説明

トンネル接合素子の製造方法およびその製造装置

【課題】 トンネルバリア層のショートを防止しつつ、微細化を実現することが可能な、トンネル接合素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 トンネル接合膜10aをトンネルバリア層15内までエッチングして所定パターンの凹部20を形成する第1エッチング工程と、(a)凹部20の側面に絶縁膜24を形成して絶縁性を確保する絶縁膜形成工程と、(b)トンネルバリア層15を貫通して凹部20を所定深さまでエッチングする第2エッチング工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRAM(Magnetic Random Access Memory)半導体デバイスや磁気記録ヘッドなどに用いられる、TMR(Tunneling Magnetro-Resistive;トンネル磁気抵抗)やMTJ(Metal Tunneling junction)等の、トンネルバリア層を有するトンネル接合素子の製造方法およびその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MRAM半導体デバイスや磁気記録ヘッドなどには、TMRやMTJなどと呼ばれるトンネルバリア層を有するトンネル接合素子が用いられている。
図7は、トンネル接合素子の側面断面図である。図7(a)に示すトンネル接合素子10は、磁性層(固定層)14、トンネルバリア層15、磁性層(フリー層)16等を順次積層したトンネル接合膜10aから形成される。このトンネルバリア層15は、アルミナ等の電気絶縁性材料で構成されている。また、固定層14の面内における磁化方向は一定に保持され、フリー層16の面内における磁化方向は外部磁場の向きによって反転しうるようになっている。これら固定層14およびフリー層16の磁化方向が平行か反平行かによって、トンネル接合素子10の抵抗値が異なるので、トンネル接合素子10の厚さ方向に電圧を印加した場合に、トンネルバリア層15を流れる電流の大きさが異なることになる(TMR効果)。そこで、この電流値を検出することにより、「1」または「0」を読み出すことができるようになっている。また、フリー層16と固定層14との積層順序を逆にしている素子構造も多い。
【0003】
このようなトンネル接合素子10の形成は、トンネル接合膜10aをエッチングして、トンネルバリア層15を貫通する所定パターンの凹部20を形成することによって行う。そのエッチングには、Ar等のイオンミリングや、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)等が採用されている。そのRIEの反応ガスには、塩素ガス(Cl)、臭素ガス(Br)、ヨウ素ガス(I)、フッ素ガス(F)や、それらの化合物ガスなど、ハロゲン系のガスが利用されている。
【0004】
しかしながら、トンネル接合膜10aをエッチングして凹部20を形成すると、エッチングにより除去された磁性元素のハロゲン化合物を主体とする物質が、凹部20の側壁に付着することになる。この付着物22は導電性を有するので、電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層15のショートが発生するという問題がある。なお、上述したトンネルバリア層15を流れる電流は微量であり、TMR効果を利用するには、固定層14とフリー層16との間に大きな短絡電流が流れないことが前提となる。そのため、導電性付着物22が存在するとトンネル接合素子10として機能しなくなり、トンネル接合素子10のエッチング加工において大きな課題となっている。
【0005】
そこで、図7(b)に示すように、トンネルバリア層15の途中でエッチングを止めてトンネル接合素子10を完成させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、エッチングされた固定層14の側壁には導電性物質22が付着するが、フリー層16は露出していないので、トンネルバリア層15のショートが防止されている。
【特許文献1】特開2003−78185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MRAM半導体デバイスや磁気記録ヘッドを構成するトンネル接合素子には、微細化や高速化、低消費電力化が要求されている。しかしながら、上記方法によって形成されたトンネル接合素子では、固定層14に比べてフリー層16の平面積が大きくなるので、微細化を実現することができないという問題がある。また、高速化や低消費電力化のためにはトンネル接合素子の抵抗値を小さくする必要があり、電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層の厚さは1nm以下まで薄く形成されている。そのため、上記方法においてトンネルバリア層の途中でエッチングを停止するのは困難である。したがって、トンネルバリア層のショートを確実に防止することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、トンネルバリア層のショートを防止しつつ、微細化を実現することが可能な、トンネル接合素子の製造方法およびその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のトンネル接合素子の製造方法は、トンネル接合膜をトンネルバリア層内までエッチングして、所定パターンの凹部を形成する第1エッチング工程と、前記凹部の側面の絶縁性を確保する絶縁性確保工程と、前記トンネルバリア層を貫通して、前記凹部を所定深さまでエッチングする第2エッチング工程と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、第1エッチング工程においてトンネルバリア層の一方側の磁性層をエッチングしてその磁性層の側面のみに第1付着物を付着させ、第2エッチング工程においてトンネルバリア層の他方側の磁性層をエッチングしてその磁性層の側面のみに第2付着物を付着させる。さらに、絶縁膜形成工程において第1付着物と第2付着物との間に絶縁膜を配置するので、トンネルバリア層の両側の磁性層を電気的に分離してショートを防止することができる。
また、第1エッチング工程では一方側の磁性層に凹部を形成し、絶縁膜形成工程ではその凹部の側面に絶縁膜を形成し、第2エッチング工程では凹部の底面を掘り下げるように他方側の磁性層をエッチングするので、他方側の磁性層の平面積を一方側の磁性層の平面積と略一致させることができる。これにより、トンネル接合素子を微細化することができる。
【0009】
また、前記絶縁性確保工程は、前記トンネル接合膜の表面全体に絶縁膜を形成することによって行うことが望ましい。
第2エッチング工程では、凹部側面の絶縁膜を残したまま、凹部底面の絶縁膜をエッチングすることができる。そのため、絶縁膜形成工程では、凹部側面に対して選択的に絶縁膜を形成することなく、トンネル接合膜の表面全体に絶縁膜を形成すれば足りる。これにより、製造工程が簡略化され、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、前記第1エッチング工程は、前記トンネル接合膜のエッチング深さをモニタしつつ行うことが望ましい。
これにより、トンネルバリア層内で正確にエッチングを停止することが可能になり、トンネルバリア層のショートを防止することができる。
【0011】
一方、本発明のトンネル接合素子の製造装置は、基板上に形成されたトンネル接合膜をトンネルバリア層内までエッチングして、所定パターンの凹部を形成する第1エッチング装置と、前記凹部の側面の絶縁性を確保する処理を行う絶縁性確保装置と、前記トンネルバリア層を貫通して、前記凹部を所定深さまでエッチングする第2エッチング装置とが、前記基板の真空搬送手段を介して接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、基板を大気に晒すことなく工程間の搬送を行うことが可能になり、大気から水分を吸着することによる基板の腐食等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
(トンネル接合素子、MRAM)
図1(a)は、トンネル接合素子の側面断面図である。トンネル接合素子10は、PtMnやIrMn等からなる反強磁性層(不図示)、NiFeやCoFe等からなる磁性層(固定層)14、AlO(アルミナ)等からなるトンネルバリア層15、およびNiFeやCoFeからなる磁性層(フリー層)16を主として構成されている。実際には、上記以外の機能層も積層されて、15層程度の多層構造になっている。なお、トンネル接合素子10の断面は、図1(a)に示すような長方形状に限られず、台形状であってもよい。また、フリー層の厚さを固定層の厚さより薄く形成すれば、膜厚差を利用した保磁力差型のトンネル接合素子を形成することができる。
【0014】
図1(b)は、トンネル接合素子を用いたMRAMの概略構成図である。MRAM100は、MOSFET110およびトンネル接合素子10を、基板5上にマトリクス状に整列配置して構成されている。上述したトンネル接合素子10の上端部はビット線102に接続され、その下端部はMOSFET110のソース電極またはドレイン電極に接続されている。また、MOSFET110のゲート電極は、読み出し用ワード線104に接続されている。一方、トンネル接合素子10の下方には、書き換え用ワード線106が配置されている。なお、これらMOSFET110やトンネル接合素子10、各種配線等の間には、層間絶縁膜が充填されている。
【0015】
図1に示すトンネル接合素子10では、固定層14の磁化方向は一定に保持され、フリー層16の磁化方向は反転しうるようになっている。これら固定層14およびフリー層16の磁化方向が平行か反平行かによって、トンネル接合素子10の抵抗値が異なるので、トンネル接合素子10の厚さ方向に電圧を印加した場合に、トンネルバリア層15を流れる電流の大きさが異なることになる(TMR効果)。そこで、読み出し用ワード線104によりMOSFET110をONにして、その電流値を測定することにより、「1」または「0」を読み出すことができるようになっている。
また、書き換え用ワード線104に電流を供給して、その周囲に磁場を発生させれば、フリー層16の磁化方向を反転させることができる。これにより、「1」または「0」を書き換えることができるようになっている。
【0016】
なお、固定層14およびフリー層16の磁化方向の組み合わせによるトンネル接合素子10の抵抗値の差は、一般的に非常に小さくなる。この抵抗値の微差を検出するには、アルミナ等の電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層15の抵抗値を極力小さくする必要がある。そのため、トンネルバリア層15の厚さは、酸化前の金属アルミニウムの厚さで8〜12オングストロームと非常に薄く形成されている。
【0017】
(トンネル接合素子の製造方法)
図2および図3は、第1実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法の工程図である。第1実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法は、図2(c)に示すように、トンネル接合膜10aをトンネルバリア層15内までエッチングして、所定パターンの凹部20を形成する第1エッチング工程と、図3(a)に示すように、凹部20の側面に絶縁膜を形成して絶縁性を確保する絶縁膜形成工程と、図3(b)に示すように、トンネルバリア層15を貫通して、凹部20を所定深さまでエッチングする第2エッチング工程と、を有するものである。
【0018】
まず、図2(a)に示すように、基板5上にトンネル接合膜10aを形成する。このトンネル接合膜10aの形成は、スパッタ法等によって行うことが可能である。
次に、図2(b)に示すように、トンネル接合膜10aの表面に、SiO等からなるマスク90を形成する。なおマスク90の形成方法は省略する。
【0019】
(第1エッチング工程)
次に、図2(c)に示すように、マスク90を介してトンネル接合膜10aをトンネルバリア層15内までエッチングし、所定パターンの凹部20を形成する。
【0020】
図4は、トンネル接合素子の製造装置の概略構成図である。この製造装置50には、基板の仕込み/取出し室52からロードロック室54を介して、基板の真空搬送室56が設けられている。その搬送室56の内部には、基板搬送手段(ロボット)57が設けられている。その搬送室56の周囲には、第1エッチング装置60、第2エッチング装置60a、絶縁物スパッタ装置70、および純水リンサー80が接続されている。これにより、基板を大気に晒すことなく工程間の搬送を行うことが可能になり、大気から水分を吸着することによる基板の腐食を防止することができるようになっている。なお、ウエットプロセスとなる純水リンサー80は、ロードロック室58を介して搬送室56に接続されている。
【0021】
図5は、上述した第1エッチング装置の概略構成図である。以下には、誘導結合方式(Inductive Coupling Plasma;ICP)の反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)装置を例にして説明する。この第1エッチング装置60は、チャンバ61への反応ガスの供給手段と、チャンバ61の内部ガスの排気手段とを備えている。また、チャンバ61の外部上方にRFアンテナ68が設けられ、そのRFアンテナ68にプラズマ発生用RF電源69が接続されている。さらに、チャンバ61の内部下方に基板5を載置する電極62が設けられ、その電極62にバイアス印加用RF電源63が接続されている。
【0022】
加えて、チャンバ61の外部に分光器65が設けられ、その分光器65から光ファイバが延設されて、チャンバ61の側面に接続されている。この光ファイバ66により、チャンバ61の内部におけるプラズマ発光を分光器65に導くことができるようになっている。そして、この分光器65において分光分析を行うことにより、トンネル接合膜のエッチング位置をモニタすることができるようになっている。
【0023】
第1エッチング工程は、上記のように構成された第1エッチング装置60を用いて行う。まず、トンネル接合膜およびマスクを形成した基板5を、第1エッチング装置60におけるチャンバ61内の電極62上に載置する。次に、チャンバ61内に反応ガスとしてClおよびArの混合ガスを導入する。そして、RFアンテナ68によりチャンバ61内にプラズマを発生させ、トンネル接合膜のエッチングを開始する。そのエッチングプロセスの代表的な条件は、反応ガスの圧力が0.1〜10Pa、プラズマを発生させるためのRFアンテナ68への投入電力が500〜700W、基板5に高周波バイアスを印加するための電極62への投入電力が50〜100Wである。
【0024】
チャンバ内に発生したプラズマにより、反応ガスのラジカルやイオン等が生成される。そして、電極62により基板5に高周波バイアスを印加すれば、図2(c)に示すように、生成されたイオンを加速してトンネル接合膜10aに衝突させることが可能になり、化学・物理エッチングが行われる。上述したエッチング条件では、この化学・物理エッチングが支配的となる。すなわち、主に基板の垂直方向にエッチングが行われ、横方向にはほとんど削れない、いわゆる異方性エッチングとなる。
【0025】
第1エッチング工程では、トンネルバリア層15の層内までトンネル接合膜10aをエッチングする。上記のようにトンネルバリア層15は非常に薄く形成されているが、プラズマ発光の分光分析法等によってトンネル接合膜10aのエッチング位置をin-situモニタリングすることにより、トンネルバリア層15の層内で正確にエッチングを停止することができる。なお、プラズマ発光の分光分析法によってエッチング位置をモニタする代わりに、エッチング時間を管理してエッチング位置を把握してもよい。
上述した第1エッチング工程により、図2(c)に示すように、マスク90の開口部の下方に所定パターンの凹部20が形成される。
【0026】
(絶縁膜形成工程)
ここで形成された凹部20の側壁には、導電性物質が付着している(第1付着物22)。この第1付着物22は、第1エッチング工程における副生成物であって、蒸気圧が低い磁性元素のハロゲン化合物等で構成されている。
【0027】
そこで、図3(a)に示すように、凹部20の側面に絶縁膜24を形成して、導電性の第1付着物22を被覆する。この絶縁膜形成工程は、図4における絶縁物スパッタ装置70を用いて行う。ここでは、図3(a)に示すように、SiOやSiN等からなる絶縁膜24を、スパッタ法により、トンネル接合膜10aの表面全体に形成する。絶縁膜24の厚さは、次の第2エッチング工程において第1付着物22が露出することのない厚さであればよく、通常は5〜10nm程度とすればよい。なお、スパッタ法以外のCVD法やイオンビームスパッタ法等により絶縁膜24を形成してもよい。
【0028】
(第2エッチング工程)
次に、図3(b)に示すように、トンネルバリア層15を貫通して、凹部20を所定深さまでエッチングする。この第2エッチング工程は、図4における第2エッチング装置60aを用いて行う。第2エッチング装置60aの構成は、図5に示す第1エッチング装置60と同様である。このように、第1エッチング工程と第2エッチング工程とを別個の装置で行うことにより、トンネル接合素子の製造効率を向上させることができる。一方、図4に示すトンネル接合素子の製造装置に、第2エッチング装置自体を設けることなく、第1エッチング装置を流用して第2エッチング工程を行ってもよい。この場合には、設備コストを低減することができる。
【0029】
図3(b)に示す第2エッチング工程では、第1エッチング工程で使用したマスク90を流用して、凹部20を所定深さまで異方性ドライエッチングする。第2エッチング工程におけるエッチングプロセスの代表的な条件は、第1エッチング工程と同様である。そして、第2エッチング工程の異方性ドライエッチングにより、凹部20の側面の絶縁膜24を残したまま、凹部20の底面の絶縁膜24をエッチングすることができる。したがって、上述した絶縁膜形成工程では、凹部20の側面に対して選択的に絶縁膜24を形成することなく、トンネル接合膜10aの表面全体に絶縁膜24を形成することができる。これにより、製造工程が簡略化され、製造コストを低減することができる。
【0030】
この第2エッチング工程においても、第1エッチング工程と同様に、凹部20の側面に導電性物質が付着する(第2付着物26)。しかしながら、第1付着物22と第2付着物26との間には絶縁膜24が介在しているので、両者間の電気的接続が阻止されている。
【0031】
(純水リンス工程)
第2エッチング工程の後、トンネル接合膜10aの表面に吸着している残留塩素を除去するため、純水リンスなどの通常のエッチング後処理を行う。なお、酸素プラズマにより残留塩素を除去することも可能である。以上により、図3(c)に示すように、トンネル接合素子10が形成される。
【0032】
なお、上述した第1エッチング工程および第2エッチング工程では、反応ガスとしてClを用いたが、BClやSiCl、BI、BBr、HBr、SiFなどのハロゲン系ガス若しくはこれらの混合ガス、またはこれらにOを加えた混合ガスなどを用いてもよい。このようなハロゲン系ガスを採用すれば、磁性材料のエッチングによる副生成物の蒸気圧が比較的高くなり、凹部側壁への付着量を低減させることができる。
【0033】
以上に詳述したように、第1実施形態のトンネル接合素子の製造方法では、トンネル接合膜をトンネルバリア層内までエッチングして、所定パターンの凹部を形成する第1エッチング工程と、その凹部の側面に絶縁膜を形成して絶縁性を確保する絶縁膜形成工程と、トンネルバリア層を貫通して凹部を所定深さまでエッチングする第2エッチング工程と、を有する構成とした。
【0034】
この構成によれば、第1エッチング工程においてトンネルバリア層の一方側の磁性層をエッチングしてその磁性層の側面のみに第1付着物を付着させ、第2エッチング工程においてトンネルバリア層の他方側の磁性層をエッチングしてその磁性層の側面のみに第2付着物を付着させる。さらに、絶縁膜形成工程において第1付着物と第2付着物との間に絶縁膜を配置するので、トンネルバリア層の両側の磁性層を電気的に分離して、ショートを確実に防止することができる。
【0035】
また、第1エッチング工程では一方側の磁性層に凹部を形成し、絶縁膜形成工程ではその凹部の側面に絶縁膜を形成し、第2エッチング工程では凹部の底面を掘り下げるように他方側の磁性層をエッチングするので、他方側の磁性層の平面積を一方側の磁性層の平面積に略一致させることができる。これにより、トンネル接合素子を微細化することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法の工程図である。第2実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法は、凹部20の側面の第1付着物22を絶縁化して絶縁性を確保する点で、凹部20の側面に絶縁膜を形成して絶縁性を確保する第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
【0037】
第2実施形態でも、図2に示す第1実施形態と同様に、まず基板5上にトンネル接合膜10aを形成し、次にトンネル接合膜10aの表面にマスク90を形成する。次に、マスク90を介してトンネル接合膜10aをトンネルバリア層15内までエッチングし、所定パターンの凹部20を形成する(第1エッチング工程)。これにより、凹部20の側面に導電性物質が付着する(第1付着物22)。
【0038】
第2実施形態では、図6(a)に示すように、この第1付着物22を絶縁化する(絶縁化工程)。この絶縁化工程は、図4に示すトンネル接合素子の製造装置において、絶縁物スパッタ装置70に代えて配設した酸素プラズマ装置を用いて行う。すなわち、第1エッチング工程を終えた基板を酸素プラズマ装置のチャンバ内に配置し、酸素ガスを導入してプラズマを発生させる。これにより、図6(a)に示すように、トンネル接合膜10aの凹部20の側面に付着した第1付着物22が酸化されて、導電性から電気絶縁性に改質される。なお、酸化プラズマ処理以外の低エネルギーイオンビーム法等により、第1付着物22を絶縁化することも可能である。
【0039】
次に、図6(b)に示すように、トンネルバリア層15を貫通して、凹部20を所定深さまでエッチングする(第2エッチング工程)。この第2エッチング工程においても、第1エッチング工程と同様に、凹部20の側面に導電性物質が付着する(第2付着物26)。しかしながら、第1付着物22は絶縁化されているので、第2付着物26と導通接続することはない。
その後、第1実施形態と同様に、純水リンスなどの通常のエッチング後処理を行う。以上により、図6(c)に示すように、トンネル接合素子10が形成される。
【0040】
以上に詳述したように、第2実施形態のトンネル接合素子の製造方法では、トンネル接合膜をトンネルバリア層内までエッチングして、所定パターンの凹部を形成する第1エッチング工程と、その凹部の側面の付着物を絶縁化する絶縁化工程と、トンネルバリア層を貫通して凹部を所定深さまでエッチングする第2エッチング工程と、を有する構成とした。
【0041】
この構成によれば、第1エッチング工程においてトンネルバリア層の一方側の磁性層をエッチングしてその磁性層の側面のみに第1付着物を付着させ、第2エッチング工程においてトンネルバリア層の他方側の磁性層をエッチングしてその磁性層の側面のみに第2付着物を付着させる。ただし、絶縁化工程において第1付着物を絶縁化し、その表面に第2付着物を付着させるので、トンネルバリア層の両側の磁性層を電気的に分離してショートを確実に防止することができる。なお、第2実施形態の絶縁化工程に加えて第1実施形態の絶縁膜形成工程を行えば、トンネルバリア層のショートをより確実に防止することができる。
【0042】
また、第1エッチング工程では一方側の磁性層に凹部を形成し、絶縁化工程ではその凹部の側面の付着物を絶縁化し、第2エッチング工程では凹部の底面を掘り下げるように他方側の磁性層をエッチングするので、他方側の磁性層の平面積を一方側の磁性層の平面積に略一致させることができる。これにより、トンネル接合素子をより微細化することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】トンネル接合素子およびMRAMの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法の工程図である。
【図3】第1実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法の工程図である。
【図4】トンネル接合素子の製造装置の概略構成図である。
【図5】第1エッチング装置の概略構成図である。
【図6】第2実施形態に係るトンネル接合素子の製造方法の工程図である。
【図7】導電性物質が付着したトンネル接合素子の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10a‥トンネル接合膜 15‥トンネルバリア層 20‥凹部 24‥絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル接合膜をトンネルバリア層内までエッチングして、所定パターンの凹部を形成する第1エッチング工程と、
前記凹部の側面の絶縁性を確保する絶縁性確保工程と、
前記トンネルバリア層を貫通して、前記凹部を所定深さまでエッチングする第2エッチング工程と、
を有することを特徴とするトンネル接合素子の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁性確保工程は、前記トンネル接合膜の表面全体に絶縁膜を形成することによって行うことを特徴とする請求項1に記載のトンネル接合素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1エッチング工程は、前記トンネル接合膜のエッチング深さをモニタしつつ行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトンネル接合素子の製造方法。
【請求項4】
基板上に形成されたトンネル接合膜をトンネルバリア層内までエッチングして、所定パターンの凹部を形成する第1エッチング装置と、
前記凹部の側面の絶縁性を確保する処理を行う絶縁性確保装置と、
前記トンネルバリア層を貫通して、前記凹部を所定深さまでエッチングする第2エッチング装置とが、
前記基板の真空搬送手段を介して接続されていることを特徴とするトンネル接合素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−165031(P2006−165031A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349734(P2004−349734)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】