説明

ドナー−アクセプター型色素

【課題】耐久寿命が長くかつエネルギー変換効率が高い光電変換素子を与える増感色素を提供する。
【解決手段】 本発明は、アクセプター部位が少なくとも2つのシアノ基またはニトロ基を有するキノンジメタン基またはアントラキノンジメタン基である化合物からなるドナー-アクセプター型増感色素に関する。アクセプター部位が4つのシアノ基またはニトロ基を有することが好ましい。アクセプター部位がテトラシアノキノンジメタン基、テトラニトロキノンジメタン基、テトラシアノアントラキノンジメタン基またはテトラニトロアントラキノンジメタン基であることが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナー-アクセプター型色素、特にドナー-アクセプター型増感色素に関する。詳細には、本発明は、太陽電池において使用するのに適したドナー-アクセプター型増感色素に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池は、石油資源に代わるエネルギー源として、また地球温暖化などを含めて環境汚染を起こすことのない無限のエネルギー源として広く実用化されはじめている。その中でも代表的なのはシリコン系太陽電池であるが、最近、材料費や製造コストの点で一層の改善が求められている。
【0003】
次世代型の太陽電池として注目されている色素増感型の太陽電池は、低価格で環境負荷も少ない点で優れたものとされているが、反面、シリコン系太陽電池に比べるとエネルギー変換効率が低くて寿命も短いことから、実用化を進める際の大きな課題になっている。
【0004】
例えば色素増感型太陽電池の増感色素として、貴金属元素であるルテニウムを含むルテニウム錯体が知られているが、コスト上の問題から最近では貴金属を含まない低コストの増感色素も検討されている。例えば特許文献1には、ルテニウム錯体に匹敵する性能を有するものとして、クマリン、ポリエン、スチリル色素などの有機色素も開発されている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている有機色素は、エネルギー変換効率が低く、光電気化学電池(特に、シリコン系太陽電池)用の増感色素として使用するには、耐久寿命やエネルギー変換効率の向上が求められている。
【特許文献1】特開2003−234133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐久寿命が長くかつエネルギー変換効率が高い光電変換素子を与える色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクセプター部位が少なくとも2つのシアノ基またはニトロ基を有するキノンジメタン基またはアントラキノンジメタン基である化合物からなるドナー-アクセプター型色素に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の色素は、電荷分離を効率的に達成できる。ドナー部位を様々な吸収波長を有する色素分子で構成することが可能である。
本発明によれば、光電変換素子および光電気化学電池は、低価格で製造でき、環境負荷が少ない。
本発明の光電変換素子および光電気化学電池(例えば、湿式有機太陽電池)においては、効率的な光電流が観測される。本発明によれば、光電気化学電池について、エネルギー変換効率は高く、かつ耐久寿命は長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の色素は、アクセプター部位およびドナー部位を有する化合物である。アクセプター部位およびドナー部位は、有機基であり、連結基を介して結合している。一般に、アクセプター部位およびドナー部位は一価であり、連結基は二価である。本発明の色素は、アクセプター部位、連結基およびドナー部位によって構成されている。
アクセプター部位は、キノンジメタン基またはアントラキノンジメタン基から構成される。アクセプター部位(すなわち、キノンジメタン基またはアントラキノンジメタン基)において存在するシアノ基またはニトロ基の数は、少なくとも2、例えば2〜8、特に4であってよい。
【0010】
アクセプター部位には、酸化チタンなどの半導体に配位可能なアンカー基を有することによって、光電気化学電池(例えば、湿式有機太陽電池)の増感効果は、著しく向上する。そのようなアンカー基の例は、水酸基、カルボキシル基である。アクセプター部位におけるアンカー基の数は、1〜6、例えば1〜3、特に1または2であってよい。
【0011】
アクセプター部位の具体例は次のとおりである。









【0012】
アクセプター部位は、テトラシアノキノンジメタン基、テトラニトロキノンジメタン基、テトラシアノアントラキノンジメタン基またはテトラニトロアントラキノンジメタン基であることが好ましい。
【0013】
ドナー部位は、可視光(波長約380nm〜約780nm)に吸収を持つ部位である。ドナー部位は、可視光に加えてまたは可視光に代えて、紫外光および近赤外光に吸収を持っていてもよい。ドナー部位としては、様々な色素を使用できる。ドナー部位は、限定されるものではないが、例示すれば、スクアリリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、1,8−アントラキノン色素、アゾ色素、トリフェニルメタン色素、オキサジン色素、ナフトキノ色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、クマリン系色素が挙げられる。ドナー部位はスクアリリウム色素であることが特に好ましい。
【0014】
スクアリリウム色素の例は次のような基である。




[式中、R、R、RおよびRは炭素数1〜20の炭化水素基、
Xは2価の連結基である。]
【0015】
、R、RおよびRは、脂肪族基、芳香族、または芳香脂肪族基であってよい。R、R、RおよびRの具体例は、炭素数1〜8のアルキル基、例えば、ブチル基(Bu)、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基である。さらに、RとRまたはRとRは、一体となって環を形成してもよい。そのような環は、飽和または不飽和の炭化水素環(例えば炭素数4〜10)であってよく、例えば、シクロヘキシル環、ベンゼン環などが挙げられる。
Xは、直接結合、2価の炭化水素基、酸素原子(-O-)、または硫黄原子(-S-)であってよい。2価の炭化水素基の例は、水素原子がアルキル基(例えば、炭素数1〜4)などで置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基(例えば、炭素数1〜4のアルキレン基、1つまたは2つの二重結合を有する炭素数2〜4のアルケニレン基)である。
【0016】
アクセプター部位とドナー部位とは、どのような2価の連結基によって結合されていてもよい。2価の連結基としては、アミド基、エステル基(チオエステル基を含む。)、エーテル基(チオエーテル基を含む。)、ケトン基、アルキレン基(炭素数1〜10)、アリーレン基(炭素数6〜20)が挙げられる。アミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基は、他の2価の基、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基を有していても良く、アミド含有基、エステル含有基、エーテル含有基、ケトン含有基と呼ぶことができる。アルキレン基を有するアミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基は、-(CH2)m-C(=O)-NR11-(CH2)n-[または-(CH2)m-NR11-C(=O)-(CH2)n-]、-(CH2)m-C(=O)O-(CH2)n- [または-(CH2)m-OC(=O)-(CH2)n-]、-(CH2)m-O-(CH2)n-、-(CH2)m-C(=O)-(CH2)n-であってよい(式中、R11は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基(特にアルキル基)、mおよびnは、それぞれ0〜10であり、mおよびnの少なくとも一方は1以上である。)。エステル基は、ジエステル基、例えば、-(CH2)m-OC(=O)-(CH2)p-C(=O)O-(CH2)n- または-(CH2)m-C(=O)O-(CH2)p-OC(=O)-(CH2)n-(式中、mおよびnは、それぞれ0〜10であり、pは1〜10である。)であってよい。
【0017】
本発明の色素の具体例を例示すれば、次のとおりである。



【0018】

[上記式中、Buはブチル基であり、nは0〜10(特に1〜8)であり、Xは、酸素原子、硫黄原子、炭化水素基(特にアルキレン基)ある。]
【0019】
本発明の色素は、例えば、以下のようにして製造できる。
色素分子末端(すなわち、ドナー部位末端)を水酸基(またはカルボキシ基)とし、一方、アクセプター分子末端(すなわち、アクセプター部位末端)をカルボキシ基(または水酸基)とし、この両者をエステル化することによって、ドナー部位とアクセプター部位と連結でき、本発明の化合物が得られる。例えば、次のような反応式に従って、色素を製造できる。
【0020】

【0021】

【0022】
本発明の色素は、光電変換素子において使用できる。本発明の色素は、一般に、増感色素として使用される。
本発明の光電変換素子は、本発明の色素を吸着させた半導体微粒子層及び導電性基板を含む素子である。
光電変換素子は、色素の吸収波長(可視光(波長約380nm〜約780nm)に含まれる波長ならびに紫外光および近赤外光に含まれる波長)に感応する光センサや光電気化学電池(特に、太陽電池)などに用いられる。
【0023】
本発明の光電変換素子に用いられる半導体微粒子の一次粒径は、通常、1〜5000nm程度、好ましくは5〜300nm程度である。反射による光電変換効率の向上を目的として、一次粒径の異なる半導体粒子を混入させてもよい。また、チューブや中空形状の微粒子を用いてもよい。
【0024】
半導体微粒子(一次粒径は、通常、1〜5000nm 程度、好ましくは5〜300nm)としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸ナトリウム等の金属酸化物;ヨウ化銀、臭化銀、ヨウ化銅、臭化銅等の金属ハロゲン化物;硫化亜鉛、硫化チタン、硫化インジウム、硫化ビスマス、硫化カドミウム、硫化ジルコニウム、硫化タンタル、硫化モリブデン、硫化銀、硫化銅、硫化スズ、硫化タングステン、硫化アンチモン等の金属硫化物;セレン化カドミウム、セレン化ジルコニウム、セレン化亜鉛、セレン化チタン、セレン化インジウム、セレン化タングステン、セレン化モリブデン、セレン化ビスマス、セレン化鉛等の金属セレン化物;テルル化カドミウム、テルル化タングステン、テルル化モリブデン、テルル化亜鉛、テルル化ビスマス等の金属テルル化物; リン化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、リン化カドミウム等の金属リン化物;ガリウム砒素、銅− インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物、シリコン、ゲルマニウム等が挙げられる。さらに、酸化亜鉛/酸化スズ、酸化スズ/酸化チタンのような二種以上の混合物であってもよい。
とりわけ、酸化チタンが好適である。
【0025】
本発明の光電変換素子に用いられる導電性基板としては、導電性物質そのもの、又は、基板に導電性物質を重ねたものを用いることができる。導電性物質としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、パラジウム又は鉄等の金属や、該金属のアロイ、或いはインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等の導電性金属酸化物、炭素、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子が挙げられる。導電性高分子は、例えば、パラトルエンスルフォン酸等がドープされていてもよい。
導電性基板としては、ガラス又はプラスチックに導電性の金属酸化物を塗布したものが好ましい。
導電性基板上に半導体微粒子層が形成されている。導電性基板上の半導体微粒子層の厚みは、通常は1〜200μmである。
【0026】
半導体微粒子層は、微粒子1個の単層に限らず、粒径の異なる層等を複数重ねてもよい。
【0027】
半導体微粒子への色素の吸着方法としては、色素の溶液中に、よく乾燥した半導体微粒子を数時間浸漬する方法が用いられる。
色素の吸着は室温で行ってもよいし、加熱還流下に行ってもよい。色素の吸着は、半導体微粒子の塗布前に行ってもよく、塗布後に行ってもよく、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させてもよいが、塗布後の半導体微粒子膜に色素を吸着させるのがより好ましい。半導体微粒子層を加熱処理する場合の色素吸着は加熱処理後に行うことが好ましく、加熱処理後、微粒子層表面に水が吸着する前に、すばやく色素を吸着させる方法が特に好ましい。
【0028】
半導体微粒子に付着していない色素が浮遊することによる増感効果の低減を抑制するた
め、未吸着の色素は洗浄によって除去することが望ましい。
吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。
【0029】
1つの態様において、光電気化学電池(特に太陽電池)は、光電変換素子、電荷移動層及び対極を含み、光を電気に変換することができる。通常、光電変換素子、電荷移動層及び対極が順次、積層され、光電変換素子の導電性基板と対極とが連結されて、電荷が移動、すなわち、発電する。
他の態様において、光電気化学電池は、例えば、光電変換素子及び電荷移動層からなる積層部が複数と1つの対極からなる光電気化学電池、例えば、複数の光電変換素子、1つの電荷移動層及び1つの対極が積層されてなる光電気化学電池などが例示される。
【0030】
光電気化学電池は、湿式光電気化学電池及び乾式光電気化学電池に大別される。湿式光電気化学電池は、含まれる電荷移動層が電解液から構成される層であり、通常、電荷移動層は光電変換素子と対極の間に電解液が充填される。
乾式光電気化学電池としては、例えば、光電変換素子と対極との間の電荷移動層が固体のホール輸送材料である電池などが挙げられる。
【0031】
光電気化学電池において、導電性基板と、該導電性基板に対向する対極と、これらの間に、光電変換素子用色素が吸着された半導体微粒子層が存在する。湿式光電変換素子とする場合は、半導体粒子層は電解液で満たされ、封止材で封止されている。導電性基板は、上から順に基板と導電層で構成されている。対極は、下から順に基板と導電層で構成されている。
【0032】
光電気化学電池が湿式である場合、電荷移動層に含まれる電解液に用いられる電解質としては、例えば、Iと各種ヨウ化物との組合せ、Brと各種の臭化物との組合せ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩の金属錯体の組合せ、フェロセン−フェリシニウムイオンの金属錯体の組合せ、アルキルチオール−アルキルジスルフィドのイオウ化合物の組合せ、アルキルビオローゲンとその還元体の組合せ、ポリヒドロキシベンゼン類とその酸化体の組合せ等が挙げられる。
ここで、各種ヨウ化物としては、例えば、LiI、NaI、KI、CsIやCaI等の金属ヨウ化物;1−プロピル−3− メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイドダイド等の4価のイミダゾリウム化合物のヨウ素塩;4価のピリジニウム化合物のヨウ素塩;テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩等が挙げられる。
臭化物としては、例えば、LiBr、NaBr、KBr、CsBrやCaBr等の金属臭化物;テトラアルキルアンモニウムブロマイドやピリジニウムブロマイド等の4価のアンモニウム化合物の臭素塩等が挙げられる。
アルキルビオローゲンとしては、例えば、メチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレートなどが挙げられ、ポリヒドロキシベンゼン類としては、例えばハイドロキノンやナフトハイドロキノン等が挙げられる。
【0033】
上記の電解液に用いる有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルやプロピオニトリル等のニトリル系溶媒;エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドや1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド;1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド等のイオン性液体が挙げられる。また、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、ポリ4−ビニルピリジンや低分子ゲル化剤でゲル化されていてもよい。
【0034】
光電気化学電池が乾式である場合、電荷移動層に用いられる固体のホール輸送材料としては、CuIやCuSCN等の一価の銅を含むp型無機半導体や、芳香族アミン類;ポリチオフェン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体;ポリアニリン及びその誘導体;ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体;ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体等の導電性高分子を用いることができる。
【0035】
光電気化学電池を構成する対極は、導電性を有する電極であり、強度を維持したり密閉性を向上させるため前記導電性基板と同様の基板を用いてもよい。
光電変換素子用色素が吸着された半導体微粒子層に光が到達するため、導電性基板と対極の少なくとも一方は実質的に透明である。本発明の光電変換素子においては、半導体微粒子層を有する導電性基板が透明で、照射光を導電性基板の側から入射させるものが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
光電気化学電池の対極としては、例えば、金属、カーボン、導電性の酸化物などを蒸着したガラスやプラスチックを使用することができる。具体的には、導電層を、1mm以下、好ましくは5nm〜100μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成して作製することもできる。本発明では白金やカーボンを蒸着したガラス、又は、蒸着やスパッタリングによって導電層を形成した対極とすることが好ましい。
【0036】
光電気化学電池における電解液の漏洩や蒸散を防ぐため、封止材を使用して封止してもよい。該封止材としては、アイオノマー樹脂; ガラスフリット;ホットメルト接着剤などの接着剤を使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1

【0039】
(1)N-アルキル末端に水酸基を有するスクアリリウム色素SQ1-SQ3の合成
アルゴン雰囲気下4-[4'-(N',N'-dibutylamino)phenyl]-3-hydroxycyclo-3-butene-1,2-dione 6.03g (20.0 mmol)と[N-(2-Hydroxyethyl)-N-methyl]aniline 3.02g(20.0mmol)の脱水2-プロパノール/トリエチルオルトギ酸(5/1、v/v、20mL)混合溶液を13時間還流した。溶媒を減圧留去し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール(MeOH)/ジクロロメタン(CH2Cl2)=1/20)で精製後、粗体をCH2Cl2で洗浄し緑色結晶のSQ1 (n=1) 4.32g(収率 49%)を得た。同様にして、対応するアニリン誘導体からSQ2 (n=2)、SQ3 (n=3)を得た。
【0040】
SQ1: 収率 49%. 1H-NMR(CDCl3): δ 0.99(t, J=7.2 Hz, 6H), 1.40 (sextet, J=7.5 Hz, 4H), 1.65 (m, 4H), 3.17 (s, 3H), 3.26(br s, 1H), 3.44(t, J=7.8 Hz, 4H), 3.68 (t, J=5.6 Hz, 2H), 3.92(q, 2H), 6.73 (d, J=9.6 Hz, 2H), 6.77 (d, J=9.6 Hz, 2H), 8.26 (d, J=9.3 Hz, 2H), 8.34(d, J=9.3 Hz, 2H).
13C-NMR(CDCl3): δ13.84, 20.21, 29.57, 39.61, 51.22, 55.01, 59.91, 112.39, 112.56, 119.26, 119.76, 133.05, 133.16, 153.48, 154.74, 183.53, 186.59.λmax(ε)(CH2Cl2)=634 nm (2.88x105). MALDITOFMS(no matrix): m/e 434.19(M+). FT-IR (KBr): 1586 cm-1. mp: 213℃(decomp).
【0041】
SQ2: 収率 25%. 1H-NMR(CDCl3): δ0.99(t, J=9.0 Hz, 6H), 1.38 (m, 10H), 1.62 (m, 8H), 3.14 (s, 3H), 3.46(m, 6H), 3.65 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.71 (d, J=6 Hz, 2H), 6.74 (d, J=6.0 Hz, 2H), 8.38(d, J=3.0 Hz, 4H).13C-NMR(CDCl3): δ13.84, 20.21, 25.66, 26.92, 27.20, 29.18, 29.58, 32.61, 38.84, 51.20, 52.74, 62.87, 112.17, 112.31, 119.50, 119.81, 133.04, 133.41, 153.58, 153.98, 183.46, 187.61, 188.33.λmax(ε)(CH2Cl2)=638 nm (3.40x105). MALDITOFMS(no matrix): m/e 504.28(M+).
FT-IR (KBr): 1616, 1590 cm-1. mp : 174℃(decomp).
【0042】
SQ3:収率 36%. 1H-NMR(CDCl3): δ0.99(t, J=9.0 Hz, 6H), 1.39 (m, 20H), 1.65 (m, 8H), 3.15 (s, 3H), 3.45(m, 6H), 3.64 (q, J=6.0 Hz, 2H), 6.71 (d, J=9 Hz, 2H), 6.74 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.35 (d, J=3.0 Hz, 2H), 8.38(d, J=3.0 Hz, 2H). 13C-NMR(CDCl3): δ13.85, 20.25, 24.95, 25.66, 26.78, 27.18, 28.47, 29.09, 29.13, 29.26, 29.63, 33.97, 38.92, 49.16, 51.37, 52.97, 65.49, 112.80, 112.88, 119.41, 119.65, 133.11, 133.42, 153.97, 154.38, 171.21, 183.17, 186.65, 187.34.λmax(ε)(CH2Cl2)=638 nm (2.56x105).MALDITOFMS(no matrix): m/e 574.40(M+). FT-IR (KBr): 1615, 1589 cm-1. mp: 182℃(decomp). Elemental analysis: Calcd for C37H54N2O3: C 77.31, H 9.47, N 4.87%; found C 77.10, H 9.58, N 4.88%.
【0043】
(2)スクアリリウム−テトラシアノキノンジメタン系色素SQ1T-SQ3Tの合成
7',7',8',8'-Tetracyano-p-quinodimethanepropanoic acid 138mg(0.50mmol)とスクアリリウム系色素SQ1 (0.217 g, 0.50mmol)、N,N-Dicyclohexylcarbodiimide (DCC)(0.103 g, 0.50mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP) 61.1mg (0.50mmol)の塩化メチレン溶液(25mL)を室温下2時間撹拌した。反応溶液を4分割して、濃縮せずそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール(MeOH)/ジクロロメタン(CH2Cl2)=5/95)で精製し、目的物の青色粗体0.236 gを得た。クロロホルム(CHCl3)で再結晶後、イソプロピルアルコールでウレアを洗浄後、CHCl3/アセトニトリル(CH3CN)の混合溶液で再結晶化後、さらにCHCl3で再結晶化し赤銅色結晶のSQ1T (n=1) 47.9mgを得た。
同様にして、対応するスクアリリウム系色素SQ2、SQ3を用いてスクアリリウム−テトラシアノキノンジメタン系色素SQ2T (n=2)、SQ3T (n=3)を合成した。
【0044】
SQ1T:収率13%. 1H-NMR(CDCl3): δ1.00(t, J=9.0 Hz, 6H), 1.40 (sextet, J=6.0 Hz,4H), 1.65 (m, 4H), 2.58(t, J=6.0 Hz, 2H), 3.16 (s, 3H), 3.17(t, J=9.0 Hz, 2H), 3.46(t, J=6.0 Hz, 4H), 3.81(t, J=6.0 Hz, 2H), 4.41 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.75 (d, J=12 Hz, 2H), 6.80 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.19 (s, 1H), 7.32 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.51 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.28 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.38(d, J=9.0 Hz, 2H).
λmax(ε)(CH2Cl2)=633 nm (1.59x105).MALDITOFMS(no matrix): m/e 693.14([M+1]+).
FT-IR (KBr):2216(CN), 2180(CN), 1726(C=O), 1610, 1585 cm-1. mp : 217℃(decomp).
Elemental analysis: Calcd for C42H40N6O2: C 72.81, H 5.82, N 12.13%; Found C 72.66, H 6.22, N 13.37%.
【0045】
SQ2T :収率9.6%. 1H-NMR(CDCl3): δ1.01(t, J=9.0 Hz, 6H), 1.39 (m, 10H), 1.70 (m, 8H), 2.67(t, J=6.0 Hz, 2H), 3.19 (m, 5H), 3.49(t, J=6.0 Hz, 6H), 4.14 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.75 (d, J=9 Hz, 2H), 6.80 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.21 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.26(d, J=9.0 Hz, 2H).13C-NMR(CDCl3): δ13.83, 20.25, 25.25, 25.76, 26.14, 28.16, 28.38, 29.66, 38.94, 51.42, 52.63, 65.22, 112.83, 113.15, 119.39, 119.54, 132.97, 133.52, 154.16, 154.47, 171.04, 182.97, 186.26, 187.19.λmax(ε)(CH2Cl2)=640 nm (2.90x105). MALDITOFMS(no matrix): m/e 763.37([M+1]+).FT-IR (KBr): 2215(CN), 2179(CN), 1732(C=O), 1615, 1586 cm-1. mp: 122℃(decomp). Elemental analysis: Calcd for C47H50N6O4: C 73.99, H 6.61, N 11.02%; Found C 73.13, H 6.64, N10.68%.
【0046】
SQ3T:収率12%.1H-NMR(CDCl3): δ1.00(t, J=9.0 Hz, 6H), 1.37 (m, 20H), 1.68 (m, 8H), 2.72(br s, 2H), 3.19 (s, 3H), 3.50(m, 6H), 4.09 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.75 (d, J=6 Hz, 2H), 6.78 (d, J=6.0 Hz, 2H), 8.25 (d, J=6.0 Hz, 2H), 8.28(d, J=6.0 Hz, 2H). 13C-NMR(CDCl3): δ13.85, 20.25, 24.95, 25.63, 25.66, 26.78, 27.18, 28.47, 29.09, 29.11, 29.13, 29.26, 29.49, 29.63, 29.71, 33.97, 38.92, 49.16, 51.37, 52.97, 65.49, 112.80, 112.88, 119.41, 119.65, 133.11, 133.42, 153.97, 154.38, 171.21, 183.17, 186.65, 187.34.λmax(ε)(CH2Cl2)=639 nm (2.64x105). MALDITOFMS(no matrix): m/e 833.46([M+1]+). FT-IR (KBr): 2214(CN), 2178(CN), 1731(C=O), 1616, 1587 cm-1. mp: 155℃(decomp). Elemental analysis: Calcd for C52H60N6O4: C 74.97, H 7.26, N10.09%; Found 74.52, H 7.65, N10.11%.
【0047】
実施例2
スクアリリウム-テトラシアノアントラキノンジメタン系色素の合成

【0048】
文献(R. Gomez et al., J. Org. Chem., 65, 7566-7574 (2000))に従って合成したテトラシアノアントラキノンジメタン誘導体1(86.9 mg, 0.20 mmol)と水溶性カルボジイミド塩酸塩、すなわち、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC-HCl) (38.3 mg, 0.20 mmol)、DMAP(24.4mg, 0.20 mmol)の脱水CH2Cl2溶液(4mL)を室温にて30分間撹拌した。その後、スクアリリウム色素SQ1(86.9mg, 0.20mmol)を加え、1時間撹拌した。反応液をそのままチャージし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1回目:MeOH/CH2Cl2=6/94、2回目:MeOH/CH2Cl2=4/96)で精製した。粗体をCHCl3 / CH3CNにて再結晶し、深緑色結晶のSQ1AQ 111mgを得た。
【0049】
SQ1AQ: 収率65%.1H-NMR(d6-DMSO): δ0.92 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.34 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.56 (quintet, J=6.0 Hz, 4H), 2.53 (t, J=6.0 Hz, 2H), 2.61 (t, J=6.0 Hz, 2H), 3.11 (s, 3H), 3.50 (t, J=9.0 Hz, 4H), 3.80 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.25 (t, J=6.0 Hz, 2H), 5.24 (s, 2H), 6.92 (d, J=6.0 Hz, 2H), 6.95 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.76 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.83 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.84 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.08 (d, J=9.0 Hz, 4H), 8.17 (d, J=6.0 Hz, 2H), 8.23 (m, 2H).13C-NMR(d6-DMSO): δ13.72, 19.48, 28.41, 28.55, 28.83, 29.21, 38.75, 49.87, 50.20, 50.43, 61.52, 64.26, 82.94, 83.26, 110.67, 112.96, 113.20, 113.90, 113.98, 118.35, 119.10, 125.52, 127.32, 127.40, 127.45, 129.40, 130.01, 130.05, 130.33, 130.60, 131.13, 132.08, 132.16, 140.92, 153.74, 153.90, 159.58, 159.61, 171.54, 171.75, 181.62, 184.84, 186.93.λmax(ε)(DMSO)=651 nm (1.73x105). MALDITOFMS(no matrix): m/e 850.28(M+). FT-IR (KBr):3458, 2957, 2927, 2221, 1733, 1610, 1586, 1394, 1356, 1175, 783.cm-1. mp: 217-220℃.Elemental analysis: Calcd for C52H46N6O6+H2O: C, 71.87; H, 5.57; N,9.67 %. Found; C, 72.23; H, 5.29; N, 9.62 %.
【0050】
実施例3

【0051】
(1)末端にカルボキシル基を有するスクアリリウム系色素(SQ1SAおよび SQSA(a)-SQSA(d))の合成
【0052】
スキーム3に示すように、はじめに、末端にカルボキシル基を有する色素SQ1SAを合成した。アルゴン雰囲気下、スクアリリウム系色素SQ1 (0.435 g,1.00 mmol) の脱水CH2Cl2溶液(50mL)に、コハク酸無水物 (0.80 g, 8.00 mmol)とDMAP (0.977 g, 8.00 mmol)、ピリジン(0.791 g, 10.0mmol)を順に加えた。室温にて3時間撹拌後、氷水に加えCHCl3にて分液した。有機層を水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH /CH2Cl2=5/95)で精製した。粗体をCHCl3 /CH3CNにて再結晶し、末端にカルボキシル基を有する色素SQ1SA(0.178 g)を得た。
同様にして、対応するセミスクアリン酸から末端にカルボキシル基を有する種々のスクアリリウム系色素SQSA(a)-(d)を合成した。
【0053】
SQ1SA:収率 33%.1H-NMR(DMSO): δ0.93(t, J=6.0 Hz, 6H), 1.36 (m, 4H), 1.58 (m, 4H), 2.45 (s, 4H), 3.16(s, 3H), 3.52(t, J=6.0 Hz, 4H), 3.83 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.27 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.98 (t, J=6.0 Hz, 4H), 8.12 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.14(d, J=9.0 Hz, 2H), 12.2 (br, 1H).13C-NMR(DMSO): δ13.72, 19.48, 28.51, 28.67, 29.21, 38.91, 50.31, 50.42, 61.41, 112.98, 113.24, 118.38, 119.11, 131.15, 132.10, 153.76, 153.87, 172.03, 173.28, 181.63, 184.93, 187.02.λmax(ε)(DMSO)=651 nm (2.42x105). MALDITOFMS(no matrix): m/e 534.30(M+). FT-IR (KBr): 3451, 2956, 2927, 1733, 1593, 1388, 1360, 1187, 786 cm-1. mp: 211-213℃. Elemental analysis: Calcd for C31H38N2O6+1/2 H2O: C, 68.49; H, 7.23; N,5.15. Found; C, 68.81; H, 6.96; N, 5.05 %.
【0054】
SQSA(a):収率 65%. 1H-NMR(DMSO): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.35 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.55 (m, 4H), 1.72 (s, 6H), 2.29 (s, 4H), 3.40 (m, 4H), 4.50 (br, 2H), 4.60 (br, 2H), 6.13 (s, 1H), 6.81 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.33 (t, J=9.0 Hz, 1H), 7.44 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.56 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.63 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.03 (d, J=9.0 Hz, 2H), 12.08 (br, 1H).
【0055】
SQSA(b):収率 39%.1H-NMR(DMSO): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.33 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.53 (m, 4H), 2.36 (s, 4H), 3.38 (m, 4H), 4.59 (t, J=3.0 Hz, 2H), 5.05 (br, 2H), 6.30 (s, 1H), 6.74 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.65 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.90 (d, J=9.0, 2H), 7.90 (m, 1H), 8.01 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.20 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.38 (d, J=12.0 Hz, 1H), 9.58 (d, J=9.0 Hz, 1H), 11.22 (br, 1H).
【0056】
SQSA(c):収率 72%. 1H-NMR(CDCl3): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.34 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.54 (m, 4H), 2.32 (s, 4H), 4.48 (br, 2H), 4.89 (br, 2H), 6.38 (s, 1H), 6.74 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.51 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.64 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.90 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.92 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.16 (d, J=9.0 Hz, 1H), 12.1 (br, 1H).
【0057】
SQSA(d):収率 54%.1H-NMR(DMSO): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.34 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.53 (quintet, J=6.0 Hz, 4H), 2.10 (quintet, J=6.0 Hz, 2H), 3.32 (s, 4H), 3.36 (t, J=6.0 Hz, 4H), 4.18 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.63 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.38 (s, 1H), 6.74 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.52 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.65 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.89 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.93 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.18 (d, J=6.0 Hz, 1H).
【0058】
(2)末端に水酸基を有するスクアリリウム-テトラシアノアントラキノンジメタン系色素(SQ1AQHおよびSQAQH(a)-(d))の合成
上述のSQ1SA (53.4 mg, 0.10 mmol)とWSC-HCl(19.2 mg, 0.10mmol)、DMAP (12.2mg, 0.10 mmol)のTHF溶液(4mL)を室温にて20分間撹拌した。その後、文献(P. Miguel, et al., J. Mater. Chem., 8(1), 71-76 (1998))にしたがって合成した2,6-ジヒドロキシ-11,11,12,12-テトラシアノ-9,10-アントラキノンジメタン2 (33.6 mg , 0.10mmol)を加え、15時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2=2/98)で精製した。CH3CNを加え再結晶化し、青銅色結晶のSQ1AQH 46mgを得た。
同様にして、対応する複素環成分を有するスクアリリウム-テトラシアノアントラキノンジメタン系色素SQAQH(a)-(d)をエステル化反応により得た。
【0059】
SQ1AQH:収率53%, 1H-NMR(DMSO): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.36 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.58 (m, 4H), 2.65 (t, J=6.0 Hz, 2H), 2.87 (t, J=6.0 Hz, 2H), 3.15 (s, 3H), 3.52 (t, J=6.0 Hz, 2H), 3.86 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.32 (br s, 2H), 6.96 (d, J=6 Hz, 2H), 6.99 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.20 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.56 (dd, J=3.0 & 9.0 Hz, 1H), 7.62(s, 1H), 7.92 (d, J=3.0 Hz, 1H), 8.10 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.11 (m, 1H), 8.13 (d, J=9.0 Hz, 2H), 8.24 (d, J=9.0 Hz, 2H), 11.3 (br s, 1H). 13C-NMR(DMSO): δ13.73, 19.49, 28.60, 28.73, 29.22, 50.25, 50.44, 61.68, 80.53, 83.03, 113.00, 113.25, 113.85, 114.09, 114.22, 114.42, 118.37, 118.84, 119.11, 120.36, 120.46, 125.09, 127.67, 129.17, 129.96, 131.12, 132.13, 132.34, 132.38, 152.27, 153.79, 153.90, 158.85, 159.26, 160.98, 170.38, 171.63, 181.62, 184.84, 187.06.λmax(ε)(DMSO)=651 nm (2.11x105).MALDITOFMS(no matrix): m/e 852.50(M+). FT-IR (KBr): 3435, 2958, 2928, 2224, 1587, 1384, 1361, 1179, 785 cm-1. mp : 235℃(decomp). Elemental analysis: Calcd for C51H44N6O7+ H2O: C, 70.33; H, 5.32; N,9.65. Found; C, 70.53; H, 5.19, N, 9.42 %.
【0060】
SQAQH(a): 収率13%.1H-NMR(DMSO): δ0.98 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.39 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.61 (m, 4H), 1.84 (s, 6H), 2.66 (br, 2H), 2.85 (br, 2H), 3.41 (t, J=9.0 Hz, 4H), 4.56 (br, 4H), 6.28 (s, 1H), 6.74 (d, J=12.0 Hz, 2H), 7.06 (dd, J=9.0 Hz & J=3.0 Hz, 1H), 7.20 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.30 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.38-7.45 (m, 3H), 7.68 (s, 1H), 7.85 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.05-8.08 (m, 2H), 8.27 (d, J=9.0 Hz, 2H), 12.92 (br, 1H).λmax(ε)(CHCl3)=637 nm (2.1x105).
【0061】
SQAQH(b):収率11%. 1H-NMR(DMSO): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.33 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.51 (m, 4H), 2.59 (t, J=6.0 Hz, 2H), 2.82 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.64 (br, 2H), 5.07 (br, 2H), 6.35 (s, 1H), 6.71 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.18 (dd, J=9.0 Hz & J=3.0 Hz, 1H), 7.49 (dd, J=9.0 Hz & J=3.0 Hz, 1H), 7.60-7.65 (m, 2H), 7.87-7.97 (m, 5H), 8.10 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.20 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.22 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.29 (d, J=9.0 Hz, 1H), 9.54 (d, J=9.0 Hz, 1H), 11.29 (s, 1H).λmax(ε)(CHCl3)=673 nm (9.4x104).
【0062】
SQAQH(c): 収率16%. 1H-NMR(DMSO): δ0.92 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.35 (m, 4H), 1.53 (m, 4H), 2.51 (br, 2H), 2.77 (m, 2H), 3.30 (m, 4H), 4.52 (br, 2H), 4.92 (br, 2H), 6.42 (s, 1H), 6.71 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.18 (dd, J=9.0 Hz & J=3.0 Hz, 1H), 7.45-7.53 (m, 2H), 7.60-7.62 (m, 2H), 7.86-7.94 (m, 4H), 8.07 (d, J=3.0 Hz, 1H), 8.12 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.22 (d, J=9.0 Hz, 1H), 11.28(s, 1H).λmax(ε)(CHCl3)=640 nm (1.5x105).
【0063】
SQAQH(d):収率7%. 1H-NMR(DMSO): δ0.92 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.33 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.52 (quintet, J=6.0 Hz, 4H), 2.15 (m, 2H), 2.71 (t, J=6.0 Hz, 2H), 2.92 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.17 (t, J=6.0 Hz, 2H), 4.66 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.34 (s, 1H), 6.70 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.17 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.47 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.57-7.62 (m, 3H), 7.86 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.89 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.93 (d, J=3.0 Hz, 1H), 8.08 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.15 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.24 (d, J=6.0 Hz, 1H).λmax(ε)(CHCl3)=636 nm (1.3x105).
【0064】
実施例4

【0065】
スキーム4に示すように、末端にカルボキシル基を有するベンゾチアゾール系スクアリリウム色素SQAからも同様な反応でスクアリリウム-テトラシアノアントラキノンジメタン系色素が得られる。色素SQA(0.156 g, 0.30mmol)とDCC (74.5 mg, 0.36mmol)、の脱水THF溶液(120mL)を室温にて30分間撹拌した。その後、2 (0.101 g, 0.30mmol)を加え、室温にて19時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl3=1/40)で精製した。粗体をクロロホルムにて懸濁洗浄後、MeOH&CH3CN溶液から再結し、赤胴色結晶の色素SQAQH(e) 43 mgを得た。
【0066】
SQAQH(e): 収率17%. 1H-NMR(DMSO): δ0.93 (t, J=6.0 Hz, 6H), 1.34 (sextet, J=6.0 Hz, 4H), 1.53 (quintet, J=6.0 Hz, 4H), 2.14 (t, J=6.0 Hz, 2H), 2.98 (t, J=6.0 Hz, 2H), 3.36 (t, J=6.0 Hz, 4H), 4.66 (t, J=6.0 Hz, 2H), 6.39 (s, 1H), 6.74 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.19 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.51 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.62 (d, J=3.0 Hz, 1H), 7.65 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.64 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.89 (d, J=6.0 Hz, 2H), 7.97 (d, J=6.0 Hz, 2H), 8.01 (d, J=2.0 Hz, 1H), 8.10 (d, J=9.0 Hz, 1H), 8.17 (d, J=6.0 Hz, 1H), 8.27 (d, J=6.0 Hz, 1H), 11.28 (br, 1H).λmax(ε)(CHCl3)=636 nm (1.4x105).
【0067】
応用例1
光電変換効率の測定
セルの調整
FTO(フッ素ドープ酸化スズ)(表面抵抗は5Ω/□、日本板硝子製FTO−SOLAR)導電性ガラスに酸化チタン分散液(触媒化成製PST-18NR)を繰り返し(スクリーン印刷機で)5x5 mmの面積に塗布し、125〜500℃で焼成して半導体粒子を約12μmの膜厚で積層した導電性基板を作製した。この基板を、所定の色素を含む液(色素濃度0.12m M、ケノデオキシコール酸6mM, 溶媒t-BuOH/アセトニトリルの混合溶媒)に24時間浸漬し、溶液から取り出した後、アセトニトリルで洗浄後、自然乾燥させ、色素吸着基板を得た。次に5x5 mmの照射面積を有するスペーサー(テフロン(登録商標))を設置後、電解液(溶媒:アセトニトリル/塩化メチレンまたはクロロホルム(v/v=1/1)、電解質:ヨウ素0.018M、ヨウ化リチウム0.07M、ヨウ化1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム0.24M)を含浸させた。最後に、対極である白金蒸着ガラスを重ね合わせ、有機太陽電池セルを作製した。
【0068】
変換効率の測定
前記(1)で作製した照射面積が0.25cm2である有機太陽電池セル特性について、分光計器製分光感度測定装置CEP−2000型を用いてI−V測定からそれぞれの変換効率の最大値を測定した。AM1.5、100mW/cm2の擬似太陽光照射下における短絡電流、開放電圧、形状因子、変換効率を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の色素は、光電変換素子において使用でき、光電気化学電池(特に、太陽電池)に有用である。光電気化学電池は、湿式光電気化学電池及び乾式光電気化学電池のいずれであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセプター部位が少なくとも2つのシアノ基またはニトロ基を有するキノンジメタン基またはアントラキノンジメタン基である化合物からなるドナー-アクセプター型色素。
【請求項2】
アクセプター部位が4つのシアノ基またはニトロ基を有する請求項1に記載のドナー-アクセプター型色素。
【請求項3】
アクセプター部位がテトラシアノキノンジメタン基、テトラニトロキノンジメタン基、テトラシアノアントラキノンジメタン基またはテトラニトロアントラキノンジメタン基である請求項1または2に記載のドナー-アクセプター型色素。
【請求項4】
アクセプター部位が、水酸基またはカルボキシル基であるアンカー基を有する請求項1〜3のいずれかに記載のドナー-アクセプター型色素。
【請求項5】
ドナー部位が、スクアリリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、1,8−アントラキノン色素、アゾ色素、トリフェニルメタン色素、オキサジン色素、ナフトキノ色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、クマリン系色素である請求項1〜4のいずれかに記載のドナー-アクセプター型色素。
【請求項6】
ドナー部位が、スクアリリウム色素である請求項1〜5のいずれかに記載のドナー-アクセプター型色素。
【請求項7】
ドナー部位のスクアリリウム色素が、式:





[式中、R、R、RおよびRは炭素数1〜20の炭化水素基、
Xは2価の連結基である。]
で示される基である請求項6に記載のドナー-アクセプター型色素。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のドナー-アクセプター型色素を吸着させた半導体微粒子層を有する光電変換素子。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換素子、電荷移動層および対極を有する太陽電池。

【公開番号】特開2010−65069(P2010−65069A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229742(P2008−229742)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000134637)株式会社ナード研究所 (31)
【Fターム(参考)】