説明

ナトリウム/モリブデン複合金属粉末、その製造物、および光電池の製造方法

本発明の一態様に従った複合金属粉末の製造方法は、以下を含むことができる:モリブデン金属粉末の供給物を提供し;ナトリウム化合物の供給物を提供し;該モリブデン金属粉末と該ナトリウム化合物を液体と組み合わせてスラリーを形成し;該スラリーを高温ガス流中に供給し;そして、複合金属粉末を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にモリブデンを含有する材料およびコーティング、より具体的には、光電池の製造に用いるのに適したモリブデンコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンコーティングは当分野で周知であり、多様な用途にさまざまなプロセスにより施用することができる。モリブデンコーティングの用途の一つは、光電池の製造においてである。より具体的には、高効率の多結晶質薄フィルム光電池の1つのタイプは、CuInGaSe2を含む吸収体層を包含する。通例、そのような光電池は、吸収体層を構成する元素にちなんで “CIGS”光電池とよばれる。一般的構造において、CuInGaSe2吸収体層は、モリブデンフィルムが上部に付着しているソーダ石灰ガラス基材上に形成または“成長”している。興味深いことに、ソーダ石灰ガラス基材からモリブデンフィルムを通って拡散する少量のナトリウムは、電池の効率を向上させる働きをすることが発見されている。例えば、K.Ramanathan et al.,Photovolt.Res.Appl.11(2003),225;John H.Scofield et al.,Proc.of the 24th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,IEEE,New York,1995,164−167参照。そのような効率向上はCIGS電池がソーダ石灰ガラス基材上に付着している構造では自動的に実現するが、他のタイプの基材を用いると、効率向上の実現は大幅に難しくなることが判明している。
【0003】
例えば、電池をより軽くすることができ、そして、さまざまな形状に容易に合わせることができるように、軟質基材上でCIGS電池を形成することにかなりの関心が持たれている。そのような電池は作成されており、用いられているが、関連する軟質材料はナトリウムを含有していない。したがって、そのような基材上に製造されるCIGS電池の性能は、ナトリウムを含むモリブデン層をドープすることにより改善することができる。例えば、Jae Ho Yun et al.,Thin Solid Films,515,2007,5876−5879参照。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K.Ramanathan et al.,Photovolt.Res.Appl.11(2003),225
【非特許文献2】John H.Scofield et al.,Proc.of the 24th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,IEEE,New York,1995,164−167
【非特許文献3】Jae Ho Yun et al.,Thin Solid Films,515,2007,5876−5879
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様に従った複合金属粉末の製造方法は、以下を含むことができる:モリブデン金属粉末の供給物を提供し;ナトリウム化合物の供給物を提供し;該モリブデン金属粉末と該ナトリウム化合物を液体と組み合わせてスラリーを形成し;該スラリーを高温ガス流中に供給し;そして、複合金属粉末を回収する。このプロセスに従って製造される複合金属粉末も開示する。
【0006】
複合金属粉末を製造するための他の態様は、以下を含むことができる:モリブデン金属粉末の供給物を提供し;モリブデン酸ナトリウム粉末の供給物を提供し;該モリブデン金属粉末と該モリブデン酸ナトリウム粉末を水と組み合わせてスラリーを形成し;該スラリーを高温ガス流中に供給し;そして、複合金属粉末を回収する。このプロセスに従って製造される複合金属粉末も開示する。
【0007】
金属物品の製造方法であって、以下を含む方法も開示する:複合金属粉末の供給物を、モリブデン金属粉末の供給物を提供し;ナトリウム化合物の供給物を提供し;該モリブデン金属粉末と該ナトリウム化合物を液体と組み合わせてスラリーを形成し;該スラリーを高温ガス流中に供給し;複合金属粉末を回収する;ことにより製造し;そして、該複合金属粉末を圧密化して金属物品を形成し、ここにおいて、該金属物品はナトリウム/モリブデン金属マトリックスを含む。この方法に従って製造される金属物品も開示する。
【0008】
本明細書中に提供する教示に従った光電池の製造方法は、以下を含むことができる:基材を提供し;該基材上にナトリウム/モリブデン金属層を付着させ;該ナトリウム/モリブデン金属層上に吸収体層を付着させ;そして、該吸収体層上に接合パートナー層を付着させる。
【0009】
ナトリウム/モリブデンフィルムを基材上に付着させるための方法は、以下を含むことができる:モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;そして、該複合金属粉末を基材上に溶射により付着させる。フィルムを基材上に付着させるための他の方法は、ナトリウム/モリブデン金属マトリックスを含むターゲットをスパッタすることを含むことができ、該ターゲットからスパッタされた材料がナトリウム/モリブデンフィルムを形成する。基材をコーティングするための他の方法は、以下を含むことができる:モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;そして、複合された金属粉末を蒸発させてナトリウム/モリブデンフィルムを形成する。基材のコーティング法は、以下を含むことができる:モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;複合金属粉末の供給物をビヒクルと混合し、複合金属粉末とビヒクルの混合物を印刷により基材上に付着させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の製造に用いることができる基本的プロセス段階の一態様の略図である。
【図2】図2は、複合金属粉末混合物の処理方法を示すプロセスフローチャートである。
【図3】図3は、ナトリウム/モリブデン金属層を有する光電池の正面における拡大横断面図である。
【図4】図4は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末混合物の走査型電子顕微鏡像である。
【図5a】図5aはエネルギー分散型X線分光法によりもたらされるスペクトル図表であり、図4の像におけるナトリウムの分散を示している。
【図5b】図5bはエネルギー分散型X線分光法によりもたらされるスペクトル図表であり、図4の像におけるモリブデンの分散を示している。
【図6】図6は、パルス燃焼噴霧乾燥装置の一態様の略図である。
【図7】図7は、本明細書中に提供する教示に従って製造された代表的複合金属粉末の篩い分け画分の分布を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の例示的および今のところ好ましい態様を添付図面に示す。
ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を製造するためのプロセスまたは方法10を図1に例示し簡単に説明する。これは、モリブデン金属粉末14の供給物およびナトリウム化合物16、例えばモリブデン酸ナトリウム(NaMoO)粉末などの供給物を含むことができる。モリブデン金属粉末14およびモリブデン酸ナトリウム粉末16を水などの液体18と組み合わせて、スラリー20を形成する。その後、スラリー20を例えばパルス燃焼噴霧乾燥機22により噴霧乾燥して、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を製造することができる。
【0012】
ここで主に図2を参照すると、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、その回収したままの形または“未処理”の形で、さまざまなプロセスおよび用途のための供給原料24として用いることができる。これらのプロセスおよび用途の多くは本明細書中に記載されており、その他のものは、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者には明らかになるであろう。あるいは、“未処理”の複合金属粉末12を、例えば焼結26によるか、分級28によるか、またはそれらの組合わせによりさらに処理してから、供給原料24として用いてもよい。ナトリウム/モリブデン複合金属粉末供給原料24(例えば、“未処理”の形または処理した形のいずれかにある)を溶射付着プロセス30に用いると、図3でよくわかるように、ナトリウム/モリブデンフィルム32を基材34上に付着させることができる。そのようなナトリウム/モリブデンフィルム32は、多様な用途に有利に用いることができる。例えば、そして以下にさらに詳細に記載するように、該ナトリウム/モリブデンフィルム32は、光電池36の一部を構成することができ、光電池36の効率を向上させるために用いることができる。他の付着プロセスでは、複合金属粉末12を印刷プロセス38における供給原料24として用いることもでき、該印刷プロセスも、基材34上にナトリウム/モリブデンフィルムまたはコーティング32’を形成するのに用いることができる。
【0013】
さらに他の態様では、同様に“未処理”の形または処理した形のいずれかにある複合金属粉末供給原料24を段階40で圧密化して、スパッタターゲット44のような金属製造物42を製造することができる。金属製造物42は、圧密化40から直接“そのままで”用いることができる。あるいは、圧密化した製造物を、例えば焼結46によりさらに処理してもよく、その場合、金属製造物42は焼結金属製造物を含むことになる。金属製造物42がスパッタターゲット44(すなわち、焼結形または非焼結形のいずれかにある)を含む場合、スパッタターゲット44をスパッタ付着装置(図示していない)に用いて、ナトリウム/モリブデンフィルム32’’を基材34上に付着させることができる。図3参照。
【0014】
ここで主に図4、5aおよび5bを参照すると、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、それ自体がより小さな粒子の凝集体である複数の概して球状をしている粒子を含む。したがって、複合金属粉末12は、本明細書において選択的に、“BB’s”で形成された“サッカーボール”と特徴付けることができる。さらに、そして図5aおよび5bにより証明されるように、ナトリウムはモリブデン内に高度で分散している。すなわち、本発明のナトリウム/モリブデン複合粉末は、ナトリウム金属粉末とモリブデン金属粉末の単なる組合わせではなく、むしろ、一緒に溶融または凝集しているナトリウムおよびモリブデンのサブ粒子の実質的に均質な分散物または複合混合物を含む。ナトリウム/モリブデン金属粉末複合体は高い密度も有し、好ましい流れ特性を持つ。本明細書でさらに詳細に記載するように、本明細書中に提供する教示に従って製造される代表的ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、約2g/cc〜約3g/ccの範囲のScott密度を有することができる。本明細書中に示し記載するさまざまな実施例の組成物に関するHall流動性は、約35s/50g未満から、30s/50g程度の低さに及ぶ。
【0015】
本発明の重要な利点は、通常なら従来法により実現することが難しいか不可能であるモリブデンとナトリウムの金属の組合わせがもたらされる点である。さらに、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末は粉末状材料を含むが、それはナトリウムおよびモリブデン粒子の単なる混合物ではない。むしろ、ナトリウムおよびモリブデンのサブ粒子が実際は一緒に溶融しており、その結果、粉末状金属製造物の個々の粒子はナトリウムとモリブデンの両方を含む。したがって、本発明に従ったナトリウム/モリブデン複合粉末を含む粉末状供給原料24は、ナトリウム粒子とモリブデン粒子に(例えば比重の差に起因して)分離しない。さらに、前記付着プロセスは、それぞれ異なる付着速度を有するモリブデンとナトリウムの別個の粒子の共付着(codeposition)に依存しないので、該ナトリウム/モリブデン複合金属粉末から製造されるコーティングまたはフィルムは、ナトリウム/モリブデン金属粉末の組成と同様の組成を有する。
【0016】
モリブデンの全体にわたりナトリウムが高度に均一に分散している複合金属粉末を得ることができるという利点に加えて、本明細書中に開示する複合金属粉末は高い密度および流動性によっても特徴付けられ、これにより、該複合金属粉末を、現在当業者に公知であるか将来開発されうる多様な粉末冶金プロセスに有利に用いることが可能になる。例えば、該ナトリウムモリブデン複合金属粉末を多様な溶射付着装置および関連するプロセスに容易に用いて、さまざまな基材上にナトリウム/モリブデンフィルムまたはコーティングを付着させることができる。該粉末は、多様な圧密化プロセス、例えば、冷間および熱間等方圧プレスプロセスならびにプレス焼結プロセスにも容易に用いることができる。本明細書中に開示する粉末は、高い流動性により金型キャビティをすぐに満たすことが可能であり、一方、その後の焼結中に起こりうる収縮は、高い密度により最小限に抑えられる。焼結は、不活性雰囲気または水素中で加熱して圧縮物の酸素含量をさらに低下させることにより、達成することができる。
【0017】
他の態様では、該ナトリウム/モリブデン複合金属粉末を用いてスパッタターゲットを形成することができ、その後、該ターゲットを続くスパッタ付着プロセスに用いて、ナトリウム/モリブデンフィルムおよびコーティングを形成することができる。一態様において、そのようなナトリウム/モリブデンフィルムを用いて、光電池のエネルギー変換効率を向上させることができる。
【0018】
本発明のナトリウム/モリブデン複合金属粉末12、それらの製造方法、および基材上にナトリウム/モリブデンコーティングを製造するためにそれらをどのように用いることができるかを簡単に記載してきたが、該複合粉末のさまざまな態様ならびに該複合粉末の製造および使用方法をこれから詳細に記載する。
【0019】
ここで主に図1を振り返ってみると、ナトリウム/モリブデン複合粉末12の製造方法10は、モリブデン金属粉末14の供給物およびナトリウム化合物16の供給物を含むことができる。モリブデン金属粉末14は、約0.1μm〜約15μmの範囲の粒子サイズを有するモリブデン金属粉末を含むことができるが、他のサイズを有するモリブデン金属粉末14を用いることもできる。本発明での使用に適したモリブデン金属粉末は、Climax Molybdenum,a Freeport−McMoRan CompanyおよびClimax Molybdenum Company,a Freeport−McMoRan Company,Ft.Madison Operations,Ft.Madison,アイオワ州(米国)から市販されている。あるいは、他の供給源からのモリブデン金属粉末を用いることもできる。
【0020】
ナトリウム化合物16は、無水形(すなわちNaMoO)にあるか二水和物(すなわちNaMoO・2HO)としてかのいずれかのモリブデン酸ナトリウムを含むことができるが、他のナトリウム含有材料、例えば、限定されるものではないが、ナトリウム元素、NaO、およびNa(OH)を用いてもよい。モリブデン酸ナトリウムは通常粉末の形で入手可能であり、広範なサイズのいずれかを含むことができる。モリブデン酸ナトリウム粉末16の粒子サイズは、液体18として水を用いる態様ではとりわけ重要ではない。これは、モリブデン酸ナトリウムが水に溶解するためである。本発明での使用に適したモリブデン酸ナトリウム粉末は、アイオワ州(米国)、Ft.MadisonのClimax Molybdenum,a Freeport−McMoRan Company,Ft.Madison Operationsから市販されている。あるいは、他の供給源からモリブデン酸ナトリウムを得てもよい。
【0021】
モリブデン金属粉末14およびモリブデン酸ナトリウム16を液体18と混合して、スラリー20を形成することができる。一般的に言えば、液体18は脱イオン水を含むことができるが、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者には明らかになるように、他の液体、例えば、アルコール、揮発性液体、有機液体、およびそれらのさまざまな混合物を用いることもできる。したがって、本発明を、本明細書中に記載する特定の液体18に限定されるものと考えるべきではない。液体18に加えて、バインダー48も用いることができるが、バインダー48の添加は必須ではない。本発明での使用に適したバインダー48としては、限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)、Carbowax、およびそれらの混合物が挙げられる。バインダー48は、モリブデン金属粉末14およびモリブデン酸ナトリウム16を加える前に、液体18と混合することができる。あるいは、バインダー48は、スラリー20に、すなわち、モリブデン金属14とモリブデン酸ナトリウム16を液体18と組み合わせた後に、加えてもよい。
【0022】
スラリー20は、約15重量%〜約25重量%の液体(例えば、液体18単独か、バインダー48と組み合わせた液体18のいずれか)を含むことができ、残りは、モリブデン金属粉末14およびナトリウム化合物16を含む。ナトリウム化合物16(例えばモリブデン酸ナトリウム)は、望ましい量の“保持”ナトリウムを有する複合金属粉末12および/または最終製造物をもたらすのに適した量で加えることができる。保持ナトリウムの量は広範な要因に応じて変動するので、本発明は、任意の特定量のナトリウム化合物16の提供に限定されるものとして考えるべきではない。スラリー20にもたらされるナトリウム化合物16の量に影響を及ぼしうる要因としては、限定されるものではないが、製造される特定の製造物、ならびに、例えば、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12が焼結しているか否か、および望ましい分量の保持ナトリウムが粉末供給原料(例えば24)または付着しているフィルムもしくはコーティング(例えば32、32’、32’’)中に存在するか否かに応じて採用することができる、特定の“下流”プロセスが挙げられる。しかしながら、一例として、モリブデン金属14とモリブデン酸ナトリウム16の混合物は、約1重量%〜約15重量%のモリブデン酸ナトリウム18を含むことができる。したがって、全体として、スラリー20は約0重量%(すなわちバインダー無し)〜約2重量%のバインダー48を含むことができる。スラリー20の残りは、モリブデン金属粉末14(例えば、約58重量%〜約84重量%の範囲の量)およびモリブデン酸ナトリウム16(例えば、約1重量%〜約15重量%の範囲の量)を含むことができる。
【0023】
その後、スラリー22を、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者には明らかになるように、当分野で現在公知であるか将来開発されうる幅広いプロセスのいずれかにより噴霧乾燥して、複合金属粉末製造物12を製造することができる。したがって、本発明は、任意の特定の乾燥プロセスに限定されるものとして考えるべきではない。しかしながら、一例として、一態様では、スラリー20をパルス燃焼噴霧乾燥機22で噴霧乾燥する。より具体的には、パルス燃焼噴霧乾燥機22は、“Metal Powders and Methods for Producing the Same”という名称でLarink,Jr.への米国特許出願公開第2006/0219056号に示され記載されているタイプのものであることができ、該出願公開をそれが開示するすべてに関し本明細書中で具体的に参考として援用する。
【0024】
ここで図1および6を参照すると、スラリー20はパルス燃焼噴霧乾燥機22に供給することができ、そこでスラリー20は、音速またはその付近でパルス化されている高温ガス(1または複数)50の流れに衝突する。高温ガス50の音波パルスはスラリー20と接触し、実質的にすべての水を排除し、複合金属粉末製造物12を形成する。高温ガス50の脈動流の温度は約300℃〜約800℃の範囲、例えば約465℃〜約537℃、より好ましくは約500℃であることができる。一般的に言えば、高温ガス50の脈動流の温度はスラリー構成成分の融点未満であるが、ナトリウム元素の融点未満ではない。しかしながら、通常スラリー20は、スラリー20に大量の熱が移るのに十分な時間にわたり高温ガス50と接触しない。このことは、ナトリウム金属の融点が低いので重要である。例えば、典型的な態様において、スラリー20は、高温ガス50の脈動流との接触中に約93℃〜約121℃の範囲の温度に加熱されると推定される。
【0025】
上記のように、高温ガス50の脈動流は、当分野において周知であり商業的に容易に入手可能であるタイプのパルス燃焼システム22によりもたらすことができる。一例として、一態様において、パルス燃焼システム22は、米国特許出願公開第2006/0219056号に示され記載されているタイプのパルス燃焼システムを含むことができる。ここで図6を参照すると、燃焼用空気51を入口52に通してパルス燃焼システム22の外側シェル54に低圧で(例えばポンプで)供給することができ、そこでそれは一方向空気弁56を通って流れる。その後、空気は同調燃焼室(tuned combustion chamber)58に入り、ここで燃料が燃料弁または燃料口60を通して加えられる。その後、燃料−空気混合物を点火用補助バーナー(pilot)62により点火して高温燃焼ガス64の脈動流を作り出し、これを、さまざまな圧力、例えば、燃焼ファン圧力を約15000Pa(約2.2psi)〜約20000Pa(約3psi)上回る範囲に加圧することができる。高温燃焼ガス64の脈動流は噴霧器68に向かって排気管66を急降下する。噴霧器68の真上で急冷用空気70を入口72に通して供給することができ、これを高温燃焼ガス64とブレンドして、望ましい温度を有する高温ガス50の脈動流を実現することができる。スラリー20を噴霧器68により高温ガス50の脈動流中に導入する。その後、噴霧されたスラリーは円錐形出口74で分散した後、従来の丈が高い形の乾燥室(図示していない)に入る。さらに下流において、複合金属粉末製造物12を、標準的収集設備、例えばサイクロンおよび/またはバグハウス(baghouse)(同様に図示していない)を用いて回収することができる。
【0026】
パルス化した操作では、空気弁56の開閉を繰り返して、空気を燃焼室58に入れ、その燃焼のために閉めるということを交互に行う。そのような繰り返しでは、空気弁56を、先立つ燃焼エピソード(episode)の直後に次のパルスのために再開放することができる。その後、再開放により、次の空気挿入物(例えば燃焼用空気51)を入れることが可能になる。その後、燃料弁60から燃料が再び入り、上記のように混合物は燃焼室58で自己発火する。空気弁56の開閉と、室58における燃料のパルス化した様式での燃焼のこの繰り返しは、さまざまな周波数、例えば、他の周波数を用いることもできるが、約80Hz〜約110Hzで制御可能であることができる。
【0027】
本明細書中に記載するパルス燃焼噴霧乾燥プロセスにより製造された“未処理”のナトリウム/モリブデン複合金属粉末製造物12を、図4、5aおよび5bに例示する。これらは、それ自体がより小さな粒子の凝集体である複数の概して球状をしている粒子を含む。すでに記載したように、ナトリウムはモリブデン内に高度に分散しており、一緒に溶融しているナトリウムとモリブデンのサブ粒子の実質的に均質な分散物または複合混合物を構成している。より具体的には、図5aは、エネルギー分散型X線分光法(“EDS”)によりもたらされるスペクトル図表であり、図4に示す複合金属材料12の試料内にナトリウムが存在していることを示している。図5bは、エネルギー分散型X線分光法によりもたらされるスペクトル図表であり、上記試料内にモリブデンが存在していることを示している。図4ならびに5aおよび5bを比較するとわかるように、ナトリウムは、複合金属粉末製造物12の全体にわたり概して均一に幅広く分散している。
【0028】
一般的に言えば、本明細書中に提供する教示に従って製造される複合金属粉末製造物12は広範なサイズを含み、約1μm〜約100μmの範囲のサイズ、例えば、約5μm〜約45μmおよび約45μm〜約90μmの範囲のサイズなどを有する粒子を、本明細書中に提供する教示に従うことにより容易に製造することができる。所望の場合、複合金属粉末製造物12を例えば段階28(図2)で分級すると、より狭いサイズ範囲を有する製造物12をもたらすことができる。さまざまな代表的複合金属粉末製造物12の篩い分け試験を図7に提供する。図7は、3、7、9および15重量%のモリブデン酸ナトリウム18を含むスラリー組成物により製造された“未処理”の複合金属粉末製造物12の粒度分布(U.S.Tylerメッシュによる)のプロットである。
【0029】
上記のように、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は高密度のものでもあり、概して非常に流動性が高い。代表的な複合金属粉末製造物12は、本明細書中に示すさまざまな実施例で確認されるように、約2g/cc〜約3g/ccの範囲のScott密度(すなわち嵩密度)を有する。Hall流動性は、同様に本明細書中に示すさまざまな実施例で確認されるように、約35s/50gから、30s/50g程度の低さに及ぶ。しかしながら、組成物の一例(すなわち実施例12)は流れを示さなかった。
【0030】
すでに記載したように、パルス燃焼システム22は、スラリー20が供給される高温ガス50の脈動流をもたらす。接触域および接触時間は非常に短く、接触時間はほんの1マイクロ秒程度であることが多い。したがって、高温ガス50、音波、およびスラリー20の物理的相互作用により複合金属粉末製造物12が生じる。より具体的には、スラリー20の液体成分18は、高温ガス50の音波(または音波付近の)パルス波により実質的に除去または排除される。また、短い接触時間により、スラリー成分が最小限に、例えば、接触時間の最後で約93℃〜約121℃程度のレベルに加熱されることが確実になる。これは、液体成分18を蒸発させるのに十分な温度である。
【0031】
場合によっては、残留量の液体(例えば、液体18および/または用いる場合はバインダー48)が、得られる“未処理の”複合金属粉末製造物12中に残存していてもよい。任意の残存液体18は、続く焼結または加熱段階26により排除する(例えば、部分的または完全に)ことができる。図2参照。一般的に言えば、加熱または焼結プロセス26は、液体成分および酸素は排除されるが、実質的分量のナトリウムは排除されないように、中温で実施する。多少のナトリウムが加熱26中に失われる可能性があり、これにより、焼結製造物または供給原料製造物24中の保持ナトリウムの量は減少するであろう。また、必須ではないが、複合金属粉末12の酸化を最小限に抑えるために、加熱26を水素雰囲気中で実施することが一般に好ましい。以下に提供する実施例に示すように、保持酸素は少なく、約6%未満、一般に約2%未満である。加熱26は、約500℃〜約825℃の範囲内の温度で実施することができる。あるいは、1050℃と同程度の高温を短時間用いてもよい。しかしながら、通常、そのようなより高い温度は、最終製造物中の保持ナトリウムの量を低下させる。
【0032】
金属粉末製造物の凝集体は、加熱段階26の後であっても、それらの形状(多くの場合、必ずしもそうではないが、実質的に球状)を保持していることが好ましいことにも、言及することができる。加熱した形および/または未処理の形における流動性データ(Hallデータ)も、本明細書中に提供する実施例に関連して記載するように、概して非常に良好(例えば約30〜35s/50gの範囲)である。
【0033】
上記したように、場合によってはさまざまなサイズの凝集した製造物が乾燥プロセス中に生じる可能性があり、複合金属粉末製造物12を、望ましい製造物サイズ範囲内のサイズ範囲を有する金属粉末製造物に、さらに分離または分級することが望ましい可能性がある。例えば、生じる複合金属粉末材料のほとんどは広範な粒子サイズ(例えば約1μm〜約150μm)を含み、実質的量の製造物は約5μm〜約45μmの範囲(すなわち、−325 U.S.Tylerメッシュ)および同様に約45μm〜約90μmの範囲(すなわち、−170+325 U.S.Tylerメッシュ)にある。図7参照。本プロセスは、製造物の実質的割合がこの製造物サイズ範囲にあるものをもたらすことができる;しかしながら、残りの製造物、とりわけ、望ましい製造物サイズ範囲外のより小さな製造物が存在する可能性があり、これらは、適切なスラリー組成物を作り出すために液体(例えば水)を再び加えなければならないが、システムに通して再循環させることができる。そのような再循環は、所望による代替の(または追加的)段階(1または複数)である。
【0034】
複合金属粉末12は、その回収したままの形または“未処理”の形で、さまざまなプロセスおよび用途のための供給原料24として用いることができる。これらのプロセスおよび用途のいくつかは本明細書中に示され記載されており、その他のものは、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者には明らかになるであろう。あるいは、“未処理”の複合金属粉末製造物12を、例えば、加熱もしくは焼結26により、分級28により、および/またはそれらの組合わせによりさらに処理してから、供給原料24として用いてもよい。
【0035】
上記のように、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12をさまざまな装置およびプロセスで用いて、基材上にナトリウム/モリブデンフィルムを付着させることができる。一用途において、そのようなナトリウム/モリブデンフィルムは、光電池の製作に有利に用いることができる。例えば、CIGS光電池のエネルギー変換効率は、光電池の抵抗接点を形成するのに典型的に用いられるモリブデン層中にナトリウムを拡散させることが可能であれば、向上させることができることが知られている。そのような効率向上は、モリブデン抵抗接点がソーダガラス基材上に付着しているCIGS構造では自動的に実現する。しかしながら、基材としてソーダガラスを用いていない構造では実現されない。
【0036】
ここで図3を参照すると、光電池36は、ナトリウム/モリブデンフィルム32、32’、32’’が上部に付着していることができる基材34を含むことができる。基材34は、広範な基材のいずれか、例えば、ステンレス鋼、軟質ポリフィルム、または、当分野で現在公知であるか将来開発されうる他の基材材料であって、前記デバイスに適しているか適するであろう材料などを含むことができる。つぎに、ナトリウム/モリブデンフィルム32、32’、32’’を、基材34上に、当分野で現在公知であるか将来開発されうるが、何らかの形でナトリウム/モリブデン複合金属粉末材料12を利用する広範なプロセスのいずれかにより付着させることができる。例えば、そして以下でさらに詳細に記載するように、ナトリウム/モリブデンフィルムは、溶射付着によるか、印刷によるか、蒸発によるか、またはスパッタリングにより、付着させることができる。
【0037】
ナトリウム/モリブデンフィルム(例えば32、32’、32’’)を基材34上に付着させたら、吸収体層76を該ナトリウム/モリブデンフィルム上に付着させることができる。一例として、吸収体層76は、銅、インジウムおよびセレンからなる群より選択される1以上を含むことができる。吸収体層76は、当分野で公知であるか将来開発されうる広範な方法であって、意図する用途に適しているか適するであろう方法のいずれかにより、付着させることができる。したがって、本発明は、任意の特定の付着プロセスに限定されるものと考えるべきではない。
【0038】
つぎに、接合パートナー層78を吸収体層76上に付着させることができる。接合パートナー層78は、硫化カドミウムおよび硫化亜鉛からなる群より選択される1以上を含むことができる。最終的に、透明伝導性酸化物層80を接合パートナー層78上に付着させて、光電池36を形成することができる。接合パートナー層78および透明伝導性酸化物層80は、当分野で現在公知であるか将来開発されうる広範なプロセスおよび方法であって、これらの材料の付着に適しているか適するであろうプロセスおよび方法のいずれかにより、付着させることができる。したがって、本発明は、任意の特定の付着プロセスに限定されるものと考えるべきではない。これに加えて、CIGS光電池の製作プロセスは当分野で公知であり(ナトリウム/モリブデンフィルムを基材上に提供する点を除く)、本発明の教示をよく理解した後当業者なら容易に実行することができるため、CIGS光電池を構築するのに用いることができる特定の製作技術について本明細書ではさらに詳細に記載しない。
【0039】
上記のように、ナトリウム/モリブデン層またはフィルム32、32’、32’’は、広範なプロセスのいずれかにより付着させることができる。一般的に言えば、約1重量%のナトリウム濃度は、望ましい効率向上をもたらすのに十分であると考えられる。したがって、供給原料材料24中に存在する保持ナトリウムを必要に応じて調整または変動させると、得られるナトリウム/モリブデンフィルム32に所望レベルのナトリウムをもたらすことができる。一般的に言えば、供給原料材料24中の約0.2重量%〜約3.5重量%の範囲の保持ナトリウムレベルは、ナトリウム/モリブデンフィルム32に所望の程度のナトリウム濃縮をもたらすのに十分である。実施例に示すように、そのような保持ナトリウムレベル(例えば約0.2重量%〜約3.5重量%)は、約3重量%〜約15重量%のモリブデン酸ナトリウムを含有するスラリー20により製造される“未処理”および焼結した(すなわち加熱された)供給原料材料24で達成することができる。
【0040】
一態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32を、供給原料材料24を用いて溶射プロセス30により付着させることができる。溶射プロセス30は、広範な溶射ガンのいずれかを用いて達成することができ、広範なパラメーターのいずれかに従って操作して、望ましい厚さおよび性質を有するナトリウム/モリブデンフィルム32を基材34上に付着させることができる。しかしながら、溶射プロセスは当分野で周知であるため、そして、当業者なら、本明細書中に提供する教示をよく理解した後、そのようなプロセスを利用することができるため、用いることができる特定の溶射プロセス30について本明細書ではさらに詳細に記載しない。
【0041】
他の態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32’を、供給原料材料24を用いて印刷プロセス38により基材34上に付着させることができる。供給原料材料24を適したビヒクル(図示していない)と混合して“インク”または“ペイント”を形成することができ、その後これを広範な印刷プロセスのいずれかにより基材34上に付着させることができる。ここでも同様に、そのような印刷プロセスは当分野で周知であり、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者なら容易に実行することができるため、用いることができる特定の印刷プロセス38について本明細書ではさらに詳細に記載しない。
【0042】
さらに他の態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32’’を、供給原料材料24を用いて蒸発プロセス39により基材34上に付着させることができる。一例として、一態様において、蒸発プロセス39は、適した蒸発装置(図示していない)のるつぼ(図示していない)中に供給原料材料24を入れることを包含する。供給原料材料24は、ゆるい粉末、プレスしたペレット、または他の圧密化形、またはそれらの任意の組合わせのいずれかの形で、るつぼに入れることができる。供給原料材料24を蒸発するまでるつぼ中で加熱すると、蒸発した材料が基材34上に付着して、ナトリウム/モリブデンフィルム32’’を形成する。蒸発プロセス39は、当分野で現在公知であるか将来開発されうる広範な蒸発装置であって、供給原料材料24を蒸発させフィルム32’’を基材34上に付着させるために用いることができる装置のいずれかを用いることができる。したがって、本発明は、任意の特定のパラメーターに従って操作される任意の特定の蒸発装置での使用に限定されるものと考えるべきではない。さらに、そのような蒸発装置は当分野で周知であり、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者なら容易に実行することができるため、用いることができる特定の蒸発装置について本明細書ではさらに詳細に記載しない。
【0043】
さらに他の態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32’’’をスパッタ付着プロセスにより基材34上に付着させることができる。供給原料材料24をスパッタターゲット44に加工または成形した後、これをスパッタしてフィルム32’’’を形成する。当分野で今のところ公知であるか将来開発されうる広範なスパッタ付着装置のいずれかを用いて、基材34上にフィルム32’’’をスパッタ付着させることができる。したがって、本発明は、任意の特定のパラメーターに従って操作される任意の特定のスパッタ付着装置での使用に限定されるものと考えるべきではない。さらに、そのようなスパッタ付着装置は当分野で周知であり、本明細書中に提供する教示をよく理解した後当業者なら容易に実行することができるため、用いることができる特定のスパッタ付着装置について本明細書ではさらに詳細に記載しない。
【0044】
上記のように、スパッタターゲット44は、段階40でナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を圧密化または成形することにより製作することができる複合金属製造物42を含むことができる。あるいは、スパッタターゲット44は、溶射30により形成することができる。スパッタターゲット44を圧密化40により製作する場合、“未処理”の形または処理した形のいずれかにある供給原料材料24を、段階40で圧密化または成形して金属製造物(例えばスパッタターゲット44)を製造することができる。圧密化プロセス40は、特定の用途に適している当分野で現在公知であるか将来開発されうる広範な圧縮、プレスおよび成形プロセスのいずれかを含むことができる。したがって、本発明は、任意の特定の圧密化プロセスに限定されるものと考えるべきではない。
【0045】
一例として、圧密化プロセス40は、当分野で周知の広範な冷間等方圧プレスプロセスのいずれかまたは広範な熱間等方圧プレスプロセスのいずれかを含むことができる。公知のように、冷間および熱間等方圧プレスプロセスはともに、複合金属粉末供給原料材料24を所望の形状に圧密化または成形するために、かなりの圧力および熱(熱間等方圧プレスの場合)の施用を一般に包含する。熱間等方圧プレスプロセスは、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末圧縮物の未処理密度と、最終製造物において容認されうる保持ナトリウム損失に応じて、900℃以上の温度で実施することができる。
【0046】
圧密化40の後、得られた金属製造物42(例えばスパッタターゲット44)は、“そのまま”用いることができ、またはさらに処理することができる。例えば、金属製造物42を段階46で加熱または焼結させて、金属製造物42の密度をさらに高めることができる。金属製造物42が酸化される可能性を最小限に抑えるために、そのような加熱プロセス46は水素雰囲気中で実施することが望ましい可能性がある。一般的に言えば、より高い温度は保持ナトリウムの量の実質的減少をもたらしうるので、そのような加熱は約825℃未満の温度で実施することが好ましいが、より高い温度(例えば1050℃以上の温度)を用いてもよい。得られる金属製造物42は、必要または望ましい場合、使用する前に機械加工することもできる。そのような機械加工は、最終製造物42を焼結させたか否かにかかわらず行うことができる。
【実施例】
【0047】
本明細書中に明記しClimax Molybdenumおよび/またはClimax Molybdenum,Ft.Madison Operationsから入手可能なモリブデン金属およびモリブデン酸ナトリウム粉末14、16を用いて、いくつかの実施例を行った。さまざまな比率の粉末14および16を脱イオン水と組み合わせて、スラリー20を形成した。より具体的には、さまざまな実施例に用いたスラリー20は、約20重量%の水(すなわち液体18)を含み、残りはモリブデン金属およびモリブデン酸ナトリウム粉末であった。モリブデン金属粉末とモリブデン酸ナトリウムの比率はさまざまな実施例で異なり、モリブデン酸ナトリウムは約3重量%〜約15重量%に及んでいた。より具体的には、実施例は3、7、9および15重量パーセントの量のモリブデン酸ナトリウムを包含していた。
【0048】
その後、スラリー20を、本明細書に記載したようにパルス燃焼噴霧乾燥システム22に供給した。高温ガス50の脈動流の温度は、約465℃〜約537℃の範囲内になるように制御した。パルス燃焼システム22によりもたらされた高温ガス50の脈動流により、実質的にスラリー20から水が排除されて、複合金属粉末製造物12が形成した。接触域および接触時間は非常に短く、接触域は約5.1cm程度、接触時間は0.2マイクロ秒程度であった。
【0049】
得られた金属粉末製造物12は、実質的に中実で(すなわち、中空でない)概して球状を有するより小さな粒子の凝集体を含んでいた。9重量%のモリブデン酸ナトリウムを含むスラリー20により製造された“未処理”のナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のSEM写真を図4に示す。表IおよびIIのデータは、 “未処理”の形と、明記した温度および時間で水素雰囲気において焼結または加熱した後の両方でのさまざまな実施例について示している。データは、同様に表IおよびIIに示しているように、篩い分けを行った未処理材料(+325メッシュのモリブデン)についても示している。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
本発明の好ましい態様を本明細書中に記載してきたが、適した修正をこれに加えることができると予想され、これらはなお本発明の範囲内にあり続ける。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲に従ってのみ解釈されるものとする。
【符号の説明】
【0053】
10 ナトリウム/モリブデン複合金属粉末を製造するためのプロセスまたは方法
12 ナトリウム/モリブデン複合金属粉末
14 モリブデン金属粉末
16 ナトリウム化合物
18 液体
20 スラリー
22 パルス燃焼噴霧乾燥機
24 供給原料
26 焼結
28 分級
30 溶射付着プロセス
32 ナトリウム/モリブデンフィルム
32’ ナトリウム/モリブデンフィルムまたはコーティング
32’’ ナトリウム/モリブデンフィルム
34 基材
36 光電池
38 印刷プロセス
40 圧密化段階
42 金属製造物
44 スパッタターゲット
46 焼結
48 バインダー
50 高温ガス
51 燃焼用空気
52 入口
54外側シェル
56 一方向空気弁
58 同調燃焼室
60 燃料弁または燃料口
62 点火用補助バーナー
64 高温燃焼ガス
66 排気管
68 噴霧器
70 急冷用空気
72 入口
74 円錐形出口
76 吸収体層
78 接合パートナー層
80 透明伝導性酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属粉末の製造方法であって、
モリブデン金属粉末の供給物を提供し;
ナトリウム化合物の供給物を提供し;
前記モリブデン金属粉末と前記ナトリウム化合物を液体と組み合わせてスラリーを形成し;
前記スラリーを高温ガス流中に供給し;そして
複合金属粉末を回収する、
ことを含む方法。
【請求項2】
ナトリウム化合物の供給物を提供することが、モリブデン酸ナトリウム粉末の供給物を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリーを高温ガス流中に供給することが、前記スラリーを噴霧し、前記噴霧されたスラリーを高温ガス流と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モリブデン金属粉末と前記ナトリウム化合物を液体と組み合わせることが、前記モリブデン金属粉末と前記ナトリウム化合物を水と組み合わせてスラリーを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリーが約15重量%〜約25重量%の液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
バインダー材料の供給物を提供し;そして
前記バインダー材料を前記モリブデン金属粉末、前記ナトリウム化合物、および前記水と組み合わせて、スラリーを形成する、
ことを含む方法。
【請求項7】
前記バインダーが、ポリビニルアルコールおよびカーボワックスからなる群より選択されるものからの1以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ナトリウム化合物がモリブデン酸ナトリウムを含み、前記スラリーが、約15重量%〜約25重量%の液体、約0重量%〜約2重量%のバインダー、約1重量%〜約15重量%のモリブデン酸ナトリウム、および約58重量%〜約84重量%のモリブデン金属粉末を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
さらに、回収した複合金属粉末を、前記バインダーの実質的にすべてを排除するのに十分な温度で加熱することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱がさらに、水素雰囲気中での加熱を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水素雰囲気中での前記加熱を約500℃〜約825℃の範囲の温度で実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ナトリウムおよびモリブデンのサブ粒子の実質的に均質な分散物を含むナトリウム/モリブデン複合金属粉末であって、該サブ粒子が一緒に溶融して前記複合金属粉末の個々の粒子を形成している、前記ナトリウム/モリブデン複合金属粉末。
【請求項13】
50gあたり約30〜35秒の範囲のHall流動性を含む、請求項12に記載のナトリウム/モリブデン複合金属粉末。
【請求項14】
約2g/cc〜約3g/ccの範囲のScott密度を有する、請求項12に記載のナトリウム/モリブデン複合金属粉末製造物。
【請求項15】
約0.2重量%〜約3.5重量%の保持ナトリウムを含む、請求項12に記載のナトリウム/モリブデン複合金属粉末製造物。
【請求項16】
約6重量%未満の保持酸素を含む、請求項12に記載のナトリウム/モリブデン複合金属粉末製造物。
【請求項17】
金属物品の製造方法であって、
複合金属粉末の供給物を、
モリブデン金属粉末の供給物を提供し;
ナトリウム化合物の供給物を提供し;
前記モリブデン金属粉末と前記ナトリウム化合物を液体と組み合わせてスラリーを形成し;
前記スラリーを高温ガス流中に供給し;
複合金属粉末を回収する、
ことにより製造し;そして
前記複合金属粉末を圧密化して金属物品を形成し、ここにおいて、前記金属物品はナトリウム/モリブデン金属マトリックスを含む、
ことを含む、前記方法。
【請求項18】
前記複合金属粉末の前記圧密化が冷間等方圧プレスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
圧密化が、前記複合金属粉末をプレスして付形物にし、該付形物を焼結することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記焼結を水素雰囲気中で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記焼結を約825℃未満の温度で実施する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
圧密化が熱間等方圧プレスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
光電池の製造方法であって、
基材を提供し;
前記基材上にナトリウム/モリブデン金属層を付着させ;
前記ナトリウム/モリブデン金属層上に吸収体層を付着させ;そして
前記吸収体層上に接合パートナー層を付着させる、
ことを含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、ナトリウム/モリブデン金属層を付着させることが、ナトリウム/モリブデン金属マトリックスを含むターゲットをスパッタすることを含み、該ターゲットからスパッタされた材料が前記ナトリウム/モリブデン金属層を形成する、前記方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、ナトリウム/モリブデン金属層を付着させることが、
モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;
前記複合金属粉末を前記基材上に溶射により付着させる、
ことを含む方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、ナトリウム/モリブデン金属層を付着させることが、
モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;そして
前記複合金属粉末を前記基材上に印刷により付着させる、
ことを含む方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、ナトリウム/モリブデン金属層を付着させることが、
モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;そして
前記複合金属粉末を前記基材上に蒸発により付着させる、
ことを含む方法。
【請求項28】
さらに、透明伝導性酸化物層を前記接合パートナー層上に付着させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記吸収体層が、銅、インジウムおよびセレンからなる群より選択される1以上を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記接合パートナー層が、硫化カドミウムおよび硫化亜鉛からなる群より選択される1以上を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
フィルムを基材上に付着させるための方法であって、
モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;
前記複合金属粉末を前記基材上に溶射により付着させる、
ことを含む方法。
【請求項32】
フィルムを基材上に付着させるための方法であって、ナトリウム/モリブデン金属マトリックスを含むターゲットをスパッタすることを含み、該ターゲットからスパッタされた材料が前記ナトリウム/モリブデン金属層を形成する、前記方法。
【請求項33】
コーティングを基材上に形成するための方法であって、
モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;
複合金属粉末の前記供給物をビヒクルと混合し;そして
複合金属粉末とビヒクルの混合物を前記基材上に印刷により付着させる、
ことを含む方法。
【請求項34】
フィルムを基材上に付着させるための方法であって、
モリブデンとナトリウムを含む複合金属粉末の供給物を提供し;
前記複合金属粉末を前記基材上に蒸発により付着させる、
ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−511886(P2011−511886A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542366(P2010−542366)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/030561
【国際公開番号】WO2009/089421
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(506032048)クライマックス・エンジニアード・マテリアルズ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】