説明

ナビゲーション装置及び地図情報更新システム

【課題】ナビゲーション装置がにおいて既に更新済みの路線や、更新しようとする路線の組み合わせに応じて異なる更新用データを用意する必要のない、ナビゲーション装置が使用する地図データを路線毎に更新可能な「ナビゲーション装置及び地図情報更新システム」を提供する。
【解決手段】
地図データ更新制御部16は更新する路線の最新の路線データを地図更新データ提供装置3からダウンロードし地図データ記憶部21に格納する。最新リンクデータ探索部18は、ナビゲーション処理部17からのリンクIDを指定したリンクデータの要求に対して、地図データ記憶部21に記憶されている地図データまたは地図データ及び路線データの双方に含まれる、指定されたリンクIDを持つリンクレコードのうちの、最新のリンクレコードがリンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置が使用する地図データを更新する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置において使用される地図データを更新する技術としては、ナビゲーション装置に記憶されている地図データと最新の地図データとの差分を表す差分データを、オンラインまたはオフラインによりナビゲーション装置に提供すると共に、ナビゲーション装置において、差分データを用いて記憶している地図データを最新の地図データに更新する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、ナビゲーション装置において使用される地図データを更新する技術としては、基準となる地図データを最新の地図データとするために当該基準となる地図データに施すべき更新の内容を表す更新情報を、オンラインまたはオフラインによりナビゲーション装置に提供すると共に、ナビゲーション装置において、提供された更新情報より、自身が記憶している地図データと、最新の地図データとの差分を表す差分データを生成し、生成した差分データを用いて記憶している地図データを更新する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平7-36382号公報
【特許文献2】特開2005-165639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記差分データを、ナビゲーション装置に提供する技術によれば、ナビゲーション装置が記憶している更新前の地図データと、ナビゲーション装置が更新によって得ようとする更新後の地図データとの組み合わせ毎に、各々差分データを用意する必要がある。特に、路線毎に地図データの更新を行えるようにする場合には、更新しようとする路線の組み合わせと、更新前の地図データにおいて既に更新されている路線との組み合わせ毎に、差分データを用意する必要があるため、多数の差分データを用意する必要が生じる。
【0005】
一方、前述した基準となる地図データを最新の地図データとするために、当該基準となる地図データに施すべき更新の内容を表す更新情報を提供する技術によれば、ナビゲーション装置が記憶している更新前の地図データ毎に異なるデータを用意する必要はなくなるが、路線毎に地図データの更新を行えるようにする場合には、更新しようとする路線の組み合わせ毎に、当該組み合わせに属する各路線の更新の内容を表す更新情報を用意する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、ナビゲーション装置が使用する地図データを路線毎に更新可能な地図情報更新システムであって、ナビゲーション装置が使用する地図データにおいて既に更新済みの路線や、更新しようとする路線に応じて異なるデータを用意する必要のない地図情報更新システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、ナビゲーション装置を、各路線の地図情報を表す地図データを保持する地図データ保持手段と、路線毎に提供される、路線の最新の地図情報を規定する路線データを1または複数保持する路線データ保持手段と、最新地図情報提供手段と、前記最新地図情報提供手段に対して所要の道路区間の地図情報を要求し、当該要求に対して前記最新地図情報提供手段から提供される地図情報に基づいて、ユーザに対する道案内または現在位置案内を行うナビゲーション処理部とより構成し、前記地図情報提供手段において、前記ナビゲーション処理部から前地図情報を要求された場合に、地図情報を要求された道路区間の地図情報が、前記路線データ保持部に保持された路線データによって規定されている場合には、当該路線データによって規定される当該道路区間の地図情報を前記ナビゲーション処理部に提供し、地図情報を要求された道路区間の地図情報が、前記路線データ保持部に保持されている路線データによって規定されていない場合には、前記地図データ保持手段に保持されている前記地図データから当該道路区間の地図情報を読み出して前記ナビゲーション処理部に提供するようにしたものである。
【0008】
このようなナビゲーション装置によれば、路線毎に提供される、路線の最新の地図情報を規定する路線データを用いて、路線毎に、ユーザに対する道案内または現在位置案内に用いる地図情報の更新を行うことができる。また、この更新を、提供された路線データを用いて地図データを更新することにより行うのではなく、地図データと提供された路線データとをそのまま保持しつつ、地図データに含まれる地図情報と路線データが規定する地図情報とのうちの、最新の地図情報を選定して、道案内または現在位置案内に用いることにより行うので、ナビゲーション装置において道案内または現在位置案内に用いられる地図情報を規定する、ナビゲーション装置が保持している地図データと路線データとの組み合わせ毎に、地図情報の更新を行うためのデータを用意する必要がない。また、ある路線の組み合わせについて地図情報を更新したい場合には、更新したい路線の路線データをそれぞれナビゲーション装置に保持させるだけで足りるので、更新する路線の組み合わせ毎に、当該更新のためのデータを用意する必要もない。
【0009】
ここで、このようなナビゲーション装置において、前記路線データは、前記路線の最新の地図情報と、前記地図データに含まれる当該路線の地図情報との差分によって、当該路線の最新の地図情報を表すものとしてよい。このようにすることにより、路線データのサイズを小さく抑えることができる。
【0010】
また、このようなナビゲーション装置は、より具体的には、前記地図データを、リンクの連結によって道路を表現するものとし、前記地図情報を、リンク毎に設けられたリンクの情報を表すリンクレコードとし、前記路線データを、当該路線データが最新の地図情報を規定する路線の、地図データにリンクレコードが含まれないリンクの最新のリンクレコードと、地図データに最新のリンクレコードではないリンクレコードが含まれるリンクの当該最新のリンクレコードとを含むものとしてもよい。また、この場合には、ナビゲーション装置に、各リンクについて、前記路線データ保持手段に保持された1または複数の前記路線データと前記地図データ保持手段に保持された地図データとのうちのいずれが、当該リンクの最新のリンクレコードを含むかを管理するテーブルを設け、前記ナビゲーション処理部において、指定したリンクのリンクレコードを前記最新地図情報提供手段に対して要求し、前記最新地図情報提供手段において、前記テーブルを参照して、前記ナビゲーション処理部から指定されたリンクの最新のリンクレコードを含む前記路線データ保持手段に保持された前記路線データまたは前記地図データ保持手段に保持された地図データを識別し、識別した当該最新のリンクレコードを含む前記路線データまたは前記地図データから、指定されたリンクのリンクレコードを読み出して、前記ナビゲーション処理部に提供するようにしてもよい。
【0011】
このようにすることにより、前記最新地図情報提供手段において、前記ナビゲーション処理部からリンクレコードを要求される度に、リンクレコードを要求されたリンクの最新のリンクレコードを、各路線データや地図データのうちから探索する必要がなくなる。
ここで、以上のようなナビゲーション装置の地図情報を更新する地図情報格更新システムは、前記ナビゲーション装置と、当該ナビゲーション装置に前記路線データを提供する路線データ提供装置より地図情報更新システムを構成することが好ましい。この場合、前記路線データ提供装置は、路線毎に設けられた当該路線の最新の地図情報を規定する路線データを、複数の路線について保持する路線データベースと、前記ナビゲーション装置から要求された路線の路線データを前記路線データベースから探索し、当該ナビゲーション装置に提供する路線データサーバとより構成することができる。また、この場合には、前記ナビゲーション装置に、地図情報を更新しようとする路線の路線データを前記路線サーバに要求し、前記路線サーバから提供された路線データを前記路線データ保持部に格納する路線データダウンロード手段を備えるようにする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、ナビゲーション装置が使用する地図データを路線毎に更新可能な地図情報更新システムであって、ナビゲーション装置が使用する地図データにおいて既に更新済みの路線や、更新しようとする路線に応じて異なるデータを用意する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の地図情報更新システムについて説明する。
図1に、本実施形態に係る地図情報更新システムの構成を示す。
図示するように、地図情報更新システムは、各々自動車に搭載されるナビゲーション装置1と、無線通信によってナビゲーション装置1を収容するWAN2、各ナビゲーション装置1がWAN2を介してアクセス可能な地図更新データ提供装置3とを含んで構成される。
そして、各ナビゲーション装置1は、WAN2に接続するための無線通信装置11、表示装置12、入力装置13、入出力処理部14、路線データクライアント15、地図データ更新制御部16、ナビゲーション処理部17、最新リンクデータ探索部18、最新リンクレコード管理テーブル19、データアクセス処理部20、地図データ記憶部21と、GPS受信機や速度センサや角速度センサなどを含む自車の各種状態の情報を自車状態情報として測定する自車状態測定部22を有する。また、地図データ記憶部21には、地図データを記憶する他、1または複数の路線データも記憶させることができる。
【0014】
ここで、地図データ記憶部21に格納される地図データは、道路を直線であるリンクの連結として表現した道路地図を表すものであり、図2aに示すように、各リンク毎に設けたリンクレコードを含む。
また、地図データの各リンクレコードは、リンクの識別子となるリンクIDと、リンクの両端のノードの座標を表すノード座標と、当該リンクに接続している他のリンクをあらわす接続リンクと、リンクの長さやリンクに対応する道路区間の道幅や車線数や道路の種別などの当該リンクの各種属性を表すリンク属性とを含む。
【0015】
さて、図1に戻り、地図更新データ提供装置3は、路線データサーバ31と路線データベース32とを有する。
そして、路線データベース32には、複数の路線データが格納される。
ここで、この路線データベース32には、各ナビゲーション装置1が保持している地図データを作成した後に変更が生じた各路線について作成された、路線毎の路線データが格納されている。そして、図2bに示すように、各路線データは、対応する路線の識別を表す路線識別子と、当該路線データの作成日時と、複数のリンクレコードを含む。
【0016】
そして、路線データの各リンクレコードには、リンクの識別子となるリンクIDと、リンクの両端のノードの座標を表すノード座標と、当該リンクに接続している他のリンクをあらわす接続リンクと、当該リンクの各種属性を表すリンク属性と、「変更」/「追加」/「削除」のいずれかの値を取る更新フラグが登録される。
【0017】
ここで、図3に、このように路線データベース32に格納される路線データの作成例を示す。
いま、図3a1、b1、c1の順に、道路網が変化していったものとする。すなわち、道路工事等によって路線1000が図3a1、b1、c1の順に順次変化した共に、図3b1の時点で路線2000が新規に設けられ、図3c1の時点で路線3000が新規に設けられたものとする
この場合、図3a1に示す状態に道路網がある時点に地図データが作成されると、図3a2に示すように地図データには、この時点で路線1000を構成している100、101、102、103のリンクIDを持つ4つのリンクに各々対応するリンクレコードが含められ、各リンクレコードには、対応するリンクの、当該時点におけるノード座標と接続リンクとリンク属性とが登録される。なお、この時点では、路線2000、路線3000は存在していないので、図3a2に示す地図データには、これら路線2000や路線3000を構成するリンクに対応するリンクレコードは含められない。
次に、図3b1に示す状態に道路網がある時点で、最初の路線データの作成が行われた場合、この時点では、図3a1の地図データ作成時点の道路網に対して変化のあった路線1000の路線データと、図3a1の地図データ作成時点の道路網に対して新規に追加された路線2000の路線データが作成される。
【0018】
そして、作成される路線1000の路線データには、図3b2に示すように、対応する路線1000を示す路線識別子と、当該路線データ作成時の日時を示す作成日時が登録される。また、この時点で作成される路線1000の路線データには、地図データ作成時の道路網に対して、追加、変更、削除が発生している路線1000のリンクのリンクレコードが含められる。すなわち、図3b1に示す路線1000の場合は、図3a1に示した地図データ作成時の道路網に対して、リンクID100のリンクに変化はないので、図3b2に示す路線データにはリンク100のリンクレコードは含められない。一方、図3b1の路線1000のリンクID101のリンクと、リンクID102のリンクは接続リンクが変化しているので、図3b2に示す路線データに、リンクID101のリンクのリンクレコードと、リンクID102のリンクのリンクレコードが含められ、当該路線データ作成時点のノード座標と接続リンクとリンク属性とが登録される。また、これらリンクID101のリンクと、リンクID102のリンクには、地図データ作成時の道路網に対する変更が生じているので、路線データの、これらリンクID101のリンクのリンクレコードと、リンクID102のリンクのリンクレコードの更新フラグは「変更」とする。次に、図3b1の路線1000では、図3a1の地図データ作成時の道路網の路線1000には含まれていたリンクID103のリンクが無くなっているので、図3b2に示す路線データにリンクID103のリンクのリンクレコードが含められる。そして、路線データの、このリンクID103のリンクのリンクレコードの更新フラグとして「削除」が登録される。
【0019】
また、作成される路線2000の路線データには、図3b3に示すように、対応する路線2000を示す路線識別子と、当該路線データ作成時の日時を示す作成日時が登録される。また、この時点で作成される路線2000の路線データには、地図データ作成時の道路網に対して、追加、変更、削除が発生している路線2000のリンクのリンクレコードが含められる。ここで、路線2000は新規設定された路線であるので、路線2000の路線データには、路線2000を形成する全てのリンクのリンクレコードが含められる。すなわち、図3b1に示す路線2000の場合は、リンクID201のリンクのみから形成されているので、図3b3に示す路線データに、リンクID201のリンクのリンクレコードが含められ、当該路線データ作成時点のノード座標と接続リンクとリンク属性とが登録される。また、このリンクID201のリンクは、図3a1の地図データ作成時の道路網に対して追加されたものであるので、このリンクID201のリンクのリンクレコードの更新フラグは「追加」とする。 そして、このようにして図3b2に示す路線1000の路線データと図3b3に示す路線2000の路線データを作成したならば、これらの路線データを路線データベース32に格納する。また、この際に、もし、格納する路線データと同じ路線識別子が登録されている、作成日時がより過去の路線データが、路線データベース32に既に格納されている場合には、その既に格納されている路線データを路線データベース32から削除する。
【0020】
次に、この後に、図3c1に示す状態に路線網がある時点で、二度目の路線データの作成が行われた場合、この時点では、前回路線データを作成した図3b1の時点の道路網に対して変化のあった路線1000の路線データと、前回路線データを作成した図3b1の時点の道路網に対して新規に追加された路線3000の路線データが作成される。
そして、作成される路線1000の、路線データには、図3c2に示すように、対応する路線1000を示す路線識別子と、当該路線データ作成時の日時を示す作成日時が登録される。また、この時点で作成される路線データには、地図データ作成時の路線1000に対して、追加、変更、削除が発生している路線1000のリンクのリンクレコードが含められる。すなわち、図3c1の路線1000の場合は、図3a1に示した地図データ作成時の道路網に対して、リンクID100のリンクに変化はないので、図3c2に示す路線データにはリンク100のリンクレコードは含められない。一方、図3c1の路線1000のリンクID101のリンクは接続リンクが変化しているので、図3c2に示す路線データには、リンクID101のリンクのリンクレコードが含められ、当該路線データ作成時点のノード座標と接続リンクとリンク属性とが登録される。また、このリンクID101のリンクのリンクレコードの更新フラグに「変更」が登録される。次に、図3c1の路線1000では、図3a1の地図データ作成時の道路網の路線1000には含まれていたリンクID102のリンクとリンクID103のリンクが無くなっているので、図3c2に示す路線データにリンクID102のリンクのリンクレコードと、リンクID103のリンクのリンクレコードが含められる。そして、路線データの、これらリンクID102のリンクのリンクレコードとリンクID103のリンクのリンクレコードの更新フラグとして「削除」が登録される。また、図3c1の路線1000では、図3a1の地図データ作成時の道路網には含まれていなかったリンクID104のリンクが追加されているので、図3c2に示す路線データにリンクID104のリンクのリンクレコードが含められ、当該路線データ作成時点のノード座標と接続リンクとリンク属性とが登録される。また、このリンクID104のリンクのリンクレコードの更新フラグに「追加」が登録される。
【0021】
また、作成される路線3000の路線データには、図3c3に示すように、対応する路線3000を示す路線識別子と、当該路線データ作成時の日時を示す作成日時が登録される。また、この時点で作成される路線3000の路線データには、地図データ作成時の道路網に対して、追加、変更、削除が発生している路線3000のリンクのリンクレコードが含められる。ここで、路線3000は新規設定された路線であるので、路線3000の路線データには、路線3000を形成する全てのリンクのリンクレコードが含められる。すなわち、図3c1に示す路線3000の場合は、リンクID301のリンクとリンクID302から形成されているので、図3c3に示すように、路線3000の路線データには、リンクID301のリンクのリンクレコードとリンクID302のリンクのリンクレコードとが含められ、各リンクレコードに、対応するリンクの当該路線データ作成時点のノード座標と接続リンクとリンク属性とが登録される。また、このリンクID301のリンクとリンクID302のリンクは、図3a1の地図データ作成時の道路網に対して追加されたものであるので、これらリンクID301のリンクのリンクレコードとリンクID302のリンクのリンクレコードの更新フラグは共に「追加」とする。
【0022】
そして、このようにして図3c2に示す路線1000の路線データと図3c3に示す路線3000の路線データを作成したならば、この路線データを路線データベース32に格納する。また、この際に、もし、格納する路線データと同じ路線識別子が登録されている、作成日時がより過去の路線データが、路線データベース32に既に格納されている場合には、その既に格納されている路線データを路線データベース32から削除する。この場合には、既に図3b2に示した路線1000の路線データが路線データベース32に格納されているので、この図3b2に示した路線1000の路線データを路線データベース32にから削除した上で、図3c2に示す新たに作成した路線1000の路線データを路線データベース32に格納する。また、この場合、図3b1の時点で路線データベース32に格納された図3b2の路線2000の路線データについては、そのまま路線データベース32中に格納され続けることになる。結果、この時点以降次の路線データ作成時まで、路線データベース32に、図3a2の地図データと、図3b3の路線2000の路線データと、図3c2の路線1000の路線データと、図3c3の路線3000の路線データが格納されていることになる。
さて、図1に戻り、地図更新データ提供装置3の路線データサーバ31は、ナビゲーション装置1からの要求に応じて、要求された路線の路線データを路線データベース32より探索して、要求元のナビゲーション装置1に送信する。
次に、ナビゲーション装置1において、入出力処理部14は、路線データクライアント15と無線通信装置11との間の入出力や、ナビゲーション装置1や地図データ更新制御部16と、表示装置12や入力装置13との間の入出力を処理する。また、データアクセス処理部20は、地図データ更新制御部16や最新リンクデータ探索部18の、地図データ記憶部21へのアクセスを処理する。
【0023】
そして、地図データ更新制御部16は、入力装置13を介したユーザ操作に応じて、または、予め定めたルールに従って、更新の対象とする路線を選定し、選定した路線のダウンロード処理を路線データクライアント15に要求する。路線データクライアント15は、要求を受けると、無線通信装置11を介して地図更新データ提供装置3の路線データサーバ31にアクセスして要求された路線の路線データを要求することにより、当該路線の路線データを路線データベース32からダウンロードする。そして、地図データ更新制御部16は、このようにしてダウンロードした路線データを地図データ記憶部21に格納する。また、この際に、ダウンロードした路線データと同じ路線識別子の路線データが地図データ記憶部21に既に記憶されている場合には、この既に記憶されている路線データを消去した上で、ダウンロードした路線データを地図データ記憶部21に格納する。また、この際に、地図データ更新制御部16は、新規路線データのダウンロードを最新リンクデータ探索部18に通知し、通知を受けた最新リンクデータ探索部18は、最新リンクレコード管理テーブル19を初期化する。
【0024】
ここで、最新リンクレコード管理テーブル19は、最新リンクデータ探索部18によって管理されるテーブルであり、図2cに示すように、最新リンクレコード管理テーブル19の各エントリには、リンクIDと、そのリンクIDを持つ最新のリンクレコードの所在を表す所属が登録される。すなわち、リンクIDがXのエントリには、リンクIDとしてXを持つリンクレコードを含む路線データが存在する場合には、当該路線データの識別子が、リンクIDとしてXを持つリンクレコードを含む路線データが存在しない場合には地図データの識別子が登録される。ただし、リンクIDとしてXを持つリンクレコードを含む路線データが存在するが、当該路線データ中のリンクIDとしてXを持つリンクレコードの更新フラグが「削除」を示す値であれば、最新リンクレコード管理テーブル19の、リンクIDがXのエントリには、「削除」を登録する。なお、前述した最新リンクレコード管理テーブル19の初期化では、最新リンクレコード管理テーブル19の全てのエントリを削除する。
【0025】
次に、ナビゲーション処理部17は、地図データ記憶部21から地図データや路線データで示される地図情報を読み出し、読み出した地図情報と、自車状態測定部22の測定した自車状態情報とを用いた、現在位置の算出や、ユーザから設定された目的地までの推奨経路の探索や、現在位置や推奨経路を地図上で案内する案内画像の表示装置12への表示などを行う。
【0026】
ここで、ナビゲーション処理部17の、地図データ記憶部21からの地図情報の読み出しは、所要のリンクのリンクIDを指定したリンクデータ要求を最新リンクデータ探索部18に発行することにより、当該リンクIDのリンクの最新のリンクレコードのデータをリンクデータとして取得することにより行う。
【0027】
すなわち、最新リンクデータ探索部18は、リンクデータの要求を受けると、以下に示す最新リンクデータ提供処理によって、指定されたリンクIDのリンクの最新のリンクレコードのデータを、リンクデータとしてナビゲーション処理部17に応答する。
図4に、この最新リンクデータ探索部18が行う最新リンクデータ提供処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、ナビゲーション処理部17からのリンクIDを指定したリンクデータの要求が発生すると(ステップ402)、指定されたリンクIDが最新リンクレコード管理テーブル19に登録されているかどうかを調べ(ステップ404)、登録されている場合には、最新リンクレコード管理テーブル19の、指定されたリンクIDのエントリの所属が「削除」であるかどうかを調べ(ステップ422)、「削除」であれば「リンクデータ無」をナビゲーション処理部17に応答し(ステップ424)、ステップ402からの処理に戻る。一方、指定されたリンクIDのエントリの所属が「削除」でなければ、指定されたリンクIDのエントリの所属に登録されている識別子が示すデータ、すなわち、地図データ記憶部21に格納されている路線データまたは地図データ記憶部21に格納されている地図データから、指定されたリンクIDのリンクレコードを読み出し、リンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供し(ステップ436)、ステップ402からの処理に戻る。
一方、ステップ404において、指定されたリンクIDが最新リンクレコード管理テーブル19に登録されていないと判定された場合には、指定されたリンクIDを含む路線データを、地図データ記憶部21に格納されている路線データのうちから探索し(ステップ406-412、420)、探索が成功した場合には、探索した路線データの、指定されたリンクIDを持つリンクレコードの更新フラグが「削除」であるかどうかを調べ(ステップ426)、削除であれば、「リンクデータ無」をナビゲーション処理部17に応答する(ステップ438)。また、指定されたリンクIDのエントリを、最新リンクレコード管理テーブル19に作成し、作成したエントリの所属に「削除」を登録する(ステップ440)。そして、ステップ402からの処理に戻る。一方、指定されたリンクIDを持つリンクレコードの更新フラグが「削除」でなければ(ステップ426)、探索した路線データの指定されたリンクIDのリンクレコードを読み出し、リンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供する(ステップ428)、また、指定されたリンクIDのエントリを、最新リンクレコード管理テーブル19に作成し、作成したエントリの所属に探索した路線データの識別子を登録する(ステップ430)。そして、ステップ402からの処理に戻る。
【0028】
一方、ステップ406-412、420の処理において、指定されたリンクIDを含む路線データの探索に失敗した場合には、地図データ記憶部21に格納されている地図データに指定されたリンクIDを持つリンクレコードが存在するかどうかを調べ(ステップ414)、存在しない場合には、「リンクデータ無」をナビゲーション処理部17に応答する(ステップ432)。また、指定されたリンクIDのエントリを、最新リンクレコード管理テーブル19に作成し、作成したエントリの所属に「削除」を登録する(ステップ434)。そして、ステップ402からの処理に戻る。一方、地図データ記憶部21に格納されている地図データに指定されたリンクIDを持つリンクレコードが存在する場合には(ステップ414)、地図データの指定されたリンクIDのリンクレコードを読み出し、リンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供する(ステップ416)、また、指定されたリンクIDのエントリを、最新リンクレコード管理テーブル19に作成し、作成したエントリの所属に探索した路線データの識別子を登録する(ステップ418)。そして、ステップ402からの処理に戻る。
【0029】
以上、最新リンクデータ探索部18が行う最新リンクデータ提供処理について説明した。
以上の最新リンクデータ提供処理によれば、ナビゲーション処理部17からのリンクIDを指定したリンクデータの要求に対して、地図データ記憶部21に記憶されている地図データまたは地図データ及び路線データの双方に含まれる、指定されたリンクIDを持つリンクレコードのうちの、最新のリンクレコードがリンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供される。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上では、最新リンクレコード管理テーブル19の管理、編集は最新リンクデータ探索部18が行うものとしたが、この最新リンクレコード管理テーブル19の管理、編集は、地図データ更新制御部16が行うようにしてもよい。
すなわち、この場合には、路線データをダウンロードし地図データ記憶部21に格納した際に、地図データ更新制御部16は、まず、最新リンクレコード管理テーブル19のエントリのうち、ダウンロードした路線データに含まれるリンクレコードのリンクIDを持つエントリを全て消去する。そして、次に、最新リンクレコード管理テーブル19に、ダウンロードしたエントリに含まれるリンクレコードのリンクIDを持つエントリを各々作成し、作成したエントリに「所属」としてダウンロードした路線データの識別子を登録する。ただし、作成したエントリのうちの、更新フラグとして「削除」が登録されているリンクレコードのリンクIDを持つエントリには、所属として「削除」を登録する。
【0031】
この場合、最新リンクデータ探索部18は、ナビゲーション処理部17からのリンクIDを指定したリンクデータの要求を受けたならば、指定されたリンクIDが最新リンクレコード管理テーブル19に登録されているかどうかを調べ、登録されていない場合には、地図データ記憶部21に格納されている地図データから、指定されたリンクIDのリンクレコードを読み出し、リンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供する。また、指定されたリンクIDが最新リンクレコード管理テーブル19に登録されている場合には、指定されたリンクIDのエントリの所属が「削除」であるかどうかを調べ、「削除」である場合には、「リンクデータ無」をナビゲーション処理部17に応答する。一方、指定されたリンクIDのエントリの所属が「削除」でなければ、指定されたリンクIDのエントリの所属に登録されている識別子が示す、地図データ記憶部21に格納されている路線データから、指定されたリンクIDのリンクレコードを読み出し、リンクデータとしてナビゲーション処理部17に提供する。
【0032】
以上、本実施形態で示した地図データ更新システムによれば、ナビゲーション装置1において、路線毎に提供される、路線の最新の状態を規定する路線データを用いて、路線毎に、ナビゲーション処理部17が処理に用いるリンクレコードの更新を行うことができる。また、この更新を、提供された路線データを用いて地図データを更新することにより行うのではなく、地図データと提供された路線データとをそのまま保持しつつ、地図データに含まれるリンクレコードと路線データが規定するリンクレコードとのうちの、最新のリンクレコードを選定して、ナビゲーション処理部17の処理に用いることにより行うので、各ナビゲーション装置1が保持している地図データと路線データとの組み合わせ毎に、更新を行うためのデータを用意する必要がない。また、ある路線の組み合わせについて更新を行いたい場合には、更新したい路線の路線データをそれぞれナビゲーション装置1に保持させるだけで足りるので、更新を可能とする路線の組み合わせ毎に、当該更新のためのデータを用意する必要もない。
【0033】
また、本実施形態によれば、各ナビゲーション装置1には地図データが保持し続けられるので、この地図データと最新の地図を表す地図データとの差分を表す差分データを一つ用意すれば、この差分データで全てのナビゲーション装置1が保持している地図データを更新することができるようになる。また、各ナビゲーション装置1の、日常的な更新は路線データのダウンロードによって行いつつ、適当な時期に、差分データによって地図データの更新を行って、それまでに発生した全ての路線のリンクレコードの変更が保持している地図データに反映するような運用が可能となる。
【0034】
また、本実施形態は、最新リンクデータ探索部18を、そのナビゲーション装置1が備える地図データのフォーマットを解釈して、当該フォーマットに依存しない形態でリンクデータをナビゲーション処理部17に提供するものとすることにより、すなわち、最新リンクデータ探索部18を地図データのフォーマットの相違を吸収するものとすることにより、各ナビゲーション装置1が保持する地図データのフォーマットによらず、同じ路線データを使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る地図情報更新システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態で用いる地図データと路線データと最新リンクレコード管理テーブルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態で用いる路線データの作成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態においてナビゲーション装置が行う最新リンクデータ提供処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1…ナビゲーション装置、2…WAN、3…地図更新データ提供装置、11…無線通信装置、12…表示装置、13…入力装置、14…入出力処理部、15…路線データクライアント、16…地図データ更新制御部、17…ナビゲーション処理部、18…最新リンクデータ探索部、19…最新リンクレコード管理テーブル、20…データアクセス処理部、21…地図データ記憶部、22…自車状態測定部、31…路線データサーバ、32…路線データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各路線の地図情報を表す地図データを保持する地図データ保持手段と、
路線毎に提供される、路線の最新の地図情報を規定する路線データを1または複数保持する路線データ保持手段と、
最新地図情報提供手段と、
前記最新地図情報提供手段に対して所要の道路区間の地図情報を要求し、当該要求に対して前記最新地図情報提供手段から提供される地図情報に基づいて、ユーザに対する道案内または現在位置案内を行うナビゲーション処理部とを有し、
前記地図情報提供手段は、前記ナビゲーション処理部から前地図情報を要求された場合に、地図情報を要求された道路区間の地図情報が、前記路線データ保持部に保持された路線データによって規定されている場合には、当該路線データによって規定される当該道路区間の地図情報を前記ナビゲーション処理部に提供し、地図情報を要求された道路区間の地図情報が、前記路線データ保持部に保持されている路線データによって規定されていない場合には、前記地図データ保持手段に保持されている前記地図データから当該道路区間の地図情報を読み出して前記ナビゲーション処理部に提供することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーション装置であって、
前記路線データは、前記路線の最新の地図情報と、前記地図データに含まれる当該路線の地図情報との差分によって、当該路線の最新の地図情報を規定するものであることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1記載のナビゲーション装置であって、
前記地図データは、リンクの連結によって道路を表現するものであり、
前記地図情報は、リンク毎に設けられた当該リンクの情報を表すリンクレコードであり、
前記路線データは、当該路線データが最新の地図情報を規定する路線の、地図データにリンクレコードが含まれないリンクの最新のリンクレコードと、地図データに最新のリンクレコードではないリンクレコードが含まれるリンクの当該最新のリンクレコードとを含み、
当該ナビゲーション装置は、各リンクについて、前記路線データ保持手段に保持された1または複数の前記路線データと前記地図データ保持手段に保持された地図データとのうちのいずれが、当該リンクの最新のリンクレコードを含むかを管理するテーブルを有し、
前記ナビゲーション処理部は、指定したリンクのリンクレコードを前記最新地図情報提供手段に対して要求し、
前記最新地図情報提供手段は、前記テーブルを参照して、前記ナビゲーション処理部から指定されたリンクの最新のリンクレコードを含む前記路線データ保持手段に保持された前記路線データまたは前記地図データ保持手段に保持された地図データを識別し、識別した当該最新のリンクレコードを含む前記路線データまたは前記地図データから、指定されたリンクのリンクレコードを読み出して、前記ナビゲーション処理部に提供することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置に前記路線データを提供する路線データ提供装置を有し、
前記路線データ提供装置は、路線毎に設けられた当該路線の最新の地図情報を規定する路線データを、複数の路線について保持する路線データベースと、前記ナビゲーション装置から要求された路線の路線データを前記路線データベースから探索し、当該ナビゲーション装置に提供する路線データサーバとを有し、
前記ナビゲーション装置は、地図情報を更新しようとする路線の路線データを前記路線サーバに要求し、前記路線サーバから提供された路線データを前記路線データ保持部に格納する路線データダウンロード手段を有することを特徴とするナビゲーション装置の地図情報更新システム。
【請求項5】
各路線の地図情報を表す地図データを保持し、地図情報に基づいて、ユーザに対する道案内または現在位置案内を行うナビゲーション装置において、前記地図情報を更新する地図情報更新方法であって、
路線毎に提供される、路線の最新の地図情報を規定する路線データのうちの、地図情報を更新しようとする路線の路線データを取得し保持するステップと、
前記道案内または現在位置案内に用いる所要の道路区間の地図情報として、当該道路区間の地図情報が、保持している路線データによって規定されている場合には、当該路線データによって規定される当該道路区間の地図情報を選定し、保持している路線データによって規定されていない場合には、保持している前記地図データが表す当該道路区間の地図情報を選定するステップと、
選定した地図情報を用いて、前記道案内または現在位置案内を行うステップとを有することを特徴とするナビゲーション装置の地図情報更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−271432(P2007−271432A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96833(P2006−96833)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】