説明

ナノ粒子カプセル封入バリアスタック

湿気及び/又は酸素に敏感な電子デバイスをカプセル封入するためのバリアスタックが提供される。バリアスタックは、湿気及び/又は酸素の浸透性が小さい少なくとも1つのバリア層と、バリア層の表面と接触するように配置された少なくとも1つの封止層とを有する多層膜を備えている。封止材料は、湿気及び/又は酸素と相互作用することができる反応性ナノ粒子を含有しており、それによりバリア層に存在する欠陥を介して湿気及び/又は酸素が浸透することが妨げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は一般にカプセル封入バリアスタックの分野に関し、より詳細には反応性ナノ粒子を含有するカプセル封入バリアスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
[002]有機発光ディスプレイ(OLED)は、既存のディスプレイ技術に取って代わるであろう次世代ディスプレイ技術として大いに期待されている。有効なカプセル封入は、OLEDの開発における対処すべき様々な課題のなかでも依然としてとりわけ最も重要な課題の1つである。
【0003】
[003]OLED構造及び他の酸素及び/又は湿気に敏感なエレクトロルミネセントデバイスが抱えている広く知られている問題の1つは、大気条件の下ではそれらが急激に劣化することである。それらを劣化から保護するべく、様々なタイプのカプセル封入を使用してエレクトロルミネセントデバイスが環境から分離されている。OLEDの場合、寿命が10,000時間を超える信頼性の高い性能を達成するためには、反応性エレクトロルミネセント材料の周囲のカプセル封入は、その酸素透過率(OTR)が約5から10cc/m/日未満でなければならず、また、その水蒸気透過率(WVTR)は、39℃及び95%RHで約10−5g/m/日未満でなければならないことが予測されている。これらの厳格な要求事項がもたらしている技術的な課題は、長年にわたるカプセル封入技術の絶え間のない開発を余儀なくしている。
【0004】
[004]従来のカプセル封入構造は、エレクトロルミネセントデバイスがその上に形成される基板と、エレクトロルミネセントデバイスを基板に対して封止するカバー構造とを備えている。ハードディスクドライブなどの特定のタイプの電子工学アプリケーションの場合、カプセル封入のバリア特性を改善する手法の1つは、分厚いガス不浸透性カプセル封入構造を利用することである。しかしながら、この手法は、不透明性が1つの要求事項であり、カプセル封入を介して透過する光の品質を維持しなければならないOLED又は太陽電池などのアプリケーションには適していない。
【0005】
[005]OLED技術における最近の開発では、カプセル封入構造が可撓性であることが要求されるフレキシブルOLEDが注目を集めており、これは、カプセル封入技術がOLED技術の開発速度に追いついていないことをより如実に示している。理想的には、フレキシブルOLEDのための基板は、ガスバリア特性、化学的耐性及びガラスの表面特性と、従来のプラスチックの可撓性、じん性及び処理可能性とを組み合わせたものでなければならない。安価で、且つ、容易に処理することができるため、透明重合体を使用してカプセル封入構造の様々な部品が形成された。しかしながら、湿気及び酸素に対するそれらの浸透性のため、重合体のみから形成されるカプセル封入構造は、今日では、酸素及び水蒸気の不浸透性に対する要求規格の程度が、工業的な重合体技術における現時点での最新技術を使用した最も良好な重合体基板を使用して達成可能な要求規格の程度より数桁小さいため、小さい浸透率を達成するには不適切であると見なされている。
【0006】
[006]ごく最近、特定のタイプの無機材料から導出されたバリア積層物は、重合体バリア積層物より良好なバリア特性を有していることが分かった。現在、アルミニウムなどの金属が、食品及び薬剤を包装するためのバリア材料として使用されている(たとえばアルミニウムフォイル)。無機バリア積層物の性能は、バリア特性が改善されているにもかかわらず、固有の構造欠陥によって依然として制限されていることが分かっている。最近の研究によれば、ピンホール、クラック、粒界等の構造欠陥は、常に酸素及び湿気を浸透させ、期待されるバリア性能より貧弱な性能をもたらす原因になっている。このような欠陥は製造方法には無関係に無作為に形成されるため、欠陥が完全に根絶される程度までその製造を制御することは困難である。
【0007】
[007]重合体バリアスタックの貧弱なバリア特性の問題及び欠陥のない無機バリア層の形成に関わる問題を解決するために使用されている手法の1つは、複数の重合体/金属酸化物層をまとめて積み重ねてバリアスタックを形成することである。重合体層と金属酸化物層を結合することにより、1つの重合体/バリア酸化物スタックの欠陥を次の重合体/バリア酸化物スタックから分離し、それにより1つの無機層から次の無機層への酸素/湿気の伝搬を遅くすることができることが分かっている。
【0008】
[008]Vitex社は、米国特許第6,866,901号で、有機重合体を含む重合体多層(PML)によって分離された複数のスパッタ堆積されたアルミニウム酸化物無機層を備えた多層バリアスタックを開示している。この多層バリアスタック設計は、多層バリアスタック中の連続する2つのバリア酸化物層の欠陥を分離する原理に基づいている。最近のモデリング研究は、有機/無機多層による欠陥分離によって湿気及び酸素の拡散経路が曲がりくねった経路になり、それにより浸透率を数桁小さくすることを提案している。
【0009】
[009]この開発にもかかわらず、10−5g/m/日より良好で、さらには10−6g/m/日のより良好なレベルの超高バリア性能を達成するためには、極めて多数の分厚いバリア酸化物及び重合体中間層が必要である。1つの層のピンホールと他の層の欠陥が整列しているかどうかなどの要因のため、総合的なバリア性能は依然として変化する。多層スタック手法の他の限界は、接着性に乏しく、また、スパッタ堆積及びPML形成プロセスの性質によって無機層及び有機層が結合構造の弱い鋭い界面を有しているため、とりわけOLED製造プロセスの熱サイクルの間、層間剥離が頻繁に生じる問題を抱えていることである。また、これは、透過品質が劣り、且つ、容易にクラックが生じる分厚いパネルをもたらす原因にもなっている。
【0010】
[010]HELICON Research社は、米国特許出願第2005/0051763号で、有機材料による多孔性無機層の浸透によって形成された有機/無機ナノコンポジット構造を開示している。このコンポジット構造は、真空堆積技法によって製造されている。前述の技法とは対照的に、この文書は、プラスチック基板上への多孔性無機バリア層の製造と、それに引き続いて、有機材料が多孔性無機材料中に浸透して連続層を形成するよう、バリア層への有機材料の堆積を教示している。
【0011】
[011]General Electric社は、EP 1 164 644で、OLEDの製造に必要な熱に耐え、且つ、デバイスからの最適光透過を可能にする、厚さ125ミクロンの基板を可能にする透明Lexan(商標)膜特性の高い耐温度性及び高い透明性を利用したバリアシステムを開示している。バリアコーティングは、プラズマ化学気相成長を使用して基板に付着される酸化ケイ素化合物からなっている。バリアコーティングは、光の透過を促進しつつ、酸素、湿気、化学薬品及び電子伝導率によるデバイスの劣化を防止している。さらに、ベース基板には湿気と反応するナノ粒子が組み込まれている。
【0012】
[012]重合結合剤中に分散している鉱物粘土ナノ粒子を含有したナノコンポジットバリア材料が開発され、食品包装材料に使用されている。たとえば、米国特許第5,916,685号に、非反応性粘土ナノ粒子を含有した外部重合体層を備えた多層バリア積層物が開示されており、外部重合体層にはその中に分散している重合体層の約0.1重量%から10重量%の量の非反応性粘土ナノ粒子を含有している。この重合体層は、内部金属酸化物バリア層の上に配置されている。バリア積層物は、24時間の期間にわたって約0.61g/m/日の水蒸気透過率に到達しており、OLEDカプセル封入のためには明らかに不適切である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[013]したがって既存のカプセル封入構造のバリア性能には依然として限界が存在している。本発明の目的は、バリア特性が改善された、製造が安価な代替バリアスタックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[014]本発明の第1の態様によれば、湿気及び/又は酸素に敏感な物品をカプセル封入することができるカプセル封入バリアスタックが提供される。カプセル封入バリアスタックは、
湿気及び/又は酸素の浸透性が小さい少なくとも1つのバリア層と、該少なくとも1つのバリア層の表面と接触するように配置され、それによりバリア層に存在する欠陥をカバーする少なくとも1つの封止層とを有する多層膜を備えており、該少なくとも1つの封止層は、湿気及び/又は酸素と相互作用することができる反応性ナノ粒子を含有しており、それによりバリア層に存在する欠陥を介して湿気及び/又は酸素が浸透することを妨げる。
【0015】
[015]本発明の他の態様によれば、湿気及び/又は酸素に敏感な反応性部品を備えた電子デバイスが提供される。前記反応性部品は、本発明の第1の態様によるカプセル封入バリアスタック内に配置される。
【0016】
[016]また、本発明は、本発明の第1の態様によるカプセル封入バリアスタックを製造するための方法を対象としている。この方法には、
少なくとも1つのバリア層及び少なくとも1つの封止層を交互に連続的に形成するステップが含まれており、該少なくとも1つの封止層を形成するステップには、重合可能化合物とナノ粒子分散物を混合するステップであって、それにより封止混合物が形成されるステップと、真空の下で、該少なくとも1つのバリア層の上で封止混合物を重合させるステップが含まれている。
【0017】
[017]本発明は、反応性ナノ粒子を含有した封止層を無機バリア層に結合することにより、湿気又は酸素がバリア層を浸透する割合を効果的に小さくすることができることを発見したことに基づいている。既存のバリア層製造方法の改善を探求するのではなく、本発明には、バリア層に存在する欠陥に栓をするために、湿気及び/又は酸素を吸着するか或いは湿気及び/又は酸素と化学反応する反応性ナノ粒子が利用されている。金属酸化物バリア層に典型的に存在する欠陥の問題を取り扱っているこの手法は、既存のプロセスに統合することができる場合、安価に実施することができる。また、本発明者らは、バリア特性の改善とは別に、ナノ粒子を含有した封止層を使用することにより、これらのナノ粒子によって高い表面粗さが提供され、そのためにバリア層とバリア層の間の積層が改善されることを見出した。厳格なアプリケーションの場合、反応性ナノ粒子を含有した重合体中間層が介在する複数のバリア膜を使用して、高レベルのガス不浸透性を達成することができる。無機バリア膜に存在する欠陥の問題に対するこの解決法は、有機欠陥分離層の厚さがバリア層に存在する欠陥と欠陥の間の典型的なオフセット距離より小さいことが超高バリア性能を達成するためのキーとなる要求事項であることを示している二次元有限要素モデリングによってサポートされている。
【0018】
[018]本発明によるカプセル封入バリアスタックは、上記の発見に基づいて、ガス浸透性が小さい少なくとも1つのバリア層を有する多層膜と、バリア層の表面と接触するように配置された少なくとも1つの封止層とを備えている。封止層は、湿気及び/又は酸素と相互作用することができる反応性ナノ粒子を含有しており、それによりバリア層に存在する欠陥を介してそれらがバリアスタックを浸透することを妨げている。
【0019】
[019]バリア層に存在する「欠陥」は、ピット、ピンホール、マイクロクラック及び粒界などの構造欠陥を意味している。このような構造欠陥は、バリア層が典型的に製造される、化学気相成長並びにロールツーロールプロセスなどの堆積プロセスから製造されるあらゆるタイプのバリア層に存在することが知られている。ガスはこれらの欠陥を浸透することができ、したがって貧弱なバリア特性をもたらす原因になっている(Mat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.783、2003、B6.10.1〜B610.6を参照)。
【0020】
[020]「反応性」ナノ粒子は、化学反応(たとえば加水分解又は酸化)若しくは物理的相互作用又は物理化学的相互作用(たとえば毛管作用、吸着、親水性引力又はナノ粒子と水/酸素の間の他の任意の非共有結合性の相互作用)のいずれかによって湿気及び/又は酸素と相互作用することができるナノ粒子を意味している。反応性ナノ粒子は、水及び/又は酸素と反応する金属を含有することができ、或いはこれらの金属からなっていてもよい。つまり、2属から14属(IUPAC)の金属を含む、反応性シリーズにおいて水素より上の金属を使用することができる。好ましいいくつかの金属には、2属、4属、10属、12属、13属及び14属の金属がある。これらの金属は、たとえば、Al、Mg、Ba及びCaから選択することができる。たとえばTi、Zn、Sn、Ni及びFeを始めとする反応性遷移金属を使用することも可能である。
【0021】
[021]金属以外では、反応性ナノ粒子は、湿気及び/又は酸素と相互作用することができる特定の金属酸化物を含有することも、或いはそれらからなっていてもよく、たとえばTiO、Al、ZrO、ZnO、BaO、SrO、CaO及びMgO、VO、CrO、MoO及びLiMnを始めとする金属酸化物を使用することも可能である。特定の実施形態では、金属酸化物は、スズ酸カドミウム(CdSnO)、インジウム酸カドミウム(CdIn)、スズ酸亜鉛(ZnSnO及びZnSnO)及び酸化亜鉛インジウム(ZnIn)からなるグループから選択される透明な導電性金属酸化物を含むことができる。
【0022】
[022]この点に関して、反応性は、場合によっては、使用される材料の大きさで決まることは当業者には明らかである(J.Phys.Chem.Solids 66(2005)546−550を参照)。たとえば、Al及びTiOは、ナノ粒子の形態の湿気と反応するが、一般的にはナノ粒子の寸法である数ナノメートルから数百ナノメートルのナノスケールの寸法を超えるマイクロスケール又はミリメートルスケールのバリア層などの(連続)バルク相では反応しない(或いは非常にわずかに反応する)。したがって、説明に役立つ例としてAl及びTiOを使用する場合、Al及びTiOナノ粒子は、湿気と反応するものと見なされ、一方、Al及びTiOバルク層は、湿気との反応性が小さい不活性のバリア層である。一般に、反応性金属又は金属酸化物ナノ粒子、たとえばAl、TiO或いはZnOナノ粒子は、反応性を維持するために適切なコロイド分散で存在させることが可能であり、また、従来の任意の方法又はNanophase Technologies CorporationのNanoArc(登録商標)方法などの特許製法を使用して合成することができる。
【0023】
[023]また、封止層中の反応性ナノ粒子は、金属及び金属酸化物とは別に、カーボンナノチューブ、ナノリボン、ナノファイバ及び寸法がナノスケールである任意の規則的又は不規則的形状の炭素粒子などの炭素ナノ粒子を含有することができ、或いはそれらからなっていてもよい。カーボンナノチューブの場合、単層又は多層のカーボンナノチューブを使用することができる。本発明者らによって実施された研究の一環として、カーボンナノチューブ(CNT)を乾燥剤として作用させることができることが分かった。カーボンナノチューブは、毛管作用を介して、表面張力が小さい液体、詳細には表面張力が約200Nm−1を超えない液体で濡らすことができる(Nature、801頁、412巻、2001年)。原理的には、これは、場合によっては、毛管吸引によって水分子をカーボンナノチューブの開放端に引き込むことができることを意味している。水分子は、カーボンナノチューブ内に擬似一次元構造を形成することができ、それにより微小体積の酸素及び水分子の吸収及び保持を促進することができることが提案されている。カーボンナノチューブの量を最大化することによって湿気及び/又は酸素の吸収を最大化することも可能であるが、本発明者らは、実際にはもっと少量でも同じく適切であることを見出した。たとえば、カーボンナノチューブは、存在するナノ粒子の約0.01から10重量%の少量で使用することが可能である。もっと濃度の高いカーボンナノチューブを使用することも可能であるが、カーボンナノチューブの濃度を高くすると、それに応じてカプセル封入バリアスタックの透明度が低下することになる。
【0024】
[024]一実施形態では不活性ナノ粒子が封止層に含まれており、反応性ナノ粒子と共に使用されている。本明細書において使用されているように、「不活性ナノ粒子」は、湿気及び/又は酸素とも全く相互作用しないナノ粒子、或いは反応性ナノ粒子と比較すると狭い範囲で反応するナノ粒子を意味している。このようなナノ粒子を封止層に含有して、封止層を介して酸素及び/又は湿気が浸透することを阻止することができる。不活性粒子の例には、米国特許第5,916,685号に記載されているようなナノ粘土が含まれている。このようなナノ粒子は、バリア層に存在する欠陥に栓をする働きをし、それにより浸透が生じる経路を阻止するか或いは少なくとも欠陥の断面積を減少させ、ひいては水蒸気又は酸素が欠陥を介して拡散する浸透経路がはるかに曲がりくねった経路になり、したがってバリア層が破損するまでの浸透時間が長くなり、それによりバリア特性が改善される。
【0025】
[025]また、不活性ナノ粒子に適した他の材料は、銅、白金、金及び銀などの非反応性金属、シリカ、ケイ灰石、ムライト、モンモリロナイトなどの鉱物又は粘土、希土類元素、ケイ酸塩ガラス、フルオロケイ酸塩ガラス、フルオロホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ケイ酸カルシウムガラス、ケイ酸アルミニウムカルシウムガラス、フルオロケイ酸アルミニウムカルシウムガラス、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素又は窒化ケイ素、金属硫化物及びそれらの混合物又は組合せを含むことも可能である。ナノ粘土粒子などの不活性ナノ粒子のみを有する封止層を備えたカプセル封入バリアスタックは、本発明の範疇ではない。
【0026】
[026]本発明者らは、理論に縛られることなく、タイプが異なるナノ粒子の組合せを使用することによって強力なバリア特性を達成することができることを確信している。タイプが異なるナノ粒子の吸収/反応特性を研究することにより、単一種類の材料の場合より強力なバリア効果を達成するために互いに補い合うナノ粒子の組合せを選択することが可能になる。たとえば、異なる種類の反応性ナノ粒子を封止層に使用することができ、或いは反応性ナノ粒子と不活性ナノ粒子の組合せを使用することも可能である。
【0027】
[027]上記によれば、封止層は、カーボンナノチューブと金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子の組合せを備えることができる。一例示的実施形態は、TiO/Alナノ粒子とカーボンナノチューブの組合せであってもよい。任意の範囲の定量比率を使用することができ、また、その範囲に応じて、通常の実験を使用して最適化することができる。一例示的実施形態では、存在する金属酸化物ナノ粒子の量は、カーボンナノチューブの量の500倍から15000倍(重量で)である。原子量が小さい金属の酸化物の場合、より小さい比率を使用することができる。たとえば、TiOナノ粒子をカーボンナノチューブと組み合わせ、それには限定されないがTiOに対するカーボンナノチューブの比率を約1:10から約1:5の重量比率で使用することができる。
【0028】
[028]本発明によるカプセル封入バリアスタックを使用して、たとえば電子デバイス、薬品、食品及び反応性材料などの湿気及び/又は酸素に敏感なあらゆるタイプの物品をカプセル封入することができる。エレクトロルミネセントデバイスをカプセル封入する場合、カプセル封入バリアスタックを透過する光の品質がとりわけ重要である。したがって、カプセル封入バリアスタックをカバー基板として頂部放出OLEDの上に使用する場合、或いはTOLED又はシースルーディスプレイ用にカプセル封入層を設計する場合、カプセル封入バリアスタックがエレクトロルミネセントデバイスを透過する光の品質を実質的に劣化させる原因になるべきでない。
【0029】
[029]上記要求事項に基づいて、光学的透明度が維持される方法で粒子の大きさを選択することができる。一実施形態では、封止層は、エレクトロルミネセント電子部品によって生成される光の特性波長の1/2未満の平均サイズ、より好ましくは1/5未満の平均サイズを有するナノ粒子を含有している。この場合、特性波長は、エレクトロルミネセントデバイスによって生成される光スペクトルがピーク強度になる波長として定義されている。可視光を放出するエレクトロルミネセントデバイスの場合、この設計要求事項は、約350nm未満、より好ましくは200nm未満の寸法を有するナノ粒子に書き換えられる。
【0030】
[030]バリア層の欠陥に存在するナノ粒子のランダム充填密度は、そのナノ粒子の形状及びサイズ分布で決まるため、バリア酸化物層の欠陥の封止を正確に制御するためには、形状及びサイズが異なるナノ粒子を使用することが有利である。ナノ粒子は、1つの一様な形状で存在させることができ、或いは複数の形状で形成することができる。ナノ粒子に持たせることができる可能形状には、球面形状、棒形状、楕円形状又は任意の不規則形状がある。ナノ粒子の形状が棒形の場合、それには限定されないが、それらの直径を約10nmから50nmにし、長さを50nmから400nmにすることができ、また、5を超えるアスペクト比にすることができる。
【0031】
[031]バリア層を浸透する水蒸気/酸素と反応性ナノ粒子との間の有効な相互作用を提供するために、欠陥を塞ぐナノ粒子は、水蒸気及び酸素と接触可能な表面積を最大化することができる適切な形状を有してもよい。これは、体積に対する表面積の比率、或いは重量に対する表面積の比率が大きくなるようにナノ粒子を設計することができることを意味している。一実施形態では、ナノ粒子は、重量に対する表面積の比率が約1m/gから約200m/gである。この要求事項は、異なる形状を有するナノ粒子、たとえば上で説明したような2つ、3つ又は4つ以上の異なる形状を有するナノ粒子を使用することによって達成することができる。
【0032】
[032]ナノ粒子が分散している結合剤を封止層の中に使用することができる。結合剤としての使用に適した材料には、少なくとも1つの重合可能基を有し、且つ、容易に重合させることができる単量体からの誘導が可能な重合体などの重合体がある。この目的に適した重合体材料の例には、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエポキシド、パリレン、ポリシロキサン及びポリウレタン又は他の任意の重合体がある。連続する2つのバリア層の間の強力な接着のために、或いは基板の上に多層膜を接着するために、良好な接着品質を備えた重合体を選択することができる。ナノ粒子を含有した封止層は、通常、単量体溶液に混合されたナノ粒子を含有する分散物、たとえば少なくとも1つの重合可能基を有する不飽和有機化合物でバリアをコーティングすることによって形成される。ナノ粒子が中に分散している結合剤を含有した封止層の厚さは、約2nmから約数マイクロメートルの範囲にすることができる。
【0033】
[033]いくつかの実施形態では、封止層は、バリア層の表面全体に近接するように配置される。たとえば、封止層は、バリア層の上に、封止層の形状とバリア層の表面に存在する欠陥の形状が一致する方法で形成することができる。つまり、少なくとも1つのバリア層に存在しているピット全体を塞ぐ又は充填するか、或いはバリア層の表面の粗い突起を平坦化することによって形成することができる。この方法によれば、腐食性ガスがカプセル封入バリアスタックを浸透する原因となる欠陥に「栓」が施され、また、平坦化されなければバリア層とバリア層の間の貧弱な界面接触の原因になる突起が平坦化される。任意のコンフォーマルコーティング方法又はコンフォーマル堆積方法を使用することができ、たとえば化学気相成長又はスピン塗布を使用することができる。原子層堆積及びパルスレーザ堆積を使用して封止層を形成することも可能である。
【0034】
[034]多層膜のバリア層を形成するために使用されるバリア材料は、バルク相の水蒸気及び/又は酸素に対する浸透性が小さい任意の典型的なバリア材料から構成することができる。たとえば、バリア材料は、金属、金属酸化物、セラミック、無機重合体、有機重合体及びそれらの組合せを含むことができる。一実施形態では、バリア材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、TiAlN、SiO、SiC、Si、TiO、HfO、Y、Ta及びAlから選択される。バリア層の厚さは、20nmから80nmにすることができる。この点に関して、材料の反応性はそのサイズで決まるため、反応性ナノ粒子のための材料はバリア層として使用することが可能である。たとえば、ナノ粒子Alは水と反応するが、寸法がナノスケール寸法より大きいAlのバルク層は、水と同じレベルの反応性を示さないため、バリア層に使用することができる。
【0035】
[035]良好な機械的強度を持たせるためにカプセル封入バリアスタックを必要とする特定のアプリケーションの場合、基板を設けて多層膜を支持することができる。基板は、可撓性基板であっても剛性基板であってもよい。基板は、いくつかの説明に役立つ例を挙げると、ポリアセテート、ポリプロピレン、ポリイミド、セロハン、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、酸化ポリジメチルフェニレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン、ニトロセルロース、セルロース、ガラス、インジウムスズ酸化物、ナノ粘土、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄又はポリフォスファーゼンなどの様々な任意の適切な材料から構成することができる。ベース基板は、外部環境に露出されるように配置することができ、及び/又はカプセル封入された環境に露出することができる。食品を包装する場合、基板は、食品と接触する内部表面に露出することができ、一方、カプセル封入バリアスタックが大気条件と接触する外部表面を形成することになる。
【0036】
[036]場合によっては基板の上に多層膜を直接形成することも可能であるが、表面が粗い基板は、多層膜のバリア層に直接接触させる場合、場合によっては望ましくないこともある。多層膜と基板の間に界面層を提供し、それらの間の接触を改善することができる。一実施形態では、基板と多層膜の間の界面が改善されるよう、基板と多層膜の間に平坦化層が挿入されている。平坦化層は、エポキシなどの適切な任意のタイプの重合体接着剤を含有することができる。ポリアクリレートは、強力な水吸収特性を有していることで知られており、したがって好ましい実施形態では、平坦化層はポリアクリレート(アクリル重合体)を含有している。平坦化層が存在しない場合は、たとえば封止層が基板の表面に接触するように多層膜を配向することができる。
【0037】
[037]1つの封止層に結合された単一のバリア層、つまり単一の「ペア層」のバリア効果は付加的であり、これは、一体に結合されるバリア/封止層のペアの数と多層膜の総合バリア特性が比例することを意味している。したがって高いバリア特性を必要とするアプリケーションの場合、複数のペア層を使用することができる。一実施形態では、個々のバリア層が個々の封止層の頂部に交互に連続的に積み重ねられている。つまり、個々の封止層は、2つのバリア層の間の界面層として作用している。いくつかの実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのペア層が多層膜の中に存在している。水蒸気及び酸素の浸透率がそれほど厳格ではない(たとえば10−3g/m/日未満の)汎用アプリケーションの場合、多層膜は、1つ又は2つのバリア層のみを含むことができ(したがって、1つ、2つ又は3つの封止層が対応して存在することになる)、一方、より厳格なアプリケーションの場合、多層膜は、10−5g/m/日未満、好ましくは10−6g/m/日未満の水蒸気浸透率を達成するために、3つ、4つ、5つ又は6つ以上のバリア層を含むことができる。2より多くのペア層を使用する場合、二重積層基板を提供するために基板の両面に個々のペア層を形成することができ、或いはそれらを基板の同じ面に形成することができる。
【0038】
[038]多層膜を機械的な損傷から保護するために、多層膜に蓋をし、或いは終端保護層で多層膜を覆うことができる。終端層は、良好な機械的強度及び耐ひっかき性を有する任意の材料から構成することができる。一実施形態では、終端層は、中にLiF粒子及び/又はMgF粒子が分散したアクリル膜から構成されている。
【0039】
[039]本発明によるカプセル封入バリアスタックは、ケーシング若しくはハウジングの構築、又はブリスタパックのためのバリアフォイルなどの適切な任意のバリアアプリケーションのために使用することができ、或いは電子部品上のカプセル封入層として使用することができる。また、カプセル封入バリアスタックは、食品及び飲料の包装材料など、既存の任意のバリア材料上に積層し、それらの既存のバリア特性を改善することも可能である。好ましい一実施形態では、カプセル封入バリアスタックを使用して、湿気及び/又は酸素に敏感な反応層を備えたエレクトロルミネセント電子部品を保護するためのカプセル封入が形成されており、このカプセル封入の中にエレクトロルミネセント部品がカプセル封入されている。このようなデバイスの例には、それらに限定されないが、有機発光デバイス(OLED)の中に含まれている反応性部品、電荷結合素子(CCD)及び超小型電気機械センサ(MEMS)がある。
【0040】
[040]OLEDアプリケーションの場合、カプセル封入バリアスタックを使用して、OLEDデバイスの能動部品を分離するカプセル封入の任意の部品を形成することができる。一実施形態では、カプセル封入バリアスタックを使用して、エレクトロルミネセント部品の反応層を支持するためのベース基板が形成されている。縁で封止する構造の場合、カプセル封入バリアスタックを使用して、エレクトロルミネセント部品の反応層の上に配置される硬いカバーを形成することができる。この硬いカバーは、少なくとも実質的にカバー基板の縁に沿って配置される接着層によってベース基板に取り付けることができ、それにより反応性部品の周りに筐体を形成することができる。カバー層又は接着層の幅は、反応性部品を含んだ筐体の中への酸素/湿気の横方向の拡散を最小化するために、カプセル封入バリアスタックの厚さより大きくすることができる。
【0041】
[041]他の実施形態では、カプセル封入バリアスタックを使用して、エレクトロルミネセント部品をベース基板に対して封止する可撓性カプセル封入層が形成されている。この場合、このようなカプセル封入層は、エレクトロルミネセント部品の表面を包み込んで、「近接カプセル封入」を形成することができる。したがって、カプセル封入層の形状と反応性部品の形状が一致し、カプセル封入すべきエレクトロルミネセント部品とカプセル封入層の間に隙間は残されない。
【0042】
[042]本発明は、さらに、本発明によるカプセル封入バリアスタックを形成する方法を対象としている。この方法には、少なくとも1つのバリア層及び少なくとも1つの封止層を形成するステップが含まれている。封止層には反応性ナノ粒子が含まれているため、湿気及び/又は酸素とのナノ粒子の反応性を維持するためには、封止層の準備及びその使用を含むステップは、真空の下で実施されることが好ましい。封止層を形成するステップには、封止混合物を形成するために重合可能化合物とナノ粒子分散物を混合するステップ、及び封止層を形成するために封止混合物を真空下で重合させるステップが含まれている。ナノ粒子分散物は、少なくとも1つの有機溶剤中に分散したナノ粒子を含有することができる。この少なくとも1つの有機溶剤は、たとえば、エーテル、ケトン、アルデヒド及びグリコールなどの適切な任意の溶剤を含有することができる。
【0043】
[043]ナノ粒子は、たとえば、気相合成(Swihart、Current Opinion in Colloid and Interface Science 8(2003)127−433)、ゾル−ゲル処理、音響化学処理、キャビテーション処理、マイクロエマルジョン処理及び高エネルギーボールミリングを始めとする当分野で知られている従来の任意の方法で合成することができる。また、ナノ粒子は、たとえばNanophase Technologies Corporationのナノ粒子粉末又は既製分散物のいずれかとして商用的に入手することができる。NanoArc(登録商標)合成などの特許製法を使用して、商用的に得られたナノ粒子を合成することも可能である。
【0044】
[044]一実施形態では、湿気及び/又は酸素と反応するナノ粒子の能力を妨害することになる可能性のある汚染物質をナノ粒子の表面から除去するために、ナノ粒子の表面活性化が実施されている。表面活性化には、塩酸又は硫酸などの鉱酸を始めとする酸を使用したナノ粒子の処理を含むことができる。前記処理のために使用される酸は希酸であることが好ましい。処理には、約1時間の間、ナノ粒子を酸に浸すステップが含まれている。カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバなどの容易に汚染される可能性のあるナノ粒子は、場合によっては表面活性化が必要であることに留意されたい。一方、酸化アルミニウム及び酸化チタンなどのナノ粒子は、高い表面エネルギーを有するため、表面活性化が不要な場合もある。
【0045】
[045]重合可能化合物には、容易に重合させることができる任意の単量体を使用することができる。これらの適切な単量体は、UV硬化又は熱硬化或いは他の任意の便利な硬化方法により容易に重合させることができることが好ましい。
【0046】
[046]一実施形態では、ナノ粒子を結合するための重合体としてポリアクリルアミドが使用されている。2−メトキシエタノール(2MOE)及びエチレングリコール(EG)などの極性有機溶剤にアクリル酸単量体粉末を溶解させることができる。ナノ粒子を封止混合物中に一様に分散させるために、封止混合物の超音波処理を追加で実施することができる。超音波処理は、たとえば、重合化に先立って少なくとも30分間、実施することができる。
【0047】
[047]基板は、カプセル封入すべきデバイスの一部、たとえば回路基板の一部であってもよいし、或いはカプセル封入の一部として含まれている追加構造、たとえば可撓性基板であってもよい。また、基板は、カプセル封入バリアスタックの一部であってもよく、更なる封止層及びバリア層が連続してその上に堆積される分厚いバリア層を備えてもよい。そうでなければ、基板は、多層膜を製造するためのワークトップの表面であってもよく、したがってカプセル封入バリアスタックの一部を形成していなくてもよい。
【0048】
[048]基板が提供されると、基板にバリア層及び封止溶液をコーティングすることができる。バリア層は、物理気相成長(たとえばマグネトロンスパッタリング、熱蒸発又は電子ビーム蒸発)、プラズマ重合化、CVD、印刷、スピンニング、チップ又はディップコーティングプロセスを含む従来の任意のコーティングプロセスにより形成することができる。
【0049】
[049]封止溶液は、スピン塗布、スクリーン印刷、WebFlight方法、チップコーティング、CVD法又は従来の他の任意のコーティング方法などの任意のゾルゲル法によりバリア層の上に形成することができる。金属酸化物及び金属ナノ粒子並びにカーボンナノチューブは、パリレン系重合体膜の単量体又は二量体と共に共蒸発させることができる。パリレンC又はD或いは他の任意の等級を始めとする任意のタイプのパリレン二量体をナノ粒子と共に蒸発させることができる。
【0050】
[050]複数のバリア層/封止層すなわちペア層を形成する場合、基板にバリア材料及び封止溶液を何度もコーティングすることができる。連続するバリア層及び封止層を備えた交互構造を確立するために、最初に基板にバリア材料をコーティングし、次に、封止溶液をコーティングし、意図する数の層が形成されるまで複数回にわたって繰り返す。封止溶液を塗布する毎に、その上に次のバリア層を形成する前に、封止溶液をUV硬化することが好ましい。
【0051】
[051]封止層及びバリア層を形成した後、任意選択のステップを実行して、ガラスカバー、ITOライン及びITOコーティングを形成するなどしてカプセル封入バリアスタックの構築を完成してもよい。たとえば、受動マトリックスディスプレイの場合、カプセル封入バリアスタックの上にITOラインを形成することが必要かもしれない。カバーを形成した後、キャッピング層(MgF/LiFコーティング)を堆積させることにより、カバーの露出表面を保護コーティングでさらに保護することができる。
【0052】
[052]本発明のこれらの態様については、以下の説明、図面及び非制限実施例によってより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
[053]以下、説明に役立つ実施形態について、添付の図面を参照して、非制限実施例のみによって説明する。
【図1A】本発明の一実施形態によるカプセル封入バリアスタックを示す図である。
【図1B】従来のバリアスタックを示す図である。
【図1C】ベース基板を備えたカプセル封入バリアスタックの他の実施形態を示す図である。
【図1D】ベース基板を備えたカプセル封入バリアスタックの他の実施形態を示す図である。
【図2A】OLEDデバイスをカプセル封入するためのカプセル封入バリアスタックの様々な実施態様を示す図である。
【図2B】OLEDデバイスをカプセル封入するためのカプセル封入バリアスタックの様々な実施態様を示す図である。
【図2C】OLEDデバイスをカプセル封入するためのカプセル封入バリアスタックの様々な実施態様を示す図である。
【図3】カプセル封入バリアスタックを製造するためのプロセス工程図である。
【図4】カルシウムセンサを使用して製造されたカプセル封入バリアスタックのバリア特性の調査を実施するための構成を示す図である。
【図5】カルシウムセンサを使用して製造されたカプセル封入バリアスタックのバリア特性の調査を実施するための構成を示す図である。
【図6】湿気にさらされた後の4つの異なるカプセル封入バリアスタック、スタックA、B、C及びDの光学画像を示す図である。
【図7】本発明に従って製造された3つのカプセル封入バリアスタックAからCの倍率が70倍のSEM画像を示す図である。
【図8】本発明に従って製造された3つのカプセル封入バリアスタックAからCのモフォロジーを示す図である。
【図9】キャッピングアクリル膜を備えた本発明のカプセル封入バリアスタックの一実施形態を示す図である。このカプセル封入バリアスタックは定量分析のために使用された。
【図10】図9に示されているカプセル封入バリアスタックのコンダクタンス対時間を示すグラフである。
【図11】図9に示されているカプセル封入バリアスタックの透過率対波長を示すグラフである。
【図12】バリアスタックD、E及びFの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【図13】カプセル封入バリアスタックA、C、D、E及びFの透過率対波長を示すグラフである。
【図14】カプセル封入バリアスタックD、E及びFのコンダクタンス対時間を示すグラフである。
【図15】バリアスタックD、G及びHの負荷ひずみ性能曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[068]図1Aは、本発明によるカプセル封入バリアスタック100の一実施形態を示したものである。カプセル封入バリアスタック100は、バリア層103及び封止層105を備えた多層膜102を備えている。バリア層103は、酸素及び/又は湿気に対する小さい浸透性を有している。バリア層103には、バリア層103の厚さにわたって延在しているピンホール欠陥107が含まれていることに留意されたい。酸素及び水蒸気はこれらの欠陥を介してバリア層中に浸透し、最終的にはカプセル封入バリアスタックを横切って、酸素/湿気に敏感なデバイスと接触することになるため、これらのピンホール欠陥は、他のタイプの構造欠陥と共にバリア層のバリア性能を制限している。図1Aには、説明用としてピンホール欠陥のみが示されている。実際には、場合によってはピット及びクラックなどの他のタイプの構造欠陥も存在している。
【0055】
[069]封止層105には、水蒸気及び/又は酸素と相互作用し、それによりカプセル封入バリアスタックを介して酸素/湿気が浸透することを妨げることができる反応性ナノ粒子が含まれている。本発明によれば、これらの欠陥は少なくとも部分的に覆われるか、或いはいくつかの実施形態では欠陥全体が封止層105中のナノ粒子によって充填される。
【0056】
[070]図1Bは、基板121の上に配置されたバリア層123及び平坦化接着層125を備えた従来のバリアスタック120を示したものである。無機金属酸化物バリア層は比較的大きいガス不浸透性を有しているが、バリア層にはピンホール欠陥が存在しており、バリア層を介した湿気及び酸素の浸透を許容している。図では、バリア層123に存在しているピンホール欠陥127は環境に露出されており、したがって湿気及び酸素は、バリア層を介して浸透することができる。たとえば、酸素及び湿気は、ピンホール欠陥を介してバリア層1231を貫通して浸透し、次に、接着層1251を介して徐々に浸透し、引き続いてバリア層1232及び接着層1252を介して浸透し、通常は酸素/湿気に敏感なデバイスが配置されている基板121に到達することになる。
【0057】
[071]図1Cは、本発明によるバリアスタック140のさらに他の実施形態を示したものであり、多層膜142は、1つのバリア層143及びその上に配置された唯一の封止層145を備えている。バリアスタック140は、さらに、多層膜を支持するためのベース基板141を備えている。ベース基板141と多層膜142の間に、多層膜と基板の間の接触を改善するための平坦化層144が挿入されている。この実施形態による単一のペア層は、バリア要求事項がそれほど厳格ではないアプリケーションのために使用することができる。
【0058】
[072]上記実施形態は、基板の一方の面にのみ多層膜が積層されたカプセル封入バリアスタックを示したものである。図1Dは、ベース基板の両面に多層膜が積層された二重積層基板を示したものである。カプセル封入バリアスタック160は、2つの多層膜1621と1622の間にはさまれた基板161を備えている。多層膜1621は、3つのバリア層163及び3つのナノ粒子封止層165を備えている。多層膜1622は、1つのバリア層及び2つの封止層を備えている。対応する個々の層は、いずれの場合にも封止層が2つのバリア層の間の中間層を形成するよう、交互に連続的に配置されている。この実施形態では、封止層165と基板161が直接接触しており、したがって封止層165は平坦化層として機能している。この実施形態は、5つのペア層を基板の上に形成することにより、ガスバリア特性の高いカプセル封入バリアスタックを提供している。
【0059】
[073]本発明によるカプセル封入バリアスタックは、OLEDなどの湿気及び酸素に敏感なデバイスをカプセル封入するために種々の方法で使用することができる。たとえば、本発明によるカプセル封入バリアスタックは、OLEDを支持するために使用される従来の重合体基板の上に積層することができる。図2Aは、縁で封止されたカプセル封入の中に電極214及び反応層216を備えた、カプセル封入されたOLEDを示したものである。この実施形態では、カプセル封入バリアスタックは、ベース基板201及び多層膜212を備えている。ベース基板201は、バリア層203及び該バリア層203をはさんでいる2つの封止層205を備えた多層膜212と共に積層されている。バリア層203に存在しているピンホール欠陥207は、封止層のナノ粒子材料によって封止されている。OLEDは、多層膜212の上に直接配置されており、ガラスカバー210の下方でカプセル封入されている。縁接着剤209は、ガラスカバー210をカプセル封入バリアスタックに接着し、それによりOLEDの周りにカプセル封入を形成する働きをしている。
【0060】
[074]図2Bは、本発明によるカプセル封入バリアスタックがカバー基板として使用されている他の実施形態を示したものである。基板201は、カプセル封入バリアスタックによっては積層されていない(必要に応じて積層することは可能であるが)。硬い多層膜222を備えたカプセル封入バリアスタック(基板はない)がガラスカバーの代わりをしている。この多層膜も、同様に、封止層205の間にはさまれたバリア層203を備えており、その欠陥207にはナノ粒子材料が充填されている。OLEDは多層膜の下方でカプセル封入されている。これは、OLEDによって放出される光を鮮明に見るためには、多層膜222を十分に透明にしなければならないことを意味している。多層膜222は、縁接着剤209によってベース基板に取り付けられている。図2A又は図2Bに示されているように縁での封止を実施する場合、縁接着剤の幅は、通常、ミリメートル又はセンチメートルのスケールであり、これは、ベース基板又はカプセル封入バリアスタックの厚さより実質的に大きい。したがって、縁接着剤を介した水蒸気及び酸素の横方向の拡散は、このような場合、カプセル封入されたバリアスタックを介した横方向の拡散より実質的に長くなる。
【0061】
[075]図2A及び図2Bに示されている縁での封止以外に、次の図では、OLEDの上にカプセル封入バリアスタックの接続を備えた薄膜カプセル封入(以下、「近接カプセル封入」とする)も可能である。近接カプセル封入は、とりわけフレキシブルOLEDデバイスに適している。図2Cは、電極214及び反応層216を備えたOLEDが、可撓性ベース基板201と、多層膜232を備え、OLEDの上に近接して配置された可撓性カプセル封入バリアスタックとの間にカプセル封入された一実施形態を示したものである。多層膜232の形状は、OLEDデバイスの外部形状と一致していることに留意されたい。
【0062】
[076]図2A、2B及び2Cは、OLEDのカプセル封入を示したものであるが、本発明によるカプセル封入バリアスタックは、このようなアプリケーションに何ら限定されない。OLEDの代わりに、たとえば、薬品、宝石、反応性金属、電子部品及び食品を始めとする任意の物品をカプセル封入することができることは当業者には理解されよう。
【0063】
[077]図3は、本発明によるカプセル封入バリアスタックを製造するための一般的なスキームを示したものである。カプセル封入バリアスタックを形成するためにポリカーボネート基板又はPET基板が提供される。この基板がプラズマ処理され、また、マグネトロンスパッタリングによってアルミナバリア材料でコーティングされ、それによりバリア層が形成される。それと同時に、アルミナ及びTiOナノ粒子を含有した封止溶液がアクリル酸単量体溶液と混合され、それにより封止溶液が形成される。この封止溶液が、たとえばロールツーロールプロセスを介してバリア層の上にウェブフライトコーティングされる。バリア層及び封止層のコーティングは、所望のバリア特性を備えた多層膜を得るために所定の回数だけ繰り返される。たとえば、5つのペア層を備えた多層膜の場合、5つのペア層を形成するためにマグネトロンスパッタリング及びウェブフライトコーティングを5回繰り返さなければならない。他の実施形態では、基板の上に封止層の初期コーティングを形成することも可能であることに留意されたい。封止層は、基板の表面を滑らかにする平坦化材料として作用し、それにより、湿気/酸素が浸透する通路となりうる基板上の欠陥が覆われる。
【0064】
[078]多層膜が形成された後、ITOが多層膜の上にマグネトロンスパッタリングされ、それによりITOコーティングが形成される。カプセル封入バリアスタックを受動マトリックスディスプレイに使用する場合、IOTの完全なコーティングの代わりにITOラインのみが必要である。次に、保護ライナがITOコーティングの上に形成される。意図する目的に応じて適切な任意の材料を使用することができ、たとえば、MgF/LiF膜などの耐ひっかき性膜又はグレア低減膜を使用することができる。保護膜が形成された後、カプセル封入バリアスタックがアルミニウムフォイルパッケージの中にパックされるか或いは他の部品と組み立てるために所定の寸法に切断される。
【0065】
[079]次に、上で説明した製造プロセス並びに製造されたカプセル封入バリアスタックのバリア性能を実例で示すべく、特定の実施例について説明する。
実施例1:金属酸化物ナノ粒子を含有した封止層を備えたカプセル封入バリアスタックの製造及び特性表示
a)カプセル封入バリアスタックA、B及びCの合成
【0066】
[080]一つの説明に役立つ実施例として、それぞれ異なるナノ粒子を封止層の中に含有した3つの異なるカプセル封入バリアスタックが製造された。カプセル封入バリアスタックは、それぞれ以下の仕様に従って製造された。
スタックA
1.ベース基板 −ポリカーボネート膜(厚さ188μm)
2.平坦化層 −平らなアクリル重合体
3.第1のバリア層 −ITO(インジウムスズ酸化物)
4.封止層 −酸化アルミニウムナノ粒子
5.第2のバリア層 −ITO
スタックB
1.ベース基板 −ポリカーボネート膜(厚さ188μm)
2.平坦化層 −平らなアクリル重合体
3.第1のバリア層 −ITO
4.封止層 −酸化チタンナノ粒子
5.第2のバリア層 −ITO
スタックC
1.ベース重合体基板 −ポリカーボネート膜(厚さ188μm)
2.平坦化層 −平らなアクリル重合体
3.第1のバリア層 −ITO
4.封止層 −酸化アルミニウムナノ粒子及び酸化チタンナノ粒子
5.第2のバリア層 −ITO
【0067】
[081]比較のために、従来の多層スタック構造を備えた従来のバリアスタックであるスタックDが製造された。スタックDは、以下のスタック構造を備えていた。
スタックD
1.ベース基板 −ポリカーボネート膜(厚さ188μm)
2.平坦化層 −平らなアクリル重合体
3.第1のバリア層 −ITO
4.第2の平坦化層 −平らなアクリル重合体
5.第2のバリア層 −ITO
ステップ(i):基板の表面準備
【0068】
[082]ポリカーボネート基板は透明であり、好ましい寸法に切断することができる。空気圧で動作する中空ダイ打抜き−切断装置又は従来の任意の切断機を使用して、ポリカーボネート基板を特定の寸法又は必要な寸法に切断することができる。
【0069】
[083]基板は、表面に存在しているマイクロスケールの吸着粒子を除去するために、イソプロピルアルコール(IPA)で洗い落とされ、且つ、窒素を吹き付けて乾燥される。窒素による吹付け乾燥の後、吸収した湿気又は酸素を脱気するために、10−1ミリバールの圧力の真空オーブン中に基板が置かれる。
【0070】
[084]基板は、脱気プロセスが終了すると、直ちにプラズマ処理チャンバ(たとえばULVAC SOLCIET Cluster Tool)へ移送される。表面の汚染物質を除去するために、RFアルゴンプラズマを使用して、エネルギーが小さいイオンをバリア膜の表面に衝突させる。チャンバ内のベース圧力は、4×10−6ミリバール未満に維持された。アルゴンの流量は70sccmである。RF電力は200Wに設定され、また、表面状態に応じて、一般的には5分から8分である最適処理時間が使用される。
【0071】
[085]ベース基板の清浄化が実行された後、ポリカーボネート基板に平らなアクリル重合体がスピン塗布され、界面平坦化層が形成された。
ステップ(ii):金属酸化物バリア層コーティング
【0072】
[086]非平衡マグネトロンスパッタリング技術によって、次の通りにインジウムスズ酸化物バリア層が準備された。スパッタリングを使用して平坦化層の上に金属酸化物バリア層が堆積された。非平衡マグネトロンスパッタリング技術を使用して高密度酸化物バリア膜が形成された。このスパッタリング技術によれば、典型的にはいくつかの単分子層からなる金属層を非平衡マグネトロンによって堆積させ、次に、システムに酸素を導入して、基板の方向に向けられた酸素プラズマを生成し、それによりアルゴン及び酸素イオン衝撃を高充填密度酸化膜に提供することができる。プラズマにより、成長する膜の表面に向けられた酸素の反応性が増加し、より望ましいレオロジーが提供される。過度の内部応力を導入することなく高密度膜を堆積させるためには、高流量(2mA/cmを超える)で低エネルギー(〜25eV)の酸素及びアルゴンイオンを、成長するバリア酸化膜に衝突させなければならない。
【0073】
[087]連続フィードバック制御ユニットを使用して反応性スパッタリングプロセスが制御される。マグネトロンレーストラックにおける強烈なプラズマ中のスパッタリング金属によって放出される光は、金属スパッタリング速度及び酸素分圧の一つの指標である。この指標を使用してそのプロセスを制御することができ、したがって正確な酸化膜ストイキオメトリを達成することができる。プラズマ発光モニタからの連続フィードバック制御ユニットを使用することにより、再現可能な膜及び望ましいバリア特性が得られた。
ステップ(iii):封止層コーティング
【0074】
[088]商用的に入手することができるナノ粒子(たとえばNanophase Technologiesの#44931 NanoDur(登録商標)99.5%酸化アルミニウム粒子)がプラズマを使用して予備処理され、且つ、2−メトキシエタノール(2MOE)及びエチレングリコール(EG)などの有機溶剤に加えられ、EGに対する2MOEの比率を1:1で分散させた。プロピレングリコーンモノメチルエーテル又はエチルアセテート或いはメチルイソブチルケトン、メチルエチル、2MOE又は溶剤の任意の混合物或いは湿潤添加剤を使用することも可能である。あるいは、ヘキサンジオールジアクリレート、アクリル酸イソボルニル、トリプロピレングリコールジアクリレート中に分散した酸化アルミニウム、酸化亜鉛又は酸化チタンなどの商用的に入手することができるナノ粒子分散物を使用することも可能である(たとえばNanophase Technologiesの1、2−プロパンジオールモノメチルエーテルアセテート中に50%分散した45nm APS酸化アルミニウム乾燥粉末、NanoDur(登録商標)X1130PMAのコロイド分散)。
【0075】
[089]商用的に入手することができるUV硬化性アクリル単量体のような重合可能基化合物(Addision Clear Wave−HC-5607)がナノ粒子混合物に添加され、封止溶液が形成される。重合体コーティングの重量は、30%から50%の量にすることができる。たとえば、重合体中のナノ粒子の総濃度を封止溶液の66重量%にすることができ、一方、重合体コーティングの重量は、封止溶液の約34重量%である。
【0076】
[090]合成は、不活性ガス環境の下で実施された。アクリル重合体溶液中のナノ粒子が異なる混合物を使用して一連の実験が実行され、且つ、平らな重合体基板にスピン塗布された(上記図5)。
【0077】
[091]サンプルA、B及びCは、それぞれ、以下で説明されるように異なる成分を使用して、一般的なステップ(i)、(ii)及び(iii)に従って製造された。
【0078】
[092]サンプルカプセル封入バリアスタックAの場合、コーティング重量が封止溶液の約50%であるUV硬化性アクリル単量体30mlを、トリプロピレングリコールジアクリレート(35%重量)中における酸化アルミニウムの分散物15ml(Nanophase TechnologiesのNanodurから得ることができる)に添加した。比率(1:1)の2−MOE及びEGからなる有機溶剤5mlを混合物に添加した。次に、バリア酸化物層上への堆積に先立って、約1時間にわたって混合物の超音波処理が実行された。
【0079】
[093]サンプルカプセル封入バリアスタックBの場合、コーティング重量が封止溶液の約50%であるUV硬化性アクリル単量体30mlを、40重量%でイソプロパノール中に分散した酸化チタン(IV)10ml(Nanophase TechnologiesのNanodurから得ることができる)に添加した。比率(1:1)の2−MOE及びEGからなる有機溶剤10mlを混合物に添加した。次に、バリア酸化物層上への堆積に先立って、約1時間にわたって混合物の超音波処理が実行された。
【0080】
[094]サンプルカプセル封入バリアスタックCの場合、コーティング重量が封止溶液の約50重量%であるUV硬化性アクリル単量体30mlを、(a)トリプロピレングリコールジアクリレート中に分散した酸化アルミニウム(35%重量)7.5ml(Nanophase TechnologiesのNanodurから得ることができる)、及び(b)2MOE及びエチレングリコール(比率1:1)と共に40重量%でイソプロアナル(Isoproanal)中に分散した酸化チタン(IV)5mlに添加した。次に、バリア酸化物層上への堆積に先立って、約1時間にわたって混合物の超音波処理が実行された。
【0081】
[095]スピン塗布による封止層の形成がグローブボックス中の窒素雰囲気中で実施された。グローブボックス内では、酸素及び水蒸気の含有量が1ppmレベル未満に低減された。
カプセル封入バリアスタックA、B及びCの特性表示
【0082】
[096]プラズマ処理プロセスが終了すると、カプセル封入バリアスタックは、真空下で真空蒸発チャンバ(熱蒸発)へ移送される。次に、国際公開第2005/095924号パンフレットに記載されているカルシウムセンサを使用してバリアスタックのバリア特性が評価される。定性評価及び定量評価の両方が実施された。
【0083】
[097]定性評価では、製造されたカプセル封入バリアスタックを使用して、図4に示されている試験セルが形成される。手短に言えば、寸法が2cm×2cmの2つの金属トラックが製造される。2つの電極の間に、寸法が長さ1cm、幅2cm、厚さ150nmの検出部が形成される。測定された検出部の抵抗率は0.37Ω−cmである。堆積プロセスが終了すると、大気圧下で乾燥窒素中、ロードロックシステムを使用してサンプルがグローブボックスへ移送される。カルシウムが堆積された後、定性分析のために100nmの銀保護層が堆積された。
【0084】
[098]定量抵抗測定の場合、製造されたカプセル封入バリアスタックを使用して、図5に示されている試験セルが形成される。導電性トラックには300nmの銀が使用され、センサとして150nmのカルシウムが使用され、また、保護層として150nmのフッ化リチウムが使用された。堆積プロセスが終了すると、UV硬化性エポキシが基板の縁に加えられ、次に、基板全体が35mm×35mmのガラススライドで封止された。エポキシ封止を通してガス放出又は浸透することによって存在しているあらゆる水蒸気を吸収するために、乾燥剤が35mm×35mmのカバーガラススライドに取り付けられた。すべてのプロセスを実行している間ロードロックシステムが使用され、また、試験セルは、大気圧の乾燥窒素の下、グローブボックス中でカプセル封入された。浸透試験を加速するために、それぞれ80℃及び90%RHの一定の温度及び湿度で湿度チャンバの中にサンプルが置かれた。これらは、定性的な劣化試験及び欠陥分析のために一定のインターバルで光学的に観察され、また、劣化を定量分析するために電気的に測定された。カルシウム試験セルの導電性トラックの終端は、コンピュータとインタフェースで接続された定電流源(Keitheyソースメータ)に接続される。カルシウムセンサ/銀トラックの抵抗が、ラブビュー(lab view)ソフトウェアを使用したコンピュータによって、1秒毎にモニタされ、且つ、自動的にプロットされる。FFT分析を使用したダイナミックシグナルアナライザを使用して、ノイズスペクトル測定が1秒毎に定期的に自動的に実施される。
【0085】
[099]浸透した水蒸気が基板及びその1つ又は複数のバリア層の欠陥を通って拡散し、カルシウムセンサと反応して区別可能な斑点をカルシウム検出部上に形成するため、カルシウム劣化試験により、ピンホールクラック及びナノ細孔などの欠陥に関する定性的な視覚情報が提供される。透明コーティングに存在するピンホール及びクラックなどのマイクロ細孔及びサブミクロンサイズの細孔を識別又は研究することは、洗練された表面顕微鏡技術(たとえばSEM)によってさえも極めて困難である。この実験では、酸化したカルシウムと酸化していないカルシウムの間の色コントラストが定性分析に使用された。光学顕微鏡法を使用して劣化がモニタされた。画像は、典型的には数時間のインターバルで取得された。これらの画像から、カルシウムが腐食したスポットをバリア膜の欠陥に直接リンクさせることができた。さらに、カルシウム腐食の成長動力学は、バリア特性の定性情報を提供することができた。
【0086】
[0100]図6の画像は、試験されたAB、C膜の上に示された欠陥の性質を強調したものであり、また、図6にはバリア構造が示されている。図6の劣化画像は、バリアスタックDによって例示されている従来のバリアスタックと比較すると、バリアスタックA及びCが著しく良好なバリア特性を有していることを示している。バリアスタックAの場合、80時間でカルシウムセンサが劣化を開始し、270時間でカルシウム全体が劣化した。バリアスタックCの場合、カルシウムセンサは、470時間を経過するまで大きな劣化を全く示さなかった。
【0087】
[0101]図7は、製造された直後のバリアスタックA、B及びCの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示したものである。これら3つのバリアスタックの表面は滑らかであり、ナノ粒子の凝集は観察されていない。これらの画像は、封止層中のナノ粒子の分散が一様であり、その結果としてバリアスタックが透明であることを確証している。水蒸気輸送特性に関するさらなる調査が浸透測定システムを使用して実施されたが、これについては次の節で説明する。
【0088】
[0102]図8は、SEM及びAFMを使用して研究された封止層の表面の画像を示したものである。この表面の特性を、平らなアクリル重合体コーティングの表面の特性と比較した。AFM写真は、溶液中A、B及びC中におけるナノ粒子の一様な分散が達成されたことを示している。バリアスタックA及びBの膜の測定された表面粗さは、1μmから10μmの走査において十分に0.75nm内であり、平らなアクリル重合体膜に匹敵している。しかしながら、バリアスタックCの場合、表面は比較的粗い(6.5nm)。粗さを有利に使用して、バリア層と基板の間の接着性を改善することができる。
【0089】
[0103]上記に従って製造されたカプセル封入バリアスタックサンプルの定量分析を実施するために、図9に示されている構造を有する試験カプセル封入バリアスタックが製造された。マグネトロンスパッタリング方法によって製造された2つのITOバリア層を使用してカプセル封入バリアスタックが製造され、また、1つの封止層(酸化アルミニウムナノ粒子を含有している)を使用してITO欠陥が封止された。最も外側の終端層は、WVTRを測定するために一般的に使用される平らなアクリル膜である。原則的には、1つのITOバリア層の欠陥のみが封止された。この実施形態では、封止層は、サイズが20nmから40nmのAlナノ粒子を含有している。
【0090】
[0104]図10は、カプセル封入バリアスタックについて、時間に対するカルシウムコンダクタンスのプロットを示したものである。このグラフから、対応するカルシウム変化(モル)を引き出すことができる。1つのバリア層及び1つの封止層を備えたカプセル封入バリアスタックの水蒸気透過率は、80℃及び90%相対湿度で1×10−3g/m/日になるように決定される。それに対して、2つのバリアSiN層及び平らなアクリル中間層を備えた従来の多層スタックが示した性能は、70℃及び90%相対湿度条件で約10−1g/m/日レベルにすぎない。
【0091】
[0105]したがって、これらの結果は、1つのバリア層の欠陥をナノ粒子封止層で封止することにより、平らなアクリル膜をベースとする多層基板と比較すると、バリア性能が最大2桁改善されることを立証している。3つ以上のバリア層に存在している欠陥を、反応性ナノ粒子を含有した複数の封止層を使用して封止する場合、水蒸気バリア性能を10−5g/m/日未満、さらには10−6g/m/日未満にすることができる。
【0092】
[0106]ポリカーボネート(188μm)/ITO/アルミニウム及びチタンナノ粒子を含有したナノ構造封止層を備えた単一層状カプセル封入バリアスタック、及びPC/ITO/封止層/ITO/封止層を備えた二重層状カプセル封入バリアスタックが製造された。スペルトルのUV及び可視領域におけるスペクトル透過率を測定した光学特性がUV−Vis分光計を使用して測定された。それは、二重スタックの光透過率が82%であり、また、単一スタックの光透過率が約85%であることを示している。透過率の低減は、ITO膜の特性及び性質によるものである。
実施例2:カーボンナノチューブを含有した封止層を備えたカプセル封入バリアスタックの製造及び特性表示
【0093】
[0107]異なるカーボンナノチューブ組成を封止層に備えた以下のカプセル封入バリアスタックが準備された。
スタックE
1. ベース基板としてポリカーボネート(188μm)
2. バリア層としてITO
3. 封止層として0.006%濃度のMCNTを含有したナノ構造封止層
スタックF
1. ベース基板としてポリカーボネート(188μm)
2. バリア層としてITO
3. 封止層として0.05%濃度のMCNTを含有したナノ構造封止層
【0094】
[0108]最初に、予備処理済みの直径10nmの多層ナノチューブ(以下「MCNT」)を、分散させるために、2−メトキシエタノール(2MOE)及びエチレングリコール(EG)の溶液混合物に加えた。EGに対する2MOEの比率は1:1である。ナノチューブは、超音波処理によってアクリル重合体中に一様に分散された。合成は、不活性ガス環境の下で実施された。
【0095】
[0109]スタックEは、0.006重量%の量のMCNTを含有しており、また、溶液Fは、0.05重量%の量のMCNTを含有している。封止層の厚さは2μmであった。封止層である薄膜の合成及び製造は、窒素分圧を有するグローブボックスの中で実施された。グローブボックス内の酸素及び水蒸気の含有量は、1ppmレベル未満に制御された。
【0096】
[0110]実施例1で製造されたスタックDを使用して、バリアスタックE及びFの特性を比較した。
【0097】
[0111]封止層にMCNTを含有したスタックがスタックDと比較された。図12は、スタックD、E及びFの膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示したものである。E及びF封止膜の表面は滑らかであり、MCNTの凝集は観察されていない。これらの画像は、封止層中のMCNTの分散が一様であり、膜が透明であることを示している。水蒸気輸送特性及び光学特性に関するさらなる調査が浸透測定システム及び分光計を使用して実施されたが、これについては以下で説明する。
【0098】
[0112]個々のバリアスタックの光学特性が、UV−Vis分光測定法を使用して、スペルトルのUV領域及び可視領域におけるスペクトル透過率と共に測定された。
【0099】
[0113]図13から分かるように、従来のアクリル膜コート基板(D)は、99%の極めて高い透過率を有している。しかしながら、それはUV光を遮断していない。図13は、二重スタックの光透過率が82%であり、単一スタックの光透過率が約85%であることを示している。カプセル封入バリアスタックE及びFに含まれているCNTは、約85%の透明度を示している。二重スタック透過率の低減は、ITO膜の特性及び性質によるものである。また、図は、膜A、C、E及びFのナノ粒子の分散が一様で、凝集が存在せず、したがって光透過率が82から89%の範囲にあることを示している。
【0100】
[0114]図14の定量カルシウム劣化結果は、バリアスタックE及びバリアスタックFが、従来のバリアスタックDよりも著しく良好な総合バリア特性を示していることを示している。15時間が経過した時点における初期カルシウムセンサ劣化/水蒸気脱着率はすべてのカプセル封入バリアスタックE、F及びDで同様であり、また、測定されたWVTRは0.03g/m/日レベルである。しかしながら、20時間が経過した後は、Dの定常状態水蒸気透過率は0.1g/m/日であり、30時間が経過する前にカルシウム全体が劣化した。CNTを含有したカプセル封入バリアスタックE及びFは、それぞれ0.01g/m/日レベル及び0.009g/m/日レベルの透過率を示している。100時間が経過した後は、バリアスタックE及びFは、バリア特性の著しい改善を示しており、WVTR率は0.003g/m/日であった。
【0101】
[0115]理論に縛られることは希望しないが、バリアスタックE及びFの場合、露出後30時間が経過すると、毛管吸引によって水蒸気がナノチューブの開放端に引き込まれることが考えられる。水分子がカーボンナノチューブ中に拡散するのに要する時間は、通常の拡散モードと比較するとより長く、したがって初期水蒸気脱着が極めて高レベルであったことが前提となっている。本発明による初期脱着/浸透性結果は、CNTによるバリア層の欠陥封止の確率が比較的低いことを立証した。これは、ナノ粒子の濃度(30%から60%)と比較して、中間層に使用されるCNTの濃度(0.05%)によるものであるかもしれない。
【0102】
[0116]本発明によるカプセル封入バリアスタックの接着特性を定量化するために、インストロン試験システムを使用して標準の剥離試験が実施された。以下のカプセル封入バリアスタックに対する試験が実施された。
スタックG
1. ベース基板としてポリカーボネート
2. バリア層としてITO
3. 酸化アルミニウム粒子(アクリル膜中に分散したAl(20重量%)を含有した封止層
スタックH
1. ベース基板としてポリカーボネート
4. バリア層としてITO
5. 酸化アルミニウム粒子(アクリル膜中に分散したAl(15重量%)を含有した封止層
【0103】
[0117]実施例1で製造された従来のバリアスタックDがもう一度比較のために使用された。ITOがコーティングされたポリカーボネート試験基板及びこれらの基板の上に厚さ2μmの封止層が堆積された。それらは長さ10cm、幅1cmの小片に切断され、また、ASTM要求事項と同様に、サンプルの一端における長さ3cm、幅1cmの領域にUV硬化性エポキシ(Three Bond)が塗布された。表面準備には、エポキシの塗布に先立って上記基板のアルゴンプラズマクリーニングすることを含む。
【0104】
[0118]サンプルバリアスタックD、G及びHの負荷/ひずみ曲線がプロットされ、図15には、試験の結果を見ることができる。平らな従来のアクリル膜をITO表面に備えたバリアスタックDでは、18N/mにおいてアクリル膜とITOの間の界面に初期の界面障害が発生し、約12N/mという定常状態の剥離強度まで横ばい状態であった。したがってバリア酸化物層に対する従来のアクリル重合体の接着強度は、たったの18N/mでしかない。バリアスタックG及びHを試験すると、バリアスタックHの場合は45N/m、バリアスタックGの場合は48N/mで、ナノ構造有機封止層とITOの間の界面に初期の界面障害が生じ、バリアスタックH及びGの場合、約14〜15N/mという定常状態の剥離強度まで横ばい状態であった。したがって、バリア酸化物層に対するナノ構造封止バリアスタック(G及びH)の接着強度は12〜15N/mである。この結果は、バリア層のピンホール及び欠陥が封止されることによって、バリア酸化物層とナノ構造封止層の間の接着性が著しく改善されることを明確に立証している。
【0105】
[0119]以上、本発明について、説明に役立つ実施形態によって説明したが、以下の特許請求の範囲に示されている本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変形形態及び改変を加えることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気及び/又は酸素に敏感な物品をカプセル封入することができるカプセル封入バリアスタックであって、
湿気及び/又は酸素の浸透性が小さい少なくとも1つのバリア層と、前記少なくとも1つのバリア層の表面と接触するように配置されることによって前記バリア層に存在する欠陥をカバーする少なくとも1つの封止層と、を有する多層膜を備え、
前記少なくとも1つの封止層が、前記バリア層に存在する前記欠陥を介して湿気及び/又は酸素が浸透することを妨げるように湿気及び/又は酸素と相互作用することができる反応性ナノ粒子を含有する、カプセル封入バリアスタック。
【請求項2】
前記少なくとも1つの封止層が、前記少なくとも1つのバリア層の前記表面に存在する前記欠陥の形状と実質的に一致する、請求項1に記載のバリアスタック。
【請求項3】
前記封止層がコンフォーマル堆積によって形成される、請求項1又は2に記載のバリアスタック。
【請求項4】
前記多層膜が、交互に連続的に配置された複数の封止層及びバリア層を備える、請求項1〜3のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項5】
前記反応性ナノ粒子が、化学反応により湿気及び/又は酸素と相互作用する、請求項1〜4のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、金属及び金属酸化物からなるグループから選択される材料を含有する、請求項5に記載のバリアスタック。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、Al、Ti、Mg、Ba及びCaからなるグループから選択される金属を含有する、請求項6に記載のバリアスタック。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、TiO、Al、ZrO、ZnO、BaO、SrO、CaO及びMgO、VO、CrO、MoO及びLiMnからなるグループから選択される金属酸化物を含有する、請求項6又は7に記載のバリアスタック。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、スズ酸カドミウム(CdSnO)、インジウム酸カドミウム(CdIn)、スズ酸亜鉛(ZnSnO及びZnSnO)及び酸化亜鉛インジウム(ZnIn)からなるグループから選択される透明な導電性酸化物を含有する、請求項6又は7に記載のバリアスタック。
【請求項10】
前記反応性ナノ粒子が、吸着により湿気及び/又は酸素と相互作用する、請求項1〜9のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項11】
前記ナノ粒子がカーボンナノチューブを含有する、請求項10に記載のバリアスタック。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブが多層構造を有する、請求項11に記載のバリアスタック。
【請求項13】
存在するカーボンナノチューブの量が、前記封止層に存在するナノ粒子の総重量の約0.01%から約10%である、請求項11又は12に記載のバリアスタック。
【請求項14】
前記封止層がカーボンナノチューブ及び金属酸化物ナノ粒子を含有し、存在する金属酸化物ナノ粒子の量が、存在するカーボンナノチューブの量の500から15000倍(重量で)である、請求項5〜13のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項15】
前記バリア層に存在する前記欠陥を介して湿気及び/又は酸素が浸透することを阻止することができる不活性ナノ粒子をさらに含有する、請求項1〜14のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項16】
前記不活性ナノ粒子が、金、銅、銀、白金、シリカ、ケイ灰石、ムライト、モンモリロナイト、ケイ酸塩ガラス、フルオロケイ酸塩ガラス、フルオロホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ケイ酸カルシウムガラス、ケイ酸アルミニウムカルシウムガラス、フルオロケイ酸アルミニウムカルシウムガラス、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素又は窒化ケイ素、金属硫化物及びそれらの混合物又は組合せからなるグループから選択される材料を含有する、請求項15に記載のバリアスタック。
【請求項17】
前記ナノ粒子のサイズが、前記少なくとも1つのバリア層に存在する欠陥の平均径より小さい、請求項1〜16のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項18】
前記酸素及び/又は湿気に敏感な物品がエレクトロルミネセント電子部品を備える場合、前記ナノ粒子の平均サイズが、前記エレクトロルミネセント電子部品によって生成される光の特性波長の1/2未満である、請求項1〜17のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項19】
前記ナノ粒子の長さが200nm未満である、請求項18に記載のバリアスタック。
【請求項20】
前記ナノ粒子が棒形状であり、前記棒形状の直径が約10nmから50nm、長さが50から400nm、アスペクト比が5以上である、請求項17〜19のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項21】
前記ナノ粒子が少なくとも2つの異なる形状を有する、請求項1〜20のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項22】
前記ナノ粒子の重量に対する表面積の比率が約1m/gから約200m/gである、請求項1〜21のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項23】
前記封止層が重合体結合剤をさらに含有し、前記ナノ粒子が前記重合体結合剤中に分散されている、請求項1〜22のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項24】
前記重合体結合剤が、少なくとも1つの重合可能基を有する単量体から誘導される、請求項23に記載のバリアスタック。
【請求項25】
前記重合体結合剤が、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエポキシド、パリレン、ポリシロキサン及びポリウレタンからなるグループから選択される材料を含有する、請求項24に記載のバリアスタック。
【請求項26】
前記バリア層が、インジウムスズ酸化物(ITO)、TiAlN、SiO、SiC、Si、TiO、HfO、Y、Ta及びAlから選択される材料を含有する、請求項1〜25のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項27】
前記多層膜を支持するための基板をさらに備える、請求項1〜27のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項28】
前記多層膜が、前記封止層が前記基板の上に配置されるように配向される、請求項28に記載のバリアスタック。
【請求項29】
前記基板が、ポリアセテート、ポリプロピレン、ポリイミド、セロハン、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、及び酸化ポリジメチルフェニレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン、ニトロセルロース、セルロース、ガラス、インジウムスズ酸化物、ナノ粘土、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄及びポリフォスファーゼンから選択される材料を含有する、請求項28又は29に記載のバリアスタック。
【請求項30】
前記基板が可撓性を有する、請求項28〜30のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項31】
前記基板が剛性を有する、請求項28〜30のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項32】
前記多層膜が、少なくとも3つ又は少なくとも5つのバリア層を備える、請求項1〜26のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項33】
前記多層膜が前記基板の一方の表面に配置される、請求項32のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項34】
個々の多層膜が、前記基板の相対する個々の表面に配置される、請求項28〜32のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項35】
前記基板と前記多層膜の間に挿入される平坦化層をさらに備える、請求項28〜33のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項36】
前記多層膜を保護するための終端層をさらに備える、請求項1〜34のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項37】
前記終端層がアクリル膜を備える、請求項35に記載のバリアスタック。
【請求項38】
前記アクリル膜が、その中に分散したLIF及び/又はMgF粒子を有する、請求項36に記載のバリアスタック。
【請求項39】
前記カプセル封入バリアスタックの水蒸気浸透率が約10−5g/m/日又は10−6g/m/日未満である、請求項1〜38のいずれかに記載のバリアスタック。
【請求項40】
湿気及び/又は酸素に敏感な能動部品を備える電子デバイスであって、前記能動部品が請求項1〜39のいずれかに記載のカプセル封入バリアスタック内に配置される、電子デバイス。
【請求項41】
前記バリアスタックが反応性部品を支持するためのベース基板を形成する、請求項40に記載の電子デバイス。
【請求項42】
前記カプセル封入バリアスタックが、
近接カプセル封入を形成するために前記能動部品の上に近接して配置されるカバー層であって、前記反応性部品が前記カバー層と前記カプセル封入バリアスタックの間にはさまれる、前記カバー層をさらに備える、請求項40又は41の記載の電子デバイス。
【請求項43】
前記カバー層の形状が、前記反応性部品の外部形状と同じである、請求項41に記載の電子デバイス。
【請求項44】
前記カプセル封入が、
接着層によって前記ベース基板に取り付けられるカバー基板であって、前記接着層が、前記反応性部品の周囲に縁で封止された筐体を形成するために少なくとも実質的に前記カバー基板の縁に沿って配置される、前記カバー基板をさらに備える、請求項39〜42のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項45】
前記能動部品がベース基板の上に配置され、前記カプセル封入バリアスタックが、前記反応性部品を前記ベース基板に対して封止するカプセル封入層を前記反応性部品の上に形成する、請求項40に記載の電子デバイス。
【請求項46】
前記反応性部品が、有機発光デバイス(OLED)、電荷結合素子(CCD)及び超小型電気機械センサ(MEMS)からなるグループから選択される、請求項40〜45のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項47】
請求項1〜39のいずれかに記載のカプセル封入バリアスタックを製造するための方法であって、
前記バリアスタックを受け取るための表面に、少なくとも1つのバリア層及び少なくとも1つの封止層を交互に連続的に形成するステップを含み、
前記少なくとも1つの封止層を形成するステップが、封止混合物を形成するために重合可能化合物とナノ粒子分散物を混合するステップと、前記少なくとも1つのバリア層の上において真空下で前記封止混合物を重合させるステップとを含む方法。
【請求項48】
前記バリアスタックを支持するための基板を提供するステップをさらに含み、前記少なくとも1つの封止層が最初に前記基板の上に形成される、請求項47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記基板がバリア層を備える、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記基板が重合体基板を備える、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
約30℃から約100℃の温度で、少なくとも約1時間にわたって真空下で前記基板が脱気される、請求項48〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記ナノ粒子分散物が、少なくとも1つの有機溶剤中に分散したナノ粒子を含有する、請求項48〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの有機溶剤が、エーテル、ケトン、アルデヒド及びグリコールから選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記封止混合物が前記バリア層の上にスピン塗布される、請求項48〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
重合化に先立って前記封止混合物の超音波処理を実施するステップをさらに含む、請求項46〜49のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
少なくとも約30分の間、超音波処理が実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記重合可能化合物と前記ナノ粒子分散物を混合する前記ステップが、極性有機溶剤中で実施される、請求項48〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記極性有機溶剤が、1:1のモル比率のエチレングリコール及び2−メトキシエタノールの混合物を含有する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記重合可能化合物が紫外光硬化性を有する、請求項48〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記重合可能化合物が、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸ブチルから選択される、請求項59に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−511267(P2010−511267A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535240(P2009−535240)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000334
【国際公開番号】WO2008/057045
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】