説明

ドア装置

【課題】フレームやドア部材にブラケットを追加設置することなくドア開き状態を保持できるドア装置を提供する。
【解決手段】一方ヒンジプレート41から他方ヒンジプレート43にわたって、他方ヒンジプレート43の開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構71を設ける。ヒンジプレート開き角度規制機構71は、一方ヒンジプレート41にガイド穴72を有するガイドプレート73を溶接部73a,73bにより一体的に取付け、ガイドプレート73の下部にポケット部75を設け、ポケット部75の上端縁から案内部76を下り勾配に形成する。下側の他方ヒンジプレート43の上縁部にブラケット部77を一体成形し、ブラケット部77の軸穴78にL形ロッド79の縦軸部79aを遊嵌し、L形ロッド79は、ガイド穴72に摺動自在に嵌合する。L形ロッド79の先端部に、ポケット部75内に落下する係止板部80を一体に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジにより開閉自在のドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図19は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。サイドドア17は、ヒンジ18により開閉自在に取り付けられ、サイドドア17の開き状態は、図20乃至図22に示されたホールド機構19により保持される。
【0003】
この図20乃至図22に示された従来のホールド機構19は、サイドドア17の閉じ時は、図21に示されるように上部旋回フレーム12fに追加したブラケット19a,19bの穴間に、コの字に折曲形成されたステー(丸棒)19sを掛け渡すようにして収納し、サイドドア17の開き時は、図22に示されるように上部旋回フレーム12fに追加したブラケット19aの穴と、サイドドア17の内面に追加したブラケット19dの穴との間に、ステー19sを掛け渡すようにして引っ掛けるものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−315347号公報(第3−4頁、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のホールド機構19は、上部旋回フレーム12fおよびサイドドア17に、ステー19sを引っ掛けるためのブラケット19a,19b,19dを溶接により追加設置しなければならない。
【0005】
さらに、ドア閉じ時のステー19sは、単にブラケット19a,19bの穴に通しているだけであるため、機体に大きな上下振動が発生した場合、ブラケット19a,19bの穴から外れて脱落するおそれがあり、その脱落を抑えるために、図20乃至図22に示されるようにサイドドア17の内面に脱落防止ブラケット19eも溶接により追加設置して、ドア閉じ時にこの脱落防止ブラケット19eがブラケット19a,19b上のステー19sを上側から押さえるようにしている。
【0006】
また、従来のホールド機構19は、サイドドア17を開いたときに、図22に示されるようにブラケット19a,19dの穴間に、ステー19sを掛け渡すようにして引っ掛けるようにしているが、ステー19sの脱着を伴なう位置合わせ作業であるので手間がかかり、現場ではこの作業を省略するおそれもある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、フレームやドア部材にブラケットを追加設置することなくドア開き状態を保持できるドア装置を提供することを目的とし、また、ドア開き状態を自動的に保持できるドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、ドアパネル本体と、このドアパネル本体の一側をフレームに取り付けたヒンジとを備え、このヒンジは、フレームに固定される一方ヒンジプレートと、この一方ヒンジプレートに対し軸部材を介し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体を取り付ける他方ヒンジプレートと、一方ヒンジプレートから他方ヒンジプレートにわたって設けられ、一方ヒンジプレートに対する他方ヒンジプレートの開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構とを具備し、このヒンジプレート開き角度規制機構は、一方ヒンジプレートに設けられ、上下方向に細長く形成されたガイド穴を有するガイドプレートと、このガイドプレートに設けられ凹状の収納部を有するポケット部と、このポケット部の上端縁からポケット部の外側に向って下り勾配に設けられた案内部と、他方ヒンジプレートに一体に設けられた水平の軸穴を有するブラケット部と、このブラケット部の軸穴に縦軸部を回動自在および上下方向摺動自在に遊嵌され、かつガイドプレートのガイド穴に横軸部を摺動自在に嵌合されたL形ロッドと、このL形ロッドの横軸部の先端部に設けられて、一方ヒンジプレートに対する他方ヒンジプレートの開き動作によりL形ロッドとともに移動して案内部からポケット部内に落下する係止板部とを具備したものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドア装置におけるヒンジプレート開き角度規制機構のガイドプレートが、一方ヒンジプレートと別のプレート部材を溶接部により一方ヒンジプレートに一体化したものであり、ポケット部は、このガイドプレートの下部から折曲形成され、案内部は、このポケット部の上端縁から折曲形成されたものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1記載のドア装置におけるヒンジプレート開き角度規制機構のガイドプレートが、一方ヒンジプレートと一体の部材により成形され、ポケット部は、このガイドプレートと別体の部材により形成されてガイドプレートに溶接され、案内部は、このポケット部の上端縁から折曲形成されたものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のドア装置における一方ヒンジプレートが、フレームに固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一のヒンジプレートであり、軸部材は、この一方ヒンジプレートの長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材であり、他方ヒンジプレートは、これらの軸部材により一方ヒンジプレートに対し開閉自在に軸支された複数のヒンジプレートであるとしたものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載のドア装置におけるドアパネル本体が、外側板と、この外側板の内側面に固定された内側板と、これらの外側板と内側板との間に充填された発泡材とを具備したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、一方ヒンジプレートに対する他方ヒンジプレートの開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構は、一方ヒンジプレートから他方ヒンジプレートにわたって設けられ、要するに、一方および他方ヒンジプレートが、従来のフレームやドア側に設けられたドア開き角度保持用ホールド機構のブラケットを兼ねるので、フレームやドアパネル本体にブラケットを追加設置する必要がなく、追加部品の発生を防止できる。特に、L形ロッドは、常に、横軸部が一方ヒンジプレートのガイドプレートのガイド穴に嵌合されるとともに、縦軸部が他方ヒンジプレートのブラケット部の軸穴に遊嵌されたまま外れないので、ドア閉じ時に大きな振動が発生しても脱落防止用の追加部品が必要ないとともに、ドア開き時は、L形ロッドの先端部に設けられた係止板部が、L形ロッドとともに移動して案内部を乗越えるようにしてポケット部内に落下するので、ドア全開動作と連動して自動的に固定機能が働き、ドア開き状態を全開角度で自動的に保持できる。さらに、これらの構成により、従来のホールド機構に比べて、部品の規模を小型化することができるので、ヒンジ内にコンパクトに収めることができるとともに、L形ロッドの縦軸部を他方ヒンジプレートに一体に設けられたブラケット部の穴に回動自在および上下方向摺動自在に遊嵌したので、ヒンジプレート開き角度規制機構の構造を簡素化でき、コストダウンと、L形ロッドの脱着容易構造に基づく強度変更の容易性を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、ポケット部と案内部とを順次折曲形成したガイドプレートを一方ヒンジプレートに溶接したので、ヒンジプレート開き角度規制機構を容易に製作でき、コストダウンを図ることができる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、一方ヒンジプレートと一体の部材により成形されたガイドプレートに、別体の部材により形成されたポケット部を溶接したので、ガイドプレートと一体成形では製作困難な形状のポケット部を後付けできる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、長尺の一方ヒンジプレートに複数の他方ヒンジプレートを、同一直線上に配置された複数の軸部材により開閉自在に軸支することで、2つのヒンジを一体化したので、2つのヒンジ相互間の調整が必要なく、ドア取付状態の微調整を容易にでき、また取付ボルト個数の削減も可能であり、ヒンジによる取付作業性を向上できるとともに、ドア取付状態の微調整も容易にできる。さらに、長尺の一方ヒンジプレートが、複数のヒンジを一体化するプレートの役割を果すので、複数のヒンジを一体化するために複数のヒンジ間にプレートを溶接するなどの必要もなく、そのような溶接製品と比べて溶接工程を省略できるとともに、剛性の向上も図れる。
【0017】
請求項5に記載された発明によれば、外側板と内側板との間に発泡材を充填して、ドアパネル本体の軽量化と振動吸収性能の向上とを図ることで、ヒンジに作用する負担を軽減でき、ヒンジの耐久性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を、図1乃至図16に示された一実施の形態、図17に示された他の実施の形態、図18に示されたさらに別の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図12は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。
【0020】
図13は、サイドドア17のドアパネル本体20を示し、このドアパネル本体20は、外側板21と、この外側板21より薄い板厚の板金を凹凸状にプレス成形して外側板21の内側面に凹部を固定するとともに凸部と外側板21との間に空間22を形成する内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間22に充填された発泡材24とを具備している。発泡材24は、発泡素材24aを加熱して発泡させる。
【0021】
外側板21の周縁部は、内側板23の周縁部を包みこむように折返して押しつぶすようにヘミング加工したへミング加工部25を備えている。内側板23は、凹状に成形されて外側板21に接着剤により接合された凹部27と、これらの凹部27に対し膨出成形された凸部29とを具備している。接着剤は、外側板21と内側板23とを接合するとともにシールするため、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0022】
図14に示されるように、サイドドア17のドアパネル本体20の一側は、このドアパネル本体20の一側部に取り付けられたヒンジ31により、上部旋回体12上に設置された機体側のフレーム32に取り付けられている。すなわち、このフレーム32の一側部材32aにヒンジ31により、ドアパネル本体20の一側部が水平方向開閉自在に取り付けられている。このドアパネル本体20は、垂直面部20aに対し、上部がフレーム32側に折曲されて折曲面部20bが形成されている。
【0023】
このドアパネル本体20のヒンジ31とは反対側のラッチ取付穴部33には、ドアパネル本体20の垂直面部20aをフレーム32側に係脱可能なラッチ装置30のラッチ機構部34が設けられている。一方、ドアパネル本体20の開閉にともないドアパネル本体20が当接される方向に対向してフレーム32の他側部材32bに固定された取付板35よりラッチ装置30の係合体としてのストライカ36が突設され、このストライカ36に対しドアパネル本体20側に設けられたラッチ機構部34が係脱可能となっている。
【0024】
このラッチ機構部34の上側には、ドアパネル本体20の内側板23を凹状に成形した制振係合部37が設けられている。一方、機体側のフレーム32の他側部材32bには、ドアパネル本体20の開閉にともない制振係合部37と係脱自在の制振プランジャ38が、取付板39を介して取り付けられている。
【0025】
図1乃至図5は、前記ヒンジ31の構造を示し、このヒンジ31は、機体側のフレーム32の一側部材32aに固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一の一方ヒンジプレート41と、この一方ヒンジプレート41の長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材42と、これらの軸部材42により一方ヒンジプレート41に対し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体20を取り付ける複数の他方ヒンジプレート43とを具備したものである。
【0026】
一方ヒンジプレート41は、平板状のフレーム当接板部44に対して軸受板部45が折曲形成され、この軸受板部45の中央切欠部46を介して一端部および他端部に一体成形された複数の軸受環部47と、複数の他方ヒンジプレート43にそれぞれ一体成形された複数の軸受環部48とが交互に嵌合されて、それらの軸受環部に軸部材42が挿入されている。
【0027】
一方ヒンジプレート41のフレーム当接板部44には、一端部、中央部および他端部に、締着用ボルト挿入用の長穴51,52,51が穿設され、図1に示されるように、これらの長穴51,52,51に挿入された締着用ボルト53,54,53により、フレーム当接板部44が機体側のフレーム32の一側部材32aに固定可能であるとともに弛緩可能となっている。
【0028】
また、上下の他方ヒンジプレート43は、図16に示されるようにパネル当接板部55に対して軸受板部57が形成され、パネル当接板部55に、ドアパネル本体20を固定するためのボルト挿入穴58が穿設され、軸受板部57に前記軸受環部48が一体成形されている。
【0029】
次に、このドアパネル本体20へのヒンジ31の取付構造を、図15および図16を参照しながら説明する。
【0030】
図15に示されるように、外側板21と内側板23の一側部間には内部補強板61が接着され、この内部補強板61の裏面に溶接付けされたナット62と、図16に示されるようにこのナット62に螺合するボルト63とにより、内側板23のヒンジ取付面部64上に位置するヒンジ31の他方ヒンジプレート43が取り付けられている。この他方ヒンジプレート43とボルト63の頭部と間にはワッシャ65が介在されている。
【0031】
そして、このワッシャ65を通して、ヒンジ31のボルト挿入穴58と、内側板23のヒンジ取付面部64に穿設されたボルト挿入孔66とに挿入したボルト63を、内部補強板61の裏面に一体化されたナット62に螺合して、ヒンジ31を取り付ける。
【0032】
なお、図15において、外側板21の周縁部25aは、内側板23の周縁部を嵌着できるように折曲されているが、これを折返して押しつぶすことにより、前記へミング加工部25となる。また、図15に示された外側板21のラッチ取付穴部33aと、内側板23のラッチ取付穴部33bとに、前記ラッチ機構部34を装着する。
【0033】
次に、このようにしてサイドドア17に取り付けられたヒンジ31を用いて、サイドドア17を機体側のフレーム32に取り付けるときは、図1に示されるように、一方ヒンジプレート41の長穴51,52,51に挿入された締着用ボルト53,54,53を、フレーム32の一側部材32aに設けられたナット部材に螺合して締着するが、その際に、締着用ボルト53,54,53を緩めた状態で、これらの締着用ボルト53,54,53が長穴51,52,51の内部で移動し得る範囲でドアパネル本体20を動かし、ドアパネル本体20の取付位置を微調整する。
【0034】
次に、図1乃至図5に示されるように、一方ヒンジプレート41から他方ヒンジプレート43にわたって、一方ヒンジプレート41に対する他方ヒンジプレート43の開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構71が設けられている。
【0035】
このヒンジプレート開き角度規制機構71は、一方ヒンジプレート41に、上下方向に細長く形成されたガイド穴72を有する一方ヒンジプレート41とは別プレート部材のガイドプレート73が内側の溶接部73aおよび外側の溶接部73bにより一体に取付けられ、このガイドプレート73の下部から、凹状の収納部74を有する側面開放形のポケット部75が折曲形成され、このポケット部75の上端縁からポケット部75の外側に向って、案内部76が下り勾配に折曲形成され、また、下側の他方ヒンジプレート43の上縁部に、一体成形されたブラケット部77がガイドプレート73側に折曲して設けられ、このブラケット部77の軸穴78に、L形ロッド79の縦軸部79aが回動自在かつ上下方向摺動自在に遊嵌され、このL形ロッド79の横軸部79bは、ガイドプレート73のガイド穴72に摺動自在に嵌合され、このL形ロッド79の先端部には、一方ヒンジプレート41に対する他方ヒンジプレート43の開き動作によりL形ロッド79とともに移動して案内部76からポケット部75内に落下する係止板部80が一体に取り付けられている。
【0036】
次に、この図1乃至図16に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0037】
図6乃至図10は、ドアパネル本体20を開く際のヒンジ31の一連の動きを示し、図6は、ドアパネル本体20を閉じた状態であり、図7は、ドアパネル本体20を20°開いた状態であり、図8は、ドアパネル本体20を40°開いた状態であり、図9は、ドアパネル本体20を60°開いた状態であり、図10は、ドアパネル本体20を90°開いた全開状態である。
【0038】
図6乃至図10に示されるように、ドアパネル本体20が開く段階では、ガイドプレート73のガイド穴72と嵌合したままのL形ロッド79が、他方ヒンジプレート43に対し相対的に水平方向に回動しながら、案内部76の最上部で摺動するように移動する。
【0039】
そして、図10および図11に示されるように、ドアパネル本体20の全開状態では、ブラケット部77の軸穴78に遊嵌されたL形ロッド79とともに上方へ移動可能な係止板部80が、案内部76の登り勾配を上昇した後、案内部76の最上部から上下方向のガイド穴72に沿ってポケット部75内の収納部74に落下するので、一方ヒンジプレート41に対するL形ロッド79の動きを拘束して、このL形ロッド79を介し、他方ヒンジプレート43の開閉動作をロックすることができる。すなわち、他方ヒンジプレート43に取り付けられたドアパネル本体20の開閉動作をロックすることができる。
【0040】
この全開状態でのロック作用を解除するときは、ブラケット部77の軸穴78に遊嵌されたL形ロッド79をガイド穴72に沿って押し上げ、係止板部80を案内部76の最上部より上側へ移動することで、ポケット部75内の収納部74から開放し、他方ヒンジプレート43を閉じ方向へ動かすことができる。すなわち、他方ヒンジプレート43に取り付けられたドアパネル本体20を閉じることができる。
【0041】
ドアパネル本体20を閉じるときは、図14に示されるように、フレーム32の他側部材32bから突出されたストライカ36に向かってドアパネル本体20のラッチ機構部34が移動し、ストライカ36のフック金具により拘束係止される。同時に、ドアパネル本体20の垂直面部20aに設けられた凹状の制振係合部37に対し、フレーム32側に設けられた制振プランジャ38が嵌入して、ドアパネル本体20の上下方向の振動が規制される。
【0042】
ドアパネル本体20は、外側板21とこの外側板21より薄い内側板23とで形成された中空の閉断面構造により軽量化を図ることができるとともに、内側板23とこれより厚い外側板21とで形成された十分な高さをもった中空の閉断面構造により、外側からの衝撃に対して十分な強度を確保できる強固なドアパネル本体20を安価に提供でき、さらに、外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24により、ドアパネル本体20自体から発生する音を効果的に減衰させることができ、効果的に低騒音化を図ることができる。
【0043】
また、一方ヒンジプレート41に対する他方ヒンジプレート43の開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構71は、一方ヒンジプレート41から他方ヒンジプレート43にわたって設けられ、要するに、一方および他方ヒンジプレート41,43が、従来のフレームやドア側に設けられたホールド機構19のブラケット19a,19b,19d(図20乃至図22参照)を兼ねるので、機体側のフレーム32やドアパネル本体20にブラケットを追加設置する必要がなく、追加部品とその溶接工程の発生を防止できる。
【0044】
さらに、L形ロッド79は、常に、一方ヒンジプレート41のガイドプレート73のガイド穴72に嵌合されるとともに、他方ヒンジプレート43のブラケット部77に連結されたまま外れないので、ドア閉じ時(作業時)に大きな振動が発生しても脱落防止用の追加部品が必要ないとともに、ドア開き時は、L形ロッド79の先端部に設けられた係止板部80が、L形ロッド79とともに移動して案内部76を乗越えるようにしてポケット部75内に落下するので、ドア全開動作と連動して自動的に固定機能が働き、ドアパネル本体20のドア開き状態を全開角度で自動的に保持できる。さらに、これらの構成により、従来のホールド機構19に比べて、部品の規模を小型化することができるので、ヒンジ31内にコンパクトに収めることができる。
【0045】
特に、L形ロッド79の縦軸部79aを他方ヒンジプレート43に一体に設けられたブラケット部77の軸穴78に回動自在および上下方向摺動自在に遊嵌したので、ヒンジプレート開き角度規制機構71の構造を簡素化でき、コストダウンと、L形ロッド79の脱着容易構造に基づく強度変更の容易性を図ることができる。
【0046】
さらに、ポケット部75と案内部76とを順次折曲形成したガイドプレート73を一方ヒンジプレート41に溶接したので、ヒンジプレート開き角度規制機構71を容易に製作でき、コストダウンを図ることができる。
【0047】
また、長尺の一方ヒンジプレート41に複数の他方ヒンジプレート43を、同一直線上に配置された複数の軸部材42により開閉自在に軸支することで、2つのヒンジを一体化したので、2つのヒンジ相互間の調整が必要なく、ドア取付状態の微調整を容易にでき、また、一方ヒンジプレート41は3つの締着用ボルト53,54,53によってフレーム32に取り付けることが可能となり、取付ボルト個数の削減も可能であり、このヒンジ31による取付作業性を向上できるとともに、ドア取付状態の微調整も容易にできる。
【0048】
特に、中央の締着用ボルト54を中心にドアパネル本体20を回動するようにして動かすと、ドアパネル本体20の取付角度や取付位置の微調整を容易に行うことができる。すなわち、一方ヒンジプレート41の中央部を固定する締着用ボルト54を緩めることにより、この締着用ボルト54を支点にして一方ヒンジプレート41の長尺方向一端部および他端部にそれぞれ配置された他方ヒンジプレート43を可動調整して、一体のドアパネル本体20の取付位置を微調整しながら、このドアパネル本体20の取付作業を円滑に行なうことができる。
【0049】
さらに、長尺の一方ヒンジプレート41が、複数のヒンジを一体化するプレートの役割を果すので、複数のヒンジを一体化するために複数のヒンジ間にプレートを溶接するなどの必要もなく、そのような溶接製品と比べて溶接工程を省略できるとともに、剛性の向上も図れる。
【0050】
また、外側板21と内側板23との間に発泡材24を充填して、ドアパネル本体20の軽量化と振動吸収性能の向上とを図ることで、ヒンジ31に作用する負担を軽減でき、ヒンジ31の耐久性を向上できる。
【0051】
次に、図17は、他の実施の形態を示し、ヒンジプレート開き角度規制機構71のガイド穴72aを有するガイドプレート73Aが、一方ヒンジプレート41と一体の部材により成形され、このガイドプレート73Aと別体の部材により側面部75sを閉鎖形に形成したポケット部75pが、ガイドプレート73Aに溶接された溶接部75wで一体化され、案内部76は、このポケット部75pの上端縁から折曲形成されている。他の構成は、図1に示された構成と同様であるから、その説明を省略する。
【0052】
この図17に示された他の実施の形態によれば、一方ヒンジプレート41と一体の部材により成形されたガイドプレート73Aに、別体の部材により形成されたポケット部75pを溶接したので、図1に示されるようにガイドプレート73と一体成形では製作困難な形状のポケット部75pを後付けできる。
【0053】
次に、図18は、さらに別の実施の形態を示し、L形ロッド79の縦軸部79aを装着するブラケット部77および軸穴78の位置は、定位置に限定されるものではなく、例えば、2点鎖線で示される位置から、実線で示されるブラケット部77aおよび軸穴78aのように、他方ヒンジプレート43に穿設されたドアパネル取付用のボルト挿入穴63hよりL形ロッド79の横軸部79bが延長される位置まで移動させても良い。
【0054】
なお、ヒンジプレート開き角度規制機構71としては、図示されたスライド型のほかにも、一方ヒンジプレート41から他方ヒンジプレート43にわたって複数のリンクを折り畳み自在に設けた機構であっても良い。
【0055】
本発明に係るドア装置は、油圧ショベルなどの作業機械のサイドドア、リアドアなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るドア装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上ドア装置の要部を示す斜視図である。
【図3】同上ドア装置のヒンジを示す斜視図である。
【図4】同上ドア装置のヒンジを示す正面図である。
【図5】同上ドア装置のヒンジを示す側面図である。
【図6】同上ドア装置の閉じ状態のヒンジを示す平面図である。
【図7】同上ドア装置の20°開き状態のヒンジを示す平面図である。
【図8】同上ドア装置の40°開き状態のヒンジを示す平面図である。
【図9】同上ドア装置の60°開き状態のヒンジを示す平面図である。
【図10】同上ドア装置の90°全開状態のヒンジを示す平面図である。
【図11】同上ドア装置の全開時ロック状態のヒンジを示す断面図である。
【図12】同上ドア装置を備えた作業機械の平面図である。
【図13】同上ドア装置のドアパネル本体の断面図である。
【図14】同上ドア装置の内側からの斜視図である。
【図15】同上ドア装置のドアパネル本体の分解斜視図である。
【図16】同上ドア装置のヒンジ取付部の断面図である。
【図17】同上ドア装置の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図18】同上ドア装置のさらに別の実施の形態を示す斜視図である。
【図19】従来のドア装置を備えた作業機械の斜視図である
【図20】従来のドア装置のドア開状態を示す斜視図である。
【図21】従来のホールド機構の収納状態を示す斜視図である。
【図22】従来のホールド機構の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
20 ドアパネル本体
21 外側板
23 内側板
24 発泡材
31 ヒンジ
32 フレーム
41 一方ヒンジプレート
42 軸部材
43 他方ヒンジプレート
71 ヒンジプレート開き角度規制機構
72 ガイド穴
73 ガイドプレート
73a 溶接部
73b 溶接部
74 収納部
75 ポケット部
76 案内部
77 ブラケット部
78 軸穴
79 L形ロッド
79a 縦軸部
79b 横軸部
80 係止板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネル本体と、
このドアパネル本体の一側をフレームに取り付けたヒンジとを備え、
このヒンジは、
フレームに固定される一方ヒンジプレートと、
この一方ヒンジプレートに対し軸部材を介し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体を取り付ける他方ヒンジプレートと、
一方ヒンジプレートから他方ヒンジプレートにわたって設けられ、一方ヒンジプレートに対する他方ヒンジプレートの開き動作を一定角度で係止するヒンジプレート開き角度規制機構とを具備し、
このヒンジプレート開き角度規制機構は、
一方ヒンジプレートに設けられ、上下方向に細長く形成されたガイド穴を有するガイドプレートと、
このガイドプレートに設けられた凹状の収納部を有するポケット部と、
このポケット部の上端縁からポケット部の外側に向って下り勾配に設けられた案内部と、
他方ヒンジプレートに一体に設けられた水平の軸穴を有するブラケット部と、
このブラケット部の軸穴に縦軸部を回動自在および上下方向摺動自在に遊嵌され、かつガイドプレートのガイド穴に横軸部を摺動自在に嵌合されたL形ロッドと、
このL形ロッドの横軸部の先端部に設けられて、一方ヒンジプレートに対する他方ヒンジプレートの開き動作によりL形ロッドとともに移動して案内部からポケット部内に落下する係止板部と
を具備したことを特徴とするドア装置。
【請求項2】
ヒンジプレート開き角度規制機構のガイドプレートは、一方ヒンジプレートと別のプレート部材を溶接部により一方ヒンジプレートに一体化したものであり、
ポケット部は、このガイドプレートの下部から折曲形成され、
案内部は、このポケット部の上端縁から折曲形成された
ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項3】
ヒンジプレート開き角度規制機構のガイドプレートは、一方ヒンジプレートと一体の部材により成形され、
ポケット部は、このガイドプレートと別体の部材により形成されてガイドプレートに溶接され、
案内部は、このポケット部の上端縁から折曲形成された
ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項4】
一方ヒンジプレートは、フレームに固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一のヒンジプレートであり、
軸部材は、この一方ヒンジプレートの長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材であり、
他方ヒンジプレートは、これらの軸部材により一方ヒンジプレートに対し開閉自在に軸支された複数のヒンジプレートである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のドア装置。
【請求項5】
ドアパネル本体は、
外側板と、
この外側板の内側面に固定された内側板と、
これらの外側板と内側板との間に充填された発泡材と
を具備したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−59638(P2010−59638A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224582(P2008−224582)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】