説明

トレイ移載装置及び方法

【課題】簡単な構造で、トレイの有無やトレイ高さを検出することができるトレイ移載装置及び方法を提供する。
【解決手段】複数の積載スペースa,b,cにそれぞれ段積み可能な複数のトレイ10と、トレイに設けられたトレイ把持部11とトレイ上に積載されたワーク1を把持可能なハンド12と、ハンドに取り付けられトレイをその上方から撮影するカメラ14と、ハンドを3次元的に移動可能なロボット16と、カメラで撮影した画像を画像処理してロボットを制御するロボット制御装置20とを備える。各積載スペースの上方から撮影した画像5に基づき、最上段のトレイ把持部11の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイ10の段積み数とを計測し、これに基づき最上段のトレイ10の移載及び最上段のトレイ上のワーク1の移載を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動供給装置を用いてトレイを自動交換するトレイ移載装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動供給装置を用いてトレイを自動交換するシステムとして、特許文献1が既に開示されている。
【0003】
図1は、特許文献1による組立システムの概念図である。
このシステムは、ロボットによる多品種少量生産を効率的に行うことを目的とする。
【0004】
そのため、このシステムにおいて、ロボット51A、51Bは、矩形状の基台52A、52Bに固定され、メカニカルハンド53A、53Bを有している。メカニカルハンド53A、53Bの先端に装着自在で部品を把持する複数のロボットツール、および部品の組付けに使用する組立用冶具を含む組立ツールを載置した複数のトレイ54をロボットの可動範囲に搬入し、組立ツールをこの可動範囲内の所定の場所にセッティングする。そして、セッティングされた組立ツールを使用して部品の組立作業を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3673117号公報、「組立装置とそのためのトレイシステム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1のシステムは、供給装置が大掛かりであり、必要となる設置スペースが大きい問題点があった。
【0007】
また、供給部のトレイの有無やトレイ高さを検出するために、専用の識別部を設けているが、単純な在/不在センサを用いると、トレイがずれて置かれている場合や違う種類(高さ)のトレイが置かれている場合に誤検知する問題点があった。
さらに、この誤検知を防止するために、レーザ距離計などで高さ計測する場合、レーザ距離計が高価であるばかりでなく、ロボットアームとレーザ距離計との干渉を避けるための機構が大掛かりになる問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。 すなわち、本発明の目的は、(1)ロボットによる多品種少量生産を効率的に行うことができ、(2)供給装置を簡略化し設置スペースを小さくでき、(3)トレイの有無やトレイ高さを検出することができ、(4)トレイがずれて置かれている場合や違う種類(高さ)のトレイが置かれている場合でも正しく検知できるトレイ移載装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、複数の積載スペースにそれぞれ段積み可能な複数のトレイと、
該トレイに設けられたトレイ把持部とトレイ上に積載されたワークを把持可能なハンドと、
該ハンドに取り付けられ前記トレイをその上方から撮影するカメラと、
前記ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
前記カメラで撮影した画像を画像処理して、前記ロボットを制御するロボット制御装置とを備え、
前記各積載スペースの上方から撮影した画像に基づき、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測し、これに基づき最上段のトレイの移載及び最上段のトレイ上のワークの移載を行う、ことを特徴とするトレイ移載装置が提供される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記ロボット制御装置は、前記画像を画像処理して最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測する画像処理装置と、
画像処理装置の計測結果に基づき、ロボットのハンドにより、最上段のトレイ把持部を把持して別の積載スペースへ搬送し、かつ最上段のトレイ上のワークを把持して所定位置へ搬送するロボットコントローラと、からなる。
【0011】
また、本発明によれば、複数の積載スペースにそれぞれ段積み可能な複数のトレイと、
該トレイに設けられたトレイ把持部とトレイ上に積載されたワークを把持可能なハンドと、
該ハンドに取り付けられ前記トレイをその上方から撮影するカメラと、
前記ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
前記カメラで撮影した画像を画像処理して、前記ロボットを制御するロボット制御装置とを備え、
(A)前記各積載スペースの上方から撮影した画像に基づき、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測する画像計測と、
(B)画像計測の結果に基づき最上段のトレイを別の積載スペースに移載するトレイ移載制御と、
(C)画像計測の結果に基づき最上段のトレイ上のワークを所定位置に移載するワーク移載制御と、を有することを特徴とするトレイ移載方法が提供される。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記画像計測において、所定の高さから下向きに最上段のトレイの画像を撮影し、該画像上のトレイ把持部のパターンマッチングによりトレイ把持部の位置と姿勢を計測し、さらにトレイ把持部の画像上の寸法からその高さ及びトレイの段積み数を算出する。
【0013】
また、前記トレイ移載制御又はワーク移載制御において、前記画像計測を実施し、その結果に基づき最上段のトレイ又は最上段のトレイ上のワークを把持し、持上げ、移動先に移動して、移動先に設置する。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の装置及び方法によれば、複数の積載スペース(例えば搬入スペース、搬出スペース、及び加工スペース)に複数のトレイをそれぞれ段積みできるので、段積みされた最上段のトレイの移載及び最上段のトレイ上のワークの移載を行うことにより、トレイの供給装置を簡略化して設置スペースを小さくでき、かつロボットによる多品種少量生産を効率的に行うことができる。
【0015】
また、ロボットのハンドに取り付けられたカメラで各積載スペースの上方から最上段のトレイを撮影し、その画像に基づき、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測するので、カメラ以外にセンサ類を用いることなく、トレイの有無やトレイ高さを検出することができる。
【0016】
また、同様に、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢からトレイがずれて置かれている場合や違う種類(高さ)のトレイが置かれている場合でも正しく検知できる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】特許文献1による組立システムの概念図である。
【図2】本発明によるトレイ移載装置の構成図である。
【図3】本発明に用いるトレイの模式図である。
【図4】本発明によるトレイ移載方法の全体フロー図である。
【図5】本発明による画像計測のフロー図である。
【図6】本発明によるトレイ移載制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図2は、本発明によるトレイ移載装置の構成図であり、図3は、本発明に用いるトレイの模式図である。
【0020】
図2において、本発明のトレイ移載装置は、複数のトレイ10、ハンド12、カメラ14、ロボット16及びロボット制御装置20を備える。
【0021】
図3において、トレイ10は、段積み可能な搬送トレイであり、ほぼ水平な平板10aを有し、その上面に複数(例えば10〜20個)のワーク1を積載できるようになっている。
また、平板10aの上面(この例では中央部)にトレイ把持部11が設けられ、ハンド12でトレイ把持部11を把持できるようになっている。
【0022】
トレイ把持部11は、この例では矩形平板であり、その上面に一定の間隔を隔てた2つの鉛直穴11aが設けられている。また、トレイ10は、その下面の2つの鉛直穴11aに対応する位置に、鉛直穴11aと嵌合する2つの位置決めピン11bを備えている。
この構成により、複数のトレイ10は、下側トレイの鉛直穴11aに、上側トレイの位置決めピン11bを順次嵌合させて、同一の積載スペースに複数(例えば5段)のトレイを同一の姿勢で段積みできるようになっている。
【0023】
図2において、上述したトレイ10は、複数の積載スペース(この例では、搬入スペースa、搬出スペースb、及び加工スペースc)にそれぞれ段積み可能になっている。
またこの例で、それぞれの積載スペースa,b,cのテーブル3の上面には、最下段のトレイを位置決めするベースブロック4(図3参照)が設けられている。ベースブロック4は、トレイ把持部11と同一の形状を有し、かつ鉛直穴11aと同一位置に同一寸法の鉛直穴4aを有している。
【0024】
ワーク1は、この例では円板状部材であるが、本発明はこれに限定されず、上方から見て一定の形状を有する部材であればよい。この形状は、予め記憶した形状とパターンマッチングできる限りで、円形、矩形、楕円、その他の形状であってもよい。
【0025】
ハンド12は、トレイ10に設けられたトレイ把持部11とトレイ上に積載されたワーク1を把持可能に構成されている。
ハンド12は、例えばトレイ用とワーク用の2つの開閉爪を有する機械的な挟持装置であり、2つの開閉爪の位置をハンドの姿勢変更(回転等)で切り替えて、トレイ把持部11又はワーク1を随時把持できるようになっている。
なお、ハンド12はこの構成に限定されず、吸着パッド、電磁パッド、その他の構成の機械的ハンドであってもよい。
【0026】
図2において、カメラ14は、例えばCCDカメラ又はCMOSカメラであり、アーム手先のハンド12に一体的に取り付けられ、ワーク1をその上方から撮影してデジタル画像5を出力するようになっている。
デジタル画像5の画素数は、任意であるが、例えば、約400万画素(横2300ピクセル×縦1700ピクセル)を有する。また、カメラ14は、デジタル画像5を一定の制御周期(例えば30fps:1秒間に30回)で撮影するようになっている。以下、デジタル画像を単に画像という。
【0027】
ロボット16は、ハンド12とカメラ14を3次元的に移動する。この例でハンド12は、ロボット16のロボットアーム16aの手先部に搭載され、ロボット16により、カメラ14を下向きに維持できるようになっている。
ロボット16は、この例では、テーブル3の上面に固定された垂直多関節ロボットであるが、本発明はこれに限定されず、その他のロボット(スカラロボットや直交ロボット)であってもよい。
【0028】
図2において、本発明によるロボット制御装置20は、画像処理装置22とロボットコントローラ24からなり、カメラ14で撮影した画像5を画像処理してロボット16を制御する。
【0029】
画像処理装置22は、カメラ14で撮影した画像5を画像処理して最上段のトレイ把持部11の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイ10の段積み数とを計測する。
【0030】
ロボットコントローラ24は、画像処理装置22の計測結果に基づき、ロボット16のハンド12により、最上段のトレイ把持部11を把持して別の積載スペースへ搬送し、かつ最上段のトレイ上のワーク1を把持して所定位置へ搬送するようになっている。
トレイ把持部11を搬送する別の積載スペースは、上述の例では、搬入スペースa、搬出スペースb、又は加工スペースcである。また、ワーク1を搬送する所定位置は、例えばロボット16の作動範囲に設置した図示しない別の装置(加工装置、組付装置等)である。
なお、以下の例では、この別の装置にワーク1を搬送後、ワーク1は図示しない別の搬出装置により、ロボット16の作動範囲の外側に搬出され、元のトレイ上には戻さないものとする。
しかし、本発明はこの構成に限定されず、別の装置から元のトレイ上にロボット16により戻してもよい。
【0031】
ロボットコントローラ24は、ロボット16を制御してロボットアーム16aの手先目標速度から各関節の回転量を算出し、ロボットアーム16aを動作させて、ハンド12とカメラ14を3次元的に移動する。
【0032】
上述した構成により、本発明のトレイ移載装置は、各積載スペース(搬入スペースa、搬出スペースb、及び加工スペースc)の上方から撮影した画像5に基づき、最上段のトレイ把持部11の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイ10の段積み数とを計測し、これに基づき最上段のトレイ10の移載及び最上段のトレイ上のワーク1の移載を行うようになっている。
すなわち、上述した画像処理装置22とロボットコントローラ24は、後述する画像計測、トレイ移載制御、及びワーク移載制御を実行するようになっている。
【0033】
図4は、本発明によるトレイ移載方法の全体フロー図である。この図に示すように、本発明のトレイ移載方法は、S1〜S9の各ステップ(工程)からなり、画像計測(A)、トレイ移載制御(B)、及びワーク移載制御(C)を有する。
【0034】
画像計測(A)では、各積載スペース(搬入スペースa、搬出スペースb、及び加工スペースc)の上方から撮影した画像に基づき、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測する(S1〜S3)。
トレイ移載制御(B)では、画像計測の結果に基づき最上段のトレイを別の積載スペースに移載する(S5、S7)。
ワーク移載制御(C)では、画像計測の結果に基づき最上段のトレイ上のワークを所定位置に移載する(S6)。
【0035】
作動開始前(始業前)に、複数(例えば20個)のワークを搭載したトレイ(以下、満載トレイ)を所定数(例えば5段分)準備し、これを段積みした5段の満載トレイを搬入スペースaに設置しておく。
また、搬出スペースb及び加工スペースcは、トレイのない空状態であり、ベースブロック4がテーブル3の上面に露出している状態にしておく。さらに、ロボット16は、予め原点復帰し、図示しない別の装置や段積みしたトレイと干渉しない位置に待機している。
【0036】
作動開始時(始業時)にS1,S2,S3において、加工スペースc、搬出スペースb、搬入スペースaにあるトレイ10の段数を計測する。この段数は、正常であれば、上述の例では、搬入スペースa、搬出スペースb、及び加工スペースcにおいてそれぞれ5、0、0段である。
すなわち、本発明のシステム始動時にカメラ14で、段積みスペース(搬入スペースa、搬出スペースb、及び加工スペースc)の上から撮影し、トレイ段数を計測し判定する。同時に、トレイの搬入/搬出スペースの空きを確認する。
【0037】
S4では、計測した段数が正常か否かを判断する。正常でない(NO)の場合には、作動を停止し(S8)、ロボットを原点復帰して(S9)、作動を終了する。
これにより、トレイの搬入/搬出の人為的ミスを防止できる。
【0038】
S4で正常な場合(YES)、満載トレイを搬入スペースaから加工スペースcへ搬送し(S5)、加工スペースcでワーク1の加工動作を実施する(S6)。
S6のワーク1の加工動作は、加工スペースcのトレイ上のワークが無くなり空になるまで、繰返し実施する。
加工スペースcのトレイが空になった後、その空トレイを加工スペースcから搬出スペースbへ搬送する(S7)。
【0039】
S5〜S7は、作動開始時に搬入スペースaに存在した段積みしたトレイ10が、最上段から順に、加工スペースc、搬出スペースbへ搬送され、搬出スペースbに全て搬送され段積みされるまで、繰り返される。
S7において、最後のトレイが空になり、搬出スペースbへ搬送され他の空トレイの上に段積みすると、ロボットは原点復帰し(S9)、作動が完了する。
搬出スペースbに段積みされた空トレイは、例えば、作業員により、ロボットの作動範囲外に搬出する。
なお、搬出スペースbに搬出用シューター(図示せず)を設けて、自動的にロボットの作動範囲外に空トレイを搬出するようにしてもよい。
【0040】
図5は、本発明による画像計測のフロー図である。この図に示すように、本発明による画像計測は、S11〜S14の各ステップ(工程)からなり、所定の高さから下向きに最上段のトレイの画像5を撮影し(S11,S12)、画像上のトレイ把持部11のパターンマッチングによりトレイ把持部11の位置と姿勢を計測し(S13)、さらにトレイ把持部11の画像上の寸法からその高さ及びトレイ10の段積み数を算出する(S14)。
【0041】
この画像計測は、上述したS1〜S3では、S11〜S14の各ステップを実施し、上述したS5〜S7では、S14を除くS11〜S13の各ステップを実施する。
【0042】
S11〜S13では、カメラ14を対象となる積載スペース(搬入スペースa、搬出スペースb、又は加工スペースc)の上方に移動し(S11)、所定の高さ(例えばベースブロック4の上面から350mm)から下向きに最上段のトレイ10の画像5を撮影し(S12)、画像上のトレイ把持部11又はベースブロック4のパターンマッチングによりトレイ把持部11又はベースブロック4の位置と姿勢を計測する(S13)。
この位置は、カメラ14から見たトレイ把持部11又はベースブロック4の相対位置であり、水平面(X−Y座標)上の位置に相当する。
パターンマッチング(S13)は、粗探索であり、計測精度は低いがトレイ把持部11又はベースブロック4の位置と姿勢を決定することができる。
【0043】
上記粗探索の後に、精密計測(S14)を実施する。
精密計測(S14)では、さらにトレイ把持部11又はベースブロック4の画像上の寸法(例えば円抽出と位置計算)からその高さ及びトレイの段積み数を算出する。
この高さは、例えばカメラ14の基準点とトレイ把持部11又はベースブロック4との鉛直距離であり、これから複数(例えば1〜5段)のトレイ10が段積みされている場合に、その段数を1枚のトレイの高さから算出することができる。
すなわち、トレイ把持部11またはベースブロック4の位置と姿勢を計測し(S13)、トレイ計測高さ(Z座標値)をロボット内部で持つ段数テーブルと比較することで段数を決定する。
また、計測した積載スペースにトレイがない場合にも、Z座標上の位置からトレイがないことを検出することができる。また、ベースブロック4の形状をトレイ把持部11と相違させて、パターンマッチング(S13)のみで、トレイがないことを検出してもよい。
【0044】
なお、トレイ把持部11又はベースブロック4の画像上の寸法として、例えば2つの鉛直穴11a(又は鉛直穴4a)の画像上の距離(中心間隔)を用いることで、高さ算出の精度を高めることができる。
【0045】
図6は、本発明によるトレイ移載制御のフロー図である。この図に示すように、本発明によるトレイ移載制御は、S21〜S27からなり、画像計測(S11〜S13)を実施し(S21,S22)、その結果に基づき最上段のトレイを把持し(S23)、持上げ(S24)、移動先に移動して(S25)、移動先に設置し(S26)、原点復帰する(S27)。
【0046】
なお、本発明によるワーク移載制御は、S23において最上段のトレイの代わりにワークを把持し、移動先が図示しない別の装置(加工装置、組付装置等)である点で相違するが、その他の点で、トレイ移載制御と同様である。
【0047】
上述した本発明の装置及び方法では、従来(特許文献1)の自動供給装置のかわりに、ロボット16のハンド12でトレイ10を自動交換すると同時に、トレイ段数(トレイ段積み高さ)をアーム手先のカメラ14で画像計測する。
従って、例えば、高さ計測の結果、計算上は4.3段といった中途半端な高さが検出された場合、トレイずれや、違う種類のトレイが置かれていることが検知できる。
一方、計測誤差やトレイ高さの製作誤差があるので、計算結果がもっとも近い整数(上の場合は4)との差(上の場合は0.3)に対して、適切に閾値を設定することで異常を検出することができる。
例えば、0.1未満であれば計測誤差と製作誤差の重畳であり正常範囲、0.1以上は積み方に異常ありと判定することができる。
【0048】
(1)従って、トレイ専用の自動供給装置(図1のトレイ搬送部/交換部/識別部)が不要であり、システムがシンプルとなる。またシステム全体の設置スペース(フットプリント)を小さくできる。
(2)また人手で積まれたトレイ段数を常設センサで検知するとアームとセンサの干渉が問題となるが、アーム手先に取り付けたカメラ14で画像計測して、トレイ段数を判定するので、このような問題は発生しない。
【0049】
次に、本発明の代替例を説明する。
トレイを段積みするスペースにコンベアを設置して、ライン外からトレイを搬入するようにしてもよい。これにより、ロット(例えば5段×20個)の制約なく連続運転ができる。
【0050】
上述した本発明の装置及び方法によれば、複数の積載スペース(例えば搬入スペースa、搬出スペースb、及び加工スペースc)に複数のトレイ10をそれぞれ段積みできるので、段積みされた最上段のトレイ10の移載及び最上段のトレイ上のワーク1の移載を行うことにより、トレイの供給装置を簡略化して設置スペースを小さくでき、かつロボット16による多品種少量生産を効率的に行うことができる。
【0051】
また、ロボットのハンド12に取り付けられたカメラ14で各積載スペースの上方から最上段のトレイ10を撮影し、その画像5に基づき、最上段のトレイ把持部11の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイ10の段積み数とを計測するので、カメラ以外にセンサ類を用いることなく、トレイの有無やトレイ高さを検出することができる。
【0052】
また、同様に、最上段のトレイ把持部11の位置及び姿勢からトレイ10がずれて置かれている場合や違う種類(高さ)のトレイが置かれている場合でも正しく検知できる。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ワーク、3 テーブル、4 ベースブロック、
4a 鉛直穴、5 画像、
10 トレイ、10a 平板、
11 トレイ把持部、11a 鉛直穴、11b 位置決めピン、
12 ハンド、14 カメラ、
16 ロボット、16a ロボットアーム、
20 ロボット制御装置、22 画像処理装置、
24 ロボットコントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積載スペースにそれぞれ段積み可能な複数のトレイと、
該トレイに設けられたトレイ把持部とトレイ上に積載されたワークを把持可能なハンドと、
該ハンドに取り付けられ前記トレイをその上方から撮影するカメラと、
前記ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
前記カメラで撮影した画像を画像処理して、前記ロボットを制御するロボット制御装置とを備え、
前記各積載スペースの上方から撮影した画像に基づき、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測し、これに基づき最上段のトレイの移載及び最上段のトレイ上のワークの移載を行う、ことを特徴とするトレイ移載装置。
【請求項2】
前記ロボット制御装置は、前記画像を画像処理して最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測する画像処理装置と、
画像処理装置の計測結果に基づき、ロボットのハンドにより、最上段のトレイ把持部を把持して別の積載スペースへ搬送し、かつ最上段のトレイ上のワークを把持して所定位置へ搬送するロボットコントローラと、からなることを特徴とする請求項1に記載のトレイ移載装置。
【請求項3】
複数の積載スペースにそれぞれ段積み可能な複数のトレイと、
該トレイに設けられたトレイ把持部とトレイ上に積載されたワークを把持可能なハンドと、
該ハンドに取り付けられ前記トレイをその上方から撮影するカメラと、
前記ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
前記カメラで撮影した画像を画像処理して、前記ロボットを制御するロボット制御装置とを備え、
(A)前記各積載スペースの上方から撮影した画像に基づき、最上段のトレイ把持部の位置及び姿勢と、各積載スペースのトレイの段積み数とを計測する画像計測と、
(B)画像計測の結果に基づき最上段のトレイを別の積載スペースに移載するトレイ移載制御と、
(C)画像計測の結果に基づき最上段のトレイ上のワークを所定位置に移載するワーク移載制御と、を有することを特徴とするトレイ移載方法。
【請求項4】
前記画像計測において、所定の高さから下向きに最上段のトレイの画像を撮影し、該画像上のトレイ把持部のパターンマッチングによりトレイ把持部の位置と姿勢を計測し、さらにトレイ把持部の画像上の寸法からその高さ及びトレイの段積み数を算出する、ことを特徴とする請求項3に記載のトレイ移載方法。
【請求項5】
前記トレイ移載制御又はワーク移載制御において、前記画像計測を実施し、その結果に基づき最上段のトレイ又は最上段のトレイ上のワークを把持し、持上げ、移動先に移動して、移動先に設置する、ことを特徴とする請求項3に記載のトレイ移載方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−143496(P2011−143496A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5157(P2010−5157)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】