説明

ドラム型のカッターユニット

【課題】 切削ブレードの枚数を減らしても広い幅を切削できるよう形成し、軽量化や低コスト化等を可能にする。
【解決手段】 金属製のディスク1の外周部に切削用チップ2を周方向に等間隔に固着して切削ブレード3を形成する。この切削ブレード3を回転軸5に軸心を同一にしてドラム状に複数設ける。上記の回転軸5を切削機6の駆動部6aに連結する。上記の切削ブレード3を、上記の回転軸5に、等間隔をあけて、且つ回転軸5の軸方向に対して同じ傾斜状態で傾けて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム型のカッターユニットに関し、更に詳しくは路面や床面等の表層を切削する切削機に取り付けて使用するドラム型のカッターユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
この従来品は、ディスクの外周部にチップを設け、このチップの側面を接触させてディスクを同心状に複数枚重ね、このディスクにロッドを通し、ロッドの両端からナットで締め付けてディスクを一体化しているものである。
【0003】
而して、この従来品の場合は、重合されているディスクの厚みが切削幅になるものである。従ってこの従来品で切削幅を拡げるときは、通常、ディスクの枚数を増加する必要があったから、これによると、ディスクの枚数が増加する分だけ、重量が増加し、切削機の駆動力を大きくする必要が生じ、また運搬性や操作性が低下し、コストが増加する、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−57825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来品の問題点に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、円板状の切削ブレードを同心状に複数枚備えてドラム状に形成されているドラム型のカッターユニットにおいて、切削ブレードの枚数を減らしても広い幅を切削できるよう形成し、軽量化や低コスト化等を可能にしたドラム型のカッターユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、金属製のディスク1の外周部に切削用チップ2が周方向に等間隔に固着されて切削ブレード3が形成され、この切削ブレード3が回転軸5に軸心を同一にしてドラム状に複数設けられ、上記の回転軸5が切削機6の駆動部6aに連結されるドラム型のカッターユニットであって、上記の切削ブレード3が、上記の回転軸5に、等間隔をあけて、且つ回転軸5の軸方向に対して同じ傾斜状態で傾けられて設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
ここで、切削用チップ2としては、例えばダイヤモンド製のチップや、超硬合金製のチップがある。またここで、同じ傾斜状態とは、傾斜角度や傾斜方向が同じである、ということを意味する。この場合、切削ブレード3の傾斜角は、適宜選定されるので良い。本発明は、この傾斜角が大きいほど、1枚の切削ブレード3による切削幅が大きくなり、少ない枚数で広い幅を切削できる。
【0008】
而して本発明品の場合、回転軸に並列されている切削ブレードの内、最端部の切削ブレードは、例えば切削機の移動方向が変わるとき、他の切削ブレードより大きな負荷が加わり易いものである。従って従来、この種の装置の場合、両側端部の切削ブレードの切削用チップは、他の切削ブレードの切削用チップより摩耗が進み易く、その結果、この位置の切削ブレードは交換頻度が高くなる、という問題点があった。
請求項2記載の本発明は、このような問題点を解消しようとするものである。
【0009】
即ち、請求項2記載の本発明は、図1等に示されるように、回転軸5の軸方向における両側端部の切削ブレード3aが、回転軸5に対して直交状に、且つ隣りの内側の切削ブレード3に接して設けられていることを特徴とする。
この場合、両側端部の切削ブレード3aは、他の切削ブレード3と同一構造、同一種類のもので良いが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
また本発明は、図1、図4等に示されるように、隣り合う切削ブレード3同士が、一方の切削ブレード3の切削用チップ2の間の溝状部4に、他方の切削ブレード3の切削用チップ2の周方向における中央位置を対応させた状態で、周方向に位置がずらされて設けられているのが好ましい(請求項3)。
【0011】
なぜならこれによると、切削時の屑が隣りの切削ブレード3の切削用チップ2によって横方向に飛散することを防止でき、切削屑を各切削ブレード3の間から整然と掻き出して排出でき、また路面等への切削ブレード3の食い込みも良くなるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、このように切削ブレードを、回転軸に、等間隔をあけて、且つ回転軸の軸方向に対して同じ傾斜状態で傾けて設けているものである。
従って本発明の場合は、切削ブレードが蛇行状に回転しながら切削するため、1枚の切削ブレードによる切削幅が、切削ブレードの厚みを超えて回転軸の軸方向において拡がるものである。
それ故これによれば、切削ブレードの枚数を減らしても、広い幅を切削でき、その分、軽量化でき、また運搬性や操作性を向上でき、コストを低廉化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Aは本発明のカッターユニットの好適な一実施形態を示す要部正面図、Bは切削ブレードの側面図である。
【図2】同上カッターユニットの分解斜視図である。
【図3】切削機の斜視図である。
【図4】同上カッターユニットの斜視図である。
【図5】同上カッターユニットの要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な一実施形態を、添付図面に従って説明する。
本発明は、図1等に示されるように、金属製のディスク1の外周部に、例えばダイヤモンドチップ等の切削用チップ2が周方向に等間隔に固着されている切削ブレード3を複数備えてドラム状に形成されている。この実施形態の場合、切削用チップ2は、ディスク1の外周部に周方向に一定の長さにわたって形成され、溝状部4をあけて断続的に形成されている。各切削ブレード3の外径は、同一である。
【0015】
そして切削ブレード3は、回転軸5に、軸心を同一にして等間隔をあけて且つ回転軸5の軸方向に対して同じ傾斜状態で傾けられて設けられている。回転軸5は、切削機6(図3参照)の駆動部6aに連結される。
なお、切削機6は、この実施形態では左右一対状の車輪6bと、操作ハンドル6c等を備えて形成されている。
【0016】
またこの実施形態の本発明は、回転軸5の軸方向における両側端部の切削ブレード3aが、回転軸5に対して直交状に、且つ隣りの内側の切削ブレード3に接して設けられている。両側端部の切削ブレード3aは、他の切削ブレード3と同一構造、同一種類のものである。
【0017】
切削ブレード3、3aの中心には、回転軸5が通される孔7が形成されている。また切削ブレード3、3aは、その中心から90度づつあけて、且つ中心から等距離の位置に小孔8が貫通状に形成されている。図2に示されるように、回転軸5の一端は、円板状のホルダー9に固定され、ホルダー9の内側面には、長螺子10の基端が、ホルダー9の中心周りに90度づつあけて回転軸5と平行に4本固定されている。この長螺子10は、切削ブレード3、3aの小孔8に通して切削ブレード3、3aを支持するものであり、その先端部分は、一定の長さにわたって雄螺子状に形成されている。
【0018】
両側端部の切削ブレード3aは、図1、図4に示されるように、テーパースペーサー11を介して隣りの内側の切削ブレード3に接して設けられている。テーパースペーサー11には、図2に示されるように、切削ブレード3、3aに形成されている孔7及び小孔8と同様の孔11a及び小孔11bが形成され、この孔11a及び小孔11bを介してテーパースペーサー11は回転軸5と長螺子10に嵌め挿される。またテーパースペーサー11の内側面は、回転軸5の軸線に対し所定の角度だけ傾けられ、傾斜面状に形成されている。このテーパースペーサー11の傾斜面の角度によって切削ブレード3の傾斜角が決定される。
【0019】
また各切削ブレード3の間には、環状のスペーサー12が挟まれている。この環状のスペーサー12は、長螺子10に嵌め挿され、その両側面は軸線に対して上記のテーパースペーサー11の内側面と同じ角度の傾斜面に形成されている。各切削ブレード3は、この環状のスペーサー12によって傾斜状に一定の間隔が保持され、また回転時の捩れや振動等が防止される。
【0020】
また図1、図4等に示されるように、長螺子10の先端側に、円板状のサイドプレート13が嵌め挿され、ストッパー板14を介してナット15が長螺子10の先端部分に螺合され、各構成部品が締め付けられている。これにより、切削ブレード3が回転軸5に対して同じ傾斜状態で傾けられ、また側端部の切削ブレード3aは回転軸5に対して直交状に設けられ、全体がドラム状に形作られているものである。
【0021】
而して、この実施形態の場合は、隣り合う切削ブレード3、3a同士が、図1、図4等に示されるように、一方の切削ブレード3、3aの切削用チップ2の間の溝状部4に、他方の切削ブレード3、3aの切削用チップ2の周方向における中央位置を対応させた状態で、周方向に位置がずらされて設けられている。本発明品は、これにより切削屑を溝状部4から側方に飛散させることなく、路面等に切削用チップ2を交互に食い込ませて確実に切削できるものである。
【0022】
またこの実施形態の場合は、図5に示されるように、隣接する切削ブレード3同士の間隔が、正面視で切削ブレード3の内側上端に接する垂線L(回転軸5の軸方向と直交する線L)が、隣の切削ブレード3の厚みの中央を通る状態に形成されている。
従ってこの実施形態の場合は、切削ブレード3の厚みの半分の幅W1が、隣り合う切削ブレード3同士によって重複して切削されることになる。それ故これによると、重複切削の幅を抑えた状態で、切削ブレード3同士の境界の削り残しを防止できるものである。
【0023】
次に本発明の作用を説明する。
本発明品は、図2に示されるような路面等の表面を切削する切削機6の駆動部6aに、回転軸5(図4等参照)を連結して使用する。
【0024】
切削機6の駆動部6aが回転すると、この駆動部6aの回転力が回転軸5に伝達し、本発明品が回転する。この場合、各切削ブレード3は、傾斜状に設けられているから、切削ブレード3は蛇行状(首振り状)に回転し、図1に示されるように、回転軸5の軸方向に沿った切削幅Wの範囲を切削する。
【0025】
またこの実施形態の本発明品は、側端部の切削ブレード3aが、回転軸5の軸方向に対して直交状に設けられている。従って側端部の切削ブレード3aが、切削ブレード3aの幅だけ(この実施形態の場合は切削用チップ2と切削ブレード3aの幅が同一のため)、路面等を切削する。
それ故本発明品が回転すると、路面等は、切削ブレード3、3aが回転軸5の軸方向に占める長さ分だけ切削される。
【0026】
また本発明品の場合、側端部の切削ブレード3aは、上記の通り、回転軸5の軸方向に対して直交状に設けられているから、傾斜状の切削ブレード3に比べ、路面からの抵抗が小さい状態で切削できる。
【0027】
従って本発明品によると、切削機6が、例えば方向転換したときでも、切削機6の移動方向に順応、対応し易くなる。また側端部まで傾斜状の切削ブレード3で構成する場合に比べ、切削用チップ2の摩耗を抑えることができるから、本発明品によると、その分、側端部の切削ブレード3aの交換サイクルを長くできる。
【符号の説明】
【0028】
1 ディスク
2 切削用チップ
3 切削ブレード
5 回転軸
6 切削機
6a 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のディスクの外周部に切削用チップが周方向に等間隔に固着されて切削ブレードが形成され、この切削ブレードが回転軸に軸心を同一にしてドラム状に複数設けられ、上記の回転軸が切削機の駆動部に連結されるドラム型のカッターユニットであって、上記の切削ブレードが、上記の回転軸に、等間隔をあけて、且つ回転軸の軸方向に対して同じ傾斜状態で傾けられて設けられていることを特徴とするドラム型のカッターユニット。
【請求項2】
請求項1記載のドラム型のカッターユニットであって、回転軸の軸方向における両側端部の切削ブレードが、回転軸に対して直交状に、且つ隣りの切削ブレードに接して設けられていることを特徴とするドラム型のカッターユニット。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドラム型のカッターユニットであって、隣り合う切削ブレード同士が、一方の切削ブレードの切削用チップの間の溝状部に、他方の切削ブレードの切削用チップの周方向における中央位置を対応させた状態で、周方向に位置がずらされて設けられていることを特徴とするドラム型のカッターユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−248871(P2010−248871A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102499(P2009−102499)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(394023333)株式会社ライナックス (2)
【Fターム(参考)】