説明

ナビゲーション装置、受信装置、及び移動体情報提供装置

【課題】車両や歩行者などの移動体が車車間通信を介して送信する情報を収集し、自車両周辺の移動体の動きを観測する際、通信領域内のトラフィックが上昇すると移動体の観測に遅延が発生する。
【解決手段】自車両の移動体情報を取得して同報送信し、他の車両から同報送信される他移動体状態情報を受信し、自車両周囲の状態情報を提供する移動体情報提供装置であって、車車間通信の通信領域内に優先度毎の注目領域を一つ以上定め、受信した移動体情報が示す少なくとも位置が、何れかの注目領域の領域内である場合に観測対象とし、少なくとも当該注目領域に設定した優先度と当該移動体情報の送信元を識別可能な送信元識別子とで判定結果を構成する優先度判定手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両や歩行者などの移動体が、移動体−移動体間通信(車車間通信)を介して、送信する位置や方位などからなる移動体情報を収集し、自車両周辺の移動体の動きを観測するナビゲーション装置、車車間無線通信装置、及び移動体情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安全性の向上、利便性の向上を目指したサービスを実現するため、道路と車両を一体のシステムとした高度道路交通システム( ITS:Intelligent Transport Systems )の開発が進められている。
上記のシステムでは、路上に設置した基地局と車両に搭載する移動局との間で行う路車間通信や、移動局間で行う車車間通信などの無線通信を利用した様々なサービスの実現が検討されており、例えば車車間無線通信では、衝突などの障害回避を支援するサービスの導入が図られようとしている。
この支援サービスでは、車両は、周辺に存在する他の車両や歩行者などの移動体に対して自車両の状態を周辺に報知する。このため車両は、ナビゲーション装置などで生成した位置、方位などの情報からなる移動体情報を、車車間無線通信装置を利用して周期的に同報送信すると共に、自車両周辺の移動体から移動体情報を収集する。そして、収集した移動体情報を、自車両に搭載したナビゲーション装置などで処理し、そのユーザインタフェースを介して、例えば自車両周辺にある移動体の存在や状態を運転者に認知させるようにし、衝突などの障害回避を支援する(例えば、発明名称「車載情報提供装置」の特許文献1参照。)。
なお、この支援サービスで必要とされる車車間通信の通信領域(情報収集範囲)は、車両を操作する運転者の事象認知から反応までの時間、車両の走行速度や減速度などとの関係から数百メートルとされている。この場合、通信領域内に同時に存在可能な車両は千台規模となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−195196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来技術によれば、移動体情報提供装置の車車間無線通信装置からは自車両の状況が周期的に同報送信されるので、移動体情報提供装置は通信領域内に存在する全ての移動体情報提供装置から送信される移動体情報を収集するように動作する。このため移動体情報提供装置の車車間無線通信装置の受信側には、常にトラフィックが集中した状態となる。また、トラフィックは、通信領域内の車車間通信を行う車両の密度に応じて変動し、その影響は全ての移動体情報提供装置が受けることになる。
一方、ナビゲーション装置など位置検出装置で行われる移動体の観測は、移動体情報提供装置の車車間通信装置から出力される移動体情報を順番に逐次処理するため、車車間無線通信装置のトラフィックが高くなると移動体の観測に遅延が生じるようになる。即ち、車両の走行速度や減速度などとの関係と、車両を操作する運転者の事象認知から反応までの時間から定まる時間内に周囲すべての移動体情報を収集できなくなる。
この遅延は、衝突などの障害発生の要因となるような移動体が観測される場合にも発生するため、場合によっては運転者の事象認知が遅れ、障害回避に寄与できなくなる可能性があった。
本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、情報収集範囲内の車車間通信を行う車両の密度に起因するトラフィックの影響により、衝突などの障害発生の要因となり得る車両や歩行者などの移動体の観測に遅延の発生を抑制可能なナビゲーション装置、無線通信装置、並びに、移動体情報提供装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の移動体情報提供装置は、自移動体の移動状態情報を取得するナビゲーションユニットと、上記自移動体の移動状態情報を同報送信する送信部を具備する無線通信ユニットを備え、上記ナビゲーションユニットは、少なくとも、上記自移動体の位置情報、進行方向、速度情報、及び加速度情報を取得することを特徴とする。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記無線通信ユニットは、更に、他の移動体から同報送信される他移動体状態情報を受信し、上記受信された他移動体状態情報を上記ナビゲーションユニットに出力する受信部を具備し、上記ナビゲーションユニットは、上記無線通信ユニットが受信した上記他移動体状態情報と上記自移動体の移動状態情報をもとに、自車両周辺の道路地図の表示、並びに、自車両の位置及び自車両周辺にある移動体の位置を表示する移動体観測部を少なくとも備えたものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記ナビゲーションユニットは、少なくとも、上記無線通信ユニットが受信した上記他の移動体それぞれの他移動体状態情報の示す位置が、上記自移動体の無線通信ユニットの通信領域内に1つ以上設定された優先度毎の注目領域のいずれかの領域内にある場合に、当該注目領域に設定した優先度と当該他移動体状態情報の送信元を識別可能な送信元識別子とを関連付けた判定結果を生成し、該生成された判定結果を上記受信部に出力する優先度判定部を備え、上記無線通信ユニットが受信する上記他移動体状態情報から、自車両周辺の他の移動体の動きを観測するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記受信部は、上記ナビゲーションユニットの上記優先度判定部から出力される上記判定結果を優先度管理テーブルとして登録する優先度管理テーブル部を備え、上記優先度管理テーブルを参照して上記他移動体状態情報の優先度を決定し、決定された上記優先度に応じて予め定められた順序で上記他移動体状態情報を上記ナビゲーションユニットに出力するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記受信部は、更に、上記他移動体状態情報を上記優先度毎に保存する格納部と、上記優先度管理テーブル部内の上記優先度管理テーブルを参照して上記他移動体状態情報の優先度を決定し、決定された上記優先度に応じて上記優先度毎に該当する上記格納部に出力する選別部と、上記優先度毎に格納部に保存された上記他移動体状態情報を上記優先度に応じて上記予め定められた順序で上記ナビゲーションユニットに出力する出力順序制御部とを具備したものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記受信部の上記選別部は、更に、上記無線通信ユニットが受信した上記他移動体状態情報の送信元識別子によって上記格納部を検索し、該送信元識別子と同じ送信元識別子の他移動体状態情報が格納されていた場合には、上記格納部内の当該他移動体状態情報を削除してから上記無線通信ユニットが受信した上記他移動体状態情報を保存するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記受信部の上記出力順序制御部は、更に、上記格納部の優先度が一番高い格納部に保存されている他移動体状態情報がない場合に、次に優先度の高い格納部に保存されている他移動体状態情報を上記ナビゲーションユニットに出力するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記注目領域は、少なくとも、上記自移動体の位置、進行方向、及び、地図情報に基づいて設定されるものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記注目領域は、少なくとも、上記自移動体の位置及び進行方向に基づいて設定されるものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記ナビゲーションユニットの上記優先度判定部は、少なくとも、上記自移動体の速度に基づいて、上記注目領域の位置又は領域の大きさ若しくは形状を補正するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記ナビゲーションユニットの上記優先度判定部は、少なくとも、道路交通情報に基づいて、上記注目領域の位置又は領域の大きさ若しくは形状を補正するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記ナビゲーションユニットの上記優先度判定部は、上記他移動体状態情報が示す位置が上記注目領域のいずれかの領域内であって、かつ、当該他移動体状態情報が示す進行方向と自車両の進行方向とを比較し、上記当該他移動体状態情報の送信元である他の移動体が自車両へ接近する方位をとっている場合に観測対象とするものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記ナビゲーションユニットの上記優先度判定部は、上記他移動体状態情報が示す位置が上記注目領域のいずれかの領域内であって、かつ、当該他の移動体状態情報が示す進行方向と自車両の進行方向とを比較し、当該他移動体情報の属性に応じて観測対象を選択するものである。
また好ましくは、上記移動体情報提供装置において、上記優先制御ユニットは、第1の順序及び第2の順序の、上記予め定められた順序を複数有し、上記第1の順序で上記ナビゲーションユニットの上記優先度判定部に出力し、上記第2の順序で上記移動体観測部に出力するものである。
【0006】
また、本発明のナビゲーション装置は、移動体観測部を備え、自移動体の移動状態情報を取得して自車両周辺の道路地図の表示と共に該移動体観測部に表示するナビゲーション装置において、上記移動体観測部は、更に、無線通信装置から取得した他の移動体の他移動体状態情報を受信し、受信した他移動体状態情報から自車両周辺にある他移動体の位置を表示する移動体観測部であり、上記他移動体状態情報の示す位置が、上記自移動体の無線通信装置の通信領域内に1つ以上設定された優先度毎の注目領域のいずれかの領域内にある場合に、当該注目領域に設定した優先度と当該他移動体状態情報の送信元を識別可能な送信元識別子とを関連付けた判定結果を生成し、該生成された判定結果を、上記無線通信装置が受信した上記他移動体状態情報を、上記移動体観測部に入力する順序を制御するための優先度管理情報として上記無線通信装置に出力する優先度判定部を備えたものである。
また好ましくは、上記ナビゲーション装置において、上記注目領域は、少なくとも、上記自移動体の位置、進行方向、及び、地図情報に基づいて設定されるものである。
また好ましくは、上記ナビゲーション装置において、上記注目領域は、少なくとも、上記自移動体の位置及び進行方向に基づいて設定されるものである。
また好ましくは、上記ナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、少なくとも、上記自移動体の速度に基づいて、上記注目領域の位置又は領域の大きさ若しくは形状を補正するものである。
また好ましくは、上記ナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、少なくとも、道路交通情報に基づいて、上記注目領域の位置又は領域の大きさ若しくは形状を補正するものである。
また好ましくは、上記ナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、上記他移動体状態情報が示す位置が上記注目領域のいずれかの領域内であって、かつ、当該他移動体状態情報が示す進行方向と自車両の進行方向とを比較し、上記当該他移動体状態情報の送信元である他の移動体が自車両へ接近する方位をとっている場合に観測対象とするものである。
また好ましくは、上記ナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、上記他移動体状態情報が示す位置が上記注目領域のいずれかの領域内であって、かつ、当該他の移動体状態情報が示す進行方向と自車両の進行方向とを比較し、当該他移動体情報の属性に応じて観測対象を選択することを特徴とするナビゲーション装置。
【0007】
更に、本発明の受信装置は、他の移動体の他移動体状態情報を受信し、受信した他移動体状態情報をナビゲーション装置に出力する受信装置であって、上記ナビゲーション装置から出力される優先度判定結果を優先度管理テーブルとして登録する優先度管理テーブル部と、上記優先度管理テーブルを参照して上記他移動体状態情報の優先度を決定し、決定された上記優先度に応じて予め定められた順序で上記無線通信装置から取得した上記他移動体状態情報を上記ナビゲーションユニットに出力するものである。
また好ましくは、上記受信装置において、更に、上記他移動体状態情報を上記優先度毎に保存する格納部と、上記優先度管理テーブル部内の上記優先度管理テーブルを参照して上記他移動体状態情報の優先度を決定し、決定された上記優先度に応じて上記優先度毎に該当する上記格納部に出力する選別部と、上記優先度毎に格納部に保存された上記他移動体状態情報を上記優先度に応じて上記予め定められた順序で上記ナビゲーション装置に出力する出力順序制御部とを具備したものである。
また好ましくは、上記受信装置において、上記選別部は、更に、上記他移動体状態情報の送信元識別子によって上記格納部を検索し、該送信元識別子と同じ送信元識別子の他移動体状態情報が格納されていた場合には、上記格納部内の当該他移動体状態情報を削除してから上記無線部から取得した上記他移動体状態情報を保存するものである。
また好ましくは、上記受信装置において、上記出力順序制御部は、更に、上記格納部の優先度が一番高い格納部に保存されている他移動体状態情報がない場合に、次に優先度の高い格納部に保存されている他移動体状態情報を上記ナビゲーション装置に出力するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、情報収集範囲内の車車間通信を行う車両の密度に起因するトラフィックの影響により、衝突などの障害発生の要因となり得る車両や歩行者などの移動体の観測に遅延の発生を抑制可能となる。
また、移動体に移動体情報提供装置が提供装置があれば、基地局や中継局等を道路または近辺に設置する必要が無く、早期に、簡単に、安価で、新規若しくは既設の道路上に展開、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の移動体情報提供装置の一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の移動体情報提供装置の一実施例の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の優先制御部の一実施例を示す図。
【図4】本発明の優先制御部の一実施例を示す図。
【図5】本発明の優先度判定部の一実施例を示す図。
【図6】本発明の優先度判定部の一実施例を示す図。
【図7】本発明の優先制御部が参照する優先度管理テーブルの登録内容の一実施例を示す図。
【図8】本発明の優先制御部を構成する選別部の処理手順の一実施例を示すフローチャート。
【図9】本発明の優先制御部を構成する出力順序制御部の処理手順の一実施例を示すフローチャート。
【図10】本発明の優先制御部を構成する出力順序制御部の処理手順の一実施例に基づく動作の一例を説明するための図。
【図11】本発明の優先制御部を構成する出力順序制御部の処理手順の一実施例に基づく動作の一例を説明するためのフローチャート。
【図12】本発明の優先制御部を構成する出力順序制御部の処理手順の一実施例に基づく動作の一例を説明するための図。
【図13】本発明の優先度判定部を構成する判定値生成部の処理手順の一実施例を示すフローチャート。
【図14】本発明の優先度判定部を構成する判定値生成部の処理手順の一実施例を示すフローチャート。
【図15】本発明の優先度判定部を構成する優先度算定部の優先度設定に関する処理手順の一実施例を示すフローチャート。
【図16】本発明の優先度判定部を構成する優先度算定部の優先度抹消に関する処理手順の一実施例を示すフローチャート。
【図17】本発明の優先度判定部を構成する補正値算定部の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図18】本発明の優先度判定部における注目領域配置の一実施例を説明するための図。
【図19】本発明の優先度判定部における注目領域配置の一実施例を説明するための図。
【図20】本発明の優先度判定部における注目領域配置の一実施例を説明するための図。
【図21】本発明の優先度判定部における注目領域配置の一実施例を説明するための図。
【図22】本発明の優先度判定部における注目領域配置の一実施例を説明するための図。
【図23】本発明の優先度判定部における注目領域配置の一実施例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、衝突などの障害発生の要因となり得る車両や歩行者などの移動体の観測における遅延を抑止するため、車車間通信の通信領域内に優先度毎の注目領域を一つ以上定め、受信した移動体情報が示す少なくとも位置が、何れかの注目領域の領域内である場合に観測対象とし、少なくとも当該注目領域に設定した優先度と当該移動体情報の送信元を識別可能な送信元識別子とで判定結果を構成する優先度判定手段と、受信した移動体情報の送信元識別子で、優先度判定手段の判定結果を参照して当該移動体情報の優先度を判別し、優先度に基づき設定された順序で移動体情報を出力する優先制御手段とを具備することを主要な特徴とする。
本発明は、衝突などの障害発生の要因となり得る車両や歩行者などの移動体の観測における遅延を抑止するため、車車間通信の通信領域内に優先度毎の注目領域を一つ以上定め、当該注目領域の少なくとも位置や大きさを算定可能な情報からなる判定値を生成する判定値生成機能と、受信した移動体情報と判定値とを比較し、少なくとも当該移動体情報が示す位置が何れかの注目領域の領域内であると判定した場合に観測対象とし、少なくとも当該注目領域に設定した優先度と当該移動体情報の送信元を識別可能な送信元識別子とから構成される判定結果を生成する優先度算定機能とを備える優先度判定手段と、受信した移動体情報の送信元識別子で、優先度判定手段の判定結果を参照して優先度を求め、移動体情報を優先度で選別可能なように待ち行列に格納する選別機能と、優先度に基づき設定された順序で移動体情報を出力する出力順序制御機能とを備える優先制御手段とを具備することを主要な特徴とする。
本発明は、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域を、少なくとも、自車両の位置と方位に基づいて設定すること主要な特徴とする。
本発明は、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域を、少なくとも、自車両の位置、方位、及び道路形状を含む地図情報に基づいて設定することを主要な特徴とする。
本発明は、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域の位置や大きさを、少なくとも、自車両の速度に基づいて補正することを主要な特徴とする。
本発明は、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域の位置や大きさを、少なくとも、環境情報を含む道路交通情報に基づいて補正することを主要な特徴とする。
本発明は、優先度判定手段において、受信した移動体情報が示す位置が何れかの注目領域の領域内であって、かつ、当該移動体情報が示す方位と自車両の方位とを比較し、当該移動体情報の送信元である移動体が自車両へ接近する方位をとっている場合に観測対象とすることを主要な特徴とする。
本発明は、優先度判定手段において、受信した移動体情報が示す位置が何れかの注目領域の領域内であって、かつ、当該移動体情報が示す属性により観測対象を選択することを主要な特徴とする。
本発明は、優先制御手段において、受信した移動体情報の送信元識別子で待ち行列を検索し、送信元を同じとする移動体情報が待ち行列内に格納されている場合には、待ち行列内の移動体情報を削除してから当該移動体情報を格納することを主要な特徴とする。
また例えば、本発明は、優先度判別手段、優先制御手段、及び車車間通信手段を少なくとも具備するナビゲーション装置で構成することを主要な特徴とする。
また例えば、本発明は、優先度判別手段と優先制御手段を少なくとも具備するナビゲーション装置と、車車間通信手段を少なくとも具備する車車間通信装置で構成することを主要な特徴とする。
また例えば、本発明は、優先度判別手段を少なくとも具備するナビゲーション装置と、優先制御手段と車車間通信手段を少なくとも具備する車車間通信装置で構成することを主要な特徴とする。
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、説明の重複を避け、できるだけ説明を省略する。
【実施例1】
【0012】
図1は、車両に搭載された移動体情報提供装置の一実施例を示す図である。100 は移動体情報提供装置、1 はアンテナ、2 は車車間通信部、3 は優先制御部、4 は優先度判定部、5 は移動体観測部、6 は移動体情報生成部、7 は位置検出部、8 は方位検出部、9 は速度検出部、10 は加速度検出部、11 は VICS(道路交通情報通信システム:Vehicle Information and Communication System )などの情報サービスを利用してリアルタイムな道路交通情報を取得する道路交通情報取得部、12 は地図情報取得部、13 は車内 LAN( Local Area Network )、101 は車車間通信ユニット、102 はナビゲーションユニットである。図1では、車車間通信ユニット 101 は、アンテナ 1 、車車間通信部 2 、及び優先制御部 3 で構成される。また、ナビゲーションユニット 102 は、優先度判定部 4 、移動体観測部 5 、移動体情報生成部 6 、道路交通情報取得部 11 、地図情報取得部 12 、及び車内 LAN 13 、並びに、位置検出部 7 、方位検出部 8 、速度検出部 9 、加速度検出部 10 等の各種センサで構成される。車内 LAN は、車両内のナビゲーションユニット 102 の構成要素(優先度判定部 4 、移動体観測部 5 、移動体情報生成部 6 、位置検出部 7 、方位検出部 8 、速度検出部 9 、加速度検出部 10 、道路交通情報取得部 11 、及び地図情報取得部 12 )間で相互にデータを送受するネットワーク回線である。
また、各種センサによる自立航法情報の取得を行う、位置検出部 7 、方位検出部 8 、速度検出部 9 、及び加速度検出部 10 、並びに、道路交通情報取得部 11 及び地図情報取得部 12 とは、例えば、自立航法情報の取得及び GPS( Global Positioning System )等の GIS( Geographic Information Systems )を利用した地図情報を利用したカーナビゲーション装置を用いても良い。
なお、本実施例では、本発明に係わる構成要素のみを示し、その他は省略している。
【0013】
図1において、移動体情報生成部 6 は、自車両の状態を周辺に存在する他の移動体(車両や歩行者など)に報知するため、位置検出部 7 、方位検出部 8 、速度検出部 9 、加速度検出部 10 などの各種センサから、位置、方位、速度、加速度などの情報を定期的に収集し、例えば、現在位置、進行方向、走行速度、属性、等の情報から構成する移動体情報 Tx1 を生成し、車車間通信部 2 に出力する。なお、属性とは、車種や歩行者など、その移動体がどんなものかを示す情報(例えば、識別コード、等の識別子)であり、移動体情報生成部 6 に予め自車の属性として登録されている。また、例えば、属性は、移動体が歩行者であれば、本人を識別するための個人コードがあった場合、コード情報の種類が個人コードであることによって、歩行者であるとすることもできる。また例えば、歩行者の所持する携帯電話機や PHS( Personal Handy-phone System )等の小型電話機の識別コードであっても良い。
【0014】
車車間通信部 2 は、送信部(図示しない)と受信部(図示しない)とを備える。移車車間通信部 2 の送信部は、移動体情報生成部 6 が生成した自己の移動体情報 Tx1 を、アンテナ 1 を介して自車両周辺の他移動体に同報送信する。また、車車間通信部 2 の受信部は、アンテナ 1 を介して入力する自車両周辺の他移動体が同報送信する信号から、各移動体毎の移動体情報 Rx1 を再生し、優先制御部 3 に出力する。なお、上記実施例では、アンテナ 1 が送信と受信兼用であるが、別々であっても良い。
【0015】
優先度判定部 4 は、自車両(自己移動体)に障害を及ぼす可能性のある移動体を観測対象として捕捉するために、車車間通信の通信領域内に優先度毎の注目領域を、少なくとも1つ以上定める。この注目領域は、例えば、自車両との物理的距離や地理的位置と緊急性に基づき注目すべき場所を設定し、例えば、位置検出部 7 、方位検出部 8 、速度検出部 9 、加速度検出部 10 、道路交通情報取得部 11 、地図情報取得部 12 などから得られる情報を元に、注目すべき場所(注目領域)の位置や大きさを算定可能な情報を生成することによって1つ若しくは複数の注目領域を設定する。
【0016】
注目領域は、自車両に障害を及ぼす可能性のある移動体を観測対象として捕捉するための領域で、例えば、自車両との物理的距離や地理的位置と緊急性により、移動体との間で障害が発生する可能性の高い領域(優先度高)、障害の発生に備え移動体の監視が必要な領域(優先度中)、自車両との間で障害が発生する可能性の低い領域(優先度低)に分類し、配置する。
優先度判定部 4 では、少なくとも受信した移動体情報が示す位置が、設定した注目領域内である場合に、当該移動体情報の送信元識別子に対して優先度を与えるようにする。
優先制御部 3 は、送信元識別子で優先度を参照し、優先度が高く設定された移動体情報を優先的に出力するように出力順序を制御する。
優先度判定部 4 が分類するための優先度のランクは、通常2種類以上であるが、例えば、優先度が無い領域(注目領域ではない領域)と優先度が有る注目領域とに分ける等、1種類のランク分けでも良い。
優先度判定部 4 は、次に、入力される移動体情報 Rx3 と注目領域とを比較し、少なくとも移動体情報 Rx3 の示す移動体の位置が設定された1つ若しくは複数の注目領域の何れかの領域内にある場合には、入力された移動体情報 Rx3 の移動体を観測対象と判定し、当該注目領域の優先度と移動体情報とを関連付け、判定結果 S1 を生成する。生成された判定結果 S1 は、少なくとも、移動体情報 Rx3 の移動体を識別可能な送信元識別子と、当該送信元識別子と関連付けられた当該観測対象の得られた注目領域に設定された優先度とで構成し、優先制御部 3 に出力する。
【0017】
優先制御部 3 は、入力される判定結果 S1 を優先制御部 3 内部の優先度管理テーブル部(後述)の優先度管理テーブルに登録する。また、優先制御部 3 は、移動体情報 Rx1 が車車間通信部 2 から入力された場合には、優先度管理テーブル部内の優先度管理テーブルを参照して、移動体情報 Rx1 の送信元識別子が優先度管理テーブルに登録されているか否かを調べ、登録されている場合にはその優先度を求め、求めた優先度を当該移動体情報 Rx1 に関連づけした移動体情報 Rx2 と Rx3 を作成する。そして、優先制御部 3 は、少なくとも、移動体観測部 5 に出力する移動体情報 Rx2 については、優先度に基づいて設定された順序で出力するように制御を行う。
なお、優先制御部 3 が移動体情報 Rx3 を優先度判定部 4 に出力する場合も、移動体情報 Rx2 を移動体観測部 5 に出力する場合と同様にしても良い。
【0018】
移動体観測部 5 は、自車両及び自車両周辺にある移動体の存在や状態を運転者に認知させるようにするものである。このため、移動体観測部 5 は、図示しないディスプレイを備え、少なくとも、自車両周辺にある移動体の存在や状態をディスプレイの表示画面に表示する。また、好ましくは、警報音若しくは警告の言葉(擬似音でも良い)を出力するスピーカを備える。なお、ディスプレイは、一体化、若しくは、出力を外部機器の表示装置に接続することで表示が為される、等でも良い。
即ち、移動体観測部 5 は、少なくとも、優先制御部 3 から入力される移動体情報 Rx2 と自車両の移動体情報を参照し、自車両周辺にある移動体の存在や状態を運転者に認知させるようにするものである。例えば、移動体観測部 5 は、移動体情報 Rx2 のそれぞれの移動体の位置、方位などの情報をもとに、自車両周辺の道路地図の表示、並びに、自車両の位置及び自車両周辺にある移動体の位置を、ディスプレイの表示画面に表示する。これによって、移動体観測部 5 は、運転者に、自車両周辺にある移動体の存在を認知させることができ、かつ、表示された移動体の示す属性(車種や歩行者等を示す属性)を参照することにより、移動体の種類を運転者に認知させることが可能になる。
また、表示画面に、移動体情報 Rx2 に加えて、移動体観測部 5 が、例えば、位置検出部 7 、方位検出部 8 、速度検出部 9 、加速度検出部 10 などから得られる位置、方位、速度、加速度などの情報を、数値若しくは数値を表す模式的図形で、表示画面に表示することにより、自車両周辺にある移動体の接近する状態(自車両との距離、速度、加速度、方位、等の絶対的若しくは相対的な状態情報)を運転者に認知させることも可能になる。
【0019】
なお、図1の実施例において、優先度判定部 4 は、既に優先度を設定した移動体が注目領域で再度検出された場合に、当該領域の優先度を再設定することも可能である。設定した優先度の昇格若しくは降格は、例えば、新たに入力された移動体情報 Rx3 に基づいて再度その移動体が検出された領域の種類によって評価され、決定される。即ち、優先度判定部 4 は、新たに入力された移動体情報 Rx3 から、移動体の検出された位置を含む注目領域のランクによって判定結果 S1 を再度生成し、優先制御部 3 に出力する。優先制御部 3 は、再度入力される判定結果 S1 によって優先制御部 3 内部の図示しない優先度管理テーブル部内に登録されている優先度管理テーブルを更新する。また、優先度判定部 4 は、新たに入力された移動体情報 Rx3 から、移動体の検出された位置を判定し、その位置が注目領域から外れている場合には、優先度を解除(優先度無しと)して、判定結果 S1 を再度生成し、優先制御部 3 に出力する。優先制御部 3 は、再度入力される判定結果 S1 によって優先度管理テーブルを更新する。
なお、設定した優先度の解除には、例えば、優先度判定部 4 や移動体観測部 5 において、優先度を設定した移動体の観測領域を定め、観測領域を外れた場合に解除するようにしても良い。
【0020】
図1の実施例によれば、通信領域内の車両密度が高くなりトラフィックが上昇しても、注目領域内で捕捉した移動体から発信される移動体情報を優先的に出力する優先制御が可能になるので、衝突などの障害発生の要因となり得る移動体の観測に対する遅延を回避できるようになる。
また好ましくは、図1の実施例によれば、優先度判定部 4 が判定した優先度を移動体情報の送信元識別子に与え優先度管理テーブルで管理するので、優先制御部 3 では移動体情報の解析を行うことなく優先度が判別可能となる。従って、優先制御部 3 での処理負荷を軽減し遅延の少ない制御が可能となる。
図1の実施例において、移動体情報提供装置 100 は、単体で移動体情報の優先制御を行うには、少なくとも、車車間通信ユニット 101 とナビゲーションユニット 102 を具備すれば良い。なお、この場合には、車載ではなく、可搬型の移動体情報提供装置などへの適用も可能となる。
【0021】
なお、図1において、車内 LAN( Local Area Network )などのネットワークを介して、例えば前方用や後方用と言った複数の車車間通信ユニット(車両前部に搭載された車両間通信ユニット 101a と車両後部に搭載された車車間通信ユニット 101b )を備える移動体情報提供装置 100 を構成し、移動体情報の優先制御を行うことも可能である。例えば、ネットワーク接続する複数の車車間通信ユニット 101a 、101b には、少なくとも、車車間通信部 2 、優先制御部 3 を備えるようにし、移動体情報提供装置 100 を構成する。この場合、例えば、前方の他の車両の移動体情報は前方の車車間通信ユニット 101a が受信し、同じく後方の他の車両の移動体情報は後方の車車間通信ユニット 101b が受信するようにし、受信した移動体情報をネットワークを介してナビゲーションユニット 102 に出力するようにする。また、送信は自車の移動体情報 Tx を、前方の車車間通信ユニット 101a 及び後方の車車間通信ユニット 101b が同報送信すれば良い。また、ナビゲーションユニット 102 の優先度判定部 4 は、車車間通信ユニット 101a 、101b が備える優先制御部 3 をネットワークを介して制御するようにすれば良い。この場合、車車間通信ユニット 101a 、101b は優先度の高い移動体情報から順番にネットワークに情報を流すことが可能となるので、特に帯域の狭いネットワークにおいて高い効果を得ることが可能になる。
【0022】
また好ましくは、図1の実施例において、車内 LAN( Local Area Network )などのネットワークを介して、例えば前方用や後方用と言った複数の車車間通信ユニット(車両前部に搭載された車両間通信ユニット 101a と車両後部に搭載された車車間通信ユニット 101b )を備えるようにして移動体情報提供装置 100 を構成し、移動体情報の優先制御を行うには、少なくとも、優先制御部 3 をナビゲーションユニット 102 側に具備させるようにし、車車間通信ユニット 101 には、少なくとも車車間通信部 2 を具備させるようにする。この場合、データ転送の待ち行列(後述)がナビゲーションユニット 102 内の優先制御部 3 に集約できるので、ネットワーク接続された車車間通信ユニット 101a 、101b に搭載されるメモリが削減可能となり、移動体情報提供装置 100 を安価に提供することが可能になる。
【0023】
また好ましくは、図1の実施例では、車車間通信ユニット 101 をアンテナ 1 、車車間通信部 2 、及び優先制御部 3 で構成した。しかし、図2に示す構成のように、アンテナ 1 、共用器 1-1 、送信部 2′、受信部 3′で構成した車車間通信ユニット 101′でも良い。この場合、図1と同様に、送信部 2′は、ナビゲーションユニット 102 の移動体情報生成部 6 から入力される移動体情報 Tx1 を共用器 1-1 とアンテナ 1 を介して同報送信する。また、他移動体の移動体情報を、アンテナ 1 と共用器 1-1 を介して受信部 3′が受信する。受信部 3′では、自車両周辺の他移動体が同報送信する信号から、各移動体毎の移動体情報 Rx1 を再生する。そして受信部 3′は、図1の優先制御部 3 と同様に、移動体情報 Rx1 から優先度関連付けた移動体情報 Rx2 と RX3 を作成し、移動体情報 Rx2 を移動体観測部 5 に出力し、移動体情報 Rx3 を優先度判定部 4 に出力する。
【0024】
なお、図2において、例えば前方用や後方用と言った複数のアンテナを備えるようにして移動体情報提供装置 200 を構成し、移動体情報の優先制御を行うことも可能である。例えば、図2に示す実施例において、複数のアンテナ(車両前部に配置するアンテナ 1a と車両後部に配置するアンテナ 1b )は、少なくとも、前方の他の車両の移動体情報を前方のアンテナ 1a が受信し、同じく後方の他の車両の移動体情報を後方のアンテナ 1b が受信するようにする。前方及び後方と2つのアンテナがあるため、共用器 1-1 や受信部 3′の受信機能は2つ必要であるが、受信部 3′内に共通の優先制御部を設けて、ナビゲーションユニット 102 に出力するようにする。また、送信は、自車の移動体情報 Tx を、前方及び後方の送信部が同じ情報を同報送信すれば良い。なお、図2では、アンテナ 1a と 1b は図示していない。しかし、例えば、図2におけるアンテナ 1 の替りに、車両前方に設置したアンテナ 1a と、車両後方に設置したアンテナ 1b とを設け、一方のアンテナ 1a を共用器に接続し、他方のアンテナ 1b を受信部 3′に接続する構成とすれば良い。
この場合、データ転送の待ち行列(後述)が受信部 3′内の優先制御部に集約できるので、車車間通信ユニット 101′に搭載されるメモリが削減可能となり、移動体情報提供装置 200 を安価に提供することが可能になる。
【実施例2】
【0025】
次に、移動体情報提供装置における優先制御部 3 の一実施例を、図3、及び図7〜図10によって説明する。図3は、図1の移動体情報提供装置 100 における優先制御部 3 の一実施例を示す図である。31 は選別部、32 は第1の待ち行列格納部、33 は第2の待ち行列格納部、34 は第3の待ち行列格納部、35 は出力順序制御部、36 は優先度管理テーブル部である。
また図7は、優先制御部 3 が管理する優先度管理テーブル部 36 内に登録された優先度管理テーブルの登録内容の一実施例を示す図である。図8は、優先制御部 3 を構成する選別部 31 の処理手順の一実施例を示すフローチャートである。図9は、優先制御部 3 を構成する第1の出力順序制御部 35 の処理手順の一実施例を示すフローチャートである。図10は、優先制御部 3 を構成する出力順序制御部 35 の処理手順の一実施例に基づく動作の一例を説明するための図である。
【0026】
優先度管理テーブル部 36 の優先度管理テーブルには、例えば、図7に示すように、送信元識別子と優先度などの項目を関連付けて登録される。なお、優先度判定部 4 から新たに入力された判定結果 S1 の送信元識別子が登録済みの場合は、関連付けられた項目の内容を更新する。また、入力された新たな判定結果 S1 で抹消が指示された場合には、指定された送信元識別子を優先度管理テーブルから削除し、優先制御の対象から除外する。
選別部 31 は、車車間通信部 2 から入力される移動体情報 Rx1 を優先度で選別可能なように待ち行列格納部 32 〜 34 内に格納データ 302 〜 304を格納するため、優先度管理テーブル部 36 から得られる送信元識別子と優先度を取得する。
【0027】
次に、選別部 31 が、入力される移動体情報 Rx1 を選別してデータとして送信元識別子と優先度に基づいて、第1の待ち行列格納部内の格納データ 302 、第2の待ち行列格納部 303 、及び第3の待ち行列格納部 304 に格納する処理を実行する処理手順について、図8を用いて説明する。
この処理では、先ずステップ S3101で、全ての待ち行列を対象に入力した移動体情報 Rx1 と送信元を同じとする情報が、第1の待ち行列格納部 32 、第2の待ち行列格納部 33 、及び第3の待ち行列格納部 34 に格納されていないか否かを検査し、格納されている場合は、ステップ S3102 で既に格納されている当該情報を削除してステップ S3103 に移行する。また、格納されていない場合には、何もしないでステップ S3103 に移行する。
選別部 31 は、次に、ステップ S3103 で、優先度管理テーブル部 36 から移動体情報 Rx1 の送信元識別子を検索して優先度を取得し、ステップ S3104 で送信元の優先度を判別する。判別の結果、送信元識別子が優先度管理テーブル部 36 内の優先度管理テーブルに登録済みで、かつ、優先度が「高」の場合は、ステップ S3106 に移行し、第1の待ち行列格納部 32 に格納する。また、送信元識別子が優先度管理テーブルに登録済みで、かつ、優先度が「中」の場合は、ステップ S3107 に移行し、第2の待ち行列格納部 33 に格納する。また、送信元識別子が優先度管理テーブル内に未登録の場合には、ステップ S3108 に移行し、第3の待ち行列格納部 34 に、移動体情報 Rx1 を格納する。
以上の処理によれば、選別部 31 は、入力される移動体情報 Rx1 を優先度で選別することが可能になる。
【0028】
出力順序制御部 35 は、第1の待ち行列格納部 32 、第2の待ち行列格納部 33 、第3の待ち行列格納部 34 に格納された移動体情報(格納データ 302 〜 304 )を、優先度に基づいて設定された順序で出力するための制御を行う。この出力順序制御部 35 の処理手順について、図9を用いて説明する。
この処理では、先ず、ステップ 3501 で、第1の待ち行列格納部 32 が空きの状態か否かを検査し、格納された格納データ 302 がある(空きの状態でない)場合にはステップ S3502 で、第1の待ち行列格納部 32 の格納データ 302 を1つずつ、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として、移動体観測部 5 及び優先度判別部 4 に出力する。また、第1の待ち行列格納部 32 に格納されたデータが全く無い状態(空きの状態)の場合には、ステップ S3503 に移行する。
次にステップ S3503 では、第2の待ち行列格納部 33 が空きの状態か否かを検査し、格納された格納データ 303 がある場合にはステップ S3504 で、第2の待ち行列格納部 33 の格納データ 303 を1つずつ、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として、移動体観測部 5 及び優先度判別部 4 に出力する。また、第2の待ち行列格納部 33 に格納されたデータが無い状態の場合には、ステップ S3505 に移行する。
更に、ステップ S3505 で、第3の待ち行列格納部 34 が空きの状態か否かを検査し、格納された格納データ 304 がある場合にはステップ S3506 で、第3の待ち行列格納部 34 の格納データ 304 を、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として、移動体観測部 5 及び優先度判別部 4 に出力する。また、出力順序制御部 35 は、第3の待ち行列格納部 34 に格納されたデータが無い状態の場合には、この処理を終了し、再び、ステップ S3501 から処理を開始する。
【0029】
図10において、第1の待ち行列格納部 32 の中には格納データ 302(データ A1 、A2 、A3 、A4 )が1つずつ順に、個別の移動体毎に格納され、第2の待ち行列格納部 33 の中には格納データ 303(データ B1 、B2 、B3 、B4 )が1つずつ順に、個別の移動体毎に格納され、第3の待ち行列格納部 34 の中には格納データ 304(データ C1 、C2 、C3 、C4 )が1つずつ順に、個別の移動体毎に格納されている。出力制御部 35 は、図9のフローチャートに示した処理に従って、先ず、第1の待ち行列格納部 32 の中に格納されたデータを、データ A1 、A2 、A3 、A4 の順に1つずつ優先制御部 3 から出力し、第1の待ち行列格納部 32 の中のデータが無くなった後、第2の待ち行列格納部 33 の中に格納されたデータを、データ B1 、B2 、B3 、B4 の順に1つずつ優先制御部 3 から出力する。そして、第2の待ち行列格納部 33 の中のデータが無くなった後に、第3の待ち行列格納部 34 の中に格納されたデータを、データ C1 、C2 、C3 、C4 の順に1つずつ優先制御部 3 から出力する。
【0030】
以上のように処理を行い、待ち行列格納部内の格納データを、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として出力するようにする。この手順によれば、例えば図10に示すように、優先度が最も高い第1の待ち行列格納部 32 に格納されたデータを先ず出力し、第1の待ち行列格納部 32 内に格納されたデータが無くなり、空きになると次に優先度の高い第2の待ち行列格納部 33 に格納されたデータを出力する。そして、第2の待ち行列格納部 33 が空きになった場合に、第3の待ち行列格納部 34 内の格納データを出力するようにすることができる。
【0031】
なお、図9のフローチャートで示す処理手順では、優先制御部 3 から移動体情報のデータが1つ出力されると、ステップ S3501 から再度処理が開始するので、一番優先度の高い第1の待ち行列格納部 32 の中にデータが新規に入力され格納され続けると、常に第1の待ち行列格納部 32 の中に格納されたデータ 302 しか優先制御部 3 から出力されない。
同様に、第1の待ち行列格納部 32 の中にデータが無い場合には、第2の待ち行列格納部 33 の中に、新規にデータが格納され続けると、第3の待ち行列格納部 34 の中にあるデータ 304 は出力されないことになる。
このような状態が長時間続くと、運転者は全体の情報が把握できず、かえって事故につながる恐れがある。従って、例えば、所定時間第1の待ち行列格納部 32 の中にデータ 302 が出力され続けると、アラーム等の警報音や警告を移動体観測部 5 から出力するようにしても良い。そのような状況の場合には、運転者は安全を確認して自車両を停車させることにより、図9のフローチャートで示す処理手順が実行されないようにすることができ、自車両の周囲状況が移動体観測部 5 から出力され、全ての状況が把握できるようにしても良い。また、図9の処理を、一次的若しくは所定時間停止するように操作可能としても良い。
【0032】
図3、及び図7〜図10の実施例によれば、優先度管理テーブルに登録された送信元識別子と優先度を元にして、入力する移動体情報を優先度で選別して待ち行列に格納し、優先度の高い待ち行列の格納データから順番に出力できるので、移動体情報の優先制御が可能になる。
上述の実施例によれば、送信元を同じとする移動体情報が既に待ち行列格納部内に格納されている場合には、待ち行列格納部内の移動体情報を削除してから格納するので、運転者は常に最新の情報に基づき移動体の存在や状態を認知できると言う利点がある。
また図3、及び図7〜図10の実施例によれば、優先度は送信元識別子で取得できるので、優先制御部は、入力する移動体情報の解析を行うことなく優先度が判別可能となり、処理負荷を軽減し遅延の少ない制御が可能となる。
また図3、及び図7〜図10の実施例によれば、優先度の高い待ち行列格納部にデータが格納されている場合には、それより優先度の低い待ち行列からの出力を抑制し、優先度の高いデータを出力できるようになる。
これにより、本発明では、通信領域内の車両密度が高くなりトラフィックが上昇しても、注目領域内で捕捉した移動体から発信される移動体情報を優先的に出力する優先制御が提供できるので、衝突などの障害発生の要因となり得る移動体の観測に対する遅延を回避できると言う利点がある。また、判定した優先度は移動体情報の送信元識別子に与えるようにするので、優先制御手段では移動体情報の解析を行うことなく優先度が判別可能となり、処理負荷を軽減し遅延の少ない制御ができると言う利点もある。
【実施例3】
【0033】
本発明の移動体情報提供装置における優先制御部 3 の他の一実施例を図11と図12によって説明する。図11は、図3の優先制御部 3 を構成する出力順序制御部 35 の処理手順の他の実施例を示すフローチャートである。その他は、先の実施例と同様である。また図12は、図11の出力順序制御部 35 の処理手順の一実施例に基づく動作の一例を説明するための図である。
図11において、出力順序制御部 35 は、先ず、ステップ S3511 で、第1の待ち行列格納部 32 が空きの状態か否かを検査し、空きでない(格納データ 302 が有る)場合には、ステップ S3512 でn個(nは自然数)の格納データを、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として、移動体観測部 5 及び優先度判別部 4 に出力して、ステップ S3513 に移行する。なお、空きの場合(格納データがない場合)には、そのままステップ S3513 に移行する。
ステップ S3513 では、第2の待ち行列格納部 33 が空きの状態か否かを検査し、空きでない(格納データ 303 が有る)場合には、ステップ S3514 でm個(mは自然数、n>m)の格納データを、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として、移動体観測部 5 及び優先度判別部 4 に出力して、ステップ S3515 に移行する。なお、空きの場合(格納データがない場合)には、そのままステップ S3515 に移行する。
ステップ S3515 でも同様に、第3の待ち行列格納部 35 が空きの状態か否かを検査し、空きでない(格納データ 304 が有る)場合には、ステップ S3515 でk個(kは自然数、m>k)の格納データを、移動体情報 Rx2 及び移動体情報 Rx3 として、移動体観測部 5 及び優先度判別部 4 に出力して、処理を終了する。なお、空きの場合(格納データがない場合)には、そのまま処理を終了する。
【0034】
図10の手順によれば、例えば、格納データを出力する数の比率をn:m:k = 3:2:1 とした場合、図11示すように、優先度が最も高い第1の待ち行列格納部 32 の格納データ 302 を3個出力した後、第2の待ち行列格納部 33 の格納データ 303 を2個出力し、次に第3の待ち行列格納部 34 の格納データ 304 を1個出力するように動作する。
従って、優先度の低い待ち行列の格納データも一定の割合で出力することができる。
【実施例4】
【0035】
本発明の移動体情報提供装置における優先制御部 3 の別の一実施例を、図4によって説明する。図4は、図1の移動体情報提供装置 100 における優先制御部 3 の他の実施例を示す図である。3′は優先制御部、35-1 と 35-2 は出力順序制御部である。その他は図3の実施例と同様である。図4は、出力順序を2種類使い分けるようにしたものである。
図4において、優先制御部 3′では、移動体観測部 5 に出力する移動体情報 Rx2 の出力順を制御する専用の出力順序制御部 35-1 と、優先度判定部 4 に出力する移動体情報 Rx3 の出力順を制御する専用の出力順序制御部 35-2 とを具備したものである。
図4の実施例によれば、優先度判定部 4 に出力する移動体情報 Rx3 、移動体観測部 5 に出力する移動体情報 Rx2 を、各々の出力順序を独立に制御できるので、優先度判定部 4 に出力する移動体情報 Rx3 について、例えば、優先度が未設定の第3の待ち行列格納部 34 の格納データを優先的に出力させるようにして、注目領域に侵入する移動体の検出を優先させるような制御も可能になる。
なお、図4の実施例では、出力制御部が2つであったが、3以上であっても良い。
【実施例5】
【0036】
更に、本発明の移動体情報提供装置における優先度判定部 4 の実施例を、図5、図13、図15、及び、図18〜図21によって説明する。図5は、図1の移動体情報提供装置 100 における優先度判定部 4 の一実施例を示す図である。41 は判定値生成部、42 は優先度算定部である。図13は、優先度判定部 4 を構成する判定値生成部 41 の処理手順の一実施例を示すフローチャートである。図15は、優先度判定部 4 を構成する優先度算定部 42 の優先度設定に関する処理手順の一実施例を示すフローチャートである。図17は、優先度判定部 4 を構成する優先度算定部 42 の優先度抹消に関する処理手順の一実施例を示すフローチャートである。図18は、優先度判定部 4 における注目領域配置の一実施例を説明するための図である。図19は、優先度判定部 4 における注目領域配置の別の実施例を説明するための図である。図20は、優先度判定部 4 における注目領域配置のさらに別の実施例を説明するための図である。図21は、優先度判定部 4 における注目領域配置のさらに別の実施例を説明するための図である。
【0037】
図5において、判定値生成部 41 は、物理的距離に基づき注目領域を配置する。このため、少なくとも、自車両を原点とした領域内の移動体との相対的な配置情報と優先度で構成する定義情報と、自車両の現在位置と進行方向を元にして注目領域の絶対的な位置や大きさを算定可能な判定値を生成する。
この定義情報が定める注目領域は、例えば、自車両における運転者の事象認知から反応までの時間や、車両の走行速度や減速度などから注目領域の位置を定義し、移動体が送信する移動体情報の送信周期や移動体の走行速度から注目領域の大きさを定義するようにする。また、注目領域の形状は、例えば、中心座標と半径を配置情報とした円形の領域として定義することや、対角線上の2点の座標を配置情報として方形の領域を定義する。
【0038】
この判定値生成部 41 において、例えば、4つの注目領域の判定値を生成する処理手順の一実施例を図13によって説明する。4つの注目領域は、例えば、後述する図18における注目領域 Rc1(優先度「高」)、注目領域 Rc2(優先度「高」)、及び注目領域 Rc3(優先度「中」)と、その他の領域 Rc4(優先度「低」)である。
この処理では、先ず、ステップ S4101 で、位置検出部 7 から得られる情報から、自車両の現在位置 p0 を取得する(図1参照)。また、ステップ S4101 で、方位検出部 8 から得られる情報から、自車両の現在の進行方向 d0 を取得する(図1参照)。
次に、ステップ S4103 では、判定値 J1 を求めるため、領域 Rc1 の定義情報の配置情報と、自車両の現在位置 p0 と進行方向 d0 から、領域 Rc1 の絶対座標を算出する。また、同様にして、ステップ S4104 では、領域 Rc2 の判定値 J2 を求めるため、領域 Rc2 の定義情報の配置情報と自車両の位置 p0 と進行方向 d0 から、領域 Rc2 の絶対座標を算出する。ステップ S4105 では、領域 R3 の判定値 J3 を求めるため、領域 Rc3 の定義情報の配置情報と自車両の位置 p0 と進行方向 d0 から、領域 Rc3 の絶対座標を算出する。ステップ S4106 では、領域 Rc4 の判定値 J4 を求めるため、領域 Rc4 の定義情報の配置情報と自車両の位置 p0 と進行方向 d0 から、領域 Rc4 の絶対座標を算出する。
なお、図13の実施例では、ステップ S4101 〜 S4106 まで、順番に処理するように記載されているが、実際には、処理に順番はなく、同時若しくは、可能な処理から実行して良い。しかし、好ましくは、優先度「高」の設定を一番先に実行することが望ましい。
【0039】
優先度算定部 42 では、例えば、領域 Rc1 の判定値 J1 、領域 Rc2 の判定値 J2 、及び領域 Rc3 の判定値 J3 を用いて移動体情報 Rx3 に対して優先度の設定を行い、領域 Rc4 の判定値 J4 を用いて移動体情報 Rx3 に設定されている優先度の抹消判定を行うようにし、その結果を判定結果 S1 として優先制御手段 3 に出力する。
【0040】
優先度の設定では、優先度判定部 4 は、少なくとも、移動体情報 Rx3 の送信元識別子と優先度から構成する判定結果 S1 を生成するため、判定値生成部 41 で生成された判定値 J1 、判定値 J2 、及び判定値 J3 と、移動体情報 Rx3 が示す位置を比較する。
この優先度を設定する処理において、例えば、領域 Rc1 及び領域 Rc2 を優先度「高」と判定し、領域 Rc3 を優先度「中」と判定する場合の手順について、図17のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
図17の処理では、ステップ S4201 では、優先制御部 3 から入力される移動体情報 Rx3 の中で、優先度が未設定または優先度「中」が設定された情報を処理対象とし、処理対象の移動体の位置情報(他車両位置)p1 を算出する。次に、ステップ S4202 では、取得した位置情報 p1 と判定値 J1 を利用して、領域 R1 に対する領域内判定を行う。
ステップ S4203 では、判定の結果、位置情報 p1 が領域 Rc1 の領域内を示す場合には、ステップ S4204 で優先度を「高」に設定し、ステップ S4205 で処理対象の送信元識別子と関連付けて判定結果 S1 を出力する。位置情報 p1 が領域 Rc1 の領域外を示す場合は、ステップ S4206 で判定値 J2 を利用して領域 Rc2 対する領域内判定を行う。
ステップ S4207 では、その位置が領域内を示す場合は、ステップ S4204 に移行し、上述のステップ S4204、S4205 を実行して、優先度を「高」とした判定結果 S1 を出力する。
【0042】
また、位置情報 p1 が領域 Rc2 の領域外を示す場合は、ステップ S4208 に移行し、判定値 J3 を利用して領域 Rc3 対する領域内判定を行い、その位置が領域内を示す場合には、ステップ S4210 で優先度を「中」と設定し、ステップ S4211 で処理対象の送信元識別子と関連付けて判定結果 S1 を出力する。
なお、ステップ S4209 で位置情報 p1 が領域 Rc3 の領域外を示した場合は、優先度は設定せず、判定結果 S1 は出力しないようにする(処理終了)。
以上述べたように、注目領域内で検知した移動体に対して、新規に優先度を与えることや、優先度を昇格させることが可能になる。また、注目領域の領域内判定は優先度の高い方から順番に行うので、優先度の異なる注目領域が重なり合って配置されても優先度を低く判定しないようにできる。
【0043】
なお、移動体情報 Rx3 に移動体の進行方向を示す方位情報が格納される場合は、この方位情報と自車両の進行方向とを比較し、進行方向で移動体を弁別することも可能になる。さらに、移動体情報 Rx3 に歩行者や自動二輪車、自動四輪車などの移動体の属性情報が格納される場合は、特定の属性を有する移動体を検出することも可能になる。
【0044】
次に、優先度の抹消判定では、優先度判定部 4 は、少なくとも、移動体情報 Rx3 の送信元識別子と抹消指示から構成する判定結果 S1 を生成するため、判定値 J4 と移動体情報 Rx3 が示す位置を比較する。この優先度を抹消する処理の手順について、図16のフローチャートを用いて説明する。
図16の処理では、ステップ S4212 で、優先制御部 3 から入力される移動体情報 Rx3 の中で優先度「高」または優先度「中」が設定された情報を処理対象とし、処理対象の移動体から位置情報 p1 を算出する。次に、ステップ S4213 では、取得した位置情報 p1 と判定値 J4 を利用して、領域 Rc4 に対する領域内判定を行う。
ステップ S4214 では、判定の結果、位置情報 p1 が領域 Rc4 の領域外を示す場合には、ステップ S4215 で抹消指示の設定を行い、ステップ S4216 で処理対象の送信元識別子と関連付けて判定結果 S1 を出力する。
また、位置情報 p1 が、領域 Rc4 の領域内を示す場合は、ステップ S4214 は、抹消指示は設定せず、判定結果 S1 が出力されないようにする(処理終了)。
【0045】
上述したように、図13の実施例によれば、領域 Rc4 を、例えば、自車両に対して障害を及ぼす可能性がなくなったと判断可能な領域に設定できるため、優先度を設定した移動体が領域外に位置した場合に、優先的に観測する対象から除外することが可能になる。
なお、注目領域の定義は、当該移動体からの次の移動体情報 Rx1 受信する見込み時間と自車両と当該移動体の走行速度と移動方向を考慮し、見込み時間時の当該車両が存在すると危険である領域を予測して定義することができる。この危険な事象が発生すると予測して定義された注目領域は、優先度「高」と設定する。また逆に、見込み時間時の当該車両が存在すると危険がなくなる領域を予測して定義することができる。この危険な事象が発生しないと予測して定義された注目領域は、優先度「低」と設定する。このような予測を含む注目領域の設定によって、更に優先的かつ迅速に、移動体情報を管理し、移動体観測部 5 に出力することにより、運転者は、危険な事象が発生することを回避することができる。
上述の実施例5によれば、物理的距離に基づき配置した注目領域で移動体を捕捉し、当該移動体を識別可能な送信元識別子に優先度を設定することが可能になる。
【0046】
また、実施例5によれば、物理的距離に基づき定義した注目領域を、自車両の走行位置に応じて適切に配置できる。以下、具体的な事例を図18〜図21によって更に説明する。
この物理的距離に基づく注目領域の定義づけは、自車両 MC1 の走行車線 Rd2 上の、前方と後方の直近の範囲それぞれを優先度「高」の注目領域とし、進行方向の更に前方を優先度「中」の注目領域として設定するものである。
【0047】
図18において、自車両 MC1 並びに周囲の車両 MC2 、MC3 、及び MC4 は、車線 Rd2 上を矢印 F2 の方向に走行している。また、周囲の車両 MC5 、MC6 、及び MC7 は、対向する車線 Rd1 上を矢印 F1 の方向に走行している。この時、自車両 MC1 の進行方向の前方に、自車両の位置から所定の距離の位置 P1( 座標( X1 ,Y1 ))を中心として、半径 r1 の円内を優先度「高」の注目領域 Rc1 とし、自車両 MC1 の位置から所定の距離の後方位置 P2( 座標( X2 ,Y2 ))を中心として、半径 r2 の円内を優先度「高」の注目領域 Rc2 としている。また、注目領域 Rc1 の更に前方の位置 P3( 座標( X3 ,Y3 ))を中心として、半径 r3 の円内を優先度「中」の注目領域 Rc3 としている。
【0048】
なお、後方の注目領域 Rc2 の設定は、その領域 Rc2 の半径を走行する車線 Rd2 の幅(2車線分)と歩道の幅を含む半径程度とし、その中心点の位置は2車線幅の中央部としている。また、前方の優先度「高」の注目領域 Rc1 の場合には、対向車線からの進入も考えられるため、設定の中心点の設定位置を中央分離帯寄りに設定し、かつ、設定する半径を大きくしている。また、更に前方の優先度「中」の注目領域 Rc3 の場合には、状況の変化が大きく変わる可能性があるので、更に広い半径とし、中心位置も中央分離帯位置に設定している。また、基準となる物理的距離も前方の距離を小さく、後方の距離を大きく設定している。
なお、好ましくは、走行する道路の車線数や幅は、走行する道路によって異なるため、定義する注目領域の半径と中心位置を地図情報から取得した情報で補正するようにするのが良い。また、補正値を運転者が手動で入力若しくは切り替えるようにしておいても良い。
図18の実施例では、車両 MC4 と MC5 は、領域 Rc1 と Rc2 と、2つの注目領域で同時に検出される。しかし、優先度「高」の領域が先に検出してその移動体(車両 MC4 と MC5 )に優先度を順番に設定するので、優先度は低く設定されない。
【0049】
図20は、図18と同じ道路上で移動体も同一の状況の場合の注目領域の定義づけの別の実施例を説明する図である。この時、自車両 MC1 の進行方向の前方に、位置 P211( 座標( X211 ,Y211 )と位置 P212( 座標( X212 ,Y212 )を対角線位置に持つ、自車両の位置から所定の距離にある方形の領域内を優先度「高」の注目領域 Rc21 としている。また、位置 P221( 座標( X221 ,Y221 )と位置 P222( 座標( X222 ,Y222 )を対角線位置に持つ、自車両 MC1 の位置から所定の距離の後方にある方形の領域内を優先度「高」の注目領域 Rc22 としている。また、注目領域 Rc21 の更に前方の位置 P231( 座標( X231 ,Y231 )と位置 P232( 座標( X232 ,Y232 )を対角線位置に持つ、方形の領域内を優先度「中」の注目領域 Rc23 としている。
この物理的距離に基づく注目領域の定義づけは、自車両 MC1 の走行車線 Rd2 上の、前方と後方の直近の範囲それぞれを優先度「高」の注目領域とし、進行方向の更に前方を優先度「中」の注目領域として設定するものである。
【0050】
なお、後方の注目領域の設定は、その方形領域の幅を走行する車線 Rd2 の幅(2車線分)を含む大きさとしている。また、前方の優先度「高」の注目領域の場合には、対向車線からの進入も考えられるため、走行する車線 Rd2 の幅(2車線分)と対向1車線分を合わせた幅、及び歩道の幅を含む程度としている。更に、もっと前方の優先度「中」の注目領域の場合には、状況の変化が大きく変わる可能性があるので、更に広い幅としている。
また、好ましくは、基準となる物理的距離も前方の距離を小さく、後方の距離を大きく設定している。また更に、方形形状の走行方向の長さは、前方を長く、後方を短くすることによって、移動体との相対的速度や加速度に対応して設定するのが良い。
またなお、好ましくは、走行する道路の車線数や幅は、走行する道路によって異なるため、定義する注目領域の幅と中心位置を地図情報から取得した情報で補正するようにするのが良い。また、補正値を運転者が手動で入力若しくは切り替えるようにしておいても良い。
図20の実施例では、注目領域 Rc21 と Rc23 と重なる領域がないが、隣接しても良いし、重なり合っても良い。またその場合、優先度「高」の領域が先に検出してその移動体に優先度を順番に設定するので、優先度は低く設定されない。
【0051】
図18若しくは図20に示すように、自車両前方の歩行者や対向車両を検知するための領域 Rc1 若しくは Rc21(優先度「高」)、領域 Rc3 若しくは Rc23(優先度「中」)と、後方から接近する車両を検知するため領域 Rc2 若しくは Rc22(優先度「高」)を、円形や方形などの領域で定義できるようになる。
【0052】
また、優先度の抹消判定を行うための注目領域には、例えば、図19や図21に示すように自車両を中心とし、その周辺を範囲とした円形や方形などの領域を定義できる。
図19と図21は、どちらも、図18、図20と道路状況は同じものである。
図19では、自車両 MC1 の物理的位置 P40(座標( X40 ,Y40))を中心とした半径 r41 の円内を優先度「高」の注目領域 Rc41 とし、中心が同一で半径が、注目領域 Rc41 の半径 r41 より大きい半径 r42 の円内を優先度「中」の注目領域 Rc42 として設定している。
次に図21では、自車両 MC1 を囲むために、位置 P311( 座標( X311 ,Y311 )と位置 P312( 座標( X312 ,Y312 )を対角線位置に持つ、自車両の位置から所定の距離にある方形の領域内を優先度「高」の注目領域 Rc31 としている。また、自車両 MC1 を更に大きく囲む、位置 P321( 座標( X321 ,Y321 )と位置 P322( 座標( X322 ,Y322 )を対角線位置に持つ、自車両の位置から所定の距離にある方形の領域内を優先度「中」の注目領域 Rc32 として設定している。
【0053】
なお、図18及び図19の実施例において、注目領域の形状は楕円形等であっても良い。例えば、楕円形の場合は、長軸方向を車両の進行方向とし、自車両の前後に焦点を有するようにしても良い。また、2つの領域が異なる位置を中心とする設定でも良い。例えば、領域 Rc41 の中心を自車両 MC1 の物理的位置 P40 に設定し、領域 Rc42 の中心を自車両 MC1 の前方の所定距離はなれた物理的位置としても良い。またこの距離を自車両 MC1 の走行速度に対応して変えるようにしても良い。また、領域 Rc41 を正円形、領域 Rc42 を楕円形としても良い。
また、図20及び図21の実施例において、注目領域の車線幅方向の幅は同一でも良い。また例えば、方形の場合の長軸方向を車両の進行方向とし、自車両の進行方向(前方)を長く、後方を短く設定するようにしても良い。
【0054】
また、実施例5によれば、移動体の進行方向と自車両の進行方向とを比較することもできるので、注目領域内において自車両に障害を及ぼす可能性の低い移動体を弁別して観測対象を削減できるので、移動体観測部 5 などの処理負荷が軽減可能となる。
また更に、実施例5によれば、移動体の属性を検査することもできるので、例えば、歩行者の属性を有する移動体や、自動二輪車の属性を有する移動体のみを観測対象として、優先度を与えることが可能になる。
なお、実施例5では、優先度を設定するための注目領域を3つ、優先度の抹消判定を行うための注目領域を1つ設定する場合について説明を行ったが、設定する注目領域の数に対する制約がないことは明らかである。
また、上述の実施例5では、優先度算定部 42 において優先度の抹消判定を行う一例を説明したが、移動体観測部 5 において、例えば、移動体が自車両に対して及ぼす障害の可能性などの判定を行う場合は、その判定結果を利用することも可能である。
また、上述の実施例5では、自車両を中心とした領域の配置は、優先度の抹消判定を行うための設定として説明を行った。しかし、自車両を中心とした領域の配置を優先度を設定するための注目領域として利用することも可能である。この場合、例えば、図19や図21に示す領域 Rc41 若しくは Rc31 を優先度「高」の領域とし、その外側の破線で図示する領域を優先度「中」の領域とし、2つの領域で前方の歩行者や対向車両、及び後方から接近する車両を検知するような配置も可能である。また、優先度の抹消判定を行う領域は、破線で図示する領域外とすれば良い。
【実施例6】
【0055】
移動体情報提供装置における優先度判定部 4 の別の実施例を、図14、図22及び図23によって説明する。図14は、優先度判定部 4 を構成する判定値生成部 41 の処理手順の別の実施例を示すフローチャートである。図22は、優先度判定部 4 における注目領域配置の別の実施例を説明するための図である。図23は、優先度判定部 4 における注目領域配置のさらに別の実施例を示す図である。図14のフローチャートの処理は、例えば、図5で示した優先度判定部 4 によって実行する。
【0056】
判定値生成部 41 は、地理的位置に基づき注目領域を配置する。このため、少なくとも、道路形状や検知する事象で定めた注目領域の配置情報と優先度で構成する定義情報が登録された地図情報と、自車両の現在位置と進行方向から地図情報の検索範囲を求め、検索範囲から定義情報を読み取り、判定値を生成する。
この定義情報が定める注目領域は、道路形状と検知する事象から位置を定義し、移動体が送信する移動体情報の送信周期や移動体の走行速度から大きさを定義するようにする。また、注目領域の形状は、例えば、中心座標と半径を配置情報として円形の領域として定義することや、対角線上の2点の座標を配置情報として方形の領域などが定義する外、更に、地図情報から道路の形状や道路の高さを考慮しても良い。なお、地図情報の検索範囲は、自車両における運転者の事象認知から反応までの時間、車両の走行速度や減速度などから範囲を定めるようにする。
【0057】
この判定値生成部 41 において、例えば、4つの注目領域の判定値を生成する処理手順の一実施例を図14によって説明する。4つの注目領域は、例えば、後述する図22における注目領域 Rc4(優先度「高」)、注目領域 Rc5(優先度「高」)、及び注目領域 Rc6(優先度「中」)と、その他の領域 Rc7(優先度「低」)である。
この処理では、先ず、図13と同様に、位置検出部 7 と方位検出部 8 から得られる情報から自車両の現在位置 p0 と進行方向 d0 を取得する(ステップ S4101 、S4102 )。
次に、ステップ S4111 では、自車両の現在位置 p0 と進行方向 d0 から地図情報の検索範囲を決定する。そしてステップ S4112 で、決定された検索範囲の地図情報をもとに、地図情報取得部 12 から注目領域の定義情報を取得する。地図情報取得部 12 に保存されている地図情報には、例えば、十字路やT字路などの道路形状や、右折時や左折時の衝突などの事故類型を元に選択、配置された注目領域の絶対位置や大きさが予め登録されている。従って、判定値生成部 41 は、設定した検索範囲の地図情報から定義情報を読み取ることができる。
次に、ステップ S4113 では、読み取った定義情報から、領域 R4 の判定値 J1 設定する。また、同様にして、ステップ S4114 で領域 R5 の判定値 J2 を設定し、ステップ S4115 で領域 R6 の判定値 J3 を設定し、ステップ S4116 で領域 R7 の判定値 J4 を設定する。
なお、図14の実施例では、ステップ S4111 〜 S4116 まで、順番に処理するように記載されているが、実際には、処理に順番はなく、同時若しくは、可能な処理から実行して良い。しかし、好ましくは、優先度「高」の設定を一番先に実行することが望ましい。
【0058】
上述の実施例6によれば、地理的位置に基づき定義した注目領域を、自車両の位置に対応させて適切に設定できる。即ち、実施例6によれば、地理的位置に基づき配置した注目領域に基づいて移動体を捕捉し、当該移動体を識別可能な送信元識別子に優先度を設定することが可能になる。
また、注目領域の領域内判定を優先度の高い方から順番に行うことによって、優先度の異なる注目領域が重なり合って配置されても優先度を低く判定しないようにすることができる。以下、具体的な事例を図22と図23によって更に説明する。
【0059】
図22及びにおいて、自車両 MC21 並びに周囲の車両 MC22 、及び MC24 は、車線 Rd2 上を矢印 F2 の方向に走行している。また、周囲の車両 MC25 、MC26 、MC27 、及び MC28 は、対向する車線 Rd1 上を矢印 F1 の方向に走行している。また、車線 Rd2 には横から車線 Rd3 と Rd4 から成るもう一本の道路があり、T字路を構成している。このT字路の交差路は、自車両 MC21 の前方にあり、今、車線 Rd4 上を走行中の車両 MC23 が車線 Rd2 に進入しようとしている。また、その交差路の付近に歩行者 MH21 が存在しており、車線 Rd2 を横断するか若しくは車線上に飛び出す可能性がある。
この時、交差路の中央の位置 P4( X4 ,Y4 )を中心として半径 r4 の円内を優先度「高」の注目領域 Rc4 とし、位置 P5( X5 ,Y5 )を中心として半径 r5 の円内であって、車線 Rd3 側の歩道部分と車線 Rd2 の1車線分の幅を占めるように優先度「高」の注目領域 Rc5 を配置する。次に、位置 P6( X6 ,Y6 )を中心として半径 r6 の円内であって、対向する車線 Rd1 の右折しようとする車両 MC25 を監視するために優先度「中」の注目領域 Rc6 を配置する。
また、図23において、図22と同様の交通状況において、円形ではなく、方形の注目領域を設定する。注目領域 Rc4 の替りに、例えば、車線 Rd4 から車線 Rd2 に進入しようとする車両を監視するために、位置 P241( X241,Y241 )と位置 P242( X242,Y242 )を対角線位置にもつ方形内を優先度「高」の注目領域 Rc24 に設定する。また例えば、注目領域 Rc5 の替りに、歩道を歩いている歩行者を監視するために、位置 P251( X251,Y251 )と位置 P252( X252,Y252 )を対角線位置にもつ方形内を優先度「高」の注目領域 Rc24 に設定する。また例えば、注目領域 Rc6 の替りに、車線 Rd1 から車線 Rd3 に右折しようとする車両を監視するために、位置 P261( X261,Y261 )と位置 P246( X246,Y262 )を対角線位置にもつ方形内を優先度「中」の注目領域 Rc26 に設定する。
【0060】
上述の図22や図23のT字路の例から分かるように、図14の実施例によれば、道路形状や検知する事象から定義した注目領域を、自車両の走行位置に応じて適切に配置することが可能になる。即ち、交差路において、進入車両を検知する領域 Rc4 若しくは Rc24 (優先度高)、歩行者を検知する領域 Rc5 若しくは Rc25(優先度高)、右折車両を検知する領域 Rc6 若しくは Rc26(優先度中)などを、円形や方形などの領域で定義できるようになる。また、優先度の抹消判定を行うための注目領域については、先の実施例と同様に円形や方形などの領域で定義することができる。
本実施例では、先の実施例5と同様に、優先度を設定するための注目領域を3つ、優先度の抹消判定を行うための注目領域を1つ設定する場合について説明を行った。しかし、設定する注目領域の数に対する制約がないことは明らかである。
【0061】
なお、判定値生成部 41 は、物理的距離に基づいた注目領域と、地理的位置に基づいた注目領域を組み合わせ、例えば、十字路やT字路などが無い直線路を走行している場合は物理的距離に基づいた注目領域を配置し、十字路やT字路などを検知した場合に地理的位置に基づいた注目領域を重ね合わせて配置するようなことも可能である。また例えば、判定値生成部 41 は、予め自己の地図情報に、地理的位置に基づく注目領域で自車両の周囲を監視する場合の範囲領域を設定しておき、自車両の位置がその範囲領域に入ったことを検知して、地理的位置に基づいた注目領域を生成するようにしても良い。
なお、この場合にも、先の実施例と同様に優先度を高く設定した領域から順番に優先度を判定することにより、優先度の異なる注目領域が重なり合って配置されても優先度を低く判定しないようにできる。
【実施例7】
【0062】
移動体情報提供装置における優先度判定部 4 のさらに別の実施例を、図6と図17によって説明する。図6は、移動体情報提供装置 100 における優先度判定部 4 の他の実施例を示す図である。43 は補正値算定部である。図6は、図5の優先度判定部 4 の構成に補正値算定部 43 を加えたものである。また図17は、優先度判定部 4 を構成する補正値算定部 43 の処理手順の一実施例を示すフローチャートである。
【0063】
図6において、補正値算定部 43 は、例えば、図1の速度検出部 9 や、道路交通情報取得部 11 などから得られる情報を元にして、少なくとも、優先度を設定するための注目領域の補正を行う。
この処理では、ステップ S4301 で、例えば、図17に示すように、速度検出部 9 から得られる情報から自車両の走行速度 v0 を求める。
また、ステップ S4302 では、VICS(道路交通情報通信システム)などの情報サービスを利用してリアルタイムな道路交通情報を取得する道路交通情報取得部 11 からは、目的地方面の路面状態や天候などの環境情報 E を取得する。
次にステップ S4303 では、取得された環境情報 E や、自車両の状態をもとに注目領域の補正を行う。
自車両の状態をもとにする場合には、例えば、走行速度 v0 の変化は、制動距離や相対速度に影響を与えるので、走行速度 v0 が速くなった場合は、例えば、注目領域を遠方に配置し、領域を大きくするための補正値を生成する。
また、環境情報 E により、例えば、路面の凍結、霧が発生したなどの環境の変化を感知した場合には、例えば、制動距離を考慮して注目領域を遠方に配置するための補正値を生成し、補正値によって注目領域の大きさや位置を補正する。
なお、物理的距離に基づき配置される注目領域の補正は、各領域の定義情報の位置や大きさを補正するようにすれば良い。また、地理的位置に基づき配置される注目領域の補正は、地図情報の検索範囲の位置や大きさを補正するようにすれば良い。
【0064】
本実施例6によれば、注目領域は、自車両の走行速度により注目領域の位置や大きさを補正される。これによって、運転者が移動体の存在や状態を認知するタイミングを、減速に必要な距離の変化に対応して補正することが可能になる。
本実施例によれば、注目領域は、道路交通情報で提供される環境情報により注目領域の位置や大きさを補正される。これによって、運転者が移動体の存在や状態を認知するタイミングを、霧の発生や路面凍結などの環境条件の変化に対応して補正することが可能になる。
また、本実施例6によれば、地図情報と GPS 等の位置情報検出システムを利用し、かつ、自車両の周囲の移動体と車車間通信によって情報を交換し合うことができれば良い。従って、基地局、中継装置等の設備が不要であるため、安価に交通情報の提供システムの運用が可能となる。
【0065】
以上、実施例1〜6によって、本発明を説明した。
本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域は、自車両の位置と方位に基づき設定するので、例えば現在位置を基準に距離と進行方向に対する角度で注目領域の位置を設定することが可能になる。これにより、本発明では、予め設定した任意の位置に、自車両との位置関係を保った状態で注目領域を配置することができると言う利点がある。
【0066】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域は、自車両の位置と方位、及び地図情報に基づき設定するので、例えば進行方向にある交差路の位置を基準にして注目領域の位置を設定することが可能になる。これにより、本発明では、道路形状に応じて注目領域を適応的に配置することが可能となり、例えば、交差路においては右折時や左折時の車両や歩行者などの移動体との障害発生に備えた領域配置などの対応が図れる利点がある。
【0067】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域は、自車両の速度により注目領域の位置や大きさを補正する。これにより、本発明では、運転者が移動体の存在や状態を認知するタイミングを、減速に必要な距離の変化に対応して補正できると言う利点がある。
【0068】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段が優先度毎に定める注目領域は、道路交通情報で提供される環境情報により注目領域の位置や大きさを補正する。これにより、本発明では、運転者が移動体の存在や状態を認知するタイミングを、霧の発生や路面凍結などの環境条件の変化に対応して補正できると言う利点がある。
【0069】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段は、移動体情報の送信元である移動体の進行方向が自車両へ接近する方向にある場合に観測対象として優先度を与える。これにより、本発明では、注目領域内において自車両に障害を及ぼす可能性の低い移動体を弁別でき、移動体の動きを観測する対象を軽減できるので、移動体観測などの処理負荷を軽減できると言う利点がある。
【0070】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段は、移動体情報が示す属性により観測対象を選択して優先度を与える。これにより、本発明では、例えば、歩行者の属性を有する移動体や、自動二輪車の属性を有する移動体のみを観測対象にして優先度を与えることもできると言う利点がある。
【0071】
また本発明の上記実施例によれば、優先制御手段は、送信元を同じとする移動体情報が既に待ち行列内に格納されている場合には、待ち行列内の移動体情報を削除してから移動体情報を格納する。これにより、本発明では、運転者は常に最新の情報に基づき移動体の存在や状態を認知できると言う利点がある。
【0072】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判別手段、優先制御手段、及び車車間通信手段を少なくとも具備するナビゲーション装置で構成する。これにより、装置単体での移動体情報の優先制御が可能となり、例えば、可搬型のナビゲーション装置などにも適用が可能と言う利点がある。
【0073】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段と優先制御手段を少なくとも具備するナビゲーション装置と、車車間通信手段を少なくとも具備する車車間通信装置で構成する。これにより、本発明では、車内LANなどのネットワークを介して、例えば前方用や後方用と言った複数の車車間通信装置とナビゲーション装置が接続されるような場合でも、移動体情報の優先制御が提供できると言う利点がある。また、待ち行列がナビゲーション装置に集約できるので、車車間通信装置に搭載するメモリを削減可能となり装置を安価に提供できると言う利点もある。
【0074】
また本発明の上記実施例によれば、優先度判定手段を少なくとも具備するナビゲーション装置と、優先制御手段と車車間通信手段を少なくとも具備する車車間通信装置で構成する。これにより、本発明では、車内LANなどのネットワークを介して、例えば前方用や後方用と言った複数の車車間通信装置とナビゲーション装置が接続されるような場合でも、ナビゲーション装置の優先度判定手段で各車車間通信装置の優先制御手段を制御することにより優先制御が提供できると言う利点がある。また、車車間通信装置が待ち行列を具備するので、優先度の高い移動体情報からネットワークに情報を流すことが可能となり、特に帯域の狭いネットワークにおいて高い効果が得られると言う利点もある。
【0075】
また、上述の実施例では、道路上を走行する車両について説明した。しかし、例えば、道路上に限らず、鉄道線路上を走行する電車等の移動体が本発明の移動体情報提供装置を搭載し、運転者が保線工事等のため鉄道線路内に点在する線路保安員の位置を確認すること、又は、駅近辺若しくは踏み切り近辺近くの移動体の位置を監視して安全な運転を行うことができる。また例えば、移動体を車両に限らず、船舶、若しくは飛行機械等とし、例えば、航海路上、水中、若しくは航空路等とした移動体情報提供装置でも良い。
【符号の説明】
【0076】
1:アンテナ、 1-1:共用器、 2:無線部、 2′:送信部、 3:優先制御部、 3′:受信部、 4:優先度判定部、 5:移動体観測部、 6:移動体情報生成部、 7:位置検出部、 8:方位検出部、 9:速度検出部、 10:加速度検出部、 11:道路交通情報取得部、 12:地図情報取得部、 13:車内LAN、 31:選別部、 32、33、34:待ち行列格納部、 35、35-1、35-2:出力順序制御部、 36:優先度管理テーブル部、 41:判定値生成部、 42:優先度算定部、 100:移動体情報提供装置、 101、101a、101b:車車間通信ユニット、 102:ナビゲーションユニット、 200:移動体情報提供装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体観測部を備え、自移動体の移動状態情報を取得して自車両周辺の道路地図の表示と共に該移動体観測部に表示するナビゲーション装置において、
上記移動体観測部は、更に、無線通信装置から取得した他の移動体の他移動体状態情報を受信し、受信した他移動体状態情報から自車両周辺にある他移動体の位置を表示する移動体観測部であり、
上記他移動体状態情報の示す位置が、上記自移動体の無線通信装置の通信領域内に1つ以上設定された優先度毎の注目領域のいずれかの領域内にある場合に、当該注目領域に設定した優先度と当該他移動体状態情報の送信元を識別可能な送信元識別子とを関連付けた判定結果を生成し、該生成された判定結果を、上記無線通信装置が受信した上記他移動体状態情報を、上記移動体観測部に入力する順序を制御するための優先度管理情報として上記無線通信装置に出力する優先度判定部を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーション装置において、上記注目領域は、少なくとも、上記自移動体の位置、進行方向、及び、地図情報に基づいて設定されることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のナビゲーション装置において、
上記注目領域は、少なくとも、上記自移動体の位置及び進行方向に基づいて設定されることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、少なくとも、上記自移動体の速度に基づいて、上記注目領域の位置又は領域の大きさ若しくは形状を補正することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、少なくとも、道路交通情報に基づいて、上記注目領域の位置又は領域の大きさ若しくは形状を補正することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、上記他移動体状態情報が示す位置が上記注目領域のいずれかの領域内であって、かつ、当該他移動体状態情報が示す進行方向と自車両の進行方向とを比較し、上記当該他移動体状態情報の送信元である他の移動体が自車両へ接近する方位をとっている場合に観測対象とすることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のナビゲーション装置において、上記優先度判定部は、上記他移動体状態情報が示す位置が上記注目領域のいずれかの領域内であって、かつ、当該他の移動体状態情報が示す進行方向と自車両の進行方向とを比較し、当該他移動体情報の属性に応じて観測対象を選択することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
他の移動体の他移動体状態情報を受信し、受信した他移動体状態情報をナビゲーション装置に出力する受信装置であって、
上記ナビゲーション装置から出力される優先度判定結果を優先度管理テーブルとして登録する優先度管理テーブル部と、
上記優先度管理テーブルを参照して上記他移動体状態情報の優先度を決定し、決定された上記優先度に応じて予め定められた順序で上記無線通信装置から取得した上記他移動体状態情報を上記ナビゲーションユニットに出力することを特徴とする受信装置。
【請求項9】
請求項8記載の受信装置において、更に、
上記他移動体状態情報を上記優先度毎に保存する格納部と、上記優先度管理テーブル部内の上記優先度管理テーブルを参照して上記他移動体状態情報の優先度を決定し、決定された上記優先度に応じて上記優先度毎に該当する上記格納部に出力する選別部と、上記優先度毎に格納部に保存された上記他移動体状態情報を上記優先度に応じて上記予め定められた順序で上記ナビゲーション装置に出力する出力順序制御部とを具備したことを特徴とする受信装置。
【請求項10】
請求項9記載の受信装置において、上記選別部は、更に、
上記他移動体状態情報の送信元識別子によって上記格納部を検索し、該送信元識別子と同じ送信元識別子の他移動体状態情報が格納されていた場合には、上記格納部内の当該他移動体状態情報を削除してから上記無線部から取得した上記他移動体状態情報を保存することを特徴とする受信装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10のいずれかに記載の受信装置において、上記出力順序制御部は、更に、
上記格納部の優先度が一番高い格納部に保存されている他移動体状態情報がない場合に、次に優先度の高い格納部に保存されている他移動体状態情報を上記ナビゲーション装置に出力することを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−164327(P2012−164327A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73227(P2012−73227)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2008−38659(P2008−38659)の分割
【原出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】