用回路65を並列分岐して接続する構成となっている。
【0053】
次に図11乃至図15に基づいて、トラクタTの制御系について説明する。
【0054】
前記トラクタTの制御手段となるコントローラ10は、メータパネル用コントローラ10aと、操作パネル用コントローラ10bと、走行用コントローラ10cと、作業機制御用コントローラ10dとから構成され、夫れ夫れのコントローラは、各種センサや設定器の情報を処理するCPU、前記情報を一時記憶するRAM、また各種制御プログラムやこの発明の作業機Pの左右傾き角等を記憶するEEPROM等を備える構成となっている。
【0055】
また、各種アクチュエータを接続した走行用コントローラ10cと作業機操作用コントローラ10dは、各アクチュエータの駆動を迅速且つ円滑に操作できる様、CAN式通信回線70Aにより接続し、またメータパネル用コントローラ10aと作業機制御用コントローラ10dと操作パネル用コントローラ10bは、シンクロナス通信回路70Bにて接続する構成となっている。
【0056】
これにより、全コントローラ10a〜10dは通信回線70A,70Bにより接続され、各種センサ情報や出力情報を共有化することができる。
【0057】
また前記メータパネル用コントローラ10aは、この入力部に液晶モニタ表示切替スイッチ80と、エンジン回転センサ1と、PTO回転センサ54sと、PTO入切スイッチ52と、ワークランプ入切スイッチ33f,33rと、ワイパー入切スイッチ32f、23r等を接続して設け、出力部に、液晶モニタMと、各種パイロットランプと、ワークランプ81f、81rと、ワイパー電動モータ82f、82rと、ホーン83等を接続して設けている。
【0058】
また操作パネル用コントローラ10bは、この入力部に、前記上げ位置調整ダイヤルD1と、傾き調整ダイヤルD2と、バックアップ制御入切スイッチS1と、
オート切換スイッチS2と、オート感度切替スイッチS3と、デセラ制御入切スイッチS4と、3P切換スイッチS5と、水平切換スイッチS6と、水平感度切替スイッチS7と、ローリング用油圧シリンダ18のピストンを伸縮させて作業機Pの右側を上げる手動スイッチS8と、右側を下げる手動スイッチS9とを接続して設けている。また出力部には、前記操作パネル41上の各種LEDランプを接続して設けている。
【0059】
また走行用コントローラ10cには、この入力部に、自動変速制御を入切する自動変速制御入切スイッチ38と、主変速を切り替える増速スイッチ6a及び減速スイッチ6bと、変速レバー7の位置を検出する第一副変速位置センサ7a、第二副変速位置センサ7b、主変速位置をシフターの位置や油圧回路内の圧で検出する主変速位置センサ85a〜85f、アクセルレバー位置センサ2s、ガバナ機構部のアクセル位置センサ49、クラッチペダルスイッチ5s、前後進レバー基部の前後進スイッチ28f、28r等を接続して設けている。また出力部には、前記主変速装置を1速から8速まで切り替える制御弁86a〜86hのソレノイド86as〜86hsと、前後進切替装置44の前進用クラッチCf及び後進用クラッチCrを圧着操作する制御弁88f、88rのソレノイド88fs、88rs及びこれらクラッチCf,Crの圧を調整する昇圧用制御弁89のソレノイド89sとを接続して設けてる。
【0060】
また作業機操作用コントローラ10dには、この入力部に、ワンタッチ式作業機昇降用レバー基部の上昇スイッチ29uと、下降スイッチ29d、ポジションレバー40基部のポテンショメータ40s、リフトアーム角センサ16s、ローリング用油圧シリンダ18のストロークセンサ18s、ハンドル切角センサ27s、車速センサ9、旋回制御入切設定器89等を接続して設けている。また、出力部には、作業機上昇用、下降用の制御弁のソレノイド90us,90dsと、作業機Pの右側を上げ下げする制御弁91のソレノイド91us,91dsと、左右後輪14Rのブレーキ55,55を夫れ夫れ独立して制動する制御弁93l,93rのソレノイド93ls,93rsと、前輪14Fを増速駆動する制御弁94のソレノイド94sと、前記前輪増速装置の作動と同様に、車両の旋回時にエンジンEのスロットル位置を強制的に低回転に変更する電動モータ95を接続して設けている。
【0061】
以上のように構成したトラクタTでは、図16乃至図18に示す各制御が行われる。
【0062】
まずトラクタTの電源系をONすると、通信初期において前記メータパネル用コントローラ10aは、同コントローラ10a内に設定された機種型式情報と各コントローラ10b、10c、10dに設定された機種型式情報とを比較し、これが異なる場合は前記液晶モニタMへ異常の旨を表示すると共にホーン83を鳴らす構成となっている。
【0063】
そして、前記走行用コントローラ10cでは、図17に示すように、最初に前記自動変速制御入切スイッチ38の設定状態を判定し、これがYES(入)の判定であれば続けて前記変速レバー7の操作位置が、作業用操作位置P1であるか、路上用操作位置P2であるかを判定する。そして、ここでレバー位置が路上用操作位置P2である場合は、アクセル操作に応じた変速制御が行われ、作業位置P1である場合は、使用累積時間に応じた変速制御が行われる。
【0064】
尚、上記使用累積時間に応じた変速制御とは、変速レバー7の操作位置を変更したときに、主変速位置を過去最も長時間使用した位置に自動で切替える制御を示す。
【0065】
また前記自動変速制御の入切状態が切りであれば、増減速スイッチ6a,6bの操作、或いは変速レバー7の切替操作に応じた変速制御が行われる。
【0066】
前記アクセル操作に応じた変速制御は、図18に示すように、最初に前記アクセルレバー2の設定位置が高回転に保持されていないか、即ち路上走行を想定した低回転位置かどうかが判定され、これがNOの判定の場合には、トラクタTは通常の作業状態とし、主変速を切替えるときには、前記増減速スイッチ6a,6bによる操作のみとなってエンドとなる。また前記アクセルレバー2の設定位置が低回転位置である場合は、トラクタTは路上など高速で移動する場合とし、更にクラッチペダル5が踏込まれているかどうかが判定される。
【0067】
そして前記クラッチペダル5が踏込み中(判定がYES)の場合は、停止状態、或いは路上での交差点などで徐々に車速を落とす操作と想定し、前記エンジンEの回転数に関係なく、前記車速センサ9の検出値に基づいて、変速位置を1速ずつアップダウンさせる。即ち車速値が大きいほど変速位置を高速段へ、小さいほど低速段へ切り替える。
【0068】
これにより、クラッチペダル5を踏込む場合は、走行面の状態に応じて車両の速度は変化するので、この速度に応じて変速位置が切り替わり、クラッチペダル5から足を離して動力が伝達されたときにも、急減速、急加速する事無く車速が円滑に変化し、車両の操作性が良い。
【0069】
またクラッチペダル5が踏込まれていない場合(判定がNO)の場合は、路上での通常走行として、まず車速が停止状態に近い一定値(凡そ0.5km/h)以上かどうかを判定し、これがNOの判定であれば、主変速位置4aを一気に最低速位置に切り替える。
【0070】
一方、車速が前記一定値を超えている場合は、前記アクセル位置センサ49と車速センサ9の検出によりエンジン回転数と車速を読み込み、予め設定した車速表(マップ)の値と比較して、前記エンジン回転数と車速値に相当する変速位置に近づく様、変速位置を1段ずつ増速、減速、或いは現変速段を維持する構成となっている。
【0071】
これにより、スロットルの保持位置が低回転の場合に、エンジン回転数に応じて変速位置が切り替わるので、加速中にアクセルペダル3から足を離せば加速が中断され、車速が高速に設定されつづけることが無く、所謂オートマチック式の自動車を運転する感覚で車両を安全に走行することができる。しかも、このアクセルペダル3による変速は、主変速の一部、即ち高速側の4段に亘ってのみ切り替わるので、目的とする車速に迅速に到達し、車両の操作性が良い。
【0072】
尚、前記車速表のマップでは、前記アクセルレバー2が所定の低回転位置に操作され、アクセルペダルが踏まれていない場合、主変速を第1速に設定する構成となっている。またこのアクセル操作に応じた変速制御は、前進時のみに作動する構成となっており、主変速装置4aの切替時には、主変速位置を切り替えるアクチュエータ、即ち第一、第二変速用油圧シリンダ8A,8B及び第二主変速装置4a2のクラッチCh,Cl内ピストンが作動する間には、前記前後進切替装置44の前進クラッチCfが切りに保持され、この圧着時には、エンジン回転数の変化率が大きい程、ゆっくりと前進クラッチCfを接続する構成となっている。
【0073】
また図19に示す増減速スイッチ6a,6bに応じた変速制御では、まず最初に
トラクタTが走行中かどうかをクラッチペダル5の踏み込み操作の有(停止中)無(走行中)で判定し、走行中と停止中のスイッチ6a,6bのON信号受け時間を夫れ夫れ設定して前記主変速位置4aを切り替える。
【0074】
詳しくは、トラクタTの走行中は、増減速スイッチ6a(6b)を継続して押込む場合に受け付けられる間隔t2(450msec)は、2回以上単発で連続して押込む場合に受け付けられる間隔t1(300msec)よりも、長く設定する構成となっている。
【0075】
これにより、走行中、増減速スイッチ6a,6bの単発操作では、オペレータ自らの認識があると想定し、迅速に変速位置を切り替え、長押し操作では。1段のスイッチ変速に要する操作時間を長くなるようにし、押込み操作が不用意に長引いても変速位置が過剰にアップダウンすることが防止され、変速操作性を向上することができる。
【0076】
またトラクタTの停止中にも、増減速スイッチ6a(6b)を継続して押込む場合に受け付けられる間隔t3(400msec)は、単発で連続して押込む場合に受け付けられる間隔t1(300msec)よりも、長く設定されているが、前記走行中の受け付け時間t2と比較して、この間隔を短期間に設定している。
【0077】
これにより、増減速スイッチ6a,6bを長押し操作した場合の走行中の操作と比較して、停止中の操作は変速操作に要する時間を極力短縮することができ、変速操作性を向上することができる。
【0078】
次に、図20乃至図23に基づいて、前記作業機制御用コントローラ10dによって実行される作業機のローリング制御について説明する。
【0079】
このローリング制御では、図20に示すように、まず最初に、前記操作パネル41上の水平切換スイッチS6の設定状態が判定され、これに応じ各モードに応じたローリング制御が実行される。
【0080】
前記ローリング制御の内、「平行」モードでは、図21に示すように、最初に前記リフトアーム角センサ16sより作業機Pの高さを検出し、この高さが非作業状態と想定される一定値に達しているかどうかを判定する。そして、この作業機Pの高さが一定値よりも高い位置であれば、作業機Pの傾き設定操作が受け付けられる。即ち、前記手動スイッチS8,S9の操作に応じてローリング用油圧シリンダ18を伸縮駆動し、この駆動を停止したときのストロークセンサ値を新たな作業機Pの左右傾き設定値として前記コントローラ10d内の記憶装置(EEPROM)に記憶する。その後、作業機Pを作業位置へ下降させて、作業機ローリング用油圧シリンダ18に外圧が掛ったり油漏れが生じても、このセンサ値が戻る様、即ち作業機Pの左右傾き傾きが保持されるように、前記ローリング用油圧シリンダ18のピストンを伸縮する。
【0081】
一方、前記作業機Pが予め設定した作業位置と想定される高さであれば、作業中に局所的に硬度の異なる場所が有って、作業機Pの左右傾きを一時的に変更する操作と想定し、図22に示すように、ローリング制御が継続されるる。即ち、手動スイッチS8,S9が操作されると制御弁へ通電が為され、作業機Pの左右ローリング姿勢が作業位置のままで調整される。その後、ローリング用油圧シリンダの駆動を止めると、前記作業機Pの上昇時の左右傾き設定値(前記記憶装置の記憶値)に優先して、この変更後の傾き値を保持する様、ローリング用油圧シリンダ18を駆動する。
【0082】
そして再度作業機Pを非作業位置に上昇させると、前記コントローラ10dに記憶された前記変更前の左右傾き値(ストロークセンサの検出値)を復帰させリターンとなる。
【0083】
これにより、次に作業機Pを下降したときには、作業機Pが前記変更前の傾き値に保持される様、前記ローリング用油圧シリンダ18のピストンが伸縮される。
【0084】
これにより、トラクタTのプラウ作業などで、局所的に軟弱な場所が有り作業機Pの傾きを一時的に変更する場合であっても、旋回時などで作業機Pを上昇した後は、元の傾き値が有効とされ、再度設定値を設定し直す必要が無く、ローリング制御に係る設定操作が簡単となる。また作業機Pを非作業位置へ上昇するまでは、作業機Pは変更後の左右傾きが保持されるので、圃場の耕深に大きな凹凸を作ることなく、安定した耕深で作業を行うことができる。
【0085】
またこの発明の別形態としては、作業機Pの傾きを下降位置のままで調整したときには、記憶装置の記憶値を保持したまま、単にローリング用油圧シリンダ18の駆動を牽制、或いはローリング制御の実行を制御を中断する構成としても良い。これにより、前記ローリング制御に掛る制御プログラムや記憶装置内のセンサ情報を単純化することができる。
【0086】
また前記発明は、車体に対する作業機の左右傾きを保持する「平行モード」に行う構成としたが、前記傾斜センサ26の値を移動平均する事で地表の傾きを検出し、この地表の傾きに対して作業機Pの左右傾きを保持する「傾斜モード」時に採用しても良い。
【0087】
次に図23に示す作業機Pのローリング規制に関する処理について説明する。
【0088】
前記処理では、前記昇降用油圧シリンダ15の駆動要求が有ったとき、即ち前記ワンタッチ式作業機昇降レバー29やポジションレバー40、或いはトラクタTの旋回操作に連動して作業機Pを上昇操作したとき、リフトアーム角度が別途任意に設定された高さ以上となると、前記ローリング用油圧シリンダ18の長さを判定し、これがキャビンなど車体側の部材と接触すると想定される程、傾いている場合(ストロークセンサ値が一定値より小さい場合)は、同シリンダ18のピストンを短縮する構成となっている。
【0089】
これにより、作業機Pが過剰に傾いた状態で上昇され、キャビン等に接触し、双方の破損、変形を防止する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】トラクタの全体側面図。
【図2】トラクタの背面図。
【図3】メータパネルの正面図。
【図4】(A)ミッションケースの側面図。(B)第一副変速センサの取付状態を示す正面図。(C)第二副変速センサの取付状態を示す側面図。
【図5】操作パネルの平面図。
【図6】トラクタの伝導機構線図。
【図7】トラクタのミッションケース内を展開した側面図。
【図8】トラクタの油圧回路図。
【図9】トラクタの変速表。
【図10】変速レバーの操作位置を示す図。
【図11】コントローラの接続状態を示す図。
【図12】メータパネル用コントローラの接続状態を示す図。
【図13】操作パネル用コントローラの接続状態を示す図。
【図14】走行用コントローラの接続状態を示す図。
【図15】作業機制御用コントローラの接続状態を示す図。
【図16】メータパネル用コントローラの制御処理を示すフローチャート。
【図17】自動変速制御の制御の概要を示すフローチャート。
【図18】アクセル操作に応じた変速制御の概要を示すフローチャート。
【図19】増減速スイッチに応じた変速制御の概要を示すフローチャート。
【図20】作業機ローリング制御の概要を示すフローチャート。
【図21】平行モードの制御の概要を示すフローチャート(1)。
【図22】平行モードの制御の概要を示すフローチャート(2)。
【図23】作業機の傾き規制処理の概要を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0091】
P プラウ作業機
S8 手動スイッチ(作業機右上げ)
S9 手動スイッチ(作業機右下げ)
T トラクタ
16 リフトアーム
16s リフトアーム角センサ
18 ローリング用油圧シリンダ
18s ストロークセンサ
26 傾斜センサ
10 コントローラ群
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタの作業機ローリング制御装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用トラクタには、作業機を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサの値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータの長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するものが知られている。
【特許文献1】特開平08-056409号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のように、トラクタの車体に対して作業機の左右傾きを一定角度に保つ対本機ローリング制御は、例えばトラクタの左右片輪を圃場の溝に落とした状態で走行するプラウ作業等に用いられる。
【0004】
しかしながら、前記対本機ローリング制御装置を作動させてプラウ作業を行う際、局所的に硬度が異なる個所、特に軟弱な個所があると、前記作業機に係る負荷が変化し、プラウ作業機の傾きが頻繁に変更されて、オペレータは作業機に安定した負荷がかかる様、この左右傾きを再設定する必要が生じる。また前記局所的に硬度が異なる個所を通過した後には、更に元の傾き値に再設定する必要が生じ、操作が煩わしいもので有った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を鑑みて、請求項1ではトラクタの作業機ローリング制御装置を以下のように構成した。
【0006】
即ち、作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、同作業機(P)が非作業位置へ上昇される迄、前記作業機ローリング用アクチュエータ(18)の駆動を中断する制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置とした。
(請求項1の作用)
以上のように構成した請求項1の発明では、手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)の左右ローリング姿勢が作業位置と想定される位置で変更された場合は、作業機(P)は変更操作に応じた左右傾き角に変更されて、このローリング制御モードは中断される。そして同作業機(P)を非作業位置へ上昇させ、再度作業位置へ下降させたときには、前記作業機(P)の姿勢は記憶装置に記憶されていた変更前の左右傾き角に保持される。
【0007】
また請求項2の発明では、作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、この変更後の左右ローリング位置を保持位置として前記対本機ローリング制御モードを作動し、同作業機(P)が非作業位置へ上昇した後には、前記変更前の記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を復帰させる制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置とした。
(請求項2の作用)
以上のように構成した請求項2の発明では、手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)の左右ローリング姿勢が作業位置と想定される位置で変更された場合は、この変更後の左右傾き角が非作業位置へ上昇されるまで保持される。そして、同作業機(P)が非作業位置へ上昇された後、再度作業位置へ下降させたときには、記憶装置に記憶されていた変更前の左右傾き角に保持される。
【発明の効果】
【0008】
これにより、請求項1の発明では、圃場で局所的に硬度が異なる個所が有り、一時的に作業機(P)の左右傾き角を変更する場合があっても、作業機(P)を上昇させるまでは、ローリング用アクチュエータ(18)の駆動が中断され、その場を通過し旋回後に再度作業機(P)を着地させた時には前記変更前の左右傾き角が保持されるので、前記のように、オペレータの再設定操作が不要となり、煩わしさを解消することができる。
【0009】
また請求項2の発明では、作業機(P)の左右傾き角を変更した後も、この変更後の姿勢が保持されるので、前記請求項1の効果に加え、作業機(P)を上昇する前も作業深さが大きく変わること無く、均一な作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明を作業車両となる農業用トラクタ(以下、トラクタT)に搭載した場合について説明する。
【0011】
最初にトラクタTの構成について説明する。
【0012】
トラクタTは、図1に示すように、ボンネット11内部にディーゼルエンジンEを備え、このエンジンEの回転動力をクラッチハウジング12及びミッションケース13内の各種伝動装置を介して走行輪となる左右後輪14R,14R、若しくは前後輪14F,14Rへ伝達して走行する構成となっている。
【0013】
またトラクタTの車体後部には、作業機昇降用油圧シリンダ15を備え、同シリンダ15のピストン伸縮操作によりリフトアーム16を上下駆動し、三点リンク機構17を介して作業機Pを昇降する構成となっている。尚、図1例ではプラウ作業機を連結した構成となっている。
【0014】
また前記三点リンク機構17の左右一側のロアリンク17bとリフトアーム16は、作業機ローリング用油圧シリンダ(作業機ローリング用アクチュエータ)18にて接続され、同シリンダ18のピストンを伸縮操作により、作業機Pの左右一側を上げ下げして作業機Pの左右ローリング姿勢を調整する構成となっている(図2参照)。また前記作業機ローリング用油圧シリンダ18の長さは、ワイヤーを介してミッションケース13上部のストロークセンサ18sにて検出する構成となっている。
【0015】
またトラクタTの操縦席25の下方には、同トラクタTの制御手段10となる各種コントローラ10c,10dやトラクタTの左右傾斜角を検出する傾斜センサ26を備える構成となっている。
【0016】
またトラクタTの操縦席25の前方には、前記前輪14Fを左右操舵するステアリングハンドル27を設け、この下方に車両の前後進を切り替える前後進切替レバー28、及びエンジンEの回転数を調節するアクセルレバー2、更には車体後部の作業機Pをワンタッチ操作で非作業位置へ上昇、若しくは作業位置へ一気に昇降するワンタッチ式作業機昇降レバー29を設けている。また前記アクセルレバー2の回動基部には、摩擦材を有するレバー保持機構を設けると共に、ワイヤーを介して前記エンジン側部のガバナ機構(燃料噴射量調整機構)Gに接続する構成となっている。これにより、エンジンEのスロットル位置を同レバー2の操作位置を変更し任意の位置で保持することができる。
【0017】
また、前記ステアリングハンドル27下方には、クラッチペダル5や左右ブレーキペダル30,30、そしてアクセルペダル3を設け、前記アクセルペダル3の回動基部には、エンジン回転数を減速側へ戻すよう付勢したスプリングを設けると共に、この踏込操作を検出するアクセルペダル位置センサ3sを設ける構成となっている。また前記アクセルペダル3の回動基部は、前記アクセルレバー2と同様に、ワイヤーを介して前記エンジンEのガバナ機構Gへ接続する構成となっている。
【0018】
これにより、前記アクセルレバー2により保持されたスロットル設定位置を下限として、アクセルペダル3の踏み込み時にだけエンジン回転数を上昇させ、踏み込み解除時には、前記アクセルレバー2で設定された元の位置に復帰する構成となっている。
【0019】
尚、前記トラクタTのような作業車両では、一般的に作業時には変速位置を低車速側に設定すると共に、アクセルレバー2をエンジン高回転位置(フルスロットル位置)に設定して一定速で走行し、一方、路上走行や圃場内移動時では、変速位置を高車速側に設定すると共に、アクセルレバー2を低回転位置(アイドリング位置近傍)に設定し、アクセルペダル3を踏み込んでエンジン回転数、即ち車速を調節する。
【0020】
また前記ステアリングハンドル27の前方には、図3に示すように、液晶モニタMを有するメータパネル31を設け、この裏面にメータパネル用コントローラ10aを備え、同コントローラ10aに入力された情報を、パネル表面の各種パイロットランプや液晶モニタMへ表示する構成となっている。またメータパネル31の左右一側(図3中左側)には、前後のワイパーの駆動を入切するワイパー入切スイッチ32f、32rを設け、左右他側には、前後のワークランプを点灯消灯するライト入切スイッチ33f、33rを設ける構成となっている。
【0021】
また、トラクタTの操縦席25一側方には、逆「L」字型に操作する変速レバー(副変速操作具)7を設け、同レバー7の基部と、副変速装置4bの変速シフタとをロッド部材など機械的連動機構にて連結し、前後回動操作で副変速装置4bをH速/L速の二段階(作業用操作位置P1)に切り替え自在に構成すると共に、前記H速位置では車体外側に向ってレバーを移動することで路上速に適した路上用H速(路上用操作位置P2)に切り替えて、詳しくは図10に示すように、後述する主変速位置4aの切替位置を高速側の4段に限定して変速を切替える構成となっている。
【0022】
また前記変速レバー7の基部には、図4に示すように、同レバー7の支持ブラケット35に備えられ且つレバー7の前後方向の位置を検出するポテンショメータ式の第一副変速位置センサ7aと、ミッションケース13の突設部から内部の副変速シフター36に向けて備えられ且つ同レバー7の左右方向の位置を検出するリミットスイッチ式の第二副変速位置センサ7bとを備える構成となっている。これにより、前記変速レバー7の前後左右の操作位置を検出することができる。
【0023】
また前記変速レバー7のグリップ内側面には、主変速操作具となる変速スイッチ6(増速スイッチ6a、減速スイッチ6b)を設け、オペレータのスイッチ操作によりコントローラ10の通電指令を介し主変速装置4aの変速位置を1段ずつ増減切り替える構成となっている。またグリップ部背面には、レバー操作に応じて主変速位置を自動的に切り替える変速制御を入切する自動変速制御入切スイッチ38を備える構成となっている。
【0024】
また前記操縦席25の他側方には、ロータリ作業機Rの高さを変更するポジションレバー40を設け、このポジションレバー40基部にも操作位置を検出するポテンショメータ40sを備え、コントローラ10では同レバー40のセンサ40sの検出角とリフトアーム16基部に備えたリフトアーム角センサ16sの検出角が一致する様、作業機Pの高さを変更する構成となっている。
【0025】
また更に前記ポジションレバー40のレバーガイド後方には、図5に示すように、樹脂製の操作パネル41を備え、この上面に操縦席25に向かって作業機Pの昇降及びローリング制御に係る複数の制御スイッチを備える構成となっている。
【0026】
前記操作パネル41について説明すると、同パネル41の中央部には2つのダイヤル、詳しくは前記作業機Pの上げ位置を設定する上げ位置設定ダイヤルD1と、作業機Pの左右傾きを調整する傾き調整ダイヤルD2を併設し、両ダイヤルD1,D2間で且つ上げ位置調整ダイヤルD1側にデセラ制御入切スイッチS4を配置する構成となっている。
【0027】
尚、前記デセラ制御とは、前記作業機Pの下降時にこの下降速度を一定高さから減速する制御である。
【0028】
また前記上げ位置設定ダイヤルD1の左側方には、作業機Pの昇降に係る3つのラバータクト式の制御スイッチ(バックアップ制御入切スイッチS1、オート切換スイッチS2、オート感度設定スイッチS3)を操縦席25に向って遠近方向に配する構成となっている。
【0029】
尚、前記バックアップ制御入切スイッチS1で作動させるバックアップ制御とは、前記前後進切替レバー28が後進位置に操作されたことを検知して、即ちトラクタTの後進操作に連動して作業機Pを前記上げ位置調整ダイヤルD1で指定された上昇位置まで上昇させる制御である。また。オート切換スイッチS2は、ロータリ耕耘時に耕深制御を作動させる「ロータリ」モードと、ドラフト作業時に負荷制御を作動させる「ドラフト」モードと、ローダ作業機等、別途作業機を連結した時に、前記作業機Pの昇降用油圧回路及び制御弁を利用して当該作業機へ油圧を送る「油圧取出」モードとを選択するスイッチである。
【0030】
また前記傾き調整ダイヤルD2の右側方には、作業機Pの左右ローリング姿勢制御に係る3つのラバータクト式の制御スイッチ(3P切換スイッチS5、水平切換スイッチS6、水平感度切換スイッチS7)を操縦席25に向って遠近方向に配する構成となっている。
【0031】
尚、前記3P切換スイッチS5とは、前記左右ロアリンク17b,17bに対し、取付幅の異なる作業機を1(狭),2(中),3(広)の三段階で指定するスイッチを示し、これにより各ローリング制御時の制御係数が変更されて、作業機Pの左右傾きが適切に変更されるものである。また、水平切換スイッチS7とは、「自動水平」モードと、「傾斜」モードと、「平行」モードの内、1つの制御を選択するスイッチである。詳しくは、前記「自動水平」モードとは、三点リンク機構17に接続した作業機Pのローリング姿勢を前記傾斜センサ26の検出値により水平状態に保持するローリング制御モードであり、「平行」モードとは、地表の傾きを前記傾斜センサ26の移動平均値にて求め、前記手動スイッチS8,S9にて設定された傾斜状態を保持するローリング制御モードであり、「平行」モードとは、前記ローリング用油圧シリンダの長さを前記手動スイッチS8,S9にて調整された長さに保持して、車体に対する傾き状態を保持するローリング制御モード(対本機ローリング制御)を示す。
【0032】
またこれら3つの制御スイッチS5〜S7の更に左側方には、前記ローリング制御が「平行」モードに設定されたときに、この左右傾きを調整するタバータクト式の上下一対の手動スイッチ(右上げスイッチS8、右下げスイッチS9)を配する構成となっている。
【0033】
また前記各ラバータクト式スイッチS1〜S2,S5〜S7には、各設定状態を表示するLEDランプを備える構成となっている。
【0034】
以上のように構成した操作パネル41では、同パネル41の中央部から左右一側に作業機昇降に関する設定器類を配し、他側に作業機の左右ローリング制御に関する設定器類を配する構成としたので、作業に不慣れなオペレータに対しても設定操作がわかり易い。
【0035】
次に、図6と図7に基づいてトラクタTの動力伝達経路について説明する。
【0036】
前記エンジンEの回転動力は、図6に示すように、クラッチハウジング12内の主クラッチ43にて断続操作され、動力上手側から順にミッションケース13内の前後進切替装置44、主変速装置4a(第一主変速装置4a1,第二主変速装置4a2)、副変速装置4bと順に伝達する構成となっている。そして、前記副変速装置4bにて出力した回転を、後輪デフ機構46を介して左右後輪14R,14Rへ伝達し、前輪駆動軸47及び前輪デフ機構48を介して左右前輪14F,14Fへ伝達する構成となっている。
【0037】
また前記エンジンEには、前記ガバナ機構Gにアクセル位置センサ49を設け、出力軸にエンジン回転センサ1を設け、両センサ49,1により車両のエンジン負荷状態を検出する構成となっている。
【0038】
また前記前後進切替装置44は、2つのクラッチ(前進用クラッチCf,後進用クラッチCr)を有する油圧クラッチ式切替装置であり、前記前後進切替レバー28の操作位置に応じてどちらか一方のクラッチを圧着し、回転動力を第一主変速装置4a1へ正転、若しくは逆回転で伝達する構成となっている。
【0039】
また、前記第一主変速装置4a1は、「3速」と「4速」の切替えを行う第一変速用油圧シリンダ8Aと、「1速」と「2速」の切替えを行う第二変速用油圧シリンダ8Bを備えたシンクロメッシュギア式の変速装置であり、前記両油圧シリンダ8A,8Bの内、一つのシリンダ8A(8B)のピストンを伸長若しくは短縮し先端部に係合されたシフタを前後に移動することで1速から4速の変速ギヤ組の内の1つのギヤ組を通じて、詳しくは前記第一変速用油圧シリンダ8Aのピストンが図7中左側に伸長することで「4速」となり、同ピストンが図7中右側に短縮することで「3速」となり、前記第二変速用油圧シリンダ8Bのピストンが図7中左側に伸長することで「2速」となり、同ピストンが図7中右側に短縮することで「1速」となる構成となって、回転動力を第二主変速装置4a2へ伝達する構成となっている。
【0040】
また第二主変速装置4a2は、高低二段のクラッチ(HiクラッチCh,LoクラッチCl)を有する油圧クラッチ式変速装置であり、クラッチ内部のピストンにて高低どちらか一方のクラッチ板を圧着することで回転動力を高低二段に切り替え、その回転動力を副変速装置4bへ伝達する構成となっている。
【0041】
また副変速装置4bは、前記変速レバー7の手動操作によりロッド部材等、機械式連動機構を介して切り替えるスライディングメッシュギヤ式の変速装置であり、前記第二主変速装置4a2から伝達された回転動力を「H速」と「L速」の何れか一方のギヤ組の1つを介して伝達し、出力軸45より出力する構成となっている。
【0042】
これにより、前記トラクタTでは、図9に示すように、第一主変速装置4a1と第二主変速装置4a2の変速位置を組み合わせることにより、主変速装置4aは、4×2=全8速の変速位置を有する構成となっており、2段の副変速装置4bの組み合わせで全16段の変速位置を取ることができる構成となっている。
【0043】
そして、前記主変速装置4aを変速する場合は、図10に示すように、変速レバー7の増速スイッチ6aと減速スイッチ6bを押し込み操作することで、同変速装置4aの変速位置を1速ずつ順に増速若しくは減速させるか、或いは後述するように変速レバー7を路上用操作位置P2に設定し、アクセルペダル1の踏込操作と踏込解除操作で、一部の主変速位置内で増速或いは減速する構成となっている。
【0044】
また前記エンジンEの回転動力は、前記前後進切替装置44の入力部にて分岐され、PTO入切クラッチ52、逆転機構を有するPTO変速装置53を介してPTO軸54を駆動する構成となっている。
【0045】
尚、図6中の符号55は、旋回内側の後輪にブレーキをかけるブレーキ装置を示し、前記左右ブレーキペダル30,30の踏込み操作、または前記ステアリングハンドル基部に備えたハンドル切角センサ27sによりトラクタTの旋回操作を検出して作動する構成となっている。また符合56は、前記ブレーキ装置と同じくトラクタTの旋回操作に連動させて、前輪14Fの周速を後輪14Rの周速よりも増速する前輪増速装置を示す。
【0046】
また前記前輪増速装置56の下手側の前輪駆動軸47には、電磁ピックアップ式回転センサ(車速センサ9)を設け、同軸47の回転を検出することでトラクタTの車速を検出する構成となっている。
【0047】
次に図8に基づいてトラクタTの油圧回路構成について説明する。
【0048】
前記トラクタTは、ミッションケース13内の油を作動油として、二連の油圧ポンプP1,P2にて吸い上げ、一方の油圧ポンプP1をパワーステアリング用油圧回路56を介して前輪操舵用油圧シリンダ57へ圧油を連通する一方、他方の油圧ポンプP2を作業機系油路L1と走行系油路L2へ圧油を分岐して送る構成となっている。
【0049】
前記作業機系油路L1は、分流弁57にて圧油を分岐し、分岐後の一方の回路を回路上手側から順に、前記作業機ローリング用油圧シリンダ18へ圧油を給排するローリング用油圧回路、及び作業機昇降用油圧シリンダ15へ圧油を給排する昇降用油圧回路と直列に接続する一方、他方の回路をトラクタTに別途装着する外部作業機駆動用の回路を接続する構成となっている。
【0050】
また前記作業機ローリング用油圧シリンダ18は、コントローラ10の通電指令により切替制御弁91内の油路を切り替えて駆動する構成となっている。
【0051】
また前記作業機昇降用油圧シリンダ15も同様に、コントローラ10の通電指令により作業機上昇用及び下降用の各制御弁90内の油路を開通して駆動する構成となっている。
【0052】
また走行系油路L2は、回路上手側に減圧弁58を備え、回路上手から順に前記前輪増速装置のクラッチを圧着させる前輪駆動回路60、PTOクラッチ昇圧回路61、前記第一及び第二変速用油圧シリンダ8A,8Bを駆動する第一主変速装置駆動回路62、前記HiクラッチCh,LoクラッチClを圧着操作する第二主変速装置駆動回路63、前後進切替装置44の前進用クラッチCf,後進用クラッチCrを圧着操作する前後進切替駆動用回路64、左右後輪14R,14Rのブレーキ装置55,55を作動させるブレーキ駆動用回路65を並列分岐して接続する構成となっている。
【0053】
次に図11乃至図15に基づいて、トラクタTの制御系について説明する。
【0054】
前記トラクタTの制御手段となるコントローラ10は、メータパネル用コントローラ10aと、操作パネル用コントローラ10bと、走行用コントローラ10cと、作業機制御用コントローラ10dとから構成され、夫れ夫れのコントローラは、各種センサや設定器の情報を処理するCPU、前記情報を一時記憶するRAM、また各種制御プログラムやこの発明の作業機Pの左右傾き角等を記憶するEEPROM等を備える構成となっている。
【0055】
また、各種アクチュエータを接続した走行用コントローラ10cと作業機操作用コントローラ10dは、各アクチュエータの駆動を迅速且つ円滑に操作できる様、CAN式通信回線70Aにより接続し、またメータパネル用コントローラ10aと作業機制御用コントローラ10dと操作パネル用コントローラ10bは、シンクロナス通信回路70Bにて接続する構成となっている。
【0056】
これにより、全コントローラ10a〜10dは通信回線70A,70Bにより接続され、各種センサ情報や出力情報を共有化することができる。
【0057】
また前記メータパネル用コントローラ10aは、この入力部に液晶モニタ表示切替スイッチ80と、エンジン回転センサ1と、PTO回転センサ54sと、PTO入切スイッチ52と、ワークランプ入切スイッチ33f,33rと、ワイパー入切スイッチ32f、23r等を接続して設け、出力部に、液晶モニタMと、各種パイロットランプと、ワークランプ81f、81rと、ワイパー電動モータ82f、82rと、ホーン83等を接続して設けている。
【0058】
また操作パネル用コントローラ10bは、この入力部に、前記上げ位置調整ダイヤルD1と、傾き調整ダイヤルD2と、バックアップ制御入切スイッチS1と、
オート切換スイッチS2と、オート感度切替スイッチS3と、デセラ制御入切スイッチS4と、3P切換スイッチS5と、水平切換スイッチS6と、水平感度切替スイッチS7と、ローリング用油圧シリンダ18のピストンを伸縮させて作業機Pの右側を上げる手動スイッチS8と、右側を下げる手動スイッチS9とを接続して設けている。また出力部には、前記操作パネル41上の各種LEDランプを接続して設けている。
【0059】
また走行用コントローラ10cには、この入力部に、自動変速制御を入切する自動変速制御入切スイッチ38と、主変速を切り替える増速スイッチ6a及び減速スイッチ6bと、変速レバー7の位置を検出する第一副変速位置センサ7a、第二副変速位置センサ7b、主変速位置をシフターの位置や油圧回路内の圧で検出する主変速位置センサ85a〜85f、アクセルレバー位置センサ2s、ガバナ機構部のアクセル位置センサ49、クラッチペダルスイッチ5s、前後進レバー基部の前後進スイッチ28f、28r等を接続して設けている。また出力部には、前記主変速装置を1速から8速まで切り替える制御弁86a〜86hのソレノイド86as〜86hsと、前後進切替装置44の前進用クラッチCf及び後進用クラッチCrを圧着操作する制御弁88f、88rのソレノイド88fs、88rs及びこれらクラッチCf,Crの圧を調整する昇圧用制御弁89のソレノイド89sとを接続して設けてる。
【0060】
また作業機操作用コントローラ10dには、この入力部に、ワンタッチ式作業機昇降用レバー基部の上昇スイッチ29uと、下降スイッチ29d、ポジションレバー40基部のポテンショメータ40s、リフトアーム角センサ16s、ローリング用油圧シリンダ18のストロークセンサ18s、ハンドル切角センサ27s、車速センサ9、旋回制御入切設定器89等を接続して設けている。また、出力部には、作業機上昇用、下降用の制御弁のソレノイド90us,90dsと、作業機Pの右側を上げ下げする制御弁91のソレノイド91us,91dsと、左右後輪14Rのブレーキ55,55を夫れ夫れ独立して制動する制御弁93l,93rのソレノイド93ls,93rsと、前輪14Fを増速駆動する制御弁94のソレノイド94sと、前記前輪増速装置の作動と同様に、車両の旋回時にエンジンEのスロットル位置を強制的に低回転に変更する電動モータ95を接続して設けている。
【0061】
以上のように構成したトラクタTでは、図16乃至図18に示す各制御が行われる。
【0062】
まずトラクタTの電源系をONすると、通信初期において前記メータパネル用コントローラ10aは、同コントローラ10a内に設定された機種型式情報と各コントローラ10b、10c、10dに設定された機種型式情報とを比較し、これが異なる場合は前記液晶モニタMへ異常の旨を表示すると共にホーン83を鳴らす構成となっている。
【0063】
そして、前記走行用コントローラ10cでは、図17に示すように、最初に前記自動変速制御入切スイッチ38の設定状態を判定し、これがYES(入)の判定であれば続けて前記変速レバー7の操作位置が、作業用操作位置P1であるか、路上用操作位置P2であるかを判定する。そして、ここでレバー位置が路上用操作位置P2である場合は、アクセル操作に応じた変速制御が行われ、作業位置P1である場合は、使用累積時間に応じた変速制御が行われる。
【0064】
尚、上記使用累積時間に応じた変速制御とは、変速レバー7の操作位置を変更したときに、主変速位置を過去最も長時間使用した位置に自動で切替える制御を示す。
【0065】
また前記自動変速制御の入切状態が切りであれば、増減速スイッチ6a,6bの操作、或いは変速レバー7の切替操作に応じた変速制御が行われる。
【0066】
前記アクセル操作に応じた変速制御は、図18に示すように、最初に前記アクセルレバー2の設定位置が高回転に保持されていないか、即ち路上走行を想定した低回転位置かどうかが判定され、これがNOの判定の場合には、トラクタTは通常の作業状態とし、主変速を切替えるときには、前記増減速スイッチ6a,6bによる操作のみとなってエンドとなる。また前記アクセルレバー2の設定位置が低回転位置である場合は、トラクタTは路上など高速で移動する場合とし、更にクラッチペダル5が踏込まれているかどうかが判定される。
【0067】
そして前記クラッチペダル5が踏込み中(判定がYES)の場合は、停止状態、或いは路上での交差点などで徐々に車速を落とす操作と想定し、前記エンジンEの回転数に関係なく、前記車速センサ9の検出値に基づいて、変速位置を1速ずつアップダウンさせる。即ち車速値が大きいほど変速位置を高速段へ、小さいほど低速段へ切り替える。
【0068】
これにより、クラッチペダル5を踏込む場合は、走行面の状態に応じて車両の速度は変化するので、この速度に応じて変速位置が切り替わり、クラッチペダル5から足を離して動力が伝達されたときにも、急減速、急加速する事無く車速が円滑に変化し、車両の操作性が良い。
【0069】
またクラッチペダル5が踏込まれていない場合(判定がNO)の場合は、路上での通常走行として、まず車速が停止状態に近い一定値(凡そ0.5km/h)以上かどうかを判定し、これがNOの判定であれば、主変速位置4aを一気に最低速位置に切り替える。
【0070】
一方、車速が前記一定値を超えている場合は、前記アクセル位置センサ49と車速センサ9の検出によりエンジン回転数と車速を読み込み、予め設定した車速表(マップ)の値と比較して、前記エンジン回転数と車速値に相当する変速位置に近づく様、変速位置を1段ずつ増速、減速、或いは現変速段を維持する構成となっている。
【0071】
これにより、スロットルの保持位置が低回転の場合に、エンジン回転数に応じて変速位置が切り替わるので、加速中にアクセルペダル3から足を離せば加速が中断され、車速が高速に設定されつづけることが無く、所謂オートマチック式の自動車を運転する感覚で車両を安全に走行することができる。しかも、このアクセルペダル3による変速は、主変速の一部、即ち高速側の4段に亘ってのみ切り替わるので、目的とする車速に迅速に到達し、車両の操作性が良い。
【0072】
尚、前記車速表のマップでは、前記アクセルレバー2が所定の低回転位置に操作され、アクセルペダルが踏まれていない場合、主変速を第1速に設定する構成となっている。またこのアクセル操作に応じた変速制御は、前進時のみに作動する構成となっており、主変速装置4aの切替時には、主変速位置を切り替えるアクチュエータ、即ち第一、第二変速用油圧シリンダ8A,8B及び第二主変速装置4a2のクラッチCh,Cl内ピストンが作動する間には、前記前後進切替装置44の前進クラッチCfが切りに保持され、この圧着時には、エンジン回転数の変化率が大きい程、ゆっくりと前進クラッチCfを接続する構成となっている。
【0073】
また図19に示す増減速スイッチ6a,6bに応じた変速制御では、まず最初に
トラクタTが走行中かどうかをクラッチペダル5の踏み込み操作の有(停止中)無(走行中)で判定し、走行中と停止中のスイッチ6a,6bのON信号受け時間を夫れ夫れ設定して前記主変速位置4aを切り替える。
【0074】
詳しくは、トラクタTの走行中は、増減速スイッチ6a(6b)を継続して押込む場合に受け付けられる間隔t2(450msec)は、2回以上単発で連続して押込む場合に受け付けられる間隔t1(300msec)よりも、長く設定する構成となっている。
【0075】
これにより、走行中、増減速スイッチ6a,6bの単発操作では、オペレータ自らの認識があると想定し、迅速に変速位置を切り替え、長押し操作では。1段のスイッチ変速に要する操作時間を長くなるようにし、押込み操作が不用意に長引いても変速位置が過剰にアップダウンすることが防止され、変速操作性を向上することができる。
【0076】
またトラクタTの停止中にも、増減速スイッチ6a(6b)を継続して押込む場合に受け付けられる間隔t3(400msec)は、単発で連続して押込む場合に受け付けられる間隔t1(300msec)よりも、長く設定されているが、前記走行中の受け付け時間t2と比較して、この間隔を短期間に設定している。
【0077】
これにより、増減速スイッチ6a,6bを長押し操作した場合の走行中の操作と比較して、停止中の操作は変速操作に要する時間を極力短縮することができ、変速操作性を向上することができる。
【0078】
次に、図20乃至図23に基づいて、前記作業機制御用コントローラ10dによって実行される作業機のローリング制御について説明する。
【0079】
このローリング制御では、図20に示すように、まず最初に、前記操作パネル41上の水平切換スイッチS6の設定状態が判定され、これに応じ各モードに応じたローリング制御が実行される。
【0080】
前記ローリング制御の内、「平行」モードでは、図21に示すように、最初に前記リフトアーム角センサ16sより作業機Pの高さを検出し、この高さが非作業状態と想定される一定値に達しているかどうかを判定する。そして、この作業機Pの高さが一定値よりも高い位置であれば、作業機Pの傾き設定操作が受け付けられる。即ち、前記手動スイッチS8,S9の操作に応じてローリング用油圧シリンダ18を伸縮駆動し、この駆動を停止したときのストロークセンサ値を新たな作業機Pの左右傾き設定値として前記コントローラ10d内の記憶装置(EEPROM)に記憶する。その後、作業機Pを作業位置へ下降させて、作業機ローリング用油圧シリンダ18に外圧が掛ったり油漏れが生じても、このセンサ値が戻る様、即ち作業機Pの左右傾き傾きが保持されるように、前記ローリング用油圧シリンダ18のピストンを伸縮する。
【0081】
一方、前記作業機Pが予め設定した作業位置と想定される高さであれば、作業中に局所的に硬度の異なる場所が有って、作業機Pの左右傾きを一時的に変更する操作と想定し、図22に示すように、ローリング制御が継続されるる。即ち、手動スイッチS8,S9が操作されると制御弁へ通電が為され、作業機Pの左右ローリング姿勢が作業位置のままで調整される。その後、ローリング用油圧シリンダの駆動を止めると、前記作業機Pの上昇時の左右傾き設定値(前記記憶装置の記憶値)に優先して、この変更後の傾き値を保持する様、ローリング用油圧シリンダ18を駆動する。
【0082】
そして再度作業機Pを非作業位置に上昇させると、前記コントローラ10dに記憶された前記変更前の左右傾き値(ストロークセンサの検出値)を復帰させリターンとなる。
【0083】
これにより、次に作業機Pを下降したときには、作業機Pが前記変更前の傾き値に保持される様、前記ローリング用油圧シリンダ18のピストンが伸縮される。
【0084】
これにより、トラクタTのプラウ作業などで、局所的に軟弱な場所が有り作業機Pの傾きを一時的に変更する場合であっても、旋回時などで作業機Pを上昇した後は、元の傾き値が有効とされ、再度設定値を設定し直す必要が無く、ローリング制御に係る設定操作が簡単となる。また作業機Pを非作業位置へ上昇するまでは、作業機Pは変更後の左右傾きが保持されるので、圃場の耕深に大きな凹凸を作ることなく、安定した耕深で作業を行うことができる。
【0085】
またこの発明の別形態としては、作業機Pの傾きを下降位置のままで調整したときには、記憶装置の記憶値を保持したまま、単にローリング用油圧シリンダ18の駆動を牽制、或いはローリング制御の実行を制御を中断する構成としても良い。これにより、前記ローリング制御に掛る制御プログラムや記憶装置内のセンサ情報を単純化することができる。
【0086】
また前記発明は、車体に対する作業機の左右傾きを保持する「平行モード」に行う構成としたが、前記傾斜センサ26の値を移動平均する事で地表の傾きを検出し、この地表の傾きに対して作業機Pの左右傾きを保持する「傾斜モード」時に採用しても良い。
【0087】
次に図23に示す作業機Pのローリング規制に関する処理について説明する。
【0088】
前記処理では、前記昇降用油圧シリンダ15の駆動要求が有ったとき、即ち前記ワンタッチ式作業機昇降レバー29やポジションレバー40、或いはトラクタTの旋回操作に連動して作業機Pを上昇操作したとき、リフトアーム角度が別途任意に設定された高さ以上となると、前記ローリング用油圧シリンダ18の長さを判定し、これがキャビンなど車体側の部材と接触すると想定される程、傾いている場合(ストロークセンサ値が一定値より小さい場合)は、同シリンダ18のピストンを短縮する構成となっている。
【0089】
これにより、作業機Pが過剰に傾いた状態で上昇され、キャビン等に接触し、双方の破損、変形を防止する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】トラクタの全体側面図。
【図2】トラクタの背面図。
【図3】メータパネルの正面図。
【図4】(A)ミッションケースの側面図。(B)第一副変速センサの取付状態を示す正面図。(C)第二副変速センサの取付状態を示す側面図。
【図5】操作パネルの平面図。
【図6】トラクタの伝導機構線図。
【図7】トラクタのミッションケース内を展開した側面図。
【図8】トラクタの油圧回路図。
【図9】トラクタの変速表。
【図10】変速レバーの操作位置を示す図。
【図11】コントローラの接続状態を示す図。
【図12】メータパネル用コントローラの接続状態を示す図。
【図13】操作パネル用コントローラの接続状態を示す図。
【図14】走行用コントローラの接続状態を示す図。
【図15】作業機制御用コントローラの接続状態を示す図。
【図16】メータパネル用コントローラの制御処理を示すフローチャート。
【図17】自動変速制御の制御の概要を示すフローチャート。
【図18】アクセル操作に応じた変速制御の概要を示すフローチャート。
【図19】増減速スイッチに応じた変速制御の概要を示すフローチャート。
【図20】作業機ローリング制御の概要を示すフローチャート。
【図21】平行モードの制御の概要を示すフローチャート(1)。
【図22】平行モードの制御の概要を示すフローチャート(2)。
【図23】作業機の傾き規制処理の概要を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0091】
P プラウ作業機
S8 手動スイッチ(作業機右上げ)
S9 手動スイッチ(作業機右下げ)
T トラクタ
16 リフトアーム
16s リフトアーム角センサ
18 ローリング用油圧シリンダ
18s ストロークセンサ
26 傾斜センサ
10 コントローラ群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、同作業機(P)が非作業位置へ上昇される迄、前記作業機ローリング用アクチュエータ(18)の駆動を中断する制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置。
【請求項2】
作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、この変更後の左右ローリング位置を保持位置として前記対本機ローリング制御モードを作動し、同作業機(P)が非作業位置へ上昇した後には、前記変更前の記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を復帰させる制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置。
【請求項1】
作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、同作業機(P)が非作業位置へ上昇される迄、前記作業機ローリング用アクチュエータ(18)の駆動を中断する制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置。
【請求項2】
作業機(P)を車体後部にリンク機構を介して昇降且つローリング自在に連結し、この作業機(P)の左右ローリング姿勢を、車体の傾斜センサ(26)の値に応じて所定の左右傾き状態、或いは平行状態に保持する対地ローリング制御モードと、前記リンク機構に備えた作業機ローリング用アクチュエータ(18)の長さを保持することで、車体に対する左右傾き状態、或いは平行状態を保持する対本機ローリング制御モードを有するトラクタであって、
前記作業機(P)の車体に対する左右ローリング姿勢を設定する手動設定器(S8,S9)と、
前記設定された左右ローリング姿勢を記憶する記憶装置と、
前記作業機(P)の昇降位置を検出するセンサ(16s)とを設け、
前記記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を実行中、前記手動設定器(S8,S9)によって作業機(P)が作業位置と想定される高さで左右ローリング姿勢が変更された場合は、この変更操作応じて作業機(P)の左右傾き姿勢を変更すると共に、この変更後の左右ローリング位置を保持位置として前記対本機ローリング制御モードを作動し、同作業機(P)が非作業位置へ上昇した後には、前記変更前の記憶装置の値に基づいて対本機ローリング制御を復帰させる制御手段(10)を設けたことを特徴とするトラクタの作業機ローリング制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
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【図20】
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【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−13(P2006−13A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177127(P2004−177127)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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