説明

ドアロック制御装置および方法、並びに携帯情報処理装置

【課題】周到に計画された不正な操作に対するセキュリティを向上させることができるようにする。
【解決手段】アンテナ91は、正規の車外LF通信エリアである領域81の内部に設置され、ドアノブアンテナ22から送信される車外LF通信信号によるリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号が増幅器92に供給される。増幅器92は、そのリクエスト信号を増幅してアンテナ93から送信させる。これにより、車外LF通信信号によるリクエスト信号を受信可能となる不正な車外LF通信エリアとしての領域82が生成されてしまう。車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が正当に受信された場合、さらに、加速度センサの出力値が予め設定された閾値以上であるか否かを判定してドアのアンロックの可否を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロック制御装置および方法、並びに携帯情報処理装置に関し、特に、周到に計画された不正な操作に対するセキュリティを向上させることができるようにするドアロック制御装置および方法、並びに携帯情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両のエントリーシステムとしては、ハンズフリーでドアの施錠や開錠を自動的に行ういわゆるパッシブエントリーシステム(PES)などが実用化されており、今後さらなる普及が見込まれている。
【0003】
PESは、例えば、使用者が携帯可能な携帯機と、車載機との間の双方向無線通信が行われ、車載機により携帯機から受信した電磁波(信号)に基づいて携帯機の真正性の確認、携帯機の位置などの解析が行われるなどして車載機の制御により車両ドアの施錠機構の動作(解錠動作や施錠動作)などを自動的に実現するものである。
【0004】
PESにおいては、車載機と接続されるアンテナが車両のドアノブやトランク、室内などにそれぞれ配置され、必要に応じてそれぞれのアンテナが、携帯機に対してLF波(例えば、100〜200KHz)の信号を送信し、また、携帯機から送信される信号を受信して車載機と携帯機との通信が行われる。この車載機のアンテナから送信されるLF波により通信可能となる範囲は限られており、例えば、車両の室内(車内)と室外(車外)に分けてLF通信エリアが設定されている。そして、例えば、ドアの解施錠の制御などに関して様々なセキュリティ対策が施されている。
【0005】
PESにおいては、例えば、使用者が車両のドアの外側に設けられたスイッチ等を操作してドアをアンロックする場合、車載機と携帯機との通信が行われ、正当な使用者によるアンロック操作であるか否かが判定されるようになされている。この場合、車両側のスイッチ等によりドアのアンロックを要求する操作をした際に携帯機が車外のLF通信エリア内にある場合にのみドアがアンロックされる。すなわち、例えば、携帯機を携帯する使用者が車両のドアノブの側の所定のスイッチを押下することで、ドアのアンロックがなされることになる。
【0006】
一方、ドアのアンロックを要求する操作をした際に携帯機が車外のLF通信エリア外にある場合、ドアはアンロックされないことになる。従って、何者かが車両の所定のスイッチを押下しても、ドアはアンロックされないことになる。通常、正当な使用者は、携帯機を携帯していると考えられるので、携帯機が車外のLF通信エリア外にある場合、正当な使用者によるスイッチの操作とは考えられないから、ドアはアンロックされないようになされている。
【0007】
また、使用者が携帯機を落下する等の衝撃を伴うような形で携帯機を紛失した場合に、衝撃センサにて検出した衝撃の大きさが所定値以上の場合は、電波の送信を禁止する禁止状態とすることで、紛失時に悪意の第三者によって不正使用されるのを防止する技術も提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
さらに、握り検知信号が出力されているときにのみ携帯機が操作信号を送信するようにし、ポケットや鞄に入れて携帯するときに、意図しない遠隔操作を抑制することができる携帯機も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2004−324227号公報
【特許文献2】特開2007−329815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば、車両の室内にある物を盗もうとする不審者が、第1のアンテナ、増幅器、および第2のアンテナからなるリピータ装置を用いて、車外LF通信エリアを拡大させてしまうことが懸念される。
【0011】
例えば、不審者が第1のアンテナを、正規の車外のLF通信エリアの内部に設置し、車両のドアノブのアンテナなどから送信されるリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号を増幅器で増幅して第2のアンテナから送信させる。これにより、ドアノブのアンテナから送信されるリクエスト信号を受信可能となる不正な領域が生成されてしまう。
【0012】
例えば、携帯機を携帯する正当な使用者の近辺に第2のアンテナを配置すれば、車載機と携帯機との通信が可能となり、車両のドアのアンロックが可能となる。
【0013】
このように、従来のPESにおいては、例えば、リピータ装置を用いて車外のLF通信エリアを拡大させた場合、ドアのアンロックを防止することができなかった。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、周到に計画された不正な操作に対するセキュリティを向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるドアロック制御装置は、ドアの解錠を指令する入力手段が操作されたか否かを判定する操作判定手段と、操作判定手段により入力手段が操作されたと判定された場合、車外用アンテナからリクエスト信号を送信するリクエスト信号送信手段と、送信されたリクエスト信号に対応して使用者が携帯する携帯機から送信されるアンサー信号を受信したか否かを判定するアンサー信号判定手段と、アンサー信号判定手段によりアンサー信号を受信したと判定された場合、アンサー信号に含まれる携帯機の加速度の値を表す情報を取得する加速度取得手段と、取得された情報に基づいて特定された携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する加速度判定手段と、加速度判定手段により、携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であると判定された場合、ドアのアンロックを許可する制御信号を出力するアンロック許可制御手段とを備える。
【0016】
本発明のドアロック制御装置においては、ドアの解錠を指令する入力手段が操作されたか否かが判定され、入力手段が操作されたと判定された場合、車外用アンテナからリクエスト信号が送信され、送信されたリクエスト信号に対応して使用者が携帯する携帯機から送信されるアンサー信号を受信したか否かが判定され、アンサー信号を受信したと判定された場合、アンサー信号に含まれる携帯機の加速度の値を表す情報が取得され、取得された情報に基づいて特定された携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であるか否かが判定され、携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であると判定された場合、ドアのアンロックを許可する制御信号が出力される。
【0017】
従って、リピータ装置を用いた不正操作によるドアのアンロックを防止することができる。
【0018】
前記加速度判定手段は、さらに、取得された情報に基づいて特定された携帯機の加速度の値が0より大きいか否かを判定し、前記アンロック許可制御手段は、加速度判定手段により、携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であり、かつ0より大きいと判定された場合、ドアのアンロックを許可する制御信号を出力するようにすることができる。
【0019】
前記アンサー信号判定手段は、携帯機が送信するアンサー信号に含まれる認証コードが予め登録された認証コードと一致する場合、アンサー信号を受信したと判定するようにすることができる。
【0020】
本発明によるドアロック制御方法は、ドアの解錠を指令する入力手段が操作されたか否かを判定し、入力手段が操作されたと判定された場合、車外用アンテナからリクエスト信号を送信し、送信されたリクエスト信号に対応して使用者が携帯する携帯機から送信されるアンサー信号を受信したか否かを判定し、アンサー信号を受信したと判定された場合、アンサー信号に含まれる携帯機の加速度の値を表す情報を取得し、取得された情報に基づいて特定された携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定し、携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であると判定された場合、ドアのアンロックを許可する制御信号を出力するステップを含む。
【0021】
本発明による携帯情報処理装置は、携帯機から送信されたアンサー信号に基づいてドアのロックを制御するドアロック制御装置から送信されるリクエスト信号に対応して、ドアのアンロックを許可する制御信号をドアロック制御装置に出力させるために、アンサー信号を送信する携帯情報処理装置であって、自分の加速度を検出して加速度の値を予め設定された周期で出力する加速度検出手段と、予め定められた認証コード、および加速度の値を記憶するメモリと、リクエスト信号に対応して、メモリに記憶されている認証コードおよび加速度の値を表す情報を含むアンサー信号を送信するアンサー信号送信手段とを備える。
【0022】
本発明の携帯情報処理装置においては、自分の加速度を検出して加速度の値が予め設定された周期で出力され、予め定められた認証コード、および加速度の値が記憶され、リクエスト信号に対応して、メモリに記憶されている認証コードおよび加速度の値を表す情報を含むアンサー信号が送信される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、周到に計画された不正な操作に対するセキュリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したパッシブエントリーシステム(PES)の構成例を示す図である。
【図2】図1のコントロールユニットの構成例を示すブロック図である。
【図3】図1の携帯機の構成例を示すブロック図である。
【図4】PESにおいてドアのアンロックが行なわれる場合の例を説明する図である。
【図5】PESにおいてドアのアンロックが行われない場合の例を説明する図である。
【図6】リピータ装置を用いて不正にドアのアンロックが行なわれる場合の例を説明する図である。
【図7】ドアアンロック制御処理の例を説明するフローチャートである。
【図8】図7に対応して実行される携帯機の処理の例を説明するフローチャートである。
【図9】ドアアンロック制御処理の別の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明のパッシブエントリーシステム(PES)の一実施の形態に係る構成例を示す図である。同図は、本発明のPES50を、4ドアタイプの自動車1(車両1)のスマートエントリーシステムに適用した例である。PES50は、携帯機10と、車両1に搭載された本体機20により構成されている。
【0027】
本体機20のアンテナとしては、各ドアのドアノブに設置されたドアノブアンテナ22と、車室内の前部(運転席と助手席の間)と後部(後部座席中央)に設置された車室内アンテナ24とが設けられている。ここでは、例えば、本体機20から携帯機10への通信にはLF帯の低周波が使用され、携帯機10から本体機20への通信にはUHF帯の高周波が使用される方式(LF−UHF相互通信方式)が採用されているものとする。
【0028】
携帯機10は、本体機20への無線通信のための手段としてUHF波(300〜3000MHz)を送信する図示せぬUHF通信部(内蔵アンテナや送信回路よりなるもの)を有するとともに、本体機20からの無線通信のための手段としてLF波(例えば、100〜200KHz)を受信する図示せぬLF通信部(内蔵アンテナや受信回路よりなるもの)を有する。また携帯機10は、内部に携帯機全体の制御処理を実現するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)を含む制御回路と、内蔵電池など有しており、携帯機10の操作表面には、例えば押しボタン式の操作部であるスイッチなど(図示省略)が設けられている。
【0029】
車室内アンテナ24から送出されるLF波と、ドアノブアンテナ22から送出されるLF波は、例えば、互いに異なる所定のデータ形式を有するようになされている。車室内アンテナ24から送出されるLF波により送出される信号は、車内LF通信信号と称される。一方、ドアノブアンテナ22から送出されるLF波により送出される信号は、車外LF通信信号と称される。
【0030】
詳細は後述するが、本体機20が車内LF通信信号により携帯機10と通信可能となるエリアは、車室内アンテナ24と携帯機10との距離が所定の範囲内にある場合に限られる。このエリアは、車内LF通信エリアと称される。また、本体機20が車外LF通信信号により携帯機10と通信可能となるエリアは、ドアノブアンテナ22と携帯機10との距離が所定の範囲内にある場合に限られる。このエリアは、車外LF通信エリアと称される。
【0031】
携帯機10は、本体機20から送信されるリクエスト信号を受信すると、後述する認証コードを含むアンサー信号を送信する機能を有する。携帯機10は、本体機20から送信された車内LF通信信号のリクエスト信号に対応してアンサー信号を送信する。また、携帯機10は、本体機20から送信された車外LF通信信号のリクエスト信号に対応してアンサー信号を送信する。本体機20においては、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号と、車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が区別可能となるようになされている。
【0032】
例えば、一定の周期で車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が受信可能な時間帯と、車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が受信可能な時間帯とが設定されることにより、両者が区別可能となるようになされている。あるいはまた、例えば、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号の符号化方式と、車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号の符号化方式とが異なるようにし、両者が区別可能となるようにしてもよい。あるいはまた、アンサー信号のヘッダ情報などにより両者が区別可能となるようにしてもよい。
【0033】
本体機20は、図1に示すように、コントロールユニット21と、上述したドアノブアンテナ22、及び車室内アンテナ24とを備えている。ここで、ドアノブアンテナ22と車室内アンテナ24は、携帯機10との間でLF波を送信するアンテナであり、その通信可能エリアは各アンテナから送出される電磁波の出力に応じて定まり、例えば1〜2mの距離範囲となっている。
【0034】
図2は、コントロールユニット21の詳細な構成例を示すブロック図である。同図において、コントロールインタフェース102は、自動車の電子制御部品などと接続され、マイコン101の制御に応じて、所定の信号などを送受信する。例えば、コントロールインタフェース102は、バス105に自動車のエンジンが動いているか停止しているかを表す信号を送信したり、自動車のドアロックが解除されているか否かを表す信号を送信したりする。また、コントロールインタフェース102は、必要に応じて自動車の各部を制御するための制御信号を出力する。
【0035】
通信制御部104は、上述したドアノブアンテナ22、及び車室内アンテナ24を介して行われる無線通信の実行を制御する。
【0036】
マイコン101は、内部にプロセッサ、メモリなどを有する小型のコンピュータとして構成され、実装されたプログラムなどのソフトウェアなどによりバス105を介してコントロールインタフェース102、および通信制御部104を制御する。マイコン101は、例えば、携帯機10からのアンサー信号に含まれる認証コードが登録された認証コードに対応しているか否かを判定する照合確認を行うなどする。
【0037】
ユーザ設定受付部111は、例えば、図示せぬ操作部や携帯機10からの信号に基づくユーザ設定内容を、必要に応じて受け付ける。
【0038】
図3は、図1の携帯機10の構成例を示すブロック図である。同図に示されるように、携帯機10は、制御部131、通信部132、メモリ133、および加速度センサ134のそれぞれがバス135を介して相互に接続されるように構成されている。
【0039】
同図の制御部131は、携帯機の各部の処理を制御する。制御部131は、CPU、ROM、および、RAMから構成される、いわゆるマイクロコンピュータであり、CPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに展開し実行することにより携帯機10の全体の動作を制御する。制御部131は、本体機20より送信されてくるリクエスト信号に対応して、予めメモリ133に記憶されている認証コード133aを、通信部132を制御して送信させるようになされている。また、制御部131は、通信部132から送信される信号に、メモリ133から読み出した加速度センサ134が出力した加速度の値を含めるようになされている。
【0040】
認証コード133aおよび加速度センサ134が出力した加速度の値は、例えば、アンサー信号において予め定められたフィールドなどに格納されるようになされており、アンサー信号を受信した本体機20が、認証コード133aおよび加速度センサ134が出力した加速度の値を取得できるようになされている。
【0041】
通信部132は、図示せぬ携帯機10のアンテナを介して行われる無線通信の実行を制御する。
【0042】
メモリ133は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などとして構成され、上述した認証コード133aの他、必要な情報を記憶するようになされている。例えば、メモリ133には、加速度センサ134が出力する加速度の値が所定の時間だけ記憶される。
【0043】
加速度センサ134は、携帯機10の各方向の加速度を検出してその値を出力するようになされている。例えば、使用者が携帯機10を持ち運ぶなどした場合、加速度センサ134により加速度が検出されることになる。なお、携帯機10が静止している場合、加速度センサ134が出力する加速度の値は0となる。加速度センサ134は、例えば、一定の周期で、検出した加速度の値をバス135に出力し、メモリ133に記憶させるようになされている。
【0044】
また、携帯機10を、携帯電話機などと一体として構成することも可能である。携帯機10が携帯電話機と一体として構成される場合、携帯機10は、例えば、インターネットに接続されたり、電子メールを送受信したりすることも可能となる。
【0045】
PES50においては、車両1に設けられたスイッチやセンサ(以下、スイッチ等)によりドアのロックを要求する操作をした際に携帯機10が車外LF通信エリア内にある場合のみドアがロックされ、携帯機10が車内LF通信エリア内にある場合はロックされないようになされている。携帯機10を車内に残したままドアがロックされてしまう、いわゆる閉じこみを防止するためである。
【0046】
例えば、使用者が、携帯機10を持って、車両1の室内から室外に出る場合、マイコン101によりアンサー信号に含まれる認証コード133aが取得される。
【0047】
マイコン101は、認証コードが登録された認証コードに対応しているか否かを判定し、登録された認証コードに対応している場合、さらに、受信されたアンサー信号が車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号であるか否かを判定する。車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号である場合、マイコン101は、車両1のドアをロックさせないように制御する。一方、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号でない場合、すなわち、車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号である場合、マイコン101は、コントロールインタフェース102にドアの施錠の許可に対応する制御信号を出力する。これにより、コントロールインタフェース102が、例えば、使用者が車両1のドアノブの側に設けられている所定のスイッチを押下したとき、車のドアロックを施錠することで、車両1のドアのロックがなされることになる。
【0048】
PES50においては、例えば、使用者が車両のドアの外側に設けられたスイッチ等を操作してドアをアンロックする場合、本体機20と携帯機10との通信が行われ、正当な使用者によるアンロック操作であるか否かが判定されるようになされている。この場合、車両1のスイッチ等によりドアのアンロックを要求する操作をした際に携帯機10が車外LF通信エリア内にある場合にのみドアがアンロックされる。車内に正当な使用者がいるにもかかわらず、車外にいる不審者によりドアがアンロックされてしまうことを防止するためである。本発明においては、このときさらに、携帯機10の加速度がチェックされるようになされている。
【0049】
例えば、使用者が、携帯機10を持って、車両1に接近した場合、携帯機10の通信部132から送信されるアンサー信号がコントロールユニット21の通信制御部104により受信され、マイコン101により受信した信号に含まれる認証コード133aと、加速度センサ134の出力値とが取得される。
【0050】
マイコン101は、認証コードが予め登録された認証コードに対応しているか否かを判定し、登録された認証コードに対応している場合、さらに、受信されたアンサー信号が車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号であるか否かを判定する。
【0051】
車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号である場合、マイコン101は、車両1のドアをアンロックさせないように制御する。一方、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号でない場合、すなわち、車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号である場合、さらに、加速度センサ134の出力値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する。
【0052】
加速度センサ134の出力値が予め設定された閾値以下である場合、マイコン101は、コントロールインタフェース102にドアの解錠の許可に対応する制御信号を出力する。これにより、コントロールインタフェース102が、例えば、使用者が車両1のドアノブの側に設けられている所定のスイッチを押下したとき、ドアロックを解錠することで、車両1のドアのアンロックがなされることになる。
【0053】
例えば、図4に示される位置に携帯機10が位置する場合、所定のスイッチを押下することで、ドアのアンロックがなされることになる。図4において、図中点線の楕円で示される領域81は、本体機20が車外LF通信信号により携帯機10と通信可能となるエリアである車外LF通信エリアを表している。なお、説明を簡単にするために、ここでは、ドアノブアンテナ22が車両1の図中右側に1つだけ取り付けられているものとする。
【0054】
図4の例では、携帯機10が領域81の中に位置しているので、携帯機10は、車外LF通信信号によるリクエスト信号を受信できる。従って、例えば、携帯機10を携帯する使用者が車両1の所定のスイッチを押下することで、ドアのアンロックがなされることになる。
【0055】
一方、例えば、図5に示される位置に携帯機10が位置する場合、所定のスイッチを押下しても、ドアはアンロックされないことになる。なお同図も、図4と同様に、図中点線の楕円で示される領域81が車外LF通信エリアを表し、ドアノブアンテナ22が車両1の図中右側に1つだけ取り付けられているものとする。
【0056】
図5の例では、携帯機10が領域81の外に位置しているので、携帯機10は、車外LF通信信号によるリクエスト信号を受信できない。従って、何者かが車両1の所定のスイッチを押下しても、ドアはアンロックされないことになる。通常、正当な使用者は、携帯機10を携帯していると考えられるので、携帯機10が図5に示される位置にある場合、正当な使用者によるスイッチの操作とは考えられないから、ドアはアンロックされないようになされている。
【0057】
しかし、例えば、車両1の室内にある物を盗もうとする不審者が、受信アンテナ、増幅器、および送信アンテナを用いて、車外LF通信エリアを拡大させてしまうことが懸念される。このようにすると、携帯機10を所持していない不審者であっても、車両1のドアをアンロックすることが可能となるからである。
【0058】
例えば、図6に示されるように、不審者がアンテナ91、増幅器92、およびアンテナ93からなるリピータ装置を用いて車外LF通信エリアを拡大させた場合を考える。アンテナ91は、正規の車外LF通信エリアである領域81の内部に設置され、ドアノブアンテナ22から送信される車外LF通信信号によるリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号が増幅器92に供給される。増幅器92は、そのリクエスト信号を増幅してアンテナ93から送信させる。これにより、ドアノブアンテナ22から送信される車外LF通信信号によるリクエスト信号を受信可能となる領域82が生成されてしまう。
【0059】
すなわち、領域82は、不正な車外LF通信エリアとなる。
【0060】
例えば、携帯機10を携帯する正当な使用者の近辺にアンテナ93を配置すれば、携帯機10が領域82内で受信したリクエスト信号に対応するアンサー信号を送信してしまう。このアンサー信号を、アンテナ93で受信して増幅器92を介してアンテナ91から送信させることにより、車両1のドアのアンロックが可能となる。
【0061】
従来のPESにおいては、例えば、図6に示されるようなリピータ装置を用いて車外LF通信エリアを拡大させた場合、ドアのアンロックを防止することができなかった。そこで、本発明においては、上述したように、車外LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が正当に受信された場合、さらに、加速度センサ134の出力値が予め設定された閾値以上であるか否かを判定してドアのアンロックの可否を制御するのである。
【0062】
図6の領域82において、携帯機10は、車両1から離れていく正当な使用者に携帯されて移動していると考えられる。一方、例えば、図4に示される位置に携帯機10がある場合、正当な使用者は、立ち止まってドアノブの側のスイッチを操作していると考えられ、携帯機10も移動していないはずである。従って、リピータ装置を用いて車外LF通信エリアを拡大させたとしても、加速度センサ134の出力値が閾値以下であるか否かを判定することにより、正当な使用者によるアンロックの操作であるか、不審者によるアンロックの操作であることを判別することができるのである。
【0063】
次に、図7のフローチャートを参照して、本体機20によるドアアンロック制御処理の例について説明する。
【0064】
ステップS101において、マイコン101は、コントロールインタフェース102から出力される制御信号に基づいて、車両1のドアノブの側に設けられている所定のスイッチが操作されたか否かを判定し、スイッチが操作されたと判定されるまで待機する。なお、使用者は、車両1のドアをアンロックする場合、このスイッチを操作する。
【0065】
ステップS101において、スイッチが操作されたと判定された場合、処理は、ステップS102に進む。
【0066】
ステップS102において、マイコン101は、リトライ回数を特定するための変数nの値を0にセットする。なお、ここでは、リトライ回数を3回とした場合の例について説明する。
【0067】
ステップS103において、マイコン101は、変数nの値が3未満であるか否かを判定し、変数nの値が3未満であると判定された場合、処理は、ステップS104に進む。また、ステップS103において、変数nの値が3以上であると判定された場合、リトライが終了するので、処理は終了する。
【0068】
ステップS104において、マイコン101は、通信制御部104を制御してドアノブアンテナ22から、車外LF通信信号によるリクエスト信号を送信する。このリクエスト信号が携帯機10により受信された場合、携帯機10は、車外LF通信信号によるリクエスト信号に対応するアンサー信号を送信する。
【0069】
ステップS105において、マイコン101は、変数nの値を1だけインクリメントする。
【0070】
ステップS106において、マイコン101は、ステップS104で送信した、車外LF通信信号によるリクエスト信号に対応するアンサー信号を正常に受信したか否かを判定する。
【0071】
このとき、例えば、アンサー信号のチェックデジットなどに基づいて正常に受信されたか否かが判定される。また、このとき、認証コードが予め登録された認証コードに対応しているか否かも判定され、登録された認証コードに対応していない場合、正常に受信したとは判定されないようになされている。すなわち、アンサー信号の形式などにエラーがなく、かつ正当な認証コードが確認された場合、マイコン101は、アンサー信号を正常に受信したと判定するのである。
【0072】
ステップS106において、車外LF通信信号によるリクエスト信号に対応するアンサー信号を正常に受信しなかったと判定された場合、処理は、ステップS103に戻る。そして上述したように、3回のリトライの後、処理が終了することになる。すなわち、車外LF通信信号により、携帯機10との通信が可能でない場合、正当な使用者による操作であると確認できないので、車両1のドアはアンロックされないのである。
【0073】
一方、ステップS106において、車内LF通信信号によるリクエスト信号に対応するアンサー信号を正常に受信したと判定された場合、処理は、ステップS107に進む。
【0074】
ステップS107において、マイコン101は、ステップS106で正常に受信したと判定されたアンサー信号をチェックする。これにより、アンサー信号に含まれる加速度センサ134の出力値がチェックされる。
【0075】
ステップS108において、マイコン101は、ステップS107のチェックの結果得られた加速度センサ134の出力値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する。
【0076】
ステップS108において、加速度センサ134の出力値が予め設定された閾値を超えていると判定された場合、処理は終了する。図6を参照して上述したように、加速度センサ134の出力値が閾値を超えている場合、携帯機10は、正当な使用者に携帯されて移動していると考えられる。一方、例えば、図4に示される位置に携帯機10がある場合、正当な使用者は、立ち止まってドアノブの側のスイッチを操作していると考えられ、携帯機10も移動していないはずである。従って、加速度センサ134の出力値が閾値を超えている場合、車両1のドアはアンロックされないのである。
【0077】
一方、ステップS108において、加速度センサ134の出力値が予め設定された閾値以下であると判定された場合、処理は、ステップS109に進む。ステップS109において、マイコン101は、コントロールインタフェース102にドアの解錠の許可に対応する制御信号を出力する。これにより、ステップS101の処理で判定されたスイッチの操作に対応して車両1のドアがアンロックされることになる。
【0078】
すなわち、加速度センサ134の出力値が閾値以下である場合、携帯機10は移動していないと考えられるから、例えば、リピータ装置を用いて生成された不正な車外LF通信エリア内からアンサー信号が送信されている可能性は極めて低い。さらに、ステップS106の処理を経て、携帯機10が車外LF通信エリア内に位置していることが確認されている。従って、ステップS109において、加速度センサ134の出力値が閾値以下であると判定された場合、車両1のドアはアンロックされるのである。
【0079】
このようにして車両1のドアのロックが制御される。
【0080】
なお、この処理は、携帯機10が車内LF通信エリア内に位置する場合は実行されないようになされている。上述したように、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が受信された場合、マイコン101は、車両1のドアをアンロックさせないように制御する。例えば、図7の処理に先立って、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が受信されたか否かが判定され、車内LF通信信号のリクエスト信号に対応するアンサー信号が受信されなかったと判定された場合のみ、図7の処理が実行されるようになされている。
【0081】
次に、図8のフローチャートを参照して、図7のドアロック制御処理に対応して実行される携帯機10の処理について説明する。
【0082】
ステップS121において、制御部131は、本体機20からリクエスト信号を正常に受信したか否かを判定し、本体機20からリクエスト信号を正常に受信したと判定されるまで待機する。
【0083】
ステップS121において、本体機20からリクエスト信号を正常に受信したと判定された場合、処理は、ステップS122に進む。
【0084】
ステップS122において、制御部131は、通信部132を制御してリクエスト信号に対応するアンサー信号を送信する。なお、このとき送信されるアンサー信号には、上述したように、メモリ133から読み出された認証コード133aと加速度センサ134の出力値とが含まれる。
【0085】
例えば、ステップS121において、図7のステップS104でドアノブアンテナ22から送信された、車外LF通信信号によるリクエスト信号を正常に受信したと判定された場合、ステップS122においては、車外LF通信信号によるリクエスト信号に対応するアンサー信号が送信される。
【0086】
そして、本体機20では、ステップS122の処理で送信されたアンサー信号に基づいて、図7のステップS106の処理が実行されることになる。
【0087】
このようにして携帯機の処理が実行される。
【0088】
ところで、図6を参照して上述した例では、領域82において、携帯機10は、正当な使用者に携帯されて移動していると考えられると説明したが、例えば、アンテナ93が正当な使用者の自宅内などに設置された場合、携帯機10が携帯されて移動している可能性は低い。むしろ、そのような場合は、携帯機10が所定の場所に置かれて静止している可能性が高いのである。
【0089】
従って、加速度センサ134の出力値が閾値以下であると判定された場合、車両1のドアがアンロックされるようにすると、アンテナ93が正当な使用者の自宅内などに設置された場合、不審者によるドアのアンロックを防止することができない。
【0090】
アンテナ93が正当な使用者の自宅内などに設置された場合でも、不審者によるドアのアンロックを防止するようにするためには、加速度センサ134の出力値が0である場合は、車両1のドアがアンロックされないようにすればよい。また、例えば、図4に示される位置に携帯機10がある場合、正当な使用者は、立ち止まってドアノブの側のスイッチを操作していると考えられるが、このとき使用者が携帯する携帯機10が完全に静止している状態とは考えられない。
【0091】
すなわち、携帯機10からのアンサー信号に含まれる加速度センサ134の出力値が0より大きく、かつ閾値以下である場合のみ、ドアがアンロックされるようにすればよいのである。
【0092】
図9のフローチャートを参照して、本体機20によるドアアンロック制御処理の別の例について説明する。この例では、例えば、図6のアンテナ93が正当な使用者の自宅内などに設置された場合でも、不審者によるドアのアンロックを防止するようになされている。
【0093】
図9のステップS151乃至ステップS157は、図7のステップS101乃至ステップS107と同様の処理なので詳細な説明は省略する。
【0094】
ステップS158において、マイコン101は、ステップS156のチェックの結果得られた加速度センサ134の出力値が0より大きく、かつ閾値以下であるか否かを判定する。
【0095】
ステップS158において、加速度センサ134の出力値が0、または閾値を超えていると判定された場合、処理は終了する。
【0096】
一方、ステップS158において、加速度センサ134の出力値が0より大きく、かつ閾値以下であると判定された場合、処理は、ステップS159に進む。ステップS159において、マイコン101は、コントロールインタフェース102にドアの解錠の許可に対応する制御信号を出力する。これにより、ステップS151の処理で判定されたスイッチの操作に対応して車両1のドアがアンロックされることになる。
【0097】
このようにすることで、例えば、図6のアンテナ93が正当な使用者の自宅内などに設置された場合でも、不審者によるドアのアンロックを防止することができる。
【0098】
以上においては、本発明を車両1のドアのアンロックの制御に適用する場合の例について説明したが、本発明を車両以外のドアのアンロックの制御に適用することも勿論可能である。
【0099】
本明細書において上述した一連の処理を実行するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0100】
1 車両,
10 携帯機,
20 本体機,
21 コントロールユニット,
22 ドアノブアンテナ,
24 車室内アンテナ,
101 マイコン,
102 コントロールインタフェース,
104 通信制御部,
111 ユーザ設定受付部,
131 制御部,
132 通信部,
133 メモリ,
134 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの解錠を指令する入力手段が操作されたか否かを判定する操作判定手段と、
前記操作判定手段により前記入力手段が操作されたと判定された場合、車外用アンテナからリクエスト信号を送信するリクエスト信号送信手段と、
前記送信されたリクエスト信号に対応して使用者が携帯する携帯機から送信されるアンサー信号を受信したか否かを判定するアンサー信号判定手段と、
前記アンサー信号判定手段により前記アンサー信号を受信したと判定された場合、前記アンサー信号に含まれる前記携帯機の加速度の値を表す情報を取得する加速度取得手段と、
前記取得された情報に基づいて特定された前記携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する加速度判定手段と、
前記加速度判定手段により、前記携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であると判定された場合、前記ドアのアンロックを許可する制御信号を出力するアンロック許可制御手段と
を備えるドアロック制御装置。
【請求項2】
前記加速度判定手段は、さらに、
前記取得された情報に基づいて特定された前記携帯機の加速度の値が0より大きいか否かを判定し、
前記アンロック許可制御手段は、
前記加速度判定手段により、前記携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であり、かつ0より大きいと判定された場合、前記ドアのアンロックを許可する制御信号を出力する
請求項1に記載のドアロック制御装置。
【請求項3】
前記アンサー信号判定手段は、
前記携帯機が送信する前記アンサー信号に含まれる認証コードが予め登録された認証コードと一致する場合、前記アンサー信号を受信したと判定する
請求項1に記載のドアロック制御装置。
【請求項4】
ドアの解錠を指令する入力手段が操作されたか否かを判定し、
前記入力手段が操作されたと判定された場合、車外用アンテナからリクエスト信号を送信し、
前記送信されたリクエスト信号に対応して使用者が携帯する携帯機から送信されるアンサー信号を受信したか否かを判定し、
前記アンサー信号を受信したと判定された場合、前記アンサー信号に含まれる前記携帯機の加速度の値を表す情報を取得し、
前記取得された情報に基づいて特定された前記携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定し、
前記携帯機の加速度の値が予め設定された閾値以下であると判定された場合、前記ドアのアンロックを許可する制御信号を出力するステップ
を含むドアロック制御方法。
【請求項5】
携帯機から送信されたアンサー信号に基づいてドアのロックを制御するドアロック制御装置から送信されるリクエスト信号に対応して、前記ドアのアンロックを許可する制御信号を前記ドアロック制御装置に出力させるために、アンサー信号を送信する携帯情報処理装置であって、
自分の加速度を検出して前記加速度の値を予め設定された周期で出力する加速度検出手段と、
予め定められた認証コード、および前記加速度の値を記憶するメモリと、
前記リクエスト信号に対応して、前記メモリに記憶されている認証コードおよび前記加速度の値を表す情報を含むアンサー信号を送信するアンサー信号送信手段と
を備える携帯情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−216079(P2010−216079A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60628(P2009−60628)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】