説明

トレイ装置

【課題】 外部からの衝撃および/または慣性力によってトレイが開かないように構成された開き防止性能に優れるとともに外観デザインの自由度が高いトレイ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに収容されて開閉可能なトレイと、前記ハウジングと前記トレイとの間で前記トレイの開閉方向に回動できるように前記ハウジングにヒンジ固定され、そのヒンジ固定点の上方の上端部に重心があって、外部からの衝撃によって上端部が前記トレイの開方向側に回動して前記トレイを係止することが可能な回転ロックと、前記回転ロックが最初に一定の姿勢で立つことをできるように前記回転ロックを保持する保持機構と、を含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトレイ装置に係り、より詳しくは、車両などに設置される物品収納用トレイが外部からの衝撃で開くのを防止するトレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車安全基準施行規則には、乗客の安全のために、自動車に設置された全てのトレイは、一定の条件のダミー衝突試験で開いてはならないという、いわゆる内部隔室戸に関する規定(第88条)が設けられている。
一例として、図1に回転式トレイ装置を示す。衝突試験でダミーの頭部がセンターフェーシャパネル1に当たった場合、このパネル1に設置されたトレイ2が開いてはならない。このために、車両メーカーは、外部からの衝撃によってトレイ2が開かないように、トレイ2または/およびトレイハウジング3に各種のトレイ開き防止装置を設置しているが、その効果は微々たるものである。
【特許文献1】特開2008−024202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題点を考慮してなされたもので、その目的とするところは、外部からの衝撃および/または慣性力によってトレイが開かないように構成されたトレイ装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、開き防止性能に優れたトレイ装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、外観デザインの自由度が高いトレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに収容されて開閉可能なトレイと、前記ハウジングと前記トレイとの間で前記トレイの開閉方向に回動できるように前記ハウジングにヒンジ固定され、そのヒンジ固定点の上方の上端部に重心があって、外部からの衝撃によって上端部が前記トレイの開方向側に回動して前記トレイを係止することが可能な回転ロックと、前記回転ロックが最初に一定の姿勢で立つことをできるように前記回転ロックを保持する保持機構と、を含んでなることを特徴とする。
【0005】
前記回転ロックの上端は前記ハウジングの上面を貫いて外部に露出し、当該ハウジングの上面部位には前記回転ロックの上端をガイドするための長孔が設けられることを特徴とする。
【0006】
前記保持機構は、前記回転ロックの下端に設けられたギア部と、前記ハウジングの底面に設置され、前記ギア部に噛み合って前記回転ロックの回動を制限する歯車とを含み、前記ギア部は、前記回転ロックの下端の一部にのみ設けられることを特徴とする。
【0007】
前記保持機構は、前記長孔の領域に設置された加圧片と、前記加圧片を前記長孔の長手方向に対して垂直に支持するバネとを含んでなることを特徴とする。
【0008】
前記回転ロックの上端には固定溝が設けられ、前記加圧片の先端には前記固定溝に対応する固定突起が設けられることを特徴とする。
【0009】
前記長孔の先端には、前記回転ロックの上端部が前記トレイの開方向に回動する過程で、前記回転ロックの上端を前記長孔の長手方向に対して垂直方向に加圧して固定するための弾性片が設けられることを特徴とする。
【0010】
前記回転ロックには、前記回転ロックの上端部を前記トレイの閉方向に回動させる弾性復元力が付与されることを特徴とする。
【0011】
前記回転ロックには、前記トレイの開方向側に延長された後、先端が側方向に折り曲げられたフックが設けられ、前記トレイには、前記回転ロックの回動の際に、一定の半径を描きながら前記回転ロックと共に回動する前記フックによって係止できるように構成された係止片が設けられることを特徴とする。
【0012】
前記トレイの後端部には回転ロック設置空間が設けられ、前記係止片は前記回転ロック設置空間のトレイ壁面に設けられ、前記トレイ壁面には、前記回転ロックが最初の姿勢を維持している状態で前記フックとの干渉を防止するためのスライディングホールが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトレイ装置によれば、外部からの衝撃および/または慣性力によってトレイが開かず、その開き防止性能に優れる。
また、トレイ開き防止メカニズムが、外部に露出しないトレイの後方側に設置されるので、トレイの前面側のデザイン自由度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態に係るトレイ装置について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図2〜図7を参照して、本発明の実施例1に係るトレイ装置について説明する。
図2〜図3に示すように、トレイ装置は、前面が開放されたハウジング10と、このハウジング10内に収容されて開閉可能なトレイ20とを含んでなる。閉状態のトレイ20の前面をやや押圧すると、トレイ20が押されてから開放される。
一方、ハウジング10の上面11には長孔11aが設けられ、この長孔11aを介して回転ロックのロッド31の上端が上面11の上方に突出する。ロッド31の上端は長孔11aの後端に配置される。長孔11aの先端には、延長孔11cによって自由端になり、長孔11aの長手方向に対して垂直方向に弾性力を持つ弾性片11bが配置される。
【0016】
図3および図5に示すように、ハウジング10とトレイ20との間には回転ロック30が設置される。回転ロック30は、ハウジング10の底面に設けられた一対の固定リブ12の間でヒンジピンによって固定され、このヒンジ固定点13を中心に前後方向(トレイの開放方向が前方である)に回動可能である。
回転ロック30の下方には、回転ロック30が垂直に立つ(回動する前の最初の姿勢)ことができるように回転ロック30を保持する保持機構としてのダンパー40がハウジング10の下面に設置される。
【0017】
次に、図3〜図5を参照して、回転ロック30について説明する。回転ロック30は、ヒンジピンによってハウジング10に固定されたロッド31、ウェイト32、およびフック34を含む。
前述の通り、ロッド31の上端は長孔11aを貫いてその上方に露出するが、この長孔11aはヒンジ固定点13を中心に回動するロッド31の上端をガイドする。最初に長孔11aの後端に配置(図2B参照)されたロッド31の上端は、回転ロック30の回動過程中に長孔11aに沿って前方側に移動し、先端の弾性片11bによって押圧されてその位置に固定される。
【0018】
ロッド31の上端部にはウェイト32が設置される。このウェイト32は、回転ロック30の重心がヒンジ固定点13の上方に置かれるようにするためのものである。このウェイト32によってトレイ装置の前面部または後面部に衝撃が加えられるとき、回転ロック30の上端部がトレイの開方向側にトレイ20より先に回動(時計方向)してトレイ20を係止することができる。この係止構造については後述する。
ロッド31のヒンジ固定部33にはヒンジピン(すなわち、ヒンジ固定点13)が貫通する。また、ヒンジ固定部33にはトーションバネSが巻かれている。このトーションバネSは、上端がロッド31に固定され、下端がハウジング10の底面に係止されることにより、回転ロック30に、反時計方向に回転させる弾性力を付与する。
【0019】
次に、図4および図5を参照して、回転ロック30が垂直に立っている最初の状態を保つようにするとともに、一定の外力以上でヒンジ固定点13を中心に回動できるようにするための回転ロック保持機構について考察する。保持機構は、ロッド31の下端のギア部31aと、ハウジング10の底面に設置されたダンパー40とのコンビネーションからなっている。
ギア部31aは下方の幅が上方の幅より広い扇状のロッド31の下端部に設けられる。ダンパー40にはこのギア部31aに噛み合う歯車41が設置される。ダンパー40は、オイルダンパーであって、歯車41の回転はオイルの粘性力などによって一定の制限を受けるので、ダンパー40の歯車41にギア部31aが噛み合っている回転ロック30の動きも一定の制限を受ける。
【0020】
一方、ギア部31aは、ロッド31の下端の一部、すなわち後方側にのみ設けられ、前方側(非ギア部:31b)には設けられない。これは、ダンパー40の歯車41が、回転ロック30が垂直に立っている状態(最初の姿勢)でギア部31aに噛み合い、回転ロック30に臨界値以上の力(時計方向への回動力)が作用すると、トレイ20より速く動いてトレイ20を係止することができるようにするためである。
【0021】
次に、図4〜図7を参照して、回転ロック30によるトレイ20の係止構造について説明する。
ロッド31には、ヒンジ固定点の付近からトレイの開方向、すなわち前方側に延長した後、先端が側方向に折り曲げられたフック34が設けられる。そして、トレイ20には、回転ロック30の回動の際に、一定の半径を描きながら回転ロック30と共に回動するフック34によって係止される係止片26が設けられる。この係止片26は、回転ロック設置空間23のトレイ壁面24に設けられる。このトレイ壁面24には、回転ロック30が最初の姿勢を維持している状態でフック34との干渉を防止するためのスライディングホール25が前後方向に設けられる。
【0022】
回転ロック30の回動前に、フック34の折曲部34aはスライディングホール25の前方に配置される。トレイ装置の前面部または後面部に衝撃が加わると、トレイ20が前方側にスライドする速度より速く回転ロック30の上端部がトレイの開方向に回動し、フック34の折曲部34aが係止片26を係止(図6参照)する。折曲部34aは開放部27を介して係止片26側に挿入される。一方、このようにトレイ20がフック34によって保持された状態を解除することは、トレイ20の前面部を押圧するだけで可能である。すなわち、係止片26とフック34間の係止が解除できる程度の深さでトレイ20の前面部を押圧すると、トーションバネSの弾性力によって回転ロック30が反時計方向にゆっくり回動して最初の姿勢に戻る。図7において、21はトレイ収納空間であり、22はプッシュタイプのロックラッチである。
【実施例2】
【0023】
次に、図8〜図13を参照して、実施例2に係るトレイ装置について説明する。
実施例2は、実施例1と比較して、回転ロック保持機構が異なるが他の部品はほぼ同じである。したがって、保持機構の図面符号以外には、実施例1の説明で使用した符号をそのまま使用し、同一の部材に対する重複説明は省略する。
図8〜図10に示すように、実施例2に係る保持機構50は、ハウジング10の上面に設けられるもので、長孔11aの領域に設置された加圧片51と、この加圧片51を長孔11aの長手方向に対して垂直に支持するバネ52とを含んでなる。通常のトレイ20の使用状態、すなわち回転ロック30が最初の姿勢で立っている状態で、加圧片51は長孔11aを貫通するロッド31の上端を加圧して仮に固定する。
【0024】
図11(a)および (b)を参照すると、加圧片51によるロッド31の上端の固定を容易にするために、ロッド31の上端には固定溝31cが設けられ、加圧片51の先端には固定溝31cに対応する固定突起51aが設けられる。固定溝31cおよび固定突起51aは両方とも緩やかな曲面を有し、トレイ装置に外力が加わる場合、固定突起51aによる固定溝31cの固定力を克服してロッド31がヒンジ固定点13を中心に回転する。
【0025】
実施例1とは異なり、実施例2では、長孔11aの両端に弾性片11bが設けられ、回転ロック30が最初の姿勢で立っている状態でロッド31の上端は長孔11aの中央部に配置される(図9参照)。このような長孔11aの構造およびロッド31の上端の配置は、トレイ装置に加えられる衝撃の方向に応じて、回転ロック30が時計方向(図12参照)または反時計方向(図13参照)に回転することができることを考慮したものである。反復実験の結果、回転ロック30は、衝撃がトレイ装置の前面部に加わる場合、および衝撃がトレイ装置の後面部に加わる場合の両方ともに対し、時計方向に回転することを確認することができた。
【0026】
一方、回転ロック設置空間のトレイ壁面24にはスライディングホールを基準として上側と下側にそれぞれ係止片26が設けられる。外部からの衝撃によって回転した回転ロック30は弾性片11bによって保持される。実施例1とは異なり、回転ロック30にはトーションバネが設置されない。但し、トーションバネのように回転ロック30に復元力を提供する部材の必要性を完全に否定するのではない。
【0027】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
一例として、前述した実施例ではスライディング式トレイについてのみ説明したが、本発明は回転式トレイにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のトレイ装置を示す図である。
【図2】(a)は本発明の実施例に係るトレイ装置を示す図であり、(b)は(a)のB部分の拡大図である。
【図3】図2(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図3に示したトレイ装置を他の角度で眺めた断面図である。
【図5】図4に示した回転ロック及び保持機構を示す図である。
【図6】図3に示したトレイ装置の回転ロックが時計方向に回動してトレイを係止する状態を示す図である。
【図7】図6に示した状態のトレイ装置からトレイと回転ロックのみを分離して示す図である。
【図8】本発明の他の実施例に係るトレイ装置を示す図である。
【図9】図8に示したトレイ装置のハウジングの上面(保持機構の設置部位)を示す図である。
【図10】図9のC−C線に沿った断面図である。
【図11】(a)は図8に示したトレイ装置から回転ロックを分離して示す図であり、(b)は図8に示したトレイ装置から保持機構を分離して示す図である。
【図12】図8に示したトレイ装置の回転ロックが時計方向に回動してトレイを係止する状態を示す図である。
【図13】図8に示したトレイ装置の回転ロックが反時計方向に回動してトレイを係止する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ハウジング
11 上面
11a 長孔
11b 弾性片
11c 延長孔
12 固定リブ
13 ヒンジ固定点
20 トレイ
21 収納空間
22 プッシュタイプのロックラッチ
23 回転ロック設置空間
25 スライディングホール
26 係止片
30 回転ロック
31 ロッド
31a ギア部
31b 非ギア部
31c 固定溝
32 ウェイト
33 ヒンジ固定部
34 フック
34a 折曲部
40 ダンパー
41 歯車
51 加圧片
51a 固定突起
52 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されて開閉可能なトレイと、
前記ハウジングと前記トレイとの間で前記トレイの開閉方向に回動できるように前記ハウジングにヒンジ固定され、そのヒンジ固定点の上方の上端部に重心があって、外部からの衝撃により上端部が前記トレイの開方向側に回動して前記トレイを係止することが可能な回転ロックと、
前記回転ロックが最初に一定の姿勢で立つことをできるように前記回転ロックを保持する保持機構と、
を含んでなることを特徴とするトレイ装置。
【請求項2】
前記回転ロックの上端は前記ハウジングの上面を貫いて外部に露出し、当該ハウジングの上面部位には前記回転ロックの上端をガイドするための長孔が設けられることを特徴とする請求項1に記載のトレイ装置。
【請求項3】
前記保持機構は、
前記回転ロックの下端に設けられたギア部と、前記ハウジングの底面に設置され、前記ギア部に噛み合って前記回転ロックの回動を制限する歯車とを含んでなることを特徴とする請求項1に記載のトレイ装置。
【請求項4】
前記ギア部は、前記回転ロックの下端の一部にのみ設けられることを特徴とする請求項2に記載のトレイ装置。
【請求項5】
前記保持機構は、
前記長孔の領域に設置された加圧片と、前記加圧片を前記長孔の長手方向に対して垂直に支持するバネとを含んでなることを特徴とする請求項2に記載のトレイ装置。
【請求項6】
前記回転ロックの上端には固定溝が設けられ、前記加圧片の先端には前記固定溝に対応する固定突起が設けられることを特徴とする請求項5に記載のトレイ装置。
【請求項7】
前記長孔の先端には、前記回転ロックの上端部が前記トレイの開方向に回動する過程で、前記回転ロックの上端を前記長孔の長手方向に対して垂直方向に加圧して固定するための弾性片が設けられることを特徴とする請求項2に記載のトレイ装置。
【請求項8】
前記回転ロックには、前記回転ロックの上端部を前記トレイの閉方向に回動させる弾性復元力が付与されることを特徴とする請求項1に記載のトレイ装置。
【請求項9】
前記回転ロックには、前記トレイの開方向側に延長された後、先端が側方向に折り曲げられたフックが設けられ、
前記トレイには、前記回転ロックの回動の際に、一定の半径を描きながら前記回転ロックと共に回動する前記フックによって係止できるように構成された係止片が設けられることを特徴とする請求項1に記載のトレイ装置。
【請求項10】
前記トレイの後端部には回転ロック設置空間が設けられ、前記係止片は前記回転ロック設置空間のトレイ壁面に設けられ、前記トレイ壁面には、前記回転ロックが最初の姿勢を維持している状態で前記フックとの干渉を防止するためのスライディングホールが設けられることを特徴とする請求項1に記載のトレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−280190(P2009−280190A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289464(P2008−289464)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(504348781)徳洋産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】