説明

ドームカバーの製造方法、ドームカバーおよびドーム型カメラ

【課題】 製造したドームカバーに部分的な成形むらが生じるのを抑えることのできるドームカバーの製造方法を提供する。
【解決手段】 射出成形用金型11の上型12と下型13との間に、ドームカバー6の形状のキャビティ14を形成し、上型12のドームカバー6の天頂部15に対応する位置に、溶融した樹脂を注入するゲート口16を設け、ゲート口16からキャビティ14に溶融した樹脂を注入し、ドームカバー6を射出成形によって製造する。キャビティ14の中心部(ドームカバー6の天頂部15に対応する部分)から注入された樹脂は、キャビティ14の円周部へ向けて一様に流れる。したがって、キャビティ14内における樹脂の圧力や温度にむらが抑えられ、その結果、製造したドームカバー6の成形むらが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム型の監視カメラ等に用いられるドームカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、施設の壁や天井に設置される監視カメラとして、監視カメラのレンズを収容して保護するためのドームカバーを備えたドーム型カメラが知られている。ドームカバーは、典型的には、透明な樹脂製であり、開口部を有する略半球状のドーム部と、開口部の周縁部に設けられるフランジ部とを備えている。監視カメラのレンズは、ドームカバーに収容された状態で、パン方向またはチルト方向に回転し、透明なドームカバーを通して監視映像の撮影を行う。したがって、このドームカバーには、光学的に高い性能(例えば、ドームカバーを通して撮影したカメラ画像で、高画質や高解像度が得られること)が要求される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなドームカバーは、例えば射出成形によって製造される。射出成形に用いられる金型の上型と下型との間には、ドームカバーの形状に対応する形状のキャビティが形成されている。従来、射出成形用の金型には、成形したドームカバーのドーム部にゲート痕が残らないように、ドームカバーのフランジ部に対応する位置に樹脂を注入するためのゲート口が設けられている。すなわち、ゲート口は、キャビティの側方(平面視で略円形のキャビティの円周部に)設けられている。そして、射出成形用の金型のゲート口から加熱して溶融した樹脂をキャビティ内へ注入し、樹脂を冷却して硬化させることにより、ドームカバーを射出成形によって製造する(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−300659号公報(第4−6頁、第2図)
【特許文献2】特開2003−285351号公報(第3−6頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のドームカバーの製造方法では、キャビティの側方に設けられたゲート口から樹脂を注入する。そのため、キャビティの側方(平面視で略円形のキャビティの一方の円周部)から注入された樹脂は、キャビティの中心部(ドームカバーの天頂部に対応する部分)を回り込むように流れて、キャビティの他方の円周部の出口部分へと流れる。このように樹脂がキャビティ内を流れると、ゲート口と出口部分の付近では、樹脂の流れが一様でなく、キャビティ内における樹脂の圧力や温度にむらが生じることとなる。したがって、従来の方法で製造したドームカバーでは、ゲート口や出口部分に対応する部分において成形むらが発生し、その部分で光学的なむら(カメラ画像の画質や解像度の低下等)が生じることとなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、ドームカバーで部分的な成形むらが発生するのを抑えることのできるドームカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドームカバーの製造方法は、射出成形用の第1金型と第2金型との間に、ドームカバーの形状のキャビティを形成し、前記第1金型のドームカバーの天頂部に対応する位置に、溶融した樹脂を注入するゲート口を設け、前記ゲート口から前記キャビティに溶融した樹脂を注入し、ドームカバーを射出成形によって製造する構成を有している。この構成により、キャビティの中心部(ドームカバーの天頂部に対応する部分)から注入された樹脂は、キャビティの円周部へ向けて一様に流れる。したがって、キャビティ内における樹脂の圧力や温度にむらが生じるのを抑え、製造したドームカバーに成形むらが生じるのを抑えることができる。
【0007】
また、本発明のドームカバーの製造方法では、鏡面加工された当接面を有する後加工手段を用い、射出成形によって製造した前記ドームカバーの天頂部に前記当接面を押し当てて、前記ドームカバーの天頂部の樹脂を溶融し、前記後加工手段の当接面の鏡面形状を前記ドームカバーの天頂部に転写する構成を有している。この構成により、ドームカバーの天頂部に鏡面加工された後加工手段の当接面の形状が転写することにより、ドームカバーの天頂部に後加工を施すことができる。例えば、ドームカバーの天頂部にゲート口の痕跡(ゲート痕)が残っている場合であっても、後加工によってゲート痕を容易に目立たなくすることができる。
【0008】
また、本発明のドームカバーの製造方法では、前記後加工手段の当接面を超音波振動させることによって、前記ドームカバーの天頂部の樹脂を溶融する構成を有している。この構成により、超音波振動している間だけ、ドームカバーの天頂部表面の樹脂が溶融する。したがって、樹脂を加熱溶融した場合に比べて、樹脂の溶融の度合いを容易にコントロールすることができる。また、超音波での振動が停止すると、ドームカバーの天頂部の樹脂は硬化する。したがって、樹脂を硬化させるのに必要な時間が短くて済み、後加工に要する時間を短縮することができる。
【0009】
また、本発明のドームカバーの製造方法では、前記ドームカバーの天頂部における接線方向に沿って、前記後加工手段の当接面を振動させる構成を有している。この構成により、超音波振動する当接面とドームカバーの天頂部との間で生じる摩擦によって、ドームカバーの天頂部の樹脂を容易に溶融させることができる。
【0010】
また、本発明のドームカバーの製造方法では、前記ゲート口には、抜き差し自在に挿入されるゲートピン部材が備えられ、前記樹脂を注入するときには、前記ゲートピン部材を引き抜き位置まで引き抜いて、前記ゲート口を開口し、前記樹脂を注入した後には、前記ゲートピン部材を差し込み位置まで差し込んで、前記ゲート口を前記ゲートピン部材によって塞ぐとともに、前記ゲート口周囲の前記第1金型の内面と前記ゲートピン部材の先端面とによって連続面を形成する構成を有している。この構成により、樹脂を注入した後、ドームカバーの天頂部に位置するゲート口がゲートピン部材で塞がれ、ゲートピン部材の先端面で連続面が形成されるので、ドームカバーの天頂部のゲート痕を小さくすることができる。
【0011】
また、本発明のドームカバーは、上記の製造方法を用いて製造したドームカバーを備えた構成を有している。
【0012】
また、本発明のドーム型カメラは、上記のドームカバーと、前記ドームカバーの内側に設けられたカメラとを備えた構成を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ドームカバーの天頂部に対応する位置に設けたゲート口からキャビティに溶融した樹脂を注入することにより、製造したドームカバーに部分的な成形むらが生じるのを抑えることができるという効果を有するドームカバーの製造方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態のドームカバーの製造方法について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、施設の天井などに設置されるドーム型の監視カメラ等に用いられるドームカバーを射出成形で製造する場合を例示する。
【0015】
本発明の実施の形態のドームカバーの射出成形用の金型を図1および図2に示す。図1および図2は、射出成形用金型の横からみた断面図である。また、図3は、射出成形によって製造されたドームカバーの横からみた断面図であり、図4は、ドームカバーの斜視図である。また、図5は、ドームカバーを備えたドーム型カメラの正面図である。
【0016】
ここでは、まず、ドーム型カメラおよびドームカバーの構成について、図3〜図5を用いて説明する。
【0017】
図5に示すように、ドーム型カメラ1は、取付け部2を有する本体部3と、本体部3の下部に備えられる監視カメラ4のレンズ5と、レンズ5を収容して保護するためのドームカバー6を備えている。このドーム型カメラ1は、取付け部2によって、例えば施設の天井などに取り付けられる。
【0018】
本体部3には、監視カメラ4のレンズ5をパン方向(水平方向)およびチルト方向(垂直方向)に旋回させるパンチルト機構7が備えられている。ここでは特に図示しないが、レンズ5は、鏡筒に複数のレンズが組み付けられて構成されている。そして、鏡筒の後方にCCD等の撮像素子が組み込まれており、これによって監視カメラ4が構成されている。
【0019】
ドームカバー6は、レンズ5を収容した状態で本体部3に取り付けられている。図3および図4に示すように、ドームカバー6は、開口部8を有する略半球状のドーム部9と、開口部8の周縁から外側に向けて突出して設けられているフランジ部10とを備えている。ここでは、図3および図4において、半球と円筒を組み合わせた形状のドーム部9を有するドームカバー6が例として図示されている。ただし、ドーム部9の円筒の部分は必ずしも必要ではなく、ドームカバー6のドーム部9は、半球形状であってもよい。なお、後述する図1および図2では、説明の簡略化のため、略半球状のドームカバー6の円筒の部分については、図示を省略している。
【0020】
図5に示すように、本実施の形態では、レンズ5を水平方向に向けた状態で、レンズ5の光軸がドームカバー6の半球の中心からドームカバー6の天頂側へオフセットしている(図8参照)。このオフセットにより、レンズ5が水平方向を向いたときでも、本体部3に邪魔される(本体部3によってカメラ画角が欠られる)ことなく、レンズ5が前方を撮影することができる。
【0021】
また、ドームカバー6は透明な樹脂製である。本実施の形態では、ドームカバー6の材料として、例えばポリカーボネイト(PC)、アクリル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の透明な合成樹脂が使用される。また、このドームカバー6には、光学的に高い性能が要求される。例えば、ドームカバー6を通して撮影したカメラ画像において、高い画質や解像度が得られることが要求される。
【0022】
つぎに、ドームカバー6を射出成形で製造するときに使用する金型11の構成について、図1および図2を用いて説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、射出成形用の金型11は、上下に開閉される上型12と下型13とを備えている。上型12と下型13との間には、ドームカバー6の形状に対応する略半球形状のキャビティ14が形成されている。上型12のドームカバー6の天頂部15に対応する位置には、溶融した樹脂を注入するゲート口16が設けられている。また、上型12のキャビティ14の外側(ドームカバー6の外側面の周辺部に対応する位置)には、冷却媒体(冷却水または冷却オイル)を流すための冷却媒体流路17が設けられている。
【0024】
ゲート口16には、ゲートピン部材18が抜き差し自在に挿入されている。ゲートピン部材18は、図1に示す引き抜き位置と図2に示す差し込み位置との間で、上下方向にスライド自在とされている。図1に示すように、ゲートピン部材18を引き抜き位置まで引き抜いた状態では、上型12のゲート口16が開口しており、ゲート口16からキャビティ14内に樹脂を注入することが可能である。一方、図2に示すように、ゲートピン部材18を差し込み位置まで差し込んだ状態では、上型12のゲート口16がゲートピン部材18で塞がれ、ゲート口16の周囲の上型内周面19とゲートピン部材18のピン先端面20とによって連続面が形成されている。すなわち、図2に示すように、ゲート口16の周囲の上型内周面19とゲートピン部材18のピン先端面20が、段差なく連続した状態となっている。
【0025】
ここで、射出成形用金型11の上型12は、ドームカバー6の外側部分を成形する外型ともいえるものであり、本発明の第1金型に相当する。また、射出成形用金型11の下型13は、ドームカバー6の内側部分を成形する内型ともいえるものであり、本発明の第2金型に相当する。
【0026】
つぎに、ドームカバー6に後加工を施す超音波ウェルダー装置21の構成について、図6および図7を用いて説明する。
【0027】
図6および図7には、射出成形で製造したドームカバー6に後加工を施す様子が示される。図6は、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施す様子を示す側面図であり、図7は、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施す様子を示す斜視図である。
【0028】
図6および図7に示すように、本実施の形態では、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施す後加工手段として、超音波ウェルダー装置21が使用される。超音波ウェルダー装置21は、図示しない装置本体と、装置本体に備えられ超音波振動を発振する超音波振動子と、超音波振動子によって発振された超音波振動が伝達されるホーン部材22を備えている。本実施の形態では、超音波ウェルダー装置21のホーン部材22は、ドームカバー6の天頂部15における接線方向に沿って、水平方向(図6における左右方向)に振動するように構成されている。
【0029】
超音波ウェルダー装置21のホーン部材22は、凸形状の先端凸部23を有している。ホーン部材22の先端凸部23の下面24は、ドームカバー6の頂点部の上面の球面形状(凸球面形状)に沿うような球面形状(凹球面形状)である。そして、ホーン部材22の先端凸部23の下面24には、鏡面加工が施されている。ここでは、超音波ウェルダー装置21が、本発明の後加工手段に相当し、ホーン部材22の先端凸部23の下面24が、本発明の当接面に相当する。
【0030】
つづいて、以上のように構成された射出成形用金型11と超音波ウェルダー装置21を用いて、ドームカバー6を製造する方法について、図1〜図7を用いて説明する。
【0031】
本発明の実施の形態のドームカバー6を射出成形によって製造するときには、まず、図1に示すように、射出成形用金型11の上型12と下型13を閉じて、上側と下型13との間にキャビティ14を形成する。つぎに、ゲートピン部材18を引き抜き位置まで引き抜いて、ゲート口16を開口させる。その後、溶融させた樹脂をゲート口16からキャビティ14内に注入する。このとき、ゲート口16から注入された樹脂は、キャビティ14の中心部(ドームカバー6の天頂部15に対応する部分)から、キャビティ14の円周部へ向けて等方的に一様に流れる。
【0032】
そして、図2に示すように、ゲートピン部材18を差し込み位置まで差し込んで、ゲート口16をゲートピン部材18で塞ぐ。キャビティ14内の樹脂が充分に冷えて硬化したら、上型12と下型13を開いて成形品であるドームカバー6を射出成形用金型11から取り出す(図3および図4参照)。
【0033】
つづいて、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施すときには、図6および図7に示すように、超音波ウェルダー装置21のホーン部材22の先端凸部23の下面24を、ドームカバー6の頂点部に押し当てる。
【0034】
そして、図6および図7において矢印で示すように、超音波ウェルダー装置21のホーン部材22を水平方向(図6における水平方向)に振動させて、ドームカバー6の天頂部15の樹脂を再び溶融させる。そうすると、押し当てられたホーン部材22の先端凸部23の下面24の鏡面形状が、ドームカバー6の天頂部15に転写される。その後、超音波ウェルダー装置21からの超音波の発振を停止して、ドームカバー6の天頂部15の樹脂を再び硬化させる。
【0035】
このようにして、ドームカバー6の天頂部15に後加工が施される。このような後加工を施すことにより、ドームカバー6の天頂部15にゲート痕25ができた場合であっても、ゲート痕25を目立たなくすることができる。
【0036】
以上のような本実施の形態のドームカバー6の製造方法を使用することにより、例えば、図8に示すような天頂部15の薄いドームカバー6を容易に製造することが可能である。図8に例示したドームカバー6では、ドーム部9の外側の半球の中心に対して、ドーム部の内側の半球の中心が、ドーム部9の天頂側にオフセットしている。これにより、ドーム部9の天頂部15におけるドーム肉厚(ドーム表面に垂直な方向の厚さ)が、ドーム水平方向のドーム肉厚(ドーム部9の周辺部における厚さ)よりも薄くなっている。これにより、ドーム部9での光路差が低減し、その結果、光路差に起因する収差が低減して、カメラ画像の画質が向上する。
【0037】
図8に示すドームカバー6を従来の製造方法で製造しようとすると、ドームカバーのフランジ部に対応する位置(キャビティの側方のゲート口)から樹脂を注入したときに、キャビティが天頂部で狭くなっているため、注入した樹脂がキャビティの天頂部に流れ込まず、キャビティの天頂部で成形不良が発生してしまう。それに対して、本実施の形態の製造方法では、ドームカバー6の天頂部15に位置するゲート口16から樹脂を注入するので、注入した樹脂がキャビティ14内を円滑に流れ、ドームカバー6の天頂部15で成形不良が発生することがない。このようにドームカバー6の天頂部15に位置するゲート口16から樹脂を注入すると、ドームカバー6の天頂部15にゲート痕25が残るが、本実施の形態の製造方法では、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施すことにより、ゲート痕25を目立たなくすることができる。したがって、本実施の形態のドームカバー6の製造方法は、図8に示すような天頂部15の薄いドームカバー6の製造に最適である。
【0038】
以上のようにして製造したドームカバー6について、光学的な性能の評価を行った。ドームカバー6の光学的な性能の評価について、図9および図10を用いて説明する。
【0039】
まず、図9に示すように、監視カメラ4のレンズ5を水平方向に向けてTELE端(レンズ5の最大望遠焦点距離)で撮影したカメラ画像の画質の評価を行った。ここでは、比較例として、従来のドームカバーを用いた。本実施の形態のドームカバー6は、ドームカバー6の天頂部15に位置するゲート16から樹脂を注入して射出成形したものである。それに対して、比較例のドームカバーは、ドームカバーのフランジ部に対応する位置、すなわちキャビティの側方のゲート口から樹脂を注入して射出成形したものである。
【0040】
その結果、比較例のドームカバー(従来のドームカバー)では、レンズ5を水平方向に向けてカメラ画像を撮影したときに、フランジ部にゲート口や出口部分がある方向にレンズ5を向けると、ドーム部を通して撮影した文字がボケて読めなくなり、画質の低下が認められた。それに対し、本実施の形態のドームカバー6では、いずれの水平方向にレンズ5を向けたときであっても、撮影した文字が読める程度までボケが抑えられており、画質の向上が認められた。これは、本実施の形態のドームカバー6では、キャビティ14の中心部(ドームカバー6の天頂部15に対応する部分)から注入された樹脂が、キャビティ14の円周部へ向けて一様に流れて、キャビティ14内における樹脂の圧力や温度のむらが抑えられ、製造したドームカバー6の成形むらが抑えられた効果によるものと考えられる。
【0041】
つぎに、図10に示すように、監視カメラ4のレンズ5を真下方向(ドームカバー6の天頂方向)に向けたWIDE端(レンズ5の最大広角焦点距離)におけるカメラ画像で、ゲート痕25が目立つか否かの評価を行った。ここでは、比較例として、本実施の形態と同じくドームカバー6の天頂部15に位置するゲート16から樹脂を注入したが、後加工を施していないドームカバーを用いた。
【0042】
その結果、比較例のドームカバー(後加工なしのドームカバー)では、ドームカバー6の天頂部15のゲート痕25の部分が不透明になり、ゲート痕25の向こう側を見通すことができなかった。それに対し、本実施の形態のドームカバー6では、ドームカバー6の天頂部15のゲート痕25が目立たなくなり、ゲート痕25の向こう側を見通すことができた。この結果から、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施すことにより、ゲート痕25を小さく目立たなくすることができるという効果が確認された。
【0043】
このような発明の実施の形態のドームカバー6の製造方法によれば、ドームカバー6の天頂部15に対応する位置に設けたゲート口16からキャビティ14に溶融した樹脂を注入することにより、製造したドームカバー6に部分的な成形むらが生じるのを抑えることができる。
【0044】
すなわち、本実施の形態では、キャビティ14の中心部(ドームカバー6の天頂部15に対応する部分)から注入された樹脂は、キャビティ14の円周部へ向けて一様に流れる。すなわち、点対称形状のキャビティ14の中心点から注入された樹脂は、点対称形状のキャビティ14の各部分へ向けて等方的に(点対称的に)流れる。したがって、キャビティ14内における樹脂の圧力や温度にむらが生じるのを抑え、製造したドームカバー6に成形むらが生じるのを抑えることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、ドームカバー6の天頂部15に鏡面加工された後加工手段の当接面の形状が転写することにより、ドームカバー6の天頂部15に後加工を施すことができる。例えば、ドームカバー6の天頂部15にゲート口16の痕跡(ゲート痕25)が残っている場合であっても、転写による後加工によってゲート痕25を容易に目立たなくすることができる。例えば、ドームカバー6の天頂部15のゲート痕25を手磨きによる後加工で目立たなくする場合に比べて、転写による後加工は、後加工の工程を機械で自動化することができ、ドームカバー6の生産性が高い。
【0046】
また、本実施の形態では、超音波振動している間だけ、ドームカバー6の天頂部15表面の樹脂が溶融する。したがって、樹脂を加熱溶融した場合に比べて、難しい温度管理を行う必要がなく、樹脂の溶融の度合いを容易にコントロールすることができる。また、超音波での振動が停止すると、ドームカバー6の天頂部15の樹脂は硬化する。したがって、樹脂を硬化させるのに必要な時間が短くて済み、後加工に要する時間を短縮することができる。例えば、超音波振動で樹脂を溶融させた場合には、樹脂の溶融・硬化に要する時間は0.1秒程度である。したがって、後加工に要する時間を大幅に短縮することができ、ドームカバー6の量産性が高く、ドームカバー6のコストダウンを図ることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、ドームカバー6の天頂部15における接線方向に沿って、後加工手段の当接面を振動させる。これにより、超音波振動する当接面とドームカバー6の天頂部15との間で生じる摩擦によって、ドームカバー6の天頂部15の樹脂を容易に溶融させることができる。この場合、当接面の振動向がドームカバー6の天頂部15における接線方向であるので、ドームカバー6の天頂部15の法線方向に沿って振動させた場合に比べて、超音波による振動エネルギーが効率よく摩擦エネルギーに変換される。
【0048】
また、本実施の形態では、樹脂を注入した後、ドームカバー6の天頂部15に位置するゲート口16がゲートピン部材18で塞がれ、上型内周面19とピン先端面20とで連続面が形成されるので、ドームカバー6の天頂部15のゲート痕25を小さくすることができる。ゲートピン部材18でゲート口16を塞がなかった場合には、ゲート口16の内部に残った樹脂によって、ドームカバー6の天頂部15に円柱状の大きなゲート痕25が形成されてしまう。それに対して、本実施の形態では、ドームカバー6の天頂部15のゲート痕25は、ゲート口16とゲートピン部材18との間の円形状のパーティングラインのみの小さなゲート痕25となる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0050】
例えば、以上の説明では、後加工手段として超音波ウェルダー装置21を用い、ホーン部材22を超音波振動させて、ドームカバー6の天頂部15の樹脂を溶融した例について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ドームカバー6の天頂部15の樹脂を加熱して溶融させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかるドームカバーの製造方法は、製造したドームカバーに部分的な成形むらが生じるのを抑えることができるという効果を有し、ドーム型の監視カメラ等に用いられるドームカバーを製造する方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態におけるドームカバーの射出成形用の金型(ゲートピン部材を引き抜いた状態)の断面図
【図2】本発明の実施の形態におけるドームカバーの射出成形用の金型(ゲートピン部材を差し込んだ状態)の断面図
【図3】本発明の実施の形態において製造されたドームカバーの断面図
【図4】本発明の実施の形態において製造されたドームカバーの斜視図
【図5】本発明の実施の形態におけるドーム型カメラの正面図
【図6】本発明の実施の形態におけるドームカバーの後加工の様子を示す側面図
【図7】本発明の実施の形態におけるドームカバーの後加工の様子を示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態のドームカバーの変形例の説明図
【図9】本発明の実施の形態におけるドーム型カメラの撮影状態(水平方向のTELE端での撮影状態)を説明するための側面図
【図10】本発明の実施の形態におけるドーム型カメラの撮影状態(真下方向のWIDE端での撮影状態)を説明するための側面図
【符号の説明】
【0053】
1 ドーム型カメラ
6 ドームカバー
11 射出成形用の金型
12 上型(第1金型)
13 下型(第2金型)
14 キャビティ
15 天頂部
16 ゲート口
18 ゲートピン部材
19 上型内周面(第1金型の内周面)
20 ピン先端面(ゲートピン部材の先端面)
21 超音波ウェルダー装置(後加工手段)
22 ホーン部材
23 先端凸部
24 ホーン部材の先端凸部の下面(当接面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用の第1金型と第2金型との間に、ドームカバーの形状のキャビティを形成し、
前記第1金型のドームカバーの天頂部に対応する位置に、溶融した樹脂を注入するゲート口を設け、
前記ゲート口から前記キャビティに溶融した樹脂を注入し、ドームカバーを射出成形によって製造することを特徴とするドームカバーの製造方法。
【請求項2】
鏡面加工された当接面を有する後加工手段を用い、射出成形によって製造した前記ドームカバーの天頂部に前記当接面を押し当てて、
前記ドームカバーの天頂部の樹脂を溶融し、
前記後加工手段の当接面の鏡面形状を前記ドームカバーの天頂部に転写することを特徴とする請求項1に記載のドームカバーの製造方法。
【請求項3】
前記後加工手段の当接面を超音波振動させることによって、前記ドームカバーの天頂部の樹脂を溶融することを特徴とする請求項2に記載のドームカバーの製造方法。
【請求項4】
前記ドームカバーの天頂部における接線方向に沿って、前記後加工手段の当接面を振動させることを特徴とする請求項3に記載のドームカバーの製造方法。
【請求項5】
前記ゲート口には、抜き差し自在に挿入されるゲートピン部材が備えられ、
前記樹脂を注入するときには、前記ゲートピン部材を引き抜き位置まで引き抜いて、前記ゲート口を開口し、
前記樹脂を注入した後には、前記ゲートピン部材を差し込み位置まで差し込んで、前記ゲート口を前記ゲートピン部材によって塞ぐとともに、前記ゲート口周囲の前記第1金型の内面と前記ゲートピン部材の先端面とによって連続面を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のドームカバーの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のドームカバーの製造方法を用いて製造したことを特徴とするドームカバー。
【請求項7】
請求項6に記載のドームカバーと、前記ドームカバーの内側に設けられたカメラとを備えたことを特徴とするドーム型カメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−160734(P2007−160734A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360508(P2005−360508)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】