説明

ニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法、防錆剤で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の製造方法、導電性接着剤および電子機器

【課題】導電性接着剤用の導電性粒子として有用なニッケル粒子またはニッケル合金粒子を提供する。耐湿性に優れた導電性接着剤を提供する。
【解決手段】表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子またはニッケル合金粒子を、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中または真空度が10133Pa以下の空気中で、200℃以上で加熱して該有機化合物を除去する。さらに粒子表面を防錆剤で被覆する。かくして得られた導電性粒子と硬化性有機樹脂接着剤からなる耐湿性に優れた導電性接着剤、および、該導電性接着剤で半導体素子、チップ部品、ディスクリート部品、導電性部材等を接合させた電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法、防錆剤で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の製造方法、および、処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子または防錆剤で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子を含有する導電性接着剤に関する。また、このような導電性接着剤を用いて半導体素子、チップ部品、ディスクリート部品または導電性部材を接合した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子として銀粉末を熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性ペーストは、加熱により硬化して導電性被膜や、導電層を形成するので、プリント回路基板上の導電性回路の形成;抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品の電極の形成;各種表示素子の電極の形成;電磁波シールド用導電性被膜の形成;コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着;太陽電池の電極、特にアモルファスシリコン半導体を用いた高温処理のできない太陽電池の電極の形成;積層セラミックコンデンサー、積層セラミックインダクター、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
【0003】
しかし、導電性粒子が銀粒子の場合には、エレクトロマイグレーションを起こすという問題がある(非特許文献1)。この問題を解決するため銀粒子の代りに、表面がポリオキシアルキレンリン酸エステル誘導体とポリオキシアルキルアミンとの混合物で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子を導電性フィラーとしてエポキシ樹脂とフェノール樹脂中に含有する導電性接着剤が提案されている(特許文献1)。
しかし、このような導電性接着剤の硬化物を高温、高湿の雰囲気中に放置すると、ニッケル粒子の表面が酸化されて接触抵抗が大きくなり、導電性が著しく低下するという問題がある。
【0004】
特許文献2には、硼酸または硼酸塩で覆われたニッケル粉末またはニッケル合金粉末を含有する導電性ペーストが積層セラミックコンデンサーの内部電極形成に有用であると記載されているが、導電性ペーストは接着用ではなく、しかもその組成に言及していない。
特許文献3には、水溶性脂肪酸金属塩を含む水溶液にニッケル粉を投入して得たスリラーを酸性〜中性に中和し、不活性ガス雰囲気中または微還元性ガス雰囲気中で500℃以下で加熱して得た表面処理ニッケル粉を含有する導電性ペーストが積層セラミックコンデンサーの内部電極形成に有用であると記載されているが、導電性ペーストは接着用ではなく、しかもその組成に言及していない。
一方、高温、高湿の雰囲気中でも酸化されない金粒子は著しく高価であるという問題がある。
【0005】
【非特許文献1】IEEE Transaction on Components,Packaging and Manufacturing Technology,Part B,Vol.17,No.1,p.83
【特許文献1】特開平9−157613号公報
【特許文献2】特開平11−302705号公報
【特許文献3】特開2003−129105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、これらの問題点を解消すべく検討を重ねた結果、表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子(以下、併せてニッケル粒子等という)を特定の条件で熱処理してなるニッケル粒子等を含有せしめることにより、硬化物が十分な導電性を有し、高温、高湿の雰囲気中においても導電性が著しく低下することがない導電性接着剤を得ることができることを見出して、本発明を完成するに至った。また、特定の条件で熱処理されたニッケル粒子等の表面を防錆剤で被覆したニッケル粒子等を含有せしめることにより、硬化物が高温、高湿の雰囲気中においても導電性が著しく低下することがない導電性接着剤を得ることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、ニッケル粒子等を含有する導電性接着剤の硬化物を高温、高湿の雰囲気中においても、その導電性が著しく低下することがないように、ニッケル粒子等を処理する方法を提供すること;硬化物が十分な導電性を有し、高温、高湿の雰囲気中においても導電性が著しく低下することない導電性接着剤を提供すること;硬化物が十分な導電性を有し、高温、高湿の雰囲気中においても導電性が著しく低下することがない導電性接着剤で接合された電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的達成手段は、
「請求項1の、表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子を、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中、または、真空度が76Torr(10133Pa)以下である空気中で、200℃以上の温度で加熱して該有機化合物を除去することを特徴とする、ニッケル粒子またはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項2の、表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の形状がフレーク状であることを特徴とする、請求項1記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項3の、表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子は、平均粒径が0.1μmより大きく30μm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項4の、有機化合物が炭素原子数10以上の脂肪酸またはその誘導体であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項5の、加熱が赤外線放射によることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項6の、放射される赤外線のエネルギー分布における最大ピークの波長が0.8μmから10μmの範囲内にあることを特徴とする請求項5記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項7の、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子を防錆剤で処理することを特徴とする、ニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
請求項8の、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の表面を防錆剤で被覆すること特徴とする、防錆剤で被覆されたニッケル粒子またはニッケル合金粒子の製造方法。
請求項9の、(A1)請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子と、(B)硬化性有機樹脂系接着剤とからなることを特徴とする、導電性接着剤。
請求項10の、導電性接着剤中に成分(A1)が60〜95重量%含まれており、導電性接着剤の硬化物の体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項9記載の導電性接着剤。
請求項11の、硬化性有機樹脂系接着剤が液状エポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項9または請求項10記載の導電性接着剤。
請求項12の、(A2)請求項8に記載の防錆剤で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子と、(B)硬化性有機樹脂系接着剤とからなることを特徴とする、導電性接着剤。
請求項13の、導電性接着剤中に成分(A2)が60〜95重量%含まれており、導電性接着剤の硬化物の体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項12記載の導電性接着剤。
請求項14の、硬化性有機樹脂系接着剤が液状エポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項12記載の導電性接着剤。
請求項15の、請求項9〜請求項14のいずれか1項記載の導電性接着剤を用いて、半導体素子、チップ部品、ディスクリート部品または導電性部材を接合していることを特徴とする、電子機器。」からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のニッケル粒子等の処理方法により得られたニッケル粒子等は、それを含有する導電性接着剤の硬化物を長時間高温、高湿の雰囲気中においても、その導電性が著しく低下することがない。
本発明の導電性接着剤は、十分な導電性を有しており、その硬化物を長時間高温、高湿の雰囲気中においても、その導電性が著しく低下することがない。
本発明の電子機器は、それに使用されている導電性接着剤の硬化物が長時間高温、高湿の雰囲気中においても、その導電性が著しく低下することがないので、信頼性と耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の、ニッケル粒子等の処理方法は、表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子等を、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中、または、真空度が76Torr(10133Pa)以下である空気中で、200℃以上の温度で加熱して該有機化合物を除去することを特徴とする。
【0011】
表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子等の形状は、フレーク状・球状・針状・角状・樹枝状・粒状・不規則形状・涙滴状板状・板状・極薄板状・六角板状・柱状・棒状・多孔状・繊維状・塊状・海綿状・けい角状・丸み状が例示されるが、好ましくはフレーク状である。
【0012】
ニッケル粒子は、工業的には、紅ニッケル鉱(NiAs)、硫砒ニッケル鉱(NiAsS)等のニッケル含有鉱石を先ず焼成して砒素や硫黄を追い出し、次に焼成してできた酸化ニッケルを転炉に入れて還元し、次に還元されたニッケルを電解することにより、またはモンド法により製造されている。特にモンド法はニッケル粒子に一酸化炭素を通して揮発性の化合物であるニッケルカーボニルを造り、次にそれを加熱して分解するという気相法のため、微細なニッケル粒子を得ることができる。
【0013】
かくして得られたニッケル粒子は通常の方法でフレーク状にすることができる。フレーク状は鱗片状とも呼ばれる。ニッケル粒子をセラミック製のボールとともにボールミルのような回転式ドラム装置内に投入し、ボールによりニッケル粒子を殴打することにより容易に鱗片状に加工できる。
【0014】
この際、ニッケル粒子の凝集を低減、防止するため、微量の炭素数が10以上の高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステルまたは高級脂肪酸アミド等を添加することが多い。このような高級脂肪酸として、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が例示される。高級脂肪酸の金属塩の金属としてナトリウム、カリウムが例示される。高級脂肪酸エステルとして前記高級脂肪酸のメチルエステル、エチルエステルが例示される。高級脂肪酸アミドとして前記高級脂肪酸のアミド、低級アルキルアミドが例示される。このような高級脂肪酸等によりフレーク状ニッケル粒子の表面の大半もしくは全部が被覆されており、特にニッケル粒子表面の全部が被覆されたフレーク状ニッケル粒子は通常撥水性を示す。ニッケル合金粒子も同様の方法で処理される。
【0015】
市販のニッケル粒子、特にフレーク状ニッケル粒子は、通常前記処理がされており、このような高級脂肪酸等によりニッケル粒子の表面が被覆されている。フレーク状以外の市販のニッケル粒子も表面に有機化合物(例えば、中間体残渣、凝集防止剤)が付着していることが多い。
【0016】
表面が高級脂肪酸等の有機化合物で被覆されたニッケル粒子等の平均粒径は、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。しかし、いわゆるナノサイズとなる0.1μm以下の場合、表面活性が強すぎて、これを含有する導電性接着剤の保存安定性が低下する恐れがある。そのため平均粒径は好ましくは0.1μmより大きく、より好ましくは1.0μm以上である。なお、当該ニッケル粒子等の平均粒径は、レーザー回折または電子顕微鏡写真の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径である。
【0017】
本発明の処理方法では、前記ニッケル粒子等を、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中で200℃以上の温度で加熱して、表面に付着していた該有機化合物を分解し除去する。
そのための不活性ガスとして、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが例示されるが、経済性と入手の容易さの点で、窒素ガスが好ましい。
【0018】
なお、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中で、200℃以上の温度で加熱して該有機化合物を除去してなるニッケル粒子またはニッケル合金粒子を導電性接着剤の充填剤として使用する場合は、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気は、酸素ガス濃度が0%を含むものではない。酸素ガスが皆無になると有機化合物の除去作用が低下するからである。こうした観点から、酸素ガス濃度が0.000001容量%以上であることが好ましい。
【0019】
酸素ガス濃度は2容量%以下であることが必要である。加熱する雰囲気の酸素ガス濃度が2容量%を越えると、ニッケル粒子等の表面が酸化されるため、これを含有する導電性接着剤の導電性が低下するからである。前記観点から、酸素ガス濃度は0.000001容量%以上であることが好ましい。
【0020】
酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気は、酸素ガスを含有する不活性ガスを酸素ガス濃度の低い不活性ガスと混合することにより容易に調製することができる。
酸素ガスを含有する不活性ガスとして、窒素ガスと酸素ガスの混合物、ヘリウムガスと酸素ガスの混合物、アルゴンガスと酸素ガスの混合物、窒素ガスとヘリウムガスと酸素ガスの混合物、窒素ガスとアルゴンガスと酸素ガスの混合物が例示される。
【0021】
また、本発明の処理方法では、前記ニッケル粒子等を真空度が76Torr(10133Pa)以下の空気中で加熱して該有機化合物を分解し除去することを特徴とする。
真空度が76Torr(10133Pa)を越えると、ニッケル粒子等の表面が酸化されやすくなるため、導電性接着剤の導電性が低下する。
【0022】
本発明の処理方法では、該有機化合物を除去するための加熱温度は200℃以上である。200℃未満であると該有機化合物を十分に分解しにくいからである。加熱するための装置としてはオーブン、ロータリーキルン、流通炉、ガス炉が例示される。また、加熱源としてはニクロム線、紫外線ランプ、可視光線ランプ、赤外線ランプ、加熱ガスが例示されるが、特に加熱速度の速い赤外線ランプであることが好ましい。赤外線の種類としては近赤外線、中赤外線、遠赤外線が例示されるが、放射される赤外線のエネルギー分布における最大ピークの波長が0.8〜10μmであることが好ましく、特には1〜5μmであることが好ましい。赤外線を放射する加熱源を単独で用いてもよく、またニクロム線など、その他の加熱源と併用しても良い。
【0023】
200℃以上の温度で加熱した後のニッケル粒子等表面の残存有機化合物の量は0.01重量%以下であることが好ましい。残存有機化合物の量は熱重量分析(TGA)により定量することができる。
【0024】
本発明のニッケル粒子等の処理方法では、前記処理方法により、導電性粒子であるニッケル粒子等の表面の有機化合物を除去した後、更に防錆剤で表面を処理することが好ましい。処理に使用する防錆剤は、水、揮発性有機溶剤、揮発性有機溶剤と水の混合物などに溶解しやすいか、加熱溶融性であることが好ましい。
かかる防錆剤として、有機リン酸エステル、有機スルホン酸塩;トリアゾール化合物(例えば、ベンゾトリアゾール、1−H−ベンゾトリアゾール、1,2,3ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール)、テトラゾール化合物(例えば、5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール)、イミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニル−イミダゾール)、グアニジン化合物などの含窒素有機化合物;チウラム化合物、チオウレア化合物、ジチオカルバミン酸塩などの有機イオウ化合物;ジチオリン酸亜鉛;フィチン酸が例示されるが、取扱いの容易性と効果の点でトリアゾール化合物が好ましく、特にベンゾトリアゾールが好ましい。
【0025】
防錆剤によりニッケル粒子等の表面処理する方法は、処理後に防錆剤がニッケル粒子等表面に残存すれば、特に限定されない。防錆剤で被覆されたニッケル粒子等を製造する方法は、防錆剤がニッケル粒子等の全表面もしくは大半の表面を被覆しておれば、特に限定されない。
例えば、防錆剤(例えば、ベンゾトリアゾール)を可溶性溶媒(例えば、水または低級アルコール)に溶解しておき、この溶液に、前記加熱処理方法により該有機化合物を除去したニッケル粒子等を浸漬した後、取り出し、乾燥するという方法がある。この際、水、低級アルコール(例えば、2−プロパノール)などにより、過剰な防錆剤(例えば、ベンゾトリアゾール)を洗浄して除去しても良い。
また、前記加熱処理方法により有機化合物を除去したニッケル粒子等に、防錆剤(例えば、ベンゾトリアゾール)の溶液を、噴霧しつつ攪拌し、温風吹き付け、加熱下減圧などにより溶媒を除去するという方法がある。
【0026】
ニッケル粒子等の表面に付着している防錆剤の量は、粒子表面を薄く被覆するに十分な量であればよく、特には限定されない。例えば、ニッケル粒子等の0.01〜2.0重量%である。
防錆剤は、ニッケル粒子等の全表面を被覆していることが好ましいが、必ずしも全面を被覆している必要はない。
【0027】
本発明の導電性接着剤は、(A1)請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子と、(B)硬化性有機樹脂系接着剤とからなることを特徴とする。また、(A2)請求項8に記載の表面が防錆剤で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子と、(B)硬化性有機樹脂系接着剤とからなることを特徴とする。
【0028】
ここで、請求項1に記載の処理方法は、表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子等を、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中、または、真空度が76Torr(10133Pa)以下である空気中で、200℃以上の温度で加熱して該有機化合物を除去するという方法である。
請求項2に記載の処理方法は、上記処理方法において、ニッケル粒子等がフレーク状に特定されている。
請求項3に記載の処理方法は、上記処理方法において、ニッケル粒子等の平均粒径が0.1μmより大きく30μm以下に特定されている。
請求項4に記載の処理方法は、上記処理方法において、有機化合物が炭素原子数10以上の脂肪酸またはその誘導体に特定されている。
請求項5に記載の処理方法は、上記処理方法において、加熱が赤外線放射に特定されている。
請求項6に記載の処理方法は、請求項5に記載の処理方法において、放射される赤外線のエネルギー分布における最大ピークの波長が0.8μmから10μmの範囲内にあるとされている。
請求項7に記載の処理方法は、上記処理方法で処理したニッケル粒子等を防錆剤でさらに処理するという方法である。
請求項8に記載の表面が防錆剤で被覆されたニッケル粒子等の製造方法は、上記加熱処理方法で処理したニッケル粒子等を防錆剤で被覆するという方法である。防錆剤および防錆剤による処理・被覆は、段落[0024]〜[0026]に記載したとおりであり、処理効果の点で、トリアゾール化合物、とりわけベンゾトリアゾールが好ましい。
【0029】
本発明の導電性接着剤は、常温において液状、ペースト状、クリーム状などの流動容易な性状を呈することが好ましい。また、硬化物の体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であることが好ましい。成分(A1)または成分(A2)と、成分(B)の含有量は、成分(A1)または成分(A2)が全体の60〜95重量%であり、成分(B)が全体の40〜5重量%であることが好ましい。
【0030】
成分(B)である硬化性有機樹脂接着剤は、成分(A1)または成分(A2)のバインダーとなり、加熱、常温放置、高エネルギー線(例えば、電子線)照射などにより速やかに硬化し、硬化途上で接触していた基材によく接着すれば、有機樹脂の種類、硬化機構、組成、添加剤(例えば、接着促進剤、顔料)等は、特に限定されない。
好ましい硬化性有機樹脂接着剤として、硬化性エポキシ樹脂系接着剤、硬化性フェノール樹脂系接着剤、硬化性ポリウレタン樹脂系接着剤、硬化性シリコン樹脂系接着剤、硬化性ポリイミド樹脂系接着剤が例示される。硬化機構は、熱硬化性、常温硬化性、高エネルギー線硬化性などのいずれでよいが、硬化容易性と接着性の点で、熱硬化性エポキシ樹脂系接着剤が好ましく、熱硬化性の液状エポキシ樹脂系接着剤がより好ましい。
【0031】
熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、通常、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の主剤と、アミン、イミダゾール、酸無水物等の硬化剤とからなり、必要によりさらに硬化促進剤からなる。これら成分を混合して、50℃〜200℃の温度に加熱すると硬化し、硬化途上で接触していた基材によく接着する。
【0032】
熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、反応性稀釈剤を含有していることが好ましい。反応性稀釈剤の代表例として1官能性グリシジルエステルと1官能性グリシジルエーテルがある。1官能性グリシジルエステルと1官能性グリシジルエーテルのような反応性稀釈剤を含有すると、導電性液状エポキシ樹脂系接着剤は、耐湿性を大きく損なうことなく低粘度、低硬度にすることができる。低粘度にできれば導電性粒子の含有量を増加して導電性を高くすることができ、また低硬度にできれば可撓性を付与できるという利点がある。
【0033】
1官能性グリシジルエステルとしてはアルカン酸グリシジルエステルが例示され、1官能性グリシジルエーテルとしてはアルキルアルコールモノグリシジルエーテルが例示される。
1官能性グリシジルエステルと1官能性グリシジルエーテルの含有量は、熱硬化性エポキシ樹脂接着剤中に各々1〜20重量%であることが好ましく、また1官能性グリシジルエステルと1官能性グリシジルエーテルの重量比率は9:1〜1:9であることが好ましい。
【0034】
本発明の導電性接着剤は、成分(A1)または成分(A2)と、成分(B)とを均一に混合することにより、容易に製造することができる。また、成分(B)中の硬化剤(硬化触媒ともいう)以外の成分(すなわち、硬化性有機樹脂)と成分(A1)または成分(A2)とを均一に混合し、ついで硬化剤を添加して均一に混合することにより、容易に製造することができる。成分(B)中の硬化剤以外の成分(すなわち、硬化性有機樹脂)と成分(A1)または成分(A2)との均一混合物と、硬化剤とを、別の容器に保存しておき、接着作業直前に両成分を混合するという二成分型もしくは二包装型導電性接着剤を製造してもよい。また、本発明の導電性接着剤は、非反応性・揮発性の有機溶媒で希釈して粘度を低減してもよい。
【0035】
本発明の導電性接着剤は、製造後使用するまでの間、密閉容器に保存することが好ましい。長期間保存後に接着作業に供するときは、保存容器をよく振とうしてから、あるいは保存容器内をよく攪拌してから、接着作業に供することが好ましい。保存安定性を向上する目的で、冷蔵保管をしても良く、保管温度として10℃以下が例示される。
【0036】
本発明の導電性接着剤は、スクリーン印刷、ディスペンス、滴下、注入、塗布など任意の方法で接着を必要とする箇所に適用すればよい。非反応性・揮発性の有機溶媒で希釈している場合は、接着を必要とする箇所に適用後、常温放置、温風吹付け、または穏やかな加熱によって該有機溶媒を揮散させてから、加熱硬化させることが好ましい。二成分型もしくは二包装型接着剤の場合は、主剤と硬化剤を均一に混合してから接着作業に供するとよい。
【0037】
本発明の導電性接着剤を、接着を必要とする箇所に適用してから、例えば50〜200℃に加熱して硬化させることにより、半導体素子、チップ部品、ディスクリート部品、導電性部材などを、基板、他の部品、他の部材などに接着、接合することができる。かくして種々の電子機器(例えば、携帯電話器、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーションシステム、パーソナルコンピューター、電子式複写機、プリンター、ゲーム機、テレビジョンなどの家庭用ないしオフィス用電子機器;エンジンコントロールユニット、ブレーキシステム、車間センサー、加速度センサー、カーナビゲーションシステムなどの自動車用電子機器、マシニングセンター、ロボットシステムなどの産業用制御機器、通信用電子機器、それらの部品など)を製造することができる。
【実施例】
【0038】
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、配合量を表す部とあるのは重量部を意味する。付着量を表す%とあるのは重量%を意味する。ガス濃度を表す%とppmは、それぞれ容量%と容量ppmを意味する。導電性粒子への有機化合物の付着量、導電性接着剤の粘度、導電性接着剤の硬化物の体積抵抗率と耐湿性、導電性接着剤の硬さ、および、固着強度は、下記の方法、条件により測定した。
【0039】
[フレーク状ニッケル粒子への有機化合物の付着量]
島津製作所製の熱重量測定装置DTG−60AHを用いて測定した。フレーク状ニッケル粒子約20mgをアルミニウムパンに入れ、酸素ガス濃度が100ppm未満の窒素ガス中(窒素ガスは開放状態である)で、昇温速度10℃/分で室温から500℃まで昇温した。昇温によるフレーク状のニッケル粒子の重量減少(昇温前の重量と昇温後の重量の差)をもって有機化合物の付着量とした。
【0040】
[粘度]
東機産業株式会社製の回転式粘度計TV−20にロータ(No.6)を装着してロータの回転数4rpm、温度25℃で、導電性接着剤の粘度を測定した。
【0041】
[体積抵抗率と耐湿性]
幅10mm、長さ50mm、厚さ100μmの開口部を有するメタルマスクを用いて、導電性接着剤を、電気絶縁性のFR−4ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板上に印刷塗布した。導電性接着剤を印刷塗布したエポキシ樹脂基板を100℃の強制循環式オーブン内に入れ、1時間加熱することにより、塗布した導電性接着剤を硬化させた。この硬化物について、50mm長の測定端間における電気抵抗を測定し、体積抵抗率(単位;Ω・cm)を算出した。この体積抵抗率を初期体積抵抗率と称する。
次に、硬化した導電性接着剤層を有するFR−4ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板を、温度85℃、相対湿度が85%の恒温恒湿オーブン中で100時間放置した後、取りだして、同様に電気抵抗を測定して体積抵抗率を算出した。この体積抵抗率を高温高湿処理後の体積抵抗率と称する。上記電気抵抗の測定は23℃でおこなった。
【0042】
[硬さ]
幅40mm、長さ60mm、厚さ6mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂製の型枠に、導電性接着剤を流し込み、型枠の両面をポリテトラフルオロエチレン樹脂製の板で挟んだ状態で、プレス機の上板と下板間に挟み、10MPaの圧力をかけつつ100℃で1時間加熱して導電性接着剤を硬化させた。かくして得られた板状の硬化物について、JIS K 7215に規定されているD型硬度計で硬さを測定した。硬さの測定は23℃でおこなった。
【0043】
[固着強度]
幅100mm×長さ40mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂基板1上に1mmの間隔をおいて2つ設けられた幅0.8mm×長さ1.2mmのランド(パッド)部4(銀メッキ仕上げ)に、150μm厚のメタルマスクを用いて導電性接着剤を塗布した(塗布面積:0.6mm×1.0mm)。チップマウンタにより、2012チップコンデンサの端子電極3を該ランド(パッド)部4(銀メッキ仕上げ)に搭載後、強制循環式オーブン内で100℃で1時間加熱してランド(パッド)部4と2012チップコンデンサの端子電極3(両端部銀メッキ仕上げ)を接着した。かくして得られた固着強度測定用試験体であるチップコンデンサ2の側面を、固着強度試験機により押圧速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって固着強度(単位;kgf(N))とした。固着強度の測定は23℃でおこなった。
【0044】
[参考例1]
反応性稀釈剤を含有しない液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物の調製
ミキサー中で、東都化成株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:ZX1059、粘度:3Pa・s、エポキシ当量:160g)60部、硬化剤としてのポリオキシプロピレンジアミン(粘度0.2Pa・s、活性水素当量100g)35部、および、硬化促進剤としての2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(粘度0.3Pa・s)5部を均一に混合することにより、液状熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
【0045】
[参考例2]
反応性稀釈剤を含有する液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物の調製
ミキサー中で、東都化成株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:ZX1059、粘度3Pa・s、エポキシ当量160g)50部、炭素原子数が平均10個であるアルカン酸のグリシジルエステル(粘度0.1Pa・s、エポキシ当量250g)6部、炭素原子数が平均13個であるアルキルアルコールのモノグリシジルエーテル(粘度0.2Pa・s、エポキシ当量280g)6部、硬化剤としてのポリオキシプロピレンジアミン(粘度0.2Pa・s、活性水素当量100g)33部、硬化促進剤としての2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(粘度0.3Pa・s)5部を均一に混合することにより、液状熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
【0046】
[実施例1]
市販品である表面がステアリン酸で被覆され平均粒径が7μmのフレーク状ニッケル粒子(ステアリン酸付着量0.3%)を、酸素ガス濃度が0.01%である窒素ガス雰囲気中(窒素ガスは開放状態である)で、ニクロム線を加熱源として400℃で2時間加熱することにより、ステアリン酸を分解し除去した。この加熱処理後のフレーク状ニッケル粒子表面のステアリン酸付着量は0.01%未満であった。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、加熱源のニクロム線の代わりに、赤外線ランプ(放射される赤外線のエネルギー分布における最大ピークの波長が1.1μm)を使用した以外は同様にしてステアリン酸を分解し除去した。この加熱後のフレーク状ニッケル粒子表面のステアリン酸付着量は0.01%未満であった。
【0048】
[実施例3]
ベンゾトリアゾールで被覆されたフレーク状ニッケル粒子の調製
ミキサー中で、2−プロパノール(和光純薬工業株式会社製の試薬1級)10部とベンゾトリアゾール粉末(和光純薬工業株式会社製の試薬1級)1部の混合物(ベンゾトリアゾールの2−プロパノール溶液)30部と、実施例1による加熱処理後のフレーク状ニッケル粒子100部とを、70℃で1時間混合した後、濾過してフレーク状ニッケル粒子を取り出した。フレーク状ニッケルに付着しないで遊離したベンゾトリアゾールを除去するため、取り出したフレーク状ニッケル粒子と2−プロパノール100部を容器に加えて攪拌し、静置してフレーク状ニッケル粒子を沈降させ、上澄み液を除去してフレーク状ニッケル粒子を取り出した。同様の操作を2回繰り返した後、50℃で5Torr(667Pa)の真空オーブン中で20時間乾燥することにより、表面がベンゾトリアゾールで被覆されたフレーク状ニッケル粒子を調製した。該フレーク状ニッケル粒子表面のベンゾトリアゾール付着量は、0.1%であった。
【0049】
[実施例4]
ミキサー中で、参考例1の液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物25部と実施例1による加熱処理後の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合することにより、液状熱硬化性導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、その硬化物の初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0050】
[実施例5]
ミキサー中で、参考例1の液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、実施例3で調製した、表面がベンゾトリアゾールで被覆された導電性フレーク状ニッケル粒子75部とを均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、その硬化物の初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0051】
[実施例6]
ミキサー中で、参考例2の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、実施例1による加熱処理後の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性接着剤の粘度、その硬化物の初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0052】
[実施例7]
ミキサー中で、参考例2の液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、実施例3による表面がベンゾトリアゾールで被覆された導電性フレーク状ニッケル粒子75部とを均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この液状導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0053】
[実施例8]
市販品である表面がステアリン酸で被覆された平均粒径が7μmのフレーク状ニッケル粒子(ステアリン酸付着量0.3%)を、真空オーブン内の真空度が15Torr(2000Pa)である空気中で、400℃で2時間加熱してステアリン酸を分解し除去した。この加熱処理した導電性フレーク状ニッケル粒子の有機化合物の付着量は0.01%未満であった。
参考例1の液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、上記の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合して液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この液状導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0054】
[実施例9]
実施例3において、実施例1による加熱処理後のフレーク状ニッケル粒子の代わりに、実施例8による加熱処理後の導電性フレーク状ニッケル粒子(有機化合物の付着量0.01%未満)を使用した以外は同一条件で、表面がベンゾトリアゾールで被覆された導電性フレーク状ニッケル粒子を調製した。
参考例1による液状熱硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、上記の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合して液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この液状導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0055】
[実施例10]
ミキサー中で、参考例2の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、実施例2による加熱処理後の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この液状導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0056】
[実施例11]
実施例3において、実施例1による加熱処理後のフレーク状ニッケル粒子の代わりに、実施例2による加熱処理後の導電性フレーク状ニッケル粒子(有機化合物の付着量0.01%未満)を使用した以外は同一条件で、表面がベンゾトリアゾールで被覆された導電性フレーク状ニッケル粒子を調製した。
ミキサー中で、参考例2の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、上記の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この液状導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0057】
[比較例1]
ミキサー中で、参考例1の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、実施例1で使用した、表面がステアリン酸で被覆された平均粒径が7μmのフレーク状ニッケル粒子75部とを、均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、その硬化物の初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表1にまとめて示した。
【0058】
[比較例2]
実施例1において、酸素ガス濃度が0.01%である窒素ガス雰囲気の代わりに、酸素ガス濃度が5%である窒素ガス雰囲気(窒素ガスは開放状態である)を使用した他は、同一条件で加熱してステアリン酸を分解し除去した導電性フレーク状ニッケル粒子とした。この導電性フレーク状ニッケル粒子の有機化合物の付着量は0.01%未満であった。
ミキサー中で、参考例1の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、上記導電性フレーク状ニッケル粒子75部とを、均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、その硬化物の初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表2にまとめて示した。
【0059】
[比較例3]
実施例8において、真空度が15Torr(2000Pa)である空気中の代わりに、真空度が250Torr(33331Pa)である空気中で加熱した他は、同一条件で加熱してステアリン酸を分解し除去した導電性フレーク状ニッケル粒子とした。この導電性フレーク状ニッケル粒子の有機化合物の付着量は0.01%未満であった。
参考例1の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、上記の導電性フレーク状ニッケル粒子75部を均一に混合して液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性接着剤の粘度、初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表2にまとめて示した。
【0060】
[比較例4]
実施例3において、実施例1による加熱処理後のフレーク状ニッケル粒子の代わりに、表面がステアリン酸で被覆された平均粒径が7μmのフレーク状ニッケル粒子をそのまま使用した以外は同一条件で、表面がベンゾトリアゾールで被覆された導電性フレーク状ニッケル粒子を調製した。
ミキサー中で、参考例1の硬化性エポキシ樹脂組成物25部と、上記の表面がベンゾトリアゾールで被覆された導電性フレーク状ニッケル粒子75部とを均一に混合することにより、液状導電性エポキシ樹脂接着剤を調製した。
この導電性エポキシ樹脂接着剤の粘度、その硬化物の初期体積抵抗率と高温高湿処理後の体積抵抗率、硬さ、および、固着強度を測定して、表2にまとめて示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のニッケル粒子等の処理方法は、硬化物が高温、高湿の雰囲気中でも導電性が著しく低下することがない導電性接着剤用のニッケル粒子等の製造に有用である。
本発明の防錆剤で被覆されたニッケル粒子等の製造方法は、硬化物が高温、高湿の雰囲気中でも導電性が著しく低下することがない導電性接着剤用のニッケル粒子等の製造に有用である。
本発明の導電性接着剤は、半導体素子、チップ部品、ディスクリート部品、導電性部材等の接着・接合に有用である。本発明の導電性接着剤により部品等を接合した電子機器は、各種産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例における固着強度測定用試験体Aの平面図である。チップコンデンサ端子電極3と基板ランド(パット)部4が接合されることにより、チップコンデンサ2がガラス繊維強化エポキシ樹脂基板1に搭載されている固着強度測定用試験体Aを固定し、チップコンデンサ2の側面を矢印の方向に押圧して、チップコンデンサ2とガラス繊維強化エポキシ樹脂基板1との接合部分の固着強度を測定するものである。
【図2】図1におけるY−Y′線断面図である。
【符号の説明】
【0065】
A 固着強度測定用試験体
1 ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板
2 チップコンデンサ
3 チップコンデンサの端子電極
4 基板ランド(パット)部
5 硬化した導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子を、酸素ガス濃度が2容量%以下の不活性ガス雰囲気中または真空度が76Torr(10133Pa)以下である空気中で、200℃以上の温度で加熱して該有機化合物を除去することを特徴とする、ニッケル粒子またはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項2】
表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の形状がフレーク状であることを特徴とする、請求項1記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項3】
表面が有機化合物で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子は、平均粒径が0.1μmより大きく30μm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項4】
有機化合物が炭素原子数10以上の脂肪酸またはその誘導体であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項5】
加熱が赤外線放射によることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項6】
放射される赤外線のエネルギー分布における最大ピークの波長が0.8μmから10μmの範囲内にあることを特徴とする請求項5記載のニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子を防錆剤で処理することを特徴とする、ニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の処理方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子の表面を防錆剤で被覆すること特徴とする、防錆剤で被覆されたニッケル粒子またはニッケル合金粒子の製造方法。
【請求項9】
(A1)請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の処理方法で処理されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子と、(B)硬化性有機樹脂系接着剤とからなることを特徴とする、導電性接着剤。
【請求項10】
導電性接着剤中に成分(A1)が60〜95重量%含まれており、導電性接着剤の硬化物の体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項9記載の導電性接着剤。
【請求項11】
硬化性有機樹脂系接着剤が液状エポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項9または請求項10記載の導電性接着剤。
【請求項12】
(A2)請求項8に記載の防錆剤で被覆されたニッケル粒子もしくはニッケル合金粒子と、(B)硬化性有機樹脂系接着剤とからなることを特徴とする、導電性接着剤。
【請求項13】
導電性接着剤中に成分(A2)が60〜95重量%含まれており、導電性接着剤の硬化物の体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項12記載の導電性接着剤。
【請求項14】
硬化性有機樹脂系接着剤が液状エポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする、請求項12記載の導電性接着剤。
【請求項15】
請求項9〜請求項14のいずれか1項に記載の導電性接着剤を用いて、半導体素子、チップ部品、ディスクリート部品または導電性部材を接合していることを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−97070(P2009−97070A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292565(P2007−292565)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000111199)ニホンハンダ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】