説明

トリプタンおよびNSAIDの併用

トリプタンおよびNSAID粒子の組成物。2000nm未満の有効平均粒子サイズおよび表面上に吸着した少なくとも1つの表面安定剤を有するNSAID粒子。同じ投薬強度および投薬型の非粒子状NSAIDでの匹敵する薬物動態学的試験において、組成物のNSAID構成要素は、非ナノ粒子状NSAIDのTmaxまでの時間に比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示す。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本出願は、2008年6月12日出願の米国仮出願第61/061,047号および2009年2月24日出願の米国特許出願第12/329,566号に対して優先権の恩典を請求する。
【0002】
背景
[0002]米国において、現在、男性の6%および女性の18%が偏頭痛を患っていると概算されてきている。米国頭痛財団は、偏頭痛の特性を、典型的には頭の片側の疼痛、拍動性またはズキズキする性質を有する疼痛、日常の活動に影響を及ぼす中程度から強度の疼痛、吐き気または嘔吐、光または音に対する感受性、および視覚障害または前兆(aura)を含むと説明する。こうした発作は4〜72時間(ときにはより長く)続きうる。現在、偏頭痛の診断を確認する試験はない。
【0003】
[0003]「胃排出遅延」または「胃不全麻痺」とも呼ばれる胃内容うっ滞は、偏頭痛患者の間で一般的な出来事であり、そして吐き気および嘔吐によって明らかになる。極端な場合、胃内容うっ滞は、食道炎およびマロリー・ワイス裂傷を引き起こしうる。偏頭痛患者の間の胃内容うっ滞の結果、胃内容物の分解および吸収が遅延し、これは、こうした患者の薬物療法管理に劇的に影響を及ぼしうる。文献において、胃内容うっ滞が、疾患の特徴(偏頭痛発作)であるようであるのか、または急性偏頭痛発作中に誘発される事象であるようであるのかに関して、現在、論争中である。Gastric Stasis in Migraine: More Than Just a Paroxysmal Abnormality During a Migraine Attack. S. K. Auroraら; HEADACHE, 2006年1月−第46巻第1号 57−63ページを参照されたい。
【0004】
[0004]偏頭痛発作が胃運動性に対して有する影響(すなわち胃内容うっ滞)は、摂食状態にある非偏頭痛患者に近い可能性もある。例えば、絶食状態下では、消化の活動期は、1〜2時間ごとに起こり、そして平均5〜20分間続き、この間に胃の内容物が腸に流れ込む。摂食状態では、胃運動性は、より集中的になり、そして食事のサイズおよび内容に応じて、連続して数時間続きうる。Peter I. D. Lee & Gordon L. Amidon, Pharmacokinetic Analysis: A Practical Approach(CRC Press 1996)。したがって、摂食状態での胃運動性は、絶食状態に比較した際、相対的により遅く、そしてより長い。
【0005】
[0005]偏頭痛発作のための典型的な療法的治療はトリプタンである。トリプタンは、偏頭痛および群発性頭痛の治療において、頓挫的薬剤として用いられているトリプタミンに基づく薬剤ファミリーである。個々の頭痛を治療するには有効であるが、これらは予防剤でもまたは治癒剤でもない。さらに、トリプタンは、胃内容うっ滞の増加と関連づけられてきている。トリプタン作用は、頭蓋血管におけるセロトニン5−HT1Bおよび5−HT1D受容体へのトリプタンの結合(血管収縮を引き起こす)そしてそれに続く炎症促進性ニューロペプチダーゼ放出の阻害に起因すると考えられる。
【0006】
[0006]偏頭痛発作のための別の典型的な療法的治療は、NSAIDである。NSAID「非ステロイド性抗炎症薬剤(単数または複数)」は、鎮痛効果、解熱効果、そしてより高い用量では抗炎症効果を持つ薬剤であり、疼痛、発熱、および炎症を減少させる。NSAIDの使用に関連する主な不都合な薬剤反応は、胃腸管(GIT)の直接および間接的な刺激に関連する。NSAIDは、GITに二重の傷害を引き起こす−酸性分子が胃粘膜を直接刺激し;そしてCOX−1の阻害によって、保護性プロスタグランジンのレベルが減少する。一般的な、胃腸に対する不都合な薬剤反応には、吐き気/嘔吐、ディスペプシア、胃潰瘍/出血および下痢が含まれる。
【0007】
[0007]米国特許第6,060,499号;米国特許第5,872,145号;および米国特許第6,384,034号は、トリプタンとNSAIDの組み合わせを含有する多様な投薬型を解説する。これらの特許は、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークのGlaxoSmithKlineによって販売される、商業的に入手可能な製品、TREXIMET(登録商標)を含む請求項を有すると、FDAオレンジブックに列挙される。TREXIMET(登録商標)は、スマトリプタン(例示的なトリプタン)およびナプロキセンナトリウム(水溶性塩型)を含有する。TREXIMET(登録商標)の添付文書によると、スマトリプタンTmaxは約1時間であり、そしてスマトリプタンの生物学的利用能はおよそ15%であり、これは部分的に吸収が不完全であるためである。TREXIMET(登録商標)のナプロキセンナトリウム部分は、約4時間のTmaxを有し、Cmaxピークには少なくとも36%の減少があり、生物学的利用能は95%である。
【0008】
[0008]TREXIMET(登録商標)は、上記活性成分および以下の不活性成分:クロスカルメロースナトリウム、デキストロース一水和物、二塩基性カルシウム、ホスフェート、FD&C青色2号、レシチン、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、微結晶性セルロース、ポビドン、重炭酸ナトリウム、カルボシメチルセルロース(carbosymethylcellulose)ナトリウム、タルクおよび二酸化チタンを含有する経口錠剤である。
【0009】
[0009]偏頭痛治療のためにトリプタンおよびNSAIDを併用する慣用的な配合物の使用には、欠点、例えばNSAID部分に関する作用開始遅延がある。これは、迅速な疼痛軽減が望ましい急性偏頭痛を治療するためにNSAIDを用いる場合、特に問題である。さらに、トリプタンおよびNSAIDを併用する慣用的配合物で、胃内容うっ滞に取り組んできているものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国仮出願第61/061,047号
【特許文献2】米国特許出願第12/329,566号
【特許文献3】米国特許第6,060,499号
【特許文献4】米国特許第5,872,145号
【特許文献5】米国特許第6,384,034号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Gastric Stasis in Migraine: More Than Just a Paroxysmal Abnormality During a Migraine Attack. S. K. Auroraら; HEADACHE, 2006年1月−第46巻第1号 57−63ページ
【非特許文献2】Peter I. D. Lee & Gordon L. Amidon, Pharmacokinetic Analysis: A Practical Approach(CRC Press 1996)
【発明の概要】
【0012】
[0012]
[00013]トリプタンおよびNSAID粒子の組成物。2000nm未満の有効平均粒子サイズおよび表面上に吸着した少なくとも1つの表面安定剤を有するNSAID粒子。同じ投薬強度および投薬型の非粒子状NSAIDでの匹敵する薬物動態学的試験において、組成物のNSAID構成要素は、非ナノ粒子状NSAIDのTmaxまでの時間に比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0010]
【図1】[0011]図1は、100mgナノケトプロフェン(絶食)、100mgナノケトプロフェン(摂食)、50mgナノケトプロフェン(絶食)、50mgナノケトプロフェン(摂食)、100mgオルヂス(絶食)、および100mgオルヂス(摂食)の、時間に渡る濃度の平均プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0014]
定義
[0015]上記および本開示全体に使用するように、以下の用語は、別に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0015】
[0016]本明細書において、「約」は、一般の当業者によって理解されるであろうし、そして用いられる文脈に応じて、ある程度多様であろう。用いられる文脈を考慮して、一般の当業者に明らかでない用語の使用がある場合、「約」は、特定の用語の最大プラスまたはマイナス10%を意味するであろう。
【0016】
[0017]本明細書において、用語「ナノ粒子」は、適切な方法、例えば沈降流動分画、光子相関分光法、光散乱法、ディスク遠心分離、または当業者に知られる他の技術によって測定した際に、ナノメートル(nm)で報告されるサイズを有する活性剤の固体粒子を指す。ナノ粒子が組成物または配合物内に取り込まれる場合、こうした組成物または配合物は、「ナノ粒子状」型と称されうる(例えば、ナノ粒子状NSAIDは、NSAIDがナノ粒子型であることを意味する)。
【0017】
[0018]粒子サイズは、一般の当業者によって理解されるであろうように、数値に基づくかまたは重量平均に基づいて決定可能である。
[0019]所定のナノ粒子状組成物における粒子集団は、粒子サイズ分布として存在する。粒子サイズ分布の特定の特徴は、ナノ粒子状組成物を性質決定するのに有用である。本明細書において、粒子サイズ分布の「有効平均粒子サイズ」は、所定の粒子サイズxに関して、粒子集団の50%が、x未満のサイズであり、そして粒子集団の50%が、xより大きいサイズであることを意味する。例えば、「2000nmの有効平均粒子サイズ」を有する、NSAIDのナノ粒子を含む組成物は、粒子の50%が約2000nmより小さいサイズであり、そして粒子の50%が2000nmより大きいサイズのものであることを意味する。
【0018】
[0020]本明細書において、数字が続く用語「D」、例えばD50は、ナノ粒子上組成物中の粒子集団の50%がそれより小さく、そして粒子集団の50%がそれより大きい粒子サイズである。別の例では、粒子サイズ分布のD90は、粒子の90%が、その粒子サイズより下に属し、そして逆に、粒子の10%のみが、より大きい粒子サイズのものである、粒子サイズである。
【0019】
[0021]本明細書において、「安定」は、ナノ粒子またはナノ粒子状組成物を記載するよう用いられる場合、限定されるわけではないが、1以上の以下のパラメーターを示す:(1)粒子が、粒子間引力、またはそうでなければ経時的な粒子サイズの有意な増加によって、認識可能に凝集(flocculate)または集塊(agglomerate)せず;(2)粒子の物理的構造が経時的に改変されず(例えば、粒子の形態が一定であり);そして/または(3)粒子が化学的に安定である。
【0020】
[0022]用語「慣用的」、「非ナノ粒子状」、または「ミクロ粒子」は、2000nmより大きい粒子サイズを有する、ナノ粒子状組成物以外の組成物を指す。
[0023]本明細書において、句「療法的有効量」は、こうした治療を必要とする被験体の有意な数において、そのために薬剤を投与する、特定の薬理学的応答を提供する、薬剤投薬量を意味する。特定の例において、特定の被験体に投与される薬剤の療法的有効量は、こうした投薬量が当業者によって療法的有効量と見なされるとしても、本明細書に記載する状態/疾患を治療する際に常には有効でないことが強調される。
【0021】
[0024]用語「トリプタン」には、トリプタンの前駆体、同類物、塩、複合体、類似体、および誘導体が含まれる。用語「NSAID」には、NSAIDの前駆体、同類物、塩、複合体、類似体、および誘導体が含まれる。
【0022】
[0025]トリプタン
[0026]トリプタンは、血管の収縮を改変し、これが偏頭痛の疼痛の軽減を引き起こすと考えられる。トリプタンは、療法的有効量で組成物中に存在する。大部分の適用は、約0.1mg〜約200mgの量、より有望には約0.5mg〜約150mgの量、そして最も有望には約1mg〜約100mgの量でのトリプタンの使用を伴うと考えられる。
【0023】
[0027]商業的に入手可能なトリプタンには、スマトリプタン(イミトレックス、イミグラン)、リザトリプタン(マクサルト)、ナラトリプタン(アマージ、ナラミグ)、ゾルミトリプタン(ゾミグ)、エレトリプタン(レルパックス)、アルモトリプタン(アクサート、アルモグラン)、およびフロバトリプタン(フロバ、ミガード(Migard))が含まれる。
【0024】
[0028]典型的なトリプタンには、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、およびフロバトリプタンが含まれる。トリプタン構成要素内のトリプタンは、限定されるわけではないが、結晶、非晶質、多形体、鏡像異性体、立体異性体、および他の非結晶型を含む、適切な型で存在してもよい。トリプタンは、元来の結晶または非結晶粉末で存在してもよいし、あるいはさらにプロセシングされてもよい。
【0025】
[0029]NSAID
[0030]米国特許第5,145,684号(「’684特許」)に最初に記載されたナノ粒子状活性剤組成物は、ほとんど不溶性の療法剤または診断剤からなる粒子を含む。
【0026】
[0031]NSAIDは、疼痛および炎症の仲介因子であるプロスタグランジンの産生に関与する酵素を阻害し、それによって、偏頭痛症状軽減の速度、有効性および期間を増進する。NSAIDは、伝統的に、穏やかから中程度の偏頭痛発作、または類似のNSAIDに過去、応答性であった重度の発作の、合理的な第一治療選択であった。例えば、偏頭痛発作の急性治療における経口ケトプロフェンの二重放出配合物の二重盲検プラセボ対照ランダム化クロスオーバー試験において、Dibらは、二重放出配合物における経口ケトプロフェン(75mgまたは150mg)が有効でありそしてよく許容されるオプションであることを示した。Dibら, Neurology 2002;58:1660−1665。
【0027】
[0032]本発明のナノ粒子状NSAIDは、同じ投薬強度および投薬型の商業的に入手可能な対応物に比較した際、より迅速な疼痛軽減を提供する。本発明のNSAID構成要素は、療法的有効量の適切なNSAIDを含有する。NSAIDの濃度は、約0.1mg〜約1000mg、約1mg〜約800mg、または約10mg〜約600mgの量である。
【0028】
[0033]本発明によって意図されるNSAIDの例には、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ピルプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メクロフェナメート、メフェナム酸、ナムブメトン(nambumetone)、ピロキシカム、メロキシカム、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、エトドラク、トルメチン、フルルビプロフェン、スリンダクおよびケトロラク、ロキソプロフェン、およびセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、MK−966、エトリコキシブからなる群より選択されるCOX−2阻害剤、4−[5−(4−クロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド、N−(2−シクロヘキシルオキシ−4−ニトロフェニル)メタンスルホンアミド、メチルスルホンスピロ(2.4)ヘプト−5−エンI、SC−57666、セレコキシブ、SC−558、SC−560、エトドラク、5,5−ジメチル−3−(3−フルオロフェニル)−4−(4−メチルスルホニル)フェニル2(5H)−フラノン、MK−476、L−745337、L−761066、L−761000、L−748780、L−748731、5−ブロモ−2−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(メチルスルホニル)フェニル、1−(7−tert−ブチル−2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチルベンゾ(b)フラン−5−イル)−4−シクロプロピルブタン−1−オン、3−ホルミルアミノ−7−メチルスルホニルアミノ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン、BF 389、PD 136005、PD 142893、PD 145065、フルルビプロフェン、ニメスリド、ナブメトン、フロスリド、ピロキシカム、ジコフェナク(dicofenac)、COX−189、D 1367、4ニトロ2フェノキシメタンスルホンアニリド、(3ベンゾイルジフルオロメタンスルホンアニリド、ジフルミドン)、JTE−522、4’−アセチル−2’−(2,4−ジフルオロフェノキシ)m−エタンスルホンアニリド、FK 867、FR 115068、GR 253035、RWJ 63556、RWJ 20485、ZK 38997、(E)−(5)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシド、インドメタシン、CL 1004、RS 57067、RS 104894、SC 41930、SB 205312、SKB 209670、およびOno 1078、その活性光学異性体、立体異性体、類似体および誘導体が含まれる。前述のNSAIDの多くは、現在、個々に認可され、商業的に入手可能な消費者製品中で販売されている。
【0029】
[0034]「Nanoparticulate NSAID Formulations」と題される米国特許第5,518,738号;「Surface Modified NSAID Nanoparticles」と題される第5,552,160号;「Milled Naproxen with Hydroxypropyl Cellulose as Dispersion Stabilizer」と題される第5,591,456号;「Injectable Formulations of Nanoparticulate Naproxen」と題される第6,153,225号;および「New Solid Dose Form of Nanoparticulate Naproxen」と題される第6,165,506号;ならびに国際公報WO 1998/35666は、適切なNSAID組成物を例示する。これらの内容は、各々、本明細書に援用される。
【0030】
[0035]本発明の態様において、NSAIDはナプロキセンである。ナプロキセンは、鎮痛および解熱特性を示す、プロピオン酸誘導体((S)−6−メトキシ−メチル−2−ナフタレン酢酸)である。ナプロキセンは、しばしば、関節リウマチ、変形性関節症(関節炎の最も一般的な型)、若年性関節炎、強直性脊椎炎(脊椎関節炎)、腱炎、滑液包炎、および急性痛風に関連する炎症、腫脹、硬直、および関節疼痛を軽減するのに用いられる。さらに、ナプロキセンを用いて、月経期間に関連する疼痛、偏頭痛、および他のタイプの穏やかから中程度の疼痛を治療する。送達特性および送達型は、例えば、すべてその全体が本明細書に特に援用される、米国特許第3,904,682号;第4,009,197号;第4,780,320号;第4,888,178号;第4,919,939号;第4,940,588号;第4,952,402号;第5,200,193号;第5,354,556号;第5,462,747号;および第5,480,650号に開示される。
【0031】
[0036]商業的に入手可能なナプロキセンは、1日2〜4回投与される。抗炎症または鎮痛効果には、30〜90μg/mlの血漿ナプロキセン濃度が必要であると報告されている。60人の分娩後の女性において、30〜70μg/mlの間の血漿ナプロキセンレベルを生じるのに十分な用量のナプロキセンを経口投与した0.5〜6時間後に、疼痛強度の減少が示された。Sevelius, H.ら, Br. J. Clin. Pharmacol. 10, pp.259−263(1980)。24人の関節リウマチ患者からの証拠によって、臨床応答が、約50μg/mlより高い血漿ナプロキセンレベルで生じることが示唆された。Day, R. O.ら, Clin. Pharmacol, Ther. 31, pp.733−740(1982)。したがって、吸収速度が鎮痛活性の開始に影響を及ぼしうる一方、鎮痛を維持するには、該薬剤の連続血漿レベルが重要であるようである。本発明は、吸収速度の改善を提供し、Tmaxまでの時間がより短くなることを可能にして、こうして鎮痛のより迅速な開始を提供する。
【0032】
[0037]別の態様において、NSAIDはメロキシカムである。メロキシカムはオキシカム誘導体であり、4−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5−メチル−2−チアゾリル)−2−H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド1,1−ジオキシドとしても知られ、NSAIDのエノール酸群のメンバーである。メロキシカムは、水に実質的に不溶性であり、強酸および強塩基中ではより高い溶解度が観察される。メタノールには非常にわずかしか可溶性でない。The Physicians’ Desk Reference, 第56版, pp.1054。ナノ粒子状メロキシカムの適切な配合物は、本明細書にその内容が援用される米国公報出願20040229038に記載される。
【0033】
[0038]メロキシカムは、抗炎症、鎮痛、および解熱活性を示す。他のNSAID同様、メロキシカムの主な作用機構は、プロスタグランジン合成減少を生じるシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素系の阻害を通じる。The Physicians’ Desk Reference, 第56版, pp.1054(2002)を参照されたい。メロキシカムは、COX−2を選択的に阻害し、したがって出血、胸焼け、逆流、下痢、吐き気、および腹痛などの胃腸の問題を引き起こすことがより少ないため、伝統的な非選択的NSAIDより勝る。単回商業的30mg経口用量の生物学的利用能は、30mg静脈内ボーラス注射に比較した際、89%である。メロキシカムの単回静脈内用量の薬物動態学は、5〜60mgの範囲で用量比例的である。The Physicians’ Desk Reference, 第56版, pp.1054(2002)を参照されたい。
【0034】
[0039]さらに別の態様において、NSAIDは、実施例9により詳細に論じられるケトプロフェンである。
[0040]NSAID構成要素を作製する方法
[0041]配合物のNSAID構成要素を調製する方法を開示する。NSAIDナノ粒子状組成物は、NSAIDを製粉してナノ粒子状分散物を得ることによって調製され、製粉工程は、粒子がほとんど不溶性である液体分散媒体中に粒子を分散させ、その後、活性成分の粒子サイズを所望の有効平均粒子サイズに減少させる粉砕媒体の存在下で、機械的手段を適用する工程を含む。例えば、ナプロキセンの場合、分散媒体は、例えば、水、ベニバナ油、エタノール、t−ブタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサン、またはグリコールであってもよい。好ましい分散媒体は、水である。少なくとも1つの表面安定剤の存在下で、ナプロキセン粒子のサイズをさらに減少させることも可能である。
【0035】
[0042]あるいは、摩耗後に、NSAID粒子を、1以上の表面安定剤と接触させてもよい。サイズ減少プロセス中、ナプロキセン/表面安定剤組成物に、希釈剤などの他の化合物を添加してもよい。連続して、またはバッチ様式で、分散物を製造してもよい。
【0036】
[0043]所望のNSAIDナノ粒子状組成物を形成する別の方法は、マイクロ沈降による。これは、いかなる微量毒性溶媒または可溶化重金属不純物も含まずに、1以上の表面安定剤および1以上のコロイド安定性増進性表面活性剤の存在下で、ほとんど不溶性である活性剤の安定分散物を調製する方法である。こうした方法は、例えば:(1)適切な溶媒中に選択したNSAIDを溶解し;(2)工程(1)由来の配合物を、少なくとも1つの表面安定剤を含む溶液に添加し;そして(3)適切な非溶媒を用いて、工程(2)由来の配合物を沈降させる工程を含む。該方法には、慣用的手段による分散物の透析またはディアフィルトレーションおよび濃縮によって、存在するとすれば、いかなる形成された塩も除去する工程が続いてもよい。
【0037】
[0044]本発明のナノ粒子状組成物を調製する別の方法は、ホモジナイズプロセスを使用することによる。活性剤ナノ粒子状組成物を調製する、例示的なホモジナイズ法は、「Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles」に関する米国特許第5,510,118号に記載される。こうした方法は、液体分散媒体中に、例えばナプロキセン粒子を分散させ、その後、分散物をホモジナイズに供して、粒子を減少させる工程を含む。
【0038】
[0045]上述の技術の任意の1つによって製造されるNSAID粒子の集団は、多様なサイズのNSAID粒子の分布を生じる。粒子サイズ分布の特定の特徴は、ナノ粒子状組成物を性質決定するのに有用である。1つの態様において、NSAIDの有効平均粒子サイズは、当該技術分野に知られる適切な方法によって測定した際、1500nm、1400nm、1300nm、1200nm、1100nm、1000nm、900nm、約800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、または50nm未満である。別の態様において、NSAID粒子サイズ分布は、2000nm、1900nm、1800nm、1700nm、1600nm、1500nm、1400nm、1300nm、1200nm、1100nm、1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、250nm、200nm、100nm、75nm、および50nm未満のD90によって特徴付けられる。
【0039】
[0046]表面剤安定剤
[0047]用いる表面修飾剤は、特に、ナノ粒子分散物を作製する製粉プロセス中、および投薬型が患者に消費された後のNSAIDナノ粒子の集塊を防止可能なものでなくてはならない。投薬型が患者に消費された後、表面安定剤は、投薬型がGI管中で溶解するにつれて、NSAID粒子がともに凝集することを防止しなければならない。
【0040】
[0048]例示的な表面修飾剤には、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸化エチレン−酸化プロピレンブロックコポリマー(例えばポロキサマー)、ジオクチルスルホスクシネート、ラウリル硫酸ナトリウム、デキストラン、酸化エチレンおよびホルムアルデヒドを伴う4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー、ポロキサミン、アルキルアリールポリエーテルスルホネート、ステアリン酸スクロースおよびジステアリン酸スクロースの混合物、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、グルカミド、グルコプラノシド(glucopuranosides)、マルトシド、グルコシド、PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのランダムコポリマー、ポリマー、バイオポリマー、多糖、セルロース誘導体、アルギネート、リン脂質、双性イオン性安定化剤、ピリジナム(pyridinum)化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、陽イオン性有機金属化合物、四級リン化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミドブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルサルフェート、陽イオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム、コリンエステル、塩化ステアラルコニウム化合物、臭化または塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、アルキルピリジニウム塩、アミン、アミン塩、イミドアゾリニウム塩、プロトン化四級アクリルアミド、メチル化四級ポリマー、陽イオン性グアー、およびカルボニウム化合物が含まれる。
【0041】
[0049]表面修飾剤がアンモニウム化合物である態様において、修飾剤は、一級アンモニウム化合物、二級アンモニウム化合物、三級アンモニウム化合物、または四級アンモニウム化合物であってもよい。四級アンモニウム化合物は、式、NR〜R〜R〜R4(+)の1つであってもよく、式中:
[0050]R〜RのいずれもCHではないか;
[0051]R〜Rの1つがCHであるか;
[0052]R〜Rの3つがCHであるか;
[0053]R〜RのすべてがCHであるか;
[0054]R〜Rの2つがCHであり、R〜Rの1つがCCHであり、そしてR〜Rの1つが炭素原子7個以下のアルキル鎖であるか;
[0055]R〜Rの2つがCHであり、R〜Rの1つがCCHであり、そしてR〜Rの1つが炭素原子19個以上のアルキル鎖であるか;
[0056]R〜Rの2つがCHであり、そしてR〜Rの1つがC(CH基であり、式中、n>1であるか;
[0057]R〜Rの2つがCHであり、R〜Rの1つがCCHであり、そしてR〜Rの1つが少なくとも1つのヘテロ原子を含むか;
[0058]R〜Rの2つがCHであり、R〜Rの1つがCCHであり、そしてR〜Rの1つが少なくとも1つのハロゲンを含むか;
[0059]R〜Rの2つがCHであり、R〜Rの1つがCCHであり、そしてR〜Rの1つが少なくとも1つの環状フラグメントを含むか;
[0060]R〜Rの2つがCHであり、そしてR〜Rの1つがフェニル環であるか;または
[0061]R〜Rの2つがCHであり、そしてR〜Rの2つが純粋な脂肪族フラグメントである。
【0042】
[0062]さらなる例示的な表面修飾剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンズトリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、セチルアミンヒドロフルオリド、塩化クロラリルメテナミン(Quatemium−15)、塩化ジステアリルジモニウム(Quaternium−5)、塩化ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウム(Quatemium−14)、Quaternium−22、Quaternium−26、Quaternium−18ヘクトライト、ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩、塩酸システイン、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレチルエーテルホスフェート、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテルホスフェート、獣脂塩化アルコニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化ラウルトリモニウム、エチレンジアミン二塩酸塩、塩酸グアニジン、ピリドキシンHCl、イオフェタミン塩酸塩、メグルミン塩酸塩、塩化メチルベンゼトニウム、臭化ミルトリモニウム、塩化オレイルトリモニウム、ポリクォーターニウム−1、塩酸プロカイン、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミン・ジヒドロフルオリド、獣脂塩化トリモニウム、および臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが含まれる。
【0043】
[0063]表面修飾剤は商業的に入手可能であり、そして/または当該技術分野で知られる技術によって調製可能である。これらの表面修飾剤の大部分は既知の薬学的賦形剤であり、そして米国薬剤師会および英国薬剤師会によって合同で出版された、Handbook of Pharmaceutical Excipients(The Pharmaceutical Press、2000)に詳細に記載されている。
【0044】
[0064]ナノ粒子内のNSAIDおよび表面修飾剤の相対量は非常に多様でありうる。個々の構成要素の最適な量は、例えば、選択した特定のNSAID、親水性親油性バランス(HLB)、融点、および修飾剤の水溶液の表面張力に応じうる。ナノ粒子内のNSAIDの濃度は、他の賦形剤を含まず、NSAIDおよび表面修飾剤を合わせた総乾燥重量に基づいて、約99.5%〜約0.001%、約95%〜約0.1%、または約90%〜約0.5%で多様でありうる。表面修飾剤の濃度は、他の賦形剤を含まず、NSAIDおよび表面修飾剤を合わせた総乾燥重量に基づいて、重量にして、約0.5%〜約99.999%、約5.0%〜約99.9%、または約10%〜約99.5%で多様でありうる。
【0045】
[0065]薬物動体学的特性
[0066]1つの態様において、本発明の配合物のNSAID構成要素の生物学的利用能は、Tmaxなどの薬物動態学的パラメーターの優れた提示(すなわち最大濃度に到達するまでの時間がより短い)および/またはNSAIDの摂食/絶食吸収可変性の排除によって改善される。
【0046】
[0067]ナノ粒子状NSAIDは、同じ投薬量強度および投薬型で投与された際の同じ非粒子状NSAIDのTmaxの90%、80%、70%、60%、50%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下であるTmaxを示しうる。
【0047】
[0068]例えば、例示的なナノ粒子状ナプロキセン配合物は、同じ投薬型の非ナノ粒子状ナプロキセンに比較した際、ほぼ半分の時間でTmaxに到達する。同様に、100mgおよび50mgナノ粒子状ケトプロフェン配合物に関してTmaxに到達するまでの時間は、非ナノ粒子状商業的対応物、オルヂス(登録商標)に比較した際、約50%速い。
【0048】
[0069]予期せぬことに、ナノ粒子状NSAIDは、同じNSAIDの異なる型と比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示すことが見出されさえした。例えば、ナノ粒子状ナプロキセンは、相対的に同じ投薬強度で投与される商業的に入手可能なナプロキセンナトリウム(ナプロキセンの非常に可溶性である型)配合物に比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示した。
【0049】
[0070]本発明のNSAID構成要素はまた、絶食条件下で、組成物投与後、同じ状態で投与された非ナノ粒子状NSAIDに関して観察されるものよりも、より短いTmaxを示す。他の態様において、ナノ粒子状NSAIDは、同じ状態で投与された非ナノ粒子状NSAIDに関して観察されるものより、120分、110分、100分、90分、80分、70分、60分、50分、40分、30分、20分、15分、および10分短いTmaxを示す。
【0050】
[0071]偏頭痛の一般的な副作用は吐き気であることが知られる。その結果、患者の疼痛を軽減する活性剤の吸収は、患者の胃内容物に依存してはならない。さらに別の態様において、NSAIDナノ粒子は、絶食状態に対して摂食状態において、患者に投与された際、吸収量または吸収速度に実質的な相違を持たない。したがって、食物の影響を排除すると、偏頭痛患者の患者コンプライアンスが増加しうる。
【0051】
[0072]絶食状態に対して摂食状態で投与された際のNSAIDのAUCまたはCmaxの相違は、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約3%未満である。1つの態様において、摂食状態で投与されたナノ粒子状NSAIDは、絶食状態のナノ粒子状NSAIDの投与と生物学的に同等である。米国食品医薬品局の指針のもとでは、2つの産物または方法は、AUCおよびCmaxに関する90%信頼区間が、0.80〜1.25の間である場合、生物学的に同等である。欧州医薬品庁(EMEA)の指針のもとでは、AUCに関する90%信頼区間が、0.80〜1.25の間であり、そしてCmaxに関する90%信頼区間が、0.70〜1.43の間である場合、2つの産物または方法は生物学的に同等である。
【0052】
[0073]偏頭痛発作中に患者に投与された際のナノ粒子状NSAIDの相対的生物学的利用能は、偏頭痛発作外でナノ粒子状NSAIDが投与された際に比較して、ほぼ同じであった。他の態様において、偏頭痛発作中に患者に投与された際のナノ粒子状NSAIDの相対的生物学的利用能は、偏頭痛発作外で投与されたナノ粒子状NSAIDの生物学的利用能の99%、97%、95%、93%、90%、87%、85%、83%、80%、77%、75%、73%、65%、60%、55%、および50%であった。
【0053】
[0074]さらに別の態様において、投薬型投与後、約5分以内に、ナノ粒子状NSAIDの少なくとも約20%、約30%、または約40%が溶解し、そして生物学的に利用可能になる。他の態様において、投与後、約10〜20分以内に、ナノ粒子状NSAIDの少なくとも約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%が溶解する。溶解は、好ましくは、組成物のin vivo溶解を予測する媒体、例えば0.025Mラウリル硫酸ナトリウムを含有する水性媒体中で測定される。溶解する量の決定を、分光光度法によって実行してもよい。また、回転ブレード法(欧州薬局方)を用いて溶解を測定してもよい。
【0054】
[0075]ナノ粒子を含有する配合物を被験体に投与する際、その中のナノ粒子は、in vivoで再分散可能である。本発明の態様において、被験体への投与後、粒子の有効平均粒子サイズは、適切な方法、例えば光散乱法および顕微鏡によって測定した際、好ましくは約1500nm未満であるように、再分散する。
【0055】
[0076]本発明の多様な他の態様において、再分散ナノ粒子は、1500nm、1400nm、1300nm、1200nm、1100nm、1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、または50nm未満の有効平均粒子サイズを有する。本発明の別の側面において、配合物内のナノ粒子は、最終配合物内に取り込まれる前に、元来作製されたのと同じ粒子サイズに再分散する。
【0056】
[0077]配合物が上記特性を示すかどうかは、配合物が生物学的に適切な水性媒体中でこの特性を示すかどうかによって立証されうる。こうした生物学的に適切な水性媒体は、ヒト体内で見られる生理学的条件を代表するイオン強度およびpHを示す任意の水性媒体であってもよい。こうした媒体は、所望のpHおよびイオン強度を示す、例えば、任意の塩、酸、または塩基、あるいはその組み合わせの水性溶液の水性電解質溶液であってもよい。生物学的に適切なpHは、当該技術分野に周知である。例えば、胃において、pHはわすかに2未満(しかし典型的には1より大きい)から最大4または5の範囲である。小腸において、pHは4〜6の範囲でありうる。結腸において、pHは6〜8の範囲でありうる。生物学的に適切なイオン強度もまた、当該技術分野に周知である。絶食状態胃液は、約0.1Mのイオン強度を有する一方、絶食状態腸液は、約0.14Mのイオン強度を有する。適切なpHおよびイオン強度値は、酸、塩基、塩等の多くの組み合わせを通じて得られうる。
【0057】
[0078]NSAIDおよびトリプタンを含む配合物を作製する方法
[0079]多様な方法によって、ナノ粒子状NSAIDおよびトリプタンを含む本発明の組成物を作製してもよい。こうした方法の例には、製粉、ホモジナイズ、沈降、凍結、テンプレートエマルジョン技術、または任意のその組み合わせが含まれる。
【0058】
[0080]上記湿潤製粉技術によって調製された場合、ナノ粒子状NSAIDは、プロセスにおける1つの工程で、表面上に吸着された表面安定剤を有するナノ粒子の水性分散物である。分散物を流動床スプレードライヤー顆粒化装置を介して、スプレー乾燥させて、顆粒にしてもよい。顆粒化を他の慣用的な賦形剤と組み合わせて、そして加圧してミニ錠剤またはペレットにしてもよい。あるいは、ナノ粒子分散物を、ノンパレイユ糖球体などの不活性支持体上にスプレーコーティングして、ビーズを形成してもよい。
【0059】
[0081]1つの態様において、配合物のトリプタン構成要素は、即時放出ビーズの形である。「即時放出」によって、投与後、ビーズがビーズの溶解に際して、即時、トリプタンを放出することを意味する。例えば、即時放出ビーズにおいて、ナノ粒子状NSAIDを不活性支持体上にスプレーコーティングして、ビーズを形成し、そしてトリプタンもまた、即時放出ビーズ内に配合する。
【0060】
[0082]ナノ粒子状NSAIDビーズ集団およびトリプタンビーズ集団をカプセル内に入れ、こうして生じる投薬型は、当該技術分野において、多粒子状投薬型と呼ばれる。あるいは、トリプタンをビーズ内に配合し、そしてナノ粒子状NSAIDをトリプタンビーズ上にスプレーコーティングして、二重薬剤多層ビーズを形成する。これらの二重薬剤多層ビーズの単一集団を、患者に投与するためにカプセル内に入れてもよい。NSAIDおよびトリプタン構成要素の所望のサイズ、強度および放出速度にしたがって設計可能な、ナノ粒子状NSAIDおよびトリプタンの多様な設計がある。
【0061】
[0083]例えば、1つの態様において、トリプタン構成要素は、修飾放出ビーズの形である。「修飾放出」によって、ビーズが、即時放出でないトリプタンの放出を可能にすることを意味する。
【0062】
[0084]1つの例示的な修飾放出は徐放である。「徐放」によって、薬剤、例えばトリプタンの放出が、特定の期間に渡って特定の放出速度が達成される、特定の放出プロフィールによって特徴付けられることを意味する。異なる期間で、多様な異なる放出速度を達成してもよい。1つの態様にしたがって、トリプタンの放出は、トリプタンビーズを徐放ポリマーでコーティングすることによって、またはトリプタンを修飾放出マトリックス内に配合することによって、達成される。
【0063】
[0085]例示的な徐放ポリマーには、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートトリマレテート(trimaletate)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、アンモニオメタクリレートコポリマー、例えば商標Eudragit(登録商標)RSおよびRLのもとに販売されているもの、ポリアクリル酸およびポリアクリレートおよびメタクリレートコポリマー、例えば商標Eudragit(登録商標)SおよびLのもとに販売されているもの、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびセラック;ヒドロゲルおよびゲル形成性物質、例えばカルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルメロース、カルシウムカルメロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デンプン、ならびに水の吸着およびポリマーマトリックスの拡大を促進するように、架橋の度合いが低い、セルロースに基づく架橋ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン、架橋デンプン、微結晶性セルロース、キチン、アミノアクリル−メタクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標)RS−PM、Rohm & Haas)、プルラン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(膨張性親水性ポリマー)ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリビニルピロリドン、陰イオン性および陽イオン性ヒドロゲル、低アセテート残渣(residual)を有するポリビニルアルコール、寒天およびカルボキシメチルセルロースの膨張性混合物、無水マレイン酸およびスチレン、エチレン、プロピレンまたはイソブチレンのコポリマー、ペクチン(分子量約30k〜300k)、寒天、アラビアゴム、カラヤ、トラガカント、アルギンおよびグアーなどの多糖、ポリアクリルアミド、AquaKeep(登録商標)アクリレートポリマー、ポリグルカンのジエステル、架橋ポリビニルアルコールおよびポリN−ビニル−2−ピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム;親水性ポリマー、例えば多糖、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはカルシウム、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ポリエチレンオキシド(例えばPolyox(登録商標)、Union Carbide)、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、マルトデキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸のコポリマーまたはメタクリル酸(例えばEudragit(登録商標)、Rohm and Haas)、他のアクリル酸誘導体、ソルビタンエステル、天然ゴム、レシチン、ペクチン、アルギネート、アルギン酸アンモニア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、ならびにアラビアゴム、カラヤ、ローカストビーン、トラガカント、カラギーン、グアー、キサンタン、スクレログルカン(scleroglucan)などのゴム、ならびにその混合物およびブレンドが含まれる。
【0064】
[0086]トリプタンが徐放マトリックス中に配合される態様において、例示的なマトリックス物質には:in vitroまたはin vivoで、分散した関心対象の化合物の放出を修飾することが可能な、親水性ポリマー、疎水性ポリマーおよびその混合物が含まれる。本発明の実施に適した修飾放出マトリックス物質には、限定されるわけではないが、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ポリエチレンオキシド、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどのアルキルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートトリメリテート、ポリ酢酸フタル酸ビニル、ポリアルキルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ならびにその混合物が含まれる。
【0065】
[0087]別の例示的な修飾放出は、遅延放出である。「遅延放出」によって、化合物が、トリプタンが放出されない遅延期間の後に放出されることを意味する。
[0088]例えば、構成要素の1つの放出を遅延させることが望ましい場合、溶腸コーティングを用いてもよい。溶腸コーティングは、pH感受性ポリマーを含む。典型的には、これらのポリマーはカルボキシル化され、そして低いpHでは水とほとんど相互作用しない。しかし、高いpHでは、ポリマーがイオン化し、これによってポリマーの膨潤または溶解が引き起こされる。したがって、こうしたコーティングは、胃の酸性環境において損なわれないままであり、そして次いで、腸のよりアルカリ性の環境において溶解されることも可能である。
【0066】
[0089]コーティングまたはマトリックス物質の量を変化させることによって、例えば、粒子により厚いコーティングを適用することによって、あるいはコーティングまたはマトリックス物質の成分を調節することによって、本発明の薬剤構成要素、例えばトリプタン構成要素の徐放配合物の速度およびタイミングを調節することも可能である。
【0067】
[0090]上記投薬型を組み合わせて、より大きい固体投薬型、例えば錠剤、カプセル、ロゼンジ等を形成してもよい。1つの態様において、トリプタンおよびNSAIDはともに同時パッキングされる。同時パッキングは、患者が、1つの錠剤/カプセル中で、そしてトリプタンの療法用量と同じ容器中で、NSAIDの療法用量を投与されるように、同じパッケージング容器(例えばブリスターパック)内にパッケージングされた投薬型を有することを指す。
【0068】
[0091]他の成分
[0092]NSAIDおよびトリプタン構成要素に加えて、本発明は、最終配合物中に、ナノ粒子または非ナノ粒子型いずれかの他の補助的活性成分の取り込みを含む。こうした適切な活性成分の例には、SSRI、例えばフルボキサミン、セルタリン(sertaline)、フルオキセチン; MOA阻害剤、例えばフレンフルラミン(flenfluramine);抗ヒスタミン剤、例えばシメタジン(cimetadine)またはラニチジン;ベータ遮断剤、例えばプロプラノロール;制吐剤、例えばメトクロプラミド、グラニセトロンおよびオンダンセトロン、抗痙攣剤、例えばガパペンチン(gapapentin);オピエート、例えばヒドロコドンおよびコデイン、あるいは偏頭痛またはその症状を管理する際に一般的に用いられる薬剤の他のカテゴリー、例えば、ニトログリセリン、ニモジピン、レセルピン、カルシウムチャネル遮断剤、カフェイン、エルゴタミンまたはその組み合わせが含まれる。
【0069】
[0093]本発明の配合物はまた、1以上の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味料、フレーバー剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、抗接着剤、および他の賦形剤も含んでもよい。こうした賦形剤が当該技術分野に知られる。ナノ粒子を含む粒子の使用を伴う本発明の態様において、これらの賦形剤は、粒子内に存在してもよい。
【0070】
[0094]さらに、他の不活性成分には、結合剤、充填剤、潤滑剤、甘味料、希釈剤、崩壊剤、保存剤、ならびに一般の当業者に一般的に知られ、そして好まれる、任意の他の成分が含まれてもよい。
【0071】
[0095]結合剤の例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が含まれる。
[0096]充填剤の例は、ラクトース一水和物、無水ラクトース、および多様なデンプンである。
【0072】
[0097]結合剤の例は、多様なセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102、微結晶性セルロース、およびケイ化微結晶性セルロース(ProSolv SMCCTM)である。
【0073】
[0098]圧縮しようとする粉末の流動性に作用する剤を含めた、適切な潤滑剤は、Aerosil(登録商標)200などのコロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。
【0074】
[0099]甘味料の例は、スクロース、キシリトール、ナトリウムサッカリン、シクラメート、アスパルテーム、およびアクスルファム(acsulfame)などの任意の天然または人工甘味料である。フレーバー剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、およびフルーツフレーバー等である。
【0075】
[00100]保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルまたはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール系化合物、あるいは塩化ベンザルコニウムなどの四級化合物である。
【0076】
[00101]適切な希釈剤には、微結晶性セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、糖類、および/または前記のいずれかの混合物などの薬学的に許容されうる不活性充填剤が含まれる。希釈剤の例には、Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102などの微結晶性セルロース;ラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatose(登録商標)DCL21などのラクトース;Emcompress(登録商標)などの二塩基性リン酸カルシウム;マニホールド(manifold);デンプン;オービタル(orbital);スクロース;ならびにグルコースが含まれる。
【0077】
[00102]適切な崩壊剤には、軽度に架橋したポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および修飾デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0078】
[00103]発泡剤の例は、有機酸および炭酸塩または重炭酸塩などの発泡性カップルである。適切な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸およびアルギン酸、ならびに無水物および酸性塩が含まれる。適切な炭酸塩および重炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、L−リジン炭酸塩、および炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡剤カップルの重炭酸ナトリウム構成要素のみが存在してもよい。抗接着剤の例には、二酸化ケイ素およびタルクが含まれる。
【実施例】
【0079】
[00104]
[00105]実施例1
[00106]本実施例は、トリプタンを含む即時放出粒子の調製を記載する。
[00107]トリプタンを含む溶液を調製する((A)〜(F))。配合を表1に示す。
【0080】
[00108]表1
即時放出粒子のためのトリプタン溶液
【0081】
【表1】

【0082】
[00109]次いで、これらの溶液各々を不活性糖球体(30/35メッシュ)上にコーティングする。生じた粒子は、0.5〜0.6mmの平均直径を有する。
[00110]ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、このコーティングのための結合剤として作用する。二酸化ケイ素は抗接着剤である。
【0083】
[00111]実施例2
[00112]本実施例は、トリプタン含有修飾放出粒子の調製を記載する。
[00113]実施例1で調製したものなどのトリプタンを含む即時放出粒子を、粒子周囲の修飾放出コーティングを形成する溶液でコーティングする。こうした溶液の例を表2に提供する((A)〜(G))。
【0084】
[00114]表2
修飾放出溶液
【0085】
【表2】

【0086】
[00115]アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標)RS100)は、粒子に徐放特性を与える、速度制御ポリマーである。タルクは、抗接着剤として用いられる。アセトンおよびイソプロピルアルコールは、アンモニオメタクリレートコポリマーの溶液を形成する際に用いられる溶媒である。溶液を即時放出粒子上にコーティングした後、溶媒は蒸発し、したがって粒子周囲に固形コーティングを形成する。次いで、生じたコーティング粒子をオーブン中、約40〜約500℃/約30〜約60%RHで約10〜約20時間乾燥させて、残ったいかなる溶媒も取り除き、そして約3〜約6%の水分含量を得る。
【0087】
[00116]実施例3
[00117]本実施例の目的は、本発明の組成物中で使用可能なイブプロフェンナノ粒子状構成要素の調製を記載することである。
【0088】
[00118]連続実験室ミキサーを用いて、30グラムのヒドロキシプロピルセルロース(Klucel EF型; Aqualon)を670グラムの脱イオン水中に溶解する。ヒドロキシプロピルセルロースは、表面修飾剤として働く。次いで、均質な懸濁物が得られるまで、300グラムのイブプロフェンを溶液内に分散させた。レーザー光散乱技術を用いて測定した際に、平均粒子サイズがおよそ200nmになるまで、ポリマー性粉砕媒体を充填した実験室規模の媒体ミルを連続方式で用いる。
【0089】
[00119]実施例4
[00120]本実施例の目的は、本発明の組成物中で用いられうるイブプロフェンナノ粒子状構成要素の調製を記載することである。
【0090】
[00121]連続実験室ミキサーを用いて、25グラムのポリビニルピロリドン(K29/32; BASF Corp)を575グラムの脱イオン水中に溶解する。
[00122]ポリビニルピロリドンは、表面修飾剤として働く。次いで、均質な懸濁物が得られるまで、400グラムのイブプロフェンを溶液内に分散させる。レーザー光散乱技術を用いて測定した際に、平均粒子サイズがおよそ200nmになるまで、ポリマー性粉砕媒体を充填した実験室規模の媒体ミルを連続方式で用いる。
【0091】
[00123]実施例5
[00124]本実施例の目的は、本発明の組成物中で使用可能なナプロキセンナノ粒子状構成要素の調製を記載することである。
【0092】
[00125]連続実験室ミキサーを用いて、25グラムのポリビニルピロリドン(K29/32; BASF Corp)を575グラムの脱イオン水に溶解した。均質な懸濁物が得られるまで、400gのナプロキセンをPVP溶液内に分散させた。レーザー光散乱技術、例えばMicroTrak UPAによって測定した際に、平均粒子サイズがおよそ200nmになるまで、ポリマー性粉砕媒体を充填した実験室規模の媒体ミルによって、懸濁物をプロセシングする。
【0093】
[00126]実施例6
[00127]本実施例の目的は、本発明の併用組成物中で使用可能なナプロキセンナノ粒子状構成要素の調製を記載することである。
【0094】
[00128]以下のように、ローラーミル中で、ナノ粒子状ナプロキセン分散物を調製した。250mlのガラス瓶に、1.0mmのあらかじめ清浄にした酸化ジルコニウムビーズ(Zirbeads XR、Zircoa Inc.より入手可能、1.0mmの呼び径を有する)120ml、ミズーリ州セントルイスのSigmaより購入した粒子サイズ20〜30ミクロンのナプロキセン3g(重量にして5%)を含有する水性スラリー60g、および表面安定剤としてのBASF Fine Chemicals, Inc.より購入した1.8g(重量にして3%)のPluronic F−68を装填した。HSO中で一晩リンスし、その後、脱イオン水で数回リンスすることによって、ビーズをあらかじめ清浄にした。バッチを92RPMで全部で120時間回転させた。一部を0.1N HClに添加した際も分散物は安定であった。光子相関分光によって測定した平均粒子サイズは、240〜300nmであった。
【0095】
[00129]実施例7
[00130]本実施例の目的は、メロキシカムナノ粒子分散物を調製する方法を記載することである。
【0096】
[00131]所望の量のメロキシカムおよび少なくとも1つの表面安定剤を、例えば、DYNO(登録商標)−Mill KDL(Willy A. Bachofen AG、スイス・バーゼル・マシーネンファブリク)、ローラーミル(U.S. Stonewear)、またはNanoMill(登録商標)(Elan Drug Delivery Inc.)において、適切な期間、適切な堅い粉砕媒体の存在下で、製粉してもよい(例えば、「Small−Scale Mill and Method Thereof」に関するWO 00/72973を参照されたい)。
【0097】
[00132]例えば、Horiba LA−910レーザー散乱粒子サイズ分布分析装置(Horiba Instruments、カリフォルニア州アービン)を用いて測定した際、生じた組成物の平均粒子サイズは、2ミクロン未満と予測される。分散物は、ある温度範囲に渡り、長期間に渡って、優れた安定性を示すと予測される。
【0098】
[00133]実施例8
[00134]本実施例の目的は、本発明の組成物中で使用可能なメロキシカムナノ粒子状構成要素の調製を記載することである。
【0099】
[00135]実施例7のナノ粒子状分散物を、スプレー乾燥するか、凍結乾燥するかまたはスプレー顆粒化して、粉末を形成してもよい。次いで、ナノ粒子状メロキシカムの生じた粉末または顆粒を適切な賦形剤と混合してもよい。
【0100】
[00136]ナノ粒子状メロキシカムスプレー乾燥粉末50.2、アルファ化デンプンNF(Colorcon(登録商標)デンプン(tarch)20.0 1500)、微結晶性セルロースNF(Avicel(登録商標)PH101)20.0、デンプングリコール酸ナトリウム(Explotab(登録商標))5.3、クロスカルメロースナトリウムUSP(Ac−Di−Sol(登録商標))4.0、ステアリン酸マグネシウムNF 0.5で、総計100.0とする。
【0101】
[00137]錠剤は、水中、ならびに模擬生物学的流体中で優れた再分散を示すと予測される。これは、模擬生物学的流体中の再分散がin vivo条件下での再分散を予測するため、重要である。
【0102】
[00138]実施例9
[00139]本実施例は、急性偏頭痛発作に苦しむ患者の間での、ナノ粒子状ケトプロフェン配合物の生物学的利用能を記載する。
【0103】
[00140]治療間に5日間の休薬期間を伴う、非盲検単一用量ランダム化完全クロスオーバー6治療6期間研究において。20〜37歳の間の年齢であり、そして以下の体重範囲53.4〜88.1kg内の18人の健康な志願者(9人の男性および9人の女性志願者)を登録した。17人の被験体は、6回の治療期間すべてを完了した。偏頭痛発作は、一般的には胃内容うっ滞と関連するため、この研究においては、被験体患者間でこの状態を模倣するため、摂食条件下で、試験および参照製品を投与した。
【0104】
[00141]該研究は、以下の6つの異なるカテゴリーで構成される。
[00142]表3
【0105】
【表3】

【0106】
[00143]220nmでのUV検出を伴うHPLCを介して、ケトプロフェンレベルに関してヒト血漿試料を分析した(アッセイ範囲:0.05〜10μg/mL)。この方法は、ジエチルエーテルを用いた、血漿からのケトプロフェンの液体/液体抽出を伴った。絶食時(100.5±22.7%)または摂食時(86.6±22.5%)に投与したナノケトプロフェン50mgの相対生物学的利用能は、絶食時の参照製品、オルヂス100mgの投与に匹敵した。
【0107】
[00144]試験原型に関して観察されたCmaxの範囲は以下の通りであった:2.4±2.1μg/mL(Trt D ナノケトプロフェン50mg)〜12.5±3.4μg/mL(Trt A ナノケトプロフェン100mg)。絶食条件下での投与後、両ナノ粒子配合物に関する、最大濃度までの時間(Tmax)は、同じ状態で投与した参照製品に関して観察されるものよりも、少なくとも1時間短かった。
【0108】
[00145]摂食条件下での投与後、両ナノ配合物に関して観察されるTmaxもまた、同じ状態で投与した参照製品に関して観察されるものよりも、少なくとも1時間短かった。試験原型に関して観察されるt1/2は、参照製品に関して観察されるものに匹敵した。摂食条件下での試験原型または参照製品のいずれかの投与は、絶食時に投与される同じ配合物に比較した際、Cmaxの減少、Tmaxの増加および時間プロフィールに対する血漿濃度の拡張を生じた。
【0109】
[00146]結論として、決定された最高の生物学的利用能は、同じ状態で投与された100mgオルヂスに比較して、50mgのナノケトプロフェンの絶食投与後に得られた。すべての試験治療は、この健康な集団においてよく許容された。
【0110】
[00147]実施例10
[00148]本実施例は、急性偏頭痛発作に苦しむ患者の間での、ナノ粒子状ケトプロフェン配合物の生物学的利用能を記載する。
【0111】
[00149]別の非盲検比較生物学的利用能研究において、少なくとも12ヶ月間、偏頭痛発作を有する既往歴を持つ志願患者を募集した。登録のための包含基準の少なくとも1つは、前兆を伴いまたは伴わず、国際頭痛学会によって定義されるような中程度または重度の発作を、1ヶ月あたり1〜8回の間、少なくとも先の2ヶ月に渡って、経験していることであった。資格要件を満たした被験体は、15日間入院し、そして薬物動態学的試料採取研究を経た。被験体患者は、ケトプロフェンナノ配合物150mgの2回の単一経口投与を受けた(1回は偏頭痛発作中、そして1回は偏頭痛発作外)。
【0112】
[00150]薬物動態学的分析によって、偏頭痛発作中の患者にナノケトプロフェンを投与した際、偏頭痛発作外で投与した際に比較して、平均ケトプロフェンピーク血漿濃度が減少することを示した(それぞれ、13.2±6.0および18.2±6.6μg/mL)。しかし、これらの血漿濃度はなお、偏頭痛治療のために必要な最小療法レベルを超えていた。
【0113】
[00151]偏頭痛発作中の患者にナノケトプロフェンを投与した際、偏頭痛発作外で投与した際に比較して、Tmaxは中央値結果に基づくと1時間延長された(それぞれ、1.5時間および0.5時間)。これらの結果はなお、非ナノ粒子状配合物のものに比較して、より迅速な開始であることを示唆する。偏頭痛発作中に投与されたナノケトプロフェンの相対的生物学的利用能は、偏頭痛発作外で投与した際に比較して、92±17%であった。
【0114】
[00152]結論として、偏頭痛発作経過中のナノケトプロフェンの投与は、偏頭痛発作外での投与に比較して、ピーク濃度減少、およびピーク濃度に到達するまでの時間の遅延を生じる。しかし、こうした結果はなお、匹敵する非ナノ粒子状配合物のレベルを超える。一般的に、ナノケトプロフェンは安全であり、そしてこの偏頭痛患者集団においてよく許容された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トリプタン;ならびに
(b)2000nm未満の有効平均粒子サイズ、および表面上に吸着した少なくとも1つの表面安定剤を有する、NSAID粒子
を含む組成物であって、
同じ投薬強度および投薬型の非粒子状NSAIDでの匹敵する薬物動態学的試験において、2000nm未満の有効平均粒子サイズを有するNSAIDが、非粒子状NSAIDのTmaxまでの時間に比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示す
前記組成物。
【請求項2】
NSAID粒子がナプロキセンであり、そして匹敵する投薬強度のナプロキセンナトリウムを用いた匹敵する薬物動態学的試験において、ナノ粒子状ナプロキセンが、ナプロキセンナトリウムのTmaxまでの時間に比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
NSAIDが、イブプロフェン、ナプロキセン、メロキシカム、およびケオトプロフェン(keotoprofen)からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項4】
摂食状態で患者に投与した際、NSAID粒子が、摂食状態で投与した同じ投薬強度の非粒子状NSAIDのTmaxに比較した際に、Tmaxまでより短い時間で到達する、請求項1の組成物。
【請求項5】
偏頭痛発作中に患者に投与した際、NSAIDのTmaxが、偏頭痛発作外の患者に投与した際のNSAIDのTmaxに比較した際、約1時間長い、請求項1の組成物。
【請求項6】
偏頭痛発作中に患者に投与した際、NSAIDのTmaxが約1.5時間であり、そして偏頭痛発作外の患者に投与した際、NSAIDのTmaxが約0.5時間である、請求項1の組成物。
【請求項7】
偏頭痛発作中の患者に投与した際のNSAIDの生物学的利用能が、偏頭痛発作外で投与した際のナノ粒子状NSAIDの生物学的利用能の99%、97%、95%、93%、90%、87%、85%、83%、80%、77%、75%、73%、65%、60%、55%、および50%からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項8】
(i)トリプタンが、トリプタン層で上塗りされた不活性支持体を含むビーズ内に配合され、そして
(ii)NSAIDが、NSAID粒子層で上塗りされた不活性支持体を含むビーズ内に配合されている
請求項1の組成物。
【請求項9】
トリプタンのビーズが、トリプタン層に上塗りされた速度制御ポリマーをさらに含む、請求項8の組成物。
【請求項10】
組成物の薬物動態学的プロフィールに、第二の薬剤濃度レベルから時間間隔が空いた第一の薬剤濃度レベルが含まれる、請求項8の組成物。
【請求項11】
第一の薬剤濃度レベルがNSAIDから生じ、そして第二の薬剤濃度レベルがトリプタンから生じる、請求項10の組成物。
【請求項12】
組成物の薬物動態学的プロフィールに、多数の薬剤濃度レベルが含まれ、少なくとも1つの薬剤濃度レベルがNSAIDであり、そして少なくとも1つの薬剤濃度レベルがトリプタンである、請求項10の組成物。
【請求項13】
ビーズ内に配合される請求項1の組成物であって:
(i)不活性支持体、
(ii)不活性支持体を上塗りするトリプタン層、および
(ii)トリプタン層を上塗りするNSAID層
を含む、前記組成物。
【請求項14】
複数のビーズを含有する多粒子状カプセル投薬型である、請求項13の組成物。
【請求項15】
第一の複数のトリプタンビーズが、第一の量の速度制御ポリマーを有し、そして第二の複数のトリプタンビーズが、第一の量とは異なる第二の量の速度制御ポリマーを有する、請求項9の組成物。
【請求項16】
組成物が、複数のトリプタンビーズおよび複数のNSAIDビーズを含有する多粒子状カプセル投薬型である、請求項8の組成物。
【請求項17】
NSAIDの有効平均粒子サイズが、1000nm未満、900nm未満、800nm未満、700nm未満、600nm未満、500nm未満、400nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、100nm未満、75nm未満、および50nm未満からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
NSAID粒子が、2000nm、1900nm、1800nm、1700nm、1600nm、1500nm、1400nm、1300nm、1200nm、1100nm、1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、250nm、200nm、100nm、75nm、および50nm未満のD90によって特徴付けられるサイズ分布を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
NSAIDが、総組成物の約95%〜約0.1%重量の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
表面安定剤が、陰イオン性表面安定剤、陽イオン性表面安定剤、双性イオン性表面安定剤、および陰イオン性表面安定剤からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
NSAIDが、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ピルプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メクロフェナメート、メフェナム酸、ナムブメトン(nambumetone)、ピロキシカム、メロキシカム、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、エトドラク、トルメチン、フルルビプロフェン、スリンダクおよびケトロラク、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、MK−966、エトリコキシブ、4−[5−(4−クロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド、N−(2−シクロヘキシルオキシ−4−ニトロフェニル)メタンスルホンアミド、メチルスルホンスピロ(2.4)ヘプト−5−エンI、SC−57666、セレコキシブ、SC−558、SC−560、エトドラク、5,5−ジメチル−3−(3−フルオロフェニル)−4−(4−メチルスルホニル)フェニル2(5H)−フラノン、MK−476、L−745337、L−761066、L^761000、L−748780、L−748731、5−ブロモ−2−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(メチルスルホニル)フェニル、1−(7−tert−ブチル−2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチルベンゾ(b)フラン−5−イル)−4−シクロプロピルブタン−1−オン、3−ホルミルアミノ−7−メチルスルホニルアミノ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン、BF 389、PD 136005、PD 142893、PD 145065、フルルビプロフェン、ニメスリド、ナブメトン、フロスリド、ピロキシカム、ジコフェナク(dicofenac)、COX−189、D 1367、4ニトロ2フェノキシメタンスルホンアニリド、(3ベンゾイルジフルオロメタンスルホンアニリド、ジフルミドン)、JTE−522、4’−アセチル−2’−(2,4−ジフルオロフェノキシ)m−エタンスルホンアニリド、FK 867、FR 115068、GR 253035、RWJ 63556、RWJ 20485、ZK 38997、(E)−(5)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシド、インドメタシン、CL 1004、RS 57067、RS 104894、SC 41930、SB 205312、SKB 209670、およびOno 1078からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
1ヶ月あたり1〜8回の間の中程度または重度の偏頭痛発作を患う患者を治療する方法であって、請求項1の組成物を患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項23】
1ヶ月あたり1〜8回の間の中程度または重度の偏頭痛発作を患う患者であって、発作中に胃内容うっ滞を示す前記患者を治療する方法であって、請求項1の組成物を患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項24】
(a)(i)不活性支持体、および
(ii)不活性支持体を上塗りするトリプタン層
を含む、第一の複数のビーズ;ならびに
(b)2000nm未満の有効平均粒子サイズ、表面上に吸着した少なくとも1つの表面安定剤を有し、そして非ナノ粒子状NSAIDのTmaxまでの時間に比較した際、Tmaxまでのより短い時間を示す、NSAID粒子を含む、第二の複数のビーズ
を含む組成物であって、
薬物動態学的プロフィールが、トリプタンの第二のピークから時間間隔が空いたNSAIDの第一のピークを示す、前記組成物。
【請求項25】
キサンチエン、ベータ遮断剤、抗痙攣剤、抗ヒスタミン剤、エルゴタミン、血管収縮剤、抗鬱剤、および制吐剤からなる群より選択される活性成分をさらに含む、請求項24の配合物。

【図1】
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【公表番号】特表2011−524358(P2011−524358A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513648(P2011−513648)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/046808
【国際公開番号】WO2009/152192
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(507250508)エラン・ファルマ・インターナショナル・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】