トラクタ
【課題】燃料供給を行いやすいのみならず、原動部の特別な保守、点検作業も容易にかつ能率よく行うことができるトラクタを提供する。
【解決手段】車体フレームに支持されて、カバー(下部エンジンボンネット21a)の横側方部位の内側を車体フレームから上方側に延びるように取り付けられた補強板25と、その補強板25の外面側との間にカバー21aの横側方部位を挟持する状態で補強板25に連結された支持部32と、その支持部32に支軸31で支持されて、支軸31の回りに回動して、載置面34が車体上方向きになった使用姿勢と、前記載置面34が車体横向きになった格納姿勢とに、切換え自在な載置部材30とを備えている。燃料タンクへの燃料供給時には、載置部材30を使用姿勢に切換えて、燃料供給タンクを載置面34上に載置し、注油口キャップを支持部32に設けたキャップホルダ部50に収容する。
【解決手段】車体フレームに支持されて、カバー(下部エンジンボンネット21a)の横側方部位の内側を車体フレームから上方側に延びるように取り付けられた補強板25と、その補強板25の外面側との間にカバー21aの横側方部位を挟持する状態で補強板25に連結された支持部32と、その支持部32に支軸31で支持されて、支軸31の回りに回動して、載置面34が車体上方向きになった使用姿勢と、前記載置面34が車体横向きになった格納姿勢とに、切換え自在な載置部材30とを備えている。燃料タンクへの燃料供給時には、載置部材30を使用姿勢に切換えて、燃料供給タンクを載置面34上に載置し、注油口キャップを支持部32に設けたキャップホルダ部50に収容する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動部の車体横側に脱着自在に位置する下部エンジンボンネットと、前記下部エンジンボンネットの上方を開閉する揺動開閉自在な上部エンジンボンネットとが装備されたエンジンボンネットを備え、前記エンジンボンネットの内部に設けた燃料タンクを備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに燃料供給する作業を楽に行うことができるトラクタとして、特許文献1に示されたものを先に開発した。
特許文献1に示されたトラクタは、ボンネット部の横外側に配置した補助台を備えている。補助台は、給油用の容器を載置する載置面を備えている。補助台は、クラッチハウジングの右側面に下端部が連結された支持部材の上端部に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−335650号公報(段落〔0018〕、〔0019〕、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した下部エンジンボンネットと上部エンジンボンネットとを備えたトラクタは、エンジン冷却用ラジエータの冷却水供給など、通常の保守や点検を行う際、下部エンジンボンネットを開けずに、上部エンジンボンネットだけを開ければ済ませることができる。エンジンオイルの交換など、特別な保守や点検を行う際、下部エンジンボンネットを取り外してエンジンボンネット内部を開放するものである。
【0005】
この種のトラクタにおいて、燃料供給タンクの載置に使用する載置部材を設けるのに上記した従来の技術を採用すると、上記した特別な保守、点検の際、手間が掛かりがちになる場合があった。
つまり、下部エンジンボンネットの脱着、保守や点検作業を行う際、載置部材や、載置部材を支持する部材が障害物になることがあった。載置部材や支持部材を障害物にならないように取り外せば、その脱着のための手間が掛かる。
【0006】
本発明の目的は、燃料供給を行いやすいのみならず、原動部の特別な保守、点検作業も容易にかつ能率よく行うことができるトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、原動部の車体横側に脱着自在に位置する下部エンジンボンネットと、前記下部エンジンボンネットの上方を開閉する揺動開閉自在な上部エンジンボンネットとが装備されたエンジンボンネットを備え、前記エンジンボンネットの内部に設けた燃料タンクを備えたトラクタにおいて、
燃料供給タンクの載置に使用する載置部材を、載置面が車体上方向きになった使用姿勢と、前記載置面が車体横向きで前記下部ボンネットに沿う姿勢になった格納姿勢とに切換え自在に前記下部エンジンボンネットに支持させてあり、
前記下部エンジンボンネットの下端部と前記車体とを連結する下連結機構と、
前記下部エンジンボンネットの上端部と前記車体とを連結する上連結機構と、
前記下部エンジンボンネットに、この下部エンジンボンネットの前記載置部材を支持している部位の裏面側に当て付けた補強板とを備え、
前記補強板は、前記下部エンジンボンネット側の前記下連結機構を構成する部材から前記上連結機構を構成する部材にわたって設けられ、
前記補強板に連結させて前記下部エンジンボンネットに支持部が設けられ、
その支持部に前記載置部材を支持させている。
【0008】
本第1発明の構成によると、載置部材を使用姿勢に切換えれば、載置部材の載置面が車体上方向きになり、その載置面に燃料供給タンクを載置して燃料タンクに燃料供給することができる。
【0009】
本第1発明の構成によると、載置部材を下部エンジンボンネットに支持させたままにして下部エンジンボンネットを取り外すことにより、載置部材と下部エンジンボンネットとが一挙に外れ、載置部材が障害物にならない状態で原動部の特別な保守や点検を行うことができる。
【0010】
従って、燃料タンクへの燃料供給を行うのに、燃料供給タンクを載置部材に載置して楽に行うことができる。しかも、原動部の特別な保守や点検を行うのに、載置部材を取り外すための特別な手間を掛けずに、かつ、載置部材による障害を受けないで楽にかつ能率よく行うことができる。
【0011】
しかも、本第1発明の構成によると、燃料供給タンクを載置部材に載置したことによる荷重が下部エンジンボンネットに掛かっても下部エンジンボンネットに変形が発生しにくい強度を補強板によって下部エンジンボンネットに備えさせることができる。
【0012】
従って、下部エンジンボンネットの変形を防止しながら燃料供給タンクを載置できるものを、補強板を備えさせるだけで安価に得ることができる。
【0013】
本第2発明では、前記下連結機構は、前記下部エンジンボンネットに設けられた丸棒材からなる連結杆と、前記車体に設けられ当該連結杆が回動係脱自在に係入する係合片と、から構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタの全体平面図
【図3】原動部の上部エンジンボンネット開き状態での側面図
【図4】載置部材支持構造の分解状態での斜視図
【図5】載置部材支持構造の載置部材使用姿勢での側面図
【図6】載置部材支持構造の載置部材格納姿勢での側面図
【図7】(a)は、載置部材支持構造の載置部材使用姿勢での縦断正面図、(b)は、載置部材支持構造の載置部材格納姿勢での縦断正面図
【図8】下部エンジンボンネットの取り付け状態での縦断正面図
【図9】下部エンジンボンネットの取り外し状態での縦断正面図
【図10】(a)は、ロック機構の格納ロック状態での側面図、(b)は、ロック機構の使用ロック状態での側面図
【図11】上前連結機構の斜視図
【図12】下連結機構の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する
図1は、本発明の実施例に係るトラクタの全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係るトラクタの全体平面図である。これらの図に示すように、本実施例に係るトラクタは、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走し、かつ、車体前部に設けたエンジン7を有した原動部20と、運転座席4a及びステアリングハンドル4bを有した運転部4とが装備された自走車を備え、この自走車の車体フレーム3に運転座席4aの後側近くで立設された転倒保護枠5と、前記車体フレーム3の後部に設けたリンク機構6とを備えている。
【0016】
このトラクタは、自走車の車体後部にロータリ耕耘装置(図示せず)を前記リンク機構6によって昇降操作自在に連結するとともに前記エンジン7からの駆動力をロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型耕耘機を構成するなど、車体後部に各種の作業装置を昇降操作及び駆動自在に連結して各種の乗用型作業機を構成する。
【0017】
すなわち、前記車体フレーム3は、前記エンジン7と、このエンジン7の後部に連設されたクラッチハウジング8と、このクラッチハウジング8の後部に連結された伝動ケース9と、この伝動ケース9の後部に連結されたミッションケース10と、前記エンジン7の下部に連結された前輪支持フレーム11とを備えて構成してある。
【0018】
前記ミッションケース10は、前記左右一対の後車輪2,2を回転自在に支持している。前記前輪支持フレーム11は、前記前車輪1が両横端部に回転自在に取り付けられた前輪駆動ケースを介して前記左右一対の前車輪1,1を支持している。前記ミッションケース10は、前記エンジン7から前記クラッチハウジング8及び前記伝動ケース9を介して動力伝達される走行ミッション(図示せず)を内部に備え、この走行ミッションによって前記左右一対の後車輪2,2と前記左右一対の前車輪1,1とに動力伝達する。
【0019】
前記リンク機構6は、前記ミッションケース10の上部に上下揺動自在に設けた左右一対のリフトアーム6a,6aと、前記ミッションケース10の下部から車体後方向きに上下揺動自在に延出した左右一対のロワーリンク6b,6bと、前記左側のリフトアーム6aと前記左側のロワーリンク6bとを連結するリフトロッド6cと、前記右側のリフトアーム6aと前記右側のロワーリンク6bとを連結するリフトロッド6cとを備えて構成してある。
【0020】
すなわち、リンク機構6は、前記左右一対のロワーリンク6b,6bの延出端部に各種の作業装置を連結し、前記左右一対のリフトアーム6a,6aをミッションケース10の内部に位置した油圧シリンダ(図示せず)によって上下に揺動操作して左右一対のロワーリンク6b,6bをミッションケース10に対して上下に揺動操作することにより、作業装置を車体フレーム3に対して昇降操作する。車体後部に連結された作業装置は、前記ミッションケース10の内部に収容されている作業ミッション(図示せず)によって前記エンジン7からの駆動力が伝達される。
【0021】
図1,2に示すように、前記原動部20は、前記エンジン7を備える他、このエンジン7を収容するエンジンボンネット21と、このエンジンボンネット21の車体後方側に位置した運転パネル4cの内部と前記エンジンボンネット21の内部とにわたって設けたエンジン用の燃料タンク22とを備えている。
【0022】
前記エンジンボンネット21は、原動部20の左右の車体横側に設けた下部エンジンボンネット21aと、前記左右一対の下部エンジンボンネット21a,21aの車体前方側に設けた前部エンジンボンネット21bと、この前部エンジンボンネット21bと前記左右一対の下部エンジンボンネット21a,21aとの上方に設けた上部エンジンボンネット21cとを備えて構成してある。
【0023】
図1は、上部エンジンボンネット21cの閉じ状態を示している。図3は、上部エンジンボンネット21cの開き状態を示している。これらの図に示すように、前記上部エンジンボンネット21cは、上部エンジンボンネット21cの後端側と、車体フレーム3に設けたピラー13とを連結している連結機構に設けた車体横向きの軸芯Xまわりに上下に揺動開閉し、下部エンジンボンネット21a及び前部エンジンボンネット21bの上方でエンジンボンネット21の内部を開閉する。
【0024】
前記ピラー13は、前記燃料タンク22の両横側に車体上下方向に沿って位置する縦枠部と、燃料タンク22の上方を車体横方向に沿って位置する横枠部とを備えるよう車体前後方向視で門形になっている。前記燃料タンク22は、前記ピラー13に支持されている。
【0025】
図3に示すように、前記左右一対の下部エンジンボンネット21a,21aは、下部エンジンボンネット21aの下端部に設けた前後一対の下連結機構60,60と、下部エンジンボンネット21aの前端側の上部に設けた前上連結機構65と、下部エンジンボンネット21aの後端側の上部に設けた後上連結機構66とによって車体側に取り付けられている。
【0026】
図6,8,12に示すように、前記前後一対の下連結機構60,60は、下部エンジンボンネット21aに丸棒材を取り付けて設けた車体前後向きの連結杆61と、この連結杆61が回動及び係脱自在に係入するよう車体上方向きに開口したフック形に構成して車体側に設けた係合片62とを備えて構成してある。前記前側の下連結機構60の前記係合片62は、前記前輪支持フレーム11に支持されている。前記後側の下連結機構60の前記係合片62は、前記ピラー13に支持されている。
【0027】
図8,9,11に示すように、前記前上連結機構65と前記後上連結機構66とは、下部エンジンボンネット21aに帯板材を取り付けて設けた連結片67と、車体側に設けたステー68と、前記連結片67を前記ステー68に脱着自在に連結する連結ネジ69とを備えて構成してある。前記前上連結機構65の前記ステー68は、エンジン用のエヤクリーナを支持するよう前記前輪支持フレーム11に設けた支持枠に支持されている。前記後上連結機構66の前記ステー68は、前記ピラー13に支持されている。
【0028】
図9は、下部エンジンボンネット21aの取り外し状態での縦断正面図である。この図に示すように、前記各下部エンジンボンネット21aは、エンジン7のオイル交換など特別な保守や点検を行う際、前上連結機構65及び後上連結機構66における連結片67とステー68との連結ネジ69による連結を解除し、前後一対の下連結機構60,60における連結杆61を係合片62から抜き外すことにより、車体側から外れてエンジンボンネット21の内部を開放する。
【0029】
図8に脱着途中での下部エンジンボンネット21aを二点鎖線で示している。この図に示すように、下部エンジンボンネット21は、脱着の際、下連結機構60を揺動支点とし、下部エンジンボンネット21aの重量を車体側に支持させながら揺動させて脱着することができる。
【0030】
図1,2に示すように、前記燃料タンク22は、前記上部エンジンボンネット21cの後端部に設けた注油孔に臨んだ注油口23を備えている。上部エンジンボンネット21cの注油孔は、揺動開閉自在な蓋体26によって開閉される。燃料タンク22の注油口23は、エンジボンネット21の車体横方向での中心に対し、一方の下部エンジンボンネット21aが位置する側に偏倚している。
【0031】
図1,2に示すように、前記原動部20は、前記エンジンボンネット21の両横外側のうちの前記注油口23に近い側の横外側に設けた載置部材30を備えている。
【0032】
図4は、前記載置部材30の支持構造の分解状態での斜視図である。図5は、前記載置部材30の支持構造の側面図である。図7は、前記載置部材30の支持構造の縦断正面図である。これらの図に示すように、載置部材30は、これの横幅方向での一端部に連結された走行機体前後向きの支軸31を介し、前記下部エンジンボンネット21の後端部に設けた支持部32に支持されている。
【0033】
前記支持部32は、下部エンジンボンネット21aに連結ボルト33によって取り付けられた折り曲げ板金で成り、車体前後方向に並んだ一対の支持板32a,32aを備えている。前記支軸31の前端側は、載置部材30に一体回転自在に連結され、前記支軸31の後端側は、前記前後一対の支持板32a,32aに回転自在に連結されており、載置部材30は、前記支軸31が備える車体前後向きの軸芯Pまわりに揺動するよう支持部32に枢支されている。支軸31は、前後一対の支持板32a,32aに摺動自在に支持されている。
【0034】
図4,8に示すように、前記下部エンジンボンネット21aは、この下部エンジンボンネット21aの前記支持部32を備えている部位の裏面側に当て付けた補強板25を備え、載置部材30の使用を可能にする強度を備えるよう補強板25によって補強されている。補強板25は、下部エンジンボンネット21aの上端部Uから下端部Dに至る下部エンジンボンネット上下方向での長さを備えた状態で前記連結ボルト33による前記支持部32との共締めによって下部エンジンボンネット21aに当て付けられている。
【0035】
下部エンジンボンネット21aの前記上端部Uは、上部エンジンボンネット21cが閉じられた際、上部エンジンボンネット21cの周縁部と係合し合う部位である。下部エンジンボンネット21aの前記下端部Dは、下部エンジボンネット部21aの裏面側に向かって折り曲げられた端部を備えている部位である。補強板24は、前記下連結機構60の前記連結杆61が取り付けられる支持部と、前記後上連結機構66の連結片67が取り付けられる支持部とを下部エンジンボンネット21aに形成している。
【0036】
図5に示すように、前記支持部32は、前記後側の支持板32aと前記支軸31とにわたって設けたロック機構40を備えている。図4,5,7に示すように、ロック機構40は、前記一対の支持板32a,32aの間で前記支軸31に一体回転自在に設けた横断面円形の位置決めピン41と、前記後側の支持板32aに固定された保持カム42と、前記位置決めピン41と前記前側の支持板32aとの間に配置して前記支軸31に装着したロックバネ43とを備えて構成してある。前記保持カム42は、使用保持凹部44と格納保持凹部45とを支軸31の周方向に並べて備えている。ロックバネ43は、前記前側の支持板32aを反力部材として前記位置決めピン41に押圧作用することによって支軸31を摺動付勢し、これによって位置決めピン41を使用保持凹部44および格納保持凹部45に係入付勢している。
【0037】
図5、図7(a)は、載置部材30が使用姿勢で支持された状態と、ロック機構40の使用ロック状態とを示している。これらの図に示すように、載置部材30が前記軸芯Pまわりに揺動操作され、位置決めピン41と使用保持凹部44とが合致すると、載置部材30は、この載置部材30の補強突条34aを備えた載置面34が車体上方向きになった使用姿勢になる。載置部材30が使用姿勢になると、これに伴ってロックバネ43が位置決めピン41を使用保持凹部44に係入した状態、すなわち図10(b)に示す状態に操作する。これにより、ロック機構40は、保持カム42による位置決めピン41を介しての支軸31の係止によって載置部材30を使用姿勢に保持するよう使用ロック状態になる。
【0038】
図6、図7(b)は、載置部材30が格納姿勢で支持された状態と、ロック機構40の格納ロック状態とを示している。これらの図に示すように、載置部材30が前記軸芯Pのまわりに揺動操作され、位置決めピン41と格納保持凹部45とが合致すると、載置部材30は、載置面34が車体横方向での外側を向いた状態で下部エンジンボンネット21aの外側面に沿った格納姿勢になる。載置部材30が格納姿勢になると、これに伴ってロックバネ43が位置決めピン41を格納保持凹部45に係入した状態、すなわち図10(a)に示す状態に操作する。これにより、ロック機構40は、保持カム42による位置決めピン41を介しての支軸31の係止によって載置部材30を格納姿勢に保持するよう格納ロック状態になる。
【0039】
載置部材30が格納姿勢から使用姿勢に向けて揺動操作されると、位置決めピン41が格納保持凹部45から抜け外れてロック機構40が自ずと格納ロック状態を解除するよう、格納保持凹部45の深さが位置決めピン41の半径よりも小さい深さになっている。載置部材30が使用姿勢にされると、載置部材30に掛かった荷重によって位置決めピン41が使用保持凹部44から抜け外れないよう、使用保持凹部44の深さが格納保持凹部45よりも深くなっている。具体的には位置決めピン41の半径よりも大きい深さになっている。これにより、載置部材30がロックバネ43に抗して摺動操作されることにより、位置決めピン41が使用保持凹部44から抜け外れ、ロック機構40が使用ロック状態を解除する。
【0040】
図5に示すように、前記支持部32は、支持板32aに対して載置部材30が位置する側とは反対側に配置したキャップホルダ部50を備えている。このキャップホルダ部50は、前記ロック機構40を覆うよう前後一対の支持板32a,32aに装着された樹脂材製のカバー51に一体成形してある。図4は、カバー51の斜視状態を示している。図5は、キャップホルダ部50の注油口キャップ収容状態での側面図である。これらの図に示すように、キャップホルダ部50は、これの底部50aによって前記注油口キャップ24の外周面部を受け止め支持し、キャップホルダ部50の先端部50bによって注油口キャップ24の上面を係止することにより、注油口キャップ24を収容する。
【0041】
つまり、燃料タンク22に燃料供給する際、載置部材30を使用姿勢に切り換え操作する。このとき、載置部材30の格納姿勢から使用姿勢に向けての上昇操作により、位置決めピン41が格納保持凹部45から自ずと抜け外れてロック機構40が格納ロック状態を解除し、載置部材30の格納ロックが外れる。載置部材30が上昇揺動して使用姿勢に切り換わると、これに伴って位置決めピン41がロックばね43のために使用保持凹部44に係入してロック機構40が使用ロック状態に自ずと切り換わり、載置部材30が使用姿勢に保持される。これにより、燃料供給タンク55を載置部材30の載置面34に載置し、燃料供給タンク55を載置部材30に支持させながら楽に燃料供給することができる。このとき、燃料タンク22から取り外した注油口キャップ24をキャップホルダ部50に収容しておくことにより、注油口キャップ24の燃料タンク22への付け忘れを防止できる。すなわち、燃料供給を終えて載置部材30を格納する際、キャップホルダ部50に注油口キャップ24が存在していると、これを知って注油口キャップ24の付け忘れが認識される。
【0042】
燃料タンク22の燃料供給を終えると、載置部材30をロックばね43に抗して摺動操作する。これによって位置決めピン41が使用保持凹部44から抜け外れ、ロック機構40が使用ロック状態を解除する。これによって載置部材30の使用姿勢でのロックが解除されると、載置部材30を下降揺動操作する。すると、載置部材30が格納姿勢に切り換わる。これに伴って位置決めピン41がロックばね43のために格納保持凹部45に係入し、ロック機構40が使用ロック状態になる。これにより、載置部材30を使用時よりも車体内側に引退させて、かつ、振動によって容易に揺れ動かないように保持させて格納することができる。
【0043】
〔別実施例〕
上記した実施例の載置部材30に替え、載置部材30は、使用姿勢から上昇揺動されることによって格納姿勢になり、格納姿勢になった載置部材30は、載置面34が車体横方向での内側を向いた状態で下部エンジンボンネット21aと上部エンジンボンネット21cとの外側面に沿った取り付け姿勢になる構成を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0044】
20 原動部
21 エンジンボンネット
21a 下部エンジンボンネット
21c 上部エンジンボンネット
22 燃料タンク
25 補強板
55 燃料供給タンク
U 下部エンジンボンネットの上端部
D 下部エンジンボンネットの下端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動部の車体横側に脱着自在に位置する下部エンジンボンネットと、前記下部エンジンボンネットの上方を開閉する揺動開閉自在な上部エンジンボンネットとが装備されたエンジンボンネットを備え、前記エンジンボンネットの内部に設けた燃料タンクを備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに燃料供給する作業を楽に行うことができるトラクタとして、特許文献1に示されたものを先に開発した。
特許文献1に示されたトラクタは、ボンネット部の横外側に配置した補助台を備えている。補助台は、給油用の容器を載置する載置面を備えている。補助台は、クラッチハウジングの右側面に下端部が連結された支持部材の上端部に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−335650号公報(段落〔0018〕、〔0019〕、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した下部エンジンボンネットと上部エンジンボンネットとを備えたトラクタは、エンジン冷却用ラジエータの冷却水供給など、通常の保守や点検を行う際、下部エンジンボンネットを開けずに、上部エンジンボンネットだけを開ければ済ませることができる。エンジンオイルの交換など、特別な保守や点検を行う際、下部エンジンボンネットを取り外してエンジンボンネット内部を開放するものである。
【0005】
この種のトラクタにおいて、燃料供給タンクの載置に使用する載置部材を設けるのに上記した従来の技術を採用すると、上記した特別な保守、点検の際、手間が掛かりがちになる場合があった。
つまり、下部エンジンボンネットの脱着、保守や点検作業を行う際、載置部材や、載置部材を支持する部材が障害物になることがあった。載置部材や支持部材を障害物にならないように取り外せば、その脱着のための手間が掛かる。
【0006】
本発明の目的は、燃料供給を行いやすいのみならず、原動部の特別な保守、点検作業も容易にかつ能率よく行うことができるトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、原動部の車体横側に脱着自在に位置する下部エンジンボンネットと、前記下部エンジンボンネットの上方を開閉する揺動開閉自在な上部エンジンボンネットとが装備されたエンジンボンネットを備え、前記エンジンボンネットの内部に設けた燃料タンクを備えたトラクタにおいて、
燃料供給タンクの載置に使用する載置部材を、載置面が車体上方向きになった使用姿勢と、前記載置面が車体横向きで前記下部ボンネットに沿う姿勢になった格納姿勢とに切換え自在に前記下部エンジンボンネットに支持させてあり、
前記下部エンジンボンネットの下端部と前記車体とを連結する下連結機構と、
前記下部エンジンボンネットの上端部と前記車体とを連結する上連結機構と、
前記下部エンジンボンネットに、この下部エンジンボンネットの前記載置部材を支持している部位の裏面側に当て付けた補強板とを備え、
前記補強板は、前記下部エンジンボンネット側の前記下連結機構を構成する部材から前記上連結機構を構成する部材にわたって設けられ、
前記補強板に連結させて前記下部エンジンボンネットに支持部が設けられ、
その支持部に前記載置部材を支持させている。
【0008】
本第1発明の構成によると、載置部材を使用姿勢に切換えれば、載置部材の載置面が車体上方向きになり、その載置面に燃料供給タンクを載置して燃料タンクに燃料供給することができる。
【0009】
本第1発明の構成によると、載置部材を下部エンジンボンネットに支持させたままにして下部エンジンボンネットを取り外すことにより、載置部材と下部エンジンボンネットとが一挙に外れ、載置部材が障害物にならない状態で原動部の特別な保守や点検を行うことができる。
【0010】
従って、燃料タンクへの燃料供給を行うのに、燃料供給タンクを載置部材に載置して楽に行うことができる。しかも、原動部の特別な保守や点検を行うのに、載置部材を取り外すための特別な手間を掛けずに、かつ、載置部材による障害を受けないで楽にかつ能率よく行うことができる。
【0011】
しかも、本第1発明の構成によると、燃料供給タンクを載置部材に載置したことによる荷重が下部エンジンボンネットに掛かっても下部エンジンボンネットに変形が発生しにくい強度を補強板によって下部エンジンボンネットに備えさせることができる。
【0012】
従って、下部エンジンボンネットの変形を防止しながら燃料供給タンクを載置できるものを、補強板を備えさせるだけで安価に得ることができる。
【0013】
本第2発明では、前記下連結機構は、前記下部エンジンボンネットに設けられた丸棒材からなる連結杆と、前記車体に設けられ当該連結杆が回動係脱自在に係入する係合片と、から構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタの全体平面図
【図3】原動部の上部エンジンボンネット開き状態での側面図
【図4】載置部材支持構造の分解状態での斜視図
【図5】載置部材支持構造の載置部材使用姿勢での側面図
【図6】載置部材支持構造の載置部材格納姿勢での側面図
【図7】(a)は、載置部材支持構造の載置部材使用姿勢での縦断正面図、(b)は、載置部材支持構造の載置部材格納姿勢での縦断正面図
【図8】下部エンジンボンネットの取り付け状態での縦断正面図
【図9】下部エンジンボンネットの取り外し状態での縦断正面図
【図10】(a)は、ロック機構の格納ロック状態での側面図、(b)は、ロック機構の使用ロック状態での側面図
【図11】上前連結機構の斜視図
【図12】下連結機構の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する
図1は、本発明の実施例に係るトラクタの全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係るトラクタの全体平面図である。これらの図に示すように、本実施例に係るトラクタは、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走し、かつ、車体前部に設けたエンジン7を有した原動部20と、運転座席4a及びステアリングハンドル4bを有した運転部4とが装備された自走車を備え、この自走車の車体フレーム3に運転座席4aの後側近くで立設された転倒保護枠5と、前記車体フレーム3の後部に設けたリンク機構6とを備えている。
【0016】
このトラクタは、自走車の車体後部にロータリ耕耘装置(図示せず)を前記リンク機構6によって昇降操作自在に連結するとともに前記エンジン7からの駆動力をロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型耕耘機を構成するなど、車体後部に各種の作業装置を昇降操作及び駆動自在に連結して各種の乗用型作業機を構成する。
【0017】
すなわち、前記車体フレーム3は、前記エンジン7と、このエンジン7の後部に連設されたクラッチハウジング8と、このクラッチハウジング8の後部に連結された伝動ケース9と、この伝動ケース9の後部に連結されたミッションケース10と、前記エンジン7の下部に連結された前輪支持フレーム11とを備えて構成してある。
【0018】
前記ミッションケース10は、前記左右一対の後車輪2,2を回転自在に支持している。前記前輪支持フレーム11は、前記前車輪1が両横端部に回転自在に取り付けられた前輪駆動ケースを介して前記左右一対の前車輪1,1を支持している。前記ミッションケース10は、前記エンジン7から前記クラッチハウジング8及び前記伝動ケース9を介して動力伝達される走行ミッション(図示せず)を内部に備え、この走行ミッションによって前記左右一対の後車輪2,2と前記左右一対の前車輪1,1とに動力伝達する。
【0019】
前記リンク機構6は、前記ミッションケース10の上部に上下揺動自在に設けた左右一対のリフトアーム6a,6aと、前記ミッションケース10の下部から車体後方向きに上下揺動自在に延出した左右一対のロワーリンク6b,6bと、前記左側のリフトアーム6aと前記左側のロワーリンク6bとを連結するリフトロッド6cと、前記右側のリフトアーム6aと前記右側のロワーリンク6bとを連結するリフトロッド6cとを備えて構成してある。
【0020】
すなわち、リンク機構6は、前記左右一対のロワーリンク6b,6bの延出端部に各種の作業装置を連結し、前記左右一対のリフトアーム6a,6aをミッションケース10の内部に位置した油圧シリンダ(図示せず)によって上下に揺動操作して左右一対のロワーリンク6b,6bをミッションケース10に対して上下に揺動操作することにより、作業装置を車体フレーム3に対して昇降操作する。車体後部に連結された作業装置は、前記ミッションケース10の内部に収容されている作業ミッション(図示せず)によって前記エンジン7からの駆動力が伝達される。
【0021】
図1,2に示すように、前記原動部20は、前記エンジン7を備える他、このエンジン7を収容するエンジンボンネット21と、このエンジンボンネット21の車体後方側に位置した運転パネル4cの内部と前記エンジンボンネット21の内部とにわたって設けたエンジン用の燃料タンク22とを備えている。
【0022】
前記エンジンボンネット21は、原動部20の左右の車体横側に設けた下部エンジンボンネット21aと、前記左右一対の下部エンジンボンネット21a,21aの車体前方側に設けた前部エンジンボンネット21bと、この前部エンジンボンネット21bと前記左右一対の下部エンジンボンネット21a,21aとの上方に設けた上部エンジンボンネット21cとを備えて構成してある。
【0023】
図1は、上部エンジンボンネット21cの閉じ状態を示している。図3は、上部エンジンボンネット21cの開き状態を示している。これらの図に示すように、前記上部エンジンボンネット21cは、上部エンジンボンネット21cの後端側と、車体フレーム3に設けたピラー13とを連結している連結機構に設けた車体横向きの軸芯Xまわりに上下に揺動開閉し、下部エンジンボンネット21a及び前部エンジンボンネット21bの上方でエンジンボンネット21の内部を開閉する。
【0024】
前記ピラー13は、前記燃料タンク22の両横側に車体上下方向に沿って位置する縦枠部と、燃料タンク22の上方を車体横方向に沿って位置する横枠部とを備えるよう車体前後方向視で門形になっている。前記燃料タンク22は、前記ピラー13に支持されている。
【0025】
図3に示すように、前記左右一対の下部エンジンボンネット21a,21aは、下部エンジンボンネット21aの下端部に設けた前後一対の下連結機構60,60と、下部エンジンボンネット21aの前端側の上部に設けた前上連結機構65と、下部エンジンボンネット21aの後端側の上部に設けた後上連結機構66とによって車体側に取り付けられている。
【0026】
図6,8,12に示すように、前記前後一対の下連結機構60,60は、下部エンジンボンネット21aに丸棒材を取り付けて設けた車体前後向きの連結杆61と、この連結杆61が回動及び係脱自在に係入するよう車体上方向きに開口したフック形に構成して車体側に設けた係合片62とを備えて構成してある。前記前側の下連結機構60の前記係合片62は、前記前輪支持フレーム11に支持されている。前記後側の下連結機構60の前記係合片62は、前記ピラー13に支持されている。
【0027】
図8,9,11に示すように、前記前上連結機構65と前記後上連結機構66とは、下部エンジンボンネット21aに帯板材を取り付けて設けた連結片67と、車体側に設けたステー68と、前記連結片67を前記ステー68に脱着自在に連結する連結ネジ69とを備えて構成してある。前記前上連結機構65の前記ステー68は、エンジン用のエヤクリーナを支持するよう前記前輪支持フレーム11に設けた支持枠に支持されている。前記後上連結機構66の前記ステー68は、前記ピラー13に支持されている。
【0028】
図9は、下部エンジンボンネット21aの取り外し状態での縦断正面図である。この図に示すように、前記各下部エンジンボンネット21aは、エンジン7のオイル交換など特別な保守や点検を行う際、前上連結機構65及び後上連結機構66における連結片67とステー68との連結ネジ69による連結を解除し、前後一対の下連結機構60,60における連結杆61を係合片62から抜き外すことにより、車体側から外れてエンジンボンネット21の内部を開放する。
【0029】
図8に脱着途中での下部エンジンボンネット21aを二点鎖線で示している。この図に示すように、下部エンジンボンネット21は、脱着の際、下連結機構60を揺動支点とし、下部エンジンボンネット21aの重量を車体側に支持させながら揺動させて脱着することができる。
【0030】
図1,2に示すように、前記燃料タンク22は、前記上部エンジンボンネット21cの後端部に設けた注油孔に臨んだ注油口23を備えている。上部エンジンボンネット21cの注油孔は、揺動開閉自在な蓋体26によって開閉される。燃料タンク22の注油口23は、エンジボンネット21の車体横方向での中心に対し、一方の下部エンジンボンネット21aが位置する側に偏倚している。
【0031】
図1,2に示すように、前記原動部20は、前記エンジンボンネット21の両横外側のうちの前記注油口23に近い側の横外側に設けた載置部材30を備えている。
【0032】
図4は、前記載置部材30の支持構造の分解状態での斜視図である。図5は、前記載置部材30の支持構造の側面図である。図7は、前記載置部材30の支持構造の縦断正面図である。これらの図に示すように、載置部材30は、これの横幅方向での一端部に連結された走行機体前後向きの支軸31を介し、前記下部エンジンボンネット21の後端部に設けた支持部32に支持されている。
【0033】
前記支持部32は、下部エンジンボンネット21aに連結ボルト33によって取り付けられた折り曲げ板金で成り、車体前後方向に並んだ一対の支持板32a,32aを備えている。前記支軸31の前端側は、載置部材30に一体回転自在に連結され、前記支軸31の後端側は、前記前後一対の支持板32a,32aに回転自在に連結されており、載置部材30は、前記支軸31が備える車体前後向きの軸芯Pまわりに揺動するよう支持部32に枢支されている。支軸31は、前後一対の支持板32a,32aに摺動自在に支持されている。
【0034】
図4,8に示すように、前記下部エンジンボンネット21aは、この下部エンジンボンネット21aの前記支持部32を備えている部位の裏面側に当て付けた補強板25を備え、載置部材30の使用を可能にする強度を備えるよう補強板25によって補強されている。補強板25は、下部エンジンボンネット21aの上端部Uから下端部Dに至る下部エンジンボンネット上下方向での長さを備えた状態で前記連結ボルト33による前記支持部32との共締めによって下部エンジンボンネット21aに当て付けられている。
【0035】
下部エンジンボンネット21aの前記上端部Uは、上部エンジンボンネット21cが閉じられた際、上部エンジンボンネット21cの周縁部と係合し合う部位である。下部エンジンボンネット21aの前記下端部Dは、下部エンジボンネット部21aの裏面側に向かって折り曲げられた端部を備えている部位である。補強板24は、前記下連結機構60の前記連結杆61が取り付けられる支持部と、前記後上連結機構66の連結片67が取り付けられる支持部とを下部エンジンボンネット21aに形成している。
【0036】
図5に示すように、前記支持部32は、前記後側の支持板32aと前記支軸31とにわたって設けたロック機構40を備えている。図4,5,7に示すように、ロック機構40は、前記一対の支持板32a,32aの間で前記支軸31に一体回転自在に設けた横断面円形の位置決めピン41と、前記後側の支持板32aに固定された保持カム42と、前記位置決めピン41と前記前側の支持板32aとの間に配置して前記支軸31に装着したロックバネ43とを備えて構成してある。前記保持カム42は、使用保持凹部44と格納保持凹部45とを支軸31の周方向に並べて備えている。ロックバネ43は、前記前側の支持板32aを反力部材として前記位置決めピン41に押圧作用することによって支軸31を摺動付勢し、これによって位置決めピン41を使用保持凹部44および格納保持凹部45に係入付勢している。
【0037】
図5、図7(a)は、載置部材30が使用姿勢で支持された状態と、ロック機構40の使用ロック状態とを示している。これらの図に示すように、載置部材30が前記軸芯Pまわりに揺動操作され、位置決めピン41と使用保持凹部44とが合致すると、載置部材30は、この載置部材30の補強突条34aを備えた載置面34が車体上方向きになった使用姿勢になる。載置部材30が使用姿勢になると、これに伴ってロックバネ43が位置決めピン41を使用保持凹部44に係入した状態、すなわち図10(b)に示す状態に操作する。これにより、ロック機構40は、保持カム42による位置決めピン41を介しての支軸31の係止によって載置部材30を使用姿勢に保持するよう使用ロック状態になる。
【0038】
図6、図7(b)は、載置部材30が格納姿勢で支持された状態と、ロック機構40の格納ロック状態とを示している。これらの図に示すように、載置部材30が前記軸芯Pのまわりに揺動操作され、位置決めピン41と格納保持凹部45とが合致すると、載置部材30は、載置面34が車体横方向での外側を向いた状態で下部エンジンボンネット21aの外側面に沿った格納姿勢になる。載置部材30が格納姿勢になると、これに伴ってロックバネ43が位置決めピン41を格納保持凹部45に係入した状態、すなわち図10(a)に示す状態に操作する。これにより、ロック機構40は、保持カム42による位置決めピン41を介しての支軸31の係止によって載置部材30を格納姿勢に保持するよう格納ロック状態になる。
【0039】
載置部材30が格納姿勢から使用姿勢に向けて揺動操作されると、位置決めピン41が格納保持凹部45から抜け外れてロック機構40が自ずと格納ロック状態を解除するよう、格納保持凹部45の深さが位置決めピン41の半径よりも小さい深さになっている。載置部材30が使用姿勢にされると、載置部材30に掛かった荷重によって位置決めピン41が使用保持凹部44から抜け外れないよう、使用保持凹部44の深さが格納保持凹部45よりも深くなっている。具体的には位置決めピン41の半径よりも大きい深さになっている。これにより、載置部材30がロックバネ43に抗して摺動操作されることにより、位置決めピン41が使用保持凹部44から抜け外れ、ロック機構40が使用ロック状態を解除する。
【0040】
図5に示すように、前記支持部32は、支持板32aに対して載置部材30が位置する側とは反対側に配置したキャップホルダ部50を備えている。このキャップホルダ部50は、前記ロック機構40を覆うよう前後一対の支持板32a,32aに装着された樹脂材製のカバー51に一体成形してある。図4は、カバー51の斜視状態を示している。図5は、キャップホルダ部50の注油口キャップ収容状態での側面図である。これらの図に示すように、キャップホルダ部50は、これの底部50aによって前記注油口キャップ24の外周面部を受け止め支持し、キャップホルダ部50の先端部50bによって注油口キャップ24の上面を係止することにより、注油口キャップ24を収容する。
【0041】
つまり、燃料タンク22に燃料供給する際、載置部材30を使用姿勢に切り換え操作する。このとき、載置部材30の格納姿勢から使用姿勢に向けての上昇操作により、位置決めピン41が格納保持凹部45から自ずと抜け外れてロック機構40が格納ロック状態を解除し、載置部材30の格納ロックが外れる。載置部材30が上昇揺動して使用姿勢に切り換わると、これに伴って位置決めピン41がロックばね43のために使用保持凹部44に係入してロック機構40が使用ロック状態に自ずと切り換わり、載置部材30が使用姿勢に保持される。これにより、燃料供給タンク55を載置部材30の載置面34に載置し、燃料供給タンク55を載置部材30に支持させながら楽に燃料供給することができる。このとき、燃料タンク22から取り外した注油口キャップ24をキャップホルダ部50に収容しておくことにより、注油口キャップ24の燃料タンク22への付け忘れを防止できる。すなわち、燃料供給を終えて載置部材30を格納する際、キャップホルダ部50に注油口キャップ24が存在していると、これを知って注油口キャップ24の付け忘れが認識される。
【0042】
燃料タンク22の燃料供給を終えると、載置部材30をロックばね43に抗して摺動操作する。これによって位置決めピン41が使用保持凹部44から抜け外れ、ロック機構40が使用ロック状態を解除する。これによって載置部材30の使用姿勢でのロックが解除されると、載置部材30を下降揺動操作する。すると、載置部材30が格納姿勢に切り換わる。これに伴って位置決めピン41がロックばね43のために格納保持凹部45に係入し、ロック機構40が使用ロック状態になる。これにより、載置部材30を使用時よりも車体内側に引退させて、かつ、振動によって容易に揺れ動かないように保持させて格納することができる。
【0043】
〔別実施例〕
上記した実施例の載置部材30に替え、載置部材30は、使用姿勢から上昇揺動されることによって格納姿勢になり、格納姿勢になった載置部材30は、載置面34が車体横方向での内側を向いた状態で下部エンジンボンネット21aと上部エンジンボンネット21cとの外側面に沿った取り付け姿勢になる構成を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0044】
20 原動部
21 エンジンボンネット
21a 下部エンジンボンネット
21c 上部エンジンボンネット
22 燃料タンク
25 補強板
55 燃料供給タンク
U 下部エンジンボンネットの上端部
D 下部エンジンボンネットの下端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに搭載されたエンジンと、そのエンジンの後方に配置された燃料タンクと、前記エンジン及び前記燃料タンクを有する原動部の前部、上部及び両横側部を覆うカバーとを備え、そのカバーの上方側部位は、揺動開閉自在に構成されているトラクタであって、
前記車体フレームに支持されて、前記カバーの横側方部位の内側を前記車体フレームから上方側に延びるように取り付けられた補強板と、
その補強板の外面側との間に前記カバーの横側方部位を挟持する状態で前記補強板に連結された支持部と、
その支持部に支持されて、載置面が車体上方向きになった使用姿勢と、前記載置面が車体横向きになった格納姿勢とに切換え自在な載置部材とを備えているトラクタ。
【請求項1】
車体フレームに搭載されたエンジンと、そのエンジンの後方に配置された燃料タンクと、前記エンジン及び前記燃料タンクを有する原動部の前部、上部及び両横側部を覆うカバーとを備え、そのカバーの上方側部位は、揺動開閉自在に構成されているトラクタであって、
前記車体フレームに支持されて、前記カバーの横側方部位の内側を前記車体フレームから上方側に延びるように取り付けられた補強板と、
その補強板の外面側との間に前記カバーの横側方部位を挟持する状態で前記補強板に連結された支持部と、
その支持部に支持されて、載置面が車体上方向きになった使用姿勢と、前記載置面が車体横向きになった格納姿勢とに切換え自在な載置部材とを備えているトラクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−176750(P2012−176750A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69010(P2012−69010)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2007−105988(P2007−105988)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2007−105988(P2007−105988)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]