説明

ドーピングされたPd/Auシェル触媒、その製造方法、及びその使用

本発明は、金属のPd及びAuが含有される外殻を有し且つ酸化多孔質触媒担体を有し且つ成形体として形成されてなる、酢酸ビニルモノマー(VAM)を生成するためのシェル触媒に関する。比較的高い活性を有し且つ比較的低コストで得られるVAMを製造するためのシェル触媒を提供すべく、前記触媒担体がLi、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた元素の少なくとも一の酸化物をドーピングされてなることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属のPd及びAuが含有されてなる外殻を有し、成形体として形成され、酸化多孔質触媒担体を備えてなる、ビニル酢酸モノマー(VAM)を製造するためのシェル触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
VAMは、プラスチックポリマーの合成におけるブロックを組み立てる重要なモノマーである。VAMを使用する主な分野は、とりわけ、ポリビニル酢酸、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール、並びに、他のモノマー(例えば、エチレン、塩化ビニル、アクリル酸塩、マレイネート、フマル酸塩及びラウリン酸ビニル等)との共重合の製造である。
【0003】
VAMは、酸素との反応により酢酸及びエチレンからガス相で主に生成され、ここでは、この合成のために用いられる触媒は、好ましくは、活性金属としてのPd及びAu、プロモーターとしてのアルカリ金属成分、さらに好ましくは酢酸塩の形態のカリウムを含有する。これらの触媒のPd/Auシステムでは、非合金粒子の存在は除外できないが、活性金属Pd及びAuは、好ましくは、それぞれの純金属の金属粒子の形態ではなく、むしろ、様々な構成のPd/Au合金粒子の形態でおそらく存在する。また、Auの代替物としての例えばCd若しくはBaは、第二の活性金属成分として用いられ得る。
【0004】
今日では、VAMは、いわゆるシェル触媒(殻触媒)によって生成され、該シェル触媒では、該触媒の触媒活性金属が、成形体として形成された触媒担体に完全には浸透せず、むしろ、前記触媒担体成形体の大なり小なり外側のエリア(殻)にのみ含まれ(EP 565 952 A1、EP 634 214 A1、EP 634 209 A1及びEP 634 208 A1を参照。)、一方でさらに内部の担体のエリアには、活性金属がほとんど存在しない。シェル触媒を用いることにより、より選択的な反応のコントロールが、担体が担体のコア内に活性成分を含浸された触媒(“含浸”)を用いるときに比べ、多くの場合に可能となる。
【0005】
最新技術において知られる、VAMを生成するためのシェル触媒は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化チタン若しくは酸化ジルコニウムに基づいた触媒担体である(EP 839 793 A1、WO 1998/018553 A1、WO 2000/058008 A1及びWO 2005/061107 A1を参照。)。しかしながら、現在では、酸化チタン若しくは酸化ジルコニウムに基づいた触媒担体は、ほとんど用いられていないが、それは、これらの触媒担体が酢酸に対する長期間の耐性を示さず且つ比較的高価であるからである。
【0006】
VAMを生成するために現在用いられている触媒の大部分は、成形体として形成された酸化多孔質触媒担体、例えば多孔質アモルファスアルミノケイ酸塩担体上のPd/Au殻を有し、且つ球状に形成され、且つ天然酸処理されか焼されたベントナイトに基づいた天然層状ケイ酸塩に基づいたシェル触媒であり、それは、プロモーターとして酢酸カリウムを含浸されたものである。
【0007】
そのようなVAMシェル触媒は、通常、前記触媒担体が対応する金属前駆体化合物の溶液に浸される、いわゆる化学的手段によって、例えば、前記担体を前記溶液に浸すことによって、又は、前記担体がその細孔容積に対応する量の溶液で負荷される初期湿式方法(細孔充填方法)によって、生成される。前記触媒のPd/Au殻は、例えば、まず第1ステップで触媒担体をNa2PdCl4溶液に浸し、第2ステップでPd成分をNaOHを用いてPd-水酸化化合物の形態で前記触媒担体に固定することにより生成される。それから、その後の別の第3ステップで、前記触媒担体がNaAuCl4溶液に浸され、Au成分が同様にNaOHにより固定される。前記触媒担体の外殻に前記貴金属成分を固定した後には、該負荷された触媒担体は、塩化物及びNaイオンからよく洗浄され、乾燥され、か焼され、そして最後に150℃で還元される。該生成されたPd/Au殻は、通常、厚みが約100〜500 μmである。
【0008】
それから、通常、前記貴金属を担持された触媒担体は、固定及び還元工程後に酢酸カリウムを負荷されるが、ここでは、貴金属で負荷された外殻でのみ酢酸カリウムの負荷が行われるというよりもむしろ、前記触媒担体が前記プロモーターを用いることを通して完全に含浸される。天然酸処理されか焼されたベントナイトに基づいたズード−ケミー アーゲー製の“KA-160”と呼ばれる球状の担体は、約160 m2/gのBET比表面積を有するが、例えば触媒担体として用いられ得る。
【0009】
活性金属としてのPd及びAuに基づいた最新技術で知られているVAMシェル触媒によって到達されたVAM選択性は、供給されたエチレンに対して約90モル%であり、ここでは、反応生成物の残り10モル%は、基本的に、有機遊離体/生成物の全酸化によって形成されるCO2である。
【0010】
VAMシェル触媒の活性を増加するために、前記触媒担体は、例えば貴金属の沈着前に酸化ジルコニウムをドーピングされていた。このため、最終的な触媒担体成形体は、酸化ジルコニウム前駆体化合物の溶液で表面含浸され、そして、該前駆体化合物は、該成形体のか焼によって対応する酸化物に変化させられた。そのような表面をドーピングされた触媒は、最新技術において知られているPd/Au殻を有する対応の触媒に比して、VAM生成に関してより高い活性で特徴付けられるが、Zrは、とても高価であり、従って、VAM触媒の活性を増加させ且つ安価なドーピング代替物を有するVAM触媒が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、金属のPd及びAuが含有される外殻を有し且つ酸化多孔質触媒担体を有し且つ成形体として形成されてなるシェル触媒であって、比較的高い活性を有し且つ比較的安価に得られ得るVAMを製造するためのシェル触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、一般的なタイプのシェル触媒からスタートし、Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた元素の少なくとも一の酸化物を触媒担体にドーピングすることによって到達される。
【0013】
意外にも、本発明に係る触媒は、比較的高いVAM活性及び選択性によって特徴づけられることが発見された。発見されたドーピング酸化物は、例えば、ジルコニウム酸化物よりも安価であるので、本発明に係る触媒は、比較的低コストで得られ得る。
【0014】
また、Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた元素の酸化物は、以下ではドーピング酸化物としても呼ばれる。
【0015】
また、本発明に係る触媒の触媒担体は、好ましくは、Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた2以上の元素の酸化物をドーピングされてなる。
【0016】
前記触媒担体は、好ましくは酸化リチウム、より好ましくはLi2Oをドーピングされてなる。
【0017】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化リン、更により好ましくはP2O5若しくはリン酸塩をドーピングされてなる。
【0018】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化カルシウム、更により好ましくはCaOをドーピングされてなる。
【0019】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化バナジウム、更により好ましくはV2O5をドーピングされてなる。
【0020】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化クロム、更により好ましくはCr2O3をドーピングされてなる。
【0021】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化マンガン、更により好ましくはMnO2、Mn2O3及び/又はMn3O4をドーピングされてなる。
【0022】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化鉄、更により好ましくはFe2O3をドーピングされてなる。
【0023】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ストロンチウム、更により好ましくはSrOをドーピングされてなる。
【0024】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ニオブ、更により好ましくはNb2O5をドーピングされてなる。
【0025】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化タンタル、更により好ましくはTa2O5をドーピングされてなる。
【0026】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化タングステン、更により好ましくはWO3をドーピングされてなる。
【0027】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ランタン、更により好ましくはLa2O3をドーピングされてなる。
【0028】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化セリウム、更により好ましくはCeO2をドーピングされてなる。
【0029】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化プラセオジム、更により好ましくはPrO2及び/又はPr2O3をドーピングされてなる。
【0030】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ネオジム、更により好ましくはNdO2及び/又はNd2O3をドーピングされてなる。
【0031】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化サマリウム、更により好ましくはSm2O3をドーピングされてなる。
【0032】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ユウロピウム、更により好ましくはEuO及び/又はEu2O3をドーピングされてなる。
【0033】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ガドリニウム、更により好ましくはGd2O3をドーピングされてなる。
【0034】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化テルビウム、更により好ましくはTbO2及び/又はTb4O7をドーピングされてなる。
【0035】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ジスプロシウム、更により好ましくはDy2O3をドーピングされてなる。
【0036】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ホルミウム、更により好ましくはHo2O3をドーピングされてなる。
【0037】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化エルビウム、更により好ましくはEr2O3をドーピングされてなる。
【0038】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ツリウム、更により好ましくはTm2O3をドーピングされてなる。
【0039】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化イッテルビウム、更により好ましくはYb2O3をドーピングされてなる。
【0040】
前記触媒担体は、更に好ましくは酸化ルテチウム、更により好ましくはLu2O3をドーピングされてなる。
【0041】
前記酸化物は、しばしば、明確な酸化物の形態ではなく、むしろ混合された酸化物の形態で前記触媒担体の中に存在する。同様に、前記ドーピング酸化物は、混合された酸化物として、酸化担体材料とともに存在してなる。
【0042】
好ましくは、前記触媒担体の内表面は、前記ドーピング酸化物をドーピングされてなる。そのような触媒担体は、対応するドーピング酸化物前駆体化合物の溶液を多孔質触媒担体成形体の内表面に含浸し、それから前記化合物の所望の成分を酸化物にすることによって、例えば、か焼によって得られ得る。
【0043】
代替として、又はこれに加えて、前記ドーピング酸化物は、前記触媒担体の骨格構造に均一に分散されて含まれていることが条件とされ得る。前記触媒担体の骨格構造での前記ドーピング酸化物の均一な分散の結果として、熱劣化への傾向が減少されたおかげで、前記触媒の均一で高い活性、及び前記触媒の長い耐用年数が確保される。
【0044】
前記ドーピング酸化物は、好ましくは、前記触媒担体の骨格構造に均一に分散されて含まれてなる。前記ドーピング酸化物は、好ましくは、多孔質酸化担体材料を含む母材に均一に分散され、分離した酸化物粒子の形態で、好ましくは、純酸化物若しくは混合された酸化物の微結晶及び/又はナノ微結晶の形態で含まれてなる。代わりに、前記ドーピング酸化物は、前記触媒担体の骨格構造に均一に分散されて、各々孤立したドーピング酸化物ユニットの形態で含まれ得る。そのような均一の分散は、例えば、二酸化ケイ素若しくは酸化アルミニウムユニット等の対応する担体材料の担体酸化物ユニットを、前記担体酸化物ユニットの代わりをし且つ前記骨格構造に対する化学結合を形成するドーピング酸化物ユニットと交換することによって到達され得る。前記担体材料のユニットの交換は、当業者にとって本質的に知られた方法を用いて、例えば、そのような担体材料の合成中すでに、若しくは固体の交換によって、到達され得る。
【0045】
本発明に係る触媒の触媒担体は、例えば、
a) 粉末状酸化多孔質担体材料と、Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた粉末状原子、又は、前記群の原子の粉末状化合物とを混合するステップと、
b) ステップa)で得られた混合物から成形体を成形するステップと、
c) ステップb)で得られた成形体をか焼するステップと
を含む方法を用いることで生成され、
ここでは、前記原子若しくはその化合物が、これが酸化物でない場合には、好ましくは、対応する酸化物に前記か焼中に変化させられる。
【0046】
前記方法は、担体材料と、ドーピング酸化物とがともに焼結された粒子の固体構造を有する触媒担体成形体をもたらすが、ここでは、前記ドーピング酸化物粒子は、粒子構造中に均一に分散されて含まれてなる。
【0047】
本発明に係る触媒に含有され、例えば、層状ケイ酸塩として酸化鉄がドーピングされ酸処理されか焼されたベントナイトに基づいた多孔質触媒担体成形体は、例えば、粉末状(未か焼の)酸処理されたベントナイトと、粉末状鉄化合物及び水とを砕き、次に均一になるまでそれを完全に混合し、そして、当業者によく知られているデバイス、例えば押出機若しくは錠剤プレスによって成形体を形成すべく得られた混合物を圧縮によって成形し、次に、該未硬化の成形体をか焼して安定した成形体を形成することで、形成されてなる。前記か焼は、好ましくは、固体構造が得られ且つ任意に鉄化合物が酸化鉄(III)に変化される温度で実施される。前記ドーピングされた触媒担体の比表面積のサイズは、特に、使用される(未処理の)ベントナイトの質、使用されるベントナイトの酸処理方法、即ち、例えば前記ベントナイトの質及び量、並びに使用される無機酸の濃度、酸処理継続時間及び温度、成形圧、か焼継続時間及び温度及びか焼雰囲気に依存する。
【0048】
酸処理されたベントナイトは、例えば、硫酸、リン酸若しくは塩酸等の強酸でベントナイトを処理することによって得られ得る。ベントナイトという語の、本発明に枠組み内で妥当な定義は、Rompp, Lexikon Chemie, 10th edition, Georg Thieme Verlag(「Rompp」の「o」はウムラウト)で与えられる。本発明の枠組み内で特に好ましいベントナイトは、主の鉱物としてモンモリロナイト(スメクタイト等)を含有するアルミニウム含有天然層状ケイ酸塩である。前記酸処理後は、前記ベントナイトは、一般に水で洗浄され、乾燥され、粉末に砕かれる。
【0049】
本発明に係る触媒の好ましい実施形態では、前記多孔質酸化触媒担体は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化ジルコニウム、酸化チタン、天然層状ケイ酸塩、特に酸処理されか焼されたベントナイト、若しくは前記酸化物の二以上の混合物を含有し、又は前記酸化物の一若しくは混合物で形成されてなる。
【0050】
“フィロケイ酸塩”という語が前記文献で用いられる“天然層状ケイ酸塩”によって、すべてのケイ酸塩の基本ユニット構造を形成する四面体のSiO4が一般式[Si2O5]2-の層で互いに架橋され、さらに処理され若しくは処理されていないケイ酸塩鉱物が、本発明の枠組み内で意味されている。これらの四面体層は、カチオン、主にAl及びMgが、OH若しくはOによって八面体で囲まれる、いわゆる八面体層と交互に生じる。区別は、例えば、二層フィロケイ酸塩及び三層フィロケイ酸塩との間で記載される。本発明の枠組み内で好ましい層状ケイ酸塩は、粘土鉱物、特に、カオリナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、マイカ、バーミキュライト及びスメクタイトであり、ここでは、スメクタイトがより好ましく、特にモンモリロナイトがより一層好ましい。“層状ケイ酸塩”という語の定義は、例えば、"Lehrbuch der anorganischen Chemie", Hollemann Wiberg, de Gruyter, 102nd edition, 2007 (ISBN 978-3-11-017770-1)又は"Rompp Lexikon Chemie", 10th edition, Georg Thieme Verlag under the heading "Phyllosilikat"(「Rompp」の「o」はウムラウト)で見られる。天然層状ケイ酸塩が担体材料として使用される前に受ける典型的な処理は、例えば、酸を用いた処理及び/又はか焼を含む。本発明の枠組み内で特に好ましい天然層状ケイ酸塩は、ベントナイトである。正確には、ベントナイトは、本当には天然層状ケイ酸塩ではなく、むしろ、層状ケイ酸塩を含有する主な粘土鉱物の混合物である。このように、天然層状ケイ酸塩がベントナイトである本ケースでは、天然層状ケイ酸塩が、ベントナイトの形態で若しくはベントナイトの構成成分として前記触媒担体に存在することが理解され得る。
【0051】
さらに、前記ドーピング酸化物は、前記触媒担体の質量に対して、好ましくは0.01〜25質量%、より好ましくは0.02〜20質量%、更により好ましくは0.05〜20質量%の割合で前記触媒担体に含有されてなる。前記ドーピング酸化物が0.01質量%未満の割合で前記触媒担体に存在するならば、対応する酸化物の活性増加特性は、ほんの少しの効果しか有さず、一方で、25質量%を超えると該触媒の活性の増加は、VAM選択性の明らかな減少を伴われ得る。さらに好ましくは、前記ドーピング酸化物は、前記触媒担体の質量に対して、好ましくは0.5〜25質量%、より好ましくは3〜10質量%の割合で前記触媒担体に含有されてなる。
【0052】
小さな細孔拡散限界を考慮すると、本発明に係る触媒のさらに好ましい実施形態では、前記触媒担体は、8〜50 nm、好ましくは10〜35 nm、より好ましくは11〜30 nmの平均細孔径を有する。
【0053】
本発明に係る触媒のVAM選択性は、前記触媒担体の総細孔容積に依存することが見られた。従って、本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、前記触媒担体は、0.25〜0.7 ml/g、好ましくは0.3〜0.6 ml/g、より好ましくは0.35〜0.5 ml/gのBJHに従った総細孔容積を有する。
【0054】
前記触媒担体の総細孔容積は、窒素吸着によってBJH法に従って求められる。前記触媒担体の表面積及び該触媒担体の総細孔容積は、BETに従って、若しくはBJH法に従って求められる。BET比表面積は、DIN 66131に従ったBET法に従って求められ;また、BET法の記載は、J. Am. Chem. Soc. 60, 309 (1938)で見られる。前記触媒担体若しくは触媒の表面積及び総細孔容積を求めるべく、前記試料は、例えば、Micromeritics社製の全自動窒素ポロシメーター、タイプASAP 2010で測定されるが、それによって、吸着及び脱着等温線が記録される。
【0055】
BET理論に従った触媒担体若しくは触媒の表面積及び空隙率を測定するのに、前記データは、DIN66131に従って求められる。前記細孔容積は、BJH法(E.P. Barret, L.G. Joiner, P.P. Haienda, J. Am. Chem. Soc. 73 (1951, 373))を用いて測定データから求められる。また、毛管凝縮の効果は、この方法を用いる際に考慮される。固有の細孔サイズ範囲の細孔容積は、BJHに従った吸着等温線の評価から得られる増分の細孔容積を合計することにより求められる。BJH法に従った総細孔容積は、1.7〜300 nmの直径を有する細孔に関係する。
【0056】
本発明に係る触媒のさらに好ましい実施形態では、前記触媒担体の吸水率は、40〜75%、好ましくは50〜70%であり、これは、水吸着による重量増加として計算される。該吸水率は、前記担体試料10gを、脱イオン水に、気泡が該担体試料から逃げなくなるまで30分間浸すことによって、測定される。それから、過剰水は、静かに移され、該浸された試料は、コットンで拭き取られて、該試料から付着した水分が取り除かれる。それから、水を負荷された担体は、重量を測定され、前記吸収度が以下のようにして計算される。
(取り出した総重量(g)−入れた総重量(g))×10 = 吸水率(%)
【0057】
前記触媒担体の酸性度は、酢酸及びエタンからのVAMのガス相合成中に本発明に係る触媒の活性に利点をもたし得る。本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、前記触媒担体が、1〜150 μval/g、好ましくは5〜130 μval/g、より好ましくは10〜100 μval/g、更により好ましくは10〜60 μval/gである酸性度を有する。前記触媒担体の酸性度は、次のようにして求められる:水100 ml(pHブランク値を有する)が、細かく砕かれた触媒担体1 gに加えられ、抽出が、かき混ぜられながら15分間実施された。0.01 NのNaOH溶液を用いた少なくともpH7.0への滴定は、次のようにして行われたが、ここでは、滴定は、段階的に実施された;まず、NaOH溶液1 mlが抽出物に滴下され(1滴/秒)、二分間待たれ、pHが読まれ、さらにNaOH溶液1 mlが滴下される等。使用された水のブランク値が求められ、酸性度の計算が補正される。
【0058】
それから、滴定カーブ(pHに対する0.01 NaOHのml)がプロットされ、滴定カーブのpH 7での交点が求められる。pH 7での交点に対するNaOH消費量から得られるモル当量は、10-6 equiv/g 担体で計算される。
【0059】
【数1】

【0060】
前記触媒担体の表面積が小さいほど、本発明に係る触媒のVAM選択性がより高まることが、認められた。加えて、前記触媒担体の表面積が小さいほど、VAM選択性の相当なロスなしに、Pd/Au殻の選ばれる厚みがより大きくなり得る。従って、本発明に係る触媒の好ましい実施形態では、前記触媒担体の表面が、160 m2/g以下、より好ましくは140 m2/g未満、さらにより好ましくは135 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは120 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは100 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは80 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは65 m2/g未満の表面積を有する。前記触媒担体の“表面積”によって、本発明に枠組み内で、DIN 66132に従った窒素吸着法によって求められた担体のBET比表面積が意味される。
【0061】
本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、前記触媒担体が、40〜160 m2/g、好ましくは50〜140 m2/g、より好ましくは50〜135 m2/g、更により好ましくは50〜120 m2/g、もっと更により好ましくは50〜100 m2/g、もっと更により好ましくは60〜100 m2/gの表面積を有する。
【0062】
本発明に係る触媒は、通常、例えばかき混ぜることによって、又は、混合ツールによって伝わる比較的高い機械負荷ストレスを前記成形体が受ける各方法ステップ中に多数の触媒担体成形体を“バッチ”方法におくことによって生成される。加えて、本発明に係る触媒は、リアクターの注入中に強い機械的負荷ストレスに曝され得るが、それは、特に外側のエリアに存在するその触媒活性の殻に対し、ダストの所望の構造及び前記触媒担体の損傷をもたらす。特に、本発明に係る触媒の摩耗を適度な制限内に保持するべく、前記触媒は、20 N以上、好ましくは25 N以上、更に好ましくは35 N以上、更により好ましくは40 N以上の硬度を有する。前記硬度は、Dr. Schleuniger Pharmatron AG製の8M錠剤硬度計によって、2時間130℃での前記触媒の乾燥後の99のシェル触媒の平均値を求めて確定されるが、ここでは、装置のセッティングは次のようにされる。
硬度:N
成形体からの距離:5.00 mm
遅延時間:0.80 s
フィードタイプ:6 D
速度:0.60 mm/s
【0063】
前記触媒の硬度は、例えば、前記触媒担体を生成する方法のあるパラメータを変えることによって、例えば、原材料、対応する担体混合物から形成された未硬化の成形体のか焼継続時間及び/若しくはか焼温度、又は特にメチルセルロース若しくはステアリン酸マグネシウム等の負荷材料の選択を通じて、影響され得る。
【0064】
本発明に係る触媒は、成形体として形成され、好ましくは天然層状ケイ酸塩に基づき、特に酸処理されか焼されたベントナイトに基づき、且つドーピングされた触媒担体を含有する。“に基づいた”によって、前記触媒担体が天然層状ケイ酸塩を含有することが意味される。好ましくは、前記触媒担体の天然層状ケイ酸塩の割合は、ドーピングされる触媒担体の質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更により好ましくは80質量%以上、もっと更により好ましくは90質量%以上、もっと更により好ましくは95質量%以上である。
【0065】
本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、BJHに従った前記触媒担体の総細孔容積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%は、メソ細孔及びマクロ孔から形成されてなる。このことは、本発明に係る触媒の、特に比較的厚いPd/Au殻を有する本発明に係る触媒の、拡散制限に影響され減少された活性を是正する。ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ孔によって、このケースでは、それぞれ、2 nm未満の直径、2〜50 nmの直径、50 nmよりも大きい直径を有する細孔が意味される。
【0066】
本発明に係る触媒の触媒担体は、0.3 g/mlよりも大きい、好ましくは0.35 g/mlより大きい、より好ましくは0.35〜0.6 g/mlのかさ密度を有し得る。
【0067】
本発明に係る触媒の適切な化学安定性を確保するように、前記担体に含有される層状ケイ酸塩は、層状ケイ酸塩の質量に対して、少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは95〜99.5質量%のSiO2含有量を有する。
【0068】
酢酸及びエタンからのVAMのガス相合成では、前記層状ケイ酸塩の比較的低いAl2O3含有量は、ほとんど不利ではないが、ここでは、高いAl2O3含有量では、圧入強度の際だった減少が予期されるに違いない。従って、本発明に係る触媒の好ましい実施形態では、前記層状ケイ酸塩は、前記層状ケイ酸塩の質量に対して、10質量%未満、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%のAl2O3を含有してなる。
【0069】
前記触媒担体の酸性度は、酢酸及びエテンからのVAMのガス相合成中に本発明に係る触媒の活性に有利な影響を与え得る。本発明に係る更に好ましい実施形態では、前記触媒担体は、1〜150 μval/g、好ましくは5〜130 μval/g、より好ましくは10〜100 μval/gの酸性度を有する。
【0070】
本発明に係る触媒の触媒担体は、成形体として形成されてなる。該触媒担体は、原則として、対応する貴金属殻が適用され得る、いかなる幾何学体の形をも想定され得る。しかしながら、好ましくは、前記触媒担体は、球、シリンダー(丸みのある面を持ったものも含む。)、穴あきシリンダー(丸みのある面を持ったものも含む。)、三つ葉、“キャップされた錠剤”、四つ葉、リング、ドーナツ、星、車輪、“逆”車輪、若しくはらせん構造として形成され、好ましくは、うねりのあるらせん構造若しくは星らせん構造として、また、好ましくは球として形成されてなる。
【0071】
本発明に係る触媒の触媒担体の直径若しくは長さ及び厚さは、好ましくは、2〜9 mmであり、それは、該触媒が用いられ得るリアクターチューブの形状に依存する。前記触媒担体が球として形成される場合には、該触媒担体は、好ましくは2 mmよりも大きい、より好ましくは3 mmよりも大きい、更により好ましくは4 mm〜9 mmの直径を有する。
【0072】
一般に、前記触媒のPd/Au殻の厚さが小さいほど、本発明に係る触媒のVAM選択性は高くなる。従って、本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、前記触媒の殻は、300 μm未満、好ましくは200 μm未満、より好ましくは150 μm未満、更により好ましくは100 μm未満、もっと更により好ましくは80 μm未満の厚みを有する。前記殻の厚さは、顕微鏡によって視覚的に測定され得る。前記貴金属が沈着されるエリアは、黒を示し、貴金属がないエリアは白を示す。一般に、貴金属を含有するエリアと、それらがないエリアとの間の境界は、とても鮮明であり、明らかに視覚的に認識され得る。前記境界がはっきり定義されず従って視覚的に明らかに認識できない場合には、前記殻の厚みは、前記担体に沈着した金属の95%を含有し且つ触媒担体の外表面からスタートして測定された殻の厚さに相当する。
【0073】
しかしながら、本発明に係る触媒の場合には、前記Pd/Au殻は、本発明に係る触媒のVAM選択性の大きな減少はもたらさずに、前記触媒の高い活性をもたらす比較的大きな厚みで形成され得ることが同様に見られた。従って、本発明に係る触媒のもう一つの好ましい実施形態では、前記触媒の殻は、200〜2000 μm、好ましくは250〜1800 μm、より好ましくは300〜1500 μm、更により好ましくは400〜1200 μmの厚みを有する。
【0074】
本発明に係る触媒の適切な活性を確保するべく、前記触媒におけるPdの割合は、貴金属が負荷される触媒担体の質量に対して、0.6〜2.5質量%、好ましくは0.7〜2.3質量%、より好ましくは0.8〜2質量%である。
【0075】
また、好ましくは、本発明に係る触媒は、1〜20 g/l、好ましくは2〜15 g/l、より好ましくは3〜10 g/lのPd含有量を有する。
【0076】
本発明に係る触媒の適切な活性及び選択性を同様に確保すべく、前記触媒のAu/Pd原子比率は、好ましくは0〜1.2、より好ましくは0.1〜1、更により好ましくは0.3〜0.9、更により一層好ましくは0.4〜0.8である。
【0077】
加えて、好ましくは、本発明に係る触媒は、1〜20 g/l、好ましくは1.5〜15 g/l、より好ましくは2〜10 g/lのAu含有量を有する。
【0078】
Pd/Au殻の厚みにわたって本発明に係る触媒のかなり均一な活性を確保するべく、前記貴金属の濃度は、前記殻の厚みにわたって比較的小さく変化するべきである。好ましくは、前記殻の厚みの90%のエリアは、外及び内の殻の限界からそれぞれ殻厚さの5%の距離であるが、前記触媒の貴金属濃度のプロファイルは、該エリアにわたって、このエリアの平均金属濃度から最大±20%、好ましくは最大±15%、より好ましくは最大±10%で変化する。そのようなプロファイルは、後述するように流動床での吹き付けによって得られ得る。
【0079】
塩化物は、本発明に係る触媒を汚染し、その非活性化を導く。従って、本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、その塩化物の含有量は、250 ppm未満であり、好ましくは150 ppm未満である。
【0080】
本発明に係る触媒は、好ましくは、前記ドーピング酸化物に加えて、さらなるプロモーターとしての少なくとも一のアルカリ金属化合物、好ましくは、カリウム、ナトリウム、セシウム若しくはルビジウム化合物、より好ましくはカリウム化合物を含有してなる。適しており且つ特に好ましいカリウム化合物には、酢酸カリウムKOAc、炭酸カリウムK2CO3、炭酸水素カリウムKHCO3、ギ酸カリウムKOOCMe及び水酸化カリウムKOH、及びVAM合成のそれぞれの反応状態のもとで酢酸カリウムKOAcになるカリウム化合物すべてが含まれる。前記カリウム化合物は、金属Pd及びAuの中での金属成分の減少の前及び後両方において、前記触媒担体に沈着され得る。本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、前記触媒は、酢酸アルカリ金属、好ましくは酢酸カリウムを含有する。特に好ましくは、適切なプロモーター活性を確保すべく、前記触媒の酢酸アルカリ金属の含有量は、0.1〜0.7 mol/l、好ましくは0.3〜0.5 mol/lである。
【0081】
本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、アルカリ金属/Pd原子比率は、1〜12、好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜9である。好ましくは、前記触媒担体の表面積が小さいほど、アルカリ金属/Pd原子比率が低くなる。
【0082】
また、本発明は、
a)Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれる原子の少なくとも一の酸化物をドーピングされ且つ成形体として形成された酸化多孔質触媒担体を供給するステップと、
b)該触媒担体にPd前駆体化合物の溶液を沈着させるステップと、
c)該触媒担体にAu前駆体化合物の溶液を沈着させるステップと、
d)前記Pd前駆体化合物のPd成分を金属状に変化させるステップと、
e)前記Au前駆体化合物のAu成分を金属状に変化させるステップと、
を備えてなる、シェル触媒、特に本発明に係るシェル触媒を製造する第1方法に関する。
【0083】
原則として、金属の高い分散度が到達され得るPd若しくはAu化合物は、Pd及びAu前駆体化合物として用いられ得る。“分散度”によって、金属/合金粒子の金属原子すべての総数に対する、サポートされた金属触媒の金属/合金粒子すべての表面金属原子すべての総数の比が意味される。一般に、前記分散度が比較的高い数値に相当することが好ましいが、それはなぜなら、このケースでは、可能な限り多くの金属原子が、触媒反応に自由にアクセスできるからである。このことは、サポートされた金属触媒の比較的高い分散度が与えられると、その特定の触媒活性は、比較的少ない使用量の金属で到達され得ることを意味する。本発明に係る触媒の更に好ましい実施形態では、パラジウムの分散度は、1〜30%である。
【0084】
好ましくは、Pd及びAu前駆体化合物を、これらの金属のハロゲン化合物、特に塩化物、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物、炭酸水素塩、アミン錯体、有機錯体、例えばトリフェニルホスフィン錯体若しくはアセチルアセトネート錯体から選ぶことである。
【0085】
好ましいPd前駆体化合物の例は、水溶解性Pd塩である。本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、前記Pd前駆体化合物は、Pd(NH3)4(OH)2、Pd(NH3)4(OAc)2、H2PdCl4、Pd(NH3)4(HCO3)2、Pd(NH3)4(HPO4)、Pd(NH3)4Cl2、シュウ酸Pd(NH3)4、シュウ酸Pd、Pd(NO3)2、Pd(NH3)4(NO3)2、K2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH3)2(NO2)2、K2Pd(NO2)4、Na2Pd(NO2)4、Pd(OAc)2、PdCl2、K2PdCl4及びNa2PdCl4からなる群から選ばれる。また、アミン錯体の代わりに、対応するエチレンジアミン若しくはエタノールアミン錯体が用いられ得る。また、Pd(OAc)2に加えて、その他カルボン酸パラジウム、好ましくは、3〜5の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸の塩、例えば、プロピオン酸塩若しくは酪酸塩が用いられ得る。
【0086】
また、本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、Pd亜硝酸塩前駆体化合物が好ましい。好ましいPd亜硝酸塩前駆体化合物としては、例えば、NaNO2溶液にPd(OAc)2を溶解することにより得られるものが挙げられる。
【0087】
好ましいAu前駆体化合物の例は、水溶解性Au塩である。本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、前記Au前駆体化合物は、KAuO2、HAuCl4、KAu(NO2)4、AuCl3、NaAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO3)4、NaAuO2、NMe4AuO2、RbAuO2、CsAuO2、NaAu(OAc)3(OH)、RbAu(OAc)3OH、CsAu(OAc)3OH、NMe4Au(OAc)3OH、KAuCl4及びAu(OAc)3からなる群から選ばれる。金の酸溶液から前記酸化物/水酸化物を沈殿させ、この沈殿物を洗浄し分離し、酢酸若しくはKOH中での沈殿物を取り上げることによって、各回ごとにフレッシュなAu(OAc)3若しくはKAuO2を適切なところで生成するのが推薦される。
【0088】
前記選ばれた前駆体化合物が可溶であり、且つ前記触媒担体への適用後に乾燥により同じ前駆体化合物から簡単に再び取り除かれ得るすべての純溶媒若しくは混合溶媒は、前記前駆体化合物にとって溶媒として適している。前駆体化合物としての酢酸金属に対する好ましい溶媒の例は、とりわけアセトン若しくは非置換のカルボン酸、特に酢酸、及び塩化物金属に対してはとりわけ水若しくは希塩酸である。
【0089】
また、前記前駆体化合物が、アセトン、酢酸、水若しくは希塩酸若しくはその混合物に十分に溶解しないならば、代替物として若しくは前記溶媒に加えて、他の溶媒も用いられ得る。不活性で且つ酢酸若しくは水に混和性がある溶媒は、好ましくは、この場合に、他の溶媒として考慮に入れられる。例えばアセトン若しくはアセチルアセトン等のケトン、更には、例えばテトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、及び例えばベンゼンなどの炭化水素に基づいた溶媒が、酢酸に加えるのに適した好ましい溶媒として挙げられ得る。
【0090】
ケトン、例えばアセトン、又はアルコール、例えばエタノール若しくはイソプロパノール若しくはメトキシエタノール、苛性アルカリ溶液、例えばKOH若しくはNaOH水溶液、有機酸、例えば、酢酸、ギ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリオキシル酸、グリコール酸、シュウ酸、オキサミド酸、アミノ酸、ピルビン酸若しくはアミノ酸は、好ましい溶媒として、又は、水に加えるのに適した添加物として挙げられ得る。
【0091】
塩化物化合物が前駆体化合物として用いられる場合には、本発明の方法に従って生成された触媒を用いる前に、前記塩化物イオンが耐容残量にまで減らされることが確保されるべきであるが、それはなぜなら、塩化物は触媒毒であるからである。このため、前記触媒担体は、一般に、Pd若しくはAu前駆体化合物のPd及びAu成分を前記触媒担体に固定した後に、大量の水で洗浄される。これは、一般に、苛性アルカリ溶液を用いたPd及びAu成分の水酸化物沈殿による固定後、酸沈殿による固定後、又は、それぞれの金属/合金に対する前記貴金属成分の還元後すぐに起こる。
【0092】
しかしながら、本発明に係る方法の好ましい実施形態では、前記触媒の塩化物含有量を可能な限り小さくし、そして塩化物フリーの面倒な洗浄を回避すべく、塩化物フリーのPd及びAu前駆体化合物が塩化物フリーの溶媒と同様に用いられる。対応する酢酸塩、水酸化物若しくは亜硝酸塩化合物は、好ましくは、前駆体化合物として用いられるが、それはなぜなら、それらは、前記触媒担体を塩化物でほんのわずかしか汚染しないからである。
【0093】
前記Pd及びAu前駆体化合物を前記触媒担体で前記触媒担体の外殻のエリアに沈着させることは、本質的に知られた方法に従って到達され得る。このようにして、前記前駆体溶液は、浸すことによって、前記担体を前駆体溶液にわずかに浸し、又はそれを初期の湿式方法に従って浸すことによって沈着され得る。それから、塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液若しくは水酸化カリウム溶液は、前記触媒担体に沈着されるが、ここでは、前記貴金属成分は、前記担体に水酸化物の形態で沈着される。また、例えば、まず前記担体を苛性アルカリ溶液に浸し、それから、このように前処理された担体に前記前駆体化合物を適用することも可能である。
【0094】
従って、本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、前記Pd及びAu前駆体化合物は、前記Pd前駆体化合物の溶液に、及び前記Au前駆体化合物の溶液に、又は、前記Pd及びAu前駆体化合物を両方含有する溶液に前記触媒担体を浸すことによって前記触媒担体に沈着される。
【0095】
最新技術では、前記担体の殻のエリアの塩化物化合物からスタートする前記活性金属Pd及びAuは、浸すことによって同じことが適用される。しかしながら、この技術は、最小殻厚み及び最小Au負荷に関して、その制限に到達する。対応する知られたVAM触媒の最小の殻厚みは、せいぜい約100 μmであり、より小さな殻でさえ浸すことにより得られ得ることは見越されていない。加えて、浸すことによる所望の殻内のより高いAu負荷は、かろうじて達成され得るが、それはなぜなら、前記Au前駆体化合物は、前記殻から前記触媒担体成形体の内部域に拡散し、その結果、広いAu殻が得られ、そのエリアがPdをほんのわずかしか含まないものとなるからである。
【0096】
また、活性金属、若しくは言い換えればそれらの前駆体化合物は、例えば、いわゆる物理過程によって前記担体に沈着され得る。このため、前記担体は、本発明に従って、好ましくは、例えば前記前駆体化合物の溶液を噴霧され得るが、ここでは、前記触媒担体は、熱い空気が吹かれているコーティングドラムに移され、その結果、その溶媒がすぐに蒸発する。
【0097】
しかし、本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、前記Pd前駆体化合物の溶液及び前記Au前駆体化合物の溶液は、前記触媒担体の流動層若しくは流層床での前記溶液の吹き付けによって、好ましくは、該溶液のエアロゾルによって、前記触媒担体に沈着される。従って、前記殻の厚みは、例えば2 mmの厚みまで連続的に適用され且つ最適化され得る。しかし、100 μm未満の厚みを有するとても薄い貴金属殻でさえ、可能である。
【0098】
本発明に係る方法の前記実施形態は、好ましくは、流動床ユニットにおける流動床によって実施される。特に好ましくは、前記ユニットは、いわゆるコントロールされたエアクライド層を有する。一例を挙げると、前記触媒担体成形体は、前記コントロールされたエアクライド層で完全に混合され、ここでは、前記触媒担体成形体は、それ自体の軸の周りを同時に回転し、そして、前記触媒担体成形体は、処理空気によって均一に乾燥される。他の例を挙げると、前記コントロールされたエアクライド層によってもたらされた、前記成形体の当然の軌道の動きのために、前記触媒担体成形体は、略一定の頻度で噴霧処理(前記前駆体化合物のアプリケーション)を通過する。従って、成形体の処理されたバッチの略均一の殻の厚みが到達される。さらなる結果は、前記貴金属濃度が、前記殻の厚みの比較的大きなエリアにわたって比較的に僅かにのみ変化し、即ち、前記貴金属濃度が前記殻の厚みの大きなエリアにわたって略矩形関数を示し、ここでは、得られる触媒の略均一の活性が前記Pd/Au殻の厚みにわたって確保されることである。
【0099】
好ましくは、前記成形体は、楕円形に若しくはドーナツ状に前記流動床で回る。前記成形体がそのような流動床でどのように動くかのアイデアを与えるべく、“楕円の循環”の場合には、前記触媒担体成形体は、楕円の道において鉛直面で前記流動床内を動くことが述べられ得るが、主な及びマイナーな軸のサイズが変化する。“ドーナツ状の循環”の場合には、前記触媒担体成形体は、楕円の道において鉛直面で前記流動床内を動き、主な及びマイナーな軸のサイズが変化し、前記触媒担体成形体は、円の道において水平面で動き、この半径のサイズが変化する。平均して、前記成形体は、楕円の道における鉛直な面の“楕円の循環”の場合に、ドーナツ状の道の“ドーナツ状の循環”の場合に動き、即ち、成形体は、垂直に楕円の部分をらせん形に円環面の表面で覆う。
【0100】
本発明に係る方法を好ましい実施形態で実施するのに適したコーティングドラム、流動層ユニット及び流動床ユニットは、最新技術で知られ、例えば、Heinrich Brucks GmbH (Alfeld, Germany)、ERWEK GmbH (Heusenstamm, Germany)、Stechel (Germany)、DRIAM Anlagenbau GmbH (Eriskirch, Germany)、Glatt GmbH (Binzen, Germany)、G.S. Divisione Verniciatura (Osteria, Italy)、HOFER-Pharma Maschinen GmbH (Weil am Rhein, Germany)、L. B. Bohle Maschinen + Verfahren GmbH (Enningerloh, Germany)、Lodige Maschinenbau GmbH (Paderborn, Germany)(「Lodige」の「o」はウムラウト)、Manesty (Merseyside, United Kingdom)、Vector Corporation (Marion, IA, USA)、Aeromatic-Fielder AG (Bubendorf, Switzerland)、GEA Process Engineering (Hampshire, United Kingdom)、Fluid Air Inc. (Aurora, Illinois, USA)、Heinen Systems GmbH (Varel, Germany)、Huttlin GmbH (Steinen, Germany)(「Huttlin」の「u」はウムラウト)、Umang Pharmatech Pvt. Ltd. (Marharashtra, India)及びInnojet Technologies (Lorrach, Germany)(「Lorrach」の「o」はウムラウト)によって販売されている。特に好ましい流動床装置は、Innojet(商標登録)Aircoater若しくはInnojet(商標登録)Ventilusという名でInnojet Technologiesによって販売されている。
【0101】
本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、前記触媒担体は、溶液の沈着中に、例えば加熱された処理空気によって加熱される。前記貴金属前駆体化合物の沈着された溶液の乾燥速度は、前記触媒担体の加熱の度合いから求められ得る。比較的低い温度では、前記乾燥速度は、例えば比較的低いが、その結果、溶媒の存在によって生じる前駆体化合物の高い拡散のために、対応した量の沈着でより厚い殻の厚みが形成され得る。比較的高い温度では、前記乾燥速度は、例えば比較的高いが、その結果、前記成形体に接する前駆体化合物の溶液は、すぐに乾燥するが、そのことにより、前記触媒担体に沈着された溶液が後者の中に深く浸透できない。このように、比較的高い温度では、比較的小さな殻の厚みは、高い貴金属負荷で得られ得る。例えば、前記触媒担体は、40〜80℃の温度に加熱され得る。
【0102】
Pd及びAuに基づいたVAMシェル触媒を製造するための最新技術に記載された方法とともに、Na2PdCl4、NaAuCl4若しくはHAuCl4溶液等の前駆体化合物の市販の溶液が、通常用いられる。また、より最近の文献では、すでに上述したように、例えばPd(NH3)4(OH)2、Pd(NH3)2(NO2)2及びKAuO2等の塩化物フリーのPd若しくはAu前駆体化合物も用いられる。これらの前駆体化合物は、溶液中で塩基に反応するが、一方で、前記標準塩化物、硝酸塩及び酢酸塩前駆体化合物は、すべて溶液中で酸に反応する。
【0103】
前記前駆体化合物を前記触媒担体に沈着させるのに、好ましくは、Na2PdCl4及びNaAuCl3水溶液が通常用いられる。これらの金属塩溶液は、通常、室温で前記担体に適用され、それから、前記金属成分が可溶性のPd若しくはAu水酸化物としてNaOHに固定される。それから、前記負荷された担体は、通常、水で塩化物フリーに洗浄される。特に、Auの固定は、欠点を有し、例えば、安定したAuテトラクロロ錯体の沈殿を促するための塩基の長い反応時間、不完全な沈着、及び同時に起こる不適切なAu保持力等の欠点を有する。
【0104】
本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、方法は、
a) Pd及び/又はAu前駆体化合物の第1溶液が供給されるステップと、
b) Pd及び/又はAu前駆体化合物の第2溶液が供給され、ここでは、前記第1溶液が前記第2溶液の前駆体化合物の貴金属成分の沈殿をもたらし、且つ逆も生じるテップと、
c) 前記第1溶液と前記第2溶液とが前記触媒担体に沈着されるステップと、
を備えてなる。
【0105】
本発明に係る方法のこの実施形態は、二つの異なる前駆体溶液を用い、その溶液の一は、例えばPd前駆体化合物を含有し、他方は、Au前駆体化合物を含有する。一般に、pHに関し、前記溶液の一は、好ましくは、塩基性を有し、他方が酸性を有する。一般に、前記溶液は、前記触媒担体に沈着されるが、それは、前記担体に、まず前記第1溶液を、次に第2溶液を含浸させることによって、上述したように浸すことによって行われる。前記第2溶液の沈着では、二つの溶液が前記担体に結び付けられ、ここでは、前記溶液のpHが変化し、それぞれの前駆体化合物のPd若しくはAu成分が、前記担体に沈着されるが、それは、NaOH若しくはKOH等の最新技術の通常の補助の塩基なしで行われ、また、それは、前記担体に適用される必要がある。
【0106】
このように、本発明に係る方法の前記実施形態は、Pd及び/若しくはAu前駆体化合物の第1溶液と、Pd及び/若しくはAu前駆体化合物の第2溶液とを用いた前記触媒担体への含浸に基づいているが、ここでは、前記二つの溶液は互いに混合されず、すなわち、前記第1溶液が前記第2溶液の前駆体化合物の貴金属成分の沈殿をもたらし、その逆ももたらし、その結果、二つの溶液の接触領域では、前に含浸されたPd/Au成分と後に含浸されたPd/Au成分との両方が、略同時に沈殿し、Pd/Auの深く完全な混合を導く。乾燥は、任意的に二つの含浸ステップの間に行われ得る。
【0107】
相溶性のない溶液での含浸のためのPd前駆体化合物の適した水溶液は、表1の例によってリストされる。
【0108】
【表1】

【0109】
早期のAu還元に関して、NH3が強すぎる還元効果を有しているならば、リガンドとしてエチレンジアミンを有する対応したジアミン錯体、又は、パラジウムアミン錯体の代わりの対応するエタノールアミン錯体を用いることも可能である。
【0110】
相溶性のない溶液を用いる含浸のためのAu前駆体化合物の適した水溶液は、表2の例によってリストされる。
【0111】
【表2】

【0112】
前記貴金属成分の塩基フリー沈殿のための相溶性のない溶液の適した組み合わせは、例えば、PdCl2及びKAuO2の溶液;Pd(NO3)2及びKAuO2の溶液;Pd(NH3)4(OH)2及びAuCl3若しくはHAuCl4の溶液である。
【0113】
また、本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、Pdは、相溶性のないPd溶液で沈殿され、同様にAuは、相溶性のないAu溶液で沈殿され、例えば、PdCl2溶液をPd(NH3)4(OH)2溶液に接触させ、又はHAuCl4溶液をKAuO2溶液に接触させることによって沈殿される。この方法では、高い含有量のPd及び/又はAuは、極めて濃縮された溶液を用いることなしに、前記殻で沈殿し得る。
【0114】
また、本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、互いに相溶性のある混合された溶液は、貴金属の沈殿のために用いられ得るが、該混合された溶液は、前記混合された溶液を有する相溶性のない溶液に接触させられる。混合された溶液の例としては、PdCl2とAuCl3とを含有する溶液、KAuO2溶液で沈殿され得る貴金属成分、又はPd(NH3)4(OH)2及びKAuO2を含有する溶液、PdCl2及びHAuCl4で沈殿され得る貴金属成分を含有する溶液が挙げられる。混合された溶液のさらなる例としては、HAuCl4及びKAuO2の組み合わせがある。
【0115】
相溶性のない溶液を用いた含浸は、好ましくは、浸すことによって、又は噴霧による含浸によって行われ、ここでは、該相溶性のない溶液は、例えば、1若しくは2以上のノズルから同時に、又は2以上のノズル若しくはノズルグループによって同時に、又は1若しくは2以上のノズルによって連続的に噴霧される。
【0116】
前記殻の前駆体化合物の金属成分の急速な不動化(固定)、及び同時に縮められたPd及びAuの拡散のために、前記相溶性のない溶液での含浸は、互いに相溶性のある溶液の従来の使用よりも薄い殻を導き得る。相溶性のない溶液によって、薄い殻での高い貴金属含有量と、改良された金属保持力と、該貴金属のより速く且つより完全な沈殿と、前記担体における破壊的な残存Naの含有量の減少と、一固定ステップのみでのPd及びAuの同時固定と、NaOHコスト及びNaOH処理の削減、過剰のNaOHとの接触による前記担体の機械的弱体化の回避とが到達され得る。
【0117】
前記相溶性のない溶液による含浸によって、標準塩基(NaOH)固定で起こりうる量以上に、より多くの量の貴金属が、2つの相溶性のない溶液を沈着することを備えてなる単一の固定ステップにより、前記担体に沈殿され得る。
【0118】
特に、Au/Pd原子比率が0.6以上である高いAu含有量は、VAM選択性の増加に関してはとても望ましく、相溶性のない溶液の原理によって容易に到達され得る。
【0119】
本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、前記触媒担体へ前記前駆体化合物の貴金属成分を固定すべく、前記Pd及び/又はAu前駆体化合物が前記触媒担体に沈着された後に、前記触媒担体が固定ステップを受ける。前記固定ステップは、前記前駆体化合物が酸若しくは塩基であるかどうかということに依存して、又は前記担体のか焼が前記貴金属成分を水酸化化合物若しくは酸化物のどちらに変化させるかどうかということに依存して、苛性アルカリ溶液若しくは酸での前記担体の処理を備えてなる。また、例えば、20℃〜200℃の増加された温度で、還元的なガス相、例えばエチレン等を用いた処理によって、固定ステップは割愛され、また、前記貴金属成分は直接減少され得る。
【0120】
同様に、適切にドーピングされた粉末状酸化多孔質担体材料によって本発明に係る触媒を生成することが可能であり、ここでは、前記担体材料は、Pd及びAu前駆体化合物で、又はPd及びAu粒子で負荷される。前記前処理された担体材料は、適した担体構造、例えばステアタイト若しくはズード−ケミー アーゲー製のKA-160担体の球にウォッシュコートの形態で塗布され、それから、か焼及び任意的な還元によって前記触媒内でさらに処理され得る。
【0121】
従って、本発明は、
a) Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた原子の少なくとも一の酸化物でドーピングされた粉末状酸化多孔質担体材料を供給し、該担体材料がPd及びAu前駆体化合物で又はPd及びAu粒子で負荷されるステップと、
b) 前記負荷された担体材料を殻の形態の担体構造に沈着するステップと、
c) ステップb)からの前記負荷された担体構造をか焼するステップと、
d)任意的にPd若しくはAu前駆体化合物のPd及びAu成分を金属状にするステップと
を備えてなる、シェル触媒、特に本発明に係るシェル触媒を生成するための第2の方法に関する。
【0122】
また、代わりに、前記方法は、まず担体構造に前記貴金属フリーのドーピングされた担体材料を沈着し、それから前記貴金属を塗布することだけによって実施され得る。
【0123】
前記前駆体化合物での負荷後、又は前記貴金属成分の固定後に、前記担体は、前記貴金属成分を対応した酸化物に変化させるべくか焼され得る。か焼は、空気の存在下で、好ましくは700℃未満、特に好ましくは300-450℃の温度で行われる。前記か焼時間は、前記か焼温度に依存し、好ましくは0.5-6時間の範囲で選ばれる。約400℃のか焼温度では、前記か焼時間は、好ましくは1〜2時間である。約300℃のか焼温度では、前記か焼時間は、好ましくは6時間以下である。
【0124】
前記貴金属成分は、さらに、前記触媒の使用前に還元されるが、ここでは、この還元は、そのままの位置で、即ち、プロセスリアクターで実施され、又は外の位置で、即ち、特別な還元リアクターで実施され得る。そのままの位置での還元は、好ましくは、窒素中のエチレン(5体積%)で約150℃の温度で、例えば5時間実施される。外の位置での還元は、窒素中の5体積%の水素で、例えばフォーミングガスによって、好ましくは150〜500℃の範囲で5時間実施され得る。
【0125】
例えば、CO、NH3、ホルムアルデヒド、メタノール及び炭化水素等のガス状の若しくは蒸発し得る還元剤は、同様に使用され得るが、ここでは、該ガス状の還元剤は、例えば、二酸化炭素、窒素若しくはアルゴン等の不活性ガスで希釈され得る。好ましくは、不活性ガスで希釈された還元剤が使用される。水素と、窒素若しくはアルゴンとの混合物は、好ましいものであり、水素の含有量は、1体積%〜15体積%であることがさらに好ましい。
【0126】
また、前記貴金属の還元は、好ましくは、ヒドラジン、ギ酸カリウム、H2O2、ギ酸ナトリウム、ギ酸、ギ酸アンモニウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸若しくは次亜リン酸ナトリウム等の還元剤によって液層で実施され得る。
【0127】
還元剤の量は、好ましくは、少なくとも完全な還元で求められる当量の前記貴金属成分が処理中に前記触媒にわたって通過されるように、選ばれる。しかしながら、速く且つ完全な還元を確保すべく、過剰量の還元剤が前記触媒に渡って通過されることが好ましい。
【0128】
前記還元は、好ましくは、常圧、すなわち、約1 barの絶対圧で行われる。本発明に係る触媒を産業的な量で製造するのに、流動層リアクターでのロータリーチューブは、好ましくは、前記触媒の均一な還元を確保すべく用いられる。
【0129】
また、本発明は、酸化触媒として、水素化/脱水素化触媒として、水素化脱硫での触媒として、水素化脱酸素触媒として、又は、アルケニルアルカノアートの合成での、特に酢酸ビニルモノマーの合成での、特に酢酸ビニルモノマーへのエチレン及び酢酸のガス相酸化での触媒として、本発明に係る触媒を使用することに関する。
【0130】
本発明に係る触媒は、好ましくは、VAMを製造するのに用いられる。一般に、これは、100-200℃、好ましくは120-200℃の温度で、1-25 bar、好ましくは1-20 barの圧力で、本発明に係る触媒に、酢酸、エチレン、及び酸素又は酸素含有ガスを通過させることによって行われるが、ここでは、非反応遊離体はリサイクルされ得る。便宜上、酸素濃度は、10体積%未満に保持される。しかしながら、ある状況下では、窒素若しくは二酸化炭素などの不活性ガスでの希釈が有利である。二酸化炭素は、特に、希釈に適しているが、それはなぜなら、二酸化炭素は、VAM合成の過程で少量形成されるからである。形成された酢酸ビニルは、例えばUS 5,066,365 Aに記載された適した方法の助けで分離される。
【0131】
また、本発明は、天然層状ケイ酸塩を、特に酸処理されか焼されたベントナイトを含有し、前記触媒担体がLi、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれる元素の少なくとも一の酸化物をドーピングされてなる多孔質触媒担体に関する。
【0132】
本発明に係る触媒担体の下記の好ましい実施形態では、前述したことや前記説明は、本発明に係るシェル触媒の対応する実施形態に同様に適用される。
【0133】
好ましくは、前記触媒担体の内表面は、ドーピング酸化物をドーピングされてなる。
【0134】
代替物として、若しくはこれに加えて、前記ドーピング酸化物は、前記触媒担体の骨格構造に均一に分散されて含まれ得る。
【0135】
さらに好ましくは、前記ドーピング酸化物は、前記(ドーピングされる)触媒担体の質量に対して、0.01〜25質量%、好ましくは0.02〜20質量%、より好ましくは0.05〜20質量%の割合で前記触媒担体に含有されてなる。
【0136】
また、好ましくは、前記触媒担体は、8〜50 nm、好ましくは10〜35 nm、より好ましくは11〜30 nmの平均細孔径を有する。
【0137】
加えて、好ましくは、前記触媒担体は、0.25〜0.7 ml/g、好ましくは0.3〜0.6 ml/g、より好ましくは0.35〜0.5 ml/gのBJHに従った総細孔容積を有する。
【0138】
さらに好ましくは、前記触媒担体は、1〜150 μval/g、好ましくは5〜130 μval/g、より好ましくは10〜100 μval/g、更により好ましくは10〜60 μval/gの酸性度を有する。
【0139】
さらに好ましくは、前記触媒担体は、160 m2/g以下、好ましくは140 m2/g未満、より好ましくは135 m2/g未満、更により好ましくは120 m2/g未満、特により好ましくは100 m2/g未満、特により一層好ましくは80 m2/g未満、特により一層好ましくは65 m2/g未満の表面積を有する。
【0140】
また、好ましくは、前記触媒担体は、40〜160 m2/g、好ましくは50〜140 m2/g、より好ましくは50〜135 m2/g、更により好ましくは50〜120 m2/g、特により好ましくは50〜100 m2/g、特により一層好ましくは60〜100 m2/gの表面積を有する。
【0141】
更に好ましくは、前記触媒担体が、前記触媒担体の質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、特により一層好ましくは95質量%以上の割合で層状ケイ酸塩を含有してなる。
【0142】
加えて、好ましくは、前記触媒担体の総細孔容積の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%が、メソ細孔及びマクロ孔から形成されてなる。
【0143】
また、好ましくは、前記触媒担体は、0.3 g/mlよりも大きい、好ましくは0.35 g/mlよりも大きい、より好ましくは0.35〜0.6 g/mlのかさ密度を有する。
【0144】
更に好ましくは、前記触媒担体に含有される層状ケイ酸塩は、少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは95〜99.5質量%のSiO2含有量を有する。
【0145】
加えて、好ましくは、前記担体に含有される層状ケイ酸塩は、10質量%未満、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%のAl2O3を含有してなる。
【0146】
更に好ましくは、前記触媒担体は、成形体として、好ましくは、球、シリンダー、孔あきシリンダー、三つ葉、リング、星として、若しくは、らせん構造として、好ましくは、うねのあるらせん構造若しくは星らせん構造として、特に好ましくは球として形成される。
【0147】
更に好ましくは、前記成形体は、20 N以上、好ましくは25 N以上、より好ましくは35 N以上、更に好ましくは40 N以上の硬度を有する。
【0148】
加えて好ましくは、前記触媒担体は、2 mmよりも大きい、好ましくは3 mmよりも大きい、より好ましくは4 mmよりも大きい直径の球として形成される。
【実施例】
【0149】
次の実施例は、本発明を説明するのに役立つ。
【0150】
例1:
主成分としてモンモリロナイトを有する天然ベントナイトに基づき且つ酸処理され且つ乾燥された粉末状ベントナイト混合物500 gは、当業者にとって通常用いられる2〜50 gのFe2O3及び10 gのメチルセルロースとともに、ボールミルによって、良く混ざり合った混合物となるように砕かれた。
【0151】
該得られた混合物は、水に溶解され、ミキサーで生地に加工され、該生地から錠剤プレスによる圧力下で球状の成形体が生成された。硬化のために、前記球は、7時間550℃の温度でか焼された。これにより、表3にリストされた特徴を有する成形体が得られた。
【0152】
【表3】

【0153】
商標名 Innojet(商標登録) AircoaterのInnojet Technologies(Lorrach、Germany)(「Lorrach」の「o」はウムラウト)流動床デバイスは、上記のように製造された球225 gで満たされ、該球は、80℃に温度コントロールされた圧縮空気(6 bar)によって流動床の状態に変形されるが、該流動床では、前記成形体は、ドーナツ状に流れ、すなわち、これに垂直に並んだ楕円の道と、これに垂直に並んだ水平な円の道とで動いた。
【0154】
前記成形体が約75℃に温度コントロールされた時点で、当業者にとって通常のNa2PdCl4(四塩化パラジウムナトリウム)7.5 g、及び当業者にとって通常のNaAuCl4(四塩化金ナトリウム)4.6 gを含有する貴金属混合水溶液300 mlは、前記成形体の流動床で40分間噴霧された。
【0155】
前記貴金属混合溶液を前記触媒担体に含浸した後、前記球状の担体は、30分間上述のコンディションで流動床の状態で0.05モルNaOH溶液とともに均一に噴霧された。NaOH溶液は、前記成形体に16時間作用するのを可能にされた。
【0156】
NaOHへの作用に対する曝露に続き、前記担体は、貴金属化合物及びNaOHを介して前記担体に導入されたアルカリ金属及び塩化物の大部分を前記担体から取り除くべく前記流動床デバイスにおいて多量の水で洗浄された。
【0157】
洗浄後は、前記成形体は、100℃の温度の熱い処理空気によって前記流動床デバイスで乾燥された。
【0158】
前記成形体が乾燥された後は、それらは、前記流動床デバイス内で約150℃の温度の窒素におけるエチレン(5体積%)のガス混合物でPd/Auシェル触媒へ還元された。
【0159】
この得られたシェル触媒は、約1.2質量%のPdを含有し、約0.5のAu/Pd原子比率、約160 μmの厚み、及び26 Nの硬度を備えていた。
【0160】
このように生成されたPd/Auシェル触媒の貴金属濃度は、前記殻の厚み90%のエリアにわたり、このエリアの平均貴金属濃度から最大±10%で変化したが、該エリアは、外及び内の殻の限界それぞれから殻厚さ5%の距離であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属のPd及びAuが含有される外殻を有し且つ酸化多孔質触媒担体を有し且つ成形体として形成されてなるシェル触媒であって、該触媒担体が、Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた元素の少なくとも一の酸化物をドーピングされてなる酢酸ビニルモノマー(VAM)を製造するためのシェル触媒。
【請求項2】
前記触媒担体の内表面が、前記ドーピング酸化物でドーピングされたことを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記ドーピング酸化物が、前記触媒担体の骨格構造に均一に分散されて含まれてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒担体が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化ジルコニウム、酸化チタン、天然層状ケイ酸塩、特に酸処理されか焼されたベントナイト、若しくは前記酸化物の二以上の混合物を含有してなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項5】
前記ドーピング酸化物が、前記触媒担体の質量に対して、0.01〜25質量%、好ましくは0.02〜20質量%、より好ましくは0.05〜20質量%の割合で前記触媒担体に含有されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒担体が、8〜50 nm、好ましくは10〜35 nm、より好ましくは11〜30 nmの平均細孔径を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒担体は、0.25〜0.7 ml/g、好ましくは0.3〜0.6 ml/g、より好ましくは0.35〜0.5 ml/gのBJHに従った総細孔容積を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒担体が、1〜150 μval/g、好ましくは5〜130 μval/g、より好ましくは10〜100 μval/g、更により好ましくは10〜60 μval/gである酸性度を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒担体が、160 m2/g以下、好ましくは140 m2/g未満、より好ましくは135 m2/g未満、さらにより好ましくは120 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは100 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは80 m2/g未満、もっとさらにより好ましくは65 m2/g未満の表面積を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項10】
前記触媒担体が、40〜160 m2/g、好ましくは50〜140 m2/g、より好ましくは50〜135 m2/g、更により好ましくは50〜120 m2/g、もっと更により好ましくは50〜100 m2/g、もっと更により好ましくは60〜100 m2/gの表面積を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項11】
前記触媒が、20 N以上、好ましくは25 N以上、より好ましくは35 N以上、更により好ましくは40 N以上の硬度を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項12】
前記触媒担体が、天然層状ケイ酸塩を、特に酸処理されか焼されたベントナイトを、ドーピングされる触媒担体の質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更により好ましくは80質量%以上、もっと更により好ましくは90質量%以上、もっと更により好ましくは95質量%以上の割合で含有してなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項13】
前記触媒担体の総細孔容積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%が、メソ細孔及びマクロ孔から形成されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項14】
触媒担体が、0.3 g/mlよりも大きい、好ましくは0.35 g/mlより大きい、より好ましくは0.35〜0.6 g/mlのかさ密度を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項15】
前記触媒担体に含有される層状ケイ酸塩が、少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは95〜99.5質量%のSiO2含有量を有することを特徴とする請求項12〜14の何れかに記載の触媒。
【請求項16】
前記触媒担体に含有される天然層状ケイ酸塩が、10質量%未満、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%のAl2O3を含有してなることを特徴とする先の請求項12〜15の何れかに記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒担体が、球、シリンダー、穴あきシリンダー、三つ葉、リング、車輪、“逆”車輪、星として、若しくはらせん構造として形成され、好ましくは、うねりのあるらせん構造若しくは星らせん構造として、また、好ましくは球として形成されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項18】
前記触媒担体が、2 mmよりも大きい、好ましくは3 mmよりも大きい、より好ましくは4 mmよりも大きい直径の球として形成されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項19】
前記触媒の殻が、300 μm未満、好ましくは200 μm未満、より好ましくは150 μm未満、更により好ましくは100 μm未満、もっと更により好ましくは80 μm未満の厚みを有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項20】
前記触媒の殻が、200〜2000 μm、好ましくは250〜1800 μm、より好ましくは300〜1500 μm、更により好ましくは400〜1200 μmの厚みを有することを特徴とする請求項1〜18の何れかに記載の触媒。
【請求項21】
前記触媒におけるPdの割合が、貴金属が負荷される触媒担体の質量に対して、0.6〜2.5質量%、好ましくは0.7〜2.3質量%、より好ましくは0.8〜2質量%であることと特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項22】
前記触媒のAu/Pd原子比率が、好ましくは0〜1.2、より好ましくは0.1〜1、更により好ましくは0.3〜0.9、更により一層好ましくは0.4〜0.8であることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項23】
前記殻の厚みの90%のエリアは、外及び内の殻の限界からそれぞれ殻厚さの5%の距離であるが、前記触媒の貴金属濃度は、該エリアにわたって、このエリアの平均金属濃度から最大±20%、好ましくは最大±15%、より好ましくは最大±10%で変化することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項24】
前記触媒が、250 ppm未満、好ましくは150 ppm未満の塩化物の含有量を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項25】
前記触媒が、酢酸アルカリ金属、好ましくは酢酸カリウムを含有してなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒。
【請求項26】
前記触媒の酢酸アルカリ金属の含有量は、0.1〜0.7 mol/l、好ましくは0.3〜0.5 mol/lであることを特徴とする請求項25記載の触媒。
【請求項27】
アルカリ金属/Pd原子比率が、1〜12、好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜9であることを特徴とする請求項25〜26の何れかに記載の触媒。
【請求項28】
a)Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれる原子の少なくとも一の酸化物をドーピングされ、且つ成形体として形成された酸化多孔質触媒担体を供給するステップと、
b)該触媒担体にPd前駆体化合物の溶液を沈着させるステップと、
c)該触媒担体にAu前駆体化合物の溶液を沈着させるステップと、
d)前記Pd前駆体化合物のPd成分を金属状に変化させるステップと、
e)前記Au前駆体化合物のAu成分を金属状に変化させるステップと、
を備えてなる、シェル触媒、特に先の請求項の何れかに記載の触媒を製造する方法。
【請求項29】
前記Pd及びAu前駆体化合物が、これらの金属のハロゲン化合物、特に塩化物、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物、炭酸水素塩、アミン錯体、若しくは有機錯体、例えばトリフェニルホスフィン錯体若しくはアセチルアセトネート錯体から選ばれることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記Pd前駆体化合物が、Pd(NH3)4(OH)2、Pd(NH3)4(OAc)2、H2PdCl4、Pd(NH3)4(HCO3)2、Pd(NH3)4(HPO4)、Pd(NH3)4Cl2、シュウ酸塩Pd(NH3)4、Pd(NO3)2、Pd(NH3)4(NO3)2、K2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH3)2(NO2)2、K2Pd(NO2)4、Na2Pd(NO2)4、Pd(OAc)2、PdCl2及びNa2PdCl4からなる群から選ばれることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の方法。
【請求項31】
前記Au前駆体化合物が、KAuO2、HAuCl4、KAu(NO2)4、AuCl3、NaAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO3)4、NaAuO2、NMe4AuO2、RbAuO2、CsAuO2、NaAu(OAc)3(OH)、RbAu(OAc)3OH、CsAu(OAc)3OH、NMe4Au(OAc)3OH及びAu(OAc)3からなる群から選ばれることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の方法。
【請求項32】
前記Pd前駆体化合物の溶液に、及び前記Au前駆体化合物の溶液に、又は、前記Pd及びAu前駆体化合物を両方含有する溶液に、前記触媒担体を浸すことによって、前記Pd及びAu前駆体化合物が前記触媒担体に沈着されることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の方法。
【請求項33】
前記Pd前駆体化合物の溶液及び前記Au前駆体化合物の溶液が、前記触媒担体の流動層若しくは流層床での前記溶液の吹き付けによって、好ましくは、該溶液のエアロゾルによって、前記触媒担体に沈着されることを特徴とする請求項28〜31の何れかに記載の方法。
【請求項34】
前記触媒担体が、前記溶液での沈着中に加熱されることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の方法。
【請求項35】
a) Pd及び/又はAu前駆体化合物の第1溶液が供給され、
b) Pd及び/又はAu前駆体化合物の第2溶液が供給され、ここでは、前記第1溶液が前記第2溶液の前駆体化合物の貴金属成分の沈殿をもたらし、且つ逆も生じ、
c) 前記第1溶液と前記第2溶液とが前記触媒担体に沈着される
ことを特徴とする先の請求項の何れかに記載の方法。
【請求項36】
前記第1溶液の前駆体化合物が酸であり、前記第2溶液の前駆体化合物が塩基であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記Pd及び/又はAu前駆体化合物が前記触媒担体に沈着された後に、前記触媒担体が固定ステップを受けることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の方法。
【請求項38】
a) Li、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれた原子の少なくとも一の酸化物でドーピングされた粉末状酸化多孔質担体材料を供給し、該担体材料がPd及びAu前駆体化合物で又はPd及びAu粒子で負荷されるステップと、
b) 前記負荷された担体材料を殻の形態の担体構造に沈着するステップと、
c) ステップb)からの前記負荷された担体構造をか焼するステップと、
d) 任意的に前記Pd若しくはAu前駆体化合物のPd及びAu成分を金属状にするステップと、
を備えてなる、シェル触媒、特に本発明に係るシェル触媒を生成するための方法。
【請求項39】
酸化触媒としての、水素化/脱水素化触媒としての、水素化脱硫での触媒としての、水素化脱酸素触媒としての、又は、アルケニルアルカノアートの合成での、特に酢酸ビニルモノマーの合成での、特に酢酸ビニルモノマーへのエチレン及び酢酸のガス相酸化での触媒としての、先の請求項の何れかに記載の触媒の使用。
【請求項40】
天然層状ケイ酸塩を、特に酸処理されか焼されたベントナイトを含有し、前記触媒担体がLi、P、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Sr、Nb、Ta、W、La及び希土類金属からなる群から選ばれる元素の少なくとも一の酸化物をドーピングされてなることを特徴とする多孔質触媒担体。
【請求項41】
前記触媒担体の内表面が、前記ドーピング酸化物をドーピングされてなることを特徴とする請求項40記載の触媒担体。
【請求項42】
前記ドーピング酸化物が、前記触媒担体の骨格構造に均一に分散されて含まれてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項43】
前記ドーピング酸化物が、前記触媒担体の質量に対して、0.01〜25質量%、好ましくは0.02〜20質量%、より好ましくは0.05〜20質量%の割合で前記触媒担体に含有されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項44】
前記触媒担体が、8〜50 nm、好ましくは10〜35 nm、より好ましくは11〜30 nmの平均細孔径を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項45】
前記触媒担体が、0.25〜0.7 ml/g、好ましくは0.3〜0.6 ml/g、より好ましくは0.35〜0.5 ml/gのBJHに従った総細孔容積を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項46】
前記触媒担体が、1〜150 μval/g、好ましくは5〜130 μval/g、より好ましくは10〜100 μval/g、更により好ましくは10〜60 μval/gの酸性度を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項47】
前記触媒担体が、160 m2/g以下、好ましくは140 m2/g未満、より好ましくは135 m2/g未満、更により好ましくは120 m2/g未満、特により好ましくは100 m2/g未満、特により一層好ましくは80 m2/g未満、特により一層好ましくは65 m2/g未満の表面積を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項48】
前記触媒担体が、40〜160 m2/g、好ましくは50〜140 m2/g、より好ましくは50〜135 m2/g、更により好ましくは50〜120 m2/g、特により好ましくは50〜100 m2/g、特により一層好ましくは60〜100 m2/gの表面積を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項49】
前記触媒担体が、前記触媒担体の質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、特により一層好ましくは95質量%以上の割合で層状ケイ酸塩を含有してなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項50】
前記触媒担体の総細孔容積の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%が、メソ細孔及びマクロ孔から形成されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項51】
前記触媒担体が、0.3 g/mlよりも大きい、好ましくは0.35 g/mlよりも大きい、より好ましくは0.35〜0.6 g/mlのかさ密度を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項52】
前記触媒担体に含有される天然層状ケイ酸塩が、少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは95〜99.5質量%のSiO2含有量を有することを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項53】
前記天然層状ケイ酸塩が、10質量%未満、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%のAl2O3を含有してなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項54】
前記触媒担体が、球、シリンダー、穴あきシリンダー、三つ葉、リング、星として、若しくはらせん構造として形成され、好ましくは、うねりのあるらせん構造若しくは星らせん構造として、また、好ましくは球として形成されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。
【請求項55】
前記成形体は、20 N以上、好ましくは25 N以上、更に好ましくは35 N以上、更により好ましくは40 N以上の硬度を有することを特徴とする請求項54記載の触媒担体。
【請求項56】
前記触媒担体が、2 mmよりも大きい、好ましくは3 mmよりも大きい、より好ましくは4 mmよりも大きい直径の球として形成されてなることを特徴とする先の請求項の何れかに記載の触媒担体。

【公表番号】特表2010−535607(P2010−535607A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509745(P2010−509745)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004336
【国際公開番号】WO2008/145395
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】