説明

ナビゲーション装置

【課題】下位の階層での経路探索をより適切に行なうことのできるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】経路探索部43は、上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnと最短直線Lとで囲まれる領域である再探索要否判断用領域の面積Snを算出し、再探索要否判断用領域の面積Snが所定の基準値Sthn以上である場合に、下位のレイヤHn+1にて中間経路Rmn+1を再探索する。また、所定の基準値Sthnとして、交点C10及びC20間の距離交点間の距離を直径とする半円の面積を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発地から目的地までの経路を案内するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション装置では、出発地から目的地までの経路を探索するために必要な地図情報は、道路の詳細度に応じた階層(レイヤ)にて記憶されている。上位の階層には、高速道、首都高速道路、有料道路、及び国道等の主要な道路の道路情報が記憶されており、下位の階層には、これら主要道路に加えて一般道路を含む全ての道路情報が記憶されている。ナビゲーション装置は、出発地から目的地までの経路探索を行なう際に、出発地近傍及び目的地近傍については、下位の階層にて詳細な経路探索を行なうとともに、出発地近傍と目的地近傍との間の中間地点については、上位の階層にて大雑把な経路探索を行なう。
【0003】
このような一般的な技術では、中間地点において上位の階層で主要道路を通る経路を探索することから、出発地から目的地までの遠回りの経路を探索してしまい、その結果、遠回りの経路を案内してしまうことがある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の技術では、ナビゲーション装置を搭載する車両の現在地を検出し、所定時間ごとに、あるいは、所定距離ごとに、現在地から目的地までの経路を探索することで、中間地点で遠回りの経路が探索されることを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−107164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、上位の階層にて探索した現在の経路(中間経路)よりも経路コストがより小さい経路が存在する可能性を判断することなく、所定時間ごとに、あるいは、所定距離ごとに下位の階層にて中間経路を探索する。そのため、より近い経路が存在する可能性がない場合には、上位の階層にて探索した中間経路と同一の中間経路が下位の階層にて探索されることになり、下位の階層にて経路探索を無駄に行なってしまったこととになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、下位の階層での経路の再探索をより適切に行なうことのできるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、出発地を設定する出発地設定部と、目的地を設定する目的地設定部と、地図情報が道路の詳細度に応じた階層にて記憶されている地図情報記憶部と、出発地から目的地までの経路を、地図情報記憶部に記憶されている地図情報を用いて探索する経路探索部とを備えるナビゲーション装置において、経路探索部は、出発地近傍の経路である出発地近傍経路と、目的地近傍の経路である目的地近傍経路とを結ぶ経路である中間経路については、これら出発地近傍経路及び目的地近傍経路を探索する階層よりも道路の詳細度が低い上位の階層にて探索し、その探索した中間経路と現在地及び目的地を結ぶ最短直線とで囲まれる領域である再探索要否判断用領域の面積を算出し、再探索要否判断用領域の面積が所定の基準値以上である場合に、前回中間経路を探索した階層よりも道路の詳細度が高い下位の階層にて中間経路を再探索することを特徴とする。
【0009】
最短直線と中間経路とで囲まれる領域である再探索要否判断用領域の面積が大きければ、上位の階層にて探索された中間経路よりもより経路コストが小さい中間経路の存在を期待することができる。ナビゲーション装置としての上記請求項1に記載の発明では、経路探索部は、再探索要否判断用領域の面積を算出し、再探索要否判断用領域の面積が所定の基準値以上である場合に、前回中間経路を探索した階層よりも道路の詳細度が高い下位の階層にて中間経路を再探索することから、上位の階層にて探索した中間経路よりもより経路コストの小さい近い経路が存在する可能性が高い場合に下位の階層にて中間経路を再探索することができるようなる。そして、ひいては、上位の階層にて探索した中間経路と同一の中間経路が下位の階層にて再探索されることが低減し、下位の階層での経路の再探索をより適切に行なうことができるようになる。
【0010】
なお、上記請求項1に記載の構成では、再探索要否判断領域の面積を算出するにあたり、中間経路を近似する近似曲線を求め、この近似曲線及び最短直線によって囲まれる面積を積分にて算出してもよい。あるいは、請求項2に記載の発明のように、中間経路は、複数のリンクから構成されており、経路探索部は、それら複数のリンクの個々に対し、経線に平行な辺及び緯線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積として算出してもよい。またあるいは、請求項7に記載の発明のように、中間経路は、複数のリンクから構成されており、経路探索部は、それら複数のリンクの個々に対し、最短直線に平行な辺及び直交直線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積として算出してもよい。近似曲線による算出方法によれば、近似曲線を求めるのに必要な演算負荷及び積分するのに必要な演算負荷が多いものの、請求項2あるいは請求項7に記載の算出方法によれば、リンクの個々に対して矩形を設定するため、演算負荷を軽減することができるようになる。
【0011】
より具体的には、請求項2に記載の構成において、請求項3に記載の発明のように、経路探索部は、リンクの終点側の端点を通り経線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定したり、請求項2に記載の構成において、請求項4に記載の発明のように、経路探索部は、リンクの始点側の端点を通り経線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定するとよい。
【0012】
あるいは、請求項2に記載の構成において、請求項5に記載の発明のように、経路探索部は、リンクの終点側の端点を通り緯線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定したり、請求項2に記載の構成において、請求項6に記載の発明のように、経路探索部は、リンクの始点側の端点を通り緯線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定するとよい。
【0013】
またあるいは、請求項7に記載の構成において、請求項8に記載の発明のように、経路探索部は、リンクの終点側の端点を通り最短直線に直交する直交直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定したり、請求項7に記載の構成において、請求項9に記載の発明のように、経路探索部は、リンクの始点側の端点を通り最短直線に直交する直交直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定するとよい。
【0014】
なお、上記請求項1〜9のいずれか一項に記載の構成において、請求項10に記載の発明のように、経路探索部は、所定の基準値として、上位の階層で探索した中間経路と最短直線との交点間の距離に基づいて定められる値を用いるとよい。こうした所定の基準値としては、例えば、交点間の距離を一辺とする正方形の面積、交点間の距離を直径とする半円の面積、及び交点間の距離を一辺とする正三角形の面積等のように、交点間の距離を用いて定められる図形の面積を採用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の一実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態のナビゲーション装置において、上位のレイヤにて探索された中間経路と下位のレイヤにて再探索された中間経路とを併せて示す模式図である。
【図3】再探索要否判断用領域の面積を算出する算出方法を説明するための図である。
【図4】本実施の形態のナビゲーション装置によって実行される経路探索処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】再探索要否判断用領域の面積を算出する算出方法についてその変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るナビゲーション装置の一実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0017】
図1に示されるように、ナビゲーション装置1は、地図情報記憶部10、GPS受信部20、操作入力部30、制御部40、表示部50、及び音声出力部60を備えて構成されている。制御部40は、公知のCPU及び内蔵メモリを有して構成されるコンピュータであり、そのCPUが内蔵メモリに記憶されているプログラムを実行することによって各種機能を実現している。以下の説明では、便宜上、制御部40は、現在地検出部41、目的地設定部42、経路算出部43、及び経路案内部44を有するものとして説明する。なお、このナビゲーション装置1は、図示しない車両に搭載されている。
【0018】
地図情報記憶部10は、例えばハードディスクドライブ装置、DVD(digital versatile disc)装置、CD(compact disc)装置、フラッシュメモリ等によって構成されており、地図情報が記憶されている。詳しくは、図2に示されるように、地図情報記憶部10には、高速道、首都高速道路、有料道路、及び国道等の主要な道路の道路情報を含む上位のレイヤH0と、これら主要道路に加えて一般道路を含む全ての道路情報を含む下位のレイヤH1との2階層にて、地図情報が記憶されている。また、道路情報には、所要時間、距離、通行料金等のリンクコストが含まれており、現在地Pから目的地Tまでの経路Rの経路コストは経路Rを構成するリンクのリンクコストの総和である。そして、地図情報記憶部10は、制御部40に接続されており、この制御部40によって地図情報等が適宜読み出される。なお、説明の便宜上、地図情報記憶部10にはレイヤH0及びレイヤH1の2階層にて地図情報が記憶されているものとする。
【0019】
GPS受信部20は、例えば図示しないGPSアンテナを有して構成されており、これも図示しない複数のGPS衛星から発せられるGPS信号を受信する。また、GPS受信部20は、制御部40に接続されており、この受信したGPS信号を制御部40に出力する。
【0020】
操作入力部30は、例えばタッチパネルや音声入力装置等の適宜の入力装置にて構成されており、制御部40に接続されている。当該ナビゲーション装置1のユーザはこの操作入力部30を操作することで目的地を制御部40へ入力することができる。
【0021】
現在地検出部41は、地図情報記憶部10及びGPS受信部20に接続されており、GPS受信部20によって受信されるGPS信号を取得するとともに、地図情報記憶部10に記憶されている地図情報を読み出す。また、現在地検出部41は、経路探索部43に接続されており、これらGPS信号及び地図情報を利用して車両の現在地を検出する。また、車両の現在地の検出においては、当該ナビゲーション装置1を搭載する車両の走行軌跡と地図情報に基づいて周知のマップマッチングを実行することで、GPS信号に基づいて決定する現在地の誤差を補正する。そして、このようにして検出した車両の現在地Sの情報である現在地情報を経路探索部43に出力する。
【0022】
目的地設定部42は、操作入力部30から入力された目的地に基づいて経路案内上の目的地を設定する。なお、操作入力部30から入力される目的地に限らず、現在地と目的地の履歴から今回の目的地を推定して、その推定した目的地を経路案内上の目的地に設定してもよい。
【0023】
経路探索部43は、地図情報記憶部10、目的地設定部42、及び現在地検出部41に接続されており、目的地設定部42から目的地情報を取得すると、この取得した目的地情報、現在地検出部41から入力された現在地情報、及び地図情報記憶部10から取得した地図情報を利用して、車両の現在地Pから目的地Tまでの経路Rを算出する。また、経路探索部43は経路案内部44に接続されており、車両の現在地Pから目的地Tまでの経路Rを探索すると、その探索した経路Rの情報である経路情報を経路案内部44に出力する。
【0024】
なお、本実施の形態では、経路探索部43は、車両の現在地Pを経路Rの出発地として設定し、車両の現在地Pから目的地Tまでの経路Rを探索していた。そのため、経路探索部43は、特許請求の範囲に記載の経路探索部に相当することはもちろんのこと、出発地設定部にも相当する。車両の現在地Pを経路Rの出発地に設定するに限らず、上記操作入力部30によって入力された地点を経路Rの出発地に設定してもよい。
【0025】
経路案内部44は、地図情報記憶部10、経路探索部43、例えばLCD等によって構成されている表示部50、及び例えばスピーカ等によって構成される音声出力部60に接続されている。経路案内部44は、経路探索部43から経路情報が入力されると、この入力された経路情報に基づいて地図画像を描画し、その描画した地図画像を表示部50に表示させる。また、経路案内部44は、音声出力部60から音声案内あるいは警告音を出力してユーザに経路を案内する。
【0026】
以下、図2及び図3を参照して、経路探索部43及び経路案内部44についてさらに説明する。
【0027】
経路探索部43は、現在地Pから目的地Tまでの経路Rのうち、現在地P近傍の経路である現在地近傍経路Rp及び目的地T近傍の経路である目的地近傍経路Rtについては、レイヤH0よりも下位のレイヤ(図2では図示略)にて探索し、これら現在地近傍経路Rpと目的地近傍経路Rtとを結ぶ経路である中間経路Rm0については、上位のレイヤH0にて探索する。
【0028】
ただし、現在地P及び目的地Tを結ぶ直線である最短直線Lと中間経路Rm0とで囲まれる領域である再探索要否判断用領域の面積S0が大きければ、上位のレイヤH0で探索された中間経路Rm0よりも経路コストのより小さい中間経路の存在を期待することができる。
【0029】
そこで、経路探索部43は、再探索要否判断用領域の面積S0が所定の基準値Sth0以上である場合には、中間経路Rm0を探索したレイヤH0よりも道路の詳細度が高い下位のレイヤH1にて中間経路Rm1を再探索する一方、再探索要否判断用領域の面積S0が所定の基準値Sth0に満たない場合には、中間経路Rm0を探索したレイヤH0よりも道路の詳細度が高い下位のレイヤH1にて中間経路Rm1を再探索しないこととした。
【0030】
また、経路案内部44は、下位のレイヤH1にて再探索された中間経路Rm1の経路コストが上位のレイヤH0にて探索された中間経路Rm0の経路コストよりも小さい場合には、下位のレイヤH1にて再探索された中間経路Rm1を表示部50及び音声出力部60にて案内することとし、下位のレイヤH1にて再探索された中間経路Rm1の経路コストが上位のレイヤH0にて探索された中間経路Rm0の経路コスト以上である場合には、上位のレイヤH0にて探索された中間経路Rm0を表示部50及び音声出力部60にて案内することとした。
【0031】
なお、経路案内部44は、所定の基準値Sth0として、中間経路Rm0と最短直線Lとの交点C10及びC20間の距離に基づいて定められる値を用いる。具体的には、経路探索部43は、こうした所定の基準値Sth0として、例えば、交点C10及びC20間の距離交点間の距離を直径とする半円の面積を採用する。ただし、半円に限らず、交点C10及びC20間の距離を一辺とする正方形の面積、交点C10及びC20間の距離を一辺とする正三角形の面積等のように、交点C10及びC20間の距離を用いて定められる図形の面積を採用してもよい。
【0032】
また、現在地近傍経路Rp及び目的地近傍経路Rtを探索する領域を狭くすると、中間経路Rm0を探索する領域が広くなり、現在地Pから目的地Tまでの経路Rを探索するに必要な演算量が少なくなる。一方、現在地近傍経路Rp及び目的地近傍経路Rtを探索する領域を広くすると、中間経路Rm0を探索する領域が狭くなり、現在地Pから目的地Tまでの経路Rを探索するに必要な演算量が多くなる。そのため、現在地近傍及び目的地近傍の範囲については、制御部40を構成するCPUの演算能力に応じて予め定められている。ちなみに、本実施の形態では、現在地近傍、すなわち出発地近傍として、現在地(すなわち出発地)を中心として所定距離(例えば「10km」等)までの領域を採用しており、目的地近傍として、目的地を中心として所定距離(例えば「10km」等)までの領域を採用している。これに限らず、他に例えば、現在地近傍、すなわち出発地近傍として、現在地を中心として現在地から目的地までの直線距離の所定分の1(例えば「1/10」等)までの領域を採用してもよく、目的地近傍として、目的地を中心として現在地から目的地までの直線距離の所定分の1(例えば「1/10」等)までの領域を採用してもよい。
【0033】
図3では、中間経路Rm0と最短直線Lとの交点C10を原点とし、緯度及び経度をそれぞれX軸及びY軸とする直交座標系において、レイヤH0にて探索された中間経路Rm0は、リンクl1〜l12の計「12個」のリンクで構成されている。この場合における経路探索部43による再探索要否判断用領域の面積S0の算出方法について詳述する。
【0034】
まず、経路探索部43は、中間経路Rm0と最短直線Lとの交点C10及びC20を算出する。ここで、交点C10及びC20は、最短直線Lを跨ぐリンクの端点とする。
【0035】
次に、経路探索部43は、交点C10及びC20間を結ぶ線分C10−C20と中間経路Rm0とで囲まれる再探索要否判断用領域の面積S0を算出する。具体的には、経路探索部43は、レイヤH0にて探索された中間経路Rm0を構成するリンクl1〜l12の個々に対して矩形A1〜A12を設定し、それら設定した矩形A1〜A12の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積S0として算出する。
【0036】
説明の便宜上、リンクl5に対して矩形A5を設定する場合を説明すると、経路探索部43は、リンクl5の終点側の端点e5tから経線に平行な平行直線を引いて最短直線Lとの交点i5tを算出し、この交点i5tとリンクl5の始点側の端点e5pとを結ぶ直線を対角線とする矩形A5を設定する。なお、図3では、リンクl8〜l12が経線と平行になることから、経路探索部43は、リンクl8〜l12に対し矩形A8〜A12を設定せず、リンクl1〜l4,l6〜l7に対して、リンクl5と同様に矩形A1〜A4,A6〜A7を設定する。そして、経路探索部43は、矩形A1〜A7を設定すると、それら設定した矩形A1〜A7の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積S0として算出する。
【0037】
なお、本実施の形態では、経路探索部43は、リンクl5の終点側の端点e5tから経線に平行な平行直線を引いて最短直線Lとの交点i5tを算出し、この交点i5tとリンクl5の始点側の端点e5pとを結ぶ直線を対角線とする矩形A5を設定していたが、これに限らない。経路探索部43は、リンクl5の始点側の端点e5pから経線に平行な平行直線を引いて最短直線Lとの交点i5pを算出し、この交点i5pとリンクl5の終点側の端点e5tとを結ぶ直線を対角線とする矩形A5を設定してもよい。
【0038】
また、経路探索部43は、リンクl5の始点側の端点e5pと、上記交点i5pを通る緯線に平行な直線とリンクl5の終点側の端点e5tを通る経線に平行な平行直線との図示しない交点とを対角線とする矩形A5を設定してもよい。また、経路探索部43は、リンクl5の終点側の端点e5tと、上記交点i5tを通る緯線に平行な直線とリンクl5の始点側の端点e5pを通る経線に平行な平行直線との交点(図示せず)とを対角線とする矩形A5を設定してもよい。
【0039】
以上のように構成されたナビゲーション装置1は図4に示す経路探索処理S1を実行する。なお、ここまで、説明の便宜上、地図情報記憶部10にはレイヤH0及びレイヤH1の2階層にて地図情報が記憶されているものとしたが、以下では、2階層に限らず複数の階層にて地図情報が記憶されているものとする。中間経路Rmn、交点C1n、交点C2n、面積Sn、基準値Sthnに付した添え字nは、レイヤHnにて算出されたことを意味する。
【0040】
制御部40は、現在地Pを検出し、目的地Tが設定されると、この経路探索処理S1を実行開始する。経路探索処理S1を実行開始すると、ステップS11の処理として、現在地情報、目的地情報、及び地図情報を利用して、車両の現在地Pから目的地Tまでの経路Rを算出する。このとき、経路探索部43は、現在地Pから目的地Tまでの経路Rのうち、現在地近傍の経路である現在地近傍経路Rp及び目的地近傍の経路である目的地近傍経路Rtについては、レイヤH0よりも下位のレイヤにて探索し、これら現在地近傍経路Rpと目的地近傍経路Rtとを結ぶ経路である中間経路Rm0については、上位のレイヤH0にて探索する。
【0041】
現在地Pから目的地Tまでの経路Rを算出すると、制御部40は、続くステップS12の処理として、現在地Pと目的地Tとを結ぶ直線である最短直線Lを算出する。
【0042】
ステップS12の処理を終えると、制御部40は、続くステップS13の処理として、中間経路Rmnと最短直線Lとの交点C1n及びC2nを算出し、続くステップS14の処理として、線分C1n−C2nと中間経路Rmnとで囲まれる面積Snを算出する。具体的には、制御部40は、レイヤHnにて探索された中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの終点側の端点から経線に平行な平行直線を引いて最短直線Lとの交点を算出し、この交点とリンクの始点側の端点とを対角線とする矩形を設定する。そして、経路探索部43は、それら設定した矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出する。
【0043】
ステップS14の処理を終えると、制御部40は、続くステップS15の判断処理に移行し、ステップS14の処理で算出した面積Snが所定の基準値Sthn以上であるか否かを判断する。なお、本実施の形態では、所定の基準値Sthnは、交点C1n及びC2n間の距離交点間の距離を直径とする半円の面積である。
【0044】
ここで、面積Snが所定の基準値Sthn以上であると判断しなかった場合(ステップS15の判断処理で「No」)、前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnよりも経路コストの小さい中間経路Rmn+1が下位のレイヤHn+1に存在する可能性は低い。そのため、制御部40は、この経路探索処理S1を終了する。
【0045】
一方、ステップS14の処理で算出した面積Snが所定の基準値Sthn以上であると判断した場合(ステップS15の判断処理で「Yes」)、前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnよりも経路コストの小さい中間経路Rmn+1が下位のレイヤHn+1に存在する可能性がある。そのため、制御部40は、続くステップS16の判断処理に移行する。
【0046】
ステップS16の判断処理に移行すると、制御部40は、前回中間経路Rmnを探索したレイヤHnよりも下位のレイヤHn+1が地図情報記憶部10に記憶されているか否かを判断する。ここで、下位のレイヤHn+1が記憶されていないと判断した場合(ステップS16の判断処理で「No」)、下位のレイヤHn+1で中間経路Rmn+1を探索することができないことから、制御部40は、この経路探索処理S1を終了する。
【0047】
一方、下位のレイヤHn+1が記憶されていると判断した場合(ステップS16の判断処理で「Yes」)、制御部40は、続くステップS17の処理に移行し、下位のレイヤHn+1で中間経路Rmn+1を再探索する。
【0048】
ステップS17の処理を終えると、続くステップS18の判断処理に移行し、制御部40は、今回下位のレイヤHn+1で再探索した中間経路Rmn+1の経路コストが前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnの経路コストよりも小さいか否かを判断する。ここで、今回下位のレイヤHn+1で再探索した中間経路Rmn+1の経路コストが前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnの経路コストよりも小さいと判断しなかった場合(ステップS18の判断処理で「No」)、今回下位のレイヤHn+1で再探索した中間経路Rmn+1の経路コストが前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnの経路コスト以上であることから、制御部40は、この経路探索処理S1を終了する。
【0049】
一方、今回下位のレイヤHn+1で再探索した中間経路Rmn+1の経路コストが前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rnの経路コストよりも小さいと判断した場合(ステップS18の判断処理で「Yes」)、制御部40は、続くステップS19の処理に移行して、前回上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnを、今回下位のレイヤHn+1で再探索した中間経路Rmn+1に替える。そして、制御部40は、先のステップS13の判断処理に移行し、ステップS13〜S19の一連の処理を再度実行する。このように、経路探索部43は、中間経路Rmnを逐次探索する。
【0050】
以上説明した本実施の形態では、経路探索部43は、上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnと最短直線Lとで囲まれる領域である再探索要否判断用領域の面積Snを算出し、再探索要否判断用領域の面積Snが所定の基準値Sthn以上である場合に、下位のレイヤHn+1にて中間経路Rmn+1を再探索することとした。また、経路案内部44は、下位のレイヤHn+1にて再探索された中間経路Rmn+1の経路コストの方が上位のレイヤHnにて探索された中間経路Rmnよりも経路コストが小さい場合に、下位のレイヤHn+1にて再探索された中間経路Rmn+1を案内することとした。上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnよりもより経路コストの小さい近い中間経路が存在する可能性が高い場合に下位のレイヤHn+1にて中間経路Rmn+1を再探索することができるようなる。そして、ひいては、上位のレイヤHnで探索した中間経路Rmnと同一の中間経路Rmn+1が下位のレイヤHn+1で再探索されることが低減し、下位のレイヤHn+1での経路の再探索をより適切に行なうことができるようになる。
【0051】
また、本実施の形態では、経路探索部43は、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対して矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出した。この算出方法によれば、中間経路Rmnを近似する近似曲線を求め、この近似曲線及び最短直線Lによって囲まれる面積を積分にて算出する算出方法よりも、演算負荷を低減することができるようになる。
【0052】
なお、本発明に係るナビゲーション装置は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0053】
上記実施の形態では、経路探索部43は、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの終点側の端点を通り経線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とするとともに、経線に平行な辺及び緯線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出していたが、これに限らない。
【0054】
他に例えば、経路探索部43は、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの始点側の端点を通り経線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とするとともに、経線に平行な辺及び緯線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出してもよい。
【0055】
あるいは、経路探索部31は、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの終点側の端点を通り緯線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とするとともに、経線に平行な辺及び緯線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出してもよい。
【0056】
またあるいは、経路探索部31は、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの始点側の端点を通り緯線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とするとともに、経線に平行な辺及び緯線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出してもよい。
【0057】
また、他に例えば、経路探索部43は、中間経路Rmと最短直線Lとの交点C1nを原点とし、緯線及び経線をそれぞれX軸及びY軸とする直交座標系を、経線と最短直線Lとがなす角θだけ回転させた直交座標系において、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの始点側の端点を通り最短直線Lに直交する直交直線と最短直線Lとの交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ直線を対角線とするとともに、最短直線Lに平行な辺と直交直線に平行な辺とを有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出してもよい。
【0058】
図2に対応する図として示す図5を参照して詳しく説明する。この図5に示されるように、経路探索部43は、レイヤH0にて探索された中間経路Rm0を構成するリンクl1〜l12の個々に対して矩形A1〜A12を設定し、それら設定した矩形A1〜A12の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積S0として算出する。
【0059】
リンクl5に対して矩形A5を設定する場合を説明すると、経路探索部43は、リンクl5の始点側の端点e5pから最短直線Lに直交する直交直線を引いて最短直線Lとの交点i5pを算出し、この交点i5pとリンクl5の終点側の端点e5tとを結ぶ直線を対角線とし、最短直線Lに平行な辺と最短直線Lni直交する辺とを有する矩形A5を設定する。なお、リンクl5の始点側の端点e5pの座標が(a、b)であり、終点側の端点e5tの座標が(a’,b’)である場合、矩形A5の面積は「(a’−a)×b’」という簡単な式で算出することができる。経路探索部43は、リンクl1〜l4,l6〜l12に対して、リンクl5と同様に矩形A1〜A4,A6〜A12を設定すると、それら設定した矩形A1〜A12の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積S0として算出する。
【0060】
また、経路探索部43は、中間経路Rmと最短直線Lとの交点C1nを原点とし、緯線及び経線をそれぞれX軸及びY軸とする直交座標系を、経線と最短直線Lとがなす角θだけ回転させた直交座標系において、中間経路Rmnを構成する複数のリンクの個々に対し、リンクの始点側の端点を通り最短直線Lに直交する直交直線と最短直線Lとの交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ直線を対角線とするとともに、最短直線Lに平行な辺と直交直線に平行な辺とを有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を再探索要否判断用領域の面積Snとして算出してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…ナビゲーション装置、10…地図情報記憶部、20…GPS受信部、30…操作入力部、40…制御部、41…現在地検出部、42…目的地設定部、43…経路探索部、44…経路案内部、50…表示部、60…音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地を設定する出発地設定部と、
目的地を設定する目的地設定部と、
地図情報が道路の詳細度に応じた階層にて記憶されている地図情報記憶部と、
前記出発地から前記目的地までの経路を、前記地図情報記憶部に記憶されている地図情報を用いて探索する経路探索部とを備えるナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、
出発地近傍の経路である出発地近傍経路と、目的地近傍の経路である目的地近傍経路とを結ぶ経路である中間経路については、これら出発地近傍経路及び目的地近傍経路を探索する階層よりも道路の詳細度が低い上位の階層にて探索し、
その探索した中間経路と現在地及び目的地を結ぶ最短直線とで囲まれる領域である再探索要否判断用領域の面積を算出し、
再探索要否判断用領域の面積が所定の基準値以上である場合に、前回中間経路を探索した階層よりも道路の詳細度が高い下位の階層にて中間経路を再探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記中間経路は、複数のリンクから構成されており、
前記経路探索部は、それら複数のリンクの個々に対し、経線に平行な辺及び緯線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を前記再探索要否判断用領域の面積として算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、リンクの終点側の端点を通り経線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、リンクの始点側の端点を通り経線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、リンクの終点側の端点を通り緯線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、リンクの始点側の端点を通り緯線に平行な平行直線と最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記中間経路は、複数のリンクから構成されており、
前記経路探索部は、それら複数のリンクの個々に対し、最短直線に平行な辺及び直交直線に平行な辺を有する矩形を設定し、それら設定された矩形の面積の総和を前記再探索要否判断用領域の面積として算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項7に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、リンクの終点側の端点を通り前記最短直線に直交する直交直線と前記最短直線との交点と、リンクの始点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項7に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、リンクの始点側の端点を通り前記最短直線に直交する直交直線と前記最短直線との交点と、リンクの終点側の端点とを結ぶ線を対角線とする矩形を設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索部は、前記所定の基準値として、上位の階層にて探索した中間経路と最短直線との交点間の距離に基づいて定められる値を用いることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−191065(P2011−191065A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54930(P2010−54930)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】