説明

ドーピング方法

【課題】第III−V族化合物半導体膜をドープする方法を提供する。
【解決手段】a)堆積チャンバー内に基体を提供し、b)第IIIA族金属化合物を気相で堆積チャンバーに運び、c)第VA族化合物を気相で堆積チャンバーに運び、d)式RGeHのゲルマニウムドーパント化合物を気相で堆積チャンバーに運び、e)第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物を堆積チャンバー内で分解し、f)ゲルマニウムをドープした第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して有機金属化合物の分野に関する。特に、本発明は特定の有機金属化合物を半導体薄膜におけるドーパントとして使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
第III−V族半導体膜のような化合物半導体薄膜はエレクトロニクス産業において周知であり、発光ダイオード(LED)のような発光素子において特に有用である。第III族窒化物は、それらを特にLEDに好適にするバンドギャップエネルギーを有する。第III族窒化物のなかでは、窒化ガリウム(GaN)が特に好適である。
【0003】
化合物半導体膜は典型的には化学蒸着(CVD)のような蒸着技術を用いて基体上で成長させられる。このような技術において、反応物(または前駆体)はソースから基体を収容している堆積反応器にガス相(または、気相)で運ばれる。金属有機化学蒸着(MOCVD)は、高温、すなわち室温より高い温度で、大気圧または減圧で、有機金属前駆体化合物を分解することにより金属含有層が堆積される一技術である。
【0004】
ドーパントは典型的には化合物半導体膜に添加され、特に、発光素子に使用される場合に添加される。このようなドーパントは化合物半導体膜の電気伝導性に影響を及ぼす。ケイ素およびマグネシウムが、それぞれ、n−型およびp−型ドーパントとして、特に第III族窒化物において、従来使用されている。ケイ素およびマグネシウムのそれぞれは、GaN格子におけるガリウムと置き換わる。
【0005】
「ハード」ドーパントであるケイ素を「ソフト」ドーパント、例えば、ゲルマニウムで置き換えるトレンドが産業界において存在する。例えば、米国特許第7,488,971号(コバヤカワら)は、GaN層がゲルマニウムでドープされているGaN含有発光素子を開示する。その特許におけるゲルマニウムドーパント源はゲルマン、テトラメチルゲルマニウムおよびテトラエチルゲルマニウムである。しかし、これらゲルマニウム源はその使用について顕著な欠点を有する。ゲルマンは毒性であり、かつかなりの取り扱いの問題をもたらし、一方で、テトラメチルゲルマニウムおよびテトラエチルゲルマニウムのドーパントとしての使用は、第III族窒化物膜への有意な炭素の組み込みをもたらす。このような炭素の組み込みは、第III族窒化物膜の性能に不利益を及ぼす。高水準の炭素組み込みは、その膜を絶縁し、かつ膜の発光特性に悪影響を及ぼす場合がある。炭素組み込みは一般的に、前駆体の分解温度よりも高い温度で堆積を行うことにより、MOCVD堆積膜において低減されうることが産業界において知られている。しかし、このような高温でGaN膜をテトラメチルゲルマニウムまたはテトラエチルゲルマニウムでドーピングすることは、炭素組み込みを低減することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,488,971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、低減した炭素組み込みを提供しつつ、第III−V族化合物半導体をゲルマニウムでドープするために使用されうる好適な前駆体についての必要性が継続している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)堆積チャンバー内に基体を提供し;b)第IIIA族金属化合物を気相で堆積チャンバーに運び;c)第VA族化合物を気相で堆積チャンバーに運び;d)式RGeH(式中、各Rは独立して、(C−C)分岐アルキル、(C−C)環式アルキル、(C−C20)シクロペンタジエニルおよびNRから選択され;RおよびRは独立して、Hおよび(C−C)アルキルから選択され;xは1〜4の整数であり;yは0〜3の整数であり;x+y=4である)のゲルマニウムドーパント化合物を気相で堆積チャンバーに運び;e)第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物を堆積チャンバー内で分解し;並びにf)ゲルマニウムをドープした第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積させる;工程を含む、第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、次の略語は、文脈が明確に他のことを示さない限りは次の意味を有する:℃=摂氏度;mol=モル;b.p.=沸点;eq.=当量;g=グラム;L=リットル;ca.=約;cm=センチメートル;nm=ナノメートル;Å=オングストローム;sccm=標準立方センチメートル/分;M=モル濃度;およびmL=ミリリットル。他に示されない限りは、全ての量は重量パーセントであり、全ての比率はモル比である。全ての数値範囲は境界値を含み、このような数値範囲が合計100%になることに制約されることが明らかな場合を除いて、任意の順に組み合わせ可能である。
【0010】
用語「アルキル」は直鎖、分岐および環式アルキルを含むが、特定のアルキルは「分岐アルキル」のように特定される。同様に「アルケニル」および「アルキニル」は、直鎖、分岐および環式アルケニル、並びに直鎖、分岐および環式アルキニルをそれぞれ含む。「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨードをいい、「ハロ」とはフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。アルキル基のそれぞれは場合によってその水素の1以上が置き換えられた置換基、例えば、これに限定されないが、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルコキシおよびハロを有することができる。本明細書において使用される場合、「CVD」は、MOCVD、金属有機気相エピタキシー(MOVPE)、有機金属気相エピタキシー(OMVPE)、有機金属化学蒸着(OMCVD)およびリモートプラズマ化学蒸着(RPCVD)などの化学蒸着の全ての形態を含むと意図される。
【0011】
広範囲の第IIIA族金属化合物が本発明において使用されうる。特に好適な第IIIA族金属化合物は式RM(式中、Mは第IIIA族金属であり、各Rは独立して(C−C10)有機基もしくは水素である)を有するものである。好ましくは、RはHまたは(C−C10)アルキルであり、より好ましくは、Hまたは(C−C)アルキルである。このような化合物においては、R基は同じかまたは異なっていてよく、すなわち、この化合物はホモレプティックかまたはヘテロレプティックであることができる。RがHである場合には、第IIIA族化合物は塩基を含まないそのままの金属水素化物でありうるか、またはその第三級アミン付加物であってよい。好ましくは、Mはホウ素、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムであり、より好ましくはアルミニウム、ガリウムまたはインジウムである。Rに好適な基には、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールが挙げられる。R基は場合によって、式NR’R’’(式中、R’およびR’’は独立して、(C−C)アルキルである)のジアルキルアミノ基の1種以上で置換されていてもよい。この「置換」とは、有機基の1以上の水素がジアルキルアミノ基で置き換えられることを意味する。好ましくは、RはHまたは(C−C10)アルキルであり、より好ましくはHまたは(C−C)アルキルである。好ましくは、第IIIA族金属化合物は式RMを有し、式中、各R基は、独立して、(C−C)アルキルであり、Mはインジウム、ガリウムおよびアルミニウムから選択される。典型的なR基には、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、イソ−ペンチル、およびネオ−ペンチルが挙げられる。単一種の第IIIA族金属化合物または第IIIA族金属化合物の混合物が本発明において使用されうる。
【0012】
典型的な第IIIA族金属化合物には、限定されないが、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリ−n−プロピルインジウム、トリ−イソ−プロピルインジウム、ジメチルイソ−プロピルインジウム、ジメチルエチルインジウム、ジメチルtert−ブチルインジウム、メチルジ−tert−ブチルインジウム、メチルジイソプロピルインジウム、アリルジメチルインジウム、メチルジアリルインジウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリ−イソプロピルガリウム、トリ−tert−ブチルガリウム、ジメチルイソ−プロピルガリウム、ジエチルtert−ブチルガリウム、アリルジメチルガリウム、メチルジ−イソ−プロピルガリウム、ジメチルtert−ブチルガリウム、ジメチルネオ−ペンチルガリウム、メチルエチルイソプロピルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−イソ−プロピルアルミニウム、トリ−tert−ブチルアルミニウム、ジメチルイソ−プロピルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジメチルtert−ブチルアルミニウム、メチルジ−tert−ブチルアルミニウム、メチルジ−イソ−プロピルアルミニウム、アリルジメチルアルミニウム、メチルジアリルアルミニウム、および第IIIA族金属水素化物の第三級アミン付加物が挙げられる。第IIIA族金属水素化物化合物の典型的な付加物には、限定されないが、トリメチルアミンアラン付加物、メチルピロリジンアラン付加物、ジメチルエチルアミンアラン付加物、テトラメチルグアニジンガラン付加物、キヌクリジンガラン付加物、メチルピロリジンインダン付加物およびテトラメチルエチレンジアミンアラン付加物が挙げられる。
【0013】
本発明の第IIIA族金属化合物は一般的に市販されており、または当該技術分野で説明される方法によって製造されることができ、例えば、米国特許第5,756,786号、第6,680,397号および第6,770,769号を参照。
【0014】
様々な第VA族化合物が本発明において好適に使用されうる。典型的な第VA族化合物には、これらに限定されないが、X(式中、各Xは独立して、H、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、およびアリールから選択される;およびMは第VA族金属である)が挙げられる。第VA族金属(M)には、窒素、リン、アンチモンおよびヒ素が挙げられる。好ましくは、Mは窒素、リンまたはヒ素であり、より好ましくは、窒素またはリンである。本発明において有用な特に好適な第VA族化合物には、アンモニア、ホスフィン、アルシンおよびスチビンが挙げられ、好ましくはアンモニア、ホスフィンおよびアルシンである。アンモニアが特に好ましい。ヒドラジンも好適な第VA族化合物である。このような第VA族化合物は、一般的に市販されており、そのまま使用されることができ、またはさらに精製されることができる。単一種の第VA族化合物または第VA族化合物の混合物が本発明において使用されうる。
【0015】
本発明に有用なゲルマニウムドーパント化合物は式RGeH(式中、各Rは独立して、(C−C)分岐アルキル、(C−C)環式アルキル、(C−C20)シクロペンタジエニルおよびNRから選択され;RおよびRは独立して、Hおよび(C−C)アルキルから選択され;xは1〜4の整数であり;yは0〜3の整数であり;x+y=4である)を有する。Rが、(C−C)分岐アルキルおよび(C−C)環式アルキルから選択されるのが好ましく、より好ましくは(C−C)分岐アルキルから選択される。好ましくは、Rは(C−C)分岐アルキルおよびy=1〜3であり、より好ましくは、Rは(C−C)分岐アルキルおよびy=1〜2であり、さらにより好ましくはRは(C−C)分岐アルキルおよびy=1である。RおよびRは好ましくは、Hおよび(C−C)アルキルから選択され、より好ましくはHおよび(C−C)アルキルから選択される。好ましくは、xは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2である。最も好ましくはx=1およびy=3である。
【0016】
Rについての典型的な(C−C)分岐アルキルおよび(C−C)環式アルキル基には、限定されないが、イソ−プロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオ−ペンチル、シクロプロピル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシルが挙げられる。好ましくは、Rはイソ−プロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびネオ−ペンチルから選択され、より好ましくはRはイソ−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルから選択される。典型的な(C−C20)シクロペンタジエニルには、限定されないが、シクロペンタジエニル、メチル−シクロペンタジエニル、エチル−シクロペンタジエニル、イソ−プロピル−シクロペンタジエニル、ビス−メチル−シクロペンタジエニル、ビス−エチル−シクロペンタジエニル、ビス−イソ−プロピル−シクロペンタジエニル、トリス−メチル−シクロペンタジエニル、トリス−エチル−シクロペンタジエニル、トリス−イソ−プロピル−シクロペンタジエニル、テトラキス−メチル−シクロペンタジエニル、テトラキス−エチル−シクロペンタジエニル、テトラキス−イソ−プロピル−シクロペンタジエニル、ペンタメチル−シクロペンタジエニル、ペンタエチル−シクロペンタジエニル、およびペンタ−イソ−プロピル−シクロペンタジエニルが挙げられる。Rについての典型的なNR基には、限定されないが、メチルアミノ、エチルアミノ、イソ−プロピルアミノ、tert−ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−イソ−プロピルアミノおよびエチルメチルアミノが挙げられる。
【0017】
R、RまたはRの上記アルキルおよびシクロペンタジエニル基のいずれかは、場合によっては、1種以上のアミノ(NR)基(式中、RおよびRは独立してHおよび(C−C)アルキルである)で置換されうる。この「置換」とは、アルキル基上の水素の1以上が1種以上のNR基で置き換えられることを意味する。NR基で置換された典型的なアルキルには、限定されないが、ジメチルアミノ−メチル((CHN−CH−)、ジメチルアミノ−エチル((CHN−C−)、ジエチルアミノ−エチル((CN−C−)、ジメチルアミノ−プロピル((CHN−C−)、およびジエチルアミノ−プロピル((CN−C−)が挙げられる。
【0018】
典型的なゲルマニウムドーパント化合物には、限定されないが、イソ−プロピルゲルマン、ジ−イソ−プロピルゲルマン、トリ−イソ−プロピルゲルマン、テトラ−イソ−プロピルゲルマン、tert−ブチルゲルマン、ジ−tert−ブチルゲルマン、トリ−tert−ブチルゲルマン、テトラ−tert−ブチルゲルマン、イソ−ブチルゲルマン、ジ−イソ−ブチルゲルマン、トリ−イソ−ブチルゲルマン、テトラ−イソ−ブチルゲルマン、イソ−プロピルシクロペンチルゲルマン、イソ−ブチルシクロペンチルゲルマン、シクロプロピルゲルマン、シクロペンチルゲルマン、ジシクロペンチルゲルマン、(メチルシクロペンチル)ゲルマン、(ジメチルシクロペンチル)ゲルマン、シクロヘキシルゲルマン、メチルシクロペンタジエニルゲルマン、エチルシクロペンタジエニルゲルマン、イソ−プロピルシクロペンタジエニルゲルマン、ペンタメチル−シクロペンタジエニルゲルマン、ペンタエチル−シクロペンタジエニルゲルマン、イソプロピル(メチルシクロペンタジエニル)ゲルマン、イソ−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマン、ジ−イソ−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマン、イソ−プロピル−ビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、tert−ブチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、ジ−tert−ブチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、tert−ブチル−ビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、シクロペンチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、シクロペンチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、ジエチルアミノゲルマン、tert−ブチル(ジエチルアミノ)ゲルマン、シクロペンチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、シクロペンチルビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、シクロペンチル(ジエチルアミノ)ゲルマン、シクロペンチルビス(ジエチルアミノ)ゲルマン、ジ−イソ−プロピル−ビス(ジエチルアミノ)ゲルマン、(ジメチルアミノ)ゲルマン、ビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、トリス(ジメチルアミノ)ゲルマン、tert−ブチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、およびジ−イソ−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマンが挙げられる。
【0019】
ゲルマニウムドーパント化合物は様々な手順によって製造されうる。典型的には、ゲルマニウムドーパント化合物は式GeY(式中、Yは反応性基、例えば、ハロゲン、アセタートまたは(C−C)アルコキシであり、ハロゲンが最も典型的である)の化合物から出発して製造される。本明細書において使用される場合、反応性基はその後の反応において置き換えられるかまたは交換される、金属に結合したあらゆる基である。例えば、ジアルキルアミノ−置換ゲルマニウム化合物は、液体または気体形態のジアルキルアミンと1以上の反応性基を有するゲルマニウム化合物との反応によって製造されることができ、より典型的には、ジアルキルアミノリチウム試薬と、このようなゲルマニウム化合物との反応によって製造される。分岐アルキルおよび環式アルキルゲルマニウム化合物はグリニャールまたは有機リチウム反応を用いて製造されうる。シクロペンタジエニルおよびアルキルシクロペンタジエニルゲルマニウム化合物は、特定の金属ハロゲン化物とモノマーシクロペンタジエンを用いて、グリニャールまたは有機リチウム反応を用いて製造されうる。別の実施形態においては、2以上の反応性基を有する化合物が2種の異なるリチウム試薬と1つのポット内で反応させられ得る。このような異なるリチウム試薬は2種の異なる有機リチウム試薬、2種の異なるジアルキルアミノリチウム試薬、または有機リチウム試薬とジアルキルアミノリチウム試薬との混合物であることができる。このような反応において、異なるリチウム試薬は反応に同時に、または段階的な方式で添加されることができる。分岐アルキルおよび環式アルキルゲルマンは、好適な置換アルムニウム化合物を用いたトランスアルキル化反応によって製造されることもできる。本ゲルマニウムドーパント化合物を製造するのに好適な手順は米国特許第7,413,776号(Shenai−Khatkhateら)に開示されているものである。
【0020】
1以上のGe−H結合を含むゲルマニウムドーパント化合物は、ゲルマニウムハロゲン化物の還元によって製造されうる。一般に、このような還元は、上述のような脱酸素化された乾燥有機溶媒中で行われる。米国特許第7,413,776号(Shenai−Khatkhateら)はこのようなゲルマニウムドーパント化合物を製造する好適な手順を開示する。
【0021】
ゲルマニウムドーパント化合物における特定の不純物の存在は、第III−V族化合物半導体膜の性能に不利益をもたらしうる。例えば、ケイ素(これ自体は、第III−V族化合物半導体のためのドーパントである)はゲルマニウム源における不純物である場合がある。存在する場合には、ケイ素は、堆積膜のドーピングにおいてゲルマニウムと競合し、望まれるよりも膜におけるゲルマニウムの濃度が結果的に低くなる。よって、本ゲルマニウムドーパント化合物が実質的にケイ素を含まないことが好ましい。この「実質的に含まない」とは、ゲルマニウムドーパント化合物が1.0ppm未満、好ましくは0.5ppm未満、より好ましくは0.25ppm未満のケイ素しか含まないことを意味する。本ゲルマニウムドーパント化合物のさらなる利点はそれが亜鉛およびアルミニウムのような特定の他の金属不純物を実質的に含まないこと、好ましくは亜鉛およびアルムニウムを含まないことである。特に、本ゲルマニウムドーパント化合物はケイ素、亜鉛およびアルミニウムを実質的に含まず、好ましくはこのような不純物を含まない。別の実施形態においては、本ゲルマニウムドーパント化合物は「ファイブナイン」の純度、すなわち、99.999%以上の純度を有する。より典型的には、このような化合物は「シックスナイン」、すなわち、99.9999%の純度を有する。
【0022】
本発明の第III−V族化合物半導体膜を堆積(または成長)させるために、あらゆる好適な堆積方法が使用されうる。好適な堆積方法には、MOCVD、HVPE(ヒドリド気相エピタキシー)およびMBEが挙げられる。膜厚制御性および大量生産の観点から、MOCVDが好ましくは使用される。
【0023】
MOCVDを使用する場合、キャリアガスとして、水素、窒素、ヘリウムまたはアルゴンが典型的に使用される。GaNの形成において、Gaのためのソース化合物として、トリメチルガリウムまたはトリエチルガリウムが典型的に使用され;Alのためのソースとして、トリメチルアルムニウムまたはトリエチルアルミニウムが典型的に使用され;Inのためのソースとして、トリメチルインジウムまたはトリエチルインジウムが典型的に使用され;Nのソースとしてアンモニアまたはヒドラジンが典型的に使用される。
【0024】
化学蒸着プロセスにおいて、基体を収容する堆積チャンバー(反応器)に第IIIA族金属化合物、第VA族化合物、およびゲルマニウムドーパント化合物が気相で運ばれる。反応器に入ったら、これら化合物は熱で解離し、ゲルマニウムをドープした所望の第III−V族化合物半導体膜が基体上に堆積させられる。
【0025】
本発明は、a)堆積チャンバー内に基体を提供し;b)第IIIA族金属化合物を気相で堆積チャンバーに運び;c)第VA族化合物を気相で堆積チャンバーに運び;d)式RGeH(式中、各Rは独立して、(C−C)分岐アルキル、(C−C)環式アルキルおよびNRから選択され;RおよびRは独立して、Hおよび(C−C)アルキルから選択され;xは1〜4の整数であり;yは0〜3の整数であり;x+y=4である)のゲルマニウムドーパント化合物を気相で堆積チャンバーに運び;e)第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物を堆積チャンバー内で分解し;並びにf)ゲルマニウムをドープした第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積させる;工程を含む、第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積する方法を提供する。
【0026】
ゲルマニウムをドープしたIII−V半導体層のための基体は堆積反応器に入れられる。好適な基体は、任意の好適な物質、例えば、酸化物単結晶、例えば、サファイア単結晶(Al;A−面、C−面、M−面またはR−面)、スピネル単結晶(MgAl)、ZnO単結晶、LiAlO単結晶、LiGaO単結晶およびMgO単結晶;Si単結晶;SiC単結晶;GaAs単結晶;AlN単結晶;GaN単結晶;およびホウ化物単結晶、例えば、ZrB単結晶から製造されることができる。サファイア単結晶およびSiC単結晶が好ましい基体である。
【0027】
第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物は固体、液体または気体であることができる。第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物は好適な送達装置において提供される。このような化合物が適合性である限りは、これらのいずれも、混合されることができ、単一の送達装置から提供されることができる。典型的には、第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物のそれぞれは別々の送達装置から提供される。それぞれの送達装置は堆積反応器と流体連絡している。第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物を気相で堆積チャンバーに提供するために、これらの化合物のそれぞれは、次いで、そのそれぞれの送達装置から堆積チャンバーに運ばれる。2種以上の第IIIA族金属化合物を気相で提供するために、第IIIA族金属化合物を収容する2以上の気体送達装置が使用されうることが認識される。同様に、2種以上の第VA族化合物またはゲルマニウムドーパント化合物をそれぞれ気相で提供するために、第VA族化合物またはゲルマニウムドーパント化合物を収容する2以上の気体送達装置が使用されうる。さらに、意図的な不純物(例えば、界面活性剤)が開始時または成長中に使用され、得られる膜結晶性の形成を制御することができる。戦略的な添加剤および界面活性剤が使用され、構造(例えば、立方晶系または六方晶系)、成長の均一性および/またはドーパントの組み込みを制御することができる。化合物半導体においては、原子の積層順序(原子比を変えずに、原子が互いにどのように配置されるか)は変わることができ、これは次いで得られる結晶の物理的、電気的および光学的特性に影響を及ぼす。米国特許第7,390,360号(Shenai−Khatkhateら)に概説されるような戦略的な添加剤および組成物が本発明において使用されうる。
【0028】
バブラー(シリンダーとしても知られる)は、堆積反応器に本ソース化合物(第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物)を気相で提供するために使用される典型的な送達装置である。このようなバブラーは典型的には、充填ポート、ガス入口ポートおよび出口ポートを含み、出口ポートは堆積チャンバーに接続される。キャリアガスは典型的には、ガス入口ポートを通ってバブラーに入り、前駆体気体を同伴するかまたは捕捉する。同伴されるまたは運ばれる気体は、次いで出口ポートを通ってバブラーを出て、堆積チャンバーに運ばれる。様々なキャリアガス、例えば、水素、ヘリウム、窒素、アルゴンおよびこれらの混合物などが使用されることができる。
【0029】
使用される具体的な堆積装置に応じて、様々なバブラーが使用されうる。具体的なソース化合物が固体である場合には、米国特許第6,444,038号(Rangarajanら)および第6,607,785号(Timmonsら)に開示されているバブラー、並びに他のデザインのものが使用されうる。液体ソース化合物については、米国特許第4,506,815号(Melasら)および第5,755,885号(Mikoshibaら)に開示されているバブラー、並びに他の液体前駆体バブラーが使用されうる。ソース化合物は液体または固体としてバブラー内に維持される。固体ソース化合物は典型的には、堆積チャンバーに移送する前に気化または昇華させられる。
【0030】
従来のCVDプロセスにおいては、液体ソース化合物を供給するためのバブラー、並びに固体ソース化合物を供給するためのバブラーは、ガス入口ポートに接続されているディップチューブを含むことができる。一般的に、キャリアガスは前駆体とも称されるソース化合物の表面より下に導入され、キャリアガス中にソース化合物の気体を同伴しまたは運びつつ、そのソース化合物を上方に向かって通って、その上のヘッドスペースまで移動する。
【0031】
さらなる実施形態においては、本ソース化合物のいずれかも、直接液体注入プロセスにおける使用のための有機溶媒と一緒にされることができる。具体的なソース化合物を溶解しかつ好適にはその具体的なソース化合物に対して不活性であり、並びにその具体的なソース化合物の蒸気圧、熱安定性、および極性を適合させるあらゆる有機溶媒が使用されうる。典型的な有機溶媒には、限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、線状アルキルベンゼン、ハロゲン化炭化水素、シリアート化(silyated)炭化水素、アルコール、エーテル、グライム、グリコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類、エステル、アミン、アルキルニトリル、チオエーテル、チオアミン、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、シリコーン油、ニトロアルキル、アルキルニトラートおよびこれらの混合物が挙げられる。好適な溶媒には、テトラヒドロフラン、ジグライム、酢酸n−ブチル、オクタン、酢酸2−メトキシエチル、乳酸エチル、1,4−ジオキサン、ビニルトリメチルシラン、ピリジン、メシチレン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。有機溶媒の混合物が使用されうる。直接液体注入プロセスにおいて使用される場合には、ソース化合物の濃度は典型的には0.01〜1.5M、より典型的には0.01〜0.15Mの範囲である。ソース化合物/有機溶媒組成物は溶液、スラリーまたは分散物の形態であることができる。本ソース化合物および有機溶媒を含む組成物は、直接液体注入を使用する蒸着プロセルにおける使用に好適である。好適な直接液体注入プロセスは米国特許出願公開第2006/0110930号(Senzaki)に開示されるものである。
【0032】
堆積反応器はチャンバーを含み、このチャンバーは典型的には、その中で少なくとも1つ、場合によっては多くの基体を堆積させる加熱容器である。この堆積チャンバーは出口を有し、副生成物をチャンバー外に抜き出し、かつ好適な減圧を提供するためにこの出口は典型的には真空ポンプに接続されている。MOCVDは大気圧または減圧、40Pa〜101.324kPa(0.3Torr〜760Torr)の範囲で行われうる。堆積チャンバーはソース化合物の分解を誘導するのに充分高い温度に維持される。典型的な堆積チャンバー温度は150℃〜600℃、より典型的には150℃〜400℃であり、選択される正確な温度は効果的な堆積を提供するように最適化される。場合によっては、基体が高温で維持される場合、または他のエネルギー、例えば、プラスマがラジオ周波数ソースによって発生させられる場合には、堆積チャンバー内の温度は全体として低減されうる。
【0033】
所望の特性を有するゲルマニウムをドープした第III−V族化合物半導体膜を生じさせることが望まれる限りは、堆積が継続される。典型的には、堆積が停止させられるときに、膜厚は10〜数千オングストローム以上であることができる。本発明に従って、ゲルマニウムでドープされうる典型的な第III−V族化合物半導体膜には、AlSb、AlAs、AlN、AlP、BN、BP、BAs、GaSb、GaAs、GaN、GaP、InSb、InAs、InN、InP、AlGa1−xAs、InGa1−xAs、InGaP、AlInAs、AlInSb、GaAsN、GaAsP、AlGaN、AlGaP、InGaN、InGaAs、InGaP、InAsSb、InGaSb、AlInGaN、AlGaInAs、AlGaInP、InAlGaP、InGaAlP、AlInGaP、AlGaAsP、InGaAsP、AlInAsP、AlGaAsN、InGaAsN、InAlAsN、GaAsSbN、GaInNAsSbおよびGaInAsSbPが挙げられる。好ましくは、第III−V族化合物半導体膜は第III族窒化物膜である。好ましい第III族窒化物膜には、AlN、BN、GaN、InN、GaAsN、AlGaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlGaAsN、InGaAsN、InAlAsN、GaAsSbNおよびGaInNAsSbが挙げられ、より好ましくは、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、AlGaAsN、InGaAsN、GaAsSbNおよびGaInNAsSbが挙げられ、さらにより好ましくはGaNが挙げられる。
【0034】
窒化物ベースの化合物半導体をドープするために本方法が使用される場合には、一般式AlGaIn1−A(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1、およびX+Y+Z=1;記号Mは窒素以外の第VA族元素を表す;0≦A<1)で表されるものをはじめとする様々な窒化物ベースの化合物半導体が使用されうる。好ましくは、窒化物ベースの半導体は、一般式AGaIn1−A(式中、0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1、およびX+Y+Z=1;記号Mは窒素以外の第VA族元素を表し、かつ0≦A<1である)で表されるガリウム窒化物ベースの化合物半導体である。
【0035】
窒化物ベースの化合物半導体は2種以上の第III族金属を含むことができ、かつ必要な場合には、ゲルマニウムに加えて、ドーパントを含むこともできる。このような追加のドーパントには、限定されないが、Si、Mg、Ca、Zn、Be、P、AsおよびBが挙げられる。さらに、いくつかの場合においては、このような窒化物ベースの化合物半導体は、意図的に添加された元素だけでなく、膜形成条件などに応じて否応なく含まれる不純物、および原料および反応管物質に含まれる痕跡量の不純物も含む。
【0036】
本発明によって製造された第III−V族化合物半導体膜は下層、n−コンタクト層およびn−クラッド層から構成されうる。n−コンタクト層は下層および/またはn−クラッド層としても機能しうる。
【0037】
ある実施形態において、下層はAlGa1−XN層(0≦X≦1、好ましくは、0≦X≦0.5、より好ましくは、0≦X≦0.1)から構成されうる。下層の厚みは好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは1μm以上である。1μm以上の膜厚を有することにより、AlGa1−XN層は優れた結晶性を伴って容易に得られうる。
【0038】
下層はn−型不純物(ゲルマニウム)で、1×1017〜1×1019/cmの範囲内でドープされうるが、優れた結晶性の維持の観点からは好ましくはドープされない(1×1017/cm未満)。
【0039】
下層を成長させるための温度は好ましくは800℃〜1200℃であり、より好ましくは1000℃〜1200℃の範囲内に調節される。このような温度範囲内で成長させられる場合には、下層は優れた結晶性を伴って容易に得られうる。さらに、MOCVD成長炉の内圧は好ましくは、15〜40kPaに調節される。
【0040】
n−コンタクト層は、第III−V族層、好ましくは第III族窒化物層、より好ましくは下層と同様に、AlGa1−XN層(0≦X≦1、好ましくは0≦X≦0.5、より好ましくは0≦X≦0.1)から構成される。本発明に従って、n−コンタクト層はゲルマニウム(n−型不純物)でドープされ、負極との優れたオーム接触の維持、クラッキングの防止、および優れた結晶性の維持の観点から、1×1017〜1×1020/cm、好ましくは1×1018〜1×1019/cmの濃度でゲルマニウムを含む。
【0041】
n−コンタクト層を構成する本発明の好ましい第III族窒化物ベースの化合物半導体は、好ましくは、下層のものと同じ組成を有する。これらの層の全膜厚は好ましくは1〜20μm、好ましくは2〜15μm、より好ましくは3〜12μmの範囲内に設定される。n−コンタクト層および下層の全膜厚がこのような範囲内にある場合には、半導体の結晶性は良好に維持されうる。n−クラッド層は好ましくは、n−コンタクト層と発光層との間に提供される。n−クラッド層を提供することにより、n−コンタクト層の最外面に生じる平坦でない部分が充填されうる。n−クラッド層は、AlGaN、GaN、GaInNまたは上記第III族窒化物膜のいずれかから形成されうる。さらに、n−クラッド層はこれらの構造の複数の積層またはヘテロ接合を有する超格子構造をとることもできる。GaInNの場合には、いうまでもないことであるが、バンドギャップは望ましいことに、発光層のGaInNのものよりも大きい。
【0042】
n−クラッド層の厚みは特に限定されないが、0.005〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.1μmの範囲内が好ましい。
【0043】
さらに、n−クラッド層におけるゲルマニウムドーパントの濃度は、好ましくは1×1017〜1×1020/cm、より好ましくは1×1018〜1×1019/cmの範囲内である。優れた結晶性の維持、および発光素子の駆動電圧の低減の観点から、ゲルマニウムドーパント濃度は好ましくはこの範囲内である。
【実施例】
【0044】
実施例1
大気圧で動作しかつGaN堆積専用の、好適なコールドウォール垂直誘導加熱MOCVDにおいて、ゲルマニウムをドープしたGaN層の堆積が行われる。200μmの厚みを有する(0001)サファイア基体上に、1050〜1080℃で標準MOCVD技術によって、2μmの厚みを有するゲルマニウムをドープしたGaN薄層が堆積される。このサファイア基体はあらかじめ、脱脂し、HSO:HPO(比率3:1)酸溶液中で酸洗いすることにより化学的に処理される。ガリウムソースはトリメチルガリウム(TMG)である。アンモニア(第VA族化合物)ガスが窒素源として使用される。ゲルマニウムドーパントはイソ−ブチルゲルマンである。キャリアガス希釈剤、すなわち、窒素と水素との50:50混合物が、約1.5〜3L/分の流速で使用される。TMGはバブラー内に配置され、バブラーを通ってバブリングする水素と共に、全ガリウムで10〜15μモル/分の速度で使用される。アンモニアは別のラインを介して、流速1〜2L/分の流速で導入される。イソ−ブチルゲルマンは別のラインを介して適切な流速で導入される。これら反応物質は1060℃に加熱されたサファイア基体上で分解する。ゲルマニウムをドープしたGaN層の堆積が完了した後で、この層は約1080℃の温度でアニールされる。このように得られたドープしたGaN層は1×1017/cm以上のゲルマニウム濃度、およびテトラメチルゲルマンを使用してドープされた対応するGaN膜と比較して低減した炭素濃度を有するものと予想される。
【0045】
実施例2
ガリウムソースがトリエチルガリウムであり、ゲルマニウムドーパント化合物がtert−ブチルゲルマンであることを除いて、実施例1が繰り返される。このように得られたドープされたGaN層は、1×1017/cm以上のゲルマニウム濃度、およびテトラメチルゲルマンを使用してドープされた対応するGaN膜と比較して低減した炭素濃度を有するものと予想される。
【0046】
実施例3
トリメチルアルミニウム、TMGおよびアンモニアを用い、イソ−ブチルゲルマンをゲルマニウムドーパント化合物として使用して、ゲルマニウムをドープしたAlGaN膜が製造されることを除いて、実施例1の手順が繰り返される。
【0047】
実施例4
次の反応物質および条件が、好適な標準MOCVD膜成長技術と共に使用されることを除いて、実施例1の手順が繰り返される。それぞれのサンプルにおいて、好適な基体、例えば、ガリウム窒化物膜についてはサファイア、ガリウムヒ素膜についてはガリウムヒ素、およびインジウム含有膜についてはインジウムホスフィドが使用される。キャリアガスとしてHが使用される。それぞれのサンプルについて、具体的なソース化合物、得られる第III−V族化合物半導体膜および使用される具体的なゲルマニウムドーパントは以下の表に示される。
【0048】
【表1】

【表2】

【0049】
上記表において、化合物およびリガンドについて次の略語が使用される:
BPE=ビスホスフィノエタン、DIPMeIn=ジ−イソプロピルメチルインジウム、DMHy=非対称ジメチルヒドラジン、EDMIn=エチルジメチルインジウム、MEAs=モノエチルアルシン、MIPAs=モノ−イソプロピルアルシン、MPA=メチルピロリドンアラン、TBA=ターシャリーブチルアルシン、TBP=ターシャリーブチルホスフィン、TEAl=トリエチルアルミニウム、TEG=トリエチルガリウム、TEIn=トリエチルインジウム、TESb=トリエチルアンチモン、TIPAl=トリ−イソプロピルアルミニウム、TIPIn=トリ−イソプロピルインジウム、TIPSb=トリ−イソプロピルアンチモン、TMA=トリメチルアルミニウム、TMG=トリメチルガリウム、TMI=トリメチルインジウム、TMSb=トリメチルアンチモン、IBGe=イソ−ブチルゲルマン、DIBGe=ジ−イソ−ブチルゲルマン、TIBGe=トリ−イソ−ブチルゲルマン、IBIPGe=イソ−ブチル(イソ−プロピル)ゲルマン、IBTBEGe=イソ−ブチル(tert−ブチル)ゲルマン、DMAIBGe=ジメチルアミノ−イソ−ブチルゲルマン、DEAIBGe=ジエチルアミノ−イソ−ブチルゲルマン、EMAIBGe−エチルメチルアミノ−イソ−ブチルゲルマン、TBGe=tert−ブチルゲルマン、DTBGe=ジ−tert−ブチルゲルマン、TTBGe=トリ−tert−ブチルゲルマン、DMATBGe=ジメチルアミノ−tert−ブチルゲルマン、DEATBGe=ジエチルアミノ−tert−ブチルゲルマン、EMATBGe=エチルメチルアミノ−tert−ブチルゲルマン、IPGe=イソ−プロピルゲルマン、DIPGe=ジ−イソ−プロピルゲルマン、TIPGe=トリ−イソ−プロピルゲルマン、IPMGe=イソ−プロピルメチルゲルマン、IPEGe=イソ−プロピルエチルゲルマン、DMAIPGe=ジメチルアミノ−イソ−プロピルゲルマン、DEAIPGe=ジエチルアミノ−イソ−プロピルゲルマン、EMAIPGe=エチルメチルアミノ−イソ−プロピルゲルマン、CpIBGe=シクロペンタジエニル−イソ−ブチルゲルマン、MCpIBGe=メチルシクロペンタジエニル−イソ−ブチルゲルマン、IBTBGe=イソ−ブチル−tert−ブチルゲルマン、TBIPGe=tert−ブチル−イソ−プロピルゲルマン、およびEMATBGe=エチルメチルアミノ−tert−ブチルゲルマン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)堆積チャンバー内に基体を提供し;
b)第IIIA族金属化合物を気相で堆積チャンバーに運び;
c)第VA族化合物を気相で堆積チャンバーに運び;
d)式RGeH(式中、各Rは独立して、(C−C)分岐アルキル、(C−C)環式アルキル、(C−C20)シクロペンタジエニルおよびNRから選択され;RおよびRは独立して、Hおよび(C−C)アルキルから選択され;xは1〜4の整数であり;yは0〜3の整数であり;x+y=4である)のゲルマニウムドーパント化合物を気相で堆積チャンバーに運び;
e)第IIIA族金属化合物、第VA族化合物およびゲルマニウムドーパント化合物を堆積チャンバー内で分解し;並びに
f)ゲルマニウムをドープした第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積させる;
工程を含む、第III−V族化合物半導体膜を基体上に堆積する方法。
【請求項2】
第IIIA族金属化合物が式RMを有し、式中、Mが第IIIA族金属であり、各Rが独立して(C−C10)有機基または水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが(C−C)分岐アルキルであり、y=1〜3である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ゲルマニウムドーパントがイソ−ブチルゲルマンおよびtert−ブチルゲルマンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第VA族化合物が式Xを有し、式中、各Xが独立して、H、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシおよびアリールであり;Mが第VA族金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ゲルマニウムをドープした第III−V族化合物半導体膜が1×1017〜1×1020/cmのゲルマニウム濃度を有する、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−54935(P2011−54935A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−137936(P2010−137936)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】