説明

ナノドットフラックス・ピン止めセンターを有する酸化物膜

薄膜を製造する方法は、前駆体溶液を、支持体上に蒸着させて、前駆体膜を形成することを含む。前駆体溶液は、塩の内の少なくとも1つがフッ化物含有塩である、1種類またはそれより多くの溶媒中の希土類元素の塩、アルカリ土類金属の塩、および遷移金属の塩を含めた希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物に対する前駆体成分を含有する。前駆体溶液は、単独で、または前駆体溶液中の1つまたは複数の前駆体成分、または希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物の元素を置換し、そして前駆体膜を処理して、前駆体溶液の希土類、アルカリ土類金属、遷移金属および添加剤金属またはドーパント金属を含む中間体金属オキシフルオリドを形成する能力がある1つまたは複数の金属化合物を包含するドーパント成分と組合わせて、第二相ナノ粒子を形成する能力のある1つまたは複数の金属化合物を包含する添加剤成分も含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、支援様式空軍契約書番号F33615−01−D−5802号で行われた。米国連邦政府は、本発明に所定の権利を有し得る。
発明の分野
本発明は、一般に、超電導性材料の増大しつつあるフラックスピン止めおよび増強しつつある臨界電流密度伝搬容量に関する。本発明は、超電導性構造に、および希土類−アルカリ土類遷移金属酸化物膜の超電導性のフラックスピン止め特性を改善する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
高温超電導性(HTS)材料(77Kの液体窒素温度より上の超電導性)の発見から、そのようなHTS材料を使用して、種々の加工用途を研究および開発する努力がなされた。薄膜超電導性デバイスおよびワイヤーでは、YBa2Cu37-Xの周知基本組成物(以降、Y123と称される)でイットリウム、バリウム、銅および酸素を含めた酸化物超電導体を利用するデバイスの組立で最大の進歩がなされた。多くの進歩も、Yの代わりに置換された希土類元素「RE」でもなされた。Y123のような二軸構造化超電導性金属酸化物は、被覆導電体アーキテクチャーにおける高い臨界電流密度を達成した。これらのワイヤーは、しばしば、第二世代HTSワイヤーと称される。したがって、Y123は、軍事用、高度エネルギー物理学、材料加工、輸送用および医療用途のためのケーブル、モーター、発電機、同調コンデンサー、トランス、限流器、および磁気システムを含めた多くの用途についての好ましい材料である。
【0003】
Y123は、HTS用途についての選択の材料であっても、臨界電流密度における改善、特に、高磁界および温度での臨界電流密度(Jc(H,T))は、使用費用を減少させ、そしてシステムのサイズおよび重量を減少させるであろう。したがって、Y123膜の性能を改善しつづけることが重要であった。HTS材料における高臨界電流密度Jcについての基本的機構である超電導性渦巻きの「ピン止め」を改善することによって、この改善は生じうる。
【0004】
超電導体におけるピン止めを達成するために、局所電位エネルギー差は、超電導性フラックスラインまたは渦巻きの正常なコアのサイズにできる限り近いサイズに合わせるべきである。断面コアは、可干渉距離の次元でサイズを示し、そしてそれは、高温超電導性銅アンモニア溶液中で数ナノメートールであり、そして温度と共に成長する。したがって、ナノメールサイズの欠陥は、フラックスラインをピン止めさせる上で魅力的である。原子部位占有における任意性から得られる原子論的変動も、ナノメートール規模で生じるひずみ磁界のある程度の平均化がある場合でさえ有効でありうる。
【0005】
大容量超電導性材料のフラックスピン止めを改善する努力がなされた。例えば、非特許文献1は、部分的な希土類置換を有するYBa2Cu37-X化合物の超電導性特性を記述する。ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、およびサマリウム(Sm)を用いた置換は、内部粒子Jc(フラックスピン止め)において僅かな改善を示すことが分かった。非特許文献2は、Y、BaおよびCu部位で、広範なドーパントを用いたYBa2Cu37-Xの浸漬について報告する。
【0006】
【非特許文献1】Jinら、Physica C,173巻、75−79頁(1991年)。
【非特許文献2】Skakleら、Material Science and Engineering、R23巻、1−40頁(1998年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、臨界電流密度を有用なレベルまで増大する欠陥の導入は、成功が限られていた。例えば、Gammelら、Phys.Rev.Lett.,59巻、2592頁(1987年)では、双晶境界の増大した密度は、フラックスピン止めで中程度の改善のみを提供する。YBa2Cu37-X中のJcにおけるある程度の増大は、例えば、Chuらに対するChuらに対する、米国特許第6,493,411号における中性子照射による点欠陥の導入によって達成された。多晶性高温超電導体における臨界電流は、粒子境界にある弱い連結により、さらにいっそう減らされ、そしてそれは、高い多孔性、隣接粒子の結晶の軸の誤配列によって、そして超電導性粒子の間の境界での非超電導体相(化合物)の形成および蓄積によってさらに悪くなる。
【0008】
大容量材料を用いた多様な研究にもかかわらず、増強したフラックスピン止めを有するY123組成物の薄膜を形成する上でいくつかの試みがなされたのみであった。例えば、 Scotti di Uccioら、Physica C、321巻、162−176頁(1999年)は、Y123薄膜中でY23およびY2BaCuO5(Y211)のようなイットリウム基材の不純物の形成を開示する。Kwonらに対する、米国特許第6,602,588号は、2つの希土類材料(RE)123の代替層を有する多層薄膜超電導性組成物を記述する。 Holesingerらに対する、米国特許第6,624,122号も、希土類元素の混合物を含有するRE−123薄膜を記述する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様では、超電導性材料の、およびそこにある導入中のナノメートールサイズの欠陥(ナノドット)の臨界電流密度を増大させる新規および改善方法を提供する。本発明は、様々の組成物および形態学のピン止めセンター欠陥のある範囲を、酸化物超電導体物体に導入する簡単でそして用途の広い方法を提供する。本発明の他の態様では、超電導体膜内のピン止めセンターのサイズ、形状、および分布を制御および最適化することが記述されている。
【0010】
ピン止めセンターを含有する改善された金属酸化物薄膜、および金属酸化物および酸化物超電導体薄膜を製造する方法も、開示される。
【0011】
本発明の1つの態様では、(1)希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物(以降、「RE−123」)の形成のための前駆体成分、および(2)フラックスピン止め部位の形成のための添加剤成分および/またはドーパント成分を含む前駆体溶液は、ピン止めセンターを有する超電導性膜を得るために溶液をベースとした方法で使用される。
【0012】
本発明の1つまたは複数の実施態様では、ドーパント成分は、前駆体溶液の前駆体成分の金属を部分的に置換するドーパント金属を供する前駆体溶液に含まれる。一般に、ドーパント成分は、前駆体溶液中に含有される溶媒(類)に溶解性であり、そして酸化物超電導体を形成するために加工されるときに、酸化物超電導体の元素を置換するドーパント金属を供するいずれかの金属化合物でありうる。
【0013】
本発明の1つまたは複数の実施態様では、添加剤成分は、前駆体溶液に含まれる。添加剤成分としては、酸化物超電導体膜中でピン止め部位として作用する第二相ナノ粒子を形成しうる希土類、アルカリ土類または遷移金属、セリウム、ジルコニウム、銀、アルミニウム、またはマグネシウムの溶解性化合物が挙げられる。一般に、添加剤化合物は、前駆体溶液中に含有される溶媒(類)中で溶解性であり、そして酸化物超電導体膜中で金属酸化物または金属を形成するいずれかの金属化合物でありうる。
【0014】
1つまたは複数の実施態様では、添加剤成分は、過剰の前駆体成分を上回って、またはそれに加えて、希土類、アルカリ金属または遷移金属化合物を含む。
1つまたは複数の実施態様では、添加剤成分を、粉末として前駆体溶液に添加して、ナノ粒子分散液を形成する。
【0015】
本発明は、改善されたフラックスピン止め特性を示す薄膜アーキテクチャー中の希土類またはイットリア/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物(以降、「RE−123」)のRE−123超電導性組成物を提供する。磁界捕捉作用における明らかな改善は、超電導性相材料へのナノメートールのサイズの欠陥(ナノドット、第二相ナノ粒子、または酸化物超電導体粒子に対する他の化学的または構造的改質)の導入により観察される。ここに使用される場合、「ナノドット」または「ナノ粒子」は、全寸法で、1−100ナノメートールの桁にある粒子に該当する。増強したピン止めは、RE−123構造に対する原子レベル欠陥または元素の置換により作り出されるもののような点ピン止めセンターからも生じうる。上の型のピン止めセンターの全ては、それらが、境界または転位のような欠陥構造に比較した場合にいっそう等方性作用を示す別の利益を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、以下の図面に関して記述され、そしてそれは、例示のみの目的のために表され、そして本発明を限定することは意図されない。
【0017】
多数の因子は、(1)ピン止め効果が、温度および磁界依存性であることが知られており、したがって作業温度および磁界に最適であるにちがいなこと、(2)性能が、ただ単に、テープの平面またはY123のa−b平面に平行(H//ab)か、またはテープの平面またはY123のa−b平面に垂直(H//c)なHの磁界で試験されるだけでなく、全角度で試験されるべきであること、および(3)テープ幅当たりのただ相対的よりむしろ絶対的な、全電流IC(すなわち、A/cm−幅)性能は、作業温度および磁界下で最適であるべきであることを含めて、RE−123被覆導電体物体におけるピン止めを改善することに関連がある。
【0018】
図1は、膜の平面に平行および垂直に配向された磁界を用いた酸化物緩衝金属基板上の金属−有機で蒸着した(MOD)Y123膜の典型的磁界依存性を示す。75Kで、膜の平面に垂直に配向された磁界で、平行な配向にある値からICにおける明らかな減少があり、そして多くのコイル用途でY123ワイヤーの利用性を制限する。温度が低い場合に性能は改善するが、多くの予想される用途は、性能が明らかに下降する条件である膜の平面に垂直に配向される1−3テスラの磁界で55から65K領域にある温度について計画される。磁界におけるY123ワイヤーの平行および垂直の性能に加えて、図2で示されるとおりの中間角度での磁界性能を試験することが重要である。図2に示されるとおり、Y123膜は、特に、c軸(Y123膜の平面に対して0および180℃または垂直)に小さなピークを示し、そしてそれは、拡張された平面または線状欠陥(例えば、双晶境界、粒子境界、a軸粒子)の存在を通して増強されうる。しかし、実際の用途については、Y123ワイヤー性能は、単に垂直な配向にあるものによってでなく、あらゆる配向でH を伴う最小限の性能によって決定される。
【0019】
増強されたピン止めは、微粒子欠陥の周囲に作り出される転位、元素置換により作り出される原子レベル欠陥、およびRE−123材料、例えば酸化物超電導体の結晶性粒子内における第二相により作り出されるナノメートールサイズの粒子またはナノドットを含めたピン止めセンターから生じうる。欠陥の特性により、選択的磁界配向角度での磁性束の改善されたピン止めを作り出しうる。理想的には、ピン止めは、等方性であり、そして磁界の全角度配向で改善されたフラックスピン止めを生じる。
【0020】
本発明は、ピン止めセンターを有する高度に配向された酸化物超電導性膜を得る有機金属(溶液基材の)蒸着(MOD)工程を使用する。前駆体溶液は、用途が広く、そして広範な組成および濃度を越えて変えられる可能性があるので、MOD工程は、ピン止めセンターを導入するための魅力的な系を表す。ナノメートールサイズの粒子および任意の原子置換が、以前に、ピン止めを作り出すために、超電導体中で使用されたが、このような中心が、どのようにRE−123についてのMOD工程のような「エックス−シチュ」工程外で導入されうるかは明らかでない。RE−123が、基板インターフェースで開始しつつ、前面で成長するので、第二相および異なる原子でさえ、成長工程の間に偏析されうる。
【0021】
さらに、酸化物超電導体膜に対する前駆体材料の加工の間に、膜中に形成する非超電導性相は、一般に、相当に大きな第二相粒子に粗粒化し、そして酸化物超電導体粒子から除外される。これらの大型の第二相粒子は、酸化物超電導体膜の臨界電流密度を明らかに減じ、そして磁界における酸化物超電導体膜におけるフラックスラインをピン止めする上で有益な効果はないことが予測される。酸化物超電導体薄膜を加工する最近利用可能な方法の多くは、非超電導体相の粗雑化の危険があることが予測される。
【0022】
本発明は、これらの加工上の問題を克服し、そしてMOD法を介して適切なピン止めセンターを達成する手段を提供する。本発明の1つまたは複数の実施態様により、加工条件は、10−100nm範囲にあるナノドットの形成を可能にし、そして酸化物超電導体粒子にそれらを含むことが認識される。1つまたは複数の実施態様では、II型超電導体でのフラックスライン、または渦巻きの正常なコアと最高に一致させることによって、最適なピン止めを提供するためのナノドットについての粒子サイズは、約50nmより小さいか、または約20nmより小さくさえある。本発明の1つまたは複数の実施態様では、酸化物超電導体層の全体的成長は、ナノドットの粗雑化を防止し、そして酸化物超電導体粒子からのそれらの排除を防止するのに十分に早い。
【0023】
酸化物超電導体粒子内の所望の粒子サイズおよび位置を維持するために、前駆体膜からの酸化物超電導体の成長速度は、約2−200Å/秒の範囲に、または約5−200Å/秒の範囲に、または10−200Å/秒の範囲にあるか、あるいは、約20Å/秒より大きい。非等価条件下で、迅速な成長を維持することによって、第二相粒子の粗雑化および酸化物超電導体粒子からのそれらの除外が減じられる。
【0024】
ピン止めセンターは、RE−123膜中のピン止めセンターの特性、組成、密度および配置にわたって制御することを可能にする溶液ベースの工程を使用して、超電導性薄膜に導入される。1つまたは複数の実施態様では、RE−123の形成のための前駆体成分、およびピン止めセンターの形成のための添加剤および/またはドーパント成分を含有する前駆体溶液を供給する。
【0025】
このような前駆体は、RE−123の中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)およびピン止め金属または金属酸化物を含有する膜を形成するために使用されうる。その後、中間体膜を、さらに加工して、1つまたは複数の酸化物超電導体粒子内に配置されるナノドットピン止めセンターを有するRE−123酸化物超電導体膜を形成しうる。このようなフラックス−ピン止めされた酸化物膜は、改善された臨界電流密度(例えば、自己磁界中77Kで、少なくとも約1MA/cm2)を示す。
【0026】
オキシフルオイド膜は、(1)BaF2、希土類酸化物またはフッ化物および/または遷移金属、遷移金属酸化物または遷移金属フッ化物の混合物、(2)RE−Ba−O−F相、希土類酸化物またはフッ化物および/または遷移金属酸化物またはフッ化物より構成される化合物の混合物より構成されるか、または(3)Ba−O−F相、希土類酸化物またはフッ化物および/または遷移金属酸化物またはフッ化物より構成される化合物の混合物としてRE−123酸化物超電導体膜に対する前駆体であるいずれかの膜とみなされる。
【0027】
前駆体成分としては、1つまたは複数の希土類元素、1つまたは複数のアルカリ土類金属および1つまたは複数の遷移金属の可溶性化合物が挙げられる。ここで使用される場合、希土類元素、アルカリ土類金属および遷移金属の「可溶性化合物」は、前駆体溶液中に含有される溶媒に溶解する能力のあるこれらの金属の化合物に該当する。このような化合物としては、例えば、これらの金属の塩(例えば、硝酸塩、アセテート、アルコキシド、ハライド、硫酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩)、酸化物および水酸化物が挙げられる。少なくとも1つの化合物は、トリフルオロアセテートのようなフッ素含有化合物である。
【0028】
一般に、希土類金属塩は、前駆体溶液中に含有される溶媒(類)に可溶性であり、そして中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を形成するために加工されるときに、希土類酸化物(類)(例えば、Y23)を形成するいずれかの希土類金属塩でありうる。希土類元素は、イットリウム、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホロミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムの群から選択されうる。特に、アルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウム、またはカルシウムである。一般に、アルカリ土類金属塩は、前駆体溶液中に含有される溶媒(類)中で可溶性であり、そして中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を形成するために加工される際に、アルカリ土類酸化物(類)(例えば、BaO2)を形成する前に、アルカリ土類ハライド化合物(例えば、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaI2)を形成するいずれかのアルカリ土類金属塩でありうる。一般に、遷移金属は、銅である。遷移金属塩は、前駆体溶液中に含有される溶媒(類)に可溶性であるべきである。本発明の1つまたは複数の実施態様では、希土類およびアルカリ土類元素は、希土類酸化物およびアルカリ土類フッ化物の代わりに、またはそれに加えて、金属または混合金属オキシフルオイドを形成しうる。
【0029】
本発明の1つまたは複数の実施態様によって、RE−123を形成するのに使用される化学量論的過剰の元素の添加により、またはナノメートールサイズの二次相として蒸着または核形成する他の元素の添加により、二次相ナノドットを、RE−123粒子に導入する。添加剤成分は、さらに加工してナノドットを形成しうる可溶性および不溶性金属成分を含む。ナノドットの形成に使用される金属化合物の「可溶性化合物」は、前駆体溶液中に含まれる溶媒中に溶解する能力のあるこれらの金属の化合物、例えばイットリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビニウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、スリウム、イッテルビウム、およびルテチウムのような希土類;カルシウム、バリウムおよびストロンチウムのようなアルカリ土類金属;スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよびジルコニウムのような遷移金属、セリウム、銀、アルミニウムおよびマグネシウムに該当する。このような化合物としては、例えば、これらの金属の塩(例えば、硝酸塩、酢酸塩、アルコキシド、ハライド、硫酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩)、酸化物および水酸化物が挙げられる。
【0030】
1つまたは複数の実施態様では、添加剤成分は、前駆体成分として、前駆体溶液中に含まれる化学量論的過剰の可溶性化合物を含みうる。例えば、可溶性イットリウム塩は、Y123を形成するために必要とされるものの過剰量で前駆体溶液中に含まれうる。過剰のイットリウムを、本発明の1つまたは複数の実施態様によって加工して、Y2BaCuO5(Y211)、Y2Cu25および/またはY23のようなイットリウム豊富な二次相ナノ粒子を形成し、そしてそれは、超電導性酸化物膜中に微粒子ピン止め部位として役割を果たす。典型的な粒子密度は、膜の立方ミクロン当たり約20−10,000粒子であるか、または膜の立方ミクロン当たり約100−10,000粒子であるか、または膜の立方ミクロン(μm3)当たり約1,000−10,000粒子である。1つまたは複数の実施態様では、粒子密度は、1,000粒子μm3より大きい。
【0031】
1つまたは複数の実施態様では、酸化物超電導体のもの以外の金属を有する添加剤成分は、前駆体溶液に含まれうる。例として、セリウム、ジルコニウム、銀、アルミニウムおよびマグネシウムの可溶性および不溶性化合物は、前駆体溶液中に含まれうる。添加剤成分を、本発明の1つまたは複数の実施態様によってさらに加工して、酸化物超電導体膜中でピン止め部位として役割を果たす単一または混合金属酸化物ナノドットを形成する。例として、過剰のバリウムおよびセリウム化合物を、前駆体溶液中の添加剤成分として使用し、そして加工して、BaCeO3のようなナノドットピン止め部位を形成する。添加剤成分は、典型的に、前駆体溶液の総金属の約1−20%を増す。典型的な原子過剰は、10−40%までの範囲にありうる。明らかに改善したフラックスピン止め特性を有する膜を、組合わせて、バリウムおよびセリウム(等電子量で)の〜20%過剰を使用して製造した。
【0032】
1つまたは複数の実施態様では、添加剤成分は、不溶性であり、そして分散したナノドットとして前駆体溶液中に含まれる。ナノドットは、最小限の塊状化で前駆体中に分散されるべきである。ナノドットを分散する方法としては、超音波処理、分散剤の添加、および当業界で知られる他の技術が挙げられる。本発明の1つまたは複数の実施態様では、ナノドットは、前駆体溶液の他の成分と反応性でありうる。例えば、セリア(CeO2)ナノ分散物は、前駆体溶液に含まれ、そしてバリウム成分と反応して、BaCeO3を形成する。結果として生じるナノ粒子またはナノドットは、前駆体溶液じゅうに均質に分配される。本発明の1つまたは複数の実施態様では、ナノドットは、前駆体溶液の他の成分に不活性、例えば、非反応性であり、そしてそれらは、前駆体溶液中に均一に分散される。ナノドット分散物は、安定な懸濁を維持し、その結果、粒子は、結果として生じるオキシフルオリド膜じゅうに均質に分配される。別の加工で、ナノドットは、膜の立方ミクロン当たり20−10,000粒子の密度を示す酸化物超電導体膜中にピン止めセンターとして組込まれる。
【0033】
本発明の1つまたは複数の実施態様により、RE−123粒子における原子レベル欠陥または元素置換は、Y123原子構造中の様々の希土類を混合させることによって達成される。希土類列のほとんどの元素(ランタンからルテニウムまで)は、超電導性遷移温度を実質的に変化させることなく、この原子構造に入ることが知られている;さらに、それらの異なる原子サイズは、ひずみ磁界から局所ピン止め点を作り出すか、またはオービタルエネルギーを変化させる。希土類のいくつかは、局所磁界モーメントを示し、そしてそれは、ピン止めに寄与する別の種類の局所混乱状態を作り出しうる。
【0034】
本発明の1つまたは複数の実施態様では、適切なドーパントにより123酸化物超電導体の1つまたは複数の元素の部分的置換により、ピン止め部位を、RE−123酸化物超電導体に導入する。希土類元素、アルカリ土類金属または遷移金属のいずれかを、添加剤として入れうる。酸化物構造への様々な陽イオンの存在は、ピン止め部位として役割を果たすストレスを導入する。1つまたは複数の実施態様では、Y123におけるイットリウムを、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、スリウム、イッテルビウム、またはルテチウムのような代替的希土類元素と部分的に置換する。ドーパント添加した123材料は、RE1およびRE2が、2つの異なる希土類元素を表すRE1/RE2−123であり得て、そして多量の異なるREを使用しうる。2つまたはそれより多くの希土類元素のいずれかの組合わせを使用しうる。50原子パーセントまでの置換は、本発明の1つまたは複数の実施態様で有用である。本発明の1つまたは複数の実施態様では、約20原子重量パーセントについての置換を使用しうる。RE−123で2つより多くの希土類を、使用し得て、そして例えば、組成物Nd−Eu−Gdは、改善されたフラックスピン止めのための大容量材料で一般に使用される。
【0035】
1つまたは複数の実施態様では、ドーパント添加された123の形成のためのドーパント成分を含有する前駆体溶液を提供する。ドーパント成分は、RE−123の金属を置換する希土類元素、アルカリ土類金属および/または遷移金属の可溶性化合物を含む。このような化合物としては、例えば、これらの金属の塩(例えば、硝酸塩、酢酸塩、アルコキシド、ヨウ化物塩、硫酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩)、酸化物および水酸化物が挙げられる。置換の程度は、前駆体溶液の組成物の適切な調節によって制御されうる。
【0036】
上の添加剤成分およびドーパント成分の組み合わせが、予測される。例として、前駆体溶液は、123超電導体の金属の部分的置換のための可溶性ドーパント成分、および二次相ナノ粒子またはナノドットの形成のための添加剤成分を含みうる。添加剤は、可溶性でありうるか、または分散されたナノ粒子でありうる。他の組合わせは、当業者に明らかである。
【0037】
前駆体溶液中に使用される溶媒または溶媒の組み合わせは、金属塩(例えば、金属トリフルオロアセテート(類))を溶解させる能力のあるいずれかの溶媒または溶媒の組合わせを含みうる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールを含めたアルコールが挙げられる。
【0038】
所定の実施態様では、前駆体組成物は、比較的少量の遊離酸を有する。水溶液中では、これは、比較的中性のpH(例えば、強力な酸性でも強力な塩基性でもない)を示す前駆体組成物に応答しうる。前駆体組成物の総遊離酸濃度は、約10-3モル未満(または約10-5モルまたは約10-7モル未満)でありうる。前駆体組成物中に含まれうる遊離酸の例としては、トリフルオロ酢酸、カルボン酸、酢酸、硝酸、硫酸、ヨウ化物の酸、臭化物の酸および硫酸が挙げられる。前駆体組成物が水を含有する場合、前駆体組成物は、少なくとも約3(または少なくとも約5または約7)のpHを示しうる。いくつかの実施態様では、前駆体組成物は、比較的低い水含有率(例えば、約50体積パーセント未満の水、約35体積パーセント未満の水、または約25体積パーセント未満の水)を示しうる。
【0039】
金属塩溶液が、トリフルオロ酢酸イオンおよびアルカリ土類金属陽イオン(例えば、バリウム)を含有する実施態様では、トリフルオロ酢酸イオンの総量は、金属塩溶液中に含まれるフッ素(例えば、コリフルオロ酢酸の形態で)対、金属塩溶液中に含まれるアルカリ土類金属(例えば、バリウムイオン)のモル比は、少なくとも約2:1(例えば、約2:1から約18.5:1まで、または約2:1から約10:1まで)であるように選択されうる。
【0040】
代替的実施態様では、前駆体溶液は、BaCO3、Y3(CO33・3H2OおよびCu(OH)2CO3の粉末から製造される金属トリフルオロアセテート、および当業者に知られる方法を使用して合わせ、そして反応させたいずれかの添加剤および/またはドーパント成分を含有する有機溶液から形成される。例えば、Y:Cu粉末は、メチルアルコール中の20−30%(5.5−6.0M)の間の過剰トリフルオロ酢酸と、2:1:3比で合わせ、そしてその後、灌流(例えば、およそ4から10時間)させて、銅含有量に基づいて、実質的に0.94Mの溶液を生成しうる。添加剤および/またはドーパント成分を、膜の立方ミクロン当たり約20−10000の欠陥密度を得るために適切な量で添加する。
【0041】
基礎の層上に(例えば、この上に蒸着される1つまたは複数の緩衝層を用いたアロイ層を有する基板のような基板の表面上に)超電導性組成物を蒸着させる方法としては、回転被覆、浸漬被覆、スロット被覆、ウエブ被覆および当業者に知られた他の技術が挙げられる。膜厚は、変化しうるが、しかし、特に、0.2−3.0μm、さらに特に、約1−2μmの範囲内にある。回転被覆が使用されるいくつかの実施態様では、組成物を、基礎層上に蒸着させ、そして回転速度は、約0.5秒で分当たり約ゼロ回(RPM)から約2,000RPMまでの勾配をなす。この回転速度を、約5秒間維持し、そしてその後、回転速度を、約0.5秒で約4,000RPMまでの勾配をなす。この回転速度は、約60秒間維持し、そしてその後、回転速度を、約ゼロRPMに減少させる。当業者に知られているように、他の回転被覆条件も使用しうる。得られた材料を、酸素および水を含有する気体環境で炉で反応(分解)させて、フッ化バリウムおよび/または他の適切な材料(例えば、CuOおよび/またはY23)を形成する。長尺ワイヤーについては、スロットダイ被覆または噴霧被覆のようなウエブ被覆技術が好ましい。
【0042】
その後、組成物を加熱する。一般に、この段階は、組成物から過剰の溶媒(例えば、水およびメタノール)を除去し、そして金属有機分子を、所望の超電導体材料の1つまたは複数のオキシフルオリド中間体に分解するために行われる。それも、添加剤および/またはドーパント成分を分解して、1つまたは複数の金属、酸化物またはオキシフルオリド中間体を形成しうる。
【0043】
典型的には、この段階における当初の温度は、約室温であり、そして最終温度は、約190℃から約210℃まで、好ましくは、約200℃までの温度である。好ましくは、この段階は、分当たり少なくとも約5℃の温度勾配、さらに好ましくは少なくとも分当たり約10℃の温度勾配、そして最も好ましくは、分当たり少なくとも約15℃の温度勾配を使用して行われる。この段階の間に、公称の気体環境での水蒸気の分圧は、好ましくは、約5トールから約50トールまでに、さらに好ましくは約5トールから約30トールまでに、そして最も好ましくは、約20トールから約30トールまでに維持される。公称の気体環境での酸素の分圧は、約0.1トールから約760トールまでに、そして好ましくは約730トールから約740トールまでに維持される。
【0044】
その後、加熱を、分当たり約0.05℃から分当たり約5℃まで(例えば、分当たり約0.5℃から分当たり約1℃まで)の温度勾配を使用して、約200℃から約290℃の温度に継続する。好ましくは、この加熱段階の間の気体環境は、サンプルが、当初の温度から、約190℃から約215℃までに加熱されるときに使用される公称の気体環境と実質的に同じである。
【0045】
加熱は、さらに、約650℃の温度に、またはさらに好ましくは、約400℃の温度に、継続して、オキシフルオリド中間体を形成する。この段階は、好ましくは、分当たり少なくとも約2℃、さらに好ましくは分当たり少なくとも約3℃、そして最も好ましくは、分当たり少なくとも約5℃の温度勾配を使用して行われる。好ましくは、この加熱段階の間の気体環境は、サンプルが、当初の温度から、約190℃から約215℃までに加熱されるときに使用される公称の気体環境と実質的に同じである。
【0046】
代替的実施態様では、約5トールから約50トール水蒸気までの水蒸気圧(例えば、約5トールから約30トール水蒸気まで、または約10トールから約25トール水蒸気まで)で、当初の温度(例えば、室温)から、約190℃から約215℃までの温度まで(例えば、約210℃)、乾式溶液を加熱することによって、フッ化バリウムを形成する。酸素の公称の分圧は、例えば、約0.1トールから約760トールまででありうる。これらの実施態様では、その後、加熱を、約5トールから約50トール水蒸気まで(例えば、約5トールから約30トール水蒸気まで、または約10トールから約25トール水蒸気まで)の水上気圧で、例えば、約220℃から約290℃まで(例えば、約220℃)の温度まで継続する。酸素の公称の分圧は、例えば、約0.1トールから約760トールまででありうる。これを、続いて、約5トールから約50トール水蒸気まで(例えば、約5トールから約30トール水蒸気、または約10トールから約25トール水蒸気まで)の水蒸気圧で、分当たり少なくとも約2℃の速度で(例えば、分当たり少なくとも約3℃、または分当たり少なくとも約5℃)約400℃まで加熱して、フッ化バリウムを形成する。酸素の公称の分圧は、例えば、約0.1トールから約760トールまででありうる。
【0047】
他の実施態様では、乾式溶液を加熱して、フッ化バリウムを形成することは、約室温より大きな温度までの第一の温度勾配の後に、温度が、比較的長い期間(例えば、約1分より多く、約5分より多く、約30分より多く、約1時間より多く、約2時間より多く、約4時間より多く)、実質的に一定(例えば、約10℃以内、約5℃以内、約2℃以内、約1℃以内で一定)に保持される1つまたは複数の段階を含む。これらの実施態様では、金属塩溶液を加熱することは、比較的長い期間(例えば、約1分より多く、約5分より多く、約30分より多く、約1時間より多く、約2時間より多く、約4時間より多く)、温度を実質的に一定に維持しつつ(例えば、約10℃以内、約5℃以内、約2℃以内、約1℃以内で一定)、1つより多くの気体環境(例えば、比較的高い水蒸気圧を示す気体環境、そして比較的低い水蒸気圧を示す気体環境)を使用することを包含しうる。例として、高水蒸気圧環境では、水蒸気圧は、約5トールから約40トールまで(例えば、約32トールのような約25トールから約38トール)でありうる。低水蒸気圧環境は、約1トールより少ない(例えば、約0.1トールより少ない、約10ミリトールより少なく、約5ミリトール)水蒸気圧を示しうる。
【0048】
ある種の実施態様では、乾式溶液を加熱して、フッ化バリウムを形成することは、予備加熱炉(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、多くとも約300℃、多くとも約250℃、約200℃)に被覆サンプルを入れることを含みうる。炉における気体環境は、例えば、約760トールの総気体圧力、水蒸気の予め決定された分圧(例えば、少なくとも約10トール、少なくとも約15トール、多くとも約25トール、多くとも約20トール、約17トール)を示し得て、そして平衡は、分子酸素である。被覆サンプルが、炉温度に達した後、炉温度を(例えば、少なくとも約225℃に、少なくとも約240℃に、多くとも約275℃に、多くとも約260℃に、約250℃に)、予め決定された温度勾配速度(例えば、分当たり少なくとも約0.5℃、分当たり少なくとも約0.75℃、分当たり多くとも約2℃、分当たり多くとも約1.5℃、分当たり約1℃)で増大させうる。第一の加熱段階で使用したのと同じ公称気体環境で、この段階を行いうる。その後、炉の温度を、予め決定された温度勾配速度(例えば、分当たり少なくとも約5℃、分当たり少なくとも約8℃、分当たり多くとも約20℃、分当たり多くとも約12℃、分当たり約10℃)で、さらに増大(例えば、少なくとも約350℃まで、少なくとも約375℃まで、多くとも約450℃、多くとも約425℃まで、約450℃)させうる。この段階は、第一の加熱段階で使用されたのと同じ公称気体環境で行われうる。
【0049】
いくつかの実施態様では、超電導体材料の製造は、金属塩溶液をスロット被覆する(例えば、Gd23、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)およびCeO2のような連続的にそこに蒸着されたエピタキシャル緩衝および/または封止層を有する構造化ニッケルテープから形成されるテープのようなテープ上に)ことを包含する。被覆金属塩溶液を、H2Oを含有する雰囲気(例えば、約5トールH2Oから約15トールH2Oまで、約9トールH2Oから約13トールH2Oまで、約11トールH2O)で蒸着させうる。雰囲気の平衡は、不活性気体(例えば、窒素)でありうる。膜蒸着中の総圧力は、例えば、約760トールでありうる。例えば、温度勾配を示す管状炉(例えば、約2.5インチ(6.3センチメートール)の直径を示す管状炉)じゅうを被覆テープを移動することによって、膜を分解しうる。炉中の勾配の個々の温度および気体雰囲気、並びに、各勾配を通してのサンプルの輸送速度は、膜の加工法が、上に特筆される方法によるのと実質的に同じであるように選択されうる。
【0050】
金属塩溶液の前述の処理は、構成要素金属酸化物および金属フッ化物は、膜じゅうに均質に分配されるオキシフルオリド中間体膜を生じ得て、そしてそれは、ピン止め欠陥のものを含む。好ましくは、前駆体は、比較的低い欠陥密度を示し、そして基本的に中間体厚みを通してクラックがない。
【0051】
フッ化バリウム形成についての溶液化学が開示された一方で、他の方法も使用されうる。例えば、固形状態、または半固形状態の前駆体材料は、分散物の形態で蒸着される。これらの前駆体組成物は、例えば、最終YBCO超電導性層でBaCO3形成の実質的緩和を可能にする一方で、膜核形成および成長の制御も可能にする。
【0052】
その後、超電導体中間体膜を、加熱して、所望の超電導体層を形成しうる。理論に結びつけられることを望まずに、高温度で、フッ化バリウムは、反応体ガス(例えば、水を含む反応体ガス)と可逆的に反応して、
方程式:BaF2+H2O ・BaO+2HF
によるBaO超電導体中間体を形成しうることが考えられる。これらの高温で、BaO超電導体中間体は、Y23およびCuOと反応して、
方程式:2BaO+1/2Y23+CuO ・YBa2Cu3X
によりYBCOを形成しうることがさらに考えられる。
【0053】
典型的には、この段階は、約室温から、約700℃から約825℃までの温度まで、好ましくは約740℃から約800℃までの温度まで、そしてさらに好ましくは、約750℃から約790℃までの温度まで、分当たりおよそ25℃より大きな温度勾配で、好ましくは、分当たりおよそ100℃より大きな温度勾配で、そしてさらに好ましくは、分当たりおよそ200℃より大きな温度勾配で加熱することによって行われる。この段階は、中間体オキシフルオリド膜を形成するために使用される約400−650℃の最終温度からも出発しうる。この段階の間に、加工ガスを、膜に気体様反応体を供給し、そして膜から気体様反応産物を除去するために膜表面上に流す。この段階の間の公称気体環境は、約0.1トールから約760トールまでの総圧力を示し、そして約0.09トールから約50トール酸素、および約0.01トールから約150トール水蒸気、および約0トールから約750トールの不活性気体(窒素またはアルゴン)より構成される。さらに好ましくは、公称気体環境は、約0.15トールから約5トールまでの総圧力を示し、そして約0.1トールから約1トール酸素、および約0.05トールから約4トール水蒸気より構成される。
【0054】
その後、膜は、少なくとも約5分から約120分までの時間、好ましくは少なくとも約15分から約60分までの時間、そしてさらに好ましくは、少なくとも約15分から約30分までの時間、約700℃−825℃の温度で、好ましくは約740℃から約800℃までの温度に、そしてさらに好ましくは約750℃から約790℃までの温度に保持される。この段階の間に、加工ガスを、膜に気体様反応体を供給し、そして膜から気体様反応産物を除去するために膜表面上に流す。この段階の間の公称気体環境は、約0.1トールから約760トールまでの総圧力を示し、そして約0.09トールから約50トール酸素、および約0.01トールから約150トール水蒸気、および約0トールから約750トールの不活性気体(窒素またはアルゴン)より構成される。さらに好ましくは、公称気体環境は、約0.15トールから約5トールまでの総圧力を示し、そして約0.1トールから約1トール酸素、および約0.05トールから約4トール水蒸気より構成される。
【0055】
当業界に精通している者は、気体様反応体の圧力および加工温度は、RE123膜で使用される希土類金属およびアルカリ土類金属の確認に用いた場合のように変化しうることを認識する。
【0056】
その後、膜を、公称気体環境内で、約0.05トールから約150トールまで、好ましくは約0.lトールから約0.5トールまで、そしてさらに好ましくは約0.1トールから約0.2トールまでの酸素圧で、室温まで冷却する。
【0057】
標的加熱温度に対する高速勾配速度および加熱、および気体様反応体(例えば、OZおよびH2O)の制御供給、および気体様反応産物のリモーカル(remocal)を含めたこれらの上記条件は、Y123の高速形成および第二相を生じる。これらの反応時間は、高速核形成、およびY123粒子内の小型第二相粒子(ナノドット)の封入を与える中間体膜厚みを通しての酸化物超電導体の成長を生じる。高速Y123形成を与える反応条件は、ナノドットの粗粒子化の見込みを減少させる。
【0058】
代替的実施態様では、被覆材を、湿潤還元窒素−酸素ガス混合物(例えば、約0.5%から約5%までのの酸素を含む組成物を有する)中で、約860℃より少ない(例えば、約810℃より少ない)温度に、約1時間加熱する。被覆材を、約5から約25分間、約860℃から約950℃までの温度までさらに加熱しうる。被覆材を、続いて、少なくとも約8時間、乾燥酸素で、約400℃から約500℃までの温度に加熱する。その後、被覆材を、静止乾燥酸素中で室温まで冷却させうる。
【0059】
反応体超電導体層は、十分に配列される(例えば、平面で二軸に構造化されるか、または平面以外のc軸、および平面で二軸に構造化される)。実施態様では、大容量の超電導体材料を、二軸で構造化される。超電導体層は、少なくとも約1マイクロメートール厚でありうる(例えば、少なくとも約2マイクロメートール厚、少なくとも約3マイクロメートール厚、少なくとも約4マイクロメートール厚、少なくとも約5マイクロメートール厚)。
【0060】
RE−123の総体的化学量論的組成物を用いた混合希土類の場合には、この処理の結果は、膜の厚さを通した希土類の原子論的に任意の混合物を有するRE−123膜である。この任意構造は、歪および原子エネルギー混乱状態を引き起こし、そしてそれは、超電導体中に電磁フラックスをピン止めできる。化学量論的RE−123組成物に対する添加剤の場合には、この処理の結果は、ナノドット二次相またはナノドット粒子を有するRE−123膜であり、そしてそれは、超電導体中に磁束をピン止めできる。ナノドットが、大まかに球形であり、そして5nmから100nmまでの最大寸法を示すことが観察される例は、図6に示される。小型粒子は、この顕微鏡写真で現れるが、しかし解像されないようである。続く実施例で記述されるとおり、処理のパラメーターは、最適なピン止め特性を達成するために選択される。
【0061】
前駆体組成物は、超電導体層が形成される基礎層として使用されうる広範な材料を使用して、多層超電導体を製造するために使用されうる。
【0062】
RE−123材料の薄膜、例えば超電導性RE−123が、多層または総体的ワイヤーアーキテクチャーにおいて他の材料と化学的および構造的適合性を示すことが、一般的に好ましい。「化学的適合性」によって、RE−123材料が、代替層の間、または基板との特性破壊の化学的相互作用を受けないことが意図される。「構造的適合性」によって、RE−123材料が、代替層の間、または基板との実質的に類似の格子構造を示すことが意図される。周知緩衝層は、化学的および構造的適合性を確保するために、基板とRE−123材料の間に使用されうる。
【0063】
図8は、表面5110を有する基板5100、緩衝層5200、および超電導体層5300を有する超電導体物体5000の断面図である。
【0064】
好ましくは、表面5110は、相当に十分境界を明確にされた結晶写真配向を示す。例えば、表面5110は、二軸構造化表面でありうる(例えば、(113)[211]表面)または立方構造化構造(例えば、(100)[011]表面または(100)[001]表面)でありうる。好ましくは、表面110のX線解析極図におけるピークは、約20°未満(例えば、約15°未満、約10°未満、または約5°から約10°まで)のFWHMを示す。
【0065】
表面5110は、例えば、巻取りおよびアニーリングによって製造されうる。表面5110は、例えば、任意に配向された多晶性表面上に二軸構造化表面を形成するために、イオンビーム支援蒸着、斜面基板蒸着および当業界で知られている他の真空技術のような真空工程を使用しても製造されうる。所定の実施態様(例えば、イオンビーム支援蒸着を使用する場合)、基板5100の表面5110は、構成されないことが必要である(例えば、表面5110は、任意に配向された多晶性でありうるか、または表面5110は、不定形でありうる)。
【0066】
基板5100は、緩衝層スタックおよび/または超電導体材料の層を支持する能力のあるあらゆる材料から形成されうる。基板5100として使用されうる基板材料の例は、例えば、ニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデンおよび/またはそれらのアロイのような金属および/またはアロイが挙げられる。いくつかの実施態様では、基板5100は、スーパーアロイから形成されうる。所定の実施態様では、基板5100は、比較的大きな表面積を有する対象(例えば、テープまたはウエーファ)の形態にありうる。これらの実施態様では、基板5100は、好ましくは、比較的柔軟性のある材料から形成される。
【0067】
これらの実施態様のいくつかでは、基板は、以下の金属:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、タングステン、金および亜鉛の内の2つを含有する二成分アロイである。例えば、二成分アロイは、ニッケルおよびクロム(例えば、ニッケルおよび多くとも20原子パーセントのクロム、ニッケルおよび約5から約18原子パーセントまでのクロム、またはニッケルおよび約10から約15原子パーセントまでのクロム)から形成されうる。別の例としては、二成分アロイは、ニッケルおよび銅(例えば、銅および約5から約45原子パーセントまでのニッケル、銅および約10から約40原子パーセントのニッケル、または銅および約25から約35原子パーセントのニッケル)から形成されうる。別の例としては、二成分アロイは、ニッケルおよびタングステン(例えば、約1原子パーセントのタングステンから約20原子パーセントのタングステンまで、約2原子パーセントのタングステンから約10原子パーセントのタングステンまで、約3原子パーセントのタングステンから約7原子パーセントのタングステンまで、約5原子パーセントのタングステン)を含有しうる。二成分アロイは、さらに、比較的少量の不純物(例えば、約0.1原子パーセント未満の不純物、約0.01原子パーセント未満の不純物、または約0.005原子パーセント未満の不純物)を含みうる。
【0068】
これらの実施態様のいくつかでは、基板は、2個より多くの金属(例えば、三成分アロイまたは四成分アロイ)を含有する。これらの実施態様のいくつかでは、アロイは、1つまたは複数の酸化物フォーマー(例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Ga、Ge、Zr、Hf、Y、Si、Pr、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Th、Er、Tm、Be、Ce、Nd、Sm、Ybおよび/またはLa、そしてAlは、好ましい酸化物フォーマーである)、並びに以下の金属:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、タングステン、金および亜鉛の内の2つを含有しうる。これらの実施態様の内のいくつかでは、アロイは、以下の金属:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、タングステン、金および亜鉛の内の2つを含有でき、そして前述の酸化物フォーマーのいずれかを実質的に欠いている可能性がある。
【0069】
アロイが、酸化物フォーマーを含有する実施態様では、アロイは、少なくとも約0.5原子パーセント酸化物フォーマー(例えば、少なくとも約1原子パーセントの酸化物フォーマー、または少なくとも約2原子パーセントの酸化物フォーマー)および多くとも約25原子パーセント酸化物フォーマー(例えば、多くとも約10原子パーセント酸化物フォーマー、または多くとも約4原子パーセントの酸化物フォーマー)を含有しうる。例えば、アロイは、酸化物フォーマー(例えば、少なくとも約0.5のアルミニウム)、約25原子パーセントから約55原子パーセントまでのニッケル(例えば、約35原子パーセントから約55原子パーセントまでのニッケル、または約40原子パーセントから約55原子パーセントまでのニッケルを含み得て、そして銅を平衡としている。別の例として、アロイは、酸化物フォーマー(例えば、少なくとも約0.5原子のアルミニウム)、約5原子パーセントから約20原子パーセントまでのクロム(例えば、約10原子パーセントから約18原子パーセントまでのクロム、または約10原子パーセントから約15原子パーセントまでのクロム)を含み得て、そして、ニッケルを平衡としている。アロイは、相当に少量の別の金属(例えば、約0.1原子パーセント未満の別の金属、約0.01原子パーセント未満の別の金属、または約0.005原子パーセント未満の別の金属)を含みうる。
【0070】
アロイから形成される基板は、例えば、粉末形態にある成分を合わせ、溶融し、そして冷却することにより、または例えば、粉末構成成分を、固形状態で一緒に拡散させることによって、製造されうる。その後、変形構造化(例えば、アニーリングおよび巻取り、ぶら下げ、押出および/または引抜)して、構造化表面(例えば、二軸で構造化または立方体構造化)を形成することにより、アロイを形成しうる。代わりに、アロイ構成成分は、ジェル状ロール配置に詰め、そしてその後、変形構造化されうる。いくつかの実施態様では、比較的低い係数の熱膨張を示す材料(例えば、Nb、Mo、Ta、V、Cr、Zr、Pd、Sb、NbTi;NiAlまたはNi3Alのような金属間化合物、またはそれらの混合物)を、ロッドで成形し、そして変形構造化の前にアロイに組込みうる。
【0071】
いくつかの実施態様では、表面5110での安定な酸化物形成は、第一のエピタキシャル(例えば、緩衝材)層が、二軸で構造化されたアロイ表面上に形成されるまで、基板の表面上に蒸着される中間体層を使用して、移動されうる。本発明に使用するのに適した中間体層は、PO2によって樹立されるような条件、およびエピタキシャル緩衝層膜の当初の成長のために必要とされる温度にさらされたときに表面酸化物を形成しないエピタキシャル金属またはアロイ層のものが挙げられる。さらに、緩衝層は、基板素子が、エピタキシャル層の当初の成長の間に、中間体層の表面を移動し、そして酸化物を形成することを防止する防御壁として作用する。このような中間体層がない時には、基板上の1つまたは複数の素子は、例えば、この酸化物層における構成の欠如により、エピタキシャル層の蒸着を明らかに遅らせる可能性がある基板表面上に熱運動的に安定な酸化物(類)を形成することが予想される。
【0072】
これらの実施態様のいくつかで、中間体層は、まったく一過性である。ここで使用される場合「一過性」は、エピタキシャル膜の当初の核形成および成長に続く、二軸で構造化される基板に、または基板と共に全体的にまたは部分的に組込まれる中間体層に該当する。これらの環境下でさえ、中間体層および二軸に構造化された基板は、蒸着膜のエピタキシャル特性が確立されるまで、固有なままである。一過性中間体層の使用は、中間体層がある種の望ましくない特性を保持する、例えば中間体層がニッケルのような磁性体である場合好まれうる。
【0073】
典型的な中間体層は、ニッケル、金、銀、パラジウム、およびそれのアロイが挙げられる。別の金属またはアロイは、ニッケルおよび/または銅のアロイを含みうる。中間体そう上に蒸着されるエピタキシャル膜または層は、金属酸化物、カルコゲニド、ハライド、および窒化物を含みうる。いくつかの実施態様では、中間体金属層は、エピタキシャル膜蒸着条件下で酸化しない。
【0074】
蒸着される中間体層は、当初の緩衝層構造の核形成および成長が、エピタキシャル層を確立させる前に、完全には組込まれないか、または基板に完全に分散しないことに注意すべきである。これは、基板アロイにおける拡散常数、実際のエピタキシャル緩衝層成長条件下での酸化に対する熱運動的安定性、およびエピタキシャル層との格子適合のような適切な特質について金属(またはアロイ)を選択した後、蒸着金属層の厚みは、エピタキシャル蒸着条件、特に温度に適合されるべきである。
【0075】
中間体金属層の蒸着は、蒸散またはスパッタリングのような真空プロセスで、またはエレクトロポレーション(電極を用いたか、または用いない)のような電気化学的手段により行われうる。これらの蒸着中間体金属層は、蒸着(蒸着の間の基板温度によって)後、エピタキシャルであっても、なくともよいが、しかしエピタキシャル配向は、連続して、後蒸着加熱処理の間に得られうる。
【0076】
所定の実施態様では、硫黄は、中間体層の表面上に形成されうる。硫黄は、例えば、中間体層を、ある時間(例えば、約10秒から約1時間まで、約1分から約30分まで、約5分から約15分まで)、硫黄(例えば、H2S、タンタル箔または銀箔)、および水素(例えば、水素、または5%水素/アルゴンガス混合物のような水素と不活性ガスとの混合物)の源を含有する気体環境にさらすことによって、中間体層の表面に形成されうる。これは、高温で(例えば、約450℃から約1100℃まで、約600℃から約900℃まで、850℃で)行われうる。水素(または水素/不活性ガス混合物)の圧力は、比較的低い(例えば、約1トール未満、約1×10-3トール未満、約1×10-6トール未満)または比較的高い(例えば、約1トールより大きい、約100トールより大きい、約760トールより大きい)可能性がある。
【0077】
理論に結びつけられることを望まずに、構造化基板表面を、これらの条件下で硫黄の源にさらすことが、構造化基板表面上に硫黄の超構造(例えば、ac(2×2)超構造)の形成を生じることが考えられる。超構造が、中間体層の表面を安定化(例えば、化学的におよび/または物理的に安定化)させるのに有効でありうる。
【0078】
硫黄超構造を形成する1つのアプローチが記述される一方で、このような超構造を形成する他の方法も使用しうる。例えば、硫黄超構造(例えば、Sc(2×2))は、適切な気体環境で適切な温度に加熱することによって、中間体層の表面に適切な有機溶液を使用することによって形成されうる。
【0079】
さらに、中間体層の表面上での硫黄超構造の形成が記述された一方で、他の超構造も、表面を安定化(例えば、化学的におよび/または物理的に安定化)させるのに有効でありうることが考えられる。例えば、表面に蒸着した酸素超構造、窒素超構造、炭素超構造、カリウム超構造、セシウム超構造、リチウム超構造、またはセレニウム超構造は、表面の安定性を増強するのに有効でありうることが考えられる。
【0080】
いくつかの実施態様では、緩衝層は、イオンビーム支援蒸着(IBAD)を使用して形成されうる。この技術では、例えば、電子ビーム蒸散、スパッタリング蒸着、またはパルス波レーザー蒸着を使用して緩衝層材料を、蒸散させる一方で、イオンビーム(例えば、アルゴンイオンビーム)は、蒸散緩衝層材料が蒸着される基板の平滑な不定形表面に向けられる。
【0081】
例えば、緩衝層は、基板の平滑で不定形な表面(例えば、約100オングストローム未満の二乗平均粗さを示す表面)上に岩塩様構造(例えば、MgOを含めた酸化物またはニトリドのような岩塩構造を有する材料)を有する緩衝層材料を蒸散させることによって、イオンビーム支援蒸着によって形成され得て、その結果、緩衝層材料は、平面内および平面外の両方に、実質的配列(例えば、約13°またはそれ未満)を有する表面を有する。
【0082】
緩衝層材料の蒸着の間に使用される条件は、例えば、約0℃から約750℃まで(例えば、約0℃から約400℃まで、約室温から約750℃まで、約室温から約400℃まで)の基板温度、秒当たり約1.0オングストロームから秒当たり約4.4オングストロームまでの蒸着速度、約200eVから約1200eVまでのイオンエネルギー、および/または平方センチメートール当たり約110マイクロアンペアーから、平方センチメートール当たり約120マイクロアンペアーまでのイオンフラックスを含みうる。
【0083】
いくつかの実施態様では、IBADを使用するとき、基板は、様々な材料(例えば、Si34)から形成される平滑な不定形表面を示す多晶質、非不定形基本構造を有する材料(例えば、ニッケルアロイのような金属アロイ)から成形される。
【0084】
所定の実施態様では、複数の緩衝層は、当初のIBAD表面上でのエピタキシャル成長によって蒸着されうる。各緩衝層は、平面内および平面外の両方に、実質的配列(例えば、約13°またはそれ未満)を示しうる。
【0085】
緩衝材料は、例えば、S.S.Shoupら、J.Am.Cer.Soc.81巻、3019頁;D.Beachら、Mat.Res.Soc.Symp.Proc.495巻、263頁(1988年);M.Paranthamanら、Superconductor Sci.Tech.12巻、319頁(1999年);D.J.Leeら、Japanese J.Appl.Phys.38巻、L178頁(1999年)およびM.W.Rupichら、I.E.E.E.Trans.on Appl.Supercon.9巻、1527頁に開示されるような金属有機蒸着を含めた溶液相技術を使用して製造されうる。所定の実施態様では、溶液被覆プロセスは、構造化基板上の酸化物層のいずれかの内の1つまたは組合わせの蒸着のために使用されうる;しかし、それらは、構造化金属基板上の当初(種)層の蒸着に特に使用可能でありうる。種層の役割は、基板に関して酸化雰囲気で行われるときに(例えば、酸化物標的からのイットリア安定化ジルコニアの電磁スパッタ蒸着)次の酸化物層の蒸着の間の酸化からの基板の保護;および2)連続酸化物層の成長についてのエピタキシャルテンプレートを提供することである。これらの要件に適合するために、種層は、金属基板の全表面上にエピタキシーに成長し、そして連続エピタキシャル酸化物層の蒸着を緩衝する可能性のあるあらゆる混入物を含まないべきである。
【0086】
酸化物緩衝層の形成は、基礎基板層の湿潤化を促進するように行われうる。したがって、特定の実施態様では、金属酸化物層の形成は、炭素混入のレベルが、金属アルコキシド前駆体を使用した他の既知方法よりはるかに減少されうる金属アルコキシド前駆体(例えば、「ゾルゲル」前駆体)を使用して行うことができる。
【0087】
酸化物層の下にある基板が、酸化物層を作るために使用される金属塩溶液によって不十分に覆われている場合、それにより、酸化物層は、基板に関して酸化雰囲気を行うときに連続酸化物層の蒸着の間に酸化から基板の所望の保護を提供せず、そして連続層のエピタキシャル成長にとって完全な鋳型を提供しない。ゾルゲル膜を加熱し、そしてそれによって、前駆体を基板粒子境界領域に流させることによって、完全な被覆が生じうる。加熱は、例えば、約80℃から約320℃まで、例えば、約100℃から約300℃まで、または約100℃から約200℃までの比較的低い温度でありうる。このような温度を、約1から約60分まで、例えば、約2から約45分まで、または約15から約45分までに維持しうる。加熱段階は、短時間、高温を使用しても行うことができ、例えば、膜を、300℃の温度で、2分以内に加工しうる。
【0088】
この加熱段階は、ゾルゲル膜から過剰の溶媒の乾燥の後、または同時発生的に行われうる。しかし、それは、膜の分解の前に行われるべきである。
【0089】
還元環境(例えば、4%H2−Ar)での従来の酸化物膜製造に付随する炭素混入は、膜の有機成分の不完全な除去の結果と考えられる。酸化物層内または付近の炭素含有混入物CxyおよびCabcの存在は、それらが、連続酸化物層のエピタキシャル蒸着を変えうるので、決定的である。さらに、膜に埋設される捕捉された炭素含有混入物を、連続酸化物層についての加工段階の間に酸化できそうであり、そしてそれは、酸化雰囲気を利用できる。炭素含有混入物の酸化は、CO2形成、および膜の連続発泡、および膜の可能性のある薄片剥離、または複合材構造の他の欠陥原因となりうる。したがって、酸化物層が形成された後にのみ、金属アルコキシド分解から生じる炭素含有混入物を酸化させるのは望ましくない。好ましくは、分解が起こったときに、炭素含有混入物を酸化する(したがって、CO2として膜構造から除去する)。さらに、膜表面上または周辺に炭素含有種の存在は、連続酸化物層のエピタキシャル成長を阻害できる。
【0090】
特定の実施態様によって、金属基板または緩衝層を被覆した後、金属塩溶液を、空気乾燥させ、そしてその後、当初の分解段階で加熱できる。代わりに、金属塩溶液を、金属基板に関して還元される雰囲気下で、当初の分解段階で直接的に加熱できる。いったん酸化物層が、所望のエピタキシャル配向で金属基板上で最初に核形成すると、加工気体の酸素濃度は、例えば、水蒸気または酸素を添加することによって、増大される。核形成段階は、典型的条件下起こるのに約5分から約30分までを必要とする。
【0091】
所定の実施態様では、エピタキシャル緩衝層を、低真空蒸気蒸着法(例えば、少なくとも約1×10-3トールの圧力で行われる方法)を使用して形成できる。その方法は、緩衝層材料の比較的高い速度および/または焦点気体ビームを使用してエピタキシャル層を形成することを含まれうる。
【0092】
気体ビームにおける緩衝層材料は、秒当たり約1メートールより大きな(例えば、秒当たり約10メートールより大きな、または秒当たり約100メートールより大きな)速度を示しうる。ビーム中の緩衝層材料の少なくとも50%は、標的表面に付随しうる(例えば、ビームにおける緩衝層材料の少なくとも約75%は、標的表面に付随しうるか、またはビームにおける緩衝層材料の少なくとも約90%は、標的表面に付随しうる)。
【0093】
その方法は、標的表面(例えば、基板表面または緩衝層表面)を、低真空環境に置くこと、および標的表面を、別の方法と同一の条件下で高真空環境(例えば、約1×10-4トール未満のような約1×10-3トール未満)で標的表面上に所望の材料のエピタキシャル層を形成するための閾値温度より大きい温度に加熱することを含みうる。緩衝層材料および都合のより不活性担体気体を含有する気体ビームを、秒当たり少なくとも約1メートールの速度で標的表面に向ける。調整気体を、低真空環境に供給する。調整気体は、気体ビームに含まれうるか、または調整気体を、様々な手段(例えば、環境への漏れ)で低真空環境に導入しうる。調整気体は、標的表面に存在する種(例えば、混入物)と反応して、エピタキシャル緩衝層の核形成を促進しうる種を除去できる。
【0094】
エピタキシャル緩衝層を、高真空(例えば、多くとも約1×10-4トール)での物理的蒸気蒸着を使用してエピタキシャル層を成長するために使用される温度より下の表面温度で、低真空(例えば、少なくとも約1×10-3トール、少なくとも約0.1トール、または少なくとも約1トール)を使用して標的表面上で成長させうる。標的表面の温度が、例えば、約25℃から約800℃まで(例えば、約500℃から約800℃まで、または約500℃から約650℃まで)でありうる。
【0095】
エピタキシャル層を、例えば、秒当たり少なくとも約50オングストロームのような比較的早い速度で成長させうる。
【0096】
代替的実施態様では、高処理量で金属または金属酸化物標的からスパッタリングにより、エピタキシャル緩衝層を蒸着させうる。基板の加熱は、エピタキシャル形態学を得るために、抵抗性加熱またはバイアスおよび電位により達成されうる。蒸着ドエルは、金属または金属酸化物標的から酸化物エピタキシャル膜を形成するために使用されうる。
【0097】
特に基板上に存在する酸化物層は、イオンビームエッチングとしても知られる還元環境内で、基板表面をエネルギー性イオンにさらすことによって取り除かれうる。イオンビームエッチングは、基板から残渣酸化物または不純物を除去し、そして基本的に酸化物不含の好ましくは二軸で構造化される基板表面を生成することによって、膜蒸着の前に、基板を洗浄するために使用されうる。これは、基板と連続して蒸着された材料との間の接触を改善する。エネルギー性イオンは、例えば、基板表面に対してAr+のようなイオンを促進する種々のイオン銃によって生成されうる。好ましくは、150eVより大きなビーム電圧を有する格子付イオン源を利用する。代わりに、プラズマは、基板表面付近の領域で確立されうる。この領域内で、イオンは、基板表面と化学的に相互反応して、金属酸化物を含めたその表面から材料を除去して、実質的に酸化物不含金属表面を生じる。
【0098】
基板から酸化物層を除去する別の方法は、基板を電気的にバイアスをかけることである。基板テープまたはワイヤーが、陰イオン電位に関して負にされる場合、それは、蒸着の前(標的を封じ込める場合)、または全膜蒸着の間に、気体から得られるイオンによって安定な衝撃にかけられる。このイオン衝撃は、ほかの点では、膜に組込まれる可能性のある吸着ガスのワイヤーまたはテープ表面を洗浄し、そして基板を、上昇した蒸着温度まで加熱もしうる。このようなイオン衝撃は、エピタキシャル膜の密度または平滑さを改善することによって、さらに有利でありうる。
【0099】
適切に構成される実質的に酸化物不含の基板表面の形成により、緩衝層の蒸着が開始しうる。各々単独金属または酸化物層を含む1つまたは複数の緩衝層を使用しうる。いくつかの実施態様では、基板を、これらの実施態様の蒸着の段階を行うために適合された装置を通過させる。例えば、基板を、ワイヤーまたはテープの形態にある場合、基板を、回収リールから巻取りリールまで線状に通過でき、そして段階を、リールの間を通過するときに、基板上で行いうる。
【0100】
いくつかの実施態様によって、基板材料を、基板材料の融点の約90%未満であるが、しかし予め決定された蒸着速度で、真空環境における基板材料上に所望の材料のエピタキシャル層を形成するための閾値温度より大きい高温に加熱する。適切な緩衝層結晶構造および緩衝層平滑さを形成するために、高い基板温度が一般に好まれる。金属上の酸化物層の成長についての典型的低制限温度は、およそ200℃から800℃まで、好ましくは500℃から800℃まで、そしてさらに好ましくは650℃から800℃までである。放射性加熱、対流加熱、および伝導加熱のような種々の周知方法は、短い(2cmから10cmまで)長さの基板に適切であるが、しかし長い(1mから100mまで)の長さについては、これらの技術は、十分に適切でない可能性がある。さらに、製造工程において所望の高処理量速度を得るために、基板ワイヤーまたはテープは、その工程の間の蒸着位置の間で移動または移行していなければならない。特定の実施態様によって、長期製造工程に容易に計測可能である、対流加熱によって、すなわち、電流に金属基板を通させることによって、基板を加熱する。このアプローチは、これらの領域の間の迅速な移動に即時に対処しつつ、十分に機能する。温度制御は、光高温計および加熱されるべき基板に供給される電力を制御する閉鎖ループ・フィードバック系を使用することによって達成されうる。基板の少なくとも2つの異なるセグメントで基板を接触させる電極により、電流を、基板に供給しうる。例えば、テープまたはワイヤーの形態にある基板を、リールの間に通過させる場合、リールそれら自身は、電極として作用しうる。代わりに、リールの間で基板を移行させるためにガイドを使用する場合、ガイドは、電極として作用しうる。電極も、同様に、あらゆるガイドまたはリールに完全に独立でありうる。いくつかの実施態様では、電流を、電流ホイールの間のテープにかける。
【0101】
蒸着を、適切な温度にあるテープ上で行うために、テープ上に蒸着される金属または酸化物材料を、電流ホイールの間の領域に望ましいように蒸着される。電流ホイールは、有効なヒートシンクでありえて、したがってホイールの近傍の領域にあるテープを冷却できるので、材料は、ホイールに近傍の領域に望ましいようには蒸着されない。スパッタリングの場合には、テープ上に蒸着した荷電材料は、望ましいように、スパッターフラックス経路に近傍の他の荷電表面または材料によって影響されない。この理由のために、スパッターチャンバーを、それらが、適切な蒸着温度で、テープの領域中で所望の線状フラックス経路および金属または金属酸化物の蒸着を変えないように蒸着ソーンから隔たった位置で、チャンバー壁、および他の蒸着要素を含めたスパッターフラックスを影響または偏向させうる成分(構成要素)および表面に載せるように設計することが好ましい。
【0102】
所定の実施態様では、緩衝層(および/または超電導体材料の層)を、調整(例えば、熱で調整および/または化学的に調整)でき、それで、連続層を、調整表面上に形成する。材料層の調整表面を、二軸で構造化させうる(例えば、(113)[211]または(100)[011])か、または立方体構造化(例えば、(100)[011])され得て、約20°より少ない半値で全幅を示すX線解析極図でピークを示し、高解像走査電子顕微鏡または原子フォース顕微鏡により測定されるとおり調整する前より平滑であり、比較的高い密度を示し、比較的低い密度の不純物を示し、他の材料層(例えば、超電導体層または緩衝層)に対して増強された接着を示し、および/またはx線解析により測定されるとおり比較的小さな揺れ曲線幅を示す。
【0103】
ここに使用される場合、「化学的調整」は、緩衝層または超電導体材料層のような材料層の表面における荷電に影響を及ぼす1つまたは複数の化学的種(例えば、気体相化学的種および/または溶液相化学的種)を使用し、その結果、生じる表面は、上に明記される特性の内の1つまたはそれより多くを示す工程に該当する。
【0104】
ここに使用される場合、「熱調整」は、化学的調整を伴って、またはなしで、緩衝層または超電導体材料層のような材料層の表面における荷電に影響を及ぼす高温を使用して、その結果、生じた表面が、上に明記される特性の内の1つまたはそれより多くを示す工程に該当する。熱調整は、化学的調整の使用を伴って、またはなしで行われうる。好ましくは、熱調整は、制御環境(例えば、制御気圧、制御された気体環境および/または制御された温度)で起こる。
【0105】
熱調整は、基礎層の蒸着温度または結晶化温度より少なくとも約5℃上の温度まで(例えば、基礎層の蒸着温度または結晶化温度より約15℃から約500℃まで上、基礎層の蒸着温度または結晶化温度より約75℃から約300℃まで上、または基礎層の蒸着温度または結晶化温度より約150℃から約300℃まで上)、緩衝層の表面を加熱することを含みうる。このような温度の例は、約500℃から約1200℃まで(例えば、約800℃から約1050℃まで)である。熱調整は、大気圧より上、大気圧より下、または大気圧で、のような多様な圧力条件下で行われうる。温度調整は、化学的調整環境(例えば、酸化ガス環境、還元ガス環境)または不活性ガス環境のような多様なガス環境を使用しても行われうる。
【0106】
ここに使用される場合、「蒸着温度」は、調整されるべき層が蒸着された温度に該当する。
【0107】
ここに使用される場合、「結晶化温度」は、材料の層(例えば、基礎層)が、結晶形態を取る温度に該当する。
【0108】
化学的調整は、真空技術(例えば、反応性イオンエッチング、プラズマエッチングおよび/またはBF3および/またはCF3のようなフッ素化合物を用いたエッチング)を含みうる。化学的調整技術は、例えば、Silicon Processing for the VLSI Era 1巻、S.WolfおよびR.N.Tanber編、539−574頁、ラティス・プレス、カリフォルニア州サンセット・パーク(Sunset Park,CA)、1986年に開示される。
【0109】
代わりに、またはさらに、化学的調整は、MetallurgyおよびMetallurgical Engineering Series、3版、ジョージ・エル.ケール、マックグロウ−ヒル、1949年に開示されるような溶液相技術を包含しうる。このような技術は、基礎層の表面を、比較的温和な酸溶液(例えば、約10パーセント未満の酸、約2パーセント未満の酸、約1パーセント未満の酸を含有する酸溶液)と接触させることを包含しうる。温和な酸の例としては、過塩素酸、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、酢酸および緩衝酸溶液が挙げられる。1つの実施態様では、温和な酸溶液は、約1パーセントの水性硝酸である。所定の実施態様では、臭化物含有および/または臭素含有組成物(例えば、液体臭素溶液)を、緩衝層または超電導体層を調整するために使用されうる。
【0110】
緩衝層として使用されうる材料は、例えば、CeO2、Y23、TbOx、GaOx、YSZ、LaAlO3、SrTiO3、Gd23、LaNiO3、SrTuO3、NdGaO3、NaAlO3、MgO、AlN、NbN、TiN、VNおよびZrNが挙げられる。
【0111】
一般に、層5200の厚みは、所望の場合、変えられうる。いくつかの実施態様では、層200は、約0.01マイクロメートールから約5マイクロメートール厚(例えば、約0.02マイクロメートールから約1マイクロメートール厚、約0.02マイクロメートールから約0.75マイクロメートール厚)である。
【0112】
所定の実施態様では、多緩衝層を使用する。緩衝層材料および/または緩衝層厚みの種々の組合わせを使用しうる。いくつかの実施態様では、Y23またはCeO2の層(例えば、約20ナノメートール厚から約50ナノメートール厚まで)を、表面110上に蒸着(例えば、電子ビーム蒸着を使用して)させる。YSZの層(例えば、約0.1マイクロメートール厚から約0.5マイクロメートール厚まで)を、スパッタリング(例えば、電磁スパッタリング)を使用してY23またはCeO2表面に蒸着させる。CeO2層(例えば、約20ナノメートール厚)を、YSZ表面上に(例えば、電磁スパッタリング)を使用して蒸着させる。1つまたは複数のこれらの層の表面を、化学的に調整、および/または熱で調整しうる。
【0113】
多層物体についての所定のアーキテクチャーが記述された一方で、本発明は、この点で制限されない。他のアーキテクチャーも使用しうる。例えば、図8は、緩衝層5200と超電導体層5300との間の封止層5400を含む物体6000の実施態様の断面図を示す。封止層5400は、層5300(例えば、YBCOのエピタキシャル蒸着)の形成(例えば、エピタキシャル蒸着)のための鋳型を提供する材料(例えば、酸化セラミックス)から形成されうる。典型的な封止材料としては、CeO2、Y23およびSrTiO3が挙げられる。
【0114】
緩衝層と超電導体材料層との種々の組合わせを使用しうる。例えば、多重緩衝層を、基板と超電導体層との間に蒸着させうる。別の例として、多層の超電導体材料を使用しうる。別の例として、緩衝層と超電導体層(例えば、代替の緩衝層と超電導体層)を使用しうる。
【0115】
他の配列も使用しうる。
【実施例】
【0116】
本発明は、さらに詳細に、以下の実施例で記述され、そしてそれは、膨大な改質および変動が、当業者に明らかであるので、例示のみとして意図される。
【0117】
実施例1 Y123膜の製造
ピン止め部位を有しないY123の比較膜を製造した。
約4.85mlのメタノール(CH3OH)および約0.15mlのプロピン酸(C25CO2)中に約0.83グラムのY(CF3CO23、約1.60グラムのBa(CF3CO22および約1.28グラムのCu(C25CO22を溶解させることにより、YBCO前駆体溶液を製造した。溶液の最終体積を、メタノールで約5mlに調節した。
【0118】
前駆体溶液を、構造Ni(5at%)W/Y23/YSZ/CeO2を示す1cm幅二軸で構造化された酸化物緩衝金属性基板の長尺(20cmから10メートールまで)上にスロットダイ被覆技術によって蒸着させた。十分量の前駆体溶液を蒸着させて、約0.8厚のYBa2Cu37-x膜を生成した。
【0119】
2.25インチ(5.63センチメートール)直径の管状炉中で、分当たり約15℃の速度で、室温から約200℃まで、その後、分当たり約0.9℃の速度で、約200から約250℃まで、そしてその後、分当たり約5℃の速度で、約250℃から約400℃まで、約760トールの総気体圧力(約24トールの水蒸気圧および平衡酸素)を示す流動気体環境中で、加熱することによって、被覆サンプルを、中間体金属オキシフルオリド膜まで分解した。
【0120】
その後、金属オキシフルオリド膜を、加熱処理して、酸化物超電導体を形成した。短い長さ(1−2cm)の中間体膜を、分当たり約200℃の速度で、約785℃まで管状炉で加熱し、そして約30分間、約240ミリトールの総気体圧力(約90トールの水蒸気圧力、および約150ミリトールの酸素気体圧力)を示す環境で保持した。30分の保持の後に、気体環境および膜から除去されたH2O蒸気を、その後、約150ミリトールO2で室温まで冷却した。その後、スパッタリングによって、2μmAg層を用いて膜を被覆し、そして1時間、1気圧O2で、550℃で焼成し、そして室温まで冷却した。
【0121】
得られた膜は、約0.8ミクロン厚であった。最終膜のx線解析パターン(図3)は、優勢に(001)構造化されたYBa2Cu37-xおよび少量のBaCeO3界面反応産物の存在を示した。それぞれ77Kおよび27Kで、異なる磁界下での4つのプローブ方法によって、最終膜の臨界電流を、測定した。1T磁界中の27Kでの臨界電流対、自己磁界中の77Kでの臨界電流の比は、図4に示される。1テスラ磁界での膜の臨界電流を、膜の平面に関して磁界の角度の係数として、図5で示す。
【0122】
実施例2 過剰のイットリウムを用いたY123膜の製造
イットリウム含有ナノドットまたはナノ粒子を有するY123膜を製造した。
約4.85mlのメタノール(CH3OH)および約0.15mlのプロピン酸(C25CO2)中に約0.98グラムのY(CF3CO23、約1.60グラムのBa(CF3CO22、約1.28グラムのCu(C25CO22および約0.025グラムのCe(CH3CO23を溶解させることによって、YBCO前駆体溶液を製造した。溶液の最終体積を、メタノールで約5mlに調節した。
【0123】
前駆体溶液を、構造化Ni(5at%)W/Y23/YSZ/CeO2を示す1cm幅二軸で構造化された酸化物緩衝金属性基板の長尺(20cm対10メートール)上にスロットダイ被覆技術によって蒸着させた。十分量の前駆体溶液を蒸着させて、約0.8厚のYBa2Cu37-x(Y123)膜を生成した。
【0124】
2.25インチ(5.63センチメートール)直径の管状炉中で、分当たり約15℃の速度で、室温から約200℃まで、その後、分当たり約0.9℃の速度で、約200から約250℃まで、そしてその後、分当たり約5℃の速度で、約250℃から約400℃まで、約760トールの総気体圧力(約24トールの水蒸気圧および平衡酸素)を示す流動気体環境中で、加熱することによって、被覆サンプルを、中間体金属オキシフルオリド膜まで分解した。
【0125】
短い長さ(1−2cm)の中間体膜を、分当たり約200℃の速度で、約770℃まで管状炉で加熱し、そして約30分間、約240ミリトールの総気体圧力(約90トールの水蒸気圧力、および約150ミリトールの酸素気体圧力)を示す環境で保持した。30分の保持の後に、気体環境および膜から除去されたH2O蒸気を、その後、約150ミリトールO2で室温まで冷却した。その後、スパッタリングによって、2μmAg層を用いて膜を被覆し、そして1時間、1気圧O2で、550℃で焼成し、そして室温まで冷却した。
【0126】
得られた膜は、約0.8ミクロン厚であった。それぞれ、77Kおよび27Kで、異なる磁界下での4つのプローブ法によって最終膜の臨界電流を測定した。1T磁界中の27Kでの臨界電流対、自己磁界中の77Kでの臨界電流の比は、図2に示される。サンプル(図6)の遷移電子顕微鏡写真(TEM)は、YBa2Cu37-xマトリックスを通してY23またはY2Cu25の一般組成を示す膨大なナノメートールサイズの粒子(ナノドット)の存在を示す。1テスラ磁界での膜の臨界電流を、膜の平面に関して磁界の角度の係数として、図5で示す。膜は、実施例1で製造される膜に比較した広範な範囲の磁界の配向での臨界電流の優れた保持を示す。
【0127】
実施例3 BaCeO3を含有するY123の製造
BaCeO3含有ナノドットまたはナノ粒子を有するY123膜を製造した。
約4.85mlのメタノール(CH3OH)および約0.15mlのプロピン酸(C26CO2)中に約0.83グラムのY(CF3CO23、約1.68グラムのBa(CF3CO22、約1.28グラムのCu(C25CO22および約0.025グラムのCe(CH3CO23を溶解させることによって、YBCO前駆体溶液を製造した。溶液の最終体積を、メタノールで約5mlに調節した。
【0128】
実施例1に記述されるとおり、前駆体を被覆し、そして分解し、加工し、そしてAgで被覆した。生じた膜は、約0.8マイクロ厚であった。最終膜のx線解析パターン(図7)は、(001)構造化YBa2Cu37-xおよびBaCeO3の存在を示した。
それぞれ77Kおよび27Kで、異なる磁界下での4つのプローブ方法によって、最終膜の臨界電流を測定した。1T磁界(テープに垂直な)中の27Kでの臨界電流対、自己磁界中の77Kでの臨界電流の比は、図2に示される。
【0129】
実施例4 CeO2を含有するY123の製造
BaCeO3含有ナノドットまたはナノ粒子を有するY123膜を製造した。
約4.85mlのメタノール(CH3OH)および約0.15mlのプロピン酸(C26CO2)中に約0.83グラムのY(CF3CO23、約1.60グラムのBa(CF3CO22、約1.28グラムのCu(C25CO22および約0.025グラムのCe(CH3CO23を溶解させることによって、YBCO前駆体溶液を製造した。溶液の最終体積を、メタノールで約5mlに調節した。
【0130】
実施例1に記述されるとおり、前駆体を被覆し、そして分解し、加工し、そしてAgで被覆した。生じた膜は、約0.8マイクロ厚であった。最終膜のx線解析パターンは、(001)構造化YBa2Cu37-xおよびBaCeO3の存在を示した。
【0131】
それぞれ77Kおよび27Kで、異なる磁界下での4つのプローブ方法によって、最終膜の臨界電流を測定した。1T磁界(テープに垂直な)中の27Kでの臨界電流対、自己磁界中の77Kでの臨界電流の比は、図2に示される。
【0132】
実施例5 (Y、Ho)123膜の製造
ホルミウムをドープ添加したY123膜を製造した。
約4.85mlのメタノール(CH3OH)および約0.15mlのプロピン酸(C26CO2)中に約0.75グラムのY(CF3CO23、約0.60グラムのHo(CH3CO23、約1.60グラムのBa(CF3CO22および約1.28グラムのCu(C25CO22を溶解させることによって、前駆体溶液を製造した。溶液の最終体積を、メタノールで約5mlに調節した。
【0133】
実施例1に記述されるとおり、前駆体を被覆し、そして分解し、加工し、そしてAgで被覆した。生じた膜は、約0.8マイクロ厚であった。最終膜のx線解析パターンは、(001)構造化Y(Ho)Ba2Cu37-xの存在を示した。
【0134】
それぞれ77Kおよび27Kで、異なる磁界下での4つのプローブ方法によって、最終膜の臨界電流を測定した。1T磁界(テープに垂直な)中の27Kでの臨界電流対、自己磁界中の77Kでの臨界電流の比は、図2に示される。
【0135】
実施例6 Agを含有する123膜の製造
約4.85mlのメタノール(CH3OH)および約0.15mlのプロピン酸(C26CO2)中に約0.83グラムのY(CF3CO23、約1.60グラムのBa(CH3CO22、約1.28グラムのCu(C25CO22および約0.02グラムのAg(CF3CO22を溶解させることによって、YBCO前駆体溶液を製造した。溶液の最終体積を、メタノールで約5mlに調節した。
【0136】
実施例1に記述されるとおり、前駆体を被覆し、そして分解し、加工し、そしてAgで被覆した。生じた膜は、約0.8マイクロ厚であった。最終膜のx線解析パターンは、(001)構造化YBa2Cu37-xの存在を示した。Agは、おそらく粒子内、および粒子境界での両方で、Ag粒子として膜に残る。
【0137】
参照による組込み
以下の書面は、参照してここに組込まれる:1993年7月27日に刊行され、そして「MODプロセッサー・ソリューションから得られる高度構造化酸化物超電導性膜」と題される米国特許番号第5,231,074号;2000年2月8日に刊行され、そして「エピタキシャル層を有する超電導体物体を製造するための低真空プロセス」と題される米国特許番号第6,022,832号;2000年2月22日に刊行され、そして「エピタキシャル層を生成するための低真空プロセス」と題される米国特許番号第6,027,564号;2001年2月20日に刊行され、そして「不定形表面上に蒸着される岩塩様構造を有する薄膜」と題される米国特許番号第6,190,752号;2000年10月5日に発行され、そして「アロイ材料」と題される国際公開公報番号WO00/58530号;2000年10月5日に発行され、そして「アロイ材料」と題される国際公開公報番号WO00/58044号;1999年4月8日に発行され、そして「改善された酸化抵抗を示す基板」と題される国際公開公報番号WO99/17307号;1999年4月8日に発行され、そして「超電導体についての基板」と題される国際公開公報番号WO99/16941号;1998年12月23日に発行され、そして「超電導体酸化物への金属オキシフルオリドの制御変換」と題される国際公開公報番号WO98/58415号;2001年2月15日に発行され、そして「多層物体およびそれを製造する方法」と題される国際公開公報番号WO01/11428号;2001年2月1日に発行され、そして「多層物体およびそれを製造する方法」と題される国際公開公報番号WO01/08232号;2001年2月1日に発行され、そして「多層物体を製造する方法および組成物」と題される国際公開公報番号WO01/08235号;2001年2月1日に発行され、そして「被覆導体厚膜プロセッサ」と題される国際公開公報番号WO01/08236号;2001年2月1日に発行され、そして「減少された直流電流損失を示す被覆導体」と題される国際公開公報番号WO01/08169号;2001年3月1日に発行され、そして「表面制御アロイ構造およびそれを製造する方法」と題される国際公開公報番号WO01/15245号;2001年2月1日に発行され、そして「増強された純粋酸化物層形成」と題される国際公開公報番号WO01/08170号;2001年4月12日に発行され、そして「酸化物層反応速度の制御」と題される国際公開公報番号WO01/26164号;2001年2月12日に発行され、そして「酸化物層方法」と題される国際公開公報番号WO01/26165号;2001年2月1日に発行され、そして「増強された高温被覆超電導体」と題される国際公開公報番号WO01/08233号;2001年2月1日に発行され、そして「超電導体を製造する方法」と題される国際公開公報番号WO01/08231号;2002年4月20日に発行され、そして「前駆体溶液およびそれを使用する方法」と題される国際公開公報番号WO02/35615号;2000年5月26日に提出され、そして「酸化物ブロンズ組成物およびそれにより製造される構成物体」と題される米国特許出願番号第09/579,193号;および2001年7月31日に提出され、そして「多層超電導体およびそれを製造する方法」と題される米国特許仮出願番号第60/309,116号;2002年7月30日に提出され、そして「超電導体方法およびリアクター」と題される米国特許出願番号第10/208,134号;および2001年7月31日に提出され、そして「超電導体方法およびリアクター」と題される米国特許仮出願番号第60/308,957号;1999年11月18日に提出され、そして「超電導体物体および組成物およびそれを製造する方法」と題される米国特許仮出願番号第60/166,297号;および2000年7月14日に提出され、そして「超電導体物体および組成物およびそれを製造する方法」と題される米国特許出願番号第09/615,999号;その両方は参照してここに組込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】磁界および温度の関数として酸化物緩衝金属基板上のY123(YBCO)膜のIc依存性を示す。
【図2】酸化物緩衝金属基板上のY123膜の磁界指向性の関数としてIcを示す。
【図3】構造化Ni(5at%W)/Y23/YSZ/CeO2基板上のY123膜のX線回折パターンを示す。
【図4】自己磁界での77Kの臨界電流に対する1T磁界(テープに対して垂直な)中の27KでのY123膜の臨界電流の比である。
【図5】膜の平面に関して1テスラ磁界の角度の関数として化学量論のY123膜および過剰Yドーパント添加Y123膜の75.5Kでの幅(A/cm幅)当たりの臨界電流を示す。
【図6】Y123マトリックスじゅうのY23またはY2Cu25の一般組成物を用いた膨大なナノメートール規模(ナノドット)粒子の存在を示す過剰Yドーパント添加Y123膜の透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図7】Ni(5at%W)/Y23/YSZ/CeO2基板上のBaCeO3ドーパント添加Y123膜のX線回折パターンである。
【図8】本発明の1つまたは複数の実施態様による超電導性物体の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体溶液が、
少なくとも1つの塩が、フッ素含有塩である、1種類またはそれより多くの溶媒中に希土類元素の塩、アルカリ土類金属の塩、および遷移金属の塩を包含する希土類−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物に対する前駆体成分、および
希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物の希土類およびアルカリ土類金属の内の1つまたは複数を置換する能力のあるドーパント金属を有する金属化合物を包含するドーパント成分を包含するものである、基板上に前駆体溶液を蒸着させて、前駆体膜を形成し、そして
前駆体膜を処理して、前駆体溶液の希土類、アルカリ土類金属、遷移金属およびドーパント金属を含む中間体金属オキシフルオリド膜を形成させることを包含する薄膜を生成する方法。
【請求項2】
ドーパント成分が、希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物の希土類およびアルカリ土類金属の内の1つまたは複数の50原子パーセントまでを置換するのに十分なドーパント金属を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドーパント成分が、希土類/アルカリ土類および金属/遷移金属酸化物の希土類およびアルカリ土類金属の内の1つまたは複数の約10原子%から約30原子%までを置換するのに十分なドーパント金属を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ドーパント成分が、希土類/アルカリ土類および金属/遷移金属酸化物の希土類およびアルカリ土類金属の内の1つまたは複数の約1原子%から約10原子%までを置換するのに十分なドーパント金属を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ドーパント成分が、希土類/アルカリ土類および金属/遷移金属酸化物の希土類およびアルカリ土類金属の内の1つまたは複数の約1原子%未満を置換するのに十分なドーパント金属を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前駆体膜を処理することが、前駆体溶液の前駆体およびドーパント成分を分解する約190℃から約650℃までの範囲にある温度で膜を加熱することを包含する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前駆体膜を処理することが、前駆体溶液の前駆体およびドーパント成分を分解する約190℃から約400℃までの範囲にある温度で膜を加熱することを包含する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、中間体膜を加熱して、酸化物超電導体を形成することを包含し、酸化物超電導体が、ドーパント金属を包含し、そして前記酸化物超電導体が、ピン止めセンターとして役割を果たす1つまたは複数の欠陥を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸化物超電導体が、酸化物超電導体の希土類およびアルカリ土類金属の内の1つまたは複数の50原子パーセントまでを置換するのに十分なドーパント金属を包含する請求項4に記載の方法。
【請求項10】
中間体膜を加熱することが、約0.1トールから約760トールまでの総圧力を示す流動気体環境で、約700℃から約825℃までの範囲にある温度で加熱すること、および約0.09トールから約50トール酸素および約0.01トールから約150トール水蒸気、および約0トールから約750トールまでの圧力を示す不活性ガスを含有することを包含する請求項6に記載の方法。
【請求項11】
中間体膜を加熱することが、約0.15トールから約5トールまでの総圧力を示す流動気体環境で、約700℃から約825℃までの範囲にある温度で加熱すること、および約0.1トールから約1トール酸素および約0.05トールから約4トール水蒸気を含有することを包含する請求項6に記載の方法。
【請求項12】
膜を、分当たり約25℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項10に記載の方法。
【請求項13】
膜を、分当たり約100℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項10に記載の方法。
【請求項14】
膜を、分当たり約200℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項10に記載の方法。
【請求項15】
膜を、分当たり約25℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項11に記載の方法。
【請求項16】
膜を、分当たり約100℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項11に記載の方法。
【請求項17】
膜を、分当たり約200℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項11に記載の方法。
【請求項18】
酸化物超電導体を、基板の表面上に蒸着させ、その基板は、二軸で配向され;
基板は、二軸で配向され;
酸化物超電導体は、それの幅に渡って実質的に一定であるc軸配向を示し、酸化物超電導体のc軸配向が、基板の表面に実質的に垂直である、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
前駆体溶液が、さらに、単独、または希土類元素、アルカリ土類金属または遷移金属の1つまたは複数の前駆体塩と組合わせるかのいずれかで、第二相ナノ粒子を形成する能力のある1つまたは複数の金属化合物を包含する添加剤成分を包含する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
さらに、中間体膜を加熱して、希土類−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物超電導体を形成することを包含し、酸化物超電導体が、ドーパント金属を包含し、酸化物超電導体が、ピン止めセンターとして役割を果たす1つまたは複数の第二相ナノ粒子を包含する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
基板上に前駆体溶液を蒸着させて、前駆体膜を形成すること、前駆体溶液が、
塩の内の少なくとも1つが、フッ化物含有塩である、1種類またはそれより多くの溶媒中に希土類元素の塩、アルカリ土類金属の塩、および遷移金属の塩を包含する希土類−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物に対する前駆体成分、および
単独で、または前駆体溶液の前駆体成分の1つまたはそれより多くと組合わせるかのいずれかで、第二相ナノ粒子を形成する能力のある1つまたは複数の金属化合物を包含する添加剤成分を包含し、そして
前駆体膜を処理して、前駆体溶液の希土類、アルカリ土類金属、遷移金属および添加剤金属を含めた中間体金属オキシフルオリド膜を形成することを包含する、薄膜を生成する方法。
【請求項22】
添加剤成分が、前駆体溶液を製造する0.5−20原子パーセントまでの金属を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
添加剤成分が、約20から約10,000粒子/μm3までの密度にあるナノ粒子を有する膜を形成するのに十分な量である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
添加剤成分が、約100から約10,000粒子/μm3までの密度にあるナノ粒子を有する膜を形成するのに十分な量である請求項21に記載の方法。
【請求項25】
添加剤成分が、約1,000から約10,000粒子/μm3までの密度にあるナノ粒子を有する膜を形成するのに十分な量である請求項21に記載の方法。
【請求項26】
添加剤成分が、約1,000粒子/μm3より大きな密度にあるナノ粒子を有する膜を形成するのに十分な量である請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前駆体膜を処理することが、約190℃から約650℃までの範囲にある温度で膜を加熱して、前駆体溶液の前駆体および添加物成分を分解することを包含する請求項21に記載の方法。
【請求項28】
さらに、中間体膜を加熱して、希土類−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物超電導体および1つまたは複数の第二相ナノ粒子を形成し、二次相ナノ粒子が、酸化物超電導体の粒子内に配置され、そして微粒子ピン止めセンターとして役割を果たす請求項21に記載の方法。
【請求項29】
ナノ粒子が、1−100nmの最大寸法を示す請求項28に記載の方法。
【請求項30】
中間体膜を加熱することが、約0.1トールから約760トールまでの総圧力を示す流動気体環境で、約700℃から約825℃までの範囲にある温度で加熱すること、および約0.09トールから約50トール酸素および約0.01トールから約150トール水蒸気、および約0トールから約750トールまでの圧力を示す不活性ガスを含有することを包含する請求項28に記載の方法。
【請求項31】
中間体膜を加熱することが、約0.15トールから約5トールまでの総圧力を示す流動気体環境で、約700℃から約825℃までの範囲にある温度で加熱すること、および約0.1トールから約1トール酸素および約0.05トールから約4トール水蒸気を含有することを包含する請求項28に記載の方法。
【請求項32】
膜を、分当たり約25℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
膜を、分当たり約100℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項30に記載の方法。
【請求項34】
膜を、分当たり約200℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項30に記載の方法。
【請求項35】
膜を、分当たり約25℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項31に記載の方法。
【請求項36】
膜を、分当たり約100℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項31に記載の方法。
【請求項37】
膜を、分当たり約200℃より大きな温度勾配で、加熱温度まで加熱する請求項31に記載の方法。
【請求項38】
酸化物超電導体を、基板の表面上に蒸着させ、その基板は、二軸で配向され;
酸化物超電導体は、二軸で配向され;
酸化物超電導体は、それの幅に渡って実質的に一定であるc軸配向を示し、超電導体のc軸配向が、基板の表面に実質的に垂直である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
添加剤成分が、単独、または希土類元素、アルカリ土類金属または遷移金属の1つまたは複数の前駆体塩と組合わせるかのいずれかで、第二相のナノ粒子を形成する能力のある1つまたは複数の金属化合物を包含するナノ粒子の分散物を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項40】
添加剤成分が、単独、または希土類元素、アルカリ土類金属または遷移金属の1つまたは複数の前駆体塩と組合わせるかのいずれかで、第二相ナノ粒子を形成する能力のある1つまたは複数の金属塩を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項41】
添加剤成分が、前駆体溶液の化学量論的過剰の希土類元素を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項42】
添加剤成分が、前駆体溶液の化学量論的過剰のアルカリ土類金属として包含する請求項21に記載の方法。
【請求項43】
前駆体溶液が、少なくとも2つの希土類元素を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項44】
前駆体溶液が、少なくとも2つのアルカリ土類金属を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項45】
前駆体溶液が、少なくとも2つの遷移金属を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項46】
添加剤成分が、セリウム、ジルコニウム、銀、アルミニウム、およびマグネシウムより構成される群から選択される金属の塩を包含する請求項21に記載の方法。
【請求項47】
ナノ粒子分散物が、前駆体溶液の前駆体成分の1つまたは複数の元素と反応性である請求項39に記載の方法。
【請求項48】
ナノ粒子が、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、Y2BuCuO4、Y2Cu25、酸化マグネシウム、BaZrO3、銀およびセリアより構成される群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項49】
添加剤成分の1つまたは複数の金属塩が、前駆体溶液の前駆体成分の1つまたは複数の元素と反応性がある請求項40に記載の方法。
【請求項50】
ナノ粒子が、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、Y2BuCuO4、Y2Cu25、酸化マグネシウム、BaZrO3、銀およびセリアより構成される群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前駆体膜を、酸化物超電導体膜に変換し、前駆体膜は、1つまたは複数の希土類元素、1つまたは複数のアルカリ土類金属、および1つまたは複数の遷移金属、および添加剤成分を包含し、そして添加剤成分が、単独で、または前駆体膜の1つまたは複数の希土類元素、アルカリ土類金属または遷移金属と組合わせて、第二相ナノ粒子を形成する能力のある1つまたは複数の金属元素を包含し、
酸化物超電導体膜が、2−200Å/秒の成長速度で形成され、そして酸化物超電導体膜が、ピン止めセンターとして役割を果たす酸化物超電導体の粒子内に配置される1つまたは複数の第二相ナノ粒子を含有することを包含する、第二相ナノ粒子を含有する超電導体膜を生成する方法。
【請求項52】
前駆体膜が、5−200Å/秒の成長速度で酸化物超電導性膜に変換される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前駆体膜が、10−200Å/秒の成長速度で酸化物超電導性膜に変換される請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前駆体膜が、20Å/秒より大きな成長速度で酸化物超電導性膜に変換される請求項51に記載の方法。
【請求項55】
中間体膜を加熱することが、約0.1トールから約760トールまでの総圧力を示す流動気体環境で、約700℃から約825℃までの範囲にある温度で加熱すること、および約0.09トールから約50トール酸素および約0.01トールから約150トール水蒸気、および約0トールから約750トールまでの圧力を示す不活性ガスを含有することを包含する請求項51に記載の方法。
【請求項56】
中間体膜を加熱することが、約0.15トールから約5トールまでの総圧力を示す流動気体環境で、約700℃から約825℃までの範囲にある温度で加熱すること、および約0.01トールから約1トール酸素および約0.05トールから約4トール水蒸気を含有することを包含する請求項51に記載の方法。
【請求項57】
溶液基本の前駆体から基板上に蒸着される薄膜が、希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物超電導体、および酸化物超電導体の粒子内に配置される金属含有化合物を包含する少なくとも1つの第二相ナノ粒子を包含し、第二相ナノ粒子が、ピン止めセンターとして役割を果たす、基板上の薄膜を包含する物体。
【請求項58】
第二相ナノ粒子が、1−100nmの最大寸法を有する請求項57に記載の物体。
【請求項59】
第二相ナノ粒子が、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、BaCeO3、BaZrO3、銀、および酸化マグネシウムより構成される群から選択される請求項57に記載の物体。
【請求項60】
酸化物超電導体が、希土類−バリウム−銅酸化物を包含する請求項57に記載の物体。
【請求項61】
前記基板が、酸化セリウム、酸化アルミニウム・ランタン、酸化マンガン・ランタン、酸化ストロンチウム・チタン、酸化マグネシウム、酸化ガドリニウム・ネオジム、および酸化セリウム/イットリア安定化ジルコニアより構成される群から選択される材料の絶縁酸化物である請求項57に記載の物体。
【請求項62】
第二相微粒子が、約50nm未満の少なくとも1つの寸法を有する請求項57に記載の物体。
【請求項63】
第二相微粒子が、約20nm未満の少なくとも1つの寸法を有する請求項57に記載の物体。
【請求項64】
前記薄膜が、希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物超電導体、および酸化物超電導体の粒子内に配置される金属含有化合物を包含する二次微粒子相を包含し、第二相ナノ粒子が、1−100nmの最大寸法を示し、そしてピン止めセンターとして役割を果たすが、ただし、金属含有化合物は、Y23またはY2BuCuO5でない、基板上の薄膜を包含する物体。
【請求項65】
第二相微粒子相が、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、銀、アルカリ土類ジルコネート、およびBaZrO3、マグネシウム酸化物より構成される群から選択される請求項64に記載の物体。
【請求項66】
酸化物超電導体が、希土類−バリウム−銅酸化物を包含する請求項64に記載の物体。
【請求項67】
前記基板が、酸化セリウム、酸化アルミニウム・ランタン、酸化マンガン・ランタン、酸化ストロンチウム・チタン、酸化マグネシウム、酸化ガドリニウム・ネオジム、および酸化セリウム/イットリア安定化ジルコニアより構成される群から選択される材料の絶縁酸化物である請求項64に記載の物体。
【請求項68】
第二相微粒子が、約50nm未満の少なくとも1つの寸法を有する請求項64に記載の物体。
【請求項69】
第二相微粒子が、約20nm未満の少なくとも1つの寸法を有する請求項64に記載の物体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−526199(P2007−526199A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549250(P2006−549250)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/038025
【国際公開番号】WO2005/081710
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500093292)アメリカン・スーパーコンダクター・コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】