トランスグルタミナーゼを用いる新規なエリトロポエチン複合体の形成
本発明は生物学的に活性なエリトロポエチン(EPO)複合体組成物を提供し、ここでEPO分子を非−抗原性親水性ポリマーに共有結合的且つ部位特異的に複合化させるためにトランスグルタミナーゼ反応が用いられ、親水性ポリマーは有機分子にも共有結合していることができ、それらの修飾のいずれかが組成物の循環血清半減期を延長させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、構造に基を結合させるか又は一次配列の突然変異を介して生物学的活性を変更する酵素的方法を用いて製造されるエリトロポエチンの新規な調製物に関する。特に、本発明は、変更された生理化学的及び薬物動態学的性質を有するエリトロポエチン複合体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エリトロポエチン(EPO)は自然に生成する糖タンパク質であり、それはコロニー刺激因子として機能し、赤血球合成の調節に含まれる主要因子として働く。エリトロポエチンは、骨髄中の前駆体細胞を刺激してそれらを分裂させ、成熟赤血球に分化させることにより働く。このプロセスは、赤血球の破壊もしくは循環からの除去が新しい細胞形成の速度に調和するように、体内で厳密に制御される。天然に存在するEPOは、腎臓で生産される糖タンパク質である(非特許文献1)。
【0003】
エリトロポエチンは組換えDNA法を用い、EPO遺伝子のクローニング及びチャイニーズハムスター卵巣細胞における発現を介して製造された(Lin,特許文献1)。組換え的に生産されるEPOはしばらくの間、慢性腎不全、ジドビジン(zidovidine)処置されたHIV感染患者及び骨髄抑制化学療法にあるガン患者と関連する貧血を含む種々の形態の貧血の処置において有効な治療薬として利用できた。糖タンパク質は非経口的に、担体としてヒト血清アルブミン(HSA)を含有する通常の緩衝された水溶液中の静脈内(IV)又は皮下(SC)注射として投与される。そのような調製物は合衆国内でEPOGENR及びPROCRITRの商品名の下に販売されている。これらの製品は、防腐剤を含まない1mlの単投薬量で、あるいは2mlの複数投薬量の防腐されたバイアルにおいてエリトロポエチンを含有する。
【0004】
これらの調製物は非常に成功に満ちたものであることが証明されたが、ある種の欠点が生成物に伴う。現在、エリトロポエチンのようなタンパク質治療薬の生物学的活性の期間は、短い血漿半減期及びプロテアーゼ分解を受け易いことにより限られている。EPOのような治療用タンパク質の4時間の短い半減期は、最大の臨床的有効性のために頻繁な投与を必要とする。これは慢性状態の処置のために不利であり、劣った患者のコンプライアンス、従って最適の結果より低い結果を生じ得る。従って、EPOの血漿半減期を延長させる試みが成されてきた。
【0005】
近年、ポリエチレングリコール(PEG)のような非−抗原性水溶性ポリマーが治療的及び診断的に重要なポリペプチドの共有結合的修飾のために用いられてきた。例えば生体内におけるペプチドの半減期を延長するため、ならびに/又はそれらの免疫原性及び抗原性を減少させるために、インターロイキン(非特許文献2,非特許文献3)、インターフェロン(非特許文献4)、カタラーゼ(非特許文献5)、スーパーオキシドジスムターゼ(非特許文献6)及びアデノシンデアミナーゼ(非特許文献7)のような治療用ポリペプチドへのPEGの共有結合が報告された。
【0006】
誘導体化PEG化合物は以前に報告されている(特許文献2,1995年8月1日,Conjugation−Stabilized Polypeptide Compositions,Therapeutic Delivery and Diagnostic Formulations Comprising Same,and Meth
od of Making and Using the Same,N.N.Ekwuribe)。翻訳後誘導体化のためのこの方法はEPOにも適用された。例えば特許文献3は、エリトロポエチン活性を有する炭水化物修飾ポリマー複合体を開示しており、この場合PEGは酸化された炭水化物を介して連結する。特許文献4は、EPOを含むリシン−枯渇(depleted)ポリペプチド変異体のポリアルキレンオキシド複合体を開示している。特許文献5は、EPOが遺伝子工学により導入されるシステイン残基を含有し、それに特殊なPEG試薬が共有結合するモノメトキシ−PEG−EPO(mPEG−EPO)の製造を記載している。他のPEG−EPO組成物は特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9に開示されている。
【0007】
純粋に化学的な方法を用いるPEGへの複合化(「PEG化(PEGylation)」)によりタンパク質を修飾する多くの方法のよくある制限的側面は、アミン基との無差別且つ多くの場合に不完全な反応であり、それはタンパク質の近づき得るリシン残基及び/又はN−末端アミンに起こり得る。他の化学的方法は、修飾戦略の一部として炭水化物基の酸化を必要とし、同様に不完全な又は一貫しない反応及び限定されない生成物組成物を生ずる。かくして利用可能な現在の選択肢を考えると、穏やかな部位−特異的やり方でEPOを修飾するための方法が有利であろう。
【0008】
トランスグルタミナーゼ(TGases)[EC2.3.2.13;タンパク質−グルタミン:ガンマグルタミルトランスフェラーゼ]は、第1級アミンへのカルシウム−依存性アシル付加を触媒するタンパク質の群であり、付加においてはペプチド−結合グルタミン残基のガンマ−カルボキシアミド基がアシル供与体であり、第1級アミンがアシル受容体及びアミン供与体である。自然には、向き合ったタンパク質上のリシン及びグルタミン残基の間のアミド結合の形成を触媒することにより、TGasesがタンパク質を架橋する。周知の例はTGase XIIIa因子によるフィブリン架橋である。この結合は安定であり、且つプロテアーゼに対して抵抗性であり、かくしてTGasesは一般に細胞の構造成分を結合させるために用いられる。上記の血漿形態の他に、TGasesは肝臓、皮膚及び細胞外液のような組織中で見出される(非特許文献8)。TGaseの原核形態も既知である(非特許文献9,非特許文献10)。TGasesの特異性は非常に顕著であり、通常タンパク質当たりに1個又はいくつかの場合に2個のみのグルタミン残基がアミン受容体として働く。種々の哺乳類組織及び種からのTGasesが広範囲に研究された(非特許文献11,非特許文献12,非特許文献13,非特許文献14)。かくしてTGasesをいくつかのタンパク質上のグルタミン残基を部位−特異的に修飾するために用いることができるはずであり、用いられてきた(特許文献10,特許文献11,特許文献12)。
【0009】
【化1】
【0010】
多数の研究にかかわらず、TGase特異性の決定因子について少ない詳細しか明らかになっていない。TGasesは基質特異性において異なり、アシル供与体又は受容体として残基を選ぶ場合、基質残基を含有するかもしくはそれに隣接するとしての特定の配列モチーフの採択は、個々の酵素に関して一般的に同定されていない(非特許文献15,非特許文献16)。唯一の限定的な規則は、いずれのTGaseに関する基質として働くた
めにも、グルタミン残基がN−末端から少なくとも3個の残基の位置になければならないことである。一般にグルタミン繰り返しは繰り返し中の各グルタミン残基の受容体性を強化することが示され、グルタミン残基の近づき易さもTGase基質として機能するそれらの能力の決定において重要であることが示された(非特許文献17)。
【0011】
TGase修飾の部位−特異性が1960年代以来既知であり、且つ食品の安定化における工業的使用が実施されているが、治療用タンパク質の修飾における使用は最近探求され始めたのみである。脂肪族アミノ基を含有する5キロダルトンもしくはそれより大きいポリマーをタンパク質結合グルタミン残基に結合させるためのTGasesの使用は最近、特許文献12においてSato,et alにより開示された。この特許は、続いてTGase触媒反応を用いて大ポリマーを結合させる目的のために、TGase基質であることが既知の付加されたN−末端もしくはC−末端ペプチドを含有するようにタンパク質を操作する方法も開示している。IL−2のPEG化がこれらの方法を用いて行なわれ(非特許文献18)、バクテリアTGaseを用いるIL−2の種々の他のタンパク質への架橋(Takahara,Y.et al.特許文献10)ならびに組織操作のための修飾フィブリンマトリックスの形成におけるXIIIa因子の使用(特許文献11)も示された。
【0012】
天然に存在する分子への修飾又はモチーフの付加は、治療用タンパク質のための製造方法を与える目的の遺伝子工学の分野に従事するものには周知の複数の危険を伴う。これらの影響の最も明白なものは、生物学的活性の喪失又は部分的喪失である。他の場合、哺乳類細胞系中に導入されると、構築される発現ベクターからの発現レベルが許容され得ないほど低い。天然に存在するタンパク質基質からの既知の基質配列のカップリング又は融合の別の方法は、抗原性エピトープを形成し、患者において望ましくない免疫反応を引き起こし得、それは結局治療用タンパク質の長期間有効性を制限する。さらに、最も反応性の官能基、リシンを攻撃する化学的方法を用いるタンパク質の修飾は、タンパク質の等電点及びpKaも変える。従って、目的が安全且つ経済的に製造される生成物を与えることである場合、これらの制限を理解することが重要である。グルタミンのアミド基のアルキル化アミンへの転換はそのグルタミンの等電点又は電荷を変化させない。かくして、安定な共有結合を形成するが、タンパク質の電荷を改変しない酵素的方法の使用が望ましいであろう。これまで、EPOは自然のTGase基質と考えられてもこなかったし、EPOにおいてTGase基質部位を形成するか、又は除去するための分子の再−操作も記載されていない。
【特許文献1】米国特許第5618698号明細書
【特許文献2】米国特許第5438040号明細書
【特許文献3】国際公開第94/28024号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4904584号明細書
【特許文献5】国際公開第90/12874号パンフレット
【特許文献6】欧州特許第605693号明細書
【特許文献7】米国特許第6,077,939号明細書
【特許文献8】国際公開第01/02017号パンフレット
【特許文献9】欧州特許第539167号明細書
【特許文献10】米国特許第6010871号明細書
【特許文献11】米国特許第6331422号明細書
【特許文献12】米国特許第6322996号明細書
【非特許文献1】Jacobs,et al.著,Nature 313(6005),806−810(1985)
【非特許文献2】Knauf,M.J.et al.著,J.Biol.Chem.1988,263,15,064
【非特許文献3】Tsutsumi,Y.et al.著,J.Controlled Release 1995,33,447
【非特許文献4】Kita,Y.et al.著,Drug Des Delivery 1990,6,157
【非特許文献5】Abuchowski,A.et al.著,J.Biol Chem.1977,252,3,582
【非特許文献6】Beauchamp.C.O.et al.著,Anal.Biochem.1983,131,25
【非特許文献7】Chen,R.et al.著,Biochim.Biophys.Acta 1981,660,293
【非特許文献8】Greenberg,C.Set al.著,FASEB J.1991,5,3071−3077
【非特許文献9】Ando,H.et al.著,Agric.Biol.Chem 53(10),2613−2617,1989
【非特許文献10】Washizu,K.et al.著,Biosci.Biotech.Biochem 58(1),82−87,1994
【非特許文献11】Folk,J.E.and Chung,S.I.著,Adv.Enzym.Molec.Biol.1973,38,109−191
【非特許文献12】Folk,J.E.and Finlayson,J.S.著,Adv.Protein Chem.1977,31,1−133
【非特許文献13】Folk,J.E.& Cole,P.W.著,Biochim Biophys.Acta 1966,122,244−264
【非特許文献14】Folk,J.E.;Chung,S.I.著,Methods in Enzymology 1985,113,358−375
【非特許文献15】Gorman,J.J.;Folk,J.E.著,J.Biol.Chem.1981,256,2712−2715
【非特許文献16】Gorman,J.J.;Folk,J.E.著,J.Biol.Chem.1980,255,419−427
【非特許文献17】Kahlem,P.et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996,93,14580−14585
【非特許文献18】Sato,H.;Ikeda,M.;Suzuki,K.;Hirayama.K.著,Biochemistry 1996,35,13072−13080
【発明の開示】
【0013】
発明の概略
本発明は生物学的に活性なEPO複合体組成物を提供し、ここでEPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり、ここでEPO分子を非−抗原性親水性ポリマーに共有結合的且つ部位特異的に複合化させるためにトランスグルタミナーゼ反応が用いられ、非−抗原性親水性ポリマーは有機分子にも共有結合することができ、それらの修飾のいずれかが組成物の循環血清半減期を延長させる。
【0014】
さらに特定的に、本発明の1つの態様は、かくして、式
EPO−[Gln−A−X−(M)n]y (I)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;GlnはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いグルタミン残基から選ばれるグルタミン残基であり;yは修飾されたグルタミン残基の数を示す1〜7の整数であり;Aはアミン供与体部分又はヒドロキシル基であり、Xは場合による親水性ポリマー部分であり;Mは構築物の循環半減期を延長させる場合による有機分子(ペプチド及びタンパク質を含む)であり;そしてnは0〜15の整数である]
により記載されるEPO誘導体に関する。部分X及びMを必要通りに修飾し、カップリング又は原子価のために適した官能価を与えるように設計される基を含むようにすることができる。
【0015】
有機分子、M、は任意(optional)であり、親水性ポリマーに共有結合する。Mは得られる構築物の生体内半減期を延長させることができる有機部分から選ばれ、脂肪酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸のモノエステル又はモノアミド、飽和脂肪酸を含有する脂質、不飽和脂肪酸を含有する脂質、飽和及び不飽和脂肪酸の混合物を含有する脂質、単純な炭水化物、複雑な炭水化物、炭素環式化合物(ステロイドのような)、複素環式化合物(アルカロイドのような)、アミノ酸鎖、タンパク質、酵素、酵素補因子又はビタミンが含まれる。
【0016】
親水性ポリマーは、好ましくはポリエチレングリコールのようなポリアルキレンオキシドである。
【0017】
本発明の他の態様は、式
EPO−[Lys−Gln−Z−X−(M)n]y (II)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;LysはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いリシン残基から選ばれるリシン残基であり
;yは修飾されたリシン残基の数を示す1〜8の整数であり;Glnはグルタミン残基であり;Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質であり、Xは場合による親水性ポリマーであり;Mは、構築物の循環半減期を延長させる場合による有機分子(ペプチド及びタンパク質を含む)であり;Nは0〜15の整数である]
により記載されるEPO誘導体に関する。部分X及びMを必要な通りに修飾し、カップリング又は原子価のために適した官能価を与えるように設計される基を含むようにすることができる。
【0018】
本発明は複合体の製造方法も提供する。該方法は、アグリコシル化(aglycosylated)もしくはグリコシル化EPO又はグルタミン残基を有する赤血球形成活性を有する糖タンパク質中の1個もしくはそれより多い特定のグルタミン残基への、アミノ基供与体もしくはアルキルアミン−複合体のアシル転移を触媒するためにTGaseを用いる段階を含む。該方法は、ペプチド、タンパク質又は他のポリマー中の1個もしくはそれより多いグルタミン残基へのEPO上のアミノ基供与体のアシル転移を触媒するためにTGaseを用いる段階も含む。
【0019】
本発明に含まれるのは、TGase基質としてのEPOの開示である。従って、グルタミンもしくはリシン残基又は他のいずれかの残基を突然変異させるか、付加するか又は修飾するための組換え的もしくは化学的手段によりEPO分子を改変し、EPO分子がTGase基質性として働くことを可能にするか又はその能力を向上させ、それによりアミン供与体又はアミン受容体部分を含有する親水性ポリマー又は他の有機部分へのEPO分子の複合化を可能にする方法もまた本発明に含まれる。TGase基質性はタンパク質の生物学的活性に含まれ得るので、組換え的又は化学的手段を介してEPO分子のTGase基質性を向上又は低下させることも本発明に含まれる。かくして、本発明に従えばEPO分子を修飾して循環半減期を延長させるか、あるいは他に、哺乳類エリトロポエチン又はいずれかの複合体もしくは突然変異赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を向上させることができる。
【0020】
本発明は、内在性エリトロポエチン又は赤血球形成の減少と関連する貧血又は他の状態あるいは赤血球の増加が望まれる状態の処置方法も提供する。本発明のこの側面において、処置は本明細書に記載される複合体の有効量を、そのような治療の必要な哺乳類に投与することを含む。本発明の結果として、生体内における(in vivo)実質的に長期化した赤血球形成活性を有する複合体が与えられる。
【0021】
本明細書で開示される方法は、延長された循環半減期及び向上した赤血球形成力価を有するEPO分子を与える利点を有する。さらに本発明の修飾EPO分子は、複合化及び/又は突然変異が十分に制御され、実質的に十分に定義され且つ特性化された最終的生成物を生ずる点で利点を有する。
【0022】
図面の簡単な記述
図1は、ヒトエリトロポエチンの成熟鎖のアミノ酸配列を示し、グルタミン残基は四角内である。
【0023】
図2は、蛍光標識されたTGase基質、ダンシルカダベリン(DC)をTGaseの存在下又は不在下でタンパク質と一緒にインキュベーションしたSDS−PAGEゲルの画像である。UV露出を用いて標識を視覚化する:列1=分子量マーカー。列2=EPO+DC+TGase。列3及び4=EPO+DC;列5=EPO標準;及び列6=b−カゼイン+DC+TGase。b−カゼインはTGaseに関する既知の基質であり、正の標準として用いられた。列2における蛍光35Kバンドは1個もしくはそれより多いDC
分子が結合したEPOに対応する。列2中のより高分子量のバンドはEPO二量体及び三量体に対応すると思われる。同ゲルを銀染色し、分子量マーカー及び他の非−蛍光バンドを同定した。
【0024】
図3.(a)脱グリコシル化EPO、(b)脱グリコシル化EPO−カダベリン−X−ビオチン(+424の付加が見られるべきである)、(c)脱グリコシル化EPO−DC(+318の付加が見られるべきである)及び(d)脱グリコシル化EPO−cbz(+319の付加が見られるべきである)のMALDI MS分析。
【0025】
図4.(a)EPOのLys−C消化物(標準);(b)EPO−X−ビオチンのLys−C消化物;(c)脱グリコシル化EPOのLys−C消化物(標準);(d)脱グリコシル化EPO−DCのLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【0026】
図5.(a)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1;(b)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#2;(c)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物;(d)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【0027】
図6は、EPO−(Cbz−QG)又は非修飾EPO(EPO標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフを示す。
【0028】
図7は、TGase触媒反応を介するカダベリン−PEG(20K)のEPOへの結合を示す、銀−染色ポリアクリルアミドゲルの画像である:列1=分子量マーカー。列2=EPO+TGase+DC。列3=EPO標準。列4=EPO+TGase(6時間);列5=EPO+TGase(22時間);列6及び7=TGase(それぞれ6時間及び22時間);列8=PEG(20K)−カダベリン;列9、10及び11=EPO+PEG20K−カダベリン+TGase(それぞれ6時間、22時間及び22時間(還元))。EPO+DC試料は、DCの蛍光シグナルを最大にできるように、過剰負荷されたことに注意されたい。
【0029】
図8は、EPO+PEG20K−カダベリン+TGaseの反応混合物のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。51,010におけるピークはPEG化EPO生成物に対応する。
【0030】
図9は、EPO(列1)及び精製されたEPO−PEG5K−プトレッシン(列2)の銀−染色SDS−PAGEゲル(4−20%)を示す。EPO−プトレッシン−PEG5K試料中に非常に少量の非修飾EPOが存在することに注意されたい。
【0031】
図10は、反応混合物(EPO+PEG(5K)−プトレッシン+TGase)のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。
【0032】
図11は、精製されたEPO+PEG(5K)−プトレッシンに関するSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。(PEG基はイオン化を抑制する傾向があり、かくしてピーク面積は存在する各種の相対的量の指標ではないことに注意されたい。)
図12は、EPO−プトレッシン−PEG(5K)(EPO−PEG)又は非修飾EPO(EPO−標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフを示す。
【0033】
図13は、EPO+プトレッシン−PEG−DSPE3.4K+TGase(55%エタノール及び45%TGase反応緩衝液,pH7.5)の反応のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。28.8Kにおけるピークは非修飾EPOに対応し、33.7K、37.5K及び41.6Kにおけるピークは、EPO当たり1、2及び3個のプトレッシン−PEG−DSPE3.4K部分の付加に対応する。(脂質基はイオン化を抑制する傾向があり、かくしてピーク面積は存在する各種の相対的量の指標ではないことに注意されたい。)
詳細な記述
EPOは主に腎臓において生産され、前駆体細胞上の受容体二量体への結合を介して機能し、赤血球への分化及び続く増殖に導く(Livnah,O.et al.著,Science 1999,283,987−990)。EPOの一次配列は7個のグルタミン残基を有する(配列番号:1)。集成されたNCBIファイル,P01588はグルタミンを、成熟鎖の58,59,65,78,86,92及び115に対応する前駆体タンパク質の85,86,92,105,113,119及び142の位置に記載している。これらを図1に示す。
【0034】
EPOは2つの結合面を介して受容体に結合し、それらの一方は他方より受容体に関して高い親和性を有する。EPOの結晶構造は解明された(Syed,et al.著,Nature 395(6701),511−516(1998);Cheetham,J.C.et al.著,Human Erythropoietin,NMR minimized average structure.8−Sep−1998.Protein data base ID 1BUY)。その受容体に結合しているEPOの結晶構造も記載されている(Stroud,R.M.and Reid,S.W.著,Erythropoietin complexed with extracellular
domains of erythropoietin receptor.Protein data base ID 1CN4)。複合体内で、EPO上の8個のリシン残基の4個は受容体と直接接触するが、7個のグルタミン残基の1個を除くすべては溶媒が近づき得、Gln78のみが受容体と何らかの可能な相互作用を示す。これらの観察から、EPO上のグルタミン残基は受容体結合を妨げずにPEG又は他のポリマーの結合に関する有意な可能性を与えるが、リシン残基の無差別な修飾はある程度まで結合を妨げることがほとんど確実であることが明らかである。
【0035】
EPO上に存在するリシン残基のいくつかは受容体結合に含まれるが、他は、それらが特異的に修飾され得れば、PEGs又は他のポリマーの結合に関する有意な可能性を与えるであろう。TGasesは、アミン−供与体基質部位として働くことができるタンパク質上のリシンに関して非常に選択的なので、リシン残基がTGasesにより選択的に標的とされれば、これらのリシン残基にポリマーを結合するためのTGasesの使用に関する可能性が存在する。
【0036】
TGasesは多くの哺乳類の体液及び組織中に存在するので、EPOがTGase基質であるという発見は、従って、体内におけるトランスグルタミナーゼ−触媒反応がグルタミン及び/又はリシン残基を含む哺乳類エリトロポエチンからの配列を含有する治療用タンパク質の生物利用性及び分布に影響を与え得るはずであることを示す。かくしてこれらの残基の生来のTGase基質性を低下させるかもしくは除去するためのそれらの除去、マスキング又は修飾は、そのような生物薬剤(biopharmaceutical agent)の生物学的性質を有意に変更し、そのような赤血球形成性タンパク質の有効性を強化し得ることになる。そのような修飾は該グルタミン及び/又はリシン残基を他の19種の天然に存在するアミノ酸のいずれかに突然変異させることにより、該リシン及び/又はグルタミン残基を化学的に修飾することにより、あるいはTGasesを用いて小さいアシル−供与体又はアミン−供与体基質をこれらの部位に結合させ、それによりTG
ase基質としてそれらを除去することにより成される。また、いくつかの残基はペプチド又はタンパク質中に含有されるリシンもしくはグルタミン残基の基質性を向上させるか又は低下させることが示唆されている。かくして、赤血球形成性タンパク質の配列内の他の残基の突然変異、付加又は化学的修飾は、タンパク質の一次アミノ酸配列内に含有されるリシン又はグルタミン残基の基質性を向上させるか又は低下させることができるはずである。最近の論文(Dale,et al.著,Nature 415(10),175−179(2002))において、著者はセロトニンがTGase基質であり、表面タンパク質へのTGase−触媒架橋を介して活性化血小板に結合することを示している。TGasesXIII因子及び組織トランスグルタミナーゼは活性化血小板の表面上で同定された。血小板表面へのセロトニンの架橋は、細胞表面上におけるプロコアグレーションタンパク質(procoagulation proteins)の保持を増大させる。この研究は、細胞外TGasesがTGase基質部位を含有するタンパク質を細胞表面に架橋できること、ならびにこの活性がおそらくタンパク質のその受容体との結合を助長できることを示す。これは、TGasesが赤血球先祖細胞又は他の標的化された細胞系へのタンパク質の結合に含まれるなら、EPOが示すTGase基質性がタンパク質の赤血球形成力価に直接含まれ得ることを示唆する。
EPO
EPOの生物学的活性形態への修飾のための出発材料は、好ましくはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその誘導体である。EPO糖タンパク質は天然源から得ることができるか、あるいは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第4,703,008;5,441,868;5,547,933;5,618,698及び5,621,080号明細書に開示されているような既知の方法を用いて組換え的に生産することができる。所望の生物学的活性を有するエリトロポエチンタンパク質の非グリコシル化形態又は高グルコシル化形態を用いることもできる。高グリコシル化EPOの製造法は、国際公開第0249673号パンフレット及び欧州特許第640619号明細書に記載されている。
トランスグルタミナーゼ
グルタミンから受容体へのアシル転移を触媒する酵素のいずれも本発明における使用に適している。モルモット肝臓由来のトランスグルタミナーゼは特に適しており、商業源、例えばSigma Chemical Co.,ICN Chemicalsなどを介して容易に入手可能である。微生物起源のTGases、例えばストレプトベルチシリウム種(Streptoverticillium sp.)の、又はストレプトベルチシリウム・モバラエンセ(Streptoverticillium mobaraense)からのカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼを用いることもできる(Ando et al.著,Agric.Biol.Chem.,53(10),2613−17,1989)。
アシル受容体/アミン供与体
TGasesは第1級アミン供与体に関して広い特異性を有し、それは第1級アミン含有化合物あるいはリシンのペプチド−もしくはタンパク質結合イプシロン−アミノ基であることができる。TGasesに関するアミン−供与体基質には:アンモニア、ヒドロキシルアミン、メチルアミン、エタノールアミン、フェニルエチルアミン、ヒスタミン、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、プトレッシン、タンパク質−もしくはペプチド−結合リシン基、アミンアミド、例えばグリシンアミドが含まれるが、L−チロシンアミドは含まれない。N−(5−アミノペンタニル)−5−ジメチルアミノ−1−ナフタレン−スルホンアミド(ダンシルカダベリン)は、その蛍光性及び優れたアミン−供与体として働く能力の故に、タンパク質基質を調べるために有用な基質である(Folk and Chung,1973 上記参照)。
【0037】
この場合、水も求核試薬として働くことができ、グルタミンのグルタミン酸への転換を生じ、その場合には上記の式I中の部分Aはヒドロキシル部分である。
【0038】
アミノ糖類、例えば国際公開第0179474号パンフレットを参照されたい、及び日本特許第2000300287号明細書におけるアミノアルキル糖類も、タンパク質へのトランスグルタミナーゼ−触媒結合のための適したアミン供与体であることが示された。アミノ糖類は、第1級アミノ基を含有するいずれかの単糖類、オリゴ糖類又は多糖類ならびにアミノ基の導入のために単糖類、オリゴ糖類又は多糖類の還元的アミノ化により製造されたいずれかの単糖類、オリゴ糖類又は多糖類である。有利なアミノ糖の例はアミノソルビトールである。
【0039】
かくして上記の化合物もしくは関連する化合物のいずれも、アミン供与体として働くことができ、さらにTGaseが触媒するトランス−アシル化反応が該グルタミン残基においてEPO構造に付加することが望まれている基を有効に複合化させるように、それら自身を修飾することができる。式IのA部分に相当する特に好ましい分子は:カダベリン、プトレッシン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン又は類似のジアミノアルカンである。
アシル供与体/アミン受容体
TGasesは、リシン残基がTGase基質部位として機能すれば、グルタミン−含有ペプチド及びタンパク質をタンパク質の構造内のリシンのε−アミノ基に結合させることができる。かくして上記の式IIに従い、Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質を示す。TGase触媒反応を介してタンパク質−結合リシン残基に架橋することが示されたペプチドには:TVQQEL、PGGQQIV、pEAQQIV、PKPQQFM、EAQQIVM及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)−QGの複数の誘導体が含まれる(Grootjans,et al.著,JBC 270(39),22855−22858(1995)),(Groenen et al.著,Eur.J.Biochem.205,671−674(1992)),(Gorman et al.著,JBC 255(2),419−427(1980))。これらのようなペプチドはPEG又は上記のもののような他のポリマーに共有結合し、次いでTGase触媒反応を介してEPO又はアミン−供与性リシン残基を含有する他のタンパク質に結合することができる。
水溶性ポリマー
特に好ましい水溶性ポリマーは、PEGのいくつかの種の1つである。PEGは基本的炭素単位、HO−(CH2)2−OHから成り、種々の形態で:ポリエチレングリコール(種々の分子量);ポリエチレンオキシド;Carbowax PEG(種々の分子量);アルファ−ヒドロ−オメガ−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);エトキシル化1,2−エタンジオール;ポリオキシエチレンエーテル;emkapol 200;gafanol e 200;pluriol e 200;ポリジオール 200;ポリエチレングリコール;PEG;Polyox WSR−301;PEG 200;Macrogol;及びpolyoxyethlenelnの名前の下に販売されている。PEGに基づくポリマーが用いられる本発明の側面において、それらは約200〜約100,000ダルトン、そして好ましくは約2,000〜約40,000ダルトンの平均分子量を有するのが好ましい。
【0040】
別の水溶性ポリマー物質にはデキストラン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又は他の類似の非−免疫原性ポリマーのような材料が含まれる。当該技術分野における通常の熟練者は、前記が単に例であり、本明細書における使用に適した非−抗原性ポリマーの型を制限することが意図されていないことを認識するであろう。
生体内における薬物動態学的半減期の延長を与える有機分子
半減期を延長させるために親水性ポリマーに結合させることができる有機分子には脂肪酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸のモノエステルもしくはモノアミド、飽和脂肪酸を含有
する脂質、不飽和脂肪酸を含有する脂質、飽和及び不飽和脂肪酸の混合物を含有する脂質、単純な炭水化物、複雑な炭水化物、炭素環式化合物(ステロイドのような)、複素環式化合物(アルカロイドのような)、アミノ酸鎖、タンパク質、酵素、酵素補因子又はビタミンが含まれる。
【0041】
1つの態様において、親水性ポリマー基を1〜約6個のアルキル、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質もしくはリン脂質基で置換する(本明細書に記載される通り、例えば式I及び式II)。好ましくは、置換された親水性ポリマー基は直鎖状もしくは分枝鎖状PEGである。好ましくは、置換された親水性ポリマー基は、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質もしくはリン脂質基又は炭化水素で末端が置換された直鎖状PEG(例えばPEGジアミン)である。アルキル、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質又はリン脂質基で置換された親水性ポリマーは、適した方法を用いて製造することができる。例えばモノ保護PEGジアミンを活性化脂肪酸(例えばパルミトイルクロリド)と反応させることにより、修飾剤を製造することができる。得られる生成物を用い、脂肪酸基で置換されたPEGを含む修飾されたEPOを製造することができる。多様な他の適した合成案を用いることができる。例えば本明細書に記載されるようにアミン含有ポリマーを脂肪酸又は脂肪酸エステルにカップリングさせることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボキシレート(例えばN,N’−カルボニルジイミダゾールで活性化された)をポリマー上のヒドロキシル基にカップリングさせることができる。この方法で、所望の性質を有する複数の適した直鎖状及び分枝鎖状多量体構造を構築し、最終的にトランスグルタミナーゼアミン供与体として働くことができる第1級アミンあるいはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるグルタミン−含有ペプチドもしくはポリマーを含有するように、結合させるかもしくは修飾することができる。
【0042】
本発明における使用に適した脂肪酸及び脂肪酸エステルは飽和していることができるか、あるいは1個もしくはそれより多い不飽和単位を含有することができる。好ましい態様において、脂肪酸及び脂肪酸エステルは約6〜約40個の炭素原子を含む。本発明の方法でEPOを修飾するのに適した脂肪酸には、例えばn−ドデカノエート(C12,ラウレート)、n−テトラデカノエート(C14,ミリステート)、n−ヘキサデカノエート(C16,パルミテート)、n−オクタデカノエート(C18,ステアレート)、n−エイコサノエート(C20,アラキデート)、n−ドコサノエート(C22,ベヘネート)、n−トリアコンタノエート(C30)、n−テトラコンタノエート(C40)、シス−D9−オクタデカノエート(C18,オレエート)、全シスD5.8.11.14−エイコサテトラノエート(C20,アラキドネート)、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などが含まれる。適した脂肪酸エステルには直鎖状もしくは分枝鎖状低級アルキル基を含むジカルボン酸のモノエステルが含まれる。低級アルキル基は1〜約12個、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含むことができる。本発明のタンパク質の修飾に適した脂肪酸エステルには、例えばオクタデカン酸メチル、オクタデカン酸エチル、オクタデカン酸プロピル、ドデカン酸ブチル、ドデカン酸sec−ブチル、ドデカン酸tert−ブチル、テトラデカン酸ネオペンチル、テトラデカン酸ヘキシル、シス−Δ9−オクタデカン酸メチルなどが含まれる。
Epoへの転移のためのTGase基質の製造
かくして熟練者は、アミン供与体アミン部分又はアミン受容体部分に結合した2個もしくは3個又はそれより多い部分の複合体を製造することができ、得られる複合体はTGase基質として機能するであろう。
【0043】
他の基質の製造は、好ましくは段階的に行なわれ、最後の段階で1種の脱保護された、又は保護されていない第1級アミンを生ずるであろう。かくして水溶性ポリマー及び有機分子をカップリングさせるために、例えばトシレート、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)、置換フェニルエス
テル、アシルハライドなどのような求電子性基を含むアミン−反応性基が用いられるべき場合、第1級アミンはほとんどの場合に保護されねばならない。有機分子をポリマーに複合化させる他の方法は周知であり、チオールと反応できる薬剤、例えばマレイミド、ヨードアセチル、アクリロイル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)などの使用を含む。分子中へのそのようなチオール反応性基の導入に適した方法は当該技術分野において既知である(例えばHermanson,G.T.著,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)を参照されたい)。アルデヒド又はケトン官能基をアミン−もしくはヒドラジド−含有分子にカップリングさせることができ、アジド基を3価のリン基と反応させてホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。反応性基を親水性ポリマー、コンジュゲート複合体(conjugate complex)に直接結合させることができるか、又はリンカー部分、例えばC1〜C12ヒドロカルビル基を介して結合させることができる。本明細書で用いられる場合、「ヒドロカルビル基」は、1個もしくはそれより多い炭素原子が場合により酸素、窒素又は硫黄のようなヘテロ原子で置き換えられていることができる炭化水素鎖を指す。適したリンカー部分には例えばテトラエチレングリコール、−(CH2)3−、−NH−(CH2)6−NH−、−(CH2)2−NH−及び−CH2−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH−NH−が含まれる。
【0044】
リンカー部分を含む修飾剤は、例えばモノ−Boc−アルキルジアミン(例えばモノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノヘキサン)を1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で脂肪酸と反応させ、遊離のアミンと脂肪酸カルボキシレートの間にアミド結合を形成することにより製造することができる。トリフルオロ酢酸(TFA)を用いる処理により生成物からBoc保護基を除去して第1級アミンを露出し、それを記載した通りに別のカルボキシレートにカップリングさせることができるか、あるいは無水マレイン酸と反応させ、得られる生成物を環化して脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を製造することができる。(例えば引用することによりその方法全体が本明細書の内容となるThompson,et al.著,国際公開第92/16221号パンフレットを参照されたい)。
【0045】
誘導体化赤血球形成性化合物の例は以下である:
M−PEG−A−EPO
ここでM−PEGはTGaseを用いて特異的なグルタミン又はリシンに結合し、ここでMは脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール又はタンパク質であり、Aはアミン供与体、好ましくはカダベリン又はプトレッシンあるいはアミン受容体、好ましくは1〜30アミノ酸の短いグルタミン−含有ペプチドである。
(M−PEG)2−A−EPO
ここでM−PEGはA上の2個の異なるカルボキシル基にエステル化され、ここでMは脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール又はタンパク質である。エステル化のための2個の異なるカルボキシル基を有する部分Aの適した例にはジグリセリド又はトリグリセリド誘導体ならびにマレイン酸、シトラコン酸、グルタミン酸又は2個もしくはそれより多いカルボキシル炭素を含有する他のポリマーの誘導体が含まれる。より高い倍体(higher multiples)も同様に含まれる。
(M−PEG)2−R−A−EPO
ここで(M−PEG)2−RはA上の2個の異なるカルボキシル基であり、ここでMは脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール又はタンパク質であり、Rは原子価強化構築物、例えばアミノ酸のデンドリマーなどであり、それは複数の(M−PEG)2又は他の部分の結合のために複数の官能基を含有する。より高い倍体も同様に含まれる。
M−A−EPO
ここでMはタンパク質又はペプチドであり、Aは該タンパク質又はペプチド上のリシン側鎖である。
M−A−EPO
ここでMはタンパク質又はペプチドであり、Aは該タンパク質又はペプチド上のグルタミン側鎖である。
M−A−EPO
ここでMは脂質であり、Aはアミン受容体、好ましくは短いグルタミン−含有ペプチドである。
M−A−EPO
ここでMは脂質であり、Aはプトレッシン、カダベリン又は他のジアミノアルカンである。
M−A−EPO
ここでMはビオチン、ダンシル又は研究、診断又は治療目的に有用な生物物理学的特性をEPOに与える他の部分であり、Aはプトレッシン、カダベリン又は他の適したTGaseアミン供与体もしくはアミン受容体基質である。ビオチン又は既知の結合パートナーを有する別の部分が複合体に導入される場合、該複合体をビオチン−アビジン複合体におけるようにその既知の結合パートナーとの複合体において研究、診断もしくは治療に用いることができると思われる。
治療的使用
本発明のEPO調製物は、低いか又は欠陥のある赤血球生産を特徴とする血液障害、例えば慢性腎不全、ジドビジン処置されたHIV感染患者及び化学療法にあるガン患者と関連する貧血を含む種々の形態の貧血の処置において、非経口用調製物として有用である。それは多様な疾患状態、障害及び血液学的異常の状態、例えば鎌状赤血球症、ベータ−サラセミア、のう胞性線維症、妊娠及び月経障害、早熟の早期貧血(early anemia of prematurity)、脊髄損傷、宇宙飛行、急性失血、老化などの処置においても用途を有することができる。それは手術−前患者におけるように、赤血球の増加が望ましい状況においても用途を有することができる。好ましくは、本発明のEPO組成物は非経口的に(例えば静脈内、筋肉内、皮下又は腹膜内)投与される。有効な投薬量は、処置されている状態及び投与の経路に依存して有意に変わると思われるが、体重のkg当たり0.1(〜7U)〜100(〜7000U)μgの活性材料の範囲内であると思われる。貧血状態の処置のために好ましい投薬量は、週に3回の約50〜約300単位/kgである。
製薬学的組成物
本発明に従って製造されるエリトロポエチン糖タンパク質生成物は、当該技術分野において既知の方法により、製薬学的に許容され得る担体又はビヒクルを用いる注入に適した製薬学的組成物において調製することができる。例えば適した組成物は国際公開第97/09996号パンフレット、国際公開第97/40850号パンフレット、国際公開第98/58660号パンフレット及び国際公開第99/07401号パンフレットに記載されている。本発明の生成物の調製のために好ましい製薬学的に許容され得る担体の中に、ヒト血清アルブミン、ヒト血漿タンパク質などがある。本発明の化合物は、等張剤(tonicity agent)、例えば132mM塩化ナトリウムを含有するpH7における10mMリン酸ナトリウム/カリウム緩衝液中で調製することができる。場合により製薬学的組成物は防腐剤を含有することができる。製薬学的組成物は種々の量のエリトロポエチン生成物、例えば10〜2000μg/ml、例えば50μg又は400μgを含有することができる。
【0046】
酸化防止剤、例えばトコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル又はエデト酸塩、例えばエデト酸二ナトリウムの添加により、組成物の安定性をさらに強化することができ、エデト酸塩はさらにおそらく存在する重金属を結合する。安息香酸及びパラベン類、例えばメチルパラベン及び/又
はプロピルパラベンのような防腐剤の添加により、安定性をさらに強化することができる。
低いか又は欠陥のある赤血球生産を特徴とする血液障害の処置
本発明のエリトロポエチン糖タンパク質生成物の投与は、ヒトにおいて赤血球形成を生ずる。従って、エリトロポエチン糖タンパク質生成物の投与は、赤血球の生産において重要なこのEPOタンパク質を補充する。エリトロポエチン糖タンパク質生成物を含有する製薬学的組成物を、低いかもしくは欠陥のある赤血球生産を特徴とする血液障害を単独でもしくは状態もしくは疾患の一部として経験しているヒト患者への種々の手段による投与に有効な濃度で調製することができる。製薬学的組成物は、皮下、静脈内又は筋肉内注射のような注射により投与することができる。エリトロポエチン糖タンパク質生成物の平均量は変わることができ、特に資格を有する医師の勧告及び処方に基づくべきである。複合体の正確な量は、処置されている状態の正確な型、処置されている患者の状態ならびに組成物中の他の成分のような因子に依存して選ばれることである。例えば体重のkg当たり0.01〜10μg、好ましくは体重のkg当たり0.1〜10μgを、例えば毎週1回投与することができる。
【0047】
本出願を通じて種々の公開文献を引用してきた。これらの公開文献中の開示は、当該技術分野の現状をより十分に記載するために、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0048】
本発明をさらに以下の実施例により示し、実施例は例示の目的のために提示されるが、本発明の化合物及び組成物の調製を制限するものではない。最初の実験から、EPO上の7個のグルタミンの少なくとも2個そしておそらく3個がTGase基質として働くことができる。ペプチドマッピングは、Gln115がTGaseのアシル供与体部位として働くことができること、ならびに他の6個のグルタミン残基の少なくとも1個が同様に働くことができることを示した。EPOへのPEG基及び脂肪族アミンを含有する脂質基の結合がモルモット肝臓TGaseを用いて行なわれ、5キロダルトンのPEG基の結合に続き、EPOはその活性の約40%を保持していることが示された。TGaseに関する既知のアシル供与体基質であるCbz−QGの結合及び続くペプチドマッピングは、EPO上のLys45がTGaseに関する非常に有効なアミン供与体基質部位として働くこと、ならびにLys154もアミン供与体部位として働くことができることを示した。
実施例
[実施例1]
【0049】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのダンシル−カダベリン基質の複合化
組換えヒトEPO(rhEPO)(10μM)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でダンシル−カダベリン(DC)(Sigma,St Louis,MO)(3mM)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に、37℃で3時間インキュベーションした。ダンシル−カダベリンはTGasesに関する周知の基質であり、反応の追跡を容易にするための蛍光マーカーを与える。反応混合物をSDS−PAGEに供し、結果を図2に示す。EPOバンドの蛍光はTGaseを介するDCの結合を確証し、EPO上にアミン−受容体部位が存在することを示す。PBSを用いて平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製した。
【0050】
ゲル中に蛍光性二量体及び三量体が存在することは、EPO中のグルタミン残基の1個もしくはそれより多くとの架橋のためにリシン基質を備えていることにより、EPO自身がTGase基質として働くことができることを示す。これらのバンドが蛍光性であり、且つ架橋されているという事実は、EPO上の少なくとも2個の異なるグルタミン残基が
TGaseアシル−供与体部位として働くことができる可能性を生ずる。
[実施例2]
【0051】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのカダベリン−X−ビオチン基質の複合化
組換えヒトEPO(rhEPO)(50〜100μM)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でカダベリン−X−ビオチン(Biotium,Hayward,CA)(30mM)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に、37℃で3時間インキュベーションした。PBSを用いて平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製した。
[実施例3]
【0052】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのCbz−QG基質の複合化
組換えヒトEPO(rhEPO)(1.96mg/ml)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でN−α−ベンジルオキシカルボニルグルタミニルグリシン(Cbz−QG)(15mM)(Sigma,St Louis,MO)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に、37℃で3時間インキュベーションした。PBSを用いて平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製した。
[実施例4]
【0053】
EPO−DC、EPO−カダベリン−X−ビオチン及びEPO−(Cbz−QG)の特性化及びペプチドマッピング
脱グリコシル化のために、50μlのrhEPO又は複合体(0.2〜2mg/ml)を50μlのRapiGest(Waters Corp.,Milford,MA)(PBS中の2mg/ml)中に希釈した。これに10μlのNP−40洗剤溶液(15%)、それぞれ10μlのPNGase F、シアリダーゼ A及びO−グリカナーゼ(Prozyme,San Leandro,CA)を加えた。溶液を37度で合計96時間インキュベーションした。試料を1:1の水/アセトニトリル(+0.1% トリフルオロ酢酸)中のシナピン酸と混合し、MALDI MSプレート上にスポッティングすることにより無損傷の質量を得、続いてABI Voyager DE−STR MALDI−TOF MS上で分析した。25000Vの集積電圧(acervating voltage)を用い、直線様式で(in linear mode)でタンパク質を分析した(図3及び5)。これに続き、それぞれ50μLを5μLの45mM DTTと混合し、溶液を65℃で20分間インキュベーションした。次いで5μLの100mMヨードアセトアミドを加え、溶液を暗所で室温において20分間インキュベーションした。次いで5μLのLys−Cエンドプロテイナーゼ(Calbiochem,San Diego,CA)(1.3μg/μl)を加え、溶液を37℃で20〜24時間インキュベーションした。逆−相HPLC及びWaters Symmetry300 1x50mm C18カラムを用いて各タンパク質消化物を分離した。それぞれの分離された消化物をMALDIプレート上に自動的にスポッティングし、分析した。イオン化のために、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸/ジヒドロキシ安息香酸(α−シアノ/DHB)の飽和混合マトリックスを用いた(図4)。
【0054】
図3は、EPO及びそれぞれの複合体の脱グリコシル化された試料に関する無損傷の質量を示す。パネル(B)は18725に小さいピークを示し、それは1個のカダベリン−X−ビオチン部分の付加に対応する(計算分子量シフト=+424)。パネル(C)は、1個のダンシル−カダベリン部分の付加に対応する18603にピークを示し(計算分子
量シフト=+317)、パネル(D)は、1個のCbz−QGペプチドの付加に対応する18592にピークを示す(計算分子量シフト=+319)。このデータから、Cbz−QGの結合がダンシル−カダベリン又はカダベリン−X−ビオチンの結合より有効であると思われる。しかしながら、3つのすべての場合にEPOはTGase基質の結合を示す。
【0055】
図4は、EPO−カダベリン−X−ビオチン及びEPO−DCのLys−C消化(digestion)の質量スペクトルを示す。パネル(A)及び(B)中の1958におけるピークは、EPOの残基98−116を含有するものに対応する。矢印により示されるピークは、そのペプチドへのカダベリン−X−ビオチンの付加に対応する。これは、Gln115がTGase基質部位として働くことを示し、それはそれがそのペプチド中の唯一のGln残基であり、TGaseのみがカダベリンをGln残基に結合させるからである。図4のパネル(C)及び(D)は、脱グリコシル化されたEPO及びEPO−DCのLys−C消化物のMALDI MSを示す。5038近辺のピークはEPOの残基53−97(計算分子量=5024.8)に対応する。パネル(D)において、5357におけるピークは319の分子量シフトに対応し、ダンシルカダベリン部分がタンパク質のこの領域内の残基において結合したことを示す。このペプチド中に6個のグルタミンが含有されるので、修飾された残基の正体は突き止められ得なかった。
【0056】
図5のパネル(A)及び(B)は、脱グリコシル化rhEPO−(Cbz−QG)の2つの異なるバッチのMALDI TOF質量スペクトルを示す。18580近辺のピークはrhEPOへの1個のCbz−QG(計算分子量シフト=+319)部分の結合に対応し、両スペクトルは、タンパク質の大部分が両バッチにおいて修飾されたこと、ならびにrhEPOへのこのペプチドの結合が非常に再現性のあるものであることを示す。パネル(C)及び(D)は、脱グリコシル化rhEPO−(Cbz−QG)のLys−C消化物のMALDI TOF質量スペクトルを示す。パネル(C)は、Lys45における追加の(additional)Cbz−QG部分を有するEPOの残基21−52に対応する4046にピークを示す(計算分子量=4032.1)。Lys−Cは、修飾のためにLys45において切断しなかった。パネル(D)は、付加されたCbz−QG部分を有する残基153−165に対応する1807にピークを示す(計算分子量=1802.6)。このペプチドにおいて、Lys154はCbz−QGの結合のために切断されず、Lys154が修飾されていることを示す。
【0057】
本明細書に記載されるMALDI TOF質量スペクトルを得るために、大きな質量ウインドウ(mass window)が必要であった。このために、スペクトルにおいて有意なドリフトが観察された。この理由で、複合体に関する分子量変化は、各個別の試料において修飾されないEPOの場合に観察される分子量への比較により計算された。無損傷の脱グリコシル化試料に関する質量データ及びLys−C消化データは一緒になって、TGaseの存在下でGln115がカダベリン−X−ビオチン及びダンシル−カダベリンの両方で修飾されたこと、ならびにrhEPO中の少なくとも1個の他のGln残基がダンシル−カダベリン修飾を受けたことを確証する。データは、rhEPOのLys45及びLys154がTGaseの存在下でCbz−QG修飾を受けたこと、ならびに分析された両バッチにおいて、最高でタンパク質の90%が修飾されたことも示す。
[実施例5]
【0058】
rhEPO−(Cbz−QG)のUT7アッセイ
rhEPO−(Cbz−QG)につき、以下の通りにUT7アッセイを行なった:アッセイの前に、L−glu及び5%FBSを含み、Epoを含まないIMDM中で、UT7細胞を24時間飢えさせた。細胞を洗浄し、ウェル当たり30,000個の細胞においてプレート化した。EPO(20〜0.01952ng/mL)及びrhEPO−(Cbz
−QG)(20〜0.01952ng/mL)の希釈液を加え、二重に検定した。プレートを37℃で48時間インキュベーションし、Promega’s MTS溶液を用い、1、2及び3時間間隔でとられるOD読取りを用いて検定した。SoftMax Proを用いて値をバックグラウンド修正した。平均バックグラウンドは0.292であった。アッセイは、複合体が非修飾EPOより約4倍活性が低い(4−fold less active)ことを示し(図6を参照されたい)、受容体結合に有意に含まれる残基において修飾が起こらなかったことを示す。これは、Lys45又はLys154の修飾が活性における有意な損失に寄与しないことを意味し、rhEPOがその受容体に結合する能力に有意に影響することなく、これらの部位において他の修飾又は突然変異を行い得ることを示唆する。
[実施例6]
【0059】
カダベリン−PEG(20K)の合成
商業的に入手可能な試薬を用いてカダベリン−PEG(20K)を合成した。25mgのカダベリンヒドロクロリド塩(Sigma,St.Louis,MO)を5mlのPBS中に溶解し、pHを7に調整した。これに25mgのmPEG(20K)−スクシンイミジルプロピオネート(Shearwater Corp.,Huntsville,Alabama)を加え、反応物を22℃で2時間インキュベーションした。反応混合物を水中の0.1%酢酸に対して透析し、凍結乾燥した。
【0060】
【化2】
[実施例7]
【0061】
プトレッシン−PEG(20K)の合成
300mgのプトレッシンヒドロクロリド(Sigma,St.Louis,MO)を10mlのPBS中に溶解し、pHを7に調整することにより、プトレッシン−PEG(5K)を合成した。100mgのmPEG(5K)−スクシンイミジルプロピオネート(Shearwater Corp.,Huntsville,Alabama)を加え、22℃で2時間反応させた。反応混合物を水中の0.1%酢酸に対して透析し、凍結乾燥した。
【0062】
【化3】
[実施例8]
【0063】
プトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)の合成
176.5mgのプトレッシンを1.765mlのPBS(ph 7.4)中に溶解することにより、プトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)を合成した。13.5mgのNHS−PEG−DSPE(3.4K)(Shearwater Corp.,Huntsville,Alabama)を1mlのエタノール/PBS(1:1)中に溶解した。次いで1mlのNHS−PEG−DSPE溶液を1.704mlのプトレッシン溶液
に滴下し、反応物を22℃で4時間攪拌し、次いで0.1%酢酸(pH 4.5)で平衡化されたZorbax GF−250 XLカラム上で精製した。
【0064】
【化4】
[実施例7]
【0065】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのカダベリン−PEG(20K)基質の複合化
DCの代わりに3.3mMのカダベリン−PEG(20K)を用いる以外は実施例1に示した条件を用いて、カダベリン−PEG(20K)をEPOと反応させた。図7は反応生成物のSDS−PAGEゲルを示し、図8は生成物のSELDI質量スペクトルを示す。両方は、カダベリン−PEG(20K)がEPOに結合したことを示す。SELDI−MSのための試料は、標準的な案を用いてC−4ジップチップ(zip tip)(Milliporeから)を用いて脱塩し、金SELDIチップ上にスポッティングすることにより調製された。
【0066】
【化5】
[実施例8]
【0067】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのプトレッシン−PEG(5K)基質の複合化
PEG(20K)−カダベリンの代わりに5mM PEG(5K)−プトレッシンを用いる以外は実施例7に記載した条件を用い、プトレッシン−PEG(5K)をEPOと反応させた。プトレッシンはカダベリンより優れたTGasesに関する基質であることが既知である(Folk and Chung,1973 上記を参照されたい)。図9はEPO原液と比較された精製EPO−プトレッシン−PEG(5K)のSDS−PAGEゲル(4−20%)を示し、図10はEPO+TGase+プトレッシン−PEG(5K)から成る反応混合物のSELDI−MSを示し、図11は精製されたEPO−プトレッシン−PEG(5K)のSELDI−MSを示す。これらのデータは、プトレッシン−PEG(5K)がEPOへの複合化に成功したこと、ならびに精製されたEPO−プトレッシン−PEG(5K)が少量の非修飾EPOしか含有しないことを示す。SELDI試料は、H−4 SELDIチップ上にスポッティングし、3μlの水で洗浄し、1μlの飽和シナピン酸を加えることにより調製された。EPO−プトレッシン−PEG(5K)につき、以下の通りにUT7アッセイを行なった:アッセイの前に、L−glu及び5%FBSを含み、Epoを含まないIMDM中で、UT7細胞を24時間飢えさせた。細胞を洗浄し、ウェル当たり30,000個の細胞においてプレート化した。EPO(2.5〜0.0025ng/mL)及びEPO−PEG(20〜0.01952ng/mL)の希釈液を加え、二重に検定した。プレートを37℃で48時間インキュベーションし、Promega’s MTS溶液を用い、1、2及び3時間間隔でとられるOD読取りを用い
て検定した。SoftMax Proを用いて値をバックグラウンド修正した。平均バックグラウンドは0.293であった。アッセイは、複合体が非修飾EPOより約2.5倍活性が低い(2.5−fold less active)ことを示し(図12を参照されたい)、受容体結合に有意に含まれる残基において修飾が起こらなかったことを示す。活性における損失は、結合界面において立体的に妨害するPEGの故であるのが最もあり得ることである。
[実施例9]
【0068】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのプトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)基質の複合化
プトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)(5.1mM)を、100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中の種々の濃度のエタノール(最高で55%)及びTGase(0.15U/ml)中でEPO(4.8μM)と一緒にインキュベーションした。SELDI−MSは、修飾されたEPOのパーセントを定量するためには反応体積が十分でなかったが、55%エタノールにおいてEPO当たりに最高で3個のプトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)部分が結合したことを示す(図13を参照されたい)。これらのデータは、EPO上の最高で3個のグルタミン残基がこれらの条件下でTGase基質として働き得ることも確証する。SELDI試料は、H−4 SELDIチップ上にスポッティングし、3μlの水で洗浄し、1μlの飽和シナピン酸を加えることにより調製された。
【0069】
これらの実施例は、EPO上の少なくとも3個のグルタミン残基がTGase触媒反応を介する小分子、PEG基(5K〜20K)、PEG化脂質及びタンパク質の結合のための部位として働き得ることを示す。1個のPEG化構築物の生物学的活性が確かめられ、わずかにしか低下しないことが示された。これらの修飾のいずれかの故に循環半減期が有意に延長されるなら、そのような活性の小さい損失は、修飾されたタンパク質のおそらく向上する薬物動態学と比較すると、有意でないはずである。
[実施例10]
【0070】
TGaseアミン受容体基質の合成及びrhEPOへの結合
少なくとも1個のグルタミン残基を含有するペプチドを標準的な固相Fmoc化学により合成する。合成の完了に続き、ピペリジンを用いてペプチド樹脂を脱保護し、洗浄し、PEG又は活性化エステルを含有する他のポリマーと反応させる。反応に続き、標準的なTFA条件を用いてペプチド−PEG複合体を樹脂から切断し、エーテル中で沈殿させる。次いでペプチド−PEG複合体を逆相HPLCにより精製し、凍結乾燥する。
【0071】
組換えヒトEPO(rhEPO)(10μM)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でペプチド−PEG複合体(15mM)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に37℃で3時間インキュベーションする。反応混合物をSDS−PAGEに供し、PBSで平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製する。
[実施例11]
【0072】
UT7細胞増殖アッセイ
UT7は、EPO依存性となるように適応させられたヒト白血病細胞系である(Komatsu,N.,et al.著,Blood 82(2),456−464,1993)。UT7細胞をPBS中で3回洗浄し、アッセイの前に24時間EPOを絶つ。L−グルタミン及び5%におけるFBSが加えられたIMDM培地中でUT−7細胞を飢えさせる(15Q)。細胞を50mLのDPBS中で1回洗浄し、DPBS中に懸濁されている間にカウントし、適した培地中にmL当たり6x105個の細胞の最終的濃度に懸濁させ
る(ウェル当たり30,000個の細胞の最終的濃度を与える)。EPO原液(1.7mg/mL)を0.85μg/mLに希釈することにより、EPO標準を調製する(4mLの培地中に2μL)。15Q培地中で原液を2:340に希釈して5ng/mLとし、続いて1:2系列希釈で0.0098ng/mLの濃度に下げる。得られる希釈液は2.5ng/mL〜0.0024ng/mLの濃度における標準を与える。試験試料を類似の方法で希釈する。UT−7細胞懸濁液の50μLのアリコートを対応するウェルに移し、プレートを37℃で48時間インキュベーションする。Promega’s MTS溶液を用い、ウェル当たり20μl加えて細胞増殖を評価する。MTS添加から1時間後に読取りを開始する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ヒトエリトロポエチンの成熟鎖のアミノ酸配列。
【図2】蛍光標識されたTGase基質、ダンシルカダベリン(DC)をTGaseの存在下又は不在下でタンパク質と一緒にインキュベーションしたSDS−PAGEゲルの画像。
【図3】(a)脱グリコシル化EPO、(b)脱グリコシル化EPO−カダベリン−X−ビオチン、(c)脱グリコシル化EPO−DC及び(d)脱グリコシル化EPO−cbzのMALDI MS分析。
【図4】(a)EPOのLys−C消化物(標準);(b)EPO−X−ビオチンのLys−C消化物;(c)脱グリコシル化EPOのLys−C消化物(標準);(d)脱グリコシル化EPO−DCのLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【図5】(a)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1;(b)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#2;(c)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物;(d)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【図6】EPO−(Cbz−QG)又は非修飾EPO(EPO標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフ。
【図7】TGase触媒反応を介するカダベリン−PEG(20K)のEPOへの結合を示す、銀−染色ポリアクリルアミドゲルの画像。
【図8】EPO+PEG20K−カダベリン+TGaseの反応混合物のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【図9】EPO(列1)及び精製されたEPO−PEG5K−プトレッシン(列2)の銀−染色SDS−PAGEゲル(4−20%)。
【図10】反応混合物(EPO+PEG(5K)−プトレッシン+TGase)のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【図11】精製されたEPO+PEG(5K)−プトレッシンに関するSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【図12】EPO−プトレッシン−PEG(5K)(EPO−PEG)又は非修飾EPO(EPO−標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフ。
【図13】EPO+プトレッシン−PEG−DSPE3.4K+TGase(55%エタノール及び45%TGase反応緩衝液,pH7.5)の反応のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、構造に基を結合させるか又は一次配列の突然変異を介して生物学的活性を変更する酵素的方法を用いて製造されるエリトロポエチンの新規な調製物に関する。特に、本発明は、変更された生理化学的及び薬物動態学的性質を有するエリトロポエチン複合体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エリトロポエチン(EPO)は自然に生成する糖タンパク質であり、それはコロニー刺激因子として機能し、赤血球合成の調節に含まれる主要因子として働く。エリトロポエチンは、骨髄中の前駆体細胞を刺激してそれらを分裂させ、成熟赤血球に分化させることにより働く。このプロセスは、赤血球の破壊もしくは循環からの除去が新しい細胞形成の速度に調和するように、体内で厳密に制御される。天然に存在するEPOは、腎臓で生産される糖タンパク質である(非特許文献1)。
【0003】
エリトロポエチンは組換えDNA法を用い、EPO遺伝子のクローニング及びチャイニーズハムスター卵巣細胞における発現を介して製造された(Lin,特許文献1)。組換え的に生産されるEPOはしばらくの間、慢性腎不全、ジドビジン(zidovidine)処置されたHIV感染患者及び骨髄抑制化学療法にあるガン患者と関連する貧血を含む種々の形態の貧血の処置において有効な治療薬として利用できた。糖タンパク質は非経口的に、担体としてヒト血清アルブミン(HSA)を含有する通常の緩衝された水溶液中の静脈内(IV)又は皮下(SC)注射として投与される。そのような調製物は合衆国内でEPOGENR及びPROCRITRの商品名の下に販売されている。これらの製品は、防腐剤を含まない1mlの単投薬量で、あるいは2mlの複数投薬量の防腐されたバイアルにおいてエリトロポエチンを含有する。
【0004】
これらの調製物は非常に成功に満ちたものであることが証明されたが、ある種の欠点が生成物に伴う。現在、エリトロポエチンのようなタンパク質治療薬の生物学的活性の期間は、短い血漿半減期及びプロテアーゼ分解を受け易いことにより限られている。EPOのような治療用タンパク質の4時間の短い半減期は、最大の臨床的有効性のために頻繁な投与を必要とする。これは慢性状態の処置のために不利であり、劣った患者のコンプライアンス、従って最適の結果より低い結果を生じ得る。従って、EPOの血漿半減期を延長させる試みが成されてきた。
【0005】
近年、ポリエチレングリコール(PEG)のような非−抗原性水溶性ポリマーが治療的及び診断的に重要なポリペプチドの共有結合的修飾のために用いられてきた。例えば生体内におけるペプチドの半減期を延長するため、ならびに/又はそれらの免疫原性及び抗原性を減少させるために、インターロイキン(非特許文献2,非特許文献3)、インターフェロン(非特許文献4)、カタラーゼ(非特許文献5)、スーパーオキシドジスムターゼ(非特許文献6)及びアデノシンデアミナーゼ(非特許文献7)のような治療用ポリペプチドへのPEGの共有結合が報告された。
【0006】
誘導体化PEG化合物は以前に報告されている(特許文献2,1995年8月1日,Conjugation−Stabilized Polypeptide Compositions,Therapeutic Delivery and Diagnostic Formulations Comprising Same,and Meth
od of Making and Using the Same,N.N.Ekwuribe)。翻訳後誘導体化のためのこの方法はEPOにも適用された。例えば特許文献3は、エリトロポエチン活性を有する炭水化物修飾ポリマー複合体を開示しており、この場合PEGは酸化された炭水化物を介して連結する。特許文献4は、EPOを含むリシン−枯渇(depleted)ポリペプチド変異体のポリアルキレンオキシド複合体を開示している。特許文献5は、EPOが遺伝子工学により導入されるシステイン残基を含有し、それに特殊なPEG試薬が共有結合するモノメトキシ−PEG−EPO(mPEG−EPO)の製造を記載している。他のPEG−EPO組成物は特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9に開示されている。
【0007】
純粋に化学的な方法を用いるPEGへの複合化(「PEG化(PEGylation)」)によりタンパク質を修飾する多くの方法のよくある制限的側面は、アミン基との無差別且つ多くの場合に不完全な反応であり、それはタンパク質の近づき得るリシン残基及び/又はN−末端アミンに起こり得る。他の化学的方法は、修飾戦略の一部として炭水化物基の酸化を必要とし、同様に不完全な又は一貫しない反応及び限定されない生成物組成物を生ずる。かくして利用可能な現在の選択肢を考えると、穏やかな部位−特異的やり方でEPOを修飾するための方法が有利であろう。
【0008】
トランスグルタミナーゼ(TGases)[EC2.3.2.13;タンパク質−グルタミン:ガンマグルタミルトランスフェラーゼ]は、第1級アミンへのカルシウム−依存性アシル付加を触媒するタンパク質の群であり、付加においてはペプチド−結合グルタミン残基のガンマ−カルボキシアミド基がアシル供与体であり、第1級アミンがアシル受容体及びアミン供与体である。自然には、向き合ったタンパク質上のリシン及びグルタミン残基の間のアミド結合の形成を触媒することにより、TGasesがタンパク質を架橋する。周知の例はTGase XIIIa因子によるフィブリン架橋である。この結合は安定であり、且つプロテアーゼに対して抵抗性であり、かくしてTGasesは一般に細胞の構造成分を結合させるために用いられる。上記の血漿形態の他に、TGasesは肝臓、皮膚及び細胞外液のような組織中で見出される(非特許文献8)。TGaseの原核形態も既知である(非特許文献9,非特許文献10)。TGasesの特異性は非常に顕著であり、通常タンパク質当たりに1個又はいくつかの場合に2個のみのグルタミン残基がアミン受容体として働く。種々の哺乳類組織及び種からのTGasesが広範囲に研究された(非特許文献11,非特許文献12,非特許文献13,非特許文献14)。かくしてTGasesをいくつかのタンパク質上のグルタミン残基を部位−特異的に修飾するために用いることができるはずであり、用いられてきた(特許文献10,特許文献11,特許文献12)。
【0009】
【化1】
【0010】
多数の研究にかかわらず、TGase特異性の決定因子について少ない詳細しか明らかになっていない。TGasesは基質特異性において異なり、アシル供与体又は受容体として残基を選ぶ場合、基質残基を含有するかもしくはそれに隣接するとしての特定の配列モチーフの採択は、個々の酵素に関して一般的に同定されていない(非特許文献15,非特許文献16)。唯一の限定的な規則は、いずれのTGaseに関する基質として働くた
めにも、グルタミン残基がN−末端から少なくとも3個の残基の位置になければならないことである。一般にグルタミン繰り返しは繰り返し中の各グルタミン残基の受容体性を強化することが示され、グルタミン残基の近づき易さもTGase基質として機能するそれらの能力の決定において重要であることが示された(非特許文献17)。
【0011】
TGase修飾の部位−特異性が1960年代以来既知であり、且つ食品の安定化における工業的使用が実施されているが、治療用タンパク質の修飾における使用は最近探求され始めたのみである。脂肪族アミノ基を含有する5キロダルトンもしくはそれより大きいポリマーをタンパク質結合グルタミン残基に結合させるためのTGasesの使用は最近、特許文献12においてSato,et alにより開示された。この特許は、続いてTGase触媒反応を用いて大ポリマーを結合させる目的のために、TGase基質であることが既知の付加されたN−末端もしくはC−末端ペプチドを含有するようにタンパク質を操作する方法も開示している。IL−2のPEG化がこれらの方法を用いて行なわれ(非特許文献18)、バクテリアTGaseを用いるIL−2の種々の他のタンパク質への架橋(Takahara,Y.et al.特許文献10)ならびに組織操作のための修飾フィブリンマトリックスの形成におけるXIIIa因子の使用(特許文献11)も示された。
【0012】
天然に存在する分子への修飾又はモチーフの付加は、治療用タンパク質のための製造方法を与える目的の遺伝子工学の分野に従事するものには周知の複数の危険を伴う。これらの影響の最も明白なものは、生物学的活性の喪失又は部分的喪失である。他の場合、哺乳類細胞系中に導入されると、構築される発現ベクターからの発現レベルが許容され得ないほど低い。天然に存在するタンパク質基質からの既知の基質配列のカップリング又は融合の別の方法は、抗原性エピトープを形成し、患者において望ましくない免疫反応を引き起こし得、それは結局治療用タンパク質の長期間有効性を制限する。さらに、最も反応性の官能基、リシンを攻撃する化学的方法を用いるタンパク質の修飾は、タンパク質の等電点及びpKaも変える。従って、目的が安全且つ経済的に製造される生成物を与えることである場合、これらの制限を理解することが重要である。グルタミンのアミド基のアルキル化アミンへの転換はそのグルタミンの等電点又は電荷を変化させない。かくして、安定な共有結合を形成するが、タンパク質の電荷を改変しない酵素的方法の使用が望ましいであろう。これまで、EPOは自然のTGase基質と考えられてもこなかったし、EPOにおいてTGase基質部位を形成するか、又は除去するための分子の再−操作も記載されていない。
【特許文献1】米国特許第5618698号明細書
【特許文献2】米国特許第5438040号明細書
【特許文献3】国際公開第94/28024号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4904584号明細書
【特許文献5】国際公開第90/12874号パンフレット
【特許文献6】欧州特許第605693号明細書
【特許文献7】米国特許第6,077,939号明細書
【特許文献8】国際公開第01/02017号パンフレット
【特許文献9】欧州特許第539167号明細書
【特許文献10】米国特許第6010871号明細書
【特許文献11】米国特許第6331422号明細書
【特許文献12】米国特許第6322996号明細書
【非特許文献1】Jacobs,et al.著,Nature 313(6005),806−810(1985)
【非特許文献2】Knauf,M.J.et al.著,J.Biol.Chem.1988,263,15,064
【非特許文献3】Tsutsumi,Y.et al.著,J.Controlled Release 1995,33,447
【非特許文献4】Kita,Y.et al.著,Drug Des Delivery 1990,6,157
【非特許文献5】Abuchowski,A.et al.著,J.Biol Chem.1977,252,3,582
【非特許文献6】Beauchamp.C.O.et al.著,Anal.Biochem.1983,131,25
【非特許文献7】Chen,R.et al.著,Biochim.Biophys.Acta 1981,660,293
【非特許文献8】Greenberg,C.Set al.著,FASEB J.1991,5,3071−3077
【非特許文献9】Ando,H.et al.著,Agric.Biol.Chem 53(10),2613−2617,1989
【非特許文献10】Washizu,K.et al.著,Biosci.Biotech.Biochem 58(1),82−87,1994
【非特許文献11】Folk,J.E.and Chung,S.I.著,Adv.Enzym.Molec.Biol.1973,38,109−191
【非特許文献12】Folk,J.E.and Finlayson,J.S.著,Adv.Protein Chem.1977,31,1−133
【非特許文献13】Folk,J.E.& Cole,P.W.著,Biochim Biophys.Acta 1966,122,244−264
【非特許文献14】Folk,J.E.;Chung,S.I.著,Methods in Enzymology 1985,113,358−375
【非特許文献15】Gorman,J.J.;Folk,J.E.著,J.Biol.Chem.1981,256,2712−2715
【非特許文献16】Gorman,J.J.;Folk,J.E.著,J.Biol.Chem.1980,255,419−427
【非特許文献17】Kahlem,P.et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996,93,14580−14585
【非特許文献18】Sato,H.;Ikeda,M.;Suzuki,K.;Hirayama.K.著,Biochemistry 1996,35,13072−13080
【発明の開示】
【0013】
発明の概略
本発明は生物学的に活性なEPO複合体組成物を提供し、ここでEPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり、ここでEPO分子を非−抗原性親水性ポリマーに共有結合的且つ部位特異的に複合化させるためにトランスグルタミナーゼ反応が用いられ、非−抗原性親水性ポリマーは有機分子にも共有結合することができ、それらの修飾のいずれかが組成物の循環血清半減期を延長させる。
【0014】
さらに特定的に、本発明の1つの態様は、かくして、式
EPO−[Gln−A−X−(M)n]y (I)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;GlnはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いグルタミン残基から選ばれるグルタミン残基であり;yは修飾されたグルタミン残基の数を示す1〜7の整数であり;Aはアミン供与体部分又はヒドロキシル基であり、Xは場合による親水性ポリマー部分であり;Mは構築物の循環半減期を延長させる場合による有機分子(ペプチド及びタンパク質を含む)であり;そしてnは0〜15の整数である]
により記載されるEPO誘導体に関する。部分X及びMを必要通りに修飾し、カップリング又は原子価のために適した官能価を与えるように設計される基を含むようにすることができる。
【0015】
有機分子、M、は任意(optional)であり、親水性ポリマーに共有結合する。Mは得られる構築物の生体内半減期を延長させることができる有機部分から選ばれ、脂肪酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸のモノエステル又はモノアミド、飽和脂肪酸を含有する脂質、不飽和脂肪酸を含有する脂質、飽和及び不飽和脂肪酸の混合物を含有する脂質、単純な炭水化物、複雑な炭水化物、炭素環式化合物(ステロイドのような)、複素環式化合物(アルカロイドのような)、アミノ酸鎖、タンパク質、酵素、酵素補因子又はビタミンが含まれる。
【0016】
親水性ポリマーは、好ましくはポリエチレングリコールのようなポリアルキレンオキシドである。
【0017】
本発明の他の態様は、式
EPO−[Lys−Gln−Z−X−(M)n]y (II)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;LysはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いリシン残基から選ばれるリシン残基であり
;yは修飾されたリシン残基の数を示す1〜8の整数であり;Glnはグルタミン残基であり;Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質であり、Xは場合による親水性ポリマーであり;Mは、構築物の循環半減期を延長させる場合による有機分子(ペプチド及びタンパク質を含む)であり;Nは0〜15の整数である]
により記載されるEPO誘導体に関する。部分X及びMを必要な通りに修飾し、カップリング又は原子価のために適した官能価を与えるように設計される基を含むようにすることができる。
【0018】
本発明は複合体の製造方法も提供する。該方法は、アグリコシル化(aglycosylated)もしくはグリコシル化EPO又はグルタミン残基を有する赤血球形成活性を有する糖タンパク質中の1個もしくはそれより多い特定のグルタミン残基への、アミノ基供与体もしくはアルキルアミン−複合体のアシル転移を触媒するためにTGaseを用いる段階を含む。該方法は、ペプチド、タンパク質又は他のポリマー中の1個もしくはそれより多いグルタミン残基へのEPO上のアミノ基供与体のアシル転移を触媒するためにTGaseを用いる段階も含む。
【0019】
本発明に含まれるのは、TGase基質としてのEPOの開示である。従って、グルタミンもしくはリシン残基又は他のいずれかの残基を突然変異させるか、付加するか又は修飾するための組換え的もしくは化学的手段によりEPO分子を改変し、EPO分子がTGase基質性として働くことを可能にするか又はその能力を向上させ、それによりアミン供与体又はアミン受容体部分を含有する親水性ポリマー又は他の有機部分へのEPO分子の複合化を可能にする方法もまた本発明に含まれる。TGase基質性はタンパク質の生物学的活性に含まれ得るので、組換え的又は化学的手段を介してEPO分子のTGase基質性を向上又は低下させることも本発明に含まれる。かくして、本発明に従えばEPO分子を修飾して循環半減期を延長させるか、あるいは他に、哺乳類エリトロポエチン又はいずれかの複合体もしくは突然変異赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を向上させることができる。
【0020】
本発明は、内在性エリトロポエチン又は赤血球形成の減少と関連する貧血又は他の状態あるいは赤血球の増加が望まれる状態の処置方法も提供する。本発明のこの側面において、処置は本明細書に記載される複合体の有効量を、そのような治療の必要な哺乳類に投与することを含む。本発明の結果として、生体内における(in vivo)実質的に長期化した赤血球形成活性を有する複合体が与えられる。
【0021】
本明細書で開示される方法は、延長された循環半減期及び向上した赤血球形成力価を有するEPO分子を与える利点を有する。さらに本発明の修飾EPO分子は、複合化及び/又は突然変異が十分に制御され、実質的に十分に定義され且つ特性化された最終的生成物を生ずる点で利点を有する。
【0022】
図面の簡単な記述
図1は、ヒトエリトロポエチンの成熟鎖のアミノ酸配列を示し、グルタミン残基は四角内である。
【0023】
図2は、蛍光標識されたTGase基質、ダンシルカダベリン(DC)をTGaseの存在下又は不在下でタンパク質と一緒にインキュベーションしたSDS−PAGEゲルの画像である。UV露出を用いて標識を視覚化する:列1=分子量マーカー。列2=EPO+DC+TGase。列3及び4=EPO+DC;列5=EPO標準;及び列6=b−カゼイン+DC+TGase。b−カゼインはTGaseに関する既知の基質であり、正の標準として用いられた。列2における蛍光35Kバンドは1個もしくはそれより多いDC
分子が結合したEPOに対応する。列2中のより高分子量のバンドはEPO二量体及び三量体に対応すると思われる。同ゲルを銀染色し、分子量マーカー及び他の非−蛍光バンドを同定した。
【0024】
図3.(a)脱グリコシル化EPO、(b)脱グリコシル化EPO−カダベリン−X−ビオチン(+424の付加が見られるべきである)、(c)脱グリコシル化EPO−DC(+318の付加が見られるべきである)及び(d)脱グリコシル化EPO−cbz(+319の付加が見られるべきである)のMALDI MS分析。
【0025】
図4.(a)EPOのLys−C消化物(標準);(b)EPO−X−ビオチンのLys−C消化物;(c)脱グリコシル化EPOのLys−C消化物(標準);(d)脱グリコシル化EPO−DCのLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【0026】
図5.(a)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1;(b)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#2;(c)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物;(d)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【0027】
図6は、EPO−(Cbz−QG)又は非修飾EPO(EPO標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフを示す。
【0028】
図7は、TGase触媒反応を介するカダベリン−PEG(20K)のEPOへの結合を示す、銀−染色ポリアクリルアミドゲルの画像である:列1=分子量マーカー。列2=EPO+TGase+DC。列3=EPO標準。列4=EPO+TGase(6時間);列5=EPO+TGase(22時間);列6及び7=TGase(それぞれ6時間及び22時間);列8=PEG(20K)−カダベリン;列9、10及び11=EPO+PEG20K−カダベリン+TGase(それぞれ6時間、22時間及び22時間(還元))。EPO+DC試料は、DCの蛍光シグナルを最大にできるように、過剰負荷されたことに注意されたい。
【0029】
図8は、EPO+PEG20K−カダベリン+TGaseの反応混合物のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。51,010におけるピークはPEG化EPO生成物に対応する。
【0030】
図9は、EPO(列1)及び精製されたEPO−PEG5K−プトレッシン(列2)の銀−染色SDS−PAGEゲル(4−20%)を示す。EPO−プトレッシン−PEG5K試料中に非常に少量の非修飾EPOが存在することに注意されたい。
【0031】
図10は、反応混合物(EPO+PEG(5K)−プトレッシン+TGase)のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。
【0032】
図11は、精製されたEPO+PEG(5K)−プトレッシンに関するSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。(PEG基はイオン化を抑制する傾向があり、かくしてピーク面積は存在する各種の相対的量の指標ではないことに注意されたい。)
図12は、EPO−プトレッシン−PEG(5K)(EPO−PEG)又は非修飾EPO(EPO−標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフを示す。
【0033】
図13は、EPO+プトレッシン−PEG−DSPE3.4K+TGase(55%エタノール及び45%TGase反応緩衝液,pH7.5)の反応のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形を示す。28.8Kにおけるピークは非修飾EPOに対応し、33.7K、37.5K及び41.6Kにおけるピークは、EPO当たり1、2及び3個のプトレッシン−PEG−DSPE3.4K部分の付加に対応する。(脂質基はイオン化を抑制する傾向があり、かくしてピーク面積は存在する各種の相対的量の指標ではないことに注意されたい。)
詳細な記述
EPOは主に腎臓において生産され、前駆体細胞上の受容体二量体への結合を介して機能し、赤血球への分化及び続く増殖に導く(Livnah,O.et al.著,Science 1999,283,987−990)。EPOの一次配列は7個のグルタミン残基を有する(配列番号:1)。集成されたNCBIファイル,P01588はグルタミンを、成熟鎖の58,59,65,78,86,92及び115に対応する前駆体タンパク質の85,86,92,105,113,119及び142の位置に記載している。これらを図1に示す。
【0034】
EPOは2つの結合面を介して受容体に結合し、それらの一方は他方より受容体に関して高い親和性を有する。EPOの結晶構造は解明された(Syed,et al.著,Nature 395(6701),511−516(1998);Cheetham,J.C.et al.著,Human Erythropoietin,NMR minimized average structure.8−Sep−1998.Protein data base ID 1BUY)。その受容体に結合しているEPOの結晶構造も記載されている(Stroud,R.M.and Reid,S.W.著,Erythropoietin complexed with extracellular
domains of erythropoietin receptor.Protein data base ID 1CN4)。複合体内で、EPO上の8個のリシン残基の4個は受容体と直接接触するが、7個のグルタミン残基の1個を除くすべては溶媒が近づき得、Gln78のみが受容体と何らかの可能な相互作用を示す。これらの観察から、EPO上のグルタミン残基は受容体結合を妨げずにPEG又は他のポリマーの結合に関する有意な可能性を与えるが、リシン残基の無差別な修飾はある程度まで結合を妨げることがほとんど確実であることが明らかである。
【0035】
EPO上に存在するリシン残基のいくつかは受容体結合に含まれるが、他は、それらが特異的に修飾され得れば、PEGs又は他のポリマーの結合に関する有意な可能性を与えるであろう。TGasesは、アミン−供与体基質部位として働くことができるタンパク質上のリシンに関して非常に選択的なので、リシン残基がTGasesにより選択的に標的とされれば、これらのリシン残基にポリマーを結合するためのTGasesの使用に関する可能性が存在する。
【0036】
TGasesは多くの哺乳類の体液及び組織中に存在するので、EPOがTGase基質であるという発見は、従って、体内におけるトランスグルタミナーゼ−触媒反応がグルタミン及び/又はリシン残基を含む哺乳類エリトロポエチンからの配列を含有する治療用タンパク質の生物利用性及び分布に影響を与え得るはずであることを示す。かくしてこれらの残基の生来のTGase基質性を低下させるかもしくは除去するためのそれらの除去、マスキング又は修飾は、そのような生物薬剤(biopharmaceutical agent)の生物学的性質を有意に変更し、そのような赤血球形成性タンパク質の有効性を強化し得ることになる。そのような修飾は該グルタミン及び/又はリシン残基を他の19種の天然に存在するアミノ酸のいずれかに突然変異させることにより、該リシン及び/又はグルタミン残基を化学的に修飾することにより、あるいはTGasesを用いて小さいアシル−供与体又はアミン−供与体基質をこれらの部位に結合させ、それによりTG
ase基質としてそれらを除去することにより成される。また、いくつかの残基はペプチド又はタンパク質中に含有されるリシンもしくはグルタミン残基の基質性を向上させるか又は低下させることが示唆されている。かくして、赤血球形成性タンパク質の配列内の他の残基の突然変異、付加又は化学的修飾は、タンパク質の一次アミノ酸配列内に含有されるリシン又はグルタミン残基の基質性を向上させるか又は低下させることができるはずである。最近の論文(Dale,et al.著,Nature 415(10),175−179(2002))において、著者はセロトニンがTGase基質であり、表面タンパク質へのTGase−触媒架橋を介して活性化血小板に結合することを示している。TGasesXIII因子及び組織トランスグルタミナーゼは活性化血小板の表面上で同定された。血小板表面へのセロトニンの架橋は、細胞表面上におけるプロコアグレーションタンパク質(procoagulation proteins)の保持を増大させる。この研究は、細胞外TGasesがTGase基質部位を含有するタンパク質を細胞表面に架橋できること、ならびにこの活性がおそらくタンパク質のその受容体との結合を助長できることを示す。これは、TGasesが赤血球先祖細胞又は他の標的化された細胞系へのタンパク質の結合に含まれるなら、EPOが示すTGase基質性がタンパク質の赤血球形成力価に直接含まれ得ることを示唆する。
EPO
EPOの生物学的活性形態への修飾のための出発材料は、好ましくはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその誘導体である。EPO糖タンパク質は天然源から得ることができるか、あるいは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第4,703,008;5,441,868;5,547,933;5,618,698及び5,621,080号明細書に開示されているような既知の方法を用いて組換え的に生産することができる。所望の生物学的活性を有するエリトロポエチンタンパク質の非グリコシル化形態又は高グルコシル化形態を用いることもできる。高グリコシル化EPOの製造法は、国際公開第0249673号パンフレット及び欧州特許第640619号明細書に記載されている。
トランスグルタミナーゼ
グルタミンから受容体へのアシル転移を触媒する酵素のいずれも本発明における使用に適している。モルモット肝臓由来のトランスグルタミナーゼは特に適しており、商業源、例えばSigma Chemical Co.,ICN Chemicalsなどを介して容易に入手可能である。微生物起源のTGases、例えばストレプトベルチシリウム種(Streptoverticillium sp.)の、又はストレプトベルチシリウム・モバラエンセ(Streptoverticillium mobaraense)からのカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼを用いることもできる(Ando et al.著,Agric.Biol.Chem.,53(10),2613−17,1989)。
アシル受容体/アミン供与体
TGasesは第1級アミン供与体に関して広い特異性を有し、それは第1級アミン含有化合物あるいはリシンのペプチド−もしくはタンパク質結合イプシロン−アミノ基であることができる。TGasesに関するアミン−供与体基質には:アンモニア、ヒドロキシルアミン、メチルアミン、エタノールアミン、フェニルエチルアミン、ヒスタミン、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、プトレッシン、タンパク質−もしくはペプチド−結合リシン基、アミンアミド、例えばグリシンアミドが含まれるが、L−チロシンアミドは含まれない。N−(5−アミノペンタニル)−5−ジメチルアミノ−1−ナフタレン−スルホンアミド(ダンシルカダベリン)は、その蛍光性及び優れたアミン−供与体として働く能力の故に、タンパク質基質を調べるために有用な基質である(Folk and Chung,1973 上記参照)。
【0037】
この場合、水も求核試薬として働くことができ、グルタミンのグルタミン酸への転換を生じ、その場合には上記の式I中の部分Aはヒドロキシル部分である。
【0038】
アミノ糖類、例えば国際公開第0179474号パンフレットを参照されたい、及び日本特許第2000300287号明細書におけるアミノアルキル糖類も、タンパク質へのトランスグルタミナーゼ−触媒結合のための適したアミン供与体であることが示された。アミノ糖類は、第1級アミノ基を含有するいずれかの単糖類、オリゴ糖類又は多糖類ならびにアミノ基の導入のために単糖類、オリゴ糖類又は多糖類の還元的アミノ化により製造されたいずれかの単糖類、オリゴ糖類又は多糖類である。有利なアミノ糖の例はアミノソルビトールである。
【0039】
かくして上記の化合物もしくは関連する化合物のいずれも、アミン供与体として働くことができ、さらにTGaseが触媒するトランス−アシル化反応が該グルタミン残基においてEPO構造に付加することが望まれている基を有効に複合化させるように、それら自身を修飾することができる。式IのA部分に相当する特に好ましい分子は:カダベリン、プトレッシン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン又は類似のジアミノアルカンである。
アシル供与体/アミン受容体
TGasesは、リシン残基がTGase基質部位として機能すれば、グルタミン−含有ペプチド及びタンパク質をタンパク質の構造内のリシンのε−アミノ基に結合させることができる。かくして上記の式IIに従い、Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質を示す。TGase触媒反応を介してタンパク質−結合リシン残基に架橋することが示されたペプチドには:TVQQEL、PGGQQIV、pEAQQIV、PKPQQFM、EAQQIVM及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)−QGの複数の誘導体が含まれる(Grootjans,et al.著,JBC 270(39),22855−22858(1995)),(Groenen et al.著,Eur.J.Biochem.205,671−674(1992)),(Gorman et al.著,JBC 255(2),419−427(1980))。これらのようなペプチドはPEG又は上記のもののような他のポリマーに共有結合し、次いでTGase触媒反応を介してEPO又はアミン−供与性リシン残基を含有する他のタンパク質に結合することができる。
水溶性ポリマー
特に好ましい水溶性ポリマーは、PEGのいくつかの種の1つである。PEGは基本的炭素単位、HO−(CH2)2−OHから成り、種々の形態で:ポリエチレングリコール(種々の分子量);ポリエチレンオキシド;Carbowax PEG(種々の分子量);アルファ−ヒドロ−オメガ−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);エトキシル化1,2−エタンジオール;ポリオキシエチレンエーテル;emkapol 200;gafanol e 200;pluriol e 200;ポリジオール 200;ポリエチレングリコール;PEG;Polyox WSR−301;PEG 200;Macrogol;及びpolyoxyethlenelnの名前の下に販売されている。PEGに基づくポリマーが用いられる本発明の側面において、それらは約200〜約100,000ダルトン、そして好ましくは約2,000〜約40,000ダルトンの平均分子量を有するのが好ましい。
【0040】
別の水溶性ポリマー物質にはデキストラン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又は他の類似の非−免疫原性ポリマーのような材料が含まれる。当該技術分野における通常の熟練者は、前記が単に例であり、本明細書における使用に適した非−抗原性ポリマーの型を制限することが意図されていないことを認識するであろう。
生体内における薬物動態学的半減期の延長を与える有機分子
半減期を延長させるために親水性ポリマーに結合させることができる有機分子には脂肪酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸のモノエステルもしくはモノアミド、飽和脂肪酸を含有
する脂質、不飽和脂肪酸を含有する脂質、飽和及び不飽和脂肪酸の混合物を含有する脂質、単純な炭水化物、複雑な炭水化物、炭素環式化合物(ステロイドのような)、複素環式化合物(アルカロイドのような)、アミノ酸鎖、タンパク質、酵素、酵素補因子又はビタミンが含まれる。
【0041】
1つの態様において、親水性ポリマー基を1〜約6個のアルキル、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質もしくはリン脂質基で置換する(本明細書に記載される通り、例えば式I及び式II)。好ましくは、置換された親水性ポリマー基は直鎖状もしくは分枝鎖状PEGである。好ましくは、置換された親水性ポリマー基は、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質もしくはリン脂質基又は炭化水素で末端が置換された直鎖状PEG(例えばPEGジアミン)である。アルキル、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質又はリン脂質基で置換された親水性ポリマーは、適した方法を用いて製造することができる。例えばモノ保護PEGジアミンを活性化脂肪酸(例えばパルミトイルクロリド)と反応させることにより、修飾剤を製造することができる。得られる生成物を用い、脂肪酸基で置換されたPEGを含む修飾されたEPOを製造することができる。多様な他の適した合成案を用いることができる。例えば本明細書に記載されるようにアミン含有ポリマーを脂肪酸又は脂肪酸エステルにカップリングさせることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボキシレート(例えばN,N’−カルボニルジイミダゾールで活性化された)をポリマー上のヒドロキシル基にカップリングさせることができる。この方法で、所望の性質を有する複数の適した直鎖状及び分枝鎖状多量体構造を構築し、最終的にトランスグルタミナーゼアミン供与体として働くことができる第1級アミンあるいはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるグルタミン−含有ペプチドもしくはポリマーを含有するように、結合させるかもしくは修飾することができる。
【0042】
本発明における使用に適した脂肪酸及び脂肪酸エステルは飽和していることができるか、あるいは1個もしくはそれより多い不飽和単位を含有することができる。好ましい態様において、脂肪酸及び脂肪酸エステルは約6〜約40個の炭素原子を含む。本発明の方法でEPOを修飾するのに適した脂肪酸には、例えばn−ドデカノエート(C12,ラウレート)、n−テトラデカノエート(C14,ミリステート)、n−ヘキサデカノエート(C16,パルミテート)、n−オクタデカノエート(C18,ステアレート)、n−エイコサノエート(C20,アラキデート)、n−ドコサノエート(C22,ベヘネート)、n−トリアコンタノエート(C30)、n−テトラコンタノエート(C40)、シス−D9−オクタデカノエート(C18,オレエート)、全シスD5.8.11.14−エイコサテトラノエート(C20,アラキドネート)、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などが含まれる。適した脂肪酸エステルには直鎖状もしくは分枝鎖状低級アルキル基を含むジカルボン酸のモノエステルが含まれる。低級アルキル基は1〜約12個、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含むことができる。本発明のタンパク質の修飾に適した脂肪酸エステルには、例えばオクタデカン酸メチル、オクタデカン酸エチル、オクタデカン酸プロピル、ドデカン酸ブチル、ドデカン酸sec−ブチル、ドデカン酸tert−ブチル、テトラデカン酸ネオペンチル、テトラデカン酸ヘキシル、シス−Δ9−オクタデカン酸メチルなどが含まれる。
Epoへの転移のためのTGase基質の製造
かくして熟練者は、アミン供与体アミン部分又はアミン受容体部分に結合した2個もしくは3個又はそれより多い部分の複合体を製造することができ、得られる複合体はTGase基質として機能するであろう。
【0043】
他の基質の製造は、好ましくは段階的に行なわれ、最後の段階で1種の脱保護された、又は保護されていない第1級アミンを生ずるであろう。かくして水溶性ポリマー及び有機分子をカップリングさせるために、例えばトシレート、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)、置換フェニルエス
テル、アシルハライドなどのような求電子性基を含むアミン−反応性基が用いられるべき場合、第1級アミンはほとんどの場合に保護されねばならない。有機分子をポリマーに複合化させる他の方法は周知であり、チオールと反応できる薬剤、例えばマレイミド、ヨードアセチル、アクリロイル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)などの使用を含む。分子中へのそのようなチオール反応性基の導入に適した方法は当該技術分野において既知である(例えばHermanson,G.T.著,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)を参照されたい)。アルデヒド又はケトン官能基をアミン−もしくはヒドラジド−含有分子にカップリングさせることができ、アジド基を3価のリン基と反応させてホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。反応性基を親水性ポリマー、コンジュゲート複合体(conjugate complex)に直接結合させることができるか、又はリンカー部分、例えばC1〜C12ヒドロカルビル基を介して結合させることができる。本明細書で用いられる場合、「ヒドロカルビル基」は、1個もしくはそれより多い炭素原子が場合により酸素、窒素又は硫黄のようなヘテロ原子で置き換えられていることができる炭化水素鎖を指す。適したリンカー部分には例えばテトラエチレングリコール、−(CH2)3−、−NH−(CH2)6−NH−、−(CH2)2−NH−及び−CH2−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH−NH−が含まれる。
【0044】
リンカー部分を含む修飾剤は、例えばモノ−Boc−アルキルジアミン(例えばモノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノヘキサン)を1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で脂肪酸と反応させ、遊離のアミンと脂肪酸カルボキシレートの間にアミド結合を形成することにより製造することができる。トリフルオロ酢酸(TFA)を用いる処理により生成物からBoc保護基を除去して第1級アミンを露出し、それを記載した通りに別のカルボキシレートにカップリングさせることができるか、あるいは無水マレイン酸と反応させ、得られる生成物を環化して脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を製造することができる。(例えば引用することによりその方法全体が本明細書の内容となるThompson,et al.著,国際公開第92/16221号パンフレットを参照されたい)。
【0045】
誘導体化赤血球形成性化合物の例は以下である:
M−PEG−A−EPO
ここでM−PEGはTGaseを用いて特異的なグルタミン又はリシンに結合し、ここでMは脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール又はタンパク質であり、Aはアミン供与体、好ましくはカダベリン又はプトレッシンあるいはアミン受容体、好ましくは1〜30アミノ酸の短いグルタミン−含有ペプチドである。
(M−PEG)2−A−EPO
ここでM−PEGはA上の2個の異なるカルボキシル基にエステル化され、ここでMは脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール又はタンパク質である。エステル化のための2個の異なるカルボキシル基を有する部分Aの適した例にはジグリセリド又はトリグリセリド誘導体ならびにマレイン酸、シトラコン酸、グルタミン酸又は2個もしくはそれより多いカルボキシル炭素を含有する他のポリマーの誘導体が含まれる。より高い倍体(higher multiples)も同様に含まれる。
(M−PEG)2−R−A−EPO
ここで(M−PEG)2−RはA上の2個の異なるカルボキシル基であり、ここでMは脂質、炭水化物、多糖類、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール又はタンパク質であり、Rは原子価強化構築物、例えばアミノ酸のデンドリマーなどであり、それは複数の(M−PEG)2又は他の部分の結合のために複数の官能基を含有する。より高い倍体も同様に含まれる。
M−A−EPO
ここでMはタンパク質又はペプチドであり、Aは該タンパク質又はペプチド上のリシン側鎖である。
M−A−EPO
ここでMはタンパク質又はペプチドであり、Aは該タンパク質又はペプチド上のグルタミン側鎖である。
M−A−EPO
ここでMは脂質であり、Aはアミン受容体、好ましくは短いグルタミン−含有ペプチドである。
M−A−EPO
ここでMは脂質であり、Aはプトレッシン、カダベリン又は他のジアミノアルカンである。
M−A−EPO
ここでMはビオチン、ダンシル又は研究、診断又は治療目的に有用な生物物理学的特性をEPOに与える他の部分であり、Aはプトレッシン、カダベリン又は他の適したTGaseアミン供与体もしくはアミン受容体基質である。ビオチン又は既知の結合パートナーを有する別の部分が複合体に導入される場合、該複合体をビオチン−アビジン複合体におけるようにその既知の結合パートナーとの複合体において研究、診断もしくは治療に用いることができると思われる。
治療的使用
本発明のEPO調製物は、低いか又は欠陥のある赤血球生産を特徴とする血液障害、例えば慢性腎不全、ジドビジン処置されたHIV感染患者及び化学療法にあるガン患者と関連する貧血を含む種々の形態の貧血の処置において、非経口用調製物として有用である。それは多様な疾患状態、障害及び血液学的異常の状態、例えば鎌状赤血球症、ベータ−サラセミア、のう胞性線維症、妊娠及び月経障害、早熟の早期貧血(early anemia of prematurity)、脊髄損傷、宇宙飛行、急性失血、老化などの処置においても用途を有することができる。それは手術−前患者におけるように、赤血球の増加が望ましい状況においても用途を有することができる。好ましくは、本発明のEPO組成物は非経口的に(例えば静脈内、筋肉内、皮下又は腹膜内)投与される。有効な投薬量は、処置されている状態及び投与の経路に依存して有意に変わると思われるが、体重のkg当たり0.1(〜7U)〜100(〜7000U)μgの活性材料の範囲内であると思われる。貧血状態の処置のために好ましい投薬量は、週に3回の約50〜約300単位/kgである。
製薬学的組成物
本発明に従って製造されるエリトロポエチン糖タンパク質生成物は、当該技術分野において既知の方法により、製薬学的に許容され得る担体又はビヒクルを用いる注入に適した製薬学的組成物において調製することができる。例えば適した組成物は国際公開第97/09996号パンフレット、国際公開第97/40850号パンフレット、国際公開第98/58660号パンフレット及び国際公開第99/07401号パンフレットに記載されている。本発明の生成物の調製のために好ましい製薬学的に許容され得る担体の中に、ヒト血清アルブミン、ヒト血漿タンパク質などがある。本発明の化合物は、等張剤(tonicity agent)、例えば132mM塩化ナトリウムを含有するpH7における10mMリン酸ナトリウム/カリウム緩衝液中で調製することができる。場合により製薬学的組成物は防腐剤を含有することができる。製薬学的組成物は種々の量のエリトロポエチン生成物、例えば10〜2000μg/ml、例えば50μg又は400μgを含有することができる。
【0046】
酸化防止剤、例えばトコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル又はエデト酸塩、例えばエデト酸二ナトリウムの添加により、組成物の安定性をさらに強化することができ、エデト酸塩はさらにおそらく存在する重金属を結合する。安息香酸及びパラベン類、例えばメチルパラベン及び/又
はプロピルパラベンのような防腐剤の添加により、安定性をさらに強化することができる。
低いか又は欠陥のある赤血球生産を特徴とする血液障害の処置
本発明のエリトロポエチン糖タンパク質生成物の投与は、ヒトにおいて赤血球形成を生ずる。従って、エリトロポエチン糖タンパク質生成物の投与は、赤血球の生産において重要なこのEPOタンパク質を補充する。エリトロポエチン糖タンパク質生成物を含有する製薬学的組成物を、低いかもしくは欠陥のある赤血球生産を特徴とする血液障害を単独でもしくは状態もしくは疾患の一部として経験しているヒト患者への種々の手段による投与に有効な濃度で調製することができる。製薬学的組成物は、皮下、静脈内又は筋肉内注射のような注射により投与することができる。エリトロポエチン糖タンパク質生成物の平均量は変わることができ、特に資格を有する医師の勧告及び処方に基づくべきである。複合体の正確な量は、処置されている状態の正確な型、処置されている患者の状態ならびに組成物中の他の成分のような因子に依存して選ばれることである。例えば体重のkg当たり0.01〜10μg、好ましくは体重のkg当たり0.1〜10μgを、例えば毎週1回投与することができる。
【0047】
本出願を通じて種々の公開文献を引用してきた。これらの公開文献中の開示は、当該技術分野の現状をより十分に記載するために、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0048】
本発明をさらに以下の実施例により示し、実施例は例示の目的のために提示されるが、本発明の化合物及び組成物の調製を制限するものではない。最初の実験から、EPO上の7個のグルタミンの少なくとも2個そしておそらく3個がTGase基質として働くことができる。ペプチドマッピングは、Gln115がTGaseのアシル供与体部位として働くことができること、ならびに他の6個のグルタミン残基の少なくとも1個が同様に働くことができることを示した。EPOへのPEG基及び脂肪族アミンを含有する脂質基の結合がモルモット肝臓TGaseを用いて行なわれ、5キロダルトンのPEG基の結合に続き、EPOはその活性の約40%を保持していることが示された。TGaseに関する既知のアシル供与体基質であるCbz−QGの結合及び続くペプチドマッピングは、EPO上のLys45がTGaseに関する非常に有効なアミン供与体基質部位として働くこと、ならびにLys154もアミン供与体部位として働くことができることを示した。
実施例
[実施例1]
【0049】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのダンシル−カダベリン基質の複合化
組換えヒトEPO(rhEPO)(10μM)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でダンシル−カダベリン(DC)(Sigma,St Louis,MO)(3mM)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に、37℃で3時間インキュベーションした。ダンシル−カダベリンはTGasesに関する周知の基質であり、反応の追跡を容易にするための蛍光マーカーを与える。反応混合物をSDS−PAGEに供し、結果を図2に示す。EPOバンドの蛍光はTGaseを介するDCの結合を確証し、EPO上にアミン−受容体部位が存在することを示す。PBSを用いて平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製した。
【0050】
ゲル中に蛍光性二量体及び三量体が存在することは、EPO中のグルタミン残基の1個もしくはそれより多くとの架橋のためにリシン基質を備えていることにより、EPO自身がTGase基質として働くことができることを示す。これらのバンドが蛍光性であり、且つ架橋されているという事実は、EPO上の少なくとも2個の異なるグルタミン残基が
TGaseアシル−供与体部位として働くことができる可能性を生ずる。
[実施例2]
【0051】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのカダベリン−X−ビオチン基質の複合化
組換えヒトEPO(rhEPO)(50〜100μM)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でカダベリン−X−ビオチン(Biotium,Hayward,CA)(30mM)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に、37℃で3時間インキュベーションした。PBSを用いて平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製した。
[実施例3]
【0052】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのCbz−QG基質の複合化
組換えヒトEPO(rhEPO)(1.96mg/ml)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でN−α−ベンジルオキシカルボニルグルタミニルグリシン(Cbz−QG)(15mM)(Sigma,St Louis,MO)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に、37℃で3時間インキュベーションした。PBSを用いて平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製した。
[実施例4]
【0053】
EPO−DC、EPO−カダベリン−X−ビオチン及びEPO−(Cbz−QG)の特性化及びペプチドマッピング
脱グリコシル化のために、50μlのrhEPO又は複合体(0.2〜2mg/ml)を50μlのRapiGest(Waters Corp.,Milford,MA)(PBS中の2mg/ml)中に希釈した。これに10μlのNP−40洗剤溶液(15%)、それぞれ10μlのPNGase F、シアリダーゼ A及びO−グリカナーゼ(Prozyme,San Leandro,CA)を加えた。溶液を37度で合計96時間インキュベーションした。試料を1:1の水/アセトニトリル(+0.1% トリフルオロ酢酸)中のシナピン酸と混合し、MALDI MSプレート上にスポッティングすることにより無損傷の質量を得、続いてABI Voyager DE−STR MALDI−TOF MS上で分析した。25000Vの集積電圧(acervating voltage)を用い、直線様式で(in linear mode)でタンパク質を分析した(図3及び5)。これに続き、それぞれ50μLを5μLの45mM DTTと混合し、溶液を65℃で20分間インキュベーションした。次いで5μLの100mMヨードアセトアミドを加え、溶液を暗所で室温において20分間インキュベーションした。次いで5μLのLys−Cエンドプロテイナーゼ(Calbiochem,San Diego,CA)(1.3μg/μl)を加え、溶液を37℃で20〜24時間インキュベーションした。逆−相HPLC及びWaters Symmetry300 1x50mm C18カラムを用いて各タンパク質消化物を分離した。それぞれの分離された消化物をMALDIプレート上に自動的にスポッティングし、分析した。イオン化のために、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸/ジヒドロキシ安息香酸(α−シアノ/DHB)の飽和混合マトリックスを用いた(図4)。
【0054】
図3は、EPO及びそれぞれの複合体の脱グリコシル化された試料に関する無損傷の質量を示す。パネル(B)は18725に小さいピークを示し、それは1個のカダベリン−X−ビオチン部分の付加に対応する(計算分子量シフト=+424)。パネル(C)は、1個のダンシル−カダベリン部分の付加に対応する18603にピークを示し(計算分子
量シフト=+317)、パネル(D)は、1個のCbz−QGペプチドの付加に対応する18592にピークを示す(計算分子量シフト=+319)。このデータから、Cbz−QGの結合がダンシル−カダベリン又はカダベリン−X−ビオチンの結合より有効であると思われる。しかしながら、3つのすべての場合にEPOはTGase基質の結合を示す。
【0055】
図4は、EPO−カダベリン−X−ビオチン及びEPO−DCのLys−C消化(digestion)の質量スペクトルを示す。パネル(A)及び(B)中の1958におけるピークは、EPOの残基98−116を含有するものに対応する。矢印により示されるピークは、そのペプチドへのカダベリン−X−ビオチンの付加に対応する。これは、Gln115がTGase基質部位として働くことを示し、それはそれがそのペプチド中の唯一のGln残基であり、TGaseのみがカダベリンをGln残基に結合させるからである。図4のパネル(C)及び(D)は、脱グリコシル化されたEPO及びEPO−DCのLys−C消化物のMALDI MSを示す。5038近辺のピークはEPOの残基53−97(計算分子量=5024.8)に対応する。パネル(D)において、5357におけるピークは319の分子量シフトに対応し、ダンシルカダベリン部分がタンパク質のこの領域内の残基において結合したことを示す。このペプチド中に6個のグルタミンが含有されるので、修飾された残基の正体は突き止められ得なかった。
【0056】
図5のパネル(A)及び(B)は、脱グリコシル化rhEPO−(Cbz−QG)の2つの異なるバッチのMALDI TOF質量スペクトルを示す。18580近辺のピークはrhEPOへの1個のCbz−QG(計算分子量シフト=+319)部分の結合に対応し、両スペクトルは、タンパク質の大部分が両バッチにおいて修飾されたこと、ならびにrhEPOへのこのペプチドの結合が非常に再現性のあるものであることを示す。パネル(C)及び(D)は、脱グリコシル化rhEPO−(Cbz−QG)のLys−C消化物のMALDI TOF質量スペクトルを示す。パネル(C)は、Lys45における追加の(additional)Cbz−QG部分を有するEPOの残基21−52に対応する4046にピークを示す(計算分子量=4032.1)。Lys−Cは、修飾のためにLys45において切断しなかった。パネル(D)は、付加されたCbz−QG部分を有する残基153−165に対応する1807にピークを示す(計算分子量=1802.6)。このペプチドにおいて、Lys154はCbz−QGの結合のために切断されず、Lys154が修飾されていることを示す。
【0057】
本明細書に記載されるMALDI TOF質量スペクトルを得るために、大きな質量ウインドウ(mass window)が必要であった。このために、スペクトルにおいて有意なドリフトが観察された。この理由で、複合体に関する分子量変化は、各個別の試料において修飾されないEPOの場合に観察される分子量への比較により計算された。無損傷の脱グリコシル化試料に関する質量データ及びLys−C消化データは一緒になって、TGaseの存在下でGln115がカダベリン−X−ビオチン及びダンシル−カダベリンの両方で修飾されたこと、ならびにrhEPO中の少なくとも1個の他のGln残基がダンシル−カダベリン修飾を受けたことを確証する。データは、rhEPOのLys45及びLys154がTGaseの存在下でCbz−QG修飾を受けたこと、ならびに分析された両バッチにおいて、最高でタンパク質の90%が修飾されたことも示す。
[実施例5]
【0058】
rhEPO−(Cbz−QG)のUT7アッセイ
rhEPO−(Cbz−QG)につき、以下の通りにUT7アッセイを行なった:アッセイの前に、L−glu及び5%FBSを含み、Epoを含まないIMDM中で、UT7細胞を24時間飢えさせた。細胞を洗浄し、ウェル当たり30,000個の細胞においてプレート化した。EPO(20〜0.01952ng/mL)及びrhEPO−(Cbz
−QG)(20〜0.01952ng/mL)の希釈液を加え、二重に検定した。プレートを37℃で48時間インキュベーションし、Promega’s MTS溶液を用い、1、2及び3時間間隔でとられるOD読取りを用いて検定した。SoftMax Proを用いて値をバックグラウンド修正した。平均バックグラウンドは0.292であった。アッセイは、複合体が非修飾EPOより約4倍活性が低い(4−fold less active)ことを示し(図6を参照されたい)、受容体結合に有意に含まれる残基において修飾が起こらなかったことを示す。これは、Lys45又はLys154の修飾が活性における有意な損失に寄与しないことを意味し、rhEPOがその受容体に結合する能力に有意に影響することなく、これらの部位において他の修飾又は突然変異を行い得ることを示唆する。
[実施例6]
【0059】
カダベリン−PEG(20K)の合成
商業的に入手可能な試薬を用いてカダベリン−PEG(20K)を合成した。25mgのカダベリンヒドロクロリド塩(Sigma,St.Louis,MO)を5mlのPBS中に溶解し、pHを7に調整した。これに25mgのmPEG(20K)−スクシンイミジルプロピオネート(Shearwater Corp.,Huntsville,Alabama)を加え、反応物を22℃で2時間インキュベーションした。反応混合物を水中の0.1%酢酸に対して透析し、凍結乾燥した。
【0060】
【化2】
[実施例7]
【0061】
プトレッシン−PEG(20K)の合成
300mgのプトレッシンヒドロクロリド(Sigma,St.Louis,MO)を10mlのPBS中に溶解し、pHを7に調整することにより、プトレッシン−PEG(5K)を合成した。100mgのmPEG(5K)−スクシンイミジルプロピオネート(Shearwater Corp.,Huntsville,Alabama)を加え、22℃で2時間反応させた。反応混合物を水中の0.1%酢酸に対して透析し、凍結乾燥した。
【0062】
【化3】
[実施例8]
【0063】
プトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)の合成
176.5mgのプトレッシンを1.765mlのPBS(ph 7.4)中に溶解することにより、プトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)を合成した。13.5mgのNHS−PEG−DSPE(3.4K)(Shearwater Corp.,Huntsville,Alabama)を1mlのエタノール/PBS(1:1)中に溶解した。次いで1mlのNHS−PEG−DSPE溶液を1.704mlのプトレッシン溶液
に滴下し、反応物を22℃で4時間攪拌し、次いで0.1%酢酸(pH 4.5)で平衡化されたZorbax GF−250 XLカラム上で精製した。
【0064】
【化4】
[実施例7]
【0065】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのカダベリン−PEG(20K)基質の複合化
DCの代わりに3.3mMのカダベリン−PEG(20K)を用いる以外は実施例1に示した条件を用いて、カダベリン−PEG(20K)をEPOと反応させた。図7は反応生成物のSDS−PAGEゲルを示し、図8は生成物のSELDI質量スペクトルを示す。両方は、カダベリン−PEG(20K)がEPOに結合したことを示す。SELDI−MSのための試料は、標準的な案を用いてC−4ジップチップ(zip tip)(Milliporeから)を用いて脱塩し、金SELDIチップ上にスポッティングすることにより調製された。
【0066】
【化5】
[実施例8]
【0067】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのプトレッシン−PEG(5K)基質の複合化
PEG(20K)−カダベリンの代わりに5mM PEG(5K)−プトレッシンを用いる以外は実施例7に記載した条件を用い、プトレッシン−PEG(5K)をEPOと反応させた。プトレッシンはカダベリンより優れたTGasesに関する基質であることが既知である(Folk and Chung,1973 上記を参照されたい)。図9はEPO原液と比較された精製EPO−プトレッシン−PEG(5K)のSDS−PAGEゲル(4−20%)を示し、図10はEPO+TGase+プトレッシン−PEG(5K)から成る反応混合物のSELDI−MSを示し、図11は精製されたEPO−プトレッシン−PEG(5K)のSELDI−MSを示す。これらのデータは、プトレッシン−PEG(5K)がEPOへの複合化に成功したこと、ならびに精製されたEPO−プトレッシン−PEG(5K)が少量の非修飾EPOしか含有しないことを示す。SELDI試料は、H−4 SELDIチップ上にスポッティングし、3μlの水で洗浄し、1μlの飽和シナピン酸を加えることにより調製された。EPO−プトレッシン−PEG(5K)につき、以下の通りにUT7アッセイを行なった:アッセイの前に、L−glu及び5%FBSを含み、Epoを含まないIMDM中で、UT7細胞を24時間飢えさせた。細胞を洗浄し、ウェル当たり30,000個の細胞においてプレート化した。EPO(2.5〜0.0025ng/mL)及びEPO−PEG(20〜0.01952ng/mL)の希釈液を加え、二重に検定した。プレートを37℃で48時間インキュベーションし、Promega’s MTS溶液を用い、1、2及び3時間間隔でとられるOD読取りを用い
て検定した。SoftMax Proを用いて値をバックグラウンド修正した。平均バックグラウンドは0.293であった。アッセイは、複合体が非修飾EPOより約2.5倍活性が低い(2.5−fold less active)ことを示し(図12を参照されたい)、受容体結合に有意に含まれる残基において修飾が起こらなかったことを示す。活性における損失は、結合界面において立体的に妨害するPEGの故であるのが最もあり得ることである。
[実施例9]
【0068】
モルモット肝臓トランスグルタミナーゼを用いるヒトエリトロポエチンへのプトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)基質の複合化
プトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)(5.1mM)を、100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中の種々の濃度のエタノール(最高で55%)及びTGase(0.15U/ml)中でEPO(4.8μM)と一緒にインキュベーションした。SELDI−MSは、修飾されたEPOのパーセントを定量するためには反応体積が十分でなかったが、55%エタノールにおいてEPO当たりに最高で3個のプトレッシン−PEG−DSPE(3.4K)部分が結合したことを示す(図13を参照されたい)。これらのデータは、EPO上の最高で3個のグルタミン残基がこれらの条件下でTGase基質として働き得ることも確証する。SELDI試料は、H−4 SELDIチップ上にスポッティングし、3μlの水で洗浄し、1μlの飽和シナピン酸を加えることにより調製された。
【0069】
これらの実施例は、EPO上の少なくとも3個のグルタミン残基がTGase触媒反応を介する小分子、PEG基(5K〜20K)、PEG化脂質及びタンパク質の結合のための部位として働き得ることを示す。1個のPEG化構築物の生物学的活性が確かめられ、わずかにしか低下しないことが示された。これらの修飾のいずれかの故に循環半減期が有意に延長されるなら、そのような活性の小さい損失は、修飾されたタンパク質のおそらく向上する薬物動態学と比較すると、有意でないはずである。
[実施例10]
【0070】
TGaseアミン受容体基質の合成及びrhEPOへの結合
少なくとも1個のグルタミン残基を含有するペプチドを標準的な固相Fmoc化学により合成する。合成の完了に続き、ピペリジンを用いてペプチド樹脂を脱保護し、洗浄し、PEG又は活性化エステルを含有する他のポリマーと反応させる。反応に続き、標準的なTFA条件を用いてペプチド−PEG複合体を樹脂から切断し、エーテル中で沈殿させる。次いでペプチド−PEG複合体を逆相HPLCにより精製し、凍結乾燥する。
【0071】
組換えヒトEPO(rhEPO)(10μM)を100mM Tris(pH7.5)及び10mM CaCl2中でペプチド−PEG複合体(15mM)及びTGase(Sigma,St Louis,MO)(0.15U/ml)と一緒に37℃で3時間インキュベーションする。反応混合物をSDS−PAGEに供し、PBSで平衡化されたZorbax GF−250 XL HPLCカラム上で生成物を精製する。
[実施例11]
【0072】
UT7細胞増殖アッセイ
UT7は、EPO依存性となるように適応させられたヒト白血病細胞系である(Komatsu,N.,et al.著,Blood 82(2),456−464,1993)。UT7細胞をPBS中で3回洗浄し、アッセイの前に24時間EPOを絶つ。L−グルタミン及び5%におけるFBSが加えられたIMDM培地中でUT−7細胞を飢えさせる(15Q)。細胞を50mLのDPBS中で1回洗浄し、DPBS中に懸濁されている間にカウントし、適した培地中にmL当たり6x105個の細胞の最終的濃度に懸濁させ
る(ウェル当たり30,000個の細胞の最終的濃度を与える)。EPO原液(1.7mg/mL)を0.85μg/mLに希釈することにより、EPO標準を調製する(4mLの培地中に2μL)。15Q培地中で原液を2:340に希釈して5ng/mLとし、続いて1:2系列希釈で0.0098ng/mLの濃度に下げる。得られる希釈液は2.5ng/mL〜0.0024ng/mLの濃度における標準を与える。試験試料を類似の方法で希釈する。UT−7細胞懸濁液の50μLのアリコートを対応するウェルに移し、プレートを37℃で48時間インキュベーションする。Promega’s MTS溶液を用い、ウェル当たり20μl加えて細胞増殖を評価する。MTS添加から1時間後に読取りを開始する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ヒトエリトロポエチンの成熟鎖のアミノ酸配列。
【図2】蛍光標識されたTGase基質、ダンシルカダベリン(DC)をTGaseの存在下又は不在下でタンパク質と一緒にインキュベーションしたSDS−PAGEゲルの画像。
【図3】(a)脱グリコシル化EPO、(b)脱グリコシル化EPO−カダベリン−X−ビオチン、(c)脱グリコシル化EPO−DC及び(d)脱グリコシル化EPO−cbzのMALDI MS分析。
【図4】(a)EPOのLys−C消化物(標準);(b)EPO−X−ビオチンのLys−C消化物;(c)脱グリコシル化EPOのLys−C消化物(標準);(d)脱グリコシル化EPO−DCのLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【図5】(a)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1;(b)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#2;(c)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物;(d)脱グリコシル化EPO−(Cbz−QG)バッチ#1のLys−C消化物に関するMALDI TOF質量スペクトル。
【図6】EPO−(Cbz−QG)又は非修飾EPO(EPO標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフ。
【図7】TGase触媒反応を介するカダベリン−PEG(20K)のEPOへの結合を示す、銀−染色ポリアクリルアミドゲルの画像。
【図8】EPO+PEG20K−カダベリン+TGaseの反応混合物のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【図9】EPO(列1)及び精製されたEPO−PEG5K−プトレッシン(列2)の銀−染色SDS−PAGEゲル(4−20%)。
【図10】反応混合物(EPO+PEG(5K)−プトレッシン+TGase)のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【図11】精製されたEPO+PEG(5K)−プトレッシンに関するSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【図12】EPO−プトレッシン−PEG(5K)(EPO−PEG)又は非修飾EPO(EPO−標準)と一緒にインキュベーションされたUT7細胞の造血に関する吸光度対付加されたEPO種の濃度のグラフ。
【図13】EPO+プトレッシン−PEG−DSPE3.4K+TGase(55%エタノール及び45%TGase反応緩衝液,pH7.5)の反応のSELDI−MSにおける質量対電荷比に対する強度の図形。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
EPO−[Gln−A−X−(M)n]y
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせ生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;GlnはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いグルタミン残基から選ばれるグルタミン残基であり;yは修飾されたグルタミン残基の数を示す1〜7の整数であり;Aはアミン供与体部分又はヒドロキシル基であり、Xは場合による親水性ポリマー部分であり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;nは0〜15の整数である]
の部分を含んでなる、骨髄細胞に赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有する赤血球形成性複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステル。
【請求項2】
式:
EPO−[Lys−Gln−Z−X−(M)n]y (II)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;LysはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いリシン残基から選ばれるリシン残基であり;yは修飾されたリシン残基の数を示す1〜8の整数であり;Glnはグルタミン残基であり;Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質であり、Xは場合による親水性ポリマーであり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;Nは0〜15の整数である]
の部分を含んでなる、骨髄細胞に赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有する赤血球形成性複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステル。
【請求項3】
骨髄細胞に赤血球の生産の増加を生じさせ、該エリトロポエチン複合体の投与後、非複合化エリトロポエチンの投与後に見られる時間より長い時間、該増加が持続する請求項1又は2の赤血球形成性複合体。
【請求項4】
持続性効果が非修飾哺乳類エリトロポエチンより延長された血清半減期による請求項3の赤血球形成性複合体。
【請求項5】
Mが1〜約6個の有機部分であり、それらはそれぞれ独立して脂肪酸基、脂肪酸エステル基、脂質又はリン脂質から選ばれる請求項1又は2の赤血球形成性複合体。
【請求項6】
親水性ポリマーがポリアルキレンオキシドである請求項1又は2のエリトロポエチン複合体。
【請求項7】
該エリトロポエチン又は赤血球形成性部分が組換え及び非−組換え哺乳類エリトロポエチンから選ばれる請求項1又は2の赤血球形成性複合体。
【請求項8】
ポリアルキレンオキシドが置換されたポリエチレンオキシドである請求項6の赤血球形成性複合体。
【請求項9】
ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、アルキル−ポリエチレンオキシド、ビスポリエチレンオキシド及びポリアルキレンオキシドのコ−ポリマー又はブロックコ−ポリマーから選ばれる請求項6の赤血球形成性複合体。
【請求項10】
該親水性ポリマーが成熟鎖EPOのGLN 58、GLN 59、GLN65、GLN78、GLN86、GLN92、GLN115の1〜7個に結合している請求項1の赤血球形成性複合体。
【請求項11】
該親水性ポリマーが成熟鎖EPOのLYS 20、LYS 45、LYS 52、LYS 97、LYS 116、LYS 140、LYS 152、LYS 154の1〜8個に結合している請求項2の赤血球形成性複合体。
【請求項12】
該ポリアルキレンオキシドが約200〜約100,000の分子量を有するポリエチレングリコールホモポリマーである請求項6の赤血球形成性複合体。
【請求項13】
該親水性ポリマー基が直鎖状もしくは分枝鎖状ポリアルカングリコール鎖、炭水化物鎖、アミノ酸鎖又はポリビニルピロリドン鎖であり、且つ該親水性ポリマー基が約800〜約120,000ダルトンの分子量を有する請求項1及び2の赤血球形成性複合体。
【請求項14】
該疎水性ポリマー基が2,000ダルトンより大きい分子量を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ポリアルカングリコール鎖である請求項13の赤血球形成性複合体。
【請求項15】
該親水性ポリマー基が直鎖状もしくは分枝鎖状ポリエチレングリコール鎖又は直鎖状もしくは分枝鎖状置換ポリエチレングリコール鎖であり、nが0以外の整数であり、有機部分がアルキル基、C6−C40脂肪酸基、C6−C40脂肪酸エステル基、脂質基及びリン脂質基から選ばれる請求項13の赤血球形成性複合体。
【請求項16】
該親水性ポリマー基が、アルキル基、C6−C40脂肪酸基、C6−C40脂肪酸エステル基、脂質基及びリン脂質基から選ばれる有機部分で末端が置換された直鎖状もしくは分枝鎖状ポリエチレングリコール鎖である請求項13の赤血球形成性複合体。
【請求項17】
該有機部分がパルミトイルである請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項18】
有機部分がジステロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項19】
親水性ポリマー−有機部分が成熟鎖EPOのGLN 58、GLN 59、GLN65、GLN78、GLN86、GLN92、GLN115の1〜7個に共有結合している請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項20】
親水性ポリマー−有機部分が成熟鎖EPOのLYS 20、LYS 45、LYS 52、LYS 97、LYS 116、LYS 140、LYS 152、LYS 154の1〜8個に共有結合している請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項21】
Aがアミン供与体TGase基質であり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の有機部分である請求項1の複合体。
【請求項22】
Aがグルタミン−含有TGase基質であり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の有機部分である請求項2の複合体。
【請求項23】
式:
EPO−[Gln−A−X−(M)n]y
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;GlnはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いグルタミン残基から選ばれるグルタミン残基であり;yは修飾されたグルタミン残基の数を示す1〜7の整数であり;Aはアミン供与体部分又はヒドロキシル基であり、Xは場合による親水性ポリマー部分であり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;nは0〜15の整数である]
の赤血球形成活性を有するEPO複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステルの製造方法であって;
トランスグルタミナーゼの存在下に、EPO−ポリマー−有機部分複合体が形成されるような条件下で、水が接近できるグルタミン残基を有するエリトロポエチン又は赤血球形成性タンパク質を、トランスグルタミナーゼ基質として働くことができるあらかじめ構築された式A−X(M)nの親水性ポリマー−有機部分複合体と接触させることを含んでなる方法。
【請求項24】
該ポリマーがポリアルキレンオキシドである請求項23の方法。
【請求項25】
該ポリアルキレンオキシドがアルファ−置換ポリアルキレンオキシドである請求項24の方法。
【請求項26】
該ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールである請求項25の方法。
【請求項27】
トランスグルタミナーゼが哺乳類タンパク質である請求項23の方法。
【請求項28】
トランスグルタミナーゼがバクテリアタンパク質である請求項23の方法。
【請求項29】
トランスグルタミナーゼが原核生物タンパク質である請求項23の方法。
【請求項30】
Aがアミン供与体TGase基質であり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の部分である請求項23の方法。
【請求項31】
式:
EPO−[Lys−Gln−Z−X−(M)n]y (II)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;LysはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いリシン残基から選ばれるリシン残基であり;yは修飾されたリシン残基の数を示す1〜8の整数であり;Glnはグルタミン残基であり;Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質であり、Xは場合による親水性ポリマーであり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;Nは0〜15の整数である]
の赤血球形成活性を有するEPO複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステルの製造方法であって;
トランスグルタミナーゼの存在下に、EPO−ポリマー−有機部分複合体が形成されるような条件下で、水が接近できるリシン残基を有するエリトロポエチン又は赤血球形成性タンパク質を、トランスグルタミナーゼ基質として働くことができるあらかじめ構築された式Gln−Z−X(M)nの親水性ポリマー−有機部分複合体と接触させることを含んでなる方法。
【請求項32】
該ポリマーがポリアルキレンオキシドである請求項31の方法。
【請求項33】
該ポリアルキレンオキシドがアルファ−置換ポリアルキレンオキシドである請求項32の方法。
【請求項34】
該ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールである請求項33の方法。
【請求項35】
トランスグルタミナーゼが哺乳類タンパク質である請求項31の方法。
【請求項36】
トランスグルタミナーゼがバクテリアタンパク質である請求項31の方法。
【請求項37】
トランスグルタミナーゼが原核生物タンパク質である請求項31の方法。
【請求項38】
Aがアミン受容体TGase基質として働くことができるグルタミン残基を含有するペプチド、タンパク質又は他のポリマーであり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の部分である請求項31の方法。
【請求項39】
請求項1又は2の複合体の治療的に有効な量を投与することを含んでなる貧血の処置方法。
【請求項40】
該複合体が非複合化エリトロポエチンと比較して延長された血清半減期を特徴とする請求項39の方法。
【請求項41】
TGase基質性を改変し、それにより循環半減期を延長するか或いはまた赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を変更するために、残基GLN 58、GLN59、GLN65、GLN78、GLN86、GLN92及びGLN115のいずれかもしくはすべてが組換え的、酵素的又は化学的手段により修飾された、組換え又は非−組換え哺乳類エリトロポエチンを含有する赤血球形成性タンパク質もしくはタンパク質複合体。
【請求項42】
該グルタミン残基の1個もしくはそれより多くが化学的に修飾されるか、除去されるか又は他のアミノ酸に変更され、それによってグルタミン残基がTGase基質として働く能力が増加するか、減少するか又は除去される請求項41の赤血球形成性タンパク質又はタンパク質複合体。
【請求項43】
TGase基質性を改変し、それにより循環半減期を延長するか或いはまた赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を変更するために、残基LYS 20、LYS 45、LYS 52、LYS 97、LYS 116、LYS 140、LYS 152、LYS
154のいずれかもしくはすべてが組換え的、酵素的又は化学的手段により修飾された、組換え又は非−組換え哺乳類エリトロポエチンを含有する赤血球形成性タンパク質もしくはタンパク質複合体。
【請求項44】
TGase基質性に影響を与え、それにより循環半減期を延長するか或いはまた赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を変更するために、いずれかの残基が組換え的、酵素的もしくは化学的手段により修飾された、組換え又は非−組換え哺乳類エリトロポエチンを含有する赤血球形成性タンパク質もしくはタンパク質複合体。
【請求項45】
アミン供与体Aが第2の官能基を含有し、それが該第2の官能基へのポリマーX及び/又は有機部分Mの化学的手段による複合化を可能にする請求項1のエリトロポエチン複合体
。
【請求項46】
第2の官能基がチオール、アルデヒド、ヒドラジド、マレイミド又はシステイン基である請求項45のエリトロポエチン複合体。
【請求項47】
アミン供与体Aが第2の官能基を含有し、それが該官能基へのポリマーX及び/又は有機部分Mの化学的手段による複合化を可能にする請求項2のエリトロポエチン複合体。
【請求項48】
第2の官能基がチオール、アルデヒド、ヒドラジド、マレイミド又はシステイン基である請求項47のエリトロポエチン複合体。
【請求項1】
式:
EPO−[Gln−A−X−(M)n]y
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせ生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;GlnはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いグルタミン残基から選ばれるグルタミン残基であり;yは修飾されたグルタミン残基の数を示す1〜7の整数であり;Aはアミン供与体部分又はヒドロキシル基であり、Xは場合による親水性ポリマー部分であり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;nは0〜15の整数である]
の部分を含んでなる、骨髄細胞に赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有する赤血球形成性複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステル。
【請求項2】
式:
EPO−[Lys−Gln−Z−X−(M)n]y (II)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;LysはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いリシン残基から選ばれるリシン残基であり;yは修飾されたリシン残基の数を示す1〜8の整数であり;Glnはグルタミン残基であり;Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質であり、Xは場合による親水性ポリマーであり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;Nは0〜15の整数である]
の部分を含んでなる、骨髄細胞に赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有する赤血球形成性複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステル。
【請求項3】
骨髄細胞に赤血球の生産の増加を生じさせ、該エリトロポエチン複合体の投与後、非複合化エリトロポエチンの投与後に見られる時間より長い時間、該増加が持続する請求項1又は2の赤血球形成性複合体。
【請求項4】
持続性効果が非修飾哺乳類エリトロポエチンより延長された血清半減期による請求項3の赤血球形成性複合体。
【請求項5】
Mが1〜約6個の有機部分であり、それらはそれぞれ独立して脂肪酸基、脂肪酸エステル基、脂質又はリン脂質から選ばれる請求項1又は2の赤血球形成性複合体。
【請求項6】
親水性ポリマーがポリアルキレンオキシドである請求項1又は2のエリトロポエチン複合体。
【請求項7】
該エリトロポエチン又は赤血球形成性部分が組換え及び非−組換え哺乳類エリトロポエチンから選ばれる請求項1又は2の赤血球形成性複合体。
【請求項8】
ポリアルキレンオキシドが置換されたポリエチレンオキシドである請求項6の赤血球形成性複合体。
【請求項9】
ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、アルキル−ポリエチレンオキシド、ビスポリエチレンオキシド及びポリアルキレンオキシドのコ−ポリマー又はブロックコ−ポリマーから選ばれる請求項6の赤血球形成性複合体。
【請求項10】
該親水性ポリマーが成熟鎖EPOのGLN 58、GLN 59、GLN65、GLN78、GLN86、GLN92、GLN115の1〜7個に結合している請求項1の赤血球形成性複合体。
【請求項11】
該親水性ポリマーが成熟鎖EPOのLYS 20、LYS 45、LYS 52、LYS 97、LYS 116、LYS 140、LYS 152、LYS 154の1〜8個に結合している請求項2の赤血球形成性複合体。
【請求項12】
該ポリアルキレンオキシドが約200〜約100,000の分子量を有するポリエチレングリコールホモポリマーである請求項6の赤血球形成性複合体。
【請求項13】
該親水性ポリマー基が直鎖状もしくは分枝鎖状ポリアルカングリコール鎖、炭水化物鎖、アミノ酸鎖又はポリビニルピロリドン鎖であり、且つ該親水性ポリマー基が約800〜約120,000ダルトンの分子量を有する請求項1及び2の赤血球形成性複合体。
【請求項14】
該疎水性ポリマー基が2,000ダルトンより大きい分子量を有する直鎖状もしくは分枝鎖状ポリアルカングリコール鎖である請求項13の赤血球形成性複合体。
【請求項15】
該親水性ポリマー基が直鎖状もしくは分枝鎖状ポリエチレングリコール鎖又は直鎖状もしくは分枝鎖状置換ポリエチレングリコール鎖であり、nが0以外の整数であり、有機部分がアルキル基、C6−C40脂肪酸基、C6−C40脂肪酸エステル基、脂質基及びリン脂質基から選ばれる請求項13の赤血球形成性複合体。
【請求項16】
該親水性ポリマー基が、アルキル基、C6−C40脂肪酸基、C6−C40脂肪酸エステル基、脂質基及びリン脂質基から選ばれる有機部分で末端が置換された直鎖状もしくは分枝鎖状ポリエチレングリコール鎖である請求項13の赤血球形成性複合体。
【請求項17】
該有機部分がパルミトイルである請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項18】
有機部分がジステロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項19】
親水性ポリマー−有機部分が成熟鎖EPOのGLN 58、GLN 59、GLN65、GLN78、GLN86、GLN92、GLN115の1〜7個に共有結合している請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項20】
親水性ポリマー−有機部分が成熟鎖EPOのLYS 20、LYS 45、LYS 52、LYS 97、LYS 116、LYS 140、LYS 152、LYS 154の1〜8個に共有結合している請求項15の赤血球形成性複合体。
【請求項21】
Aがアミン供与体TGase基質であり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の有機部分である請求項1の複合体。
【請求項22】
Aがグルタミン−含有TGase基質であり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の有機部分である請求項2の複合体。
【請求項23】
式:
EPO−[Gln−A−X−(M)n]y
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;GlnはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いグルタミン残基から選ばれるグルタミン残基であり;yは修飾されたグルタミン残基の数を示す1〜7の整数であり;Aはアミン供与体部分又はヒドロキシル基であり、Xは場合による親水性ポリマー部分であり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;nは0〜15の整数である]
の赤血球形成活性を有するEPO複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステルの製造方法であって;
トランスグルタミナーゼの存在下に、EPO−ポリマー−有機部分複合体が形成されるような条件下で、水が接近できるグルタミン残基を有するエリトロポエチン又は赤血球形成性タンパク質を、トランスグルタミナーゼ基質として働くことができるあらかじめ構築された式A−X(M)nの親水性ポリマー−有機部分複合体と接触させることを含んでなる方法。
【請求項24】
該ポリマーがポリアルキレンオキシドである請求項23の方法。
【請求項25】
該ポリアルキレンオキシドがアルファ−置換ポリアルキレンオキシドである請求項24の方法。
【請求項26】
該ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールである請求項25の方法。
【請求項27】
トランスグルタミナーゼが哺乳類タンパク質である請求項23の方法。
【請求項28】
トランスグルタミナーゼがバクテリアタンパク質である請求項23の方法。
【請求項29】
トランスグルタミナーゼが原核生物タンパク質である請求項23の方法。
【請求項30】
Aがアミン供与体TGase基質であり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の部分である請求項23の方法。
【請求項31】
式:
EPO−[Lys−Gln−Z−X−(M)n]y (II)
[式中、EPOはエリトロポエチン又は骨髄細胞に網状赤血球及び赤血球の生産の増加を生じさせる生物学的性質を有するその製薬学的に許容され得る誘導体であり;LysはEPOの一次配列内の1個もしくはそれより多いリシン残基から選ばれるリシン残基であり;yは修飾されたリシン残基の数を示す1〜8の整数であり;Glnはグルタミン残基であり;Zはトランスグルタミナーゼアミン受容体として働くことができるGln残基を含有するペプチド又はタンパク質であり、Xは場合による親水性ポリマーであり;Mは場合による有機分子であり、それはEPO分子の循環半減期を延長させることができることを特徴とし;Nは0〜15の整数である]
の赤血球形成活性を有するEPO複合体ならびにその製薬学的に許容され得る塩又はエステルの製造方法であって;
トランスグルタミナーゼの存在下に、EPO−ポリマー−有機部分複合体が形成されるような条件下で、水が接近できるリシン残基を有するエリトロポエチン又は赤血球形成性タンパク質を、トランスグルタミナーゼ基質として働くことができるあらかじめ構築された式Gln−Z−X(M)nの親水性ポリマー−有機部分複合体と接触させることを含んでなる方法。
【請求項32】
該ポリマーがポリアルキレンオキシドである請求項31の方法。
【請求項33】
該ポリアルキレンオキシドがアルファ−置換ポリアルキレンオキシドである請求項32の方法。
【請求項34】
該ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールである請求項33の方法。
【請求項35】
トランスグルタミナーゼが哺乳類タンパク質である請求項31の方法。
【請求項36】
トランスグルタミナーゼがバクテリアタンパク質である請求項31の方法。
【請求項37】
トランスグルタミナーゼが原核生物タンパク質である請求項31の方法。
【請求項38】
Aがアミン受容体TGase基質として働くことができるグルタミン残基を含有するペプチド、タンパク質又は他のポリマーであり、XがPEG又は他の水溶性ポリマーであり且つ任意であり、Mがビオチン、ダンシル又は研究、診断もしくは治療目的に有用な生物物理学的性質をEPOに与える他の部分である請求項31の方法。
【請求項39】
請求項1又は2の複合体の治療的に有効な量を投与することを含んでなる貧血の処置方法。
【請求項40】
該複合体が非複合化エリトロポエチンと比較して延長された血清半減期を特徴とする請求項39の方法。
【請求項41】
TGase基質性を改変し、それにより循環半減期を延長するか或いはまた赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を変更するために、残基GLN 58、GLN59、GLN65、GLN78、GLN86、GLN92及びGLN115のいずれかもしくはすべてが組換え的、酵素的又は化学的手段により修飾された、組換え又は非−組換え哺乳類エリトロポエチンを含有する赤血球形成性タンパク質もしくはタンパク質複合体。
【請求項42】
該グルタミン残基の1個もしくはそれより多くが化学的に修飾されるか、除去されるか又は他のアミノ酸に変更され、それによってグルタミン残基がTGase基質として働く能力が増加するか、減少するか又は除去される請求項41の赤血球形成性タンパク質又はタンパク質複合体。
【請求項43】
TGase基質性を改変し、それにより循環半減期を延長するか或いはまた赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を変更するために、残基LYS 20、LYS 45、LYS 52、LYS 97、LYS 116、LYS 140、LYS 152、LYS
154のいずれかもしくはすべてが組換え的、酵素的又は化学的手段により修飾された、組換え又は非−組換え哺乳類エリトロポエチンを含有する赤血球形成性タンパク質もしくはタンパク質複合体。
【請求項44】
TGase基質性に影響を与え、それにより循環半減期を延長するか或いはまた赤血球形成性タンパク質の生物学的活性を変更するために、いずれかの残基が組換え的、酵素的もしくは化学的手段により修飾された、組換え又は非−組換え哺乳類エリトロポエチンを含有する赤血球形成性タンパク質もしくはタンパク質複合体。
【請求項45】
アミン供与体Aが第2の官能基を含有し、それが該第2の官能基へのポリマーX及び/又は有機部分Mの化学的手段による複合化を可能にする請求項1のエリトロポエチン複合体
。
【請求項46】
第2の官能基がチオール、アルデヒド、ヒドラジド、マレイミド又はシステイン基である請求項45のエリトロポエチン複合体。
【請求項47】
アミン供与体Aが第2の官能基を含有し、それが該官能基へのポリマーX及び/又は有機部分Mの化学的手段による複合化を可能にする請求項2のエリトロポエチン複合体。
【請求項48】
第2の官能基がチオール、アルデヒド、ヒドラジド、マレイミド又はシステイン基である請求項47のエリトロポエチン複合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−537986(P2007−537986A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533437(P2006−533437)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016670
【国際公開番号】WO2004/108667
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016670
【国際公開番号】WO2004/108667
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】
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