説明

ドライエッチング装置及びドライエッチング方法

【課題】ガス供給系の簡略化を図るとともに、エッチング形状の異方性を向上することができるドライエッチング装置及びドライエッチング方法を提供する。
【解決手段】酸化ケイ素膜を有する基板Sbを収容する処理室12と、高周波電力が供給されるとともに誘電体を介して基板Sbと接触する基板電極ステージ20と、基板電極ステージ20上に直接接触した状態で配置されるカーボンリング26と、処理室12に、四フッ化炭素と不活性ガスとからなるエッチングガスを供給するガス供給系15と、エッチングガスを誘導結合によりプラズマ化する高周波アンテナ30及び高周波電源31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ケイ素膜を処理対象とするドライエッチング装置及びドライエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の配線や素子間を電気的に絶縁する絶縁膜の材料として、酸化ケイ素(SiO)が使用されている。この酸化ケイ素膜をドライエッチングするガスとしては、C、C、C、C等といったフッ化炭素系ガス、又はCHF、CH等といったフッ化メタン系のガスが多用されている。
【0003】
しかし上記したガスのみでは、絶縁膜のエッチングレートとレジストマスクのエッチングレートとの比で表される選択比を良好に保ちつつ、エッチング形状の異方性(垂直性)を向上させることが難しい。このため、C及びCのうち少なくとも一方と、He、Ne、Ar、Xe、Kr、O、COといった併用ガスの少なくとも一つとを混合し、選択比とエッチング形状の異方性との両立を図る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−044740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ガスを3種類以上混合する場合には、その分、各ガスを処理室へ供給するガス供給源が増えるとともに、処理室へ各種ガスを導くための配管も複雑化する。また、C、C、COといったガスを用いる場合には、危険性又は有害性の観点から漏洩検知器が必要となり、コスト高は否めない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス供給系の簡略化を図るとともに、エッチング形状の異方性を向上することができるドライエッチング装置及びドライエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、酸化ケイ素膜を有する基板を収容する処理室と、高周波電力が供給されるとともに誘電体を介して前記基板と接触する基板電極と、前記基板電極上に直接接触した状態で配置されるカーボン材と、前記処理室に、四フッ化炭素と不活性ガスとからなるエッチングガスを供給するガス供給系と、前記エッチングガスを誘導結合によりプラズマ化する誘導結合プラズマ源とを備えることを要旨とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、酸化ケイ素膜をエッチングするドライエッチング方法において、高周波電力が供給される基板電極上にカーボン材を直接接触した状態で設けるとともに、該基板電極上に前記酸化ケイ素膜を有する基板を誘電体を介して載置し、前記基板が収容された処理室に、四フッ化炭素と不活性ガスとからなるエッチングガスを供給し、前記エッチングガスを誘導結合によりプラズマ化することを要旨とする。
【0009】
請求項1及び請求項5に記載の発明によれば、四フッ化炭素及び不活性ガスからなるエッチングガスを用いるので、エッチングに用いられるガスの種類を極力少なくすることができる。また、危険性又は有害性を有さないため、漏洩検知器等の設置が必要ない。さらに、基板電極上にカーボン材を設け、基板電極とカーボン材とを導通させる構成とし、酸化ケイ素膜をエッチングする際に、該カーボン材も同時にエッチングされるようにした。従って、カーボン材がエッチングされることにより生成される炭素系ポリマーを、エッチングにより酸化ケイ素膜に形成されたホールやトレンチの側面に堆積させ、等方的なエッチングを抑制する保護膜として機能させることができる。このため、四フッ化炭素といった炭素の価数が少ないガスを用いても、エッチング形状の異方性を向上することができる。また、基板電極上に、カーボン材を直接接触した状態で配置するので、カーボン材にプラズマ中の正イオンが引き込まれる方向と、基板電極に正イオンが引き込まれる方向とを略同一にすることができる。このため、カーボン材を配設することで、酸化ケイ素膜への異方性エッチングに悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドライエッチング装置において、前記カーボン材は、環状に形成され、前記基板の外周を囲うように前記基板電極上に配置されていることを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、基板の外周を囲んだカーボン材により、ホールやトレンチの異方性を高める効果を基板の面内において均一化することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のドライエッチング装置において、前記カーボン材は、締結部によって前記基板電極に対して固定されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、カーボン材は締結部によって基板電極に固定されているので、カーボン材と基板電極とをより密着させることができる。このため、カーボン材と基板電極との導通状態を安定化することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のドライエッチング装置において、前記カーボン材は、前記基板を載置して前記処理室に搬入されるトレイであることを要旨とする。
請求項4に記載の発明によれば、カーボン材は、基板を載置するトレイを兼ねているため、別途カーボン材を設ける必要がなく、ドライエッチング装置の部材点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のドライエッチング装置の概略図。
【図2】(a)はエッチング前の基板、(b)及び(c)はホールが形成された基板の端面図。
【図3】第2実施形態のドライエッチング装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1に示すように、ドライエッチング装置は、略筒状に形成された真空槽11を有している。真空槽11はアルミニウム等の金属製であって、その内部に基板Sbを収容する処理室12を有している。処理室12は、エッチングガスのプラズマが生成される空間であって、その上部開口は、石英、サファイア等の誘電体から形成された誘電体窓13によって密閉されている。
【0016】
真空槽11には、処理室12に連通する搬送口が設けられ、該搬送口にはゲートバルブが接続されている(いずれも図示略)。エッチングの処理対象となる基板Sbは、搬送口を介して隣室から処理室12内へ搬入されるとともに、処理室12から他の処理室へ搬送される。さらに、真空槽11には、真空槽11内のエッチングガスや大気等の流体を排気する排出口11aが設けられ、該排出口11aには図示しない排気装置が接続されている。また、真空槽11には、処理室12に連通するガス供給部14が設けられている。このガス供給部14には、処理室12にエッチングガスを供給するガス供給系15が接続されている。
【0017】
ガス供給系15は、CF(四フッ化炭素)を供給する第1ガス供給源16と、Arガスからなる不活性ガスを供給する第2ガス供給源17とを備えている。CF及びArガスは、第1ガス供給源16及び第2ガス供給源17から各マスフローコントローラ19によって流量を調節されながら真空槽11へ送出された後、混合された状態で処理室12へ供給される。
【0018】
真空槽11の下部には、基板電極ステージ20が設けられている。基板電極ステージ20は、その上面が平坦に形成され、基板Sbを載置可能となっている。また、基板電極ステージ20は、マッチングボックス21を介して、バイアス用高周波電源22に電気的に接続されている。マッチングボックス21は、処理室12内のプラズマ生成領域とバイアス用高周波電源22から基板Sbまでの伝送路とのインピーダンスの整合を図る整合回路とブロッキングコンデンサとを含んでいる。
【0019】
基板電極ステージ20と真空槽11の底壁部11bとの間には、板状の絶縁板23が設けられ、基板電極ステージ20と真空槽11の底壁部11bとを絶縁するようになっている。また、基板電極ステージ20の周囲には、筒状に形成された絶縁リング24が設けられ、基板電極ステージ20等と真空槽11の側面とを絶縁するようになっている。
【0020】
さらに基板電極ステージ20上には、基板Sbを吸着する静電チャック25が設けられている。静電チャック25は、一対のESC電極25a,25bと、略円盤状の誘電体からなる静電チャックプレート25cとを備えている。ESC電極25a,25bは、静電チャックプレート25c内に配設されている。これらのESC電極25a,25bは、図示しない電源装置に接続されており、一方のESC電極25aには所定のプラス電圧が印加され、他方のESC電極25bには、所定のマイナス電圧が印加される。そして電源装置からESC電極25a、25bに所定の電圧が印加されると、静電チャックプレート25cの表面に電荷が誘起され、基板Sbをその表面に静電吸着するようになっている。
【0021】
また、基板電極ステージ20上には、カーボンリング26が、基板電極ステージ20の表面に直接接触するように設けられ、基板電極ステージ20に対して導通するようになっている。カーボンリング26は、グラッシーカーボン材が望ましい。また、カーボンリング26は、環状に形成され、その内側に静電チャック25を収容可能な収容部26aを有している。さらにカーボンリング26は、その上面が、静電チャック25に吸着された基板Sbの上面とほぼ同じ高さとなるような厚みに形成されている。
【0022】
一方、カーボンリング26を基板電極ステージ20上に載置したのみでは、カーボンリング26と基板電極ステージ20との接触面積が小さい状態である。このため、カーボンリング26は、ボルト等の締結部27によって基板電極ステージ20に固定されることで、基板電極ステージ20に密着する。このようにカーボンリング26と基板電極ステージ20とが密着することで、カーボンリング26と基板電極ステージ20との導通状態を安定化させることができる。このように基板電極ステージ20に固定されたカーボンリング26は、その端面が絶縁リング24によって覆われることで、真空槽11の側面と絶縁されている。
【0023】
また、誘電体窓13の上方には、誘導結合プラズマ源を構成する高周波アンテナ30が、異なる面上であって、真空槽11の中心軸の回りを周回するように積み重ねられている。本実施形態では、高周波アンテナ30は、平面視において渦巻き形状をなしている。高周波アンテナ30から突出する入力端子(図示略)には、誘導結合プラズマ源を構成する高周波電源31とマッチングボックス32等が、入力側コンデンサ35を介して並列に接続されている。
【0024】
高周波電源31は、処理室12にプラズマを生成するための高周波電力、例えば13.56MHzの高周波電力を出力する。マッチングボックス32は、負荷となる上記処理室12内のガスと、高周波アンテナ30を含む高周波電源31から真空槽11までの伝送路とのインピーダンスの整合を図る。入力側コンデンサ35は、容量の変更が可能ないわゆる可変コンデンサであって、例えば10pF〜100pFの範囲で任意に静電容量を変更する。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。図2(a)に示すように、基板Sbは、ケイ素(シリコン)からなる下地膜Sb1と、下地膜Sb1に積層された酸化ケイ素膜Sb2と、酸化ケイ素膜Sb2上に積層されたレジストマスクSb3とを有している。レジストマスクSb3は、ホール(又はトレンチ)が形成される領域である被エッチング領域のみが露出する開口を有している。
【0026】
上記したドライエッチング装置を用いてエッチング処理が実施される際には、まず基板Sbが図示しないアームに固定される。また、ドライエッチング装置の上記搬送口に接続する上記ゲートバルブが開弁されるとともに、上記アームが水平移動され、上記搬送口を介して基板Sbが処理室12に搬入される。そして、上記アームが下降されて、基板Sbが静電チャックプレート25c上であって、カーボンリング26の収容部26aに配置される。さらに、上記アームが処理室12から引き抜かれて、上記ゲートバルブが閉じられる。またESC電極25bに所定の電圧が印加されて、静電チャックプレート25c上に電荷が誘起されることで、静電チャックプレート25cに基板Sbが静電吸着される。
【0027】
次いで、ガス供給部14を介して、処理室12内に、CFガスとArガスとが供給される。また、排出口11aに接続された上記排気装置の駆動により、真空槽11内がプラズマエッチング処理の条件に応じた圧力とされる。このエッチングガスの供給と、上記排気装置による真空槽11内の排気は、プラズマエッチング処理の実施中にわたり継続されるものである。
【0028】
また、高周波電源31から、例えば13.56MHzの高周波電力が、マッチングボックス32及び入力側コンデンサ35を介して高周波アンテナ30に供給される。そして、高周波アンテナ30から出力される高周波電力が、誘電体窓13を介して処理室12に伝播され、誘導電場が生成される。そして、この誘導電場の生成により、エッチングガスを原料とするプラズマが生成される。
【0029】
そして、基板電極ステージ20にバイアス用の高周波電力が供給されると、処理室12に生成されたプラズマと基板Sbとの間に直流電圧が発生する。その結果、処理室12内に存在するプラズマ中のCFx(x=1〜3)等の正イオン、CFxラジカル、Fラジカル等の活性種が基板Sbに到達して、基板Sbをエッチングする。正イオンは、基板Sbの上面に対してほぼ垂直に引き込まれ、主に異方性エッチングに寄与する。このとき、プラズマ中のCFxと、酸化ケイ素とが反応して、SiF、COF等の揮発性反応生成物や、CxHyFz(x、y、zは自然数)等の炭素系ポリマーが生成される。この炭素系ポリマーは、エッチングにより基板Sbに形成されたホールの側面に堆積し、基板Sbの厚さ方向に対して略垂直な方向にエッチングが進行する、いわゆる等方的なエッチングを抑制する保護膜として機能する。こうして、基板Sbの所定領域が、主にその垂直方向、厚さ方向に沿ってエッチングされる。
【0030】
またカーボンリング26は、基板電極ステージ20と導通しているため、カーボンリング26も、処理室12内に生成されたプラズマ中の活性種によりエッチングされる。この際、異方性エッチングに寄与する正イオンはカーボンリング26に対して垂直に引き込まれる。即ち、カーボンリング26に対する正イオンの移動方向は、基板Sbに対して引き込まれる正イオンの移動方向と略同一となる。
【0031】
一方、カーボン材が、本実施形態とは異なる位置であって、真空槽11の側面に沿って設けられ、且つ処理室12の中心側に向けて配置される上記カーボン材の表面が基板Sbの上面に対して略直交した場合には、基板Sbと基板電極ステージ20との間に発生する電圧に略直交する方向に直流電圧が発生する。このため、基板Sbに垂直に引き込まれる正イオンも、真空槽11の側面に沿って設けられた上記カーボン材との間で生成された直流電圧によって影響を受けて、本来の移動方向からずれる可能性がある。
【0032】
これに対し、本実施形態のカーボンリング26は、基板電極ステージ20上に固定されているため、上述したようにカーボンリング26に引き込まれる正イオンの移動方向は、基板Sbに引き込まれる正イオンの移動方向とは略同一である。このため、基板Sbに引き込まれる正イオンの移動方向に悪影響を与えないため、カーボンリング26が設けられたことによる基板Sbに形成されるホールHの垂直性の低下を抑制することができる。
【0033】
またプラズマ中のCFx等の活性種とカーボンリング26との反応により、炭素系ポリマーが形成される。この炭素系ポリマーは、酸化ケイ素膜Sb2のエッチングにより形成された炭素系ポリマーと同様に、図2(b)に示すように、酸化ケイ素膜Sb2に形成されたホールHの側面や底面に堆積し、等方性エッチングを抑制する保護膜Fを形成する。
【0034】
このように保護膜Fの供給源に、固体からなるカーボンリング26を加えることで、炭素系ポリマーをホールHの側面に効率よく堆積することができる。即ち、保護膜Fの供給源をエッチングガス中の炭素系ガスのみとした場合、炭素系ガスのうちプラズマ化して酸化ケイ素膜Sb2と反応するガスは全体の数%であるため、最終的に保護膜Fの形成に寄与する炭素系ガスは、処理室12に供給される炭素系ガスのうち僅かであって、保護膜Fを形成するための寄与率が低い。一方、カーボンリング26の場合には、カーボンリング26中の炭素原子とプラズマ中の活性種とが反応した分が、保護膜Fの形成に寄与することができるため、その寄与率が高い。
【0035】
また、CFよりも炭素の価数が多いガスを単数又は複数用いた場合、プラズマ中の炭素化合物や、エッチングにより副次的に生成された炭素化合物が真空槽11の側壁等に堆積してしまうが、本実施形態では、処理室12内に充満する混合ガスは、炭素系ガスとしてはCFのみを含有する組成であるため、真空槽11の側壁等に堆積する付着物の量を軽減することができる。また、カーボンリング26は基板周辺のみに配置されるため、付着物の量を最小限に抑えることができる。
【0036】
このようなエッチングを実施する際、CFガスは、1sccm以上20sccm以下の流量とすることが好ましい。1sccm未満となると、エッチングレート及びレジストマスクSb3に対する選択比が低下し、20sccm超となると、ホールHの側面に堆積するフッ化炭素化合物の堆積量が過多となる。また、Arガスは、80sccm以上100sccm以下が好ましい。
【0037】
また、好適なエッチングレート及び選択比を維持し、且つエッチング形状の異方性を向上するためには、処理室12内の圧力は、1.0Pa以下に調整することが好ましく、アンテナパワーは、300W以上900W以下が好ましい。さらにバイアス用高周波電力は、200W以上600W以下が好ましい。
【0038】
そして図2(c)に示すように、ホールHが下地膜Sb1に到達すると、エッチング処理を終了する。そして、ホールHの側面に形成された保護膜Fは、レジストマスクSb3を除去する工程で除去される。
【0039】
[実施例]
次に、実施例及び比較例を挙げて、上記実施形態について具体的に説明する。
上記したドライエッチング装置を用いて、以下の条件でエッチングを行った。基材上に、ケイ素(シリコン)からなる下地膜を形成し、該下地膜の上に酸化ケイ素膜を形成した。さらに、酸化ケイ素膜の上にOFPR800(東京応化製)からなるレジストマスクを形成した。そして基板Sbに対して、以下の条件でエッチングを実施し、複数のホールHを形成した。
【0040】
・エッチングガス Ar:CF
・エッチングガス流量比 87sccm:3sccm
・真空槽内の圧力 0.4Pa
・アンテナパワー 450W
・バイアス用高周波電力 300W
このとき、酸化ケイ素膜のエッチングレートは、140nm/min、レジストマスクに対する選択比は5であった。また、ホールHの側面と底面とがなすテーパ角θ(図2(c)参照)を測定したところ、いずれのテーパ角θも88°以上89°以下の範囲内となり、ほぼ垂直であった。
【0041】
[比較例]
上記したドライエッチング装置のうち、基板Sbの周囲に配設されるカーボンリング26を省略した装置を用いて、実施例1と同様な条件でエッチングを行い、複数のホールHを形成した。尚、CFのみでは、ホールHの側面に保護膜Fが形成されにくいため、エッチングガスの組成を以下のように構成した。
【0042】
・エッチングガス Ar:C:CH
このとき、酸化ケイ素膜のエッチングレートは、270nm/min、レジストマスクに対する選択比は4であった。また、各ホールHのテーパ角θは、78°以上82°以下の範囲内となり、実施例よりもホールHの垂直性が低下した。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)酸化ケイ素膜Sb2を有する基板Sbをエッチングする際に、四フッ化炭素及び不活性ガスからなるエッチングガスを用いるため、エッチングに用いられるガス種を極力少なくし、ガス供給源の数の増加、及び配管の複雑化を抑制することができる。また、上記エッチングガスは、危険性又は有害性を有さないため、漏洩検知器等の設置が必要ない。また、ドライエッチング装置を、基板電極ステージ20上にカーボンリング26を設ける構成とし、酸化ケイ素膜Sb2をエッチングする際に、該カーボンリング26が同時にエッチングされるようにした。従って、カーボンリング26がエッチングされることにより生成される炭素系ポリマーを、酸化ケイ素膜Sb2に形成されたホールHの側面に堆積させ、保護膜Fとして機能させることができる。このため、炭素系のガスとして、四フッ化炭素といった炭素の価数が少ないガスのみを使用しても、カーボンリング26が同時にエッチングされることで、ホールHの側面に十分な量の炭素系ポリマーを堆積させることができるため、エッチング形状の異方性を向上することができる。また、基板電極ステージ20上に、カーボンリング26を直接接触した状態で配置し導通させるため、カーボンリング26に対しプラズマ中の正イオンが引き込まれる方向と、基板電極ステージ20に正イオンが引き込まれる方向とを略同一にすることができる。このため、カーボンリング26を配設することで、酸化ケイ素膜Sb2への異方性エッチングに悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0044】
(2)上記実施形態では、カーボンリング26は、環状に形成され、基板Sbの外周を囲うように配置されている。このため、基板Sbに形成されるホールHの異方性を高める効果を、基板Sbの面内において均一化することができる。
【0045】
(3)上記実施形態では、カーボンリング26を、基板電極ステージ20に対し、締結部27によって固定したので、カーボンリング26と基板電極ステージ20とをより密着させることができる。このため、カーボンリング26と基板電極ステージ20との導通状態を安定化し、エッチング形状等の再現性が得られやすいようにすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図3にしたがって説明する。尚、第2実施形態は、第1実施形態のカーボンリングを変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態では、複数の基板Sbを一括して処理するバッチ式のドライエッチング装置である。該ドライエッチング装置は、複数の基板Sbを載置するトレイ40を備えている。このトレイ40は、グラッシーカーボン等のカーボン材からなり、このトレイ40自体が静電チャックプレート25cに静電吸着される。基板Sbは、このトレイ40に所定の間隔を空けて配列され、基板Sbを配列したトレイ40を平面視した際に、基板Sbの四辺がトレイ40によって囲まれるように載置されている。即ち、各基板Sbは、該基板Sbの外周においてトレイ40が露出するように載置されている。
【0048】
基板Sbを処理室12内に搬入する際には、複数の基板Sbを載置したトレイ40を図示しないアームに載せ、該アームを水平移動させて、トレイ40を搬送口を介して処理室12内へ搬入する。そして、トレイ40を基板電極ステージ20の上方まで搬送すると、アームを下降させて、トレイ40を基板電極ステージ20に載置する。そして、アームのみを水平移動させて、処理室12から退出させ、ゲートバルブを閉める。
【0049】
処理室12内に、エッチングガスのプラズマが生成され、且つ基板Sbにバイアス電圧が印加されると、プラズマ中の正イオンは、基板Sbだけでなく、基板Sbと基板Sbの間等を介して露出されたトレイ40にも引き込まれる。トレイ40は、基板Sbと重ねられているため、活性種の移動方向は同一方向になる。このため、トレイ40と基板電極ステージ20とを導通させても、基板Sbに引き込まれる正イオンの移動方向に悪影響を与えない。
【0050】
トレイ40に到達した活性種は、炭素原子と反応して炭素系ポリマーを生成する。この炭素系ポリマーは、基板Sbに形成されたホールHの側面に堆積し、保護膜F(図2(c)参照)として機能する。
【0051】
従って、第2実施形態によれば、第1実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(4)第2実施形態では、複数の基板Sbを載置して処理室12に搬入されるトレイ40を、カーボン材から形成した。従って、複数の基板Sbを処理するバッチ式のドライエッチング装置であっても、基板Sbの周囲にカーボン材を配置することができるため、基板毎のエッチング形状の均一性を向上することができる。また、各基板Sbの周囲にカーボン材を配設する必要が無いので、ドライエッチング装置を簡略化することができる。
【0052】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、不活性ガスをArガスとしたが、He,Ne,Xe,Kr等のガスでもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、基板Sbを、下地膜Sb1、酸化ケイ素膜Sb2、レジストマスクSb3が積層された構成としたが、その他の構成でもよい。
・第1実施形態では、カーボンリング26は、基板Sbを取り囲む環状となるように形成したが、複数の扇状に分割されたカーボン材から環状のカーボンリング26を構成してもよい。
【0054】
・第1実施形態では、カーボンリング26を基板電極ステージ20に固定する締結部として、ボルトを用いたが、他の締結部によって固定してもよい。例えば、カーボンリング26と基板電極ステージ20とに、互いに嵌合する凹凸構造を形成し、該凹凸構造によってカーボンリング26を基板電極ステージ20に固定するようにしてもよい。
【0055】
・第2実施形態では、平板状のトレイ40に複数の基板Sbを載置するようにしたが、トレイ40に各基板Sbを収容するための凹部をそれぞれ設けるようにしてもよい。そしてその凹部に基板Sbを収容して、処理室12に搬入するようにしてもよい。この場合には、トレイ40の上面と基板Sbの上面とを同一面とすることができる。
【符号の説明】
【0056】
11…真空槽、12…処理室、13…誘電体窓、14…ガス供給部、15…ガス供給系、16…第1ガス供給源、17…第2ガス供給源、18…配管、19…マスフローコントローラ、20…基板電極ステージ、21…マッチングボックス、22…バイアス用高周波電源、23…絶縁板、24…絶縁リング、25…静電チャック、25a,25b…ESC電極、26…カーボンリング、27…締結部、30…高周波アンテナ、31…高周波電源、32…マッチングボックス、35…入力側コンデンサ、Sb…基板、Sb2…酸化ケイ素膜、40…トレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素膜を有する基板を収容する処理室と、
高周波電力が供給されるとともに誘電体を介して前記基板と接触する基板電極と、
前記基板電極上に直接接触した状態で配置されるカーボン材と、
前記処理室に、四フッ化炭素と不活性ガスとからなるエッチングガスを供給するガス供給系と、
前記エッチングガスを誘導結合によりプラズマ化する誘導結合プラズマ源とを備えることを特徴とするドライエッチング装置。
【請求項2】
前記カーボン材は、環状に形成され、前記基板の外周を囲うように前記基板電極上に配置されている請求項1に記載のドライエッチング装置。
【請求項3】
前記カーボン材は、締結部によって前記基板電極に対して固定されている請求項2に記載のドライエッチング装置。
【請求項4】
前記カーボン材は、前記基板を載置して前記処理室に搬入されるトレイである請求項1に記載のドライエッチング装置。
【請求項5】
酸化ケイ素膜をエッチングするドライエッチング方法において、
高周波電力が供給される基板電極上にカーボン材を直接接触した状態で設けるとともに、該基板電極上に前記酸化ケイ素膜を有する基板を誘電体を介して載置し、
前記基板が収容された処理室に、四フッ化炭素と不活性ガスとからなるエッチングガスを供給し、前記エッチングガスを誘導結合によりプラズマ化することを特徴とするドライエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−253209(P2012−253209A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124956(P2011−124956)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】