説明

ヌクレオシド誘導体、ヌクレオチド誘導体及びそれらの製造方法

【課題】立体構造が制御されたヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体の提供。
【解決手段】
不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記各一般式に示されるヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体。


(式中、B、B1及びB2は水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeであり;R1及びR2は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される;QはOH基の保護基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体配置を高い選択性をもって制御したヌクレオシド誘導体及びその製造方法、並びにヌクレオチド誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス性疾患遺伝子、ガン遺伝子などのように発現を抑制したい遺伝子に対して、その遺伝子の翻訳を阻害し、蛋白質の生成を抑えるDNA人工修飾体、すなわちアンチセンスDNAが近年医薬品として広く注目されている。
【0003】
そのような分子の一つに20量体程度のDNAオリゴマーのリン酸ジエステル(ホスフェート)部位をすべてチオリン酸ジエステル(ホスホロチオエート)に置き換えたオリゴデオキシリボヌクレオチドホスホロチオエート(all-PS-DNAオリゴマー)があり、その高い薬理効果が近年大きな注目を集めている。
【0004】
しかしながら、all-PS-DNAオリゴマーはヌクレアーゼ耐性、細胞膜透過性などの点で優れているものの、DNAやRNAへの二重鎖結合能において通常のオリゴデオキシリボヌクレオチドに比べて劣る、血清や細胞内タンパク質との相互作用が強く毒性がある、などの欠点をもつ。
【0005】
そのため、この欠点を軽減させる目的でインターヌクレオチド部の一部のみをホスホロチオエートに置換したホスフェート/ホスホロチオエート混合型オリゴマー(PO/PS-混成DNAオリゴマー)が最近創製され、注目を浴びている。
【0006】
ところで、これらのインターヌクレオチド部修飾体のホスホロチオエート部のリン原子は不斉原子になるため、化合物の生物学的性質(生理活性)の相違をもたらす可能性がある。そのためジアステレオマー混合物を用いると予期せぬ副作用を生じる恐れがあり、臨床的にはホスホロチオエート部の立体化学が単一なものを使用することが重要となる。
【0007】
立体化学が制御されたPO/PS-混成DNAオリゴマーを合成する方法は、1998年にStecらによって立体化学的に単一な化合物をチオエート部位の構成単位に基質を用いることで開発されている(非特許文献1:下記反応式参照)。
【0008】
【化1】

【0009】
しかしながらこの方法では、通常の合成によって別のジアステレオマーとの混合物として得られるために精製等の煩雑な操作を必要とし、また長鎖オリゴマーの収率も低い。更に立体化学の異なる二種類(R体、S体)のホスホロチオエート体を合成するのに、それぞれに対応する前駆体(合成中間体)を二種類調製しなくてはいけないため完璧な方法とは言い難い。
【非特許文献1】Deoxyribonucleoside 3'-O-(2-Thio- and 2-Oxo-"spiro"-4,4- pentamethylene-1,3,2-oxathiaphospholane)s: Monomers for Stereocontrolled Synthesis of Oligo(deoxyribonucleoside phosphorothioate)s and Chimeric PS/PO Oligonucleotides Stec, W. J.; Karwowski, B.; Boczkowska, M.; Guga, P.; Koziolkiewicz, M.; Sochacki, M.; Wicczorek, M. W.; Blaszczyk, J. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 7156-7167.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、立体構造が制御されたPO/PS-混成DNAオリゴマーを得ることを目的として、PO/PS-混成DNAオリゴマーの構成要素、前駆体になりうる化合物であるヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体、並びにそれらの製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意研究を行った結果以下の知見を得た。すなわち、PO/PS-混成DNAオリゴマーの構成単位となる立体化学的に単一なチオリン酸トリエステルを立体選択的に合成し、一つの中間体から異なる処理をすることでチオエート部に絶対配置の異なる二つのジアステレオマーが得られることを見いだした。更に数段階を経て、より効率的な立体化学が制御されたPO/PS-混成DNAオリゴマーの創成にも成功した。
【0012】
(1)ヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体の製造方法
(1−1)本発明のヌクレオシド誘導体の製造方法は、下記一般式(1)に示すデオキシリボヌクレオシド誘導体と、一般式(2):R1OPXY(R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基である。;X、Yは、Cl、Br、ジアルキル置換アミンである−NRR’(R、R’は一部水素が置換されていても良い炭化水素基からそれぞれ独立して選択される。R及びR’は一緒になって環を形成しても良い。)からそれぞれ独立して選択される。)に示すホスフィン誘導体とを、アゾール、酸アゾール複合体及びカルボン酸から選択される酸化合物の存在下で反応させて、下記一般式(3a)及び/又は(3b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を生成する第1工程と、
前記ヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体に、S化剤又はSe化剤を反応させて下記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を得る第2工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
【化2】

【0014】
(式(1)、(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;R1は一般式(2)のR1と同じ基である;ZはO、S又はSeである。)
一般式(1)に示すデオキシリボヌクレオシド誘導体に、一般式(2)に示すホスフィン誘導体を、アゾール、酸アゾール複合体及びカルボン酸から選択される酸化合物の存在下で反応させることで、概ね一般式(3a)又は(3b)に示すヌクレオシド誘導体が等量合成される。
【0015】
その後、S化剤又はSe化剤を反応させることで、一般式(3a)に示す化合物からは一般式(4a)に示すヌクレオシド誘導体が、一般式(3b)に示す化合物からは一般式(4b)に示すヌクレオシド誘導体が、それぞれ合成される。ここで、一般式(3a)及び(3b)に示すヌクレオシド誘導体の混合物の状態で、必要に応じて高温に保持することで、一般式(3b)に示すヌクレオシド誘導体は、一般式(3a)に示すヌクレオシド誘導体に異性化することができるので、一般式(4a)に示すヌクレオシド誘導体を主生成物とすることができる。従って、得られる化合物の立体構造を制御することができる。
【0016】
そして、前記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を出発物質として、R2OH溶液中(R2は一部水素が置換されていても良い炭化水素基であって、前記R1とは異なる基である。)でR2OHのアルコラートを反応させることで、下記一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体を得ることができる。一般式(4a)に示す化合物からは一般式(5a)に示すヌクレオシド誘導体が、一般式(4b)に示す化合物からは一般式(5b)に示すヌクレオシド誘導体が、得られる。この反応は立体選択性が非常に高く、目的の立体構造をもつ化合物を合成することができる。
【0017】
【化3】

【0018】
(式(5a)及び(5b)中、Bは前記一般式(1)にて説明したBと同じ基であり;R1は前記一般式(2)にて説明したR1と同じ基である。;R2は一部水素が置換されていても良い炭化水素基であって、前記R1とは異なる基である。;式(5a)中のZは前記一般式(4a)のZと同じ基であり;式(5b)中のZは前記一般式(4b)のZと同じ基である。)
なお、ここで説明したB、R1、X、Yなどの説明は後述する他の説明についても特に断りがない限り妥当する。つまり、各一般式における記号は本明細書において特に説明がない限り一貫性をもって使用している。
【0019】
(1−2)他の本発明のヌクレオシド誘導体の製造方法は、不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(5)に示すヌクレオシド誘導体に、脱R1剤又は脱R2剤を反応させて不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(6)又は(7)に示すヌクレオシド誘導体を得ることを特徴とする。
【0020】
つまり、R1及びR2のいずれの基を脱離するかによって、不斉リン原子に由来する立体配置が変化するという発見により本発明を完成したものである。R1を脱離した場合は、R2を脱離した場合と比較して、R1及びR2が等価だとした場合の不斉リン原子に由来する立体配置が反対になる。従って、不斉リン原子に由来する立体配置を任意に制御することができる。
【0021】
【化4】

【0022】
(式(5)〜(7)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはO、S又はSeであり;R1及びR2は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される;QはOH基の保護基である。)
一般式(5)に示す化合物は、OH基に保護基を導入したこと以外、前述の一般式(5a)又は(5b)に相当する化合物である。目的とする一般式(6)又は(7)の化合物の立体構造に応じて一般式(5a)又は(5b)に相当する化合物から選択する。
【0023】
前記一般式(5)〜(6)におけるR1及びR2は、メチル基、アリル基(−CH2CH=CH2)及びシアノエチル基から選択されることが望ましい。その場合に、脱メチル剤としてはモノアルキルアミン、脱アリル剤としては0価パラジウム又はNaI、脱シアノエチル剤としてはトリアルキルアミン、アンモニア又はジアザビシクロウンデセン、から選択されることができる。
【0024】
(1−3)本発明のヌクレオチド誘導体の製造方法は、不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(8)に示すヌクレオシド誘導体に、下記一般式(9)に示すヌクレオシド誘導体を反応させ、下記一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体を合成する工程を有することを特徴とする。
【0025】
【化5】

【0026】
(式(8)、(9)及び(10)中、B1及びB2は核酸塩基又はその誘導体から独立して選択され;ZはO、S又はSeである;R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される。QはOH基の保護基であり独立して選択できる。)一般式(8)に示す化合物としては、前述の一般式(6)又は(7)に示す化合物を採用することで、立体配置を制御できる。
【0027】
一般式(8)に示す化合物に一般式(9)に示す化合物を反応させる方法としてはいわゆる光延反応などの公知の方法が採用できる。
【0028】
(1−4)本発明のヌクレオチド誘導体の製造方法は、
(a)(a−1)上述の(1−1)に記載の製造方法により、前記一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体を製造する工程と、
(a−2)前記一般式(5)に示すヌクレオシド誘導体として該一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体を用いて、上述の(1−2)に記載の製造方法により、前記一般式(6)及び/又は(7)に示すヌクレオシド誘導体を製造する工程と、
(a−3)前記一般式(8)に示すヌクレオシド誘導体として該該一般式(6)及び/又は(7)に示すヌクレオシド誘導体を用いて、上述の(1−3)に記載の製造方法により、前記一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体を製造する工程と、
を繰り返して立体配置を制御したヌクレオチド誘導体を合成する工程と、
(b)(b−1) 該ヌクレオチド誘導体合成工程で合成された該一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体に対し、ホスホロアミダイト誘導体を反応させて、該一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体及び該ホスホロアミダイト誘導体の間を縮合させてアミダイト化ヌクレオチド誘導体を生成する工程と、
(b−2)ヌクレオシド、ヌクレオシド誘導体(一般式(1)、(2)、(3a)、(3b)、(4a)、(4b)、(5)、(5a)、(5b)、(6)、(7)、(8)及び(9)のいずれかの化合物)又は該ヌクレオチド誘導体合成工程にて合成されたヌクレオチド誘導体を、前記アミダイト化ヌクレオチド誘導体に反応させるヌクレオチド誘導体付加工程と、
を繰り返して必要な長さのヌクレオチド誘導体を得るヌクレオチド誘導体伸長工程と、
を有することを特徴とする。
【0029】
つまり、立体配置が制御された一般式(10)に示す化合物を出発物質として、本発明者らが以前より提案しているいわゆるアミダイト法を適用することにより、必要な長さ・立体構造をもつヌクレオチド誘導体を伸長するができる。
【0030】
(2)ヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体
本発明者らは上述のヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体の製造方法を開発するに当たり、有用な新規化合物を多数得ることができた。
【0031】
(2−1)本発明のヌクレオシド誘導体は、下記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体である。
【0032】
【化6】

【0033】
(式(4a)及び(4b)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeである。)
(2−2)本発明のヌクレオシド誘導体は下記一般式(5a)及び/又は(5b)に示す化合物である。
【0034】
【化7】

【0035】
(式(5a)及び(5b)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeであり;R1及びR2は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される。)
(2−3)本発明のヌクレオシド誘導体は不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(11)に示す化合物である。
【0036】
【化8】

【0037】
(式(11)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeであり;R1は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される;QはOH基の保護基である。)
(2−4)本発明のヌクレオチド誘導体は不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(10)に示す化合物である。
【0038】
【化9】

【0039】
(式(10)中、B1及びB2は核酸塩基又はその誘導体から独立して選択され;ZはS又はSeである;R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される。QはOH基の保護基であり独立して選択できる。)
【発明の効果】
【0040】
本発明のヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体の製造方法によると、不斉リン原子に由来する立体配置として必要な立体構造を有する化合物を効率的に得ることができる。そして、本発明のヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体は不斉リン原子に由来する立体配置が制御されているので、不斉合成に応用した場合に、得られた反応生成物が高い立体選択性を有することが期待できると共に、これらの化合物自身についてもヌクレオシド(ヌクレオチド)誘導体であることから、何らかの薬理活性を有することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(1)ヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体及びその製造方法
本発明のヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体及びその製造方法について以下詳細に説明する。主に製造方法について説明し、ヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体については製造方法で併せて説明する。
【0042】
(1−1)本発明のヌクレオシド誘導体の製造方法は第1工程と第2工程とを有する。
【0043】
(a)第1工程は、上記一般式(1)に示すデオキシリボヌクレオシド誘導体と、上記一般式(2)に示すホスフィン誘導体とを、アゾール、酸アゾール複合体及びカルボン酸から選択される酸化合物の存在下で反応させて、上記一般式(3a)及び/又は(3b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を生成する工程である。
【0044】
第1工程の反応が行われる雰囲気は特に限定しないが、非プロトン溶媒を用いることが望ましい。コストなどの観点からアセトニトリルなどが好適に採用できる。特に、無水条件を採用することが好ましく、モレキュラーシーブスなどの脱水剤を共存させて反応を進行させたり、外部からの水分の侵入を防止する何らかの手段(ドライボックスなど)を採用することが望ましい。
【0045】
各化合物の混合比は特に限定しないが、反応をより確実に進行できること、且つ、反応終了後の夾雑物の分離性などの観点から、一般式(1)に示す化合物に対して、一般式 (2)に示す化合物及び酸化合物の添加量を僅かに過剰量にすることが望ましい。
【0046】
反応温度は特に限定しない。室温などの温和な条件でも充分に反応が進行するものと推測できる。特に、副生成物の生成などの不都合が問題にならない限度で高い温度を選択することもできる。ここで、本第1工程が終了した後に、高温状態に保持することで、一般式(3b)に示す化合物が一般式(3a)に示す化合物に異性化することが判明しており、不斉リン原子に由来する立体配置を制御することができる。高温としては用いる化合物によっても異なるが40℃〜80℃程度が好ましく、50℃〜60℃程度がより好ましい。
【0047】
なお、高温状態にて保持する場合には第1工程における反応生成物を特に精製等の分離を行うことなく、そのまま供することが可能である。特に、酸化合物の存在下にて高温状態に保持することで異性化が促進されるものと推測される。
【0048】
一般式(1)に示す化合物はデオキシリボースを骨格とする化合物である。上述の一般式(1)では、煩雑になるので記載しなかったが、骨格であるデオキシリボースの各水素原子は何らかの置換基で置換されることが可能である。例えば、一般式(1)の化合物は、下記一般式(1’)で示されるような化合物を含んでいる。以下の構造式においても省略しているが、一般式(1)に対応する部分については一般式(1’)で示したような化学構造が導入できる。
【0049】
【化10】

【0050】
(式(1’)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;X1は水素、ハロゲン原子、保護基で置換されたOH基、炭素数1〜6のアルコキシ基から選択され;X2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び芳香族性の置換基から選択される。;なお、前述のアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基及びCn2nには直鎖状及び分枝を有するもの並びに水素原子の一部がハロゲンで置換されたものも含む。また、X1がアルコキシ基で且つX2がアルキル基の場合には、X1とX2とを結合させて環を形成しても良い。)
Bとして結合する置換基は水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体である。核酸塩基としては自然界に存在する塩基やその誘導体(プリン塩基(アデニン、グアニンなど)、ピリミジン塩基(シトシン、チミン、ウラシルなど)や、その誘導体など。誘導体としては保護基などを導入したものも含む)はもちろん、その他の自然界には一般的に存在しない塩基を採用することもできる。また、塩基を有していないデオキシリボースを採用しても同様の反応が進行することが予測されるので、Bとしては水素又はOH基である場合も含ませているが、最終的にヌクレオチド(誘導体)として利用する場合にはBの位置に核酸塩基が挿入されることが一般的であると考えられる。
【0051】
一般式(2)に示す化合物はR1OPXYで示される化合物である。R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基である。例えば、直鎖・分岐を問わない炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シアノアルキレン基などである。具体的にはメチル基、アリル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基、シアノエチル基などである。
【0052】
X、YはCl、Br、ジアルキル置換アミンである−NRR’からそれぞれ独立して選択される。ここで、R、R’は一部水素が置換されていても良い炭化水素基からそれぞれ独立して選択される。炭化水素基としては先述したR1と同様の基から選択することができる。更に、R及びR’は一緒になって環を形成しても良い。
【0053】
酸化合物はアゾール、酸アゾール複合体及びカルボン酸から選択される化合物である。アゾールとしては1H-テトラゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、5-(p-ニトロフェニル)-1H-テトラゾール、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、2-ブロモ4,5-ジシアノイミダゾールピリジン、1-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-(4-アセトキシフェニル)イミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、N-メチルアニリン等アルキルアニリン類、トリアゾールが例示できる。酸アゾール複合体としてはベンズイミダゾール−トリフルオロメタンスルホン酸複合体、ベンズイミダゾール−過塩素酸複合体、ベンズイミダゾール−トリフルオロ酢酸複合体、ベンズイミダゾール−テトラフルオロホウ酸複合体、ベンズイミダゾール−ヘキサフルオロリン酸複合体、イミダゾール−トリフルオロメタンスルホン酸複合体、イミダゾール−過塩素酸複合体、イミダゾール−トリフルオロ酢酸複合体、N-メチルアニリン−トリフルオロ酢酸複合体、1-フェニルイミダゾール−トリフルオロメタンスルホン酸複合体、1-フェニルイミダゾール−過塩素酸複合体、1-メチルイミダゾール−トリフルオロメタンスルホン酸複合体、1-メチルイミダゾール−過塩素酸複合体、ピリジン−塩酸複合体が例示できる。カルボン酸としては酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸などのモノカルボン酸や、マレイン酸、フタル酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、フタル酸、酒石酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸などが例示できる。特に好ましい酸化合物としては、1Hテトラゾール、ベンズイミダゾール−トリフルオロメタンスルホン酸複合体、イミダゾール−トリフルオロメタンスルホン酸複合体を挙げることができる。
【0054】
(b)第2工程は一般式(3a)及び/又は(3b)に示す化合物であるヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体に、S化剤又はSe化剤を反応させて上記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を得る工程である。
【0055】
ここで、S化剤(又はSe化剤)はリン原子が有する電子対を攻撃してS化(Se化)する。S化剤としては特に限定しないが、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TEST)や3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン 1,1-ジオキシド、テトラエチルチウラム ジスルフィド、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-ジチア-2,4-ジホスフェタン-2,4-ジスルフィド、ビスベンゼンスルホニル ジスルフィドが例示できる。また、Se化剤としてはセレン、ジフェニルジセレニド、ジベンジルジセレニドが例示できる。S化剤やSe化剤を添加する量についても特に限定されず、一般式(1)に示す化合物に対して僅かに過剰な量を添加することで反応が円滑に進行する。
【0056】
(c)そして、前記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を出発物質として反応を進行させることで、上記一般式(5a)及び/又は(5b)に示す化合物を得ることができる。
【0057】
反応条件としてはR2OHのアルコラートをR2OHに溶解させた溶液中に溶解させたものである。ここで、R2に相当する置換基を導入することで一般式(4a)又は(4b)に示す化合物が生成する。R2としては、前述のR1と基本的に同様の置換基が採用できるが、後に行う識別の要請からR1とは異なる官能基を選択する。R2OHのアルコラートとしては金属としてアルカリ金属(ナトリウムやカリウムなど)を含むものが例示できる。
【0058】
ここで、一般式(5a)及び(5b)に示す化合物における、B、Z及びR1はそれぞれ一般式(4a)及び(4b)における対応する基がそのまま残存する。
【0059】
この反応は、非常に立体選択性が高く、一般式(4a)に示す化合物からは一般式(5a)に示すヌクレオシド誘導体が、一般式(4b)に示す化合物からは一般式(5b)に示すヌクレオシド誘導体が得られる。なお、副反応として下記一般式(12)に示す化合物が副生するので、それら化合物を分離して精製する。
【0060】
【化11】

【0061】
(式(12)中、B、Z、R1及びR2は出発物質である一般式(4a)又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体に存する置換基がそのまま残存する。)
(1−2)本発明のヌクレオシド誘導体の製造方法は、不斉リン原子に由来する立体配置が制御された上述の一般式(5)に示すヌクレオシド誘導体に、脱R1剤又は脱R2剤を反応させて不斉リン原子に由来する立体配置が制御された上述の一般式(6)又は(7)の化合物を得ることを特徴とする。
【0062】
つまり、脱離する置換基を選択することで不斉リン原子に由来する立体配置を制御している。従って、R1及びR2の組み合わせは互いにあまり影響を与えずにそれぞれ自由に脱離できる組み合わせを採用することが望ましい。
【0063】
例えば、メチル基、アリル基、シアノエチル基などから任意の2つの組み合わせを選択する組み合わせを採用することが好ましく、更にはメチル基及びアリル基の組み合わせを採用することがより好ましい。特に、R1にアリル基を、R2にメチル基をそれぞれ採用することが望ましい。
【0064】
脱メチル剤としてはt−ブチルアミン、メチルアミン、ジエチルアミン、n-ブチルアミン、フェニレンジアミンなどのアルキルアミンが好ましい化合物として例示できる。脱アリル剤としてはPd2(ジベンジリデンアセトン)3・CHCl3、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムなどの0価パラジウムや、NaI、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウムなどのヨウ化物イオンが望ましい。脱シアノエチル剤としてはジアザビシクロウンデセン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン、アンモニア水などが好ましい化合物として例示できる。
【0065】
例えば、R1としてアリル基をR2としてメチル基を採用し、ZとしてSをQとしてDMTr(ジメトキシトリチル基)を採用した式(5’)に示す化合物(右旋性:この化合物は上記反応における一般式(3a)から、(4a)及び(5a)へと続く系列により合成される化合物である)について、脱アリルを行うと、式(6’)に示す化合物(左旋性)が得られ、脱メチルを行うと式(7’)に示す化合物(右旋性)がそれぞれ定量的に得られるものである。
【0066】
なお、一般式(B)に示す化合物(Z、R1及びR2は一般式(5)と同様の基である;Cで表した部分は任意の化学構造を有することができる。)についても脱R1剤及び脱R2剤のうちのいずれかを反応させることで、不斉リン原子に由来する立体配置を制御することができる。例えば、不斉リン原子を含有し、立体配置が問題になるような化合物(医薬品や農薬など)に応用でき、立体構造を制御できる。
【0067】
【化12】

【0068】
(1−3)本発明のヌクレオチド誘導体の製造方法は、不斉リン原子に由来する立体配置が制御された上述の一般式(8)に示すヌクレオシド誘導体に、上述の一般式(9)に示すヌクレオシド誘導体を反応させ、上述の一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体を合成する工程を有することを特徴とする。
【0069】
この反応としてはいわゆる光延反応を採用することが望ましい。例えば、溶媒としてTHFなどの非プロトン溶媒を用い、ジエチルアゾジカルボキシレート及びPRR’R”(R、R’及びR”アルキル基、アルケニル基、フェニル基などからそれぞれ独立して選択される。特にすべてフェニル基にすることが望ましい。)の存在下反応を進行させる。本反応において光延反応は不斉リン原子に由来する立体配置を保存する反応である。
【0070】
ここで、一般式(8)に示す化合物としては、前述の一般式(6)又は(7)に示す化合物を採用し、その立体配置を維持することが望ましい。
【0071】
なお、本反応は副反応として一般式(9)に示す化合物が一般式(8)に示す化合物に結合する位置が、一般式(10)に示す化合物では酸素原子を介していたのに対して、硫黄原子を介して結合するものが生成する。従って、この副生物を必要に応じて除去する。
【0072】
(1−4)本発明のヌクレオチド誘導体の製造方法は、
(a)上述した(1−1)から(1−3)までで説明した製造方法を組み合わせることで、一般式(1)に示す化合物から目的の立体構造をもつ一般式(10)に示す化合物を必要量だけ製造した後、
(b)(b−1)それら一般式(10)に示す立体配置が制御されたヌクレオチド誘導体に対して、ホスホロアミダイト誘導体を反応させて、アミダイト化ヌクレオチド誘導体を生成する工程と、
(b−2)ヌクレオシド、ヌクレオシド誘導体(前記一般式(1)、(2)、(3a)、(3b)、(4a)、(4b)、(5)、(5a)、(5b)、(6)、(7)、(8)及び(9)のいずれかに記載の化合物)又は(a)にて製造したヌクレオチド誘導体を、前記アミダイト化ヌクレオチド誘導体に反応させるヌクレオチド誘導体付加工程と、
を繰り返して必要な長さのヌクレオチド誘導体を得るヌクレオチド誘導体伸長工程と、を有する。
【0073】
ここで、(b−1)におけるホスホロアミダイト誘導体としては特に限定されず、一般的な化合物が採用できる。例えば、下記一般式(13)に示す化合物が挙げられる。
【0074】
【化13】

【0075】
(式(13)中、X37はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、フェニル基、−Cn2nCN、−Si(X93、−Cn2nSi(X93、−Cn2nOSi(X93及び−Cn2n−S−Si(X93から選択され;X8は−O−、−S−及び−N(X9)−から選択され;上述のX9はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基及びフェニル基から選択される。;なお、前述のアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基及びCn2nには直鎖状及び分枝を有するもの並びに水素原子の一部がハロゲンで置換されたものも含む。)
ここで、X8は酸素原子とすることが望ましい。また、X5は最終的に生成するヌクレオチド誘導体中に残存することを考慮して選択されることが望ましい。
【0076】
ホスホロアミダイト誘導体を(1H−)テトラゾールやベンズイミダゾールトリフルオロメタンスルホン酸複合体などの促進剤の存在下にて反応させることでアミダイト化ヌクレオチド誘導体を得ることができる。なお、一般式(10)に示す化合物は下方(3位)(必要に応じて上方(5位)でも良い)のOQ基のQ(保護基)を脱離してOH基にした状態で反応させるものである。
【0077】
ここで、X8に−N(X9)−を採用することで、下記一般式(14)で示される化合物を得ることができる。
【0078】
【化14】

【0079】
(式(14)中、X1013は一般式(13)に示す化合物が有するX37、9のうちの脱離せずに残存した基における対応するものである;Aで示される部分は一般式(10)に示す化合物又は一般式(10)に示す化合物の長さを伸長した化合物を示している)
一般式(14)に示す化合物を(1−1)において用いている一般式(2)の化合物に替えて採用し、その後の反応も同様に行うことで、一般式(13)に由来する不斉リン原子の立体配置についても制御することが可能である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明のヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体及びそれの製造方法について、詳細に行った実験に基づいて説明する。なお、(実施例)欄において各化合物に付けた番号は上述の各一般式に付けた番号とは関連がない。
【0081】
(デオキシリボヌクレオシド-3',5'-環状チオリン酸トリエステルの立体選択的合成)
・デオキシリボヌクレオシド-3',5'-環状チオリン酸トリエステルの立体選択的合成の反応を以下のように行なった(Scheme 2)。
【0082】
【化15】

【0083】
アセトニトリル中、モレキュラーシーブス3A存在下、デオキシリボヌクレオシド1aとアリルオキシビス(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンを1H-テトラゾールを促進剤として反応させ、ヌクレオシド-3’-5’-環状亜リン酸トリエステルをシス体2aとトランス体3aの混合物として得た。31P-NMRのスペクトル分析によりシス体とトランス体はほぼ1:1で得られることがわかった。アリルオキシビス(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの消失を確認した後、55℃に加熱してシス体2aとトランス体3a間で熱平衡異性化を起こさせた。その結果、反応の進行が見られなかったデオキシリボヌクレオシド 1d 以外は、シス体 3a が主生成物として得られた。その後、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TEST)を用いて硫化し、目的のデオキシリボヌクレオシド-3’,5’-環状チオリン酸トリエステル4aを収率 70%で得た(表1)。同様にして、デオキシリボヌクレオシド 1b、1c 及び 1e から、環状亜リン酸化、熱平衡異性化、硫化を経て、目的のデオキシリボヌクレオシド-3’,5’-環状チオリン酸トリエステル4bを収率 23%、4cを収率 79%、4eを収率 22%で得た。
【0084】
【表1】

【0085】
・詳細な実験方法
モレキュラーシーブス3Aを真空下250℃で3時間加熱乾燥させ、室温に下がるまで放置した。その中に1c (4.84 g ,20.0 mmol)、1H-テトラゾール (4.20 g, 60.0 mmol)、アセトニトリル (250 mL) を加え、室温で30分撹拌した。その溶液にアリルオキシビス(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィン (7.67 mL, 24.0 mmol) のジクロロメタン (25.0 mL) 溶液を0℃で滴下し30分撹拌し、その後室温に戻して4時間撹拌した。
【0086】
原料消失を確認した後、反応溶液を55℃で24時間撹拌し、異性化反応を行なった。更に、室温に戻してビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(11.8 mL, 24.0 mmol) を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を濾過し、濃縮した。
【0087】
残渣を酢酸エチル(200mL)に溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄した後、水層を更に酢酸エチル(200mL)で二回洗浄した。得られた有機層を飽和食塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。
【0088】
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:2)に供し、目的物を含む画分を濃縮して無色のアモルファス状物質をして、4cを5.68g (79%)得た。
【0089】
4c;TLC:Rf=0.41(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:2);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.96(s,3H), 2.53-2.64(m,2H), 3.94(dt,J=4.8 and 10.0Hz,1H), 4.45(dt,J=2.0 and 10.8Hz,1H), 4.53-4.72(m,3H), 4.77-4.84(m,1H), 5.34(dd,J=0.8 and 10.4Hz,1H), 5.45(dd,J=1.2 and 17.2Hz,1H), 5.97-6.10(m,2H), 6.98(d,J=1.2Hz,1H), 9.05(br,1H)ppm;13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ12.5, 35.2(d,J=8.2Hz), 69.2(d,J=4.2Hz), 70.0(d,J=11.5Hz), 73.9(d,J=7.4Hz), 77.2(d,J=8.2Hz), 86.1, 112.0, 119.4, 132.0(d,J=7.4Hz), 136.2, 149.8, 163.4ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ61.0ppm; HRMS(ESI+):m/z calcd for C13H17N2O6PS(M+Na)+ 383.04, found383.07.
同様の方法で4a、4b及び4eを得た。
【0090】
(2.2.デオキシリボヌクレオシド-3',5'-環状チオリン酸トリエステルの位置選択的及び立体選択的加メタノール分解)
デオキシリボヌクレオシド-3',5'-環状チオリン酸トリエステル 4aをメタノール中、ナトリウムメトキシドを用いて、室温で24時間加メタノール分解を行なった結果、2 種類の混合物が得られた(Scheme 3)。
【0091】
【化16】

【0092】
これらをNMRによるスペクトル解析を行なった結果、主生成物として5'側で開環した 6a (収率70%)と副生成物として3'側で開環した 7aであることがわかった(位置選択性 6a:7a = 92:8)。更に6aに関しては立体化学的に単一な化合物であることがわかった(表2)。同様にして、デオキシリボヌクレオシド-3',5'-環状チオリン酸トリエステル 4b 及び 4c から、6b を収率 80%、6c を収率 83%で得た(位置選択性 6b:7b = 90:10、6c:7c = 90:10)。
【0093】
【表2】

【0094】
・詳細な実験方法
4c(1.80g,5.00mmol)をメタノール(50.0mL)に溶解させ、別途調整したナトリウム(345mg,15.0mmol)のメタノール(50.0mL)溶液を0℃で滴下した。その後、室温に戻して24時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に酢酸エチル(500mL)を加え、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で洗浄した後、水層を更に酢酸エチル(200mL)で二回洗浄した。
【0095】
その後、得られた有機層を飽和食塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:2)に供し、目的物を含む画分を濃縮して無色のアモルファス状物質をして、6cを1.63g(83%)得た。
【0096】
6c;TLC:Rf=0.37(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:2);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.85(s,3H),2.49(dd,J=4.4 and 7.2Hz,1H),2.58(br,1H),3.78(d,J=13.6Hz,3H),3.89-3.97(m,1H),4.24(dd,J=2.4 and 5.2Hz,1H),4.58(ddt,J=1.2,5.6 and 10.4Hz,1H),5.18-5.23(m,1H),5.29(dd,J=0.4 and 11.2Hz,1H),5.39(ddd,J=1.6,2.8 and 17.2Hz,1H),5.90-5.99(m,1H),6.20(t,J=7.2Hz,1H),7.37(s,1H),8.61(br,1H)ppm;13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ12.5,38.2(d,J=5.7Hz),54.7(d,J=5.7Hz),62.1,69.1(d,J=4.9Hz),78.2(d,J=4.9Hz),85.5(d,J=5.7Hz),86.5,111.3,118.8,132.1(d,J=7.4Hz),136.6,150.4,163.7ppm;31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ66.2ppm;HRMS(ESI+):m/z calcd for C14H21N2O7PS(M+Na)+415.07,found415.09.
同様の方法で6a及び6bを得た。
【0097】
(デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートの5'-水酸基部の保護)
デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 6a をN, N-ジメチルホルムアミド、ピリジン中、4,4'-ジメトキシトリチルクロリドを用いて、室温で7時間撹拌させた(Scheme 4)。その結果、目的のジメトキシトリチル化体 8a を収率 58%で得た(Table 3)。同様の方法で、デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 6c から8c を収率 91%で得た。一方、デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 6bは、ピリジン中、4,4'-ジメトキシトリチルクロリド、ジクロロ酢酸、トリエチルアミンを用いて 0℃ で3 時間撹拌することで 8b を収率 52% で得た。
【0098】
【化17】

【0099】
【表3】

【0100】
・詳細な実験方法
方法1:6b(1.14g,3.02mmol)をピリジン(15.0mL)に溶解させ、0℃に保ち、ジクロロ酢酸(0.27mL,3.32mmol)、トリエチルアミン(0.46mL,3.32mmol)を加え、更に、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.23g,3.62mmol)を三回に分けて加えた。反応溶液を0℃で3時間撹拌させ、反応終了後、反応溶液にジクロロメタン(100mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄した後、水層を更にジクロロメタン(50mL)で二回洗浄した。
【0101】
その後、得られた有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=15:1)に供し、目的物を含む画分を濃縮して無色のアモルファス状物質をして、8bを1.06g(52%)得た。
【0102】
8b;TLC:Rf=0.50(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=15:1);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ2.26-2.32(m,1H), 2.77(ddd,J=3.2,5.6 and 14.0Hz,1H), 3.46(d,J=3.2Hz,2H), 3.66(d,J=14.0Hz,3H), 3.80(s,6H), 4.28(d,J=3.2Hz,1H), 4.53-4.56(m,2H), 5.24-5.41(m,3H), 5.87-5.97(m,1H), 6.36(t,J=6.0Hz,1H), 6.85(d,J=8.8Hz,4H), 7.22-7.41(m,10H), 7.87(d,J=7.6Hz,1H)ppm; 13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ40.1(d,J=4.9Hz), 54.5(d,J=5.8Hz), 55.2, 62.6, 69.0(d,J=4.9Hz), 77.9(d,J=5.0Hz), 84.5(d,J=5.7Hz), 86.0, 87.0, 93.8, 113.3, 118.8, 127.0, 128.0, 128.2, 130.1, 132.1(d,J=7.4Hz), 135.2, 135.3, 141.3, 144.2, 158.7, 165.4ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ68.4ppm; HRMS(ESI+):m/z calcd for C34H38N3O8PS(M+Na)+ 702.20, found 702.23.
方法2:6c(834mg,2.12mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(20.0mL)とピリジン(4.00mL)に溶解させ、0℃に保ち、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.01g,2.97mmol)を三回に分けて加えた。反応溶液を0℃で30分撹拌後、室温に戻して7時間反応させた。反応終了後、反応溶液に酢酸エチル(100mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄した後、水層を更に酢酸エチル(100mL)で二回洗浄した。
【0103】
その後、得られた有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)に供し、目的物を含む画分を濃縮して無色のアモルファス状物質をして、8cを1.34g(91%)得た。
【0104】
8c;TLC:Rf=0.43(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.42(s,3H), 2.37-2.43(m,1H), 2.59-2.63(m,1H), 3.42-3.48(m,2H), 3.69(d,J=13.6Hz,3H), 3.80(s,6H), 4.27(d,J=2.0Hz,1H), 4.57(dd,J=5.6 and 10.4Hz,2H), 5.27-5.40(m,3H), 5.88-5.97(m,1H), 6.44(dd,J=5.2 and 8.4Hz,1H), 6.81-6.84(m,4H), 7.22-7.38(m,9H), 7.56(s,1H), 8.25(br,1H)ppm; 13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ11.7, 39.2(d,J=5.7Hz), 54.6(d,J=5.8Hz), 55.3, 63.3, 69.0(d,J=5.0Hz), 78.8(d,J=4.2Hz), 84.4, 84.7(d,J=5.0Hz), 87.2, 111.5, 113.4, 118.8, 127.2, 128.1(x2), 130.1, 132.1(d,J=7.4Hz), 135.2(x2), 144.2, 150.1, 163.3ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ68.5ppm; HRMS(ESI+):m/z calcd for C35H39N2O9PS(M+Na)+ 717.20, found717.24.
同様の方法で8aを得た。
【0105】
(デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートの脱アリル化、脱メチル化反応によるデオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステルの合成)
まず、デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 8aの立体化学保持による脱メチル化の検討を行なった(Scheme 5)。デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 8aを tert-ブチルアミン中、35℃ で24 時間撹拌することで、脱メチル化されたデオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステル 9a を収率 95%で得た。同様の方法で、デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 8b及び8cの立体化学保持による脱メチル化を行なった結果、9b を収率 93%、9c を収率 92%で得た。
【0106】
次に、デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 8aの立体化学保持による脱アリル化の検討を行なった(Scheme 5)。デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 8aをテトラヒドロフラン中、触媒量のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム付加体、トリフェニルホスフィンを加え撹拌後、n-ブチルアミンとギ酸を作用させ、室温で2時間撹拌した結果、脱アリル化されたデオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステル 10a を収率 80%で得た。同様の方法で、デオキシリボヌクレオシド-3'-ホスホロチオエート 8b及び8cの立体化学保持による脱アリル化を行なった結果、10b を収率 62%、10c を収率 88%で得た。これにより、純粋な立体化学をもつ2種類のヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステルの合成に成功した。
【0107】
【化18】

【0108】
・詳細な実験方法
脱メチル化:8c(1.00g,1.44mmol)をtert-ブチルアミン(25.0mL)に溶解させ、35℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、残渣をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、0.1M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(10mL)で二回洗浄した。
【0109】
その後、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1)に供し、目的物を含む画分を濃縮し、更にジクロロメタン(20mL)に溶解させ、0.1M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(10mL)で二回洗浄した。
【0110】
その後、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過をした。残渣を濃縮した後、ジクロロメタン(1.0mL)に溶解、石油エーテル(200mL)にて粉体化をさせ、無色のアモルファス状物質をして、9cを1.04g(92%)得た。
【0111】
9c;TLC:Rf=0.37(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1);1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ1.16(t,J=7.2Hz,9H), 1.34(s,3H), 2.24-2.40(m,2H), 3.05-3.15(m,7H), 3.27-3.30(m,1H), 3.74(s,6H), 4.16-4.28(m,3H), 5.03(dd,J=1.6 and 10.4Hz,2H), 5.19(ddd,J=2.0,4.0 and 17.2Hz,1H), 5.82-5.91(m,1H), 6.20(dd,J=5.6 and 8.4Hz,1H), 6.87-6.89(m,4H), 7.22-7.39(m,9H), 9.23(br,1H), 11.31(s,1H)ppm; 13C-NMR(100MHz,DMSO-d6):δ8.56, 11.5, 39.5(d,J=3.3Hz), 45.6, 55.2, 64.0, 67.0(d,J=5.8Hz), 77.2(d,J=4.2Hz), 84.7, 85.6(d,J=5.8Hz), 87.0, 111.1, 113.3, 116.2, 127.0, 128.0, 128.2, 130.2, 134.6(d,J=9.0Hz), 135.4, 135.6, 135.9, 144.4, 150.4, 163.7ppm; 31P-NMR(162MHz,DMSO-d6):δ52.8ppm; HRMS(ESI-):m/z calcd for C40H52N3O9PS(M-H-Et3N)- 679.19, found679.27.
同様の方法で9a及び9bを得た。
【0112】
脱アリル化:8c(69.5mg,100mmol)をテトラヒドロフラン(1.00mL)に溶解させ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム付加体(5.18mg,5.00mmol)、トリフェニルホスフィン(6.56mg,25.0mmol)を加え室温で30分間撹拌した。その後、反応溶液を0℃に保ち、n-ブチルアミン(19.0mL,200mmol)とギ酸(7.50mL,200mmol)を滴下して、室温に戻して2時間撹拌した。
【0113】
反応終了後、反応溶液を濃縮し、残渣をジクロロメタン(5.0mL)に溶解させ、0.1M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(3.0mL)で二回洗浄した。その後、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1)に供し、目的物を含む画分を濃縮し、更にジクロロメタン(5.0mL)に溶解させ、0.1M炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(3.0mL)で二回洗浄した。
【0114】
その後、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過をした。残渣を濃縮した後、ジクロロメタン(1.0mL)に溶解、石油エーテル(100mL)にて粉体化をさせ、無色のアモルファス状物質をして、10cを66.5mg(88%)得た。
【0115】
10c;TLC:Rf=0.21(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1);1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ1.16(t,J=7.2Hz,9H), 1.36(s,3H), 2.24-2.38(m,2H), 3.06(q,J=7.2Hz,6H), 3.14(dd,J=2.8 and 10.4Hz,1H), 3.28-3.30(m,1H), 3.73(s,6H), 4.09-4.11(m,1H), 4.97-5.04(m,1H), 6.17(dd,J=6.0 and 8.4Hz,1H), 6.87-6.89(m,4H), 7.21-7.47(m,9H), 9.47(br,1H), 11.31(s,1H)ppm; 13C-NMR(100MHz,DMSO-d6):δ8.62, 11.6, 39.8(d,J=4.1Hz), 45.7, 52.9(d,J=6.5Hz), 55.2, 63.9, 76.5(d,J=4.9Hz), 84.7, 85.1(d,J=5.8Hz), 87.0, 111.1, 113.3, 127.0, 127.9, 128.2, 130.1, 135.4, 135.6, 135.8, 144.4, 150.4, 163.8ppm; 31P-NMR(162MHz,DMSO-d6):δ54.3ppm; HRMS(ESI-):m/z calcd for C38H50N3O9PS(M-H-Et3N)- 653.17, found653.26.
同様の方法で10a及び10bを得た。
【0116】
(ヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステルと5'-O-無保護ヌクレオシドの光延反応に基づくジヌクレオシドホスホロチオエートの立体選択的合成)
ヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステルと5'-O-無保護ヌクレオシドの光延反応に基づくジヌクレオシドホスホロチオエートの立体選択的合成の検討を行なった(Scheme 6)。
【0117】
【化19】

【0118】
テトラヒドロフラン中、0℃ でジエチルアゾカルボキシレート(DEAD)とトリフェニルホスフィンを撹拌し、光延試薬の調整を行なった。その後、ヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステル 9a と5'-O-無保護ヌクレオシド 11a を加えて、55℃で3時間撹拌した結果、完全に立体化学を保持したまま反応は進行し、目的とするジヌクレオシドホスホロチオエート 12a を収率 32%で得た。高い立体選択性で反応は進行するが、官能基選択性(O/S 選択性)は低かった(表4)。同様の方法で、ジヌクレオシドホスホロチオエートの立体選択的合成の検討を行なった結果、12b を収率 59%、 12c を収率 27%、12d を収率 25%、12e を収率 53%、12f を収率 50%で得た。
【0119】
【表4】

【0120】
更に、9c とは立体化学の異なるヌクレオシド-3'-ホスホロチオエートジエステル 10a と、
5'-O-無保護ヌクレオシド 11a の光延反応に基づくジヌクレオシドホスホロチオエートの立体選択的合成の検討を行なった(Scheme 7)。
【0121】
【化20】

【0122】
高い立体選択性で反応は進行するが、官能基選択性(O/S 選択性)は低かった(表5)。同様の方法で、ジヌクレオシドホスホロチオエートの立体選択的合成の検討を行なった結果、14b を収率 20% 、14c を収率 51%、14d を収率 15%で得た。ただし、14d に関しては、縮合剤の当量数を変えることで収率を 62%まで向上することができた。
【0123】
【表5】

【0124】
・詳細な実験方法
トリフェニルホスフィン(202mg,770mmol)をテトラヒドロフラン(12.0mL)に溶解させ、反応溶液を0℃に保ち、ジエチルアゾカルボキシレート40%トルエン溶液(350mL,770mmol)を滴下して、30分間撹拌させた。
【0125】
その溶液に9c(460mg,590mmol)及び11d(335mg,1.18mmol)を加えてしばらく撹拌させた後、反応溶液を60℃に保ち、3時間撹拌させた。反応終了後、31P-NMRのスペクトル分析により12f、13f及び他の化合物の収率を換算した。そして、反応溶液に酢酸エチル(50mL)を加え、飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)で洗浄した後、水層を更に酢酸エチル(50mL)で二回洗浄した。
【0126】
その後、得られた有機層を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1、酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=3:1:0.1)に供し、目的物を含む画分を濃縮して無色のアモルファス状物質をして、12fを279mg(50%)得た。
【0127】
12f;TLC:Rf=0.43(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=3:1:0.1);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.47(s,3H), 1.94(s,3H), 2.10-2.19(m,4H), 2.35-2.44(m,2H), 2.60(dd,J=5.6 and 12.8Hz,1H), 3.46(d,J=2.4Hz,2H), 3.80(s,6H), 4.13-4.35(m,4H), 4.60(dd,J=5.6 and 10.8Hz,2H), 5.21-5.41(m,4H), 5.88-5.97(m,1H), 6.36(dd,J=5.6 and 9.2Hz,1H), 6.41(dd,J=5.2 and 8.4Hz,1H), 6.85(d,J=8.8Hz,4H), 7.22-7.40(m,10H), 7.58(s,1H), 8.81(s,1H), 8.85(s,1H)ppm; 13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ11.7, 12.5, 21.0, 37.0, 39.0(d,J=5.8Hz), 55.2, 63.2, 67.4(d,J=6.6Hz), 69.3(d,J=4.9Hz), 74.3, 79.5(d,J=4.1Hz), 82.5(d,J=9.0Hz), 84.4, 84.5, 84.6(d,J=5.8Hz), 87.2, 111.6, 111.8, 113.3, 119.4, 127.1, 128.0(x2), 130.0, 131.6(d,J=7.4Hz), 133.0, 134.8, 135.0, 135.1, 144.1, 150.4, 163.5, 163.7, 170.3ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ67.0ppm; 同様の方法で12a、12b、12c、12d、12e、14a、14b、14c及び14dを得た。
【0128】
(ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-水酸基保護基の除去及びホスホロアミダイト化)
ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-水酸基保護基の除去(脱アセチル化)の検討を行なった(Scheme 8 and 9)。
【0129】
【化21】

【0130】
【化22】

【0131】
ジヌクレオシドホスホロチオエート 12f をメタノール中、ナトリウムメトキシドを用いて、室温で4時間撹拌した結果、脱アセチル化されたジヌクレオシドホスホロチオエート16 を収率 88%で得た。同様の方法で 17 を収率 84%で得た。
【0132】
次に、得られたジヌクレオシドホスホロチオエート 16 及び 17 のホスホロアミダイト化の検討を行なった(Scheme 10 and 11)。
【0133】
【化23】

【0134】
【化24】

【0135】
アセトニトリル中、モレキュラーシーブス3A存在下、ジヌクレオシドホスホロチオエート16とアリルオキシビス(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンを、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリドを促進剤として反応させ、室温で3 時間撹拌した結果、目的とするホスホロアミダイト 18 を収率 71%で得た。更に、メチルオキシビス(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンを用いて同様の方法で 19 を収率 75%で得た。
【0136】
・詳細な実験方法
保護基の除去:12f(103mg,109mmol)をメタノール(4.00mL)に溶解させ、別途調整した1.0Mナトリウムメトキシドメタノール溶液(55.0mL,55.0mmol)を0℃で滴下した。その後、室温に戻して4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に酢酸エチル(20mL)を加え、飽和塩化アンモニウム水溶液(5.0mL)で洗浄した後、水層を更に酢酸エチル(20mL)で二回洗浄した。
【0137】
その後、得られた有機層を飽和食塩水(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1)に供し、目的物を含む画分を濃縮して無色のアモルファス状物質をして、16を86.8mg(88%)得た。
【0138】
16;TLC:Rf=0.53(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=9:1);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.48(s,3H), 1.92(s,3H), 2.10-2.17(m,1H), 2.35-2.45(m,2H), 2.60(dd,J=5.6 and 13.2Hz,1H), 3.46(d,J=2.4Hz,2H), 3.80(s,6H), 4.08-4.32(m,4H), 4.46(t,J=2.8Hz,1H), 4.59(dd,J=5.6 and 10.8Hz,2H), 5.26-5.40(m,3H), 5.87-5.97(m,1H), 6.32(t,J=6.4Hz,1H), 6.41(dd,J=5.2 and 8.8Hz,1H), 6.85(d,J=9.2Hz,4H), 7.22-7.40(m,10H), 7.56(d,J=1.2Hz,1H), 9.36(s,1H), 9.53(s,1H)ppm; 13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ11.8, 12.6, 39.0(d,J=4.9Hz), 40.1, 55.3, 63.4, 67.6(d,J=6.6Hz), 69.3(d,J=4.1Hz), 71.3, 79.6(d,J=4.9Hz), 84.5, 84.6(d,J=8.2Hz), 84.7(d,J=4.1Hz), 85.1, 87.3, 111.5, 111.9, 113.4, 119.3, 127.2, 128.0, 128.1, 130.1, 131.8(d,J=7.4Hz), 132.1, 135.1, 135.2, 135.6, 144.2, 150.7, 150.9, 164.0, 164.2ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ65.7ppm;
同様の方法で17を得た。
【0139】
ホスホロアミダイト化:モレキュラーシーブス3Aを真空下250℃で3時間加熱乾燥させ、室温に下がるまで放置した。その中に16(49.0mg,54.1mmol)、ジイソプロピルアンモニウム-1H-テトラゾリド(18.5mg,108mmol)、アセトニトリル(1.00mL)を加え、室温で30分撹拌した。その溶液にアリルオキシビス(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(25.9mL,81.1mmol)を滴下し、2時間撹拌させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、濃縮した。残渣を酢酸エチル(10mL)に溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5.0mL)で洗浄した後、水層を更に酢酸エチル(10mL)で二回洗浄した。その後、得られた有機層を飽和食塩水(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過をした。残渣を濃縮した後、ジクロロメタン(1.0mL)に溶解、石油エーテル(100mL)にて粉体化をさせ、無色のアモルファス状物質をして、18を42.0mg(71%)得た。
【0140】
18;TLC:Rf=0.39(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=2:1);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.16(d,J=6.8Hz,12H), 1.43(s,3H), 1.91(s,3H), 2.05-2.14(m,1H), 2.36-2.49(m,2H), 2.56-2.61(m,1H), 3.40-3.47(m,2H), 3.55-3.63(m,2H), 3.79(s,6H), 4.06-4.24(m,6H), 4.45-4.61(m,3H), 5.12(d,J=10.4Hz,1H), 5.23-5.39(m,4H), 5.87-5.96(m,2H), 6.31(t,J=6.4Hz,1H), 6.41(t,J=7.2Hz,1H), 6.84(d,J=8.8Hz,4H), 7.22-7.40(m,10H), 7.58(s,1H), 8.92(br,2H)ppm; 13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ11.7, 12.6, 24.5(d,J=6.6Hz), 24.6(d,J=8.3Hz), 39.2(d,J=5.0Hz), 39.5, 43.2(d,J=12.3Hz), 55.3, 63.4, 64.3(d,J=17.3Hz), 67.3(d,J=6.0Hz), 69.3(d,J=6.6Hz), 72.8(d,J=1.7Hz), 73.0, 79.5(d,J=3.3Hz), 84.4, 84.8(d,J=5.8Hz), 85.0(d,J=7.4Hz), 87.3, 111.4, 111.7, 113.4, 115.9(d,J=13.2Hz), 119.3, 127.2, 128.0, 128.1, 130.0, 131.7(d,J=2.5Hz), 131.8(d,J=3.3Hz), 135.1, 135.2, 135.3, 135.4, 144.4, 150.4, 150.5, 150.9, 163.9(x2)ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ67.4, 147.5, 147.9ppm.
同様の方法で19を得た。
【0141】
(ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-ホスホロアミダイトを構成単位に用いるホスホロチオエート/ホスフェート混合型オリゴヌクレオチドの立体選択的合成(液相合成))
ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-ホスホロアミダイト 18 を構成単位に用いるホスホロチオエート/ホスフェート混合型オリゴヌクレオチドの合成を行なった(Scheme 12)。
【0142】
【化25】

【0143】
ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-ホスホロアミダイト 18 と5'-O-無保護ヌクレオシド 11d をアセトニトリル中、モレキュラーシーブス 3A 存在下、1H-テトラゾールを促進剤として室温で1時間反応させた。31P-NMR のスペクトル分析により、原料のアミダイトの消失を確認した後、t-ブチルヒドロキシペルオキシド-トルエン溶液により酸化させて目的の 20 を収率 70%で得た。同様の方法で、ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-ホスホロアミダイト 19 から 21 を収率 65%で得た(Scheme 13)。
【0144】
【化26】

【0145】
・詳細な実験方法
モレキュラーシーブス3Aを真空下250℃で3時間加熱乾燥させ、室温に下がるまで放置した。その中に18(70.5mg,64.5mmol)、1H-テトラゾール(9.00mg,129mmol)、アセトニトリル(1.30mL)を加え、室温で30分撹拌した。その溶液に11d(27.5mg,96.8mmol)を加え、室温で1時間撹拌させた。原料のアミダイトの消失を確認した後、4.0Mt-ブチルヒドロキシペルオキシドートルエン溶液(47.8mL,194mmol)により酸化させて目的の20を58.4mg(70%)得た。
【0146】
20;TLC:Rf=0.60(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=3:1:0.5);1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ1.44-1.46(m,3H), 1.87-1.94(m,6H), 2.10(s,3H), 2.21-2.31(m,2H), 2.37-2.45(m,2H), 2.51-2.64(m,2H), 3.38-3.79(m,2H), 3.80(s,6H), 4.15-4.37(m,6H), 4.58-4.61(m,4H), 5.06(t,J=6.0Hz,1H), 5.24-5.41(m,7H), 5.88-5.99(m,2H), 6.16-6.43(m,3H), 6.85(d,J=8.8Hz,4H), 7.22-7.42(m,11H), 7.56-7.58(m,1H), 9.11-9.37(m,3H)ppm; 13C-NMR(100MHz,CDCl3):δ11.7(x2), 12.5(x2), 36.9, 38.3(x2), 39.0(x3), 55.2, 63.4(x2), 67.0, 67.1, 67.5(x2), 68.9, 69.0(x2), 69.4, 69.5, 73.9, 77.2, 77.9, 79.8(x2), 79.9, 82.5, 82.6, 83.1, 83.2, 84.4, 84.7, 84.8, 84.9(x2), 85.5, 87.3, 111.7(x2), 111.8(x2), 113.4, 119.4, 119.5, 119.6, 127.2, 128.0, 128.1, 130.0, 131.6, 131.7(x2), 131.8, 135.0, 135.1(x2), 135.3, 144.1, 150.3, 150.4, 150.5, 150.6(x2), 150.7, 158.7, 158.8, 163.7(x2), 163.8, 170.5, 170.6ppm; 31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ-2.64, -2.27, 66.7, 66.9ppm;
同様の方法で21を得た。
【0147】
(ジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-ホスホロアミダイトを構成単位に用いるホスホロチオエート/ホスフェート混合型オリゴヌクレオチドの立体選択的合成(固相合成))
固相反応におけるホスホロチオエート/ホスフェート混合型オリゴヌクレオチドの立体選択的合成を行なった(Scheme 14)。構成単位としてジヌクレオシドホスホロチオエート-3'-(S)- ホスホロアミダイト 18 を用いるチミジンホスホロチオエート 15 量体 22 の合成を、固相担体(CPG (Controlled Pore Glass))上、トリフルオロメタンスルホン酸ベンズイミダゾリウム(BIT)を促進剤として用いた結果を示す。鎖長伸長は、Applied Biosystems 社製の Model 392 DNA/RNA Synthesizer 自動固相合成機上、表6 に示す一連の反応操作により行なった。
【0148】
【化27】

【0149】
【表6】

【0150】
鎖長伸長終了後、脱アリル化(テトラヒドロフラン中、触媒量のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム付加体、トリフェニルホスフィンを加え撹拌後、n-ブチルアミンとギ酸を作用させ、50℃で 12 時間撹拌した)の条件にて、リン酸部の保護基を除去した後、濃アンモニア水処理(25℃, 2 時間)を施して、ホスホロチオエート 15 量体 22 を収率 97% (overall)で得た。HPLC で精製することにより Fig. 1. に示すような純度で立体化学的に純粋なホスホロチオエート 15 量体 22 を得た。
【0151】
・詳細な実験方法
固相合成は、AppliedBiosystems社製のModel392DNA/RNASynthesizer自動固相合成機を用いて行なった。試薬は、0.1Mジヌクレオシドホスホロチオエート-3’-ホスホロアミダイト/アセトニトリル溶液、0.1MBIT/アセトニトリル溶液、1.0MTBHP/トルエン溶液、キャッピング剤(無水酢酸/テトラヒドロフラン溶液、N-メチルイミダゾール/テトラヒドロフラン溶液)を用いて、固相担体0.5mmolにて行なった。脱保護は、テトラヒドロフラン中、触媒量のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム付加体、トリフェニルホスフィンを加え撹拌後、n-ブチルアミンとギ酸を作用させ、50℃で12時間撹拌した。切り出しは、濃アンモニア水を用いて室温にて2時間で行ない、その後、濃アンモニア水を凍結遠心濃縮にて留去して、チミジンホスホロチオエート15量体22を白色固体として得た。
【0152】
22;HRMS(ESI-):m/z calcd for C150H196N30O96P14S7(M-3H)- 1536.20,found1536.19.
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明のヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体は生体に対して種々の薬理活性を発揮することが期待される。特に立体構造を制御しているので、特異な薬理活性の発現が期待できる。
【0154】
従って、ヌクレオシド誘導体及びヌクレオチド誘導体の製造方法についても、有用な化合物を高い選択性をもって得ることができる方法であるので、新規な薬理活性物質の製造・探索に資するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示すデオキシリボヌクレオシド誘導体と、一般式(2):R1OPXY(R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基である。;X、Yは、Cl、Br、ジアルキル置換アミンである−NRR’(R、R’は一部水素が置換されていても良い炭化水素基からそれぞれ独立して選択される。R及びR’は一緒になって環を形成しても良い。)からそれぞれ独立して選択される。)に示すホスフィン誘導体とを、アゾール、酸アゾール複合体及びカルボン酸から選択される酸化合物の存在下で反応させて、下記一般式(3a)及び/又は(3b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を生成する第1工程と、
前記ヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体に、S化剤又はSe化剤を反応させて下記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を得る第2工程と、を有することを特徴とするヌクレオシド誘導体の製造方法。
【化1】

(式(1)、(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;R1は前記一般式(2)のR1と同じ基である;ZはO、S又はSeである。)
【請求項2】
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記一般式(3a)及び(3b)で示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体の混合物を高温にて所定時間保持し、該一般式(3b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体を該一般式(3a)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体に異性化させる熱平衡異性化工程を有する請求項1に記載のヌクレオシド誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体に、R2OH溶液中(R2は一部水素が置換されていても良い炭化水素基であって、前記R1とは異なる基である。)でR2OHのアルコラートを反応させて、下記一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体を得る工程を有する請求項1又は2に記載のヌクレオシド誘導体の製造方法。
【化2】

(式(5a)及び(5b)中、Bは前記一般式(1)にて説明したBと同じ基であり;R1は前記一般式(2)にて説明したR1と同じ基である。;R2は一部水素が置換されていても良い炭化水素基であって、R1とは異なる基である。;式(5a)中のZは前記一般式(4a)のZと同じ基であり;式(5b)中のZは前記一般式(4b)のZと同じ基である。)
【請求項4】
不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(5)に示すヌクレオシド誘導体に、脱R1剤又は脱R2剤を反応させて不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(6)又は(7)に示すヌクレオシド誘導体を得ることを特徴とするヌクレオシド誘導体の製造方法。
【化3】

(式(5)〜(7)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはO、S又はSeであり;R1及びR2は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される;QはOH基の保護基である。)
【請求項5】
前記一般式(5)〜(6)におけるR1及びR2は、メチル基、アリル基及びシアノエチル基から選択され、
脱メチル剤としてはモノアルキルアミン、脱アリル剤としては0価パラジウム又はNaI、脱シアノエチル剤としてはトリアルキルアミン、アンモニア又はジアザビシクロウンデセン、から選択される請求項4に記載のヌクレオシド誘導体の製造方法。
【請求項6】
不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(8)に示すヌクレオシド誘導体に、下記一般式(9)に示すヌクレオシド誘導体を反応させ、下記一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体を合成する工程を有することを特徴とするヌクレオチド誘導体の製造方法。
【化4】

(式(8)、(9)及び(10)中、B1及びB2は核酸塩基又はその誘導体から独立して選択され;ZはO、S又はSeである;R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される。QはOH基の保護基であり独立して選択できる。)
【請求項7】
請求項3に記載の製造方法により、前記一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体を製造する工程と、
前記一般式(5)に示すヌクレオシド誘導体として該一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体を用いて、請求項4又は5に記載の製造方法により、前記一般式(6)及び/又は(7)に示すヌクレオシド誘導体を製造する工程と、
前記一般式(8)に示すヌクレオシド誘導体として該該一般式(6)及び/又は(7)に示すヌクレオシド誘導体を用いて、請求項6に記載の製造方法により、前記一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体を製造する工程と、
を繰り返して立体配置を制御したヌクレオチド誘導体を合成する工程と、
該ヌクレオチド誘導体合成工程で合成された該一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体に対し、ホスホロアミダイト誘導体を反応させて、該一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体及び該ホスホロアミダイト誘導体の間を縮合させてアミダイト化ヌクレオチド誘導体を生成する工程と、
ヌクレオシド、ヌクレオシド誘導体(前記一般式(1)、(2)、(3a)、(3b)、(4a)、(4b)、(5)、(5a)、(5b)、(6)、(7)、(8)及び(9)のいずれかに記載の化合物)又は該ヌクレオチド誘導体合成工程にて合成されたヌクレオチド誘導体を、前記アミダイト化ヌクレオチド誘導体に反応させるヌクレオチド誘導体付加工程と、
を繰り返して必要な長さのヌクレオチド誘導体を得るヌクレオチド誘導体伸長工程と、
を有するヌクレオチド誘導体の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(4a)及び/又は(4b)に示すヌクレオシド環状亜リン酸トリエステル誘導体であるヌクレオシド誘導体。
【化5】

(式(4a)及び(4b)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeである。)
【請求項9】
下記一般式(5a)及び/又は(5b)に示すヌクレオシド誘導体。
【化6】

(式(5a)及び(5b)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeであり;R1及びR2は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される。)
【請求項10】
不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(11)に示すヌクレオシド誘導体。
【化7】

(式(11)中、Bは水素、OH基、核酸塩基又はその誘導体から選択され;ZはS又はSeであり;R1は互いに異なる一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される;QはOH基の保護基である。)
【請求項11】
不斉リン原子に由来する立体配置が制御された下記一般式(10)に示すヌクレオチド誘導体。
【化8】

(式(10)中、B1及びB2は核酸塩基又はその誘導体から独立して選択され;ZはS又はSeである;R1は一部水素が置換されていても良い炭化水素基から選択される。QはOH基の保護基であり独立して選択できる。)

【公開番号】特開2006−248949(P2006−248949A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66320(P2005−66320)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】