説明

ナノサイズの凹凸を形成し更に後処理を行った高撥水性材料

【課題】超疎水性を得るように、高分子フィルム、繊維、不織布及びこれらの積層体を製造しかつ/または処理する単純かつ安価な方法を提供する。
【解決手段】高撥水性材料を製造する方法が提供される。一実施形態では、本方法は、粒子様のナノサイズの凹凸を含む外表面を有する高分子材料を提供するステップと、外表面を、高エネルギー表面処理によりエッチングするステップと、エッチングされた外表面上に、プラズマフッ素化プロセスによってフルオロケミカルを堆積させるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高撥水性の高分子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルム、不織布及びこれらの積層体は、ワイピングクロス、タオル、産業用衣服、医療用衣服、医療用ドレープ、滅菌ラップなど多種多様の用途に有用である。しかし、これらの材料を所与の用途に対して全ての望ましい特性を有するように製造することが常に可能であるとは限らない。例えば、一部の用途では、材料は、いわゆる超疎水性、すなわち非常に高い撥水性を持つ必要がある。超疎水性を示す天然材料の1つの例はハスの葉である。しかし、これまでは、ハスの葉が示す超疎水性レベルを合成高分子材料で達成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,157,117号明細書
【特許文献2】米国特許第3,702,412号明細書
【特許文献3】米国特許第3,769,600号明細書
【特許文献4】米国特許第3,780,308号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Fabrication of a Continuous Wettability Gradient by Radio Frequency Plasma Discharge", W. G. Pitt, J. Colloid Interface ScL, 133, No. 1 , 223 (1989)
【非特許文献2】"Wettability Gradient Surfaces Prepared by Corona Discharge Treatment", J. H. Lee, et al., Transactions of the 17th Annual Meeting of the Society for Biomaterials, May 1-5, 1991 , page 133, Scottsdale, Ariz.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、超疎水性を得るように、高分子フィルム、繊維、不織布及びこれらの積層体を製造しかつ/または処理する単純かつ安価な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、高撥水性材料を製造する方法が、該プロセスに従って製造される高撥水性材料、及び該高撥水性材料を含むパーソナルケア製品とともに提供される。本方法は、粒子様のナノサイズの凹凸(ナノトポグラフィ)を含む外表面を有する高分子材料を提供するステップと、外表面を、高エネルギー表面処理によりエッチングするステップと、エッチングされた外表面上に、プラズマフッ素化プロセスによってフルオロケミカル(フッ素含有化合物)を堆積させるステップとを含む。
【0007】
一実施形態では、高分子材料は、約1〜約20重量パーセントのポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン化合物を含み得る。高分子材料は、約40〜約99重量パーセントのベースポリマーをさらに含み得る。ベースポリマーは、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリブチレンなどであってよい。例えば、高分子材料は、フィルム、繊維などの形態をとり得る。
【0008】
一実施形態では、高分子材料を提供するステップは、ベースポリマーにポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン添加剤を混合して混合物を形成し、続いて、該混合物を、外表面を有する高分子材料内へ押し出すステップを含み得る。別の実施形態では、高分子材料を提供するステップは、高分子材料の外表面にナノ粒子処理剤を適用するステップを含み得る。さらなる実施形態では、高分子材料を提供するステップは、高エネルギー表面処理を含み得る。
【0009】
一実施形態では、高エネルギー表面処理は、プラズマ処理であり得る。プラズマは、例えば、不活性ガスと反応性ガスの混合物を含み得る。別の例として、プラズマは、酸素とアルゴンの混合物、例えば、約1〜約4重量部の酸素と、約1〜約4重量部のアルゴンとを含み得る。
【0010】
一実施形態では、フルオロケミカルは、フルオロアクリレートモノマーを含み得る。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、高撥水性合成ポリマー物品が提供される。この物品は、物品のポリマー外表面上の粒子様のナノサイズの凹凸と、プラズマ堆積によって適用されたフルオロケミカルとを有する。ポリマー外表面は、水に対して140°を超す接触角を示す。一実施形態では、物品はフィルムである。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、高撥水性材料を製造する方法は、外表面を有する高分子材料を提供するステップと、外表面を、高エネルギー表面処理によりエッチングするステップと、高分子材料のエッチングされた外表面にナノ粒子表面処理剤を適用するステップと、その後、ナノ粒子処理剤上にフルオロケミカルを適用するステップとを含む。さらなる実施形態では、ナノ粒子表面処理剤は、シリカナノ粒子を含み得る。さらに別の実施形態では、高エネルギー処理はプラズマ処理を含み得る。さらに別の実施形態では、フルオロケミカルは、フルオロアクリレートモノマーを含み得る。
【0013】
本発明の他の特徴部及び態様については、以下で詳細に説明する。
【0014】
当業者を対象とする、ベストモードを含む本発明の全面的かつ実施可能な程度の開示は、添付の図面を参照する本明細書の残りの部分に、より具体的に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ナノサイズの凹凸なしのプラズマフッ素化ポリプロピレンフィルムを作製する様々な段階における走査型電子顕微鏡写真(SEM)及び接触角を示す。
【図2】様々な内部添加剤を含むポリプロピレンフィルム及びポリプロピレンフィルムのSEMを示す。
【図3】図2に示した各フィルムに対する表面組成データを示す。
【図4】内部添加剤を含み、ナノサイズの凹凸が形成された、プラズマフッ素化ポリプロピレンフィルムを作製する様々な段階におけるSEM及び接触角を示す。
【図5】内部添加剤を含み、プラズマエッチングされたナノサイズの凹凸が形成された、プラズマフッ素化ポリプロピレンフィルムを作製する様々な段階におけるSEM及び接触角を示す。
【図6】プラズマエッチングされたナノサイズの凹凸を含むプラズマフッ素化ポリプロピレンフィルムを作製する様々な段階におけるSEM及び接触角を示す。
【図7】プラズマエッチング及びコーティングを施されたナノサイズの凹凸を含むプラズマフッ素化ポリカーボネートフィルムを作製する様々な段階におけるSEM及び接触角を示す。
【図8】スパンボンドポリプロピレン繊維であって、内部溶融添加剤から形成されたナノサイズの凹凸を有しているものと有していないもののSEMを示す。
【図9】スパンボンドポリプロピレン繊維であって、内部添加剤を加えたものと加えていないもののSEMを示す。
【図10】メルトブローンポリプロピレン/ポリブチレン繊維であって、内部添加剤を加えたものと加えていないもののSEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書及び図面において、本発明の或る特徴部または構成要素を表すために異なる実施形態間で同じ符号が用いられているときには、その符号により表される特徴部または構成要素が同一または類似ものであることを意味している。
【0017】
ここで、本発明の様々な実施形態を詳しく見てみることにする。本発明の1若しくは複数の例を以下に記載する。各例は、説明のために与えられているものであって、本発明を制限するものではない。実際に、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な変更形態及び変形形態を得ることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示または記載される特徴部を別の実施形態で用いて、さらなる実施形態を生じさせることができる。それゆえ、本発明はそのような変更形態及び変形形態も対象にする。
【0018】
本発明の高撥水性材料は、例えば、繊維、不織布、フィルム、不織/フィルム積層体を含めた様々な高分子材料のうちの任意のものとして作製され得る。高分子フィルム及び/または繊維は、フィルム及び/または繊維を形成するための従来のプロセスのうちの任意のものによって形成され得る。そのようなプロセスには通常、従来の押出機による所望の材料内へのベースポリマーの押出しが含まれる。押出温度は、一般的に、用いられるベースポリマーの種類によって異なり得る。例えば、溶融熱可塑性プラスチック材料が、押出機からそれぞれのベースポリマー導管を通って従来の繊維またはフィルムダイへ供給され得る。
【0019】
高撥水性材料は、適切に、高度のナノサイズの凹凸を特徴とする表面を有するようにして形成される。ナノサイズの凹凸は、押出し中の内部添加剤の追加、押出し後の外表面のエッチング及び/または押出し後の外表面へのナノ粒子コーティングの堆積、それらの組合せなどを含む様々なプロセスによってもたらされ得る。ナノサイズの凹凸は、表面上に粒子様表面特徴部が存在することが特徴である。粒子様表面特徴部は、約0.01ミクロン〜約10ミクロン、より具体的には約0.05ミクロン〜約5ミクロン、さらに具体的には約0.1ミクロン〜約1.0ミクロンの大きさ(最大寸法での測定値)であり得る。粒子様表面特徴部は、1平方ミクロン当たり約0.001〜約2000個の粒子様表面特徴部、具体的には1平方ミクロン当たり約0.01〜約500個の粒子様表面特徴部、より具体的には1平方ミクロン当たり約0.1〜約100個の粒子様表面特徴部、さらに具体的には1平方ミクロン当たり約1〜約12個の粒子様表面特徴部の表面密度をさらに有し得る。
【0020】
合成ポリマーフィルム及び/または繊維の外表面上のナノサイズの凹凸は、Rを官能基として下に示すような、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)などの内部添加剤を用いることによってもたらされ得る。水素、メチル、エチル、ブチル、イソブチルなどを含む様々な官能基(R)をPOSS分子に加えることができる。様々なPOSS材料が、例えばミシシッピ州ハッティズバーグのハイブリッドプラスチックス社から入手可能である。一実施形態では、官能基はオクタイソブチル(OIB)基であり得るので、下に示すオクタイソブチルポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンを形成し得る。
【化1】

【0021】
押出しプロセス中、POSSは、フィルムまたは繊維の外表面へと分離し、粒子様のナノサイズの表面凹凸を形成することができる。POSSによって形成される粒子様表面特徴部は、約0.1ミクロン〜約1.0ミクロンの大きさ(最大寸法での測定値)であり得る。一部の実施形態では、POSSによって形成される粒子様表面特徴部は、1平方ミクロン当たり約1〜約12の粒子様表面特徴部の表面密度を有し得る。
【0022】
合成ポリマー(例えば、フィルム、繊維など)の外表面上に、コロナまたはプラズマ処理システムからのグロー放電(GD)などの高エネルギー表面エッチング処理を表面に施すことによって、ナノサイズの凹凸を形成することもできる。高エネルギーエッチング処理は、汚染物質及び短鎖オリゴマーでできている「緩い」弱境界層の合成ポリマー表面を「きれいにする」働きをする。高エネルギー処理は、積層体の表面上にラジカルを発生させることもでき、これにより、その後の、重合フッ素化モノマーの共有結合による表面付着の強化が可能になる。例として、高エネルギー処理は、高周波(RF)プラズマ処理であり得る。あるいは、高エネルギー処理は、誘電体バリアコロナ処理であり得る。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、高エネルギー処理へのベースポリマー表面の露出は表面の改質をもたらし、それによって、表面の表面エネルギーを上昇させ、かつ、フッ素化モノマーの界面接着及び重合を推進することができるラジカルを形成すると考えられる。これらの機能は、フリーラジカル、極性部分及びイオン種を発生させることができる結合を壊し、汚染物質を除去し、原子を除去することを通じて、高エネルギー処理を行ったことに起因する。このことは、今度は、それに続く表面上へのフッ素化化合物の均一な堆積を向上させる。すなわち、表面は、フッ素化化合物で飽和し得る。それゆえ、露出領域上のフィルム及び/または繊維の表面上にフッ素化化合物を堆積させることができる。
【0023】
高エネルギー表面処理の強度を、材料の少なくとも1つの寸法にわたって、制御された方式で変化させることができる。例えば、高エネルギー処理の強度を、既知の手段によって、制御された方式で容易に変えることができる。例えば、セグメント電極を有するコロナ装置を用いることができ、ここでは、処理される試料から各セグメントまでの距離を個々に変えることができる。別の例として、ギャップ傾斜(gap-gradient)電極系を有するコロナ装置を利用することもでき、この場合には、1つの電極が、電極の長さ方向に対して垂直な軸線の周りを回転し得る。他の方法を用いることもできる。例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい。
【0024】
外表面を気体プラズマ処理で処理することによって、高エネルギー表面処理をさらに達成することができる。例えば、アルゴン、へリウム、窒素などを含む不活性ガスを活性化して、プラズマを形成することができる。プラズマ中のイオン及び電子が合成ポリマーフィルム及び/または繊維の外表面と反応し、とてもきれいな表面すなわちエッチング表面を作ることができる。酸素などの反応性ガスを導入すると、フィルムまたは繊維の外表面と反応するプラズマの能力がさらに高められる。不活性ガスと反応性ガスとの重量比は、1:4〜4:1の範囲であり得る。プラズマ処理のために活性化されるアルゴンと酸素との重量比を1:1にすると、ポリプロピレン及びポリカーボネート材料の外表面のエッチングにおいて特に効果があることが分かった。プラズマ処理は、例えば500ワット・プラズマチャンバ(エア・コーティング・テクノロジー社製のPS0150Eモデル)内で行うことができる。電力入力は、露出時間、例えば約1〜約4分間にわたって、例えば約100〜約500ワットであり得る。
【0025】
材料の表面上にナノサイズの凹凸を作り出す別の方法は、局所ナノ粒子処理剤、例えばシリカナノ粒子コーティング剤の適用である。1つの適切なシリカナノ粒子コーティング剤は、COL.9(登録商標)DS 1100X(BASF社から入手可能)である。処理される表面の被覆率を高めるために、処理剤中に湿潤剤を用いることができる。1つの適切な湿潤剤は、コネチカット州スタンフォードのBASF社から入手可能な、BERMOCOLL E230 FQである。例えば、浸漬及び絞り(dip and squeeze)処理、噴霧処理、ロッドによる塗布、その他を含む当業者に既知の技術によって、局所ナノ粒子処理剤を作製し、処理される表面に適用し、その後に乾燥させることができる。
【0026】
ナノサイズの凹凸が形成され、高エネルギー表面処理が完了した後に、高度のナノサイズの凹凸を有する材料を反応性プラズマで化学的に処理して最終的な超疎水性表面を提供することができる。高度のナノサイズの凹凸を有する表面にモノマー化合物を堆積させ、その後にモノマー化合物を照射源(例えば、電子ビーム、γ線及び紫外線照射、並びにグロー放電プラズマ)からの照射により表面へのグラフト化を行う。モノマー化合物は、1つの特定実施形態では、フッ素化化合物である。モノマー堆積プロセスには、通常、(1)真空チャンバ内での液体フッ素化化合物(例えば、フッ素化モノマー、フッ素化ポリマー、全フッ素化ポリマーなど)の噴霧化または蒸発と、(2)高度のナノサイズの凹凸を有する表面上へのフッ素化化合物の堆積または噴霧と、(3)電子ビーム、γ線、紫外線照射などの照射源への露出によるフッ素化化合物の重合とが含まれる。
【0027】
例示的なフッ素化モノマーには、2−プロペン酸,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエステル、2−プロペン酸,2−メチル−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエステル、2−プロペン酸,ペンタフルオロエチルエステル、2−プロペン酸,2−メチル−ペンタフルオロフェニルエステル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、2−プロペン酸,2,2,2−トリフルオロエチルエステル及び2−プロペン酸,2−メチル−2,2,2−トリフルオロエチルエステルが含まれる。他の適切なモノマーには、一般構造
【化2】

を有するフルオロアクリル酸モノマーが含まれる。ここで、nは1〜12の整数、xは1〜8の整数、RはHまたは炭素鎖長1〜16のアルキル基である。多くの場合に、フルオロアクリル酸モノマーは、互いに異なるn値に対応する同族体の混合物からなるものであってよい。適切なフルオロアクリル酸モノマーの例は、ペルフルオロデシル・アクリレート(PFDEA)(アルドリッチ社からCAS No. 27905-45-9として入手可能)であり、これを、以下の例において全てのプラズマフルオロケミカル堆積に対して用いた。他の適切なモノマーは、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル・アクリレート及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル・メタクリレートである。
【0028】
このタイプのモノマーは、公知の技術を適用することにより、化学技術分野の当業者によって容易に合成することができる。その上、これらの材料の多くは、市販されている。デラウェア州ウィルミントンのデュポン社からは、ゾニール(登録商標)という商品名でフルオロアクリル酸モノマー群が販売されている。これらの化学物質は、互いに異なる同族体分布が得られる。より望ましくは、本発明を実行するにあたり、「ゾニール(登録商標)TA−N」及び「ゾニール(登録商標)TM」という名称で販売されている化学物質を用いることができる。
【0029】
如何なるフッ素化剤を用いるとしても、フッ素化剤を蒸発(または噴霧化)させ、モノマー堆積プロセスに従って、高度のナノサイズの凹凸を有する表面上で凝縮(または噴霧)させる。1つの特に適切なモノマー堆積プロセスが特許文献1に記載されており、特許文献1は、本願と矛盾がない限りにおいて、引用を以て本明細書の一部となす。このモノマー堆積プロセスでは、プラズマ場の前処理、それに続くモノマー堆積、その後の多孔質基体の放射線キュアリングを連続工程で可能にするように、従来の真空チャンバに変更を加える。通常、処理されている材料は、フィードリールとプロダクトリールの間で連続的に巻かれている間に、真空チャンバ内で完全に処理される。蒸発させたフッ素化剤が後の工程で確実に低温凝縮するように十分に低い温度まで材料を冷却させるために、先ず、材料を低温室を通過させることができる。その後、材料は、プラズマ前処理ユニットを通過し、その直後に(わずか数秒以内、好適には数ミリ秒以内に)フラッシュ蒸発器を通過することができ、そこで材料はフッ素化剤蒸気にさらされて、低温材料上に薄い液体フィルムが堆積される。フッ素化剤フィルムはその後、電子ビームユニットへの露出を経て放射線キュアリングによって重合され、別の(任意選択の)冷却室を通って下流へと通過させられる。
【0030】
処理されている材料の表面上にフッ素化剤を堆積した後、電子ビームに露出させると、フッ素化剤が基体にグラフト化される。1つの例示的な電子ビーム装置は、マサチューセッツ州ウィルミントンのエナジー・サイエンシーズ社製の商品名がCB 150エレクトロカーテン(ELECTROCURTAIN)(登録商標)というものである。この装置は、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に開示されており、これらの特許文献は引用を以て本明細書の一部となす。一般的には電子ビーム照射が好ましいが、γ線や紫外線照射などの他の照射源を用いることもできる。
【0031】
一般的に、処理されている材料に、約80キロボルト(kV)〜約350kV、例えば約80kV〜約250kVの加速電圧で作動する電子ビームを当てることができる。1つの特定の実施形態では、加速電圧は約175kVである。処理されている材料は、約0.1ミリラジアン(Mrad)〜約20Mrad、例えば約0.5Mrad〜約10Mradで照射され得る。とりわけ、基体は約1Mrad〜約5Mradで照射され得る。
【0032】
上記のように、照射された放射線は、堆積されたフッ素化剤とポリマーフィルム及び/またはポリマー繊維の表面との間で反応を生じさせる。結果として、フッ素化剤は、高度のナノサイズの凹凸を有するポリマー繊維及び/またはフィルムの表面にグラフト共重合(またはグラフト化)されかつ/または架橋され得る。この特定の後処理の組合せは、高度のナノサイズの凹凸を有する表面に高度の撥水性を付加する。
【0033】
従って、本発明の発明者は、被処理材が約130°を超す接触角を呈し得ることを発見した。さらに望ましいことに、本発明の発明者は、被処理材が約140°を超す接触角、すなわち、ハスの葉の接触角に実質的に等しい接触角を呈し得ることを発見した。
【0034】
必要に応じて、本発明の高撥水性材料には、望ましい特性を与えるために様々な他の処理を施すことができる。例えば、高撥水性材料を、着色剤、かぶり防止剤、潤滑剤及び/または抗菌剤で処理することができる。
【0035】
本発明の高撥水性材料は、多種多様の用途に用いることができる。例えば、ガウン、手術用ドレープ、フェイスマスク、頭部カバー、手術帽、靴カバー、滅菌ラップ、加温ブランケット、加温パッドなどの「医療製品」に高撥水性材料を組み込むことができる。言うまでもなく、高撥水性材料を様々な他の物品に用いることもできる。例えば、高撥水性材料を、水または他の流体を吸収することができる「吸収性物品」に組み込むこともできる。いくつかの吸収性物品の例には、おむつ、トレーニングパンツ、吸収性パンツ、失禁用品、女性衛生用品(例えば、生理用ナプキン)、水着、赤ちゃん用おしり拭き、ミトン型ワイプ、その他のパーソナルケア吸収性物品;ガーメント、開窓材料、アンダーパッド、ベッドパッド、包帯/救急絆、吸収性ドレープ及び医療用ワイプなどの医療用吸収性物品;食事用ナプキン;衣類;袋、その他が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような物品を形成するのに適した材料及びプロセスは、当業者に公知である。吸収性物品には通常、例えば、実質的に液体不透過性層(例えば、外カバー)、液体透過性層(例えば、身体側ライナー、サージ層など)及び吸収性コアが含まれる。一実施形態では、例えば、本発明の高撥水性材料を用いて、吸収性物品の外カバーを形成することができる。
【0036】
本発明の高撥水性材料の坪量は、所望の用途に合わせることができるが、一般的には約10〜約300グラム/平方メートル(「gsm」)の範囲にあり、或る実施形態では約25〜約200gsm、また或る実施形態では約40〜約150gsmの範囲にある。
【0037】
接触角検査方法
【0038】
幅約2.54センチメートル、長さ7.62センチメートルに切断した材料の試料上で、接触角の測定を行った。水平及び垂直調節機能付きの平らな金属プラットホーム上に試料を載置した。蒸留水(マサチューセッツ州ベリリカのミリポア社から入手可能なMilli−Q浄水装置を用いて18.2MΩcmに蒸留された水)の水滴を、100マイクロリットルのシリンジから試料の表面へ手作業で滴下した。SONY製のカメラ制御装置を介してコンピュータにインタフェース接続されているカメラ(ライカマイクロシステムズ社製ライカZ6 APO A光学ズーム装置)により、試料表面上の水滴の側面画像を撮影した。水滴の画像を向上させるために、補助照明プローブも用いた。水と表面界面とがなす接触角は、標準的な方法(例えば分度器)を用いて、写真から測定することができる。
【0039】

【0040】
本発明の材料及びその製造方法を、以下の例によって例証する。図面と同様に、これらの例は制限的なものではない。
【0041】
ライストリッツ社製の2軸スクリュー押出機を用いて、フィルムの試料を25.4センチメートルのキャストフィルムライン上に流延した。主剤は、オランダ国ロッテルダムに所在するライオンデルバセル社から入手可能な、Pro−fax(登録商標)6323と呼ばれる12メルトフローレートのポリプロピレンホモポリマーであった。目標フィルム厚さは、0.1ミリメートルであった。様々なレベルで幾つかの添加剤を用いた。1つの添加剤は、80重量パーセントのポリプロピレン及び20重量パーセントのオクタイソブチル(OIB)ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)を含むナノ強化ポリプロピレン濃縮物(ミシシッピ州ハッティズバーグのハイブリッドプラスチックス社からMS0825ナノ強化ポリプロピレンとして入手可能)であった。別の添加剤は、80重量パーセントのポリプロピレン及び20重量パーセントのフルオロケミカルを含む内部フルオロケミカル(internal fluorochemical:IFC)ポリプロピレン濃縮物(ジョージア州ソーシャルサークルのスタンドリッジケミカル社から入手可能)であった。主剤及び2つの添加剤を行いて表1に示す組成を有するフィルムを作製した。
【表1】

【0042】
上記したポリプロピレンフィルム及び、ポリカーボネートフィルム試料に対してアルゴン/酸素プラズマ処理(エア・コーティング・テクノロジー社(Air Coating Technology)製のプラズマサイエンス500Wプラズマチャンバ、PS0150E型)を行い、ポリマーフィルム表面をきれいにしてエッチングし、ナノサイズの表面凹凸を作り出した。プロセス条件は、電源入力100%、アルゴンと酸素ガスの重量比は1:1、連続プラズマへの露出時間は4分間であった。チャンバの基底圧は、0.1torrまで抜かれ、プラズマプロセス中に0.86torrに達した。このプラズマ処理はまた、接触角データによって示されるようなフィルム表面の湿潤性を向上させた。ポリプロピレン及びポリカーボネートフィルム試料の湿潤性の向上は、その後のシリカナノ粒子コーティング剤(BASF社製のCOL.9(登録商標)DS 1100X。本明細書中ではCOL.9と呼ぶ。)での表面処理のために、より良好な表面を提供した。このプラズマプロセスにさらされた試料を表2で「プラズマ」と呼ぶ。
【0043】
ポリプロピレン及びポリカーボネートフィルム試料に対して、イオンマスク(tm)プラズマ表面強化処理剤(英国オックスフォードシャー州アビングドンのP2i社)を用いて反応性フルオロケミカル蒸着(堆積)も行った。下表2では、反応性プラズマフルオロケミカル蒸着を行った試料を「PF」と表す。走査型電子顕微鏡写真(SEM)及びX線光電子分光法(XPS)を用いて、様々なフィルムコードの表面を評価した。SEMに関しては、帯電の緩和に役立つように試料を金コーティングし、45°の傾斜角で撮像した。
【0044】
COL.9で処理したフィルム:
【0045】
「プラズマPPフィルム+COL.9+PF」:「プラズマ」処理した101.6mm×139.7mm(4インチ×5.5インチ)のPPフィルム(100% Pro−fax 6323 PP)片の表面に、20号単巻線(#20 single wound)塗工用ロッドを用いて、COL.9(登録商標)DS 1100X剤を塗布した。コーティングしたフィルムを炉に入れて90℃で13分間乾燥させた。乾燥状態のコーティングしたフィルム片の質量増加から、フィルムに約17%のCOL.9が塗布されたことが分かった。
【0046】
「プラズマPPフィルム+E230&希釈COL.9」:75.6グラムのCOL.9(登録商標)DS 1100X剤を300mlのパイレックス(登録商標)ビーカーに入れ、Milli−Q蒸留水を加えて総重量が225.2グラムになるようにした。希釈COL.9液体を、55℃まで加熱しながら電動プロペラで30分間撹拌した。その後、0.50グラムのBERMOCOLL E230 FQ(コネチカット州スタンフォードのアクゾノーベル社から入手可能な、水溶性セルロース誘導体(湿潤剤))を加えて、撹拌を続けながら液体を冷却した。この剤のpHは9.1と測定され、粘度は、ブルックフィールド型DV−1粘度計を用いて、LV−2スピンドルセットによって50rpmで測定し、75cPであった。この剤を、「プラズマ」処理した101.6mm×139.7mmのPPフィルム(100% Pro−fax 6323 PP)片の表面に、20号単巻線塗工用ロッドを用いて塗布した。コーティングしたフィルムを炉に入れて90℃で10分間乾燥させた。乾燥状態のコーティングしたフィルム片の質量増加から、フィルムに約3.5%のCOL.9が塗布されたことが分かった。
【0047】
「プラズマPCフィルム+E230&COL.9」及び「プラズマPCフィルム+E230&COL.9+PF」:250.2グラムのCOL.9(登録商標)DS 1100X剤をビーカーに入れ、電動プロペラで撹拌しながら55℃まで加熱した。その後、0.50グラムのBERMOCOLL E230 FQを加えて、撹拌を続けながら液体を冷却した。この剤のpHは8.6と測定され、粘度は、ブルックフィールド型DV−1粘度計を用いて、LV−2スピンドルセットによって50rpmで測定し、338cPであった。この剤を、「プラズマ」処理した63.5mm×177.8mm(2.5インチ×7インチ)のポリカーボネートフィルム(PCフィルム)片の表面に、20号単巻線塗工用ロッドを用いて塗布した。コーティングしたフィルムを炉に入れて90℃で15分間乾燥させた。乾燥状態のコーティングしたフィルム片の質量増加から、フィルムに約7.9%のCOL.9が塗布されたことが分かった。
【0048】
「プラズマPCフィルム+E230&希釈COL.9+PF」:75.6グラムのCOL.9(登録商標)DS 1100X剤を300mlのパイレックス(登録商標)ビーカーに入れ、Milli−Q蒸留水を加えて総重量が225.2グラムになるようにした。希釈COL.9液体を、55℃まで加熱しながら電動プロペラで30分間撹拌した。その後、0.50グラムのBERMOCOLL E230 FQを加えて、撹拌を続けながら液体を冷却した。この剤のpHは9.1と測定され、粘度は、ブルックフィールド型DV−1粘度計を用いて、LV−2スピンドルセットによって50rpmで測定し、75cPであった。この剤を、「プラズマ」処理した55.9mm×177.8mm(2.2インチ×7インチ)のポリカーボネートフィルム(PCフィルム)片の表面に、20号単巻線塗工用ロッドを用いて塗布した。コーティングしたフィルムを炉に入れて90℃で34分間乾燥させた。乾燥状態のコーティングしたフィルム片の質量増加から、フィルムに約1.6%のCOL.9が塗布されたことが分かった。
【0049】
「プラズマPCフィルム+COL.9」及び「プラズマPCフィルム+COL.9+PF」:「プラズマ」処理した55.9mm×127mm(3.5インチ×5インチ)のポリカーボネートフィルム(PCフィルム)片の表面に、20号単巻線塗工用ロッドを用いて、COL.9(登録商標)DS 1100X剤を塗布した。コーティングしたフィルムを炉に入れて90℃で2時間乾燥させた。乾燥状態のコーティングしたフィルム片の質量増加から、フィルムに約8%のCOL.9が塗布されたことが分かった。
【0050】
被処理フィルムの接触角データを次表2に示す。個々の接触角データ点の列の一番下に、各試料の平均及び標準偏差を示す。
【表2】

【0051】
図1を参照すると、PPフィルム及びPPフィルム+PFの走査型電子顕微鏡写真(SEM)及び接触角がそれぞれ示されている。いずれのフィルムもナノサイズの凹凸を有しておらず、対照ポリプロピレンフィルム上のフルオロケミカルの反応性蒸着が接触角を18°増加させることが示されている。
【0052】
図2を参照すると、PPフィルム(CTL PP)、POSS/PPフィルム(10% OIB POSS/PP)、IFC/PPフィルム(2% IFC/PP)及びPOSS+IFC/PPフィルム(10% OIB POSS+2% IFC/PP)のSEMが示されている。驚いたことに、POSS/PP試料は、良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸を示しているが、POSS+IFC/PP試料の凹凸は、それより大きく、それほど均一ではなく、それほど良好に分散していない。内部フルオロケミカルが、良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸の形成を阻害することは明らかである。
【0053】
図3を参照すると、図2に示したフィルムに対する表面組成データが示されている。注目すべきことに、POSS/PP中にはかなりのレベルのシリコン(POSSの存在を示す)が検出されたが、POSS+IFC/PP試料にはほんの僅かなレベルのシリコンしか検出されなかった。この場合もやはり、内部フルオロケミカルが、フィルムの表面へのPOSSの移動及び、それに続く良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸の形成を阻害することは明らかである。
【0054】
図4を参照すると、POSS/PPフィルム+PF試料を作製する様々な段階におけるSEM及び接触角が示されている。上記したように、これらの試料は、OIB POSSとポリプロピレンの混合物をフィルム内に押し出してナノサイズの凹凸を作り出し(POSS/PPフィルム)、その後フィルムをプラズマフッ素化する(POSS/PPフィルム+PF)ことによって作製した。注目すべきことに、OIB POSSを用いてPOSS/PPフィルムを作製すると、接触角が5°増加した。その後のPOSS/PPフィルムのプラズマフッ素化は、接触角を36°増加させた。さらに、テープテスト(処理の耐久性を試験するために、フィルムの表面に標準的な透明テープを貼り付け及び除去する)は、POSS/PPフィルムの表面上のナノサイズの凹凸がテープによって容易に除去されることを示していた。しかし、プラズマフッ素化後には、ナノサイズの凹凸は、より一層の耐久性を有し、テープテストによる影響をほとんど示さないことが分かった。
【0055】
図5を参照すると、POSS/PPフィルム+プラズマ+PF試料を作製する様々な段階におけるSEM及び接触角が示されている。上記したように、これらの試料は、OIB POSSとポリプロピレンの混合物をフィルム内に押し出してナノサイズの凹凸を作り出し(POSS/PPフィルム)、高エネルギー酸素/アルゴンプラズマによりフィルムをエッチングし(POSS/PPフィルム+プラズマ)、エッチングしたフィルムをプラズマフッ素化する(POSS/PPフィルム+プラズマ+PF)ことによって作製した。ステップは、図4に示したものと同じステップにプラズマエッチングステップを追加した。注目すべきことに、エッチングステップは、エッチングしていないフィルムと比べて接触角を54°増加させた。しかし、その後のプラズマフッ素化は、エッチングしたフィルムと比べて接触角を99°増加させた。
【0056】
図6を参照すると、プラズマPPフィルム+PF試料を作製する様々な段階におけるSEM及び接触角が示されている。上記したように、これらの試料は、ポリプロピレンをフィルムに押し出し(PPフィルム)、高エネルギー酸素/アルゴンプラズマによりフィルムをエッチングしてナノサイズの凹凸を提供し(プラズマPPフィルム)、エッチングしたフィルムをプラズマフッ素化することによって作製した(プラズマPPフィルム+PF)。ステップは、最初のフィルムを作製する際にPOSSを用いなかった点を除いて、図5に示したものと同じである。注目すべきことに、この試料では、フッ素化されたナノサイズの凹凸は、114°の接触角しか示さなかった。
【0057】
図7を参照すると、プラズマPCフィルム+COL.9+PF試料を作製する様々な段階におけるSEM及び接触角が示されている。上記したように、これらの試料は、高エネルギー酸素/アルゴンプラズマによりポリカーボネート(PC)フィルムをエッチングし(プラズマPCフィルム)、エッチングしたフィルムを上記したようにCOL.9を用いてコーティングしてナノサイズの凹凸を提供し(プラズマPCフィルム+COL.9)、コーティングしたフィルムをプラズマフッ素化することによって作製した(プラズマPCフィルム+COL.9+PF)。注目すべきことに、ナノサイズの表面凹凸を提供する外部処理方法により、接触角が56°増加した。
【0058】
PPスパンボンド繊維試料:
【0059】
標準スパンボンディング条件を用いて、スパンボンドポリプロピレン(エクソンモービル社製エスコレン(Escorene)3155,公称メルトフローレートは35)繊維試料を作製した。
【0060】
5%及び10%のOIB POSS(エスコレン3155ポリプロピレンとハイブリッドプラスチックス社製MS0825ナノ強化ポリプロピレンとの混合物)を含むスパンボンドポリプロピレン繊維も作り出した。5%のOIB POSS及び2%の内部フルオロケミカルを含むさらなる試料を(ジョージア州ソーシャルサークルのスタンドリッジケミカル社から入手可能な、80重量パーセントのポリプロピレン及び20重量パーセントのフルオロケミカルを含む内部フルオロケミカル(IFC)ポリプロピレン濃縮物から)作り出した。標準スパンボンディング条件を用いた。
【0061】
図8を参照すると、スパンボンドポリプロピレン繊維であって、POSS内部添加剤から形成されるナノサイズの凹凸を有しているものと有していないものの両者のSEMが示されている。
【0062】
図9を参照すると、スパンボンドポリプロピレン繊維であって、内部添加剤を加えたものと加えていないものの両者のSEMが示されている。フィルムと同様に、POSS/PPスパンボンド繊維試料は、良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸を示しているが、POSS+IFC/PPスパンボンド繊維試料は、はっきり分からないか、より大きいか、均一ではないか、それほど良好に分散していないかのいずれかであるナノサイズの凹凸を有する。フィルムと同様に、内部フルオロケミカルが、POSS内部添加剤から形成される良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸の形成を阻害することは明らかである。
【0063】
メルトブローン不織布試料:
【0064】
標準メルトブローン条件を用いて、メルトブローン不織布試料を作製した。約9重量部のポリプロピレン(エクソンモービルケミカル社製3746Gポリプロピレン)及び1重量部のポリブチレン(ライオンデルバセル社製DP−8911)を含むポリマー混合物を用いた。
【0065】
上記した混合物を含み、2%及び4%のOIB POSS(ハイブリッドプラスチックス社製MS0825ナノ強化ポリプロピレン)を含むメルトブローンポリプロピレン不織布試料も作り出した。さらに、1.2%の内部フルオロケミカル(ジョージア州ソーシャルサークルのスタンドリッジケミカル社から入手可能な、80重量パーセントのポリプロピレン及び20重量パーセントのフルオロケミカルを含む内部フルオロケミカル(IFC)ポリプロピレン濃縮物から)を単独で、並びに1.2%の内部フルオロケミカル及び4%のOIB POSSを含むさらなる試料を作り出した。標準メルトブローン条件を用いた。
【0066】
図10を参照すると、メルトブローンポリプロピレン/ポリブチレン繊維であって、内部添加剤を加えたものと加えていないものの両者のSEMが示されている。フィルムと同様に、POSS/PPメルトブローン繊維試料は、特に4%のPOSSレベルで、良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸を示している。POSS+IFC/PPメルトブローン繊維試料に関して、凹凸の有無は繊維サイズに左右され、より小さな繊維は凹凸を呈するが、より大きな繊維は、低いレベルの凹凸を示すか、あるいは全く凹凸を示さない。それゆえ、より大きなサイズの繊維において、内部フルオロケミカルが、良好に分散しかつ均一なナノサイズの凹凸の形成を阻害することは明らかである。
【0067】
本明細書に開示されている本発明の実施形態は好ましいものであるが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改良を行うこともできる。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示され、均等の意味及び範囲内にある全ての変更もその中に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高撥水性材料を製造する方法であって、
粒子様のナノサイズの凹凸を含む外表面を有する高分子材料を提供するステップと、
前記外表面を、高エネルギー表面処理によりエッチングするステップと、
前記エッチングされた前記外表面上に、プラズマフッ素化プロセスによってフルオロケミカルを堆積させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記高分子材料が、約1〜約20重量パーセントのポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高分子材料が、約40〜約99重量パーセントのベースポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベースポリマーがポリオレフィンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子材料を提供するステップが、ベースポリマーにポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン添加剤を混合し、続いて、該混合物を、前記外表面を有する前記高分子材料内へ押し出すステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記高分子材料を提供するステップが、前記高分子材料の前記外表面にナノ粒子処理剤を適用するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高エネルギー表面処理が、プラズマ処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマが、不活性ガスと反応性ガスの混合物を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマが、酸素とアルゴンの混合物を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマが、約1〜約4重量部の酸素と、約1〜約4重量部のアルゴンとを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フルオロケミカルが、フルオロアクリレートモノマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子材料が、フィルム及び繊維からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載のプロセスによって製造される高撥水性材料。
【請求項14】
請求項1に記載のプロセスによって製造される高撥水性材料を含むパーソナルケア製品。
【請求項15】
高撥水性合成ポリマー物品であって、該物品のポリマー外表面上に粒子様のナノサイズの凹凸を有し、前記物品の前記ポリマー外表面上に、プラズマ堆積によって適用されたフルオロケミカルを有し、前記ポリマー外表面が、水に対して140°以上の接触角を示すようにしたことを特徴とする高撥水性合成ポリマー物品。
【請求項16】
前記物品がフィルムであることを特徴とする請求項15に記載の高撥水性合成ポリマー物品。
【請求項17】
高撥水性材料を製造する方法であって、
外表面を有する高分子材料を提供するステップと、
前記外表面を、高エネルギー表面処理によりエッチングするステップと、
前記高分子材料の前記エッチングされた前記外表面にナノ粒子表面処理剤を適用するステップと、
その後、前記ナノ粒子処理剤上にフルオロケミカルを適用するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子表面処理剤が、シリカナノ粒子を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記高エネルギー表面処理が、プラズマ処理を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記フルオロケミカルが、フルオロアクリレートモノマーを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−514062(P2012−514062A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542934(P2011−542934)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055343
【国際公開番号】WO2010/073153
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】