説明

ナノ構造体のドーピング

【課題】本発明は、良好な触媒粒子を用いて、ドープされた細長のナノ構造体を形成するための良好な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、細長のナノ構造体の成長において使用される触媒粒子を提供する。触媒粒子は、ナノ構造体材料中に実質的に溶解することなく、ナノ構造体材料を含む細長のナノ構造体の成長を促進する触媒化合物と、ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に細長のナノ構造体にドープされる少なくとも1種のドーパント元素とを備える。さらに、本発明は、触媒粒子を使用して、少なくとも1種のドープされた細長のナノ構造体を基板の上に形成するための方法を提供する。当該方法により、細長のナノ構造体においてドーパント濃度を制御することが可能となる。さらに、当該方法により、1017原子/cmより小さい低ドーパント濃度の細長のナノ構造体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造体、例えばナノワイヤーの成長およびドーピングに関する。より詳細には、本発明は、触媒化合物と少なくとも1種のドーパント元素とを含む触媒粒子、そのような触媒粒子を用いて細長のナノ構造体を形成するための方法、本発明の形態に係る方法により形成されたドープされた細長のナノ構造体、並びにそのようなドープされた細長のナノ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
分子ナノエレクトロニクス、半導体ナノ結晶の分野において、ナノワイヤー(NWs)及びカーボンナノチューブ(CNTs)は、さまざまなエレクトロニクスデバイスのためのコンポーネントとしてより重要になってきている。これらのNWsおよびCNTsは、それらのサイズ、形状、物理的特性において独特なものであり、それらの電子的特性に依存して、エレクトロニクスデバイス、例えばダイオードおよびトランジスタにおいて使用されるようになっている。これらのNWs及びCNTsの製造およびその性能の限界を理解することに関して多くの進展がみられるけれども、見込まれる技術的応用にとって、解決されるべき重要な課題が未だ存在する。例えば、さまざまなエレクトロニクスデバイスに組み込まれる場合に必要とされる、NWsおよびCNTsのドーピングプロセスにおいて重大な制限が存在する。
【0003】
ホスフィンやジボラン等の気相のドーパントを用いて、p型およびn型ゲルマニウム(Ge)NWsを合成することおよびドーピングすることが、グレイタック等の「アプライドフィジックレター84 (21), 2004, p. 4176」に例示されている。金のナノクラスターからのGeNWsの本質的成長は、水素(H)雰囲気下において、1.5%のゲルマン(GeH)を使用して320℃、500トールで開始される。NW構造の細長形成は、285℃の換算温度において実行される。成長後、NW構造は、ゲルマンの無い状態において、ホスフィンもしくはジボランのいずれかを用いて380℃でドープされる。ドーピング条件は、活性化されたドーパント元素の自己限界層(self-limited layer)を形成するように選択される。ここで、上記自己限界層は平面状のSiGeに関する原子層ドーピングの研究から概算される。しかしながら、上記の方法を用いれば、ドーパント濃度を制御することが困難であり、そしてNWsにおいて、1017原子/cm以下の低ドーパント濃度を得ることが困難である。
【0004】
米国2006/0234519A1では、基板上のナノワイヤーや他のナノ元素ベースの装置をドープするためプラズマイオン注入法(PIII)を使用する。例えば、試料において、少なくとも1つのナノワイヤーの一部をドープする方法であって、少なくとも露出した部分を有する少なくとも1つのナノワイヤーを含む試料をチャンバー内に投入する工程と、当該試料に電気的なポテンシャルを加える工程と、上記チャンバーにプラズマを注入する工程と、を概して備える方法を開示している。上記プラズマは、ドーピングマテリアルのイオンを含んでおり、それにより少なくとも1つのナノワイヤーの少なくとも露出部分に、プラズマからのイオンが挿入される。しかしながら、ナノワイヤーのドーピングは成長の間実行されず、そのため制御が困難である。これは、外形的な制限のため(直径が数nmオーダーと小さく、アスペクト比が高い)、ナノワイヤーの全長に亘って注入することが困難であるからである。
【0005】
ディルツら(Materials Research Society Symposium Proceedings Vol. 832, 2005, pp. 287-292)は、気相−液相−固相(VLS)成長を用いて、アノード化されたアルミナ膜の孔内において、高濃度のボロンドープシリコンNWアレイを作製した。ボロンドープされたシリコンNWsは、シラン(SiH)およびトリメチルボロン(TMB)ガス源を使用して、VLS成長により上記孔内で合成された。キュイら (The Journal of Physical Chemistry, Volume 104, Number 22, June 8, 2000)は、シリコンNWsの気相成長の間、ボロンもしくはリンドーパントのいずれかを制御可能に導入するために、レーザー触媒成長を使用することを開示している。
【0006】
しかしながら、トリメチルボロン(TMB)ガス等のドーパントガスを反応炉に加えることは、NW成長を促進するために使用される触媒粒子の変形の原因となりうる。触媒粒子の変形は、ナノワイヤーの直径に影響を与える可能性があり、例えば、直径が、必要とされるより大きくなる。さらに、ドーパント濃度を制御することが困難であり、当該ナノワイヤーにおいて、1017より低い低ドーパント濃度を得ることが困難となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な触媒粒子、およびそのような触媒粒子を用いて、ドープされた細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを形成するための良好な方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の実施形態に係る触媒粒子および方法を用いることにより、1017原子/cmより低いドーパント濃度の細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーが得られる。
【0009】
さらに、本発明の実施形態に係る触媒粒子および方法を用いることにより、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーに亘って、そのドーパント濃度を制御することが可能である。
【0010】
そのうえ、本発明の実施形態に係る触媒粒子および方法を用いることにより、ドーパント濃度プロファイルを有する、もしくは長さ方向に沿ってドーパント濃度が変化する細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを形成することが可能となる。
【0011】
本発明の実施形態に係る触媒粒子および方法を使用することにより、均一にドープされ、当該ドーパントが、例えば細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーの物理特性、例えば直径等に影響を与えない、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、本発明に係る方法および装置により達成することができる。
【0013】
第1の発明では、触媒粒子を提供する。当該触媒粒子は、ナノ構造体材料中に実質的に溶解することなく、もしくはそれ程溶解することなく、ナノ構造体材料を含む細長のナノ構造体の成長を促進(触媒作用)する触媒化合物と、上記ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に細長のナノ構造体にドープされる少なくとも1種のドーパント元素と、を含む。
【0014】
「実質的に溶解しない」とは、1%未満、より好ましくは高々数原子の触媒化合物がナノ構造体材料中に溶解することを意味する。「実質的に完全に溶解する」とは、得られる細長のナノ構造体に、90%より高い少なくとも1種のドーパント元素が、好ましくは95%より高い少なくとも1種のドーパント元素が、より好ましくは99%より高い少なくとも1種のドーパント元素が溶解していることを意味する。
【0015】
当該触媒化合物は、少なくとも1種の触媒化合物を含んでいても良い。本発明の実施の形態によれば、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素が、異なる元素を含んでいても良い。
【0016】
本発明の実施の形態によれば、触媒粒子は1種より多いドーパント元素を含んでいても良い。
【0017】
当該少なくとも1種のドーパント元素は、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーにおいて、高い溶解性を有しても良い。最も好ましくは、ナノ構造体材料におけるドーパント元素の溶解度は、少なくとも1019原子/cmより高い、好ましくは1020原子/cmより高い、最も好ましくは1021原子/cmより高いオーダーである。
【0018】
少なくとも1種の触媒元素を含む触媒化合物は、ナノ構造体材料において、低い溶解度を有してもよい。最も好ましくは、ナノ構造体材料における触媒化合物の溶解度は、少なくとも1018原子/cmより低い、好ましくは1016原子/cmより低い、さらに好ましくは1014原子/cmより低い、最も好ましくは1012原子/cmより低いオーダーである。
【0019】
最も好ましくは、ナノ構造体材料における少なくとも1種のドーパント元素の溶解度は、少なくとも、ナノ構造体材料における触媒化合物の溶解度より高い大きさのオーダーである。
【0020】
触媒化合物、少なくとも1種のドーパント元素およびナノ構造体材料は、好ましくは600℃より小さい、低共融温度を有する。
【0021】
本発明の実施形態によれば、上記触媒化合物は、In、Tl、Au、Zn、Bi、CoもしくはNiから選択される少なくとも1種の触媒元素を含有していてもよい。
【0022】
本発明の実施形態によれば、上記少なくとも1種のドーパント元素は、p型ドーパント元素であってもよい。好ましくは当該p型ドーパント元素は、B、Al、Ga、Mg、Zn、Be、Sr、BaもしくはCのうちの一つを含んでいてもよい。
【0023】
他の実施形態によれば、少なくとも1種のドーパント元素は、n型ドーパント元素であってもよい。好ましくは、n型ドーパント元素は、Li、Sb、As、P、Si、Ge、S、SnもしくはTeのうちの一つを含んでいてもよい。
【0024】
好ましくは、上記細長のナノ構造体は、ナノワイヤー、好ましくは半導体ナノワイヤーであってもよい。本発明の実施形態によれば、半導体ワイヤーは、IV族元素(Si、Ge等)、その二成分系化合物(例えばSiGe)、III族元素(B、Al、Ga、In、Tl等)もしくはV族元素(N、P、As、Sb等)、それらの三成分系もしくは四成分系化合物、II族元素(Cd、Zn等)もしくはVI族元素(O、S、Se、Te等)、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物の少なくとも1つを含む半導体材料を含有していてもよい。
【0025】
最も好ましい実施の形態によれば、上記半導体ナノワイヤーは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)もしくはシリコンゲルマニウム(SiGe)の少なくとも1種を含む半導体材料を含有していてもよい。上記ドーパント元素は、BもしくはAlの少なくとも1種を含むp型ドーパントであってもよく、もしくはLi、Sb、PもしくはPsの少なくとも1種を含むn型ドーパントであってもよい。例えば、触媒粒子は、気相−液相−固相(VLS)成長を促進するための適切な材料、In、Tl、Au、Te及びBiから選択してもよい。
【0026】
本発明は、また、ドープされた細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーの成長プロセスにおいて、本発明の実施の形態に係る触媒粒子を使用することを提供する。
【0027】
本発明は、さらに、ドープされた細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを含むデバイスを製造する際、本発明の実施形態に係る触媒粒子を使用することを提供する。当該デバイスは、例えば半導体デバイス、センサー、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、・・・・であってもよい。
【0028】
第2の発明では、少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを基板上に形成するための方法を提供する。当該方法は、上記基板上に少なくとも1種の触媒粒子であって、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素を含む触媒粒子を上記基板上に与える工程と、実質的にナノ構造体材料中に溶解することなく、少なくとも1つの細長のナノ構造体の成長を促進する触媒化合物と、ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に少なくとも1つの細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーにドープされる少なくとも1種のドーパント元素とを使用することにより、ナノ構造体材料を含む少なくとも1つの細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを、少なくとも1つの触媒粒子から成長させる工程と、を備える。
【0029】
本発明の実施形態に係る方法は、均一にドープされた、すなわち少なくとも1種のドーパント元素がドープされ、微細に均一化する方法により分散された細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーとすることができる。これは、少なくとも1種のドーパント元素が、有限体積(finite volume)の細長のナノ構造体において均一に分配されることを意味する。
【0030】
触媒化合物は、少なくとも1種の触媒元素を含んでいてもよい。本発明の実施の形態では、触媒粒子を与える工程を、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素が異なる元素を含有するように実行してもよい。触媒化合物は、ナノ構造体材料において、少なくとも1018原子/cmより低い、より好ましくは1016原子/cmより低い、さらに好ましくは1014原子/cmより低い、最も好ましくは1012原子/cmより低い溶解度を有する。上記少なくとも1種のドーパント元素が、ナノ構造体材料において、少なくとも1019原子/cmより高い、好ましくは1020原子/cmより高い、最も好ましくは1021原子/cmより高い溶解度を有する。
【0031】
本発明の実施の形態によれば、上記細長のナノ構造体は、ナノ構造体材料から構成され、そして触媒粒子を与える工程を、触媒化合物が、ナノ構造体材料に対してネガティブな少なくとも1種の元素を含むように行ってもよい。
【0032】
本発明の実施の形態によれば、当該方法は、さらに、成長の間細長のナノ構造体の成長率を変更もしくは変動させる工程を含んでいてもよい。成長率がより高いほど、ナノ構造体、例えばナノワイヤーにおける少なくとも1種のドーパント元素の濃度がより高くなる可能性がある。そのため、少なくとも1種のドーパント元素の選択と成長率とのコンビネーションは、ドーパント濃度を規定し、そして望ましい場合では、少なくとも1種のドーパント元素の選択と成長の間の成長率の変動のコンビネーションが、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーの長さ方向に沿ったドーパントプロファイルを規定することができる。成長率を変更もしくは変動させること、すなわち成長の間成長率を減少もしくは増加させることを、温度および/またはガスフロー等の成長プロセスの成長パラメータを変更することにより実行してもよい。
【0033】
好ましくは、少なくとも1種の細長のナノ構造体は、ナノワイヤーであってもよく、最も好ましくは半導体ナノワイヤーである。上記半導体ナノワイヤーは、IV族元素、その二成分系化合物、III族元素もしくはV族元素、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物、II族元素もしくはVI族元素、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物の少なくとも1種を含有していてもよい。最も好ましくは、上記半導体ナノワイヤーは、Si、GeもしくはSiGeの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0034】
本発明は、さらに、本発明の実施の形態に係る方法により形成されたドープされた細長のナノ構造体を提供する。上記ドープされた長いナノ構造物は、長さを持っていてもよく、そしてドーパント濃度プロファイル、もしくは、ドーパント濃度がその長さ方向に沿って変動してもよい。
【0035】
本発明は、さらに、本発明の実施の形態に係る方法により形成された細長のナノ構造体であって、少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体を備えるデバイスを提供する。当該デバイスは、例えば、半導体デバイス、センサー、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、・・・であってもよい。
【0036】
当該デバイスにおける少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体は、長さを有していてもよく、ドーパント濃度プロファイルを示すか、もしくはドーパント濃度がその長さ方向に沿って変動してもよい。
【0037】
本発明の特定のもしくは好ましい形態が、付随の独立クレームおよび従属クレームに記載されている。従属クレームの特徴は、独立クレームの特徴およびクレームに明確に記載されたものと適切なおよび単純でない他の独立クレームの特徴と組み合わせてもよい。
【0038】
当該技術分野において、デバイスの一定の改良、変更、および発展(evolution)が存在していたけれども、本コンセプトは、実質的に新しい新規な改良(従前のプラクティスからの逸脱を含む)を示すと考えられ、当該改良により、より効率的で、安定的で、信頼性の高い、本特性のデバイスを提供する。
【0039】
本発明の上記および他の特性、特徴、および利点が、添付の図面とともに、次の詳細な説明から明らかとなるであろう。当該図面は、具体例により、本発明の原則を例示するものである。当該記載は、本発明の技術的範囲を離れることなく、単に例示のためだけに与えられる。以下に引用する参照図は、添付の図面を参照している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の実施の形態は、特定の実施の形態に関して、ある図面について参照しながら記載しているが、本発明は、それらに限定されず、クレームのみに限定される。記載された図面は、概略のためだけのものであり、限定するものではない。図面において、いくつかの構成要素のサイズは、誇張され、例示のため一定縮尺では記載されていない。大きさおよび相対的大きさは、本発明のプラクティスに対する実際の縮尺と対応していない。
【0041】
さらに、明細書および特許請求の範囲における第1、第2等の用語は、同様の構成要素間を区別するために使用され、必ずしも序列等において時間的または空間的に連続するものを記載するために使用しているわけではない。このように使用される用語は、適切な状況の下で相互に交換可能であって、ここに記載された発明の実施の形態が、ここに記載されたもしくは例示されたものとは別の順序で実施可能であることは理解されよう。
【0042】
クレームにおいて使用される「含む(comprising)」なる用語は、以下に挙げた意味に制限されると解釈すべきではなく、他の構成要素もしくは工程が排除されないことに留意すべきである。すなわち、上述したように、規定された特徴、整数、工程、もしくは構成要素の存在を明確にしているものと解釈すべきであり、他の1以上の特徴、整数、工程、もしくは構成要素、またはそれらの組み合わせたものが存在すること、もしくはこれらを追加することを排除するものと解釈すべきではない。
【0043】
次の用語は、本発明を理解することを補助するためだけに与えられる。
【0044】
明細書および特許請求の範囲において使用される「触媒化合物」なる用語は、細長のナノ構造体の材料に実質的に溶解することなくまたは著しく溶解することなく、細長のナノ構造体の成長を促進するための少なくとも1種の触媒元素を含む化合物を意味する。
【0045】
明細書および特許請求の範囲において使用される「ドーパント」もしくは「ドーパント元素」なる用語は、細長のナノ構造体の材料に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に上記細長のナノ構造体にドープされる元素を意味する。
【0046】
明細書および特許請求の範囲において使用される「ナノ構造体材料」なる用語は、細長のナノ構造体を構成する材料を意味する。
【0047】
以下に特定のドーパントタイプについて言及するときはいつでも、これは本発明を制限することを意図しているものではない。以下に与える具体例において、材料およびドーパントタイプは、本発明を変更しない範囲で、他の適当な材料およびドーパントタイプにより置き換えてもよい。
【0048】
以下、本発明を、本発明の幾つかの実施形態の詳細な説明により記載する。本発明の真の精神もしくは技術的な教示から離れることなく、当該技術分野における当業者の知識に従って、本発明の他の実施の形態を構成することができることは明らかである。当該発明は、添付の特許請求の範囲の用語だけにより制限される。
【0049】
特に、本発明の実施の形態は、細長のナノ構造体を参照して記載される。本発明によれば、細長のナノ構造体なる用語により、任意の2次元的に限定された固体材料の部材を意味し、ワイヤー(ナノワイヤー)、チューブ(ナノチューブ)、ロッド(ナノロッド)、および同様の細長の略円柱状もしくは略多角形のナノ構造体であって、長手方向の軸を有するナノ構造体の形態がある。細長のナノ構造体の断面は、1〜500ナノメートルの範囲にあることが好ましい。本発明の実施の形態によれば、例えばカーボンナノチューブ(CNTs)等の有機系の細長のナノ構造体、もしくは例えば半導体ナノワイヤー(例えばシリコンナノワイヤー)等の無機系の細長のナノ構造体を使用してもよい。
【0050】
本発明によれば、細長のナノ構造体の好ましい具体例は、半導体ナノワイヤーであるけれども、しかしながら、これは本発明を制限することを意図しておらず、細長のナノ構造体の全ての具体例(ナノロッド、ナノウィスカー、および他の細長のナノ構造体を含む)を包含することを意図する。
【0051】
気相−液相−固相(VLS)を使用して細長のナノ構造体を成長させること(金属触媒されたナノ構造体成長と称される)について本発明を記載する。ワグナー等(Applied Physics Letters, Vol. 4, Nr. 5, March 1964, pp. 89-90)により記載されたVLS技術を図1Aおよび1Bに概略的に例示している。[111]シリコン基板1上に金の触媒粒子を与える(図1A参照)。基板1に付着されたSu−Au合金(触媒ナノ粒子)の小さな液滴2が形成されるように金の粒子を最大950℃で加熱する。ナノ構造体4を形成する材料は、参照番号3の矢印により示されるように、気相の状態で与える。例えば、シリコンカーバイトナノ構造体4が形成される場合、メタンのベアリングガスおよびシリコンのベアリングガスを、基板1の平面に対して実質的に垂直の方向(参照番号5により示される)にナノ構造体4を成長させるために用いてもよい(図1B参照)。結果的に得られるナノ構造体4は、上面に液滴2(触媒ナノ粒子)を有する。
【0052】
ガス源としてシランを使用したシリコンナノワイヤー4のVLS成長の具体例を図2に例示する。VLS成長は、主に、連続的に繰り返される3つの工程(A−C)を含む。例えば、特定の具体例としてSiナノワイヤー4を作製する場合、シランSiHが与えられる具体例においては、最初のVLS工程(A)は、触媒ナノ粒子2により触媒されるガス源の化学的分解である。つづいて、分解されたシランは、触媒ナノ粒子2(液相)に向かって輸送される。そのとき、VLS成長における第2の工程(B)は、分解されたシリコンソース(ガス)と触媒ナノ粒子2との間の共晶合金形成である。第3の工程(C)においては、ナノワイヤー4が形成されるようにシリコンを沈殿させる(固体)。
【0053】
細長のナノ構造体を成長させるためにVLSを使用することは、全く本発明を制限することを意図するものではなく、細長のナノ構造体を成長させるための他の適当な技術、例えば触媒化学気相成長(CCVD)、気相−固相−固相(VSS)、フローティングリアクタント法、・・・を本発明の実施の形態に係る方法において使用してもよい。
【0054】
本発明の少なくとも幾つかの実施の形態は、細長のナノ構造体におけるドーパントレベル、もしくはドーパント元素濃度が低くなるという問題、すなわち、ドーパント濃度が1017原子/cmより低くなるという問題に関係する。従来技術において利用されている、細長のナノ構造体にドーパント元素を与えるための方法、例えばナノ構造体の成長の後少なくとも1種のドーパント元素を直接注入する方法、もしくはナノ構造体の成長の間、少なくとも1種の気相ドーパント元素を加える方法は、細長のナノ構造体におけるドーパント元素濃度の制御が制限されるという問題に悩まされる。さらに、これらの従来技術の方法を用いて、ナノ構造体に亘って均一なドーパント濃度とすること、そしてナノ構造体において非常に低いドーパント元素濃度、すなわち1017原子/cmより低い濃度とすることは困難である。
【0055】
そのため、本発明は、実質的にナノ構造体材料中に溶解しないように、ナノ構造体材料を含む細長のナノ構造体の成長を促進する触媒化合物と、ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより成長の間に細長のナノ構造体にドープされる少なくとも1種のドーパント元素とを含む触媒粒子を提供する。
【0056】
本発明は、また、本発明の実施の形態に係る触媒粒子を使用して、基板上に、少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体を形成するための方法を提供する。当該方法は、最初に、上記基板上に、触媒化合物と少なくとも1種のドーパント元素とを含む少なくとも1種の触媒粒子を与える工程と、つづいて、実質的にナノ構造体材料中に溶解することなく、少なくとも1つの細長のナノ構造体の成長を促進する触媒化合物と、ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に少なくとも1つの細長のナノ構造体にドープされる少なくとも1種のドーパント元素とを使用することにより、ナノ構造体材料からなる少なくとも1つの細長のナノ構造体を、少なくとも1つの触媒粒子から成長させる工程と、を備える。
【0057】
本発明の実施の形態に係る触媒粒子および方法を使用することにより、ドーパント濃度が1017原子/cmより低い細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを得ることができる。ナノ構造体の材料における少なくとも1種のドーパント元素の溶解度は、温度に依存しうる。より低い溶解度を有する、すなわち細長のナノ構造体の材料において1018原子/cm未満の溶解度を有する元素については、当該溶解度は温度に強く依存しうる。より高い溶解度を有する、すなわち細長のナノ構造体の材料において1018原子/cmより高い溶解度を有する元素については、溶解度は、温度にそれ程依存しない。これは、温度の関数として、異なる元素の固溶度を示した図4から分かる。
【0058】
さらに、本発明の実施の形態に係る触媒粒子および方法を用いることにより、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーのドーパント濃度を、当該細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーに亘って、制御することが可能となる。
【0059】
そのうえ、本発明の実施の形態に係る触媒粒子および方法を用いることにより、ドーパント濃度プロファイルを有する、もしくは長さ方向に沿ってドーパント濃度が変化する細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーを形成することが可能となる。
【0060】
本発明の実施の形態に係る触媒粒子および方法を用いることにより、均一にドープされた細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーであって、ドーパント元素が、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーの物理的特性、例えば直径等に影響を与えない、細長のナノ構造体、例えばナノワイヤーとすることができる。
【0061】
細長のナノ構造体のドーピングは、当該細長のナノ構造体が対象とする応用例に依存して、n型もしくはp型ドーパント元素により行ってもよい。具体例として、図3は、電気的な観点からシリコン半導体ナノワイヤーに組み込むのに適した、考えられるドナー(n型)およびアクセプター(p型)ドーパント元素の具体例を例示している。シリコンは1.12eVのバンドギャップを有する。図3は、電気的に活性化された不純物もしくはドーパントにより引き起こされる、シリコン材料におけるバンドギャップシフトを例示している。0.1eVより小さいバンドギャップ差を引き起こす元素は、p型ドーパントもしくはn型ドーパントのいずれとしても使用することに適している。図3から、Siについて適切なn型ドーパントは、例えばLi、Sb、P、As、Bi、Te、Ti、CもしくはMgであることが分かる。Siについて適切なp型ドーパントは、例えばB、Al、Ga、InもしくはTlである。
【0062】
例示のため、図4は、シリコンにおけるドーパントとして使用されることが考慮された不純物元素についての温度の関数として固溶度を例示している。この図は、S.M.Szeにより1983年のハンドブック「VLSl技術」に由来する。図4は、シリコンについて達成されるドーパント元素の最大濃度を異なるドーパント元素毎に示している。高いドーパント濃度レベルを得るために、例えば少なくとも1019原子/cmの溶解度を必要とする。1019原子/cmより低いドーパントレベルを得るため、より低い溶解度のドーパント元素を使用してもよい。それゆえ、必要とされるドーパントレベルを有する細長のナノ構造体を得るための、本発明の実施の形態に係る方法を使用して、適当なドーパント元素を図4から選択してもよい。
【0063】
本発明の実施の形態によれば、触媒化合物と少なくとも1種のドーパント元素が異なる触媒粒子を使用して、例えばVLS成長の間細長のナノ構造体のドーピングを実行してもよい。当該触媒化合物は、細長のナノ構造体のVLS成長を促進するために使用され、そしてp型もしくはn型ドーパント元素である少なくとも1種のドーパント元素が、成長の間細長のナノ構造体にドープされるために使用される。
【0064】
細長のナノ構造体のVLS成長の間、少なくとも1種のドーパント元素は、実質的に完全に細長のナノ構造体の材料に溶解する。「実質的に完全に溶解する」とは、90%より大きい少なくとも1種のドーパント元素が、好ましくは95%より大きい少なくとも1種のドーパント元素が、さらに好ましくは99%より大きい少なくとも1種のドーパント元素が、得られる細長のナノ構造体において溶解していることを意味する。そのため、当該少なくとも1種のドーパント元素は、細長のナノ構造体の材料において高い溶解度を有することが好ましい。最も好ましくは、少なくとも1種のドーパント元素の溶解度は、1019原子/cmより高い、好ましくは1020原子/cmより高い、最も好ましくは1021原子/cmより高いオーダーである。
【0065】
触媒化合物は、細長のナノ構造体を構成する材料に溶解しないこと、もしくはそれ程溶解しないことが好ましい。そのため、触媒化合物は、少なくとも1018原子/cmより低い、好ましくは1016原子/cmより低い、さらに好ましくは1014原子/cmより低い、最も好ましくは1012原子/cmより低いオーダーの溶解度を有することが好ましい。
【0066】
触媒化合物は、触媒ナノ粒子の主な化合物を形成し、触媒粒子の90%〜95%を形成している。少なくとも1種のドーパント元素は、触媒粒子のマイナーな化合物を形成し、触媒粒子の5%〜10%を形成する。触媒化合物と少なくとも1種のドーパント元素との比率は、少なくとも1種のドーパント元素の溶解度、および結果として得られる細長のナノ構造体における、必要とされるドーパント元素濃度に依存する。
【0067】
図5A−5Cは、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素を含み、少なくとも1種のドーパント元素および触媒化合物が異なる元素からなる触媒粒子11を使用する、好ましい実施の形態に係る方法における異なるプロセスステップを概略的に例示している。当該方法は、基板10を準備する工程から始まる。図5Aに示すように、任意の適当な方法により、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素からなる触媒粒子11を基板10の上に形成もしくは成長させる。当該触媒化合物は、細長のナノ構造体の気相−液相−固相(VLS)成長を(化学的に)開始する、および/または促進するに適した材料を含んでいてもよい。上記少なくとも1種のドーパント元素は、成長の間に細長のナノ構造体にドープされる、適切なp型もしくはn型ドーパント元素であり、例えばエレクトロニックデバイス等の応用分野に使用されることを適切なものとする。同時にドーピングプロセスおよび成長プロセスを制御するため、当該触媒化合物は、好ましくは、ナノ構造体材料において電気的に中性としてもよいし、少なくとも1種のドーパント元素として同じドーピング特性(ドナー(n型)もしくはアクセプター(p型))を有してもよい。これは、本発明の実施の形態によれば、触媒化合物が、ナノ構造体材料に多くは溶解しないかもしくは実質的に溶解しないけれども、幾つかのケースにおいては、ナノ構造体に触媒化合物の数原子が溶解することを阻止することができない可能性があるからである。それでも、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素が、少なくとも1つのオーダー分異なれば、これは根本的なことではない。そのため、本発明の最も好ましい実施の形態によれば、触媒化合物は、ナノ構造体を構成する材料において、少なくとも1種のドーパント元素より極めて低い溶解度を有してもよい。触媒化合物の溶解度は、ナノ構造体材料におけるドーパント元素の溶解度より少なくとも1桁のオーダーだけ低い。例えば、本発明の実施の形態の触媒粒子11において使用される適切なドーパント元素/触媒化合物の組み合わせは、Sb/Bi、Ga/In、Al/In、P/In、・・・である。
【0068】
図5Bに示すように、次の工程において、例えばVLS成長技術を用いてナノ構造体12を成長させる。図5Bは、本実施の形態に係る方法における中間の工程を例示しており、細長のナノ構造体12は未だ完全には成長していない。図5Cにおいては、最終的なドープされた細長のナノ構造体12を例示している。最終的なドープされた細長のナノ構造体12では、少なくとも1種のドーパント元素が実質的に完全に細長のナノ構造体12に溶解しており、触媒化合物は、細長のナノ構造体12に溶解しない、もしくは少なくともそれ程多くは溶解していない。「実質的に完全に溶解する」とは、得られた細長のナノ構造体12に、90%より高い少なくとも1種のドーパント元素が、好ましくは95%より高い少なくとも1種のドーパント元素が、より好ましくは99%より高い少なくとも1種のドーパント元素が溶解していることを意味する。溶解しない、もしくは少なくともそれ程多くは溶解しないとは、図5Cから分かるように、細長のナノ構造体12の成長が終了した後、触媒化合物のほとんどが細長のナノ構造体の上面に未だ存在することを意味する。
【0069】
本実施の形態によれば、細長のナノ構造体12のドーパント濃度レベルは、触媒粒子11における少なくとも1種のドーパント元素の最初の量および濃度により決定される。さらに、細長のナノ構造体12のドーパント濃度レベルは、すでに上記したように、少なくとも1種のドーパント元素の溶解度、および幾つかのケースでは温度に依存する。
【0070】
成長後得られる細長のナノ構造体12の長さLは、成長率および成長時間に依存する。細長のナノ構造体の長さLは、ナノ構造体12のタイプおよびナノ構造体12が使用される応用分野にも依存しうる。好ましくは、長さLは、100nm〜20μmの間にある。
【0071】
本発明の実施の形態に係る方法によれば、確実に一定の直径を有するナノ構造体12を連続的に成長させることができる。これは、触媒粒子11において、主な触媒化合物が実質的に非溶解性であるためである。形成された細長のナノ構造体12の直径は、触媒粒子11のサイズに依存し、そして触媒粒子11のサイズにより制御される。もし、触媒粒子11が、成長の間、ナノ構造体12に溶解する場合、そのサイズは、結果として減少し、そのため形成される細長のナノ構造体12の直径は、成長の間減少するので、一定とならない。しかしながら、本発明の実施の形態によれば、触媒ナノ粒子11のサイズは、主な触媒化合物により決定され、触媒化合物は、成長の間、ナノ構造体材料に全く溶解しないもしくはそれ程溶解しないため、触媒ナノ粒子は、ナノ構造体の成長の間、実質的に同じままである。そのため、本発明の実施の形態に係る方法により、実質的に一定の直径を有する細長のナノ構造体12を得ることができる。
【0072】
触媒ナノ粒子11の触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素、並びにナノ構造体12を成長させるために使用されるナノ構造体材料は、600℃以下の低共晶温度を有することが好ましい。当該共晶温度とは、一旦ナノ構造体材料、例えばシリコンにより合金化されると、触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素を含む触媒粒子が液状で存在しうる最も低い温度である。通常、共晶温度は、単一元素、すなわち、主な触媒化合物およびナノ構造体材料の少なくとも1種の元素、例えばシリコンの溶解温度よりかなり低い。
【0073】
本発明の好ましい実施の形態によれば、細長のナノ構造体12は、ナノワイヤー、好ましくは半導体のナノワイヤーである。本発明の実施形態によれば、半導体ワイヤー12は、IV族元素(Si、Ge等)、その二成分系化合物(例えばSiGe)、III族元素(B、Al、Ga、In、Tl等)もしくはV族元素(N、P、As、Sb等)、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物、II族元素(Cd、Zn等)もしくはVI族元素(O、S、Se、Te等)、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物の少なくとも1種を含む半導体材料を含有していてもよい。
【0074】
最も好ましい実施の形態では、上記半導体ナノワイヤー12は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)もしくはシリコンゲルマニウム(SiGe)の少なくとも1種を含む半導体材料を含有していてもよい。これらの好ましい実施の形態によれば、p型ナノワイヤー12を得るために、上記少なくとも1種のドーパント元素は、p型ドーパント元素であってもよく、B、AlおよびGaを含有することが好ましい。触媒粒子は、VLS成長を促進するための適切な材料、例えばIn、Tl、Au、Zn及びBi等であってもよい。
【0075】
好ましい実施の形態では、触媒粒子11は、In−Ga合金を含んでいてもよい。これらのIn−Ga合金は、VLS成長技術を用いて、p型ドープされたナノ構造体12、例えばSiナノワイヤーを成長させるための良好な触媒粒子11と認識されており、触媒粒子11は、本発明の実施の形態とともに使用される。これらの合金において、インジウム(In)は、ナノ構造体の成長を促進するための触媒化合物を構成しうる。これは、VLS成長のための熱力学的に好ましい触媒として特徴付けられ、低いSi/In共晶温度、すなわち157℃を有し、Siに対する低い溶解度、すなわち約2×1018原子/cmを有する。ガリウム(Ga)はドーパント元素を形成することができ、Siに対する溶解度はInより一桁のオーダー分だけ高く、約2×1019原子/cmの溶解度を有する。
【0076】
ナノ構造体12がSi、Ge、もしくはSiGe半導体ナノワイヤーである本発明の好ましい実施の形態では、n型ナノワイヤー12は、Li、Sb、PおよびAsを含む少なくとも1種を含むドーパント元素により得られ、触媒粒子は、VLS成長を促進するための適切な材料、例えばIn、Tl、Au、Zn及びBiであってもよい。
【0077】
例えば、Bi−Sb合金は、VLS成長技術を用いて、n型ドープされた細長のナノ構造体12、例えばSiナノワイヤー等を成長させるための良好な触媒粒子11として認識される。これらの合金において、ビスマス(Bi)は、触媒化合物を形成することができ、VLS成長のための熱力学的に好ましい触媒として特徴付けられ、低いSi/Bi共晶温度、すなわち271℃を有し、Siに対する低い溶解度、すなわち約4×1017原子/cmを有する。アンチモン(Sb)はドーパント元素を形成することができ、Siに対する溶解度は、Biより二桁のオーダー分だけ高く、約4×1019原子/cmの溶解度を有する。
【0078】
Siの場合において、触媒粒子の組成の上記具体例を用いて、Ge、およびSiGeナノワイヤー12を成長させてもよい。これは、共晶的な挙動および溶解度が、これらの半導体材料において同様であるからである。
【0079】
他の実施の形態では、細長のナノ構造体12は、III族もしくはV族材料、もしくはそれらの二成分系、三成分系もしくは四成分系からなるナノワイヤーであってもよい。これらのIII族および/またはV族材料のp型ナノワイヤーを得るため、少なくとも1種のドーパント元素は、Mg、Zn、Be、Sr、BaもしくはCを含んでいてもよく、触媒化合物は、VLS成長を促進する適切な材料、例えばIn、Tl、Co、NiおよびAuを含んでいてもよい。
【0080】
III族もしくはV族材料を含むn型ナノ構造体12を得るため、少なくとも1種のドーパント元素は、Si、Sn、Ge、SおよびTeを含んでいてもよく、当該触媒化合物は、VLS成長を促進する適切な材料、例えばIn、Tl、Co、NiおよびAuを含んでいてもよい。
【0081】
例えば、いわゆる「ソフトゴールド」を電気メッキして、硫黄(S)を含むAu触媒粒子11を得てもよい。当該硫黄は、成長の間ナノ構造体12にドープされるn型ドーパント元素である。
【0082】
さらに別の実施の形態では、細長のナノ構造体12は、III族および/またはV族材料から選択された材料を含む、もしくはII族および/またはIV族材料から選択された材料を含むナノワイヤーであってもよく、そして触媒化合物は、ナノ構造体12を成長させるために使用される化合物と同一であってもよい。p型ドープされたInナノワイヤー12を成長させるための触媒粒子11として、例えば、In−P合金を使用してもよく、Inは触媒化合物を形成し、Pはp型ドーパント元素を形成する。
【0083】
他の実施の形態では、シリコン金属合金もしくはシリサイド、ゲルマニウム金属合金もしくはゲルマナイド、カーボン金属合金もしくはカーバイド、硫黄金属合金もしくはサルファイド、セレニウム金属合金もしくはセレナイドまたはテルル金属合金もしくはテルライドを、本発明の実施の形態に係る触媒粒子11において、成長の間の細長のナノ構造体12のためのドーパント源(Si、Ge、C、S、SeおよびTe)として使用してもよい。
【0084】
本発明の実施の形態によれば、上述した触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素を含む触媒粒子11は、例えば電気化学的技術を用いた電着により基板10に設けてもよい。
【0085】
本発明の実施の形態によれば、触媒粒子11は1〜100nmの直径を有していてもよい。
【0086】
多くの分野に応用するため、例えば細長のナノ構造体のある部分だけドーパントが存在する、または、その長さ方向に沿って濃度が異なる細長のナノ構造体12が必要となるかもしれない。具体例としては、細長のナノ構造体12、例えばナノワイヤーの両端において、ハイドープされたソース−ドレイン領域、および半導体デバイスにおいて使用するためソース−ドレイン領域の間の領域においてアンドープとされたチャンネル領域である。そのため、ドーパント濃度プロファイルを有する、もしくは例えばナノ構造体12の長さ方向に沿ってドーパント濃度が変化するナノ構造体12を形成することに興味がある。
【0087】
本発明の実施の形態に係る方法によれば、ドーパント濃度のプロファイルを有する、もしくはナノ構造体12の長さ方向に沿ってドーパント濃度が変化する細長のナノ構造体12を形成することができる。これは、細長のナノ構造体12が成長プロセスの間成長する成長率を変化することにより、もしくは変更することにより得ることができる。成長率がより高くなれば、ナノ構造体12の材料に溶解しているドーパント濃度がより高くなることがさらにわかる。そのため、細長のナノ構造体12におけるドーパント濃度は、ナノ構造体12の成長率を変化させるもしくは変更することによりまたはナノ構造体12が成長するチャンバーにおける成長条件を調整することにより制御することができる。
【0088】
具体例として、図6は、偏析係数と、バルク状の結晶シリコンにおける、様々なドーパント元素(B、Ga、Al、P、As)および触媒化合物(Bi、In)の成長率との関係を例示している。当該偏析係数は、固相状態(図7においてバルクのシリコン)の化合物の濃度を液相状態の化合物の濃度で割ったものとして定義することができる。そのため、偏析係数は、ある材料、特定の具体例ではバルクの結晶シリコンにおける、所定の元素、特定の具体例では、ドーパント元素B、Ga、Al、PおよびAs、ならびに触媒化合物BiおよびInの溶解度として定義される。図6における値は、バルクのシリコンの成長について有効であり、成長率が増加するときこれらの化合物の偏析が増加することを示すために与えられたものである。
【0089】
本発明の実施の形態によれば、使用されるドーパント元素における選択および成長率の制御の組み合わせにより、成長後得られる細長のナノ構造体12におけるドーパント濃度プロファイルを規定することができる。例えば、シリコンにおけるアンチモン(Sb)(アンチモンは、本発明に係るドーパント元素として使用される)の偏析係数は、図6に例示したグラフのうちの一つである。この特定の具体例では、ドーパント元素としてSbを含む触媒粒子11により、より高いナノワイヤー成長率、例えば10〜16mm/分の成長率では約1020原子/cmの高いSb濃度を有するナノ構造体12とすることができ、より低いナノワイヤー成長率、例えば0〜2mm/分の成長率ではより低いSb濃度を有するナノ構造体12を得ることができる。例えば、中間領域においてチャンネルを低くドープするとともに、ソースとドレイン領域をより高くドープして形成するために使用される好適なSiナノワイヤー12を作製するため、ドーパント元素としてSbを使用した場合、Siナノワイヤー12の成長は、最初の段階では、10〜16mm/分の高い成長率で実行し、ナノワイヤー12の中間部分もしくはチャンネル部分を形成するため0〜2mm/分の低い成長率で実行し、最後の段階では、再び10〜16mm/分の高い成長率で実行してもよい。これは、VLS成長の間、ナノ構造体12のドーピングが、成長率を調整、変更もしくは変動させることによりどのように制御されるかを示している。成長率を調整、変更もしくは変動させることは、成長プロセスの間、ナノ構造体材料の温度および/またはガスフロー等の成長パラメータを調整することにより行われる。
【0090】
その後、必要とされる細長のナノ構造体12におけるドーパント濃度に対する、必要とされる触媒粒子11におけるドーパント濃度の計算のためシミュレーションを触媒リーチングを用いて実行すれば、そのような必要とされるドーパント濃度が得られるだろう。
【0091】
最初の工程において、必要とされる触媒粒子11におけるドーパント濃度の計算を実行した。例えば、半導体デバイスにおいて、ドーパント濃度は、一般的に1012原子/cm〜1017原子/cmの範囲に亘る。半導体用途において使用される、細長のナノ構造体12、例えばナノワイヤーは、約50nmの直径もしくは25nm(25×10−7cm)の半径、および約500nm(5×10−5cm)の長さを有していてもよく、この結果、細長のナノ構造体12、例えばナノワイヤーの体積は10−15cmのオーダーとなる。
【0092】
例えば1015原子/cm〜1017原子/cmの範囲のドーパント濃度を得るためには、単に限られた量、すなわち1〜100原子のドーパント原子が触媒粒子11において必要とされる。細長のナノ構造体12、例えばナノワイヤーにおける、そのような低いドーパント濃度は、従来技術、例えばインプランテーション等を用いて達成することが不可能である。
【0093】
それゆえ、本発明の実施の形態によれば、少なくとも1種のドーパント元素の溶解度と同じくらい高いドーパント濃度を有する細長のナノ構造体12を得ることができる。例えば、ドーパント元素としてAsおよびPを用いた場合、約1021原子/cmのドーパント濃度を得ることができる。さらに、1017原子/cmより低いドーパント濃度、例えば1014原子/cm〜1016原子/cmのドーパント濃度を有する細長のナノ構造体12を形成するため、本発明の実施の形態に係る触媒粒子11および方法を使用してもよい。形成された細長のナノ構造体12において必要とされるドーパント濃度は、ナノ構造体12の意図された用途、例えば形成されたエレクトロニックデバイスに依存する。例えば、平面デバイステクノロジーにおけるSiについて、1019原子/cmが高いドーパントレベルと考えられ、一方低いドーパントレベルは、1014原子/cm〜1016原子/cmであると考えられる。
【0094】
ナノ構造体12の材料体積が制限されることを考慮に入れなければならない。50nmの直径、100nmの高さ、1019原子/cmの高いドーパント濃度を有する仮想的なナノ構造体12、例えばナノワイヤーについては、2.10原子/ワイヤーが必要であり、一方、1016原子/cmの低いドーパント濃度では2原子/ワイヤーだけが必要である。
【0095】
好ましい実施の形態、特定の構造、および配置ならびに材料はここでは本発明に係る装置について議論されているけれども、本発明の技術範囲および精神を離れることなく、形状および詳細におけるさまざまな変更もしくは修正をすることができることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1A】図1Aは、従来技術による気相−液相−固相(VLS)のメカニズムを用いてシリコン単結晶を成長させることを概略的に例示している。
【図1B】図1Bは、従来技術による気相−液相−固相(VLS)のメカニズムを用いてシリコン単結晶を成長させることを概略的に例示している。
【図2】図2は、単結晶シリコンナノワイヤーを形成するためのVLS技術に基づいた触媒されたナノワイヤー成長を例示している。
【図3】図3は、電気的観点からシリコン半導体ナノワイヤーに適した、可能性として考えられるドナー(n型)およびアクセプター(p型)ドーパント元素を例示している。
【図4】図4は、シリコンにおける不純物元素の固溶度を例示している。
【図5A】図5Aは、本発明の実施の形態に係る方法におけるそれぞれのプロセスステップを概略的に例示している。
【図5B】図5Bは、本発明の実施の形態に係る方法におけるそれぞれのプロセスステップを概略的に例示している。
【図5C】図5Cは、本発明の実施の形態に係る方法におけるそれぞれのプロセスステップを概略的に例示している。
【図6】図6は、バルクの結晶シリコンにおける様々なドーパント元素および触媒化合物の成長率に対する偏析係数を例示している。異なる図面において、同じ参照符号は、同一もしくは類似の構成要素を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造体材料中に実質的に溶解することなく、上記ナノ構造体材料を含有する細長のナノ構造体(12)の成長を促進する触媒化合物と、
上記ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に細長のナノ構造体(12)にドープされる少なくとも1種のドーパント元素と、
を備える触媒粒子(11)。
【請求項2】
上記触媒化合物が、少なくとも1種の触媒元素を含み、上記触媒化合物と上記ドーパント元素とが異なる元素を含むことを特徴とする請求項1記載の触媒粒子(11)。
【請求項3】
上記触媒粒子(11)が、1種より多いドーパント元素を含むことを特徴とする請求項1または2記載の触媒粒子(11)。
【請求項4】
上記触媒化合物が、ナノ構造体材料において1018原子/cm以下の溶解度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の触媒粒子(11)。
【請求項5】
上記ドーパント元素が、ナノ構造体材料において、少なくとも1019原子/cmの溶解度を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の触媒粒子(11)。
【請求項6】
上記触媒化合物が、In、Tl、Au、Zn、Te、Bi、Al、Ga、CoもしくはNiから選択される少なくとも1種の触媒元素を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の触媒粒子(11)。
【請求項7】
上記少なくとも1種のドーパント元素がp型ドーパント元素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の触媒粒子(11)。
【請求項8】
上記少なくとも1種のp型ドーパント元素が、B、Al、Ga、Mg、Zn、Be、Sr、BaもしくはCのうちのいずれか一つを含有することを特徴とする請求項7記載の触媒粒子(11)。
【請求項9】
上記少なくとも1種のドーパント元素がn型ドーパント元素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の触媒粒子(11)。
【請求項10】
上記少なくとも1種のn型ドーパント元素が、Li、Sb、P、As、Si、Ge、S、SnもしくはTeのうちのいずれか一つを含有することを特徴とする請求項9記載の触媒粒子(11)。
【請求項11】
ドープされた細長のナノ構造体(12)の成長プロセスにおける、請求項1〜10のいずれかに記載の触媒粒子(11)の使用。
【請求項12】
ドープされた細長のナノ構造体(12)を含むデバイスの製造における、請求項1〜10のいずれかに記載の触媒粒子(11)の使用。
【請求項13】
少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体(12)を基板(10)の上に形成する方法であって、
触媒化合物および少なくとも1種のドーパント元素を含む少なくとも1つの触媒粒子(11)を上記基板(10)の上に与える工程と、その後、
実質的にナノ構造体材料中に溶解することなく、少なくとも1つの細長のナノ構造体(12)の成長を促進する触媒化合物と、上記ナノ構造体材料中に実質的に完全に溶解することにより、成長の間に少なくとも1つの細長のナノ構造体(12)にドープされる少なくとも1種のドーパント元素と、を使用することにより、ナノ構造体材料を含む少なくとも1つの細長のナノ構造体(12)を少なくとも1つの触媒粒子(11)から成長させる工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
上記細長のナノ構造体(12)が、ナノ構造体材料から構成され、
上記触媒粒子(11)を与える工程が、上記触媒化合物が、ナノ構造体材料において、1018原子/cm以下の溶解度を有するように実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記細長のナノ構造体(12)が、ナノ構造体材料から構成され、
上記触媒粒子(11)を与える工程が、上記ドーパント元素が、ナノ構造体材料において、少なくとも1019原子/cmの溶解度を有するように実行されることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
上記細長のナノ構造体(12)が、ナノ構造体材料から構成され、
上記触媒粒子(11)を与える工程が、上記触媒化合物が、上記ナノ構造体材料に対してネガティブな少なくとも1種の元素を含むように実行されることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの細長のナノ構造体(12)を成長させる工程が、ある成長率で実行され、
当該方法は、成長の間に上記細長のナノ構造体(12)の上記成長率を変更させる工程を含むことを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
上記少なくとも1つの細長のナノ構造体(12)がナノワイヤーであることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
上記ナノワイヤーが半導体ナノワイヤーであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
上記半導体ナノワイヤーが、IV族元素、もしくはその二成分系化合物、III族元素もしくはV族元素、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物、II族元素もしくはVI族元素、それらの二成分系、三成分系もしくは四成分系化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
上記半導体ナノワイヤーが、Si、Ge、もしくはSiGeのいずれかを含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項13〜21のいずれかに記載された方法により形成された、ドープされた細長のナノ構造体(12)。
【請求項23】
上記ドープされた細長のナノ構造体(12)が、長さを有し、
上記ドープされた細長のナノ構造体(12)が、その長さ方向に沿ってドーパント濃度が変動することを特徴とする請求項22記載のドープされた細長のナノ構造体(12)。
【請求項24】
請求項13〜21のいずれかに記載された方法により形成された少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体(12)を含む、デバイス。
【請求項25】
上記少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体(12)が、長さを有し、
上記少なくとも1つのドープされた細長のナノ構造体(12)がその長さ方向に沿ってドーパント濃度が変動することを特徴とする請求項24記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−212920(P2008−212920A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−330400(P2007−330400)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(591060898)アンテルユニヴェルシテール・ミクロ−エレクトロニカ・サントリュム・ヴェー・ゼッド・ドゥブルヴェ (302)
【氏名又は名称原語表記】INTERUNIVERSITAIR MICRO−ELEKTRONICA CENTRUM VZW
【Fターム(参考)】