説明

ドライバ回路および試験装置

【課題】汎用性の高いデバイスを実現する。
【解決手段】与えられた入力信号に応じた出力信号を出力端から出力するドライバ回路であって、定電圧源と出力端との間に設けられる出力抵抗部と、入力信号に応じて出力端の電圧をスイッチングする出力スイッチ部と、出力抵抗部の抵抗値を切り替える切替部と、を備え、出力抵抗部は、定電圧源と出力端との間にソース−ドレインが接続された出力抵抗用FETを有し、切替部は、出力抵抗用FETのゲート端子に制御電圧を与えて、出力抵抗用FETのソース−ドレイン間を指定された抵抗値に切り替えるドライバ回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ回路および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CML(Current Mode Logic)と呼ばれるドライバ回路が知られている。CMLは、差動の入力信号に応じて互いに逆相でスイッチングする一対のトランジスタと、一対のトランジスタのそれぞれのコレクタを定電圧源にプルアップする一対の抵抗と、一対のトランジスタのエミッタに共通に接続された定電流源とを備える。このようなCMLは、一対のトランジスタのコレクタから出力信号を出力する。
【0003】
CMLにおいて、出力信号の電圧振幅は、トランジスタのコレクタから定電圧源にプルアップされた抵抗の抵抗値と、定電流源の電流値とを乗じた値となる。従って、CMLでは、プルアップ抵抗を大きくするほど、出力信号の電圧振幅を大きくすることができる。
【0004】
また、CMLにおいて、出力信号の論理切替の遷移時間は、プルアップ抵抗の抵抗値と、トランジスタのコレクタに接続された寄生容量の容量値とを乗じた値に比例する。従って、CMLは、プルアップ抵抗を小さくするほど、出力信号の論理切替の遷移時間を短くすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、CMLでは、大振幅動作および高速動作の両者を1つのデバイスで実現するには、プルアップ抵抗の抵抗値を小さくし、且つ、定電流源の電流値を大きくしなければならなかった。しかし、定電流源の電流値を大きくすると、消費電力が大きくなってしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様においては、与えられた入力信号に応じた出力信号を出力端から出力するドライバ回路であって、定電圧源と前記出力端との間に設けられる出力抵抗部と、前記入力信号に応じて前記出力端の電圧をスイッチングする出力スイッチ部と、前記出力抵抗部の抵抗値を切り替える切替部と、を備えるドライバ回路を提供する。また、このドライバ回路を備える試験装置を提供する。
【0007】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係るドライバ回路10の構成を、定電圧源20、出力バッファ22、抵抗24および寄生容量26とともに示す。
【図2】図2は、本実施形態に係る出力抵抗用FET62のゲート電圧に対するオン抵抗の特性の一例を示す。
【図3】図3は、本実施形態の第1変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。
【図4】図4は、本実施形態の第2変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。
【図5】図5は、本実施形態の第3変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。
【図6】図6は、本実施形態の第4変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。
【図7】図7は、本実施形態に係る出力抵抗部42の構成の第1例を示す。
【図8】図8は、本実施形態に係る出力抵抗部42の構成の第2例を示す。
【図9】図9は、本実施形態に係る試験装置110の構成を被試験デバイス200とともに示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明の(一)側面を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係るドライバ回路10の構成を、定電圧源20、出力バッファ22、抵抗24および寄生容量26とともに示す。ドライバ回路10は、差動の入力信号(ポジ側の入力信号およびネガ側の入力信号)が与えられ、与えられた入力信号に応じた出力信号を出力端32から出力する。
【0011】
なお、ドライバ回路10は、差動の出力信号を出力してもよいし、単相の出力信号を出力してもよい。差動の出力信号を出力する場合には、ドライバ回路10は、出力端32からポジ側の出力信号を出力し、差動端34からネガ側の出力信号を出力する。
【0012】
また、ドライバ回路10は、定電圧源20から所定の定電圧が与えられる。また、本例においては、ドライバ回路10は、出力信号を出力バッファ22に与える。出力バッファ22は、抵抗24(例えば50Ωの抵抗)を介して、負荷に出力電圧を供給する。また、ドライバ回路10は、出力端32とグランドとの間に寄生容量26を有する。
【0013】
ドライバ回路10は、出力抵抗部42と、差動抵抗部44と、出力スイッチ部46と、差動スイッチ部48と、定電流源50と、切替部52とを備える。
【0014】
出力抵抗部42は、定電圧源20と出力端32との間に設けられる。出力抵抗部42は、外部からの制御に応じて抵抗値が変化する。
【0015】
本実施形態において、出力抵抗部42は、定電圧源20と出力端32との間にソース−ドレインが接続された出力抵抗用FET(電界効果型トランジスタ)62を有する。出力抵抗用FET62は、ソース−ドレイン間に一定の電流が流されている場合、ゲート電圧に応じてソース−ドレイン間の抵抗値が変化する。
【0016】
差動抵抗部44は、定電圧源20と差動端34との間に設けられる。差動抵抗部44は、外部からの制御に応じて抵抗値が変化する。本実施形態においては、差動抵抗部44は、出力抵抗部42と同一の抵抗値に制御される。
【0017】
本実施形態において、差動抵抗部44は、定電圧源20と差動端34との間にソース−ドレインが接続された差動抵抗用FET64を有する。差動抵抗用FET64は、出力抵抗用FET62と同特性に設計された同種類のFETである。
【0018】
出力スイッチ部46は、入力信号に応じて出力端32の電圧をスイッチングする。本実施形態において、出力スイッチ部46は、ポジ側の入力信号に応じて出力端32と定電流源50との間を接続または切断して、出力抵抗部42を介して定電圧源20と定電流源50との間に流れる電流をスイッチングする。
【0019】
差動スイッチ部48は、入力信号に応じて差動端34の電圧を、出力スイッチ部46と逆相でスイッチングする。本実施形態において、差動スイッチ部48は、ネガ側の入力信号に応じて差動端34と定電流源50との間を接続または切断して、差動抵抗部44を介して定電圧源20と定電流源50との間に流れる電流を、出力スイッチ部46と逆相でスイッチングする。
【0020】
出力スイッチ部46および差動スイッチ部48は、一例として、バイポーラトランジスタであってよい。また、出力スイッチ部46および差動スイッチ部48は、一例として、FETであってもよい。
【0021】
定電流源50は、所定の定電流を流す。本実施形態においては、定電流源50は、出力抵抗部42および差動抵抗部44に流れる電流の合計を一定とする。
【0022】
このようなドライバ回路10は、出力スイッチ部46がオンし、差動スイッチ部48がオフしている場合、出力端32および差動端34の電圧を下式のような電圧とする。なお、Vは、出力端32の電圧を表す。Vは、差動端34の電圧を表す。Iは、定電流源50が流す定電流の電流値を表す。Vccは、定電圧源20から発生される定電圧を表す。Rは、出力抵抗部42の抵抗値を表す。
=Vcc−(I×R)
=Vcc
【0023】
また、ドライバ回路10は、出力スイッチ部46がオフし、差動スイッチ部48がオンしている場合、出力端32および差動端34の電圧を下式のような電圧とする。
=Vcc
=Vcc−(I×R)
【0024】
このように、ドライバ回路10は、出力抵抗部42の抵抗値に定電流源50の電流値を乗じた電圧振幅を有する出力信号を出力することができる。
【0025】
切替部52は、出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値を切り替える。切替部52は、一例として、製造時において、出力抵抗部42および差動抵抗部44のそれぞれを指定された抵抗値に設定する。また、切替部52は、一例として、ユーザの使用時において、出力抵抗部42および差動抵抗部44のそれぞれを、ユーザにより指定された抵抗値に設定してもよい。本実施形態においては、切替部52は、出力抵抗用FET62および差動抵抗用FET64のゲート端子に同一の制御電圧を与えて、出力抵抗用FET62および差動抵抗用FET64のソース−ドレイン間を指定された抵抗値に切り替える。
【0026】
ここで、切替部52は、出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値を大きくすることにより、出力信号の電圧振幅を大きくすることができる。また、切替部52は、出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値を小さくすることにより、出力信号の論理切替の遷移時間を短くすることができる。このように、切替部52は、出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値を切り替えて、当該ドライバ回路10の特性を切り替えることができる。
【0027】
以上のように、ドライバ回路10によれば、定電流源50に流れる電流量を変化させず、且つ、簡単な制御により、出力信号の電圧振幅および出力信号の論理切替の遷移時間を変更することができる。これにより、ドライバ回路10によれば、使用目的に応じて特性を簡単に変更することができる汎用性の高いデバイスを実現することができる。
【0028】
図2は、本実施形態に係る出力抵抗用FET62における、ソース−ドレイン間に一定の電流を流した場合のゲート電圧に対するオン抵抗(ソース−ドレイン間の抵抗)の特性の一例を示す。なお、図2は、ゲート電圧を0から−1のスケール上に表し、縦軸はオン抵抗を0から1のスケール上に表している。
【0029】
図2に示されるように、出力抵抗用FET62は、ゲート電圧に略比例してオン抵抗が変化する。さらに、出力抵抗用FET62は、オン抵抗を約10倍の範囲で変化させることができる。出力抵抗部42は、このような特性の出力抵抗用FET62を有することにより、出力信号の電圧振幅および出力信号の論理切替の遷移時間を約10倍の範囲で変化させることができる。
【0030】
図3は、本実施形態の第1変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。本変形例に係るドライバ回路10は、図1に示されたドライバ回路10と略同一の構成および機能を採るので、図1に示されたドライバ回路10が備える部材と略同一の構成および機能の部材に同一の符号を付け、以下相違点を除き説明を省略する。
【0031】
本変形例に係る切替部52は、リファレンスFET72と、リファレンスFET用定電流源74と、リファレンス抵抗76と、リファレンス抵抗用定電流源78と、制御電圧印加部80とを有する。
【0032】
リファレンスFET72は、定電圧源20とリファレンスFET用定電流源74との間にソース−ドレインが接続される。リファレンスFET72は、出力抵抗用FET62と同特性に設計された同種類のFETである。
【0033】
リファレンスFET用定電流源74は、定電流源50と同一の定電流をリファレンスFET72のソース−ドレイン間に流す。即ち、リファレンスFET用定電流源74は、出力抵抗部42の出力抵抗用FET62および差動抵抗部44の出力抵抗用FET62に流れる電流の合計と同一の電流を、リファレンスFET72のソース−ドレイン間に流す。
【0034】
リファレンス抵抗76は、定電圧源20とリファレンス抵抗用定電流源78との間に接続され、予め定められた抵抗値を有する。リファレンス抵抗76は、一例として、複数の抵抗素子82(例えば、第1の抵抗素子82−1、第2の抵抗素子82−2および第3の抵抗素子82−3)と、複数のヒューズ84(例えば、第1のヒューズ84−1、第2のヒューズ84−2および第3のヒューズ84−3)とを含む。
【0035】
複数の抵抗素子82は、並列に接続される。また、複数の抵抗素子82は、一例として、互いに抵抗値が異なる。複数のヒューズ84のそれぞれは、複数の抵抗素子82のそれぞれに対応して設けられる。複数のヒューズ84のそれぞれは、所定以上の電流が与えられた場合に、対応する抵抗素子82の一方の端子に接続された配線を切断する。
【0036】
このようなリファレンス抵抗76は、複数の抵抗素子82の合成抵抗が指定された抵抗値となるように、製造段階において、複数のヒューズ84のうちの選択された何れかのヒューズ84が切断される。リファレンス抵抗76は、一例として、指定された抵抗値の抵抗素子82のみを残し、他の抵抗素子82に対応するヒューズ84が全て切断される。これにより、リファレンス抵抗76は、製造段階において、指定された抵抗値に設定される。
【0037】
リファレンス抵抗用定電流源78は、定電流源50と同一の定電流をリファレンス抵抗76に流す。即ち、リファレンス抵抗用定電流源78は、出力抵抗部42の出力抵抗用FET62および差動抵抗部44の出力抵抗用FET62に流れる電流の合計と同一の電流を、リファレンス抵抗76に流す。
【0038】
制御電圧印加部80は、リファレンスFET72のソース−ドレイン間の電圧を、リファレンス抵抗76の電圧と一致させる制御電圧を、リファレンスFET72のゲート端子に与える。制御電圧印加部80は、一例として、リファレンスFET72のソース−ドレイン間の電圧とリファレンス抵抗76の両端間の電圧との差を0とするような制御電圧を発生する差動増幅器であってよい。これにより、制御電圧印加部80は、リファレンスFET72のソース−ドレイン間を指定された抵抗値とする制御電圧を、リファレンスFET72のゲート端子に与えることができる。
【0039】
そして、制御電圧印加部80は、このような制御電圧を、更に、出力抵抗用FET62のゲート端子および差動抵抗用FET64のゲート端子に与える。これにより、制御電圧印加部80は、出力抵抗用FET62および差動抵抗用FET64のソース−ドレイン間を、リファレンス抵抗76と同一の抵抗値とすることができる。
【0040】
このように、本変形例に係るドライバ回路10によれば、出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値を、指定された抵抗値に切り替えることができる。
【0041】
図4は、本実施形態の第2変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。本変形例に係るドライバ回路10は、図1に示されたドライバ回路10と略同一の構成および機能を採るので、図1に示されたドライバ回路10が備える部材と略同一の構成および機能の部材に同一の符号を付け、以下相違点を除き説明を省略する。
【0042】
本変形例に係る切替部52は、リファレンスFET72と、リファレンスFET用定電流源74と、制御電圧印加部80と、設定部86とを有する。設定部86は、外部から、出力信号の電圧振幅および出力信号の論理切替の遷移時間が指定される。そして、設定部86は、指定された電圧振幅および論理切替の遷移時間に応じて出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値、並びに、定電流源50が流す電流値を設定する。
【0043】
設定部86は、一例として、制御電圧印加部80に対して設定電圧を与えることにより、出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値を設定する。制御電圧印加部80は、与えられた設定電圧と、リファレンスFET72のソース端子の電圧とを一致させるような制御電圧を出力する。そして、制御電圧印加部80は、出力した制御電圧を、リファレンスFET72、出力抵抗用FET62および差動抵抗用FET64のゲート端子に与える。
【0044】
設定部86は、一例として、複数の電圧振幅および複数の遷移時間の組み合わせ毎に、当該組合せの電圧振幅および遷移時間を実現する出力抵抗部42および差動抵抗部44の抵抗値並びに定電流源50が流す電流値を記述したリストを、予め記憶しておく。設定部86は、外部から電圧振幅および遷移時間の指定を受けると、リストから対応する抵抗値および電流値を選択する。そして、設定部86は、出力抵抗部42および差動抵抗部44を選択した抵抗値に調整するとともに、定電流源50が流す電流を選択した電流値に調整する。
【0045】
このように本変形例に係るドライバ回路10によれば、ユーザの指定に応じた電圧振幅および遷移時間の出力信号を出力することができる。
【0046】
図5は、本実施形態の第3変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。本変形例に係るドライバ回路10は、図1に示されたドライバ回路10と略同一の構成および機能を採るので、図1に示されたドライバ回路10が備える部材と略同一の構成および機能の部材に同一の符号を付け、以下相違点を除き説明を省略する。
【0047】
本変形例に係るドライバ回路10は、出力抵抗部42と、差動抵抗部44と、ビット分割部88と、複数の出力スイッチ部46と、複数の差動スイッチ部48と、複数の定電流源50と、切替部52とを備える。
【0048】
ビット分割部88は、複数のビットにより表される多値の入力信号を外部から受け取る。ビット分割部88は、入力信号を、ビット毎の信号に分割する。図5の例においては、ビット分割部88は、2ビットの値を表す差動の入力信号を、1ビット目の値を表わす差動の信号と、2ビット目の値を表す差動の信号とに分割する。
【0049】
複数の定電流源50は、入力信号のそれぞれのビットに対応して設けられ、それぞれが対応するビットの重みに応じた電流を流す。図5の例においては、1ビット目に対応する第1の定電流源50−1は、Iの電流を流す。また、2ビット目に対応する第2の定電流源50−2は、第1の定電流源50−1が流す電流量の2倍の電流(2×I)の電流を流す。
【0050】
複数の出力スイッチ部46は、入力信号のそれぞれのビットに対応して設けられる。そして、複数の出力スイッチ部46のそれぞれは、対応するビットの値に応じて、出力抵抗部42を介して定電圧源20と対応する定電流源50との間に流れる電流をスイッチングする。
【0051】
図5の例においては、1ビット目に対応する第1の出力スイッチ部46−1は、1ビット目の値を表すポジ側の信号に応じて、第1の定電流源50−1の電流(I)を出力抵抗部42に流すか否かをスイッチングする。また、2ビット目に対応する第2の出力スイッチ部46−2は、2ビット目の値を表すポジ側の信号に応じて、第2の定電流源50−2の電流(2×I)を出力抵抗部42に流すか否かをスイッチングする。
【0052】
複数の差動スイッチ部48は、入力信号のそれぞれのビットに対応して設けられる。そして、複数の差動スイッチ部48のそれぞれは、対応するビットの値に応じて、差動抵抗部44を介して定電圧源20と対応する定電流源50との間に流れる電流を、対応するビットの出力スイッチ部46と逆相でスイッチングする。
【0053】
図5の例においては、1ビット目に対応する第1の差動スイッチ部48−1は、1ビット目の値を表すネガ側の信号に応じて、第1の定電流源50−1の電流(I)を差動抵抗部44に流すか否かをスイッチングする。また、2ビット目に対応する第2の差動スイッチ部48−2は、2ビット目の値を表すネガ側の信号に応じて、第2の定電流源50−2の電流(2×I)を差動抵抗部44に流すか否かをスイッチングする。
【0054】
このような本変形例に係るドライバ回路10によれば、多値の入力信号に応じた出力信号を出力することができる。そして、本変形例に係るドライバ回路10によれば、多値の出力信号の電圧振幅および論理切替の遷移時間を切り替えることができる。
【0055】
図6は、本実施形態の第4変形例に係るドライバ回路10の構成を示す。本変形例に係るドライバ回路10は、図1に示されたドライバ回路10と略同一の構成および機能を採るので、図1に示されたドライバ回路10が備える部材と略同一の構成および機能の部材に同一の符号を付け、以下相違点を除き説明を省略する。
【0056】
本変形例に係るドライバ回路10は、補正部90と、補正用出力スイッチ部92と、補正用差動スイッチ部94と、補正用定電流源96とを更に備える。補正部90は、出力信号を補正するための差動の補正信号を、入力信号に応じて生成する。補正部90は、一例として、入力信号のエッジ成分を抽出して、出力信号の高周波数成分を強調するための差動の補正信号を生成する。
【0057】
補正用定電流源96は、所定の補正電流を流す。補正用出力スイッチ部92は、ポジ側の補正信号に応じて、出力抵抗部42を介して定電圧源20と補正用定電流源96との間に流れる電流をスイッチングする。補正用差動スイッチ部94は、ネガ側の補正信号に応じて、差動抵抗部44を介して定電圧源20と補正用定電流源96との間に流れる電流を、補正用出力スイッチ部92と逆相でスイッチングする。
【0058】
このような本変形例に係るドライバ回路10によれば、補正信号に応じた電圧を加算した出力信号を出力することができる。例えば、本変形例に係るドライバ回路10では、伝送路により減衰してしまう高周波数成分を予め強調した出力信号を出力することができる。
【0059】
図7は、本実施形態に係る出力抵抗部42の構成の第1例を示す。出力抵抗部42は、一例として、出力抵抗用FET62のソース−ドレイン間に対して直列に接続された調整用抵抗102を更に有する構成であってもよい。これにより、出力抵抗部42は、オン抵抗が比較的に小さな出力抵抗用FET62を用いても、出力抵抗部42の全体の抵抗値を大きくすることができる。
【0060】
図8は、本実施形態に係る出力抵抗部42の構成の第2例を示す。出力抵抗部42は、一例として、定電圧源20と出力端32との間にソース−ドレインが並列に接続された複数の出力抵抗用FET62を有する構成であってよい。
【0061】
そして、出力抵抗部42がこのような構成の場合、切替部52は、複数の出力抵抗用FET62のそれぞれのゲート端子に対して、個別に制御電圧を与えて、出力抵抗部42の合成抵抗を指定された抵抗値に切り替える。これにより、出力抵抗部42は、抵抗値の調整範囲を広くすることができる。
【0062】
なお、差動抵抗部44も、図7および図8に示された出力抵抗部42と同様の構成であってよい。また、出力抵抗用FET62および差動抵抗用FET64は、N−MOS型であっても、P−MOS型であってもよい。
【0063】
図9は、本実施形態に係る試験装置110の構成を被試験デバイス200とともに示す。試験装置110は、被試験デバイス200との間で伝送線路220を介して信号を入出力して、被試験デバイス200を試験する。
【0064】
試験装置110は、信号発生部112と、メインドライバ回路114と、レプリカドライバ回路116と、減算部118と、コンパレータ回路120と、判定部122とを備える。信号発生部112は、被試験デバイス200に与える試験信号を発生する。
【0065】
メインドライバ回路114は、試験信号に応じた電圧の出力信号を被試験デバイス200の入出力端子210に与える。ここで、メインドライバ回路114は、図1から図8を参照して説明した本実施形態に係るドライバ回路10であってよい。これにより、メインドライバ回路114は、被試験デバイス200に与える試験信号の電圧振幅を適切に調整することができる。
【0066】
レプリカドライバ回路116は、試験信号に応じた補正信号を出力する。レプリカドライバ回路116は、一例として、メインドライバ回路114から出力される試験信号の電圧振幅の1/2の電圧振幅の補正信号を出力する。ここで、レプリカドライバ回路116は、図1から図8を参照して説明した本実施形態に係るドライバ回路10であってよい。これにより、レプリカドライバ回路116は、補正信号の電圧振幅を適切な値に調整することができる。
【0067】
減算部118は、被試験デバイス200の入出力端子210から出力された出力信号を入力し、入力した出力信号から補正信号を減ずる。コンパレータ回路120は、減算部118から出力された信号の値を取得する。判定部122は、コンパレータ回路120により取得した値を期待値と比較して被試験デバイス200の良否を判定する。
【0068】
このような試験装置110は、被試験デバイス200との間で、所定の伝送遅延を有する伝送線路220を介して信号を入出力する。従って、試験装置110から被試験デバイス200へ試験信号が伝送される期間と、被試験デバイス200から試験装置110へ出力信号が伝送される期間とを短いマージンで切り替えると、コンパレータ回路120の入力端において、試験信号の出力タイミングと出力信号の入力タイミングとが重複する可能性がある。
【0069】
本実施形態に係る試験装置110は、被試験デバイス200から出力された出力信号から、メインドライバ回路114から出力された試験信号の成分を除去した信号をコンパレータ回路120に与えることができる。これにより、このような試験装置110によれば、高速に被試験デバイス200を試験することができる。
【0070】
以上、本発明の(一)側面を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0072】
10 ドライバ回路、20 定電圧源、22 出力バッファ、24 抵抗、26 寄生容量、32 出力端、34 差動端、42 出力抵抗部、44 差動抵抗部、46 出力スイッチ部、48 差動スイッチ部、50 定電流源、52 切替部、62 出力抵抗用FET、64 差動抵抗用FET、72 リファレンスFET、74 リファレンスFET用定電流源、76 リファレンス抵抗、78 リファレンス抵抗用定電流源、80 制御電圧印加部、82 抵抗素子、84 ヒューズ、86 設定部、88 ビット分割部、90 補正部、92 補正用出力スイッチ部、94 補正用差動スイッチ部、96 補正用定電流源、102 調整用抵抗、110 試験装置、112 信号発生部、114 メインドライバ回路、116 レプリカドライバ回路、118 減算部、120 コンパレータ回路、122 判定部、200 被試験デバイス、210 入出力端子、220 伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた入力信号に応じた出力信号を出力端から出力するドライバ回路であって、
定電圧源と前記出力端との間に設けられる出力抵抗部と、
前記入力信号に応じて前記出力端の電圧をスイッチングする出力スイッチ部と、
前記出力抵抗部の抵抗値を切り替える切替部と、
を備えるドライバ回路。
【請求項2】
前記出力抵抗部は、前記定電圧源と前記出力端との間にソース−ドレインが接続された出力抵抗用FETを有し、
前記切替部は、前記出力抵抗用FETのゲート端子に制御電圧を与えて、前記出力抵抗用FETのソース−ドレイン間を指定された抵抗値に切り替える
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項3】
前記切替部は、
前記出力抵抗用FETと同特性に設計されたリファレンスFETと、
前記リファレンスFETのソース−ドレイン間を指定された抵抗値とする制御電圧を、前記出力抵抗用FETおよび前記リファレンスFETのゲート端子に与える制御電圧印加部と、
を有する請求項2に記載のドライバ回路。
【請求項4】
当該ドライバ回路は、
前記定電圧源と差動端との間に設けられる差動抵抗部と、
前記入力信号に応じて前記差動端の電圧を、前記出力スイッチ部と逆相でスイッチングする差動スイッチ部と、
前記出力抵抗部および前記差動抵抗部に流れる電流の合計を一定とする定電流源と、
を更に備える請求項1から3の何れかに記載のドライバ回路。
【請求項5】
前記出力抵抗部は、前記定電圧源と前記出力端との間にソース−ドレインが接続された出力抵抗用FETを有し、
前記切替部は、
前記出力抵抗用FETと同特性に設計されたリファレンスFETと、
前記出力抵抗部および前記差動抵抗部に流れる電流の合計と同一の電流を、前記リファレンスFETのソース−ドレイン間に流すリファレンスFET用定電流源と、
予め定められた抵抗値のリファレンス抵抗と、
前記出力抵抗部および前記差動抵抗部に流れる電流の合計と同一の電流を、前記リファレンス抵抗に流すリファレンス抵抗用定電流源と、
前記リファレンスFETのソース−ドレイン間の電圧を前記リファレンス抵抗の電圧と一致させる制御電圧を、前記出力抵抗用FETおよび前記リファレンスFETのゲート端子に与える制御電圧印加部と、
を有する請求項4に記載のドライバ回路。
【請求項6】
前記リファレンス抵抗は、
並列に接続された複数の抵抗素子と、
前記複数の抵抗素子のそれぞれに対応して設けられ、所定以上の電流が与えられた場合に対応する抵抗素子の一方の端子の配線を切断する複数のヒューズと、
を含み、
当該リファレンス抵抗が指定された抵抗値となるように、複数のヒューズのうちの少なくとも1つが製造段階において切断される
請求項5に記載のドライバ回路。
【請求項7】
当該ドライバ回路は、
複数のビットにより表される入力信号のそれぞれのビットに対応して設けられ、対応するビットの重みに応じた電流を流す複数の定電流源と、
前記入力信号のそれぞれのビットに対応して設けられ、対応するビットの値に応じて、前記出力抵抗部を介して前記定電圧源と対応する前記定電流源との間に流れる電流をスイッチングする複数の出力スイッチ部と、
前記入力信号のそれぞれのビットに対応して設けられ、対応するビットの値に応じて、前記差動抵抗部を介して前記定電圧源と対応する前記定電流源との間に流れる電流を、対応するビットの前記出力スイッチ部と逆相でスイッチングする複数の差動スイッチ部と、
を備える請求項4から6の何れかに記載のドライバ回路。
【請求項8】
当該ドライバ回路は、
補正電流を流す補正用定電流源と、
前記出力信号を補正するための補正信号に応じて、前記出力抵抗部を介して前記定電圧源と前記補正用定電流源との間に流れる電流をスイッチングする補正用出力スイッチ部と、
前記補正信号に応じて、前記差動抵抗部を介して前記定電圧源と前記補正用定電流源との間に流れる電流を、前記補正用出力スイッチ部と逆相でスイッチングする補正用差動スイッチ部と、
を備える請求項4から6の何れかに記載のドライバ回路。
【請求項9】
前記出力抵抗部は、前記出力抵抗用FETのソース−ドレイン間に対して直列に接続された調整用抵抗を更に有する
請求項5に記載のドライバ回路。
【請求項10】
前記出力抵抗部は、前記定電圧源と前記出力端との間にソース−ドレインが並列に接続された複数の出力抵抗用FETを有し、
前記切替部は、前記複数の出力抵抗用FETのそれぞれのゲート端子に対して、個別に制御電圧を与えて、前記出力抵抗部の合成抵抗を指定された抵抗値に切り替える
請求項4に記載のドライバ回路。
【請求項11】
前記切替部は、指定された電圧振幅および論理切替の遷移時間の少なくとも一方に応じて、前記出力抵抗部の抵抗値および前記定電流源が流す電流値を設定する設定部を更に有する
請求項4から10の何れかに記載のドライバ回路。
【請求項12】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスに与える試験信号を発生する信号発生部と、
前記試験信号に応じた出力信号を前記被試験デバイスに与える請求項1から11の何れかに記載のドライバ回路と、
を備える試験装置。
【請求項13】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスに与える試験信号を発生する信号発生部と、
前記試験信号に応じた出力信号を前記被試験デバイスの入出力端子に与えるメインドライバ回路と、
前記試験信号に応じた補正信号を出力する請求項1から11の何れかに記載のドライバ回路であるレプリカドライバ回路と、
前記被試験デバイスの前記入出力端子から出力された出力信号から、前記補正信号を減ずる減算部と、
前記減算部から出力された信号の値を取得するコンパレータ回路と、
前記コンパレータ回路により取得した値を期待値と比較して前記被試験デバイスの良否を判定する判定部と、
を備える試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−55484(P2011−55484A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175087(P2010−175087)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】