説明

ドーパミン受容体リガンドを含有する医薬組成物およびドーパミン受容体リガンドを用いる処置方法

本発明は、ドーパミン受容体リガンドと選択的セロトニン再取り込み阻害剤とを含有する医薬組成物、ならびにドーパミン受容体リガンドと選択的セロトニン再取り込み阻害剤とを併用して統合失調症、大うつ病性障害および双極性うつ病などの障害を処置する方法に関する。本発明は、ドーパミン受容体リガンドを用いてうつ病を処置する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/953,694号(2007年8月3日出願)の利益を主張し、その内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ドーパミン受容体リガンドを用いてうつ病を処置する方法に関する。本発明は、ドーパミン受容体リガンドと選択的セロトニン再取り込み阻害剤とを含有する医薬組成物、ならびにドーパミン受容体リガンドと選択的セロトニン再取り込み阻害剤とを併用して統合失調症、大うつ病性障害および双極性うつ病などの障害を処置する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
統合失調症は生涯にわたって日常生活に支障を来たす精神障害であり、320万人のアメリカ人を含めて、世界的有病率は約1%と報告されている(例えば非特許文献1を参照されたい)。この障害は通常、思春期中または若年成人期に顕在化し、主症状は次に挙げる三つのドメインに分類される:妄想および幻覚などの陽性症状、欲求の欠如および社会的引きこもりなどの陰性症状、ならびに注意障害および記憶障害などの認知症状。これらは社会的および職業的機能障害につながり、それは、社会一般において、罹患者の家族や罹患者の立場に深刻な影響を及ぼすことが避けられない。統合失調症を持つ患者は、精神医学的症状だけでなく、内科的併存症のリスクも、一般集団より高い。
【0004】
現行のガイドラインは、統合失調症の一次処置として、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、およびアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬を推奨している。これらの薬物は、一律に、その二重作用様式によって特徴づけることができる。すなわち、これらの薬物は、ドーパミンD2受容体の拮抗作用に加えて、セロトニン5-HT2A受容体においても強力な阻害剤である。
【0005】
古典的神経弛緩薬と比べれば改善されたものの、非定型抗精神病薬には依然として、疾患の効果的管理に不十分な点がある。特に、これらの薬物は、高い副作用(例えば高用量における錐体外路症状[EPS]、鎮静、QTc延長などの心血管作用、血液学的変化、性機能に対する作用、体重増加、代謝異常)の発生率に関連する。さらにまた、処置抵抗性が依然として高く、患者の10〜30%は、現在利用可能な抗精神病薬に対してほとんどまたは全く応答せず、それとは別に患者の最大30%は、部分的な処置応答しか示さない(例えば非特許文献2を参照されたい)。これが、高用量の非定型抗精神病薬の実験的使用、抗精神病薬多剤療法、および他の向精神薬による増強という、一般的な臨床診療をもたらしている(例えば非特許文献3;非特許文献4を参照されたい)。
【0006】
双極性障害は、劇的な気分変動、ならびに活力および行動の異常な変化を引き起こし、最終的には機能障害をもたらす複合的慢性疾患であって、かなりの罹病率および死亡率に関連する。これは、多幸感および興奮性から抑うつおよび精神運動制止への、気分および活力の変化として現われ(GoodwinおよびJamison, 1990(非特許文献5))、かなりの罹病率および死亡率に関連する。この集団内での自殺率は全ての精神病のなかで最も高い部類に入る(非特許文献6)。双極性障害は病相ごとに処置され、各病相は処置医にそれぞれ特有の難問を突きつける。双極性躁病は7つの精神科救急の1つを占める。急性躁病エピソードおよび混合性エピソードは、重度の行動障害、身体障害、機能障害、および認知障害を伴うことが多く、それらは全て、重大な個人的および社会的結果を招きうる。
【0007】
急性躁病の管理には、現在、気分安定薬、抗痙攣薬、および抗精神病薬を含む、さまざまな薬剤を利用することができる。近年、非定型抗精神病薬(例えばオランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール)が双極性障害における躁病に対して承認されるようになった。従来の薬剤と比較すると、非定型抗精神病薬の方が、副作用プロファイルは好ましい。しかし非定型抗精神病薬は、体重増加、脂質異常症、グルコース不耐性、およびII型糖尿病を含む代謝性副作用のリスク増加と関連づけられている。このリスク増加ゆえに、FDAは全ての非定型抗精神病薬に、糖尿病に関する警告表示を要求している。双極性患者における急性躁病に現在利用できる処置選択肢によく付随する他の副作用には、振戦、精神運動遅滞、認知機能障害、心的動揺の増悪、腎毒性、甲状腺機能の変化、および性機能障害などがある。
【0008】
したがって、双極性障害の薬理学的処置における著しい進歩にもかかわらず、現在利用できる治療法では依然として処置ニーズが満たされておらず、処置の恩恵を持続的に受けるのは、患者のうちのわずかなパーセンテージでしかない(非特許文献7)。かなりのパーセンテージの患者が、これらの処置選択肢に対して完全には応答せず、閾値下の症状を経験しつづけ、さらには再燃を起こす。これらの短所がその利用可能性を制限し、患者の服薬非遵守を引き起こしたり、その一因になったりする。
【0009】
気分障害(その最も一般的なものの一つが大うつ病性障害である)には、5人に1人が、その一生の間に冒される。世界保健機関は、うつ病が現時点で障害調整生存年数損失(disability-adjusted life year loss)の4番目に重大な世界的原因であり、2020年までには2番目に重大な原因になるだろうと推定している(例えば非特許文献8を参照されたい)。大うつ病性障害は、個人の生活の質に甚だしい影響を及ぼす深刻な精神障害である。通常の死別や、時折起こる「憂鬱」のエピソードとは異なり、MDDは極めて長期間にわたる気鬱および絶望を引き起こし、以前は楽しめた活動または人間関係を楽しむ能力を、罹患者から奪ってしまうことがある。抑うつエピソードが、明らかに痛みを伴う事象によって誘発されると思われる場合もあるが、MDDは特定のストレス要因がなくても発症しうる。うつ病の初回エピソードは、おそらく特定の刺激に対する応答であるだろうが、その後のエピソードは、誘発事象がなくても始まる可能性が次第に高くなることが、研究によって示されている。大うつ病を患っている人は、職業上の責務や他の作業、例えば育児などを面倒だと感じ、実行するのに大変な努力を要する。精神的効率(mental efficiency)および記憶が影響を受けて、簡単な作業でさえ、やっかいで、いらいらさせるものになる。性的関心が減退する。MDDを持つ多くの人々は、引きこもるようになり、あらゆるタイプの社会的活動を避ける。ごちそうを楽しむことや、夜間に熟睡することさえ、しばしばできなくなってしまい、抑うつ状態にある多くの人々は慢性的倦怠感(全身的不快感または苦悩)を訴える。人によっては、MDDに付随する痛みおよび苦痛が耐え難くなって、自殺を唯一の選択肢とみなすようになる。MDDはあらゆる精神障害のなかで死亡率が最も高い。
【0010】
大うつ病性障害に苦しむ人の症状は、時には、その人が不安にも苦しんでいるという事実によって悪化する。したがって患者は、そのうつ病の症状に加えて、過剰なまたは制御不能な心配、いらいら、緊張感、恐れ、不穏および不眠、集中困難、ならびに多様な身体的愁訴、例えば痛みおよび疼き、攣縮、硬直、ミオクローヌス発作、耳鳴り、かすみ目、ほてりおよび冷えなどの徴候も示すことがあり、これらはいずれも、その人の社会的および職業的障害を増大させる。
【0011】
うつ病の薬学的処置はしばしば不十分であり、多くの患者は通例、数ヶ月にわたる処置後でさえ、寛解を得ない。そのうえ再発率も高く、寛解を得た患者の約85%は新たな大うつ病の発症に苦しむことになる。最後に、現在利用可能な多くの抗うつ薬には副作用が付随し、その副作用により、一部の患者は再びうつ病に(より深く)陥る危険を冒してでもその薬の服用を中止することになり、他の患者は病的状態に追いやられる。
【0012】
このように、現在の薬物の多くは、多くの患者にとって、完全に安全なわけでも、完全に忍容できるわけでもない。したがって、統合失調症、うつ病、大うつ病性障害、急性躁病および双極性障害などの状態を処置するための新しい製剤および新しい方法であって、その医薬が、より広範な患者(特に処置抵抗性患者)にとって有効であるもの、または安全であり、かつ、より高い忍容性を持つもの、または既存薬物の効力を補完するものが、常に必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Mueser and McGurk, Lancet, 363, 2063-72, 2004
【非特許文献2】Lehman et al., Am. J. Psychiatry,161 (2 Suppl), 1-56, 2004
【非特許文献3】Zink et al., Eur. Psychiatry, 19:56-58, 2004
【非特許文献4】Stahl and Grady, Curr. Med. Chem., 11, 313-27, 2004
【非特許文献5】Goodwin FK, Jamison KR. In: Manic-depressive illness. New York: Oxford University Press, 642-647, 1990
【非特許文献6】Mueller-Oerlinghausen et al., Lancet, 359 (9302), 241-7, 2002
【非特許文献7】Sachs, J. Clin. Psychopharmacol., 23 (3 Suppl 1), S2-8, 2003
【非特許文献8】Science, 288, 39-40, 2000
【発明の概要】
【0014】
ある態様において、本発明は、ドーパミン受容体リガンドを投与することによってうつ病を処置する方法に関する。ある実施形態において、本発明は、トランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン、または薬学的に許容できるその塩を投与することによって、うつ病を処置する方法に関する。
【0015】
もう一つの態様において、本発明は、ドーパミン受容体リガンドと選択的セロトニン再取り込み阻害剤とを含有する医薬組成物に関する。ある実施形態では、トランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミンまたは薬学的に許容できるその塩と、エスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩とを含む、医薬組成物が開示される。別の実施形態では、ドーパミン受容体リガンドと選択的セロトニン再取り込み阻害剤との組合せを投与することによって、統合失調症、大うつ病性障害および双極性うつ病などの障害を処置する方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】賦形剤およびイミプラミンによる慢性処置が、対照動物(白抜きの記号)および慢性軽度ストレスに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【図2】賦形剤および塩酸カリプラジンによる慢性処置が、対照動物(白抜きの記号)および慢性軽度ストレスに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【図3】賦形剤およびシュウ酸エスシタロプラムによる慢性処置が、対照動物(白抜きの記号)および慢性軽度ストレスに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【図4】賦形剤、シュウ酸エスシタロプラムおよび塩酸カリプラジンによる慢性処置が、対照動物(白抜きの記号)および慢性軽度ストレスに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【図5】賦形剤、シュウ酸エスシタロプラム、および単独で投与される塩酸カリプラジンまたはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与される塩酸カリプラジンによる慢性処置が、慢性軽度ストレスに曝された動物における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【図6】賦形剤、シュウ酸エスシタロプラム、および単独で投与される塩酸カリプラジンまたはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与される塩酸カリプラジンによる慢性処置が、慢性軽度ストレスに曝された動物における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【図7】塩酸カリプラジン単独、シュウ酸エスシタロプラム単独、またはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わされた塩酸カリプラジンによる慢性処置が、慢性軽度ストレスに曝された動物における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある態様において、本発明は、ドーパミン受容体リガンドを投与することによってうつ病を処置する方法に関する。
【0018】
もう一つの態様において、本発明は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤とドーパミン受容体リガンド(例えばドーパミンD2/D3受容体リガンド)とを含有する医薬組成物に関する。
【0019】
ある実施形態において、本発明は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤と、式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルもしくはアロイルであるか、またはR1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環式環を形成し;
XはOまたはSであり;
nは1または2である]
および/またはその幾何異性体および/または立体異性体および/またはジアステレオマーおよび/または塩および/または水和物および/または溶媒和物および/または多形体とを含む医薬組成物に関する。
【0020】
ある実施形態では、R1および/またはR2がアルキルを表す場合に、そのアルキル部分が、置換または無置換飽和炭化水素ラジカル(これは、直鎖または分枝鎖であることができ、約1〜約6個の炭素原子(例えば1〜4個の炭素原子)を含有し、1つ以上のC1-6アルコキシカルボニル、アリール(例えばフェニル)もしくは(C1-6アルコキシカルボニル)-C1-6アルキル基、またはその組合せで適宜置換される)である。
【0021】
さらなる実施形態では、R1およびR2が、隣接する窒素原子と共に、複素環式環(これは、飽和または不飽和の、適宜置換された、単環式または二環式環であることができ、その環は、O、N、またはSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有してもよい)を形成する。例えば複素環式環はピロリジン、ピペラジン、ピペリジンまたはモルホリンであることができる。
【0022】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がアルケニルを表す場合に、そのアルケニル部分が2〜7個の炭素原子と1〜3個の二重結合とを持ちうる。
【0023】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がアリールを表す場合に、そのアリール部分が、適宜置換された単環式、二環式または三環式アリール、例えば限定するわけではないがフェニル、ナフチル、フルオロノニル、またはアントラキノニル基(例えばフェニルまたはナフチル)から選択されうる。アリール部分は、1つ以上のC1-6アルコキシ、トリフルオロ-C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルカノイル、アリール、C1-6アルキルチオ、ハロゲン、シアノ基またはそれらの組合せで、置換されてもよい。
【0024】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がシクロアルキルを表す場合に、そのシクロアルキル部分が、適宜置換された単環式、二環式または三環式シクロアルキル基、例えばシクロヘキシルまたはアダマンチルから選択されうる。
【0025】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がアロイルを表す場合に、その中のアリール部分が、上に定義したとおり(例えばフェニル)である。
【0026】
式(I)の化合物の合成は、例えば米国特許出願公開第2006/0229297号に開示されている。式(I)の化合物は、D2受容体よりもD3受容体に有意に高い力価で結合する、経口活性型の極めて強力なドーパミンD3/D2受容体アンタゴニストである。そのD3受容体拮抗作用はD2受容体拮抗作用よりも約1桁強く、これがD2受容体アンタゴニストによって生じる錐体外路系副作用のいくつかを打ち消すと考えられる。ドーパミンD2との比較でドーパミンD3に対する相対的アフィニティーが増加していることに加えて、式(I)の化合物は、他の受容体部位、例えば5-HT2C、ヒスタミンH1、およびアドレナリン作動性受容体部位などでも低い力価を持ち、このことから、EPSおよび体重増加などといった副作用の可能性の低下が示唆される。
【0027】
ある実施形態では、式(I)の化合物はトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン(INN:カリプラジン)、または薬学的に許容できるその塩である。例えば、式(I)の化合物はトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン塩酸塩(塩酸カリプラジン)である。
【0028】
ある例示的実施形態において、本発明は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤と、カリプラジンまたは薬学的に許容できるその塩とを含有する医薬組成物(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤と塩酸カリプラジンとを含有する医薬組成物)に関する。
【0029】
使用することができる適切な選択的セロトニン再取り込み阻害剤として、例えばシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、ならびにそれらの薬学的に許容できる塩および溶媒和物(例えば水和物)が挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0030】
エスシタロプラムはシタロプラムのS-エナンチオマーであり、次の構造を持つ。
【化2】

【0031】
エスシタロプラムの製造方法は、例えば米国再発行特許第34,712号および米国特許第6,566,540号ならびに国際公開番号WO 03/000672、WO 03/006449、WO 03/051861、およびWO 2004/083197に開示されている。
【0032】
国際公開番号WO 01/03694およびWO 02/087566には、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、急性ストレス障害、摂食障害(例えば過食症、食欲不振および肥満)、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認知障害、衝動制御障害、注意欠陥多動障害および薬物乱用を含む、さまざまな精神障害の処置におけるエスシタロプラムの使用が開示されている。国際公開番号WO 02/087566には、従来のSSRIによる初期処置に応答できなかった患者、特に従来のSSRIによる初期処置に応答できなかった大うつ病障害を持つ患者を処置するための、エスシタロプラムの使用も開示されている。シュウ酸エスシタロプラムは現在、米国では、大うつ病性障害および全般性不安障害の処置用に、Lexapro(登録商標)として販売されている。Lexapro(登録商標)は、5、10および20mgエスシタロプラム即放性錠剤(シュウ酸塩として)および5mg/mL経口液剤の形で入手することができる。
【0033】
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩と、エスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩(例えばシュウ酸エスシタロプラム、臭化水素酸エスシタロプラム)とを含有する医薬組成物に関する。
【0034】
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、カリプラジンまたは薬学的に許容できるその塩と、エスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩とを含有する医薬組成物に関する。
【0035】
もう一つの実施形態において、本発明は、塩酸カリプラジンとシュウ酸エスシタロプラムとを含有する医薬組成物に関する。
【0036】
もう一つの実施形態において、本発明は、塩酸カリプラジンと臭化水素酸エスシタロプラムとを含有する医薬組成物に関する。
【0037】
薬学的に許容できる塩には、塩基として機能する主化合物を、無機酸または有機酸と反応させて塩を形成させることによって得られるもの、例えば塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、ギ酸、臭化水素酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、サリチル酸、マンデル酸、および炭酸の塩が含まれる。薬学的に許容できる塩には、主化合物が酸として機能し、それを適当な塩基と反応させることで、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびコリン塩などが形成されるものも含まれる。いくつかある公知の方法のいずれかで、化合物を適当な無機酸または有機酸と反応させることによって、酸付加塩が製造されうることも、当業者にはわかるだろう。あるいは、さまざまな公知の方法で、本発明の化合物を適当な塩基と反応させることによって、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を製造することもできる。
【0038】
以下に、無機酸または有機酸との反応によって得ることができる酸塩のさらなる例を挙げる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、トシレート、メシレートおよびウンデカン酸塩。
【0039】
例えば薬学的に許容できる塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩またはシュウ酸塩であることができる。
【0040】
本発明において有用な化合物のいくつかは、異なる多形型で存在することができる。当技術分野では知られているとおり、多形は、2つ以上の異なる結晶種または「多形」種として結晶化する、化合物の能力である。そのような多形体の使用は本発明の範囲に包含される。
【0041】
本発明において有用な化合物のいくつかは、異なる溶媒和物型で存在することができる。本発明の化合物の溶媒和物は、結晶化プロセスにおいて溶媒分子が化合物分子の結晶格子構造中に組み込まれる場合にも、形成されうる。例えば適切な溶媒和物として、水和物、例えば一水和物、二水和物、セスキ水和物、およびヘミ水和物が挙げられる。そのような溶媒和物の使用は本発明の範囲に包含される。
【0042】
式Iの化合物が異なる互変異性体型および幾何異性体型で存在できることは、当業者にはわかるだろう。これらの化合物は全て、シス異性体、トランス異性体、ジアステレオマー混合物、ラセミ体、エナンチオマーの非ラセミ混合物、実質的に純粋なエナンチオマー、および純粋なエナンチオマーを含めて、本発明の範囲に包含される。実質的に純粋なエナンチオマーに含まれる、対応する反対のエナンチオマーは、5%w/wを超えることがなく、例えば2%を超えず、例えば1%を超えない。
【0043】
光学異性体は、従来のプロセスによる、例えば光学活性な酸もしくは塩基を使ったジアステレオ異性体塩の形成、または共有結合的ジアステレオマーの形成などによる、ラセミ混合物の分割によって得ることができる。適当な酸の例は、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸およびカンファースルホン酸である。ジアステレオ異性体の混合物は、それらの物理的および/または化学的相違に基づいて、当業者に知られている方法により、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶などによって、個々のジアステレオマーに分離することができる。次に、光学活性な塩基または酸を、分離されたジアステレオマー塩から遊離させる。光学異性体を分離するためのもう一つのプロセスには、エナンチオマーが最大限に分離されるように最適に選択された、従来の誘導体化を伴うまたはそのような誘導体化を伴わない、キラルクロマトグラフィー(例えばキラルHPLCカラム)の使用が含まれる。適切なキラルHPLCカラムは、例えばChiracel ODおよびChiracel OJなどがDiacelによって製造されているが、他にも数多くあり、いずれも常法により選択することができる。誘導体化を伴うまたは誘導体化を伴わない酵素的分離も有用である。式Iの光学活性化合物は、ラセミ化を引き起こさない反応条件でのキラル合成プロセスにおいて、光学活性出発物質を利用することによっても、同様に得ることができる。
【0044】
また、式Iの化合物を、例えば2H、3H、11C、13Cおよび/または14Cの含有量が濃縮された、さまざまな濃縮同位体型で使用できることも、当業者にはわかるだろう。ある特定の実施形態では化合物が重水素化される。そのような重水素化型は米国特許第5,846,514号および同第6,334,997号に記載の手順によって製造することができる。米国特許第5,846,514号および同第6,334,997号で述べられているとおり、重水素化は、薬物の効力を改善し、薬物の作用の持続時間を増加させることができる。
【0045】
重水素置換化合物は、例えば次に挙げる文献に記載されているようなさまざまな方法を用いて、合成することができる:Dean, Dennis C.編「Recent Advances in the Synthesis and Applications of Radiolabeled Compounds for Drug Discovery and Development」[Curr., Pharm. Des., 2000; 6(10)] (2000), 110 pp. CAN 133:68895 AN 2000:473538 CAPLUS;Kabalka, George W.; Varma, Rajender S.「The synthesis of radiolabeled compounds via organometallic intermediates」Tetrahedron (1989), 45(21), 6601-21, CODEN: TETRAB ISSN:0040-4020. CAN 112:20527 AN 1990:20527 CAPLUS;およびEvans, E. Anthony「Synthesis of radiolabeled compounds」J. Radioanal. Chem. (1981), 64(1-2), 9-32. CODEN: JRACBN ISSN:0022-4081, CAN 95:76229 AN 1981:476229 CAPLUS。
【0046】
剤形
本発明の化合物を投与するのに適したさまざまな製剤を製造するための手順が記載された数多くの標準的参考文献を利用することができる。考えうる製剤および調製物の例は、例えば「Handbook of Pharmaceutical Excipients」American Pharmaceutical Association(最新版);「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets」(Lieberman、LachmanおよびSchwartz編)最新版、Marcel Dekker, Inc.発行、ならびに「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Arthur Osol編)、1553-1593(最新版)に記載されている。
【0047】
投与様式および剤形は、与えられた処置用途にとって望ましく有効な化合物または組成物の治療量と密接に関係する。
【0048】
適切な剤形としては、例えば経口、直腸、舌下、粘膜、鼻腔、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、脊髄、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ、および子宮内投与、ならびに活性成分を全身送達するための他の剤形が挙げられるが、これらに限るわけではない。経口投与に適した剤形が好ましい。
【0049】
そのような医薬剤形を製造するために、典型的には、活性成分が従来の医薬配合技法に従って医薬担体と混合される。担体は、投与にとって望ましい製剤の形態に依存して、多種多様な形態をとりうる。
【0050】
経口剤形の組成物を製造する際には、通常の医薬媒質をどれでも使用することができる。したがって、例えば懸濁剤、エリキシル剤および溶液剤などの液状経口製剤の場合は、適切な担体および添加剤として、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤などが挙げられる。例えば粉末剤、カプセル剤および錠剤などの固形経口製剤の場合は、適切な担体および添加剤として、デンプン、糖類、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。投与が容易であることから、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口投与単位形に相当する。所望であれば、標準的技法によって錠剤に糖衣または腸溶コーティングを施してもよい。
【0051】
非経口製剤の場合、担体は通常、滅菌水を含むことになるが、他の成分、例えば溶解性を促進する成分または保存のための成分なども含めることができる。注射用溶液剤も製造することができ、その場合は適当な安定剤を使用することができる。
【0052】
いくつかの応用例では、例えば活性剤をリポソームまたは他のカプセル材料媒質にカプセル化するか、活性剤を例えば共有結合、キレート化、または会合的配位などで適切な生体分子(例えばタンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、および多糖から選択されるもの)上に固定化することなどによって、「ベクター化(vectorized)」型の活性剤を利用することが有利になりうる。
【0053】
経口投与に適した製剤を使用する本発明の処置方法は、それぞれが前もって決定された量の活性成分を粉末または顆粒として含有する、カプセル剤、カシェ剤、錠剤、または口中錠などの孤立した単位として提示することができる。場合によっては、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または頓服水剤(draught)など、水性液または非水性液体中の懸濁液を使用してもよい。
【0054】
錠剤は、圧縮もしくは成形、または湿式造粒により、場合によっては、1つ以上の副成分を使用して、製造することができる。圧縮錠剤は、適切な機械で圧縮することによって製造することができ、この際、活性成分は粉末または顆粒などの自由流動型であり、これが、場合によっては、例えば結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤、または放出剤と混合される。粉末状の活性化合物と適切な担体との混合物から構成される湿製錠剤は、適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0055】
シロップ剤は、糖(例えばショ糖)の濃厚水溶液に活性化合物を加えることによって製造することができ、そこには任意の副成分も加えることができる。そのような副成分としては、着香剤、適切な保存剤、糖の結晶化を遅らせるための薬剤、および他の任意の成分の溶解度を増加させるための薬剤、例えばポリヒドロキシアルコール、例えばグリセロールもしくはソルビトールを挙げることができる。
【0056】
非経口投与に適した製剤は、通常、活性化合物の滅菌水性調製物を含み、これは好ましくは、受容者の血液と等張(例えば生理食塩水)である。そのような製剤は、懸濁化剤および増粘剤、ならびにリポソーム、またはその化合物を血液成分または1つ以上の臓器に向かわせるために設計された他の微粒子系を含みうる。製剤は、単位用量型または多用量型で提示することができる。
【0057】
非経口投与は、任意の適切な形態の全身送達またはCNSへの直接的な送達を含みうる。投与は、例えば静脈内、動脈内、髄腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、腹腔内(例えば腹膜内)などであることができ、注入ポンプ(体外型もしくは植込み可能型)または所望する投与モダリティにとって適当な他の任意の適切な手段によって達成することができる。
【0058】
鼻腔および他の粘膜スプレー製剤(例えば吸入可能型)は、活性化合物の精製水溶液を、保存剤および等張化剤と共に含むことができる。そのような製剤は、好ましくは、鼻腔または他の粘膜と適合するpHおよび等張状態に調節される。あるいは、それらは、気体担体中に懸濁された微細固形粉末の形態をとることもできる。そのような製剤は、任意の適切な手段または方法によって、例えばネブライザー、アトマイザー、定量吸入器などによって、送達することができる。
【0059】
直腸投与用の製剤は、カカオ脂、水素化脂肪、または水素化脂肪カルボン酸などの適切な担体を用いて、坐剤として提示することができる。
【0060】
経皮製剤は、揺変性担体またはゼラチン状担体、例えばセルロース媒質、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどに活性剤を組み込み、得られた製剤を、着用者の皮膚と皮膚接触させて固定するのに適した経皮デバイスに詰め込むことによって製造することができる。
【0061】
上述の成分に加えて、本発明の製剤は、希釈剤、緩衝剤、着香剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(酸化防止剤を含む)などから選択される1つ以上の副成分をさらに含みうる。
【0062】
本発明の製剤は、即時放出プロファイル、持続放出プロファイル、遅発放出プロファイル、または当業者に知られる他の任意の放出プロファイルを持つことができる。
【0063】
組成物中に存在する活性成分は、通常、例えば約0.1〜約500mg、例えば約1mg〜約400mg、例えば約10mg〜約250mgの経口用量、または約0.1mg〜約100mg、例えば約0.1mg〜約50mg、例えば約1〜約25mgの静脈内、皮下、もしくは筋肉内用量の、合計1日投薬量レジメン(成人患者の場合)で投与することができる。
【0064】
ある実施形態では、医薬組成物が、約0.05mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.25mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.75mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約8.5mg、約9mg、約9.5mg、約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12.0mg、約12.5mg、約13.0mg、約13.5mg、約14.0mg、約14.5mgもしくは約15.0mgの式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)を含む。
【0065】
例えば医薬組成物は、約0.1mg、約0.25mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約5mg、約6mg、約7.5mg、約9mg、約12.5mgもしくは約15.0mgの式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)を含む。
【0066】
さらなる実施形態では、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩が、組成物中に、これらの投薬量の任意の二つの間(例えば約0.1mgと約15mgの間、約0.5mgと約12.5mgの間、約1.5mgと約6mgの間、約6mgと約12.5mgの間)にある量で存在する。
【0067】
さらにもう一つの実施形態では、医薬組成物が、約1mg、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mgのエスシタロプラム、または薬学的に許容できるその塩(例えばシュウ酸エスシタロプラム、臭化水素酸エスシタロプラム)を含む。
【0068】
もう一つの実施形態では、医薬組成物が、約4mg、約8mg、約12mg、約16mg、約24mgまたは約28mgのエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩(例えばシュウ酸エスシタロプラム、臭化水素酸エスシタロプラム)を含む。
【0069】
さらなる実施形態では、式(I)の化合物が、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、例えば約0.1mg/kg〜約1mg/kg(例えば約0.03mg/kg、約0.065mg/kg、約0.1mg/kg、約0.25mg/kg、約0.3mg/kgまたは約1mg/kg)の1日投薬量で投与され、SSRIが、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、例えば約0.1mg/kg〜約5mg/kg(例えば約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3.9mg/kgまたは約5mg/kg)の1日投薬量で投与される。
【0070】
シュウ酸エスシタロプラムと塩酸カリプラジンとをどちらも含有する一体型剤形を、シュウ酸エスシタロプラムと塩酸カリプラジンとが互いに接触しないように製剤してもよい。
【0071】
所望の用量は、1日かけて適当な時間間隔で投与される1つ以上の部分1日量(daily sub dose)として投与するか、あるいは、午前投与または午後投与の単回投与で投与することができる。例えば1日投薬量は、1、2、3、または4つの分割1日量(divided daily dose)に分割することができる。
【0072】
処置の継続時間は、利益が持続する限り、数十年、数年、数ヶ月、数週間、または数日であることができる。
【0073】
式(I)の化合物とSSRIを(別個の剤形として、または一つの複合剤形で)同時に投与するか、または式(I)の化合物をSSRI投与の前または後に投与することができる。
【0074】
処置の方法
さらにもう一つの態様によれば、本発明は、ドーパミン受容体リガンド(例えばドーパミンD2/D3受容体リガンド)および/またはSSRIによって緩和される状態を処置する方法に関する。
【0075】
ある実施形態において、本発明は、治療有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、中枢神経系(CNS)の障害を処置する方法に関する。
【0076】
処置することができるCNS障害の例として、大うつ病性障害、双極性うつ病、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、急性ストレス障害、摂食障害(例えば過食症、食欲不振および肥満)、恐怖症、気分変調、月経前症候群、月経前不快気分障害、認知障害、衝動制御障害、注意欠陥多動障害および薬物乱用が挙げられるが、これらに限るわけではない。この組合せは、従来のSSRIによる初期処置に応答できなかった患者、特に従来のSSRIによる初期処置に応答できなかった大うつ病障害(「処置抵抗性大うつ病性障害」)を持つ患者も、効果的に処置することができる。さらにこの組合せは、その必要がある患者の自殺念慮を処置または減少させ、脳卒中後の無障害生存率を改善することもできる。さらなる実施形態では、CNS障害は大うつ病障害(例えば処置抵抗性大うつ病性障害)または双極性うつ病である。
【0077】
さらにもう一つの実施形態は、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、処置抵抗性うつ病を患う患者を処置する方法である。
【0078】
さらにもう一つの実施形態は、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、処置抵抗性大うつ病性障害を患う患者を処置する方法である。
【0079】
もう一つの実施形態において、本発明は、SSRI(例えばエスシタロプラム)を投与した後の治療効力の遅延を減少させる方法であって、前記SSRIと、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩とを同時投与することを含む方法を提供する。この方法は、好ましくは、SSIRと、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩とを、哺乳動物に、最も好ましくはヒトに、同時投与することによって実施される。
【0080】
式(I)の化合物はドーパミンD2/D3受容体リガンドである。さらなる実施形態において、本発明は、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、ドーパミンD3および/またはD2受容体の調整を必要とする状態を処置するための方法を提供する。
【0081】
ドーパミン作動性神経伝達物質系の機能障害は、いくつかの精神神経障害および神経変性障害、例えばそれぞれ統合失調症、薬物乱用およびパーキンソン病などの病理に関与する。ドーパミンの作用は、D1ファミリー(D1、D5)またはD2ファミリー(D2、D3、D4)に属する少なくとも5つの異なるドーパミン受容体によって媒介される。D3受容体は、大脳のドーパミン作動系に特徴的な分布を持つことが示されている。すなわち、側坐核およびカジェハ島などの一定の辺縁構造中に、高密度が見出された。したがって、D3受容体の優先的ターゲティングは、ドーパミン作動性機能をより選択的に調整するための、したがって例えば統合失調症、情緒障害または認知機能不全および嗜癖(例えばSokoloff, P.ら, Nature, 1990, 347, 146;Schwartz, J. C.ら, Clin. Neuropharmacol. 1993, 16, 295;Levant, B., Pharmacol. Rev. 1997, 49, 231参照)、嗜癖(例えばPilla, C.ら, Nature 1999, 400, 371参照)およびパーキンソン病(例えばLevant, B.ら, CNS Drugs 1999, 12, 391参照)または疼痛(例えばLevant, B.ら, Neurosci. Lett. 2001, 303, 9参照)などといった、いくつかの異常における治療的介入を成功させるための、前途有望なアプローチになりうる。
【0082】
ドーパミンD2受容体は脳内に広く分布し、数多くの生理学的機能および病理学的状態に関与することが知られている。D2アンタゴニストは、例えば抗精神病薬として、広く使用されている薬物である。しかし、D2受容体に対する広範な拮抗作用が、不必要な副作用、例えば錐体外路運動症状、精神運動鎮静または認知力障害などをもたらすことも、よく知られている。これらの副作用はD2アンタゴニスト化合物の治療的利用を著しく制限する(Wong A. H. C.ら, Neurosci. Biobehav. Rev. 2003, 27, 269)。
【0083】
さらにもう一つの態様において、本発明は、ドーパミンD3および/またはD2受容体の優先的調整を必要とする状態、例えば精神病(例えば統合失調症、統合失調性感情障害)、統合失調症に随伴する認知機能障害、軽度〜中等度認知力低下、認知症、認知症に関連する精神病的状態、精神病性うつ病、躁病、急性躁病、偏執性および妄想性障害、運動異常障害、例えばパーキンソン病、神経弛緩薬誘発性パーキンソニズム、遅発性ジスキネジア、摂食障害(例えば神経性大食症)、注意欠陥障害、小児多動症、うつ病、不安、性機能障害、睡眠障害、嘔吐、攻撃、自閉症および薬物乱用を処置する方法であって、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することを含む方法を提供する。
【0084】
例示的処置方法には、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症に随伴する認知機能障害、軽度〜中等度認知力低下、認知症、認知症に関連する精神病的状態、精神病性うつ病、躁病、偏執性および妄想性障害、運動異常障害、例えばパーキンソン病、神経弛緩薬誘発性パーキンソニズム、うつ病、不安、薬物乱用(例えばコカイン乱用)の処置が含まれる。
【0085】
上述した2つの受容体作用のこの組合せにより、D3拮抗作用(例えば向知性薬効果、錐体外路運動症状の抑制、薬物乱用に対する抑制効果)とD2拮抗作用(例えば抗精神病効果)の両方の有益な作用を、同時に発現させることが可能になる。さらにまた、この同じ組合せにより、驚くべきことに、D2拮抗作用の不利な特徴(例えば錐体外路症状、精神運動鎮静、認知力障害)の打ち消しが起こる。
【0086】
ある例示的実施形態は、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、統合失調症を患っている患者を処置する方法である。
【0087】
もう一つの例示的実施形態は、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、躁病(例えば急性躁病)を患っている患者を処置する方法である。
【0088】
さらにもう一つの例示的実施形態は、有効量の式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(例えばエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩、例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを投与することによって、双極性うつ病を患っている患者を処置する方法である。
【0089】
さらにもう一つの態様によれば、本発明は、うつ病を処置する方法であって、その必要がある患者に、有効量の式(I)の化合物:
【化3】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルもしくはアロイルであるか、またはR1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環式環を形成し;
XはOまたはSであり;
nは1または2である]
および/またはその幾何異性体および/または立体異性体および/またはジアステレオマーおよび/または塩および/または水和物および/または溶媒和物および/または多形体を投与することを含む方法に関する。
【0090】
ある実施形態では、R1および/またはR2がアルキルを表す場合に、そのアルキル部分が、置換または無置換飽和炭化水素ラジカル(これは、直鎖または分枝鎖であることができ、約1〜約6個の炭素原子(例えば1〜4個の炭素原子)を含有し、1つ以上のC1-6アルコキシカルボニル、アリール(例えばフェニル)もしくは(C1-6アルコキシカルボニル)-C1-6アルキル基、またはその組合せで適宜置換される)である。
【0091】
さらなる実施形態では、R1およびR2が、隣接する窒素原子と共に、複素環式環(これは、飽和または不飽和の、適宜置換された、単環式または二環式環であることができ、その環は、O、N、またはSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有してもよい)を形成する。例えば複素環式環はピロリジン、ピペラジン、ピペリジンまたはモルホリンであることができる。
【0092】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がアルケニルを表す場合に、そのアルケニル部分が2〜7個の炭素原子と1〜3個の二重結合とを持ちうる。
【0093】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がアリールを表す場合に、そのアリール部分が、適宜置換された単環式、二環式または三環式アリール、例えば限定するわけではないがフェニル、ナフチル、フルオロノニル、またはアントラキノニル基(例えばフェニルまたはナフチル)から選択されうる。アリール部分は、1つ以上のC1-6アルコキシ、トリフルオロ-C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルカノイル、アリール、C1-6アルキルチオ、ハロゲン、シアノ基またはそれらの組合せで、置換されてもよい。
【0094】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がシクロアルキルを表す場合に、そのシクロアルキル部分が、適宜置換された単環式、二環式または三環式シクロアルキル基、例えばシクロヘキシルまたはアダマンチルから選択されうる。
【0095】
さらなる実施形態では、R1および/またはR2がアロイルを表す場合に、その中のアリール部分が、上に定義したとおり(例えばフェニル)である。
【0096】
ある実施形態では、うつ病の処置に有用な式(I)の化合物が、トランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン(INN:カリプラジン)、または薬学的に許容できるその塩である。例えば式(I)の化合物は、トランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン塩酸塩(塩酸カリプラジン)である。
【0097】
ある例示的実施形態において、本発明は、うつ病を処置する方法であって、その必要がある患者に、有効量のトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミンまたは薬学的に許容できるその塩、例えばトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン塩酸塩を投与することを含む方法に関する。
【0098】
ある実施形態では、うつ病が大うつ病性障害である。
【0099】
さらなる実施形態では、うつ病が処置抵抗性うつ病である。
【0100】
うつ病を処置するには、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)を、通常、例えば約0.1〜約500mg、例えば約1mg〜約400mg、例えば約10mg〜約250mgの経口用量、または約0.1mg〜約100mg、例えば約0.1mg〜約50mg、例えば約1〜約25mgの静脈内、皮下、もしくは筋肉内用量の、1日投薬量レジメン(成人患者の場合)で投与することができる。
【0101】
ある実施形態では、うつ病を処置するために投与される式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)の量が、約0.05mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.25mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.75mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約8.5mg、約9mg、約9.5mg、約10mg、約10.5mg、約11mg、約11.5mg、約12.0mg、約12.5mg、約13.0mg、約13.5mg、約14.0mg、約14.5mgまたは約15.0mgである。例えば、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)は、うつ病を処置するために、約0.1mg、約0.25mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約5mg、約6mg、約7.5mg、約9mg、約12.5mgまたは約15.0mgの量で投与される。
【0102】
さらなる実施形態では、うつ病を処置するために投与される式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩(例えば塩酸カリプラジン)の量が、これらの投薬量の任意の二つの間(例えば約0.1mgと約15mgの間、約0.5mgと約12.5mgの間、約1.5mgと約6mgの間、約6mgと約12.5mgの間)にある。
【0103】
さらなる実施形態では、式(I)の化合物が、うつ病を処置するために、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、例えば約0.1mg/kg〜約1mg/kg(例えば約0.03mg/kg、約0.065mg/kg、約0.1mg/kg、約0.25mg/kg、約0.3mg/kgまたは約1mg/kg)の1日投薬量で投与される。
【0104】
定義
本明細書で使用する用語「エスシタロプラム」には、1-[3-(ジメチル-アミノ)プロピル]-1-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリルであって、好ましくはそのR-エナンチオマー含有量が(1-[3-(ジメチル-アミノ)プロピル]-1-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリルの総重量を100%として)3、2、1、0.5、または0.2重量%未満であるもの、すなわち97、98、99、99.5、または99.8%のエナンチオマー純度(重量%)を持つS-シタロプラムが包含される。エスシタロプラムの好ましい薬学的に許容できる塩として、シュウ酸エスシタロプラムおよび臭化水素酸エスシタロプラムが挙げられるが、これらに限るわけではない。用語「エスシタロプラム」には、エスシタロプラムおよびその薬学的に許容できる塩の多形体、水和物、溶媒和物、および無定形型も包含される。国際公開番号WO 03/011278ならびに米国特許出願公開第2004/0167209号、同第2005/019653号および同第2005/0197388号に記載されているようなシュウ酸エスシタロプラムおよび臭化水素酸エスシタロプラムの結晶も包含される。
【0105】
「薬学的に許容できる」という用語は、動物またはヒトにおけるインビボ使用に生物学的または薬理学的に適合することを意味し、好ましくは、動物(特にヒト)における使用に関して連邦政府または州政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の広く認識されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0106】
用語「統合失調症」は、思考および知覚の分裂を特徴とする一群の精神障害を包含するものとし、統合失調症(およびそのサブタイプの全て;妄想型、緊張型、解体型、残遺型、鑑別不能型)ならびに他の精神病性障害(「Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders」第4版、ワシントンD.C(1994):American Psychiatric Association、または「ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders: Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines」ジュネーブ(1992):世界保健機関に従う)、例えば統合失調症様障害および統合失調情動障害、短期精神病性障害などを包含する。
【0107】
臨床評価において、統合失調症は、一般に、幻覚(特に、通常は声として体験される幻聴)、支離滅裂な思考過程および妄想などの「陽性症状」、ならびに感情鈍麻、アロギー、意欲喪失、および快感消失を含む「陰性症状」によって特徴づけられる。
【0108】
「統合失調症の陰性症状」という用語は、機能的で指向的な思考または活動の「喪失」を反映するとみなすことができる種類の統合失調症の症状を指す。統合失調症の陰性症状は当技術分野ではよく知られており、感情鈍麻(例えば固定表情および/または無表情、視線をあまり合わさないこと、ならびに身振り言語の減少を特徴とする)、アロギー(「会話の貧困」または手短で簡潔なおよび/または空虚な返答)、意欲喪失(目標指向的活動を開始し実行する能力の低下または欠如を特徴とする)、快感消失(興味または喜びの喪失)、非社会性(asocialty)(社会的欲求および社会的相互作用の減少)、無感情および当業者に知られる他の陰性症状を包含する。統合失調症の陰性症状は、当技術分野で知られる任意の方法論(例えば簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale:BPRS)および陽性・陰性症状尺度(Positive and Negative Symptom Scale:PANSS)を含むが、これらに限るわけではない)を用いて、評価することができる。BPRSおよびPANSSは、陰性症状の測定に使用することができる下位尺度または要因を持つ。その他、陰性症状に特異的に対処するために設計された尺度もある:例えば陰性症状評価尺度(Scale for the Assessment of Negative Symptoms:SANS)、陰性症状評価(Negative Symptoms Assessmen:NSA)および欠陥症候群用調査票(Schedule for the Deficit Syndrome:SDS)。BPRSおよびPANSSの下位尺度は陽性症状の評価にも使用できるが、陽性症状を特異的に評価するための方法も利用することができる(例えば陽性症状評価尺度(Scale for the Assessment of Positive Symptoms)またはSAPS)。
【0109】
「統合失調症に関連する認知力低下」という用語は、統合失調症患者における認知力低下を指す。統合失調症における認知機能障害は、この疾病の中核的特徴である(すなわち処置の結果でも臨床症状でもない)。認知力低下には、注意力/覚醒性、作業記憶、言語学習および言語記憶、視空間記憶、推理/問題解決ならびに社会的認知の欠陥が含まれるが、これらに限るわけではない。統合失調症における認知力低下を測定するために使用される神経心理学的検査は、ウィスコンシンカード分類検査(Wisconsin Card Sorting Test:WCST)など、数多く存在する。
【0110】
「処置する」「処置」および「処置すること」という用語は、以下の一つ以上を指す:
(a)例えば喘息およびCOPDなどのアレルギー性障害および炎症性障害を含む、対象における障害の少なくとも一つの症状を、軽減または緩和すること;
(b)対象が体験する障害(刺激(例えば圧力、組織損傷、低温など)に応答して起こるものを含むが、それらに限るわけではない)の症状発現の強さおよび/または持続時間を軽減または緩和すること;
(c)発症を停止、遅延させ(すなわち障害の臨床症状発現以前の期間)、および/または障害の発生もしくは悪化のリスクを低減させること。
【0111】
本明細書で使用する用語「気分障害」には、DSM-IV-TRで指定された気分障害(大うつ病性障害などのうつ病性障害を含むが、これに限るわけではない)が包含される。
【0112】
「処置抵抗性うつ病」を患う患者には(1)最低6週間の継続期間にわたって持続的に投与された標準的用量(すなわち二重盲検試験においてプラセボより有意に優れる用量)の複数の抗うつ薬(例えば複数のSSRI)に応答できなかった患者、および(2)最低12週間の継続期間にわたって持続的に投与された標準的用量の一つの抗うつ薬(例えば一つのSSRI)(単剤療法)に応答できなかった患者が含まれる。ある患者のうつ病が、ある抗うつ薬に対して処置抵抗性であるかどうかを決定するための基準の一つは、1(非常に大きく改善した)または2(大きく改善した)の臨床全般印象改善(Clinical Global Impression-Improvement:CGI-I)スコアが、6、8、または12週間の試行の最後までに達成されるかどうかである。CGI-I尺度は、Guy, W.編「ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacology」改訂版、DHEW Pub. No. (ADM) 76-338、メリーランド州ロックビル、米国国立精神衛生研究所、1976で定義されている。
【0113】
「有効量」とは、ある状況、障害または状態を処置するために患者に投与された場合に、そのような処置を達成するのに十分であるような、本発明組成物の量を意味する。「有効量」は、活性成分、処置される状況、障害、または状態およびその重症度、ならびに処置される哺乳動物の年齢、体重、身体状態および応答性に依存して変動するだろう。本発明のある実施形態によれば、式(I)の化合物(例えば塩酸カリプラジン)とSSRI(例えばシュウ酸エスシタロプラム)とを含有する組成物の有効量は、中枢神経系障害、例えば統合失調症、大うつ病性障害、処置抵抗性大うつ病性障害、双極性うつ病、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、またはパニック発作などを処置するのに有効な量である。
【0114】
本治療化合物の投与が疾患または障害の有効な治療レジメンとなるような対象または患者は、好ましくはヒトであるが、試験またはスクリーニングもしくは活性実験との関連で実験動物を含む、任意の動物であることができる。したがって、当業者には容易に理解できるだろうが、本発明の方法、化合物および組成物は、任意の動物、特に哺乳動物(限定するわけではないが、ヒト、家畜、例えばネコまたはイヌ対象、農用動物、例えばウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、およびブタ対象(ただし、これらに限るわけではない)、野生動物(野生であるか、動物園にいるかを問わない)、研究動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど、鳥類、例えばニワトリ、七面鳥、鳴禽などを含む)への投与に、すなわち獣医学的使用に適している。
【0115】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定されるその特定値について許容されうる誤差範囲内であることを意味し、これは、一つにはその値が測定または決定される方法、すなわち測定システムの制約に依存する。例えば「約」は、当技術分野における慣例によれば、1(またはそれ以上の)標準偏差内であることを意味することができる。あるいは、組成物に関して「約」とは、±20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までの範囲を意味することもできる。
【0116】
実施例
以下の実施例は本発明の例示に過ぎず、本明細書を読んだ当業者には本発明によって包含される多くの変形および等価物が明白になるだろうから、以下の実施例が本発明の範囲を限定していると解釈してはならない。
【実施例1】
【0117】
自由行動ラットの前頭皮質中のアセチルコリン、ドーパミンおよびセロトニンの二重プローブ微小透析分析
塩酸カリプラジンの経口投与が、単独で、およびシュウ酸エスシタロプラム(皮下投与)との併用で、自由行動ラットの前頭皮質におけるアセチルコリン(ACh)、ドーパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)の細胞外濃度に及ぼす影響を決定するために、二重プローブ微小透析研究を行なった。
【0118】
動物および環境
実験は雄スプレーグ・ドーリーラット(体重250〜350g;Charles River、英国)で行なった。動物を、12時間/12時間の明/暗周期(7時30分に点灯)、21±2℃の周囲温度および55±20%の湿度で、6匹ずつの群にして収容した。食物および水を自由摂取させた。動物を、試験前の少なくとも5日間は、これらの条件に馴化させた。
【0119】
手術
ラットを、麻酔ユニット(St Bernard Medical Services、英国)によって送達されるO2/N2O(各1リットル/分)混合気中のイソフルラン(誘導には5%、維持には2%)で麻酔した。2mm露出ポリアリールエーテルスルホン(PAES)メンブレンチップ(CMA)を持つ同心微小透析プローブを、前頭前皮質(座標:ブレグマに対してAP:+3.2mm;L:±2.5mm;頭骨表面に対してV:-4.0mm;PaxinosおよびWatsonの脳定位図(Paxinos G, Watson C.「The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates」第2版、ロンドン:Academic Press、1986)から採用)中に、両側性に、定位的に植え込んだ。上顎切歯棒(upper incisor bar)は、ブレグマとラムダの間の頭骨表面が水平になるように、両耳間線(interaural line)の3.3mm下に設置した。各プローブの座標は、一方のプローブを正中線の左に設置し、他方を右に設置したので、側方測定値以外はブレグマから同一だった。各ラットにおいて同じ側からの試料を測定した(例えば左プローブはAChの測定に使用し、右プローブはDAおよび5-HTの測定に使用した)。追加の穿頭孔を頭骨ネジ(ステンレス鋼)用に作製し、歯科用セメントを用いてプローブを固定した。
【0120】
手術後は、動物を円形チャンバー(寸法:内径450mm、壁高320mm)に個別に収容し、自由な運動が可能なように微小透析プローブを液体スイベルおよびカウンターバランスアームに接続した。ラットには、食物と水を自由に摂取させる少なくとも16時間の回復期間を与えた。この期間中は、プローブに1.2μl/分の流速で、次の電解質組成(単位:mM)を持つ人口脳脊髄液(aCSF;Harvard Apparatus、英国)を持続的に灌流させた:ナトリウム 150;カリウム 3.0;マグネシウム 0.8;カルシウム 1.4;リン酸イオン 1.0;塩化物イオン 155.0。さらに、AChレベルを測定するプローブ用のaCSF灌流液には、これらの試料におけるAChの分解を防ぐコリンエステラーゼ阻害剤であるネオスチグミン(1μM)を含有させた。
【0121】
微小透析および薬物の投与
実験は手術の翌日に行なった。透析液試料は、薬物投与の80分前から薬物投与の240分後まで20分ごとに収集した(各プローブから全部で16試料:薬物前が4試料、薬物後が12試料)。試料は、神経伝達物質の酸化を防ぐために、5.0μlの0.1M過塩素酸(DAおよび5-HT測定用の試料のみ)を含有するエッペンドルフチューブに集めた。ACh試料は液体窒素を用いて直ちに瞬間冷凍し、DA/5-HT試料はドライアイス上で保存した。実験の完了後に、全ての試料を、分析まで-80℃で保存した。一方の試料セット中のDAおよび5-HTならびにもう一方のセット中のAchのHPLC分析は、実験に続く1週間の残りの期間に行なった。
【化4】

【0122】
塩酸カリプラジン(0.03、0.1および0.3mg/kg)または賦形剤(1%メチルセルロース)は、2ml/kg体重の投与体積を使用し、胃管法(po)により、皮下注射(投与体積1ml/kg体重)によって投与されるシュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg)または賦形剤(食塩水)と組み合わせて、経口経路で投与した。
【0123】
ドーパミンおよび5-HT分析
同じ透析試料中のDAと5-HTの両方を検出し、続いて定量するために、逆相イオン対HPLCを電気化学的検出と組み合わせて使用した。簡単に述べると、この方法では、ODS2(3μm粒子)を充填したSpherisil逆相カラム(150×2.1mm(内径);Capital HPLC、英国)を使用した。Gynkotek溶媒送達ポンプを用いて、移動相(10.5mM酢酸ナトリウム、0.27mM EDTA、2.5mM 1-オクタンスルホン酸、18%メタノール、0.18%氷酢酸、pH5.5)を、0.2ml/分の流速で循環させ、Jour X-Actインライン脱気ユニットを用いて空気を除去した。冷却トレイを4℃に設定したSpark Holland Triathlonオートサンプラーにより、試料(20μl)をカラムに注入した。Antec Intro電気化学検出器を使用し、高密度グラッシーカーボン作業電極(+7.0V)を使用するAntec VT-03セルをAg/AgCl基準電極と組み合わせた。Turbochromデータ収集システム(Perkin-Elmer)を用いて電極シグナルを積分した。DAおよび5-HTの原液(1.0mM)は、それらを等量の脱イオン水および0.1M過塩素酸(酸化を防止するため)に溶解することによって調製し、4℃で保存した。作業溶液はaCSFで希釈することによって毎日調製した。
【0124】
アセチルコリン分析
透析試料中のAchを検出し、続いて定量するために、UnijetマイクロボアACh/Chキット(BASi)を電気化学的検出と組み合わせて使用した。この方法では、分析カラム(1mm×530mm、5μm ODS)でAChを分離し、ポストカラムIMER(1mm×50mm、10μm AChE-ChOx)上に固定化されたアセチルコリンエステラーゼ(AChE)およびコリンオキシダーゼ(ChOx)の作用によって過酸化水素(H2O2)に変換した。その結果生じたH2O2を酵素修飾グラッシーカーボン電極の表面で還元した。高濃度のコリン(Ch)は時としてAchの定量を妨害しうるが、分析カラムの前に、固定化ChOxおよびカタラーゼを含有するプレカラムIMER(1mm×50mm、10μm ChOx/カタラーゼ)を追加することにより、試料中に存在するコリンは全て、クロマトグラフィー分離の前に除去した。Gynkotek溶媒送達ポンプを用いて、移動相(50mMオルトリン酸/脱イオン水、1%ProClin試薬(BASi)、pH8.5)を0.12ml/分の流速で循環させ、Jour X-Actインライン脱気ユニットを用いて空気を除去した。冷却トレイを4℃に設定したSpark Holland Triathlonオートサンプラーにより、試料(20μl)をカラムに注入した。Antec Intro電気化学検出器を使用し、高密度グラッシーカーボン作業電極(-0.1V)を使用するAntec VT-03セルをAg/AgCl基準電極と組み合わせた。Turbochromデータ収集システム(Perkin-Elmer)を用いて電極シグナルを積分した。AChの原液(1.0mM)は、それを標準希釈溶液に溶解することによって調製し、4℃で保存した。作業溶液は標準希釈剤で希釈することによって毎日調製した。
【0125】
組織検査
実験の最後にラットを屠殺し、その脳を素速く摘出し、最低5日間は10%v/vホルマリン生理食塩水に保存した。切片(100μm)をビブラトームで切断し、プローブ配置を可視化し、脳定位図(Paxinos G, Watson C.「The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates」第2版、ロンドン:Academic Press、1986)を参照して、その位置を特定した。プローブメンブレンが正しく前頭皮質中に位置する動物からのデータだけを報告した。
【0126】
薬物および試薬
塩酸カリプラジンは室温で保存した。製剤中は1.09の係数を使用した。全ての薬物用量は遊離塩基を指す。薬物の原液(0.1635mg/ml)は、各実験日ごとに、薬物投与の30分以内に、1%メチルセルロースを加え、温水下で穏やかに撹拌することにより、新しく調製した。さらなる薬物溶液は、原液の希釈によって調製した。
【0127】
シュウ酸エスシタロプラムは室温で保存した。製剤中は1.28の係数を使用した。全ての薬物用量は遊離塩基を指す。薬物の溶液(1.28mg/ml)は、各実験日ごとに、薬物投与の30分以内に、生理食塩水を加え、温水下で穏やかに撹拌することにより、新しく調製した。1M NaOHを滴下することによって溶液を緩衝化した(pH範囲6.8〜7.6)。
【0128】
HPLC分析に使用した試薬は全てHPLCグレードとした。EDTA、メタノール、1-オクタンスルホン酸、過塩素酸、氷酢酸、酢酸ナトリウム、オルトリン酸、10%ホルマリン生理食塩水およびメチルセルロースはFisher Scientific(英国)から入手した。ドーパミン塩酸塩および5-ヒドロキシトリプタミン・クレアチニン・硫酸塩はSigma Chemical Company(英国)から購入し、アセチルコリン塩化物はBASi(英国)から購入した。
【0129】
統計解析
全ての実験において、薬物前データおよび薬物後データを対数変換し、4つの薬物前値を平均して基礎値を得た。結果を逆変換した。こうして、ベースライン時における処置群間の相違について、平均を調整した。時折クロマトグラフィーに問題が生じたため、分析した全ての試料からデータが得られたわけではない。したがって、現実のn値は、各データポイントごとに異なる。処理後時点のそれぞれにおいて、(対数)ベースラインを共変量とし、処置を要因として、一元配置共分散分析(ANCOVA)を使用した。各用量の塩酸カリプラジンおよび生理食塩水を、ウィリアムズ検定によって、1%メチルセルロースおよび食塩水と比較した。各用量の塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムを、ウィリアムズ検定によって、1%メチルセルロースおよびシュウ酸エスシタロプラムと比較した。各用量の塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムを、多重t検定によって、同じ用量の塩酸カリプラジンおよび生理食塩水と比較した。初期解析では、スチューデント化残差を算出した。スチューデント化残差の大きさが3を超えた場合は、その試料を解析から除外した。
【0130】
塩酸カリプラジンのみ(0.03、0.1および0.3mg/kg、po)の投与は、前頭皮質におけるDAの放出に対して有意な影響を持たなかった。シュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg、sc)は、基礎DAレベルに対して影響を持たなかった。
【0131】
シュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg、sc)と組み合わされた塩酸カリプラジン(0.03および0.1mg/kg、po)は、対応する賦形剤処置対照と比較して、DAレベルに対して影響を持たなかった。塩酸カリプラジン(0.3mg/kg、po)+シュウ酸エスシタロプラムは、薬物投与の80分後および200分後に、塩酸カリプラジン+生理食塩水処置対照と比較して、DA放出の小さいが有意な減少(それぞれ-33%および-40%)をもたらした。
【0132】
塩酸カリプラジンのみ(0.03、0.1および0.3mg/kg、po)の投与は、前頭皮質における5-HTの放出に対して有意な影響を持たなかった。シュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg、sc)は、基礎5-HTレベルに対して影響を持たなかった。塩酸カリプラジン(0.03mg/kg、po)+シュウ酸エスシタロプラムは、塩酸カリプラジン+生理食塩水処置対照と比較して、薬物投与の120分後に、5-HT放出の小さいが有意な減少(-33%)をもたらした。塩酸カリプラジン(0.1mg/kg、po)+シュウ酸エスシタロプラムは、塩酸カリプラジン+生理食塩水処置対照と比較して、薬物投与の60分後に、5-HT放出の有意な増加(106%)をもたらした。塩酸カリプラジン(0.3mg/kg、po)+シュウ酸エスシタロプラムは、塩酸カリプラジン+生理食塩水処置対照と比較して、薬物投与の200分後および240分後に、5-HT放出の小さいが有意な減少(それぞれ-32%および-48%)をもたらした。
【0133】
塩酸カリプラジンのみ(0.03、0.1および0.3mg/kg、po)の投与は、前頭皮質におけるAChの放出に対して有意な影響を持たなかった。シュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg、sc)は、賦形剤+生理食塩水処置対照と比較して、投与の100分後および240分後に、基礎AChレベルの有意な減少(それぞれ-55%および-56%)をもたらした。
【0134】
シュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg、sc)と組み合わされた塩酸カリプラジン(0.03、0.1および0.3mg/kg、po)は、対応する賦形剤処置対照と比較して、AChレベルに対して影響を持たなかった。
【0135】
塩酸カリプラジンは、0.03、0.1および0.3mg/kg poにおいて、ラット前頭皮質におけるDA、5-HTおよびAChの細胞外レベルに対して影響を持たなかった。シュウ酸エスシタロプラム(1.0mg/kg sc)は、2つの時点でAChの小さな減少があった他は、これらの神経伝達物質に対して、ほとんどまたは全く影響を持たなかった。
【0136】
組み合わせて投与された塩酸カリプラジンおよびエスシタロプラムも、ラット前頭皮質におけるDA、5-HTおよびAChの細胞外レベルに対してほとんど影響を持たなかった。
【実施例2】
【0137】
うつ病の慢性軽度ストレスモデルにおける塩酸カリプラジン
この研究では、うつ病の慢性軽度ストレス(CMS)モデルにおいて、塩酸カリプラジンの抗うつ薬効果を評価した。三環系抗うつ薬化合物イミプラミンの効力との比較も行なった。
【0138】
雄ウィスターラットを3週間にわたって研究室および収容条件に適応させた後、さらに5週間にわたって1%ショ糖溶液の消費に適応させてから、対照群とストレス負荷群とに分けた。
【0139】
慢性ストレスを、割り当てられた群に、7週間にわたって与えた。次のストレス要因を使用した:絶食および/または絶飲、ケージ傾斜(45度後向き)、間欠的照明、ペア収容、汚損ケージ(おがくず敷料に250mLの水道水)、ストロボ照明(毎分150回の閃光)、ストレスなし。全てのストレス要因を10〜14時間継続させ、個別かつ継続的に、週に1回または2回、日中および夜に与えた。
【0140】
実験全体にわたって週に1回、全ての動物(すなわち対照動物およびストレス負荷動物)で行なわれる1時間試験で、ショ糖溶液の消費を測定した。この試験の前に14時間にわたる絶飲食を行なった。最初の2週間のストレス後のショ糖摂取量に基づいて、ストレス負荷動物と対照動物の両方に、賦形剤(1%メチルセルロース、1mL/kg)、塩酸カリプラジン(0.0625、0.25または1.0mg/kg)、または基準処置としてのイミプラミン(10mg/kg)を1日1回、慢性的に(5週間)、IP注射した。薬物は大体午前10時00分に投与し、週1回のショ糖試験を最後の薬物注射の24時間後に行なった。ストレスは処置期間の全体にわたって負荷し続けた。典型的には、各群において、8匹中2〜3匹が薬物処置に応答しなかった。これらの動物は弱いレスポンダー/非レスポンダーとみなし、解析からは除外した。
【0141】
賦形剤(1%メチルセルロース、1mL/kg、IP、1日1回)およびイミプラミン(10mg/kg、IP、1日1回)による慢性処置が、対照動物(白抜き記号)およびCMSに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を図1に示す。
【0142】
賦形剤(1%メチルセルロース、1mL/kg、IP、1日1回)および塩酸カリプラジン(0.065および0.25mg/kg、IP、1日1回)による慢性処置が、対照動物(白抜き記号)およびCMSに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を、図2に示す。
【0143】
CMSは、1%ショ糖溶液の消費量をかなり減少させた。この減少はイミプラミンによる慢性処置により完全に逆転した。
【0144】
0.065および0.25mg/kgの用量で投与された塩酸カリプラジンは、ストレス負荷動物におけるショ糖飲用量を、用量依存的に増加させ、対照(非ストレス負荷)動物では有意な影響を持たなかった。最も活性な用量である0.065mg/kgの効果の強さは、イミプラミンの効果よりも大きかった。また、この用量の塩酸カリプラジンは作用の開始も速く、イミプラミンの効果が明白になったのは3週目だったのに対して、1週目にはショ糖飲用量の増加が明白になった。
【0145】
試験した最高用量の塩酸カリプラジン、1mg/kgは、CMSモデルでは不活性だった。この用量では、塩酸カリプラジンは、ストレス負荷動物におけるショ糖摂取量を変化させず、対照動物におけるショ糖消費量を有意に減少させた。1mg/kg用量は強く鎮静的な用量であり、この用量では、この化合物のD2アンタゴニスト性が優勢になって、非ストレス負荷動物においてさえ、ショ糖摂取量の減少をもたらしうる。
【実施例3】
【0146】
うつ病の慢性軽度ストレスモデルにおける塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラム
実施例2で述べた研究と同様に、うつ病の慢性軽度ストレスモデルにおいて、単独で投与された、またはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与された、塩酸カリプラジンの抗うつ薬効果をさらに評価するために、さらなる研究を企てた。
【0147】
慢性軽度ストレス(CMS)モデルでは、長期間にわたって種々の軽度ストレス要因にさらされたラットが、報酬刺激に対するその応答性の実質的な減少を示す。この欠損は、通常、1%ショ糖溶液の消費量の減少によってモニターされるが、場所嗜好性条件付けまたは脳内自己刺激などの他の試験でも見ることができる。報酬に対する弱感受性は、大うつ病性障害の中核症状である快感消失(喜びを覚えることができないこと)を反映するようでもある。臨床使用が承認された抗うつ薬は、ショ糖消費量に対するCMSの影響を逆転させることにより、この動物モデルにおいて活性を示している。例えばSanchez C, Gruca P, Papp M, Behavioural Pharmacology 14, 465-470, 2003を参照されたい。
【0148】
動物
実験開始の2ヶ月前に、雄ウィスターラット(Charles River、ドイツ)を、実験室に持ち込んだ。下記の例外を除いて、動物は、食物および水を自由に摂取させて、一匹ずつ収容し、12時間明/暗条件ならびに一定した温度条件(22±2℃)および湿度条件(50±5%)で維持した。
【0149】
ストレス負荷手順
まず、1%ショ糖溶液を消費するように、動物を訓練した。訓練は、9回の1時間ベースライン試験からなり、各試験中は、14時間の絶飲食後に、ホームケージ内でにショ糖を提示した。ショ糖摂取量は、事前に計量しておいたショ糖溶液含有ボトルを試験の最後に計量することによって測定した。次に、実験全体を通して、1週間間隔で、同様の条件下において、ショ糖消費量をモニターした。
【0150】
最終ベースライン試験におけるそれぞれのショ糖摂取量に基づいて、動物を二つの対応群に分割した。一方の動物群を連続7週間にわたって慢性軽度ストレス負荷手順に供した。ストレスレジメンの各週は、2回の絶食または絶飲期間、2回の45度ケージ傾斜期間、2回の間欠的照明期間(2時間ごとの点灯および消灯)、2回の汚損ケージ期間(おがくず敷料に250mlの水)、1回のペア収容期間、2回の低強度ストロボ照明期間(閃光150回/分)、および3回のストレスなし期間からなった。全てのストレス要因を10〜14時間の継続期間とし、日夜、個別かつ継続的に適用した。対照動物は別個の部屋に収容し、ストレス負荷動物とは接触させなかった。各ショ糖試験前の14時間はそれらを絶飲食させたが、その他は、ホームケージ内で食物および水を自由に摂取させた。
【0151】
薬物投与
最初の2週間のストレス後のそれぞれのショ糖摂取スコアに基づいて、ストレス負荷動物をさらに、対応サブグループ(各群n=8)に分割し、以後5週間にわたって、それらに、賦形剤(1%メチルセルロース、1ml/kg)、塩酸カリプラジン(0.01、0.03および0.065mg/kg)のみ、シュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg)のみ、またはシュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg)と組み合わせた塩酸カリプラジン(0.01および0.03mg/kg)を、1日1回、腹腔内注射した。一つの対照群、非ストレス負荷動物(n=8)には、同様に賦形剤(1%メチルセルロース、1ml/kg)を投与した。薬物は大体10時00分に投与し、週1回のショ糖試験を最後の薬物注射の24時間後に行なった。ストレスは処置期間の全体にわたって負荷し続けた。塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの用量は、体重1kgあたりの遊離塩基のmg数として表す。
【0152】
統計
この研究で得られた全ての結果を、3つの対象間要因(ストレス/対照、薬物処置および連続的ショ糖試験)による多重分散分析で解析した。平均の事後比較にはフィッシャーのLSD検定を使用した。
【0153】
慢性軽度ストレスは1%ショ糖溶液の消費量の漸減を引き起こした。最終ベースライン試験では、全ての動物が約13gのショ糖溶液を飲んだ。最初の2週間のストレス後に、対照では、摂取量が同様のレベルに留まっていたが、ストレス負荷動物では7.5gまで低下し、有意な群効果をもたらした[F(1,62)=92.179;p<0.001]。賦形剤で処置した対照動物とストレス負荷動物の間のそのような差は、実験の残りの期間も同様のレベルで持続した。
【0154】
図3は、賦形剤(1%メチルセルロース、1ml/kg、IP、1日1回)およびシュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg、IP、1日1回)による慢性処置が、対照動物(白抜きの記号)および慢性軽度ストレスに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す。処置は2週間のストレス後に開始した。値は平均±SEM(平均の標準誤差)である。
【0155】
賦形剤投与と比較して、シュウ酸エスシタロプラムは、全てのストレス負荷働物においてショ糖消費量を漸増させ、有意な処置効果[F(1,84)=27.447;p<0.001]および処置×週数交互作用[F(5,84)=4.135;p=0.002]をもたらした。
【0156】
0週目スコアと比較して、シュウ酸エスシタロプラムを投与したストレス負荷動物におけるショ糖摂取量の増加は、3週間の処置後に統計的有意に至り(p=0.024)、この効果はその後も強化された。
【0157】
図4は、賦形剤、シュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg、IP、1日1回)および塩酸カリプラジン(0.065mg/kg塩基、IP、1日1回)による慢性処置が、対照動物(白抜きの記号)および慢性軽度ストレスに曝された動物(黒塗りの記号)における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す。処置は2週間の初回ストレス後に開始した。値は平均±SEMである。
【0158】
賦形剤投与と比較して、塩酸カリプラジンは、ストレス負荷動物におけるショ糖消費量を漸増させ、有意な処置効果をもたらした[F(1,84)=37.782;p<0.001]が、処置×週数交互作用はなかった[F(5,84)=2.057;p=0.0784]。
【0159】
0週目スコアと比較して、塩酸カリプラジンを投与したストレス負荷動物におけるショ糖摂取量の増加は、最初の1週間の処置後に統計的有意に至り(p=0.009)、この効果はその後も維持され、強化された。1匹のストレス負荷動物は、0.065mg/kgの塩酸カリプラジンに対してかなり弱い応答を示したが、解析からは除外しなかった。
【0160】
図5は、賦形剤、シュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg、IP、1日1回)、および単独で、またはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与される、塩酸カリプラジン(0.03mg/kg塩基、IP、1日1回)による慢性処置が、慢性軽度ストレスに曝された動物における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す。処置は2週間の初回ストレス後に開始した。値は平均±SEMである。
【0161】
賦形剤投与と比較して、塩酸カリプラジンは単独で、ストレス負荷動物におけるショ糖消費量を漸増させ、有意な処置効果をもたらしたが[F(1,84)=16.437;p<0.001]、処置×週数交互作用はなかった[F(5,84)=1.819;NS]。
【0162】
0週目スコアと比較して、塩酸カリプラジンを投与したストレス負荷動物におけるショ糖摂取量の増加は、4週間の処置後に統計的有意に至り(p=0.003)、この効果はその後も強化された。2匹のストレス負荷動物は0.03mg/kgの塩酸カリプラジン処置に対してかなり弱い応答を示したが、解析からは除外しなかった。
【0163】
賦形剤投与と比較した場合、シュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与された塩酸カリプラジンも同様の効果、すなわちストレス負荷動物におけるショ糖消費量の漸増を生じ、有意な処置効果をもたらしたが[F(1,84)=12.595;p<0.001]、処置×週数交互作用はなかった[F(5,84)=1.639;NS]。
【0164】
0週目スコアと比較して、塩酸カリプラジンを投与したストレス負荷動物におけるショ糖摂取量の増加は、3週間の処置後に統計的有意に至り(p=0.032)、この効果はその後も強化された。3匹のストレス負荷動物は、塩酸カリプラジン(0.03mg/kg)とシュウ酸エスシタロプラムの複合注射に対して弱い応答または応答の欠如を示したが、解析からは除外しなかった。
【0165】
図6は、賦形剤、シュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg、IP、1日1回)、および単独で、またはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与される塩酸カリプラジン(0.01mg/kg塩基、IP、1日1回)による慢性処置が、慢性軽度ストレスに曝された動物における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す。処置は2週間の初回ストレス後に開始した。値は平均±SEMである。
【0166】
賦形剤投与と比較して、塩酸カリプラジンは、単独で投与した場合に、ショ糖消費量を有意に減少させたが[処置効果:F(1,84)=5.035;p=0.027、処置×週数交互作用[F(5,84)=0.561;NS]、この効果は0週目スコアと比較して統計的に有意には至らなかった。
【0167】
シュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与した場合、塩酸カリプラジンは、最初の2週間の処置中にショ糖消費量を減少させ、最後の2週間では摂取量を増加させて、有意でない処置効果[F(1,84)=0.12;NS]および処置×週数交互作用[F(5,84)=1.562;NS]をもたらした。0.1mg/kgの塩酸カリプラジン+シュウ酸エスシタロプラムを与えた3匹の動物は、処置期間の最後に、0週目の値に対してショ糖消費量の強化を示さなかった。
【0168】
図7は、塩酸カリプラジン(0.01、0.03および0.065mg/kg)のみ、シュウ酸エスシタロプラム(2mg/kg)のみ、またはシュウ酸エスシタロプラムと組み合わされた塩酸カリプラジン(0.01および0.03mg/kg)による慢性処置が、慢性軽度ストレスに曝された動物における1%ショ糖溶液の消費に及ぼす影響を示す。処置は2週間の初回ストレス後に開始した。値は平均±SEMである。
【0169】
ストレス負荷手順を開始する前(ベースライン)はストレス負荷予定の動物の方が対照動物よりわずかに小さく(それぞれ418gおよび433g)、最初の2週間のストレス後(0週目)は、この差が大きくなって、有意な群効果をもたらした[F(1,62)=8.310;p=0.005]。
【0170】
賦形剤処置群と比較して、シュウ酸エスシタロプラム[F(1,14)=0.157;NS]、塩酸カリプラジンのみ[0.065mg/kg:F(1,14)=2.111;NS、0.03mg/kg:F(1,14)=0.406;NS、0.01mg/kg:F(1,14)=1.229;NS]、シュウ酸エスシタロプラムと組み合わされた塩酸カリプラジン[0.03mg/kg:F(1,14)=0.308;NS、0.01mg:F(1,14)=0.022;NS]はいずれも、ストレス負荷動物の体重に影響を及ぼさなかった。
【0171】
この研究の結果は、このCMS手順が1%ショ糖溶液消費量の実質的な減少を引き起こすこと、およびシュウ酸エスシタロプラムによる慢性処置によってこの欠損を完全に逆転させうること(最初の有意な効果まで3週間)を示している。基準処置として並行研究で試験したイミプラミンの効果も、3週間の投与後に有意に至った。
【0172】
塩酸カリプラジンはうつ病のCMSモデルにおいて活性であるらしく、0.065および0.03mg/kgの用量で単独投与した場合、この化合物はストレス負荷動物におけるショ糖飲用量を漸増させた。
【0173】
塩酸カリプラジンの作用の強さはシュウ酸エスシタロプラムのそれに匹敵したが(処置期間の最後に完全な回復)、最も高活性な用量である0.065mg/kgの作用の開始はかなり速く、最初の有意な効果は(用量0.03mg/kgの塩酸カリプラジおよびシュウ酸エスシタロプラムが3週間を要したのに対して)最初の1週間の投与後には早くも観察され、この効果はその後も強化された。
【0174】
シュウ酸エスシタロプラムと組み合わせて投与された塩酸カリプラジンは、両方の化合物を単独で注射した後に観察されるものと(強さの点でも作用の開始の点でも)同様の効果を引き起こした。
【0175】
最も低い用量である0.01mg/kgでは、単独で投与した場合に、塩酸カリプラジンがショ糖消費量を減少させ、シュウ酸エスシタロプラムは、最後の2週間の処置中に、この減少を逆転させた。
【実施例4】
【0176】
A:マウスアンフェタミン-クロルジアゼポキシド多動モデルにおける抗躁病効果に関する塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの評価
アンフェタミン/クロルジアゼポキシド(AMPH/CDP)多動試験を用いて、塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムを、抗躁病効果について評価した。
【0177】
動物
この研究にはJackson Laboratories(メーン州バーハーバー)から入手した雄C57Bl/6Jマウスを使用した。マウスを6週齢で受け取った。受領したらすぐにマウスに固有の識別番号を割り当て(尾に印をつけた)、4匹/ケージで群収容した。研究の残りの期間は、全ての動物を、4匹ずつの群で収容しておいた。全てのマウスを試験に先だって少なくとも2週間はコロニー室に馴化させてから、平均8週齢で試験した。十分な健康および適合性を保証するために、馴化期間中は、マウスを定期的に検査し、世話をし、体重を測定した。マウスは12/12 明/暗周期で維持した。室温は20〜23℃に維持し、相対湿度は30〜70%に維持した。研究の継続期間中は飼料および水を自由に摂取させた。各試験では動物を処置群にランダムに割り当てた。
【0178】
薬物投与
以下の化合物を使用した:
・d-アンフェタミン硫酸塩(Sigma、4.0mg/kg)およびクロルジアゼポキシド(CDP;Sigma、2.5mg/kg)を滅菌水に溶解し、10ml/kgの投与体積で腹腔内投与した。
・バルプロエート(VPA;Sigma、ロット064K1585、400mg/kg)を滅菌水に溶解し、水またはd-アンフェタミン/CDP混合物の30分前に、10ml/kgの投与体積で腹腔内投与した。
・塩酸カリプラジン(0.03、0.10、および0.30mg/kg)およびシュウ酸エスシタロプラム(0.5、2.0、および5.0mg/kg)を滅菌水に溶解し、水またはd-アンフェタミン/CDP混合物の60分前に、10ml/kgの投与体積で経口投与した。塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの用量は、体重1kgあたりの遊離塩基のmg数で表す。
【0179】
方法
オープンフィールド試験(OF)を用いて不安様行動と運動活性の両方を評価する。オープンフィールドチャンバーは、赤外線ビーム源(16×16×16)で囲まれたプレキシガラス製の正方形チャンバー(27.3×27.3×20.3cm;Med Associates Inc.、ヴァーモント州セントオルバンズ)である。移動距離は連続的なビーム遮断によって測定される。試験セッション中の総移動距離を活性の指標として使用した。水、塩酸カリプラジンもしくはシュウ酸エスシタロプラムによる前処置の60分後、またはバルプロエートによる前処置の30分後に、水またはd-アンフェタミン/CDP混合物(「混合物」)をマウスに注射し、OFチャンバーに入れて、60分間の試験セッションを行なった。各オープンフィールド試験セッションの最後に、OFチャンバーを徹底的に清掃した。
【0180】
統計解析
データを分散分析(ANOVA)によって解析し、適切な場合は、続いてフィッシャーPLSD事後解析を行なった。p<0.05ならば、効果は有意であるとみなした。平均から上下に2標準偏差を超えて外れた異常値は、最終解析から除外した。
【0181】
塩酸カリプラジンまたはシュウ酸エスシタロプラムで処置したマウスは、前処置または試験中に毒性または鎮静の徴候を示さなかった。
【0182】
総移動距離
躁病のアンフェタミン-クロルジアゼポキシドマウスモデルにおいてさまざまな処置レジメンがもたらす効果(すなわち60分間の試験期間にわたって合計した総移動距離)の要約を、表1〜4に示す。
【0183】
表1:塩酸カリプラジンまたはシュウ酸エスシタロプラムの投与がマウスの基礎自発運動活性に及ぼす影響
【表1】

#賦形剤処置対照に対して有意差(p<0.05)
【0184】
バルプロエートも、シュウ酸エスシタロプラム(0.5、2.0、および5.0mg/kg)も、水処置マウスと比較して、基礎活性に対して有意な影響を持たなかった。塩酸カリプラジン(0.30mg/kg)は、水と比較して、マウスの基礎活性を有意に減少させ(p=0.032)、0.10mg/kg塩酸カリプラジンは、水と比較して、基礎自発運動活性を有意に減少させる傾向を示した(p=0.090)。
【0185】
表2
【表2】

#水対照に対して有意差(p<0.05)
【0186】
d-アンフェタミン/クロルジアゼポキシド混合物(AMPH/CDP)の投与は、水と比較して、自発運動活性の著しい増加をもたらした。
【0187】
表3
【表3】

*賦形剤処置群に対して有意差(p<0.05)
【0188】
バルプロエートの投与は、マウスにおけるd-アンフェタミン/クロルジアゼポキシド混合物(AMPH/CDP)誘発性多動を有意に減少させた。
【0189】
表4:塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの投与がマウスにおけるd-アンフェタミン/クロルジアゼポキシド混合物(AMPH/CDP)誘発性多動に及ぼす影響
【表4】

*賦形剤処置群に対して有意差(p<0.05)
【0190】
バルプロエート(400mg/kg)および塩酸カリプラジン(0.10および0.30mg/kg)は、水と比較して、混合物誘発性多動を有意に減少させた(p<0.0001)。シュウ酸エスシタロプラム(5.0mg/kg)は、水と比較して、混合物誘発性多動を増加させた(p=0.003)。シュウ酸エスシタロプラム(0.5mg/kg)は、水と比較して、混合物誘発性多動を有意に減少させる傾向を示した(p=0.077)。
【0191】
B:マウスアンフェタミン-クロルジアゼポキシド多動モデルにおける抗躁病効果に関する塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの評価
アンフェタミン/クロルジアゼポキシド(AMPH/CDP)多動試験を用いて、塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムを、抗躁病効果について評価した。
【0192】
動物
この研究にはJackson Laboratories(メーン州バーハーバー)から入手した雄C57Bl/6Jマウス(8週齢)を使用した。受領したらすぐにマウスに固有の識別番号を割り当て(尾に印をつけた)、OPTIマウス換気ケージに群収容した(4匹/ケージ)。研究の残りの期間は、全ての動物を、4匹ずつの群で収容しておいた。十分な健康および適合性を保証するために、馴化期間中は、マウスを定期的に検査し、世話をし、体重を測定した。マウスは12/12 明/暗周期で維持した。室温は20〜23℃に維持し、相対湿度は30〜70%に維持した。研究の継続期間中は飼料および水を自由に摂取させた。各試験では動物を処置群にランダムに割り当てた。
【0193】
薬物投与
以下の化合物を使用した:
・d-アンフェタミン硫酸塩(Sigma、4.0mg/kg)およびクロルジアゼポキシド(CDP;Sigma、2.5mg/kg)を滅菌水に溶解し、10ml/kgの投与体積で腹腔内投与した。
・バルプロエート(VPA;Sigma、400mg/kg)を滅菌水に溶解し、水またはd-アンフェタミン/CDP混合物の30分前に、10ml/kgの投与体積で腹腔内投与した。
・塩酸カリプラジン(0.03および0.10mg/kg)およびシュウ酸エスシタロプラム(0.1および0.50mg/kg)を滅菌水に溶解し、水またはd-アンフェタミン/CDP混合物の60分前に、10ml/kgの投与体積で経口投与した。塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの用量は、体重1kgあたりの遊離塩基のmg数で表す。
【0194】
方法
オープンフィールド試験(OF)を用いて不安様行動と運動活性の両方を評価した。オープンフィールドチャンバーは、赤外線ビーム源(16×16×16)で囲まれたプレキシガラス製の正方形チャンバー(27.3×27.3×20.3cm;Med Associates Inc.、ヴァーモント州セントオルバンズ)である。移動距離は連続的なビーム遮断によって測定される。試験セッション中の総移動距離を活性の指標として使用した。水、バルプロエートもしくは試験化合物(塩酸カリプラジン、シュウ酸エスシタロプラム)による前処置後に、水またはd-アンフェタミン/CDP混合物(「混合物」)をマウスに注射し、OFチャンバーに入れて、60分間の試験セッションを行なった。各オープンフィールド試験セッションの最後に、OFチャンバーを徹底的に清掃した。
【0195】
統計解析
データを分散分析(ANOVA)によって解析し、適切な場合は、続いてフィッシャーPLSD事後解析を行なった。p<0.05ならば、効果は有意であるとみなした。平均から上下に2標準偏差を超えて外れた異常値は、最終解析から除外した。
【0196】
試験した化合物はいずれも前処置または試験中にどんな臨床徴候も生じなかった。
【0197】
総移動距離
躁病のアンフェタミン-クロルジアゼポキシド(AMPH/CDP)マウスモデルにおいてさまざまな処置レジメンがもたらす効果(すなわち60分間の試験期間にわたって合計した総移動距離)の要約を、表5〜8に示す。
【0198】
表5
【表5】

【0199】
水と比較して、表5に示す薬物処置は、マウスの基礎自発運動活性に対して有意な影響を生じなかった。
【0200】
表6
【表6】

#水対照に対して有意差(p<0.05)
【0201】
混合物(CDP+アンフェタミン)で処置したマウスは、水処置マウスと比較して有意に高い自発運動活性を示した。
【0202】
表7
【表7】

*賦形剤処置群に対して有意差(p<0.05)
【0203】
バルプロエート(400mg/kg)の投与は、マウスにおけるd-アンフェタミン/クロルジアゼポキシド混合物(AMPH/CDP)誘発性多動を有意に減少させた。
【0204】
表8:塩酸カリプラジンおよびシュウ酸エスシタロプラムの単独での投与または併用投与が、マウスにおけるd-アンフェタミン/クロルジアゼポキシド混合物(AMPH/CDP)誘発性多動に及ぼす影響
【表8】

*賦形剤処置群に対して有意差(p<0.05)
カリプラジンHCl(0.10mg/kg)処置群に対して有意差(p<0.05)
エスシタロプラム(0.10mg/kg)処置群に対して有意差(p<0.05)
エスシタロプラム(0.50mg/kg)処置群に対して有意差(p<0.05)
【0205】
CDP+アンフェタミン混合物によってもたらされる強化された移動運動活性は、バルプロエートおよび塩酸カリプラジン(0.10mg/kg)によって有意に減じられた。シュウ酸エスシタロプラムは、単独では、試験したどちらの用量でも、混合物誘発性移動運動活性に対して有意な影響を持たなかった。塩酸カリプラジン(0.10mg/kg)とシュウ酸エスシタロプラム(0.10および0.50mg/kg)の組合せは、混合物誘発性多動を有意に減少させた。また、この組合せによってもたらされる減少は、塩酸カリプラジン(0.10mg/kg)のみによってもたらされるものよりも、その規模が有意に大きかった。低用量の塩酸カリプラジン(0.03mg/kg)とシュウ酸エスシタロプラム(0.10mg/kg)の組合せも、混合物誘発性移動運動活性の有意な減少をもたらした。
【実施例5】
【0206】
塩酸カリプラジンとシュウ酸エスシタロプラムとの組合せが、マウス脳グリコーゲンシンターゼキナーゼ3活性に及ぼす影響
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK)は、ニューロン機能を調節する重要な酵素である。異常なGSK3活性は気分障害および統合失調症に関連づけられている。
【0207】
この研究の目的は、塩酸カリプラジンとシュウ酸エスシタロプラムの組合せを、マウス脳におけるGSK3のリン酸化を刺激する能力について評価することである。
【0208】
動物および環境
実験はJackson Laboratories(メーン州バーハーバー)から入手した成体雄C57BL/6で行なわれる。実験前に、動物を、23℃のケージに、12時間明/12時間暗サイクルで、食物および水を自由に摂取させて、4匹または5匹ずつ収容する。
【0209】
薬物投与
LiCl(200mg/kg)を基準化合物として使用し、賦形剤注射動物を対照として使用する。リチウムを滅菌注射用水に溶解し、動物を屠殺する30分前に10ml/kgの投与体積でIP投与する。動物を屠殺する60分前に、滅菌注射用水に溶解した塩酸カリプラジンを0.2mg/kgの用量(10ml/kgの投与体積)で経口投与(胃管法)する。用量はmg遊離塩基/kg体重として表す。動物を屠殺する60分前に、滅菌注射用水に溶解したシュウ酸エスシタロプラムを、1mg/kgの用量(10ml/kgの投与体積)で皮下(SC)投与する。用量はmg遊離塩基/kg体重として表す。動物を屠殺する60分前に塩酸カリプラジン(0.2mg/kg PO)とシュウ酸エスシタロプラム(1mg/kg SC)とを同時投与した後、この組合せの効果を評価する。
【0210】
抗体
抗ホスホ-GSK-3α/β Ser-21/9は、Cell Signaling Technology(マサチューセッツ州ベバリー)から購入することができる。抗DARPP-32はBD Transduction Laboratories(ケンタッキー州レキシントン)から入手することができる。
【0211】
GSK-3活性アッセイ
キナーゼ活性をそれぞれ決定するために、マウス脳のさまざまな領域を氷冷面上で素速く切り出し、溶解緩衝液(20mM Tris,pH8.0/137mM NaCl/10%グリセロール/1%Nonidet P-40/0.5mMオルトバナジウム酸ナトリウム/2μMオカダ酸およびプロテアーゼ阻害剤の混合物(Sigma-Aldrich))中、4℃でホモジナイズする。2μgの抗GSK-3α/βモノクローナル抗体およびプロテインAセファロース(Amersham Pharmacia Bioscience)を用いて、1mgのタンパク質抽出物から4℃で、GSK-3αおよび-3βを免疫沈降させる。次に、免疫沈降物を、アッセイ緩衝液(20mM Tris,pH7.5/10mM MgCl2/5mM DTT/0.2mM ATP/0.5μCiの[γ-32P]ATP)中、0.5μgの組換えホスファターゼインヒビター2(New England Biolabs)と共に、30℃で10分間インキュベートする。対照アッセイも、GSK-3阻害剤阻害剤ケンパウロン(Kenpaullone)(2μM、Sigma-Aldrich)の存在下で行なう。レムリ(Laemmli)ローディング緩衝液の添加によって反応を停止させ、5分間煮沸し、SDS/10%PAGEで分離する。次にゲルをクマシーブルーで染色し、オートラジオグラフィーに供する。組換えホスファターゼインヒビター2への32Pの取り込みをデンシトメトリーによって測定する。
【0212】
解析
この研究で得られる結果は全て、LiCor装置を用いる赤外分光光度法によって定量され、解析される。
【0213】
塩酸カリプラジンとシュウ酸エスシタロプラムとの組合せの投与は、単独で投与された各化合物と比較すると、マウス脳におけるGSK3のリン酸化を相乗的に刺激するだろう。
【0214】
本発明は、本明細書に記載する具体的実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、上述の説明から当業者には、本明細書に記載する実施形態の他に、本発明のさまざまな変更実施形態が明白になるだろう。そのような変更実施形態は添付の請求項の範囲に包含されるものとする。さらに、全ての値は近似値であり、説明のために記載されていることも、理解されるべきである。
【0215】
本明細書で言及する特許出願、特許および刊行物の開示は全て、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤および式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルもしくはアロイルであるか、またはR1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環式環を形成し;
XはOまたはSであり;
nは1または2である]
またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物がトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミンまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物がトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン塩酸塩である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンまたはそれらの薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシュウ酸エスシタロプラムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤が臭化水素酸エスシタロプラムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシュウ酸エスシタロプラムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤が臭化水素酸エスシタロプラムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
中枢神経系の障害を処置する方法であって、その必要がある患者に、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項12】
障害が気分障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
気分障害が大うつ病性障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
障害が処置抵抗性大うつ病性障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
障害が双極性うつ病である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
障害が統合失調症である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
中枢神経系の障害の処置を必要とする患者における当該障害を処置する方法であって、その患者に、有効量の選択的セロトニン再取り込み阻害剤および式(I)の化合物:
【化2】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルもしくはアロイルであるか、またはR1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環式環を形成し;
XはOまたはSであり;
nは1または2である]
またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法。
【請求項18】
式(I)の化合物がトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミンまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(I)の化合物がトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン塩酸塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンまたはそれらの薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシュウ酸エスシタロプラムである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤が臭化水素酸エスシタロプラムである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がエスシタロプラムまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤がシュウ酸エスシタロプラムである、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤が臭化水素酸エスシタロプラムである、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
障害が気分障害である、請求項17〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
気分障害が大うつ病性障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
障害が処置抵抗性大うつ病性障害である、請求項17〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
障害が双極性うつ病である、請求項17〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
障害が統合失調症である、請求項17〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
うつ病を処置する方法であって、その必要がある患者に、有効量の式(I)の化合物:
【化3】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルもしくはアロイルであるか、またはR1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環式環を形成し;
XはOまたはSであり;
nは1または2である]
および/またはその幾何異性体および/または立体異性体および/またはジアステレオマーおよび/または塩および/または水和物および/または溶媒和物および/または多形体を投与することを含む方法。
【請求項33】
式(I)の化合物がトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミンまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
式(I)の化合物がトランス-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]-エチル}-N,N-ジメチルカルバモイル-シクロヘキシルアミン塩酸塩である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
うつ病を処置するための医薬の製造における、式(I)の化合物:
【化4】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルもしくはアロイルであるか、またはR1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環式環を形成し;
XはOまたはSであり;
nは1または2である]
および/またはその幾何異性体および/または立体異性体および/またはジアステレオマーおよび/または塩および/または水和物および/または溶媒和物および/または多形体の、治療有効量での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−535790(P2010−535790A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520238(P2010−520238)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072066
【国際公開番号】WO2009/020897
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(596035695)
【氏名又は名称原語表記】Richter Gedeon Nyrt.
【Fターム(参考)】