説明

ドライガスシールからのリークガス回収装置

【課題】ドライガスシールの一次シールからリークした可燃性プロセスガスを簡単な装置構成で回収できる廉価で信頼性の高いドライガスシールからのリークガス回収装置を提供する。
【解決手段】ドライガスシールの一次シール11a,11bからリークした可燃性プロセスガスのリークガスライン19a,19b,19をエジェクター20に接続し、該エジェクター20で噴射される高圧ガス源からの高圧ガス中に前記リークした可燃性プロセスガスを吸引・混入させて低圧ガス源へ回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機等流体機械におけるドライガスシールからのリークガス回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(主にメタン)やプロパンガス(LPG)等の環境保全や安全性に問題がある可燃性ガスをプロセスガスとした圧縮機においては、一次シールにドライガスシール(圧縮機から吐出された自己ガスを使用する)が用いられることは良く知られている。
【0003】
これは、環境保全や安全性にさほど問題がないとされてきた二酸化炭素,蒸気及び空気等をプロセスガスとした圧縮機の一次シールに用いられるラビリンスシールよりもリーク量が例えば約1/10程度とはるかに少ないことに因る。
【0004】
そして、従来では、ドライガスシールの一次シールから漏れた少ない量の可燃性リークガスは、ベント配管を通してフレアスタックに運ばれ、燃焼処理されていた。
【0005】
ところが、最近では、環境保全や省資源が喧伝される折、オゾン層破壊につながり、かつ可燃性リークガスの燃焼処理が問題視されるようになった。また、圧縮機ドライガスシールからフレアスタックまで延々ベント配管を専用の配管ラックを用いて施工する必要があり、大掛かりな工事となると共に、施工後においてもベント配管からの可燃性ガスの漏れがないか、日々監視しなければならないという煩雑さもあった。
【0006】
そこで、近年、特許文献1で、ドライガスシールの一次シールから漏洩したプロセスガスの漏洩ガスラインに小型圧縮機及びその吸込側に圧力平衡を保持するクッションタンクを設け、上記小型圧縮機で昇圧されたプロセスガスをプロセスガスラインに戻して回収するようにした回収装置が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−60734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示されたような漏洩ガスの回収装置にあっては、漏洩ガスの燃焼処理を行わずにその大部分を回収することができるので、環境保全や省資源が図れるが、漏洩ガスラインに昇圧用の小型圧縮機及びその吸込側に圧力平衡を保持するクッションタンクを設けるので、システムが大掛かりで複雑となり信頼性に欠けると共に部品点数も増えコストアップを招来するという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、ドライガスシールの一次シールからリークした可燃性プロセスガスを簡単な装置構成で回収できる廉価で信頼性の高いドライガスシールからのリークガス回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる目的を達成するための本発明に係るドライガスシールからのリークガス回収装置は、
ドライガスシールの一次シールからリークした可燃性プロセスガスのリークガスラインをエジェクターに接続し、該エジェクターで噴射される高圧ガス源からの高圧ガス中に前記リークした可燃性プロセスガスを吸引・混入させて低圧ガス源へ回収することを特徴とする。
【0011】
また、
前記高圧ガス源の高圧ガスには、前記可燃性プロセスガスを用いた流体機械から吐出された自己高圧ガスを使用することを特徴とする。
【0012】
また、
前記低圧ガス源の低圧ガスは、自己低圧ガスとして前記流体機械に吸い込まれることを特徴とする。
【0013】
また、
前記高圧ガス源からの高圧ガスラインに、前記リークガスラインの圧力を一定に保持すべく当該リークガスラインの圧力に応動する圧力制御弁を介装したことを特徴とする。
【0014】
また、
前記リークガスラインからは、安全弁を介してフレアスタックに接続されるベント配管が分岐されることを特徴とする。
【0015】
また、
前記高圧ガス源からの高圧ガスラインに、前記エジェクター保護用のフィルタを交換可能に介装したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るドライガスシールからのリークガス回収装置によれば、エジェクターを用いるという簡単な装置構成で可燃性リークガスを回収することができ、ノーフレアあるいはゼロエミッションを実現して環境保全と省資源が図れると共に、廉価で信頼性の高い回収装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す圧縮機ドライガスシールのシステム図である。
【図2】リークガス回収装置の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るドライガスシールからのリークガス回収装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す圧縮機ドライガスシールのシステム図、図2はリークガス回収装置の詳細図である。
【0020】
図1に示すように、天然ガス(主にメタン)やプロパンガス(LPG)等の可燃性ガスをプロセスガスとした圧縮機10において、ドライガスシールの一次シール11a,11bに、圧縮機10から吐出される例えば90.30barG程度のプロセスガスが、一次シールガス供給ライン12,12a,12bを通り、前後差圧に応動して二段に亘って切替(交換)可能なフィルタ(装置)13で不純物が除去された後、圧力制御弁(装置)14により例えば33.44barG程度に降圧されて供され、内側シール室15a,15bに送られる。つまり、内側シール室15a,15bのシール圧力は圧縮機車室16より僅かに高い圧力となるように圧力制御弁(装置)14によって調圧されるのである。
【0021】
内側シール室15a,15bに入ったプロセスガスの一部はシャフトシールラビリンス17a,17bを通って圧縮機車室16に入り、残部は一次シール11a,11bを通って外側シール室18a,18bにリークする。外側シール室18a,18bにリークしたプロセスガスの大部分はリークガスライン19a,19b,19を通り、図示しないオリフィス等で減圧(例えば1.013barG程度)されて後述するエジェクター20に吸引される。
【0022】
また、外側シール室18a,18b内のガスが中間ラビリンス21a,21bを通って室22a,22bに、さらにはベント配管24a,24bを通って大気中に洩れ出さぬよう窒素等の不活性ガスが二次シールガス供給ライン23,23a,23bから中間ラビリンス21a,21bに供給され、この不活性ガスは外側シール室18a,18b内に入ったプロセスガスとともにリークガスライン19,19a,19bを通ってエジェクター20に吸引される。
【0023】
前記エジェクター20では、図2に示すように、圧縮機10から吐出される例えば90.30barG程度の自己高圧ガス(高圧ガス源)が高圧ガスライン27を通って噴射され、この自己高圧ガス中に前述したリークガスをリークガスライン19a,19b,19を通って吸引・混入させて、低圧ガスライン28より圧縮機10に例えば33.09barG程度の自己低圧ガス(低圧ガス源)として圧縮機に吸引・回収される。
【0024】
そして、前記リークガスライン19からは安全弁25を介してフレアスタック26に接続されるベント配管33が分岐される。安全弁25はリークガスライン19の圧力がエジェクター20の汚損等でリークガスの吸引が不可能となって異常に高圧となった時に自動で開きリークガスをフレアスタック26で燃焼処理させるものである。また、安全弁25をバイパスするバイパス管34には手動で開くバイパス弁35が介装される。
【0025】
前記高圧ガスライン27には、前後差圧に応動して二段に亘って切替(交換)可能なフィルタ(装置)29が介装され、プロセスガス中の不純物(粘着性物質や液状物質(ミスト)等)を除去してエジェクター20の汚損等を未然に防止している。
【0026】
さらに、前記高圧ガスライン27の前記フィルタ(装置)29の下流側には、リークガスライン19の圧力を一定に保持してエジェクター20におけるリークガスの良好な吸引作用を奏すべく圧力制御弁30が介装される。つまり、リークガスライン19の圧力を検知する圧力検出器31からの信号が圧力コントローラ32に入力され、該圧力コントローラ32が当該圧力を所定の値に保持するように前記圧力制御弁30を開閉制御するのである。
【0027】
具体的には、高圧ガスライン27を流れるプロセスガスの元圧が変動し、その上昇時には、プロセスガス量が増えリークガスライン19の圧力が下がるので、プロセスガス量を絞りリークガスライン19の圧力を一定に保つ。一方、低圧ガスライン28の圧力上昇時には、プロセスガス量が減りリークガスライン19の圧力が上がるので、プロセスガス量を増やし、リークガスライン19の圧力を一定に保つのである。
【0028】
このようにして本実施例によれば、ドライガスシールの一次シール11a,11bからリークした可燃性プロセスガスのリークガスライン19a,19b,19をエジェクター20に接続し、該エジェクター20で噴射される高圧ガス源からの高圧ガス中に前記リークした可燃性プロセスガスを吸引・混入させて低圧ガス源へ回収するようにしたので、エジェクター20を用いるという簡単な装置構成で可燃性リークガスを効果的に回収することができ、ノーフレアあるいはゼロエミッションを実現して環境保全と省資源が図れると共に、廉価で信頼性の高い回収装置を実現できる。
【0029】
また、前記高圧ガス源の高圧ガスには、可燃性プロセスガスを用いた圧縮機10から吐出された自己高圧ガスを使用するので、昇圧ポンプ等の機器あるいは電力などの駆動源が不要であり、前記低圧ガス源の低圧ガスが自己低圧ガスとして前記圧縮機10に吸い込まれることと相俟って、簡素で効率的な装置となり、より一層廉価で信頼性の高い回収装置を実現できる。
【0030】
また、前記高圧ガス源からの高圧ガスライン27に、リークガスライン19の圧力を一定に保持すべく当該リークガスライン19の圧力に応動する圧力制御弁30を介装したので、エジェクター20におけるリークガスの良好な吸引作用が奏される。
【0031】
また、前記リークガスライン19からは、安全弁25を介してフレアスタック26に接続されるベント配管33が分岐されるので、エジェクター20の汚損等に対する安全性が高められる。
【0032】
また、前記高圧ガス源からの高圧ガスライン27に、エジェクター保護用のフィルタ29を交換可能に介装したので、エジェクター20の汚損等が未然に回避される。
【0033】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で高圧ガス源及び/又は低圧ガス源の変更やプロセスガスの変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るドライガスシールからのリークガス回収装置は、毒性ガスや温室効果ガス等の可燃性ガスを用いた流体機械等に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 圧縮機
11a,11b ドライガスシールの一次シール
12,12a,12b 一次シールガス供給ライン
13 フィルタ(装置)
14 圧力制御弁(装置)
15a,15b 内側シール室
16 圧縮機車室
17a,17b シャフトシールラビリンス
18a,18b 外側シール室
19,19a,19b リークガスライン
20 エジェクター
21a,21b 中間ラビリンス
22a,22b 室
23,23a,23b 二次シールガス供給ライン
24a,24b ベント配管
25 安全弁
26 フレアスタック
27 高圧ガスライン
28 低圧ガスライン
29 フィルタ(装置)
30 圧力制御弁
31 圧力検出器
32 圧力コントローラ
33 ベント配管
34 バイパス管
35 バイパス弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライガスシールの一次シールからリークした可燃性プロセスガスのリークガスラインをエジェクターに接続し、該エジェクターで噴射される高圧ガス源からの高圧ガス中に前記リークした可燃性プロセスガスを吸引・混入させて低圧ガス源へ回収することを特徴とするドライガスシールからのリークガス回収装置。
【請求項2】
前記高圧ガス源の高圧ガスには、前記可燃性プロセスガスを用いた流体機械から吐出された自己高圧ガスを使用することを特徴とする請求項1に記載のドライガスシールからのリークガス回収装置。
【請求項3】
前記低圧ガス源の低圧ガスは、自己低圧ガスとして前記流体機械に吸い込まれることを特徴とする請求項2に記載のドライガスシールからのリークガス回収装置。
【請求項4】
前記高圧ガス源からの高圧ガスラインに、前記リークガスラインの圧力を一定に保持すべく当該リークガスラインの圧力に応動する圧力制御弁を介装したことを特徴とする請求項1,2又は3に記載のドライガスシールからのリークガス回収装置。
【請求項5】
前記リークガスラインからは、安全弁を介してフレアスタックに接続されるベント配管が分岐されることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載のドライガスシールからのリークガス回収装置。
【請求項6】
前記高圧ガス源からの高圧ガスラインに、前記エジェクター保護用のフィルタを交換可能に介装したことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載のドライガスシールからのリークガス回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−52620(P2011−52620A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203211(P2009−203211)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(310010564)三菱重工コンプレッサ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】